説明

血管形成を誘導するための組成物および方法

本発明の開示により、配列番号5に記載されるアミノ酸配列HWRRを含む単離されたペプチドであって、ペプチドが4個または5個のアミノ酸からなる単離されたペプチドが提供される。また、本発明の開示により、本発明のペプチド、または本発明のペプチドを含む医薬組成物を使用して、血管形成に関連する病状(例えば、異常に増大された血管形成に関連する病状および不十分な血管形成に関連する病状)を処置する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
血管形成は、新しい毛細血管を生じさせるプロセスであり、細胞と可溶性因子との間の相互作用を含む。従って、活性化された内皮細胞が遊走し、増殖して新しい血管を形成し、その血管が内皮周囲細胞の層によって囲まれる;小さい血管は周皮細胞によって囲まれ、大きい血管は平滑筋細胞によって囲まれる。
【0002】
多数の因子が、血管形成を調節することが知られている。これらの因子には、可溶性因子および組織の酸素が含まれる。血管形成を積極的に調節することが知られている因子には、血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性FGF/FGF−1および低酸素誘導因子−1α(HIF−1α)が含まれる。低酸素症は、エリスロポイエチン、VEGF、bFGF、および解糖酵素のようないくつかの遺伝子産物の発現を誘導する。
【0003】
血管形成依存性の病状は、血管形成の調節障害、すなわち、過剰な量の新しい血管または不十分な数の血管をもたらす。不十分な血管形成は、冠状動脈疾患、遅発性の創傷治癒、遅発性の潰瘍治癒、生殖関連障害、動脈硬化症、心筋虚血、末梢虚血、脳虚血、網膜症、再造形障害、フォン・ヒッペル−リンダウ症候群、糖尿病および遺伝性出血性毛細管拡張症のような多数の疾患および状態に関連づけられる。一方、過剰の血管形成は、癌細胞および癌転移に特有である。
【0004】
虚血性疾患(例えば、重篤な四肢の虚血、冠状動脈疾患のような末梢動脈の疾患)の一般的な処置は、動脈導管および静脈導管を冠状動脈樹への移植片として使用する経皮技術またはバイパス手術による機械的な血管再生を含む。しかしながら、これらの処置様式は、散在性アテローム硬化性疾患または重症の小血管冠状動脈疾患を有する人において、糖尿病患者において、ならびに、手術的処置または経皮的処置を既に受けている人において、著しく制限される。これらの理由のために、新しい血管成長を刺激することを目指した治療的血管形成が非常に望ましい。
【0005】
血管形成治療の治療的概念は、血管組織に固有の血管成長のために存在する潜在的可能性が、新しい血管の発達を適切な血管形成分子の影響下で誘導するために利用されることができるという前提に基づいている。
【0006】
動物研究は、外因性の血管形成化合物によって、急性虚血および慢性虚血の実験モデルにおいて側副の潅流および機能を高めることの実現可能性を立証している(Sun Q,Chen RR,Shen Y,Mooney DJ,Rajagopalan S,Grossman PM.Sustained vascular endothelial growth factor delivery enhances angiogenesis and perfusion in ischemic hind limb.Pharm.Res.2005;22,1110−6)。加えて、ヒトのFGFおよびVEGFタンパク質の一部を包含する合成ペプチドが、増殖因子ファミリーメンバーの生物学的機能を効率的にアゴナイズまたはアンタゴナイズすることが記載された。さらに、ランダムな12量体ペプチドのコンビナトリアルファージディスプレーライブラリーのスクリーニングは、内皮細胞の細胞表面に結合し、かつ内皮細胞の増殖および血管新生を含む血管形成プロセスを誘発することができる特定のペプチドの単離を生じた(本発明者らのPCT公開公報WO2005/039616)。
【0007】
タンパク質分解酵素のADAM(ディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ: isintegrin nd etalloproteinase)ファミリーのメンバーは、細胞表面受容体から増殖因子およびサイトカインに及ぶ多くの単一膜貫通型結合タンパク質の加工に関与している。ADAMタンパク質におけるディスインテグリンドメインは、インテグリン結合上の細胞外タンパク質(ECM)に匹敵する。従って、ADAMタンパク質は、多くの生理学的および病理生理学的な状態において、細胞/ECM相互作用および細胞/細胞相互作用の調節に関与すると考えられる。加えて、ADAMタンパク質における保存されたメタロプロテアーゼドメインは、生物学的に重要な細胞表面タンパク質の脱落に関与すると考えられる。従って、ADAMプロテアーゼが、外部ドメインを脱落させることおよびECMを再造形することによって細胞遊走を促進できることが示唆された(Trochon Vら、1998)。
【0008】
ADAM15(メタージディン(metargidin)としても知られる)は、膜固定型の糖タンパク質であり、細胞−細胞相互作用または細胞−マトリクス相互作用、および細胞表面または細胞外マトリクス上の分子のタンパク質分解に関与している。ADAM15の発現レベルは、血管細胞、心内膜、アテローム硬化性病変、リウマチ様組織、軟骨肉腫、ならびに心房細動および心房拡張のような広範囲な再造形によって特徴付けられる多くの組織および状態において高められることが見出された。加えて、ADAM15は、ヒトの大動脈平滑筋および培養されたヒトの臍静脈内皮細胞(HUVEC)において発現され、ADAM15遺伝子は、いくつかの型の癌において増幅されるヒト染色体バンド1q2l.3に局在した。
【0009】
新生血管形成におけるADAM15の考えられうる役割は、ADAM15遺伝子を欠くマウス(すなわち、ADAM15ノックアウトマウス)において研究された。ADAM15ノックアウトマウスは、野生型コントロールに比べて新生血管形成の大きな減少を示し(Bohm BB,Aigner T,Roy B Brodie TA,Blobel CP Burkhardt H;Arthritis Rheum.2005 52,4 1100−9);低酸素誘導された増殖性網膜症のモデルにおける大きく減少された血管形成応答を示し;そして、黒色腫細胞の移植後に発達する有意に小さい腫瘍を示す。新生血管形成の関連におけるADAM15に対する特定の候補基質には、Notch1およびNotch4、PECAM−1、VE−カドヘリン、TIE−2、膜型1 MMP、あるいは、Kitリガンドが含まれる。他方では、ADAM15は、VEGF媒介血管形成のために必要とされることが知られている造血Srcファミリーキナーゼとの強力かつ特異的な相互作用を示すが、VEGFまたはbFGFのいずれもHUVECにおけるADAM15発現の変化を誘導しない。
【0010】
特定の抗体またはメタロプロテアーゼ阻害剤BB3103によるADAM15の阻害は、ヒト糸球体間質の細胞遊走の妨害を生じ、メタロプロテアーゼ活性がこのプロセスについて不可欠であることを示唆した。
【0011】
グルコース調節タンパク質(GRP78)(HSPA5またはBiPとしても知られる)は、熱ショックタンパク質70(HSP70)ファミリーのメンバーであり、分子シャペロンとして作用する高度に保存された分子であり、小胞体(ER)におけるタンパク質の折りたたみおよび組み立てに関与する。GRP78は、薬物耐性肺癌細胞株においてアップレギュレートされ、その発現レベルは微細血管密度(MVD)に対して逆に相関することが見出された[Koomaqi R.ら、1999;Anticancer Res.19(5B):4333−6]。対照的に、小さな干渉性RNA(small interfering RNA)を用いるGRP78の阻害は、ヒト乳癌細胞のエトポシド媒介細胞死に対する感作をもたらした[Dong D.ら、2005,Cancer Res.65(13):5785−91]。他方、ERストレス応答タンパク質GRP78の発現レベルと低酸素またはERストレスに対する耐性の間には相関は見出されなかった[Koshikawa N.ら、2006,Oncogene 25(6):917−28]。最近、GRP78は、増殖性内皮細胞およびストレスが与えられた腫瘍細胞の細胞表面上にさらされ、Kringle5(K5)の抗血管形成活性および抗腫瘍活性において重要な役割を果たすことが見出された[Davidson DJ.ら、2005,Cancer Res.65(11):4663−72]。
【発明の概要】
【0012】
本発明の1つの側面によれば、配列番号5に記載されるアミノ酸配列HWRRを含む単離されたペプチドであって、ペプチドが4個または5個のアミノ酸からなる単離されたペプチドが提供される。
【0013】
本発明の別の側面によれば、配列番号5に記載されるアミノ酸配列HWRRを含む単離されたペプチドであって、ペプチドが配列番号11(YPHIDSLGHWRR)ではない単離されたペプチドが提供される。
【0014】
本発明のさらに別の側面によれば、少なくとも1種の本発明のペプチドを含む組成物が提供される。
【0015】
本発明のさらに別の側面によれば、有効成分として少なくとも1種の本発明のペプチドを含み、かつ医薬的に許容されうるキャリアまたは希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0016】
本発明の追加の側面によれば、対象において血管形成を誘導する方法であって、対象に治療有効量の少なくとも1種の本発明のペプチドを投与することを含み、それによって対象において血管形成を誘導する方法が提供される。
【0017】
本発明のさらに追加の側面によれば、対象の組織において血管形成を誘導するために特定される医薬の製造のための少なくとも1種の本発明のペプチドの使用が提供される。
【0018】
本発明のさらに追加の側面によれば、遅発性の創傷治癒、遅発性の潰瘍治癒、生殖関連障害、動脈硬化症、虚血性の血管疾患、虚血性の心臓疾患、心筋虚血、心筋梗塞、心不全、心筋機能不全、心筋再造形、心筋症、冠状動脈疾患(CAD)、アテローム硬化性心臓血管疾患、左主冠状動脈疾患、閉塞性動脈疾患、末梢虚血、末梢血管疾患、腎臓の血管疾患、末梢動脈疾患、四肢虚血、重篤な脚の虚血、下肢の虚血、脳虚血、脳血管疾患、網膜症、網膜修復、再造形障害、フォン・ヒッペル−リンダウ症候群、糖尿病、遺伝性出血性毛細管拡張症、虚血性の血管疾患、バーガー病、ならびにパーキンソン病およびアルツハイマー病のような神経変性疾患と関連する虚血からなる群から選択される病状を処置するために特定される医薬の製造のための少なくとも1種の本発明のペプチドの使用が提供される。
【0019】
本発明のさらなる側面によれば、対象の組織における不十分な血管形成によって特徴付けられる病状を処置する方法であって、対象に治療有効量の少なくとも1種の本発明のペプチドを投与することを含み、それによって対象の組織における不十分な血管形成によって特徴付けられる病状を処置する方法が提供される。
【0020】
本発明のさらなる側面によれば、対象の組織における不十分な血管形成によって特徴付けられる病状を処置するために特定される医薬の製造のための少なくとも1種の本発明のペプチドの使用が提供される。
【0021】
本発明のさらなる側面によれば、薬剤を内皮細胞に対して標的化するための組成物であって、本発明のペプチドに結合された薬剤を含む組成物が提供される。
【0022】
本発明のさらなる側面によれば、有効成分として本発明の組成物を含み、かつ医薬的に許容されうるキャリアまたは希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0023】
本発明のさらなる側面によれば、異常に増大された血管形成によって特徴付けられる病状を処置するための方法であって、その処置を必要とする対象に治療有効量の本発明の組成物を投与することを含み、それによって異常に増大された血管形成によって特徴付けられる病状を処置する方法が提供される。
【0024】
本発明のさらなる側面によれば、異常に増大された血管形成によって特徴付けられる病状の処置のために特定される医薬の製造のための本発明の組成物の使用が提供される。
【0025】
本発明のさらなる側面によれば、推定血管形成分子を同定する方法であって、(a)本発明のペプチドが結合した内皮細胞を準備すること、および(b)ペプチドを内皮細胞から脱離させることができる分子を同定することを含み、それによって推定血管形成分子を同定する方法が提供される。
【0026】
本発明のさらなる側面によれば、推定血管形成分子を同定する方法であって、(a)本発明のペプチドを、グルコース調節タンパク質(GRP78)またはGRP78を発現する細胞と共に、ペプチドとGRP78またはGRP78を発現する細胞の間での複合体の形成に好適な条件下でインキュベートすること、および(b)ペプチドを複合体から脱離させることができる分子を同定することを含み、それによって推定血管形成分子を同定する方法が提供される。
【0027】
以下に記載される本発明の実施形態におけるさらなる特徴によれば、アミノ酸配列は、HWRRP(配列番号7)またはHWRRA(配列番号8)である。
【0028】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、アミノ酸配列は配列番号2に記載される。
【0029】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、アミノ酸配列は配列番号3に記載される。
【0030】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、アミノ酸配列は配列番号4に記載される。
【0031】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、ペプチドは線状ペプチドである。
【0032】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、ペプチドは環状ペプチドである。
【0033】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、ペプチドは12個以下のアミノ酸からなる。
【0034】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、対象の組織における不十分な血管形成によって特徴付けられる病状は、遅発性の創傷治癒、遅発性の潰瘍治癒、生殖関連障害、動脈硬化症、虚血性の血管疾患、虚血性の心臓疾患、心筋虚血、心筋梗塞、心不全、心筋機能不全、心筋再造形、心筋症、冠状動脈疾患(CAD)、アテローム硬化性心臓血管疾患、左主冠状動脈疾患、閉塞性動脈疾患、末梢虚血、末梢血管疾患、腎臓の血管疾患、末梢動脈疾患、四肢虚血、重篤な脚の虚血、下肢の虚血、脳虚血、脳血管疾患、網膜症、網膜修復、再造形障害、フォン・ヒッペル−リンダウ症候群、糖尿病、遺伝性出血性毛細管拡張症、虚血性の血管疾患、バーガー病ならびにパーキンソン病およびアルツハイマー病のような神経変性疾患と関連する虚血からなる群から選択される。
【0035】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、本発明の方法または使用は、遅発性の創傷治癒、遅発性の潰瘍治癒、生殖関連障害、動脈硬化症、虚血性の血管疾患、虚血性の心臓疾患、心筋虚血、心筋梗塞、心不全、心筋機能不全、心筋再造形、心筋症、冠状動脈疾患(CAD)、アテローム硬化性心臓血管疾患、左主冠状動脈疾患、閉塞性動脈疾患、末梢虚血、末梢血管疾患、腎臓の血管疾患、末梢動脈疾患、四肢虚血、重篤な脚の虚血、下肢の虚血、脳虚血、脳血管疾患、網膜症、網膜修復、再造形障害、フォン・ヒッペル−リンダウ症候群、糖尿病、遺伝性出血性毛細管拡張症、虚血性の血管疾患、バーガー病ならびにパーキンソン病およびアルツハイマー病のような神経変性疾患と関連する虚血からなる群から選択される病状を処置するための方法または使用である。
【0036】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、ペプチドは、組織の内皮細胞上で配列番号9に記載されるグルコース調節タンパク質(GRP78)に結合することができる。
【0037】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、配列番号9に記載されるグルコース調節タンパク質(GRP78)へのペプチドの結合は、血管形成を誘導することができる。
【0038】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、薬剤は、毒素、化学療法剤、および放射性同位体からなる群から選択される。
【0039】
記載される実施形態におけるさらなる特徴によれば、病状は、癌、転移性癌、脊髄形成異常、全身性肥満細胞症(SM)、網膜の新生血管形成、アテローム動脈硬化性斑における新生血管形成、血管腫、関節炎、および乾癬からなる群から選択される。
【0040】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0041】
本明細書において使用される用語「含む(comprising)」および「含む(including)」またはその文法上の変化形は、記述されている特徴、数値、工程または成分を特定しているとみなすべきであるが、1つ以上の追加の特徴、数値、工程、成分またはそれらの群を追加することを妨げない。この用語は、用語「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0042】
語句「から本質的になる」またはその文法上の変化形は、本明細書中で使用する場合、記述された特徴、数値、工程または成分を特定しているとみなすべきであるが、1つ以上の追加の特徴、数値、工程、成分またはそれらの群を追加することを妨げない。しかし追加の特徴、数値、工程、成分またはそれらの群が、特許請求されている組成物、装置または方法の基本的な新規の特徴を著しく変えない場合だけである。
【0043】
用語「方法」は、与えられたタスクを達成するための様式、手段、技術および手順を意味し、限定されないが、バイオテクノロジーの分野の当業者に知られているかまたはその当業者が既知の様式、手段、技術および手順から容易に開発する方式、手段、技術および手順を含んでいる。
【0044】
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施形態を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、ADAM15分子によって代表されるADAMファミリーメンバーのドメイン構造を示す概略図である。ADAMタンパク質は、典型的には、proドメイン(PRO)、メタロプロテアーゼドメイン(MP)、およびディスインテグリンドメイン(D)を含有し、これは細胞外マトリクス(ECM)においても見出されるトリペプチドRGDモチーフを含み、別個のインテグリンに対するADAMの特異性および親和性を決定する。ADAMタンパク質はまた、システインリッチ(C)領域、EGF様ドメイン、および膜貫通セグメント(TM、黒色)を、細胞質テイル(tail)と共に含む。proドメインが除去されると、メタロプロテアーゼドメインが活性化される。proドメインは、酵素を不活性な状態に保つ。proドメインの除去は、pro−ホルモン変換酵素の作用によってか、または自触反応によってかのいずれかで起こる。
【図2a】図2aは、ADAM15タンパク質ドメインを示す。ADAM15タンパク質ドメインのアミノ酸位置は、配列番号1に記載のポリペプチド(GenBankアクセッション番号 Q13444)に言及する。
【図2b】図2bは、ADAM15タンパク質のアミノ酸配列を示す。太字の文字は、メタロプロテアーゼドメイン、ディスインテグリン様ドメイン、およびEGF様ドメインを示す。下線の文字は、アミノ酸286−297に相当し、メタロプロテアーゼドメインにのみ存在し、ディスインテグリン様ドメイン、およびEGF様ドメインには存在しないADOPep1ペプチドに言及する。
【図3】図3は、ADAM15由来ペプチド(配列番号2)であるビオチニル化ADOPep1(ADOPep1Biot)の、通常酸素下での内皮細胞(EC)に対する結合(パーセント)を示すFACS分析である。0.05、0.5および5マイクログラム/ml(μg/ml)のビオチニル化ADOPep1が、内皮細胞に添加された。内皮細胞に対するADOPep1の結合の増加は、用量依存的な様式で約62%に到達し、5μg/mlで最大であったことに注目されたい。
