血管形状測定装置、血流速度測定装置、および血流量測定装置
【目的】 高精度で血管の断面形状を測定することができる血管形状測定装置を提供する。
【解決手段】 血管形状算出手段62により、生体の一部14である上腕部の表皮20下に位置する上腕動脈18に交差してその表皮20上に配置された第1アレイ26および第2アレイ28から検出されるエコー信号に基づいて、その第1アレイ26および第2アレイ28の直下に位置する部分の血管壁のうち各第1超音波素子26n および第2超音波素子28n に対応する部位の位置がそれぞれ算出され、それら血管壁の第1超音波素子26n および第2超音波素子28n に対応する部位の位置に基づいて、上腕動脈18の直交断面における形状が算出されるので、生体皮膚20下の上腕動脈18の方向が上記第1アレイ26および第2アレイ28と直交していなくても、或いは皮膚20に平行でなくても、その上腕動脈18の断面形状が正確に得られる。
【解決手段】 血管形状算出手段62により、生体の一部14である上腕部の表皮20下に位置する上腕動脈18に交差してその表皮20上に配置された第1アレイ26および第2アレイ28から検出されるエコー信号に基づいて、その第1アレイ26および第2アレイ28の直下に位置する部分の血管壁のうち各第1超音波素子26n および第2超音波素子28n に対応する部位の位置がそれぞれ算出され、それら血管壁の第1超音波素子26n および第2超音波素子28n に対応する部位の位置に基づいて、上腕動脈18の直交断面における形状が算出されるので、生体皮膚20下の上腕動脈18の方向が上記第1アレイ26および第2アレイ28と直交していなくても、或いは皮膚20に平行でなくても、その上腕動脈18の断面形状が正確に得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の表示下に位置する血管の形状を超音波を用いて測定する装置、その血管内の血流速度を測定する血流速度測定装置、およびそれを用いてその血管内の血流量を測定する血流量測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体の状態を把握するために、非侵襲でその生体の血管の径や断面積、血流速度、血流量を正確に測定することが要請されている。たとえば、血管の内皮機能検査に際しては、内径4mmφの動脈において、1%の精度で血管径や断面積、血流速度、血流量を測定することが求められる。
【0003】
これに対し、特許文献1には、非侵襲で生体表皮下の血管の長手方向の2位置に、一方向に配列された複数の第1超音波素子を有する第1アレイと、該第1超音波素子の配列方向と平行な方向に配列された複数の第2超音波素子を有する第2アレイとを配置し、それら第1アレイおよび第2アレイの直下の2位置において血管の断面形状を検出する技術が提案されている。これによれば、超音波を用いているため、非侵襲にて血管の断面形状が検出される。
【特許文献1】特開平11−76233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の血管の断面形状を検出する装置は、第1アレイの複数の第1超音波素子の配列方向を含む測定断面内および第2アレイの複数の第1超音波素子の配列方向を含む測定断面内における血管の断面形状を検出するものであることから、必ずしも血管の長手方向とその測定断面とは直交するものではないので、十分な精度が得られないという問題があった。生体の皮膚下の血管上に上記第1アレイおよび第2アレイが固定された超音波プローブが装着されるとき、動脈の位置は目視し難いことから第1アレイおよび第2アレイがその動脈に直交するように装着したとしても必ずしも正確ではなく、しかも、動脈は皮膚に対して平行でない場合が殆どであるので、動脈血管の長手方向と上記第1アレイや第2アレイの測定断面とは直交しないので、その測定断面内で測定される血管の径や断面積等の断面形状、それに基づく血流速度や血流量を正確に測定することができなかった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、高精度で血管の形状、その血管内の血流速度や血流量を測定することができる血管形状測定装置、血流速度測定装置、および血流量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に係る発明の血管形状測定装置の要旨とするところは、一方向に配列された複数の第1超音波素子を有する第1アレイと、その第1超音波素子の配列方向と平行な方向に配列された複数の第2超音波素子を有する第2アレイとを備え、生体の表皮下に位置する血管に交差して該表皮上に配置された該第1アレイおよび第2アレイから検出されるエコー信号に基づいて該血管の形状を測定する血管形状測定装置であって、(a) 前記第1アレイの各第1超音波素子から検出される反射信号に基づいて、前記血管の該第1アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第1超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第1血管壁位置演算手段と、(b) 前記第2アレイの各第2超音波素子から検出されるエコー信号に基づいて、前記血管の該第2アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第2超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第2血管壁位置演算手段と、(c) 前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記血管の直交断面における形状を算出する血管形状算出手段とを、含むことにある。
【0007】
また、請求項2に係る発明では、上記請求項1にかかる発明において、(a) 前記第1血管壁位置演算手段は、各第1超音波素子から放射される放射信号と該各第1超音波素子により検出される前記血管壁からの反射信号との時間差に基づいて該血管壁までの距離をそれぞれ算出し、その距離に基づいて前記第1アレイの測定断面内における血管壁の位置を決定するものであり、(b) 前記第2血管壁位置演算手段は、各第2超音波素子から放射される放射信号と各第2超音波素子により検出される前記血管壁からの反射信号との時間差に基づいて該血管壁までの距離をそれぞれ算出し、その距離に基づいて前記第2アレイの測定断面内における血管壁の位置を決定するものである。
【0008】
また、請求項3に係る発明では、上記請求項2にかかる発明において、前記血管形状算出手段は、(a) 前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点と長軸径および/または短軸径とをそれぞれ算出する測定断面内形状算出手段と、(b) その測定断面内形状算出手段により算出された第1アレイの測定断面と前記第2アレイの測定断面とにおける血管壁の断面の中心点に基づいて該血管の中心軸を算出する中心軸算出手段と、(c) その中心軸算出手段により算出された血管の中心軸に基づいて、該血管の直交断面と前記測定断面との交差角度を算出する交差角度算出手段と、(d) その交差角度算出手段により算出された交差角度に基づいて、前記血管の直交断面の長軸径および/または短軸径となるように、前記形状算出手段により算出された長軸径および/または短軸径を補正する補正手段とを、含むものである。
【0009】
また、請求項4にかかる発明では、上記請求項3に係る発明において、前記血管形状算出手段は、前記補正手段によって補正された長軸径および短軸径に基づいて前記血管の直交断面における断面積を算出する直交断面積算出手段を、さらに含むものである。
【0010】
前記目的を達成するための請求項5に係る発明の血流速度測定装置の要旨とするところは、(a) 一方向に配列された複数の第1超音波素子を有する第1アレイと、該第1超音波素子の配列方向と平行な方向に配列された複数の第2超音波素子を有する第2アレイと、ドップラ用超音波素子とを備え、該第1アレイおよび第2アレイが前記生体の表皮下に位置する血管と交差し且つ該ドップラ用超音波素子からの超音波を放射方向が該血管に対して鋭角を成すように装着される超音波プローブと、(b) 前記ドップラ用超音波素子から前記血管に向かって超音波を放射したときに得られる、該血管内の血流速度に基づくドップラ効果により変化させられるドップラ反射波に基づいて該血流速度を算出する血流速度算出手段と、(c) 前記第1アレイの各第1超音波素子から検出される反射信号に基づいて、前記血管の該第1アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第1超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第1血管壁位置演算手段と、(d) 前記第2アレイの各第2超音波素子から検出されるエコー信号に基づいて、前記血管の該第2アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第2超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第2血管壁位置演算手段と、(e) 前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点を算出し、該第1アレイの測定断面と前記第2アレイの測定断面とにおける血管壁の断面の中心点に基づいて該血管の中心軸を算出する中心軸算出手段と、(f) その中心軸算出手段により算出された前記血管の中心軸と前記ドップラ用超音波素子から該血管に向かって超音波を放射する方向との実際の相対角度を算出する相対角度算出手段と、(g) その相対角度算出手段により算出された実際の相対角度に基づいて前記血流速度算出手段により算出された血流速度を補正する血流速度補正手段とを、含むことにある。
【0011】
前記目的を達成するための請求項6に係る発明の血流量測定装置の要旨とするところは、(a) 上記請求項5に係る発明の血流速度測定装置と、(b) 前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点と長軸径および/または短軸径とをそれぞれ算出する測定断面内形状算出手段と、(c) 前記中心軸算出手段により算出された血管の中心軸に基づいて、該血管の直交断面と前記測定断面との交差角度を算出する交差角度算出手段と、(d) その交差角度算出手段により算出された交差角度に基づいて、前記血管の直交断面の長軸径および/または短軸径となるように、前記形状算出手段により算出された長軸径および/または短軸径を補正する補正手段と、(e) その補正手段によって補正された長軸径および短軸径に基づいて前記血管の直交断面における断面積を算出する直交断面積算出手段と、(f) その直交断面積算出手段により算出された前記血管の直交断面における断面積と前記血流速度補正手段により補正された血流速度とに基づいて、前記血管内の血流量を算出する血流量算出手段とを、含むことにある。
【発明の効果】
【0012】
前記請求項1に係る発明によれば、生体の表皮下に位置する血管に交差して該表皮上に配置された該第1アレイおよび第2アレイから検出されるエコー信号に基づいて、その第1アレイおよび第2アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち各第1超音波素子および第2超音波素子に対応する部位の位置がそれぞれ算出され、それら血管壁の第1超音波素子および第2超音波素子に対応する部位の位置に基づいて、血管の直交断面における形状が算出されるので、生体皮膚下の血管の方向が上記第1アレイおよび第2アレイと直交していなくても、或いは皮膚に平行でなくても、その血管の血管径、血管断面形状、或いは断面積等の断面形状が正確に得られる。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、第1血管壁位置演算手段および第2血管壁位置演算手段によって、各第1超音波素子および各第2超音波素子から放射される放射信号とその各第1超音波素子および各第2超音波素子により検出される前記血管壁からの反射信号との時間差に基づいて該血管壁までの距離がそれぞれ算出され、その距離に基づいて前記第1アレイの測定断面内における血管壁の位置が決定されるので、第1アレイおよび第2アレイの測定断面内において各血管壁の位置が正確に得られる。
【0014】
また、請求項3に係る発明によれば、前記血管形状算出手段において、第1アレイおよび第2アレイの測定断面内の血管壁の部位の位置に基づいて、その第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点と長軸径および/または短軸径とがそれぞれ算出され、その第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点に基づいて血管の中心軸が算出され、その血管の中心軸に基づいて前記血管の直交断面と前記測定断面との交差角度が算出され、その交差角度に基づいて前記血管の直交断面の長軸径および/または短軸径となるように、長軸径および/または短軸径が補正されるので、生体皮膚下の血管の方向が上記第1アレイおよび第2アレイと直交していなくても、或いは皮膚に平行でなくても、その血管の断面形状が正確に得られる。
【0015】
また、請求項4に係る発明によれば、前記血管形状算出手段は、前記補正手段によって補正された長軸径および短軸径に基づいて前記血管の直交断面における断面積を算出する直交断面積算出手段を含むものであるので、生体皮膚下の血管の方向が上記第1アレイおよび第2アレイと直交していなくても、或いは皮膚に平行でなくても、その血管の断面積が正確に得られる。
【0016】
