衛星通信システム及びその周波数特性補正方法
【課題】衛星搭載アンテナと地上アンテナとの間の電波干渉に起因する信号強度の変化を受けないようにすることができると共に、ビットエラーの低減を図ることが可能な衛星通信システム及びその周波数特性補正方法を提供する。
【解決手段】衛星通信システム100は、地球を周回する人工衛星1及び地上に設置された地上局2を備え、人工衛星1と地上局2との間で通信が行われる。人工衛星1に搭載の衛星搭載アンテナ5からの電波の放射領域に人工衛星1に搭載された搭載機器が介在することによって地上局2における受信強度の変化した場合でも、地上局2における受信信号電力の占有周波数帯域の周波数特性が均一になるように補正する補正回路(ディジタルフィルタ)が地上局2の受信機9と人工衛星1の送信機4のいずれか又は両方に設ける。
【解決手段】衛星通信システム100は、地球を周回する人工衛星1及び地上に設置された地上局2を備え、人工衛星1と地上局2との間で通信が行われる。人工衛星1に搭載の衛星搭載アンテナ5からの電波の放射領域に人工衛星1に搭載された搭載機器が介在することによって地上局2における受信強度の変化した場合でも、地上局2における受信信号電力の占有周波数帯域の周波数特性が均一になるように補正する補正回路(ディジタルフィルタ)が地上局2の受信機9と人工衛星1の送信機4のいずれか又は両方に設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工衛星と地上局との間の通信に用いられる衛星通信システム及びその周波数特性補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星通信システムは、例えば図20に示すように、地球200の地心Pを略回転中心にして軌道Rで周回している人工衛星201を、地球200の地上に設置された受信局(地上局)202の地上アンテナ(パラボラアンテナ等)203で追尾しながら、地上アンテナ203と人工衛星201の衛星搭載アンテナ204との間に電波を伝搬させて通信を行うものである。
【0003】
人工衛星201は、太陽同期軌道、モルニア軌道等で運用される場合、その周回位置が図20に示す時刻t1,t2,t3,・・・の様に変化する。そのため、受信局202では、地上アンテナ203の仰角及び方位角を制御し、地上アンテナ203が常に人工衛星201の衛星搭載アンテナ204に正対するようにしている。
【0004】
人工衛星201に地上アンテナ203を正対させる制御方法として、或る時刻における人工衛星201の位置を何らかの方法で予め予測しておき、その予測した位置に地上アンテナ203の方向を制御する方法(プログラム追尾)と、人工衛星201から送信された信号を地上アンテナ203で受信し、その受信信号の強度が最大になるように地上アンテナ203の仰角及び方位角を制御する方法とが知られている。
【0005】
自動追尾方法には、地上アンテナ203で受信した受信信号の強度を用いて行うステップトラック方式、コニカルスキャン方式等があり、これらの方式は、太陽同期軌道で運用される人工衛星に採用されている。これらの方式では、地上アンテナ203のビームを仰角、方位角又はホーンの取り付け角を変化させる方法(アンテナスキャン)等によって受信信号電力に変化を生じさせ、変化させた仰角、方位角又はホーンの取り付け角に対する受信信号電力の変化から、受信信号電力が最も大きくなる仰角、方位角又はホーンの取り付け角へ地上アンテナ203を向けることを繰り返すことによって、地上アンテナ203が人工衛星201に正対するようにしている。
【0006】
また、他の追尾方法に基づいて制御される衛星搭載用アンテナも提案されており、予め判明している周回軌道上のボアサイト方向を基に周回中の全ての時間帯で人工衛星から見た全地球エリアをカバーするビーム形状係数を予め算出し、このビーム形状係数に基づいて人工衛星から見た全地球エリアをカバーするビーム形状にアンテナのビームを成形する成形ビーム形成器と、この成形ビーム形成器からのビームを地球に向けて放射するビームアンテナとを備え、人工衛星から見たカバーエリアに死角が生じないようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−269384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のアンテナ制御方法によると、以下に述べる問題がある。
(1)受信信号強度の変化に降雨による信号強度の変化や、人工衛星201と地上アンテ203との間に生じた電波遮蔽物等の影響による信号強度の変化等の仰角、方位角又はホーンの取り付け角以外の原因で生じた信号強度の変化が含まれると、地上アンテナ203を正しく人工衛星201に正対するように制御することができなくなる。そのため、仰角、方位角又はホーンの取り付け角以外で発生する信号強度の変化は、できる限り除く必要がある。
【0009】
(2)また、近年、人工衛星に搭載される衛星搭載機器の物理的な形状が複雑化しているため、衛星搭載機器との信号干渉対策が十分でない場合、人工衛星と地上アンテナ203との間に介在する衛星搭載機器の一部が電波干渉することがある。例えば、図21(a)に示すように衛星搭載アンテナ204と地上アンテナ203の間に衛星搭載機器206が介在する位置関係になり、或いは図21(b)に示すように、人工衛星201の衛星搭載アンテナ204が地上アンテナ203への放射範囲に衛星搭載機器206が入ると、衛星搭載アンテナ204のビームパターンがアンテナ単体で計測されたものと異なるようになる。この現象は、衛星搭載アンテナ204のビーム指向中心方向を変化させた場合や複雑な形状の衛星搭載機器206と衛星搭載アンテナ204との信号干渉等によって発生する。
【0010】
(3)人工衛星から地上へ送信されるデータ速度が100〜300Mbit/秒を越えると、そのデータを送信するための占有周波数帯域は数100MHz以上になる。人工衛星と地上アンテナ間でデータをエラーなく通信するためには、その通信に用いる電波の占有帯域中は、均一な周波数特性を持つアンテナを使用することが必要である。しかしながら、図21に示したような問題が発生すると、通信に用いる電波の占有帯域中の周波数特性を均一に保つことができないため、地上アンテナで受信されたデータは通常よりも多くのビットエラーが含まれるという問題が生じる。
【0011】
従って、本発明の目的は、受信信号の周波数特性が均一になるようにすることで、衛星搭載アンテナと地上アンテナとの間の電波干渉に起因する信号強度の変化を受けないようにすることができると共に、ビットエラーの低減を図ることが可能な衛星通信システム及びその周波数特性補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の本発明は、地球を周回する人工衛星と前記地球に設置された地上局との間で通信を行う衛星通信システムにおいて、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナからの電波の放射領域に前記人工衛星に搭載された搭載機器が介在することにより前記地上局における受信強度が変化した場合でも前記地上局で受信された受信信号電力の占有周波数帯域の周波数特性が均一になるように前記地上局の受信信号又は前記人工衛星の送信信号を補正する補正回路が、前記地上局及び前記人工衛星の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする衛星通信システムを提供する。
