説明

血管内皮成長因子受容体−Iに対する抗体

血管内皮成長因子I(VEGFR−I)に特異的なモノクローナル抗体。本発明は、CDR1,CDR2、及びCDR3の相補性決定領域に相当する配列を含む。可変重鎖及び軽鎖免疫グロブリン分子を含むアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を提供する。本発明は、抗−VEGFR−I抗体の作製及び発現方法、並びに抗−VEGFR−I抗体を投与することによる、血管形成関連障害を治療し、かつ腫瘍増殖を低減する方法をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、血管内皮成長因子−I(VEGFR−I)に特異的な抗体に、並びにVEGFR−Iに対する抗体により血管新生関連疾患及び腫瘍を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
胚及び成体における予め存在する血管からの毛細血管の形成をいう血管新生(angiogenesis)は、腫瘍増殖(成長)、生存、及び転移における主要な要素であることが知られている。成長因子及びそれらの受容体、例えば、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子−α(TGF−α)、トランスフォーミング成長因子−δ(TGF−/3)、酸性及び塩基性線維芽細胞成長因子(aFGF及びbFGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、及び血管内皮成長因子(VEGF)は、腫瘍血管新生に一定の役割を演じていると考えられる。Klagsburn & D'Amore, Annual Rev. Physiol., 53 : 217-239 (1991)を参照のこと。上記成長因子のそれらの細胞表面受容体への結合は、受容体の活性化を含み、これは、シグナル伝達経路を開始させ、そして修飾し、そして細胞の増殖と分化を導く。VEGF、すなわち、内皮細胞特異的細胞分裂誘発物質は、それが、内皮細胞の増殖を特異的に促進することにより血管新生誘発物質として作用するという点で、上記因子の中で、区別される。
【0003】
VEGFの生物学的応答は、胚形成の間(Millaure, Cell, 72 : 835-846 (1993))に、及び腫瘍形成の間に、内皮細胞上に選択的に発現されるその高アフィニティー受容体を通じて仲介される。VEGF受容体(VEGFRs)は、典型的には、それらのアミノ末端細胞外受容体リガンド結合性ドメイン内に数個、典型的には5又は7個のイムノグロブリン様ループを有することを特徴とするクラスIII受容体型チロシン・キナーゼである(Kaipainen et al, J. Exp. Med., 178 : 2077-2088 (1993))。他の2つの領域は、キナーゼ挿入ドメインといわれる、可変長の親水性interldnase配列の挿入により中断されているトランスメンブラン領域とカルボキシ末端細胞内触媒ドメインを含む(Terman et al., Oncogene, 6 : 1677-1683 (1991))。VEGFRsは、Shibuya et al., Oncogene, 5 : 519-524 (1990)により配列決定されたz,s−様チロシン・キナーゼ受容体(flt−1)又はVEGFR−I、1992年2月20日出願されたWO92/14248及びTerman et al., Oncogene, 6 : 1677-1683 (1991)中に記載され、かつ、Matthews et al., Proc. Natl. Acad. Sd. USA, 88 : 9026-9030 (1991)により配列決定されたキナーゼ挿入ドメイン含有受容体/胎児肝キナーゼ(KDR/fik−1)又はVEGFR−2を含む、但し、他の受容体、例えば、ニューロピリン−1及び−2もVEGFに結合しうる。他のチロシン・キナーゼ受容体VEGFR−3(flt−4)は、VEGFホモログ、VEGF−C及びVEGF−Dに結合し、そしてリンパ管の発達においてより重要である。
【0004】
病理学的血管新生の調節におけるVEGFR−Iの重要性は、インビボにおける実験モデルにおいて示されてきた。VEGFR−Iチロシン・キナーゼ・ドメインの欠陥は、腫瘍における低減された血管形成をもたらし、これは、病理学的血管新生におけるVEGFR−Iチロシン・キナーゼの意義のある役割を示すものである(Hiratsuka et al., Cancer Research, 61 : 1207-1213 (2001))。VEGFR−Iチロシン・キナーゼ・ドメインは、内皮細胞及びマクロファージ内へのマトリックス・メタロプロテアーゼ−9(MMP−9)の導入による腫瘍の病因及び転移の促進のためにも必要とされる(Hiratsuka et al., Cancer Cell, 2 : 289-300 (2002))。さらに、VEGFR−Iは、PIGF応答性BM由来前駆細胞の流動化及び分化を仲介することが示されている(Hattori et al., Nature Medicine, 8 : 841-849 (2002))。抗−VEGFR−I抗体によるVEGFR−Iの阻害は、骨髄由来内皮及び単球前駆細胞の動員が腫瘍内で血管形成することを妨害することにより、腫瘍血管新生の低減を導く(Lyden et al., Nature Medicine, 7 : 1194-1201 (2001))。抗−VEGFR−I抗体による処置は、腫瘍内の病理学的血管新生、及び動物モデルにおける虚血性網膜炎をも有効に阻害した(Lutten et al., Nature Medicine, 8 : 831-840 (2002))。
【0005】
血管新生におけるVEGFR−Iの役割に加えて、VEGFとその受容体の同時発現も、血液学的悪性細胞及び特定の固形腫瘍細胞においてしばしば発見された(Bellamy, Cancer Research, 59 : 728-733 (1999); Ferrer et al., Urology, 54 : 567-572 (1999); Price et al., Cell Growth Differ., 12 : 129-135 (2001))。VEGFは、リガンドにより刺激された内分泌ループを通じての下流細胞内シグナリング経路の活性化によりVEGF受容体発現性白血病細胞の増殖、生存、及び侵入を直接に誘導することが示されている(Dias et al., Proc. Natl. Acad. Sd. USA, 98: 10857-10862 (2001)); Gerber et al., J. Mol. Med., 81 : 20-31 (2003))。VEGF刺激は、ERK1/2及びPI3/Akt−キナーゼ・シグナリング経路の活性化を誘導することによりVEGFR−I発現性乳癌細胞の高められた侵入性をももたらす(Price et al., Cell Growth Differ., 12 : 129-135 (2001))。
【0006】
VEGFR−Iとそのリガンドは、炎症性障害において重要な役割を演じることも示されている。VEGF−B欠陥は、関節炎のモデルにおいて炎症関連血管密度の低下及び滑液炎症をもたらした(Mould et al., Arthritis Rheum., 48 : 2660-2669 (2003))。PIGFは、血管拡大、炎症性細胞、及び単球/マクロファージを仲介することにより皮膚炎症のコントロールにおいて重要な役割をも演じ、そして動物モデルにおけるアテローム性動脈硬化症及びリウマチ様関節炎の調節に貢献することが示されている(Luttun et al., Nature Medicine, 8 : 831-840 (2002); Autiero & Thromb Haemost, 1 : 1356-1370 (2003))。中和性抗−VEGFR−I抗体による処置は、関節炎における炎症性調節破壊を抑制し、アテローム性動脈硬化斑の成長及び傷つきやすさを低下させた。抗−VEGFR−I抗体の抗炎症効果は、末梢血液中への骨髄由来骨髄前駆細胞の低減された流動化、骨髄細胞の欠陥のある活性化、及び炎症化組織内でのVEGFR−I−発現性白血球の弱化された分化及び浸潤に帰されていた。したがって、VEGFR−Iは、炎症関連障害の治療のための治療ターゲットでもあることができる。
【0007】
VEGF受容体活性を阻害する作用物質、例えば、VEGFR−Iに特異的な完全ヒト・モノクローナル抗体(mAbs)の必要性が未だ在る。抗−VEGFR−I抗体は、血管新生関連疾患及び癌の治療のための有用、かつ、新規な治療用アンタゴニストでありうる。
【発明の開示】
【0008】
本発明の簡単な説明
1の態様において、本発明は、VEGFR−Iに特異的に結合し、そして配列番号2の軽鎖相補性決定領域−2(CDR2)、及び配列番号3の軽鎖相補性領域−3(CDR3)を含むモノクローナル抗体又はその断片を提供する。
【0009】
他の態様においては、本発明は、VEGFR−Iに特異的に結合し、そして配列番号2の軽鎖相補性決定領域−2(CDR2)及び配列番号3の軽鎖相補性領域−3(CDR3)を含む抗体又はその断片のアミノ酸配列に少なくとも70%相同であるモノクローナル抗体又はその断片を提供する。
【0010】
他の態様においては、本発明は、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、及び配列番号27から成る群から選ばれるヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチドを提供する。上記ヌクレオチド配列は、VEGFR−Iに特異的に結合する抗体又はその断片をコードする。
【0011】
他の態様においては、本発明は、VEGFR−Iに特異的に結合する抗体又はその断片をコードし、そして配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、及び配列番号27から成る群から選ばれるヌクレオチド配列に少なくとも70%相同であるヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0012】
他の態様においては、本発明は、VEGFR−Iに特異的に結合し、そして配列番号2の軽鎖相補性決定領域−2(CDR2)及び配列番号3の軽鎖相補性領域−3(CDR3)を含む抗体又はその断片の治療有効量を投与することにより血管新生を阻害し又は腫瘍増殖を低減する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の詳細な説明
1の態様において、本発明は、VEGFR−Iに特異的に結合するモノクローナル抗体及びその断片を提供する(特にことわらない限り、このような抗体及びその断片を本明細書中、「抗−VEGFR−I抗体」という)。本発明の抗−VEGFR−I抗体は、配列番号2の軽鎖相補性決定領域−2(CDR2)及び配列番号3の軽鎖相補性領域−3(CDR3)を含む。あるいは、そして好ましくは、本発明の抗−VEGFR−I抗体は、以下の配列を有する軽鎖相補性領域−1(CDR1)を含む:
RASQSX1SSSYLA{ここで、X1はV又はGである(配列番号1又は4)}。あるいは、そして好ましくは、本発明の抗−VEGFR−I抗体は、以下の配列を有する重鎖CDR1を含む:
GFX2FSSYGMH{ここで、X2はT又はAである(配列番号5又は11)}。あるいは、そして好ましくは、本発明の抗−VEGFR−I抗体は、以下の配列を有する重鎖CDR2を含む:
VIWX3DGSNKYYADSVX4G{ここで、X3はY又はFであり、そしてX4はK又はRである(配列番号6,9又は12)}。あるいは、そして好ましくは、本発明の抗−VEGFR−I抗体は、以下の配列を有する重鎖CDR3を含む:
DHX5GSGX6HX7YX8YYGX9DV{ここで、X5はF又はYであり;X6はA又はVであり;X7はY,S又はHであり;X8はY又はFであり;そしてX9はM又はLである(配列番号7,8,10,13)}。
好ましい抗−VEGFR−I抗体(クローン「6F9」、「13G12」、「15F11」、及び「18F1」(又は「MC−18F1」)と命名した)のCDRのアミノ酸配列を以下の表1中に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
他の態様において、本発明の抗−VEGFR−I抗体は、配列番号14,15又は16の軽鎖可変領域(VL)、及び/又は配列番号17,18,19又は20の重鎖可変領域(VH)を有する。本発明の好ましい抗−VEGFR−I抗体の軽鎖及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を以下の表2中に示す。
【0016】
【表2】

【0017】
好ましい態様においては、本発明の抗−VEGFR−I抗体はヒト抗体である。
本発明の抗−VEGFR−I抗体は、VEGFR−Iに特異的に結合する完全抗体及び抗体断片を含む。本発明に係る抗体のタイプの非制限的な例は、天然抗体;1本鎖抗体;多価1本鎖抗体、例えば、ダイアボディー、及びトリアボディー;1価断片、例えばFab(Fragment, antigen binding)、2価断片、例えば(FaV)2;Fv(fragment viable)断片又はそれらの誘導体、例えば、1本鎖Fv(scFv)断片;及び単ドメイン抗体であって、VEGFR−Iに特異的に結合するものを含む。
【0018】
天然抗体は、2つの同一の重鎖と2つの同一の軽鎖を有し、各軽鎖は鎖間ジスルフィド結合により重鎖に共有結合され、そして複数のジスルフィド結合が、上記2つの重鎖を互いにさらに連結する。個々の鎖は、類似のサイズ(110〜125アミノ酸)及び構造を有するが、異なる機能を有するドメインに折り重なることができる。軽鎖は、1つのVLと1つの定常ドメイン(CL)を含みうる。重鎖も、1つのVH、及び/又は抗体のクラス又はアイソタイプに依存して、3つ又は4つの定常ドメイン(CH1,CH2,CH3、及びCH4)を含みうる。ヒトにおいては、上記アイソタイプは、IgA,IgD,IgE,IgG、及びIgMであり、IgAとIgGは、サブクラス又はサブタイプ(IgA1-2とIgG1-4)にさらに分けられる。