【図4】図4は、通常酸素条件および低酸素条件下での内皮細胞に対するビオチニル化ADOPep1の結合(総数)を示すFACS分析である。100,000個の細胞あたり5マイクログラムで添加されたADOPep1の内皮細胞に対する結合が、低酸素下で増大したことに注目されたい。X軸−結合の強度。
【図5】図5は、ADOPepの濃度の関数としての細胞増殖を示すグラフである。低酸素条件下での内皮細胞(EC)の増殖は、[H]チミジン取り込みによって測定された。最小増殖培地中の内皮細胞(12,000個/ウェル)は、1、10、および100ng/mlのADOPep1ペプチド(配列番号2;赤色菱形)、ADOPep2ペプチド(配列番号3;青色四角形)、およびADOPep3ペプチド(配列番号4;緑色三角形)の存在下でインキュベートされた。ADOPep1が、10ng/mlの濃度で低酸素条件下で内皮細胞の増殖を誘導したことに注目されたい。
【図6】図6は、低酸素条件下での内皮細胞の遊走を示すグラフである。内皮細胞(25,000個)は、遊走チャンバにおいて補充物不含の内皮細胞増殖培地中でインキュベートされた。ADOPep1(配列番号2)、ADOPep2(配列番号3)、およびADOPep3(配列番号4)は、5時間の低酸素の間、1,10、および100ng/mlで、遊走キットの給餌トレイに添加された。結果は、蛍光ELISA読み取り機によって決定され、相対蛍光単位における遊走割合の増加として表示された。ADOPep1が、10ng/mlで遊走の割合の増加を誘導したことに注目されたい。
【図7】図7は、Laser Doppler血流分析計によりマウス虚血性後肢モデルにおいて決定された血液潅流を示すグラフであり、虚血性マウス後肢における血液潅流の回復に対するADOPepの生体内活性を示す。マウス後肢モデルは、C57Blマウス後肢の大腿動脈の切除によって作成され、非手術肢はコントロールとして役立てた。ADOPep1(配列番号2;赤色記号)およびADOPep3(配列番号4;緑色記号)は、0.1マイクログラム/マウス(四角形)および1マイクログラム/マウス(円形)で手術の1日後に筋肉内注射された。PBS(黒色菱形)の注射は、コントロールとして役立てた。血流は、Laser Dopplerを使用して、直後(T0)または術後7日目(T7)、14日目(T14)、および21日目(T21)に測定された。各肢の平均潅流が決定され、潅流率[相対潅流(虚血性の左脚/コントロールの右脚)として表現される]が時間に対してプロットされた。術後21日目に、0.1マイクログラムのADOPep1で処置したマウスの肢における血液潅流の有意な増加(p<0.05)に注目されたい。
【図8】図8は、ADOPep1で処置された虚血性後肢における血管形成の組織学的評価を示すグラフである。マウスは、後肢結紮および図7に記載されるようなADOPep投与に供され、後肢結紮の後に記された日数(0日目、7日目、14日目、および21日目)で、マウスは犠牲にされ、脚はパラフィン中に包埋された。切片は、抗フォン・ヴィレブランド因子で染色され、第VIII因子陽性血管の数がImage Pro Plusソフトウェアを使用して決定された。示されているのは、ADOPep1で処置されたマウス後肢虚血の組織学的切片における平方ミリメートルあたりの毛細血管の数として表される、(サンプルあたり10個の独立した顕微鏡視野の)平均血管密度である。ADOPep1の注射後の虚血性後肢の血管密度の有意な増加に注目されたい。
【図9】図9a−bは、ADOPep1(図9a)またはPBS(図9b)の注射後21日目の、マウス後肢虚血のフォン・ヴィレブランド因子免疫染色に供された組織学的切片の顕微鏡画像である。コントロール(図9b)と比べてADOPep1処置群(図9a)における小血管の有意に高いフォン・ヴィレブランド因子染色に注目されたい。倍率 ×200。
【図10】図10a−bは、低酸素下で細胞から得られ、かつビオチニル化ADOPep1での細胞の免疫沈降(IP)の前(図10a)および後(図10b)で分析された、内皮細胞溶解物のポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)のクマシーブルー染色の画像である。図10a−レーン1−IP前の内皮細胞溶解物;レーン2−分子量マーカー;図10b−レーン3−ADOPep1でのIP内皮細胞溶解物。ビオチニル化ADOPep1でのIP後の78kDaの主要な単一タンパク質バンドに注目されたい。
【図11】図11は、通常酸素条件および低酸素条件下でのビオチニル化ADOPep1での内皮細胞溶解物の免疫沈降のウェスタンブロット分析である。ビオチニル化ADOPep1でのニトロセルロース膜の染色後の化学発光基質の添加は、78kDaでバンドを示し、それは質量分析法によってGRP78タンパク質(GenBankアクセッション番号 CAB71335;配列番号9)としてさらに同定された。レーン1−ビオチニル化ADOPep1での通常酸素下での内皮細胞溶解物のIP;レーン2−ビオチニル化ADOPep1での低酸素下での内皮細胞溶解物のIP。
【図12】図12は、ビオチニル化ADOPep1での低酸素下および通常酸素下での内皮細胞溶解物の免疫沈降のウェスタンブロット分析である。抗GRP78抗体(Santa Cruz Biotechnologies,CA,米国)でのニトロセルロース膜の染色後の化学発光基質の添加は、主要な78kDaタンパク質バンドにおけるGRP78タンパク質の同一性を確認した。レーン1−ビオチニル化ADOPep1での低酸素下での内皮細胞溶解物のIP;レーン2−ビオチニル化ADOPep1での通常酸素下での内皮細胞溶解物のIP。
【図13】図13a−bは、ビオチニル化ADOPep1での低酸素下での内皮細胞溶解物の免疫沈降のウェスタンブロット分析である。ニトロセルロース膜の染色は、ビオチニル化ADOPep1(図13a)または抗GRP78抗体(図13b)で行われ、その後、化学発光基質が添加され、GPR78タンパク質の存在が確認された。
【図14】図14は、抗GPR78抗体を用いた通常酸素条件および低酸素条件下での内皮細胞のFACS分析の結果を示す棒グラフである。抗GRP78抗体は、10種の異なる臍帯に由来する内皮細胞に添加され、細胞に対する抗体の結合がFACS分析によって決定された。低酸素条件下での内皮細胞に対する抗GRP78抗体の結合割合の増加に注目されたい。
【図15】図15は、通常酸素条件および低酸素条件下での内皮細胞に対するビオチニル化ADOPep1の結合を示すヒストグラムである。X軸−結合の強度。100,000個の細胞あたり5マイクログラムで添加されたADOPepBiotの内皮細胞に対する結合は、低酸素下で増大した。
【図16a−b】図16a−bは、抗GRP78抗体を用いた異なる腫瘍細胞株のFACS分析である。抗GRP78抗体は、MCF7乳癌細胞(図16a)およびHT−29結腸癌細胞(図16b)に添加され、細胞に対する結合がFACS分析を用いて検出された。MCF7およびHT29細胞株に対する抗GRP78抗体の結合割合の増加に注目されたい。
【図16c−d】図16c−dは、抗GRP78抗体を用いる異なる腫瘍細胞株のFACS分析である。抗GRP78抗体は、SK−28黒色腫細胞(図16c)およびK562赤芽球腫細胞(図16d)に添加され、細胞に対する結合がFACS分析を用いて検出された。SK−28細胞株に対する抗GRP78抗体の結合割合の増加に注目されたい。また、抗GRP78抗体がK562細胞の膜に結合しなかったことにも注目されたい。
【図17】図17は、内皮細胞の低酸素誘導アポトーシスに対するADOPep1の効果を示すヒストグラムである。内皮細胞は、5%仔牛血清(FCS)が補充された内皮細胞増殖培地の存在下で24時間低酸素に曝露され、その後ADOPep1(10ng/ml)または抗GRP78抗体(100ng/ml)で低酸素条件下でインキュベートされた。細胞(100,000個/チューブ)は、内皮細胞アポトーシスの決定のためにAnnexin−V FITC/PIと共にインキュベートされた。Annexin−V/PIで染色された内皮細胞のアポトーシス割合は、低酸素条件が60%のアポトーシスを誘導する一方、ADOPep1の添加は低酸素誘導アポトーシスを25%まで低減させることを示す。同様に、抗GRP78抗体は、32%までアポトーシスの低減を誘導した。
【図18a−b】図18a−bは、ADOPep1によるアポトーシスの阻害を示すドットプロットFACS分析である。低酸素下の内皮細胞は、Annexin V(X軸上に示される)およびヨウ化プロピジウム(Y軸上に示される)アポトーシスマーカーで染色された。細胞は、通常酸素下の完全培地で(図18a)および5%FCSの存在下かつ通常酸素下の完全培地で(図18b)でインキュベートされた。
【図18c】図18cは、ADOPep1によるアポトーシスの阻害を示すドットプロットFACS分析である。低酸素下の内皮細胞は、Annexin V(X軸上に示される)およびヨウ化プロピジウム(Y軸上に示される)アポトーシスマーカーで染色された。細胞は、24時間の低酸素下の飢餓培地でインキュベートされた。
【図18d−e】図18d−eは、ADOPep1によるアポトーシスの阻害を示すドットプロットFACS分析である。低酸素下の内皮細胞は、Annexin V(X軸上に示される)およびヨウ化プロピジウム(Y軸上に示される)アポトーシスマーカーで染色された。細胞は、24時間の低酸素下の飢餓培地かつADOPep1の存在下(図18d)でおよび24時間の低酸素下の飢餓培地かつ抗GRP78抗体の存在下(図18e)でインキュベートされた。ペプチドADOPep1でのインキュベーションが、染色細胞の顕著な減少を誘導し(図18d)、ADOPep1の低酸素誘導アポトーシスを低減する可能性を示すことに注目されたい。
【図19】図19は、ADOPep1ペプチド、ADOPep2ペプチド、およびADOPep3ペプチドの増加する濃度による、内皮細胞に対する抗GRP78抗体の結合の阻害(%)を示すグラフである。内皮細胞は、増加する濃度のADOPepで2時間インキュベートされ、その後細胞は、2μg/mlの抗GRP78抗体でさらに1時間インキュベートされ、EC上の結合抗体の量がELISA読み取り機を用いて検出された。ADOPep1、ADOPep2、またはADOPep3の増大する濃度は、内皮細胞に対する抗GRP78抗体の結合の50%までの阻害をもたらしたが、sRoYスクランブルペプチド(配列番号10;RYHLIPRGWDHS)は、内皮細胞に対する抗GRP78の結合に対して明確な阻害効果を示さなかったことに注目されたい。
【図20a】図20aは、ADOPep1での内皮細胞のインキュベーションの後の、内皮細胞に対する抗GRP78抗体の結合を示す。内皮細胞は、通常酸素下で48時間インキュベートされたか、あるいは低酸素下で24時間インキュベートされた後にADOPep1(10ng/mlの濃度で)の存在下または非存在下でさらに24時間通常酸素下でインキュベートされるかのいずれかであり、そして抗GRP78抗体に対する結合はFACS分析を用いて決定された。図20aは、通常酸素下(緑色プロット)、低酸素(24時間)後のADOPep1ペプチドの非存在下(赤色プロット)または存在下(青色プロット)での通常酸素下(さらに24時間)の内皮細胞のフローサイトメトリー分析である。抗GRP78の結合は、通常酸素下の18.1%から低酸素下の40.1%まで増大したが、低酸素条件下でのADOPep1の存在下で細胞がインキュベートされたときに、より有意な増加(83.8%まで)が観察されたことに注目されたい。
【図20b】図20bは、ADOPep1での内皮細胞のインキュベーションの後の、内皮細胞に対する抗GRP78抗体の結合を示す。内皮細胞は、通常酸素下で48時間インキュベートされたか、あるいは低酸素下で24時間インキュベートされた後にADOPep1(10ng/mlの濃度で)の存在下または非存在下でさらに24時間通常酸素下でインキュベートされるかのいずれかであり、そして抗GRP78抗体に対する結合はFACS分析を用いて決定された。図20bは、通常酸素、低酸素下(24時間)、10ng/ml ADOPep1ありの通常酸素下、低酸素(24時間)後の通常酸素下(24時間)、または低酸素(24時間)後の10ng/ml ADOPep1ありの通常酸素(24時間)下の、内皮細胞に対する抗GRP78結合の割合を示すヒストグラムである。結果は、3回の独立実験の平均±標準偏差を表す。
【図21】図21は、虚血誘導後の日数の関数としての、ADOPep1で処置された後肢虚血における領域あたりのGRP78陽性(GRP78+)細胞の平均数を示す棒グラフである。マウスは、後肢結紮(虚血モデル)に供され、1日後に1μg/マウスのADOPep1か、またはコントロールとしての50μlのPBSのいずれかで注射された。GRP78陽性細胞の数は、虚血の誘導後7日目、14日目、または21日目に犠牲にされた(ADOPep1またはPBSで注射された)マウスの結紮された後肢から、または正常な非処置(非虚血)後肢から調製された組織学的切片において決定された。GRP78陽性細胞の数は、結紮後7日目〜14日目にPBSを注入された後肢において減少し、さらに結紮後21日目に減少しているが、GRP78陽性細胞の数は、結紮後7日目〜14日目にADOPep1を注射された後肢において有意に増加し、さらに結紮後21日目に減少したことに注目されたい。
【図22】図22は、虚血誘導後の日数の関数として、ADOPep1で処置された虚血性後肢における視野あたりのアポトーシス細胞の数を示す棒グラフである。マウスは、本明細書の上記の図21の説明において記載されるように、後肢結紮およびPBSまたはADOPep1注射に供され、顕微鏡視野あたりのアポトーシス細胞の数が、虚血の誘導後7日目、14日目、または21日目に犠牲にされたマウスの、結紮されかつADOPep1またはPBS処置された後肢から、または正常の非虚血後肢から調製された組織学的切片において決定された。PBSを注射された虚血性後肢にくらべて、ADOPep1を注射された結紮後肢における虚血誘導アポトーシス細胞の数の有意な減少(結紮後7日目)に注目されたい。
【図23】図23は、ADOPepからの保存されたモチーフに相当する特定のペプチドによる、内皮細胞に対するADOPep1Biot(2μg/ml)の結合の阻害を示すグラフである。内皮細胞は、モチーフA(HWRRP;配列番号7)、モチーフB(HWRRA;配列番号8)、モチーフC(AHLLP;配列番号6)、または非ビオチニル化ADOPep1(配列番号2)に相当するアミノ酸配列を有するペプチドの増大する濃度(0.01、0.1、または1ng/ml)の存在下で、通常酸素条件下で2時間インキュベートされ、次いで、ビオチニル化ADOPep1(2μg/ml)で1時間インキュベートされ、そして内皮細胞に対するビオチニル化ADOPep1の結合はHRPストレプトアビジンを使用して決定された。モチーフAおよびモチーフBに相当するアミノ酸を有するペプチドが、内皮細胞に対するADOPep1Biotの結合の有意な阻害を示したことに注目されたい。
【図24a−b】図24a−bは、低酸素誘導アポトーシスを示すFACS分析である。内皮細胞は、10ng/mlのADOPep1の非存在下(図24a)または存在下(図24b)で低酸素条件下で24時間インキュベートされ、アポトーシスのレベルは、FACS分析およびPI(Y軸上に示される)/Annexin V(X軸上に示される)マーカーを用いて決定された。
【図24c−d】図24c−dは、低酸素誘導アポトーシスを示すFACS分析である。内皮細胞は、モチーフAのペプチド(図24c)またはモチーフCのペプチド(図24b)の存在下で低酸素条件下で24時間インキュベートされ、アポトーシスのレベルは、FACS分析およびPI(Y軸上に示される)/Annexin V(X軸上に示される)マーカーを用いて決定された。ADOPep1およびモチーフAのペプチドは低酸素誘導アポトーシスを低酸素下の79.3%から28.6(ADOPep1)または35.8%(モチーフA)まで阻害することができたが、モチーフCペプチドは低酸素誘導アポトーシスに対し効果を示さなかった(81.1%)ことに注目されたい。
【図25】図25は、ADOPep1、モチーフA、およびモチーフBによる低酸素誘導アポトーシスの阻害を示す棒グラフである。内皮細胞は、10ng/mlのADOPep1、モチーフA、モチーフB、またはモチーフCの非存在下または存在下で、低酸素条件下で24時間インキュベートされ、アポトーシスのレベルは、FACS分析を用いて決定され、そしてAnnexin VおよびPI陽性細胞の割合として定量化された。結果は、4回の独立実験の平均±標準偏差を表す。ADOPep1およびモチーフAおよびBペプチドは低酸素誘導アポトーシスの有意な阻害を示したが、モチーフCペプチドはアポトーシスに対して効果を示さなかったことに注目されたい。
【図26a】図26aは、ADOPepモチーフによる低酸素下での内皮細胞遊走の誘導を示すグラフである。内皮細胞は、増大する濃度のADOPep1(赤色線)、ペプチドモチーフA(暗い青色線)、ペプチドモチーフB(緑色線)、またはペプチドモチーフC(明るい青色線)の存在下で、低酸素条件下で5時間インキュベートされ、内皮細胞の遊走が検出された。図26a−実験1;図26b−実験2。ADOPep1、モチーフAおよびBペプチドは、約10ng/mlの濃度で内皮細胞遊走を誘導したが、モチーフCペプチドは内皮細胞遊走に対して有意な効果を示さなかったことに注目されたい。
【図26b】図26bは、ADOPepモチーフによる低酸素下での内皮細胞遊走の誘導を示すグラフである。内皮細胞は、増大する濃度のADOPep1(赤色線)、ペプチドモチーフA(暗い青色線)、ペプチドモチーフB(緑色線)、またはペプチドモチーフC(明るい青色線)の存在下で、低酸素条件下で5時間インキュベートされ、内皮細胞の遊走が検出された。図26a−実験1;図26b−実験2。ADOPep1、モチーフAおよびBペプチドは、約10ng/mlの濃度で内皮細胞遊走を誘導したが、モチーフCペプチドは内皮細胞遊走に対して有意な効果を示さなかったことに注目されたい。
【図27】図27は、ADOPep1およびモチーフA(配列番号7)を用いる管形成の誘導を示すグラフである(スクランブルsROYペプチドは管形成を誘導しなかった)。内皮細胞は、24時間補充物不含培地においてインキュベートされ、50,000個の細胞が、次いで、500μl培地から250μlの(増殖因子が低減された)Cultrex基底膜抽出物で予め被覆された24ウェルプレート(R&D Systems,Minneapolis,MN,米国)に移された。ADOPep1、モチーフA、およびスクランブルsROYペプチドは、(予備的な知見に基づいて)10ng/mlの最適濃度で添加され、スライドは、18時間のインキュベーション後に光学顕微鏡によって調べられた。結果は、3種の異なる臍帯を用いる3回の実験の平均±標準偏差を表す。結合された細胞のネットワーク(管形成)の長さは、Image−Pro Plus Imageソフトウェア(Media Cybernetics,Silver Spring,MD,米国)を用いて、各ウェルの5つの異なる領域においてマイクロメーター単位で測定された。ADOPep1およびモチーフAが、飢餓かつ通常酸素条件下で内皮細胞における結合された細胞のネットワークの長さを有意に増大したが、(コントロールペプチドとしての)スクランブルsROYは管形成を誘導しなかったことに注目されたい。
【図28a−b】図28a−dは、ADOPep1およびモチーフAペプチドが内皮細胞上の同じ受容体に対する結合について競合することを示すFACSヒストグラム(図28a−c)およびグラフ(図28d)である。内皮細胞は、内皮細胞増殖培地において低酸素条件下で24時間インキュベートされた。細胞はトリプシンによって移され、そして増大する濃度のADOPep1、モチーフAおよびモチーフCペプチドと共に氷上で1時間インキュベートされた。GRP78ポリクローナル抗体(2μg/1000,000)は、氷上で2時間細胞に添加された。抗ヤギFITC(Jackson ImmunoResearch)は、氷上で30分間添加された。IgG1−FITCは、イソタイプコントロールとして使用された。サンプルは、FACScan(Beckton Dickinson)で分析された。ADOPep1ペプチド(図28a)およびモチーフAペプチド(図28b)は内皮細胞に対するGRP78の結合を阻害し、モチーフCペプチド(図28c)は阻害しなかったことに注目されたい。図28dは、2回の独立実験によって決定されたペプチド量の関数としての、内皮細胞に対するGRP78の結合の平均割合を示す。