【0013】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の衛星通信システムにおいて、前記補正回路は、前記衛星搭載アンテナの角度の可変値をパラメータにして前記周波数特性を均一にするディジタルフィルタであり、前記地上局の受信機に設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の衛星通信システムにおいて、前記ディジタルフィルタは、前記受信機の復調部に設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の本発明は、請求項2に記載の衛星通信システムにおいて、前記ディジタルフィルタは、前記受信機のダウンコンバータと受信部との間に設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の本発明は、請求項2に記載の衛星通信システムにおいて、前記補正回路は、前記衛星搭載アンテナの角度の異なる固定値をパラメータにして前記周波数特性を均一にする複数のディジタルフィルタが前記地上局の受信機のダウンコンバータと受信部の間に設けられ、前記複数のディジタルフィルタのうち、受信時のビットエラーが最も少なかった1つが選択されることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の本発明は、請求項1に記載の衛星通信システムにおいて、前記補正回路は、前記ディジタルフィルタに入力される信号に対して高速フーリエ変換を行う高速フーリエ変換部と、該高速フーリエ変換部による処理結果及び前記衛星搭載アンテナの角度の可変値に基づいて前記周波数特性を均一にするディジタルフィルタとを有し、前記地上局の受信機に設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の本発明は、請求項1に記載の衛星通信システムにおいて、前記補正回路は、前記人工衛星に搭載の送信機の送信信号の周波数特性を補正するディジタルフィルタであり、前記送信機に設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の本発明は、請求項7に記載の衛星通信システムにおいて、前記ディジタルフィルタは、前記送信機に設けられた変調部とアップコンバータとの間に設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、上記目的を達成するため、請求項9に記載の本発明は、人工衛星から地球の地上局への電波の放射に対し、前記人工衛星に搭載の衛星搭載機器が干渉する可能性を前記人工衛星の運行状況から把握し、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナの角度に応じて前記地上局における受信信号電力の占有周波数帯域の周波数特性が均一になるように、前記地上局の受信機によってその受信信号の周波数特性を補正することを特徴とする衛星通信システムの周波数特性補正方法を提供する。
【0021】
請求項10に記載の本発明は、請求項9に記載の衛星通信システムの周波数特性補正方法において、前記受信信号の補正は、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナの角度定数に基づいて周波数特性が変更されるディジタルフィルタに前記受信信号を通過させることにより行うことを特徴とする。
【0022】
また、上記目的を達成するため、請求項11に記載の本発明は、人工衛星から地球の地上局への電波の放射に対し、前記人工衛星に搭載の衛星搭載機器が干渉する可能性を前記人工衛星の運行状況から把握し、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナの角度に応じて前記地上局における受信信号電力の占有周波数帯域の周波数特性が均一になるように、前記人工衛星に搭載の送信機によってその送信信号の周波数特性を補正することを特徴とする衛星通信システムの周波数特性補正方法を提供する。
【0023】
請求項12に記載の本発明は、請求項11に記載の衛星通信システムの周波数特性補正方法において、前記送信信号の補正は、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナの角度定数に基づいて周波数特性が変更されるディジタルフィルタに前記送信信号を通過させることにより行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、衛星搭載アンテナと地上アンテナとの間の電波干渉に起因する信号強度の変化を受けないようにすることができると共に、ビットエラーの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る通信システムを示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に係る通信システムの各部における占有周波数帯域スペクトラム及びビットエラーの発生状況を示し、(a)は人工衛星の送信機の送信電力の占有周波数帯域スペクトラム、(b)は人工衛星1の衛星搭載アンテナの利得の占有周波数帯域スペクトラム、(c)は地上アンテナの利得に対する占有周波数帯域スペクトラム、(d)は地上局の受信機のビットエラー発生状況に対する評価を示す図である。
【図3】人工衛星の座標定義を説明する図である。
【図4】衛星搭載アンテナの指向中心方向(θax,θay)=(0,0)時における人工衛星側アンテナのボアサイト方向ゲインGtx(θax,θay,θbx,θby)を示す図である。
【図5】人工衛星搭載機器による電波干渉を考慮した追尾受信システムの受信信号電力の補正に用いるアンテナゲイン変化を示す図である。
【図6】人工衛星の衛星搭載機器が回動した状態の一例を示す図である。
【図7】衛星搭載アンテナのビーム方向と人工衛星搭載機器との電波干渉を説明する図である。
【図8】地上局の受信機の復調部の構成を示すブロック図である。
【図9】ディジタルフィルタの詳細を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る地上局の受信機の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る地上局の受信機の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る地上局の受信機及びその変形例を示し、(a)は第4の実施の形態を示すブロック図、(b)は(a)の変形例を示すブロック図である。
【図13】本発明の第5の実施の形態に係る地上局の受信機の構成を示すブロック図である。
【図14】占有帯域の電力エネルギースペクトル分布を一定にするためのフィルタ特性の2つを示す特性図である。
【図15】占有帯域の電力エネルギースペクトル分布を一定にするためのフィルタ特性の他の2つを示す特性図である。
【図16】本発明の第6の実施の形態に係る人工衛星の送信機の構成を示すブロック図である。
【図17】本発明の第7の実施の形態に係る人工衛星の送信機の構成を示すブロック図である。
【図18】本発明の第8の実施の形態に係る人工衛星の送信機の構成を示すブロック図である。
【図19】本発明の第9の実施の形態に係る人工衛星の送信機の構成を示すブロック図である。
【図20】衛星通信システムの一例を示す図である。
【図21】人工衛星のアンテナと地上アンテナとの間に衛星搭載機器が介在する状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1の実施の形態]
(衛星通信システムの構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る通信システムを示すブロック図である。この衛星通信システム100は、地球上の宇宙空間を地球の地心を中心にして周回する人工衛星1と、地球上に設置されて人工衛星1からの電波を受信する地上局2とを備えている。人工衛星1は、例えば地球観測衛星である。また、本実施の形態においては、地上局2は受信局となっている。
【0027】
人工衛星1は、図示しない地上の送信局からの電波を受信する受信機3と、地上局2へ送る送信データを送信する送信機4と、地上側からの電波を受信すると共に送信機4からの送信出力を電波として放射する衛星搭載アンテナ5と、地球環境等の観測を行う観測機器6と、人工衛星1の全体を制御する制御部7とを有している。衛星搭載アンテナ5は、例えばジンバルコントロールアンテナであり、複数基が搭載されている場合もある。制御部7は、姿勢制御、電源供給制御等の人工衛星1における全ての制御を含んでいる。
【0028】
送信機4は、送信対象の信号に対して位相変調(PSK:Phase Shift Keying)等を施す変調部10と、変調部10による送信信号を送信対象の周波数帯(例えばGHz帯)に変換するアップコンバータ11と、アップコンバータ11からの送信信号を電力増幅した高周波出力を衛星搭載アンテナ5に給電する送信部12とを備えている。
【0029】
地上局2は、人工衛星1からの電波を受信する地上アンテナ8と、地上アンテナ8で受信した信号を処理する受信機9とを備えている。地上アンテナ8は、例えばカセグレンアンテナであり、人工衛星1を追尾する図示しない追尾装置を備えている。受信機9は、受信信号を例えばギガヘルツ(GHz)帯から低い周波数帯に周波数変換するダウンコンバータ13と、ダウンコンバータ13の出力信号を復調する復調部14とを備えている。
【0030】
(衛星通信システムの動作)
