血糖を検出するためのシステム及び方法
血液サンプル中の血糖値を測定するシステムは、テストストリップ及び測定器を含む。テストストリップは、サンプル室又は他の試験領域、作用電極、対極、充填−検出電極及びオートオンコンダクタを含む。試験領域には試薬層が配置されている。オートオンコンダクタは、テストストリップが測定器に挿入されると、測定器を起動させ、テストストリップシーケンスを実行させる。測定器は、作用電極及び対極を用いて試験領域の血液サンプルを検出し、充填−検出電極を用いて血液サンプルが試薬層で混合されたかを確認する。測定器は、作用電極と対極との間に分析評価電圧を印可して発生電流を測定する。測定器は、測定した電流及びメモリに保存したテストストリップに関連するリムーバブルデータストレージデバイスからの較正データに基づき血糖値を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年4月21日出願の米国特許出願番号第10/420,995号の一部継続出願であり、また、2002年11月1日出願の米国特許出願番号第10/286,648号の一部継続出願であり、これらの出願は2002年4月25日出願の米国仮特許出願番号第60/375,017号、2002年4月25日出願の米国仮特許出願番号60/375、019号、2002年4月25日出願の米国仮特許出願番号60/375、020号、2002年4月25日出願の米国仮特許出願番号第60/375,054号の利益を請求するものであり、これら全ては引用によって本願に完全に組み込まれる。
【0002】
本発明は、電気化学センサに関し、より詳細には電気化学的に血糖(グルコース)値を検出するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病患者など多くの人々は日常的に血糖値を監視する必要がある。このような人々が簡易に血糖値を監視できるシステムは多数存在する。そのようなシステムは、一般的に、使用者が血液サンプルを滴下するテストストリップ及び血液サンプル中の血糖値を決定するためにそのテストストリップを「読み取る」測定器を含んでいる。
【0004】
血糖値の測定に有効な様々な技術のうち、測定に必要な血液サンプルがごく少量で済む電気化学的技術が特に望ましい。電気化学ベースのシステムにおいて、テストストリップにはグルコースオキシダーゼやメディエータなどの試薬及び電極を収容するサンプル室が一般的に含まれる。使用者が血液サンプルをサンプル室に塗布した場合、試薬がグルコースと反応し、そして測定器が電極に電圧を印可することで酸化還元反応が生じる。測定器は、この結果生じる電流を測定し、該電流に基づく血糖値を算出する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
血糖値の正確な測定は、多くの使用者の長期的な健康にとって重要であり重要視されなければならない。そのため、血糖値の測定に使用される測定器及びテストストリップには高水準の信頼性が要求される。しかしながら、サンプル量がより少量になれば、テストストリップのサンプル室及び電極の大きさも更に小さくなる。これは、言い換えると、細かな製造欠陥及び製造後の取り扱いによる損傷に対して、より影響を受けやすいテストスリップを作り出すことになる。
【0006】
従って、便利且つ確実に血糖値を測定するための特徴を備えた血糖測定システム及び方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の主要な態様は、血液サンプルを試験するためのテストストリップを提供することにある。テストストリップは、試験領域(testing zone)を定める第1基質(substrate)及び第2基質(substrate)と、前記試験領域内における血液サンプルの少なくとも1つの電気的特性を測定する少なくとも4つの電極と、該少なくとも4つの電極に電気的に接続された複数の電気接点と、前記少なくとも4つの電極から電気的に絶縁された少なくとも1つのオートオン(auto-on)電気接点と、を含んで構成されたことを特徴とする。少なくとも4つの電極は、作用電極(working electrode)、対極(counter electrode)、充填−検出アノード(fill-detect anode)及び充填−検出カソード(fill-detect cathode)を含んで構成されている。
【0008】
本発明の第2の主要な態様は、複数のテストストリップの製造方法を提供することにある。この方法では、複数のテストストリップ構造体が1枚のシート上に形成されて、そのテストストリップ構造体が複数のテストストリップに切り離される。各テストストリップ構造体は、試験領域を定めるスペーサと、複数の電極(作用電極、対極、充填−検出アノード及び充填−検出カソードを含む)と、該複数の電極に電気的に接続された複数の電気接点と、複数の電極から電気的に絶縁された少なくとも1つのオートオン電気接点と、を含んで構成されたことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
好ましい実施例において、血液サンプル中の血糖値を測定するシステムはテストストリップ及び測定器を含んでいる。また、システムは、テストストリップのロット(lot)に関連付けられたリムーバブルデータストレージデバイスを含むこともできる。リムーバブルデータストレージデバイスは、例えば、そのロットにおけるテストストリップ用の較正係数など測定器が使用するデータを保存する。さらに、システムは、測定器が適切に機能しているかを確認するために、使用者が測定器に挿入するチェックストリップを含んでもよい。
【0010】
テストストリップは、血液サンプルが試験されるサンプル室又は他の試験領域を含んで構成される。血液サンプルは、テストストリップの近端部における開口部を通じて試験領域に到達する。試験領域は、多孔性カバー又は他の通気構造を介して通気される。テストストリップは、使用者がより容易に開口部の位置決めをして血液サンプルを塗布できるように、近端部において最も狭いテーパセクションを備えるとよい。
【0011】
作用電極、対極、充填−検出アノード及び充填−検出カソードは、血液サンプルの少なくとも1つの電気的特性を測定することができるように試験領域に配置される。試薬層は、試験領域内に配置され、好ましくは、少なくとも作用電極をカバーする(覆う)とよい。試薬層は、グルコースオキシダーゼなどの酵素、フェリシアン化カリウムなどのメディエータを含んで構成されるとよい。テストストリップは、その遠端部近くに、導電性トレースを通じて電極に電気的に接続された複数の電気接点を備えている。また、テストストリップは、その遠端部近くに電極から電気的に絶縁されたオートオンコンダクタを備えている。
【0012】
測定器は、電池式であるとよく、使用されていない場合は節電のために低電力のスリープモードになることができる。テストストリップが測定器に挿入されると、テストストリップ上の電気接点は測定器内の対応する電気接点と接触する。加えて、オートオンコンダクタは測定器内の1対の電気接点をブリッジし、そのオートオンコンダクタを介した電流の流れを引き起こす。オートオンコンダクタを介した電流の流れは、測定器を起動してアクティブモードに入らせる。また、測定器は、オートオンコンダクタにわたる電圧降下を測定し、その電圧降下に基づいて、挿入されたストリップがテストストリップ又はチェックストリップのいずれであるかを識別する。この場合、測定器がチェックストリップを検出すると、チェックストリップシーケンスを実行する。一方、測定器がテストストリップを検出すると、テストストリップシーケンスを実行する。
【0013】
テストストリップシーケンスにおいて、測定器は、作用電極、対極及び充填−検出電極に低インピーダンス経路がないことを確認することで、これら電極の動作確認をする。電極が有効な場合、測定器は使用者に対してテストストリップにサンプルを滴下可能であることを表示する。次に、測定器は、作用電極と対極との間に降下−検出電圧を印可し、作用電極と対極との間の電流流れ(すなわち、血液サンプルが作用電極及び対極をブリッジするときに、当該血液サンプルを介して流れる電流流れ)を検出することで血液サンプルを検出する。試験領域内に充分なサンプルがあること及び血液サンプルが試薬層をトラバースして試薬層内の化学成分と混合したことを検出するために、測定器は、充填−検出電極間に充填−検出電圧を印可し、充填−検出電極間の発生電流のあらゆる流れを測定する。発生電流が所定時間内に充分なレベルに達すると、測定器は使用者に対して充分なサンプルが存在し及び試薬層で混合されたことを表示する。
【0014】
測定器は、血液サンプルを初めて検出した後、血液サンプルが試薬層で反応可能なように、インキュベーション(incubation)時間だけ待機する。次に、測定時間の間、測定器は作用電極と対極との間に分析評価電圧を印可し、その作用電極と対極との間に発生した発生電流流れについて1以上の測定結果を取得する。分析評価電圧は試薬層内の化学反応から酸化還元電位に近づき、発生電流は血液サンプルの血糖値と関連する。測定器は、測定電流と、テストストリップに関連付けられたリムーバブルデータストレージデバイスから予めダウンロードしてメモリに格納した較正データと、に基づいて血糖値を算出する。そして、測定器は、算出した血糖値を使用者に表示する。
【0015】
1.テストストリップ構造
【0016】
図面を参照すると、図1、図2及び図3は本発明の例示的な実施例に従うテストストリップ10を示している。テストストリップ10は、好ましくは近端部12から遠端部14まで伸長する一般的なフラットストリップ形状である。テストストリップ10はハンドリング容易なサイズに設定されると好ましい。例えば、テストストリップ10は、その長さ(すなわち、近端部12から遠端部14までの長さ)が約1 3/8インチ及び幅が約5/16インチである。また、近端部12の幅を遠端部14の幅よりも狭くすることができる。すなわち、テストストリップ10は、その全幅が近端部12に向けて先細になるテーパセクション16を含んで構成され、遠端部14よりも狭い近端部12を設ける。後述するように、使用者はテストストリップ10の近端部12の開口部に血液サンプルを滴下する。このように、テストストリップ10にテーパセクション16を備えさせ、及び、遠端部14よりも狭い近端部12を設けることで、使用者が、血液サンプルを塗布する際に開口部を位置決めする助けとなり、血液サンプルを失敗なくテストストリップ10に塗布することがより容易となる。
【0017】
図3に最もよく示されているように、テストストリップ10は一般的に層状の構造である。最下層から上層への機構において、テストストリップ10はその全長にわたって伸びるベース層18を含んで構成されている。ベース層18は、絶縁体で構成され、テストストリップ10に構造上の支持を提供する充分な厚みを持たせてあると好ましい。例えば、ベース層18は厚さ約0.014インチのポリエステルであるとよい。
【0018】
ベース層18上に配されているのは導電性パターン20である。導電性パターン20は、近端部12近くのベース層18上に配された複数の電極と、遠端部14近くのベース層18上に配された複数の電気接点と、その電気接点と電極とを電気的に接続する複数の導電性トレースと、を含んで構成されている。好ましい実施例において、複数の電極は、作用電極22と、第1セクション25と第2セクション26とを含んで構成された対極24と、充填−検出アノード28と、充填−検出カソード30と、を含んで構成されている。これに対応して、電気接点は、作用電極接点32と、対極接点34と、充填−検出アノード接点36と、充填−検出カソード接点38と、を含んで構成されている。導電性トレースは、作用電極22を作用電極接点32に電気的に接続する作用電極トレース40と、対極24を対極接点34に電気的に接続する対極トレース42と、充填−検出アノード28を充填−検出アノード接点36に電気的に接続する充填−検出アノードトレース44と、充填−検出カソード30を充填−検出カソード接点38に電気的に接続する充填−検出カソードトレース46と、を含んで構成されている。また、好ましい実施例において、導電性パターン20は、遠端部14近くのベース層18上に配されたオートオンコンダクタ48を含んで構成されている。
【0019】
誘電層50は導電性パターン20の一部を覆うためにベース層18に配置されている。好ましくは、誘電層50は、薄層(例えば、厚さ約0.0005インチ)であって、シリコン、アクリル又はこれらの混合物などの電気的絶縁体で構成されるとよい。また、誘電層50は、親水性であるであると好ましい。さらに、誘電層50は、作用電極22、対極24、充填−検出アノード28、充填−検出カソード30及び導電性トレース40〜46の一部を覆い、好ましくは電気接点32〜38乃至オートオンコンダクタ48は覆わないようにするとよい。例えば、誘電層50は、近端部12から伸長するスロット52を除き、接点32及び接点34間近のラインから近端部12に至まで、ベース層18及び該ベース層18上における導電性パターン20を実質的に全て覆うことができる。このように、スロット52は、作用電極22の露出部54、対極24のセクション25、セクション26の露出部56、露出部58、充填−検出アノード28の露出部60及び充填−検出カソード30の露出部62を画定することができる。図2に示したように、充填−検出電極28、30の露出部60、62を、作用電極22及び対極のセクション25、26の露出部54、56、58よりも幅広にして設けることで、スロット52は異なるセクションにおいて異なる幅を備えることができる。
【0020】
テストストリップ10における次層は、誘電層50上に配された誘電スペーサ層64である。誘電スペーサ層64は、例えば、ポリエステルなどの電気的絶縁体で構成することができる。誘電スペーサ層64は、誘電層50と同様の長さ及び幅を有することができるが、例えば、厚さ約0.005インチよりも大幅に厚くてもよい。加えて、スペーサ64は、スロット52におおよそ位置合わせされたスロット66を含むことができる。このスロット66は、作用電極22、対極24、充填−検出アノード28及び充填−検出カソード30の露出部54〜62がスロット66に位置するように、近端部12に位置合わせされて、近端部68から遠端部70へと伸長している。
【0021】
カバー72は、近端部74及び遠端部76を含んで構成され、接着層78によって誘電スペーサ層64に取り付けられているとよい。カバー72は、例えば、ポリエステルなどの電気的絶縁体で構成され、約0.004インチの厚みを有する。カバー72は透明であると好ましい。
【0022】
接着層78は、ポリアクリル酸又は他の接着剤を含有することができ、約0.0005インチの厚みを有している。接着層78は、スロット66の各対側に対するスペーサ64上に配置された第1セクション80と第2セクション82とを含んで構成されている。セクション80とセクション82との間の接着層78における開路(break)84は、スロット66の遠端部70から開口部86まで伸長している。カバー72は、該カバー72の近端部74が近端部12に位置合わせされ、該カバ−72の遠端部76が開口部86に位置合わせされて接着層78上に配置されている。このようにしてカバー72は、スロット66と開路84とを覆う。
【0023】
スロット66は、ベース層18及びカバー72とともに、測定用の血液サンプルを受け入れるテストストリップ10のサンプル室88を画定する。スロット66の近端部68は、血液サンプルをサンプル室88に案内するサンプル室88の第1開口部を画定する。スロット66の遠端部70において、開路84は、サンプル室88の第2開口部を画定し、サンプル室88にサンプルが入力された際にそのサンプル室88を通気する。スロット66は、血液サンプルの入力があると、スロット66の近端部68に滴下された血液サンプルを毛管作用によってサンプル室88内に引き込み及び保持するとともに、開路84が開口部86を通じてサンプル室88を通気するように、その大きさ(寸法、外形)が設定される。さらに、毛管作用によってサンプル室88に入力される血液サンプルが約1マイクロリットル又はそれ以下であるように、スロット66はその大きさが設定される。例えば、スロット66は、約.140インチの長さ(すなわち、近端部68から遠端部70までの長さ)、約.060インチの幅、及び、約.005インチの高さ(これは、誘電スペーサ層64の厚さによって実質的に定められる)を有することができる。しかしながら、他の寸法外形でも適用可能である。
【0024】
試薬層90は、サンプル室88に配されている。好ましくは、試薬層90は、作用電極22の露出部54を少なくとも覆うとよい。また、さらに好ましくは、試薬層90は、対極24の露出部56及び露出部58に少なくとも接触しているとよい。試薬層90は、血液サンプル中の血糖値を電気化学的に決定可能なように化学成分を含有する。すなわち、試薬層90は、例えば、グルコースオキシダーゼなどのグルコースのための酵素特性や、フェリシアン化カリウムなどのメディエータを含有することができる。さらに、試薬層90は、他のコンポーネント、例えば、緩衝物質(リン酸カリウム等)、高分子バインダー(ヒドロキシプロピル−メチル−セルロース、アルギン酸ナトリウム、微結晶性セルロース、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシエチルセルロース及び/又はポリビニルアルコール等)、及び、界面活性剤(Triton X-100又はSurfynol 485)等を含有することができる。
【0025】
これらの化学成分とともに、試薬層90は、以下のように血液サンプル中のグルコースと反応する。グルコースオキシダーゼは、グルコースをグルコン酸に酸化し、フェリシアニド(ferricyanide)をフェロシアニド(ferrocyanide)に還元する反応を始める。適切な電圧が作用電極22に印可されると、対極24と関連して、フェロシアニドがフェリシアニドに酸化され、これによって血液サンプル中のグルコース濃度と関連した電流が生成される。
【0026】
図3に示したように、テストストリップ10における様々な層の配列は、テストストリップ10を異なるセクションで異なる厚みを有する結果にすることができる。特に、ベース層18上の各層のうち、テストストリップ10の厚みのほとんどは、スペーサ64の厚みによってもたらされている。従って、遠端部14に最も近いスペーサ64の端をテストストリップ10の肩部92として定めることができる。肩部92は、該肩部92と遠端部14との間に伸びるテストストリップ10の薄部94と、肩部92と近端部12との間に伸びる厚部96とを定めることができる。測定器と電気的に接続するために用いられるテストストリップ10の要素、すなわち、電気接点32〜38及びオートオンコンダクタ48を全て薄部94に位置させることができる。従って、後述するが、測定器のコネクタは、厚部96は受用しないが、薄部94は受用することが可能なように、そのサイズが設定されている。これによって、使用者には正確な端部、すなわち薄部94の遠端部14を測定器100に挿入するうえでの指示が与えられ、使用者が間違った端部、すなわち厚部96の近端部12を測定器100に挿入することを防止することができる。
【0027】
図1〜図3にテストストリップ10の好適な構造を示したが、他の構造を使用することも可能である。例えば、図1〜3に示した構造では、対極24を2つのセクション、すなわち、作用電極22の近端側の第1セクション25と、作用電極22の遠端側の第2セクション26と、を含んで構成している。さらに、対極24の露出部56と露出部58とを結合した領域が、作用電極22の露出部54の領域より大きいと好ましい。この構成において、対極24は、作用電極22を有益に電気的にシールドすべく、効果的に作用電極22を取り囲む。他の構造においては、対極24は1つのセクション、例えば第1セクション25だけを有するようにすることもできる。
【0028】
充填−検出電極28及び30の異なる配置を適用することもできる。図1〜図3に示した構造は、充填−検出電極28及び30を並べた配置である。他の方法として、充填−検出電極28及び30を順次的な配置とすることができ、これによればサンプルは、サンプル室88を通じて遠端部70へ流れ、第1の(アノード又はカソード)充填−検出電極と接触し、その後、他方の充填−検出電極に接触する。加えて、図2に示した実施例では充填−検出電極28及び30の露出部60及び62は、作用電極22及び対極のセクション25、26の露出部54、56及び58よりも幅が広いが、他の実施例では、それら露出部は、幅が同じであるか又はより狭い構成であってもよい。
【0029】
また、それら露出部は各々と関連して配置されるが、充填−検出電極28及び30は試薬層90の遠位側に位置されることが好ましい。このようにして、サンプルが、サンプル室88を通じて遠端部70へ流れ、充填−検出電極28及び30に到達するまでには、当該サンプルは試薬層90をトラバースする。この配列は、充填−検出電極28及び30が、サンプル室88に充分な血液サンプルが存在するか否かを検出するのみならず、血液サンプルが試薬層90の化学成分と充分に混合されるか否かを検出可能にするという点でも有益である。従って、図1〜図3に示した構造のように、試薬層90が作用電極22を覆う状態が好ましい場合には、充填−検出電極28及び30を作用電極22の遠位側に位置させるとよい。しかしながら、他の構造が用いられてもよい。
【0030】
テストストリップにおけるサンプル室の異なる構造も可能である。例えば、図4に示したテストストリップ100の他の実施例では、サンプル室は接着層の開路を用いずに通気される。テストストリップ100において、スペーサ64はサンプル室を定める通気スロット102を含んで構成されている。このスロット102は、相対的に一定の幅を有する幅広部104と、丸みを帯びた形状を有するテーパ部106と、同様に丸みを帯びた形状を有する幅狭部108と、を含んで構成されている。作用電極及び対極の露出部は、幅広部104とテーパ部106の近端部に位置させることができ、充填−検出電極の露出部は、テーパ部106の遠端部に位置させることができる。カバー72は、幅狭部108の遠端部を除いてスロット102をカバーするようにスペーサ64(例えば、接着剤を使用して)に取り付けられている。このようにして、幅狭部108はスロット102によって定められたサンプル室を通気することができる。加えて、テーパ部106の丸みを帯びた形状は、サンプルが、よりスムーズに、そして、一様にサンプル室中を流れることを可能にする。
【0031】
一方、通気スロットは丸みを帯びた形状を有する必要はない。例えば、図5に示したテストストリップ110の他の代替実施例では、サンプル室は同様に接着層の開路を用いずに通気される。テストストリップ110において、スペーサ64はサンプル室を定める通気スロット112を含んで構成される。このスロット112は、相対的に一定の幅を有する幅広部114と、相対的に一定の幅を有する幅狭部116と、を含んで構成される。作用電極、対極及び充填−検出電極の露出部は幅広部114に全て位置させることができ、そのうち充填−検出電極の露出部は、幅広部114の遠端部に位置させられている。カバー72は、幅狭部116の遠端部を除いてスロット112を覆うためにスペーサ64(例えば、接着剤を使用して)に取り付けられている。このようにして、幅狭部116はスロット112によって定められたサンプル室を通気することができる。
【0032】
接着層における開路を使用するか又はスペーサの露出部におけるスロットを部分的に除去することで、サンプル室又は試験領域を通気する前述のアプローチでは、実質的に通気性のないシート材としてのカバー72が提供される。例えば、3M(登録商標)ポリエステルフィルム9971や、血液サンプルが接触する面に親水性コーティングが施されたポリエステルフィルム等がカバー72として使用される。この代替のアプローチとしては、試験領域を覆うように配置される多孔性カバーを用いる。この代替のアプローチでは、試験領域は、多孔性カバーを通じて通気されるので、試験領域を通気する他の構造が不要となる。
【0033】
この場合、多孔性カバーは、メッシュ状で提供される。その一例を図6に示す。図6は、スペーサ64のスロットによって画定された試験領域119を覆って位置させられたメッシュ118を有したテストストリップの横断面図を示している。また、スペーサ64のスロットは、血液サンプルが毛管作用によって試験領域119に引き込まれる、テストストリップの近端部における開口を画定する。メッシュ118は、例えば、接着剤によってスペーサ64に取り付けられる。一実施例において、メッシュ118は、18〜105ミクロン範囲の孔径を有しており、その厚さは、60〜90ミクロン範囲である。また、メッシュ118は、親水性であるとよい。さらに、メッシュ118は、例えば、ドクセートなどの清浄液(洗浄液)に浸されたポリエステル、ポリアミド又はポリプロピレン等である。
【0034】
メッシュ118の使用は、通常、要求される他の通気構造を排除することができるので、テストストリップの製造において、特定の態様を簡略化することができる。特に、血液サンプルが試験領域119に入力されときに、試験領域119はメッシュ118を通じて通気される。また、場合によっては、空気と同様に、血液サンプルがメッシュ118を通って流れる。このため、使用者は、テストストリップの近端部における開口を介した正常な使用ではなく、メッシュ118を介して血液サンプルを適用する場合があり得る。しかし、このような血液サンプルの適用は、グルコースの読み取りにおいて不正確な結果を生じさせる。加えて、メッシュ118は、図6に示したように、試験領域119の端部を密閉することができなので、血液はメッシュ118を介して移動する。
【0035】