【図28c−d】図28a−dは、ADOPep1およびモチーフAペプチドが内皮細胞上の同じ受容体に対する結合について競合することを示すFACSヒストグラム(図28a−c)およびグラフ(図28d)である。内皮細胞は、内皮細胞増殖培地において低酸素条件下で24時間インキュベートされた。細胞はトリプシンによって移され、そして増大する濃度のADOPep1、モチーフAおよびモチーフCペプチドと共に氷上で1時間インキュベートされた。GRP78ポリクローナル抗体(2μg/1000,000)は、氷上で2時間細胞に添加された。抗ヤギFITC(Jackson ImmunoResearch)は、氷上で30分間添加された。IgG1−FITCは、イソタイプコントロールとして使用された。サンプルは、FACScan(Beckton Dickinson)で分析された。ADOPep1ペプチド(図28a)およびモチーフAペプチド(図28b)は内皮細胞に対するGRP78の結合を阻害し、モチーフCペプチド(図28c)は阻害しなかったことに注目されたい。図28dは、2回の独立実験によって決定されたペプチド量の関数としての、内皮細胞に対するGRP78の結合の平均割合を示す。
【図29】図29は、低酸素条件下でのADOPep1結合に対するGRP78受容体内在化反応を示すグラフである。内皮細胞は、飢餓条件かつ低酸素下で一晩インキュベートされた。細胞は、5分間、15分間、30分間、および60分間10ng/mlのADOPep1と共にインキュベートされた。膜染色のために、ビオチニル化ADOPep1を5マイクログラムでインタクトな細胞に1時間添加し、ストレプトアビジンFITCによって置換した。細胞内染色のために、細胞は1%パラホルムアルデヒドで固定された後に、0.1%サポニンと共に15分間インキュベートされた。細胞の洗浄後、ビオチニル化ADOPep1が細胞に添加された。サンプルは、FACScan(Beckton Dickinson)で分析された。膜染色は、青色棒によって示され(結果は、未処理細胞に対して正規化された割合で表される);平均細胞内染色は、紫色棒によって示される(結果は蛍光の平均として表される)。
【図30】図30a−bは、ADOPep1およびモチーフAによるERKのリン酸化の誘導を示すウェスタンブロット分析である。飢餓条件かつ5時間の低酸素下の内皮細胞は、10ng/mlのADOPep1(レーン2〜5)またはモチーフA(レーン6〜9)ペプチドと共に、5分間(レーン2および6)、20分間(レーン3および7)、30分間(レーン4および8)、および60分間(レーン5および9)インキュベートされるか、またはペプチドでのさらなるインキュベーション無しで低酸素のままであった(レーン1)。インキュベーション後、溶解物が調製され、SDS−PAGEおよびニトロセルロース膜上でのブロッティングに供された。ウェスタンブロット分析は、抗ホスホERK1/2抗体を使用して実施された。低酸素条件下でADOPep1およびモチーフAと共に20分間インキュベーションした後のERK1/2リン酸化の誘導に注目されたい。デンシトメトリー測定は、ADOPep1と共に20分間インキュベーションした後およびモチーフAと共に20〜60分間インキュベーションした後に最大ERKリン酸化を示した(データは示されていない)。図30a−実験1;図30b−実験2。正味のバンド密度を比較するためにデンシトメトリー分析ソフトウェアによって決定された百分率に調節された量は以下の通りであった:図30a、レーン1−4.5、レーン2−9.3、レーン3−13.7、レーン4−13.3、レーン5−11.2、レーン6−10.7、レーン7−12.4、レーン8−12.3、およびレーン9−12.4;図30b、レーン1−4.21、レーン2−12.4、レーン3−12.5、レーン4−14.8、レーン5−10.9、レーン6−14.9、レーン7−9.8、レーン8−12.7およびレーン9−7.8。
【図31】図31は、ADOPep1およびモチーフAで20分間活性化され、かつpERK阻害剤ペプチドによって阻害された内皮細胞におけるリン酸化ERK(pERK)のレベルを示すウェスタンブロット分析である。飢餓条件かつ5時間の低酸素下の内皮細胞(臍帯1由来)は、pERK阻害剤ペプチド(Santa Cruz)の存在下(レーン2および4)または非存在下(レーン1および3)で10ng/mlのADOPep1(レーン3および4)またはモチーフA(レーン1および2)ペプチドと共にインキュベートされた。コントロールのために、飢餓条件かつ5時間の低酸素下の内皮細胞(レーン5)もまた、pERK阻害剤ペプチドと共にインキュベートされた(レーン6)。pERK阻害剤ペプチドの存在下でのERKリン酸化の阻害に注目されたい。正味のバンド密度を比較するためにデンシトメトリー分析ソフトウェアによって決定された百分率に調節された量は以下の通りであった:レーン1−19、レーン2−14、レーン3−14、レーン4−8.8、レーン5−11、レーン6−2.1。
【図32】図32a−bは、リン酸化ERKのレベルに対するADOPepの効果を示すウェスタンブロット分析である。低酸素(5時間)下の臍帯1由来(図32a)または臍帯2由来(図32b)の内皮細胞(EC)は、10ng/mlのADOPep1、ADOPep2、およびADOPep3で20または30分間インキュベートされるか、または未処理(すなわち、いかなるペプチドも無い低酸素下)のままであった。サンプル細胞溶解物のウェスタンブロット分析は、ニトロセルロース膜上で抗ホスホERK抗体を用いて実施された。図32a:レーン1および2−低酸素下のEC(未処理);レーン3および4−ADOPep3と共に20分間(レーン3)または30分間(レーン4)インキュベートされた低酸素下のEC;レーン5および6−ADOPep2と共に20分間(レーン5)または30分間(レーン6)インキュベートされた低酸素下のEC;レーン7および8−ADOPep1と共に20分間(レーン7)または30分間(レーン8)インキュベートされた低酸素下のEC;図32b:レーン1〜4−ADOPep1(レーン2)、ADOPep2(レーン3)、ADOPep3(レーン4)と共に20分間インキュベートされたか、または未処理のままである(レーン1)低酸素下のEC;レーン5〜8−ADOPep1(レーン6)、ADOPep2(レーン7)、ADOPep3(レーン8)と共に30分間インキュベートされたか、または未処理のままである(レーン5)低酸素下のEC。デンシトメトリー測定は、ADOPep1およびADOPep2での内皮細胞のインキュベーション後にERK1/2リン酸化の増大を示したが、ADOPep3では増大を示さなかった。正味のバンド密度を比較するためにデンシトメトリー分析ソフトウェアによって決定された百分率に調節された量は以下の通りであった:図32a、レーン1−11、レーン2−13、レーン3−11、レーン4−5、レーン5−11、レーン6−13、レーン7−17、レーン8−16.7;図32b、レーン1−17、レーン2−22、レーン3−19、レーン4−7、レーン5−8、レーン6−13、レーン7−14、レーン8−1。
【図33a−b】図33a−fは、ADOPep1による内皮細胞の低酸素誘導アポトーシスの特異的な阻害を示す代表的FASC分析である。ペトリ皿中の内皮細胞は、通常酸素下(図33aおよび33d)、24時間の低酸素への曝露(図33cおよび33f)または100,000個の細胞あたり100μmolのCoClでの通常酸素下でのインキュベート(図33bおよび33e)、10ng/mlのADOPep1ペプチド(24時間)の非存在下(図33a−c)または存在下(図33d−f)で、補充物不含の内皮細胞増殖培地において5%FCSと共に24時間インキュベートされた。細胞はトリプシン処理され、5%FCSおよび0.1%Naアジドと共にPBS中にすぐに再懸濁された。100,000個の細胞を含有するサンプルは、Annexin−FITC(X軸)およびヨウ化プロピジウム(Y軸)キット(Bender Medsystems,Vienna,オーストリア)を用いて、製造者の指示書に従ってアポトーシスについて試験された。結果は、FACScan(Beckton Dickinson)によって分析された。細胞が、ADOPep1ペプチドでインキュベートされたとき、CoClおよび低酸素条件はアポトーシス細胞の画分を増大し(図33aと比較して図33bおよび33cにおけるPIおよびAnnexinFITC陽性細胞の増大によって示される)、低酸素誘導アポトーシスの有意な画分が阻害された(図33fにおけるPIおよびAnnexin−FITC陽性細胞を図33cにおけるそれらと比較されたい)が、CoClによるアポトーシスに対する効果は観察されなかった(図33eにおけるPIおよびAnnexin−FITC陽性細胞を図33bにおけるそれらと比較されたい)ことに注目されたい。
【図33c】図33a−fは、ADOPep1による内皮細胞の低酸素誘導アポトーシスの特異的な阻害を示す代表的FASC分析である。ペトリ皿中の内皮細胞は、通常酸素下(図33aおよび33d)、24時間の低酸素への曝露(図33cおよび33f)または100,000個の細胞あたり100μmolのCoClでの通常酸素下でのインキュベート(図33bおよび33e)、10ng/mlのADOPep1ペプチド(24時間)の非存在下(図33a−c)または存在下(図33d−f)で、補充物不含の内皮細胞増殖培地において5%FCSと共に24時間インキュベートされた。細胞はトリプシン処理され、5%FCSおよび0.1%Naアジドと共にPBS中にすぐに再懸濁された。100,000個の細胞を含有するサンプルは、Annexin−FITC(X軸)およびヨウ化プロピジウム(Y軸)キット(Bender Medsystems,Vienna,オーストリア)を用いて、製造者の指示書に従ってアポトーシスについて試験された。結果は、FACScan(Beckton Dickinson)によって分析された。細胞が、ADOPep1ペプチドでインキュベートされたとき、CoClおよび低酸素条件はアポトーシス細胞の画分を増大し(図33aと比較して図33bおよび33cにおけるPIおよびAnnexinFITC陽性細胞の増大によって示される)、低酸素誘導アポトーシスの有意な画分が阻害された(図33fにおけるPIおよびAnnexin−FITC陽性細胞を図33cにおけるそれらと比較されたい)が、CoClによるアポトーシスに対する効果は観察されなかった(図33eにおけるPIおよびAnnexin−FITC陽性細胞を図33bにおけるそれらと比較されたい)ことに注目されたい。
【図33d−e】図33a−fは、ADOPep1による内皮細胞の低酸素誘導アポトーシスの特異的な阻害を示す代表的FASC分析である。ペトリ皿中の内皮細胞は、通常酸素下(図33aおよび33d)、24時間の低酸素への曝露(図33cおよび33f)または100,000個の細胞あたり100μmolのCoClでの通常酸素下でのインキュベート(図33bおよび33e)、10ng/mlのADOPep1ペプチド(24時間)の非存在下(図33a−c)または存在下(図33d−f)で、補充物不含の内皮細胞増殖培地において5%FCSと共に24時間インキュベートされた。細胞はトリプシン処理され、5%FCSおよび0.1%Naアジドと共にPBS中にすぐに再懸濁された。100,000個の細胞を含有するサンプルは、Annexin−FITC(X軸)およびヨウ化プロピジウム(Y軸)キット(Bender Medsystems,Vienna,オーストリア)を用いて、製造者の指示書に従ってアポトーシスについて試験された。結果は、FACScan(Beckton Dickinson)によって分析された。細胞が、ADOPep1ペプチドでインキュベートされたとき、CoClおよび低酸素条件はアポトーシス細胞の画分を増大し(図33aと比較して図33bおよび33cにおけるPIおよびAnnexinFITC陽性細胞の増大によって示される)、低酸素誘導アポトーシスの有意な画分が阻害された(図33fにおけるPIおよびAnnexin−FITC陽性細胞を図33cにおけるそれらと比較されたい)が、CoClによるアポトーシスに対する効果は観察されなかった(図33eにおけるPIおよびAnnexin−FITC陽性細胞を図33bにおけるそれらと比較されたい)ことに注目されたい。
【図33f】図33a−fは、ADOPep1による内皮細胞の低酸素誘導アポトーシスの特異的な阻害を示す代表的FASC分析である。ペトリ皿中の内皮細胞は、通常酸素下(図33aおよび33d)、24時間の低酸素への曝露(図33cおよび33f)または100,000個の細胞あたり100μmolのCoClでの通常酸素下でのインキュベート(図33bおよび33e)、10ng/mlのADOPep1ペプチド(24時間)の非存在下(図33a−c)または存在下(図33d−f)で、補充物不含の内皮細胞増殖培地において5%FCSと共に24時間インキュベートされた。細胞はトリプシン処理され、5%FCSおよび0.1%Naアジドと共にPBS中にすぐに再懸濁された。100,000個の細胞を含有するサンプルは、Annexin−FITC(X軸)およびヨウ化プロピジウム(Y軸)キット(Bender Medsystems,Vienna,オーストリア)を用いて、製造者の指示書に従ってアポトーシスについて試験された。結果は、FACScan(Beckton Dickinson)によって分析された。細胞が、ADOPep1ペプチドでインキュベートされたとき、CoClおよび低酸素条件はアポトーシス細胞の画分を増大し(図33aと比較して図33bおよび33cにおけるPIおよびAnnexinFITC陽性細胞の増大によって示される)、低酸素誘導アポトーシスの有意な画分が阻害された(図33fにおけるPIおよびAnnexin−FITC陽性細胞を図33cにおけるそれらと比較されたい)が、CoClによるアポトーシスに対する効果は観察されなかった(図33eにおけるPIおよびAnnexin−FITC陽性細胞を図33bにおけるそれらと比較されたい)ことに注目されたい。
【図34】図34は、図33a−33fに記載される実験のFACS結果を示すヒストグラムである。データは、2回の実験の平均±SDを表す。24時間の低酸素またはCoCl処置がアポトーシスのレベルを約27%(通常酸素下)から約70%または67%までそれぞれ増大させたことに注目されたい。また、ADOPep1処置が、低酸素誘導アポトーシスを約40パーセント有意に阻害したが、CoCl誘導アポトーシスを阻害しなかったことにも注目されたい。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明のいくつかの実施形態は、GRP78受容体を介して内皮細胞に結合することができ、かつ血管形成を誘導することができるペプチド、および虚血性疾患のような不十分な血管形成によって特徴付けられる病状を処置するためのその使用に関する。
【0047】
本発明によるペプチド、組成物、および方法の原理および操作は、図面および付随する説明を参照してより良く理解されることができる。
【0048】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部、または、実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、あるいは、様々な方法で実施、または、実行される。また、本明細書中において用いられる表現法および用語法は説明のためであって、限定として見なされるべきでないことを理解しなければならない。
【0049】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、(ADAM15タンパク質に由来する)ヒスチジン−トリプトファン−アルギニン−アルギニン(HWRR)アミノ酸モチーフを含む短いアミノ酸配列が、内皮細胞上のGRP78受容体に結合することができ、内皮細胞の増殖および遊走を誘導することができ、かつ低酸素誘導アポトーシスを阻害することができ、従って、血管形成を誘導し、虚血性疾患を処置するために使用されることが可能であることを発見した。
【0050】
以下の実施例の節において記載されるように、本発明のペプチド(例えば、配列番号2、3、および4にそれぞれ記載されるADOPep−1、2、および3、または配列番号7および8に記載されるペプチド)は、生体外で内皮細胞に結合し(図3および4)、低酸素下での内皮細胞の増殖(図5)および遊走(図6および26a−b)を誘導する。加えて、マウス後肢虚血モデルを使用する生体内実験は、本発明のペプチド(例えば、ADOPep1)での虚血性マウスの処置が、血液潅流(図7)および血管密度(図8、9a−b)を有意に増大することを示している。さらに、免疫沈降(IP)およびウェスタンブロット分析は、内皮細胞上のADOPepの受容体が、グルコース調節タンパク質(GRP78;配列番号9)であり(図10a−b、11、12)、それが種々の腫瘍細胞上で発現されること(図16a−d)、および本発明のペプチド(例えば、ADOPep1)が、低酸素下で内皮細胞上のGRP78に結合すること(図13a−bおよび19)を明らかにした。加えて、低酸素条件は内皮細胞上のGRP78受容体の呈示を約40%まで増大する(図15)が、ADOpep1での内皮細胞の予備インキュベーションは、内皮細胞上のGRP78呈示を約84%までさらに増大する(図20a−b、21)。さらに、本発明のペプチド(例えば、ADOPep1、または配列番号7および8のような短いペプチド)は、生体外(図17、18、24a−d、および25)および生体内(図22)の両方において内皮細胞の低酸素誘導アポトーシスを防止したが、塩化コバルト誘導アポトーシスは防止しなかった(図33a−fおよび34)。加えて、本発明のペプチド(例えば、配列番号2または7)での内皮細胞のインキュベーションは、管形成(図27)およびERK1/2リン酸化の有意な増大(図30a−b、31)をもたらす。要するに、これらの結果は、本発明のペプチドが低酸素下で組織における血管形成を誘導する能力を示し、かつ虚血性疾患を処置するためのそれらの使用を示唆する。
【0051】
従って、本発明の1つの側面によれば、アミノ酸配列HWRR(配列番号5)を含む単離されたペプチドであって、4個または5個のアミノ酸からなるペプチドが提供される。
【0052】
例えば、本発明のこの側面によるペプチドは、下記の表1に列挙されるペプチドのいずれかであることができる。

【0053】
本発明の実施形態によれば、本発明のペプチドは、HWRRP(配列番号7)またはHWRRA(配列番号8)であることができる。
【0054】
本発明がまた、HWRRアミノ酸配列を含む長いペプチドも企図することは理解されるだろう。
【0055】
従って、本発明の別の側面によれば、配列番号5に記載のアミノ酸配列HWRRを含む単離されたペプチドが提供されるが、ただし、ペプチドは配列番号11(YPHIDSLGHWRR)ではない。
【0056】
本発明の実施形態によれば、本発明のこの側面のペプチドは、少なくとも4個(例えば、4個)のアミノ酸、少なくとも5個(例えば、5個)のアミノ酸、少なくとも6個(例えば、6個)のアミノ酸、少なくとも7個(例えば、7個)のアミノ酸、少なくとも8個(例えば、8個)のアミノ酸、少なくとも9個(例えば、9個)のアミノ酸、少なくとも10個(例えば、10個)のアミノ酸、少なくとも11個(例えば、11個)のアミノ酸、少なくとも12個(例えば、12個)のアミノ酸、少なくとも13個(例えば、13個)のアミノ酸、少なくとも14個(例えば、14個)のアミノ酸、少なくとも15個(例えば、15個)のアミノ酸、少なくとも16個(例えば、16個)のアミノ酸、少なくとも17個(例えば、17個)のアミノ酸、少なくとも18個(例えば、18個)のアミノ酸、少なくとも19個(例えば、19個)のアミノ酸、少なくとも20個(例えば、20個)のアミノ酸、少なくとも21個(例えば、21個)のアミノ酸、少なくとも22個(例えば、22個)のアミノ酸、少なくとも23個(例えば、23個)のアミノ酸、少なくとも24個(例えば、24個)のアミノ酸、少なくとも25個(例えば、25個)のアミノ酸、少なくとも26個(例えば、26個)のアミノ酸、少なくとも27個(例えば、27個)のアミノ酸、少なくとも28個(例えば、28個)のアミノ酸、少なくとも29個(例えば、29個)のアミノ酸、少なくとも30個(例えば、30個)のアミノ酸、少なくとも31個(例えば、31個)のアミノ酸、少なくとも32個(例えば、32個)のアミノ酸、少なくとも33個(例えば、33個)のアミノ酸、少なくとも34個(例えば、34個)のアミノ酸、少なくとも35個(例えば、35個)のアミノ酸、少なくとも36個(例えば、36個)のアミノ酸、少なくとも37個(例えば、37個)のアミノ酸、少なくとも38個(例えば、38個)のアミノ酸、少なくとも39個(例えば、39個)のアミノ酸、少なくとも40個(例えば、40個)のアミノ酸、少なくとも41個(例えば、41個)のアミノ酸、少なくとも42個(例えば、42個)のアミノ酸、少なくとも43個(例えば、43個)のアミノ酸、少なくとも44個(例えば、44個)のアミノ酸、少なくとも45個(例えば、45個)のアミノ酸、少なくとも46個(例えば、46個)のアミノ酸、少なくとも47個(例えば、47個)のアミノ酸、少なくとも48個(例えば、48個)のアミノ酸、少なくとも49個(例えば、49個)のアミノ酸、および50個以下(例えば50個)のアミノ酸を含む。