次に、衛星通信システム100の動作について説明する。人工衛星1は、観測機器6による観測データや受信機3が受信した信号(例えば、地上からのコマンド)に対する応答信号等を送信機4の変調部10で変調して変調信号を生成する。この変調信号は、アップコンバータ11によって所望のGHz帯の周波数に変換され、更に送信部12で電力増幅等が行われた後、衛星搭載アンテナ5に給電される。衛星搭載アンテナ5は、送信部12からの高周波電力を電波として地球に向けて送信する。
【0031】
地上局2は、衛星搭載アンテナ5からの電波を地上アンテナ8で受信する。その受信信号はダウンコンバータ13によって低い周波数帯に変換され、更に復調部14によって復調処理が行われることにより、復調信号が出力される。更に、復調信号は、地上側の通信回線等へ伝送するために図示しない回路によって処理される。
【0032】
ここで、人工衛星1の送信出力をPtx[dBm]、パッシブ回路損失をPtxl[dB]、衛星搭載アンテナ5の利得をGtx[dBi]、ポラリゼーション損失をLpo[dB]、自由空間損失をLFs[dB]、環境吸収損失をLaa[dB]、雨減衰損をLra[dB]、地上局アンテナ利得をGrx[dBi]とすると、地上アンテナ8における受信信号電力Prは数式(1)で与えられる。
【0033】
(数1)
Pr=Ptx+Ptxl+Gtx+Lpo+LFs+Laa+Lra+Grx
・・・(1)
【0034】
上記したように、人工衛星1の衛星搭載アンテナ5が地上アンテナ8に対する電波放射範囲に観測機器(衛星搭載機器)6が入ると、地上アンテナ8で受信される受信信号電力Prが減少する。しかし、上記数式(1)より明らかなように、アンテナ利得Gtxを増やせば受信信号電力Prを補正することができる。このような補正を、第1の実施の形態においては後述する復調部14で行っている。
【0035】
図2は、第1の実施の形態に係る通信システムの各部における占有周波数帯域スペクトラム及びビットエラーの発生状況を示し、(a)は人工衛星の送信機の送信電力の占有周波数帯域スペクトラム、(b)は人工衛星の衛星搭載アンテナの利得の占有周波数帯域スペクトラム、(c)は地上アンテナの利得に対する占有周波数帯域スペクトラム、(d)は地上局の受信機のビットエラー発生状況に対する評価を示す図である。
【0036】
人工衛星1に搭載の送信機4の送信電力は、外部の影響を受けないため、図2の(a)の[A]及び[B]に示すように占有周波数帯域スペクトラムは理想の状態にある。地上局2も理想的な受信状況である場合、その占有周波数帯域スペクトラムは[A]のように理想的な状態になっている。衛星搭載アンテナ5の利得は、上記課題で説明したようなアンテナの取り付け位置等が悪いことに起因する信号強度の変化や観測機器6の干渉が発生すると、図2の(b)に示すように特性が悪化する。更に、同様の問題が発生していると、地上アンテナ8の受信信号電力(Pr)も図2の(c)に示すように占有周波数帯域スペクトラムの特性が悪化する。従って、図2の(b),(c)の[B]に示すように悪化した特性を、図2の(b),(c)の[A]に示すような理想の特性にすることができれば、上記した問題は解消される。
【0037】
問題発生時には、地上アンテナ8の受信信号電力は図2(c)の[B]に示すようになるので、地上局2の受信機9は、図2(b)の[A]に示すアンテナゲイン特性によって衛星搭載アンテナ5から送信されることを前提にして作られている。このような受信機9で、その信号を受信して復調すると、多くのビットエラーを含むことが知られている。
【0038】
図3は、人工衛星の座標定義を説明する図である。地球200に対する人工衛星1の座標X、Y、Zは、図3に示すように定義する。ここで、Xは衛星軌道方向R上の人工衛星1の進行方向であり、その進行方向を正とする。Yは方向Xに直交する方向である。また、Zは地球200の中心方向であり、地球中心(地心)方向が正である。
【0039】
衛星搭載アンテナ5は、指向中心方向の角度をθax,θayとする。この角度θax,θayは、人工衛星1の運用者(所有機関等)から提供される情報を基に決定する。なお、衛星搭載アンテナ5が可動機構を持たない場合、角度θax,θayは固定値となる。また、人工衛星1から地上アンテナ8を見たボアサイト角(視野角)θbx,θbyは次の様にして求められる。
(i)軌道予測演算によって人工衛星1の位置を求める。
(ii)地上アンテナ8の位置を与える。
(iii)上記(i)、(ii)によって与えられた3次元座標位置からθbx,θbyを求める。
【0040】
上記(i),(ii)の情報から或る時刻におけるボアサイト角θbx,θbyを求めることができる。具体的には、次の様に時刻に対するテーブルを予め用意しておき、受信時に時刻を基準として必要な定数を表1のように読み取る。
【0041】
【表1】
【0042】
衛星搭載アンテナ5のθbx,θby方向のアンテナゲインGtx’(θax,θay,θbx,θby)は次の数式(2)で与えられる。
【0043】
(数2)
Gtx'(θax,θay,θbx,θby)
=Gtx(θax,θay,θbx,θby)
+Gti(θax,θay,θbx,θby) ・・・(2)
【0044】
図4は、衛星搭載アンテナの指向中心方向(θax,θay)=(0,0)時における人工衛星搭載アンテナのボアサイト方向ゲインGtx(θax,θay,θbx,θby)を示す図である。この図4からボアサイト方向ゲインGtxの特性を知ることができる。
【0045】
図5は、人工衛星搭載機器による電波干渉を考慮した追尾受信システムの受信信号電力Prの補正に用いるアンテナゲイン変化を示す図である。図5は、衛星搭載アンテナ5の指向中心方向が或る方向(θax,θay)=(0,0)時におけるボアサイト角(θbx,θby)対アンテナゲイン変化Gti(θax,θay,θbx,θby)、つまり、或る一方向(θax,θay)の場合についての(θbx,θby)対アンテナゲインの変化Gtiを示している。Gtiは、予め全ての角度θax,θay,θbx,θbyについて求めておく。また、角度θax,θay,θbx,θbyの組み合わせに対するGtiは、実測により求めても良い、衛星搭載アンテナ5及び観測機器6(衛星搭載機器)の物理形状を入力定数にしてコンピュータシミュレーションによって求めても良い。
【0046】
地上アンテナ8で受信される受信信号電力Prを求める場合、上記数式(1)に従うが、まず、衛星搭載アンテナ5の指向中心方向(θax,θay)と、人工衛星1から地上アンテナ8を見たボアサイト角θbx,θbyとを与え、図4から角度θax,θayに対するアンテナゲインGtxをGtx(θax,θay,θbx,θby)を求める。
【0047】
次に、図5からアンテナゲイン変化GtiをGti(θax,θay,θbx,θby)により求める。そして、Gtx(θax,θay,θbx,θby)、とGti(θax,θay,θbx,θby)を加えたものをGtx'とする。このGtx'を上記数式(1)のGtxに代入して受信信号電力Prを求める。
【0048】
図6は、人工衛星の衛星搭載機器が移動した状態の一例を示す図である。図6に示すように衛星搭載機器16の移動によって電波干渉状態が変化する場合、その衛星搭載機器16の移動方向を衛星搭載機器16の方向θex,θeyとして与え、その移動に対するアンテナゲインの変化をGti(θax,θay,θbx,θby,θex,θey)とし、数式(3)によってGtx'(θax,θay,θbx,θby,θex,θey)を求めればよい。
【0049】
(数3)
Gtx'(θax,θay,θbx,θby,θex,θey)
=Gtx(θax,θay,θbx,θby)
+Gti(θax,θay,θbx,θby,θex,θey) ・・・(3)
【0050】
図7は、衛星搭載アンテナのビーム方向と人工衛星搭載機器との電波干渉を説明する図である。上記の説明では、衛星搭載アンテナ5の指向中心方向の角度θax,θayと人工衛星1から地上アンテナ8を見たボアサイト角θbx,θbyとでGtxを表現したが、衛星搭載アンテナ5のビーム方向と地上アンテナ8とは、図7に示す関係にあるので、GtxとGtiのそれぞれを地上アンテナの仰角(Elevation:El)、方位角(Azimuth:Az)で表現し、Gtx(Az,El)とGti(Az,El)のように表現してもよい。また、地上アンテナ8の方向は、X−Y方式などで表現してもよい。なお、人工衛星1から地上アンテナ8を見たボアサイト角θbx,θbyは、人工衛星1の運用者から提供されるオービットエフェメリスを使用して軌道予測演算を行うことにより人工衛星1の位置を求め、その結果と地上アンテナ8の位置とから求める。
【0051】
また、上記数式(1)及び(2)では、衛星搭載アンテナ5がボアサイト方向θax,θayに対して可変できる場合や、衛星搭載機器16が角度θex,θey方向に移動できる場合について示したが、衛星搭載アンテナ5が特定方向に固定されている場合や、衛星搭載機器16が特定方向に固定されている場合には、上記数式(1)及び(2)の中から角度θax,θay,θex,θeyを除いてもよい。
