説明

術後疼痛軽減用組成物および軽減方法

少なくとも3種の成分、体内に埋め込み可能な、吸収性、生体適合性である、パテおよび非パテの外科的処置に使用する疼痛軽減組成物であって、均一に混合した、疼痛の体内軽減用局所疼痛軽減活性を有する鎮痛剤、微粉末化増量物質、好ましくは50ミクロン未満の物質、例えば、脂肪酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、DBM、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、吸収性ガラス、ゼラチン、コラーゲン、単糖類と多糖類デンプンを含む組成物。鎮痛剤を溶解、分散または懸濁し得る有機液体、例えば、一価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル;C−C18一価アルコールとポリカルボン酸とのエステル;C−C30一価アルコール;トコフェロールおよびそれとモノまたはポリカルボン酸とのエステル;遊離カルボン酸、例えば、オレイン酸、カプリン酸、およびラウリン酸;ジアルキルエーテル類およびケトン類;ポリヒドロキシ化合物およびそのエステルとエーテル;エチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダムまたはブロックコポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についてのクロス・リファレンス
本出願は、2003年9月23日出願の米国仮出願第60/504,978号、2005年7月25日出願の仮出願第60/702,226号、2006年1月12日出願の仮出願第60/758,300号および2004年9月16日出願の米国特許出願第10/941,890号の恩典を主張するものである;これらの出願はすべて、記載により、本明細書に文字通り開示されたかのように本明細書に組み込まれる。
連邦政府協賛研究または開発に関する供述
(非適用)
コンパクト・ディスクで提出した配列表、表またはコンピュータ・プログラムリストの補遺に関する参照(37CFR1.52(e)(5)参照)
(非適用)
【0002】
本出願は、2004年9月16日に「吸収性インプラントおよび止血と骨欠損の処置におけるその使用方法」の標題で出願した米国出願第10/941,890号の一部継続出願である。
【0003】
本発明の背景
本発明の分野
本発明は、術後疼痛の管理のために、局所疼痛軽減活性を有する1種以上の麻酔剤または鎮痛剤を含む体内に埋め込み可能な(body implantable)組成物の外科的送達に関する。「鎮痛剤」および「麻酔剤」という用語は、本明細書において互換性のあるものとして使用する。
【背景技術】
【0004】
術後疼痛の軽減は、外科的疼痛管理の重要な側面である。NSAID、オピオイドおよびその他の鎮痛剤または麻酔剤などの全身薬物は、重大な臨床上の欠点を有することが知られている。この目標に向けた他の方法、例えば、局所麻酔剤の水溶液を、経皮輸送カテーテルを介して、外科的外傷の領域に注入する外部ポンプなどの方法が採用されているが、すべてに受け容れられるとは考えられていない。
【0005】
外科手術手技に際して、またその後に、手術外傷に伴う疼痛を軽減するために、しばしば水溶液の形態の可溶性局所麻酔剤を手術部位またはその周辺に注入する。残念ながら、それらはその作用が比較的短命である。
【0006】
殆どの局所麻酔剤は、アミノ部分の存在の結果として塩基性であり、容易にそれが酸と水溶性塩を形成することから、水溶性となり得る。しかし、遊離塩基形態の麻酔剤は、通常、本質的に水不溶性であり、この形態では通常の水系を用いて送達することができない。遊離塩基を使用する場合の例外は、局所麻酔剤であり、その場合の麻酔剤である塩基は、非水性軟膏担体、例えば、石油ゼリーに溶解させるか、またそのまま皮膚表面に適用することを含む。
【0007】
局所麻酔剤の作用持続時間は、それが神経組織と実際に接触している時間に比例する。局所麻酔剤は、可逆的に神経組織中での興奮伝導を遮断し、それによって身体の限局領域で一過性の感覚喪失を起こす。従って、局所麻酔剤は外科手術手技に際しての疼痛を予防するために使用され得る。局所麻酔剤の作用を引き延ばすために、ノルエピネフィリンなどの血管収縮性薬物が、しばしば麻酔剤溶液に添加される。一般的に言って、外科手術手法終了後の疼痛軽減の持続時間は、通常あまり長くない。
【0008】
局所麻酔剤はその水溶性によって2つのグループに、すなわち、難溶性化合物および可溶性化合物に分けることができる。難溶性化合物は局所麻酔剤としてのみ使用され、その持続時間は比較的長い。他方、可溶性麻酔剤のみが浸潤麻酔法に使用することができる。局所麻酔剤はさらにその化学構造、例えば、エステルまたはアミド結合を介して結合する部分を有する構造に従って分類し得る。一般に、エステルはより毒性が強く、短命であるが、アミド型麻酔剤はより長い作用持続時間を有する。
【0009】
術後疼痛軽減に対する先行技術アプローチが有する問題点は、注入した麻酔剤が一般に適切な時間、手術部位に留まっていないということである。本発明は先行技術方法のこの側面を対象とする。すなわち、本発明は、手術後に手術部位に鎮痛性物質を放出する埋め込み可能な遅延吸収性組成物を提供することを意図するものである。
【0010】
本発明者が2004年9月16日に出願した米国特許第10/941,890号、現在米国特許公開第2005−0065214−A1号(2005年3月24日公開)(すべての目的に関して言及により本明細書に組み込まれる)には、パテ様および非パテ様物質などの吸収性の系が記載されており、骨欠損の処置、および切断または外傷を負った骨および軟組織からの出血を制御することについて特許請求している。記載された系の多くの重要な特徴は、その系が無水であり、局所麻酔剤の遊離塩基が可溶性である有機成分を有することである。
【0011】
本明細書にて優先権を主張している‘890出願は、疼痛を仲介する媒体に鎮痛薬物を取り込ませることについて開示している。従来は、例えば、局所麻酔剤の酸付加塩である塩酸塩は、適切な媒体、例えば、パテと混合する。水溶性の塩酸塩は、身体の水性環境において、比較的速く(難溶性遊離塩基に比較して)媒体から溶出され、時間が長くなるにつれて有効性が低下する。
【0012】
本明細書にて優先権を主張している2006年1月12日出願の仮特許出願第60/758,300号において、本発明者は同一または異なる麻酔剤の有機可溶性遊離塩基と水溶性塩酸塩(または他の酸付加塩)との組み合わせが、外科的に埋め込み可能な吸収性組み合わせを形成して、長時間の疼痛管理を可能とし、その場合、水溶性成分は初期の疼痛軽減のために比較的速く溶出され、水不溶性遊離塩基成分は長時間の疼痛軽減のためによりゆっくりと溶出されることを開示した。本発明の基本的考え方は、実質的に無水の非水性組成物中で、麻酔剤の水溶性塩、例えば、塩酸塩をその対応する遊離塩基(または別の鎮痛剤の遊離塩基の形態)と組み合わせ、その疼痛軽減用組成物を埋め込むことであった。麻酔剤、例えば、リドカイン塩酸塩の塩酸塩部分は該系から比較的速く溶出し得る一方、非水性担体に溶解した遊離塩基、例えば、リドカインはよりゆっくりと溶出して、疼痛仲介の効果を引き延ばすと考えられた。担体組成物は体内で吸収され得るので、残りの不溶性遊離塩基は全て、インプラントが吸収されるにつれて、インプラント部位から放出されるであろう。従って、これまで水性媒体の使用では不可能であった長時間の麻酔効果が、容易に達成されると考えられた。
【発明の開示】
【0013】
発明の簡単な要約
本発明によると、内部外科手術部位での術中疼痛を軽減し得る鎮痛剤が、以下に、より詳細に記載する有機液体と鎮痛剤とを均一に混合した微粉末形態の固体物質を含むインプラント組成物から提供され得ることが見出された。該組成物は吸収され得る無水または本質的に無水のインプラントであり、適切な非水性液体分散性媒体と、局所疼痛軽減活性を有する鎮痛剤がそれに含まれる場合、適切な時間にわたり、術後疼痛を軽減するものである。
【0014】
従って、本発明の無水または本質的に無水の組成物の要素は、均一に混合した以下の3つの主要カテゴリーを含むと言える:
成分1:体内に埋め込み可能な、生体適合性の微粉末化した固体物質;
成分2:成分Aを分散または懸濁し得る有機液体;
成分A:局所疼痛軽減活性を有する鎮痛性化合物または化合物の混合物;
成分B:インプラントからの鎮痛剤の放出速度制御を助けるために加え得る任意の溶出制御剤。
【0015】
目的化合物を無水とすることが望ましいならば、成分のそれぞれを無水とすべきである。最終の組成物が本質的に無水であるべきならば、各成分それ自体が水分を担持していてもよい。無水の成分は、成分の混和に際し、またはその後で、さらに任意に水分を加えて使用してもよい。
【0016】
該成分は、共に混和する場合、その成分の性質および比率によって、本発明の無水の組成物または本質的に無水の組成物を生じ、液体成分2の量に依存して、様々な物理的形態、例えば、パテ、ローション、ゲル、クリームなどとなる。該組成物は、好ましくは滅菌されている。
【0017】
本発明の組成物は、内部外科処置部位に埋め込んだ場合、鎮痛剤の溶出源を提供する。活性な鎮痛剤は、一般に外科処置後、約0ないし8日間にわたって溶出可能であり、その間、疼痛軽減有効量が放出される。
【0018】
鎮痛剤の放出速度に影響する組成物の重要な特性は、組成物の粘稠度または粘度である。一般に、粘度の低い組成物は粘度の高い組成物よりも速く生成物を放出する傾向がある。粘度は、その低限では、自由に流動する液体、例えば、ローション、妨げずに放置すれば迅速に容器の辺縁の形状をとり、かつ許されるなら重力により容器から流れ出す他の液体から、より粘度の高いゆっくりと流動する液体、例えば、濃厚なシャンプー、蜂蜜、糖蜜などの粘度を有する液体まで、一般に環境条件下で流動しない半固体状の物質、例えば、ゲル、ペースト、クリームまで、造形可能な(moldable)物質、例えばパテ、ワックス、およびある部位に適用したときにその場に留まる傾向のある他の物質まで、環境条件下で造形不可能な硬い固体物質、例えば、ロッド、ボタンなどの予め形成され形作られた物質にまで及ぶ。
【0019】
成分2のタイプと量の調整は、完成品からの鎮痛剤溶出にも影響を与える。例えば、トコフェロール、酢酸トコフェリルなどの疎水性物質は、例えば、溶出速度を低下させる傾向がある。
【0020】
異なる麻酔剤は同様に異なる溶出速度を生じると期待され、とりわけそれが粒子の形態で存在する場合に期待される。従って、より大きいまたは多分散性粒子よりも、より信頼性の高い溶出速度プロフィールを得るために、懸濁可能な、または分散可能な麻酔剤は、比較的均一の粒子径分布を有する微粉砕した形態とすべきである。
【0021】
組成物を製造する好適な方法は、麻酔性化合物を液体成分2に溶解、分散または懸濁し、任意に溶出制御剤と混合し、溶液、分散液または懸濁液を形成させ、これを次いで固相成分1と混合して、すべての成分の混和物を形成することである。当該製品、すなわち、パテ、ゲル、ローションなどの物理的形態は、成分の物理的特性と相対量に依存する。外科手術手技に最も好適な形態は、いわゆるパテの形態である。従って、その好適な形態の本発明は、成分1、2およびA、任意の成分B、および使用者の裁量と求める特定の適用によって変わる以下に記載する他の任意の成分を含む、体内に埋め込み可能な、生体適合性の、本質的に無水の、滅菌された体内吸収性組成物を提供する。
【0022】
一旦外科処置患者の体内に埋め込まれたならば、該封入麻酔剤は、該インプラントからその周囲の組織に拡散し、傷つけられた局所神経末端から脳への疼痛シグナルを遮断する。該組成物は僅かに水溶性の麻酔剤を、酸付加塩の形態で、または遊離塩基の形態で、またはその両方の形態で含有し、その状況に応じて疼痛軽減の利用能に柔軟性と変化を与えることができる。そのような場合、該塩は予め成分1全体に分散させるか、または別法として成分2に分散させ、その後その分散液を固相の成分1と十分に混和し、分散液を形成する。有機媒体に可溶性の遊離塩基も使用するならば、それを有機媒体に溶解したままとし、それを固相と混和して、たとえ同じ速度ではないにしても、塩と共に溶出させる。
【0023】
さらに、本発明によると、埋め込み可能な組成物の成分の濃度を変化させて、異なる薬物溶出速度を提供し得ることが判明した。例えば、リドカイン遊離塩基、ステアリン酸カルシウムおよび液体クエン酸トリエチルを含むパテ様組成物において、3日間にわたりリドカイン遊離塩基を放出する。パテの液体成分をクエン酸トリエチルからプルロニック(登録商標)L−35(エチレンオキシドとプロピレンオキシドの液体ブロックポリマー)および酢酸トコフェリルに変更すると、リドカイン遊離塩基は8日間にわたり溶出される。液体プルロニック(登録商標)と固体プルロニック(登録商標)の混合物では、液体プルロニック(登録商標)のみのものより溶出時間が長い。我々の研究では、酢酸トコフェリルは溶出速度を低下させるが、リン酸三カルシウムとヒドロキシアパタイトは溶出速度を上昇させることが示されている。遊離塩基は酸付加塩よりも速く溶出し、遊離塩基/塩混合物では、驚くべきことに遊離塩基がより速く溶出される。その他の非毒性、非水性液体成分、例えば、麻酔性遊離塩基と混和し得るエーテル類(例えばポリアルキレングリコール類)も同様に使用され得る。
【0024】
