説明

行動監視システム及びサーバ装置

【課題】監視対象者が転倒事故などをおこし易い階段や立ち入り禁止場所などの所定の領域へ接近したことを、報知することを可能とする。
【解決手段】行動監視システム100は、監視対象者の現在位置を検出する位置検出装置1と、監視対象者が立ち入る複数の領域が設定されたマップ情報DB432をもとに、検出された監視対象者の現在位置が何れの領域に含まれるかを検出するサーバ装置4と、検出された領域をもとに、監視対象者の所定の領域への立ち入りを報知する端末装置6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、行動監視システム及びサーバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入院中の患者などの行動を監視するシステムとして、部屋の出入り口に設置したタグ読取装置により、タグ装置が取り付けられた人物の出入りを監視するシステムがある。例えば、患者の行動を監視するシステムとしては、患者の物に識別情報が送信可能なタグ装置を取り付け、院内の患者が移動する可能性のある部屋の出入り口に取り付けたタグ読取装置から識別情報を受信するごとに、その識別情報に特定される患者の部屋への出入りを管理するサーバを備えた看護支援情報システムが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来技術においては、院内を徘徊する患者が転倒事故などをおこし易い階段や立ち入り禁止領域などへ接近したことを、管理する立場の看護師や医師などに報知することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、実施形態の行動監視システムは、監視対象者の現在位置を検出する位置検出装置と、前記監視対象者が立ち入る複数の領域が設定されたマップ情報をもとに、検出された前記監視対象者の現在位置が何れの領域に含まれるかを検出するサーバ装置と、検出された前記領域をもとに、前記監視対象者の所定の領域への立ち入りを報知する報知装置と、を備えることを特徴とする。
【0005】
実施形態のサーバ装置は、位置検出装置が検出した前記監視対象者の現在位置と、前記監視対象者が立ち入る複数の領域が設定されたマップ情報とをもとに、前記監視対象者の現在位置が何れの領域に含まれるかを検出する領域検出手段と、検出された前記領域をもとに、前記監視対象者の所定の領域への立ち入りを報知装置に報知させる報知手段と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、実施形態にかかる行動監視システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、病院のマップを示す概念図である。
【図3】図3は、病院に配置された表示装置を例示する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる行動監視システム及びサーバ装置の詳細を説明する。
【0008】
図1は、実施形態にかかる行動監視システム100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、行動監視システム100は、位置検出装置1、生体情報取得装置2、患者側の端末装置3、サーバ装置4、表示装置5、及び監視者側の端末装置6を備える構成である。患者とは、行動監視システム100において行動を監視される監視対象者である。本実施形態では、監視対象者を患者として説明するが、介護施設に入所している入所者などであってもよいことは言うまでもないことである。また、監視者とは、行動監視システム100において行動を監視する者であり、医師や看護師等の医療・介護従事者が該当する。
【0009】
位置検出装置1は、GPS(Global Positioning System)、RFID(Radio Frequency IDentification)、加速度センサ、無線LAN(Local Area Network)などにより、患者の現在位置を検出する装置である。位置検出装置1は、検出した患者の現在位置を無線LANなどの通信ネットワークを介してサーバ装置4へ通知する。具体的には、GPSの場合は、患者が保持するGPS受信装置(図示しない)で受信したGPS信号をもとに患者の現在位置の測量を行い、測量した結果をサーバ装置4へ通知する。また、RFIDの場合は、患者が保持する非接触型の無線タグを、部屋や廊下の出入口などに設置された読取装置(いずれも図示しない)で読み取ることで、患者の現在位置を検出し、検出結果をサーバ装置4へ通知する。また、加速度センサの場合は、患者の身体の加速度を検出し、GPSやRFIDなどと組み合わせることで、患者の現在位置を加速度の検出結果をもとに補正する。無線LANの場合は、院内の各所に設置されたアクセスポイントで、患者が保持する端末装置3などの電波状態を検出し、三角測量法によって患者の現在位置を検出し、その検出結果をサーバ装置4へ通知する。