他のアプローチとして、穿孔シートを多孔性カバーとして使用するようにしてもよい。その一例を図7に示す。図7は、スペーサ64のスロットによって画定された試験領域121を覆って位置させられた穿孔シート120を有したテストストリップの横断面図を示している。また、スペーサ64のスロットは、血液サンプルが毛管作用によって試験領域121に引き込まれる、テストストリップの近端部における開口を画定する。穿孔シート120は、例えば規則的配列構造によって形成された複数の孔122を含んで構成されている。一実施例では、孔112は、各々の直径が約0.005インチであり、それぞれの中心から中心までの距離が約0.020インチである。穿孔シート120は、例えば親水性の3M(登録商標)ポリエステルフィルム9971等の孔のないシート材を出発物として、レーザドリル加工や機械式パンチングなどによって孔122を形成することで形成される。そして、穿孔シート120は、血液サンプルと接触する面が親水性であると好ましい。
【0036】
血液サンプルが試験領域121に入力されるとき、試験領域121は穿孔シート120の孔122を介して通気される。このような穿孔シート120の使用は、メッシュ118の使用と同様に、他の通気構造を排除することができる。また、穿孔シート120は、メッシュ118を超える特定の利点を提供する。例えば、穿孔シート120は、試験領域121の端部を密閉することができるので、血液サンプルが漏れ出る可能性を減少させる。加えて、穿孔シート120の使用は、メッシュ118の使用に比べて、誤った手段、例えば、テストストリップの近端部の開口ではなく多孔性カバーを介して血液サンプルが適用されないようにすることができる。
【0037】
テストストリップの他の構造では、例えば、電極及びサンプル室の少なくとも一方の他の構造を用いることもできる。
【0038】
2.テストストリップの製造方法
【0039】
図8〜図13は、テストストリップを製造する例示的な方法を示している。なお、これら各図は、図1〜図3に示したテストストリップ10の製造ステップを示しているが、同様のステップを、例えば図4〜図7に示したテストストリップなど他の構造を有するテストストリップの製造に用いることも可能である点を理解すべきである。
【0040】
図8を参照すると、複数のテストストリップ構造体126を1枚のシート上の全体に含んで構成された集積構造124で形成することによって、複数のテストストリップ10を大量生産することができる。複数のテストストリップ構造体126は、複数の列128(例えば6列)から構成されたアレイで配列される。当該複数の各列128は複数のテストストリップ構造体126を含んでいる(例えば各列毎に50個のテストストリップ構造体)。次に、テストストリップ構造体126を各々切り離すことによって複数のテストストリップ10が形成される。好適な分離工程において、テストストリップ構造体126の各列128は、まず、集積構造124からパンチアウトされる。このパンチング(punching)工程はテストストリップ10の幾つかの外形を提供することができる。例えば、テストストリップ10のテーパセクション16におけるテーパ形状は、このパンチング工程において形成されることができる。次に、スリッティング(slitting)工程では、各列128のテストストリップ構造体126を個々のテストストリップ10に切り離すことがきる。
【0041】
図9〜図13では、テストストリップ構造体126を形成する好適な方法の様々なステップを例示するために、テストストリップ構造体(部分的に又は完全に組み立てられている)を1つのみ示している。この好適な手法において、集積構造124におけるテストストリップ構造体126は、完成品としたテストストリップ10のベース層18となるマテリアルシート上に全て形成されている。完成したテストストリップ10の他の構成要素は、次に、テストストリップ構造体126を形成するために、ベース層18上に各層を形成して組み立てられる。図9〜図13のそれぞれには、総合的な製造工程において形成されるテストストリップ10の外形を破線で示している。
【0042】
図9に示したように、製造工程は、ベース層18上に第1導電性パターン130を複数のテストストリップ構造体毎に形成することから始めるとよい。第1導電性パターン130は、電気接点32〜38、導電性トレース40〜42及びオートオンコンダクタ48を含むことができる。この第1導電性パターン130は、ベース層18上に第1導電性インクをスクリーン印刷することによって形成されることができる。第1導電性インクは、例えば、メタリックシルバーなどの導電性材料の粒子を含有する強粘液として提供されるとよい。例えば、好適な第1導電性インクは、約30〜60重量パーセント(weight %)のメタリックシルバー、約5〜10重量パーセントのランプブラック(lamp black)、約30〜60重量パーセントのジプロピレン・グリコール・モノメチル・エーテル、及び、他の構成要素の組成を有しており、これらはデラウェア州、ウィルミントンにあるE. I. DuPont de Nemours & Co.から「Membrane Switch Composition 5524」として入手可能である。
【0043】
次に、図10に示したように、第2導電性パターン132がベース層18上に形成される。第2導電性パターン132は、作用電極22と、対極24の第1セクション25及び第2セクション26と、充填−検出アノード28と、充填−検出カソード30と、を含んで構成される。第2導電性パターン132は第2導電性インクをベース層18上にスクリーン印刷することによって形成される。第2導電性インクは、例えばグラファイトなどの導電性材料の粒子を含有する強粘液として提供されるとよい。第2導電性インクは、第1導電性インクとは異なる組成を有することができる。特に、第2導電性インクは、実質的に試薬層90の化学反応を干渉可能な遊離材、例えば銀等であるとよい。好適な第2導電性インクは、約10〜20重量パーセントのグラファイト、約5〜10重量パーセントのランプブラック、60重量パーセント以上のエチレン・グリコール・ジアセテート、及び、約5〜10重量パーセントのポリマーなどの組成を有しているとよく、これはデラウェア州、ウィルミントンにあるE. I. DuPont de Nemours & Co.から「E100735-111」として入手可能である。
【0044】
次に、図11に示したように、第1導電性パターン130及び第2導電性パターン132の部分を覆うために、ベース層18上に誘電層50が形成される。図11に示すように、誘電層50はベース層18上に形成された多数のテストストリップ構造体を覆うために、完成品としてのテストストリップ10の外形を越えて拡張されているとよい。また、図11に示すように、誘電層50は、作用電極22、第1対極セクション25、第2対極セクション26、充填−検出アノード28及び充填−検出カソード30の露出部54、56、58、60及び62を画定するスロット134を含んで構成される。テストストリップ10のスロット52は、それぞれのテストストリップ構造体が各テストストリップに分離された後、テストストリップ10に残存するスロット134部分と一致する。この点に関し、スロット134は、層50によって露出させた検出−充填電極28及び30の部分を層50によって露出させた作用電極22及び対極24の部分よりも幅広とした幅広部135を含むことができる。
【0045】
好適な手法において、誘電層50は親水性であるとよく、スクリーン印刷によって誘電性材料が加えられる。好適な誘電性材料は、例えば、デラウェア州、ウィルミントンにあるE. I. DuPont de Nemours & Co.から入手可能な「Membrane Switch Composition 5018」等のシリコンとアクリル化合物との混合物などを含有するとよい。もちろん、他の材料を用いることもできる。
【0046】
次のステップでは、図12に示したように、誘電スペーサ層64が誘電層50に積層される。スペーサ64は多くの異なる方法で誘電層50に積層されることができる。例示的な手法において、スペーサ64は充分に大きいシートとして提供され、多数のテストストリップ構造体を覆うために適切に成形される。この手法では、スペーサ64の底面は誘電層50及びベース層18への接着を容易にするために接着剤でコーティングされる。また、スペーサ64の上面の一部は、各テストストリップ10に接着層78を提供するために接着剤で被覆されることができる。スペーサ層64を誘電層50に取り付ける前に、各種スロットがスペーサ64に切り込まれ又はパンチアウトされることができる。例えば、図12に示したように、スペーサ64は、各テストストリップ構造体に対するスロット136及び多数のテストストリップ構造体を超えて広がるスロット138を有することができる。加えて、スペーサ64は、各テストストリップ構造体の形成において、接着部140及び接着部142、それらの間の開路84を含んで構成される。スペーサ64は、次に、図12に示すように、ベース層18上に配置されてベース層18及び誘電層50に積層される。スペーサ64が適切にベース層18に配置されると、露出した電極部54〜62はスロット136を通じてアクセス可能になる。従って、テストストリップ10のスロット66は、複数のテストストリップ構造体が各テストストリップに分離された後、テストストリップ10に残されたスロット136の一部と一致する。同様に、積層された後、スペーサ64のスロット138は、接点32〜38及びオートオンコンダクタ48を露出させたままの状態にする。
【0047】
また、スペーサ64を他の手法で適用することも可能である。例えば、スペーサ64はベース層18及び誘電層50へ射出成形されることができる。スペーサ64は、また、適切な厚み、誘電性材料層を連続してスクリーン印刷することによって、例えば約0.005インチの適切な厚みに積層されてもよい。誘電性材料は、例えば、デラウェア州、ウィルミントンにあるE. I. DuPont de Nemours & Co.から入手可能な「Membrane Switch Composition 5018」等のシリコンとアクリル化合物との混合物を含有するとよい。もちろん、他の材料を用いることができる。
【0048】
次に、試薬層90が各テストストリップ構造体に適用される。好適な手法において、試薬層90は、水性組成物(aqueous composition)を作用電極22の露出部54上にマイクロピペッティングし、試薬層90を形成するためにその水性組成物を乾燥させることで適用される。好適な水性組成物は、約6pHで、2重量パーセントのポリビニルアルコール、0.1Mのリン酸カリウム、0.05重量パーセントのTriton X-100、0.15Mのカリウム・フェリシアニド、0.7%のヒドロキシエチルセルロース(例えばNATROSOL(登録商標))、1mLあたり約2500ユニットのグルコースオキシダーゼなどを含有するとよい。あるいは、他の手法として、例えばスクリーン印刷等を、試薬層90を形成するために用いられる組成物を塗布する際に使用してもよい。
【0049】
次に、透明カバー72が接着層78に取り付けられる。図13に示すように、カバー72(透明として示している)は多数のテストストリップ構造体122を覆うのに充分に大きくされるとよい。このカバー72を取り付けることで、複数のテストストリップ構造体122の形成が完了する。複数のテストストリップ構造体122は、上記の通り、複数のテストストリップ10を形成するために、その後、各々切り離される。
【0050】
3.測定器及びリムーバブルデータストレージデバイス
【0051】
血液サンプル中の血糖値を測定するために、例えばテストストリップ10、テストストリップ100又はテストストリップ110等のテストストリップが、図14及び図15に示すような測定器200とともに使用される。測定器200は、使用者がグルコース測定を実行している間、当該使用者の手で持ちやすいサイズ及び形状を有すると好ましい。測定器200は、正面202、背面204、左側面206、右側面208、上面210及び底面212を含んで構成されている。正面202は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)等のディスプレイを含んで構成されている。底面212は、測定用のテストストリップが挿入されるストリップコネクタ216を含んで構成されている。
【0052】
測定器200の左側面206は、後述するように、リムーバブルデータストレージデバイス220が挿入されるデータコネクタ218を含んで構成されている。上面210は、使用者が測定器200を制御するボタン等の1以上の使用者制御部222を含んで構成されている。右側面208は、シリアルコネクタ(図示略)を含んで構成されている。
【0053】
図16にストリップコネクタ216の更に詳細な好ましい実施例を示す。ストリップコネクタ216は、テストストリップを受用する開口を広げた開口部231とともに、通路230を含んで構成されている。タブ232及び234は、それぞれ所定の高さで通路230の左右の側から内側に向かって張り出している。この所定の高さは、近端部12(厚部96)ではなく遠端部14(薄部94)をストリップコネクタ216に挿入可能なように設定される。このようにすることで、使用者がテストストリップをストリップコネクタ216に不適切に挿入してしまうことを防止することができる。
【0054】
電気接点236及び238は通路230中においてタブ232及び234の後方に配置されており、電気接点240〜246は通路230中において電気接点236及び238の後方に配置されている。テストストリップの遠端部14がストリップコネクタ216に適切に挿入されると、テストストリップと測定器200との電気的接続のために、電気接点236〜246が電気接点32〜38及びオートオンコンダクタ48に接触する。具体的には、電気接点236及び238が電気接点32及び34にそれぞれ接触することで、作用電極22及び対極24を測定器200に電気的に接続する。電気接点240及び242が電気接点36及び38にそれぞれ接触することで、充填−検出電極28及び30を測定器200に電気的に接続する。最後に、電気接点244及び246がオートオンコンダクタ48を測定器200に電気的に接続する。
【0055】
測定器200は、当該測定器200で測定した血液サンプルの血糖値を算出するためにリムーバブルデータストレージデバイス220からのデータを使用することができる。具体的には、データストレージデバイス220は、テストストリップのロットと関連し、測定器200がそのロットに対して使用可能な1以上のパラメータを蓄積することができる。例えば、データストレージデバイス220は、測定器200が電流測定結果の平均値から血糖値を算出するために使用できる1以上の較正パラメータを蓄積することができる。較正パラメータは温度補正を含むことができる。また、データストレージデバイス220は、例えば、テストストリップのブランドを識別するコード、使用される測定器のモデルを識別するコード及びテストストリップのロットの使用期限等、テストストリップのロットや測定器に関連した他の情報を蓄積することができる。さらに、データストレージデバイス220は、後述するように、例えば、充填タイマー及びインキュベーションタイマーの継続時間、「降下レベル(Drop Level)1」、「充填(Fill)」及び「分析評価励起レベル(Assay Excitation Level)2」電圧に対して使用するための電圧、電流測定結果を作成する数に関する1以上のパラメータ、及び、測定器がどのような手法によって電流測定結果を平均化するかを特定する1以上のパラメータ等、測定器200が使用するその他の情報も蓄積することができる。さらにまた、データストレージデバイス220は、蓄積データ又は蓄積データの一部分についての1以上のチェックサムを蓄積することもできる。
【0056】
好適なアプローチにおいて、テストストリップの所定ロットが測定器200で使用される前に、まず、当該テストストリップの所定ロットに関連付けられたリムーバブルデータストレージデバイス220が、データコネクタ218に挿入される。次に、測定器200は、テストストリップがストリップコネクタ216に挿入されると、データストレージデバイス220から関連データを内部メモリに読み込む。測定器200は、その内部メモリに格納された関連データによって、所定ロット中のテストストリップを使用し血糖値を測定するので、データストレージデバイス220をもはや必要としない。従って、リムーバブルデータストレージデバイス220を測定器200から取り外し、それを他の測定器をコード化するために用いることができる。データストレージデバイス220が測定器200において保持されている場合、測定器200はデータストレージ200にアクセスせず、代わりに測定器200の内部メモリに格納されたデータを使用することができる。
【0057】
図17を参照すると、リムーバブルデータストレージデバイス220は、回路基板252がマウントされる、つまりキャリア254にマウントされるメモリチップ250を含んで構成される。メモリチップ250は所定フォーマットでデータを格納する。好ましくは、メモリチップ250は、電力が供給されていない場合にも蓄積データを保持する不揮発性メモリであるとよい。例えば、メモリチップ250は電気的消去(書き換え)・プログラム可能型読取専用メモリ(EEPROM)であるとよい。このようなEEPROMは、使用のライフサイクルを超えても摩滅しないので、通常、例えば、100万回のライトサイクル、あるいは、それ以上、何度も書き換え可能である。
【0058】
メモリチップ250は、回路基板252上の複数の電気接点と電気的に接続される。これらの電気接点は、電圧供給接点256、接地接点258、データ入出力接点260及びクロック接点262を含んで構成される。このようにして、適切な電圧が電圧供給256に印加されると、接地接点258と関連して、データ入出力接点260及びクロック接点262を用いてメモリチップ250からデータを同期読み取り又は同期書き込みすることができる。後述するように、接地接点258は高信頼性が要求されるので、他の電気接点256、260及び262よりも長い構成であるとよい。
【0059】
キャリア254は、プラスチックなどの材料から形成され、遠端部264及び近端部266を含んで構成される。遠端部264は、データコネクタ218に挿入されることを目的とする。近端部266は、リムーバブルデータストレージデバイス220をデータコネクタ218に挿入し又は取り外せるように、使用者の指がグリップ可能なフランジ268を含んで構成されている。キャリア254は、電気接点256〜262にアクセス可能な開口部270を含んで構成されている。これによって、データストレージデバイス220が適切にデータコネクタ218に挿入されると、回路基板252上の電気接点256〜262が、データコネクタ218内において、それぞれに対応する電気接点272〜278(図14参照)に接触する。このように、測定器200は、メモリチップ250に格納されたデータを読み込むために、当該メモリチップ250と電気的に接続される。
【0060】
リムーバブルデータストレージデバイス220を一方向からのみ、コネクタ218へ挿入可能なよう、キャリア254とデータコネクタ218を「適合」させることができる。例えば、キャリア254はくさび形コーナー282を含んで構成され、コネクタ218はくさび形コーナー282を受用するくさび形開口部284を含んで構成される。その結果、くさび形コーナー282がくさび形開口部284に受用されて適合した場合、データストレージデバイス220はデータコネクタ218にかみ合うことができる。この適合は、使用者に適当な挿入の方向付けに関する指示を与えることができ、不適当な挿入によって生じる損傷を防止する上で有益となりうる。
【0061】
信頼性を高めるリムーバブルデータストレージデバイス220の他の特徴は、接地接点258の際だった長さにある。具体的には、回路基板252は、接地接点258が他の電気接点256,260及び262よりも遠端部264(すなわちデータコネクタ218に挿入される端部)に向けて伸長し近接するようにキャリア254にマウントされている点にある。その結果、接地接点258は、データストレージデバイス220がデータコネクタ218に挿入されると、測定器200との電気的接触を形成する最初の電気接点となり、データストレージデバイス220が取り外されると、測定器200との電気的接触を切断する最後の電気接点となる。これは、例えば、当該メモリチップ250が接地接点258を通じて接地されないで電圧供給接点256を通じて測定器200から電源が供給される場合など信頼性を欠き意図しない操作モードにおいて、メモリチップ250に電力が供給されることを防止する。
【0062】
4.測定器とテストストリップの使用
【0063】
節電を目的として、測定器200はほとんどの時間、低消費電力「スリープ」モードであることが好ましい。しかしながら、特定の状況が発生すると、測定器200は「起動(wake up)」し、アクティブモードに入る。例えば、データ転送のためにシリアルポート416の使用を試みる場合など、使用者制御部222における1以上の動作によって測定器200にウェイクアップを生じさせることが可能である。好ましくは、テストストリップ(例えば、テストストリップ10、テストストリップ100又はテストストリップ110)又はチェックストリップを測定器200に挿入すると、当該測定器200が起動するとよい。測定器200は、次に、挿入されたストリップがテストストリップ又はチェックストリップのいずれであるかを決定する。この過程を図18のフローチャートに例示する。
【0064】
まず、ステップ300に示したように、測定器200は低消費電力スリープモードにある。次に、ステップ302に示したように、テストストリップ又はチェックストリップのいずれかが測定器200に挿入される。この挿入により、ストリップ上のオートンコンダクタ(例えば、テストストリップ10上のオートンコンダクタ48)が測定器200におけるオートオン接点244及び246をブリッジする。その結果、オートオン電流がオートオン接点244及び246を通じて、及びオートオンコンダクタを通じて流れ始める。このオートオン電流は、ステップ304に示したように、測定器200を起動させてアクティブモードに入らせる。
【0065】
このアクティブモードでは、ステップ306に示したように、測定器200はオートオンコンダクタにわたる電圧降下を測定する。好適なアプローチにおいて、テストストリップのオートオンコンダクタの抵抗は、チェックストリップと大きく異なっている。従って、測定器200は、オートオン電圧降下に基づいて挿入されたストリップがテストストリップ又はチェックストリップのいずれであるかを決定することができる。例えば、テストストリップのオートオンコンダクタに、チェックストリップよりも実質的に低い抵抗を備えさせるようにする。これにより、ステップ308に示したように、測定器200はオートオン電圧降下を所定の閾値と比較することができる。オートオン電圧降下が所定の閾値未満の場合、ステップ310に示したように、測定器200はストリップをテストストリップと識別し、テストストリップシーケンスを実行する。一方、オートオン電圧降下が所定の閾値以上の場合、ステップ312に示したように、測定器200は、ストリップをチェックストリップと識別し、チェックストリップシーケンスを実行する。
【0066】
図19のフローチャートは好適なチェックストリップシーケンスを示している。チェックストリップは、テストストリップの電気接点32〜38と同様の電気接点(オートオンコンダクタを加える)をその遠端部近くに含んで構成され、そのチェックストリップ上の電気接点は、テストストリップとは異なり実際の電極よりもむしろ所定抵抗の抵抗器に接続される。従って、チェックストリップが測定器200に挿入されると、電気接点236及び238は、チェックストリップの第1抵抗器を通じて実際に接続されたチェックストリップ上の接点である「作用電極」及び「対極」に接触する。同様に、電気接点240及び242はチェックストリップの第2抵抗器を経て実際に接続されたチェックストリップ上の「充填−検出」接点に接触する。
【0067】
図19に要約されるように、測定器200は、測定値が許容範囲内にあるか否かを決定するために、チェックストリップの第1抵抗器及び第2抵抗器を流れる電流を測定することによってチェックストリップシーケンスを実行する。測定した電流値が許容範囲にない場合、測定器200に問題が生じている可能性がある。従って、測定器200は、ステップ314に示したように、まず、第1抵抗器を通じて測定電流値を得るために、作用電極236及び対極238を流れる電流を測定する。測定器200は、次に、ステップ316に示したように、その測定電流値が許容範囲内であるか否かを決定する。測定電流値が許容範囲内にない場合、ステップ318に示したように、測定器200は障害状態を表示する。当該障害状態を表示するために、測定器200はディスプレイ214にメッセージ又はアイコンを表示及び使用者が識別可能な幾つかの他の障害指示の少なくとも一方を提供することができる。
【0068】
第1抵抗器を通じて測定した電流が許容範囲内にある場合、測定器200は、次に、ステップ320に示したように、第2抵抗器を通じて測定電流値を得るために、充填−検出電極接点240及び242を流れる電流を測定する。次に、ステップ322に示したように、測定器200はその測定電流値が許容範囲内にあるか否かを決定する。測定電流値が許容範囲内にない場合、ステップ324に示したように、測定器200は障害状態を表示する。測定電流値が許容範囲内にある場合、測定器200は操作可能状態を表示する。例えば、測定器200はディスプレイ214に「OK」のアイコンを表示するとよい。
【0069】
上記したように、測定器200がテストストリップを検出した場合、測定器200は次にテストストリップシーケンスを実行する。テストストリップシーケンスの第一段階として、測定器200は作用電極、対極及び充填−検出電極間のインピーダンスが充分に高いか否かを決定することによって、それら電極の動作確認をする。この工程が図20のフローチャートに図示されている。