本発明の製剤は、様々な粘度と凝集力を有する組成物であり、パテおよび非パテ製剤の粘稠度を含む。用語「パテ」とは、当該技術分野で使用されるように本明細書でも使用され、一般に当業者既知のものである。適用および最終用途により、軟塊(dough)(ペースト状軟塊など)、造形クレー、および様々な粘度のガラス工用パテ(glazier's putty)などが、適切な製品の粘稠度の例である。本発明において使用し得る種々の粘度のパテは、骨に付着し得るものである。一般に、柔軟で造形可能な、好ましくは非弾力性の凝集性混合物であるパテは、微粉末化した物質(成分1)から有機液体(成分2)と均一に混和して調製され、いずれの方向にも変形し得る形状をもつものであって、本発明のパテ様組成物にとって適切な粘稠度を有する。しかし、本明細書に記載されるように、凝集力が上記のパテよりも低い組成物も本発明の範囲内であり、より粘性で凝集力の高いパテがあまり適切ではない特別の適用で使用され得る。
【0025】
本発明の目的上、本発明のパテと、パテとは考えられないがなお本発明の範囲内である物質(本明細書では非パテ)との主な差異は、非パテがパテ製剤の凝集力よりも低い凝集力をもち、幾つかの場合には、パテよりも高い凝集力をもち得るということである。凝集力範囲の低い側にある本発明の個々の非パテは、クリーム、ペースト、軟膏、ローション、発泡体(foam)、ゲルなどの凝集力をもつことを特徴とする。インプラントとしてのそれらの使用は、非パテを適用し得る格子または構造を提供することにより容易となり、またその全体構造が手術部位に適用され得る。好ましくは、非パテは本発明のパテの凝集力の僅かな部分しか有せず、一般的に言ってパテに同じ影響を与えることはない小さい圧力の下でも、容易に崩壊し得るか、または容易に引き離される傾向がある。より高い限界では、すなわち、粘度がパテよりも高い場合では、該組成物は最終用途が必要とする、より硬い、形成された変形不能な段階であり得る。以下の記載は主として本発明のパテについての状況で示されるものであるが、他のより凝集力の低い物質が望ましいならば、成分の比率を適当に変更するか、または同じ目的を達成するために他の物質を加えることは、当業者にとって容易であると理解される。
【0026】
本発明は、生体適合性微細化可能な固相であって、該成分2の液体担体と混合したときに必要な粘稠度を生じる、実質的に全ての固相を使用する、医学的に有用な吸収性パテ様および非パテ様組成物の形成に関する。
【0027】
本発明の多くの組成物は、その疼痛管理の側面に加えて、滅菌された吸収性骨止血剤でもある。すなわち、これらは実質的に即効性外科止血作用を提供し、止血効率を損なうことなく、比較的短い時間後に体内に吸収され、周囲の手術部位に鎮痛剤を拡散させ得る。それらは、骨形成および引き続く骨修復に対する阻害が最小である。従って、該組成物は現在利用可能な物質よりも著しい医学的利点を有する。さらに、骨修復アジュバント、例えば増殖因子、特に、例えば血小板由来増殖因子(PDGF)および/または骨形成タンパク質(BMP)等々は、骨修復プロセスを刺激するために製剤に加えることができよう。さらに、コラーゲン、脱ミネラル化骨マトリックス(DBM)、および/またはヒドロキシアパタイトなどの薬物を加えることで、止血/疼痛管理物質を有利に骨伝導性または骨誘発性とすることができよう。適切な抗感染剤、例えば、トブラマイシンおよびゲンタマイシンで代表される抗生物質またはヨウ素、銀塩、トリクロサン、コロイド状銀などの静菌および殺菌物質の添加は、とりわけ、開放骨折などの汚染された開放創の感染の可能性を低下させるのに役立つ。着色剤の添加は、手術処置に際し、視覚化に役立つ。放射線不透過性物質の添加は、放射線検査を用いる術後の続発症の観察を可能とする。化学療法剤または放射性核種の添加は、例えば、腫瘍切除から生じる骨腔にパテを使用する場合に有用である。疼痛を低下させる鎮痛性化合物は、該組成物の成分Aを構成するが、出血を低下させる血管収縮剤および/または凝血誘発剤は有用な添加剤である。
【0028】
発明の詳細な説明
本発明の組成物は、少なくとも3種の成分、場合により4種またはそれ以上の成分を含む組成物を含み、その成分の少なくとも1つは局所疼痛軽減活性を有する鎮痛剤であるか、またはかかる鎮痛剤の組み合わせである。これらの組成物は、最も好ましくは体内吸収性であり、かつ生体適合性である。多くの態様において、該組成物はパテ様の粘稠度を有する。一実施態様において、該組成物は機械的に(mechanically)止血するタンポナーデであり、罹患領域にパテ様組成物を適用することにより骨の出血を停止する一方で、さらに鎮痛剤を放出する能力を有する点で有用である。「機械的に止血するタンポナーデ」とは、該組成物が化学的止血手段、すなわち、化学的手段または薬物を用いて、全体または部分的に出血を阻止することと対照的に、骨の出血領域を機械的に圧迫して出血を阻止することによって機能することを意味する。このパラグラフの最初の文章に述べた少なくとも3種の成分の中、成分1は微粉化した担体ビークルまたは増量物質であり、第二の成分、すなわち、鎮痛剤を溶解、分散または懸濁する本発明の有機液体成分2と均一に混和したときに、所望の粘稠度を形成するのに十分な程小さい平均粒径を有する。
【0029】
成分1の実例は、ヒドロキシアパタイト(本明細書にて使用する場合、ヒドロキシアパタイトはリン酸三カルシウムを含むリン酸カルシウムのすべての形態についての総称である)、カルボン酸塩、好ましくはステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸またはラウリン酸カルシウムなどのその同族体、または合成吸収性ポリマーなどの他の微粉末化剤、例えば、ポリグリコリド、ポリラクチド、ラクチドとグリコリドのコポリマー、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、並びに吸収性ガラス(例えば五酸化リンなどをベースとするもの)である。特定の成分1の固相は特に限定されるものではなく、生体適合性であって、適当な粘稠度の組成物が形成され得るように、微粉末にし得る実質的に全ての固体であり得る。勿論、成分1は成分2に溶解しない。
【0030】
成分2を分散するビークルは有機液体であり、鎮痛性成分Aと、次いで成分1と均一に混和したときに、パテ様または非パテ様インプラントの形成を可能とする液体である。
【0031】
本発明の3成分組成物は、適切な疼痛軽減物質の基本的特性を提供し、その幾つかは止血性であってもよく、本明細書に記載のように、所望により、必ずしも必要ではないが、下記に示す成分により例示される任意の成分をも含み得る。例えば、任意の成分3は吸収促進剤であり、任意の成分4は骨成長誘発物質である。以下により詳細に説明するように、本発明のパテ様および非パテ様組成物にさらなる特性を付与するために、他の成分を加えてもよい。
【0032】
以下は種々の成分についての詳細な説明である。
成分1
成分1は微粉末化した、好ましくは微粒化した、本質的に水不溶性の、好ましくは無水の(吸収された水分は除く)、生体適合性、体内吸収性物質から構成され、有機液体の鎮痛剤含有成分2と混和したときに、本発明の組成物を形成する。適切な組成物は、成分1物質の平均粒径が約100ミクロン以下である場合に得られるが、パテ様組成物が望ましい場合には、好ましい平均粒径範囲が、約3ないし約50ミクロンであり、最も好ましくは約6ないし約25ミクロンである。非パテ様組成物の粒径は、所望により、パテ組成物の粒径よりも大きい範囲である。
【0033】
本発明での使用に適した1セットの物質の例は、カルボン酸アニオンと金属カチオンを有する1種以上のカルボン酸の塩であり、その幾つかは当該技術分野で既知であり、米国特許第4,439,420号および第4,568,536号に記載されている。適切には、該塩は、鎖上に約6ないし22個の炭素原子、好ましくは8ないし20個の炭素原子を含む飽和または不飽和カルボン酸のカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、リチウムまたはバリウム塩であり得る。カルボン酸アニオンを供給する好適な飽和カルボン酸は、脂肪酸、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、およびその介在する(intervening)同族体から選択され得るが、最も好ましい酸は高級脂肪酸、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸であり、ステアリン酸が最も好ましい。パルミチン酸とステアリン酸のカルシウム塩およびアルミニウム塩が好ましい塩であり、ステアリン酸カルシウムがその優れた安全性プロフィールとパテ形成特性の故に、最も好ましい。しかし、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、またはラウリン酸アルミニウムが同様に適切である。
【0034】
カルボン酸アニオンを供給するために使用し得る適切な不飽和脂肪族酸の例は、オレイン酸とリノール酸であり、これらについては上記と同じカチオンが使用される。
【0035】
微粉末化した物質、例えば、平均粒径が約100ミクロン、好ましくは50ミクロン以下のカルボン酸塩以外の物質が有効な成分1物質であることが見出された。例えば、微粉末化したヒドロキシアパタイトが、とりわけ平均粒径約25ミクロン未満の場合に、とりわけ液体分散剤としての酢酸トコフェリルまたはクエン酸トリエチル(成分2)と優れたパテを形成することが見出されたことは驚くべきことであった。
【0036】
さらに、他の物質は、その幾つかについては成分4との関連で考察するが、微粉末化形態で提供される場合に成分1として有用である。これらの例は、脱ミネラル化骨マトリックス(DBM)、ミネラル化骨マトリックス(MBM)、不溶性吸収性コラーゲン、コラーゲン由来ゼラチン、単糖、および多糖である。生体適合性物質はいずれも非常に小さい粒径に変えた場合、本発明で使用する医学的に有用な組成物を形成すると考えられる。本発明の組成物を製造する場合、例えば、成分1として20〜30ミクロン付近のヒドロキシアパタイト(またはいずれかのリン酸カルシウムまたはリン酸三カルシウム)粒子、以下に記載の適切な成分2、適切な成分A、および成分4として骨チップ、例えば約0.5ないし約1mm以下の粒径を有する脱ミネラル化骨マトリックスまたはミネラル化骨マトリックスを有することは、珍しいことではない。
【0037】
成分1物質の他の例は、微細製粉した合成吸収性ホモ−およびコ−ポリマー、例えば、ポリグリコリド、ポリラクチド、ラクチドとグリコリドのコポリマー、ポリジオキサノン類、ポリカプロラクトン類、ジオキサノンのおよびカプロラクトンのおよび炭酸トリメチレンのコポリマー、単糖類、例えば、グルコースおよびマンノース、多糖類、例えば、カルボキシメチルセルロースおよびサージセル(登録商標)で代表される酸化セルロース、デンプン、適切には粉糖の形態のスクロース、アルギン酸、ヒアルロン酸、キトサンとそのアセチル誘導体など、並びに吸収性ガラスなどである。さらに、バイオガラスなどのある種の生物学的に活性な物質は(成分4との関連で以下に詳細に考察する)、通常の意味では吸収性とは考えられないが、成分1として微粉末化した形態で使用することができる。例えば、平均粒径が約25ミクロンである吸収性ポリマーは、例えば、酢酸トコフェリルまたはトリグリセリド油、とりわけ、米国特許第4,439,420号のひまし油と混合した場合に、有用かつ安定な吸収性止血性パテを形成する。従って、十分に小さな粒径まで小さくできる全ての天然または合成の吸収性ポリマーは、安定な適合性の成分2のビークルと適当な比率で混合すれば、安定な吸収性パテおよび非パテを形成する。
【0038】
五酸化リン(酸化ケイ素の代わりに)をベースとし、ネットワークポリマーとして酸化ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリもしくはアルカリ土類金属酸化物を含有する吸収性ガラスが、水性媒体にゆっくりと溶解し、成分1として使用し得ることが見出された。さらに、かかる化合物は、吸収促進剤として使用され得るものであり、この場合、成分1として使用された場合のように、必ずしも必要はないが、微粉末化形態で使用され得る。米国特許第4,612,923号は、これらのガラスに関して、ならびに合成吸収性外科用デバイスにとっての強度の強化と硬度の増強のための添加剤としての適用に関して、予備的先行技術に言及している。米国特許第4,612,923号の実施例1に記載された325メッシュのガラスがさらに50ミクロン以下の平均粒径まで微粉化された場合、米国特許第4,439,420号(言及により本明細書に組み込まれる)および本明細書に記載されたビークルと混合するとき、得られた微細な粉末が医学的に有用な吸収性パテを形成する。かかるガラスの水への溶解(吸収)速度は、アルカリ金属酸化物の比を増大させることにより増加させることができ、またアルカリ土類金属酸化物の比を増大させることにより減少させることができる。
【0039】
以上考察したこの新規な方法、すなわち、増量ビークル成分1の粒径を劇的に低下させることによる有用な吸収性パテおよび非パテの形成方法は、先行技術における多くの困難な問題点、とりわけ、例えば、骨止血剤としての合成吸収性ポリマーの問題点を克服するものである。
【0040】
成分2