また、請求項5に係る発明の血流速度測定装置によれば、(a) 一方向に配列された複数の第1超音波素子を有する第1アレイと、該第1超音波素子の配列方向と平行な方向に配列された複数の第2超音波素子を有する第2アレイと、前記ドップラ用超音波素子とを備え、該第1アレイおよび第2アレイが前記生体の表皮下に位置する血管と交差し且つ該ドップラ用超音波素子からの超音波を放射方向が該血管に対して鋭角を成すように装着される超音波プローブと、(b) 前記ドップラ用超音波素子から前記血管に向かって超音波を放射したときに得られる、該血管内の血流速度に基づくドップラ効果により変化させられるドップラ反射波に基づいて該血流速度を算出する血流速度算出手段と、(c) 前記第1アレイの各第1超音波素子から検出される反射信号に基づいて、前記血管の該第1アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第1超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第1血管壁位置演算手段と、(d) 前記第2アレイの各第2超音波素子から検出されるエコー信号に基づいて、前記血管の該第2アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第2超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第2血管壁位置演算手段と、(e) 前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点を算出し、該第1アレイの測定断面と前記第2アレイの測定断面とにおける血管壁の断面の中心点に基づいて該血管の中心軸を算出する中心軸算出手段と、(f) その中心軸算出手段により算出された前記血管の中心軸と前記ドップラ用超音波素子から該血管に向かって超音波を放射する方向との実際の相対角度を算出する相対角度算出手段と、(g) その相対角度算出手段により算出された実際の相対角度に基づいて前記血流速度算出手段により算出された血流速度を補正する血流速度補正手段とが、設けられているので、生体皮膚下の血管の方向が上記第1アレイおよび第2アレイと直交していなくても、或いは皮膚に平行でなくても、その血管内の血流速度が正確に得られる。
【0017】
また、請求項6に係る発明の血流量測定装置によれば、(a) 上記請求項5に係る発明の血流速度測定装置と、(b) 前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点と長軸径および/または短軸径とをそれぞれ算出する測定断面内形状算出手段と、(c) 前記中心軸算出手段により算出された血管の中心軸に基づいて、その血管の直交断面と前記測定断面との交差角度を算出する交差角度算出手段と、(d) その交差角度算出手段により算出された交差角度に基づいて、前記血管の直交断面の長軸径および/または短軸径となるように、前記形状算出手段により算出された長軸径および/または短軸径を補正する補正手段と、(e) その補正手段によって補正された長軸径および短軸径に基づいて前記血管の直交断面における断面積を算出する直交断面積算出手段と、(f) その直交断面積算出手段により算出された前記血管の直交断面における断面積と前記血流速度補正手段により補正された血流速度とに基づいて、前記血管内の血流量を算出する血流量算出手段とが、設けられているので、生体皮膚下の血管の方向が上記第1アレイおよび第2アレイと直交していなくても、或いは皮膚に平行でなくても、その血管内の血流量が正確に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ここで、好適には、前記血管は、生体の皮膚下に位置する動脈たとえば上腕動脈、撓骨動脈、足背動脈、頸動脈、浅側頭動脈等である。FMD(flow-medeated dilation: 内皮依存性血管拡張反応)検査の場合には、たとえば上腕動脈、撓骨動脈、足背動脈が対象となり、頭部への血流把握の場合には、たとえば頸動脈、浅側頭動脈が対象となる。
【0019】
また、好適には、前記第1アレイおよび第2アレイを構成する複数の超音波素子は、振動子と受信子とが共通の振動子から構成されたものであってもよいし、一対の発信子と受信子とからそれぞれ構成されていてもよい。
【0020】
また、好適には、ドップラ用超音波素子は、送信子と受信子とが共通の1個の振動子であってもよいし、一対の発信子と受信子とから構成されていてもよい。また、このドップラ用超音波素子は、前記血管の方向に対して交差する方向に配列された複数個の振動子アレイから構成されてもよい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例の超音波測定装置10に備えられた超音波プローブ12の生体14に対する装着状態を示している。この超音波プローブ12は、図2或いは図3に示すように、装着バンド16によって生体の一部たとえば上腕部において上腕動脈18の真上に位置するように装着される。この上腕動脈18は、上腕二頭筋の下端部下側から表皮20に向かって接近する形状を有している。
【0022】
上記超音波プローブ12は、その表皮20と接触する接触面22を有し、アクリル樹脂等の合成樹脂、セラミックス、金属などの超音波透過性材料から構成された本体24と、その本体24内に所定の間隔Lを隔てて互いに平行となるように埋設され且つ上記上腕動脈18と交差する長手方向の第1アレイ26および第2アレイ28と、その第2アレイ28から下流側に位置するように配設され且つ上記上腕動脈18と交差する長手方向の第3アレイ30とを備えている。第1アレイ26および第2アレイ28は、上記一方向すなわち上記長手方向に配列された複数個の超音波素子26n および28n (nは整数)をそれぞれ備えている。上記第3アレイ30も、上記の第1アレイ26および第2アレイ28と平行な一方向すなわち上記長手方向に配列された複数個の超音波素子30n を備えている。上記超音波素子26n および28n は、測定対象となる上腕動脈18の径よりも十分に小さい間隔たとえば0.2乃至0.5mm程度となるように配置されている。超音波素子30n もそれと同等であるかそれよりも大きい間隔で配置されている。
【0023】
上記第1アレイ26の超音波素子26n および第2アレイ28の超音波素子28n は、圧電素子などから構成されることによって超音波の発信子および受信子として機能するものであり、真下に向かって超音波を発信するように接触面22に対して垂直に設けられている。上記第3アレイ30の超音波素子30n も、圧電素子などから構成されることによって超音波の発信子および受信子として機能するものであり、上流部位の上腕動脈18に向かって超音波を発信するように接触面22に対して超音波放射面が斜めにたとえば45度程度傾斜して設けられている。上記第1アレイ26の超音波素子26n および第2アレイ28の超音波素子28n は、X−Z平面として設定される接触面22内に略位置するように配置され、第1アレイ26の超音波素子26n のうちの端部に位置する素子261 が上記X−Y−Z三次元直交座標の原点として設定されている。
【0024】
第1アレイ26の複数個の超音波素子26n および第2アレイ28の複数個の超音波素子28n は、それぞれ、上記接触面22に対して垂直方向に超音波を放射し、その超音波の伝播過程に存在する界面からの反射波をエコー信号として受信するので、図2に示すように、第1アレイ26および第2アレイ28の直下には、互いに平行であって上記上腕動脈18がそれぞれ貫通させられる測定断面Aおよび測定断面Bが形成されるようになっている。それらの測定断面Aおよび測定断面Bは前記X−Y−Z三次元直交座標のX−Y平面に平行な面となり、それら測定断面Aおよび測定断面Bの面内の位置は座標値により表される。
【0025】
図3に示すように、上記超音波測定装置10は、第1アレイ26、第2アレイ28、第3アレイ30を駆動制御するための超音波駆動制御回路32と、アナログ信号およびデジタル信号の一方から他方へ変換するための信号変換器34と、電子制御装置36と、数字および画像を表示するための表示器38とを備えている。上記電子制御装置36はCPU40、ROM42、RAM44、図示しない記憶装置やインターフェース等から成る所謂マイクロコンピュータから構成されており、CPU40はRAM44の一時記憶機能を利用しつつ予めROM42に記憶されたプログラムにしたがって入力信号を処理して、血管形状測定装置、血流速度測定装置、および血流量を算出し、演算結果を表示器38に表示させ、或いは他の機器へ出力する。このため、超音波測定装置10は、血管形状測定装置、血流速度測定装置、および血流量測定装置として機能している。
【0026】
図4は、上記電子制御装置36の演算制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図4において、第1管壁位置演算手段48および第2管壁位置演算手段50は、第1アレイ26の直下の測定断面Aおよび第2アレイ28の直下の測定断面Bにおける上腕動脈18の断面形状を、各超音波素子26n および各超音波素子28n がそれぞれ受信したエコー信号に基づいて算出する。図5は、第1アレイ26の各超音波素子26n 毎に示す送信信号Sn と上腕動脈18の管壁からのエコー信号En の波形を示すタイムチャートであり、その送信信号Sn とエコー信号En との時間差が第1アレイ26からの深さ寸法に対応している。このため、上記第1管壁位置演算手段48は、上記送信信号Sn とエコー信号En との間の時間差と、生体内の音速とに基づいて各超音波素子26n に対応する管壁の深さ位置をそれぞれ算出する。第2管壁位置演算手段50も同様にして、測定断面Bにおける各超音波素子28n に対応する管壁の深さ位置をそれぞれ逐次算出する。
【0027】
次いで、測定断面形状算出手段52は、上記測定断面AおよびBにおいて、上記各超音波素子26n および28n に対応する管壁の深さ位置から、図6に示すようにX−Y座標内の点で特定し、さらに、それらの各点から曲線補完を用いてそれら各点を結ぶ閉曲線Kを算出して上腕動脈18の内腔の形状とし、その閉曲線Kの長径軸寸法2b、短軸径寸法2a、X軸に対する長径軸の傾斜角度θをそれぞれ逐次算出する。図6は測定断面Aにおける座標を示している。
【0028】
中心軸算出手段54は、測定断面形状算出手段52により測定断面AおよびBにおいて求められた閉曲線Kから、その各測定断面AおよびBにおける閉曲線Kの中心点CA (X0A,Y0A,ZA )およびCB (X0B,Y0B,ZB )をそれぞれ算出する。そして、それら各測定断面AおよびBにおける閉曲線Kの中心点CA (X0A,Y0A,ZA )およびCB (X0B,Y0B,ZB )を結ぶ直線を、上腕動脈18の中心軸CLとして逐次決定する。図7は接触面22に平行な面(水平面)内の中心軸CLを示し、図8は接触面22に垂直な面(垂直面)内の中心軸CLを示している。たとえば、上記中心点CA は、閉曲線Kに近似する楕円の式(1) を利用した次式(1) から、最小自乗法を用いて未知数であるX0 およびY0 を算出する。
【0029】
[(Xi −X0 )cos θ+( Yi −Y0 )sin θ]2/a2
+[ ( Xi −X0 )sin θ+( Yi −Y0 )cos θ]2/b2 =1 ・・・(1)
【0030】
交差角算出手段56は、図7に示す接触面22に平行な面内において、測定断面A或いはBについて、中心軸算出手段54により算出された上腕動脈18の中心軸CLに基づいて中心点CA を通ってその中心軸CLと直交する上腕動脈18の直交断面A’或いは中心点CB を通ってその中心軸CLと直交する上腕動脈18の直交断面B’を決定し、その直交断面A’或いはB’と測定断面A或いはBとの交差角度β(度)を逐次算出する。同様に、図8に示す接触面22に垂直な面内において、測定断面A或いはBについて、中心軸算出手段54により算出された上腕動脈18の中心軸CLに基づいて中心点CA を通ってその中心軸CLと直交する上腕動脈18の直交断面A’或いは中心点CB を通ってその中心軸CLと直交する上腕動脈18の直交断面B’を決定し、その直交断面A’或いはB’と測定断面A或いはBとの交差角度γ(度)を逐次算出する。
【0031】
補正手段58は、上記交差角度算出手段56により算出された交差角度βおよびγに基づいて、測定断面形状算出手段52により算出された形状を直交断面A’およびB’における形状となるように補正する。すなわち、上腕動脈18の直交断面A’およびB’における長軸径2b’および短軸径2a’となるように、補正式(2) 、(3) により測定断面形状算出手段52により算出された長軸径2bおよび短軸径2aをそれぞれ逐次補正する。
【0032】
a’=a/cos β ・・・(2)
b’=b/cos γ ・・・(3)
但し、cos β=( X0 A−X0 B)/L
cos γ=( X0 A−X0 B)/L
【0033】
直交断面積算出手段60は、直交断面A’およびB’における上腕動脈18の内腔面積SA ’およびSB ’を、上記補正手段58によって補正された長軸径2b’および短軸径2a’に基づいて逐次算出する。たとえば、直交断面A’およびB’における値に補正された長軸径2b’および短軸径2a’から特定される楕円の式(4) を用いて積分することにより、直交断面A’およびB’における面積SA ’およびSB ’が算出される。本実施例では、上記測定断面形状算出手段52、中心軸算出手段54、交差角算出手段56、補正手段58、および直交断面積算出手段60が、血管形状算出手段62に対応している。
【0034】
(( Xi ’−X0 )/a’)2+(( Yi ’−Y0 )/b’)2=1 ・・・(4)
【0035】
アクティブ素子選択手段64は、第3アレイ30の複数の超音波素子30n のうち上腕動脈18に最も近い素子或いは超音波放射方向線が上腕動脈18の中心軸CLと最も近いアクティブ素子を、中心軸算出手段54により求められた上腕動脈18の中心軸CLの位置に基づいて選択する。
【0036】