【0070】
ステップ328に示したように、測定器200は、例えば「ドロップレベル1(Drop Level 1)」電圧などの所定の第1動作確認電圧を作用電極22と対極24との間に印加することができ、作用電極22を流れるあらゆる発生電流(resulting current)を測定する。作用電極22及び対極24間には低インピーダンス経路は存在してはならないので、第1動作確認電圧は僅かであるか又は電流が存在しない結果でなければならない。従って、測定器200は、ステップ330に示したように、発生電流が最大許容値以下であるか否かを確認する。そして、発生電流が最大値以上である場合、ステップ332に示したように、測定器は障害状態を表示する。
【0071】
最大値以下であれば、ステップ334に示したように、測定器200は、テストストリップシーケンスを続行し、例えば「充填」電圧などの所定の第2動作確認電圧を充填−検出電極28及び30にわたって印加し、充填−検出アノード28を流れる発生電流を測定する。測定器200は、後述するように、その電流測定結果を後の測定で使用できるように、当該電流測定結果を蓄積する。いずれの電極間にも低インピーダンス経路が存在してはならないので、第2動作確認電圧は低いか又は電流が存在しない結果でなければならない。しかし、測定器200の例えば増幅器などの電子部品はステップ334において測定される僅かなオフセット電流を生じることがある。測定器200は、ステップ336に示したように、ステップ334の電流測定結果が最大許容量以下であるか否かを確認する。電流測定結果が最大値以上である場合、ステップ338に示したように、測定器200は故障状態を表示する。最大値以下であれば、測定器200はテストストリップに適用された血液サンプルを表示する。例えば、測定器200はディスプレイ214にメッセージ又はアイコンを表示及び使用者が識別可能な幾つかの他の表示の少なくとも一方を提供することができる。
【0072】
測定器200はステップ334の測定を実行すると同時にステップ328の測定を実行する。従って、測定器200は、作用電極22及び対極24間に「降下レベル1」電圧を印可して、作用電極22に流れるあらゆる発生電流を測定すると同時に、充填−検出電極間23及び30に「充填」電圧を印可して、充填−検出アノード28に流れるあらゆる発生電流を測定する。
【0073】
電極が動作確認された場合、測定器200は、次に、図21のフローチャートに示した過程に進むことができる。使用者がいつ血液サンプルを滴下したかを検出するために、測定器200は、ステップ342に示したように、作用電極22と対極24との間に「降下レベル1」電圧を印可し、それら電極間に流れるあらゆる発生電流を測定する。その「降下レベル1」電圧は、試薬層90において用いられた化学反応の酸化還元電位以下であるとよい。ステップ344で、使用者は血液サンプルをテストストリップに滴下する。より詳細には、使用者は血液サンプルを図3に示した近端部12におけるサンプル室88の開口に塗布する。上記したように、サンプル室88は毛管作用によって血液サンプルをそこに引き入れるために必要な大きさとされる。血液サンプルがサンプル室88へ移動することにより、作用電極22と対極24との間が最終的にブリッジされ、これによって、その作用電極22及び対極24との間に電気的な導電性経路が提供される。従って、測定器200は、ステップ346に示したように、発生電流が所定の閾値に到達するか又は全体的に正の絶対値を持つ一連の閾値が変化すると、血液サンプルがサンプル室88に存在すると決定する。このようにして測定器200が血液サンプルを検出すると、測定器200は、作用電極22と対極24との接続を切断し、当該作用電極22と対極24とを充填−検出電極28及び30に対してハイインピーダンス状態に置き、ステップ348に示したように、充填タイマー及びインキュベーションタイマーを開始する。測定器200は、作用電極22と対極24とをハイインピーダンス状態にする前に、蓄積した電荷を放電するため、まず当該作用電極22と対極24とを接地する。
【0074】
充填タイマーには血液サンプルが試薬層90を横断して充填−検出電極28及び30に到達するためのタイムリミットを設定する。インキュベーションタイマーには血液サンプルが試薬層90で反応可能な遅延時間をセットする。一旦、測定器200が充填タイマーをカウントし始めると、測定器200は、ステップ350に示したように、充填−検出電極28及び30間に電圧、すなわち「充填」電圧を印可して、これら電極間における発生電流の流れを測定する。測定器200は、調整した電流を得るために、この測定した電流からステップ334の電流測定結果を減ずる。ステップ352に示したように、測定器200は、充填タイマーが経過する前に、電流(又は調整電流)が所定の閾値に到達しているか否か、又は全体的に正の絶対値を持つ一連の閾値が変化しているか否かを確認する。電流閾値は、充分なサンプルが充填−検出電極28及び30に到達したか否か、及び、サンプルが試薬層90の化学成分と混合されたか否かを測定器200が決定できるように設定されている。
【0075】
電流(又は調整電流)が必要値に到達しない場合、テストストリップに問題が生じている可能性がある。例えば、妨害物がサンプル室88に存在する等である。サンプル量が不充分であるとも考えられる。また、試薬層がないか又は試薬層の化学成分が血液サンプルと混合していない可能性もある。これらいずれの問題も信頼性のないグルコース測定値を生成することになる。従って、充填−検出電極28及び30を流れる電流(又は調整電流)が充分でないまま充填タイマーが経過すると、ステップ354に示したように、測定器200は障害状態を示すことができる。測定器200は、ディスプレイ214にエラーメッセージ又はアイコンを表示及び使用者が識別可能な幾つかの他の指示の少なくとも一方を提供することで、障害状態を示す。充填タイマーの接続時間は、例えば、2〜6秒程度であるとよい。
【0076】
一方、測定器200が、充填タイマーが経過する前に、充填−検出電極を流れる電流(又は調整電流)が充分であることを検出すると、次に、当該測定器200はグルコース測定過程に進む。ステップ356に示したように、測定器200は、試薬層90の化学成分と混合された充分なサンプルを検出したことの表示を使用者に提供する。例えば、測定器200は、ビープ音を鳴らすか、ディスプレイ214上にメッセージ又はアイコンを表示及び使用者が識別可能な幾つかの他の指示の少なくとも一方を提供することができる。好ましくは、測定器200は、また、充填−検出電極28及び30間の接続も切断し、当該充填−検出電極28及び30を作用電極22及び対極24に対してハイインピーダンス状態に置く。測定器200は、蓄積した電荷を放電するために、充填−検出電極28及び30をハイインピーダンス状態に置く前に、当該充填−検出電極28及び30を接地する。測定器200は、次に、血液サンプルが試薬層90と反応するのに充分な時間を与えるために、ステップ358に示したように、インキュベーションタイマーが経過するのを待つ。インキュベーションタイマーは、実施に応じて、例えば、経過するまで約2〜10秒かかるようにできる。好ましい実施例において、インキュベーションタイマーは、約5秒間、持続する。
【0077】
インキュベーションタイマーが経過すると、測定器200は、ステップ360に示したように、作用電極22と対極24との間に「分析評価レベル(Assay Excitation Level)2」電圧を印可し、当該作用電極22と対極24との間を流れる発生電流を測定する。好ましくは、複数の電流測定結果を得るために、測定器200は、測定時間の全体にわたって固定のサンプリングレートで発生電流を測定する。測定時間は、実施に応じて、約5〜15秒まで持続することができる。好ましい実施例において、測定時間を約5秒間、持続させるとよい。
【0078】
測定器200は、次に、ステップ362に示したように、電流測定結果から血液サンプルの血糖値を決定する。好適なアプローチにおいて、測定器200は、測定時間における所定の時点での平均電流値を得るために、電流測定結果を平均化する。測定器200は、次に、平均化電流値から血糖値を算出するために、リムーバブルデータストレージデバイス220から得られ内部メモリに格納された較正データを使用する。また、測定器200は、計測温度も得ることができ、温度依存性のある測定血糖値を補正するために当該計測温度を使用する。加えて、測定器200は、測定電流が時間の経過とともに減少することが予想されるので、この点を確認することで、電流測定結果の妥当性を確認する。
【0079】
例えば、好ましい実施例において、測定器200は、0.1秒間隔で所定回数の電流測定結果(m1・・・mM)を取得することができる。その所定回数Mは、例えば、50〜150回までの範囲であるとよく、また、当該所定回数Mはリムーバブルデータストレージデバイス220において特定されたパラメータであってもよい。測定器は、次に、複数のデータポイント(d1・・・dN)を提供するために全ての電流測定結果nを平均化する。従って、n=3であれば、測定器は、m1、m2及びm3を平均化することでd1を計算し、m2、m3及びm4を平均化することでd2を計算する。平均化パラメータnは、リムーバブルデータストレージデバイス220において特定されるパラメータであってよい。平均化の他のレベルのためにデータポイントの1つが中心点として選択され、測定器は、測定示度(meter reading)Xを提供するために周囲のデータポイント及び中心点を含むデータポイントを共に平均化する。従って、d2が中央点として選択されると、次に測定器は測定示度Xの計算とともにd1、d2及びd3を平均化する。リムーバブルデータストレージデバイス220は、測定示度Xを算出するために、中央点として用いるデータポイントのいずれを使用するかを特定するパラメータを格納している。測定器200は、次に、測定示度X及びリムーバブルデータストレージデバイス220で特定された1以上の較正パラメータから血糖値Yを算出する。例えば、具体的な実施例において、測定器200は、式a+bX+cX2を用いてYを算出するために、3つの較正パラメータa、b及びcを使用する。あるいは、較正パラメータの異なる項及び異なる数を含む異なる式の少なくとも一方がYを算出するために使用されてもよい。例えば、例示的な他の実施例で、Yは式a+bX+cX2+d/Xを使用して算出される。場合によっては、データストレージデバイス220は、Yを算出するためにいずれの式を使用するべきかについて、加えて、いずれの較正パラメータを使用するべきかについて、それぞれを特定することができる。
【0080】
しかしながら、このような方法で算出した血糖値Yは、温度補正がされていない。温度補正をするために、測定器200は1以上の温度補正パラメータを適用する。この温度補正パラメータはリムーバブルデータストレージデバイス220において特定されることができる。例えば、好適な実施例において、温度補正された血糖値は、式A+BT+CYT+DYから算出されることができる。ここで、A、B、C及びDは温度補正パラメータであり、Tは計測温度である。較正パラメータA、B、C及びDは、リムーバブルデータストレージデバイス220において特定されてもよい。他の実施例では、温度補正は単一パラメータSを単独で使用することもできる。その単一パラメータSはリムーバブルデータストレージデバイス220において特定されてもよい。例えば、温度補正された血糖値は式Y/[(1+S(T−21)]から算出されることができる。
【0081】
電流測定結果が有効に現れた場合、測定器は、次に、ステップ364に示したように、ディスプレイ214に一般的に数字で血糖値を表示する。また、測定器は、その内部メモリに、タイムスタンプと共に、測定した血糖値を格納する。
【0082】
5.測定器エレクトロニクス
【0083】
図22に、好ましい実施例に従う単純化した測定器200の電子構成要素を示す。測定器200は、プログラミングに従って測定器200の操作を制御するマイクロコントローラ400を含んで構成され、当該マイクロコントローラ400はソフトウェア及び/又はファームウェアとして提供される。マイクロコントローラ400は、プロセッサ402、リードオンリーメモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)の少なくとも一方を含むことが可能なメモリ404、ディスプレイコントローラ406、1以上の入出力(I/O)ポート408を含んで構成されている。メモリ404は、測定器200の操作を制御するためのプログラム化された複数の機械語命令を格納することができる。また、メモリ404は、データを蓄積することができる。プロセッサ402は、マイクロコントローラ400及び測定器200を制御するために、メモリ404又は他の構成要素に格納された機械語命令を実行する。特に、プロセッサ402は、前述した図18〜図21のフローチャートに要約した測定器200が実行する機能をプログラムした機械語命令を実行する。
【0084】
また、マイクロコントローラ400は、プロセッサ402の制御下にある他の構成要素を含んで構成される。例えば、マイクロコントローラ400は、プロセッサ402によるディスプレイ214の制御を補助するために、ディスプレイコントローラ406を含んで構成される。好ましい実施例において、ディスプレイ214はLCDであるとよく、ディスプレイコントローラ406はLCDドライバ/コントローラであるとよい。さらに、マイクロコントローラは、当該マイクロコントローラ400外部の構成要素とプロセッサ402が通信することを可能にするI/Oポート408を含んで構成されている。さらにまた、マイクロコントローラ400は、1以上のタイマー410を含んで構成されている。プロセッサ402は、上述した充填時間、インキュベーション時間及び他の時間にわたって測定するタイマー410を使用する。マイクロコントローラ400は、日立から入手可能な、例えば、HD64F38024H等の集積回路として提供されることができる。
【0085】
マイクロコントローラ400は、好ましくはユーザーインターフェースを提供する構成要素と接続される。測定器200のユーザーインターフェースを構成する構成要素は、ディスプレイ214、ビーパー412及び使用者コントローラ222を含んで構成される。マイクロコントローラ400は、ディスプレイ214上にテキスト及びグラフィクスの少なくとも一方を表示することができる。マイクロコントローラは、例えば、前述の充分なサンプル(試薬層90の化学成分と混合された)が充填−検出電極28及び30に到達したことを示す等のための警告音をビーパー412から出力させることができる。また、マイクロコントローラ400は、視覚、聴覚又は触覚可能な使用者が識別可能な指示を提供するために、例えば1以上の発光ダイオード(LED)等の他の構成要素と接続されることができる。さらにまた、マイクロコントローラ400は、使用者制御部222から使用者入力を受信する。好ましい実施例において、使用者制御部222は複数の個別スイッチを含んで構成されるとよい。しかしながら、使用者制御部222は、また、使用者が測定器200に入力を提供できるタッチスクリーン又は他の構成要素を含んで構成されてもよい。
【0086】
マイクロコントローラ400は、例えばEEPROM414などの1以上の外部メモリにアクセスすることができる。好ましい実施例において、マイクロコントローラ400は、測定した血糖値及びグルコース測定の実施日時を蓄積するとよい。使用者は、使用者制御部222を用いて、EEPROM414に格納された1以上のグルコース測定結果をディスプレイ214に表示させるようマイクロコントローラ400に命令することができる。また、マイクロコントローラ400は、使用者がEEPROM414に格納されたグルコース測定結果にアクセス可能なシリアルポート416に接続されている。マイクロコントローラ400は、シリアルポート416へ信号を送信するための送信ライン「TX」、及び、シリアルポート416から信号を受信するための受信ライン「RX」を使用する。
【0087】
EEPROM414は、リムーバブルデータストレージデバイス220からのデータを格納する。この点に関し、図22に、データコネクタ218の電気接点272〜278が如何にして測定器200内部と接続されているかが示されている。接点272は、マイクロコントローラ400を通じて電源に接続されている。このように、マイクロコントローラ400は、例えば、リムーバブルデータストレージデバイス220からデータをダウンロードする等、必要な場合にのみ、接点272を通じてリムーバブルデータストレージデバイス220に電力供給をする「パワーマネージメン」をする。接点274は接地へ接続されている。接点276及び接点278は、それぞれマイクロコントローラ400内で、データ入出力及びクロック出力に接続されている。このように、データストレージデバイス220がデータコネクタ216に接続されている場合、マイクロコントローラ400は、当該データストレージデバイス220からデータをダウンロードすることができ、そのデータをEEPROM414に格納することができる。
【0088】
好ましい実施例において、測定器200は、また、マイクロコントローラ400とデジタルインターフェースされるデータ収集システム(DAS)420とを含んで構成される。このDAS420は、カリフォルニア州のサニーベールにあるMaxim Integrated Productsから入手可能な、例えば、MAX1414などの集積回路として提供されることができる。
【0089】
DAS420は、マイクロコントローラ400からのデジタルデータに応答してアナログ電圧を生成する1以上のデジタルアナログ変換器(DACs)を含んで構成される。具体的には、DAS420は、テストストリップがストリップコネクタ216に挿入された場合、第1DACによって生成されたアナログ電圧を作用電極22に印加するために用いられる「Vout1」端子及び「FB1」端子を含んで構成される。同様に、DAS420は、テストストリップがストリップコネクタ216に挿入された場合、第2DACによって生成されたアナログ電圧を充填−検出アノード28に印加するために用いられる「Vout2」端子及び「FB2」端子を含んで構成される。DAS420の1以上のDACsは、マイクロコントローラ400によって提供されるデジタル信号に基づいてアナログ電圧を生成する。このように、1以上のDACsによって生成された電圧は、プロセッサ402によって選択される。
【0090】
また、DAS420は、該DAS420がアナログ信号を測定することが可能な1以上のアナログデジタル変換器(ADCs)を含んで構成されている。後述するように、テストストリップがストリップコネクタ216に挿入された場合、DAS420は、作用電極22及び対極24からの電流をそれぞれ測定するために、「Voutl」端子及び「Vout2」端子に接続された1以上のADCsを使用する。さらに、DAS420は、例えば、図22に示した「Analog In1」及び「Analog In2」端子など、ADCsを通じてアナログ信号を測定する1以上の他の端子を含んで構成される。さらにまた、DAS420は、ストリップコネクタ216に接続されたテストストリップ又はチェックストリップのオートオンコンダクタにわたる電圧を測定するために、「Analog In1」端子を使用する。「Analog In2」端子は、DAS420が温度測定可能なようにサーミスタRT1に接続される。具体的には、DAS420は、サーミスタRT1及び他の抵抗器Rdを含んで構成された分圧器を通じて、基準電圧VREFを出力することが可能である。さらにまた、DAS420は、サーミスタRT1にわたる電圧を測定するために、「Analog In2」端子を使用することができる。さらにまた、DAS420は、1以上のADCsから得られるデジタル値を、これら構成要素間のデジタルインターフェースを経て、マイクロコントローラ400に転送する。
【0091】
好ましくは、DAS420は、「スリープモード」又は低電力モード、及び、「アクティブモード」又は実行モードの少なくとも2つの動作モードを有する。アクティブモードにおいて、DAS420は最大限の機能性を有する。スリープモードにおいて、DAS420は機能性を低減するが、非常に少量の電流は引き込んでいる。例えば、DAS420は、アクティブモードにおいて1mA又はそれ以上を引き込むことができ、スリープモードであると僅かにマイクロアンプ(microamps)を引き込むことができる。図22に示すように、DAS420は「Wake-up1」、「Wake-up2」及び「Wake-up3」入力を含むことができる。適切な信号がこれら「Wake-up」端子のいずれかにアサートされると、後述するように、DAS420は、スリープモードから起動して、アクティブモードに入り、その他、休止状態の測定器200を起動する。好ましい実施例において、「Wake-up」入力は、供給電圧VCCを内部的にプルアップさせるアクティブ・ロー入力(active-low inputs)である。さらに、後述するように、ストリップコネクタ216にテストストリップ又はチェックストリップのオートオンコンダクタを挿入することは、「Wake-up1」入力をローにし、これによってDAS420をアクティブモードに入らせることになる。加えて、「Wake-up2」入力は、1以上の使用者制御部222に接続される。このように、使用者が少なくとも一定の使用者制御部222の操作を行うことにより、DAS420がアクティブモードに入ることになる。最後に、「Wake-up3」入力は、例えば、受信ラインRXを通じてシリアルポート416に接続されることができる。このように、データ転送のためにシリアルポート416の使用を試行することで、DAS420及び、その後に測定器200を起動させることができる。
【0092】
図22に示すように、DAS420はマイクロコントローラ400に接続された幾つかの端子を含んで構成される。DAS420は、1以上の「Data I/O」端子を含んで構成され、当該「Data I/O」端子を通じてマイクロコントローラ400は、DAS420からのデジタルデータを読み取り及びDAS420にデジタルデータを書き込むことができる。また、DAS420は、「Data I/O」端子への/「Data I/O」端子からのデータ転送を調整するために、マイクロコントローラ400からクロック信号を受信する「Clock In」端子を含んで構成されている。さらに、DAS420は、該DAS420がマイクロコントローラ400を駆動するためのクロック信号を出力する「Clock Out」端子を含んで構成されている。この場合、DAS420は、クリスタル422を用いてクロック信号を生成する。さらにまた、DAS420は、クリスタル422を使用してリアルタイムクロック(RTC)を生成することも可能である。
【0093】
DAS420は、他の端子を含んで構成され、当該他の端子を通じてその他のタイプのデジタル信号をマイクロコントローラ400に出力することができる。例えば、DAS420の一例では、DAS420は「Reset」端子を含んで構成され、当該「Reset」端子を通じてマイクロコントローラ400をリセットするための信号を出力することができる。また、DAS420は、マイクロコントローラ400に割込み信号を供給するために使用可能な1以上の「Interrupt Out」端子を含んで構成されることができる。さらに、DAS420は、例えば、マイクロコントローラ400に対して転送準備が完了したことのデータをAD変換器などから得られたことを、当該マイクロコントローラ400に送信する1以上の「Data Ready」入力を含んで構成されることができる。
【0094】
図22に示すように、測定器200は、例えば、1以上の電池424などの電源を含んで構成される。電圧調整器426は、電池424が供給する電圧から調整した供給電圧VCCを提供する。次に、供給電圧VCCは、測定器200の他の構成要素に電力を供給する。好ましい実施例において、電圧調整器426は、電圧を上げるDC/DC電圧コンバータであるとよい。電圧調整器426は、集積回路や、例えば、インダクター、コンデンサ及びレジスタ等の他の構成要素として提供されることができる。集積回路は、例えば、カリフォルニア州のサニーベールにあるMaxim Integrated Productsから入手可能なMAX1724であってよい。
【0095】
好ましくは、電圧調整器426は、無調整出力電圧を供給するシャットダウンモードを有するとよい。DAS420は、電圧調整器426を制御することができる「Shutdown」端子を含んで構成されることができる。具体的には、DAS420がスリープモードに入ると、当該DAS420は、電圧調整器426をシャットダウンモードに入らせるために、「Shutdown」端子に低レベル信号をアサートする。DAS420がアクティブモードに入ると、当該DAS420は、電圧調整器426を通常動作可能にするために、「Shutdown」端子にハイレベル信号をアサートする。
【0096】
図22は、ストリップコネクタ216の電気接点236〜246が如何なる状態で測定器200に接続されているかを示している。テストストリップがストリップコネクタ216に挿入されると、それぞれ、作用電極22及び対極24と電気的に接続される接点236及び238とは、以下のような接続状態になる。作用電極22に対する接点236は、DAS420の「FB1」端子に接続されるとともに、抵抗器RF1を経てDAS420の「Vout1」端子に接続される。対極24に対する接点238はスイッチ428に接続される。スイッチ428は、接点238(ひいては対極24)を接地接続するか又はハイインピーダンス状態のままにすることを可能にする。図22に示したように、スイッチ428は、マイクロコントローラ400によってデジタル制御されることができる。対極24が接地接続されると、DAS420は、作用電極22(対極24に関連して)に電圧を印加して、その作用電極22を流れる電流を測定するために、「Vout1」端子及び「FB1」端子を使用する。