【0052】
(復調部の構成)
次に、上記した方法に基づいて受信信号電力Prの補正を行う復調部の構成について説明する。図8は、地上局の受信機の復調部の構成を示すブロック図である。復調部14は、受信信号及びcosωtの搬送波が入力される乗算器141と、乗算器141による乗算結果に対して帯域制限を行うLPF(ローパスフィルタ)142と、LPF142からのアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D(アナログ/ディジタル)変換器143と、衛星搭載アンテナ5の角度θax,θax,θbx,θbxに起因して生じる周波数特性の変動を補正するディジタルフィルタ(補正回路)144と、ディジタルフィルタ144からの信号をディジタルからアナログに変換するD/A(ディジタル/アナログ)変換器145と、D/A変換器145からの信号の帯域を制限した復号信号αを出力するLPF146と、受信信号及び−sinωtの搬送波が入力される乗算器147と、乗算器147による乗算結果に対して帯域制限を行うLPF148と、LPF148からのアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器149と、上記角度θax,θax,θbx,θbxに起因して生じる周波数特性の変動を補正するディジタルフィルタ(補正回路)150と、ディジタルフィルタ150からの信号をディジタルからアナログに変換するD/A変換器151と、D/A変換器151からの信号の帯域を制限すると共に復号信号βを出力するLPF152と、角度定数(θax,θax,θbx,θbx)に基づいてディジタルフィルタ144,150のフィルタ定数を変更するフィルタ定数設定テーブル153とを備えている。
【0053】
フィルタ定数設定テーブル153は、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)コンピュータソフトウェア等を用いて構築することができる。
【0054】
図8において、ディジタルフィルタ144、D/A変換器145、LPF146からなる組み合わせ、及びディジタルフィルタ150、D/A変換器151、LPF152からなる組み合わせのそれぞれは、DFU(Digital Filter Unit:ディジタルフィルタユニット)を構成している。
【0055】
(ディジタルフィルタの構成)
図9は、ディジタルフィルタの詳細を示すブロック図である。ディジタルフィルタ144,150は、例えばFIR(Finite Impulse Response)型やIIR(Infinite Impulse Response)型のフィルタであると共に同一の構成である。従って、ここではディジタルフィルタ144の構成について説明する。ディジタルフィルタ144は、A/D変換部143からの信号を順次遅延するように直列接続されたn個の遅延器17−1〜17−nと、入力信号又は遅延信号とフィルタ定数設定テーブル153からのパラメータh0〜hnとを乗算するn個の乗算器18−1〜18−nと、乗算器18−1〜18−nの乗算結果を加算するn個の加算器19−1〜19−nとを備えている。
【0056】
【表2】
【0057】
表2は、フィルタ定数設定テーブル153のテーブル内容の一例を示す。このフィルタ定数設定テーブル153は、衛星搭載アンテナ5の或る角度θax,θax,θbx,θbxにおけるパラメータh0〜hnを示している。
【0058】
乗算器18−1は入力信号とフィルタ定数設定テーブル153からのパラメータh0とを乗算し、乗算器18−2〜18−nは、遅延器17−2〜17−nの1つの出力信号とパラメータh1〜hn(以下、単にhとも言う)とを乗算する。加算器19−1〜19−nは、乗算器18−n側から乗算器18−1に向けて乗算器18−1〜18−nの出力信号を順次加算するように接続されている。
【0059】
ディジタルフィルタ144,150の特性は、フィルタ定数設定テーブル153からのパラメータhによって可変できるようになっている。パラメータhは、衛星搭載アンテナ5の指向中心方向θax,θay及び人工衛星1から地上アンテナ8を見たボアサイト角θbx,θbyに対応している。フィルタ定数設定テーブル153は、衛星搭載機器が干渉していない状況下で計測される占有帯域の周波数スペクトラムを基準として、衛星搭載アンテナ5の角度θax,θay,θbx,θbyが変化した場合に発生する占有帯域の周波数スペクトラム変化を打ち消すように増幅又は減衰するようにディジタルフィルタ144,150の特性を逐次変化させることによって、衛星搭載アンテナ5の角度θax,θay,θbx,θbyが変化した場合でも、復調部14に入力される占有帯域の周波数スペクトラムが変化しないようにする。
【0060】
【表3】
【0061】
表3は、ディジタルフィルタ144,150の特性を逐次変化させるテーブルの一例を示す。表3の様に、FIRフィルタの定数を時刻と共に用意しておき、受信時刻に相当するフィルタ定数をディジタルフィルタ144,150に逐次ロードする。
【0062】
【表4】
【0063】
表4は、フィルタ定数設定テーブル153に設定されている定数(Gti)の内容例を示す。フィルタ定数設定テーブル153は、時刻を基準にしてディジタルフィルタ144,150のパラメータh0〜hnをディジタルフィルタ144,150のそれぞれへロードするものである。表3に示す例は、或る角度定数(θax,θay,θbx,θby)におけるn個の定数(h0〜hn)を示している。実際に使用するフィルタ定数設定テーブル153は、角度θax,θay,θbx,θbyの全ての組み合わせについてパラメータh0〜hnが定められている。
【0064】
(復調部の動作)
次に、図8及び図9を参照して復調部14の動作を説明する。ダウンコンバータ13からの信号は、cosωtを搬送波とする乗算器141及び−sinωtを搬送波とする乗算器147のそれぞれに入力されることにより位相検波が行われる。位相検波された2つの信号はLPF142,148によって帯域制限された後、ディジタルフィルタ144,150に入力される。
【0065】
ディジタルフィルタ144,150では、LPF142,148の出力信号に対して「たたみ込み演算」が行われる。図9に示す遅延器17−1〜17−nでは現在の入力と過去の入力が求められ、これらの信号に対し、乗算器18−1〜18−nはフィルタ定数設定テーブル153からの係数h0〜hnを掛けることにより、加算器19−1からフィルタ出力を得る。
【0066】
フィルタ定数設定テーブル153は、角度θax,θay,θbx,θbyにおける定数を生成し、この定数に基づいてディジタルフィルタ144,150のフィルタ定数を変更し、図2の[A]のような理想の周波数帯域スペクトラムトラムが得られるようにディジタルフィルタ144,150のフィルタ特性を補正する。ディジタルフィルタ144,150の出力信号は、D/A変換部145,151によってディジタル信号からアナログ信号に変換され、更にLPF146,152を通すことにより復号信号α,βが取り出される。
【0067】
(第1の実施の形態の効果)
第1の実施の形態によれば、復調部14にディジタルフィルタ144,150を設け、フィルタ定数設定テーブル153からのパラメータhに基づいてディジタルフィルタ144,150の周波数特性を変更して受信信号電力Prのスペクトラムを補正できるようにしたため、信号強度の変化の影響を受けることなく人工衛星1を追尾することができる。
【0068】
[第2の実施の形態]
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る地上局の受信機の構成を示すブロック図である。図8に示す第1の実施の形態がDFU15を復調部14に設けていたのに対し、本実施の形態はダウンコンバータ13にDFU15を接続し、このDFU15と復調部14を含む受信部20との間に受信フィルタ154を接続したものである。なお、受信部20は、図8からDFU15を除いた構成になる。また、受信部20はアナログによる構成であってもよい。この場合、受信部20の前段にD/A変換器を設ける。
【0069】
本実施の形態のDFU15は、受信信号の占有帯域内のレベルを図2の(c)の理想のスペクトラムと同等になるように補正する。この第2の実施の形態により得られる効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0070】
[第3の実施の形態]