【0019】
1本鎖抗体は、それらが由来するところの完全抗体の定常ドメインのいくつか又は全てを欠く。1本鎖抗体を製造するために使用されるペプチド・リンカーは、VLドメインとVHドメインの正しい3次元の折りたたみが保証されるように選択されたフレキシブル・ペプチドであることができる。一般に、VL又はVH配列のカルボキシ末端は、このようなペプチド・リンカーにより相補性VH又はVL配列のアミノ酸末端に共有結合されうる。上記リンカーは、一般に、10〜50アミノ酸残基、好ましくは、10〜30アミノ酸残基、より好ましくは12〜30アミノ酸残基、そして最も好ましくは15〜25アミノ酸残基である。このようなリンカー・ペプチドの例は、(Gly−Gly−Gly−Gly−Ser)3(配列番号28)を含む。
【0020】
各1本鎖が第1のペプチド・リンカーにより共有結合された1つのVHと1つのVLドメインを有するところの多数1本鎖抗体は、少なくとも1以上のペプチド・リンカーにより共有結合されて多価1本鎖抗体が形成され、これは1特異的又は多特異的であることができる。多価1本鎖抗体の各鎖は、可変軽鎖断片と可変重鎖断片を含み、そしてペプチド・リンカーにより少なくとも1つの他の鎖に連結される。
【0021】
2つの1本鎖抗体は、併合されて、3価ダイマーとしても知られるダイアボディーを形成しうる。ダイアボディーは、2つの鎖と2つの結合部位を有し、そして1特異的又は2特異的であることができる。ダイアボディーの各鎖は、VLドメインに接続されたVHドメインを含む。これらのドメインは、同一鎖上のドメイン間の対合を防止し、それにより、異なる鎖上の相補性ドメインの間での対合を駆動して、2つの抗原結合部位を再創製するために十分に短いリンカーと接続される。
【0022】
3つの1本鎖抗体は、併合されて、3価トリマーとしても知られるトリアボディーを形成しうる。トリアボディーは、VL又はVHドメインのカルボキシ末端に、直接に、すなわち、リンカー配列によらずに、VL又はVHドメインのアミノ酸末端を用いて構築される。トリアボディーは、環状の頭〜尾のやり方で配置されたポリペプチドをもつ3つのFv頭を有する。トリアボディーの可能なコンホメーションは、互いに120°の角度で平面内に位置する3つの結合部位を含む平面である。トリアボディーは1特異的、2特異的又は3特異的であることができる。
【0023】
Fab断片は、VLLVHCH1ドメインから成る抗体の断片をいう。パパイン消化により生成されたものは、「Fab」といわれ、そして重鎖ヒンジ領域を保持していない。ペプシン消化により生成されたものは、「(Fab′)2」(この場合、鎖間ジスルフィド結合は無傷である)か、又は「Fab′」(この場合、上記ジスルフィド結合は保持されていない)といわれる。2価(Fab′)2断片は、1価Fab断片のアビジチーよりも高い抗原に対するアビジチーを有する。
【0024】
Fv断片は、VL及びVHドメインから成る抗体の部分であり、そして抗原結合部位を構成する。scFvは、1のポリペプチド鎖上にVLドメインとVHドメインを含む抗体断片であり、1のドメインのN末端と他のドメインのC末端は、フレキシブル・リンカーにより結合されて、上記2つの断片が会合して機能的抗原結合部位を形成することを可能にする(例えば、米国特許第4,946,778号(Ladner et al.)、WO88/09344(Huston et al.)、両者を本明細書中に援用する)。WO92/01047(McCafferty et al.)(本明細書中に援用する)は、可溶性組換え遺伝子ディスプレイ・パッケージ、例えばバクテリオファージの表面上へのscFv断片のディスプレイを記載する。
【0025】
単一ドメイン抗体は、抗原に効率的に結合することができる単一の可変ドメインを有する。結合アフィニティー及び特異性が主に1の又は他の可変ドメインに付与される抗体の例は、本分野において知られている。例えば、Jeffrey, P.D. et al., Proc. Natl. Acad. ScL USA 90 : 10310-4 (1993)を参照のこと。この文献は、本明細書中に援用され、そして、主に抗体重鎖によりジゴキシンに結合する抗−ジゴキシン抗体を開示する。VH及びVLドメインを含む抗体から単一ドメイン抗体を製造するために、CDR領域外の一定のアミノ酸置換が、結合、発現又は溶解度を高めるために望ましい。例えば、VH−VL境界内に埋没してしまうであろうアミノ酸残基を修飾することが望ましい。
【0026】
本発明に係る抗−VEGFR−I抗体の各ドメインは、完全な抗体の重鎖又は軽鎖可変ドメインであることができ、又はそれは、天然ドメイン、又は例えば、WO93/11236(Griffiths et al.)中に記載されるような技術を用いてインビトロにおいて、構築された合成ドメインの、機能的等価物又は突然変異体又は誘導体であることができる。例えば、少なくとも1つのアミノ酸を欠いている抗体可変ドメインに相当するドメインを一緒に結合することが可能である。重要な特徴は、相補性ドメインと会合して抗原結合部位を形成する各ドメインの能力である。したがって、用語「可変重/軽鎖断片」は、VEGFR−I結合特異性に対する実体的効果を有さない変異体を除外するものと解釈されるべきではない。
【0027】
本明細書中に使用するとき、「抗−VEGFR−I抗体」は、VEGFR−Iについての特異性を保持する本発明の抗−VEGFR−I抗体の修飾を含む。このような修飾は、非制限的に、エフェクター分子、例えば、化学療法剤(例えば、シスプラチン、タキソール、ドクソルビシン)又は細胞毒(例えば、タンパク質、又は非タンパク質性の有機化学療法剤)への結合を含む。修飾はさらに、非制限的に、検出可能なレポーター分子への結合を含む。抗体の半減期を延長する修飾(例えば、ペグ化)も含まれる。
【0028】
タンパク質及び非タンパク質性剤は、本分野において知られた方法により上記抗体に結合されうる。結合(conjugation)方法は、直接連結、共有結合リンカーを介しての連結、及び特異的結合対メンバー(例えば、アビジン−ビオチン)を含む。このような方法は、例えば、ドキソルビシンの結合に関して、本明細書中に援用するGreenfield et al., Cancer Research 50, 6600-6607 (1990)により記載されたもの、並びに白金化合物の結合に関して、両者とも本明細書中に援用するArnon et al., Adv. Exp. Med. Biol. 303, 79-90 (1991)及びKiseleva et al., Mol. Biol. (USSR) 25, 508-514 (1991)により記載されたものを含む。
【0029】
本発明に係る抗−VEGFR−I抗体は、その結合特性が、直接突然変異、アフィニティー成熟、ファージ・ディスプレイ、又は鎖シャッフルの方法により改良されているところの抗体をも含む。アフィニティー及び特異性は、本発明に係る抗体のCDRsの内のいずれかを突然変異させることにより、及び所望の特性を有する抗原結合部位についてスクリーニングすることにより、修飾又は改善されうる(例えば、本明細書中に援用するYang et al., J. Mol. Biol., 254 : 392-403 (1995)を参照のこと)。CDRsは、当業者に知られたさまざまな方法で突然変異されうる。例えば、1の方法は、同一抗原結合部位をもつ集団において、20アミノ酸の全てが特別の位置に存在するように、個々の残基又は残基の組合せを無作為化することである。あるいは、突然変異は、エラー・プローン(error prone)PCR法により一定範囲のCDR残基にわたり誘導される(例えば、本明細書中に援用するHawkins et al., J. Mol. Biol., 226 : 889-896 (1992)を参照のこと)。例えば、重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子を含有するファージ・ディスプレイ・ベクターがE.coliの突然変異誘発遺伝子株において増幅されうる(例えば、本明細書中に援用するLow et al., J. Mol. Biol., 250 : 359-368 (1996)を参照のこと)。
【0030】
抗−VEGFR−I抗体は、本発明に係る抗体の可変又は超可変領域のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列をもつポリペプチドを含む機能的等価物をも含む。「実質的に同じ」アミノ酸配列は、2つの配列が最適にアラインメントされ、そして当該2つの配列の間のアミノ酸の正しい対合を測定するために比較されるとき、他のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、そしてより好ましくは少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。「実質的に同じ」アミノ酸配列は、Pearson and Lipman, Pro. Natl. Acad. Sci. USA 85, 2444-8 (1988)に従うFASTAサーチ法により測定されるとき、他のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、そしてより好ましくは少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列をも含む。
【0031】
先に述べたように、本発明に係る抗−VEGFR−I抗体は、VEGFR−Iに特異的に結合する。このような抗体は、1特異的又は、1の抗原結合性部位がVEGFR−Iに特異的である限り2特異的であることができる。VEGFR−Iについての抗体の抗体特異性(抗原の特別なエピトープについての抗体の選択的認識をいう)は、アフィニティー及び/又はアビジチーに基づいて決定されうる。抗原と抗体の解離平衡定数(kd)により表されるアフィニティーは、抗原性決定基(エピトープ)と抗体結合部位の間の結合強さを計測する。アビジチーは、抗体とその抗原との間の結合の強さの尺度である。抗体は、典型的には、10-5〜10-11リッター/モルのkdで結合する。10-4リッター/モル未満のkdは、一般に、非特異的結合を示すと考えられている。kdの値が小さければ小さい程、抗原性決定基と抗体結合部位の間の結合の強さはより大きくなる。
【0032】
本発明に係る抗−VEGFR−I抗体は、VEGFR−Iの細胞外領域に特異的に結合し、そして好ましくは、VEGFR−Iのリガンドがその受容体に結合することを妨げることによりVEGFR−Iの活性化を中和する。このような好ましい態様においては、抗体は、(VEGF(A)、VEGF−B、及びPIGFを含む)VEGFR−Iの天然リガンドと少なくとも同程度に強くVEGFR−Iに結合する。
【0033】
VEGFR−Iの活性化の中和は、シグナル伝達に関連する活性の内の1以上を低減し、阻害し、不活性化し、そして/又は破壊することを含む。このような活性は、受容体の二量体化、VEGFR−Iの自己リン酸化、VEGFR−Iの内部細胞質チロシン・キナーゼ・ドメインの活性化、DNA合成(遺伝子活性化)及び細胞分裂サイクルの進行又は分裂の調節に関連する多シグナル伝達及びトランス活性化経路の開始を含む。VEGFR−I中和の1の尺度は、チロシン・キナーゼ活性VEGFR−Iの阻害である。チロシン・キナーゼの阻害は、周知の方法、例えば、組換えキナーゼ受容体の自己リン酸化レベル、及び/又は天然又は合成基質のリン酸化を計測するリン酸化アッセイを用いて測定されうる。リン酸化は、例えば、ELISAアッセイ又はウェスタン・ブロットにおけるホスホチロシンに特異的な抗体を用いて検出されうる。チロシン・キナーゼ活性に関するいくつかのアッセイは、両者とも本明細書中に援用するPanek et al., J. Pharmacol. Exp. Them., 283 : 1433-44 (1997)及びBatley et al., Life ScL, 62 : 143-50 (1988)中に記載されている。
【0034】
さらに、タンパク質発現の検出のための方法が、抗体がVEGFR−Iの活性化を中和するか否かを決定するために使用されることができ、ここでは、計測されるタンパク質がVEGFR−Iチロシン・キナーゼ活性により調節される。これらの方法は、タンパク質発現の検出のための免疫組織化学(IHC)、遺伝子増幅の検出のための蛍光インサイチュー・ハイブリダイゼーション(FISH)、競争放射リガンド結合アッセイ、固体マトリックス・ブロッティング技術、例えば、ノーザン及びサザン・ブロット、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)及びELISAを含む。例えば、Grandis et al., Cancer, 78 : 1284-92 (1996); Shimizu et al., Japan J. Cancer Res. 85 : 567-71 (1994); Sauter et al., Am. J. Path., 148 : 1047-53 (1996); Collins, Glia, 15 : 289-96 (1995); Radinsky et al., Clin. Cancer Res., 1 : 19-31 (1995); Petrides et al., Cancer Res., 50 : 3934-39 (1990); Hoffmann et al., Anticancer Res., 17 : 4419-26 (1997); Wikstrand et l., Cancer Res., 55 : 3140-48 (1995)(これらの全てを本明細書中に援用する)を参照のこと。