【0097】
テストストリップがストリップコネクタ216に挿入されると、それぞれ、充填−検出アノード28及び充填−検出カソード30と電気的に接続される接点240及び242は、以下のような接続状態になる。充填−検出アノード28に対する接点240は、DAS420の「FB2」端子に接続されるとともに、抵抗器RF2を経てDAS420の「Vout2」端子に接続される。充填−検出カソード30に対する接点242は、スイッチ430に接続される。スイッチ430は、接点242(ひいては充填−検出カソード30)を接地接続するか又はハイインピーダンス状態のままにすることを可能にする。図22に示すように、スイッチ430はマイクロコントローラ400によってデジタル制御されることができる。充填−検出カソード30が接地接続されると、DAS420は充填−検出アノード28(充填−検出カソード30と関連して)に電圧を印加して、その充填−検出アノード28を流れる電流を測定するために、「Vout2」端子及び「FB2」端子を使用する。
【0098】
スイッチ428及び430は、カリフォルニア州のサニーベールにあるMaxim Integrated Productsから入手可能な、例えば、MAX4641などの単極/単投(SPST)スイッチであって、集積回路として提供されることができる。しかし、スイッチ428及び430のための他の構造を使用することもできる。
【0099】
テストストリップ又はチェックストリップがストリップコネクタ216に挿入されると、オートオンコンダクタと電気的に接続される接点244及び246は、以下のような接続状態になる。接点246は、接地又は他の基準電位へ接続される。接点244は、DAS420の「Analog In1」端子及び「Wake-up1」端子とマイクロコントローラ400に接続される。後述するように、オートオンコンダクタの存在は「Wake-up1」端子をローで作動させ、これよって、DAS420を起動しアクティブモードに入らせるようになる。DAS420は、オートオンコンダクタにわたる電圧を測定するために、「Analog In1」端子を使用する。接点244に対するその接続に基づいて、マイクロコントローラ400は、オートオンコンダクタが存在するか否か、及び、ストリップコネクタ216に接続されたのがテストストリップ又はチェックストリップであるか否かを決定することが可能になる。
【0100】
図23は、テストストリップがストリップコネクタ216に挿入された場合における測定器200と電極22,24、28及び30との間の機能的なアスペクトを更に詳細に示している。図23に示したように、DAS420は機能上、作用電極22に対する増幅器440及び充填−検出アノード28に対する増幅器442を含んで構成される。より詳細には、増幅器440の出力は「Vout1」端子及び抵抗器RF1を経て作用電極22に接続され、増幅器440の反転入力は「FB1」端子を経て作用電極22に接続される。同様に、増幅器442の出力は「Vout2」端子及び抵抗器RF2を経て充填−検出アノード28に接続され、増幅器442の反転入力は「FB2」端子を経て充填−検出アノード28に接続される。
【0101】
作用電極22及び充填−検出電極28に印加される選択されたアナログ電圧を生成するために、DAS420は、それぞれ第1DAC444及び第2DAC446を含んで構成されている。DAC444は、増幅器440の非反転入力に接続されており、DAC446は、増幅器442の非反転入力に接続されている。このように、増幅器440の反転入力で検出される作用電極22での電圧がDAC444によって生成される電圧と本質的に等しくなるように、増幅器440が「Vout1」端子に電圧を印加する。同様に、増幅器442の反転入力で検出される充填−検出電極28での電圧がDAC446によって生成される電圧と本質的に等しくなるように、増幅器442が「Vout2」端子に電圧を印加する。
【0102】
DAS420は、作用電極22及び充填−検出アノード28を流れる電流を測定するために、ADC448及びマルチプレクサ(MUXes)を含んで構成される。MUXes450及び452は、「Vout1」端子、「FB1」端子、「Vout2」端子及び「FB2」端子の中からADC448の入力を選択することができる。また、DAS420は、ADC448とMUXes450及び452との間に1以上のバッファ及び/又は増幅器(図示略)を含んで構成される。作用電極22を流れる電流を測定することを目的として、MUXes450及び452は、作用電極22を流れる電流に比例する抵抗器RF1にわたる電圧を測定するために、ADC448を「Voutl」端子及び「FB1」端子に接続させる。充填−検出電極28を流れる電流を測定することを目的として、MUXes450及び452は、充填−検出アノード28を流れる電流に比例する抵抗器RF2にわたる電圧を測定するために、ADC448を「Vout2」端子及び「FB2」端子に接続させる。
【0103】
上記したように、測定器200は、好ましくは、対極24及び充填−検出カソード30のそれぞれをハイインピーダンス状態に至らせるために用いられることができるスイッチ428及び430を含んで構成される。同様に、測定器200は、作用電極22及び充填−検出アノード28をハイインピーダンス状態に至らせることが可能であると好ましい。好ましい実施例において、これは「Voutl」端子、「FB1」端子、「Vout2」端子及び「FB2」端子をハイインピーダンス状態に至らせることが可能なDAS420によって達成されることができる。従って、図23に示すように、DAS420はスイッチ454,456、458及び460を効果的に含むことができる。スイッチ428,430及び454〜460は、図23に示したように、SPSTスイッチであってもよいが、例えば、単極−双投(SPDT)スイッチなどの他のタイプのスイッチを使用することもでき、及び、1対の電極(作用電極と対極対、又は、充填−検出電極対)を選択して、他の電極対をハイインピーダンス状態のままにする能力を測定器200に提供するために、当該スイッチは他の方法で配置されることができる。例えば、1対のSPDTスイッチを用いることができ、この場合、作用電極22及び充填−検出28をDAS42に接続するために、1つのSPDTスイッチが選択され、対極24及び充填−検出カソードを接地接続するために他のSPDTが選択される。その他の場合には、測定器200は電極の全てをハイインピーダンス状態に至らせるように構成することはできない。例えば、ある実施例では、測定器200はスイッチ428を含むことはできず、テストストリップがストリップコネクタ216に挿入されると、対極24は常に接地接続される。
【0104】
図24は、テストストリップ又はチェックストリップのいずれかがストリップコネクタ216に挿入された場合における測定器200とオートンコンダクトとの間における接続の機能的なアスペクトを更に詳細に示している。図24に示すように、オートオンコンダクタは、ストリップコネクタ216の接点244と接点246との間に実効抵抗Rautoを提供する。測定器200内で、接点244は、実効抵抗Rsを介して電源電圧VCCに接続されている。例えば、接点244と接続されたDAS420の「Wake-up1」端子は、実効抵抗Rsを介して内部的にVCCまでプルアップされる。従って、テストストリップ又はチェックストリップのいずれかがストリップコネクタ216に挿入されると、オートオンコンダクタが接点244及び接点246をブリッジし、オートオン抵抗に電流が流れ、及び、電圧降下が接点244と接点246との間に生じる。このオートオン電圧降下の振幅は、Rauto及びRsの相対振幅に依存する。好ましくは、オートオン電圧が測定器200において使用されるロジック低電圧(それは、約0.8ボルトであってもよい)未満であるように、RautoはRsに関連してテストストリップ及びチェックストリップのために充分に低く選ばれると好ましい。また、測定器200がオートオン電圧降下からストリップタイプを決定できるように、Rautoは、テストストリップとチェックストリップとにおいて実質的に異なっていると好ましい。例えば、Rsが約500kΩであれば、Rautoは、テストストリップにおいて約20Ωよりも小さく、チェックストリップでほぼ20kΩであるとよい。このように、マイクロコントローラ400は、接点244のロジック低電圧を検出することによって、テストストリップ又チェックストリップのいずれがストリップコネクタ216に挿入されたかを決定することができる。
【0105】
DAS420は、オートオン電圧降下を検出し、当該オートオン電圧降下を使用して、測定器200を起動し、及び、ストリップタイプ、すなわち、ストリップコネクタ216に挿入されたのがテストストリップ又はチェックストリップのいずれであるかを決定する。テストストリップの場合、DAS420は、テストストリップがストリップコネクタ216に適切に挿入されたか否かをも確認することができる。
【0106】
DAS420は、1以上のバッファ及び/又は増幅器、例えばバッファ464などを経て「Wake-up1」端子の電圧を検出する起動ロジック(wake-up logic)462を含んで構成されている。また、DAS420は、1以上のバッファ及び/又は増幅器、例えばバッファ466などを経て「Analog In1」端子での電圧を測定できるADC448をも含んで構成されている。図24に図示してないが、MUXes450及び452をバッファ466とADC448との間に接続することができる。
【0107】
ストリップがストリップコネクタ216に存在しないと、接点244(ひいては「Wake-up1」端子)は、VCCにおいて又はその近くで高電圧となる。しかしながら、テストストリップ又はチェックストリップのいずれかがストリップコネクタ216に挿入されると、前述の通り、「Wake-up1」端子でのオートオンコンダクタ電圧が下がる。起動ロジック462は、「Wake-up1」端子で電圧が低くなっていることを検出すると、これに応答して、DAS420をアクティブモードにする起動シーケンスを開始する。この起動シーケンスの一部として、起動ロジック462は、電圧調整器426をオンするために、DAS420の「Shutdown」端子にアサートする信号を当該DAS420に生成させることができる。また、起動ロジック462は、マイクロコントローラ400を起動させる信号をDAS420に生成させることができる。例えば、起動ロジック462は、DAS420の「Clock Out」端子を通じてアサートするクロック信号、DAS420の「Reset」端子を通じてアサートするリセット信号及びDAS420の「Interrupt Out」端子を介してアサートするマイクロコントローラ400を起動するための割り込み信号を、当該DAS420に生成させることがでる。
【0108】
図24に示してないが、起動ロジック462は、「Wake-up1」端子と「Wake-up2」端子での電圧を検出し、これら端子の1つの電圧低下に応じて、前述と同様に起動シーケンスを開始する。
【0109】
DAS420がアクティブモードに入ると、当該DAS420は、ストリップコネクタ216に挿入されたストリップのタイプを決定する。具体的には、ADC448が「Analog In1」端子の電圧を測定する。DAS420は、次に、測定電圧をマイクロコントローラ400に報告する。この情報に基づいて、前述の通り、マイクロコントローラ400は、次に、テストストリップシーケンス又はチェックストリップシーケンスのいずれかを開始する。いずれかのシーケンスの実行の間、マイクロコントローラ400は、ストリップがストリップコネクタ216に依然として挿入されてることを確認するために接点244での電圧を定期的に確認する。あるいは、ストリップを外すことによって接点244に生じる電圧増加についての割り込みをマイクロコントローラに通知する。
【0110】
このように、オートオンコンダクタをわたって生じるオートオン電圧降下は、測定器200の幾つかの機能を実行する。第1に、オートオン電圧は測定器200をスリープモードからアクティブモードに起動する。第2に、測定器200はオートオン電圧の振幅からストリップタイプを決定する。第3に、オートオン電圧は、測定器200がテストストリップ又はチェックストリップシーケンスのいずれかを続行しながら、ストリップが当該測定器200におけるストリップコネクタ216に依然として挿入されていることを知らせる。
【0111】
6.結論
【0112】
本発明の好ましい実施例を前述した。しかしながら、当業者であれば、請求項によって定められる本発明の真の範囲及び趣旨を逸脱することなく、その変更及び改造を実施できることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1の例示的な実施例に従った、テストストリップの平面図。
【図2】本発明の第1の例示的な実施例に従った、カバー、接着層及び試薬層を取り除いた状態を示す図1のテストストリップの平面図。
【図3】本発明の第1の例示的な実施例に従った、図1に示すライン3−3に沿ったテストストリップの横断面図。
【図4】本発明の第2の例示的な実施例に従った、テストストリップの平面図。
【図5】本発明の第3の例示的な実施例に従った、テストストリップの平面図。
【図6】本発明の第1の例示的な他の実施形態に従った、テストストリップの横断面図。
【図7】本発明の第2の例示的な他の実施形態に従った、テストストリップの横断面図。
【図8】本発明の例示的な実施例に従った、図1〜図3に示すタイプのテストストリップであって、複数の当該テストストリップに分けられるテストストリップ構造体の配列を示した平面概略図。
【図9】本発明の例示的な実施例に従った、図8に示す複数のテストストリップ構造体形成における中間段階であって、その複数のテストストリップのうちの1つの平面図。
【図10】本発明の例示的な実施例に従った、図8に示す複数のテストストリップ構造体形成における中間段階であって、その複数のテストストリップのうちの1つの平面図。
【図11】本発明の例示的な実施例に従った、図8に示す複数のテストストリップ構造体形成における中間段階であって、その複数のテストストリップのうちの1つの平面図。
【図12】本発明の例示的な実施例に従った、図8に示す複数のテストストリップ構造体形成における中間段階であって、その複数のテストストリップのうちの1つの平面図。
【図13】本発明の例示的な実施例に従った、図8に示す複数のテストストリップ構造体のうちの1つの平面図。
【図14】本発明の例示的な実施例に従った、測定器の斜視図。
【図15】本発明の例示的な実施例に従った、リムーバブルデータストレージデバイスを挿入した図14に示す測定器の斜視図。
【図16】本発明の例示的な実施例に従った、図14に示す測定器のストリップコネクタの斜視図。
【図17】本発明の例示的な実施例に従った、図15に示すリムーバブルデータストレージデバイスの分解斜視図。
【図18】本発明の例示的な実施例に従った、テストストリップ又はチェックストリップの使用方法を示すフローチャート。
【図19】本発明の例示的な実施例に従った、チェックストリップの使用方法を示すフローチャート。
【図20】本発明の例示的な実施例に従った、テストストリップの使用方法を示すフローチャート。
【図21】本発明の例示的な実施例に従った、テストストリップの使用方法を示すフローチャート。
【図22】本発明の例示的な実施例に従った、図14に示す測定器内の電子機器を単純化した電子回路図。
【図23】本発明の例示的な実施例に従った、図14に示す測定器と図1に示すテストストリップとの各電極間の電気的接続を示す回路図。
【図24】本発明の例示的な実施例に従った、図14に示す測定器と図1に示すテストストリップのオートオンコンダクタ間の電気的接続を示す回路図。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年4月21日出願の米国特許出願番号第10/420,995号の一部継続出願であり、また、2002年11月1日出願の米国特許出願番号第10/286,648号の一部継続出願であり、これらの出願は2002年4月25日出願の米国仮特許出願番号第60/375,017号、2002年4月25日出願の米国仮特許出願番号60/375、019号、2002年4月25日出願の米国仮特許出願番号60/375、020号、2002年4月25日出願の米国仮特許出願番号第60/375,054号の利益を請求するものであり、これら全ては引用によって本願に完全に組み込まれる。
【0002】
本発明は、電気化学センサに関し、より詳細には電気化学的に血糖(グルコース)値を検出するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病患者など多くの人々は日常的に血糖値を監視する必要がある。このような人々が簡易に血糖値を監視できるシステムは多数存在する。そのようなシステムは、一般的に、使用者が血液サンプルを滴下するテストストリップ及び血液サンプル中の血糖値を決定するためにそのテストストリップを「読み取る」測定器を含んでいる。
【0004】
血糖値の測定に有効な様々な技術のうち、測定に必要な血液サンプルがごく少量で済む電気化学的技術が特に望ましい。電気化学ベースのシステムにおいて、テストストリップにはグルコースオキシダーゼやメディエータなどの試薬及び電極を収容するサンプル室が一般的に含まれる。使用者が血液サンプルをサンプル室に塗布した場合、試薬がグルコースと反応し、そして測定器が電極に電圧を印可することで酸化還元反応が生じる。測定器は、この結果生じる電流を測定し、該電流に基づく血糖値を算出する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
血糖値の正確な測定は、多くの使用者の長期的な健康にとって重要であり重要視されなければならない。そのため、血糖値の測定に使用される測定器及びテストストリップには高水準の信頼性が要求される。しかしながら、サンプル量がより少量になれば、テストストリップのサンプル室及び電極の大きさも更に小さくなる。これは、言い換えると、細かな製造欠陥及び製造後の取り扱いによる損傷に対して、より影響を受けやすいテストスリップを作り出すことになる。
【0006】
従って、便利且つ確実に血糖値を測定するための特徴を備えた血糖測定システム及び方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の主要な態様は、血液サンプルを試験するためのテストストリップを提供することにある。テストストリップは、試験領域(testing zone)を定める第1基質(substrate)及び第2基質(substrate)と、前記試験領域内における血液サンプルの少なくとも1つの電気的特性を測定する少なくとも4つの電極と、該少なくとも4つの電極に電気的に接続された複数の電気接点と、前記少なくとも4つの電極から電気的に絶縁された少なくとも1つのオートオン(auto-on)電気接点と、を含んで構成されたことを特徴とする。少なくとも4つの電極は、作用電極(working electrode)、対極(counter electrode)、充填−検出アノード(fill-detect anode)及び充填−検出カソード(fill-detect cathode)を含んで構成されている。
【0008】
本発明の第2の主要な態様は、複数のテストストリップの製造方法を提供することにある。この方法では、複数のテストストリップ構造体が1枚のシート上に形成されて、そのテストストリップ構造体が複数のテストストリップに切り離される。各テストストリップ構造体は、試験領域を定めるスペーサと、複数の電極(作用電極、対極、充填−検出アノード及び充填−検出カソードを含む)と、該複数の電極に電気的に接続された複数の電気接点と、複数の電極から電気的に絶縁された少なくとも1つのオートオン電気接点と、を含んで構成されたことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
好ましい実施例において、血液サンプル中の血糖値を測定するシステムはテストストリップ及び測定器を含んでいる。また、システムは、テストストリップのロット(lot)に関連付けられたリムーバブルデータストレージデバイスを含むこともできる。リムーバブルデータストレージデバイスは、例えば、そのロットにおけるテストストリップ用の較正係数など測定器が使用するデータを保存する。さらに、システムは、測定器が適切に機能しているかを確認するために、使用者が測定器に挿入するチェックストリップを含んでもよい。
【0010】
テストストリップは、血液サンプルが試験されるサンプル室又は他の試験領域を含んで構成される。血液サンプルは、テストストリップの近端部における開口部を通じて試験領域に到達する。試験領域は、多孔性カバー又は他の通気構造を介して通気される。テストストリップは、使用者がより容易に開口部の位置決めをして血液サンプルを塗布できるように、近端部において最も狭いテーパセクションを備えるとよい。
【0011】
作用電極、対極、充填−検出アノード及び充填−検出カソードは、血液サンプルの少なくとも1つの電気的特性を測定することができるように試験領域に配置される。試薬層は、試験領域内に配置され、好ましくは、少なくとも作用電極をカバーする(覆う)とよい。試薬層は、グルコースオキシダーゼなどの酵素、フェリシアン化カリウムなどのメディエータを含んで構成されるとよい。テストストリップは、その遠端部近くに、導電性トレースを通じて電極に電気的に接続された複数の電気接点を備えている。また、テストストリップは、その遠端部近くに電極から電気的に絶縁されたオートオンコンダクタを備えている。
【0012】
測定器は、電池式であるとよく、使用されていない場合は節電のために低電力のスリープモードになることができる。テストストリップが測定器に挿入されると、テストストリップ上の電気接点は測定器内の対応する電気接点と接触する。加えて、オートオンコンダクタは測定器内の1対の電気接点をブリッジし、そのオートオンコンダクタを介した電流の流れを引き起こす。オートオンコンダクタを介した電流の流れは、測定器を起動してアクティブモードに入らせる。また、測定器は、オートオンコンダクタにわたる電圧降下を測定し、その電圧降下に基づいて、挿入されたストリップがテストストリップ又はチェックストリップのいずれであるかを識別する。この場合、測定器がチェックストリップを検出すると、チェックストリップシーケンスを実行する。一方、測定器がテストストリップを検出すると、テストストリップシーケンスを実行する。
【0013】
テストストリップシーケンスにおいて、測定器は、作用電極、対極及び充填−検出電極に低インピーダンス経路がないことを確認することで、これら電極の動作確認をする。電極が有効な場合、測定器は使用者に対してテストストリップにサンプルを滴下可能であることを表示する。次に、測定器は、作用電極と対極との間に降下−検出電圧を印可し、作用電極と対極との間の電流流れ(すなわち、血液サンプルが作用電極及び対極をブリッジするときに、当該血液サンプルを介して流れる電流流れ)を検出することで血液サンプルを検出する。試験領域内に充分なサンプルがあること及び血液サンプルが試薬層をトラバースして試薬層内の化学成分と混合したことを検出するために、測定器は、充填−検出電極間に充填−検出電圧を印可し、充填−検出電極間の発生電流のあらゆる流れを測定する。発生電流が所定時間内に充分なレベルに達すると、測定器は使用者に対して充分なサンプルが存在し及び試薬層で混合されたことを表示する。
【0014】
測定器は、血液サンプルを初めて検出した後、血液サンプルが試薬層で反応可能なように、インキュベーション(incubation)時間だけ待機する。次に、測定時間の間、測定器は作用電極と対極との間に分析評価電圧を印可し、その作用電極と対極との間に発生した発生電流流れについて1以上の測定結果を取得する。分析評価電圧は試薬層内の化学反応から酸化還元電位に近づき、発生電流は血液サンプルの血糖値と関連する。測定器は、測定電流と、テストストリップに関連付けられたリムーバブルデータストレージデバイスから予めダウンロードしてメモリに格納した較正データと、に基づいて血糖値を算出する。そして、測定器は、算出した血糖値を使用者に表示する。
【0015】
1.テストストリップ構造
【0016】
図面を参照すると、図1、図2及び図3は本発明の例示的な実施例に従うテストストリップ10を示している。テストストリップ10は、好ましくは近端部12から遠端部14まで伸長する一般的なフラットストリップ形状である。テストストリップ10はハンドリング容易なサイズに設定されると好ましい。例えば、テストストリップ10は、その長さ(すなわち、近端部12から遠端部14までの長さ)が約1 3/8インチ及び幅が約5/16インチである。また、近端部12の幅を遠端部14の幅よりも狭くすることができる。すなわち、テストストリップ10は、その全幅が近端部12に向けて先細になるテーパセクション16を含んで構成され、遠端部14よりも狭い近端部12を設ける。後述するように、使用者はテストストリップ10の近端部12の開口部に血液サンプルを滴下する。このように、テストストリップ10にテーパセクション16を備えさせ、及び、遠端部14よりも狭い近端部12を設けることで、使用者が、血液サンプルを塗布する際に開口部を位置決めする助けとなり、血液サンプルを失敗なくテストストリップ10に塗布することがより容易となる。
【0017】