図11は、本発明の第3の実施の形態に係る地上局の受信機の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、図10に示す第2の実施の形態において、受信フィルタ154とDFU15とを入れ換えたものである。この第3の実施の形態により得られる効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0071】
[第4の実施の形態]
図12は、本発明の第4の実施の形態に係る地上局の受信機及びその変形例を示し、(a)は第4の実施の形態を示すブロック図、(b)は(a)の変形例を示すブロック図である。本実施の形態は、図10に示す第2の実施の形態において、複数のDFU(DFU15A〜15C)を補正回路として用い、このDFU15A〜15Cと受信フィルタ154との間にスイッチ21を設けた構成にしたものである。スイッチ21は、図示しない制御部によって切り替え制御される。DFU15A〜15Cは各入力部が並列接続され、3つの出力部はスイッチ21によって1つが選択されて受信フィルタ154に印加される。この場合、DFU15A〜15Cのディジタルフィルタ144のパラメータhは異なる値の固定値とする。なお、図12の(a)において、DFU15A〜15Cはアナログフィルタであってもよい。
【0072】
スイッチ21を制御する制御部は、復調された信号に基づいてDFU15A〜15Cの中で最もビットエラーが少なかったものを検出し、スイッチ21を動作させてDFU15A〜15Cのうちの1つを選択する。ビットエラーが最も少ないものを選択する方法として、制御部により、送信データに含まれるリードソロモン符号を復号する際にエラーを判断する、ターボ符号を復号する際にエラーを判断する等の方法がある。
【0073】
[第4の実施の形態の変形例]
図12の(b)に示す受信機9の構成は、同図の(a)に示す構成において、DFU15Aにフィルタ154A及び受信部20Aを直列接続し、DFU15Bにフィルタ154B及び受信部20Bを直列接続し、DFU15Cにフィルタ154C及び受信部20Cを直列接続したものである。受信部20A〜20CはPSKディジタル方式により構成されている。なお、図12の(b)において、DFU15A〜15Cはアナログフィルタであってもよい。
【0074】
この構成においては、DFU15A〜DFU15Cの各々の出力に応じて受信部20A〜20Cが動作するが、DFU15A〜DFU15Cは相互に設定値が異なっているため、受信部20A〜20Cが共に同一構成及び同一仕様であっても、受信部20A〜20Cで得られるビットエラーは異なる。そこで、受信部20A〜20Cの中で最もビットエラーが少なかったものを図示しない制御部により選択する。
【0075】
(第4の実施の形態及びその変形例の効果)
第4の実施の形態及びその変形例によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られると共に、衛星搭載アンテナ5の角度θax,θay,θbx,θbyが変化したときでも復調器14に入力される占有帯域の周波数スペクトラムの変化がそれほど大きくない場合に対応でき、これによりフィルタ定数設定テーブル153を不要にすることができる。
【0076】
また、人工衛星1が高速で通信を行う地球観測衛星であった場合、現在入手可能な最高速のデバイスを使用しても、図8に示す第1の実施の形態の構成では高速化は難しいが、第4の実施の形態の構成によれば容易に通信の高速化を達成することができる。
【0077】
[第5の実施の形態]
図13は、本発明の第5の実施の形態に係る地上局の受信機の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、第1の実施の形態の図8において、A/D変換器143とフィルタ定数設定テーブル153との間にA/D変換器143の出力信号に対してFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理を行うFFT部155を設けたものである。図13においては、復号信号α側の構成のみを示しているが、復号信号β側も同様の構成であり、A/D変換器149とフィルタ定数設定テーブル153との間にFFT部155と同構成のFFT部が設けられる。ここでは、復号信号α側の構成及び動作について説明し、復号信号β側についての説明は省略する。
【0078】
本実施の形態においては、ディジタルフィルタ144は、図9に示した構成を有すると共に占有帯域の電力エネルギースペクトル分布を一定にするためのフィルタ特性が複数設定される。その一例が図14及び図15である。図14及び図15は、占有帯域の電力エネルギースペクトル分布を一定にするためのフィルタ特性を示している。図14及び図15において、横軸はFFTによって求められたスペクトラムの正規化周波数を示し、縦軸は正規化振幅を示している。
【0079】
ディジタルフィルタ144のフィルタ特性は、Fil.#1(図14の(a))、Fil.#2(図14の(b))、Fil.#3(図15の(a))、Fil.#4(図15の(b))の4種が用意されている。図14の(a)に示すNf1,Nf2,Nf3,・・・Nfnは、或る周波数に対する振幅である。ここでは、フィルタ特性を4種としたが、実際には、より多くのフィルタを用意する。Fil.#1〜Fil.#4の特性は、表1に示すフィルタ定数(h0-hn)の値を変化させることによって達成される。
【0080】
次に、図13に示す受信機9の動作について説明する。入力である受信信号は、LPF142及びA/D変換器143でディジタル化された後、この信号はFFT部155によって占有帯域の電力エネルギースペクトラム(スペクトラム分布)が求められる。フィルタ定数設定テーブル153は、FFT部155による電力エネルギースペクトラムと理想の通信状況下で計測される占有帯域の周波数スペクトラムとの差を0にするためのディジタルフィルタ144の定数を求め、この定数をディジタルフィルタ144に付与する。なお、ディジタルフィルタ144が動作する範囲又はディジタルフィルタ144の定数を制限するため、角度定数(θax,θay,θbx,θby)をフィルタ定数設定テーブル153に付与している。
【0081】
ディジタルフィルタ144は、図14及び図15に示すFil.#1〜Fil.#4の全てについて下記の数式4に示す定数を用いて電力エネルギースペクトラム(Prmse)を求める。ディジタルフィルタ144は、4つのPrmseのうち、Prmseが最も小さい値になった値をディジタルフィルタ144のパラメータhとして採用する。なお、数式4において、nはスペクトラムの数、Ofは受信又はFFT等によって得られたスペクトラム、Sfは標準とするスペクトラムである。
【0082】
【数4】
【0083】
以上により、ディジタルフィルタ144は占有帯域の電力エネルギースペクトラム分布を常に一定に保つように動作する。ディジタルフィルタ144の出力信号はD/A変換器145によってディジタルからアナログの信号に変換され、更にLPF146によって帯域制限された信号が出力信号となる。
【0084】
なお、第5の実施の形態において、ディジタルフィルタ144のパラメータの動作範囲を制限する必要がない場合、角度定数(θax,θay,θbx,θby)を用いずにフィルタ定数設定テーブル153から上記したパラメータをディジタルフィルタ144へ出力する構成であってもよい。
【0085】
(第5の実施の形態の効果)
第5の実施の形態によれば、受信信号に対してディジタルフィルタ144により図2の(c)に示す[B]のような特性のスペクトラムを[A]のような特性のスペクトラムに補正することができるため、人工衛星1の衛星搭載アンテナ5のビーム指向中心方向が変化し或いは複雑な形状の観測機器6が人工衛星1に搭載された場合でも、衛星搭載アンテナ5の位置関係に起因する信号干渉等の発生を防止することができる。
【0086】
(人工衛星側における周波数特性の補正)
次に、衛星搭載アンテナ5のビーム指向中心方向が変化した場合、人工衛星1と地上アンテナ8との間に人工衛星1に搭載されている観測機器6の一部が電波干渉を生じた場合等に対する対策、具体的には、図2の(b)に示す[B]のような特性のスペクトラムを[A]のような特性のスペクトラムに補正する人工衛星1側の実施の形態について説明する。
【0087】
[第6の実施の形態]
図16は、本発明の第6の実施の形態に係る人工衛星の送信機の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、上記した課題の(3)を解決するものであり、電波の干渉により衛星搭載アンテナ5の周波数に対するゲインが変化することに起因するビットエラーを低減できるように周波数特性の変動を補正する補正回路(後記するDFU23)及びフィルタ定数設定テーブル153を人工衛星1の送信機4に設けたものである。