第二成分、すなわち、有機液体として、パテまたは非パテなどの医療用組成物を調製するための分散ビークルとしてこれまで採用されていなかった幾つかのクラスの物質について、例示としてここに言及することができるが、強調すべきことは、分散ビークルとして既知の物質も採用し得るということである。成分2は成分A、鎮痛剤を分散または懸濁するためのビークルとして作用し、本発明のこの側面において、成分2は、パテまたは非パテ塊を形成するために、成分1との混合を容易にする生体適合性の本質的に無水の有機液体である。好適ではないにしても、成分2は、もしそれが別個に供給される有機液体ビークル(以下により詳細に考察するように、液化剤)を含むならば、固体であってもよい。「成分2」という用語は、かかる事例にも同様に適用することを意味する。
【0041】
成分2は通常水と混和性ではないが、水と混和性であってもよい。重要なことは、無水または本質的に無水の最終疼痛軽減組成物を製造するには、それが無水または本質的に無水であることを考慮することである。この点において、「本質的に無水」とは何を意味するかをこの時点で説明することが適切である。本発明の好適な組成物は、大気からの吸収によって存在する可能性のある水分以外の水分を含まない。従って、最終組成物を作製するために使用される成分それぞれは、それ自体が水分を含まないことが好ましい。
【0042】
しかし、幾つかの状況下では、様々な理由で成分または最終組成物中の少量の水分は許容され、望ましくさえあり得る。従って、組成物の総量の約10重量%までの範囲の水分量は許容される。吸収された水分以外の水分がゼロパーセントの組成物は無水と考えられ、一方、約10%までの水分を含む組成物は、本明細書では本質的に無水と考えられる。成分は約10%より多い水分を含有する最終組成物を生じる程の多量の水分を含むべきではない。好ましくは、本発明の組成物は、5%未満の水分、最も好ましくはゼロパーセントの添加水分(吸収された水分を除く)を有する。後者の事例では、その用語が当該技術分野で通常に使用されているとおりの「無水」と考えられる。
【0043】
本明細書で使用される用語の理解を助けるために、また本発明のこの側面を先行技術の側面と識別するのを助けるために、多分この時点で、適切な化学的特質を確実に理解されるように、関連する古典的化学用語法を簡単にレビューすることにより、本明細書に言及されている化学物質の特性を強調することが有用であろう。
【0044】
カルボン酸は、OH基が共有結合を介してカルボニル官能基に結合していると定義される物質である。結果として、カルボン酸は、カルボニルの官能性(例えば、アルデヒド、ケトン)またはヒドロキシル官能性(アルコール)のいずれかを含む物質と完全に別個の物理的および化学的性質を有する。同様の区別は、カルボニル基とヒドロキシル基の両方を含むが、共有結合を介して直接結合していない物質、例えば、ヒドロキシアセトンなどについても当てはまり、当該物質はケトンとアルコール両方の性質を示すが、カルボン酸の特性は示さない。カルボン酸は常にカルボニルとOH基が組合わさっており、酸性の特性を有するが、OH基はアルコールのヒドロキシル基の特性はもたない。それ故、モノカルボン酸はモノヒドロキシ化合物としては記載されない。これを説明するために、酢酸とエタノールを考えよう;これらは共にOH基を含む2個の炭素の化合物である。酢酸の場合、OH基の水素原子は水中でイオンとして遊離するが、一方、ヒドロキシル基の水素原子はそのように遊離しない。従って、カルボン酸は解離して、塩基とカルボン酸塩、例えば、ステアリン酸カルシウムを形成する;これが、解離せず塩基と塩を形成しないアルコールのヒドロキシル基と、カルボン酸のOH基を明確に区別する特徴的な性質である。従って、カルボン酸をアルコール、一価アルコール、またはその類の用語として特徴付けることは、それが化学的な意味においてアルコールではないので、全くの間違いである。また、単にカルボン酸のOH基を含むからといって、ポリカルボン酸を、ポリアルコールまたはポリヒドロキシ化合物またはポリオールということはできない。このような基はアルコールとして特徴付けられない。これらの区別の一例は、周知の分子、クエン酸を考えることで説明される。この物質は同じ分子内に3個のカルボン酸基と1個のヒドロキシル基をもつ。クエン酸はモノヒドロキシ(一価)アルコールであり、同時にポリカルボン酸でもある。クエン酸が3個のカルボン酸OH基を含むという事実は、このモノヒドロキシ化合物をポリヒドロキシ化合物と分類するものではない。反応性、合成および反応が主として異なるために、有機化学のどの教科書でも、アルコールの化学は常にカルボン酸の化学と別個の章で考えられている。
【0045】
アルコールは炭化水素のヒドロキシル誘導体、または水のアルキル誘導体と見なし得る。それらはR−OH構造(ここで、Rはアルキル基である)で代表される。カルボン酸ヒドロキシル基の容易にイオン化する水素原子と対照的に、R−OHの水素原子は実質的に水中でイオン化されない。このことに基づいて、脂肪族アルコールは酸性というよりはむしろ中性と考えられる。1個以上のヒドロキシル基が炭化水素部分に付加し得る結果、例えば、プロパンは1個のヒドロキシ基(プロピルアルコール)、2個のヒドロキシル基(プロパンジオールまたはプロピレングリコール)または3個のヒドロキシル基(プロパントリオールまたはグリセロール)を有し得る。プロピレングリコールおよびグリセロールは、ポリオールの単純な例である。ヒアルロン酸などの多糖類は、各モノマー単位に多くのヒドロキシル基を含み、正しくはポリオールと命名される。アルコールは、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの短いアルキル鎖を有するか、またはラウリルアルコール、ミリスチルアルコールなどの長いアルキル鎖を有し得る。非常に重要なことは、ラウリン酸(C1123COOH、脂肪酸)およびラウリルアルコール(C1225OH、脂肪族アルコール)は、両方とも12個の炭素原子を含むが、酸化状態と官能性が完全に異なる分子である。
【0046】
一般に、エステルはカルボン酸とアルコールとの反応から誘導され、加水分解により元のカルボン酸とアルコールにもどすことができる。従って、酢酸とエチルアルコールはエステル化工程で組合わされて、酢酸エチルと水を形成する。脂肪(または植物油または動物油)という用語は、種々の長鎖飽和または不飽和脂肪酸とグリセリン(グリセリド)とのエステルに限定される。パテ様物質調製のためのビークルとして先行技術に引用されている油は、グリセリドのみであり、例えば、ひまし油、ゴマ油、オリーブ油など、並びに単純な脂肪酸エステル、例えば、ラウリン酸エチルである。パテ様物質調製のための媒体として先行技術に提案されたことのないものは、遊離の液体脂肪族カルボン酸、例えば、飽和カプリル酸および不飽和オレイン酸である。最も重要なのは、脂肪族アルコールと低分子量モノ−またはポリカルボン酸とのエステル、例えば、酢酸ラウリル(ラウリルアルコールと酢酸とのエステル)の使用は、パテ様物質の調製にとって完全に新規であり、先行技術で引用されたラウリン酸エチル(ラウリン酸とエチルアルコールのエステル)とは化学的に異なる。
【0047】
ここで本発明の成分、とりわけ成分2の説明に戻ると、その要素は、以下のように、より具体的に説明される:
【0048】
成分2として使用され得る多くのクラスの有機液体の中で、以下のものに言及する:
【0049】
第一のクラスの成分2としては、C−C18一価アルコールとC−C脂肪族モノカルボン酸との1種以上の吸収性エステルがある。一価アルコールは、C−C18アルコール、例えば、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、および介在するその同族体から選択される。好適なアルコールは高級脂肪族アルコール、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、およびステアリルアルコールである。C−Cモノカルボン酸と形成される有用なエステルの実例は、酢酸ラウリルおよびプロピオン酸ミリスチルである。
【0050】
第二のクラスの成分2としては、C−C18一価アルコールとポリカルボン酸との1種以上の吸収性エステルがある。C−C18一価アルコールは、第一のクラスのエステルにおいて記載したC−C18アルコールに加えて、低級脂肪族のC−Cアルコール、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、およびオクタノールであり、対応するエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘプチル、ヘキシル、およびオクチル部分を生じる。該ポリカルボン酸は、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、クエン酸、リンゴ酸、およびヒドロキシ官能基のエステル、もし存在するなら、エステル化されたポリカルボン酸、とりわけ、アセチルクエン酸およびアセチルリンゴ酸から選択され得る。当業者にとって、アルコール/酸エステルの多くの組み合わせが上記のものから選択され得ることは自明であり、一価アルコール/ポリ酸エステルからの本発明での使用に望ましいものは、コハク酸ジエチル、コハク酸ジオクチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、およびその高級および低級同族体、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチルおよびその高級および低級同族体、ブチリルクエン酸トリエチル、リンゴ酸ジエチル、リンゴ酸ジペンチル、およびアセチルリンゴ酸ジエチル、およびその高級および低級同族体である。
【0051】
成分2として適当な別のクラスの物質は、約C30までの高級C−C12アルコール、好ましくは液体または液化し得る一価アルコール、例えば、オクタノールおよびデカノールなどである。とりわけ驚くほど好適なこのクラスの態様は、芳香族アルコールトコフェロール(ビタミンE)であり、その光学活性体またはラセミ体およびアルファ、ベータ、ガンマまたはデルタ体のいずれかの形態、並びにC−C10脂肪族モノカルボン酸、ポリカルボン酸またはその混合物との液体トコフェロールエステル(本明細書では時にトコフェリルエステルという)である。有用なものは、トコフェロールエステル、例えば、酢酸エステル、酪酸エステル、カプロン酸エステル、カプリル酸エステル、カプリン酸エステル、および介在するその同族体、およびポリカルボン酸エステル、例えば、前記文節で説明したもの、とりわけ、コハク酸、クエン酸、およびリンゴ酸のエステルであり、コハク酸エステルが好ましい。酢酸トコフェロールはまた、溶出制御剤としても有用である(成分B)。
【0052】
成分2として有用な別のクラスの物質は、約10〜14個の炭素原子を有する炭化水素である。例えば、デカンおよびドデカンが好適である。
【0053】
成分2として有用な別のクラスの物質は、液体または液化可能な飽和または不飽和の遊離のカルボン酸、例えば、非エステル化脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、カプリル酸、カプリン酸、およびラウリン酸である。このクラスにおいては、通常液体の飽和脂肪酸が適当であるが、その不快な臭気のために望ましくないこともある。室温で液体である低融点共融混合物を形成する幾つかの低沸点飽和遊離脂肪酸混合物もまた適切であり得る。飽和遊離脂肪酸の一つの利点は、放射線殺菌に対する改善された安定性にあり、一方、不飽和酸、例えば、オレイン酸は、無酸素容器中で放射線殺菌する必要があり得る。固体の酸の高級同族体は、液化媒体または他の適切な成分の存在下で成分1との混合に使用され得る。成分2を確かに液化させ、かつ生体適合性である限り、全ての適合性液体が使用され得る。
【0054】
成分2として有用な別のクラスの物質は、単純なジアルキルエーテルのクラスおよびアルキルアリールエーテルのクラス、並びにクラウンエーテルとして知られるアルキレングリコール(例えばエチレングリコール)の環状ポリマーであって沸点が約80℃より大きいすべてのもの、例えばジ−n−ブチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、ジ−n−オクチルエーテルなど、および非対称エーテル、例えば、エチルヘキシルエーテル、エチルフェニルエーテルなど、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダムコポリマーであり、好ましくは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの種々の比率の、種々の分子量の、好ましくは1000ないし10,000のエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック(非ランダム)コポリマー(プルロニック(登録商標))である。それらは液体または固体の形態で利用し得る。本発明での使用に望ましい形態は、液体プルロニック(登録商標)であり、これは接頭語「L」によって製造業者(下記参照)により特徴付けられる。フレークについては「F」、または粉末については「P」で特徴付けられるプルロニック(登録商標)の固体形態は、液体プルロニック(登録商標)に溶解、分散または懸濁可能であるか、または所望により別の液化剤と共に使用され得る。適切な物質の実例は、以下の実施例に示されるものである。成分2としての使用の適合性に加えて、それらは吸収促進剤としても使用され得る。それらはプルロニック(登録商標)の商品名で、BASFコーポレーション(マウンテイン・オリーブ、ニュージャージー07828)から入手し得る。