血流速度算出手段66は、予め記憶された式(5) から、上記アクティブ素子から放射された超音波が血流によるドップラ効果によって位相変化或いは周波数変化させられたドップラ反射波の周波数fdに基づいて1拍毎に発生する最大瞬時血流速度Umax を算出する。式(5) において、fcは放射される超音波の波数、cは生体中の音速である。式(5) において、θ2 は図9に示す接触面22に垂直な面内のアクティブ素子からの超音波放射方向線USLと中心軸CLとの角度、θ1 は図10に示す接触面22に垂直な面内のアクティブ素子からの超音波放射方向線USLと中心軸CLとの角度、θ3 は図10に示す接触面22に垂直な面内の受波素子の受波方向線RSLと中心軸CLとの角度である。アクティブ素子が受波素子を兼ねる場合にはθ3 =0となる。それらの角度θ1 、θ2 、θ3 は、既知のアクティブ素子の幾何的位置と前記中心軸算出手段54により算出された中心軸CLとに基づいて予め算出されるとともに、上記式(5) は、それらの角度θ1 、θ2 、θ3 による補正が加味されているので、本実施例の血流速度算出手段66は、式(5) を用いることにより超音波放射方向線USLと中心軸CLとの間の相対角度θ1 、θ2 、θ3 に起因する最大瞬時血流速度Umax のずれを補正した最大瞬時血流速度Umax を一挙に算出しているので、超音波放射方向線USLと中心軸CLとの間の相対角度θ1 、θ2 、θ3 を算出する相対角度算出手段68、およびその相対角度θ1 、θ2 、θ3 に起因する最大瞬時血流速度Umax のずれを補正する血流補正手段70を兼ねているが、血流速度算出手段66は最大瞬時血流速度Umax を基本的に算出し、相対角度算出手段68は既知のアクティブ素子の幾何的位置と前記中心軸算出手段54により算出された中心軸CLとに基づいて超音波放射方向線USLと中心軸CLとの間の相対角度θ1 、θ2 、θ3 を算出し、血流補正手段70はその相対角度θ1 、θ2 、θ3 に起因する最大瞬時血流速度Umax のずれを補正するように役割を分担するように構成されてもよい。
【0037】
fd=−(fc/c)(cos θ1cosθ2 +cos θ3cosθ2 ) ・・・(5)
【0038】
血流量算出手段72は、前記直交断面積算出手段60により求められた直交断面B’における上腕動脈18のSB ’と、上記血流速度算出手段66において求められた補正後の最大瞬時血流速度Umax とに基づいて、直交断面B’における血流量QB (=SB ’×Umax /2)を逐次算出する。そして、出力手段74は、上記のようにして求められた、補正後の長軸径2b’および短軸径2a’、補正後の血流速度U、血流量QB をそれぞれ数字、グラフにて表示器38に画像表示或いは印字表示させるとともに、図示しない記憶装置に記憶させる。
【0039】
図11および図12は、前記電子制御装置36の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、図11は測定開始操作判定後に実行される測定制御ルーチンであり、図12はその測定制御ルーチン内の直交断面内の血管形状算出ルーチンを示している。
【0040】
図11において、測定開始操作が判定されると、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、実際の測定実行時間Tが予め設定された最大測定時間Tmよりも小さいか否かが判断される。当初はこのS1の判断が肯定されるので、S2において走査素子番号nがクリアされた後、S3においてその走査素子番号nに「1」が加算される。次に、S4において、走査素子番号nがその最大番号nmax よりも低いか否かが判断される。この走査素子番号nは、第1アレイ或いは第2アレイの超音波素子数に対応した値に設定される。当初はこのS4の判断が肯定されるので、S5においてn番目の超音波素子26n および28n から超音波は発信され、S6においてn番目の超音波素子26n および28n によりエコー信号が受信される。次いで、前記第1血管壁位置演算手段48および第2血管壁位置演算手段50に対応するS7において、上腕動脈18のうちの上記n番目の超音波素子26n および28n に対応するに部位の血管壁の深さ位置が算出される。そして、上記S4の判断が否定されるまで上記S3以下が繰り返し実行される。
【0041】
1番目の超音波素子261 および281 からnmax 番目の超音波素子26nmaxおよび28nmaxまでの送信受信が終了すると上記S4の判断が否定されるので、前記アクティブ素子選択手段64に対応するS8において、測定断Bにおける最大血管径位置或いは管壁の最大深さ位置が上記S7において算出された各超音波素子28n に対応するに部位の血管壁の深さ位置に基づいて決定されるとともに、第3アレイ30のうちの上記最大血管径位置或いは管壁の最大深さ位置に対応して位置するドップラ用超音波素子30n が血流検出に用いられるアクティブ素子として決定される。次いで、前記血流算出手段66に対応するS9において、よく知られた前記の式(5) から、上記アクティブ素子から放射された超音波が血流によるドップラ効果によって位相変化或いは周波数変化させられたドップラ反射波の周波数fdに基づいて最大瞬時血流速度Umax が算出される。
【0042】
次のS10では、図12に示す直交断面の血管形状算出ルーチンが実行される。図12において、前記測定断面内形状算出手段52に対応するSA1では、測定断面AおよびBにおいて各超音波素子26n および28n に対応する管壁の深さ位置が図6に示すようにX−Y座標内の点で特定され、それらの各点から曲線補完を用いてそれら各点を結ぶ閉曲線Kが算出されて上腕動脈18の内腔の形状とされ、測定断面Aの場合の図6に示すように、その閉曲線Kの長径軸寸法2b、短軸径寸法2aが測定断面AおよびBにおいてそれぞれ算出される。次に、前記中心軸算出手段54に対応するSA2では、SA1により求められた各測定断面AおよびB内の閉曲線Kから、その閉曲線Kの中心点CA (X0A,Y0A,ZA )およびCB (X0B,Y0B,ZB )がそれぞれ算出され、それら各測定断面AおよびBにおける閉曲線Kの中心点CA (X0A,Y0A,ZA )およびCB (X0B,Y0B,ZB )を結ぶ直線が、上腕動脈18の中心軸CLとして決定される。続いて、前記交差角算出手段56に対応するSA3では、図7に示す接触面22に平行な面内において、測定断面Bについて、SA2により算出された上腕動脈18の中心軸CLに基づいて中心点CB を通ってその中心軸CLと直交する上腕動脈18の直交断面B’が決定され、その直交断面B’と測定断面Bとの交差角度β(度)が算出される。また、図8に示す接触面22に垂直な面内において、測定断面Bについて、中心軸算出手段54により算出された上腕動脈18の中心軸CLに基づいて中心点CB を通ってその中心軸CLと直交する上腕動脈18の直交断面B’が決定され、その直交断面B’と測定断面Bとの交差角度γ(度)が算出される。次に、前記補正手段58に対応するSA4では、上記SA3により算出された交差角度βおよびγに基づいて、SA1により算出された形状が直交断面B’における形状となるように補正する。すなわち、上腕動脈18の直交断面B’における長軸径2b’および短軸径2a’となるように、補正式(2) 、(3) により測定断面形状算出手段52により算出された長軸径2bおよび短軸径2aがそれぞれ補正される。そして、前記直交断面積算出手段60に対応するSA5では、直交断面B’における上腕動脈18の内腔面積SB ’が上記SA4によって補正された長軸径2b’および短軸径2a’に基づいて算出する。たとえば、直交断面B’における値に補正された長軸径2b’および短軸径2a’から特定される楕円の式(4) を用いて積分することにより、直交断面B’における面積SB ’が算出される。本実施例では、上記SA1乃至SA5が、血管形状算出手段62に対応している。
【0043】
図11に戻って、前記相対角度算出手段68に対応するS11および前記血流速度補正手段70に対応するS12では、既知のアクティブ素子の幾何的位置と前記中心軸算出手段54により算出された中心軸CLとに基づいて超音波放射方向線USLと中心軸CLとの間の相対角度θ1 、θ2 、θ3 が算出されるとともに、その相対角度θ1 、θ2 、θ3 に起因する最大瞬時血流速度Umax のずれが補正される。本実施例では、S9において角度θ1 、θ2 、θ3 による補正が加味された式(5) が用いられることによって最大瞬時血流速度Umax が算出されているので、上記S11およびS12は、S9において実行されていることになる。
【0044】
以上のようにして直交断面B’における上腕動脈18の内腔の直交断面積SB ’と最大瞬時血流速度Umax とが算出されると、前記血流量算出手段72に対応するS13において、上腕動脈18の血流量QB (=SB ’×Umax /2)が算出される。そして、前記出力手段74に対応するS14では、上記のようにして求められた、補正後の長軸径2b’および短軸径2a’、補正後の最大瞬時血流速度Umax 、血流量QB がそれぞれ数字、グラフにて表示器38に画像表示出力或いは印字表示出力させられるとともに、図示しない記憶装置に記憶させられる。このようにして、直交断面A’およびB’における上腕動脈18の内腔の長軸径2b’および短軸径2a’、その内腔の断面形状や、直交断面B’における直交断面積SB 、最大瞬時血流速度Umax 、および血流量QB が逐次求められるので、血流により血管壁に加えられるシェアストレスを計算できる。これは内皮機機能の評価に用いられ得る。
【0045】
上述のように、本実施例によれば、血管形状算出手段62(S10)により、生体の一部14である上腕部の表皮20下に位置する上腕動脈18に交差してその表皮20上に配置された第1アレイ26および第2アレイ28から検出されるエコー信号に基づいて、その第1アレイ26および第2アレイ28の直下に位置する部分の血管壁のうち各第1超音波素子26n および第2超音波素子28n に対応する部位の位置がそれぞれ算出され、それら血管壁の第1超音波素子26n および第2超音波素子28n に対応する部位の位置に基づいて、上腕動脈18の直交断面における形状が算出されるので、生体皮膚20下の上腕動脈18の方向が上記第1アレイ26および第2アレイ28と直交していなくても、或いは皮膚20に平行でなくても、その上腕動脈18の断面形状が正確に得られる。
【0046】
また、本実施例によれば、第1血管壁位置演算手段48(S7)および第2血管壁位置演算手段50(S7)によって、各第1超音波素子26n および各第2超音波素子28n から放射される放射信号とその各第1超音波素子26n および各第2超音波素子28n により検出される血管壁からのエコー(反射)信号との時間差に基づいてその血管壁までの距離がそれぞれ算出され、血管形状算出手段62(S10)により、その距離に基づいて前記第1アレイ26の測定断面A内および第2アレイ28の測定断面B内における血管壁の位置が決定されるので、第1アレイ26および第2アレイ28の測定断面A内および測定断面B内において各血管壁の位置が正確に得られる。
【0047】
また、本実施例によれば、血管形状算出手段62(S10)において、第1アレイ26および第2アレイ28の測定断面内の血管壁の部位の位置に基づいて、その第1アレイ26の測定断面A内および前記第2アレイ28の測定断面B内における血管壁の断面の中心点CA およびCB と長軸径2bおよび短軸径2aとがそれぞれ算出され、その第1アレイ26の測定断面A内と前記第2アレイ28の測定断面B内とにおける血管壁の断面の中心点CA とCB とに基づいて上腕動脈18の中心軸CLが算出され、その上腕動脈18の中心軸CLに基づいてその血管の直交断面B’と測定断面Bとの交差角度βおよびγが算出され、その交差角度βおよびγに基づいて上記血管の直交断面B’内の長軸径2b’および短軸径2a’となるように、長軸径2bおよび短軸径2aが補正されるので、生体皮膚20下の上腕動脈18の方向が上記第1アレイ26および第2アレイ28と直交していなくても、或いは皮膚20に平行でなくても、その血管18の断面形状が正確に得られる。
【0048】
また、本実施例によれば、血管形状算出手段62(S10)は、補正手段58(SA4)によって補正された長軸径2b’および短軸径2a’に基づいて血管18の直交断面B’における断面積SB ’を算出する直交断面積算出手段60(SA5)を含むものであるので、生体皮膚20下の血管18の方向が上記第1アレイ26および第2アレイ28と直交していなくても、或いは皮膚20に平行でなくても、その血管18の断面積SB ’が正確に得られる。
【0049】