【0010】
生体情報取得装置2は、携帯型の心電計、スパイロメトリー測定器、電子体温計などであり、装着した患者の生体の活動レベルを示す生体情報(心拍数、体温、呼吸数)を取得する。生体情報取得装置2は、取得した生体情報を無線LANなどの通信ネットワークを介してサーバ装置4へ通知する。
【0011】
ここでいう生体の活動レベルとは、生体として正常に活動している状態を頂点として、その状態からの外れ具合を活動レベルの低下として示すものである。具体的には、心拍数、体温、呼吸数が正常として活動している範囲内である場合を活動レベルが高い状態、その範囲を外れている場合を活動レベルが低い状態とする。なお、生体情報取得装置2が取得する生体情報は、患者の生体の活動レベルが判別可能であればよく、心拍数、体温、呼吸数の少なくとも一つであればよい。
【0012】
端末装置3は、例えば患者のベッド(図示しない)に設置され、患者が利用する情報端末である。端末装置3は、患者の操作を受け付けるタッチパネル等の操作部、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部、無線又は有線のLANなどの通信ネットワークを介してサーバ装置4と接続するための通信部、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)など(いずれも図示しない)を備えて構成される。
【0013】
端末装置3は、CPUがROMやHDDに記憶されたプログラムをRAMの作業領域に展開して順次実行することで、患者の操作に応じてサーバ装置4が提供する各種情報を画面表示するなどの機能を有している。例えば、端末装置3は、患者の移動先を予め登録された一覧の中から設定する画面を表示し、選択操作に応じた移動先を設定する。設定した移動先は、サーバ装置4へ通知される。
【0014】
なお、位置検出装置1、生体情報取得装置2、端末装置3は、患者ごとに備えられ、サーバ装置4と通信を行う際のMACアドレスなど、装置ごとにユニークに割り当てられた識別情報と、患者ごとにユニークに割り当てられた患者IDとを関連付けてサーバ装置4で管理している。したがって、位置検出装置1、生体情報取得装置2、端末装置3から通信があった場合、サーバ装置4は、装置ごとの識別情報を参照することで、どの患者の端末装置3から通信があったかを判別可能である。
【0015】
サーバ装置4は、行動監視システム100における位置検出装置1、生体情報取得装置2、端末装置3、表示装置5、及び端末装置6の情報を統括するための情報機器であり、通信部41、制御部42、記憶部43を備える構成である。
【0016】
通信部41は、制御部42の制御の下、無線又は有線のLANなどの通信ネットワークを介して、位置検出装置1、生体情報取得装置2、端末装置3、表示装置5、及び端末装置6との間で所定の通信プロトコルを用いたデータ通信を行う通信インタフェースである。
【0017】
制御部42は、CPU、ROM、RAMなどを備え、CPUがROMや制御部42に記憶されたプログラムをRAMの作業領域に展開して順次実行することで、サーバ装置4の動作を中央制御する。記憶部43は、HDDなどであり、制御部42が実行するプログラムや、位置・生体情報DB431、マップ情報DB432、表示装置位置情報DB433を記憶する。
【0018】
位置・生体情報DB431は、患者を識別するための患者IDとともに、位置検出装置1により検出された患者の現在位置、生体情報取得装置2により取得された患者の生体情報、検出・取得された時刻を示す時刻情報を一レコードとして記憶するデータベースである。したがって、サーバ装置4では、同一の患者IDのレコードを時刻情報が示す時刻順に検索することで、患者の現在位置の履歴を取得することができる。位置・生体情報DB431は、制御部42の制御の下、位置検出装置1より検出された患者の現在位置や生体情報取得装置2より取得された生体情報に変化があった場合に、変化後の情報が新しいレコードとして登録される。
【0019】
マップ情報DB432は、院外、病室、廊下、階段など、患者が立ち入る複数の領域ごとに、その領域を示す位置情報が登録されたデータベースである。図2は、病院200のマップを示す概念図である。図2に示すように、病院200には、廊下201、階段202、ベッド210が設置された病室203、診察室204、待合室205、便器211が設置されたトイレ206などが患者が立ち入る複数の領域として存在する。マップ情報DB432には、廊下201、階段202、病室203、診察室204、待合室205、便器211などの位置情報が登録されている。したがって、サーバ装置4では、位置検出装置1により検出された患者の現在位置をもとにマップ情報DB432を参照することで、患者が現在どの領域に存在するかを検出することができる。