【0057】
本発明の実施形態によれば、本発明のこの側面のペプチドは、50個以下のアミノ酸、49個以下のアミノ酸、48個以下のアミノ酸、47個以下のアミノ酸、46個以下のアミノ酸、45個以下のアミノ酸、44個以下のアミノ酸、43個以下のアミノ酸、42個以下のアミノ酸、41個以下のアミノ酸、40個以下のアミノ酸、39個以下のアミノ酸、38個以下のアミノ酸、37個以下のアミノ酸、36個以下のアミノ酸、35個以下のアミノ酸、34個以下のアミノ酸、33個以下のアミノ酸、32個以下のアミノ酸、31個以下のアミノ酸、30個以下のアミノ酸、29個以下のアミノ酸、28個以下のアミノ酸、27個以下のアミノ酸、26個以下のアミノ酸、25個以下のアミノ酸、24個以下のアミノ酸、23個以下のアミノ酸、22個以下のアミノ酸、21個以下のアミノ酸、20個以下のアミノ酸、19個以下のアミノ酸、18個以下のアミノ酸、17個以下のアミノ酸、16個以下のアミノ酸、15個以下のアミノ酸、14個以下のアミノ酸、13個以下のアミノ酸、12個以下のアミノ酸、11個以下のアミノ酸、10個以下のアミノ酸、9個以下のアミノ酸、8個以下のアミノ酸、7個以下のアミノ酸、6個以下のアミノ酸、5個のアミノ酸、または4個のアミノ酸を含む。
【0058】
本発明のペプチドの長さ(「x」)が、少なくとも「n」でありかつ「y」以下である値を有する任意の整数であることができることは理解されるだろう。すなわち、nyで、n<yであり、一方「n」は4〜49の値を有する整数であり、「y」は5〜50の値を有する整数である。
【0059】
本発明の実施形態によれば、本発明のこの側面のペプチドは、少なくとも4個かつ50個以下のアミノ酸、少なくとも4個かつ7個以下のアミノ酸、少なくとも5個かつ8個以下のアミノ酸、少なくとも6個かつ9個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ10個以下のアミノ酸、少なくとも8個かつ11個以下のアミノ酸、少なくとも9個かつ12個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ13個以下のアミノ酸、少なくとも12個かつ17個以下のアミノ酸、少なくとも12個かつ20個以下のアミノ酸、少なくとも12個かつ30個以下のアミノ酸、少なくとも10個かつ20個以下のアミノ酸、少なくとも8個かつ30個以下のアミノ酸、少なくとも12個かつ40個以下のアミノ酸を含む。
【0060】
本発明の実施形態によれば、本発明のこの側面のペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む。
【0061】
本発明の実施形態によれば、本発明のこの側面のペプチドは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む。
【0062】
本発明の実施形態によれば、本発明のこの側面のペプチドは、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む。
【0063】
本明細書中で使用される用語「ペプチド」は、天然のペプチド(分解産物または合成的に合成されたペプチドまたは組換えペプチドのいずれか)、およびペプチド模倣体(典型的には合成的に合成されたペプチド)、ならびにペプチドアナログであるペプトイドおよびセミペプトイドを包含し、これらは、例えば、ペプチドを体内でより安定化させる修飾、またはペプチドの細胞浸透能力を高める修飾を有しうる。そのような修飾には、限定されないが、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合の修飾(CH−NH、CH−S、CH−S=O、O=C−NH、CH−O、CH−CH、S=C−NH、CH=CHまたはCF=CHを含むが、これらに限定されない)、骨格の修飾、および残基の修飾が含まれる。ペプチド模倣体化合物を調製するための方法はこの分野では十分に知られており、例えば、Quantitative Drug Design,C.A.Ramsden Gd.,Chapter 17.2,F.Choplin Pergamon Press(1992)に具体的に記載される(これは、全体が本明細書中に示されるように参考として組み込まれる)。
【0064】
これに関するさらなる詳細が本明細書の下記に示される。ペプチド内のペプチド結合(−CO−NH−)は、例えば、N−メチル化結合(−N(CH)−CO−)、エステル結合(−C(R)H−C−O−O−C(R)−N−)、ケトメチレン結合(−CO−CH−)、α−アザ結合(−NH−N(R)−CO−)(式中、Rは任意のアルキル(例えば、メチル)である)、カルバ結合(−CH−NH−)、ヒドロキシエチレン結合(−CH(OH)−CH−)、チオアミド結合(−CS−NH−)、オレフィン二重結合(−CH=CH−)、レトロアミド結合(−NH−CO−)、ペプチド誘導体(−N(R)−CH−CO−)(式中、Rは、炭素原子において自然界で示される「通常」の側鎖である)によって置換することができる。これらの修飾は、ペプチド鎖に沿った結合の任意のところに存在することができ、そして同時に数カ所(2カ所〜3カ所)においてさえ存在することができる。
【0065】
天然の芳香族アミノ酸(Trp、TyrおよびPhe)は、フェニルグリシン、TIC、ナフチレンアミン(Nol)、Pheの環メチル化誘導体、Pheのハロゲン化誘導体、またはo−メチル−Tyrなどの合成された非天然型の酸に置換されることができる。
【0066】
上述のことに加えて、本発明のペプチドはまた、1個以上の修飾されたアミノ酸または1個以上の非アミノ酸モノマー(例えば脂肪酸、複合体炭水化物など)も含むことができる。
【0067】
本明細書中および請求項の節で使用される用語「アミノ酸」には、20個の天然に存在するアミノ酸;生体内で多くの場合には翻訳後修飾されたそのようなアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリンおよびホスホトレオニンを含む);および他の非通常型アミノ酸(2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリシン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシンおよびオルニチンを含むが、これらに限定されない)が含まれることが理解される。さらに、用語「アミノ酸」には、D−アミノ酸およびL−アミノ酸の両方が含まれる。
【0068】
下記の表2および表3は、本発明で使用されることができる天然に存在するアミノ酸(表2)および非通常型アミノ酸または修飾型アミノ酸(例えば合成アミノ酸、表3)を列挙する。




【0069】
本発明のペプチドは、線状形態で利用されることができる。しかし、環化がペプチドの特性をひどく妨害しない場合、ペプチドの環状形態もまた利用できることが理解される。環状ペプチドは、環状形態に合成されるか、または所望の条件(例えば生理学的条件)の下で環状形態を備えるように構成されることも可能である。
【0070】
治療において短いペプチドフラグメントを使用する際の大きな障害の1つは、立体特異的な細胞プロテアーゼによるそのタンパク質分解的な分解であるので、本発明のペプチドは、天然アミノ酸のD−異性体から合成されうることが理解される[すなわち、インベルソ(inverso)ペプチドアナログ、Tjernberg(1997)、J.Biol.Chem.、272:12601〜5;Gazit(2002)、Curr.Med.Chem.、9:1667〜1675]。
【0071】
加えて、本発明のペプチドには、そのレトロアナログ、インベルソアナログおよびレトロ−インベルソアナログが含まれる。ホルモンの完全なレトロ−インベルソアナログまたは延長された部分的レトロ−インベルソアナログは生物学的活性を保持または増強することが一般には見出されていることが理解される。レトロ反転化はまた、酵素阻害剤の合理的な設計の分野でも適用されている(米国特許第6261569号を参照のこと)。
【0072】
本明細書中で使用される「レトロペプチド」は、生来的なペプチド配列とは反対方向で組み立てられる、L−アミノ酸残基から構成されるペプチドを示す。
【0073】
天然に存在するポリペプチドのレトロインベルソ改変では、α−炭素の立体化学が対応するL−アミノ酸のα−炭素の立体化学とは反対であるアミノ酸(すなわち、D−アミノ酸またはD−allo−アミノ酸)からの生来的なペプチド配列とは逆の順序での合成の組み立てを伴う。従って、レトロインベルソアナログは、逆になった末端および逆方向のペプチド結合を有しており、その一方で、生来的なペプチド配列におけるような側鎖のトポロジーを本質的には維持している。
【0074】
本発明のペプチドのアミノ酸残基における保存された変化を含む上記アミノ酸修飾体のいずれかの取り込みは、本発明のペプチドの血管形成機能(例えば、内皮細胞の増殖、遊走、血管出芽、血管新生)が保持される限り行われうることが理解される。このことを調べるために、本明細書の下記および下記の実施例の節に記載される血管形成アッセイのいずれかが行われることができる。
【0075】
本発明のペプチドは、ペプチド合成の分野における当業者に既知の任意の技術によって合成されることができる。固相ペプチド合成については、多くの技術の要約が、Stewart,J.M.およびYoung,J.D.(1963)「Solid Phase Peptide Synthesis」W.H.Freeman Co.(San Francisco)に、また、Meienhofer,J.(1973)「Hormonal Proteins and Peptides」第2巻、46頁、Academic Press(New York)に見出されうる。古典的な溶液合成の概括については、Schroder,G.およびLupke,K.(1965)The Peptides、第1巻、Academic Press(New York)を参照のこと。
【0076】
一般に、ペプチド合成方法は、1つ以上のアミノ酸または好適に保護されたアミノ酸を成長中のペプチド鎖に逐次付加することを含む。通常、最初のアミノ酸のアミノ基またはカルボキシル基のいずれかが、好適な保護基によって保護される。保護または誘導体化されたアミノ酸は、その後、好適に保護された相補的な(アミノまたはカルボキシル)基を有する配列内の次のアミノ酸を、アミド連結を形成するために好適な条件のもとで加えることによって、不活性な固体担体に結合されることできるか、または、溶液中で利用されることができる。その後、保護基が、この新しく付加されたアミノ酸残基から除かれ、その後、次のアミノ酸(好適に保護されたアミノ酸)が加えられ、以降、同様に繰り返され;伝統的には、このプロセスはさらに洗浄工程を伴う。所望されるアミノ酸のすべてが適切な配列で連結された後、いずれかの残留する保護基(および何らかの固体担体)が、最終的なペプチド化合物を得るために、逐次的または同時に除かれる。この一般的な手順の簡便な変性によって、2つ以上のアミノ酸を一度に、例えば、保護されたトリペプチドを適切に保護されたジペプチドに(キラル中心をラセミ化させない条件のもとで)カップリングして、脱保護後にペンタペプチドを形成することなどによって、成長中の鎖に付加することが可能である。
【0077】
ペプチド合成のさらなる記載が米国特許第6472505号に開示される。本発明のペプチド化合物を調製する1つの方法は、固相担体を利用する固相ペプチド合成を含む。大規模なペプチド合成がAndersson Biopolymers、2000、55(3):227〜50によって記載される。
【0078】
組換え技術は、大量のペプチドが要求されるときに使用されることができる(長いペプチドが要求されるときに使用されることができる)。そのような組換え技術は、Bitterら(1987)、Methods in Enzymol.153:516〜544;Studierら(1990)、Methods in Enzymol.185:60〜89;Brissonら(1984)、Nature、310:511〜514;Takamatsuら(1987)、EMBO J.6:307〜311;Coruzziら(1984)、EMBO J.3:1671〜1680;およびBrogliら(1984)、Science、224:838〜843;Gurleyら(1986)、Mol.Cell.Biol.6:559〜565;ならびに、Weissbach&Weissbach、1988、Methods for Plant Molecular Biology、Academic Press、NY、第VIII節、421頁〜463頁によって記載される。
【0079】
簡単に記載すると、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、およびポリヌクレオチドの発現を宿主細胞(例えば、E.Coliのような原核生物宿主細胞、または植物、酵母、または哺乳動物細胞のような真核生物宿主細胞)において導くためのプロモーターを含む核酸構築物は、組換ペプチドの生成のために好適な条件下で、好適な宿主細胞と共に使用されることができる。
【0080】
本発明のペプチドは、「実質的に純粋な」形態で回収されることができる。本明細書中で使用される「実質的に純粋な」は、本明細書中に記載される様々な適用(例えば、治療目的、または診断目的)においてペプチドの効果的な使用を可能にする純度を示す。
【0081】
従って、本発明は、本発明のペプチドの少なくとも1種を含む組成物を提供する。例えば、本発明の組成物は、本発明のペプチドの1種、2種、3種またはそれ以上を含むことができる。
【0082】
本発明の実施形態によれば、本発明のペプチドは、組織の内皮細胞上の配列番号9に記載されるグルコース調節タンパク質(GRP78)に結合することができる。
【0083】
本発明の実施形態によれば、GRP78に対する本発明のペプチドの結合は、低酸素条件下でさえ対象の組織における血管形成の誘導(すなわち、血管新生を誘導すること)をもたらす。
【0084】
本発明の血管形成促進ペプチドが、対象において血管形成を誘導するために使用されうることが理解されるだろう。
【0085】
従って、本発明の追加の側面によれば、血管形成の誘導を必要とする対象において血管形成を誘導する方法が提供される。この方法は、治療有効量の本発明のペプチドのうち少なくとも1種のペプチドを対象に投与することによって行われ、それによって血管形成の誘導を必要とする対象において血管形成を誘導する。
【0086】
本明細書中で使用される用語「対象」は、哺乳動物を示し、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマ、またはヒト対象を示す。
【0087】
本発明の実施形態によれば、対象はヒトである。
【0088】
本明細書中で使用される表現「必要とする対象」は、血管形成依存性の病状と診断されるか、血管形成依存性の病状の素因を有するか、または血管形成依存性の病状に罹患する対象を示す。
【0089】
本明細書中で使用される表現「血管形成依存性の病状」は、調節されていない血管形成(すなわち、不十分な血管形成または過剰の血管形成)によって特徴付けられるいかなる病状(すなわち、状態、疾患、または障害)、および/または調節されていない血管形成(すなわち、不十分な血管形成または過剰の血管形成)から生じるいかなる病状(すなわち、状態、疾患、または障害)をも示す。
【0090】
本発明の実施形態によれば、本発明のこの側面による血管形成依存性の病状は、不十分な血管形成によって特徴付けられる病状および/または不十分な血管形成により生じる病状を示す。その例には、限定されないが、遅発性の創傷治癒、遅発性の潰瘍治癒、生殖関連障害、動脈硬化症、虚血性の血管疾患、虚血性の心臓疾患、心筋虚血、心筋梗塞、心不全、心筋機能不全、心筋再造形、心筋症、冠状動脈疾患(CAD)、アテローム硬化性心臓血管疾患、左主冠状動脈疾患、閉塞性動脈疾患、末梢虚血、末梢血管疾患、腎臓の血管疾患、末梢動脈疾患、四肢虚血、重篤な脚の虚血、下肢の虚血、脳虚血[例えば、小児期のモヤモヤ病における脳虚血(Touho H.2007,Surg Neurol.Jun 20;Epub ahead of print)]、脳血管疾患、網膜症、網膜修復、再造形障害、フォン・ヒッペル−リンダウ症候群、糖尿病、遺伝性出血性毛細管拡張症、虚血性の血管疾患、バーガー病、ならびにパーキンソン病およびアルツハイマー病のような神経変性疾患と関連する虚血が含まれる。
【0091】
血管形成の誘導を必要とする対象の組織において血管形成を誘導することが、対象の組織における(本明細書の上記に記載されるような)不十分な血管形成によって特徴付けられる病状(例えば、疾患)を処置するために使用されうることは理解されるだろう。
【0092】
対象において血管形成を誘導することおよび/または不十分な血管形成によって特徴付けられる病状を処置することは、本発明のこの側面によれば、対象に本発明のペプチドの少なくとも1種を投与することによって達成される。
【0093】
用語「処置する(treating)」は、病状(疾患、障害、または状態)の進行を阻害すること、防止すること、または抑えること、および/または、病状を低減、軽減、または退縮させることを示す。当業者は、病状の進行を評価するために使用されることができる種々の方法論およびアッセイを理解し、同様に、病状の低減、軽減、または退縮を評価するために使用されることができる種々の方法論およびアッセイを理解するだろう。
【0094】
本発明のペプチドが、それ自体で、または、本発明のペプチドが好適なキャリアまたは賦形剤と混合される医薬組成物において対象に投与されうることは理解されるだろう。
【0095】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分(すなわち、本発明のペプチドのうちの少なくとも1種のペプチド)の1つまたは複数と、他の化学的成分(例えば、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤など)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0096】
本明細書において、用語「有効成分」は、生物学的効果を担う本発明のペプチドを示す。
【0097】
以降、交換可能に使用されることができる表現「生理学的に許容されうるキャリア」および表現「医薬的に許容されうるキャリア」は、生物に対する著しい刺激を生じさせず、しかも投与された化合物の生物学的な活性および性質を阻害しないキャリアまたは希釈剤を示す。アジュバントはこれらの表現に含まれる。
【0098】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0099】
薬物の配合および投与のための技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出されることができ、これは参考として本明細書中に組み込まれる。
【0100】
好適な投与経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、特に経鼻送達、腸管送達、または非経口送達(これには、筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、クモ膜下注射、直接的な脳室内注射、心内注射(例えば、右心室腔または左心室腔内への注射、共通の冠状動脈内への注射)、静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射または眼内注射が含まれる)が含まれることができる。
【0101】
CNSに対する薬物送達のための従来の取り組みには:神経外科的戦略(例えば、脳内注射または脳室内注入);血液脳関門(BBB)の内因性の輸送経路の1つを利用しようとするペプチドの分子操作[例えば、内皮細胞の表面に結合することができる本発明のペプチドを、それ自身では血液脳関門(BBB)を横切ることができない薬剤と組み合わせて含むキメラ融合ペプチドの生成];ペプチドの脂質溶解性を増大するように設計される薬理学的戦略(例えば、脂質またはコレステロールキャリアに対する水溶性ペプチドの結合);および、高浸透圧性破壊によるBBBの完全性の一時的な破壊(頸動脈へのマンニトール溶液の注入、またはアンギオテンシンペプチドのような生物学的に活性な薬剤の使用から生じる)が含まれる。