また、本実施例によれば、(a) 一方向に配列された複数の第1超音波素子26n を有する第1アレイ26と、その第1超音波素子26n の配列方向と平行な方向に配列された複数の第2超音波素子28n を有する第2アレイ28と、ドップラ用超音波素子30n を有する第3アレイ30とを備え、その第1アレイ26および第2アレイ28が生体の表皮20下に位置する上腕動脈18と交差し且つそのドップラ用超音波素子30n からの超音波を放射方向USLが上腕動脈18に対して鋭角を成すように装着される超音波プローブ12と、(b) ドップラ用超音波素子30n から上腕動脈18に向かって超音波を放射したときに得られる、その上腕動脈18内の血流速度に基づくドップラ効果により変化させられるドップラ反射波に基づいてその血流速度Uを算出する血流速度算出手段66(S9)と、(c) 第1アレイ26の各第1超音波素子26n から検出されるエコー(反射)信号に基づいて、上腕動脈18の第1アレイ26の直下に位置する部分の血管壁のうち各第1超音波素子26n に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第1血管壁位置演算手段48(S7)と、(d) 第2アレイ28の各第2超音波素子28n から検出されるエコー信号に基づいて、上腕動脈18第2アレイ28の直下に位置する部分の血管壁のうち各第2超音波素子28n に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第2血管壁位置演算手段50(S7)と、(e) 第1血管壁位置演算手段48により算出された各第1超音波素子26n に対応する血管壁部位の位置と第2血管壁位置演算手段50により算出された各第2超音波素子28n に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、第1アレイ26の測定断面A内と第2アレイ28の測定断面B内とにおける血管壁の断面の中心点CA とCB とを算出し、第1アレイ26の測定断面Aと第2アレイ28の測定断面Bとにおける血管壁の断面の中心点CA とCB に基づいてその血管18の中心軸CLを算出する中心軸算出手段54(SA2)と、(f) その中心軸算出手段54により算出された血管18の中心軸CLとドップラ用超音波素子30n からその血管18に向かって超音波を放射する方向USLとの実際の相対角度θ1 、θ2 、θ3 を算出する相対角度算出手段68(S11)と、(g) その相対角度算出手段68により算出された実際の相対角度θ1 、θ2 、θ3 に基づいて血流速度算出手段66により算出された血流速度を補正する血流速度補正手段70(S12)とが、設けられているので、生体皮膚20下の血管18の方向が上記第1アレイ26および第2アレイ28と直交していなくても、或いは皮膚20に平行でなくても、その血管18内の最大瞬時血流速度Umax が正確に得られる。
【0050】
また、本実施例によれば、(a) 上記の血流速度測定のための構成と、(b) 第1血管壁位置演算手段48により算出された各第1超音波素子26n に対応する血管壁部位の位置と第2血管壁位置演算手段50により算出された各第2超音波素子28n に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、第1アレイ26の測定断面A内と第2アレイ28の測定断面B内とにおける血管壁の断面の中心点CA およびCB と長軸径2bおよび短軸径2とをそれぞれ算出する測定断面内形状算出手段52(SA1)と、(c) 中心軸算出手段54により算出された血管18の中心軸CLに基づいて、その血管18の直交断面B’と測定断面Bとの交差角度β、γを算出する交差角度算出手段56(SA3)と、(d) その交差角度算出手段56により算出された交差角度β、γに基づいて、血管18の直交断面B’内の長軸径2/b’および短軸径2/a’となるように、測定断面形状算出手段52により算出された長軸径2/bおよび短軸径2/aを補正する補正手段58(SA4)と、(e) その補正手段58によって補正された長軸径2/bおよび短軸径2/aに基づいて血管18の直交断面B’における断面積S’を算出する直交断面積算出手段60(SA5)と、(f) その直交断面積算出手段60により算出された血管18の直交断面B’における断面積S’と血流速度補正手段70により補正された最大瞬時血流速度Umax とに基づいて、血管18内の血流量QB を算出する血流量算出手段72(S13)とが、設けられているので、生体皮膚20下の血管18の方向が上記第1アレイ26および第2アレイ28と直交していなくても、或いは皮膚20に平行でなくても、その血管18内の血流量QB が正確に得られる。
【0051】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用され得る。
【0052】
たとえば、前述の実施例では、血流量算出手段72により直交断面B’における上腕動脈18の血流量QB (=SB ’×Umax /2)が算出されていたが、直交断面A’における上腕動脈18の血流量QA (=SA ’×Umax /2)が、直交断面積算出手段60により求められた直交断面A’における上腕動脈18の直交断面積SA ’に基づいて算出されてもよい。また、直交断面A’と直交断面B’との平均値に対する血流量が求められてもよい。
【0053】
また、直交断面A’およびB’における上腕動脈18の内腔の長軸径2b’および短軸径2a’、その内腔の断面形状や、直交断面B’における直交断面積SB 等の変化の時間差に基づいて脈波伝播速度が算出されてもよい。
【0054】
また、前述の実施例において、血流量算出手段72により直交断面B’における上腕動脈18の平均の血流量QB (=SB ’×Umax /2)が算出されていたが、血流速度算出手段66によって算出される血流速度Uが平均速度である場合には、上記血流量QB は式(QB =SB ’×U)に基づいて算出される。また、血流量算出手段72により、最大血流量QBmax(=SB ’×Umax )が求められてもよい。
【0055】
また、前述の実施例において、第3アレイ30は複数のドップラ用超音波素子30n から構成されていたが、単一のドップラ用超音波素子から構成されていたもよい。
【0056】
また、前述の実施例では、たとえば第1アレイ26では、各超音波素子26n が、図5に示すように、個々に超音波の発信および受信を行っていたが、位相が異なる駆動信号を用いて数個の超音波素子から超音波を送信して細い超音波ビームを送信し、受信する場合も数個の超音波素子を用いて受信する所謂ビームフォーミング技術を採用することもできる。これによれば、所定の距離で収束するように超音波ビームを形成することができるので、検出精度が高められる。
【0057】
なお、上述したのは、あくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施例の超音波装置に備えられた超音波プローブが上腕に装着された状態を示す斜視図である。
【図2】図1の実施例の超音波装置の超音波プローブに設けられた第1アレイの測定断面および第2アレイの測定断面と上腕動脈との関係を示す斜視図である。
【図3】図1の実施例の超音波装置の要部構成を概略説明する図である。
【図4】図3の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図5】図1の実施例において、第1アレイの測定断面における各超音波素子の送信波および受信波を説明する図である。
【図6】図5の第1血管壁位置演算手段により図5の送信波と受信波との時間差に基づいて算出された第1アレイの測定断面における各測定点の座標と、それらを接続した閉曲線である上腕動脈の内腔の形状を説明する図である。
【図7】図5の中心線算出手段により求められた中心線CLに直交する直交断面B’と第2アレイの測定断面Bとの、接触面に平行な平面内の交差角度βを示す図である。
【図8】図5の中心線算出手段により求められた中心線CLに直交する直交断面B’と第2アレイの測定断面Bとの、接触面に垂直な面内の交差角度γを示す図である。
【図9】図5の中心線算出手段により求められた中心線CLとドップラ用超音波素子の放射方向線USLとの、接触面に垂直な面内の相対角度θ2 を示す図である。
【図10】図5の中心線算出手段により求められた中心線CLとドップラ用超音波素子の放射方向線USLとの、接触面に平行な平面内の相対角度θ1 と、中心線CLとドップラ用超音波素子の受波方向線RSLとの、接触面に平行な平面内の相対角度θ3 とを示す図である。
【図11】図3の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【図12】図11のS10の直交断面内における血管形状を算出するためのルーチンを示す図である。
【符号の説明】
【0059】
10:超音波測定装置(血管形状測定装置、血流速度測定装置、血流量測定装置)
12:超音波プローブ
14:生体の一部(上腕部)
18:上腕動脈(血管)
26:第1アレイ
26n :第1超音波素子
28:第1アレイ
28n :第2超音波素子
48:第1血管壁位置演算手段
50:第2血管壁位置演算手段
52:血管断面内形状算出手段
54:中心軸算出手段
56:交差角算出手段
58:形状補正手段
60:直交断面積算出手段
62:血管形状算出手段
66:血流速度算出手段
68:相対角度算出手段
70:血流速度補正手段
72:血流量算出手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の表示下に位置する血管の形状を超音波を用いて測定する装置、その血管内の血流速度を測定する血流速度測定装置、およびそれを用いてその血管内の血流量を測定する血流量測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体の状態を把握するために、非侵襲でその生体の血管の径や断面積、血流速度、血流量を正確に測定することが要請されている。たとえば、血管の内皮機能検査に際しては、内径4mmφの動脈において、1%の精度で血管径や断面積、血流速度、血流量を測定することが求められる。
【0003】
これに対し、特許文献1には、非侵襲で生体表皮下の血管の長手方向の2位置に、一方向に配列された複数の第1超音波素子を有する第1アレイと、該第1超音波素子の配列方向と平行な方向に配列された複数の第2超音波素子を有する第2アレイとを配置し、それら第1アレイおよび第2アレイの直下の2位置において血管の断面形状を検出する技術が提案されている。これによれば、超音波を用いているため、非侵襲にて血管の断面形状が検出される。
【特許文献1】特開平11−76233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の血管の断面形状を検出する装置は、第1アレイの複数の第1超音波素子の配列方向を含む測定断面内および第2アレイの複数の第1超音波素子の配列方向を含む測定断面内における血管の断面形状を検出するものであることから、必ずしも血管の長手方向とその測定断面とは直交するものではないので、十分な精度が得られないという問題があった。生体の皮膚下の血管上に上記第1アレイおよび第2アレイが固定された超音波プローブが装着されるとき、動脈の位置は目視し難いことから第1アレイおよび第2アレイがその動脈に直交するように装着したとしても必ずしも正確ではなく、しかも、動脈は皮膚に対して平行でない場合が殆どであるので、動脈血管の長手方向と上記第1アレイや第2アレイの測定断面とは直交しないので、その測定断面内で測定される血管の径や断面積等の断面形状、それに基づく血流速度や血流量を正確に測定することができなかった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、高精度で血管の形状、その血管内の血流速度や血流量を測定することができる血管形状測定装置、血流速度測定装置、および血流量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に係る発明の血管形状測定装置の要旨とするところは、一方向に配列された複数の第1超音波素子を有する第1アレイと、その第1超音波素子の配列方向と平行な方向に配列された複数の第2超音波素子を有する第2アレイとを備え、生体の表皮下に位置する血管に交差して該表皮上に配置された該第1アレイおよび第2アレイから検出されるエコー信号に基づいて該血管の形状を測定する血管形状測定装置であって、(a) 前記第1アレイの各第1超音波素子から検出される反射信号に基づいて、前記血管の該第1アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第1超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第1血管壁位置演算手段と、(b) 前記第2アレイの各第2超音波素子から検出されるエコー信号に基づいて、前記血管の該第2アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第2超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第2血管壁位置演算手段と、(c) 前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記血管の直交断面における形状を算出する血管形状算出手段とを、含むことにある。
【0007】
また、請求項2に係る発明では、上記請求項1にかかる発明において、(a) 前記第1血管壁位置演算手段は、各第1超音波素子から放射される放射信号と該各第1超音波素子により検出される前記血管壁からの反射信号との時間差に基づいて該血管壁までの距離をそれぞれ算出し、その距離に基づいて前記第1アレイの測定断面内における血管壁の位置を決定するものであり、(b) 前記第2血管壁位置演算手段は、各第2超音波素子から放射される放射信号と各第2超音波素子により検出される前記血管壁からの反射信号との時間差に基づいて該血管壁までの距離をそれぞれ算出し、その距離に基づいて前記第2アレイの測定断面内における血管壁の位置を決定するものである。
【0008】
また、請求項3に係る発明では、上記請求項2にかかる発明において、前記血管形状算出手段は、(a) 前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点と長軸径および/または短軸径とをそれぞれ算出する測定断面内形状算出手段と、(b) その測定断面内形状算出手段により算出された第1アレイの測定断面と前記第2アレイの測定断面とにおける血管壁の断面の中心点に基づいて該血管の中心軸を算出する中心軸算出手段と、(c) その中心軸算出手段により算出された血管の中心軸に基づいて、該血管の直交断面と前記測定断面との交差角度を算出する交差角度算出手段と、(d) その交差角度算出手段により算出された交差角度に基づいて、前記血管の直交断面の長軸径および/または短軸径となるように、前記形状算出手段により算出された長軸径および/または短軸径を補正する補正手段とを、含むものである。
【0009】
また、請求項4にかかる発明では、上記請求項3に係る発明において、前記血管形状算出手段は、前記補正手段によって補正された長軸径および短軸径に基づいて前記血管の直交断面における断面積を算出する直交断面積算出手段を、さらに含むものである。