【0020】
表示装置位置情報DB433は、表示装置5の位置情報が登録されたデータベースである。表示装置5は、上述した患者が立ち入る複数の領域(例えば病室、廊下、階段など)ごとに設置され、設置された領域とは別の領域への案内情報を表示する。具体的には、病室に設置され、廊下への案内を点灯して表示する表示灯、廊下に設置され、病室、階段などへの案内を点灯して表示する表示灯、廊下に設置され、LCDなどの表示画面で病室、階段などへの案内を表示する表示ディスプレイなどであってよい。
【0021】
図2の例では、表示装置5は、廊下201、階段202、病室203、診察室204、待合室205、便器211に設置される。例えば、病室203には、廊下201への案内を行う表示装置5が出入口に設置される。また、廊下201には、廊下201の入り口、診察室204の入り口、待合室205の入り口、階段202への降り口のそれぞれに表示装置5が設置される。
【0022】
図3は、病院200に配置された表示装置5を例示する概念図である。図3の例では、廊下201と接続する部屋のドア212の前に表示装置5が設置されている。具体的には、表示装置5は、矢印などを点灯させることで階段などの別の領域を案内する表示灯、「入り口」などの文字を点灯させることでドア212の入り口を案内する表示灯などである。
【0023】
表示装置位置情報DB433には、表示装置5の各々を識別するIDとともに、表示装置5の位置情報と、案内する別の領域についての情報が登録されている。例えば、図3に例示した表示装置5については、そのIDとともに、表示装置5が設置された廊下201の位置、矢印などを点灯させることで階段などの別の領域を案内すること、「入り口」などの文字を点灯させることでドア212の入り口を案内することが登録されている。したがって、サーバ装置4は、表示装置位置情報DB433に登録されている情報を参照することで、ドア212の前の「入り口」などの文字を点灯させた場合は、廊下201にいる患者にドア212から部屋へ至る順路を案内することを認識できる。
【0024】
制御部42は、上述したプログラムを実行することにより実現される機能部としての、検出部421、報知部422を備える。
【0025】
検出部421は、位置・生体情報DB431を参照することで、位置検出装置1より検出された患者の現在位置が何れの領域に含まれるかを検出する。例えば、位置検出装置1より検出された患者の現在位置を示す座標が図2に例示した病室203の領域に含まれる場合、検出部421は、患者が病室203にいるものとする。また、検出部421は、位置・生体情報DB431を参照することで、生体情報取得装置2より取得された患者の生体情報が予め設定された活動レベル以下であるか否かを検出する。例えば、監視者に報知が必要な程度の活動レベルが予め設定されており、検出部421は、患者の生体情報がその活動レベル以下に落ちた場合を検出する。検出部421の検出は、位置・生体情報DB431が更新されたタイミングや、所定の時間間隔で行われるものであってよい。
【0026】
報知部422は、検出部421で検出された患者が現在いる領域が予め設定された所定の領域である場合、その領域への患者の立ち入りを通信部41を介して端末装置6へ報知する。端末装置6は、端末装置3と同様、操作部、表示部、通信部、CPU、ROM、RAM、HDDなど(いずれも図示しない)を備えた情報端末であり、サーバ装置4からの報知内容を表示部に表示して監視者へ報知する。したがって、患者が現在いる領域が予め設定された所定の領域である場合は、その領域への患者の立ち入りが端末装置6より報知されることとなる。これにより、監視者は、監視対象者である患者が転倒事故などをおこし易い階段や立ち入り禁止場所などの所定の領域へ立ち入り(若しくはその近辺への立ち入り)を容易に知ることができる。
【0027】
例えば、図2の例の場合は、所定の領域として、階段202への転倒が考えられる廊下201を予め設定する。この場合、患者が廊下201へ移動したところで端末装置6での報知が行われることから、監視者は、転倒しやすい階段202へ患者が接近したことを事前に察知できる。
【0028】
また、報知部422は、検出部421において患者の生体情報が予め設定された活動レベル以下であると検出された場合、患者の活動レベルが低減したことを端末装置6へ報知する。端末装置6では、サーバ装置4からの報知を受けて、患者の活動レベルが低減したことを表示部に表示して監視者へ報知する。これにより、監視者は、監視対象者である患者の活動レベルが低減したことを容易に知ることができる。
【0029】