【0035】
インビボアッセイも、VEGFR−I中和を検出するために使用されうる。例えば、受容体チロシン・キナーゼ阻害は、阻害剤の存在下又は不在下で、受容体リガンドにより刺激された細胞系を用いた細胞分裂誘発アッセイにより観察されうる。例えば、VEGF(A)又はVEGF−Bで刺激されたHUVEC細胞(ATCC)が、VEGFR−I阻害をアッセイするために使用されうる。他の方法は、例えば、マウス内に注射されたヒト腫瘍細胞を用いた、VEGF−発現腫瘍細胞の増殖の阻害についての試験を含む。例えば、本明細書中に援用する米国特許第6,365,157(Rockwell et al.)を参照のこと。
【0036】
もちろん、本発明は、VEGFR−I中和のいずれの特定のメカニズムにより限定されるものではない。例えば、本発明に係る抗−VEGFR−I抗体は、VEGFR−Iに外部から結合し、VEGFR−Iへのリガンドの結合及び受容体会合チロシン・キナーゼを介して仲介されるその後のシグナル伝達をブロックし、そしてシグナル伝達カスケードにおけるVEGFR−I及びその他の下流タンパク質のリン酸化を防止することができる。受容体−抗体複合体は、インターナライズされ、そして分解されて、受容体細胞表面ダウン・レギュレーションをもたらされることもできる。マトリックス・メタロプロテイナーゼ(その機能は、腫瘍細胞侵入、及び転移である)も、本発明に係る抗−VEGFR−I抗体によりダウン・レギュレートされることができる。
【0037】
ヒト抗VEGFR−I抗体は、天然抗体、又は、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子から構築されるFab又はscFvファージ・ディスプレイ・ライブラリーから得られることができ、そして本発明に係る抗−VEGFR−I抗体のCDR配列は、このような抗−VEGFR−I抗体内に挿入されうる。
【0038】
ヒト抗−VEGFR−I抗体は、当業者に周知の方法により製造されうる。このような方法は、Kohler and Milstein, Nature, 256 : 495-497 (1975) 及びCampbell, Monoclonal Antibody Technology, The Production and Characterization of Rodent and Human Hybridomas, Burdon et al., Eds., Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Volume 13, Elsevier Science Publishers, Amsterdam (1985)(これらの全てを本明細書中に援用する)により記載されるトランスジェニック・マウスを用いたハイブリドーマ法;並びにHuse et al., Science, 246, 1275-1281 (1989)(これを本明細書中に援用する)により記載される組換えDNA法を含む。
【0039】
抗体断片は、完全抗体を解裂させることにより、又は当該断片をコードするDNAを発現させることにより、製造されうる。抗体の断片は、Lamoyi et al., J. Immunol. Methods, 56 : 235-243 (1983)及びParham, J. Immunol. 131 : 2895-2902 (1983)(両者を本明細書中に援用する)により記載される方法により調製されうる。このような断片は、1又は両者のFab断片又はF(ab′)2断片を含みうる。このような断片は、1本鎖断片可変領域抗体、すなわち、scFv、ダイアボディー、又は他の抗体断片をも含みうる。このような抗体の製造方法は、PCT出願WO93/21319、ヨーロッパ特許出願第239,400号、PCT出願WO89/09622、ヨーロッパ特許出願第338,745号、及びヨーロッパ特許出願EP332,424号(これらの全てを本明細書中に援用する)中に開示されている。
【0040】
他の態様においては、本発明は、本発明に係る抗−VEGFR−I抗体をコードするポリヌクレオチドを提供する。このようなポリヌクレオチドは、配列番号2の軽鎖CDR2、配列番号3の軽鎖CDR3、及び、好ましくは、表1中に列記された他のCDRsの内の1以上をコードする。表3は、好ましい抗−VEGFR−I抗体の核酸配列を示す。
【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
ヒト抗体をコードするDNAは、対応のヒト抗体領域から実質的に又は排他的に得られた、CDRs以外の、ヒト定常領域及び可変領域をコードするDNAと、ヒトから得られたCDRsをコードするDNA(軽鎖可変ドメインCDRsに関して配列番号1〜4、及び重鎖可変ドメインCDRsに関して配列番号5〜13)とを、組換えることにより調製されうる。
【0044】
本発明に係る抗−VEGFR−I抗体をコードするポリヌクレオチドは、本発明に係るポリヌクレオチドの核酸配列と実質的に同じ核酸配列を有するポリヌクレオチドを含む。「実質的に同じ」核酸配列とは、本明細書中、2つの配列が(適当なヌクレオチド挿入又は欠失を伴って)最適にアラインメントされ、そして当該2つの配列の間のヌクレオチドの正しい対合を測定するために比較されるとき、他の核酸配列に対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、そしてより好ましくは少なくとも90%の同一性を有する配列として定義される。
【0045】
抗体の断片をコードするDNAの好適な源は、完全長抗体を発現するいずれかの細胞、例えば、ハイブリドーマ、及び脾臓細胞を含む。断片は、抗体等価物としてそれ自体使用されることができ、又は上記のように、等価物に組換えられることができる。この節に記載されるDNA欠失及び組換えは、知られた方法、例えば、「抗体の機能的等価物」と題する節において先に列記した公表された特許出願中に記載されたもの、及び/又は以下に記載するような、他の標準的な組換えDNA技術により実施されうる。DNAの他の源は、本分野において知られているような、ファージ・ディスプレイ・ライブラリーから製造された1本鎖抗体である。
【0046】
さらに、本発明は、発現配列、プロモーター、及びエンハンサー配列に作用可能な状態で連結された先に記載されたポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを提供する。非制限的に酵母及び哺乳動物細胞培養系を含む、原核、例えば、細菌、及び真核系において抗体ポリペプチドの効率的な合成のためのさまざまな発現ベクターが、開発されてきた。本発明のベクターは、染色体の、非染色体の、そして合成DNA配列のセグメントを含むことができる。
【0047】
好適な発現ベクターのいずれをも使用しうる。例えば、原核クローニング・ベクターは、E.coliからのプラスミド、例えば、colEl,pCRl,pBT322,pMB9,pUC,pKSM、及びRP4を含む。原核ベクターは、ファージDNAの誘導体、例えば、Ml3、及び他の繊維状1本鎖DNAファージを含む。酵母において有用なベクターの例は、2μプラスミドである。哺乳動物細胞内での発現に好適なベクターは、SV−40、アデノウィルス、レトロウィルス由来DNA配列の周知の誘導体、及び先に記載されるような、機能的哺乳動物ベクターと、機能的プラスミド及びファージDNAとの組換えから得られるシャトル・ベクターを含む。
【0048】
追加の真核発現ベクターは本分野において知られている{例えば、PJ. Southern & P.Berg, J. Mol. Appl. Genet, 1 : 327-341 (1982); Soubramani et al., Mol. Cell. Biol, 1 : 854-864 (1981); Kaufinann & Sharp,“Amplification And Expression of Sequences Cotransfected with a Modular Dihydrofolate Reductase Complementary DNA Gene,”J. Mol. Biol, 159 : 601-621 (1982); Kaufhiann & Sharp, Mol. Cell. Biol, 159 : 601-664 (1982); Scahill et al.,“Expression And Characterization Of The Product OfA Human Immune Interferon DNA Gene In Chinese Hamster Ovary Cells,”Proc. Nat'l Acad. ScL USA, 80 : 4654-4659 (1983); Urlaub & Chasin, Proc. Nat'l Acad. ScL USA, 77 : 4216-4220, (1980)を参照のこと(これらの全てを本明細書中に援用する)}。
【0049】
本発明において有用な発現ベクターは、発現されるべきDNA配列又は断片に作用可能な状態で連結された少なくとも1つの発現制御配列を含む。制御配列は、クローン化されたDNA配列の発現を制御し、かつ、調節するために、ベクター内に挿入される。有用な発現制御配列の例は、lac系、trp系、tac系、trc系、ファージ・ラムダの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコート・タンパク質の制御領域、酵母の解糖プロモーター、例えば、3−ホスホグリセレート・キナーゼのプロモーター、酵母酸ホスファターゼのプロモーター、例えば、Pho5、酵母アルファ−接合因子のプロモーター、及びポリオーマ、アデノウィルス、レトロウィルス、及びシミアン・ウィルス由来のプロモーター、例えば、初期及び後期プロモーター又はSV40、並びに原核又は真核細胞及びそれらのウィルス又はそれらの組換え体の遺伝子の発現を制御することが知られている他の配列である。
【0050】
本発明は、先に記載の発現ベクターを含む組換え宿主細胞をも提供する。本発明の抗−VEGFR−I抗体は、ハイブリドーマ以外の細胞系内で発現されうる。本発明に係るポリペプチドをコードする配列を含む核酸は、好適な哺乳動物宿主細胞の形質転換のために有用であることができる。
【0051】
特に好ましい細胞系は、高レベルの発現、着目タンパク質の構成的発現、及び宿主タンパク質からの最小汚染に基づいて選択される。発現のための宿主として利用されうる哺乳動物細胞系は、本分野において周知であり、そして非制限的に、Chinese Hamster Ovary (CHO) 細胞、Baby Hamster Kidney (BHK)細胞、そして他の多くのものを含む、不死化細胞系を含む。好適な追加の真核細胞は、酵母及び他の真菌を含む。有用な原核宿主は、例えば、E.coli、例えば、E.coli SG−936、E.coli HB101,E.coli W3110,E.coli,X1776,E.coli X2282,E.coli DH1、及びMRC1、シュードモナス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、例えば、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、及びストレプトミセス(Streptomyces)を含む。
【0052】
本発明の組換え宿主細胞は、抗体の発現を許容する条件下で細胞を培養し、そして宿主細胞又は宿主細胞の取り囲む培地から抗体を精製することにより、抗体を製造するために使用されうる。組換え宿主細胞における分泌のための発現された抗体のターゲッティングは、着目の抗体コーディング遺伝子の5′末端に、シグナル又は分泌リーダー・ペプチド−コーディング配列を挿入することにより容易化される{Shokri et al., (2003) Appl. Microbiol Biotechnol. 60 (6) : 654-664, Nielsen et al., Prot. Eng., 10 : 1-6 (1997), von Heinje et al., Nucl. Acids Res., 14 : 4683-4690 (1986)(これらの全てを本明細書中に援用する)を参照のこと}。上記分泌リーダー・ペプチド要素は、原核又は真核配列のいずれかから得られうる。したがって、好適には、宿主細胞の細胞質ゾルから外へのポリペプチドの移動、及び培地中への分泌を指令するために、当該ポリペプチドのN末端に連結されたアミノ酸である分泌リーダー・ペプチドが使用される。
【0053】
本発明に係る抗−VEGFR−I抗体は、追加のアミノ酸残基に融合されうる。このようなアミノ酸残基は、例えば、単離を容易にするためのペプチド・タグであることができる。特異的な臓器又は組織に対する抗体の帰巣のための他のアミノ酸残基も、企図される。
【0054】
他の態様においては、本発明は、治療の必要な哺乳動物に、本発明に係る抗−VEGFR−I抗体の治療的に有効な量を投与することにより医学的症状を治療する方法を提供する。治療的に有効とは、所望の治療効果を作り出す、例えば、チロシン・キナーゼ活性を阻害するために有効な量を意味する。
【0055】
好ましい態様においては、本発明は、治療の必要な哺乳動物に本発明に係る抗−VEGFR−I抗体の治療有効量を投与することにより腫瘍増殖を低減し又は血管新生を阻害する方法を提供する。特定のメカニズムに拘束されることを意図しないが、本発明に係る方法による治療されうる症状は、例えば、腫瘍増殖又は病理学的血管新生がVEGFR傍分泌及び/又は自己分泌ループを介して刺激されるようなものを含む。
【0056】
腫瘍細胞の低減に関しては、このような腫瘍は、原発性腫瘍及び転移性腫瘍、並びに難治性腫瘍を含む。難治性腫瘍は、化学療法剤単独、抗体単独、放射線単独又はそれらの組合せによる処置の如き他の処置形態に応答しないか又はそれに対し抵抗性である腫瘍を含む。難治性腫瘍は、上記剤による処置により抑制されるようであるが、処置が中断した後、5年以内、しばしば10年以内又はそれより遅れて再発する腫瘍をも包含する。