【0055】
成分2として有用な別のクラスの物質は、沸点が約80℃を超える対称性および非対称性ジアルキルケトンおよびアルキルアリールケトンであり、例えば、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、エチルプロピルケトン、メチルペンチルケトン、および2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、およびメチルフェニルケトンなどである。
【0056】
成分2として有用な別のクラスの物質は、ポリヒドロキシ化合物、ポリヒドロキシ化合物エステル、ポリヒドロキシ化合物の溶液、およびその混合物、および脂肪酸エステルからなる群のメンバーから選択される。これらの中で好適なのは、非環状多価アルコール、ポリアルキレングリコール、およびその混合物からなる群より選択される液体ポリヒドロキシ化合物である。前記の具体例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、トリメチルオールエタン、トリメチルオールプロパン、エリトリトール、ペンタエリトリトール、ポリエチレングリコール類、モノラウリン酸グリセロールなどのグリセロールの脂肪酸モノエステルの液体溶液である。上記のうち、固体は、プロピレングリコール、グリセロール、モノアセチン、ジアセチン、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物などの適切な溶媒媒体に溶解または分散され得る。グリセリドとしては、モノグリセリド、例えば、酢酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、その同族体など、ジグリセリド、例えば、ジ酢酸グリセリル、ジカプリン酸グリセリル、ジ酪酸エステル、ジラウリン酸エステルなど、およびトリグリセリド、例えば、オリーブ油、ひまし油、アーモンド油、ゴマ油、綿実油、コーン油、たら肝油、ベニバナ油、および大豆油などに言及し得る。留意すべきは、前記のポリヒドロキシ化合物を、所望により、吸収促進剤としても使用され得ることである。
【0057】
一般的な適用可能性についての記載として、留意すべきは、室温で液体である成分2の物質は、成分2として好適な物質であり、それらが液体であるため、液化剤は必要のないことである。しかし、室温で固体である化合物も、成分2物質として有用である。かかる事例において、とりわけパテが望まれる場合、固体の成分2は、好ましくは成分Aと、次いで成分1との混和前、またはその間、またはその後に、成分Aを液化、溶解、分散または懸濁し得る吸収性生体適合性液化剤を使用することにより、液体形態に変換される。本明細書にて使用される場合の「液化剤」とは、成分Aを溶解、分散または懸濁し、次いで固体成分2と混合しうる適切な有機溶媒などの物質をいう。他の物質は、たとえその物質が通常の意味で有機「溶媒」とは考えられないものでも、または熱などで固体を液化させ得る物質も、または均一なパテ、クリームまたはペースト様混合物の形成を助けるような、固体を液体に分散液として分散し得る物質も使用され得る。使用される特定の物質は、勿論、特定の製剤に使用される成分2および成分Aの性質に依存する。適切な物質は、成分2として本明細書に正確に説明されていないが、成分2に類似する物質である。
【0058】
前記の新規概念および組成物、とりわけ、上記のモノアルコールと、モノ−もしくはポリカルボン酸とのエステルを利用する組成物は、放出可能な鎮痛剤を含む吸収性骨止血性インプラントを提供する。比較的低分子量の、非毒性、急速分解性の単純エステル、例えば、コハク酸ジエチルおよびクエン酸トリエチルなどの新規の利用が、遥かに高分子量の脂肪酸トリグリセリド、例えば、ひまし油などの、成分2に対する優れた代替品を提供することが判明した。従って、本発明のこの側面によると、所望により、成分2の当該技術上既知のもの、すなわち、疎水性、遅速吸収性エステル、例えば、リシノール酸トリグリセリド、ひまし油、ならびにミリスチン酸イソプロピルなどの脂肪酸エステルにより代表されるトリグリセリド類の両方を回避できる。
【0059】
しかし、米国特許第4,439,420号に記載されているような、技術上既知の成分2物質を含有するこれら技術上既知のパテ組成物は、いずれかの事例の本発明の有用な疼痛軽減組成物を得るために、とりわけ、本発明の以下の側面による骨形成骨止血性物質に使用され得る。遅延吸収特性を有するのにかかわらず、骨形成性をも有する骨止血性組成物を有することが望ましい場合、当該技術上既知の組成物は、骨形成性物質、例えば、脱ミネラル化骨マトリックス(DBM)、ミネラル化骨マトリックス(MBM)、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、または増殖因子、例えば、骨形成タンパク質(BMP)および血小板由来増殖因子(PDGF)などを加えることにより改善され得ることが、以下に記載するように、見出された。
【0060】
成分2としての使用に望ましいものは、具体的実施態様において以下のとおりである:酢酸トコフェリル、クエン酸トリエチル、分子量約1900ないし約8000のエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの液体ブロックコポリマー(プルロニック(登録商標)L−35、分子量1900が特に好ましい)、およびプルロニック(登録商標)L−35とF−68(プルロニック(登録商標)のフレーク形態)との混合物。
【0061】
成分A
成分Aは本発明の重要な成分、すなわち、上記の疼痛の内部軽減に適する局所疼痛軽減活性を有する鎮痛剤である。該麻酔剤が外科処置部位に埋め込まれたときに、局所(局部)疼痛軽減活性を有する限り、それが通常注射により、または全身的に使用される鎮痛剤であるかどうかは問題ではない。これらはここで、また以下の明細書において、時に「鎮痛剤成分」という。本発明にて有用な鎮痛剤は、好ましくは、遊離の塩基形態で存在するもの(エステルまたはアミド結合で結合する部分をもつ鎮痛剤を含む)およびその酸付加塩の形態で存在するものである。これらの実例は、「−カイン(-caine)」の接尾辞をもつ鎮痛剤であり、とりわけ、ベンゾカイン、ブピバカイン、ジブカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、プロカイン、クロロプロカイン、エチドカイン、テトラカイン、キシロカイン(xylocaine)、およびロピバカイン(propivacaine)である。酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩などのハロゲン化水素酸塩を採用し得る。好ましくは、リドカインおよびリドカイン塩酸塩である。
【0062】
局所疼痛軽減活性を有する多くの他の鎮痛剤、例えば、非ステロイド系抗炎症化合物、例えば、イブプロフェン、アスピリン、アセトアミノフェン、ナプロシンなど、フェンタニルなどの非オピオイド類、および疼痛軽減プロスタグランジン類などを採用し得る。使用される実際の薬物は、使用する投与量で当該部位で局所疼痛軽減作用を有し、生体適合性、すなわち、許容できない程毒性ではない限り、特に限定されない。
【0063】
成分B
鎮痛剤がパテから溶出する速度を変化させる物質を添加することもできる。例えば、親水性、生体適合性、吸収性物質、例えば、ラウリン酸エチルまたは酢酸ラウリルなどの脂肪酸または脂肪アルコールのエステル、および酢酸トコフェリルなどのトコフェロール類などの添加が、パテからの麻酔剤の溶出を遅延させることが見出された。他方、より疎水性の添加剤、例えば、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイトDBMまたはレシチンなどの添加が、パテからの麻酔剤の溶出速度を増大させる。疎水性化合物は約20%の濃度まで添加し得るが、親水性添加物の40%までが溶出速度の増大に有効である。
【0064】
成分3−任意
成分3は吸収促進剤として任意に含まれるが、埋め込まれた塊の崩壊を物理的に助けることにより吸収速度を制御するためにも使用され得る。先行技術で使用されている促進剤は、それらが毒性でないか、または他の点で生体非適合性でないならば、使用し得る。先行技術化合物の1種またはその組み合わせ、例えば、カーボワックス(登録商標)、プルロニック(登録商標)、(上記成分2の考察および下記の考察参照)およびグリセリン、プロピレングリコール、レシチン、ベタイン、およびポリヒドロキシ化合物、例えば、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロースおよびキトサンおよびそのアセチル誘導体などが、本発明の組成物における吸収増強剤として上記の但し書き付きで使用され得る。
【0065】
しかし、この目的のために、膨潤性または溶解性かつ吸収性である他の物質、例えば、可溶性もしくは不溶性の天然もしくは合成のポリペプチドであって、精製、粉末化不溶性の繊維性であるが膨潤性であるコラーゲン、より急速に吸収される可溶性トロポコラーゲン、例えば、ビトロゲン(登録商標)およびより急速に吸収される冷水および熱水可溶性のポリペプチド、例えば、ゼラチン、レシチンおよびトリトン(登録商標)X−100などのオクチルフェニルエトキシレート類により代表されるものが、膨潤性を助ける生体適合性界面活性剤として使用され得る。ポリビニルピロリドンおよび他の可溶性吸収性ポリマー、例えば、成分2と関連して上で考察したエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー、および比較的親水性のポリペプチド、例えばポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、およびそれらの塩もまた、この文脈で機能的である。本発明の組成物は、成分3として、不溶性繊維性コラーゲン、可溶性コラーゲン、ゼラチン、オクチルフェニルエトキシレート(例えば、トリトン(登録商標)X−100)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーまたはランダムコポリマー、ポリビニルピロリドンまたは吸収性五酸化リンをベースとするガラスまたは前記の安定な混合物を含み得る。
【0066】
粒径が約200〜500ミクロンの範囲のものは、適切な結果を生じるが、より大きなまたはより小さな粒径も最終使用者の要望によっては採用され得る。ゼラチン、PVPおよび他のポリマーは、吸収促進剤としてではなく、粘稠化添加剤として脱ミネラル化骨技術に使用されている。ゼラチンの粘稠性はゼラチンのブルーム数とともに直接的に変化する。ブルーム数が100〜300の範囲のゼラチンは本発明の組成物に適しているが、得られる製品が最終使用者に許容されるならば、これらの数値を超えていても、それ以下でも採用され得る。
【0067】
上記の性質を有する組成物を生成する前記成分の幾つかの適切な比率の例は、以下のとおりである(最終組成物の重量に基づく):
成分1:約5ないし80%、好ましくは約20ないし60%。
成分2:約5ないし70%、好ましくは約20ないし60%。
成分A:医薬的有効量、適切には約5ないし25%、好ましくは約10ないし20重量%。
成分B:0ないし約40%。
水分 :0ないし約10%。
【0068】
これまでの考察は、殆どがパテの粘稠度を有する材料の関連で提示したものであるが、幾つかの適応では、粘度の比較的低いまたはより凝集性の低い組成物、またはより粘度の高い、より凝集性の高い組成物を有することが望ましい場合がある。例えば、本発明の組成物を骨の空隙(ドリル穿孔またはその他の方法で形成、例えば、亀裂骨折)に入れることが望ましい場合、粘度の高いパテでは適用するのが難しいだけである。粘度の低い形態の本発明のパテ組成物は望みどおりの代替物たり得る。この目的を達成するためには、本明細書に提示された比率を変え、液体をより高濃度とするかまたは低濃度とするか、または適合性液体希釈剤を加えることのみが必要である。このアプローチを用いて、該物質の注射可能な形態を同様に得ることができる。すでに言及した他の凝集力の低い非パテ組成物、例えば、クリーム、軟膏、ゲル、ローションなどは同様に調製され得る。
【0069】
成分4−任意
上記の製品に含まれるのは、骨の損傷部位で骨の成長を可能とし得る適切な疼痛軽減製品である。従って、これらは骨伝導性である。本発明の望ましい側面は、該製品を同様に骨誘発性とすること、すなわち、成分4である骨の成長を誘発するのに有効な量の骨成長誘発物質を含む製品を提供することである。従って、増殖因子などの骨形成物質、例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF−ベータ)、インスリン関連増殖因子−I(IGF−I)、インスリン関連増殖因子−II(IGF−II)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ベータ−2−ミクログロブリン(BDGFII)、骨形成タンパク質(BMP)、およびその組み合わせを取り込ませると、様々な程度で骨形成を刺激する。その他の骨成長誘発物質、例えば、脱ミネラル化骨マトリックス(DBM)、オステオネクチン、オステオカルシン、オステオゲニン、およびその組み合わせ、ミネラル化骨マトリックス(MBM)、リン酸三カルシウム、並びに生物活性ガラスは、止血性製品を適切に骨形成性とする。