なお、制御部42は、端末装置3、6より患者IDなどにより患者を指定した移動距離が要求された場合、その患者IDのレコードを位置・生体情報DB431より検索して取得した位置の履歴をもとに、移動距離を算出する。次いで、制御部42は、算出した移動距離を通信部41を介して要求元へ通知する。要求元である端末装置3、6では、通知された移動距離を表示部に表示して報知する。これにより、患者や監視者は、指定した患者の移動距離を知ることができる。
【0030】
また、制御部42は、端末装置3、6より患者の移動先が設定された場合、検出部421で検出された患者が現在いる領域に設置された表示装置5に、設定された移動先への順路となる領域への案内を表示させる。
【0031】
具体的には、図2の例において、移動先として病室203から待合室205を設定したものとする。そして、図3のドア212は、廊下201から待合室205へと至る順路に該当するものとする。この場合、制御部42は、検出部421での検出により患者が病室203にいる間は、表示装置位置情報DB433の情報をもとに、病室203と廊下201との出入口にある表示灯などの表示装置5を点灯して、廊下201への順路を案内する。次いで、検出部421により患者が廊下201へ移動したことを検出した場合、制御部42は、表示装置位置情報DB433の情報をもとに、図3の表示装置5における「入り口」の表示灯を点灯して、待合室205へ至る順路を案内する。これにより、患者は、設定した移動先へ迷うことなくたどり着くことができる。
【0032】
なお、本実施形態では、端末装置6において表示することで監視者に報知することを例示した。しかしながら、表示による報知は一例であって、音声による報知であってもよいことは言うまでもないことである。
【符号の説明】
【0033】
100…行動監視システム、1…位置検出装置、2…生体情報取得装置、3、6…端末装置、4…サーバ装置、5…表示装置、41…通信部、42…制御部、43…記憶部、421…検出部、422…報知部、431…位置・生体情報DB、432…マップ情報DB、433…表示装置位置情報DB
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開2005−149085公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象者の現在位置を検出する位置検出装置と、
前記監視対象者が立ち入る複数の領域が設定されたマップ情報をもとに、検出された前記監視対象者の現在位置が何れの領域に含まれるかを検出するサーバ装置と、
検出された前記領域をもとに、前記監視対象者の所定の領域への立ち入りを報知する報知装置と、
を備えることを特徴とする行動監視システム。
【請求項2】
前記サーバ装置は、検出された前記監視対象者の現在位置の履歴をもとに、当該監視対象者の移動距離を算出し、
前記報知装置は、算出された前記移動距離を報知すること、
を特徴とする請求項1に記載の行動監視システム。
【請求項3】
前記監視対象者の生体の活動レベルを示す生体情報を取得する生体情報取得装置を更に備え、
前記サーバ装置は、取得された前記生体情報が予め設定された活動レベル以下であるかを検出し、
前記報知装置は、取得された前記生体情報が予め設定された活動レベル以下であると検出された場合に、前記監視対象者の活動レベルが低減したことを報知すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の行動監視システム。
【請求項4】
前記生体情報は、心拍数、体温、呼吸数の少なくとも一つであること、
を特徴とする請求項3に記載の行動監視システム。
【請求項5】
前記監視対象者の移動先を設定する端末装置と、
前記領域ごとに設置され、設置された領域とは別の領域への案内情報を表示する表示装置と、を更に備え、
前記サーバ装置は、検出された前記領域に設置された前記表示装置に、設定された前記移動先への順路となる領域への案内情報を表示させること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の行動監視システム。
【請求項6】
位置検出装置が検出した前記監視対象者の現在位置と、前記監視対象者が立ち入る複数の領域が設定されたマップ情報とをもとに、前記監視対象者の現在位置が何れの領域に含まれるかを検出する領域検出手段と、
検出された前記領域をもとに、前記監視対象者の所定の領域への立ち入りを報知装置に報知させる報知手段と、
を備えることを特徴とするサーバ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−113548(P2012−113548A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262643(P2010−262643)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】