図3に最もよく示されているように、テストストリップ10は一般的に層状の構造である。最下層から上層への機構において、テストストリップ10はその全長にわたって伸びるベース層18を含んで構成されている。ベース層18は、絶縁体で構成され、テストストリップ10に構造上の支持を提供する充分な厚みを持たせてあると好ましい。例えば、ベース層18は厚さ約0.014インチのポリエステルであるとよい。
【0018】
ベース層18上に配されているのは導電性パターン20である。導電性パターン20は、近端部12近くのベース層18上に配された複数の電極と、遠端部14近くのベース層18上に配された複数の電気接点と、その電気接点と電極とを電気的に接続する複数の導電性トレースと、を含んで構成されている。好ましい実施例において、複数の電極は、作用電極22と、第1セクション25と第2セクション26とを含んで構成された対極24と、充填−検出アノード28と、充填−検出カソード30と、を含んで構成されている。これに対応して、電気接点は、作用電極接点32と、対極接点34と、充填−検出アノード接点36と、充填−検出カソード接点38と、を含んで構成されている。導電性トレースは、作用電極22を作用電極接点32に電気的に接続する作用電極トレース40と、対極24を対極接点34に電気的に接続する対極トレース42と、充填−検出アノード28を充填−検出アノード接点36に電気的に接続する充填−検出アノードトレース44と、充填−検出カソード30を充填−検出カソード接点38に電気的に接続する充填−検出カソードトレース46と、を含んで構成されている。また、好ましい実施例において、導電性パターン20は、遠端部14近くのベース層18上に配されたオートオンコンダクタ48を含んで構成されている。
【0019】
誘電層50は導電性パターン20の一部を覆うためにベース層18に配置されている。好ましくは、誘電層50は、薄層(例えば、厚さ約0.0005インチ)であって、シリコン、アクリル又はこれらの混合物などの電気的絶縁体で構成されるとよい。また、誘電層50は、親水性であるであると好ましい。さらに、誘電層50は、作用電極22、対極24、充填−検出アノード28、充填−検出カソード30及び導電性トレース40〜46の一部を覆い、好ましくは電気接点32〜38乃至オートオンコンダクタ48は覆わないようにするとよい。例えば、誘電層50は、近端部12から伸長するスロット52を除き、接点32及び接点34間近のラインから近端部12に至まで、ベース層18及び該ベース層18上における導電性パターン20を実質的に全て覆うことができる。このように、スロット52は、作用電極22の露出部54、対極24のセクション25、セクション26の露出部56、露出部58、充填−検出アノード28の露出部60及び充填−検出カソード30の露出部62を画定することができる。図2に示したように、充填−検出電極28、30の露出部60、62を、作用電極22及び対極のセクション25、26の露出部54、56、58よりも幅広にして設けることで、スロット52は異なるセクションにおいて異なる幅を備えることができる。
【0020】
テストストリップ10における次層は、誘電層50上に配された誘電スペーサ層64である。誘電スペーサ層64は、例えば、ポリエステルなどの電気的絶縁体で構成することができる。誘電スペーサ層64は、誘電層50と同様の長さ及び幅を有することができるが、例えば、厚さ約0.005インチよりも大幅に厚くてもよい。加えて、スペーサ64は、スロット52におおよそ位置合わせされたスロット66を含むことができる。このスロット66は、作用電極22、対極24、充填−検出アノード28及び充填−検出カソード30の露出部54〜62がスロット66に位置するように、近端部12に位置合わせされて、近端部68から遠端部70へと伸長している。
【0021】
カバー72は、近端部74及び遠端部76を含んで構成され、接着層78によって誘電スペーサ層64に取り付けられているとよい。カバー72は、例えば、ポリエステルなどの電気的絶縁体で構成され、約0.004インチの厚みを有する。カバー72は透明であると好ましい。
【0022】
接着層78は、ポリアクリル酸又は他の接着剤を含有することができ、約0.0005インチの厚みを有している。接着層78は、スロット66の各対側に対するスペーサ64上に配置された第1セクション80と第2セクション82とを含んで構成されている。セクション80とセクション82との間の接着層78における開路(break)84は、スロット66の遠端部70から開口部86まで伸長している。カバー72は、該カバー72の近端部74が近端部12に位置合わせされ、該カバ−72の遠端部76が開口部86に位置合わせされて接着層78上に配置されている。このようにしてカバー72は、スロット66と開路84とを覆う。
【0023】
スロット66は、ベース層18及びカバー72とともに、測定用の血液サンプルを受け入れるテストストリップ10のサンプル室88を画定する。スロット66の近端部68は、血液サンプルをサンプル室88に案内するサンプル室88の第1開口部を画定する。スロット66の遠端部70において、開路84は、サンプル室88の第2開口部を画定し、サンプル室88にサンプルが入力された際にそのサンプル室88を通気する。スロット66は、血液サンプルの入力があると、スロット66の近端部68に滴下された血液サンプルを毛管作用によってサンプル室88内に引き込み及び保持するとともに、開路84が開口部86を通じてサンプル室88を通気するように、その大きさ(寸法、外形)が設定される。さらに、毛管作用によってサンプル室88に入力される血液サンプルが約1マイクロリットル又はそれ以下であるように、スロット66はその大きさが設定される。例えば、スロット66は、約.140インチの長さ(すなわち、近端部68から遠端部70までの長さ)、約.060インチの幅、及び、約.005インチの高さ(これは、誘電スペーサ層64の厚さによって実質的に定められる)を有することができる。しかしながら、他の寸法外形でも適用可能である。
【0024】
試薬層90は、サンプル室88に配されている。好ましくは、試薬層90は、作用電極22の露出部54を少なくとも覆うとよい。また、さらに好ましくは、試薬層90は、対極24の露出部56及び露出部58に少なくとも接触しているとよい。試薬層90は、血液サンプル中の血糖値を電気化学的に決定可能なように化学成分を含有する。すなわち、試薬層90は、例えば、グルコースオキシダーゼなどのグルコースのための酵素特性や、フェリシアン化カリウムなどのメディエータを含有することができる。さらに、試薬層90は、他のコンポーネント、例えば、緩衝物質(リン酸カリウム等)、高分子バインダー(ヒドロキシプロピル−メチル−セルロース、アルギン酸ナトリウム、微結晶性セルロース、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシエチルセルロース及び/又はポリビニルアルコール等)、及び、界面活性剤(Triton X-100又はSurfynol 485)等を含有することができる。
【0025】
これらの化学成分とともに、試薬層90は、以下のように血液サンプル中のグルコースと反応する。グルコースオキシダーゼは、グルコースをグルコン酸に酸化し、フェリシアニド(ferricyanide)をフェロシアニド(ferrocyanide)に還元する反応を始める。適切な電圧が作用電極22に印可されると、対極24と関連して、フェロシアニドがフェリシアニドに酸化され、これによって血液サンプル中のグルコース濃度と関連した電流が生成される。
【0026】
図3に示したように、テストストリップ10における様々な層の配列は、テストストリップ10を異なるセクションで異なる厚みを有する結果にすることができる。特に、ベース層18上の各層のうち、テストストリップ10の厚みのほとんどは、スペーサ64の厚みによってもたらされている。従って、遠端部14に最も近いスペーサ64の端をテストストリップ10の肩部92として定めることができる。肩部92は、該肩部92と遠端部14との間に伸びるテストストリップ10の薄部94と、肩部92と近端部12との間に伸びる厚部96とを定めることができる。測定器と電気的に接続するために用いられるテストストリップ10の要素、すなわち、電気接点32〜38及びオートオンコンダクタ48を全て薄部94に位置させることができる。従って、後述するが、測定器のコネクタは、厚部96は受用しないが、薄部94は受用することが可能なように、そのサイズが設定されている。これによって、使用者には正確な端部、すなわち薄部94の遠端部14を測定器100に挿入するうえでの指示が与えられ、使用者が間違った端部、すなわち厚部96の近端部12を測定器100に挿入することを防止することができる。
【0027】
図1〜図3にテストストリップ10の好適な構造を示したが、他の構造を使用することも可能である。例えば、図1〜3に示した構造では、対極24を2つのセクション、すなわち、作用電極22の近端側の第1セクション25と、作用電極22の遠端側の第2セクション26と、を含んで構成している。さらに、対極24の露出部56と露出部58とを結合した領域が、作用電極22の露出部54の領域より大きいと好ましい。この構成において、対極24は、作用電極22を有益に電気的にシールドすべく、効果的に作用電極22を取り囲む。他の構造においては、対極24は1つのセクション、例えば第1セクション25だけを有するようにすることもできる。
【0028】
充填−検出電極28及び30の異なる配置を適用することもできる。図1〜図3に示した構造は、充填−検出電極28及び30を並べた配置である。他の方法として、充填−検出電極28及び30を順次的な配置とすることができ、これによればサンプルは、サンプル室88を通じて遠端部70へ流れ、第1の(アノード又はカソード)充填−検出電極と接触し、その後、他方の充填−検出電極に接触する。加えて、図2に示した実施例では充填−検出電極28及び30の露出部60及び62は、作用電極22及び対極のセクション25、26の露出部54、56及び58よりも幅が広いが、他の実施例では、それら露出部は、幅が同じであるか又はより狭い構成であってもよい。
【0029】
また、それら露出部は各々と関連して配置されるが、充填−検出電極28及び30は試薬層90の遠位側に位置されることが好ましい。このようにして、サンプルが、サンプル室88を通じて遠端部70へ流れ、充填−検出電極28及び30に到達するまでには、当該サンプルは試薬層90をトラバースする。この配列は、充填−検出電極28及び30が、サンプル室88に充分な血液サンプルが存在するか否かを検出するのみならず、血液サンプルが試薬層90の化学成分と充分に混合されるか否かを検出可能にするという点でも有益である。従って、図1〜図3に示した構造のように、試薬層90が作用電極22を覆う状態が好ましい場合には、充填−検出電極28及び30を作用電極22の遠位側に位置させるとよい。しかしながら、他の構造が用いられてもよい。
【0030】
テストストリップにおけるサンプル室の異なる構造も可能である。例えば、図4に示したテストストリップ100の他の実施例では、サンプル室は接着層の開路を用いずに通気される。テストストリップ100において、スペーサ64はサンプル室を定める通気スロット102を含んで構成されている。このスロット102は、相対的に一定の幅を有する幅広部104と、丸みを帯びた形状を有するテーパ部106と、同様に丸みを帯びた形状を有する幅狭部108と、を含んで構成されている。作用電極及び対極の露出部は、幅広部104とテーパ部106の近端部に位置させることができ、充填−検出電極の露出部は、テーパ部106の遠端部に位置させることができる。カバー72は、幅狭部108の遠端部を除いてスロット102をカバーするようにスペーサ64(例えば、接着剤を使用して)に取り付けられている。このようにして、幅狭部108はスロット102によって定められたサンプル室を通気することができる。加えて、テーパ部106の丸みを帯びた形状は、サンプルが、よりスムーズに、そして、一様にサンプル室中を流れることを可能にする。
【0031】
一方、通気スロットは丸みを帯びた形状を有する必要はない。例えば、図5に示したテストストリップ110の他の代替実施例では、サンプル室は同様に接着層の開路を用いずに通気される。テストストリップ110において、スペーサ64はサンプル室を定める通気スロット112を含んで構成される。このスロット112は、相対的に一定の幅を有する幅広部114と、相対的に一定の幅を有する幅狭部116と、を含んで構成される。作用電極、対極及び充填−検出電極の露出部は幅広部114に全て位置させることができ、そのうち充填−検出電極の露出部は、幅広部114の遠端部に位置させられている。カバー72は、幅狭部116の遠端部を除いてスロット112を覆うためにスペーサ64(例えば、接着剤を使用して)に取り付けられている。このようにして、幅狭部116はスロット112によって定められたサンプル室を通気することができる。
【0032】
接着層における開路を使用するか又はスペーサの露出部におけるスロットを部分的に除去することで、サンプル室又は試験領域を通気する前述のアプローチでは、実質的に通気性のないシート材としてのカバー72が提供される。例えば、3M(登録商標)ポリエステルフィルム9971や、血液サンプルが接触する面に親水性コーティングが施されたポリエステルフィルム等がカバー72として使用される。この代替のアプローチとしては、試験領域を覆うように配置される多孔性カバーを用いる。この代替のアプローチでは、試験領域は、多孔性カバーを通じて通気されるので、試験領域を通気する他の構造が不要となる。
【0033】
この場合、多孔性カバーは、メッシュ状で提供される。その一例を図6に示す。図6は、スペーサ64のスロットによって画定された試験領域119を覆って位置させられたメッシュ118を有したテストストリップの横断面図を示している。また、スペーサ64のスロットは、血液サンプルが毛管作用によって試験領域119に引き込まれる、テストストリップの近端部における開口を画定する。メッシュ118は、例えば、接着剤によってスペーサ64に取り付けられる。一実施例において、メッシュ118は、18〜105ミクロン範囲の孔径を有しており、その厚さは、60〜90ミクロン範囲である。また、メッシュ118は、親水性であるとよい。さらに、メッシュ118は、例えば、ドクセートなどの清浄液(洗浄液)に浸されたポリエステル、ポリアミド又はポリプロピレン等である。
【0034】
メッシュ118の使用は、通常、要求される他の通気構造を排除することができるので、テストストリップの製造において、特定の態様を簡略化することができる。特に、血液サンプルが試験領域119に入力されときに、試験領域119はメッシュ118を通じて通気される。また、場合によっては、空気と同様に、血液サンプルがメッシュ118を通って流れる。このため、使用者は、テストストリップの近端部における開口を介した正常な使用ではなく、メッシュ118を介して血液サンプルを適用する場合があり得る。しかし、このような血液サンプルの適用は、グルコースの読み取りにおいて不正確な結果を生じさせる。加えて、メッシュ118は、図6に示したように、試験領域119の端部を密閉することができなので、血液はメッシュ118を介して移動する。
【0035】
他のアプローチとして、穿孔シートを多孔性カバーとして使用するようにしてもよい。その一例を図7に示す。図7は、スペーサ64のスロットによって画定された試験領域121を覆って位置させられた穿孔シート120を有したテストストリップの横断面図を示している。また、スペーサ64のスロットは、血液サンプルが毛管作用によって試験領域121に引き込まれる、テストストリップの近端部における開口を画定する。穿孔シート120は、例えば規則的配列構造によって形成された複数の孔122を含んで構成されている。一実施例では、孔112は、各々の直径が約0.005インチであり、それぞれの中心から中心までの距離が約0.020インチである。穿孔シート120は、例えば親水性の3M(登録商標)ポリエステルフィルム9971等の孔のないシート材を出発物として、レーザドリル加工や機械式パンチングなどによって孔122を形成することで形成される。そして、穿孔シート120は、血液サンプルと接触する面が親水性であると好ましい。
【0036】
血液サンプルが試験領域121に入力されるとき、試験領域121は穿孔シート120の孔122を介して通気される。このような穿孔シート120の使用は、メッシュ118の使用と同様に、他の通気構造を排除することができる。また、穿孔シート120は、メッシュ118を超える特定の利点を提供する。例えば、穿孔シート120は、試験領域121の端部を密閉することができるので、血液サンプルが漏れ出る可能性を減少させる。加えて、穿孔シート120の使用は、メッシュ118の使用に比べて、誤った手段、例えば、テストストリップの近端部の開口ではなく多孔性カバーを介して血液サンプルが適用されないようにすることができる。
【0037】
テストストリップの他の構造では、例えば、電極及びサンプル室の少なくとも一方の他の構造を用いることもできる。
【0038】
2.テストストリップの製造方法
【0039】
図8〜図13は、テストストリップを製造する例示的な方法を示している。なお、これら各図は、図1〜図3に示したテストストリップ10の製造ステップを示しているが、同様のステップを、例えば図4〜図7に示したテストストリップなど他の構造を有するテストストリップの製造に用いることも可能である点を理解すべきである。
【0040】
図8を参照すると、複数のテストストリップ構造体126を1枚のシート上の全体に含んで構成された集積構造124で形成することによって、複数のテストストリップ10を大量生産することができる。複数のテストストリップ構造体126は、複数の列128(例えば6列)から構成されたアレイで配列される。当該複数の各列128は複数のテストストリップ構造体126を含んでいる(例えば各列毎に50個のテストストリップ構造体)。次に、テストストリップ構造体126を各々切り離すことによって複数のテストストリップ10が形成される。好適な分離工程において、テストストリップ構造体126の各列128は、まず、集積構造124からパンチアウトされる。このパンチング(punching)工程はテストストリップ10の幾つかの外形を提供することができる。例えば、テストストリップ10のテーパセクション16におけるテーパ形状は、このパンチング工程において形成されることができる。次に、スリッティング(slitting)工程では、各列128のテストストリップ構造体126を個々のテストストリップ10に切り離すことがきる。
【0041】
図9〜図13では、テストストリップ構造体126を形成する好適な方法の様々なステップを例示するために、テストストリップ構造体(部分的に又は完全に組み立てられている)を1つのみ示している。この好適な手法において、集積構造124におけるテストストリップ構造体126は、完成品としたテストストリップ10のベース層18となるマテリアルシート上に全て形成されている。完成したテストストリップ10の他の構成要素は、次に、テストストリップ構造体126を形成するために、ベース層18上に各層を形成して組み立てられる。図9〜図13のそれぞれには、総合的な製造工程において形成されるテストストリップ10の外形を破線で示している。
【0042】
図9に示したように、製造工程は、ベース層18上に第1導電性パターン130を複数のテストストリップ構造体毎に形成することから始めるとよい。第1導電性パターン130は、電気接点32〜38、導電性トレース40〜42及びオートオンコンダクタ48を含むことができる。この第1導電性パターン130は、ベース層18上に第1導電性インクをスクリーン印刷することによって形成されることができる。第1導電性インクは、例えば、メタリックシルバーなどの導電性材料の粒子を含有する強粘液として提供されるとよい。例えば、好適な第1導電性インクは、約30〜60重量パーセント(weight %)のメタリックシルバー、約5〜10重量パーセントのランプブラック(lamp black)、約30〜60重量パーセントのジプロピレン・グリコール・モノメチル・エーテル、及び、他の構成要素の組成を有しており、これらはデラウェア州、ウィルミントンにあるE. I. DuPont de Nemours & Co.から「Membrane Switch Composition 5524」として入手可能である。
【0043】
次に、図10に示したように、第2導電性パターン132がベース層18上に形成される。第2導電性パターン132は、作用電極22と、対極24の第1セクション25及び第2セクション26と、充填−検出アノード28と、充填−検出カソード30と、を含んで構成される。第2導電性パターン132は第2導電性インクをベース層18上にスクリーン印刷することによって形成される。第2導電性インクは、例えばグラファイトなどの導電性材料の粒子を含有する強粘液として提供されるとよい。第2導電性インクは、第1導電性インクとは異なる組成を有することができる。特に、第2導電性インクは、実質的に試薬層90の化学反応を干渉可能な遊離材、例えば銀等であるとよい。好適な第2導電性インクは、約10〜20重量パーセントのグラファイト、約5〜10重量パーセントのランプブラック、60重量パーセント以上のエチレン・グリコール・ジアセテート、及び、約5〜10重量パーセントのポリマーなどの組成を有しているとよく、これはデラウェア州、ウィルミントンにあるE. I. DuPont de Nemours & Co.から「E100735-111」として入手可能である。
【0044】
次に、図11に示したように、第1導電性パターン130及び第2導電性パターン132の部分を覆うために、ベース層18上に誘電層50が形成される。図11に示すように、誘電層50はベース層18上に形成された多数のテストストリップ構造体を覆うために、完成品としてのテストストリップ10の外形を越えて拡張されているとよい。また、図11に示すように、誘電層50は、作用電極22、第1対極セクション25、第2対極セクション26、充填−検出アノード28及び充填−検出カソード30の露出部54、56、58、60及び62を画定するスロット134を含んで構成される。テストストリップ10のスロット52は、それぞれのテストストリップ構造体が各テストストリップに分離された後、テストストリップ10に残存するスロット134部分と一致する。この点に関し、スロット134は、層50によって露出させた検出−充填電極28及び30の部分を層50によって露出させた作用電極22及び対極24の部分よりも幅広とした幅広部135を含むことができる。
【0045】
好適な手法において、誘電層50は親水性であるとよく、スクリーン印刷によって誘電性材料が加えられる。好適な誘電性材料は、例えば、デラウェア州、ウィルミントンにあるE. I. DuPont de Nemours & Co.から入手可能な「Membrane Switch Composition 5018」等のシリコンとアクリル化合物との混合物などを含有するとよい。もちろん、他の材料を用いることもできる。
【0046】
次のステップでは、図12に示したように、誘電スペーサ層64が誘電層50に積層される。スペーサ64は多くの異なる方法で誘電層50に積層されることができる。例示的な手法において、スペーサ64は充分に大きいシートとして提供され、多数のテストストリップ構造体を覆うために適切に成形される。この手法では、スペーサ64の底面は誘電層50及びベース層18への接着を容易にするために接着剤でコーティングされる。また、スペーサ64の上面の一部は、各テストストリップ10に接着層78を提供するために接着剤で被覆されることができる。スペーサ層64を誘電層50に取り付ける前に、各種スロットがスペーサ64に切り込まれ又はパンチアウトされることができる。例えば、図12に示したように、スペーサ64は、各テストストリップ構造体に対するスロット136及び多数のテストストリップ構造体を超えて広がるスロット138を有することができる。加えて、スペーサ64は、各テストストリップ構造体の形成において、接着部140及び接着部142、それらの間の開路84を含んで構成される。スペーサ64は、次に、図12に示すように、ベース層18上に配置されてベース層18及び誘電層50に積層される。スペーサ64が適切にベース層18に配置されると、露出した電極部54〜62はスロット136を通じてアクセス可能になる。従って、テストストリップ10のスロット66は、複数のテストストリップ構造体が各テストストリップに分離された後、テストストリップ10に残されたスロット136の一部と一致する。同様に、積層された後、スペーサ64のスロット138は、接点32〜38及びオートオンコンダクタ48を露出させたままの状態にする。
【0047】
また、スペーサ64を他の手法で適用することも可能である。例えば、スペーサ64はベース層18及び誘電層50へ射出成形されることができる。スペーサ64は、また、適切な厚み、誘電性材料層を連続してスクリーン印刷することによって、例えば約0.005インチの適切な厚みに積層されてもよい。誘電性材料は、例えば、デラウェア州、ウィルミントンにあるE. I. DuPont de Nemours & Co.から入手可能な「Membrane Switch Composition 5018」等のシリコンとアクリル化合物との混合物を含有するとよい。もちろん、他の材料を用いることができる。
【0048】
次に、試薬層90が各テストストリップ構造体に適用される。好適な手法において、試薬層90は、水性組成物(aqueous composition)を作用電極22の露出部54上にマイクロピペッティングし、試薬層90を形成するためにその水性組成物を乾燥させることで適用される。好適な水性組成物は、約6pHで、2重量パーセントのポリビニルアルコール、0.1Mのリン酸カリウム、0.05重量パーセントのTriton X-100、0.15Mのカリウム・フェリシアニド、0.7%のヒドロキシエチルセルロース(例えばNATROSOL(登録商標))、1mLあたり約2500ユニットのグルコースオキシダーゼなどを含有するとよい。あるいは、他の手法として、例えばスクリーン印刷等を、試薬層90を形成するために用いられる組成物を塗布する際に使用してもよい。