【0057】
本発明に係る抗−VEGFR−I抗体は、VEGFR−Iを発現する腫瘍の治療に有用である。このような腫瘍は、それらの環境中に存在するVEGFに対して特徴的に感受性であり、そして自己分泌刺激ループにおいてVEGFをさらに生産し、そしてVEGFにより刺激されうる。それゆえ、上記方法は、血管形成されていないか又は未だ実質的に血管形成されていない固形又は非固形腫瘍の治療に有効である。
【0058】
治療されうる固形腫瘍の例は、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、神経膠腫、及びリンパ腫を含む。このような腫瘍のいくつかの例は、類表皮腫瘍、扁平上皮腫瘍、例えば、頭部及び首部腫瘍、結腸直腸腫瘍、前立腺腫瘍、乳腫瘍、肺腫瘍(小細胞及び非小細胞肺腫瘍を含む)、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、及び肝臓腫瘍を含む。他の例は、Kaposi肉腫、CNS新形成、神経芽腫、毛細血管芽腫、髄膜腫、及び脳転移、メラノーマ、胃腸及び腎臓癌及び肉腫、横紋筋肉腫、神経膠芽腫、好ましくは神経膠芽腫多形、及び平滑筋肉腫を含む。本発明に係る抗−VEGFR−I抗体がそれにとって有効であるところの血管形成される皮膚癌の例は、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、及び悪性ケラチノサイトの増殖を抑制することにより治療されうる皮膚癌、例えば、ヒト悪性ケラチノサイトを含む。
【0059】
非固形腫瘍の例は、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、赤血球性白血病又は単球性白血病を含む。リンパ腫のいくつかの例は、Hodgkin’s及び非Hodgkin’sリンパ腫を含む。
【0060】
血管新生の抑制に関して、本発明に係る抗−VEGFR−I抗体は、血管形成された腫瘍又は新形成、又は過剰な血管新生を特徴とする血管新生疾患をもつ患者を治療するために有効である。このような腫瘍及び新形成は、例えば、悪性腫瘍及び新形成、例えば、芽腫、癌腫又は肉腫、高く血管性の腫瘍及び新形成を含む。本発明に係る方法により処置されうる癌は、例えば、脳、尿生殖器管、リンパ系、胃、腎臓、結腸、喉頭、並びに肺及び骨の癌を含む。非制限的な例は、さらに、類表皮腫瘍、扁平上皮腫瘍、例えば、頭部及び首部の腫瘍、結腸直腸腫瘍、前立腺腫瘍、乳腫瘍、肺腫瘍(肺腺癌、及び小細胞及び非小細胞肺腫瘍を含む)、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、及び肝臓腫瘍を含む。上記方法は、血管形成された皮膚癌、例えば、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、及び悪性ケラチノサイト、例えばヒト悪性ケラチノサイトの増殖を抑制することにより治療されうる皮膚癌の治療にも有用である。治療されうる他の癌は、Kaposi’s肉腫、CNS新形成(神経芽腫、毛細血管芽腫、骨髄腫及び脳転移)、メラノーマ、胃腸及び腎臓癌腫及び肉腫、横紋筋肉腫、神経膠芽腫、例えば、神経膠芽腫多形、及び平滑筋肉腫を含む。
【0061】
例えば、炎症及び/又は血管形成を含む過剰な血管新生を特徴とする病理学的血管新生症状の非制限的な例は、アテローム性動脈硬化症、リウマチ様関節炎(RA)、新生血管緑内障、増殖性網膜症、例えば、増殖性糖尿病性網膜症、黄斑変性、血管腫、血管繊維腫、及び乾癬を含む。非新形成性血管新生疾患の他の非制限的な例は、早熟の網膜症(水晶体後繊維増殖症)、角膜移植拒絶、インスリン依存性真性糖尿病、多発性硬化症、重症筋無力症、クローン病、自己免疫性腎炎、原発性胆汁閉塞性肝硬変、乾癬、急性膵臓炎、同種移植拒絶、アレルギー性炎症、接触皮膚炎及び遅延過敏反応、炎症性腸疾患、敗血性ショック、骨粗しょう症、骨関節炎、ニューロン炎症により誘導される認知欠陥、ウスラーウェーバー症候群、再狭窄、及び真菌、寄生虫、及びウィルス感染、例えば、サイトメガロウィルス感染である。
【0062】
本発明に係る抗−VEGFR−I抗体により治療されうる医学的症状の確定は、十分に当業者の能力及び知識の範囲内にある。例えば、臨床的に有意な新形成又は血管形成疾患を患っているか又は臨床的に有意な兆候に発展するリスクのあるヒト患者は、本発明に係るVEGF受容体抗体の投与に好適である。臨床医は、例えば、臨床試験、身体検査、及び医学的/家族の病歴により、個体が上記治療の候補であるか否かを、容易に決定しうる。
【0063】
本発明に係る抗−VEGFR−I抗体は、腫瘍又は病理学的症状の進行を妨害し、抑制し、又は低減させるために十分な量で、腫瘍又は血管形成関連病理学的症状を患う患者に、治療的処置のために、投与されうる。進行は、例えば、腫瘍又は病理学的症状の成長、浸潤、転移、及び/又は再発を含む。この使用のために有効な量は、当該疾患の重度、及び患者自身の免疫系の一般状態に依存するであろう。投薬スケジュールも、患者の病的状態及び状況に伴って変化するであろうし、そして典型的には、1回のボーラス投与又は連続輸注から、1日当り多数回投与まで(例えば、4〜6時間毎)に亘るであろうし、又は処置内科医及び患者の状態により指示されるであろう。しかしながら、本発明は特定の投与量に限定されることはないことに留意すべきである。
【0064】
他の態様においては、1以上の他の剤とともに、本発明に係る抗−VEGFR−I抗体を投与することによる医学的症状の治療方法を提供する。例えば、本発明の1の態様は、抗新形成又は抗血管形成剤とともに、本発明に係る抗−VEGFR−I抗体を投与することにより、医学的症状を治療する方法を提供する。抗−VEGFR−I抗体は、抗新形成剤又は抗血管形成剤の内の1以上に化学的又は生合成的に連結されうる。
【0065】
好適な抗新形成剤のいずれか、例えば、化学療法剤又は放射線が使用されうる。化学療法剤の例は、非制限的に、シスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、パクリタキセル、イリノテカン(CPT−II)、トポテカム又はそれらの組合せを含む。抗新形成剤が放射線であるとき、放射線源は、処置される患者に対して外部(外部ビーム放射線治療−EBRT)又は内部(近接照射療法−BT)のいずれかであることができる。
【0066】
さらに、本発明に係る抗−VEGFR−I抗体は、腫瘍増殖又は血管形成に関連する他の受容体を中和する抗体とともに投与されうる。このような受容体の1例は、VEGFR−2/KDRである。1の態様においては、本発明に係る抗−VEGFR−I抗体は、VEGFR−2に特異的に結合する受容体アンタゴニストとともに使用される。特に好ましいのは、VEGFR−2の細胞外ドメインに結合し、そしてそのリガンド、例えばVEGF(A),VEGF−C,VEGF−D、又はVEGF−Eの内のいずれか1つにより結合をブロックする抗原結合性タンパク質である。
【0067】
このような受容体の他の例は、EGFRである。本発明の1の態様においては、抗−VEGFR−I抗体は、EGFRアンタゴニストとともに使用される。EGFRアンタゴニストは、EGFR又はEGFRのリガンドに結合し、そしてEGFRがそのリガンドに結合することを阻害する抗体であることができる。EGFRのリガンドは、例えば、EGF,TGF−ceアンフィレギュリン、ヘパリン結合性EGF(HB−EGF)、及びベータレキュルリン(betarecullulin)を含む。EGFとTGF−αは、EGFR仲介刺激をもたらす主要な内因性リガンドであると考えられている。但し、TGF−αは、血管形成の促進においてより強力であることが示されている。EGFRアンタゴニストはEGFRの細胞外部分に外部から結合することができ、これは、リガンドの結合を阻害することもしないこともでき、又はチロシン・キナーゼ・ドメインに内部から結合することができる。EGFRに結合するEGFRアンタゴニストの例は、非制限的に、生物学的分子、例えば、EGFRに特異的な抗体(及びその機能的等価物)、及び小分子、例えば、EGFRの細胞質ドメインに直接作用する合成キナーゼ阻害剤を含む。
【0068】
腫瘍形成に関連する成長因子受容体の他の例は、血小板由来成長因子(PDGFR)、インスリン様成長因子(IGFR)、神経成長因子(NGFR)、及び線維芽細胞成長因子(FGFR)である。
【0069】
さらに他の態様においては、本発明は、1以上の好適なアジュバント、例えば、サイトカイン(例えば、IL−10、及びIL−13)又は他の免疫刺激剤とともに本発明に係る抗−VEGFR−I抗体を投与することにより医学的症状を治療する方法を提供する。例えば、Larrivee et al.,前掲を参照のこと。
【0070】
併用療法においては、抗−VEGFR−I抗体は、他の剤並びにそのいずれかの組合せによる療法を開始する前、間、又は後に、すなわち、抗新形成剤療法の前及び間、前及び後、間及び後、又は前、間及び後に、投与されうる。例えば、本発明に係る抗−VEGFR−I抗体は、放射線療法を開始する、1〜30日前、好ましくは3〜20日前、より好ましくは5〜12日前に投与されうる。しかしながら、本発明は、特定の投与スケジュールのいずれにも限定されない。投与される他の剤の投与量は、例えば、剤のタイプ、処置される医学的症状のタイプ及び重度、及び剤の投与経路を含む多数の要因に依存する。しかしながら、本発明は、特定の投与量のいずれにも限定されない。
【0071】
本発明に係る抗−VEGFR−I抗体を投与するために、そして場合により、抗新形成剤及び/又は他の受容体のアンタゴニストを同時投与するために好適な方法又は経路のいずれをも使用しうる。投与経路は、例えば、経口、静脈内、腹膜内、皮下、又は筋肉内投与を含む。しかしながら、本発明は、特定の投与方法又は経路のいずれにも限定されないことを強調しておく。
【0072】
本発明に係る抗−VEGFR−I抗体は、受容体に特異的に結合し、そしてリガンド−毒素インターナライゼーションに従って毒性かつ致死性の荷重をデリバリーする、コンジュゲートとして投与されうることに注目のこと。
【0073】
本発明に係る抗−VEGFR−I抗体は、予防又は治療の目的をもって哺乳動物において使用されるとき、医薬として許容される担体をさらに含む組成物の形態で投与されるであろうことが理解される。好適な医薬として許容される担体は、例えば、水、生理食塩水、リン酸塩バッファー生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、並びにそれらの組合せの内の1以上を含む。医薬として許容される担体は、微量の、補助物質、例えば、水和又は乳化剤、保存料又はバッファーであって結合性タンパク質の保存寿命又は有効性を強化するものをさらに含むことができる。注射用組成物は、本分野において周知であるように、哺乳動物への投与後に活性成分の速い、持続性の又は遅延性の放出を提供するために配合されうる。
【0074】
本発明に係るヒト抗体は、ヒトへの投与のために特に有用であるけれども、それらは、他の哺乳動物にも投与されうる。用語「哺乳動物」とは、本明細書中に使用するとき、非制限的に、ヒト、実験動物、家庭内ペット、及び農場動物を含むと意図される。
【0075】
本発明は、本発明に係る抗−VEGFR−I抗体の治療有効量を含む腫瘍増殖及び/又は血管形成阻害用キットをも含む。キットは、例えば、腫瘍形成又は血管形成に関連する他の成長因子受容体(例えば、先に記載した、VEGFR−2/FKDR,EGFR,PDGFR,IGFR,NGFR,FGFR、等)の好適なアンタゴニストのいずれかをさらに含むことができる。あるいは又はさらに、本発明に係るキットは、抗新形成剤をさらに含むことができる。本発明において好適な新形成剤の例は、本明細書中に既に記載した。本発明に係るキットは、その例も先に記載したアジュバントをさらに含むことができる。
【0076】
他の態様において、本発明は、インビボ又はインビトロにおいて本発明に係る抗−VEGFR−I抗体を用いた検査又は診断方法を提供する。このような方法においては、抗−VEGFR−I抗体は、ターゲット又はレポーター成分に連結されることができる。
【実施例】
【0077】
実施例
以下の実施例は、慣用方法、例えば、ベクター及びプラスミドの構築、上記ベクター及びプラスミド内へのポリペプチド・コーディング遺伝子の挿入、又は宿主細胞内へのプラスミドの導入において使用されるものの詳細な説明は含まない。このような方法は、当業者に周知であり、そしてSambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T.(1989), Molecular Cloning : A Laboratory Manual. 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press(これを本明細書中に援用する)を含む多数の刊行物中に記載されている。
【0078】
材料
試薬と化学物質は、特にことわらない限り、Sigma(St. Louis, MO)から購入した。ヒトVEGF165と可溶性組換えヒトVEGFR−Iアルカリ・ホスファターゼ(rhu VEGFR−I AP)タンパク質を、安定的にトランスフェクトされた細胞内で発現させ、そして当業者に知られた手順に従って細胞培養上清から精製した(Tessler, J. Biol. Chem., 269 : 12456-12461 (1994)(これを本明細書中に援用する))。PIGF及び可溶性組換えVEGFR−I Fc(rhu VEGFR−I Fc)タンパク質を、(R&D Systems Inc. Minneapolis, MN)から購入した。細胞培養容器及びアッセイ・プレートは、(BD Biosciences, Bedford, MA)から購入した。
【0079】
細胞系