【0102】
あるいは、例えば、患者の組織領域に直接的に医薬組成物の注射をすることによって、全身的な方法よりも局所的に医薬組成物を投与することができる。
【0103】
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られているプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥のプロセスによって製造されることができる。
【0104】
本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用されることができる調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容されうるキャリアを使用して従来の様式で配合されることできる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0105】
注射の場合、医薬組成物の有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合しうる緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な食塩緩衝液など)において配合されることができる。経粘膜投与の場合、浸透されるバリヤーに対して適切な浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0106】
経口投与の場合、医薬組成物は、活性化合物をこの分野でよく知られている医薬的に許容されうるキャリアと組み合わせることによって容易に配合されることができる。そのようなキャリアは、医薬組成物が、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物などとして配合されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物は、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、錠剤または糖衣錠コアを得るために、望ましい好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製されることができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容されうるポリマーである。もし望むなら、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤が加えられることができる。
【0107】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有しうる。色素または顔料は、活性化合物の量を明らかにするために、または活性化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えられることができる。
【0108】
経口使用されうる医薬組成物としては、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが挙げられる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分は、好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁されることができる。さらに、安定化剤が加えられることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0109】
口内投与の場合、組成物は、従来の方法で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0110】
鼻吸入による投与の場合、本発明による使用のための有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投与量は、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定されることができる。ディスペンサーにおいて使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジは、化合物および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含有して配合されることができる。
【0111】
本明細書中に記載される医薬組成物は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために配合されることができる。注射用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは多回用量容器における単位投薬形態で提供されることができる。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物または溶液剤またはエマルションにすることができ、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの配合剤を含有することができる。
【0112】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態の活性調製物の水溶液が含まれる。さらに、有効成分の懸濁物は、適切な油性または水性の注射用懸濁物として調製されることができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが挙げられる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために、有効成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
【0113】
あるいは、有効成分は、好適なビヒクル(例えば、無菌の、パイロジェン不含水溶液)を使用前に用いて構成される粉末形態であることができる。
【0114】
本発明の医薬組成物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合されることができる。
【0115】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物として、有効成分が、その意図された目的を達成するために有効な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、「治療有効量」は、処置されている対象の障害の症状(例えば、不十分な血管形成に関連する病状)を予防、緩和あるいは改善するために効果的であるか、または、処置されている対象の生存を延ばすために効果的である、有効成分(本発明のペプチド)の量を意味する。
【0116】
治療有効量の決定は、特に、本明細書中に与えられる詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0117】
本発明の方法において使用されるいかなる調製物についても、投与量または治療有効量は、生体外アッセイおよび細胞培養アッセイから最初に推定されることができる。例えば、投与量は、望ましい濃度または力価を達成するために動物モデルにおいて決定されることができる。そのような情報は、ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定するために使用されることができる。
【0118】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、生体外、細胞培養物、または実験動物における標準的な薬学的手法によって決定されることができる。これらの生体外、細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量範囲を定めるために使用されることができる。投与量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化しうる。正確な配合、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択されることができる(例えば、Finglら、(1975)「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1 p.1を参照のこと)。
【0119】
投薬量および投薬間隔は、生物学的効果(血管形成)を誘導するのに十分な有効成分の組織(例えば、心臓組織、脳組織、肢組織、腎臓組織)レベル(最小有効濃度、MEC)を提供するために個々に調節されることができる。MECはそれぞれの調製物について変化するが、生体外でのデータから推定されることができる。MECを達成するために必要な投与量は、個体の特性および投与経路に依存する。検出アッセイは、血漿濃度を決定するために使用されることができる。
【0120】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は、単回または複数回投与で行われることができ、この場合、処置期間は、数日から数週間まで、または治療が達成されるまで、または疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0121】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存するだろう。
【0122】
本発明の組成物は、もし望むなら、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態を含有しうるパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供されることができる。パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイルを含むことができる(例えば、ブリスターパックなど)。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随しうる。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、容器に関連した通知によって適応させることがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態、あるいはヒトまたは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きでありうるか、または、承認された製品添付文書でありうる。医薬的に許容されうるキャリア中に配合された本発明の調製物を含む組成物もまた、上記にさらに詳述されるように、調製され、適切な容器に入れられ、示される状態の処置についてラベル書きされることができる。
【0123】
内皮細胞に対する選択的結合のために、本発明のペプチドは、試験管内で、生体外で(すなわち、対象から取り出された細胞において)、および/または生体内で(すなわち、生きている生物、対象内で)ペプチドに融合した薬剤を内皮細胞(EC)に対して標的化するために使用されることができる。このような薬剤は、薬剤を内皮細胞に対して標的化することが望ましく、かつ/または有益である(例えば、生体内投与が行なわれたときに対象にとって有益である)いかなる分子であることもできる。
【0124】
例えば、このような薬剤は、薬物、毒素部分(例えば、内皮細胞を殺すように設計されている毒素部分)、化学療法剤(例えば、内皮細胞内で、または内皮細胞の付近で癌性細胞を殺すように設計されている化学療法剤)、識別可能な薬剤(例えば、内皮細胞を検出するために使用されることができるビオチン、ジゴキシゲニン、酵素部分)、および放射性同位体(例えば、内皮細胞を標識および/または殺すことができる放射性同位体)であることができる。
【0125】
本発明のペプチドに融合させることができる毒素の例には、限定されないが、細菌起源、真菌起源、植物起源、または動物起源の酵素活性な毒素またはそのフラグメント[例えば、ジフテリア毒素、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、α−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)のタンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュウヤマゴボウ(Phytolaca americana)のタンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP−S)、ツルレイシ[ニガウリ](momordica charantia)の阻害剤、クルシン、クロチン、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)の阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテセン]が含まれる。
【0126】
本発明のペプチドに融合させることができる放射性同位体の例には、限定されないが、125I、131I、90Y、212Bi、198Re、188Re、186Re、211At、67Cu、および212Pbが含まれる。
【0127】
本発明のペプチドに融合させることができる化学療法剤の例には、限定されないが、ナイトロジェンマスタード[例えば、メクロレタミン(HN)、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、およびエストラムスチン]、アルキル化剤、葉酸アンタゴニストまたはそのアナログ(例えば、メトトレキサート、トリメトレキサート)、核酸代謝の代謝拮抗剤、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、4’−デオキシドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン)、ピリミジンアナログ(例えば、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン)、5−フルオロウラシル、シスプラチン、プリンヌクレオシド、それらのアナログおよび関連する阻害剤(例えば、アザシチジン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、フルダラビン)、アミン、アミノ酸、トリアゾールヌクレオシド、コルチコステロイド、エチレンイミンおよびメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾトシン)、トリアジン(例えば、ダカルバジン、プロカルバジン、アジリジン)ビンカ・アルカロイド[例えば、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン、ビンデシン]、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、テニポシド)、酵素(例えば、L−アスパラギナーゼ)、タキサン(例えば、ドセタキセル、パクリタキセル)、生物学的応答修飾因子(例えば、インターフェロンα、腫瘍壊死因子、腫瘍浸潤リンパ球)、白金配位錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、アントラセンジオン(Anthracenedione)(例えば、ミトザントロン)、置換尿素(ヒドロキシウレア)、メチルヒドラジン誘導体(プロカルバジン)、副腎皮質抑止剤(ミトタン、アミノグルテチミド)、コステロイド、プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシ−プロゲステロン、メドロキシプロゲステロン)が含まれる。具体的な例には、アドリアマイシン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(すなわち、Ara−C)、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、シトキシン、タキソール、トクソテレ、メトトレキサート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イフォスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、カルボプラチン、テニポシド、ダウノマイシン、カルミノマイシン、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラミシン(米国特許第4675187号を参照のこと)、メルファランおよび他の関連するナイトロジェンマスタードが含まれる。この定義にはまた、エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール)、抗エストロゲン(タモキシフェン)、アンドロゲン(プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン)、抗アンドロゲン(フルタミド)、ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(ロイプロリド、ゴセレリン)およびオナプリストンのような、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用するホルモン剤が含まれる。
【0128】
本発明のペプチドと上記薬剤との融合物は、様々な二機能性のタンパク質カップリング剤を使用して、例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)(例えば、Cumberら、1985,Methods of Enzymology 112:207−224に本質的に記載される)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二機能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミダートHCLなど)、活性なエステル(例えば、ジスクシンイミジルスベラートなど)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒドなど、G.T.Hermanson,1996,「Antibody Modification and Conjugation」,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diegoに本質的に記載される)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス(p−ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミンなど)、ジイソシアナート(例えば、トリエン−2,6−ジイソシアナートなど)、ビス活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)、またはカルボジイミド結合法(J.March,Advanced Organic Chemistry:Reaction’s,Mechanism,and Structure,pp.349−50 & 372−74(第3版),1985;B.Neisesら、1978,Angew Chem.,Int.Ed.Engl.17:522;A.Hassnerら、Tetrahedron Lett.4475;E.P.Bodenら、1986,J.Org.Chem.50:2394、およびL.J.Mathias 1979,Synthesis 561に記載される)などを使用して作製されることができる。例えば、リシン融合物は、Vitettaら、Science、238:1098(1987)に記載されるようにして調製されることができる。炭素−14で標識された1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミノペンタ酢酸(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドをペプチドに結合するための例示的なキレート化剤である。WO94/11026;米国特許番号第6426400号;Laske,D.W.、Youle,R.J.およびOldfield,E.H.(1997)、悪性脳腫瘍患者における標的化された毒素TF−CRM107の局所的分布による腫瘍退行、Nature Medicine、3:1362〜1368を参照のこと。
【0129】