【0070】
使用される場合、本発明の組成物に加えられる骨形成性物質の適切な量は、その物質にもよるが、約0.001ないし約60重量%、好ましくは約0.001ないし約40重量%の範囲である。成分4として、すなわち、骨形成性物質として使用される場合、DBMまたはミネラル化骨などの特定の薬物を、より大きな平均粒径の形態で使用することが好ましい。適切なより大きい平均粒径は、約0.05ないし10mm、好ましくは約0.1ないし5mm、最も好ましくは約0.5ないし1mmの範囲である。最終使用者の要請を満たすのであれば、より小さいもしくはより大きい粒径の成分4、またはより多いもしくはより少ない量の成分4を使用することも適切である。
【0071】
本発明組成物に使用すべき骨形成性物質の相対的量に関して、骨成長誘発有効量を使用することとは、該組成物中で骨誘発性であるのに適切な量および形態の物質であることを意味する。使用量は骨形成剤の有効性と固体物質の平均粒径によって変化し得る。例えば、BMP、血小板由来増殖因子(PDGF)などの増殖因子は、僅かな重量パーセント濃度で有効であるが、一方、DBMおよびミネラル化骨マトリックスの有効量は、通常、より高い重量パーセント濃度、例えば、約10%ないし約50%以上であり、好ましくは成分1で使用されるものよりも幾分大きい平均粒径である。
【0072】
骨成長誘発物質の添加は、本発明の組成物を改善するばかりでなく、先行技術の止血製剤をも改善して、その上、新規の組成物を提供する。かかる添加はこれらの止血製剤を同様に骨形成性とする。比較的大きな粒子がパテ構造を“拡げる”傾向があり、従って誘発された骨が成長し得る空間を提供するため、骨形成物質の存在は骨伝導性をも改善すると考えられる。
【0073】
とりわけかかる添加により改善されるこのタイプの先行技術の止血性製剤は、米国特許第4,439,420号および第4,568,536号(それぞれは、すべての目的に関して言及により本明細書に組み込まれる)に開示されているものである。従って、本件明細書および請求項は、上記特許の全文明細書および請求項を本明細書に逐語的に再現されているかのように読むべきである。便宜上、これら特許の製剤は、一般に、骨出血の制御に使用する吸収性止血組成物を含むことを特徴とし、生体適合性脂肪酸塩を含む成分、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、リチウムおよびバリウムからなる群より選択される当該脂肪酸塩のカチオン、エチレンオキシド/プロピレンオキシドのブロックコポリマー、ポリヒドロキシ化合物、ポリエチレングリコールとメトキシポリエチレングリコール、トリグルセリドと脂肪酸エステル、および任意の吸収増強剤からなる群より選択される体内吸収性生体適合性ベースを含む成分を含む。従って、本発明のこの側面において、骨成長誘発物質は、上記の先行技術の製剤に加えて、骨形成性止血物質並びに骨誘発性骨欠損充填物質を製造する。
【0074】
その他の任意成分
下に記載する組成物のいずれかに、医薬的有効量の抗感染症剤を単独で、またはその放出を遅延させる支持体に結合させて加え得る。かかる抗感染性物質の例は、抗生物質、例えば、テトラサイクリン、バンコマイシン、セファロスポリン類、およびアミノグリコシド類(トブラマイシンおよびゲンタマイシンなど)の単独またはコラーゲンに結合したもの、例えば、同様に、トリクロサン(Tricolsan)、ヨウ素単独またはPVP複合体としてのもの、コロイド状銀、銀塩単独またはゼラチン、コラーゲンなどの担体に結合したものなどである。
【0075】
血管収縮剤および凝血誘発剤などの他の物質、例えば、エピネフリン、タンニン酸、硫酸第一鉄、および三価金属と一価金属との二重硫酸塩、例えば、硫酸カリウムアルミニウムおよび硫酸アンモニウムアルミニウム;抗新生物剤、例えば、メトトレキサート、シスプラチン、ドキソルビシン、およびその組み合わせ、ストロンチウム89などの放射性核種など;下記に示す鎮痛剤、例えば、ベンゾカイン、リドカイン、テトラカイン、フェンタニル(強力な非オピオイド)など;抗炎症性物質、例えば、非特異的イブプロフェンおよびアスピリン、またはCOX−2特異的インヒビター、例えば、セレコキシブ(celeboxib);放射線不透過性物質、例えば、ヨード化合物、例えば、エチオドール(Ethiodol)(登録商標)(セイヴェージ・ラボ(Savage Laboratories))として入手し得るステアリン酸エチルモノヨード、およびステアリン酸バリウムなどのバリウム塩が、その治療または診断目的を達成するために有効な量で、該製剤に添加され得る。選択した着色剤の特性に応じて、ゲンチアナバイオレット、D&Cバイオレット#2、およびD&Cグリーン#6などの着色剤が適当である。
【0076】
本発明の幾つかの実施態様において、本発明組成物と水を均一に混和することが望ましい。10%以上までの程度の少量の水の存在は、該組成物の触知しうる(tactile)性質を変える種々の方法の一助となる。この観点で、得られる組成物は、水を加えない組成物に存在していた肌理の粗さが低下した感覚をしばしば与える。幾つかの事例において、望ましいことは、パテ様製剤を提供すること、またはパテよりも弱い凝集力をもつ低濃度の非パテ製剤、例えば、クリーム、ペースト、またはすでに本明細書に示したような他の物質などで、さらに疎水性ビークルよりもむしろ水または他の水性液体をベースとするものを提供することである。金属脂肪酸塩などの増量剤、例えば、ステアリン酸カルシウムおよび本明細書に記載した他の非湿潤性増量剤は、水分により湿潤されず、また水分を含むパテ様(または低濃度の)組成物を提供するものではない。しかし、我々は、該増量剤を少量の界面活性物質、例えば、レシチン、プルロニック(登録商標)、例えば、プルロニックL−35(登録商標)などで処理することが、非湿潤性増量剤を十分に湿潤性とし、成分2が水性ビークルである場合に、適切な脂肪酸塩−水製剤の調製を可能とすることを見出した。適切な水性ビークルとは、水、食塩水、種々の生体適合性バッファー溶液、種々の体液、例えば、血液、血清、血液成分濃縮物などである。
【0077】
水溶性鎮痛剤塩を該製剤中で使用する場合、本製剤の他の成分に加える前に、それらを最少量の水に溶解してもよい。上記のパテは、より疎水性の物質を用いて調製したパテと比べて、洗浄に抵抗性が低いので、より急速なインプラントの崩壊が望ましい場合には、骨欠損の修復に適用し得る。非イオン性、カチオン性、およびアニオン性界面活性剤は適切ではあるが、実質的に全ての生体適合性界面活性剤が、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ノンオキシノール−9、トゥイーン類(例:モノラウリン酸ポリエチレンソルビタン)、ターギトール−7(すなわち、ヘプタデシル硫酸ナトリウム)、および抗微生物界面活性剤、臭化1−ラウリル−3−エチルベンゾ−トリアゾリウムなどで例示されるものが使用され得る。クリーム、ペーストなどの非パテ様組成物は、さらなる量の水または成分Aを使用することにより調製され得る。これは外科手術手技に際して、例えば、水の代わりに血液を使用して、パテ−またはクリーム−様組成物を形成することが望ましい場合にとりわけ有用である。
【0078】
本発明において凝血誘発剤の使用に関しての上記の考察は、該組成物が化学的な止血に使用し得る実施態様を説明するものである。すなわち、止血物質を本発明の組成物に添加すると、これらの組成物が機械的な止血剤であってもなくても、化学的な止血物質として作用する能力を有する組成物を生じる。従って、すでに機械的に止血性パテであったものを、凝血誘発物質を添加することにより、より効率的な止血剤とすることができる。同様に、低凝集力のクリームまたはペーストは、有意な機械的止血性を欠くものであっても、血液凝固性物質の添加により止血剤とすることができる。後者の一例は臀部外科手術において、出血する寛骨臼への本発明の血管収縮薬修飾ペーストの薄層の適用である。
【0079】
上記の成分は、適当な割合で共に加えた場合、多様な度合いの、多くの好適な性質を有する有用なパテ様および非パテ様薬剤を生じる。この成分の様々な組み合わせは、パテ様特性を発現させるために、異なる時間と温度を必要とし得る。例えば、微粉末化したヒドロキシアパタイトなどの幾つかの物質は、パテ様状態に至るまでに他の成分よりも長く掛かるかも知れない。一般に、本発明のパテ様組成物は、妥当な時間内、通常30日ないし60日で吸収可能であるが、吸収時間は幾つかの適用の場合、数ヶ月またはそれ以上に引き延ばし得る。それらは環境温度で、造形可能であり、手で形作ることが可能であり、血液の存在下でも扱い易く、また食塩水で洗浄され得る。それらは触れたときに粘つくこともあるが、外科用の手袋には、濡れていても、乾いていても全く粘着しない。それらはDBMまたはある種の抗菌剤などの放射線感受性物質が存在しない場合、放射線により滅菌することができる。
【0080】
選択した物質の実際の比率は、その物質それ自体、使用する成分の数、および最終のパテ組成物に望まれる最終の用途によって変わる。使用者は当初、所望の粘度、凝集力、および得られる粘稠度などの要件により方針を定める;すなわち、組成物は、組成物の最終的用途に所望される他の特性を維持しながら、流動性液体の粘稠度から、クリーム、ペースト、軟膏、ゲルなどの粘稠度まで、より凝集性のパテ様粘稠度までの範囲に及ぶ。例えば、多くの手法にとって重要なことは、疼痛の源である部位に鎮痛性組成物を固定し得ることである。整形外科手術においては、組成物を骨の表面に付着させて、それが鎮痛剤を局所環境に放出するようにする。しかし、一般的な外科手術においては、通常、パテ様の、またはさらに高い粘度の組成物が接着できるような硬い表面がない。このような問題点が本実施態様により取り扱われる。具体的には、ふるい様または織物様またはフェルト様または不織布構造物に、かかる鎮痛剤含有物質を均一に滲み込ませ、鎮痛剤含有織物−パテ積層物(laminate)とする。勿論、他の医薬物質、例えば、本明細書に記載した抗菌剤、抗炎症剤および抗癌剤、並びにPDGFなどの成長刺激剤を本発明のこの実施態様のデバイスに組み込ませ得る。
【0081】
本発明の固体成分は、固体の異物が長期間滞留するのを回避するために例外なく吸収性であるが、織物成分は外科的必要性に応じて、吸収性としても非吸収性としてもよい。例えば、織物−パテ積層物は単位面積あたりの標準的薬物量を提供し得るし、また、織物成分を隣接組織に固定するために、タック縫合糸またはステープルを使用することにより、必要な領域にデバイスを固定する(本発明の積層物を組織上または組織内に置くだけなのは適当でない)手段を提供する働きもする。
【0082】
ヘルニア修復などの永久的な支持または補強を必要とする方法の場合、非吸収性織物が適応され得る。従って、術後段階においては、鎮痛剤が排出され、パテが吸収されるので、残りの非吸収性織物は、修復した欠損を永久的に補強するように作用する。例えば、ポリエステル、ポリプロピンもしくはポリエチレンの繊維を織ることにより造られたような織物、または不織布もしくはフェルト様織物は、それらが現在成功裏に他の体内適合性手法に使用されていることから、有用な材料の例である。従って、本発明は、その織物が実施された特定の外科手術の切迫した事情と適合する限り、本発明は吸収性または非吸収性であるいずれのタイプの織物も有用である。事実、該支持体は「織物」という単語が通常使用される通常の意味での「織物」である必要はない。例えば、該支持体は組成物を適用するか、または滲み込ませた不織布またはフェルト様織物でもよい。
【0083】
永久的な補強を必要としない方法のためには、ポリグリコール酸などの合成吸収性ポリマーおよびコラーゲン、アルギネートなどの天然の吸収性ポリマーなどから造られた吸収性織物が適用可能である。この場合、デバイス全体は薬物送達機能を果たした後に吸収される。
【0084】
本発明のこの側面は、鎮痛剤の担体ビークルとしてクリームおよびパテを利用するのみならず、支持体に適用しその上に保持し得る他の組成物を利用する。本発明にて採用し得る鎮痛剤は、本明細書にすでに記載したような内部で耐容性のあるものであり得る。使用し得る他の例は、非ステロイド系抗炎症性化合物、例えば、トロドール(Torldol;登録商標)、イブプロフェン、アスピリン、アセトアミノフェンなどである。
【0085】
多くの用途にとって、支持体はネット状、ガーゼ、織物、フェルトまたは不織布構造の形態のものが適当である。該形態は、その手法に望ましい、またはそれが必要とする、硬い、柔軟性のある、平板の、または外形に合わせた形状のものであり得る。例えば本明細書に記載の組成物の層を適用し得る適切な物質から形造られるガーゼ様支持体の形態で、多くの場合ワセリン(登録商標)の層を綿のガーゼに適用する方法などで、その形状が可視化される。支持体には、それが鎮痛剤組成物を保持し、体内適合性である限り、特別の制限はない。
【0086】
本発明のこの側面の複合物(composite)または積層物は、従って、様々な手法に使用することができる:
a)鎮痛剤としてイブプロフェンを含むパテで被覆したコラーゲン支持体であって、膝、腰部および肩の置換などの整形外科手術に適用される支持体。
b)遊離塩基またはその酸付加塩またはその組み合わせ中に「−カイン」型鎮痛化合物のいずれかを含有する鎮痛剤送達組成物としてのパテ組成物を担持する吸収性ポリマーの網目構造(mesh)であって、例えば、ヘルニアの手術において出血を止め、術後の疼痛を軽減する切断した骨に適用される網目構造;