ヒト乳癌細胞系DU4475,MDA−MB−231,MDA−MB−435、並びにマウス、メラノーマ細胞系P3−X63−Ag 8.653及びNSOを、American Type Tissue Culture Collection (Manassas, VA)から得た。P3−X63−Ag 8.653 Bcl/2トランスフェクト体細胞系を先に記載されたようにハウス内で創製した(Ray S, Diamond B. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 91 : 5548-51, 1994)。腫瘍細胞を、10% FCS(Hyclone, Logan, UT)を含有するRPMI1640培地(Invitrogen/Life Technologies, Inc., Rockville, MD)中で維持した。ブタ大動脈内皮VEGFR−I発現細胞系は、Dr.L. Claesson-Welsh, Uppsala Universityにより提供され、そして10% FCS(Hyclone, Logan, UT)を含有するF12培地(Invitrogen/Life Technologies, Inc., Rockville, MD)中で培養された。全ての細胞を、加湿、5% CO2雰囲気中37℃で維持した。
【0080】
実施例1:抗−VEGFR−I抗体の生成
ヒト抗−VEGFR−Iモノクローナル抗体(本明細書中、「抗−VEGFR−I抗体」という)を、ヒト免疫グロブリン・ガンマ重鎖及びカッパ軽鎖を作り出すKMトランスジェニック・マウス(Medarex, San Jose, Calif)を用いて標準的なハイブリドーマ技術(Harlow & Lane, ed ., Antibodies : A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, 211-213 (1998)(これを本明細書中に援用する))により作製した。KMマウスに、完全フロイント・アジュバント中のVEGFR−I断片結晶化(Fc)を皮下(s.c.)で免疫化した。動物に、融合前、不完全フロイント・アジュバント中の同一VEGFR−Iタンパク質を、3回腹膜内(i.p.)でブーストした。動物を、リン酸塩バッファー溶液(PBS)中VEGFR−Iタンパク質25ミリグラムの最終i.p.ブーストを受容する前1ヶ月間、休ませた。4日後、脾臓細胞を、上記免疫化されたマウスから収獲し、そしてポリエチレン・グリコール(PEG,MW:1450kD)を用いてP3−X63−Ag 8.653 Bcl−2トランスフェクト体形質細胞腫細胞と融合させた。融合後、細胞を、10%胎児ウシ血清(FBS)を補ったHAT(ヒポキサンチン・アミノプテリン、チミジン)培地中に再懸濁させ、そしてハイブリドーマ細胞の樹立のためにウェル当り200マイクロリッターの密度で96ウェル・プレートに小分けした。融合後6日目に、培地100マイクロリッターを吸引し、そして新鮮培地100マイクロリッターで置換した。
【0081】
実施例2A:実施例1からの抗−VEGFR−I抗体はVEGFR−Iに結合し、そしてVEGFR−Iがそのリガンドに結合することを阻害する
a.VEGFR−I結合及びブロッキング・アッセイ
融合後10〜12日目に、ハイブリドーマを、ELISA−ベースの結合及びブロッキング・アッセイにおいて、抗体産生及びrhu VEGFR−Iタンパク質との培養上清の特異的結合活性についてスクリーニングした。ポジティブなハイブリドーマを、モノクローナル・ハイブリドーマの樹立のために限界希釈により3回、継代培養した。
【0082】
特に、ハイブリドーマ上清又は精製抗体を、5% FBS及び0.05% Tween 20を含むPBS(ELISAバッファー)中で希釈し、そして30分間、rhu VEGFR−I AP又はAPコートされた96ウェル・マイクロタイター・プレート内でインキュベートした。プレートを、上記ELISAバッファーで洗浄し、そして30分間、ヤギ抗−マウスIgG−ホースラデッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート(Bio Sourse International, Camarillo, CA)とともにインキュベートした。TMB(3,3′,5,5′−テトラ−メチルベンジジン)基質(Kierkegaard and Perry Lab, Inc., Gaithersburg, MD)を、製造者の指示に従って発色のために使用した。450ナノメーター(nm)における吸光度を、抗体の結合活性の定量のために読んだ。抗−VEGFR−I抗体を産生するハイブリドーマの同定のために、ハイブリドーマ上清を、1時間VEGFR−I APと予めインキュベートした。混合物を、1時間、VEGF又はPIGFコートされた96ウェル・マイクロタイター・プレート内でELISAバッファーとともにインキュベートした。APのためのPNPP(p−ニトロフェニル・ホスフェート)基質を、製造者の指示に従って発色のために使用した。VEGFRIのVEGF又はPIGFへの結合の定量のために405nmにおける吸光度を読んだ。光学密度(OD)値を、マイクロタイター・プレート・リーダー(Molecular Device Corp., Sunnyvale, CA)上で読んだ。Graph Pad Prism 3ソフトウェア(Graph Pad Software, Inc., San Diego, CA)を用いて、抗体のED50及びIC50を分析した。
【0083】
図3は、「6F9」、「13G12」、「15F11」、及び「18F1」と命名されたハイブリドーマから産生された精製抗体の結合活性を示す。これらの抗体は、ELISA−ベースの結合アッセイにおいて、0.1〜0.3nMのED50をもつ結合活性を示した。図4と5は、それぞれ、クローン6F9,13F12,15F11,18F1が、0.4〜0.8nMのIC50をもってVEGFR−Iへの、PIGFの結合そして0.7〜0.8nMのIC50をもってVEGFR−IへのVEGFの結合を有効にブロックしたことを示す。上記抗体の結合及びブロッキング特性を以下の表4にまとめる。
【0084】
【表5】

【0085】
b.抗−VEGFR−I抗体のアフィニティーの計測
抗−VEGFR−I抗体クローン6F9,13F12,15F11,18F1のアフィニティーを、製造者により提供された手順に従ってBIAcore 2000(Pharmacia, Piscataway, NJ)を用いてプラズモン共鳴技術により測定した。抗体の動態分析を、低密度で、センサー表面上にVEGFR−Iの組換え細胞外ドメインを固定化することにより実施した。(Kon)速度と解離(Koff)速度を、製造者により提供されたBIAavaluation 2.1ソフトウェアを用いて決定した。
【0086】
抗−VEGFR−I抗体クローン6F9,13F12,15F11、及び18F1は、それぞれ、69,121,70、及び54pMのKD値をもって高アフィニティーを示した。上記抗体の動態を以下の表5にまとめる。
【0087】
【表6】

【0088】
c.抗−VEGFR−I抗体の特異性の評価
ヒトVEGFR−Iに対する抗−VEGFR−Iモノクローナル抗体の特異性を測定するために、精製抗体18F1を、ELISAベースのアッセイにおいてテストした。1μg/mlの、組換えヒトVEGFR−I Fc、マウスVEGFR−I Fc、マウスVEGFR−2 Fc、又はヒトVEGFR−2アルカリ・ホスファターゼを、一夜4℃で96ウェル・マイクロタイター・プレート内でPBSでコートした。洗浄後、受容体コートされたプレートを、5% Dry Milk及び0.05% Tween 20を含むPBSでブロックした。ヒトVEGFR−Iに対する1次抗体18F1、マウスVEGFR−Iに対するMF1、ヒトVEGFR−2に対するIC11、又はマウスVEGFR−2に対するDC1O1の逐次希釈物を、30分間上記受容体コートされたプレート内でインキュベートした。洗浄後、30分間上記プレート内で2次抗−1次HRPコンジュゲート抗体をインキュベートした。プレートを洗浄し、そして発色のために基質TMB(3,3′,5,5′−テトラ−メチルベンジジン)とともにインキュベートした。450nmにおける吸光度を、抗体の結合活性の定量のためにOD値として読んだ。データをGraphPad Prism Softwareを用いて分析した。
【0089】
図6A−Dは、ヒトVEGFR−Iに対するモノクローナル抗体18F1の特異性を(図6A)、そして当該抗体が、マウスVEGFR−I(図6B)、ヒトVEGFR−2(図6C)、及びマウスVEGFR−2(図6D)との交差反応性を有さないことを示す。結果は、抗−ヒトVEGFR−I抗体18F1が、その対応の受容体と厳密な結合特異性を有することを示す。
【0090】
d.ウェスタン・ブロット
集密ブタ大動脈内皮VEGFR−I発現(PAE−VEGFR−I)細胞及びBT474ヒト乳癌細胞を48時間、血清消耗F12培地中で培養した。次いで、当該細胞を、1時間0.1〜37μg/mlの範囲の濃度で抗−VEGFR−I抗体クローン18F1とともに予めインキュベートし、そしてその後、37℃で5分間VEGF又はPIGFで刺激した。次いで細胞を、氷冷PBSで濯ぎ、そして溶解バッファー(50mM HEPES 150mM NaCl、1% Triton X−100、並びに10%グリセロールであって1mMフェニルメチルスルホニル・クロリド、10μg/mlアプロチニン、10μg/mlロイペプチン、及び1mMナトリウム・バナデートを含むもの)中に溶解した。細胞溶解産物を、SDS−PAGEに供し、そしてImmobilon膜(Millipore Corp. Billerica, MA)上に転移させた。転移後、ブロットを、ブロッキング溶液とともにインキュベートし、そして抗ホスホチロシン抗体(PY20,Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)でプローブし、その後洗浄した。タンパク質含有物を、ホースラティッシュ・ペルオキシダーゼ結合2次抗体を用いて可視化し、その後化学発光を増強した(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)。抗−VEGFR−I特異的抗体(Oncogene Research Products, San Diego, CA)を、VEGFR−Iの再ブロットのために使用した。
抗VEGFR−I抗体の全てが、VEGFR−I組換えタンパク質の180kD分子を認識した。
【0091】
実施例2B:抗−ヒト抗−VEGFR−I抗体は、ヒトVEGFR−Iに特異的である
HuVEGFR−I−Fc、マウスVEGFR−I−AP(ImClone Systems)又はhuVEGFR−2−AP(ImClone Systems)(100ng/ウェル)を96ストリップ−ウェル・プレート上にコートし、そして5%ミルク/PBSでブロックした。VEGFR−I又はVEGFR−2が結合したプレートへの、18F1、及びその他の抗−ヒトVEGFR−I抗体又はラット抗−マウスVEGFR−I抗体、MF1(ImClone Systems,ref.18)の結合を、先にハイブリドーマ上清スクリーニングについて記載したように評価した。但し、結合された抗体は、18F1及び抗−ヒトVEGFR−2抗体IC11に関しては、ヤギ抗−ヒト・カッパ−HRP抗体(BioSource International, Camarillo, CA)で、又はMF1に関しては、ヤギ抗−ラットIgG−HRP抗体(BioSource International)で、検出した。
【0092】
8F1は、ヒトVEGFR−Iとの特異的反応性を示したが(図32A)、マウスVEGFR−I(図32B)及びヒトVEGFR−2(図32C)との交差反応性は示さなかった。抗−マウスVEGFR−Iブロッキング抗体MF1も、種特異的にマウスに結合性であることが証明されたが(図32B)、ヒトVEGFR−Iには結合性でない(図32A)。
【0093】
実施例3:抗−VEGFR−I抗体は、VEGFR−I発現細胞上の天然VEGFR−Iに結合する
a.フロー・サイトメトリー分析
106個のPAE−VEGFR−I細胞のアリコートを、集密に満たない培養物から収獲し、そして氷上で1時間、1%ウシ血清アルブミン(BSA)、及び0.02%アジ化ナトリウム(染色バッファー)を含有するPBS中の、抗−VEGFR−I抗体クローン6F9,13G12,F11、及び18F1とともにインキュベートした。106個のDU4475ヒト乳癌細胞のアリコートを、集密に満たない培養物から収獲し、そして氷上で1時間、1ウシ血清アルブミン(BSA)及び0.02%アジ化ナトリウム(染色バッファー)を含有するPBS中の抗−VEGFR−I抗体クローン18F1とともにインキュベートした。対合したIgGアイソタイプ(Jackson Immuno Research, West Grove, PA)を、ネガティブ・コントロールとして使用した。細胞を、フロー・バッファーで2回洗浄し、そして氷上30分間、染色バッファー中のフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)標識ヤギ抗−ヒトIgG抗体(BioSource International, Camarillo, CA)とともにインキュベートした。細胞を先のように洗浄し、そしてEpics XLフロー・サイトメーター(Beckman-Coulter, Hialeah, FL)上で分析した。死んだ細胞及び残渣を、前方及び側方光散乱に基づき上記分析から除外した。平均蛍光強度単位(MFRJ)を、ポジティブ集団のパーセンテージを乗じた平均log蛍光として計算した。
【0094】
図7は、PAE−VEGFR−I発現細胞とのクローン6F9,13G12,15F11、及び18F1の結合反応性を示す。図8Aと8Bは、それぞれ、PAE−VEGFR−I発現細胞、及びDU4475ヒト乳癌腫とのクローン18F1の結合反応性を示す。これらの結果は、ヒト抗−VEGFR−I抗体が、細胞表面上に発現された天然VEGFR−Iに結合することを示す。