【0010】
前記目的を達成するための請求項5に係る発明の血流速度測定装置の要旨とするところは、(a) 一方向に配列された複数の第1超音波素子を有する第1アレイと、該第1超音波素子の配列方向と平行な方向に配列された複数の第2超音波素子を有する第2アレイと、ドップラ用超音波素子とを備え、該第1アレイおよび第2アレイが前記生体の表皮下に位置する血管と交差し且つ該ドップラ用超音波素子からの超音波を放射方向が該血管に対して鋭角を成すように装着される超音波プローブと、(b) 前記ドップラ用超音波素子から前記血管に向かって超音波を放射したときに得られる、該血管内の血流速度に基づくドップラ効果により変化させられるドップラ反射波に基づいて該血流速度を算出する血流速度算出手段と、(c) 前記第1アレイの各第1超音波素子から検出される反射信号に基づいて、前記血管の該第1アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第1超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第1血管壁位置演算手段と、(d) 前記第2アレイの各第2超音波素子から検出されるエコー信号に基づいて、前記血管の該第2アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第2超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第2血管壁位置演算手段と、(e) 前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点を算出し、該第1アレイの測定断面と前記第2アレイの測定断面とにおける血管壁の断面の中心点に基づいて該血管の中心軸を算出する中心軸算出手段と、(f) その中心軸算出手段により算出された前記血管の中心軸と前記ドップラ用超音波素子から該血管に向かって超音波を放射する方向との実際の相対角度を算出する相対角度算出手段と、(g) その相対角度算出手段により算出された実際の相対角度に基づいて前記血流速度算出手段により算出された血流速度を補正する血流速度補正手段とを、含むことにある。
【0011】
前記目的を達成するための請求項6に係る発明の血流量測定装置の要旨とするところは、(a) 上記請求項5に係る発明の血流速度測定装置と、(b) 前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点と長軸径および/または短軸径とをそれぞれ算出する測定断面内形状算出手段と、(c) 前記中心軸算出手段により算出された血管の中心軸に基づいて、該血管の直交断面と前記測定断面との交差角度を算出する交差角度算出手段と、(d) その交差角度算出手段により算出された交差角度に基づいて、前記血管の直交断面の長軸径および/または短軸径となるように、前記形状算出手段により算出された長軸径および/または短軸径を補正する補正手段と、(e) その補正手段によって補正された長軸径および短軸径に基づいて前記血管の直交断面における断面積を算出する直交断面積算出手段と、(f) その直交断面積算出手段により算出された前記血管の直交断面における断面積と前記血流速度補正手段により補正された血流速度とに基づいて、前記血管内の血流量を算出する血流量算出手段とを、含むことにある。
【発明の効果】
【0012】
前記請求項1に係る発明によれば、生体の表皮下に位置する血管に交差して該表皮上に配置された該第1アレイおよび第2アレイから検出されるエコー信号に基づいて、その第1アレイおよび第2アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち各第1超音波素子および第2超音波素子に対応する部位の位置がそれぞれ算出され、それら血管壁の第1超音波素子および第2超音波素子に対応する部位の位置に基づいて、血管の直交断面における形状が算出されるので、生体皮膚下の血管の方向が上記第1アレイおよび第2アレイと直交していなくても、或いは皮膚に平行でなくても、その血管の血管径、血管断面形状、或いは断面積等の断面形状が正確に得られる。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、第1血管壁位置演算手段および第2血管壁位置演算手段によって、各第1超音波素子および各第2超音波素子から放射される放射信号とその各第1超音波素子および各第2超音波素子により検出される前記血管壁からの反射信号との時間差に基づいて該血管壁までの距離がそれぞれ算出され、その距離に基づいて前記第1アレイの測定断面内における血管壁の位置が決定されるので、第1アレイおよび第2アレイの測定断面内において各血管壁の位置が正確に得られる。
【0014】
また、請求項3に係る発明によれば、前記血管形状算出手段において、第1アレイおよび第2アレイの測定断面内の血管壁の部位の位置に基づいて、その第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点と長軸径および/または短軸径とがそれぞれ算出され、その第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点に基づいて血管の中心軸が算出され、その血管の中心軸に基づいて前記血管の直交断面と前記測定断面との交差角度が算出され、その交差角度に基づいて前記血管の直交断面の長軸径および/または短軸径となるように、長軸径および/または短軸径が補正されるので、生体皮膚下の血管の方向が上記第1アレイおよび第2アレイと直交していなくても、或いは皮膚に平行でなくても、その血管の断面形状が正確に得られる。
【0015】
また、請求項4に係る発明によれば、前記血管形状算出手段は、前記補正手段によって補正された長軸径および短軸径に基づいて前記血管の直交断面における断面積を算出する直交断面積算出手段を含むものであるので、生体皮膚下の血管の方向が上記第1アレイおよび第2アレイと直交していなくても、或いは皮膚に平行でなくても、その血管の断面積が正確に得られる。
【0016】
また、請求項5に係る発明の血流速度測定装置によれば、(a) 一方向に配列された複数の第1超音波素子を有する第1アレイと、該第1超音波素子の配列方向と平行な方向に配列された複数の第2超音波素子を有する第2アレイと、前記ドップラ用超音波素子とを備え、該第1アレイおよび第2アレイが前記生体の表皮下に位置する血管と交差し且つ該ドップラ用超音波素子からの超音波を放射方向が該血管に対して鋭角を成すように装着される超音波プローブと、(b) 前記ドップラ用超音波素子から前記血管に向かって超音波を放射したときに得られる、該血管内の血流速度に基づくドップラ効果により変化させられるドップラ反射波に基づいて該血流速度を算出する血流速度算出手段と、(c) 前記第1アレイの各第1超音波素子から検出される反射信号に基づいて、前記血管の該第1アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第1超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第1血管壁位置演算手段と、(d) 前記第2アレイの各第2超音波素子から検出されるエコー信号に基づいて、前記血管の該第2アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第2超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第2血管壁位置演算手段と、(e) 前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点を算出し、該第1アレイの測定断面と前記第2アレイの測定断面とにおける血管壁の断面の中心点に基づいて該血管の中心軸を算出する中心軸算出手段と、(f) その中心軸算出手段により算出された前記血管の中心軸と前記ドップラ用超音波素子から該血管に向かって超音波を放射する方向との実際の相対角度を算出する相対角度算出手段と、(g) その相対角度算出手段により算出された実際の相対角度に基づいて前記血流速度算出手段により算出された血流速度を補正する血流速度補正手段とが、設けられているので、生体皮膚下の血管の方向が上記第1アレイおよび第2アレイと直交していなくても、或いは皮膚に平行でなくても、その血管内の血流速度が正確に得られる。
【0017】
また、請求項6に係る発明の血流量測定装置によれば、(a) 上記請求項5に係る発明の血流速度測定装置と、(b) 前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点と長軸径および/または短軸径とをそれぞれ算出する測定断面内形状算出手段と、(c) 前記中心軸算出手段により算出された血管の中心軸に基づいて、その血管の直交断面と前記測定断面との交差角度を算出する交差角度算出手段と、(d) その交差角度算出手段により算出された交差角度に基づいて、前記血管の直交断面の長軸径および/または短軸径となるように、前記形状算出手段により算出された長軸径および/または短軸径を補正する補正手段と、(e) その補正手段によって補正された長軸径および短軸径に基づいて前記血管の直交断面における断面積を算出する直交断面積算出手段と、(f) その直交断面積算出手段により算出された前記血管の直交断面における断面積と前記血流速度補正手段により補正された血流速度とに基づいて、前記血管内の血流量を算出する血流量算出手段とが、設けられているので、生体皮膚下の血管の方向が上記第1アレイおよび第2アレイと直交していなくても、或いは皮膚に平行でなくても、その血管内の血流量が正確に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ここで、好適には、前記血管は、生体の皮膚下に位置する動脈たとえば上腕動脈、撓骨動脈、足背動脈、頸動脈、浅側頭動脈等である。FMD(flow-medeated dilation: 内皮依存性血管拡張反応)検査の場合には、たとえば上腕動脈、撓骨動脈、足背動脈が対象となり、頭部への血流把握の場合には、たとえば頸動脈、浅側頭動脈が対象となる。
【0019】
また、好適には、前記第1アレイおよび第2アレイを構成する複数の超音波素子は、振動子と受信子とが共通の振動子から構成されたものであってもよいし、一対の発信子と受信子とからそれぞれ構成されていてもよい。
【0020】
また、好適には、ドップラ用超音波素子は、送信子と受信子とが共通の1個の振動子であってもよいし、一対の発信子と受信子とから構成されていてもよい。また、このドップラ用超音波素子は、前記血管の方向に対して交差する方向に配列された複数個の振動子アレイから構成されてもよい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例の超音波測定装置10に備えられた超音波プローブ12の生体14に対する装着状態を示している。この超音波プローブ12は、図2或いは図3に示すように、装着バンド16によって生体の一部たとえば上腕部において上腕動脈18の真上に位置するように装着される。この上腕動脈18は、上腕二頭筋の下端部下側から表皮20に向かって接近する形状を有している。
【0022】
上記超音波プローブ12は、その表皮20と接触する接触面22を有し、アクリル樹脂等の合成樹脂、セラミックス、金属などの超音波透過性材料から構成された本体24と、その本体24内に所定の間隔Lを隔てて互いに平行となるように埋設され且つ上記上腕動脈18と交差する長手方向の第1アレイ26および第2アレイ28と、その第2アレイ28から下流側に位置するように配設され且つ上記上腕動脈18と交差する長手方向の第3アレイ30とを備えている。第1アレイ26および第2アレイ28は、上記一方向すなわち上記長手方向に配列された複数個の超音波素子26n および28n (nは整数)をそれぞれ備えている。上記第3アレイ30も、上記の第1アレイ26および第2アレイ28と平行な一方向すなわち上記長手方向に配列された複数個の超音波素子30n を備えている。上記超音波素子26n および28n は、測定対象となる上腕動脈18の径よりも十分に小さい間隔たとえば0.2乃至0.5mm程度となるように配置されている。超音波素子30n もそれと同等であるかそれよりも大きい間隔で配置されている。
【0023】
上記第1アレイ26の超音波素子26n および第2アレイ28の超音波素子28n は、圧電素子などから構成されることによって超音波の発信子および受信子として機能するものであり、真下に向かって超音波を発信するように接触面22に対して垂直に設けられている。上記第3アレイ30の超音波素子30n も、圧電素子などから構成されることによって超音波の発信子および受信子として機能するものであり、上流部位の上腕動脈18に向かって超音波を発信するように接触面22に対して超音波放射面が斜めにたとえば45度程度傾斜して設けられている。上記第1アレイ26の超音波素子26n および第2アレイ28の超音波素子28n は、X−Z平面として設定される接触面22内に略位置するように配置され、第1アレイ26の超音波素子26n のうちの端部に位置する素子261 が上記X−Y−Z三次元直交座標の原点として設定されている。
【0024】
第1アレイ26の複数個の超音波素子26n および第2アレイ28の複数個の超音波素子28n は、それぞれ、上記接触面22に対して垂直方向に超音波を放射し、その超音波の伝播過程に存在する界面からの反射波をエコー信号として受信するので、図2に示すように、第1アレイ26および第2アレイ28の直下には、互いに平行であって上記上腕動脈18がそれぞれ貫通させられる測定断面Aおよび測定断面Bが形成されるようになっている。それらの測定断面Aおよび測定断面Bは前記X−Y−Z三次元直交座標のX−Y平面に平行な面となり、それら測定断面Aおよび測定断面Bの面内の位置は座標値により表される。