追加的にまたは代替的に、本発明の薬剤は、組換えDNA技術を介して、本発明のペプチドのコード配列(例えば、配列番号2)に翻訳上融合された本発明の薬剤(例えば、シュードモナス外毒素AのPE38KDEL切断形態)のコード配列を含む発現ベクターを構築し、本発明の薬剤およびペプチドのアミノ酸を含む組換え融合ペプチドの生産のためにその構築物を宿主細胞(例えば、原核細胞または真核細胞)において発現することによって、本発明のペプチドに結合されることができる。あるいは、発現ベクターは、(例えば、バイアルビヒクルを使用する)公知の遺伝子治療技術を介して治療を必要とする対象に投与されることができる。
【0130】
本発明の実施形態によれば、本発明のペプチドおよびペプチドに融合(または結合)された薬剤(例えば、毒素、化学療法剤、識別可能な部分、または放射性同位体)を含む本発明の組成物は、医薬的に許容されうるキャリアを有する医薬組成物の一部を形成することができる。
【0131】
従って、このような組成物(本発明のペプチドに結合または融合された治療的薬剤を含む組成物)は、異常に増大した血管形成(過剰の血管新生)によって特徴付けられる病状を処置するために使用されることができる。例えば、このような組成物は、腫瘍脈管構造の破壊によって腫瘍の増殖を阻害するために使用されることができる。
【0132】
本発明の組成物によって処置されることができる、異常に増大した血管形成によって特徴付けられる病状の非限定的な例には、癌、転移性癌、HIV患者の骨髄における骨髄異形成特徴(MDF)、原発性骨髄異形成症候群(MDS)、全身性肥満細胞症(SM)、網膜の新生血管形成、アテローム動脈硬化性斑における新生血管形成、血管腫、関節炎、乾癬、関節炎、および他の自己免疫疾患含まれる。
【0133】
本発明の組成物によって処置されうる癌または癌転移には、限定されないが、胃腸管の腫瘍(結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、小腸および/または大腸の癌、食道癌、胃癌、膵癌)、胆嚢癌、胆道腫瘍、前立腺癌、腎臓癌(例えば、ウイルム腫瘍)、肝臓癌(例えば、肝芽腫、肝細胞癌)、膀胱癌、胎児性横紋筋肉腫、胚細胞腫瘍、栄養膜の腫瘍、精巣の胚細胞腫瘍、卵巣、子宮、上皮性卵巣の未熟型奇形腫、仙尾部の腫瘍、絨毛癌、胎盤性絨毛腫瘍、成人上皮性腫瘍(epithelial adult tumor)、卵巣癌、子宮頸癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、鼻咽腔癌、乳癌、扁平上皮細胞癌(例えば、頭部および頸部)、神経原性腫瘍、星状細胞腫、神経節芽細胞腫、神経芽細胞腫、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、B細胞、バーキット、皮膚T細胞性、組織球、リンパ芽球、T細胞、胸腺)、神経膠腫、腺癌、副腎腫瘍、脳の悪性(腫瘍)、種々の他の癌腫(例えば、気管支原性大細胞癌、腺管癌、腹水癌、類表皮癌、大細胞癌、ルイス肺癌、髄様癌、粘液性類表皮癌、燕麦細胞癌、小細胞癌、紡錘体細胞癌、脊髄小脳癌、移行細胞癌、未分化癌、癌肉腫、絨毛癌、嚢胞腺癌)、上衣芽細胞腫、上皮腫、赤白血病(例えば、フレンド白血病、リンパ芽球白血病)、繊維肉腫、巨細胞腫、神経謬腫瘍、神経謬芽細胞腫(例えば、多形(multiforme)細胞腫、星状細胞腫)、神経謬腫、肝臓癌、ヘテロハイブリドーマ、ヘテロ骨髄腫、組織球腫、ハイブリドーマ(例えば、B細胞ハイブリドーマ)、副腎腫、インスリノーマ、島細胞腫、角化腫、平滑筋芽細胞腫、平滑筋肉腫、白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性前B細胞白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、急性巨核芽球性白血病、単球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄様白血病、B細胞白血病、好塩基性白血病、慢性骨髄様白血病、慢性B細胞白血病、好酸球性白血病、フレンド白血病、顆粒球性白血病または骨髄球性白血病、ヘアリー細胞白血病、リンパ性白血病、巨核芽球性白血病、単球性白血病、単球性−マクロファージ白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄様白血病、骨髄単球性白血病、形質細胞性白血病、前B細胞白血病、前骨髄球性白血病、亜急性白血病、T細胞白血病、リンパ球様新生物)、リンパ肉腫、黒色腫、乳腺癌、肥満細胞腫、髄芽細胞腫、中皮腫、転移性腫瘍、単球腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、腎性芽細胞腫、神経組織の神経謬腫瘍、神経組織のニューロン腫瘍、神経鞘腫、神経芽細胞腫、乏突起膠腫、骨軟骨腫、骨髄腫、骨肉腫(例えば、ユーニング肉腫)、乳頭腫、移行細胞、褐色細胞腫、下垂体部腫瘍、形質細胞腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫(例えば、ユーイング肉腫、組織球細胞肉腫、ジェンセン肉腫、骨形成肉腫、細網細胞肉腫)、シュワン細胞腫、皮下腫瘍、奇形癌(例えば、多能性癌)、奇形腫、精巣腫瘍、胸腺腫、および毛包上皮腫が含まれる。
【0134】
増大しつつある一連の証拠は、血管形成が癌の進行にとって必須であることを示している。実際、新生血管分布の広がりは、原発性の乳癌、膀胱癌、前立腺癌、非小細胞肺癌、皮膚メラノーマおよび子宮頸癌における転移と強く相関する[Ferrara,N.Breast Cancer Research and Treatment、36:127〜137(1995)]。従って、腫瘍の血管形成表現型を評価することにより、疾患の結果が強く示される。過剰の血管新生または不十分な血管新生によって特徴づけられる他の疾患または状態には、本明細書の上記に記載される疾患だけでなく、網膜の新生血管形成、アテローム動脈硬化性斑における新生血管形成、血管腫、関節炎および乾癬が含まれるが、これらに限定されない。Folkman,J.New England J.of Med.333:1757〜63(1995)を参照のこと。
【0135】
従って、内皮細胞の細胞表面に特異的に結合する本発明のペプチドの能力は、血管新生を強力に検出するものとしてのその使用を示唆する。このことは、血管形成依存性の疾患の存在を検出するために、または、血管形成依存性の疾患に対する素因を評価するために、または、血管形成依存性の疾患の進行をモニターするために重要でありうる。
【0136】
従って、本発明ではまた、生物学的サンプルにおける内皮細胞の存在または非存在を検出する方法が考えられる。
【0137】
この方法は、生物学的サンプルを、(例えば、GRP78受容体を介して内皮細胞の細胞表面に結合することができる)本発明のペプチドでインキュベーションすること、および、そのペプチドを検出し、それにより生物学的サンプルにおける内皮細胞の存在または非存在を検出することによって行われる。
【0138】
検出のために利用される生物学的サンプルは、生検試料などの組織サンプルであることができる。組織生検物を哺乳動物から得る方法は、この分野で広く知られている(Hypertext Transfer Protocol://www.healthatoz.com/healthatoz/Atoz/default.htmlを参照のこと)。
【0139】
本発明の少なくとも1種のペプチドが、以下の実施例の節において記載されるような複合体形成のために好適な条件(すなわち、緩衝液、温度、インキュベーション時間など)のもとで生物学的サンプルと接触させられる。
【0140】
生物学的サンプル内のペプチド−細胞複合体は、この分野で知られているいくつかの方法のいずれか1つによって検出されることができ、そのような方法は、生化学的および/または光学的な検出スキームを用いることができる。
【0141】
複合体の検出を容易にするために、本発明のペプチドは、タグまたは抗体によって目立たされる。目立たせることは、目立たせる方法に依存して、複合体形成の前に、または、複合体形成と同時に、または、複合体形成の後で行われうることが理解されるだろう。本明細書中で使用される用語「タグ」は、定量可能な活性または特徴を示す分子を示す。タグは、化学的蛍光体(例えば、フルオレセインなど)またはポリペプチド蛍光体(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)または関連したタンパク質など)などを含む蛍光性分子である(www.clontech.com)。そのような場合、タグは、好適な励起光を当てたときに生じるその蛍光によって定量することができる。あるいは、タグは、エピトープタグ(特異的な抗体が、他の細胞エピトープと実質的に交差反応することなく結合することができるかなり特有のポリペプチド配列)であることができる。そのようなエピトープタグには、Mycタグ、Flagタグ、Hisタグ、ロイシンタグ、IgGタグおよびストレプトアビジンタグなどが含まれる。
【0142】
本発明のペプチドはまた、生体内で内皮細胞を強力に検出するものとして使用されうることが理解されるだろう。内皮細胞と結合することができる設計されたペプチドは、非放射能的に標識されている場合、または放射性同位体により標識されている場合であっても、この分野では広く知られているように、本明細書の上記で議論された血管形成依存性の疾患の発症または存在を診断するために個体に投与されることができる。内皮細胞に対する投与後におけるそのような標識ペプチドの結合は、この分野で知られている生体内画像化技術によって検出されることができる。
【0143】
本発明のペプチドが、推定血管形成分子(すなわち、血管形成を誘導することができる分子)または抗血管形成分子(すなわち、血管形成を阻害することができる分子)を同定するためにさらに使用されるうることが理解されるだろう。従って、本発明の別の側面によれば、推定血管形成分子を同定する方法が提供される。その方法は、(a)本発明のペプチドが結合した内皮細胞を準備すること、および(b)ペプチドを内皮細胞から脱離させることができる分子を同定することによって行われ、それによって推定血管形成分子または推定抗血管形成分子を同定する。
【0144】
あるいは、推定血管形成分子または推定抗血管形成分子を同定する方法は、(a)本発明のペプチドを、グルコース調節タンパク質(GRP78)またはGRP78を発現する細胞と共に、ペプチドとGRP78またはGRP78を発現する細胞の間での複合体の形成に好適な条件下でインキュベートすること、および(b)ペプチドを複合体から脱離させることができる分子を同定することによって行われることができ、それによって推定血管形成分子または推定抗血管形成分子を同定する。
【0145】
そのような検出方法はまた、血管形成の阻害または促進(誘導)において有用な潜在的薬物を発見するためのアッセイにおいて利用されうることが理解されるだろう。例えば、本発明は、試験化合物(すなわち、推定血管形成分子または推定抗血管形成分子)のハイスループットスクリーニングのために使用されることができる。典型的に、本発明のペプチドは、アッセイ体積を減少させるために放射能標識される。本発明のペプチドは、試験化合物と結合させる前に、または、試験化合物と結合させるのと同時に、または、試験化合物と結合させた後で、内皮細胞と結合させられる。その場合、競合的アッセイが、試験化合物による標識の追い出しをモニターすることによって行われる[Han(1996)J.Am.Chem.Soc.118:4506〜7およびEsler(1996)Chem.271:8545〜8]。
【0146】
いったん、推定血管形成分子または抗血管形成分子が同定されると、その分子は、この分野では広く知られている血管形成アッセイを使用してさらに評価される。例には、ニワトリ漿尿膜、ウサギ角膜アッセイ、スポンジインプラントモデル、マトリゲルおよび腫瘍モデルが含まれるが、これらに限定されない(下記の実施例の節に記載されるアッセイもまた参照のこと)。
【0147】
本発明のペプチドは、診断キットまたは治療キットに含められることができる。例えば、本発明のペプチドは、適切な緩衝液および保存剤とともに1つまたは複数の容器に詰められることができ、そして、診断のために、または、治療的処置を導くために使用されることができる。従って、本発明のペプチドは、例えば、それぞれを1つの容器において混合されることができ、または、個々の容器に入れられることができる。本発明の実施形態によれば、容器は標識を含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジおよび試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されることができる。
【0148】
加えて、他の添加剤(例えば、安定化剤、緩衝剤およびブロッキング剤など)もまた加えられることができる。
【0149】
そのようなキットのペプチドはまた、固体支持体(例えば、ビーズおよびアレイ基板(例えば、チップ)など)に結合され、診断目的のために使用されることができる。
【0150】
キットに含まれるペプチド、または、基板に固定化されたペプチドは、検出可能な標識(例えば、本明細書の上記に記載される標識など)に結合されることができる。
【0151】
キットはまた、検査された対象が、調節されていない血管形成に関連する状態、障害、または疾患に罹患しているか、あるいは、そのような状態、障害、または疾患を発症する危険性にあるかどうかを明らかにするための説明書を含むことができる。
【0152】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0153】
本発明の追加の目的、利点および新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0154】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なお、これら実施例によって本発明は限定されない。
【0155】
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子生化学、微生物学および組換えDNAの技術が広く含まれている。これらの技術は、文献に詳細に説明されている。例えば、以下の諸文献を参照されたい。「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻 Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons,バルチモア,メリーランド(1989);Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons,ニューヨーク(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」、Scientific American Books、ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク(1998);米国特許第4666828号、同第4683202号、同第4801531号、同第5192659号および同第5272057号に記載される方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、I〜III巻 Cellis,J.E.編(1994);「Current Protocols in Immunology」I〜III巻 Coligan,J.E.編(1994);Stitesら編、「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、ノーウォーク,CT(1994);MishellおよびShiigi編、「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H.Freeman and Co.、ニューヨーク(1980);利用可能な免疫検定法は、例えば以下の特許と科学文献に広範囲にわたって記載されている:米国特許第3791932号、同第3839153号、同第3850752号、同第3850578号、同第3853987号、同第3867517号、同第3879262号、同第3901654号、同第3935074号、同第3984533号、同第3996345号、同第4034074号、同第4098876号、同第4879219号、同第5011771号および同第5281521号;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.(1984)および「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、サンディエゴ,CA(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」、CSHL Press(1996);なお、これらの文献類は、あたかも本願に完全に記載されているように援用されるものである。その他の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。本明細書に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。本明細書に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0156】
一般的な材料および方法
ペプチド合成 − ADOPep1(配列番号2)、ADOPep2(配列番号3)、およびADOPep3(配列番号4)は、ADAM15アミノ酸配列(GenBankアクセッション番号 Q13444)に従って、SynPep(Dublin,CA,米国)によって合成された。HPLC純度は、97%より高かった。ペプチドは、1mg/mlの濃度で水に溶解された。
【0157】
内皮細胞に対するADOPepの結合 − ヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)は、トリプシンによって採取され、サンプルあたり100,000個の細胞がPBS+5%FCS+0.1%Naアジド中に懸濁された。内皮細胞は、低酸素に5時間曝露されるか、または通常酸素条件下のままのいずれかであった。細胞は、100,000個の細胞あたり0.05μg、0.5μg、5μgのビオチニル化ADOPepで、暗所において氷上で2時間染色された。細胞は次いで、PBSで2回洗浄され、その後、細胞はFITC標識ストレプトアビジン(Jackson ImmunoResearch Laboratories,PA,米国)で30分間染色された。洗浄後、サンプルは、蛍光活性化セルソーター(FACScan Beckton Dickinson,CA,米国)を用いて分析された。
【0158】
ADOPepでインキュベートされた内皮細胞の増殖 − 継代数3由来のHUVECが、増殖実験のために使用された。内皮細胞(15,000細胞/ウェル)は、補充物を有する内皮細胞増殖培地(Promocell,Heidelberg,ドイツ)の存在下で24ウェルに播種され、24時間インキュベートされた。その後、細胞は補充物不含培地において24時間飢餓に曝露された。ADOPepは、低酸素条件下で24時間、1ng/ml、10ng/ml、および100ng/mlの濃度で添加された。2μCi/ウェルのチミジン(SIGMA,Rehovot イスラエル)が添加され、一晩インキュベートされ、その後300μl/ウェルの0.5M NaOHで37℃で採取する前にPBSで3回洗浄された。細胞溶解物は、2mlのシンチレーション液Ultima Gold(Packard Bioscience,Meriden,米国)を含むシンチレーションバイアルに移され、βカウンターにおいて数えられた。結果は、1分あたりのカウント数(cpm)として得られた。
【0159】
ADOPepによって誘導される内皮細胞の遊走 − 内皮細胞遊走は、製造者の説明書に従って、Chemicon QCM 96ウェル遊走アッセイ(Chemicon International,CA、米国)によって評価された。このキットは、8μmの細孔サイズを有する膜を利用する。インサート膜の底にいる遊走細胞は、キットによって提供される細胞脱離緩衝液でインキュベートされたときに膜から解離される。これらの細胞は、続いて溶解され、分子プローブCyQuant GR色素(細胞の核酸に結合したときに増強された蛍光を示す緑色蛍光色素)によって検出される。遊走アッセイのために、継代数3由来のHUVECが、補充物不含の内皮細胞(EC)増殖培地中でインキュベートされた。トリプシン処理後、25,000個のECは、遊走チャンバにおいてインキュベートされた。ADOPepは、化学誘因物質遊走アッセイのために給餌トレイ中に1ng/ml、10ng/ml、および100ng/mlの濃度で添加された。インキュベーションの時間は、低酸素条件下の内皮細胞に対して5時間であった。結果は、480/520nmで蛍光ELISA読み取り機において決定された。