【0095】
b.表面VEGFR−Iブロッキング・アッセイ
細胞表面上のVEGFR−Iへの125I−VEGFの結合を、PAE−VEGFR−I発現細胞を用いて実行した。細胞を、非コート・プラスチック細胞培養プレート上で培養し、これは、125I−VEGFの特異的結合に影響を及ぼさずに非特異的結合を低減することが分かっていた。集密細胞を、24時間、血清−及び成長補充物質−不含ダルベッコ修正イーグル培地(DMEM)ZF−12培地(Invitrogen, Carsbad, CA)中でインキュベートした。細胞を、0.025M HEPES及び1mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)を含有する氷冷DMEM ZF−12培地で1回濯いだ。標識VEGFの200倍モル過剰の濃度で、抗−VEGFR−I抗体18F1又はコールドVEGFの逐次希釈物を、プレート内の各ウェルに添加し、そして1時間4℃でインキュベートした。洗浄後、125I−VEGFを2ng/mlの濃度で添加し、そしてプラットフォーム・シェーカー上で2時間4℃でインキュベートした。細胞を、1mg/ml BSA及び0.25mM CaCl2を含有するPBSで3回洗浄し、そして1% Triton X−100、1mg/ml BSA、及び0.16% NaN3の存在下5分間インキュベートして、結合VEGFを除去した。各ウェルの可溶性分をガンマ・カウンター内でカウントした。上記アッセイを、少なくとも3つの独立した実験において3連で実行し、そしてデータを、Prism GraphPadソフトウェアを用いて分析した。
【0096】
図9は、天然VEGFR−Iがブタ大動脈内皮細胞上の125I−VEGFに結合することを劇的に妨害する抗−VEGFR−I抗体18F1の強いブロッキング活性を示す。
【0097】
実施例4:抗−VEGFR−I抗体は、VEGFR−Iの自己リン酸化、並びにVEGF及びPIGFに応答するMAPK及びAktの活性化を阻害する
a.VEGFR−Iリン酸化アッセイ
そのリガンドにより誘導されるVEGFR−Iの自己リン酸化の並びにそれにより得られる古典的MARK、細胞外シグナル調節タンパク質キナーゼ1Z/2(EPK 1Z2)、及びPBK/Atk下流シグナリング経路の活性化は、細胞の生物学的応答、例えば、増殖、運動性、生存、及び分化を仲介する。VEGFR−Iをリン酸化し、そしてERK1Z2及びAktキナーゼ下流シグナリングを活性化する抗−VEGFR−I抗体の能力は、PAE−VEGFR−Iトランスフェクト体及びBT474乳癌細胞を用いることにより測定される)。
【0098】
PAE−VEGFR−I及びBT474細胞は、100又は150mm2プレート内に5×105/ウェルの密度で播かれ、そして18〜48時間無血清培地中で培養される。培養基を交換した後、細胞を、1時間、37℃で、抗−VEGFR−I抗体クローン6F9,15F11、及び18F1又はアイソタイプ対照で処理し、そしてその後、10分間、50ng/mlのVEGF又は100ng/mlのPIGFとともにインキュベートした。処理後、全細胞タンパク質抽出物を、溶解バッファー〔20mM HEPES(pH7.4)、10mM MgCl2、2mM MnCl2、0.05% Triton X−100、及び1mM DTT〕を用いて単離し、そして抗−VEGFR−I抗体(C−17,Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)を用いて免疫沈降させた。リン酸化VEGFR−Iのウェスタン・ブロットを、抗−ホスホ−キナーゼ抗体(PY−20,Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)を用いて検出した。タンパク質を、発電化学発光システム(ECL)(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)を用いて検出し、そしてNIH Image(National Institute of Mental Health, Bethesda, MD)を用いた濃度計により定量した。
【0099】
b.インビトロ・キナーゼ・アッセイ
MAPK及びAktリン酸化の評価のために、BT474細胞を、18時間、無血清培地中、12ウェル・プレート内で5×105/ウェルの密度で播いた。細胞を、37℃で、1時間、抗−VEGFR−I抗体クローン18F1又はアイソタイプ対照で処理し、そして5〜10分間、50ng/mlのVEGF又は100ng/mlのPIGFとともにインキュベートした。細胞溶解、タンパク質単離、及びエレクトロブロッティングを実行した。膜を、1μg/mlの濃度で、リン酸化p44/p42 MAPキナーゼ(Thr202/Tyr204,Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)又はリン酸化Akt(Ser473,Cell Signaling Technology, Beverly, MA)に対する抗体とともにインキュベートし、その後、2次IgG−HRP(1:5000)とともにインキュベートした。サンプルの等しいローディングを保証するために、膜を、ストリップし、そして抗−p44/p42(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)又は抗−Akt抗体(Cell Signaling Technology, Beverly, MA)で再プローブ化した。
【0100】
c.結果
図10〜14に示すように、PAE−VEGFR−Iトランスフェクト体及びBT474乳癌細胞における、VEGFR−Iの有意なリン酸化及びERK1/2及びAktシグナリングの活性化は、VEGF及びPIGFにより誘導された。これは、乳癌細胞と内皮細胞の両者におけるVEGFR−I、及び当該受容体関連下流キナーゼ・シグナリング経路の内因的活性を示唆している。図10と11に、それぞれ、示すように、抗−VEGFR−I抗体18F1による処理は、PAE−VEGFR−Iトランスフェクト体及びBT474乳癌細胞において、非処理対照に比較してVEGFR−IのPIGF又はVEGF刺激リン酸化を有意に低下させた。図12と13に、それぞれ、示すように、抗−VEGFR−I抗体15F11及び6F9による処理も、PAE−VEGFR−Iトランスフェクト体細胞におけるPIGF及びVEGFにより誘導されるERK1/2下流シグナリングを劇的に阻害した。Aktプロテイン・キナーゼの活性化は、乳癌において細胞生存を仲介する重要な細胞内シグナリング事件である。図14Aと14Bに、それぞれ示すように、抗−VEGFR−I抗体18F1による処理は、PAE−VEGFR−Iトランスフェクト体細胞におけるPIGF及びVEGFにより誘導されるERK1/2下流シグナリングを劇点に阻害した。
【0101】
図15に示すように、抗−VEGFR−I抗体18F1は、BT474乳癌細胞におけるAktのPIGF刺激リン酸化を有意にブロックした。これらの結果は、抗−VEGFR−I抗体による処理が、乳癌細胞と内皮細胞の両者においてVEGFR−Iと下流シグナリング・キナーゼ経路の活性化を阻害するために有効であることを証明する。
【0102】
実施例5:抗−VEGFR−I抗体は、乳腫瘍細胞のインビトロ増殖をブロックする
腫瘍低酸素症は、悪性進行の増強、侵略性の増加、及び化学療法剤耐性に関連する。低酸素症腫瘍細胞は、VEGFR−Iを含むさまざまな遺伝子発現のアップレギュレーションによる生存及び増殖のためのシグナリング経路を活性化する生物学的応答を経験する(Harris AL. Nat Rev Cancer. 2 : 38-47, 2002)。
【0103】
細胞増殖アッセイ
DU4475癌腫細胞を、18時間無血清培地中96ウェル・プレート内で5×103/ウェルの密度で播き、そしていくつかのケースにおいて、100nMのデスフェロキサミンでさらに5時間処理した。腫瘍細胞増殖に対する抗−VEGFR−I抗体の阻害効果を、48時間、50ng/mlのVEGF又は200ng/mlのPIGFの存在下、3,10、及び30μg/mlの投与量において、抗−VEGFR−I抗体クローン6F9,13G12,15F11、及び18F1とともに細胞をインキュベートすることにより測定した。次いで、生存細胞を、Coulterサイトメーター(Coulter Electronics Ltd. Luton, Beds, England)を用いて3連でカウントした。各実験を3連で実行した。
【0104】
低酸素症擬似剤デスフェロキサミンで予め処理されたDU4475腫瘍細胞の増殖速度は、VEGF又はPIGFのいずれかの刺激に応答して約2倍高められた。図16と17に、それぞれ、示すように、抗−VEGFR−I抗体による処理は、投与量に応答して、DU4475乳癌細胞のVEGF及びPIGF刺激増殖を有効に低下させた。図18Aと18Bは、それぞれ、DU4475乳癌細胞のVEGF及びPIGF刺激増殖の細胞カウント数に対する、抗体クローン18F1の抗体濃度を、プロットする。IC50値で表される抗−VEGFR−I抗体によるインビトロにおけるPIGF誘導DU4475細胞増殖の阻害を、以下の表6にまとめる。
【0105】
【表7】

【0106】
実施例6A:抗−VEGFR−I抗体は、乳腫瘍異種移植片の成長を抑制する
ヒト乳癌異種移植片の処理
ヒト抗−VEGFR−I抗体の抗腫瘍効果を、ヒト異種移植片乳腫瘍モデルにおいて試験した。
無胸腺ヌード・マウス(Charles River Laboratories, Wilmington, MA)に、Matrigel(Collaborative Research Biochemicals, Bedford, MA)中で混合された2×106個のDU4475細胞又は5×106個のMDA−MB−231及びMDA−MB−435細胞を、左脇腹領域に皮下注射した。上記DU4475及びMDA−MB−231モデルにおいて、腫瘍は、約200mm3の大きさに達するように放置され、そしてその後、マウスを、群当り12〜16匹の動物から成る群に無作為に分けた。動物は、各週3回、0.5mg(MDA−MB−231)又は1mg(DU4475)の投与量で、抗−VEGFR−I抗体クローン6F9,15F11、又は18F1のi.p.投与を受けた。MDA−MB−435モデルにおいては、腫瘍細胞を、マウスの乳房のふくらんだ領域内に皮下移植した。腫瘍が成長して約200mm3の大きさに達した後、マウスを、群当り15匹の動物の群に無作為に分け、そして週当り3回18F1抗体0.5mg/投与を腹膜内投与した。対照群内のマウスは、等体積の生理食塩水溶液を受容した。動物の処理を、実験の期間、続けた。腫瘍を、週2回カリパスで計測した。腫瘍体積を、以下の式〔π/6(w1×w2×w2)〕{式中、w1は最大腫瘍直径を表し、そしてw2は最小腫瘍直径を表す。}を用いて計算した。
【0107】
図19Aと19Bに示すように、週3回の1mg/投与の投与量における抗−VEGFR−I抗体6F9,15F11,13F12、及び18F1の全身投与は、DU4475異種移植片の腫瘍増殖の統計的に有意な抑制を導いた(p<0.05)。図20A,20B、及び20Cに、それぞれ、示すように、週3回の0.5又は1mg/投与の投与量における抗−VEGFR−I抗体18F1の全身投与は、DU4475,MDA−MB−231,MDA−MB−435異種移植片の腫瘍増殖の統計的に有意な抑制を導いた(ANOVA p<0.05)。図21Aと21Bに示すように、週2回の20又は40mg/kgの投与量における癌細胞増殖の抑制のためのヒトVEGFR−Iに対する抗体クローン18F1、及び腫瘍血管形成を抑制するためのマウスVEGFR−Iに対するクローンMF1による処理は、いずれかの抗体単独に比較したとき、DU4475及びMDA−MB−231異種移植片モデルにおける腫瘍増殖のより強い抑制をもたらした(p<0.05)。これらの結果は、抗−VEGFR−I抗体による癌細胞増殖の直接的促進及び腫瘍血管形成の調節におけるVEGFR−Iのインビボにおける機能の遮断が、異種移植片モデルにおけるVEGFR−Iボジティブ乳腫瘍の増殖を抑制するために有効であることを証明するものである。
【0108】
実施例6B:抗−ヒト抗−VEGFR−I抗体は、乳癌細胞のインビトロ増殖をブロックする
DU4475癌腫細胞(2×104/ウェル)を、18時間無血清培地中24ウェル・プレートに播き、そしてその後、さらに6時間、低酸素症擬似剤デスフェリオキサミン(Sigma)で処理した。抗−ヒトVEGFR−I抗体18F1の逐次希釈物を、3連で上記プレートに添加し、そして48時間、50ng/mlのVEGF−A(R&D Systems)又は200ng/mlのPIGFの存在下でインキュベートした。全細胞数(結合、及び懸濁液中)を、Coulter細胞カウンター(Coulter Electronics Ltd., England)を用いて各ウェルについて測定した。
【0109】
IMC−18F1の処理は、DU4475乳癌細胞のVEGF−A及びPIGF刺激増殖を有意にブロックした(それぞれ、図31Aと31B;推定IC50:30〜50nM)。アイソタイプ対照抗体は、細胞増殖に対して効果を有していなかった。したがって、18F1は、腫瘍細胞増殖/生存のVEGFR−Iリガンド誘導促進を抑制した。
【0110】
実施例7:抗−VEGFR−I抗体は、結腸癌細胞のVEGF−A及びVEGF−B刺激コロニー形成を阻害する