【0088】
(人工衛星の送信機の構成)
変調部10は、ベースバンド信号をパラレル信号に変換するS/P(シリアル/パラレル)変換部101と、S/P変換部101の出力信号からPSK信号を得るデータ変換部102,103と、データ変換部102からの信号と搬送信号cosωtとを乗算する乗算器104と、データ変換部103からの信号と搬送信号−sinωtとを乗算する乗算器105と、乗算器104,105によるそれぞれの乗算結果を加算する加算器106と、加算器106の出力信号に対して帯域制限を行う送信フィルタ22と、送信フィルタ22に接続されたDFU(補正回路)23と、DFU23に接続された上記アップコンバータ11と、アップコンバータ11に接続された上記送信部12と、DFU23に角度定数を供与する上記したフィルタ定数設定テーブル153とを備えている。なお、DFU23は、図8に示したDFU15と同様の構成を有している。
【0089】
(人工衛星の送信機の動作)
“1”,“0”の2値により構成されたベースバンド信号(入力信号)は、S/P変換部101によってパラレル信号に変換される。このパラレル信号は、データ変換部102,103によってグレイ符号化及びレベル変換(+1,−1の信号にする処理)が行われ、変調信号が生成される。この変調信号は、乗算器104,105によって搬送信号に乗算されることにより、PSK信号が生成される。このPSK信号は送信フィルタ22を通してDFU23に入力される。
【0090】
本実施の形態におけるフィルタ定数設定テーブル153は、電波干渉が発生しない状況下で計測される占有帯域の周波数スペクトラムを基準として、衛星搭載アンテナ5の角度θax,θay,θbx,θbyが変化した場合に発生する占有帯域の周波数スペクトラムの変化を打ち消すべく、アップコンバータ11における信号が増幅又は減衰されるようにDFU23内のディジタルフィルタの特性を逐次変化させる。これにより、地上で受信される受信機9の占有帯域の周波数スペクトラムの変化を防止することができる。DFU23で処理された変調信号はアップコンバータ11に入力され、所望の周波数に変換された後、送信部12で電力増幅されて衛星搭載アンテナ5に給電される。
【0091】
(第6の実施の形態の効果)
第6の実施の形態によれば、変調部10とアップコンバータ11との間にDFU23を設け、衛星搭載アンテナ5の角度が変化した場合に発生する占有帯域の周波数スペクトラムの変化を打ち消すようにしたので、衛星搭載アンテナ5の周波数に対するゲインが変化することに起因して地上局2の受信機9に生じるビットエラーを低減することができる。
【0092】
[第7の実施の形態]
図17は、本発明の第7の実施の形態に係る人工衛星の送信機の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、図16に示す第6の実施の形態において、送信フィルタ22とDFU23を入れ換えたものであり、その他の構成は第6の実施の形態と同様である。この第7の実施の形態によれば、第6の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0093】
[第8の実施の形態]
図18は、本発明の第8の実施の形態に係る人工衛星の送信機の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、図17に示す第7の実施の形態において、送信フィルタ22の機能をDFU23に持たせて送信フィルタ22を除去できるようにしたものであり、その他の構成は第7の実施の形態と同様である。この第8の実施の形態によれば、第6の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0094】
[第9の実施の形態]
(送信機の構成)
図19は、本発明の第9の実施の形態に係る人工衛星の送信機の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、第5の実施の形態における図13の地上局2の受信機9の構成を人工衛星1の送信機4に適用したものであり、図13の構成からFFT部155を除去した構成になっている。人工衛星1においては、送信前の信号のスペクトラム分布が分かっていることから、FFT部155でスペクトラムを計測する必要がない。このため、本実施の形態ではFFT部155を設けていない。但し、FFT部155が設けてあっても、不都合は生じない。
【0095】
(送信機の動作)
図19の送信機4においては、例えば図16に示す変調部10からの送信信号に対し、LPF142及びA/D変換器143でディジタル化した後、ディジタルフィルタ144に印加される。ディジタルフィルタ144は、角度定数(θax,θay,θbx,θby)に基づいて動作するフィルタ定数設定テーブル153によりフィルタ定数が変更される。これにより、ディジタルフィルタ144は占有帯域の電力エネルギースペクトラム分布を常に一定に保つように動作し、その出力信号はD/A変換器145によってディジタルからアナログの信号に変換され、更にLPF146によって帯域制限された信号がアップコンバータ11に印加される。
【0096】
(第9の実施の形態の効果)
第9の実施の形態によれば、人工衛星1側でディジタルフィルタ144により送信信号に対して図2の(b)に示す[B]のような特性のスペクトラムを[A]のような特性のスペクトラムに補正することができるため、人工衛星1の衛星搭載アンテナ5のビーム指向中心方向が変化し或いは複雑な形状の観測機器6が人工衛星1に搭載された場合でも、衛星搭載アンテナ5の位置関係に起因する信号干渉等の発生を防止することができる。
【0097】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々な変形が可能である。例えば、人工衛星搭載機器による電波干渉に対して3つの解決方法を示したが、実際に応用する場合は、3つの内の2つ、望ましくは3つの方法を同時に採用するのが効果的で、実現も容易である。
【符号の説明】
【0098】
1 人工衛星
2 地上局
3 受信機
4 送信機
5 衛星搭載アンテナ
6 観測機器
7 制御部
8 地上アンテナ
9 受信機
10 変調部
11 アップコンバータ
12 送信部
13 ダウンコンバータ
14 復調部
15 DFU(ディジタルフィルタユニット)
15A DFU
15B DFU
15C DFU
16 衛星搭載機器
17−1〜17−n 遅延器
18−1〜18−n 乗算器
19−1〜19−n 加算器
20 受信部
20A 受信部
20B 受信部
20C 受信部
21 スイッチ
22 送信フィルタ
23 DFU
100 衛星通信システム
101 S/P変換部
102 データ変換部
103 データ変換部
104 乗算器
105 乗算器
106 加算器
141 乗算器
142 LPF(ローパスフィルタ)
143 A/D変換器
144 ディジタルフィルタ
145 D/A変換器
147 乗算器
148 LPF
149 A/D変換器
150 ディジタルフィルタ
151 D/A変換器
152 LPF
153 フィルタ定数設定テーブル
154 受信フィルタ
154A 受信フィルタ
154B 受信フィルタ
154C 受信フィルタ
155 FFT部
200 地球
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工衛星と地上局との間の通信に用いられる衛星通信システム及びその周波数特性補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星通信システムは、例えば図20に示すように、地球200の地心Pを略回転中心にして軌道Rで周回している人工衛星201を、地球200の地上に設置された受信局(地上局)202の地上アンテナ(パラボラアンテナ等)203で追尾しながら、地上アンテナ203と人工衛星201の衛星搭載アンテナ204との間に電波を伝搬させて通信を行うものである。
【0003】
人工衛星201は、太陽同期軌道、モルニア軌道等で運用される場合、その周回位置が図20に示す時刻t1,t2,t3,・・・の様に変化する。そのため、受信局202では、地上アンテナ203の仰角及び方位角を制御し、地上アンテナ203が常に人工衛星201の衛星搭載アンテナ204に正対するようにしている。
【0004】