【0025】
図3に示すように、上記超音波測定装置10は、第1アレイ26、第2アレイ28、第3アレイ30を駆動制御するための超音波駆動制御回路32と、アナログ信号およびデジタル信号の一方から他方へ変換するための信号変換器34と、電子制御装置36と、数字および画像を表示するための表示器38とを備えている。上記電子制御装置36はCPU40、ROM42、RAM44、図示しない記憶装置やインターフェース等から成る所謂マイクロコンピュータから構成されており、CPU40はRAM44の一時記憶機能を利用しつつ予めROM42に記憶されたプログラムにしたがって入力信号を処理して、血管形状測定装置、血流速度測定装置、および血流量を算出し、演算結果を表示器38に表示させ、或いは他の機器へ出力する。このため、超音波測定装置10は、血管形状測定装置、血流速度測定装置、および血流量測定装置として機能している。
【0026】
図4は、上記電子制御装置36の演算制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図4において、第1管壁位置演算手段48および第2管壁位置演算手段50は、第1アレイ26の直下の測定断面Aおよび第2アレイ28の直下の測定断面Bにおける上腕動脈18の断面形状を、各超音波素子26n および各超音波素子28n がそれぞれ受信したエコー信号に基づいて算出する。図5は、第1アレイ26の各超音波素子26n 毎に示す送信信号Sn と上腕動脈18の管壁からのエコー信号En の波形を示すタイムチャートであり、その送信信号Sn とエコー信号En との時間差が第1アレイ26からの深さ寸法に対応している。このため、上記第1管壁位置演算手段48は、上記送信信号Sn とエコー信号En との間の時間差と、生体内の音速とに基づいて各超音波素子26n に対応する管壁の深さ位置をそれぞれ算出する。第2管壁位置演算手段50も同様にして、測定断面Bにおける各超音波素子28n に対応する管壁の深さ位置をそれぞれ逐次算出する。
【0027】
次いで、測定断面形状算出手段52は、上記測定断面AおよびBにおいて、上記各超音波素子26n および28n に対応する管壁の深さ位置から、図6に示すようにX−Y座標内の点で特定し、さらに、それらの各点から曲線補完を用いてそれら各点を結ぶ閉曲線Kを算出して上腕動脈18の内腔の形状とし、その閉曲線Kの長径軸寸法2b、短軸径寸法2a、X軸に対する長径軸の傾斜角度θをそれぞれ逐次算出する。図6は測定断面Aにおける座標を示している。
【0028】
中心軸算出手段54は、測定断面形状算出手段52により測定断面AおよびBにおいて求められた閉曲線Kから、その各測定断面AおよびBにおける閉曲線Kの中心点CA (X0A,Y0A,ZA )およびCB (X0B,Y0B,ZB )をそれぞれ算出する。そして、それら各測定断面AおよびBにおける閉曲線Kの中心点CA (X0A,Y0A,ZA )およびCB (X0B,Y0B,ZB )を結ぶ直線を、上腕動脈18の中心軸CLとして逐次決定する。図7は接触面22に平行な面(水平面)内の中心軸CLを示し、図8は接触面22に垂直な面(垂直面)内の中心軸CLを示している。たとえば、上記中心点CA は、閉曲線Kに近似する楕円の式(1) を利用した次式(1) から、最小自乗法を用いて未知数であるX0 およびY0 を算出する。
【0029】
[(Xi −X0 )cos θ+( Yi −Y0 )sin θ]2/a2
+[ ( Xi −X0 )sin θ+( Yi −Y0 )cos θ]2/b2 =1 ・・・(1)
【0030】
交差角算出手段56は、図7に示す接触面22に平行な面内において、測定断面A或いはBについて、中心軸算出手段54により算出された上腕動脈18の中心軸CLに基づいて中心点CA を通ってその中心軸CLと直交する上腕動脈18の直交断面A’或いは中心点CB を通ってその中心軸CLと直交する上腕動脈18の直交断面B’を決定し、その直交断面A’或いはB’と測定断面A或いはBとの交差角度β(度)を逐次算出する。同様に、図8に示す接触面22に垂直な面内において、測定断面A或いはBについて、中心軸算出手段54により算出された上腕動脈18の中心軸CLに基づいて中心点CA を通ってその中心軸CLと直交する上腕動脈18の直交断面A’或いは中心点CB を通ってその中心軸CLと直交する上腕動脈18の直交断面B’を決定し、その直交断面A’或いはB’と測定断面A或いはBとの交差角度γ(度)を逐次算出する。
【0031】
補正手段58は、上記交差角度算出手段56により算出された交差角度βおよびγに基づいて、測定断面形状算出手段52により算出された形状を直交断面A’およびB’における形状となるように補正する。すなわち、上腕動脈18の直交断面A’およびB’における長軸径2b’および短軸径2a’となるように、補正式(2) 、(3) により測定断面形状算出手段52により算出された長軸径2bおよび短軸径2aをそれぞれ逐次補正する。
【0032】
a’=a/cos β ・・・(2)
b’=b/cos γ ・・・(3)
但し、cos β=( X0 A−X0 B)/L
cos γ=( X0 A−X0 B)/L
【0033】
直交断面積算出手段60は、直交断面A’およびB’における上腕動脈18の内腔面積SA ’およびSB ’を、上記補正手段58によって補正された長軸径2b’および短軸径2a’に基づいて逐次算出する。たとえば、直交断面A’およびB’における値に補正された長軸径2b’および短軸径2a’から特定される楕円の式(4) を用いて積分することにより、直交断面A’およびB’における面積SA ’およびSB ’が算出される。本実施例では、上記測定断面形状算出手段52、中心軸算出手段54、交差角算出手段56、補正手段58、および直交断面積算出手段60が、血管形状算出手段62に対応している。
【0034】
(( Xi ’−X0 )/a’)2+(( Yi ’−Y0 )/b’)2=1 ・・・(4)
【0035】
アクティブ素子選択手段64は、第3アレイ30の複数の超音波素子30n のうち上腕動脈18に最も近い素子或いは超音波放射方向線が上腕動脈18の中心軸CLと最も近いアクティブ素子を、中心軸算出手段54により求められた上腕動脈18の中心軸CLの位置に基づいて選択する。
【0036】
血流速度算出手段66は、予め記憶された式(5) から、上記アクティブ素子から放射された超音波が血流によるドップラ効果によって位相変化或いは周波数変化させられたドップラ反射波の周波数fdに基づいて1拍毎に発生する最大瞬時血流速度Umax を算出する。式(5) において、fcは放射される超音波の波数、cは生体中の音速である。式(5) において、θ2 は図9に示す接触面22に垂直な面内のアクティブ素子からの超音波放射方向線USLと中心軸CLとの角度、θ1 は図10に示す接触面22に垂直な面内のアクティブ素子からの超音波放射方向線USLと中心軸CLとの角度、θ3 は図10に示す接触面22に垂直な面内の受波素子の受波方向線RSLと中心軸CLとの角度である。アクティブ素子が受波素子を兼ねる場合にはθ3 =0となる。それらの角度θ1 、θ2 、θ3 は、既知のアクティブ素子の幾何的位置と前記中心軸算出手段54により算出された中心軸CLとに基づいて予め算出されるとともに、上記式(5) は、それらの角度θ1 、θ2 、θ3 による補正が加味されているので、本実施例の血流速度算出手段66は、式(5) を用いることにより超音波放射方向線USLと中心軸CLとの間の相対角度θ1 、θ2 、θ3 に起因する最大瞬時血流速度Umax のずれを補正した最大瞬時血流速度Umax を一挙に算出しているので、超音波放射方向線USLと中心軸CLとの間の相対角度θ1 、θ2 、θ3 を算出する相対角度算出手段68、およびその相対角度θ1 、θ2 、θ3 に起因する最大瞬時血流速度Umax のずれを補正する血流補正手段70を兼ねているが、血流速度算出手段66は最大瞬時血流速度Umax を基本的に算出し、相対角度算出手段68は既知のアクティブ素子の幾何的位置と前記中心軸算出手段54により算出された中心軸CLとに基づいて超音波放射方向線USLと中心軸CLとの間の相対角度θ1 、θ2 、θ3 を算出し、血流補正手段70はその相対角度θ1 、θ2 、θ3 に起因する最大瞬時血流速度Umax のずれを補正するように役割を分担するように構成されてもよい。
【0037】
fd=−(fc/c)(cos θ1cosθ2 +cos θ3cosθ2 ) ・・・(5)
【0038】
血流量算出手段72は、前記直交断面積算出手段60により求められた直交断面B’における上腕動脈18のSB ’と、上記血流速度算出手段66において求められた補正後の最大瞬時血流速度Umax とに基づいて、直交断面B’における血流量QB (=SB ’×Umax /2)を逐次算出する。そして、出力手段74は、上記のようにして求められた、補正後の長軸径2b’および短軸径2a’、補正後の血流速度U、血流量QB をそれぞれ数字、グラフにて表示器38に画像表示或いは印字表示させるとともに、図示しない記憶装置に記憶させる。
【0039】
図11および図12は、前記電子制御装置36の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、図11は測定開始操作判定後に実行される測定制御ルーチンであり、図12はその測定制御ルーチン内の直交断面内の血管形状算出ルーチンを示している。
【0040】
図11において、測定開始操作が判定されると、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、実際の測定実行時間Tが予め設定された最大測定時間Tmよりも小さいか否かが判断される。当初はこのS1の判断が肯定されるので、S2において走査素子番号nがクリアされた後、S3においてその走査素子番号nに「1」が加算される。次に、S4において、走査素子番号nがその最大番号nmax よりも低いか否かが判断される。この走査素子番号nは、第1アレイ或いは第2アレイの超音波素子数に対応した値に設定される。当初はこのS4の判断が肯定されるので、S5においてn番目の超音波素子26n および28n から超音波は発信され、S6においてn番目の超音波素子26n および28n によりエコー信号が受信される。次いで、前記第1血管壁位置演算手段48および第2血管壁位置演算手段50に対応するS7において、上腕動脈18のうちの上記n番目の超音波素子26n および28n に対応するに部位の血管壁の深さ位置が算出される。そして、上記S4の判断が否定されるまで上記S3以下が繰り返し実行される。
【0041】
1番目の超音波素子261 および281 からnmax 番目の超音波素子26nmaxおよび28nmaxまでの送信受信が終了すると上記S4の判断が否定されるので、前記アクティブ素子選択手段64に対応するS8において、測定断Bにおける最大血管径位置或いは管壁の最大深さ位置が上記S7において算出された各超音波素子28n に対応するに部位の血管壁の深さ位置に基づいて決定されるとともに、第3アレイ30のうちの上記最大血管径位置或いは管壁の最大深さ位置に対応して位置するドップラ用超音波素子30n が血流検出に用いられるアクティブ素子として決定される。次いで、前記血流算出手段66に対応するS9において、よく知られた前記の式(5) から、上記アクティブ素子から放射された超音波が血流によるドップラ効果によって位相変化或いは周波数変化させられたドップラ反射波の周波数fdに基づいて最大瞬時血流速度Umax が算出される。
【0042】
次のS10では、図12に示す直交断面の血管形状算出ルーチンが実行される。図12において、前記測定断面内形状算出手段52に対応するSA1では、測定断面AおよびBにおいて各超音波素子26n および28n に対応する管壁の深さ位置が図6に示すようにX−Y座標内の点で特定され、それらの各点から曲線補完を用いてそれら各点を結ぶ閉曲線Kが算出されて上腕動脈18の内腔の形状とされ、測定断面Aの場合の図6に示すように、その閉曲線Kの長径軸寸法2b、短軸径寸法2aが測定断面AおよびBにおいてそれぞれ算出される。次に、前記中心軸算出手段54に対応するSA2では、SA1により求められた各測定断面AおよびB内の閉曲線Kから、その閉曲線Kの中心点CA (X0A,Y0A,ZA )およびCB (X0B,Y0B,ZB )がそれぞれ算出され、それら各測定断面AおよびBにおける閉曲線Kの中心点CA (X0A,Y0A,ZA )およびCB (X0B,Y0B,ZB )を結ぶ直線が、上腕動脈18の中心軸CLとして決定される。続いて、前記交差角算出手段56に対応するSA3では、図7に示す接触面22に平行な面内において、測定断面Bについて、SA2により算出された上腕動脈18の中心軸CLに基づいて中心点CB を通ってその中心軸CLと直交する上腕動脈18の直交断面B’が決定され、その直交断面B’と測定断面Bとの交差角度β(度)が算出される。また、図8に示す接触面22に垂直な面内において、測定断面Bについて、中心軸算出手段54により算出された上腕動脈18の中心軸CLに基づいて中心点CB を通ってその中心軸CLと直交する上腕動脈18の直交断面B’が決定され、その直交断面B’と測定断面Bとの交差角度γ(度)が算出される。次に、前記補正手段58に対応するSA4では、上記SA3により算出された交差角度βおよびγに基づいて、SA1により算出された形状が直交断面B’における形状となるように補正する。すなわち、上腕動脈18の直交断面B’における長軸径2b’および短軸径2a’となるように、補正式(2) 、(3) により測定断面形状算出手段52により算出された長軸径2bおよび短軸径2aがそれぞれ補正される。そして、前記直交断面積算出手段60に対応するSA5では、直交断面B’における上腕動脈18の内腔面積SB ’が上記SA4によって補正された長軸径2b’および短軸径2a’に基づいて算出する。たとえば、直交断面B’における値に補正された長軸径2b’および短軸径2a’から特定される楕円の式(4) を用いて積分することにより、直交断面B’における面積SB ’が算出される。本実施例では、上記SA1乃至SA5が、血管形状算出手段62に対応している。