10% FBS及び1%アガロースを含有する1mL DMEM培地(Cambrex Corporation, East Rutherford, NJ)を、6つのウェル・プレートの各ウェルに入れた。無血清培地中のHT−29ヒト結腸癌腫細胞を、1時間、66nMの18F1又は対照IgGで処理し、その後、さらに4時間、10ng/mLのVEGF−A又は50ng/mlのVEGF−Bで処理した。処理された細胞を、0.5%アガロース並びに適当な抗体及び/又はリガンドを含有する10% FBS DMEM 1mLと混合した。250個の細胞を含有する上記懸濁液1mLを、上記1%アガロース基底層の上面に、各ウェル内で、プレーティングした。2日後、抗体及び/又はリガンドを含有する追加の培地を、上記ウェルに添加して、アガロースを水和される状態に保った。細胞を37℃で14日間放置して増殖させた。その後、直径50μm超のコロニーを、解剖顕微鏡を用いてカウントした。hiSat Statistical Software(V2.03,GraphPad Software, San Diego, CA)を用いて、統計分析を実施した。
【0111】
コロニーの数と大きさは、完全培地のみ中での非処理細胞に比較して、細胞がVEGF−A又はVEGF−Bで処理されたウェル内で有意に増加した。図22に示すように、18F1での処理は、リガンドによる刺激の不存在下、ベース活性に比較して、リガンド誘導コロニー形成を完全に阻害した(p<0.03)(図22)。したがって、接着細胞と非接着細胞の両者に関して、18F1は、腫瘍細胞の生存と増殖を抑制する能力を有している。
【0112】
実施例8:抗−VEGFR−I抗体は、結腸癌細胞のVEGF−A及びVEGF−B誘導転移及び侵入を阻害する
HT−29細胞(2.5×104)又はSW480細胞(1.5×104)を、24ウェルMATRIGELTMコート(HT−29)又は非コート(SW480)8.0μm多孔サイズ膜挿入物(Becton Dickinson Labware, Bedford, MA)の上部表面における抗−VEGFR−I抗体18F1(66nM)とともに1% FBSを含有する培地中でインキュベートした。上記挿入物を、48時間10ng/mL VEGF−A(R&D Systems)又は50ng/mL VEGF−B(R&D Systems)を含有する低部チャンバー内に入れた。上記挿入物の上部チャンバーに残存する細胞を、綿棒で除去した。上記挿入物の下側に移動する細胞を、Diff−Quik(Harleco, Gibbstown, NJ)で染色し、そして100倍の倍率で10個の無作為の視野内でカウントした。InStat Statistical Software(V2.03,GraphPad Software, San Diego, CA)を用いて統計分析を実施した。
【0113】
図23Aと23Bに示すように、VEGF−A又はVEGF−Bは、非コート膜を通ってリガンドに向かうHT−29細胞の移動を誘導した。図24Aと24Bに示すように、上記リガンドは、MATRIGELTMコート膜を通ってのSW480細胞の侵入をも誘導した。18F1は、リガンドによる刺激の不存在下、ベース活性に比較して、VEGFR−Iリガンド誘導転移及び侵入を完全にブロックした(p<0.05.図23と24)。したがって、腫瘍細胞増殖及び生存に対する負の効果に加えて、18F1は、腫瘍細胞の侵入及びその後の転移を抑制する手段を提供しうる。
【0114】
実施例9:抗−VEGFR−I特異的抗体による処理は、VEGFR−I発現性ヒト異種移植片腫瘍のインビボにおける増殖を抑制する
雌の無胸腺nu/nuマウス6週齢に、MATRIGELTM(BD Biosciences)で1:1に希釈された、培地中のヒト腫瘍細胞系を含有する0.4mL体積の懸濁液を、側背表面上に皮下注射した。異種移植片モデルにおいて使用された細胞系(カッコ内に細胞投与量を示す(106細胞/マウス))は、ヒト結腸癌細胞系DLD−I(5)、GEO(5)、及びHT−29(5);ヒト乳癌細胞系DU4475(2)、MDA−MB−231(5)、MDA−MB−435(5)、及びBT474(5)であった。腫瘍が約200〜300mm3に達したとき、マウスを、腫瘍サイズにより無作為に分け、そして処理群に分割した。腫瘍増殖を、週に約2回評価し、腫瘍体積を、π/6×(長さ×幅2){式中、長さ=最大直径、そして幅=長さに対して垂直な直径}として計算した。腫瘍寸法を、カリパスを用いて計測した。T/C%を、100×(最終処置腫瘍体積/開始処置腫瘍体積)/(最終対照腫瘍体積/開始対照腫瘍体積)として計算した。
【0115】
18F1を、0.9% USP生理食塩水(Braun)又はリン酸塩バッファー生理食塩水(PBS)中で希釈し、そして0.5mL/マウスの体積で腹膜内投与した。腫瘍増殖に対する処置の効果を、分散の反復計測分析を用いて分析した(RM ANOVA)。p<0.05は有意と考えられる。
【0116】
図25に示すように、腹膜内18F1の投与は、DU4475(図25A)、MDA−MB−231、及びMDA−MB−435(図25B)異種移植片腫瘍を有意に(p<0.05)抑制した。図26に示すように、18F1単独療法の有意な抗腫瘍効果も、HT−29(図26A)、DLD−I(図26B)、及びGEO(図26C)結腸癌異種移植片に対して観察された。これらの結果は、ヒトVEGFR−Iの遮断が、VEGFR−I発現性ヒト腫瘍細胞系により樹立された異種移植片腫瘍の増殖を有効に抑制することを証明するものである。
【0117】
実施例10:抗−ヒトVEGFR−I処置は、増殖及び生存経路のインビボにおけるシグナリングを抑制し、そして腫瘍細胞アポトーシスを誘導する
パラフィン埋め込みMDA−MB−231異種移植片を、腫瘍細胞増殖、生存、及びアポトーシスのマーカーについて、免疫組織化学的に評価した。増殖及び生存のマーカーは、ki−67(ウサギpAb;Lab Vision Corporation, Fremont, CA)、ホスホ特異的p44/42 MAPK(Thr202/Tyr204)(ウサギpAb;Cell Signaling Technology)、及びホスホ特異的Akt(Ser473)(ウサギpAb;Cell Signaling Technology)を含んでいた。ウサギ抗体のためのEnVision System(DAKO Cytomation, Carpenteria, CA)を、キットの指示書に従い、クロマゲンとして3,3′ジアミノベンジジン(DAB)とともに使用した。Mayer’sヘマトキシリン中での短時間の対比染色の後、全ての切片を、脱水し、清澄化し、そして永久マウンティング培地を用いてカバースリップをした。腫瘍アポトーシスを、キットの指示書に従って、ApopTag(登録商標)Peroxidase In Situ Apoptosis Detectio Kit (Chemicon, Temecula, CA)を用いてTUNELアッセイにより評価した。ポジティブ免疫染色及びTUNELポジティブ免疫蛍光を分析し、そしてAxioamデジタル・カメラ(Carl Zeiss, Germany)を備えたAxioskop光学顕微鏡を用いて画像形成した。
【0118】
図27に示すように、増殖性細胞(ki−67)のためのマーカーは、20mg/kgにおける18F1による処理から14日後(雌nu/nu無胸腺マウスにおいて約0.5mg/投与)、2回/週(試験番号3067−04)、有意に低下した。さらに、18F1処理は、上記時点においてMAPKの活性化における顕著な低下をもたらした(図27)。TUNELポジティブ事件により計測されるアポトーシスの増加(図27)、及びAktリン酸化における有意な低下は、18F1による処置から1週間後(0.5mg/投与、M−W−F)、MDA−MB−231異種移植片腫瘍においても検出された。
【0119】
実施例11:ヒト及びネズミVEGFR−Iのインビボにおける遮断は、ヒト乳癌異種移植片に対するより大きな抗腫瘍活性を導く
18F1を、マウスVEGFR−I,MF1に対する抗体とともに使用した。18F1を、0.9% USP生理食塩水(Braun)又はリン酸塩バッファー生理食塩水(PBS)中で希釈し、そして0.5ml/マウスの体積で腹膜内投与した。腫瘍増殖に対する処置の効果を、分散の反復計測分析を用いて分析した(RM ANOVA)、p<0.05は有意であると考えられた。図28に示すように、MDA−MB−231(図28A)とDU4475(図28B)異種移植片の両者において、18F1による腫瘍発現ヒトVEGFR−Iの阻害、及びMF1による内因性マウスVEGFR−Iの阻害は、有意な腫瘍増殖阻害(p<0.05)をもたらした。MF1は、腫瘍血管形成の低減を通じて腫瘍増殖を阻害することが先に示されている。18F1とMF1の組合せは、単独療法よりも有意に大きな腫瘍増殖阻害をもたらした(p<0.05)。18F1とMF1の併用療法は、体重損失を伴わなかった。これらのデータは、患者における18F1処置による腫瘍血管形成と腫瘍細胞増殖及び生存の2重阻害を裏付けるものである。
【0120】
実施例12:化学療法と併用される抗−VEGFR−I抗体
18F1+MF1を、MDA−MB−231モデルにおける細胞毒療法、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、及びパクリタキセルと併用した。18F1を、0.9% USP生理食塩水(Braun)又はリン酸塩バッファー生理食塩水(PBS)中で希釈した。マウス当り一定投与量で投与された抗体処置を、0.5mL/マウスの体積で投与した。体重に正比例する投与量で投与された抗体と細胞毒処置を、10μL/体重gの体積で与えた。5−フルオロウラシルとロイコボリン(5−FU/LV)を、USP生理食塩水中で別々に希釈し、そして別々に投与した。パクリタキセルを、5%ベンジル・アルコール(Sigma)、5% Cremophor EL(Sigma)、及び90% USP生理食塩水中で、又は5%エチル・アルコール(Sigma)、5% Cremophor EL、及び90% USP生理食塩水中で作製した。シクロホスファミドとドキソルビシンを、投与のためにUSP生理食塩水中に溶解した。AU処置は、i.p.で投与された。腫瘍増殖に対する処置の効果を、分散の反復計測分析を用いて分析した(RM−ANOVA)、p<0.05は有意であると考えた。
【0121】
図29に示すように、MDA−MB−231モデルにおいては、シクロホスファミド療法の活性投与量への18F1+MF1の添加は、抗腫瘍効果を有意に増大させた。図30に示すように、5−FU/LVとドキソルビシン化学療法が一定の投与レベルにおいて投与されたとき、18F1とMF1は、上記2つの化学療法の抗腫瘍効果を高めた。
【0122】
DU4475異種移植片モデルにおいては、IMC−18F1+MF1が5−FU/LV、ドキソルビシン、及びパクリタキセルと併用されたとき活性が高まる傾向があった(より低いT/C%)。但し、この効果は、IMC−18F1+MF1単独、又は細胞毒性剤単独療法に比較して統計的有意に達しなかった。MDA−MB−231においては、これは、ドキソルビシンに関して再び当てはまった。但し、5−FU/LV及びパクリタキセルに関しては、併用により活性が高まるという傾向はなかった。アビシチーの欠如は、選択された投与レベルにおける単独療法としての5−FU/LVとパクリタキセルの最小効果に因ることができる。シクロホスファミドとの併用も、IMC−18F1+MF1単独(T/C%=60)又はシクロホスファミド単独療法(T/C%=65)に比較して、MDA−MB−435モデル(T/C%=51)において増加した活性を有していた。但し、これらの差は統計的に有意ではなかった。同一の試験においてこれは、ドキソルビシンとパクリタキセルにも当てはまった。上記のMDA−MB−231及びMDA−MB−435データと同様に、BVIC−18F1,MF1、及びシクロホスファミドの組合せは、DU4475異種移植片モデルにおいて、抗体又は細胞毒療法単独に比較して、高められた抗腫瘍活性を示した。
【0123】
統計分析
腫瘍体積とインビトロ腫瘍細胞増殖の分析は、SigmaStat統計パッケージ(V.2.03;Jandel Scientific, San Rafael, CA)を用いたスチューデントt−テストを用いて分析した。p<0.05の差は、統計的に有意であると考えた。
【0124】
実施例13:抗−VEGFR−I抗体のVH/VL領域のクローニング及びシーケンシング
ポリ(A+)mRNAを、Fast−trackキット(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いてVEGFR−I免疫化KMマウスから得られたハイブリドーマ細胞産生クローン6F9,13G12,15F11、及び18F1から単離した。ランダム・プライムcDNAの作製の後に、Clontechキットを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。プライマー(前進:5′−ATGGAGTTTGGGCTGAGCTG、及び後退:3′−TGCCAGGGGGAAGACCGATGG)、並びに(前進:5′−ATGGAAACCCCAGCGCAGCTTCTC、及び後退:3′−CGGGAAGATGAAGACAGATG)を、それぞれ、重鎖とカッパ軽鎖の可変領域に結合させるために使用した。ハイブリドーマからのヒト免疫グロブリン由来重鎖及びカッパ鎖転写産物の配列を、先に記載したプライマーを用いてポリ(A+)RNAから作製されたPCR産物の直接シーケンシングにより得た。またPCR産物を、TAクローニング・キット(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いてpCR2.1にクローニングし、そして両鎖を、Prism dye−terminatorシーケンシング・キット及びABI3730 Sequencer(GENEWIZ, North Brunswick, NJ)を用いてシーケンシングした。全配列を、DNASTARソフトウェアを用いたKataman抗体配列プログラムに対するアラインメントにより分析した。
【0125】
上記表2は、抗−VEGFR−I抗体クローン6F9,13G12,15F11、及び18F1の軽鎖及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。CDR1,CDR2、及びCDR3ドメインの配列を、下線により示す。上記表3は、クローン6F9,13G12,15F11、及び18F1の重鎖及び軽鎖可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を示す。