【0049】
次に、透明カバー72が接着層78に取り付けられる。図13に示すように、カバー72(透明として示している)は多数のテストストリップ構造体122を覆うのに充分に大きくされるとよい。このカバー72を取り付けることで、複数のテストストリップ構造体122の形成が完了する。複数のテストストリップ構造体122は、上記の通り、複数のテストストリップ10を形成するために、その後、各々切り離される。
【0050】
3.測定器及びリムーバブルデータストレージデバイス
【0051】
血液サンプル中の血糖値を測定するために、例えばテストストリップ10、テストストリップ100又はテストストリップ110等のテストストリップが、図14及び図15に示すような測定器200とともに使用される。測定器200は、使用者がグルコース測定を実行している間、当該使用者の手で持ちやすいサイズ及び形状を有すると好ましい。測定器200は、正面202、背面204、左側面206、右側面208、上面210及び底面212を含んで構成されている。正面202は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)等のディスプレイを含んで構成されている。底面212は、測定用のテストストリップが挿入されるストリップコネクタ216を含んで構成されている。
【0052】
測定器200の左側面206は、後述するように、リムーバブルデータストレージデバイス220が挿入されるデータコネクタ218を含んで構成されている。上面210は、使用者が測定器200を制御するボタン等の1以上の使用者制御部222を含んで構成されている。右側面208は、シリアルコネクタ(図示略)を含んで構成されている。
【0053】
図16にストリップコネクタ216の更に詳細な好ましい実施例を示す。ストリップコネクタ216は、テストストリップを受用する開口を広げた開口部231とともに、通路230を含んで構成されている。タブ232及び234は、それぞれ所定の高さで通路230の左右の側から内側に向かって張り出している。この所定の高さは、近端部12(厚部96)ではなく遠端部14(薄部94)をストリップコネクタ216に挿入可能なように設定される。このようにすることで、使用者がテストストリップをストリップコネクタ216に不適切に挿入してしまうことを防止することができる。
【0054】
電気接点236及び238は通路230中においてタブ232及び234の後方に配置されており、電気接点240〜246は通路230中において電気接点236及び238の後方に配置されている。テストストリップの遠端部14がストリップコネクタ216に適切に挿入されると、テストストリップと測定器200との電気的接続のために、電気接点236〜246が電気接点32〜38及びオートオンコンダクタ48に接触する。具体的には、電気接点236及び238が電気接点32及び34にそれぞれ接触することで、作用電極22及び対極24を測定器200に電気的に接続する。電気接点240及び242が電気接点36及び38にそれぞれ接触することで、充填−検出電極28及び30を測定器200に電気的に接続する。最後に、電気接点244及び246がオートオンコンダクタ48を測定器200に電気的に接続する。
【0055】
測定器200は、当該測定器200で測定した血液サンプルの血糖値を算出するためにリムーバブルデータストレージデバイス220からのデータを使用することができる。具体的には、データストレージデバイス220は、テストストリップのロットと関連し、測定器200がそのロットに対して使用可能な1以上のパラメータを蓄積することができる。例えば、データストレージデバイス220は、測定器200が電流測定結果の平均値から血糖値を算出するために使用できる1以上の較正パラメータを蓄積することができる。較正パラメータは温度補正を含むことができる。また、データストレージデバイス220は、例えば、テストストリップのブランドを識別するコード、使用される測定器のモデルを識別するコード及びテストストリップのロットの使用期限等、テストストリップのロットや測定器に関連した他の情報を蓄積することができる。さらに、データストレージデバイス220は、後述するように、例えば、充填タイマー及びインキュベーションタイマーの継続時間、「降下レベル(Drop Level)1」、「充填(Fill)」及び「分析評価励起レベル(Assay Excitation Level)2」電圧に対して使用するための電圧、電流測定結果を作成する数に関する1以上のパラメータ、及び、測定器がどのような手法によって電流測定結果を平均化するかを特定する1以上のパラメータ等、測定器200が使用するその他の情報も蓄積することができる。さらにまた、データストレージデバイス220は、蓄積データ又は蓄積データの一部分についての1以上のチェックサムを蓄積することもできる。
【0056】
好適なアプローチにおいて、テストストリップの所定ロットが測定器200で使用される前に、まず、当該テストストリップの所定ロットに関連付けられたリムーバブルデータストレージデバイス220が、データコネクタ218に挿入される。次に、測定器200は、テストストリップがストリップコネクタ216に挿入されると、データストレージデバイス220から関連データを内部メモリに読み込む。測定器200は、その内部メモリに格納された関連データによって、所定ロット中のテストストリップを使用し血糖値を測定するので、データストレージデバイス220をもはや必要としない。従って、リムーバブルデータストレージデバイス220を測定器200から取り外し、それを他の測定器をコード化するために用いることができる。データストレージデバイス220が測定器200において保持されている場合、測定器200はデータストレージ200にアクセスせず、代わりに測定器200の内部メモリに格納されたデータを使用することができる。
【0057】
図17を参照すると、リムーバブルデータストレージデバイス220は、回路基板252がマウントされる、つまりキャリア254にマウントされるメモリチップ250を含んで構成される。メモリチップ250は所定フォーマットでデータを格納する。好ましくは、メモリチップ250は、電力が供給されていない場合にも蓄積データを保持する不揮発性メモリであるとよい。例えば、メモリチップ250は電気的消去(書き換え)・プログラム可能型読取専用メモリ(EEPROM)であるとよい。このようなEEPROMは、使用のライフサイクルを超えても摩滅しないので、通常、例えば、100万回のライトサイクル、あるいは、それ以上、何度も書き換え可能である。
【0058】
メモリチップ250は、回路基板252上の複数の電気接点と電気的に接続される。これらの電気接点は、電圧供給接点256、接地接点258、データ入出力接点260及びクロック接点262を含んで構成される。このようにして、適切な電圧が電圧供給256に印加されると、接地接点258と関連して、データ入出力接点260及びクロック接点262を用いてメモリチップ250からデータを同期読み取り又は同期書き込みすることができる。後述するように、接地接点258は高信頼性が要求されるので、他の電気接点256、260及び262よりも長い構成であるとよい。
【0059】
キャリア254は、プラスチックなどの材料から形成され、遠端部264及び近端部266を含んで構成される。遠端部264は、データコネクタ218に挿入されることを目的とする。近端部266は、リムーバブルデータストレージデバイス220をデータコネクタ218に挿入し又は取り外せるように、使用者の指がグリップ可能なフランジ268を含んで構成されている。キャリア254は、電気接点256〜262にアクセス可能な開口部270を含んで構成されている。これによって、データストレージデバイス220が適切にデータコネクタ218に挿入されると、回路基板252上の電気接点256〜262が、データコネクタ218内において、それぞれに対応する電気接点272〜278(図14参照)に接触する。このように、測定器200は、メモリチップ250に格納されたデータを読み込むために、当該メモリチップ250と電気的に接続される。
【0060】
リムーバブルデータストレージデバイス220を一方向からのみ、コネクタ218へ挿入可能なよう、キャリア254とデータコネクタ218を「適合」させることができる。例えば、キャリア254はくさび形コーナー282を含んで構成され、コネクタ218はくさび形コーナー282を受用するくさび形開口部284を含んで構成される。その結果、くさび形コーナー282がくさび形開口部284に受用されて適合した場合、データストレージデバイス220はデータコネクタ218にかみ合うことができる。この適合は、使用者に適当な挿入の方向付けに関する指示を与えることができ、不適当な挿入によって生じる損傷を防止する上で有益となりうる。
【0061】
信頼性を高めるリムーバブルデータストレージデバイス220の他の特徴は、接地接点258の際だった長さにある。具体的には、回路基板252は、接地接点258が他の電気接点256,260及び262よりも遠端部264(すなわちデータコネクタ218に挿入される端部)に向けて伸長し近接するようにキャリア254にマウントされている点にある。その結果、接地接点258は、データストレージデバイス220がデータコネクタ218に挿入されると、測定器200との電気的接触を形成する最初の電気接点となり、データストレージデバイス220が取り外されると、測定器200との電気的接触を切断する最後の電気接点となる。これは、例えば、当該メモリチップ250が接地接点258を通じて接地されないで電圧供給接点256を通じて測定器200から電源が供給される場合など信頼性を欠き意図しない操作モードにおいて、メモリチップ250に電力が供給されることを防止する。
【0062】
4.測定器とテストストリップの使用
【0063】
節電を目的として、測定器200はほとんどの時間、低消費電力「スリープ」モードであることが好ましい。しかしながら、特定の状況が発生すると、測定器200は「起動(wake up)」し、アクティブモードに入る。例えば、データ転送のためにシリアルポート416の使用を試みる場合など、使用者制御部222における1以上の動作によって測定器200にウェイクアップを生じさせることが可能である。好ましくは、テストストリップ(例えば、テストストリップ10、テストストリップ100又はテストストリップ110)又はチェックストリップを測定器200に挿入すると、当該測定器200が起動するとよい。測定器200は、次に、挿入されたストリップがテストストリップ又はチェックストリップのいずれであるかを決定する。この過程を図18のフローチャートに例示する。
【0064】
まず、ステップ300に示したように、測定器200は低消費電力スリープモードにある。次に、ステップ302に示したように、テストストリップ又はチェックストリップのいずれかが測定器200に挿入される。この挿入により、ストリップ上のオートンコンダクタ(例えば、テストストリップ10上のオートンコンダクタ48)が測定器200におけるオートオン接点244及び246をブリッジする。その結果、オートオン電流がオートオン接点244及び246を通じて、及びオートオンコンダクタを通じて流れ始める。このオートオン電流は、ステップ304に示したように、測定器200を起動させてアクティブモードに入らせる。
【0065】
このアクティブモードでは、ステップ306に示したように、測定器200はオートオンコンダクタにわたる電圧降下を測定する。好適なアプローチにおいて、テストストリップのオートオンコンダクタの抵抗は、チェックストリップと大きく異なっている。従って、測定器200は、オートオン電圧降下に基づいて挿入されたストリップがテストストリップ又はチェックストリップのいずれであるかを決定することができる。例えば、テストストリップのオートオンコンダクタに、チェックストリップよりも実質的に低い抵抗を備えさせるようにする。これにより、ステップ308に示したように、測定器200はオートオン電圧降下を所定の閾値と比較することができる。オートオン電圧降下が所定の閾値未満の場合、ステップ310に示したように、測定器200はストリップをテストストリップと識別し、テストストリップシーケンスを実行する。一方、オートオン電圧降下が所定の閾値以上の場合、ステップ312に示したように、測定器200は、ストリップをチェックストリップと識別し、チェックストリップシーケンスを実行する。
【0066】
図19のフローチャートは好適なチェックストリップシーケンスを示している。チェックストリップは、テストストリップの電気接点32〜38と同様の電気接点(オートオンコンダクタを加える)をその遠端部近くに含んで構成され、そのチェックストリップ上の電気接点は、テストストリップとは異なり実際の電極よりもむしろ所定抵抗の抵抗器に接続される。従って、チェックストリップが測定器200に挿入されると、電気接点236及び238は、チェックストリップの第1抵抗器を通じて実際に接続されたチェックストリップ上の接点である「作用電極」及び「対極」に接触する。同様に、電気接点240及び242はチェックストリップの第2抵抗器を経て実際に接続されたチェックストリップ上の「充填−検出」接点に接触する。
【0067】
図19に要約されるように、測定器200は、測定値が許容範囲内にあるか否かを決定するために、チェックストリップの第1抵抗器及び第2抵抗器を流れる電流を測定することによってチェックストリップシーケンスを実行する。測定した電流値が許容範囲にない場合、測定器200に問題が生じている可能性がある。従って、測定器200は、ステップ314に示したように、まず、第1抵抗器を通じて測定電流値を得るために、作用電極236及び対極238を流れる電流を測定する。測定器200は、次に、ステップ316に示したように、その測定電流値が許容範囲内であるか否かを決定する。測定電流値が許容範囲内にない場合、ステップ318に示したように、測定器200は障害状態を表示する。当該障害状態を表示するために、測定器200はディスプレイ214にメッセージ又はアイコンを表示及び使用者が識別可能な幾つかの他の障害指示の少なくとも一方を提供することができる。
【0068】
第1抵抗器を通じて測定した電流が許容範囲内にある場合、測定器200は、次に、ステップ320に示したように、第2抵抗器を通じて測定電流値を得るために、充填−検出電極接点240及び242を流れる電流を測定する。次に、ステップ322に示したように、測定器200はその測定電流値が許容範囲内にあるか否かを決定する。測定電流値が許容範囲内にない場合、ステップ324に示したように、測定器200は障害状態を表示する。測定電流値が許容範囲内にある場合、測定器200は操作可能状態を表示する。例えば、測定器200はディスプレイ214に「OK」のアイコンを表示するとよい。
【0069】
上記したように、測定器200がテストストリップを検出した場合、測定器200は次にテストストリップシーケンスを実行する。テストストリップシーケンスの第一段階として、測定器200は作用電極、対極及び充填−検出電極間のインピーダンスが充分に高いか否かを決定することによって、それら電極の動作確認をする。この工程が図20のフローチャートに図示されている。
【0070】
ステップ328に示したように、測定器200は、例えば「ドロップレベル1(Drop Level 1)」電圧などの所定の第1動作確認電圧を作用電極22と対極24との間に印加することができ、作用電極22を流れるあらゆる発生電流(resulting current)を測定する。作用電極22及び対極24間には低インピーダンス経路は存在してはならないので、第1動作確認電圧は僅かであるか又は電流が存在しない結果でなければならない。従って、測定器200は、ステップ330に示したように、発生電流が最大許容値以下であるか否かを確認する。そして、発生電流が最大値以上である場合、ステップ332に示したように、測定器は障害状態を表示する。
【0071】
最大値以下であれば、ステップ334に示したように、測定器200は、テストストリップシーケンスを続行し、例えば「充填」電圧などの所定の第2動作確認電圧を充填−検出電極28及び30にわたって印加し、充填−検出アノード28を流れる発生電流を測定する。測定器200は、後述するように、その電流測定結果を後の測定で使用できるように、当該電流測定結果を蓄積する。いずれの電極間にも低インピーダンス経路が存在してはならないので、第2動作確認電圧は低いか又は電流が存在しない結果でなければならない。しかし、測定器200の例えば増幅器などの電子部品はステップ334において測定される僅かなオフセット電流を生じることがある。測定器200は、ステップ336に示したように、ステップ334の電流測定結果が最大許容量以下であるか否かを確認する。電流測定結果が最大値以上である場合、ステップ338に示したように、測定器200は故障状態を表示する。最大値以下であれば、測定器200はテストストリップに適用された血液サンプルを表示する。例えば、測定器200はディスプレイ214にメッセージ又はアイコンを表示及び使用者が識別可能な幾つかの他の表示の少なくとも一方を提供することができる。
【0072】
測定器200はステップ334の測定を実行すると同時にステップ328の測定を実行する。従って、測定器200は、作用電極22及び対極24間に「降下レベル1」電圧を印可して、作用電極22に流れるあらゆる発生電流を測定すると同時に、充填−検出電極間23及び30に「充填」電圧を印可して、充填−検出アノード28に流れるあらゆる発生電流を測定する。
【0073】
電極が動作確認された場合、測定器200は、次に、図21のフローチャートに示した過程に進むことができる。使用者がいつ血液サンプルを滴下したかを検出するために、測定器200は、ステップ342に示したように、作用電極22と対極24との間に「降下レベル1」電圧を印可し、それら電極間に流れるあらゆる発生電流を測定する。その「降下レベル1」電圧は、試薬層90において用いられた化学反応の酸化還元電位以下であるとよい。ステップ344で、使用者は血液サンプルをテストストリップに滴下する。より詳細には、使用者は血液サンプルを図3に示した近端部12におけるサンプル室88の開口に塗布する。上記したように、サンプル室88は毛管作用によって血液サンプルをそこに引き入れるために必要な大きさとされる。血液サンプルがサンプル室88へ移動することにより、作用電極22と対極24との間が最終的にブリッジされ、これによって、その作用電極22及び対極24との間に電気的な導電性経路が提供される。従って、測定器200は、ステップ346に示したように、発生電流が所定の閾値に到達するか又は全体的に正の絶対値を持つ一連の閾値が変化すると、血液サンプルがサンプル室88に存在すると決定する。このようにして測定器200が血液サンプルを検出すると、測定器200は、作用電極22と対極24との接続を切断し、当該作用電極22と対極24とを充填−検出電極28及び30に対してハイインピーダンス状態に置き、ステップ348に示したように、充填タイマー及びインキュベーションタイマーを開始する。測定器200は、作用電極22と対極24とをハイインピーダンス状態にする前に、蓄積した電荷を放電するため、まず当該作用電極22と対極24とを接地する。
【0074】
充填タイマーには血液サンプルが試薬層90を横断して充填−検出電極28及び30に到達するためのタイムリミットを設定する。インキュベーションタイマーには血液サンプルが試薬層90で反応可能な遅延時間をセットする。一旦、測定器200が充填タイマーをカウントし始めると、測定器200は、ステップ350に示したように、充填−検出電極28及び30間に電圧、すなわち「充填」電圧を印可して、これら電極間における発生電流の流れを測定する。測定器200は、調整した電流を得るために、この測定した電流からステップ334の電流測定結果を減ずる。ステップ352に示したように、測定器200は、充填タイマーが経過する前に、電流(又は調整電流)が所定の閾値に到達しているか否か、又は全体的に正の絶対値を持つ一連の閾値が変化しているか否かを確認する。電流閾値は、充分なサンプルが充填−検出電極28及び30に到達したか否か、及び、サンプルが試薬層90の化学成分と混合されたか否かを測定器200が決定できるように設定されている。
【0075】
電流(又は調整電流)が必要値に到達しない場合、テストストリップに問題が生じている可能性がある。例えば、妨害物がサンプル室88に存在する等である。サンプル量が不充分であるとも考えられる。また、試薬層がないか又は試薬層の化学成分が血液サンプルと混合していない可能性もある。これらいずれの問題も信頼性のないグルコース測定値を生成することになる。従って、充填−検出電極28及び30を流れる電流(又は調整電流)が充分でないまま充填タイマーが経過すると、ステップ354に示したように、測定器200は障害状態を示すことができる。測定器200は、ディスプレイ214にエラーメッセージ又はアイコンを表示及び使用者が識別可能な幾つかの他の指示の少なくとも一方を提供することで、障害状態を示す。充填タイマーの接続時間は、例えば、2〜6秒程度であるとよい。
【0076】
一方、測定器200が、充填タイマーが経過する前に、充填−検出電極を流れる電流(又は調整電流)が充分であることを検出すると、次に、当該測定器200はグルコース測定過程に進む。ステップ356に示したように、測定器200は、試薬層90の化学成分と混合された充分なサンプルを検出したことの表示を使用者に提供する。例えば、測定器200は、ビープ音を鳴らすか、ディスプレイ214上にメッセージ又はアイコンを表示及び使用者が識別可能な幾つかの他の指示の少なくとも一方を提供することができる。好ましくは、測定器200は、また、充填−検出電極28及び30間の接続も切断し、当該充填−検出電極28及び30を作用電極22及び対極24に対してハイインピーダンス状態に置く。測定器200は、蓄積した電荷を放電するために、充填−検出電極28及び30をハイインピーダンス状態に置く前に、当該充填−検出電極28及び30を接地する。測定器200は、次に、血液サンプルが試薬層90と反応するのに充分な時間を与えるために、ステップ358に示したように、インキュベーションタイマーが経過するのを待つ。インキュベーションタイマーは、実施に応じて、例えば、経過するまで約2〜10秒かかるようにできる。好ましい実施例において、インキュベーションタイマーは、約5秒間、持続する。
【0077】
インキュベーションタイマーが経過すると、測定器200は、ステップ360に示したように、作用電極22と対極24との間に「分析評価レベル(Assay Excitation Level)2」電圧を印可し、当該作用電極22と対極24との間を流れる発生電流を測定する。好ましくは、複数の電流測定結果を得るために、測定器200は、測定時間の全体にわたって固定のサンプリングレートで発生電流を測定する。測定時間は、実施に応じて、約5〜15秒まで持続することができる。好ましい実施例において、測定時間を約5秒間、持続させるとよい。
【0078】
測定器200は、次に、ステップ362に示したように、電流測定結果から血液サンプルの血糖値を決定する。好適なアプローチにおいて、測定器200は、測定時間における所定の時点での平均電流値を得るために、電流測定結果を平均化する。測定器200は、次に、平均化電流値から血糖値を算出するために、リムーバブルデータストレージデバイス220から得られ内部メモリに格納された較正データを使用する。また、測定器200は、計測温度も得ることができ、温度依存性のある測定血糖値を補正するために当該計測温度を使用する。加えて、測定器200は、測定電流が時間の経過とともに減少することが予想されるので、この点を確認することで、電流測定結果の妥当性を確認する。
【0079】
例えば、好ましい実施例において、測定器200は、0.1秒間隔で所定回数の電流測定結果(m1・・・mM)を取得することができる。その所定回数Mは、例えば、50〜150回までの範囲であるとよく、また、当該所定回数Mはリムーバブルデータストレージデバイス220において特定されたパラメータであってもよい。測定器は、次に、複数のデータポイント(d1・・・dN)を提供するために全ての電流測定結果nを平均化する。従って、n=3であれば、測定器は、m1、m2及びm3を平均化することでd1を計算し、m2、m3及びm4を平均化することでd2を計算する。平均化パラメータnは、リムーバブルデータストレージデバイス220において特定されるパラメータであってよい。平均化の他のレベルのためにデータポイントの1つが中心点として選択され、測定器は、測定示度(meter reading)Xを提供するために周囲のデータポイント及び中心点を含むデータポイントを共に平均化する。従って、d2が中央点として選択されると、次に測定器は測定示度Xの計算とともにd1、d2及びd3を平均化する。リムーバブルデータストレージデバイス220は、測定示度Xを算出するために、中央点として用いるデータポイントのいずれを使用するかを特定するパラメータを格納している。測定器200は、次に、測定示度X及びリムーバブルデータストレージデバイス220で特定された1以上の較正パラメータから血糖値Yを算出する。例えば、具体的な実施例において、測定器200は、式a+bX+cX2を用いてYを算出するために、3つの較正パラメータa、b及びcを使用する。あるいは、較正パラメータの異なる項及び異なる数を含む異なる式の少なくとも一方がYを算出するために使用されてもよい。例えば、例示的な他の実施例で、Yは式a+bX+cX2+d/Xを使用して算出される。場合によっては、データストレージデバイス220は、Yを算出するためにいずれの式を使用するべきかについて、加えて、いずれの較正パラメータを使用するべきかについて、それぞれを特定することができる。