【0160】
ADOPepの生体内血管形成活性の評価のためのマウス後肢虚血モデル − マウス後肢虚血モデルが使用された。虚血は、C57Bl系統のマウスにおいて、左後肢での大腿動脈の結紮および切除によって作られた。右後肢はコントロールとして役立てた。手術の1日後に、ADOPep1およびADOPep3が、手術に近い部位で筋肉内注射された。各マウスは手術の1日後に、マウスあたり0.1μgまたは1μgの総量のペプチドのいずれかで処置されるか、あるいはコントロールとして注入されたPBS(50μl)で処置された。血液潅流は、Laser Doppler血流分析計(Perimed,スウェーデン)を用いて術後1日目、および7日目、14日目、21日目に測定された。各肢の平均潅流が計算され、潅流の百分率割合が虚血(左)/コントロール(右)の潅流の百分率として示された。
【0161】
組織学的検査 − ADOPep1またはADOPep3で処置されたマウス、あるいはPBSを注射されたコントロールマウスからの肢は、術後7日目、14日目、および21日目に犠牲にされた。虚血性の脚および非虚血性の脚の全体が、即時に4%パラホルムアルデヒド中で48時間固定され、次いでパラフィン中に包埋された。3マイクロメーター厚の切片が調製され、筋腺維を横方向にして切断された。内皮細胞の同定は、1/200希釈でのポリクローナル抗第VIII因子の一次抗体(DakoCytomation,デンマーク)、および二次抗体Envision+System−HRP(DakoCytomation,デンマーク)を使用して、フォン・ヴィレブランド第VIII因子関連抗原についての免疫染色によって実施された。血管密度は、ミリメートル平方あたりの毛細血管として表された。断面積あたりの平均血管数を得るために、最小10個の視野がサンプリングされ、Image Pro−Plus(MediaCybernetics,Silver spring,MD,米国)を使用してカウントされる領域を測定した。第VIII因子陽性血管の数がカウントされた。
【0162】
ビオチニル化ADOPepでの内皮細胞の免疫沈降(IP)実験
HUVEC溶解物の調製 − HUVECは、完全内皮細胞増殖培地(PromoCell.Heildelberg,ドイツ)と共に90mmペトリ皿プレートに24時間播種された。細胞はPBSで2回洗浄され、緩衝液溶解物(50mM Tris Cl(pH8,150mM NaCl,0.02% Naアジド,0.1% SDS,100μg/ml PMSF,1μg/ml プロテアーゼ阻害剤,1% NP−40)は氷上で20分間添加された。インキュベーション後、細胞は、ゴム製ポリスマンで削り取られ、冷却されたマイクロチューブに移された。4℃、2分間の12,000gでの溶解物の遠心分離の後、上清は新しいマイクロチューブに移され、−70℃で保存された。
【0163】
免疫沈降(IP) − 溶解物のアリコートサンプル(500μl)は、緩やかに混合させながら、4℃で1時間、10μgのビオチニル化ADOPep1と共にインキュベートされた。ストレプトアビジンセファロースビーズ(Amersham Biosciences,Uppsla,スウェーデン)(50μl)は、緩やかに混合させながら、4℃で1時間、第2のインキュベーションのためにサンプルに添加された。その後、サンプルは12,000gで20秒間遠心分離され、ペレットが残され、さらに3回洗浄された。最終的に、ペレットは、ウェスタンブロット分析のために100μlのサンプル緩衝液に懸濁された。ELISAのために、タンパク質は、1mlのトリス−グリシン0.2M(pH2.2)における室温でのサンプルの5分間のインキュベーション、その後の1Mトリス(pH9.1)での滴定によって溶出された。
【0164】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)分析 − ビオチニル化ADOPep1(GRP78免疫沈降タンパク質)(30μl)で免疫沈降されたGRP78を含有するタンパク質バンドが、ミニゲルのレーンにアプライされ、10%トリスアクリルアミドゲルにおいて標準条件(2枚のミニゲルに対して60mA、1.4時間)で電気泳動された。ゲルはクマシーブルーで染色された。バンドは、タンパク質同定のために、切り取られて質量分析にまわされた。
【0165】
ウェスタンブロット分析 − PAGE分析の後、タンパク質転写が、ニトロセルロース膜において40Vで湿潤条件で2時間実施され、その後ゲルがクマシーブルーで染色された。ニトロセルロース膜は、0.5%Tween20および5%の脱脂乳を含有するPBSでインキュベーションすることによって、室温で2時間ブロッキングされた。ビオチニル化ADOPep1(PBS−Tweenにおいて5μg/ml)での膜のインキュベーションは、緩やかに振盪させながら4℃で一晩行われた。その後、膜は、PBS−Tween中で3回(それぞれ15分)洗浄された。二次抗体ペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン(1μg/ml)(JacksonImmunoResearch,PA,CA 米国)でのインキュベーションは、室温で45分間実施され、その後、PBS−Tween中で3回(それぞれ15分)洗浄された。GRP78免疫染色のために、膜は、上記に記載されるようにブロッキングされ、さらに2μg/mlの濃度で抗GRP78抗体(Santa Cruz Biotechnologies,CA,米国)で4℃で24時間インキュベートされ、その後、PBS−Tween中で3回洗浄された。1:5000の希釈での二次抗ヤギFITC(Jackson ImmunoResearch Laboratories,PA,米国)でのインキュベーションは、室温で45分間実施され、その後、PBS−Tween中で3回洗浄された。ECLは、SuperSignal West Pico化学発光基質(Pierce,IL,米国)を用いて実施された。
【0166】
内皮細胞に対する抗GRP78結合のFACS分析 − HUVECがトリプシンによって採取され、サンプルあたり100,000個の細胞がPBS+5%FCS+0.1% Naアジド中に懸濁された。1μg/100,000個の細胞の濃度のヤギポリクローナル抗GRP78(Santa Cruz Biotechnologies,CA,米国)が、氷上で40分間添加された。細胞は洗浄され、抗ヤギFITC(Jackson ImmunoResearch Laboratories,PA,米国)で染色された。サンプルは、蛍光活性化セルソーター(FACScan Beckton Dickinson,CA,米国)を用いて分析された。
【0167】
異なる腫瘍細胞に対する抗GRP78結合のFACS分析 − MCF7乳癌細胞、SK28黒色腫細胞、HT29結腸癌細胞、およびK562赤白血病細胞がトリプシンによって採取され、サンプルあたり300,000個の細胞がPBS+5%FCS+0.1% Naアジド中に懸濁された。1μg/100,000個の細胞の濃度のヤギポリクローナル抗GRP78(Santa Cruz Biotechnologies,CA,米国)が、氷上で40分間添加された。細胞は洗浄され、抗ヤギFITC(Jackson ImmunoResearch Laboratories,PA,米国)で染色された。サンプルは、蛍光活性化セルソーター(FACScan Beckton Dickinson,CA,米国)を用いて分析された。
【0168】
アポトーシス − ECは、ペトリ皿プレートにおいてEC増殖培地中で5%FCSで24時間インキュベートされ、その後、ADOPep1(10ng/ml)、抗GRP78抗体(Santa Cruz Biotechnology,CA,米国)(1μg/ml)または組換えVEGF(10ng/ml)で、低酸素条件下で24時間インキュベートされた。Annexin V FITC/PIは、フローサイトメトリーを使用してアポトーシス細胞上のホスファチジルセリンを検出する。ヒトAnnexin V−FITCキット(Bender Medsystems,Vienna,オーストリア)は、製造者の指示書に従ってECアポトーシス百分率割合の測定のために使用された。サンプルは、蛍光活性化セルソーター(FACScan Beckton Dickinson,CA,米国)を用いて分析された。
【0169】
GRP78に対する、ADOPep1、ADOPep2、およびADOPep3ペプチドの競合的結合 − 内皮細胞(ウェルあたり20,000個)は、完全培地の存在下で24時間96ウェルプレートに播種された。プレートは、PBSで一晩洗浄され、PBS、0.1% Naアジド、および5% FCSで再水和された。ADOPep1、ADOPep2、およびADOPep3は、1mlあたり0.01μg、0.1μg、および1μgの濃度で室温で2時間、洗浄されたプレートに添加された。抗GRP78抗体(ヤギポリクロ−ナルIgG,Santa Cruz Biotechnology,CA,米国)は、ウェルあたり2μg/mlの濃度で室温で1時間プレートに添加された。洗浄後、結合した抗GRP78抗体は、ペルオキシダーゼ結合抗ヤギIgG(Jackson Immuneresearch Laboratories,PA,米国)でのインキュベーションによって検出された。PBS−0.1% Tween20での5回の洗浄後、100μl/ウェルのTMB+基質−色原体(DAKOCytomation,CA,米国)が最大30分間添加された。反応は、1N HClで停止された。発現された色は450nmでELISA読み取り機によって決定された。
【0170】
実施例1
ADAM15のメタロプロテアーゼドメインに由来する特定のペプチドは、内皮細胞に結合し、かつ内皮細胞の増殖および遊走を誘導する
実験結果
ADOPep1配列 − いくつかのペプチドが、メタロプロテアーゼドメインから合成され、内皮細胞に対する最も良好な結合能力を有するペプチドを選択するために予備実験が行なわれた。これらのうちの1つ、ADOPep1と呼ばれるペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列HWRRAHLLPRLPを有する。ADAM15分子(配列番号1)のメタロプロテアーゼドメインにおけるADOPep1の位置が、図2bに示される(配列番号1のアミノ酸286〜297に相当する、下線が引かれた文字)。
【0171】
FACS分析による内皮細胞(EC)に対するADOPep1の結合 − 増大する濃度のビオチニル化ADOPep1が通常酸素条件下でECに添加され、ECに対するADOPep1の結合がFITC標識ストレプトアビジンおよびFACS分析を用いて検出された。図3に見られるように、ECに対するADOPep1の結合百分率の増大は、用量依存的な様式で約62%に到達し、1mlあたり5μgで最大であった。低酸素条件(5時間)下のECがビオチニル化ADOPep1と共にインキュベートされたとき、5μg/mlでのADOPep1の結合は約85%に達した(図4)。これらの結果は、低酸素下での内皮細胞に対するADOPep1の結合の増大を示す。
【0172】
ADOPepは、低酸素下でECの増殖を誘導する − ADOPepのEC増殖を誘導する能力をさらに試験するために、増大する濃度のADOPep1、ADOPep2、およびADOPep3がECと共にインキュベートされ、低酸素下かつ24時間飢餓での細胞の増殖が決定された。図5に示されるように、ADOPep1およびADOPep2は、10ng/mlの濃度でECの増殖を誘導することができた。
【0173】
新規なペプチドADOPep1は、低酸素下でECの遊走を誘導する − ADOPepの低酸素下で内皮細胞の遊走を誘導する能力が試験された。ECは遊走チャンバにおいてインキュベートされ、ADOPepが低酸素条件下で5時間、給餌トレイ中に1ng/ml、10ng/ml、および100ng/mlで添加された。ECの遊走は、蛍光ELISA読み取り機において決定され、相対蛍光単位(RFU)として表された。図6に示されるように、EC遊走の最も有意な増大は、10ng/mlの濃度でのADOPep1の存在下で観察された。
【0174】
要するに、これらの知見は、本発明のADOPepが、主に低酸素条件下で内皮細胞に結合することが可能であり、かつ低酸素下で内皮細胞の増殖および遊走を誘導することが可能であることを示す。
【0175】
実施例2
ADOPep1は、生体内で虚血組織の血管形成および潅流の増大を誘導する
実験結果
ADOPep1は、後肢虚血を有するマウスにおいて潅流の有意な増大を誘導する − マウス虚血後肢モデルが、ADOPepによって誘導される血管形成の生体内での可能性を評価するために使用された。虚血は、大腿動脈の結紮および切除によってマウスの左後肢において作られた。右後肢はコントロールとして役立てた。手術の1日後に、各々のペプチドは、結紮に近い1つの部位に注射された。各マウスは、マウスあたり0.1μgまたは1μgの総量の各々のペプチドで処置された。血液潅流は、Laser Doppler Imager(PeriMed,スウェーデン)を用いて術後7日目、14日目、および21日目に測定された。図7において見られるように、各肢の平均潅流が計算され、虚血(左)/コントロール(右)の血液潅流率として示された。統計学的な分析は、PBSを注射されたマウスに比べて、術後21日目に0.1μgのADOPep1を注射されたマウスにおける血液潅流の有意な増加を示し、後肢における血液潅流の完全な回復を示す。
【0176】
ADOPep1で処置された虚血後肢における血管形成の組織学的評価 − 後肢の結紮およびマウスあたり0.1μgのADOPep1の投与の後、マウスは7日目、14日目、および21日目に犠牲にされ、脚全体がパラフィン中に包埋された。図8は、PBS注射マウスと比べて、ADOPep1で処置されたマウスの脚における平均+SEとして表された、サンプルあたり10個の個別の視野の断面積あたりの血管数の平均を示す。ADOPep1処置は、PBS処置マウスと比べて血管数の有意な増大(p<0.05)をもたらした。代表的な実例(図9a−b)は、ADOPep1処置群においてコントロールよりも高くフォン・ヴィレブランド因子陽性染色された小血管を示す。
【0177】
要するに、これらの知見は、本発明のADOPepが虚血後の血管形成を誘導することが可能であり、従って、虚血性疾患を処置するために使用されうることを示す。
【0178】
実施例3
内皮細胞上のADOPep受容体の同定
実験結果
内皮細胞上のADOPep受容体の同定 − ビオチニル化ADOPep1での内皮細胞溶解物の免疫沈降(IP)が、PAGEによって分析された。図10a−bに見られるように、ADOPep1での免疫沈降の後に、主要な単一タンパク質バンドが78kDaに存在する。このバンドがADOPep1ぺプチド結合受容体であることを確認するために、分離されたタンパク質はニトロセルロース膜に移され、それはビオチニル化ADOPep1で染色された後、化学発光基質でさらに染色された。図11に見られるように、実際に2つの異なる実験において標識されたペプチドによって同じバンドが染色された(図11に示されるPAGEにおける両方のレーン)。タンパク質受容体バンドは、ゲルから切り取られ、質量分析法によって分析された。
【0179】
質量分析法の結果は、本明細書の下記の表4に示される。受容体は、単離されたバンドから消化された22個のペプチドを用いてグルコース調節タンパク質[ホモ・サピエンス]GRP78タンパク質(GenBankアクセッション番号 CAB71335;Gi:6900104)として同定された。

【0180】
実際に、内皮細胞上のADOPep1受容体がGRP78タンパク質であることをさらに確認するために、IP実験が繰り返され、抗GRP78抗体を用いてウェスタンブロット分析が実施された。図12に示された結果は、抗GRP78での陽性染色を示す。
【0181】
低酸素下でのEC上のGRP78受容体タンパク質の同定 − 低酸素条件下でADOPepペプチドに結合するEC上の受容体を分析するために、ECは、低酸素条件下で5時間予備インキュベートされ、免疫沈降はビオチニル化ADOPep1を用いて実施された後、ビオチニル化ADOPep1(図13a)または抗GRP78抗体(図13b)を使用するウェスタンブロット分析が行われた。低酸素下でのEC上の同一の受容体(グルコース調節タンパク質、ホモ・サピエンス、Gi 6900104)の確認は、以下の表5に示されるように質量分析法によって行われた(19個の一致)。
【表5】

【0182】
低酸素下でのEC上のGRPタンパク質の増大された呈示 − 図14および15は、FACS分析によって通常酸素条件および低酸素条件下で膜上でGRP78を発現するECの割合を示す。図14に見られるように、10個の異なる臍帯に由来するECに対するGRP78の結合は、通常酸素条件下で30±13%、5時間の低酸素後に52.8±8.4%であった。FACSヒストグラム(図15)は、通常酸素条件または低酸素条件下でのEC上のGRP78受容体の存在を、低酸素下での抗GRP78抗体の増大された結合によって示した。
【0183】
腫瘍細胞上の受容体の存在 − EC上のGRP78の存在および低酸素とのその関係をさらに確認するために、抗GRP78抗体を使用するFACS分析が、MCF7乳癌細胞、SK黒色腫細胞、HT結腸癌細胞、およびK562赤白血病細胞を含む種々の系統の腫瘍細胞上で実施され、GRP78が、MCF7乳癌細胞、HT29結腸癌細胞、およびSK28黒色腫細胞上で発現されるが、K562赤白血病細胞上では発現されないことを明らかにした(図16a−d)。
【0184】
これらの結果は、EC上のADOPep受容体がGRP78であること、およびEC膜上のその呈示が低酸素下および種々の腫瘍細胞において増大されることを示す。
【0185】
実施例4
ADOPepは、低酸素誘導アポトーシスを阻害する
実験結果
抗GRP78抗体でのGRP78受容体の阻害、またはADOPep1の添加によるGRP78受容体の阻害は、ECの低酸素誘導アポトーシスの阻害をもたらす − アポトーシスにおけるGRP78の役割は、低酸素下でECを用いて研究された。図17に見られるように、低酸素に24時間曝露されたECのアポトーシスの割合は、25%から62%に増大された。ADOPep1でのECのインキュベーションは、アポトーシスを通常酸素条件下でみられるのと同様のレベルまで防止した。抗GRP78抗体でのECのインキュベーションはまた、アポトーシスのレベルを減少させたが、ADOPepは抗GRP78抗体と比べてアポトーシスの減少においてより効果的(29%)であった(図17)。図18a−eは、ADOPep1ペプチドによるアポトーシスの阻害のドットプロットFACS分析によって実例を示す。見られるように、低酸素下のECは、Annexin Vおよびヨウ化プロピジウム(PI)アポトーシス性マーカーの両方で染色された。対照的に、ADOPep1ペプチドでのECのインキュベーションは、染色された細胞の割合の顕著な減少を誘導した。
【0186】
ADOPep1は低酸素誘導アポトーシスを阻害したが、CoCl誘導アポトーシスを阻害しなかった − アポトーシスに対するADOPep1の効果をさらに示すために、アポトーシスが低酸素またはCoCl(塩化コバルト)処置によって誘導された。図33a−fおよび34において示されるように、24時間の低酸素は、約70%までのアポトーシスの増大をもたらした。加えて、ADOPep1は内皮細胞の低酸素誘導アポトーシスを約40%阻害したが、ADOPep1は、アポトーシス誘導物質である塩化コバルトに曝露された内皮細胞のアポトーシスを阻害しなかった。従って、ADOPep1によるアポトーシスの阻害は、低酸素ストレス条件に特異的である。
【0187】
ADOPep1は、生体内で低酸素誘導アポトーシスの阻害を誘導する − 図22において見られるように、アポトーシス細胞の平均数は、ADOPep1を注射された7日目の虚血後肢において劇的に減少された。従って、虚血後肢マウスモデルを使用して、本発明者らは初めて、虚血後肢へのADOPep1の投与が虚血誘導アポトーシスの有意な低減をもたらすことを示すことができた。
【0188】
要するに、これらの結果は、ストレス応答性タンパク質であるGRP78と同様に、本発明のADOPepが低酸素誘導アポトーシス内皮細胞の数を減少させることが可能であり、従って、細胞においてアポトーシスを阻害するために使用されうることを示す。
【0189】
実施例5
ADOpepは、内皮細胞上のGRP78受容体に結合する
実験結果