【0043】
図11に戻って、前記相対角度算出手段68に対応するS11および前記血流速度補正手段70に対応するS12では、既知のアクティブ素子の幾何的位置と前記中心軸算出手段54により算出された中心軸CLとに基づいて超音波放射方向線USLと中心軸CLとの間の相対角度θ1 、θ2 、θ3 が算出されるとともに、その相対角度θ1 、θ2 、θ3 に起因する最大瞬時血流速度Umax のずれが補正される。本実施例では、S9において角度θ1 、θ2 、θ3 による補正が加味された式(5) が用いられることによって最大瞬時血流速度Umax が算出されているので、上記S11およびS12は、S9において実行されていることになる。
【0044】
以上のようにして直交断面B’における上腕動脈18の内腔の直交断面積SB ’と最大瞬時血流速度Umax とが算出されると、前記血流量算出手段72に対応するS13において、上腕動脈18の血流量QB (=SB ’×Umax /2)が算出される。そして、前記出力手段74に対応するS14では、上記のようにして求められた、補正後の長軸径2b’および短軸径2a’、補正後の最大瞬時血流速度Umax 、血流量QB がそれぞれ数字、グラフにて表示器38に画像表示出力或いは印字表示出力させられるとともに、図示しない記憶装置に記憶させられる。このようにして、直交断面A’およびB’における上腕動脈18の内腔の長軸径2b’および短軸径2a’、その内腔の断面形状や、直交断面B’における直交断面積SB 、最大瞬時血流速度Umax 、および血流量QB が逐次求められるので、血流により血管壁に加えられるシェアストレスを計算できる。これは内皮機機能の評価に用いられ得る。
【0045】
上述のように、本実施例によれば、血管形状算出手段62(S10)により、生体の一部14である上腕部の表皮20下に位置する上腕動脈18に交差してその表皮20上に配置された第1アレイ26および第2アレイ28から検出されるエコー信号に基づいて、その第1アレイ26および第2アレイ28の直下に位置する部分の血管壁のうち各第1超音波素子26n および第2超音波素子28n に対応する部位の位置がそれぞれ算出され、それら血管壁の第1超音波素子26n および第2超音波素子28n に対応する部位の位置に基づいて、上腕動脈18の直交断面における形状が算出されるので、生体皮膚20下の上腕動脈18の方向が上記第1アレイ26および第2アレイ28と直交していなくても、或いは皮膚20に平行でなくても、その上腕動脈18の断面形状が正確に得られる。
【0046】
また、本実施例によれば、第1血管壁位置演算手段48(S7)および第2血管壁位置演算手段50(S7)によって、各第1超音波素子26n および各第2超音波素子28n から放射される放射信号とその各第1超音波素子26n および各第2超音波素子28n により検出される血管壁からのエコー(反射)信号との時間差に基づいてその血管壁までの距離がそれぞれ算出され、血管形状算出手段62(S10)により、その距離に基づいて前記第1アレイ26の測定断面A内および第2アレイ28の測定断面B内における血管壁の位置が決定されるので、第1アレイ26および第2アレイ28の測定断面A内および測定断面B内において各血管壁の位置が正確に得られる。
【0047】
また、本実施例によれば、血管形状算出手段62(S10)において、第1アレイ26および第2アレイ28の測定断面内の血管壁の部位の位置に基づいて、その第1アレイ26の測定断面A内および前記第2アレイ28の測定断面B内における血管壁の断面の中心点CA およびCB と長軸径2bおよび短軸径2aとがそれぞれ算出され、その第1アレイ26の測定断面A内と前記第2アレイ28の測定断面B内とにおける血管壁の断面の中心点CA とCB とに基づいて上腕動脈18の中心軸CLが算出され、その上腕動脈18の中心軸CLに基づいてその血管の直交断面B’と測定断面Bとの交差角度βおよびγが算出され、その交差角度βおよびγに基づいて上記血管の直交断面B’内の長軸径2b’および短軸径2a’となるように、長軸径2bおよび短軸径2aが補正されるので、生体皮膚20下の上腕動脈18の方向が上記第1アレイ26および第2アレイ28と直交していなくても、或いは皮膚20に平行でなくても、その血管18の断面形状が正確に得られる。
【0048】
また、本実施例によれば、血管形状算出手段62(S10)は、補正手段58(SA4)によって補正された長軸径2b’および短軸径2a’に基づいて血管18の直交断面B’における断面積SB ’を算出する直交断面積算出手段60(SA5)を含むものであるので、生体皮膚20下の血管18の方向が上記第1アレイ26および第2アレイ28と直交していなくても、或いは皮膚20に平行でなくても、その血管18の断面積SB ’が正確に得られる。
【0049】
また、本実施例によれば、(a) 一方向に配列された複数の第1超音波素子26n を有する第1アレイ26と、その第1超音波素子26n の配列方向と平行な方向に配列された複数の第2超音波素子28n を有する第2アレイ28と、ドップラ用超音波素子30n を有する第3アレイ30とを備え、その第1アレイ26および第2アレイ28が生体の表皮20下に位置する上腕動脈18と交差し且つそのドップラ用超音波素子30n からの超音波を放射方向USLが上腕動脈18に対して鋭角を成すように装着される超音波プローブ12と、(b) ドップラ用超音波素子30n から上腕動脈18に向かって超音波を放射したときに得られる、その上腕動脈18内の血流速度に基づくドップラ効果により変化させられるドップラ反射波に基づいてその血流速度Uを算出する血流速度算出手段66(S9)と、(c) 第1アレイ26の各第1超音波素子26n から検出されるエコー(反射)信号に基づいて、上腕動脈18の第1アレイ26の直下に位置する部分の血管壁のうち各第1超音波素子26n に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第1血管壁位置演算手段48(S7)と、(d) 第2アレイ28の各第2超音波素子28n から検出されるエコー信号に基づいて、上腕動脈18第2アレイ28の直下に位置する部分の血管壁のうち各第2超音波素子28n に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第2血管壁位置演算手段50(S7)と、(e) 第1血管壁位置演算手段48により算出された各第1超音波素子26n に対応する血管壁部位の位置と第2血管壁位置演算手段50により算出された各第2超音波素子28n に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、第1アレイ26の測定断面A内と第2アレイ28の測定断面B内とにおける血管壁の断面の中心点CA とCB とを算出し、第1アレイ26の測定断面Aと第2アレイ28の測定断面Bとにおける血管壁の断面の中心点CA とCB に基づいてその血管18の中心軸CLを算出する中心軸算出手段54(SA2)と、(f) その中心軸算出手段54により算出された血管18の中心軸CLとドップラ用超音波素子30n からその血管18に向かって超音波を放射する方向USLとの実際の相対角度θ1 、θ2 、θ3 を算出する相対角度算出手段68(S11)と、(g) その相対角度算出手段68により算出された実際の相対角度θ1 、θ2 、θ3 に基づいて血流速度算出手段66により算出された血流速度を補正する血流速度補正手段70(S12)とが、設けられているので、生体皮膚20下の血管18の方向が上記第1アレイ26および第2アレイ28と直交していなくても、或いは皮膚20に平行でなくても、その血管18内の最大瞬時血流速度Umax が正確に得られる。
【0050】
また、本実施例によれば、(a) 上記の血流速度測定のための構成と、(b) 第1血管壁位置演算手段48により算出された各第1超音波素子26n に対応する血管壁部位の位置と第2血管壁位置演算手段50により算出された各第2超音波素子28n に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、第1アレイ26の測定断面A内と第2アレイ28の測定断面B内とにおける血管壁の断面の中心点CA およびCB と長軸径2bおよび短軸径2とをそれぞれ算出する測定断面内形状算出手段52(SA1)と、(c) 中心軸算出手段54により算出された血管18の中心軸CLに基づいて、その血管18の直交断面B’と測定断面Bとの交差角度β、γを算出する交差角度算出手段56(SA3)と、(d) その交差角度算出手段56により算出された交差角度β、γに基づいて、血管18の直交断面B’内の長軸径2/b’および短軸径2/a’となるように、測定断面形状算出手段52により算出された長軸径2/bおよび短軸径2/aを補正する補正手段58(SA4)と、(e) その補正手段58によって補正された長軸径2/bおよび短軸径2/aに基づいて血管18の直交断面B’における断面積S’を算出する直交断面積算出手段60(SA5)と、(f) その直交断面積算出手段60により算出された血管18の直交断面B’における断面積S’と血流速度補正手段70により補正された最大瞬時血流速度Umax とに基づいて、血管18内の血流量QB を算出する血流量算出手段72(S13)とが、設けられているので、生体皮膚20下の血管18の方向が上記第1アレイ26および第2アレイ28と直交していなくても、或いは皮膚20に平行でなくても、その血管18内の血流量QB が正確に得られる。
【0051】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用され得る。
【0052】
たとえば、前述の実施例では、血流量算出手段72により直交断面B’における上腕動脈18の血流量QB (=SB ’×Umax /2)が算出されていたが、直交断面A’における上腕動脈18の血流量QA (=SA ’×Umax /2)が、直交断面積算出手段60により求められた直交断面A’における上腕動脈18の直交断面積SA ’に基づいて算出されてもよい。また、直交断面A’と直交断面B’との平均値に対する血流量が求められてもよい。
【0053】
また、直交断面A’およびB’における上腕動脈18の内腔の長軸径2b’および短軸径2a’、その内腔の断面形状や、直交断面B’における直交断面積SB 等の変化の時間差に基づいて脈波伝播速度が算出されてもよい。
【0054】
また、前述の実施例において、血流量算出手段72により直交断面B’における上腕動脈18の平均の血流量QB (=SB ’×Umax /2)が算出されていたが、血流速度算出手段66によって算出される血流速度Uが平均速度である場合には、上記血流量QB は式(QB =SB ’×U)に基づいて算出される。また、血流量算出手段72により、最大血流量QBmax(=SB ’×Umax )が求められてもよい。
【0055】
また、前述の実施例において、第3アレイ30は複数のドップラ用超音波素子30n から構成されていたが、単一のドップラ用超音波素子から構成されていたもよい。
【0056】
また、前述の実施例では、たとえば第1アレイ26では、各超音波素子26n が、図5に示すように、個々に超音波の発信および受信を行っていたが、位相が異なる駆動信号を用いて数個の超音波素子から超音波を送信して細い超音波ビームを送信し、受信する場合も数個の超音波素子を用いて受信する所謂ビームフォーミング技術を採用することもできる。これによれば、所定の距離で収束するように超音波ビームを形成することができるので、検出精度が高められる。
【0057】
なお、上述したのは、あくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施例の超音波装置に備えられた超音波プローブが上腕に装着された状態を示す斜視図である。
【図2】図1の実施例の超音波装置の超音波プローブに設けられた第1アレイの測定断面および第2アレイの測定断面と上腕動脈との関係を示す斜視図である。
【図3】図1の実施例の超音波装置の要部構成を概略説明する図である。
【図4】図3の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図5】図1の実施例において、第1アレイの測定断面における各超音波素子の送信波および受信波を説明する図である。
【図6】図5の第1血管壁位置演算手段により図5の送信波と受信波との時間差に基づいて算出された第1アレイの測定断面における各測定点の座標と、それらを接続した閉曲線である上腕動脈の内腔の形状を説明する図である。
【図7】図5の中心線算出手段により求められた中心線CLに直交する直交断面B’と第2アレイの測定断面Bとの、接触面に平行な平面内の交差角度βを示す図である。
【図8】図5の中心線算出手段により求められた中心線CLに直交する直交断面B’と第2アレイの測定断面Bとの、接触面に垂直な面内の交差角度γを示す図である。
【図9】図5の中心線算出手段により求められた中心線CLとドップラ用超音波素子の放射方向線USLとの、接触面に垂直な面内の相対角度θ2 を示す図である。
【図10】図5の中心線算出手段により求められた中心線CLとドップラ用超音波素子の放射方向線USLとの、接触面に平行な平面内の相対角度θ1 と、中心線CLとドップラ用超音波素子の受波方向線RSLとの、接触面に平行な平面内の相対角度θ3 とを示す図である。
【図11】図3の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【図12】図11のS10の直交断面内における血管形状を算出するためのルーチンを示す図である。
【符号の説明】
【0059】
10:超音波測定装置(血管形状測定装置、血流速度測定装置、血流量測定装置)
12:超音波プローブ
14:生体の一部(上腕部)
18:上腕動脈(血管)
26:第1アレイ
26n :第1超音波素子