人工衛星201に地上アンテナ203を正対させる制御方法として、或る時刻における人工衛星201の位置を何らかの方法で予め予測しておき、その予測した位置に地上アンテナ203の方向を制御する方法(プログラム追尾)と、人工衛星201から送信された信号を地上アンテナ203で受信し、その受信信号の強度が最大になるように地上アンテナ203の仰角及び方位角を制御する方法とが知られている。
【0005】
自動追尾方法には、地上アンテナ203で受信した受信信号の強度を用いて行うステップトラック方式、コニカルスキャン方式等があり、これらの方式は、太陽同期軌道で運用される人工衛星に採用されている。これらの方式では、地上アンテナ203のビームを仰角、方位角又はホーンの取り付け角を変化させる方法(アンテナスキャン)等によって受信信号電力に変化を生じさせ、変化させた仰角、方位角又はホーンの取り付け角に対する受信信号電力の変化から、受信信号電力が最も大きくなる仰角、方位角又はホーンの取り付け角へ地上アンテナ203を向けることを繰り返すことによって、地上アンテナ203が人工衛星201に正対するようにしている。
【0006】
また、他の追尾方法に基づいて制御される衛星搭載用アンテナも提案されており、予め判明している周回軌道上のボアサイト方向を基に周回中の全ての時間帯で人工衛星から見た全地球エリアをカバーするビーム形状係数を予め算出し、このビーム形状係数に基づいて人工衛星から見た全地球エリアをカバーするビーム形状にアンテナのビームを成形する成形ビーム形成器と、この成形ビーム形成器からのビームを地球に向けて放射するビームアンテナとを備え、人工衛星から見たカバーエリアに死角が生じないようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−269384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のアンテナ制御方法によると、以下に述べる問題がある。
(1)受信信号強度の変化に降雨による信号強度の変化や、人工衛星201と地上アンテ203との間に生じた電波遮蔽物等の影響による信号強度の変化等の仰角、方位角又はホーンの取り付け角以外の原因で生じた信号強度の変化が含まれると、地上アンテナ203を正しく人工衛星201に正対するように制御することができなくなる。そのため、仰角、方位角又はホーンの取り付け角以外で発生する信号強度の変化は、できる限り除く必要がある。
【0009】
(2)また、近年、人工衛星に搭載される衛星搭載機器の物理的な形状が複雑化しているため、衛星搭載機器との信号干渉対策が十分でない場合、人工衛星と地上アンテナ203との間に介在する衛星搭載機器の一部が電波干渉することがある。例えば、図21(a)に示すように衛星搭載アンテナ204と地上アンテナ203の間に衛星搭載機器206が介在する位置関係になり、或いは図21(b)に示すように、人工衛星201の衛星搭載アンテナ204が地上アンテナ203への放射範囲に衛星搭載機器206が入ると、衛星搭載アンテナ204のビームパターンがアンテナ単体で計測されたものと異なるようになる。この現象は、衛星搭載アンテナ204のビーム指向中心方向を変化させた場合や複雑な形状の衛星搭載機器206と衛星搭載アンテナ204との信号干渉等によって発生する。
【0010】
(3)人工衛星から地上へ送信されるデータ速度が100〜300Mbit/秒を越えると、そのデータを送信するための占有周波数帯域は数100MHz以上になる。人工衛星と地上アンテナ間でデータをエラーなく通信するためには、その通信に用いる電波の占有帯域中は、均一な周波数特性を持つアンテナを使用することが必要である。しかしながら、図21に示したような問題が発生すると、通信に用いる電波の占有帯域中の周波数特性を均一に保つことができないため、地上アンテナで受信されたデータは通常よりも多くのビットエラーが含まれるという問題が生じる。
【0011】
従って、本発明の目的は、受信信号の周波数特性が均一になるようにすることで、衛星搭載アンテナと地上アンテナとの間の電波干渉に起因する信号強度の変化を受けないようにすることができると共に、ビットエラーの低減を図ることが可能な衛星通信システム及びその周波数特性補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の本発明は、地球を周回する人工衛星と前記地球に設置された地上局との間で通信を行う衛星通信システムにおいて、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナからの電波の放射領域に前記人工衛星に搭載された搭載機器が介在することにより前記地上局における受信強度が変化した場合でも前記地上局で受信された受信信号電力の占有周波数帯域の周波数特性が均一になるように前記地上局の受信信号又は前記人工衛星の送信信号を補正する補正回路が、前記地上局及び前記人工衛星の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする衛星通信システムを提供する。
【0013】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の衛星通信システムにおいて、前記補正回路は、前記衛星搭載アンテナの角度の可変値をパラメータにして前記周波数特性を均一にするディジタルフィルタであり、前記地上局の受信機に設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の衛星通信システムにおいて、前記ディジタルフィルタは、前記受信機の復調部に設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の本発明は、請求項2に記載の衛星通信システムにおいて、前記ディジタルフィルタは、前記受信機のダウンコンバータと受信部との間に設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の本発明は、請求項2に記載の衛星通信システムにおいて、前記補正回路は、前記衛星搭載アンテナの角度の異なる固定値をパラメータにして前記周波数特性を均一にする複数のディジタルフィルタが前記地上局の受信機のダウンコンバータと受信部の間に設けられ、前記複数のディジタルフィルタのうち、受信時のビットエラーが最も少なかった1つが選択されることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の本発明は、請求項1に記載の衛星通信システムにおいて、前記補正回路は、前記ディジタルフィルタに入力される信号に対して高速フーリエ変換を行う高速フーリエ変換部と、該高速フーリエ変換部による処理結果及び前記衛星搭載アンテナの角度の可変値に基づいて前記周波数特性を均一にするディジタルフィルタとを有し、前記地上局の受信機に設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の本発明は、請求項1に記載の衛星通信システムにおいて、前記補正回路は、前記人工衛星に搭載の送信機の送信信号の周波数特性を補正するディジタルフィルタであり、前記送信機に設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の本発明は、請求項7に記載の衛星通信システムにおいて、前記ディジタルフィルタは、前記送信機に設けられた変調部とアップコンバータとの間に設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、上記目的を達成するため、請求項9に記載の本発明は、人工衛星から地球の地上局への電波の放射に対し、前記人工衛星に搭載の衛星搭載機器が干渉する可能性を前記人工衛星の運行状況から把握し、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナの角度に応じて前記地上局における受信信号電力の占有周波数帯域の周波数特性が均一になるように、前記地上局の受信機によってその受信信号の周波数特性を補正することを特徴とする衛星通信システムの周波数特性補正方法を提供する。
【0021】
請求項10に記載の本発明は、請求項9に記載の衛星通信システムの周波数特性補正方法において、前記受信信号の補正は、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナの角度定数に基づいて周波数特性が変更されるディジタルフィルタに前記受信信号を通過させることにより行うことを特徴とする。
【0022】