【0080】
しかしながら、このような方法で算出した血糖値Yは、温度補正がされていない。温度補正をするために、測定器200は1以上の温度補正パラメータを適用する。この温度補正パラメータはリムーバブルデータストレージデバイス220において特定されることができる。例えば、好適な実施例において、温度補正された血糖値は、式A+BT+CYT+DYから算出されることができる。ここで、A、B、C及びDは温度補正パラメータであり、Tは計測温度である。較正パラメータA、B、C及びDは、リムーバブルデータストレージデバイス220において特定されてもよい。他の実施例では、温度補正は単一パラメータSを単独で使用することもできる。その単一パラメータSはリムーバブルデータストレージデバイス220において特定されてもよい。例えば、温度補正された血糖値は式Y/[(1+S(T−21)]から算出されることができる。
【0081】
電流測定結果が有効に現れた場合、測定器は、次に、ステップ364に示したように、ディスプレイ214に一般的に数字で血糖値を表示する。また、測定器は、その内部メモリに、タイムスタンプと共に、測定した血糖値を格納する。
【0082】
5.測定器エレクトロニクス
【0083】
図22に、好ましい実施例に従う単純化した測定器200の電子構成要素を示す。測定器200は、プログラミングに従って測定器200の操作を制御するマイクロコントローラ400を含んで構成され、当該マイクロコントローラ400はソフトウェア及び/又はファームウェアとして提供される。マイクロコントローラ400は、プロセッサ402、リードオンリーメモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)の少なくとも一方を含むことが可能なメモリ404、ディスプレイコントローラ406、1以上の入出力(I/O)ポート408を含んで構成されている。メモリ404は、測定器200の操作を制御するためのプログラム化された複数の機械語命令を格納することができる。また、メモリ404は、データを蓄積することができる。プロセッサ402は、マイクロコントローラ400及び測定器200を制御するために、メモリ404又は他の構成要素に格納された機械語命令を実行する。特に、プロセッサ402は、前述した図18〜図21のフローチャートに要約した測定器200が実行する機能をプログラムした機械語命令を実行する。
【0084】
また、マイクロコントローラ400は、プロセッサ402の制御下にある他の構成要素を含んで構成される。例えば、マイクロコントローラ400は、プロセッサ402によるディスプレイ214の制御を補助するために、ディスプレイコントローラ406を含んで構成される。好ましい実施例において、ディスプレイ214はLCDであるとよく、ディスプレイコントローラ406はLCDドライバ/コントローラであるとよい。さらに、マイクロコントローラは、当該マイクロコントローラ400外部の構成要素とプロセッサ402が通信することを可能にするI/Oポート408を含んで構成されている。さらにまた、マイクロコントローラ400は、1以上のタイマー410を含んで構成されている。プロセッサ402は、上述した充填時間、インキュベーション時間及び他の時間にわたって測定するタイマー410を使用する。マイクロコントローラ400は、日立から入手可能な、例えば、HD64F38024H等の集積回路として提供されることができる。
【0085】
マイクロコントローラ400は、好ましくはユーザーインターフェースを提供する構成要素と接続される。測定器200のユーザーインターフェースを構成する構成要素は、ディスプレイ214、ビーパー412及び使用者コントローラ222を含んで構成される。マイクロコントローラ400は、ディスプレイ214上にテキスト及びグラフィクスの少なくとも一方を表示することができる。マイクロコントローラは、例えば、前述の充分なサンプル(試薬層90の化学成分と混合された)が充填−検出電極28及び30に到達したことを示す等のための警告音をビーパー412から出力させることができる。また、マイクロコントローラ400は、視覚、聴覚又は触覚可能な使用者が識別可能な指示を提供するために、例えば1以上の発光ダイオード(LED)等の他の構成要素と接続されることができる。さらにまた、マイクロコントローラ400は、使用者制御部222から使用者入力を受信する。好ましい実施例において、使用者制御部222は複数の個別スイッチを含んで構成されるとよい。しかしながら、使用者制御部222は、また、使用者が測定器200に入力を提供できるタッチスクリーン又は他の構成要素を含んで構成されてもよい。
【0086】
マイクロコントローラ400は、例えばEEPROM414などの1以上の外部メモリにアクセスすることができる。好ましい実施例において、マイクロコントローラ400は、測定した血糖値及びグルコース測定の実施日時を蓄積するとよい。使用者は、使用者制御部222を用いて、EEPROM414に格納された1以上のグルコース測定結果をディスプレイ214に表示させるようマイクロコントローラ400に命令することができる。また、マイクロコントローラ400は、使用者がEEPROM414に格納されたグルコース測定結果にアクセス可能なシリアルポート416に接続されている。マイクロコントローラ400は、シリアルポート416へ信号を送信するための送信ライン「TX」、及び、シリアルポート416から信号を受信するための受信ライン「RX」を使用する。
【0087】
EEPROM414は、リムーバブルデータストレージデバイス220からのデータを格納する。この点に関し、図22に、データコネクタ218の電気接点272〜278が如何にして測定器200内部と接続されているかが示されている。接点272は、マイクロコントローラ400を通じて電源に接続されている。このように、マイクロコントローラ400は、例えば、リムーバブルデータストレージデバイス220からデータをダウンロードする等、必要な場合にのみ、接点272を通じてリムーバブルデータストレージデバイス220に電力供給をする「パワーマネージメン」をする。接点274は接地へ接続されている。接点276及び接点278は、それぞれマイクロコントローラ400内で、データ入出力及びクロック出力に接続されている。このように、データストレージデバイス220がデータコネクタ216に接続されている場合、マイクロコントローラ400は、当該データストレージデバイス220からデータをダウンロードすることができ、そのデータをEEPROM414に格納することができる。
【0088】
好ましい実施例において、測定器200は、また、マイクロコントローラ400とデジタルインターフェースされるデータ収集システム(DAS)420とを含んで構成される。このDAS420は、カリフォルニア州のサニーベールにあるMaxim Integrated Productsから入手可能な、例えば、MAX1414などの集積回路として提供されることができる。
【0089】
DAS420は、マイクロコントローラ400からのデジタルデータに応答してアナログ電圧を生成する1以上のデジタルアナログ変換器(DACs)を含んで構成される。具体的には、DAS420は、テストストリップがストリップコネクタ216に挿入された場合、第1DACによって生成されたアナログ電圧を作用電極22に印加するために用いられる「Vout1」端子及び「FB1」端子を含んで構成される。同様に、DAS420は、テストストリップがストリップコネクタ216に挿入された場合、第2DACによって生成されたアナログ電圧を充填−検出アノード28に印加するために用いられる「Vout2」端子及び「FB2」端子を含んで構成される。DAS420の1以上のDACsは、マイクロコントローラ400によって提供されるデジタル信号に基づいてアナログ電圧を生成する。このように、1以上のDACsによって生成された電圧は、プロセッサ402によって選択される。
【0090】
また、DAS420は、該DAS420がアナログ信号を測定することが可能な1以上のアナログデジタル変換器(ADCs)を含んで構成されている。後述するように、テストストリップがストリップコネクタ216に挿入された場合、DAS420は、作用電極22及び対極24からの電流をそれぞれ測定するために、「Voutl」端子及び「Vout2」端子に接続された1以上のADCsを使用する。さらに、DAS420は、例えば、図22に示した「Analog In1」及び「Analog In2」端子など、ADCsを通じてアナログ信号を測定する1以上の他の端子を含んで構成される。さらにまた、DAS420は、ストリップコネクタ216に接続されたテストストリップ又はチェックストリップのオートオンコンダクタにわたる電圧を測定するために、「Analog In1」端子を使用する。「Analog In2」端子は、DAS420が温度測定可能なようにサーミスタRT1に接続される。具体的には、DAS420は、サーミスタRT1及び他の抵抗器Rdを含んで構成された分圧器を通じて、基準電圧VREFを出力することが可能である。さらにまた、DAS420は、サーミスタRT1にわたる電圧を測定するために、「Analog In2」端子を使用することができる。さらにまた、DAS420は、1以上のADCsから得られるデジタル値を、これら構成要素間のデジタルインターフェースを経て、マイクロコントローラ400に転送する。
【0091】
好ましくは、DAS420は、「スリープモード」又は低電力モード、及び、「アクティブモード」又は実行モードの少なくとも2つの動作モードを有する。アクティブモードにおいて、DAS420は最大限の機能性を有する。スリープモードにおいて、DAS420は機能性を低減するが、非常に少量の電流は引き込んでいる。例えば、DAS420は、アクティブモードにおいて1mA又はそれ以上を引き込むことができ、スリープモードであると僅かにマイクロアンプ(microamps)を引き込むことができる。図22に示すように、DAS420は「Wake-up1」、「Wake-up2」及び「Wake-up3」入力を含むことができる。適切な信号がこれら「Wake-up」端子のいずれかにアサートされると、後述するように、DAS420は、スリープモードから起動して、アクティブモードに入り、その他、休止状態の測定器200を起動する。好ましい実施例において、「Wake-up」入力は、供給電圧VCCを内部的にプルアップさせるアクティブ・ロー入力(active-low inputs)である。さらに、後述するように、ストリップコネクタ216にテストストリップ又はチェックストリップのオートオンコンダクタを挿入することは、「Wake-up1」入力をローにし、これによってDAS420をアクティブモードに入らせることになる。加えて、「Wake-up2」入力は、1以上の使用者制御部222に接続される。このように、使用者が少なくとも一定の使用者制御部222の操作を行うことにより、DAS420がアクティブモードに入ることになる。最後に、「Wake-up3」入力は、例えば、受信ラインRXを通じてシリアルポート416に接続されることができる。このように、データ転送のためにシリアルポート416の使用を試行することで、DAS420及び、その後に測定器200を起動させることができる。
【0092】
図22に示すように、DAS420はマイクロコントローラ400に接続された幾つかの端子を含んで構成される。DAS420は、1以上の「Data I/O」端子を含んで構成され、当該「Data I/O」端子を通じてマイクロコントローラ400は、DAS420からのデジタルデータを読み取り及びDAS420にデジタルデータを書き込むことができる。また、DAS420は、「Data I/O」端子への/「Data I/O」端子からのデータ転送を調整するために、マイクロコントローラ400からクロック信号を受信する「Clock In」端子を含んで構成されている。さらに、DAS420は、該DAS420がマイクロコントローラ400を駆動するためのクロック信号を出力する「Clock Out」端子を含んで構成されている。この場合、DAS420は、クリスタル422を用いてクロック信号を生成する。さらにまた、DAS420は、クリスタル422を使用してリアルタイムクロック(RTC)を生成することも可能である。
【0093】
DAS420は、他の端子を含んで構成され、当該他の端子を通じてその他のタイプのデジタル信号をマイクロコントローラ400に出力することができる。例えば、DAS420の一例では、DAS420は「Reset」端子を含んで構成され、当該「Reset」端子を通じてマイクロコントローラ400をリセットするための信号を出力することができる。また、DAS420は、マイクロコントローラ400に割込み信号を供給するために使用可能な1以上の「Interrupt Out」端子を含んで構成されることができる。さらに、DAS420は、例えば、マイクロコントローラ400に対して転送準備が完了したことのデータをAD変換器などから得られたことを、当該マイクロコントローラ400に送信する1以上の「Data Ready」入力を含んで構成されることができる。
【0094】
図22に示すように、測定器200は、例えば、1以上の電池424などの電源を含んで構成される。電圧調整器426は、電池424が供給する電圧から調整した供給電圧VCCを提供する。次に、供給電圧VCCは、測定器200の他の構成要素に電力を供給する。好ましい実施例において、電圧調整器426は、電圧を上げるDC/DC電圧コンバータであるとよい。電圧調整器426は、集積回路や、例えば、インダクター、コンデンサ及びレジスタ等の他の構成要素として提供されることができる。集積回路は、例えば、カリフォルニア州のサニーベールにあるMaxim Integrated Productsから入手可能なMAX1724であってよい。
【0095】
好ましくは、電圧調整器426は、無調整出力電圧を供給するシャットダウンモードを有するとよい。DAS420は、電圧調整器426を制御することができる「Shutdown」端子を含んで構成されることができる。具体的には、DAS420がスリープモードに入ると、当該DAS420は、電圧調整器426をシャットダウンモードに入らせるために、「Shutdown」端子に低レベル信号をアサートする。DAS420がアクティブモードに入ると、当該DAS420は、電圧調整器426を通常動作可能にするために、「Shutdown」端子にハイレベル信号をアサートする。
【0096】
図22は、ストリップコネクタ216の電気接点236〜246が如何なる状態で測定器200に接続されているかを示している。テストストリップがストリップコネクタ216に挿入されると、それぞれ、作用電極22及び対極24と電気的に接続される接点236及び238とは、以下のような接続状態になる。作用電極22に対する接点236は、DAS420の「FB1」端子に接続されるとともに、抵抗器RF1を経てDAS420の「Vout1」端子に接続される。対極24に対する接点238はスイッチ428に接続される。スイッチ428は、接点238(ひいては対極24)を接地接続するか又はハイインピーダンス状態のままにすることを可能にする。図22に示したように、スイッチ428は、マイクロコントローラ400によってデジタル制御されることができる。対極24が接地接続されると、DAS420は、作用電極22(対極24に関連して)に電圧を印加して、その作用電極22を流れる電流を測定するために、「Vout1」端子及び「FB1」端子を使用する。
【0097】
テストストリップがストリップコネクタ216に挿入されると、それぞれ、充填−検出アノード28及び充填−検出カソード30と電気的に接続される接点240及び242は、以下のような接続状態になる。充填−検出アノード28に対する接点240は、DAS420の「FB2」端子に接続されるとともに、抵抗器RF2を経てDAS420の「Vout2」端子に接続される。充填−検出カソード30に対する接点242は、スイッチ430に接続される。スイッチ430は、接点242(ひいては充填−検出カソード30)を接地接続するか又はハイインピーダンス状態のままにすることを可能にする。図22に示すように、スイッチ430はマイクロコントローラ400によってデジタル制御されることができる。充填−検出カソード30が接地接続されると、DAS420は充填−検出アノード28(充填−検出カソード30と関連して)に電圧を印加して、その充填−検出アノード28を流れる電流を測定するために、「Vout2」端子及び「FB2」端子を使用する。
【0098】
スイッチ428及び430は、カリフォルニア州のサニーベールにあるMaxim Integrated Productsから入手可能な、例えば、MAX4641などの単極/単投(SPST)スイッチであって、集積回路として提供されることができる。しかし、スイッチ428及び430のための他の構造を使用することもできる。
【0099】
テストストリップ又はチェックストリップがストリップコネクタ216に挿入されると、オートオンコンダクタと電気的に接続される接点244及び246は、以下のような接続状態になる。接点246は、接地又は他の基準電位へ接続される。接点244は、DAS420の「Analog In1」端子及び「Wake-up1」端子とマイクロコントローラ400に接続される。後述するように、オートオンコンダクタの存在は「Wake-up1」端子をローで作動させ、これよって、DAS420を起動しアクティブモードに入らせるようになる。DAS420は、オートオンコンダクタにわたる電圧を測定するために、「Analog In1」端子を使用する。接点244に対するその接続に基づいて、マイクロコントローラ400は、オートオンコンダクタが存在するか否か、及び、ストリップコネクタ216に接続されたのがテストストリップ又はチェックストリップであるか否かを決定することが可能になる。
【0100】
図23は、テストストリップがストリップコネクタ216に挿入された場合における測定器200と電極22,24、28及び30との間の機能的なアスペクトを更に詳細に示している。図23に示したように、DAS420は機能上、作用電極22に対する増幅器440及び充填−検出アノード28に対する増幅器442を含んで構成される。より詳細には、増幅器440の出力は「Vout1」端子及び抵抗器RF1を経て作用電極22に接続され、増幅器440の反転入力は「FB1」端子を経て作用電極22に接続される。同様に、増幅器442の出力は「Vout2」端子及び抵抗器RF2を経て充填−検出アノード28に接続され、増幅器442の反転入力は「FB2」端子を経て充填−検出アノード28に接続される。
【0101】
作用電極22及び充填−検出電極28に印加される選択されたアナログ電圧を生成するために、DAS420は、それぞれ第1DAC444及び第2DAC446を含んで構成されている。DAC444は、増幅器440の非反転入力に接続されており、DAC446は、増幅器442の非反転入力に接続されている。このように、増幅器440の反転入力で検出される作用電極22での電圧がDAC444によって生成される電圧と本質的に等しくなるように、増幅器440が「Vout1」端子に電圧を印加する。同様に、増幅器442の反転入力で検出される充填−検出電極28での電圧がDAC446によって生成される電圧と本質的に等しくなるように、増幅器442が「Vout2」端子に電圧を印加する。
【0102】
DAS420は、作用電極22及び充填−検出アノード28を流れる電流を測定するために、ADC448及びマルチプレクサ(MUXes)を含んで構成される。MUXes450及び452は、「Vout1」端子、「FB1」端子、「Vout2」端子及び「FB2」端子の中からADC448の入力を選択することができる。また、DAS420は、ADC448とMUXes450及び452との間に1以上のバッファ及び/又は増幅器(図示略)を含んで構成される。作用電極22を流れる電流を測定することを目的として、MUXes450及び452は、作用電極22を流れる電流に比例する抵抗器RF1にわたる電圧を測定するために、ADC448を「Voutl」端子及び「FB1」端子に接続させる。充填−検出電極28を流れる電流を測定することを目的として、MUXes450及び452は、充填−検出アノード28を流れる電流に比例する抵抗器RF2にわたる電圧を測定するために、ADC448を「Vout2」端子及び「FB2」端子に接続させる。
【0103】
上記したように、測定器200は、好ましくは、対極24及び充填−検出カソード30のそれぞれをハイインピーダンス状態に至らせるために用いられることができるスイッチ428及び430を含んで構成される。同様に、測定器200は、作用電極22及び充填−検出アノード28をハイインピーダンス状態に至らせることが可能であると好ましい。好ましい実施例において、これは「Voutl」端子、「FB1」端子、「Vout2」端子及び「FB2」端子をハイインピーダンス状態に至らせることが可能なDAS420によって達成されることができる。従って、図23に示すように、DAS420はスイッチ454,456、458及び460を効果的に含むことができる。スイッチ428,430及び454〜460は、図23に示したように、SPSTスイッチであってもよいが、例えば、単極−双投(SPDT)スイッチなどの他のタイプのスイッチを使用することもでき、及び、1対の電極(作用電極と対極対、又は、充填−検出電極対)を選択して、他の電極対をハイインピーダンス状態のままにする能力を測定器200に提供するために、当該スイッチは他の方法で配置されることができる。例えば、1対のSPDTスイッチを用いることができ、この場合、作用電極22及び充填−検出28をDAS42に接続するために、1つのSPDTスイッチが選択され、対極24及び充填−検出カソードを接地接続するために他のSPDTが選択される。その他の場合には、測定器200は電極の全てをハイインピーダンス状態に至らせるように構成することはできない。例えば、ある実施例では、測定器200はスイッチ428を含むことはできず、テストストリップがストリップコネクタ216に挿入されると、対極24は常に接地接続される。
【0104】
図24は、テストストリップ又はチェックストリップのいずれかがストリップコネクタ216に挿入された場合における測定器200とオートンコンダクトとの間における接続の機能的なアスペクトを更に詳細に示している。図24に示すように、オートオンコンダクタは、ストリップコネクタ216の接点244と接点246との間に実効抵抗Rautoを提供する。測定器200内で、接点244は、実効抵抗Rsを介して電源電圧VCCに接続されている。例えば、接点244と接続されたDAS420の「Wake-up1」端子は、実効抵抗Rsを介して内部的にVCCまでプルアップされる。従って、テストストリップ又はチェックストリップのいずれかがストリップコネクタ216に挿入されると、オートオンコンダクタが接点244及び接点246をブリッジし、オートオン抵抗に電流が流れ、及び、電圧降下が接点244と接点246との間に生じる。このオートオン電圧降下の振幅は、Rauto及びRsの相対振幅に依存する。好ましくは、オートオン電圧が測定器200において使用されるロジック低電圧(それは、約0.8ボルトであってもよい)未満であるように、RautoはRsに関連してテストストリップ及びチェックストリップのために充分に低く選ばれると好ましい。また、測定器200がオートオン電圧降下からストリップタイプを決定できるように、Rautoは、テストストリップとチェックストリップとにおいて実質的に異なっていると好ましい。例えば、Rsが約500kΩであれば、Rautoは、テストストリップにおいて約20Ωよりも小さく、チェックストリップでほぼ20kΩであるとよい。このように、マイクロコントローラ400は、接点244のロジック低電圧を検出することによって、テストストリップ又チェックストリップのいずれがストリップコネクタ216に挿入されたかを決定することができる。
【0105】
DAS420は、オートオン電圧降下を検出し、当該オートオン電圧降下を使用して、測定器200を起動し、及び、ストリップタイプ、すなわち、ストリップコネクタ216に挿入されたのがテストストリップ又はチェックストリップのいずれであるかを決定する。テストストリップの場合、DAS420は、テストストリップがストリップコネクタ216に適切に挿入されたか否かをも確認することができる。
【0106】
DAS420は、1以上のバッファ及び/又は増幅器、例えばバッファ464などを経て「Wake-up1」端子の電圧を検出する起動ロジック(wake-up logic)462を含んで構成されている。また、DAS420は、1以上のバッファ及び/又は増幅器、例えばバッファ466などを経て「Analog In1」端子での電圧を測定できるADC448をも含んで構成されている。図24に図示してないが、MUXes450及び452をバッファ466とADC448との間に接続することができる。
【0107】
ストリップがストリップコネクタ216に存在しないと、接点244(ひいては「Wake-up1」端子)は、VCCにおいて又はその近くで高電圧となる。しかしながら、テストストリップ又はチェックストリップのいずれかがストリップコネクタ216に挿入されると、前述の通り、「Wake-up1」端子でのオートオンコンダクタ電圧が下がる。起動ロジック462は、「Wake-up1」端子で電圧が低くなっていることを検出すると、これに応答して、DAS420をアクティブモードにする起動シーケンスを開始する。この起動シーケンスの一部として、起動ロジック462は、電圧調整器426をオンするために、DAS420の「Shutdown」端子にアサートする信号を当該DAS420に生成させることができる。また、起動ロジック462は、マイクロコントローラ400を起動させる信号をDAS420に生成させることができる。例えば、起動ロジック462は、DAS420の「Clock Out」端子を通じてアサートするクロック信号、DAS420の「Reset」端子を通じてアサートするリセット信号及びDAS420の「Interrupt Out」端子を介してアサートするマイクロコントローラ400を起動するための割り込み信号を、当該DAS420に生成させることがでる。