28:第1アレイ
28n :第2超音波素子
48:第1血管壁位置演算手段
50:第2血管壁位置演算手段
52:血管断面内形状算出手段
54:中心軸算出手段
56:交差角算出手段
58:形状補正手段
60:直交断面積算出手段
62:血管形状算出手段
66:血流速度算出手段
68:相対角度算出手段
70:血流速度補正手段
72:血流量算出手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に配列された複数の第1超音波素子を有する第1アレイと、該第1超音波素子の配列方向と平行な方向に配列された複数の第2超音波素子を有する第2アレイとを備え、生体の表皮下に位置する血管に交差して該表皮上に配置された該第1アレイおよび第2アレイから検出されるエコー信号に基づいて該血管の形状を測定する血管形状測定装置であって、
前記第1アレイの各第1超音波素子から検出される反射信号に基づいて、前記血管の該第1アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第1超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第1血管壁位置演算手段と、
前記第2アレイの各第2超音波素子から検出されるエコー信号に基づいて、前記血管の該第2アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第2超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第2血管壁位置演算手段と、
前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記血管の直交断面における形状を算出する血管形状算出手段と
を、含むことを特徴とする血管形状測定装置。
【請求項2】
前記第1血管壁位置演算手段は、各第1超音波素子から放射される放射信号と該各第1超音波素子により検出される前記血管壁からの反射信号との時間差に基づいて該血管壁までの距離をそれぞれ算出し、該距離に基づいて前記第1アレイの測定断面内における血管壁の位置を決定するものであり、
前記第2血管壁位置演算手段は、各第2超音波素子から放射される放射信号と各第2超音波素子により検出される前記血管壁からの反射信号との時間差に基づいて該血管壁までの距離をそれぞれ算出し、該距離に基づいて前記第2アレイの測定断面内における血管壁の位置を決定するものである請求項1の血管形状測定装置。
【請求項3】
前記血管形状算出手段は、
前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点と長軸径および/または短軸径とをそれぞれ算出する測定断面内形状算出手段と、
該測定断面内形状算出手段により算出された第1アレイの測定断面と前記第2アレイの測定断面とにおける血管壁の断面の中心点に基づいて該血管の中心軸を算出する中心軸算出手段と、
該中心軸算出手段により算出された血管の中心軸に基づいて、該血管の直交断面と前記測定断面との交差角度を算出する交差角度算出手段と、
該交差角度算出手段により算出された交差角度に基づいて、前記血管の直交断面の長軸径および/または短軸径となるように、前記形状算出手段により算出された長軸径および/または短軸径を補正する補正手段と
を含むものである請求項2の血管形状測定装置。
【請求項4】
前記血管形状算出手段は、前記補正手段によって補正された長軸径および短軸径に基づいて前記血管の直交断面における断面積を算出する直交断面積算出手段を、さらに含むものである請求項3の血管形状測定装置。
【請求項5】
一方向に配列された複数の第1超音波素子を有する第1アレイと、該第1超音波素子の配列方向と平行な方向に配列された複数の第2超音波素子を有する第2アレイと、ドップラ用超音波素子とを備え、該第1アレイおよび第2アレイが前記生体の表皮下に位置する血管と交差し且つ該ドップラ用超音波素子からの超音波を放射方向が該血管に対して鋭角を成すように装着される超音波プローブと、
前記ドップラ用超音波素子から前記血管に向かって超音波を放射したときに得られる、該血管内の血流速度に基づくドップラ効果により変化させられるドップラ反射波に基づいて該血流速度を算出する血流速度算出手段と、
前記第1アレイの各第1超音波素子から検出される反射信号に基づいて、前記血管の該第1アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第1超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第1血管壁位置演算手段と、
前記第2アレイの各第2超音波素子から検出されるエコー信号に基づいて、前記血管の該第2アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第2超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第2血管壁位置演算手段と、
前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点を算出し、該第1アレイの測定断面と前記第2アレイの測定断面とにおける血管壁の断面の中心点に基づいて該血管の中心軸を算出する中心軸算出手段と、
該中心軸算出手段により算出された前記血管の中心軸と前記ドップラ用超音波素子から該血管に向かって超音波を放射する方向との実際の相対角度を算出する相対角度算出手段と、
該相対角度算出手段により算出された実際の相対角度に基づいて前記血流速度算出手段により算出された血流速度を補正する血流速度補正手段と
を、含むことを特徴とする血流速度測定装置。
【請求項6】
請求項5の血流速度測定装置を備えた血流量測定装置であって、
前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点と長軸径および/または短軸径とをそれぞれ算出する測定断面内形状算出手段と、
前記中心軸算出手段により算出された血管の中心軸に基づいて、該血管の直交断面と前記測定断面との交差角度を算出する交差角度算出手段と、
該交差角度算出手段により算出された交差角度に基づいて、前記血管の直交断面の長軸径および/または短軸径となるように、前記形状算出手段により算出された長軸径および/または短軸径を補正する補正手段と
該補正手段によって補正された長軸径および短軸径に基づいて前記血管の直交断面における断面積を算出する直交断面積算出手段と、
該直交断面積算出手段により算出された前記血管の直交断面における断面積と前記血流速度補正手段により補正された血流速度とに基づいて、前記血管内の血流量を算出する血流量算出手段と
を、含むことを特徴とする血流量測定装置。
【請求項1】
一方向に配列された複数の第1超音波素子を有する第1アレイと、該第1超音波素子の配列方向と平行な方向に配列された複数の第2超音波素子を有する第2アレイとを備え、生体の表皮下に位置する血管に交差して該表皮上に配置された該第1アレイおよび第2アレイから検出されるエコー信号に基づいて該血管の形状を測定する血管形状測定装置であって、
前記第1アレイの各第1超音波素子から検出される反射信号に基づいて、前記血管の該第1アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第1超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第1血管壁位置演算手段と、
前記第2アレイの各第2超音波素子から検出されるエコー信号に基づいて、前記血管の該第2アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第2超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第2血管壁位置演算手段と、
前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記血管の直交断面における形状を算出する血管形状算出手段と
を、含むことを特徴とする血管形状測定装置。
【請求項2】
前記第1血管壁位置演算手段は、各第1超音波素子から放射される放射信号と該各第1超音波素子により検出される前記血管壁からの反射信号との時間差に基づいて該血管壁までの距離をそれぞれ算出し、該距離に基づいて前記第1アレイの測定断面内における血管壁の位置を決定するものであり、
前記第2血管壁位置演算手段は、各第2超音波素子から放射される放射信号と各第2超音波素子により検出される前記血管壁からの反射信号との時間差に基づいて該血管壁までの距離をそれぞれ算出し、該距離に基づいて前記第2アレイの測定断面内における血管壁の位置を決定するものである請求項1の血管形状測定装置。
【請求項3】
前記血管形状算出手段は、
前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点と長軸径および/または短軸径とをそれぞれ算出する測定断面内形状算出手段と、
該測定断面内形状算出手段により算出された第1アレイの測定断面と前記第2アレイの測定断面とにおける血管壁の断面の中心点に基づいて該血管の中心軸を算出する中心軸算出手段と、
該中心軸算出手段により算出された血管の中心軸に基づいて、該血管の直交断面と前記測定断面との交差角度を算出する交差角度算出手段と、
該交差角度算出手段により算出された交差角度に基づいて、前記血管の直交断面の長軸径および/または短軸径となるように、前記形状算出手段により算出された長軸径および/または短軸径を補正する補正手段と
を含むものである請求項2の血管形状測定装置。
【請求項4】
前記血管形状算出手段は、前記補正手段によって補正された長軸径および短軸径に基づいて前記血管の直交断面における断面積を算出する直交断面積算出手段を、さらに含むものである請求項3の血管形状測定装置。
【請求項5】
一方向に配列された複数の第1超音波素子を有する第1アレイと、該第1超音波素子の配列方向と平行な方向に配列された複数の第2超音波素子を有する第2アレイと、ドップラ用超音波素子とを備え、該第1アレイおよび第2アレイが前記生体の表皮下に位置する血管と交差し且つ該ドップラ用超音波素子からの超音波を放射方向が該血管に対して鋭角を成すように装着される超音波プローブと、
前記ドップラ用超音波素子から前記血管に向かって超音波を放射したときに得られる、該血管内の血流速度に基づくドップラ効果により変化させられるドップラ反射波に基づいて該血流速度を算出する血流速度算出手段と、
前記第1アレイの各第1超音波素子から検出される反射信号に基づいて、前記血管の該第1アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第1超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第1血管壁位置演算手段と、
前記第2アレイの各第2超音波素子から検出されるエコー信号に基づいて、前記血管の該第2アレイの直下に位置する部分の血管壁のうち該各第2超音波素子に対応する部位の位置をそれぞれ算出する第2血管壁位置演算手段と、
前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点を算出し、該第1アレイの測定断面と前記第2アレイの測定断面とにおける血管壁の断面の中心点に基づいて該血管の中心軸を算出する中心軸算出手段と、
該中心軸算出手段により算出された前記血管の中心軸と前記ドップラ用超音波素子から該血管に向かって超音波を放射する方向との実際の相対角度を算出する相対角度算出手段と、
該相対角度算出手段により算出された実際の相対角度に基づいて前記血流速度算出手段により算出された血流速度を補正する血流速度補正手段と
を、含むことを特徴とする血流速度測定装置。
【請求項6】
請求項5の血流速度測定装置を備えた血流量測定装置であって、
前記第1血管壁位置演算手段により算出された各第1超音波素子に対応する血管壁部位の位置と前記第2血管壁位置演算手段により算出された各第2超音波素子に対応する血管壁部位の位置とに基づいて、前記第1アレイの測定断面内と前記第2アレイの測定断面内とにおける血管壁の断面の中心点と長軸径および/または短軸径とをそれぞれ算出する測定断面内形状算出手段と、
前記中心軸算出手段により算出された血管の中心軸に基づいて、該血管の直交断面と前記測定断面との交差角度を算出する交差角度算出手段と、
該交差角度算出手段により算出された交差角度に基づいて、前記血管の直交断面の長軸径および/または短軸径となるように、前記形状算出手段により算出された長軸径および/または短軸径を補正する補正手段と
該補正手段によって補正された長軸径および短軸径に基づいて前記血管の直交断面における断面積を算出する直交断面積算出手段と、
該直交断面積算出手段により算出された前記血管の直交断面における断面積と前記血流速度補正手段により補正された血流速度とに基づいて、前記血管内の血流量を算出する血流量算出手段と
を、含むことを特徴とする血流量測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−34667(P2006−34667A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219866(P2004−219866)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(304008175)株式会社ユネクス (16)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(304008175)株式会社ユネクス (16)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】
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