c)鎮痛剤を含む本発明の濃厚ペーストまたはクリーム組成物の浸透性コーティングを担持するビクリル(Vicryl;登録商標)などの吸収性物質のニット織物であって、該織物を外科的に露出させた組織に付着させるか、または適用するか、または被うものであるニット織物。
【0087】
本明細書に記載の組成物は、外科手術に使用される場合、滅菌されなければならない。下記に示すものを除いて、すべては、例えば、標準的コバルト−60放射線源および公称線量の25kGyを使用して放射線滅菌され得る。例外は、放射線感受性添加物を含む製剤であり、例えば、脱ミネラル化骨マトリックス、骨形成タンパク質、ある種の抗生物質、オレイン酸などの不飽和分子などである。かかる物質を使用する場合、滅菌は、バルクのパテ様または非パテ様物質を放射線滅菌し、そして滅菌した放射線感受性添加物を無菌的に加え、次いで無菌的に包装することにより達成され得る。
【0088】
本明細書に記載の組成物は、滅菌されているか、または滅菌され得るものであり、数種の方式で包装され得る。包装それ自体は滅菌されているか、または滅菌され得る。該組成物は無定形(すなわち、形がないか、または定まった形をもたない)物質、例えば、ペースト、クリーム、またはパテなどとして包装されるか、または容器の形状で包装され得る。それらは一般に、平行六面体として、または一般的に円形として、例えば、前者の例では小さなレンガの形状または厚い板状(チューインガムの棒状形態)であり、また後者の例は、円筒形、卵形、または球形の製品であり得る。あるいは、その適用が可能であり、また粘度が適当であるとき、その製品は、適切な断面と形状の口から絞り出し可能な、または押し出し可能なシリンジ様またはプランジャー補助ディスペンサーに詰め込まれ得る。コーキングのために使用されるものと同様の機械的補助デバイスを含み得る。もう一つの包装は、処置される表面に適当な形を提供するための形と大きさの口を有する、絞れて変形可能なチューブ、例えば、歯磨き粉型チューブ、または折りたたみ可能なチューブ、例えば、コーキング適用で使用されるものなどの中の製品を含む。該包装は、包装品を滅菌された領域に無菌送達し得る、上包みとしての外部障壁、例えば引き剥がし可能なブリスター・パウチを含み得る。
【0089】
本発明はまた本発明の組成物の使用方法を意図する。例えば、一実施態様は本発明組成物のいずれかの有効量を出血する骨に適用することにより、骨の出血を機械的に制御する方法であり、該組成物は本発明のパテ組成物におけるような、十分に濃い粘稠度を有するものである。かかる場合、該組成物は機械的止血性タンポナーデである。
【0090】
本発明の使用方法の別の実施態様は、本発明組成物のいずれかの有効量を適用することにより、骨の出血を化学的に制御する方法であり、該組成物はこれまでにすでに述べた凝血誘発剤を含むものである。パテの場合、該組成物は化学的止血性タンポナーデである。凝血誘発剤を含んでなる本発明の機械的止血タンポナーデは、機械的止血剤および化学的止血剤両方として作用する。
【0091】
本発明の別の方法は、骨成長誘発剤を含有する本発明の組成物のいずれかの有効量を、骨の罹患領域に適用することにより、骨の欠損において骨の成長を誘発する方法であって、とりわけ、該組成物がDBM、ミネラル化骨マトリックス、骨形成タンパク質、ヒドロキシアパタイトなどの骨成長誘発物質を含む場合の方法である。別の方法は、骨の、またはその周辺の感染を処置する方法であって、抗感染症剤を含有する本発明のいずれかの組成物の有効量を、処置すべき骨の罹患領域に適用することによる方法である。
【0092】
別の方法は、骨の、またはその周辺の癌細胞を破壊する方法であって、抗新生物剤を含有する本発明の組成物のいずれかの有効量を、かかる細胞を含む骨の罹患領域に適用することによる方法である。
【0093】
別の方法は、骨の、またはその周辺領域の疼痛を軽減する方法であって、鎮痛剤を含有する本発明の組成物のいずれかの有効量を、罹患領域に適用することによる方法である。
【0094】
別の方法は、骨の、またはその周辺における炎症を制御する方法であって、抗炎症剤を含有する本発明の組成物のいずれかの有効量を、罹患領域に適用することによる方法である。
【0095】
別の方法は、インプラントを適用した骨の状態を評価する方法であって、放射線不透過剤を含有する本発明の組成物のいずれかの有効量を罹患領域に適用し、その後、その領域を放射線検査により可視化し、その領域の状態を決定することによる方法である。
【0096】
別の方法は、疎水性であり得る本発明にて使用される増量剤のいずれかを湿潤可能とする方法であって、該増量剤をカチオン性、アニオン性、または非イオン性界面活性剤で処理し、次いで、液体源、例えば、水そのもの、食塩水、または血液、血清などの体液を用いて、該処理した増量剤から水をベースとするパテを作製することによる方法である。
【0097】
他の方法は、該組成物が鎮痛剤を含む場合の術後疼痛を処置または管理する前記方法のそれぞれである。
【0098】
当業者は該組成物を適用する方法とその量については認識している。幾つかの適用においては大量のタンポナーデを用い得るが、他の例ではほんの少量が必要であるか、または望ましい。
【0099】
以下に提供する方法と実施例は、本発明の望ましい実施態様をより完全に記載し、その利点と利用可能性を説明することを意図している。
【0100】
以下の実施例は本発明の例示的な具体的実施態様を説明する。
【実施例】
【0101】
実施例1
本実施例および以下のすべての実施例では、特に断りのない限り、組成物は先ずすべての乾燥剤を機械的に混和し、その後にいずれかの液体物質を徐々に加えることにより調製した。この組成物を所望の粘稠度が得られるまで、室温でスパーテルにより“処理”した。幾つかの場合において、該物質が粘稠度を改善するために追加の成分を必要とする場合には、その物質を加え、所望のパテ様粘稠度が得られるまで、混合物を継続的に練合するか、または“処理”した。成分は重量部で表す。
成分1:ステアリン酸カルシウム 4g
成分2:酢酸トコフェリル 3g
成分3:ゼラチン 3g
【0102】
サンプルは優れた水分抵抗性(water resistance)、物理的特性および止血特性を有するパテ様塊を生じた。すなわち、水分抵抗性とは、水道水の流力のもとでそれを洗い流す試行に強く抵抗する性質である。
【0103】
実施例1a
液体成分の比率を変えることにより、本発明の組成物は低い(すなわち、より液状の)または高い(すなわち、より硬い)粘度の状態とすることができる。低下した粘度の製剤の実例は以下のとおりである:実施例1のパテ製剤に、アセチルクエン酸トリエチル3gを加える。得られる生成物はクリーム様の粘稠度を有し、適切な状況下では、止血剤として、または薬物などの様々な添加物の送達薬として適用され得る。
【0104】
実施例2
a) ステアリン酸カルシウムと骨成長誘発物質との部分置換
成分1:ステアリン酸カルシウム 3g
成分2:酢酸トコフェリル 3g
成分3:ゼラチン 3g
成分4:ヒドロキシアパタイト(6〜12ミクロン粒径) 1g
【0105】
得られる生成物は実施例1の生成物に匹敵する性質を有するパテ様塊である。明紫色を識別するのに十分な少量のゲンチアナバイオレットを上記の製剤に加えるとき、実施例1の生成物の特性を有する着色生成物が得られる。
【0106】
b) ステアリン酸カルシウムとヒドロキシアパタイトとの完全置換
成分1:ヒドロキシアパタイト(6〜12ミクロン粒径) 2g
成分2:酢酸トコフェリル 2.5g
成分3:ゼラチン 2g
該組成物を室温で72時間放置し、実施例1の生成物の特性を有する生成物を得た。
【0107】
実施例3
成分1:パルミチン酸アルミニウム 5g
成分2:酢酸トコフェリル 3g
成分3:ゼラチン 3g
【0108】
得られる生成物は実施例1の生成物について記載した性質と同様の性質を有するパテ様塊である。
【0109】
実施例3a、3b、3c
実施例3の製剤を以下のように修飾することにより、実施例3のパテ様製剤を低粘度の組成物とする:
【表1】

製剤3aは柔らかいパテの粘稠度を有する。
製剤3bはケーキの飾り付けに酷似する濃厚なクリームの粘稠度を有する。
製剤3cは冷たい蜂蜜に酷似するゆるやかに流動する組成物の粘稠度を有する。
これらはそれぞれ止血剤として骨に適用され得る。
【0110】
実施例4
成分1:ステアリン酸カルシウム 5g
成分2:酢酸トコフェリル 3g
成分3:ゼラチン 3g
成分4:DBM 3g
【0111】
得られる生成物は実施例1の生成物の止血性に加えて、骨伝導性というさらなる性質を有する。
【0112】
実施例5
5a 5b
成分1:ステアリン酸カルシウム 2g 1.3
成分2:クエン酸トリエチル 1.6g 0.98
成分3:トリトン(登録商標)X−100 0 0.02
【0113】
得られる生成物5aはパテ様であり、実施例1の生成物に類似の物理的特性を有していた。生成物5bもパテ様であり、5aよりもより速く吸収され得る。トリトン(登録商標)X−100はダウ・ケミカル(株)(ミッドランド、ミシガン州)より入手可能である。
【0114】
実施例6
成分1:ステアリン酸カルシウム 4g
成分2:クエン酸トリエチル 3g
成分3:ゼラチン 3g
【0115】
得られる生成物はパテ様であり、止血剤として有用な物理特性を有していたが、実施例5の生成物と比較した場合、好適ではなかった。
【0116】
実施例7
成分1:ステアリン酸カルシウム 2g
成分2:アセチルクエン酸トリエチル 2g
【0117】
得られる生成物は、実施例1のものに匹敵する優れたパテ様の特性と物理的特性を有している。
【0118】
実施例8
成分1:ステアリン酸カルシウム 0.5g
成分2:クエン酸トリエチル 1g
成分4:ヒドロキシアパタイト 2g
【0119】
結果として、止血性を有する低粘度の注射可能な組成物を得た。
【0120】
実施例9
成分1:ステアリン酸カルシウム .5g
成分2:酢酸トコフェリル 2g
成分4:ヒドロキシアパタイト 2g
【0121】
結果として、優れたパテ様特性と水分抵抗性を有する組成物を得た。
【0122】
実施例10
成分1:ヒドロキシアパタイト 2g
成分2:クエン酸トリエチル 2.5g
【0123】
結果として、良好な接着性と充填特性をもち、粗い骨表面に容易に適用される組成物を得た。
【0124】
実施例11
成分1:ステアリン酸カルシウム 3g
成分2:酢酸トコフェリル 1.0g
成分2:クエン酸トリエチル 1.5g
成分3:ゼラチン 2g
【0125】
得られる生成物は実施例1と同様のパテ様物理特性を有する良好な物質であったが、実施例1のものよりも幾分粘着性であった。
【0126】
実施例12
成分1:ステアリン酸カルシウム 4g
成分2:ラウリン酸 4g
成分2:酢酸トコフェリル .5g
【0127】
該ステアリン酸カルシウムを溶融したラウリン酸と混合し、冷却すると固化する良好なパテを形成した。次いでその固体を粉砕し、該トコフェロールと混合し、良好なパテを得た。
【0128】
得られる生成物は、体温ではパテ様の粘稠度を有するが、室温では幾分硬い粘稠度を示す。
【0129】
実施例13
成分1:ステアリン酸カルシウム 4g
成分2:クエン酸トリエチル 4g
成分2:ラウリン酸 4g
【0130】
得られる生成物はパテ様であり、実施例1のものと同様の物理特性を有していたが、接着性は幾分低かった。
【0131】
実施例14
成分1:ステアリン酸カルシウム 2g
成分2:ドデカン 1g
【0132】
得られる生成物は良好な水分抵抗性を有し、粘度が低く、実施例1の他の物理特性と比較して良好であった。
【0133】
実施例15
成分1:ステアリン酸カルシウム 2g
成分2:オクタノール−1 1g
【0134】
得られる生成物は粘度が低く、実施例14のものと同様の物理特性を有していたが、接着性は幾分低かった。
【0135】
実施例16
成分1:ステアリン酸カルシウム 2g
成分2:コハク酸ジエチル 2g
成分3:ゼラチン 2g
【0136】
得られる生成物は実施例1同様の良好なパテであった。
【0137】
実施例17
成分1:ステアリン酸カルシウム 4g
成分2:コハク酸ジエチル 3g
【0138】
得られる生成物は実施例16を超える改善された粘稠度を有する良好なパテであった。
【0139】
実施例18
成分1:ステアリン酸カルシウム 4g
成分2:クエン酸アセチルトリエチル 3g
成分3:ゼラチン 3g
【0140】
得られる生成物は実施例1で得られたものに匹敵した。
【0141】
実施例19
成分1:パルミチン酸アルミニウム 4g
成分2:酢酸トコフェリル .3g
成分2:クエン酸トリエチル 3g
【0142】
得られる生成物は良好な水分抵抗性と良好な止血特性を有する柔らかい、やや透明のパテであった。
【0143】
実施例20
成分1:ステアリン酸カルシウム 3g
成分2:酢酸トコフェリル 3g
成分3:ゼラチン 3g
成分4:脱ミネラル化骨マトリックス 1g
【0144】
得られる生成物は実施例1の生成物に匹敵する性質をもつパテ様塊であり、同様に骨形成性を有する。
【0145】
実施例21
成分1:ヒドロキシアパタイト 3g
成分2:酢酸トコフェリル 3.5g
成分3:ゼラチン 3g
【0146】
この実施例で、該物質は当初柔らかく油状であり、結合性を欠いていた。しかし、室温で72時間放置したところ、良好な水分抵抗性をもつ優れたパテが形成された。酢酸トコフェリルの量を追加して3g増量すると、ゼラチンによる粗さをもつペーストを生じる。