GRP78受容体に対するペプチドADOPep1、ADOPep2、およびADOPep3由来のADAM15の競合的結合 − ADOPepがEC上のGRP78受容体に結合するかどうかをさらに試験するために、競合的結合アッセイが、抗GRP78抗体との結合の前にADOPepでインキュベートされたECに対して行われた。図19(4つの実験の要約を示す)において示されるように、3種のADOPepの全て(すなわち、ADOPep1、ADOPep2、およびADOPep3)は、ECに対する抗GRP78抗体の結合のある程度の阻害を示したが、スクランブルペプチド(sRoY)は、EC上の受容体に対する競合的結合において効果的でなかった。
【0190】
ADOPep1は、生体内(低酸素下)においてGRP78受容体発現のアップレギュレーションを誘導する − 図20a−bは、通常酸素条件または低酸素条件下でのADOPep1での細胞のインキュベーション後に、内皮細胞に対する抗GRP78抗体の結合をさらに示し、内皮細胞上のGRP78受容体の存在(ECに対する抗GRP78の結合によって明らかにされる)は低酸素下で約18.1%から約40.1%まで増大するが(本発明者ではないLi J,Lee AS.Stress induction of GRP/BIP and its role in cancer.Curr.Mol.Med.2006;6:45−54;Arap MA,Lahdenranta J,Mintz PJ,Hajitou A,Sarkis AS,Arap W,Pasqualini R.Cell surface expression of the stress response chaperone GRP78 enables tumor targeting by circulating ligands.Cancer Cell.2004;6:275−84によって既に報告されている)、EC上のGRP78呈示のより有意な増加(約83.8%までの増加)が、細胞が低酸素条件下でADOpep1でインキュベートされたときに観察された。これらの結果は、低酸素下でのGRP78のアップレギュレーションにおけるADOPep1の関与を示す。
【0191】
ADOPep1は、生体内(虚血下)でGRP78受容体発現のアップレギュレーションを誘導する − 内皮細胞上のGRP78呈示におけるADOPepの関与をさらに確認するために、GRP78陽性細胞の平均数が、虚血後肢切片において決定された。図21において示されるように、虚血の誘導後7日目に、GRP陽性細胞の平均数は、未処置の後肢に比べて増大された。しかしながら、ADOPep1の注射は、虚血の誘導後14日目に検出されるように、GRP78陽性細胞の平均数のより有意な増大をもたらした。虚血後21日目での比較的低いレベルのGRP78陽性細胞は、おそらく、処置された動物における虚血の回復を示す。
【0192】
これらの結果は、ADOPep1が、低酸素下(生体外)または虚血下(生体内)でGRP78発現を増大することを示す。
【0193】
実施例6
ADOPep1結合は、低酸素条件下でGRP78受容体の内在化反応を起こす
実験結果
ADOpep1結合は、低酸素条件下でGRP78受容体の内在化反応を起こす − 図29に示されるように、5分間のインキュベーション後に、ADOpep1は低酸素条件下で内皮細胞におけるGRP78受容体の内在化を誘導した。内在化反応は、膜に対するADOPepの結合割合の阻害(より少ない膜GRP78受容体)、およびADOPep1で5分間インキュベートされた内皮細胞における細胞内GRP78平均蛍光の増加によって示された。
【0194】
実施例7
ADOPepペプチドからの生物学的活性を示す最小モチーフ配列の同定
実験結果
新規の血管形成関連モチーフまたは腫瘍関連モチーフの同定 − 本発明者らは、4個のアミノ酸配列HWRRを、血管形成を誘導しかつEC上のGRP78受容体に結合するADAM15由来ペプチドであるADOPep1、ADOPep2、およびADOPep3に存在する共通モチーフとして同定した(表6、下記)。

【0195】
全てのADOPepの共通モチーフHWRR(配列番号5)は、その血管形成活性について試験された。
【0196】
5個のアミノ酸モチーフHWRRP(モチーフA;配列番号7)、HWRRA(モチーフB;配列番号8)、またはAHLLP(モチーフC;配列番号6)がEC上のGRP78に結合できるかどうかをさらに試験するために、配列番号7、8、および9に相当するアミノ酸配列を有する合成ペプチドが内皮細胞に対するビオチニル化ADOPep1の結合についての競合的アッセイにおいて使用された。図23において示されるように、モチーフAおよびBに相当するアミノ酸配列を有するペプチドは、内皮細胞に対するADOPep1Biotの結合の有意な阻害を示し、モチーフCに相当するペプチドは、結合の穏やかな阻害を示した。
【0197】
加えて、内皮細胞は、ADOPep1、モチーフA、またはモチーフCの存在下または非存在下で低酸素条件下でインキュベートされ、アポトーシスのQ1レベルは、FACS分析を使用して決定された。図24a−dおよび図25に示されるように、ADOPep1ならびにモチーフAおよびモチーフBペプチドは、低酸素誘導アポトーシスを阻害することが可能であったが、モチーフCペプチドは低酸素誘導アポトーシスに対して効果を示さなかった。
【0198】
内皮細胞に対するモチーフA、B、Cの生物学的活性をさらに試験するために、遊走アッセイが低酸素下でECに対して実施された。図26a−bに示されるように、ADOPep1、モチーフA、およびモチーフBペプチドは、約10ng/mlの濃度で内皮細胞遊走を誘導したが、モチーフCペプチドは内皮細胞の遊走に対して有意な効果を示さなかった。
【0199】
要するに、これらの結果は、低酸素誘導アポトーシスを減少させ、かつ内皮細胞遊走を誘導することが可能なADOPep由来の最小アミノ酸配列の同定を示す。これらのペプチド(例えば、配列番号7および8)は、低酸素誘導アポトーシスを阻害するため、血管形成を誘導するため、および虚血性疾患を処置するために使用されることができる。
【0200】
実施例8
ADOPepモチーフは、管の形成およびERK1/2リン酸化の誘導が可能である
実験結果
ADOPep1およびモチーフAペプチドは、内皮細胞から管を形成することが可能である − ADOPep1またはモチーフAペプチドの管を形成する能力が、生体外で決定された。図27に示されるように、ADOPep1およびモチーフAは、飢餓条件および通常酸素条件下で内皮細胞において連結された細胞のネットワークの長さを有意に増大したが、スクランブルsROYペプチドの添加は管の形成に対して効果を有さなかった。
【0201】
ADOPep1およびモチーフAペプチドは、内皮細胞上の同じ受容体に対する結合について競合する − 図28a−dに示されるように、ADOPep1およびモチーフAペプチドは、低酸素条件下で内皮細胞に対する抗GRP67結合を阻害した。10μgのADOPep1およびモチーフAは、それぞれ約80%および約60%の抗GRP78結合を阻害したが、モチーフCは内皮細胞に対する抗GRP78結合を阻害しなかった。
【0202】
低酸素条件下でのADOPep1およびモチーフAでの内皮細胞のインキュベーションは、ERK1/2リン酸化を増大する − 図30a−bに示されるように、低酸素条件下でのADOPep1およびモチーフAでの内皮細胞のインキュベーションは、20分後に測定されたように、ERK1/2リン酸化の有意な増大をもたらした。
【0203】
ADOPep1およびモチーフAペプチドによるERK1/2リン酸化の誘導は特異的である − ERKリン酸化がADOPep1およびモチーフAの活性化に特異的であることを評価するために、特異的pERKペプチド阻害剤が、ADOPep1およびモチーフAペプチドでインキュベートされた内皮細胞に添加された。図31は、低酸素条件下で20分間、ADOPep1およびモチーフAでインキュベートされた内皮細胞における阻害剤ペプチドによるERKリン酸化阻害のウェスタンブロット分析を示す。
【0204】
ADOPep1およびADOPep2は、低酸素下で内皮細胞におけるERK1/2リン酸化を誘導することが可能であるが、ADOPep3はERK1/2リン酸化を誘導できない − 図32a−bに示されるように、抗リン酸ERK抗体(Santa Cruz Biothechnologies p−ERK(E−4),sc7383)を用いて実施されたウェスタンブロット分析は、ADOPep1およびADOPep2がERK1/2リン酸化を誘導したが、ADOPep3がERK1/2リン酸化に対して効果を有さなかったことを明らかにした。
【0205】
明確にするため別個の実施形態で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0206】
本発明はその特定の実施形態によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本明細書中で言及した刊行物、特許および特許願はすべて、個々の刊行物、特許または特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【0207】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号5に記載されるアミノ酸配列HWRRを含む単離されたペプチドであって、ペプチドが4個または5個のアミノ酸からなる単離されたペプチド。
【請求項2】
前記アミノ酸配列は、HWRRP(配列番号7)またはHWRRA(配列番号8)である、請求項1に記載の単離されたペプチド。
【請求項3】
配列番号5に記載されるアミノ酸配列HWRRを含む単離されたペプチドであって、ペプチドが配列番号11(YPHIDSLGHWRR)ではない、単離されたペプチド。
【請求項4】
前記アミノ酸配列は配列番号2に記載される、請求項3に記載の単離されたペプチド。
【請求項5】
前記アミノ酸配列は配列番号3に記載される、請求項3に記載の単離されたペプチド。
【請求項6】
前記アミノ酸配列は配列番号4に記載される、請求項3に記載の単離されたペプチド。
【請求項7】
ペプチドは線状ペプチドである、請求項1〜6のいずれかに記載の単離されたペプチド。
【請求項8】
ペプチドは環状ペプチドである、請求項1〜6のいずれかに記載の単離されたペプチド。
【請求項9】
ペプチドは12個以下のアミノ酸からなる、請求項3〜8のいずれかに記載の単離されたペプチド。
【請求項10】
請求項1〜9に記載のペプチドの少なくとも1種を含む組成物。
【請求項11】
有効成分として請求項1〜9に記載のペプチドを少なくとも1種を含み、かつ医薬的に許容されうるキャリアまたは希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項12】
対象において血管形成を誘導する方法であって、対象に治療有効量の請求項1〜9に記載のペプチドの少なくとも1種を投与することを含み、それによって対象において血管形成を誘導する方法。
【請求項13】
対象の組織において血管形成を誘導するために特定される医薬の製造のための、請求項1〜9に記載のペプチドの少なくとも1種の使用。
【請求項14】
遅発性の創傷治癒、遅発性の潰瘍治癒、生殖関連障害、動脈硬化症、虚血性の血管疾患、虚血性の心臓疾患、心筋虚血、心筋梗塞、心不全、心筋機能不全、心筋再造形、心筋症、冠状動脈疾患(CAD)、アテローム硬化性心臓血管疾患、左主冠状動脈疾患、閉塞性動脈疾患、末梢虚血、末梢血管疾患、腎臓の血管疾患、末梢動脈疾患、四肢虚血、重篤な脚の虚血、下肢の虚血、脳虚血、脳血管疾患、網膜症、網膜修復、再造形障害、フォン・ヒッペル−リンダウ症候群、糖尿病、遺伝性出血性毛細管拡張症、虚血性の血管疾患、バーガー病、ならびにパーキンソン病およびアルツハイマー病のような神経変性疾患と関連する虚血からなる群から選択される病状を処置するために特定される医薬の製造のための、請求項1〜9に記載のペプチドの少なくとも1種の使用。
【請求項15】
対象の組織における不十分な血管形成によって特徴付けられる病状を処置する方法であって、対象に治療有効量の請求項1〜9に記載のペプチドを少なくとも1種投与することを含み、それによって対象の組織における不十分な血管形成によって特徴付けられる病状を処置する方法。
【請求項16】
対象の組織における不十分な血管形成によって特徴付けられる病状を処置するために特定される医薬の製造のための請求項1〜9に記載のペプチドの少なくとも1種の使用。
【請求項17】
対象の組織における不十分な血管形成によって特徴付けられる病状は、遅発性の創傷治癒、遅発性の潰瘍治癒、生殖関連障害、動脈硬化症、虚血性の血管疾患、虚血性の心臓疾患、心筋虚血、心筋梗塞、心不全、心筋機能不全、心筋再造形、心筋症、冠状動脈疾患(CAD)、アテローム硬化性心臓血管疾患、左主冠状動脈疾患、閉塞性動脈疾患、末梢虚血、末梢血管疾患、腎臓の血管疾患、末梢動脈疾患、四肢虚血、重篤な脚の虚血、下肢の虚血、脳虚血、脳血管疾患、網膜症、網膜修復、再造形障害、フォン・ヒッペル−リンダウ症候群、糖尿病、遺伝性出血性毛細管拡張症、虚血性の血管疾患、バーガー病ならびにパーキンソン病およびアルツハイマー病のような神経変性疾患と関連する虚血からなる群から選択される、請求項15または16に記載の方法または使用。
【請求項18】
遅発性の創傷治癒、遅発性の潰瘍治癒、生殖関連障害、動脈硬化症、虚血性の血管疾患、虚血性の心臓疾患、心筋虚血、心筋梗塞、心不全、心筋機能不全、心筋再造形、心筋症、冠状動脈疾患(CAD)、アテローム硬化性心臓血管疾患、左主冠状動脈疾患、閉塞性動脈疾患、末梢虚血、末梢血管疾患、腎臓の血管疾患、末梢動脈疾患、四肢虚血、重篤な脚の虚血、下肢の虚血、脳虚血、脳血管疾患、網膜症、網膜修復、再造形障害、フォン・ヒッペル−リンダウ症候群、糖尿病、遺伝性出血性毛細管拡張症、虚血性の血管疾患、バーガー病ならびにパーキンソン病およびアルツハイマー病のような神経変性疾患と関連する虚血からなる群から選択される病状を処置するための、請求項12または13に記載の方法または使用。
【請求項19】
前記ペプチドは、組織の内皮細胞上で配列番号9に記載されるグルコース調節タンパク質(GRP78)に結合することができる、請求項1〜18のいずれかに記載の、単離されたペプチド、組成物、医薬組成物、方法、または使用。
【請求項20】
前記配列番号9に記載されるグルコース調節タンパク質(GRP78)への前記ペプチドの結合は、血管形成を誘導することができる、請求項1〜19のいずれかに記載の、単離されたペプチド、組成物、医薬組成物、方法、または使用。
【請求項21】
薬剤を内皮細胞に対して標的化するための組成物であって、請求項1〜9のいずれかに記載のペプチドに結合された薬剤を含む組成物。
【請求項22】
薬剤は、毒素、化学療法剤、および放射性同位体からなる群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
有効成分として請求項21または22に記載の組成物を含み、かつ医薬的に許容されうるキャリアまたは希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項24】
異常に増大された血管形成によって特徴付けられる病状を処置するための方法であって、その処置を必要とする対象に治療有効量の請求項21または22に記載の組成物を投与することを含み、それによって異常に増大された血管形成によって特徴付けられる病状を処置する方法。
【請求項25】
異常に増大された血管形成によって特徴付けられる病状の処置のために特定される医薬の製造のための請求項21または22に記載の組成物の使用。
【請求項26】
前記病状は、癌、転移性癌、脊髄形成異常、全身性肥満細胞症(SM)、網膜の新生血管形成、アテローム動脈硬化性斑における新生血管形成、血管腫、関節炎、および乾癬からなる群から選択される、請求項24または25に記載の方法または使用。
【請求項27】
推定血管形成分子を同定する方法であって、
(a)請求項1〜9のいずれかに記載のペプチドが結合した内皮細胞を準備すること、および
(b)前記ペプチドを前記内皮細胞から脱離させることができる分子を同定することを含み、それによって推定血管形成分子を同定する方法。
【請求項28】
推定血管形成分子を同定する方法であって、
(a)請求項1〜9のいずれかに記載のペプチドを、グルコース調節タンパク質(GRP78)またはGRP78を発現する細胞と共に、ペプチドとGRP78またはGRP78を発現する細胞の間での複合体の形成に好適な条件下でインキュベートすること、および
(b)ペプチドを前記複合体から脱離させることができる分子を同定し、それによって推定血管形成分子を同定する
ことを含む、方法。

【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図15】
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【図16a−b】
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【図16c−d】
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【図20a】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図18a−b】
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【図18c】
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【図18d−e】
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【図19】
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【図20b】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24a−b】
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【図24c−d】
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【図25】
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【図26a】
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【図26b】
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【図27】
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【図28a−b】
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【図28c−d】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33a−b】
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【図33c】
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【図33d−e】
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【図33f】
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【図34】
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【公表番号】特表2010−506905(P2010−506905A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532959(P2009−532959)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際出願番号】PCT/IL2007/001256
【国際公開番号】WO2008/047370
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(501177609)ラモット・アット・テル・アビブ・ユニバーシテイ・リミテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】RAMOT AT TEL AVIV UNIVERSITY LTD.
【Fターム(参考)】