【0126】
実施例14:ヒトIgG1抗−VEGFR−I抗体の遺伝子操作及び発現
抗−VEGFR−I抗体クローン6F9,13G12,15F11、及び18F1の重鎖及び軽鎖可変領域をコードするDNA配列を、発現ベクター内へのクローニングのためにPCRにより増幅した。重鎖可変領域を、ベクターpEE6.1(Lonza Biologies pic, Slough, Berkshire, UK)内で、フレーム内で、ヒト免疫グロブリン重鎖ガンマ定常領域に融合した。完全ヒト軽鎖cDNAを、ベクターpEE12.1(Lonza Biologies. PLC, Slough, Berkshire, UK)内に直接クローン化した。操作された免疫グロブリン発現ベクターを、エレクトロポレーションによりNSOミエローマ細胞内に安定にトランスフェクトし、そしてグルタミン・シンセターゼ選択培地中で選択した。安定性クローンを、抗−Fc及びVEGFR−I特異的結合ELISAによる抗体発現についてスクリーニングした。ポジティブ・クローンを、2週間以内の期間にわたり、スピナー・フラスコ又はバイオリアクター内で抗体生産のための無血清培養基中で増殖させた。完全長IgG1抗体を、プロテインAアフィニティー・クロマトグラフィー(Poros A, PerSeptive Biosystems Inc., Foster City, CA)により精製し、そして中性バッファー生理食塩水溶液中に溶出した。
【0127】
以上の説明及び実施例は、本発明を単に説明するためのものであり、本発明を限定することを意図していない。本発明の開示された側面及び態様の各々は、個々に、又は本発明の他の側面、態様、及び変更と組合せて考慮されうる。さらに特にことわらない限り、本発明の方法のステップのいずれも、実行における特定の順番に拘束されない。本発明の本質及び実体を取り込む開示された態様の変更も当業者にとって自明であろうし、そしてこのような変更も本発明の範囲内にある。さらに、本明細書中に引用する文献の全てを、それらの全体として本明細書中に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、本発明の抗−VEGFR−I抗体の各種態様の軽鎖可変領域と重鎖可変領域のアミノ酸配列である。
【図2】図2は、本発明の抗−VEGFR−I抗体の各種態様の軽鎖可変領域と重鎖可変領域のヌクレオチド配列である。
【図3】図3は、VEGFR−Iへの本発明の抗−VEGFR−I抗体の各種態様のインビトロ結合活性を計測するELISAベースの結合アッセイの結果を示すチャートである。
【図4】図4は、VEGFR−I結合についての、PIGFとの、本発明の抗−VEGFR−I抗体の各種態様のインビトロにおける競合を計測するELISAベースのブロッキング・アッセイの結果を示すチャートである。
【図5】図5は、VEGFR−I結合についての、VEGFとの、本発明の抗−VEGFR−I抗体の各種態様のインビトロにおける競合を計測するELISAベースのブロッキング・アッセイの結果を示すチャートである。
【図6】図6A−Dは、本発明の抗−VEGFR−I抗体18F1の特異性の結果を示すチャートである。ヒトVEGFR−I(図6A)に結合するが、マウスVEGFR−I(図6B)、ヒトVEGFR−2(図6C)、又はマウスVEGFR−2(図6D)には結合しない。
【図7】図7A−Eは、VEGFR−I発現ブタ大動脈内皮細胞との、本発明の抗−VEGFR−I抗体の各種態様の結合反応性を示すフロー・サイトメトリー分析の結果である。
【図8】図8A−Bは、VEGFR−I発現ブタ内皮細胞(図8A)及びDU4475ヒト乳癌細胞(図8B)との、本発明の抗−VEGFR−I抗体18F1の結合反応性を示すフロー・サイトメトリー分析の結果である。
【図9】図9は、内皮細胞上のVEGFR−Iに結合するVEGFとの、本発明の抗−VEGFR−I抗体18F1のインビトロにおける競合を計測する細胞ベースのブロッキング・アッセイの結果を示すチャートである。
【図10】図10は、ブタ大動脈内皮VEGFR−I発現細胞における本発明の抗−VEGFR−I抗体18F1による処理によるVEGFR−IのPIGF刺激リン酸化の低減を示すウェスタン・ブロット分析である。
【0129】
【図11】図11は、BT474乳癌細胞における本発明の抗−VEGFR−I抗体18F1による処理によるVEGFR−IのPIGF又はVEGF刺激リン酸化の阻害を示すウェスタン・ブロット分析である。
【図12】図12は、ブタ大動脈内皮VEGFR−I発現細胞における本発明の抗−VEGFR−I抗体の各種態様によるERK1/2下流シグナリングのPIGF誘導活性化の阻害を示すウェスタン・ブロット分析である。
【図13】図13は、ブタ大動脈内皮VEGFR−I発現細胞における本発明の抗−VEGFR−I抗体の各種態様によるERK1/2下流シグナリングのVEGF誘導活性化の阻害を示すウェスタン・ブロット分析である。
【図14】図14A−Bは、VEGFR−I発現ブタ大動脈内皮細胞における本発明の抗−VEGFR−I抗体18F1によるERK1/2下流シグナリングのPIGF(図14A)又はVEGF(図14B)−誘導活性化の阻害を示すウェスタン・ブロット分析である。
【図15】図15は、本発明の抗−VEGFR−I抗体18F1が、BT474乳癌細胞におけるPIGF又はVEGF−刺激リン酸化をブロックすることを示すウェスタン・ブロット分析である。
【図16】図16は投与量に応答して、本発明の抗−VEGFR−I抗体の各種態様により処理されたDU4475乳癌細胞内でのVEGF刺激細胞増殖の阻害を示す投与量応答曲線である。
【図17】図17は、投与量に応答して、本発明の抗−VEGFR−I抗体の各種態様により処理されたDU4475乳癌細胞におけるPIGF刺激細胞増殖の阻害を示す投与量応答曲線である。
【図18】図18A−Bは、投与量に応答して、本発明の抗−VEGFR−I抗体18F1により処理されたDU4475乳癌細胞におけるPIGF(図18A)又はVEGF(図18B)−刺激細胞増殖の阻害を示す投与量応答曲線である。
【図19A】本発明の抗−VEGFR−I抗体の各種態様による処理後の日数に対してDU4475乳癌腫瘍の腫瘍増殖をプロットしたチャートである。
【図19B】本発明の抗−VEGFR−I抗体の各種態様による処理後の日数に対してDU4475乳癌腫瘍の腫瘍増殖をプロットしたチャートである。
【図20】図20A−Cは、本発明の抗−VEGFR−I抗体18F1による処理後の日数に対してDU4475(図20A)、MDA−MB−231(図20B)、及びMDA−MB−435(図20C)の腫瘍増殖をプロットしたチャートである。
【0130】
【図21】図21A−Bは、本発明の抗−ヒトVEGFR−I抗体18F1及び抗−マウスVEGFR−I抗体MF1による処理後の日数に対してDU4475(図21A)及びMDA−MB−231(図21B)乳腫瘍の腫瘍増殖をプロットしたチャートである。
【図22】図22は、VEGF−A及びVEGF−Bの存在下、抗−ヒトVEGFR−I抗体18F1による処理後に存在する結腸癌細胞コロニーの数のチャートである。
【図23】図23Aは、VEGF−A及びVEGF−Bの存在下抗ヒトVEGFR−I抗体18F1による処理後の転移腫瘍細胞の数のチャートである。 図23Bは、VEGF−A及びVEGF−Bの存在下抗ヒトVEGFR−I抗体18F1による処理後の染色された転移細胞の光学顕微鏡写真である。
【図24】図24Aは、VEGF−A又はVEGF−Bの存在下、抗ヒトVEGFR−I抗体18F1による処理後のMATRIGELTMの層を横切って移動した腫瘍細胞の数のチャートである。 図24Bは、VEGF−A及びVEGF−Bの存在下、抗ヒトVEGFR−I抗体18F1による処理後の染色された転移細胞の光学顕微鏡写真である。
【図25】図25は、抗−VEGFR−I抗体18F1,6F9、及び15F11による処理後の日数に対して、DU4475(図25A)及びMDA−MB−435(図25B)乳腫瘍の腫瘍増殖をプロットしたチャートである。
【図26】図26は、抗−ヒトVEGFR−I抗体18F1の特定投与量による処理後の日数に対して、HT−29(図26A)、DLD−1(図26B)、及びGEO(図26C)結腸癌細胞の増殖をプロットしたチャートである。
【図27】図27は、抗−ヒトVEGFR−I抗体18F1による処理後のMDS−MB−231異種移植片腫瘍の光学顕微鏡写真である。
【図28】図28は、MDA−MB−231(図28A)及びDU4475(図28B)異種移植片における抗−ヒト抗−VEGFR−I抗体18F1、抗−マウス抗−VEGFR−I抗体MF−Iの特定投与量による処理後の日数に対して腫瘍増殖をプロットしたチャートである。
【図29】図29は、MDS−MB−231異種移植片における、シクロホスファミドと併用した抗−ヒト抗−VEGFR−I抗体18F1及び抗−マウス抗−VEGFR−I抗体MF1による処理後の日数に対して腫瘍増殖をプロットしたチャートである。
【図30】図30Aと30Bは、MDA−MB−231異種移植片における抗−ヒト抗−VEGFR−I抗体18F1及び抗−マウス抗−VEGFR−I抗体MF1と併用した5−FU/LV又はドキソルビシンによる処理後の日数に対して腫瘍増殖をプロットしたチャートである。
【図31】図31は、デスフェロキサミンによる処理後の、VEGF−A(図31A)又はPIGF(図31B)の存在下、18F1の各種量の抗体濃度に対する全腫瘍細胞カウント数のチャートである。
【図32】図32A,32B、及び32Cは、抗−ヒト抗−VEGFR−I抗体18F1と抗−マウス抗−VEGFR−I抗体MF1の特異性を示すチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2の軽鎖相補性決定領域−2(CDR2)及び配列番号3の軽鎖CDR3を含むVEGFR−Iに特異的に結合する単離ヒトモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項2】
以下の配列:
RASQSX1SSSYLA3
{配列中、X1はV又はGである。}を有する軽鎖CDR1領域をさらに含む、請求項1に記載の抗体又はその断片。
【請求項3】
以下の配列:
GFX2FSSYGMH
{配列中、X2はT又はAである。}を有する重鎖CDR1をさらに含む、請求項1に記載の抗体又はその断片。
【請求項4】
以下の配列:
VIWX3DGSNKYYADSVX4
{配列中、X3はY又はFであり、そしてX4はK又はRである。}を有する重鎖CDR2をさらに含む、請求項1に記載の抗体又はその断片。
【請求項5】
以下の配列:
DHX5GSGX6HX7YX8YYGX9DV
{配列中、X5はF又はYであり;X6はA又はVであり;X7はY,S又はHであり;X8はY又はFであり;そしてX9はM又はLである。}を有する重鎖CDR3をさらに含む、請求項1に記載の抗体又はその断片。
【請求項6】
(i)配列番号14,15、及び16から成る群から選ばれる軽鎖可変領域、又は(ii)配列番号17,18,19、及び20から成る群から選ばれる重鎖可変領域を含む抗体又はその断片。
【請求項7】
請求項1の抗体又はその断片をコードするヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド。
【請求項8】
VEGFR−Iに特異的に結合する抗体又はその断片をコードする、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、及び配列番号27から成る群から選ばれるヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド。
【請求項9】
発現配列に連結された請求項7に記載のポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項10】
請求項9に記載の発現ベクターを含む組換え宿主細胞。
【請求項11】
請求項1に記載の抗体又はその断片を発現する、請求項10に記載の組換え宿主細胞又はその子孫。
【請求項12】
請求項1に記載の抗体又はその断片の発現を許容する条件下、請求項10に記載の細胞を培養することを含む抗体又はその断片の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の抗体又はその断片の有効量を哺乳動物に投与することを含む、当該哺乳動物におけるVFGFR−Iの活性の調節方法。
【請求項14】
請求項1に記載の抗体又はその断片の有効量を、哺乳動物に投与することを含む、当該哺乳動物における血管形成の阻害方法。
【請求項15】
請求項1に記載の抗体又はその断片の有効量を、哺乳動物に投与することを含む、当該哺乳動物における腫瘍増殖の低減方法。
【請求項16】
抗−新形成剤又は処置を投与することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記腫瘍が乳腫瘍である、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公表番号】特表2008−520246(P2008−520246A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543295(P2007−543295)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/041904
【国際公開番号】WO2006/055809
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(500581021)イムクローン システムズ インコーポレイティド (7)
【Fターム(参考)】