【0147】
実施例22
成分1:ステアリン酸カルシウム 3g
成分2:ジ−n−ヘキシルエーテル 2.5g
成分3:ゼラチン 2g
【0148】
得られる生成物はパテ様であり、実施例1と同様の良好な水分抵抗性と物理特性を有している。
【0149】
実施例23
成分1:ステアリン酸カルシウム 3g
成分2:ジ−n−ペンチルケトン 2.5g
成分3:ゼラチン 2g
【0150】
得られる生成物はパテ様であり、実施例22と同様の良好な水分抵抗性と物理特性を有する。
【0151】
実施例24
成分1:ステアリン酸カルシウム 3g
成分2:酢酸トコフェリル 3g
成分3:ウシ・コラーゲン(粉末化) 3g
【0152】
得られる生成物はパテ様であり、実施例23と同様の良好な水分抵抗性と物理特性を有する。さらにパテは、吸収促進剤として存在する繊維性粉末化コラーゲンスポンジ添加物(成分3)の結果として繊維状構造を有する。
【0153】
実施例25
成分1:ステアリン酸カルシウム 3g
成分2:酢酸トコフェリル 3g
成分3:ウシ・コラーゲン(粉末化) 3g
硫酸ゲンタマイシン含有
Collatamp G、ヨーロッパにて入手可能
【0154】
結果として、抗感染性を有する止血性パテを生じる。
【0155】
実施例26
成分1:ステアリン酸カルシウム 4g
成分2:酢酸トコフェリル 3g
成分3:ゼラチン 3g
抗感染剤:硫酸ゲンタマイシン 120mg
【0156】
硫酸ゲンタマイシン120mgを乾燥成分と組み合わせた後、酢酸トコフェリルを加えてパテとした以外、実施例1を繰り返す。本実施例では、抗感染性を有するパテの調製について説明する。
【0157】
実施例27
成分1:ステアリン酸カルシウム 4g
成分2:酢酸トコフェリル 3g
成分3:ゼラチン 3g
【0158】
ゼラチンを2%水性硝酸銀に室温で2時間浸し、蒸留水で2回、アセトンで1回洗浄し、次いで一夜乾燥する。この製剤は銀/ゼラチン複合体の存在の結果として、抗感染性を有する。
【0159】
実施例28
成分1:ステアリン酸カルシウム 4g
成分2:酢酸トコフェリル 3g
成分3:ゼラチン 3g
【0160】
凍結乾燥ヒト骨形成タンパク質(BMP−2、シグマ−アルドリッチ)10μgを含有する水溶液1ml中で、ゼラチン10mgを一夜インキュベートし、次いで一夜風乾すること以外、実施例1を繰り返す。湿ったゼラチンをアセトンで洗い、残った湿気を除き、ゼラチンの残りと組み合わせ、骨形成および止血性を有するパテを調製する。
【0161】
実施例29
成分1:ステアリン酸カルシウム 4g
成分2:酢酸トコフェリル 3g
成分3:ゼラチン 3g
【0162】
ベタジン(Betadine;登録商標)(ポビドン−ヨウ素、10%;1%利用可能ヨウ素と当量である)を実施例1で形成したパテ10gと混合した以外は、実施例1を繰り返した。塊は褐色に変わり、抗感染性を有する。
【0163】
実施例30
成分1:微粉化ポリ乳酸 3g
成分2:酢酸トコフェリル 1.5g
【0164】
該混合物は実施例1の生成物に匹敵する良好な水分抵抗性と性質をもつ優れたパテを形成した。
【0165】
実施例31
以下の組成物は好適な組成物として、約40%のステアリン酸カルシウム、30%デキストランおよび30%ひまし油からなり、米国特許第4,439,420号に記載されている。水を加える場合、好適な組成物は、38%ステアリン酸カルシウム、28%デキストラン、27%ひまし油および7%水(すべて重量は重量パーセント)である。組成物は熱感受性成分の分解可能性を回避するために、環境温度で機械的に混合することにより調製した。
ステアリン酸カルシウム 4g
ひまし油 3g
デキストラン 3g
【0166】
ステアリン酸カルシウムとデキストランとを50ml容ガラスビーカー中で乾燥混合し、ひまし油をスパーテルで攪拌しながら加えた。室温で数分間、混合物をスパーテルで“処理”後、粘稠度が次第に変化した。混合物は砕けやすくなり、さらに処理後にパテ様となった。少量の水(約1g)を添加し、デキストランの砂のような性質を低下させる。
【0167】
実施例32
実施例31の製剤は以下に示すように修飾され、本発明の新規なパテ様組成物とした。この塊は有効な止血剤であり、有効な骨形成骨欠損充填剤である。
ステアリン酸カルシウム 2g
ひまし油 1.5g
デキストラン 1.5g
DBM(脱ミネラル化骨マトリックス) 1.5g
【0168】
本実施例の目的は、米国特許第4,439,420号に記載された組成物にDBMを加え、骨形成性を有するパテ様塊を得ることができることを示すことである。
【0169】
実施例33
成分1:パルミチン酸アルミニウム 5g
成分2:酢酸トコフェリル 3g
成分3:ゼラチン 3g
添加物:メトトレキサート .2g
【0170】
当該化学療法用パテを、骨腫瘍の外科的摘出後の骨欠損部に詰める。
【0171】
実施例34
成分1:パルミチン酸アルミニウム 5g
成分2:酢酸トコフェリル 3g
成分3:ゼラチン 3g
添加物:ストロンチウム89(塩として)
【0172】
上記の製剤は、放射性有効量のストロンチウム89を供給するとき、実施例33に記載した放射線療法用パテを生じる。
【0173】
実施例35
成分1:粉末化吸収性リン酸塩ガラス 3g
成分2:酢酸トコフェリル 1g
【0174】
リン酸二水素ナトリウム水和物を容れた坩堝を約800℃に加熱し、次いで急速冷却した。得られる吸収性リン酸塩ガラス塊を次いでハンマーで破砕し、その破片を回転ボールミルで約72時間粉砕し、微粉末とした。微粉末化ガラス(3g)は、良好な物理的性質と水分抵抗性を有するパテ様塊が形成されるまで、酢酸トコフェリル1gと攪拌した。
【0175】
実施例36
成分1:ステアリン酸カルシウム 3g
成分2:ラウリン酸エチル 3g
成分4:脱ミネラル化骨マトリックス 1g
【0176】
本実施例の目的は、米国特許第4,439,420号に記載された組成物にDBMを加え、骨形成性を有するパテ様塊を得ることができることを示すことである。
【0177】
実施例37
成分1:ヒドロキシアパタイト 3g
成分2:パルミチン酸イソプロピル 3.5g
成分3:ゼラチン 3g
【0178】
室温に72時間放置すると、実施例2に匹敵する良好な水分抵抗性を有する優れたパテが得られる。
【0179】
実施例38
成分1:ステアリン酸カルシウム 5g
成分2:グリセロール(USP) 15g
【0180】
ステアリン酸カルシウム3グラムと3グラム増量のグリセロールとを、その混合物がクリーム様粘稠度を示すまで混合した(グリセロール総量15g)。この段階で、追加の2gのステアリン酸カルシウムを混合物に混合し、十分に掻き混ぜた卵白の粘稠度と外観を有する組成物を得た。
【0181】
実施例39
成分1:ステアリン酸カルシウム 1g
成分2:酢酸トコフェリル 1g
成分3:グリセロール .25g
【0182】
結果として、優れた水分抵抗性を有する比較的柔らかいパテを得た。
【0183】
実施例40
成分1:スクロース(粉糖) 3g
成分2:オリーブ油 2g
【0184】
これにより比較的硬いパテを得た。これは非常に容易に洗い流され、低水分抵抗性を望む場合に有用である。
【0185】
実施例41
上記実施例38の生成物3グラムを、30ppmのコロイド状銀(ソース・ナチュラル・インク、スコッツバレー、カリフォルニア98006)を含有する脱イオン水0.75mlと混合した。得られる止血クリームは抗菌性銀の存在のために灰白色となり、元のクリームよりも幾分低い粘性であった。
【0186】
実施例42
成分1:ステアリン酸カルシウム 4g
成分2:プルロニック(登録商標)L−35 0.2g
(分子量:1900)
成分12:水 2g
プルロニック588310、ロットWPAW−502B、BASFコーポレーション(マウンテイン・オリーブ、ニュージャージー07828−1234)
【0187】
成分はパテ様塊が生じるまで攪拌しながら合わせた。この物質は過剰の水に容易に拡散する。
【0188】
実施例43
成分1:ステアリン酸カルシウム 12.0g
成分2:d,l−アルファ酢酸トコフェリル 7.5g
成分3:ダイズレシチン顆粒 1.3g
【0189】
ステアリン酸カルシウムとレシチン(アーチャー−ダニエルス−ミッドランド・ウルトラレックP)を乾燥混合し、次いで、酢酸トコフェリルを激しく攪拌しながら加えた。形成されたパテは、良好な水分抵抗性と取扱適性を有するが、レシチンの代わりにゼラチンを含有する対応する製剤よりも僅かに粘つきがあった。
【0190】
実施例44
成分1:ステアリン酸カルシウム 0.6g
成分1:ポテトデンプン 3.8g
成分2:d,l−アルファ酢酸トコフェリル 1.6g
ラジン・インターナショナル、インク;
6527ルート9、ハウエル、ニュージャーシー07731
【0191】
酢酸トコフェリルおよびステアリン酸カルシウムを共に混合し、次いで、デンプンを加えた。この混合物は良好な水分抵抗性をもつ柔らかい白色パテを形成した。術後の癒着形成を防止するために、デンプンを分解させるためのコバルト60源からの25kGyのイオン化ガンマ放射線により、パテを滅菌することが望ましい。あるいは、デンプンをパテに製剤化する前に、デンプンを放射分解に付し得る。
【0192】
以下の実施例45〜52は、実施例1同様に調製したパテ組成物を示すが、これらは良好な水分抵抗性を示し、ゼラチン量がカルシウム塩量に比例して増加するにつれて、ゆっくり吸収されるものから、より急速に吸収されるものまで、吸収性が増加に向かって上昇していく。
【0193】
【表2】

【0194】
実施例52
【表3】

得られる生成物は、実施例53のパテと同様の特性を有する。
【0195】
製剤a)中のゼラチンは40重量%存在し、該組成物は良好な水分抵抗性および吸収性を有する良好なパテ粘稠度を有する。
【0196】
整形外科手技において、茎状ネジなどの骨に対する固定釘またはネジにおける媒体として用い得るより高濃度の製剤を得たい場合には、前記の製剤a)を、そこに大きい粒径の骨チップを含めることにより修飾し、適切な骨の部位に適用することができる。従って、粒径1〜5mmのDBM31部を69部の製剤a)に加えたとき、31%DBMおよび28%ゼラチンを含んでなる製剤b)を生じる。その粘稠度は濃厚な高濃度パテのものであり、それに釘またはネジを入れる、隣接する骨に固定する。時に、製剤の骨形成特性は、隣接する骨構造物に永久的に固定する釘またはネジの周辺の骨成長を可能とする。
【0197】
実施例53
成分1:ステアリン酸Ca 3.0g
成分2:酢酸トコフェリル 0.4g
成分2:クエン酸トリブチル 2.3g
成分3:ゼラチン 2.0g
結果として、非常に良好な止血作用および吸収性特性を有するパテを得た。
【0198】
実施例54
成分1:ステアリン酸Ca 3.0
成分2:酢酸トコフェリル 0.4
成分2:クエン酸アセチルトリブチル 2.3
成分3:ゼラチン 2.0
得られる生成物は実施例53のパテと同様の特性を有している。
【0199】
実施例55
成分1:ステアリン酸カルシウム 2.0g
成分2:酢酸トコフェリル 1.5g
成分3:プルロニック(登録商標)F−38 2.0g
(分子量4700)
製品583095、ロットWP1W−515B、BASFコーポレーション(マウンテイン・オリーブ、ニュージャージー07828−1234)
【0200】
プルロニックは“パスティル(Pastille)”として供給され、混合前に粉砕し、粉末とした。混合物は優れたパテを形成した。
【0201】
実施例56
成分1:ステアリン酸カルシウム 4.0g
成分2:プルロニック(登録商標)L−35 3.0g
(分子量1900)
【0202】
本実施例におけるプルロニック(登録商標)は、粘稠性の液体であり、優れたパテを形成した。このプルロニック(登録商標)は水溶性であるため、吸収促進剤を加える必要がなかった。
【0203】
以下の実施例57〜63における組成物はすべてパテ様の粘稠度を有し、切断した骨または軟組織に容易に適用される。特に断りのない限り、それらは鎮痛剤成分Aを液体成分2およびもしあれば成分Bに溶解、懸濁または分散して均一な混合物を形成し、その混合物を固体成分1と混合することにより調製する。パーセント表示はすべて組成物の総量によるパーセントである。
【0204】
流出速度の評価は問題の組成物を以下に付すことにより得られた:直径1cmで0.5gの“ボタン”型の組成物一定量を500ccのリン酸バッファー(pH7.4)に37℃で入れ、ゆっくりと攪拌した。バッファーに曝露する表面積は約0.785cmである。1ccアリコートのバッファー溶液を、一日目の就労時間中、2時間ごとに、また二日目および三日目には、それぞれ数回取り出した。各サンプルはHPLC−UV分光光度法により、リドカイン標準に対するリドカインについて分析した。3日間にわたり上清中にリドカインの存在することは、疼痛軽減量の鎮痛剤放出の証拠である。同じ手法によりブピバカインの遊離塩基および塩酸塩の溶出液についても測定した。
【0205】
幾つかの場合において、同量の成分を患者の腕に局所的に適用し、適用部位に3日間にわたり定期的に針を突き刺し、無感覚かどうかをテストした。これは、鎮痛剤の疼痛軽減量の有効な溶出の指標となる。
【0206】
実施例57
以下の組成物を調製する:
【表4】

【0207】
プルロニック(登録商標)L−35は液体エチレンオキシド/プロピレンオキシド・ブロックコポリマーであり、分子量約1900であって、BASF(マウンテイン・オリーブ、ニュージャージー07828)から入手し得る。