【0108】
図24に示してないが、起動ロジック462は、「Wake-up1」端子と「Wake-up2」端子での電圧を検出し、これら端子の1つの電圧低下に応じて、前述と同様に起動シーケンスを開始する。
【0109】
DAS420がアクティブモードに入ると、当該DAS420は、ストリップコネクタ216に挿入されたストリップのタイプを決定する。具体的には、ADC448が「Analog In1」端子の電圧を測定する。DAS420は、次に、測定電圧をマイクロコントローラ400に報告する。この情報に基づいて、前述の通り、マイクロコントローラ400は、次に、テストストリップシーケンス又はチェックストリップシーケンスのいずれかを開始する。いずれかのシーケンスの実行の間、マイクロコントローラ400は、ストリップがストリップコネクタ216に依然として挿入されてることを確認するために接点244での電圧を定期的に確認する。あるいは、ストリップを外すことによって接点244に生じる電圧増加についての割り込みをマイクロコントローラに通知する。
【0110】
このように、オートオンコンダクタをわたって生じるオートオン電圧降下は、測定器200の幾つかの機能を実行する。第1に、オートオン電圧は測定器200をスリープモードからアクティブモードに起動する。第2に、測定器200はオートオン電圧の振幅からストリップタイプを決定する。第3に、オートオン電圧は、測定器200がテストストリップ又はチェックストリップシーケンスのいずれかを続行しながら、ストリップが当該測定器200におけるストリップコネクタ216に依然として挿入されていることを知らせる。
【0111】
6.結論
【0112】
本発明の好ましい実施例を前述した。しかしながら、当業者であれば、請求項によって定められる本発明の真の範囲及び趣旨を逸脱することなく、その変更及び改造を実施できることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1の例示的な実施例に従った、テストストリップの平面図。
【図2】本発明の第1の例示的な実施例に従った、カバー、接着層及び試薬層を取り除いた状態を示す図1のテストストリップの平面図。
【図3】本発明の第1の例示的な実施例に従った、図1に示すライン3−3に沿ったテストストリップの横断面図。
【図4】本発明の第2の例示的な実施例に従った、テストストリップの平面図。
【図5】本発明の第3の例示的な実施例に従った、テストストリップの平面図。
【図6】本発明の第1の例示的な他の実施形態に従った、テストストリップの横断面図。
【図7】本発明の第2の例示的な他の実施形態に従った、テストストリップの横断面図。
【図8】本発明の例示的な実施例に従った、図1〜図3に示すタイプのテストストリップであって、複数の当該テストストリップに分けられるテストストリップ構造体の配列を示した平面概略図。
【図9】本発明の例示的な実施例に従った、図8に示す複数のテストストリップ構造体形成における中間段階であって、その複数のテストストリップのうちの1つの平面図。
【図10】本発明の例示的な実施例に従った、図8に示す複数のテストストリップ構造体形成における中間段階であって、その複数のテストストリップのうちの1つの平面図。
【図11】本発明の例示的な実施例に従った、図8に示す複数のテストストリップ構造体形成における中間段階であって、その複数のテストストリップのうちの1つの平面図。
【図12】本発明の例示的な実施例に従った、図8に示す複数のテストストリップ構造体形成における中間段階であって、その複数のテストストリップのうちの1つの平面図。
【図13】本発明の例示的な実施例に従った、図8に示す複数のテストストリップ構造体のうちの1つの平面図。
【図14】本発明の例示的な実施例に従った、測定器の斜視図。
【図15】本発明の例示的な実施例に従った、リムーバブルデータストレージデバイスを挿入した図14に示す測定器の斜視図。
【図16】本発明の例示的な実施例に従った、図14に示す測定器のストリップコネクタの斜視図。
【図17】本発明の例示的な実施例に従った、図15に示すリムーバブルデータストレージデバイスの分解斜視図。
【図18】本発明の例示的な実施例に従った、テストストリップ又はチェックストリップの使用方法を示すフローチャート。
【図19】本発明の例示的な実施例に従った、チェックストリップの使用方法を示すフローチャート。
【図20】本発明の例示的な実施例に従った、テストストリップの使用方法を示すフローチャート。
【図21】本発明の例示的な実施例に従った、テストストリップの使用方法を示すフローチャート。
【図22】本発明の例示的な実施例に従った、図14に示す測定器内の電子機器を単純化した電子回路図。
【図23】本発明の例示的な実施例に従った、図14に示す測定器と図1に示すテストストリップとの各電極間の電気的接続を示す回路図。
【図24】本発明の例示的な実施例に従った、図14に示す測定器と図1に示すテストストリップのオートオンコンダクタ間の電気的接続を示す回路図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液サンプル中のグルコースを測定するテストストリップであって、
該テストストリップは、
遠端部と該遠端部よりも幅が狭い近端部とを含んで構成されたベース層と、
作用電極、対極、充填−検出アノード及び充填−検出カソードを含んで構成された、前記ベース層上に配置された少なくとも4つの電極と、
作用電極接点、対極接点、充填−検出アノード接点及び充填−検出カソード接点を含んで構成された、前記ベース層上に配置された複数の電気接点と、
前記作用電極と前記作用電極接点と、前記対極と前記対極接点と、前記充填−検出アノードと前記充填−検出アノード接点と、前記充填−検出カソードと前記充填−検出カソード接点とをそれぞれ電気的に接続した、前記ベース層上に配置された複数の導電性トレースと、
前記ベース層上に配置されたオートオンコンダクタと、
露出させる作用電極部分及び露出させる対極部分を画定するために、前記作用電極及び前記対極の一部を覆った、前記ベース層上に配置された第1誘電層と、
遠端部と前記ベース層の前記近端部に位置合わせされた近端部とを含んで構成され、その範囲内に前記作用電極、前記対極、前記充填−検出アノード、前記充填−検出カソードを配置させたスロットを備えて、前記第1誘電層上に配置された第2誘電層と、
グルコースオキシダーゼとメディエータとを含んで構成された、前記スロットに配置された試薬層と、
前記第2誘電層に配置された多孔性カバーと、
を含んで構成され、
前記スロットは、前記血液サンプルを試験する試験領域を画定し、毛管作用により前記スロットの前記近端部を通じて血液サンプルを引き込む大きさとされたことを特徴とするテストストリップ。
【請求項2】
前記多孔性カバーは、メッシュ状に構成されていることを特徴とする請求項1記載のテストストリップ。
【請求項3】
前記多孔性カバーは、穿孔シートで構成されていることを特徴とする請求項1記載のテストストリップ。
【請求項4】
前記対極は第1セクションと第2セクションとを含んで構成され、前記作用電極は前記第1セクションと前記第2セクションとの間で前記ベース層上に配置されたことを特徴とする請求項1記載のテストストリップ。
【請求項5】
前記少なくとも4つの電極は、前記ベース層上にプリントされた第1導電性インクによって形成されたことを特徴とする請求項1記載のテストストリップ。
【請求項6】
前記第1導電性インクは、グラファイトを含んで構成されたことを特徴とする請求項5記載のテストストリップ。
【請求項7】
前記電気接点、前記導電性トレース及び前記オートオンコンダクタは、前記ベース層上にプリントされた第2導電性インクによって形成されたことを特徴とする請求項6記載のテストストリップ。
【請求項8】
前記第2導電性インクは、銀を含んで構成されたことを特徴とする請求項7記載のテストストリップ。
【請求項9】
前記テストストリップは厚部と薄部とを含んで構成され、前記厚部は前記近端部を含んで構成され、前記薄部は前記遠端部を含んで構成され、前記電気接点及び前記オートオンコンダクタは前記薄部に位置させられたことを特徴とする請求項1記載のテストストリップ。
【請求項10】
前記試薬層は、前記露出させた作用電極部分を覆うことを特徴とする請求項1記載のテストストリップ。
【請求項11】
血液サンプルを試験するテストストリップであって、
該テストストリップは、
第1基質と、
前記血液サンプルを試験する試験領域を画定する第2基質と、
作用電極、対極、充填−検出アノード及び充填−検出カソードを含んで構成され、前記試験領域における前記血液サンプルの少なくとも1つの電気的特性を測定する、前記第1基質に配置された少なくとも4つの電極と、
前記少なくとも4つの電極と電気的に接続された、前記第1基質に配置された複数の電気接点と、
前記少なくとも4つの電極から電気的に絶縁された、前記第1基質に配置された少なくとも1つのオートオン電気接点と、
を含んで構成されたことを特徴とするテストストリップ。
【請求項12】
前記テスト領域に配置された試薬層をさらに含んで構成されたことを特徴とする請求項11記載のテストストリップ。
【請求項13】
前記テスト領域を覆って配置されたカバーをさらに含んで構成されたことを特徴とする請求項11記載のテストストリップ。
【請求項14】
前記カバーは、多孔性カバーであることを特徴とする請求項13記載のテストストリップ。
【請求項15】
前記多孔性カバーは、メッシュ状に構成されていることを特徴とする請求項14記載のテストストリップ。
【請求項16】
前記多孔性カバーは、穿孔シートで構成されていることを特徴とする請求項14記載のテストストリップ。
【請求項17】
前記テストストリップは、近端部と遠端部とを含んで構成され、
前記第2基質は、前記近端部において前記血液サンプルを受用する開口を画定することを特徴とする請求項11記載のテストストリップ。
【請求項18】
前記近端部は、前記遠端部よりも幅が狭いことを特徴とする請求項17記載のテストストリップ。
【請求項19】
前記テストストリップは、厚部と薄部とを含んで構成され、
前記薄部は、前記近端部を含んで構成されたことを特徴とする請求項17記載のテストストリップ。
【請求項20】
前記複数の電気接点及び前記少なくとも1つのオートオン電気接点は、前記薄部に位置させられたことを特徴とする請求項19記載のテストストリップ。
【請求項21】
複数のテストストリップの製造方法であって、
該製造方法は、複数のテストストリップ構造体を絶縁シート上に形成すること、を含んで構成され、
前記テストストリップ構造体の各々は、
(a)作用電極、対極、充填−検出アノード及び充填−検出カソードを含んで構成された少なくとも4つの電極を含んで構成された第1導電性パターンを前記絶縁シート上に形成すること、
(b)前記少なくとも4つの電極に対する複数の電気接点、前記少なくとも4つの電極と前記複数の電気接点とを電気的に接続する複数の導電性トレース及びオートオンコンダクタを含んで構成された第2導電性パターンを前記絶縁シート上に形成すること、
(c)露出させる作用電極部分及び露出させる対極部分を画定するために、前記作用電極及び前記対極の一部を覆う第1誘電層を適用すること、
(d)スロットを画定し、該スロットに前記作用電極、前記対極、前記充填−検出アノード及び前記充填−検出カソードを配置させた第2誘電層を前記第1誘電層に適用すること、
(e)グルコースオキシダーゼとメディエータとを含んで構成された試薬層を前記スロットに形成すること、
(f)前記第2誘電層を覆う多孔性カバーを取り付けること、
を含んで構成され、
前記製造方法は、前記テストストリップの各々が、遠端部と、該遠端部よりも幅が狭い近端部と、該近端部まで伸長する前記スロットと、を含んで構成されるように、前記複数のテストストリップ構造体を前記複数のテストストリップに切り離すこと、
をさらに含んで構成されたことを特徴とする製造方法。
【請求項22】
前記多孔性カバーは、メッシュ状に構成されていることを特徴とする請求項21記載の製造方法。
【請求項23】
前記多孔性カバーは、穿孔シートで構成されていることを特徴とする請求項21記載の製造方法。
【請求項24】
第1導電性パターンを前記絶縁シート上に形成することは、
グラファイトを含んで構成された第1導電性インクを前記絶縁シート上にプリントすることを含んで構成されたことを特徴とする請求項21記載の製造方法。
【請求項25】
第2導電性パターンを前記絶縁シート上に形成することは、
銀を含んで構成された第2導電性インクを前記絶縁シート上にプリントすることを含んで構成されたことを特徴とする請求項24記載の製造方法。
【請求項26】
複数のテストストリップの製造方法であって、
該製造方法は、複数のテストストリップ構造体を一枚のシート上に形成すること、を含んで構成され、
前記テストストリップ構造体の各々は、
(a)試験領域を画定するスペーサと、
(b)作用電極、対極、充填−検出アノード及び充填−検出カソードを含んで構成された、前記シート上に形成された複数の電極と、
(c)前記複数の電極と電気的に接続された、前記シート上に形成された複数の電気接点と、
(d)前記複数の電極から電気的に絶縁された、前記シート上に形成された少なくとも1つのオートオン電気接点と、
を含んで構成され、
前記製造方法は、前記テストストリップ構造体を前記複数のテストストリップに切り離すこと、
をさらに含んで構成されたことを特徴とする製造方法。
【請求項27】
前記テストストリップ構造体の各々は、前記テスト領域を覆って配置されたカバーをさらに含んで構成されたことを特徴とする請求項26記載の製造方法。
【請求項28】
前記カバーは、多孔性カバーであることを特徴とする請求項27記載の製造方法。
【請求項29】
前記多孔性カバーは、メッシュ状に構成されていることを特徴とする請求項28記載の製造方法。
【請求項30】
前記多孔性カバーは、穿孔シートで構成されていることを特徴とする請求項28記載の製造方法。
【請求項31】
前記テストストリップ構造体の各々は、前記試験領域に配置された試薬層を含んで構成されたことを特徴とする請求項26記載の製造方法。
【請求項32】
前記テストストリップ構造体を前記複数のテストストリップに切り離すことは、
前記複数のテストストリップ構造体を、テーパセクションを含んで構成された複数のテーパ付きテストストリップ構造体にパンチングすること、を含んで構成されたことを特徴とする請求項26記載の製造方法。
【請求項33】
前記テストストリップ構造体を前記複数のテストストリップに切り離すことは、
前記複数のテーパ付きテストストリップ構造体を前記複数のテストストリップにスリッティングすること、をさらに含んで構成されたことを特徴とする請求項32記載の製造方法。
【請求項1】
血液サンプル中のグルコースを測定するテストストリップであって、
該テストストリップは、
遠端部と該遠端部よりも幅が狭い近端部とを含んで構成されたベース層と、
作用電極、対極、充填−検出アノード及び充填−検出カソードを含んで構成された、前記ベース層上に配置された少なくとも4つの電極と、
作用電極接点、対極接点、充填−検出アノード接点及び充填−検出カソード接点を含んで構成された、前記ベース層上に配置された複数の電気接点と、
前記作用電極と前記作用電極接点と、前記対極と前記対極接点と、前記充填−検出アノードと前記充填−検出アノード接点と、前記充填−検出カソードと前記充填−検出カソード接点とをそれぞれ電気的に接続した、前記ベース層上に配置された複数の導電性トレースと、
前記ベース層上に配置されたオートオンコンダクタと、
露出させる作用電極部分及び露出させる対極部分を画定するために、前記作用電極及び前記対極の一部を覆った、前記ベース層上に配置された第1誘電層と、
遠端部と前記ベース層の前記近端部に位置合わせされた近端部とを含んで構成され、その範囲内に前記作用電極、前記対極、前記充填−検出アノード、前記充填−検出カソードを配置させたスロットを備えて、前記第1誘電層上に配置された第2誘電層と、
グルコースオキシダーゼとメディエータとを含んで構成された、前記スロットに配置された試薬層と、
前記第2誘電層に配置された多孔性カバーと、
を含んで構成され、
前記スロットは、前記血液サンプルを試験する試験領域を画定し、毛管作用により前記スロットの前記近端部を通じて血液サンプルを引き込む大きさとされたことを特徴とするテストストリップ。
【請求項2】
前記多孔性カバーは、メッシュ状に構成されていることを特徴とする請求項1記載のテストストリップ。
【請求項3】
前記多孔性カバーは、穿孔シートで構成されていることを特徴とする請求項1記載のテストストリップ。
【請求項4】
前記対極は第1セクションと第2セクションとを含んで構成され、前記作用電極は前記第1セクションと前記第2セクションとの間で前記ベース層上に配置されたことを特徴とする請求項1記載のテストストリップ。
【請求項5】
前記少なくとも4つの電極は、前記ベース層上にプリントされた第1導電性インクによって形成されたことを特徴とする請求項1記載のテストストリップ。
【請求項6】
前記第1導電性インクは、グラファイトを含んで構成されたことを特徴とする請求項5記載のテストストリップ。
【請求項7】
前記電気接点、前記導電性トレース及び前記オートオンコンダクタは、前記ベース層上にプリントされた第2導電性インクによって形成されたことを特徴とする請求項6記載のテストストリップ。
【請求項8】
前記第2導電性インクは、銀を含んで構成されたことを特徴とする請求項7記載のテストストリップ。
【請求項9】
前記テストストリップは厚部と薄部とを含んで構成され、前記厚部は前記近端部を含んで構成され、前記薄部は前記遠端部を含んで構成され、前記電気接点及び前記オートオンコンダクタは前記薄部に位置させられたことを特徴とする請求項1記載のテストストリップ。
【請求項10】
前記試薬層は、前記露出させた作用電極部分を覆うことを特徴とする請求項1記載のテストストリップ。
【請求項11】
血液サンプルを試験するテストストリップであって、
該テストストリップは、
第1基質と、
前記血液サンプルを試験する試験領域を画定する第2基質と、
作用電極、対極、充填−検出アノード及び充填−検出カソードを含んで構成され、前記試験領域における前記血液サンプルの少なくとも1つの電気的特性を測定する、前記第1基質に配置された少なくとも4つの電極と、
前記少なくとも4つの電極と電気的に接続された、前記第1基質に配置された複数の電気接点と、
前記少なくとも4つの電極から電気的に絶縁された、前記第1基質に配置された少なくとも1つのオートオン電気接点と、
を含んで構成されたことを特徴とするテストストリップ。
【請求項12】
前記テスト領域に配置された試薬層をさらに含んで構成されたことを特徴とする請求項11記載のテストストリップ。
【請求項13】
前記テスト領域を覆って配置されたカバーをさらに含んで構成されたことを特徴とする請求項11記載のテストストリップ。
【請求項14】
前記カバーは、多孔性カバーであることを特徴とする請求項13記載のテストストリップ。
【請求項15】
前記多孔性カバーは、メッシュ状に構成されていることを特徴とする請求項14記載のテストストリップ。
【請求項16】
前記多孔性カバーは、穿孔シートで構成されていることを特徴とする請求項14記載のテストストリップ。
【請求項17】
前記テストストリップは、近端部と遠端部とを含んで構成され、
前記第2基質は、前記近端部において前記血液サンプルを受用する開口を画定することを特徴とする請求項11記載のテストストリップ。
【請求項18】
前記近端部は、前記遠端部よりも幅が狭いことを特徴とする請求項17記載のテストストリップ。
【請求項19】
前記テストストリップは、厚部と薄部とを含んで構成され、
前記薄部は、前記近端部を含んで構成されたことを特徴とする請求項17記載のテストストリップ。
【請求項20】
前記複数の電気接点及び前記少なくとも1つのオートオン電気接点は、前記薄部に位置させられたことを特徴とする請求項19記載のテストストリップ。
【請求項21】
複数のテストストリップの製造方法であって、
該製造方法は、複数のテストストリップ構造体を絶縁シート上に形成すること、を含んで構成され、
前記テストストリップ構造体の各々は、
(a)作用電極、対極、充填−検出アノード及び充填−検出カソードを含んで構成された少なくとも4つの電極を含んで構成された第1導電性パターンを前記絶縁シート上に形成すること、
(b)前記少なくとも4つの電極に対する複数の電気接点、前記少なくとも4つの電極と前記複数の電気接点とを電気的に接続する複数の導電性トレース及びオートオンコンダクタを含んで構成された第2導電性パターンを前記絶縁シート上に形成すること、
(c)露出させる作用電極部分及び露出させる対極部分を画定するために、前記作用電極及び前記対極の一部を覆う第1誘電層を適用すること、
(d)スロットを画定し、該スロットに前記作用電極、前記対極、前記充填−検出アノード及び前記充填−検出カソードを配置させた第2誘電層を前記第1誘電層に適用すること、
(e)グルコースオキシダーゼとメディエータとを含んで構成された試薬層を前記スロットに形成すること、
(f)前記第2誘電層を覆う多孔性カバーを取り付けること、
を含んで構成され、
前記製造方法は、前記テストストリップの各々が、遠端部と、該遠端部よりも幅が狭い近端部と、該近端部まで伸長する前記スロットと、を含んで構成されるように、前記複数のテストストリップ構造体を前記複数のテストストリップに切り離すこと、
をさらに含んで構成されたことを特徴とする製造方法。
【請求項22】
前記多孔性カバーは、メッシュ状に構成されていることを特徴とする請求項21記載の製造方法。
【請求項23】
前記多孔性カバーは、穿孔シートで構成されていることを特徴とする請求項21記載の製造方法。
【請求項24】
第1導電性パターンを前記絶縁シート上に形成することは、
グラファイトを含んで構成された第1導電性インクを前記絶縁シート上にプリントすることを含んで構成されたことを特徴とする請求項21記載の製造方法。
【請求項25】
第2導電性パターンを前記絶縁シート上に形成することは、
銀を含んで構成された第2導電性インクを前記絶縁シート上にプリントすることを含んで構成されたことを特徴とする請求項24記載の製造方法。
【請求項26】
複数のテストストリップの製造方法であって、
該製造方法は、複数のテストストリップ構造体を一枚のシート上に形成すること、を含んで構成され、
前記テストストリップ構造体の各々は、
(a)試験領域を画定するスペーサと、
(b)作用電極、対極、充填−検出アノード及び充填−検出カソードを含んで構成された、前記シート上に形成された複数の電極と、
(c)前記複数の電極と電気的に接続された、前記シート上に形成された複数の電気接点と、
(d)前記複数の電極から電気的に絶縁された、前記シート上に形成された少なくとも1つのオートオン電気接点と、
を含んで構成され、
前記製造方法は、前記テストストリップ構造体を前記複数のテストストリップに切り離すこと、
をさらに含んで構成されたことを特徴とする製造方法。
【請求項27】
前記テストストリップ構造体の各々は、前記テスト領域を覆って配置されたカバーをさらに含んで構成されたことを特徴とする請求項26記載の製造方法。
【請求項28】
前記カバーは、多孔性カバーであることを特徴とする請求項27記載の製造方法。
【請求項29】
前記多孔性カバーは、メッシュ状に構成されていることを特徴とする請求項28記載の製造方法。
【請求項30】
前記多孔性カバーは、穿孔シートで構成されていることを特徴とする請求項28記載の製造方法。
【請求項31】
前記テストストリップ構造体の各々は、前記試験領域に配置された試薬層を含んで構成されたことを特徴とする請求項26記載の製造方法。
【請求項32】
前記テストストリップ構造体を前記複数のテストストリップに切り離すことは、
前記複数のテストストリップ構造体を、テーパセクションを含んで構成された複数のテーパ付きテストストリップ構造体にパンチングすること、を含んで構成されたことを特徴とする請求項26記載の製造方法。
【請求項33】
前記テストストリップ構造体を前記複数のテストストリップに切り離すことは、
前記複数のテーパ付きテストストリップ構造体を前記複数のテストストリップにスリッティングすること、をさらに含んで構成されたことを特徴とする請求項32記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2007−522449(P2007−522449A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551372(P2006−551372)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/002202
【国際公開番号】WO2005/073393
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(504144529)ホーム ダイアグナスティックス,インコーポレーテッド (28)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/002202
【国際公開番号】WO2005/073393
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(504144529)ホーム ダイアグナスティックス,インコーポレーテッド (28)
【Fターム(参考)】
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