【0208】
プルロニック(登録商標)F−68は固体(フレーク)のエチレンオキシド/プロピレンオキシド・ブロックコポリマーであり、加温したL−35に易溶である。プルロニック(登録商標)(F−68)は分子量が8,400であり、その結果、L−35単独の1,900と比べて、プルロニック(登録商標)成分2の平均分子量は、4,500である。
【0209】
成分2と成分Aとの混合物を製造するために、L−35(液体)、F−68(固体)および酢酸トコフェリルを混合し、ホットプレート上で渦巻き攪拌しながら加温し、固体を素早く溶解させた。混合物の固化を避けるため、液体が冷えないようにした。プルロニック(登録商標)混合物を温かいまま(熱しすぎない)、かつ液体のまま、ステアリン酸カルシウムを加え、パテが形成されるまで通常の仕方で混合物をスパーテルで攪拌した。このパテは室温で数日間、粘稠度において安定であると思われ、定性的にも洗浄に抵抗性であった。
V.以下の組成物を調製する。
成分1:ステアリン酸カルシウム 2.0g
成分2:a.酢酸トコフェリル 1.5g
成分2:b.プルロニック(登録商標)L−38 2.0g
成分A:1.リドカイン遊離塩基 .65g
2.リドカインHCl .65g
【0210】
実施例58
成分1:ステアリン酸カルシウム 47%
成分2:プルロニック(登録商標)L−35 28%
成分A:リドカインHCl 20%
成分B:酢酸トコフェリル 5%
【0211】
実施例59
ヒドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、HAP/TCP(40:60)混合物、粒子径0.5ないし1.5mm(骨伝導を可能とするため)を有するHAP/TCP(20:80)混合物などの骨伝導性物質は、バークレイ・アドバンスド・バイオマテリアルから商品として入手可能であって、本発明の組成物のいずれかを製造するために添加し、骨伝導性組成物とし得る。例えば、以下のとおりである:
I.成分1:ステアリン酸カルシウム 37%
成分2:クエン酸トリエチル 32%
成分A:リドカイン 16%
成分4:TCP 15%

II.成分1:ステアリン酸カルシウム 32.04%
成分2:クエン酸トリエチル 24.665%
成分A:1.リドカイン遊離塩基 6.65%
2.リドカイン塩酸塩 6.65%
成分4:ヒドロキシアパタイト 30.00%

III.成分1:ステアリン酸カルシウム 24.66%
成分2:プルロニック(登録商標)L−35 32.04%
成分A:1.リドカイン遊離塩基 6.65%
2.リドカイン塩酸塩 6.65%
成分4:DBM 30.00%
【0212】
実施例60
成分1:ステアリン酸カルシウム 60%
成分2:クエン酸トリエチル 27%
成分A:1.リドカイン遊離塩基 6.5%
2.リドカインHCl 6.5%
【0213】
実施例61
成分1:ステアリン酸カルシウム 49.00%
成分2:クエン酸トリエチル 37.70%
成分A:1.リドカイン遊離塩基 6.65%
2.リドカイン塩酸塩 6.65%
【0214】
実施例62
成分1:ステアリン酸カルシウム 49.0%
成分2:プルロニック(登録商標)L−35 37.7%
成分A:1.リドカイン遊離塩基 6.65%
2.リドカインHCl 6.65%
【0215】
実施例58〜62は埋め込み可能な疼痛軽減組成物として適当な生成物を生じる。
【0216】
実施例63
本発明の生成物は別々に吸収性または非吸収性のニットまたは不織布構造またはフェルトに適用し、軟組織の術後疼痛を管理するために局所鎮痛剤を放出する外傷補強デバイスを提供し得る。織物成分は、合成吸収性編目構造にもとづくものであり、急速に分解されてin situで吸収される。
【0217】
例えば、実施例62の生成物は、ヘルニア修復手術における埋め込みに先立って、織物編目構造に塗ることができる:
成分1:ステアリン酸カルシウム 49.05
成分2:プルロニック(登録商標)L−35 37.7%
成分A:1.リドカイン遊離塩基 6.65%
2.リドカインHCl 6.65%
【0218】
前記の実施例はリドカイン遊離塩基とリドカイン塩酸塩との関連で得られるが、鎮痛剤/麻酔剤遊離塩基/酸付加塩の組み合わせが採用され得ること、ならびに、適切な場合には、同一のまたは異なる鎮痛剤/麻酔剤を遊離塩基または酸付加塩として組合わせ得ることが認められるであろう。さらに、その実施例が鎮痛剤を含んでいてもいなくても、かかる鎮痛剤またはその組み合わせは、前記実施例の組成物に含まれ得る。
【0219】
前記の実施例は、本発明の例示的な具体的実施態様を含む。他の実施態様は、本発明の範囲内で、前記明細書に記載されるように、当業者によって調製され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一に混合した以下の成分を含む体内に埋め込み可能な(body-implantable)組成物:
成分1:微粉末化した固体粒子を含む体内に埋め込み可能な物質;
成分2:下記成分Aを可溶化、分散または懸濁化し得る有機液体;および
成分A:局所疼痛軽減活性を有する鎮痛性化合物または化合物の混合物(ここで、当該鎮痛性化合物が医薬的に有効な疼痛軽減量存在する)。
【請求項2】
当該組成物が無水である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
当該組成物中に、約10重量%までの水分がさらに存在する請求項1記載の組成物。
【請求項4】
当該組成物中に、埋め込んだ場合に当該組成物からの成分Aの溶出を遅延させ得る親水性物質または埋め込んだ場合に当該組成物からの成分Aの溶出を増大させ得る疎水性物質を含む成分Bがさらに存在する請求項1記載の組成物。
【請求項5】
成分1が実質的に水不溶性である請求項1記載の組成物。
【請求項6】
成分1が身体適合性の吸収可能な微小化固体物質である請求項1記載の組成物。
【請求項7】
成分1が脂肪酸の金属塩である請求項6記載の組成物。
【請求項8】
当該組成物が造形可能な(moldable)パテの粘稠度を有する請求項1記載の組成物。
【請求項9】
成分1がステアリン酸カルシウムを含む請求項1記載の組成物。
【請求項10】
成分2が、クエン酸トリエチル、酢酸トコフェリル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの液体もしくは固体のランダムもしくはブロックコポリマーの1種以上を含む請求項1記載の組成物。
【請求項11】
当該成分2の液体が、少なくとも1種のエチレンオキシドとプロピレンオキシドの液体ブロックコポリマーを含む請求項10記載の組成物。
【請求項12】
当該成分2の液体が、成分2に溶解、懸濁または分散した1種以上のポリアルキレンオキシドの固体コポリマーをさらに含む請求項11記載の組成物。
【請求項13】
当該固体コポリマーが、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーを含む請求項12記載の組成物。
【請求項14】
当該成分A鎮痛剤が、該鎮痛剤の遊離塩基もしくはその酸付加塩の形態であるか、またはその両形態の組み合わせである請求項1記載の組成物。
【請求項15】
該鎮痛性成分が、エステルまたはアミド結合を介して一緒に結合している環状部分から構成される請求項14記載の組成物。
【請求項16】
遊離塩基の形態と酸付加塩の形態両方が共に存在する請求項15記載の組成物。
【請求項17】
該遊離塩基の形態が全体としてまたは部分的に成分2に可溶である請求項16記載の組成物。
【請求項18】
該鎮痛剤がリドカインまたはリドカイン塩酸塩またはその組み合わせを含む請求項1記載の組成物。
【請求項19】
成分1がステアリン酸カルシウムを含み、成分2がクエン酸トリエチル、酢酸トコフェリル、プルロニック(登録商標)L−35、およびプルロニック(登録商標)L−35と固体のプルロニック(登録商標)との混合物からなる群より選択され、成分Aがリドカイン、リドカイン塩酸塩またはその混合物を含む請求項1記載の組成物。
【請求項20】
成分2がクエン酸トリエチルを含む請求項19記載の組成物。
【請求項21】
成分Bが酢酸トコフェリルを含む請求項4記載の組成物。
【請求項22】
成分2がプルロニック(登録商標)L−35を含む請求項19記載の組成物。
【請求項23】
成分2がプルロニック(登録商標)L−35およびプルロニック(登録商標)F−68を含む請求項19記載の組成物。
【請求項24】
当該成分1の粒子が100ミクロンまでの平均粒径を有する請求項1記載の組成物。
【請求項25】
骨成長誘発物質の粒子がさらに存在する請求項1記載の組成物。
【請求項26】
当該骨成長誘発粒子が、骨チップまたは粉末、脱ミネラル化骨、ヒドロキシアパタイト、およびリン酸三カルシウムからなる群より選択される請求項25記載の組成物。
【請求項27】
当該組成物が無水である請求項26記載の組成物。
【請求項28】
当該組成物中に、約10重量%までの水分がさらに存在する請求項26記載の組成物。
【請求項29】
当該組成物中に、埋め込んだ場合に当該組成物からの成分Aの溶出を遅延させ得る親水性物質または埋め込んだ場合に当該組成物からの成分Bの溶出を増大させ得る疎水性物質を含む成分Bがさらに存在する請求項26記載の組成物。
【請求項30】
成分1が実質的に水不溶性である請求項26記載の組成物。
【請求項31】
成分1が脂肪酸の金属塩である請求項26記載の組成物。
【請求項32】
当該組成物が造形可能なパテの粘稠度を有する請求項26記載の組成物。
【請求項33】
成分1がステアリン酸カルシウムを含む請求項26記載の組成物。
【請求項34】
成分2が、クエン酸トリエチル、酢酸トコフェリル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの液体もしくは固体のランダムもしくはブロックコポリマーの1種以上を含む請求項26記載の組成物。
【請求項35】
当該成分2の液体が、少なくとも1種のエチレンオキシドとプロピレンオキシドの液体ブロックコポリマーを含む請求項34記載の組成物。
【請求項36】
当該成分2の液体が、成分2に溶解、懸濁または分散した1種以上のポリアルキレンオキシドの固体コポリマーをさらに含む請求項35記載の組成物。
【請求項37】
当該固体コポリマーが、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーを含む請求項36記載の組成物。
【請求項38】
当該成分A鎮痛剤が、該鎮痛剤の遊離塩基もしくはその酸付加塩の形態であるか、またはその両形態の組み合わせである請求項37記載の組成物。
【請求項39】
該鎮痛性成分が、エステルまたはアミド結合を介して一緒に結合している環状部分から構成される請求項38記載の組成物。
【請求項40】
遊離塩基の形態と酸付加塩の形態両方が共に存在する請求項39記載の組成物。
【請求項41】
該遊離塩基の形態が全体としてまたは部分的に成分2に可溶である請求項40記載の組成物。
【請求項42】
該鎮痛剤がリドカインまたはリドカイン塩酸塩またはその組み合わせを含む請求項41記載の組成物。
【請求項43】
請求項1の組成物がその中にまたはその上に存在する支持構造物を含む複合物(composite)であって、該支持構造物が体内に埋め込み可能な身体適合性物質である複合物。
【請求項44】
当該組成物が無水である請求項43記載の複合物。
【請求項45】
当該組成物中に、約10重量%までの水分がさらに存在する請求項43記載の複合物。
【請求項46】
当該組成物中に、埋め込んだ場合に当該組成物からの成分Aの溶出を遅延させ得る親水性物質または埋め込んだ場合に当該組成物からの成分Aの溶出を増大させ得る疎水性物質を含む成分Bがさらに存在する請求項43記載の複合物。
【請求項47】
成分2がクエン酸トリエチルを含む請求項43記載の複合物。
【請求項48】
成分Bが酢酸トコフェリルを含む請求項46記載の複合物。
【請求項49】
成分2がプルロニック(登録商標)L−35を含む請求項43記載の複合物。
【請求項50】
成分2がプルロニック(登録商標)L−35およびプルロニック(登録商標)F−68を含む請求項43記載の複合物。
【請求項51】
骨の領域またはその周辺領域から疼痛を軽減させる方法であって、請求項1記載の組成物の有効量を患部領域に適用することを含む方法。
【請求項52】
骨欠損部の骨の成長を誘発し、かつ当該欠損部の領域またはその周辺領域の疼痛を軽減させる方法であって、請求項25記載の組成物の有効量を骨の患部領域に適用することを含む方法。
【請求項53】
請求項1記載の組成物の製造法であって、成分Aを先ず成分2と混合し、次いで、その混合物を成分1と均一に混合する方法。

【公表番号】特表2009−502928(P2009−502928A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524061(P2008−524061)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/028823
【国際公開番号】WO2007/014210
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(508024119)オーソコン・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】ORTHOCON, INC.
【Fターム(参考)】