また、上記目的を達成するため、請求項11に記載の本発明は、人工衛星から地球の地上局への電波の放射に対し、前記人工衛星に搭載の衛星搭載機器が干渉する可能性を前記人工衛星の運行状況から把握し、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナの角度に応じて前記地上局における受信信号電力の占有周波数帯域の周波数特性が均一になるように、前記人工衛星に搭載の送信機によってその送信信号の周波数特性を補正することを特徴とする衛星通信システムの周波数特性補正方法を提供する。
【0023】
請求項12に記載の本発明は、請求項11に記載の衛星通信システムの周波数特性補正方法において、前記送信信号の補正は、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナの角度定数に基づいて周波数特性が変更されるディジタルフィルタに前記送信信号を通過させることにより行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、衛星搭載アンテナと地上アンテナとの間の電波干渉に起因する信号強度の変化を受けないようにすることができると共に、ビットエラーの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る通信システムを示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に係る通信システムの各部における占有周波数帯域スペクトラム及びビットエラーの発生状況を示し、(a)は人工衛星の送信機の送信電力の占有周波数帯域スペクトラム、(b)は人工衛星1の衛星搭載アンテナの利得の占有周波数帯域スペクトラム、(c)は地上アンテナの利得に対する占有周波数帯域スペクトラム、(d)は地上局の受信機のビットエラー発生状況に対する評価を示す図である。
【図3】人工衛星の座標定義を説明する図である。
【図4】衛星搭載アンテナの指向中心方向(θax,θay)=(0,0)時における人工衛星側アンテナのボアサイト方向ゲインGtx(θax,θay,θbx,θby)を示す図である。
【図5】人工衛星搭載機器による電波干渉を考慮した追尾受信システムの受信信号電力の補正に用いるアンテナゲイン変化を示す図である。
【図6】人工衛星の衛星搭載機器が回動した状態の一例を示す図である。
【図7】衛星搭載アンテナのビーム方向と人工衛星搭載機器との電波干渉を説明する図である。
【図8】地上局の受信機の復調部の構成を示すブロック図である。
【図9】ディジタルフィルタの詳細を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る地上局の受信機の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る地上局の受信機の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る地上局の受信機及びその変形例を示し、(a)は第4の実施の形態を示すブロック図、(b)は(a)の変形例を示すブロック図である。
【図13】本発明の第5の実施の形態に係る地上局の受信機の構成を示すブロック図である。
【図14】占有帯域の電力エネルギースペクトル分布を一定にするためのフィルタ特性の2つを示す特性図である。
【図15】占有帯域の電力エネルギースペクトル分布を一定にするためのフィルタ特性の他の2つを示す特性図である。
【図16】本発明の第6の実施の形態に係る人工衛星の送信機の構成を示すブロック図である。
【図17】本発明の第7の実施の形態に係る人工衛星の送信機の構成を示すブロック図である。
【図18】本発明の第8の実施の形態に係る人工衛星の送信機の構成を示すブロック図である。
【図19】本発明の第9の実施の形態に係る人工衛星の送信機の構成を示すブロック図である。
【図20】衛星通信システムの一例を示す図である。
【図21】人工衛星のアンテナと地上アンテナとの間に衛星搭載機器が介在する状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1の実施の形態]
(衛星通信システムの構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る通信システムを示すブロック図である。この衛星通信システム100は、地球上の宇宙空間を地球の地心を中心にして周回する人工衛星1と、地球上に設置されて人工衛星1からの電波を受信する地上局2とを備えている。人工衛星1は、例えば地球観測衛星である。また、本実施の形態においては、地上局2は受信局となっている。
【0027】
人工衛星1は、図示しない地上の送信局からの電波を受信する受信機3と、地上局2へ送る送信データを送信する送信機4と、地上側からの電波を受信すると共に送信機4からの送信出力を電波として放射する衛星搭載アンテナ5と、地球環境等の観測を行う観測機器6と、人工衛星1の全体を制御する制御部7とを有している。衛星搭載アンテナ5は、例えばジンバルコントロールアンテナであり、複数基が搭載されている場合もある。制御部7は、姿勢制御、電源供給制御等の人工衛星1における全ての制御を含んでいる。
【0028】
送信機4は、送信対象の信号に対して位相変調(PSK:Phase Shift Keying)等を施す変調部10と、変調部10による送信信号を送信対象の周波数帯(例えばGHz帯)に変換するアップコンバータ11と、アップコンバータ11からの送信信号を電力増幅した高周波出力を衛星搭載アンテナ5に給電する送信部12とを備えている。
【0029】
地上局2は、人工衛星1からの電波を受信する地上アンテナ8と、地上アンテナ8で受信した信号を処理する受信機9とを備えている。地上アンテナ8は、例えばカセグレンアンテナであり、人工衛星1を追尾する図示しない追尾装置を備えている。受信機9は、受信信号を例えばギガヘルツ(GHz)帯から低い周波数帯に周波数変換するダウンコンバータ13と、ダウンコンバータ13の出力信号を復調する復調部14とを備えている。
【0030】
(衛星通信システムの動作)
次に、衛星通信システム100の動作について説明する。人工衛星1は、観測機器6による観測データや受信機3が受信した信号(例えば、地上からのコマンド)に対する応答信号等を送信機4の変調部10で変調して変調信号を生成する。この変調信号は、アップコンバータ11によって所望のGHz帯の周波数に変換され、更に送信部12で電力増幅等が行われた後、衛星搭載アンテナ5に給電される。衛星搭載アンテナ5は、送信部12からの高周波電力を電波として地球に向けて送信する。
【0031】
地上局2は、衛星搭載アンテナ5からの電波を地上アンテナ8で受信する。その受信信号はダウンコンバータ13によって低い周波数帯に変換され、更に復調部14によって復調処理が行われることにより、復調信号が出力される。更に、復調信号は、地上側の通信回線等へ伝送するために図示しない回路によって処理される。
【0032】
ここで、人工衛星1の送信出力をPtx[dBm]、パッシブ回路損失をPtxl[dB]、衛星搭載アンテナ5の利得をGtx[dBi]、ポラリゼーション損失をLpo[dB]、自由空間損失をLFs[dB]、環境吸収損失をLaa[dB]、雨減衰損をLra[dB]、地上局アンテナ利得をGrx[dBi]とすると、地上アンテナ8における受信信号電力Prは数式(1)で与えられる。
【0033】
(数1)
Pr=Ptx+Ptxl+Gtx+Lpo+LFs+Laa+Lra+Grx
・・・(1)
【0034】
上記したように、人工衛星1の衛星搭載アンテナ5が地上アンテナ8に対する電波放射範囲に観測機器(衛星搭載機器)6が入ると、地上アンテナ8で受信される受信信号電力Prが減少する。しかし、上記数式(1)より明らかなように、アンテナ利得Gtxを増やせば受信信号電力Prを補正することができる。このような補正を、第1の実施の形態においては後述する復調部14で行っている。
【0035】
図2は、第1の実施の形態に係る通信システムの各部における占有周波数帯域スペクトラム及びビットエラーの発生状況を示し、(a)は人工衛星の送信機の送信電力の占有周波数帯域スペクトラム、(b)は人工衛星の衛星搭載アンテナの利得の占有周波数帯域スペクトラム、(c)は地上アンテナの利得に対する占有周波数帯域スペクトラム、(d)は地上局の受信機のビットエラー発生状況に対する評価を示す図である。
【0036】
人工衛星1に搭載の送信機4の送信電力は、外部の影響を受けないため、図2の(a)の[A]及び[B]に示すように占有周波数帯域スペクトラムは理想の状態にある。地上局2も理想的な受信状況である場合、その占有周波数帯域スペクトラムは[A]のように理想的な状態になっている。衛星搭載アンテナ5の利得は、上記課題で説明したようなアンテナの取り付け位置等が悪いことに起因する信号強度の変化や観測機器6の干渉が発生すると、図2の(b)に示すように特性が悪化する。更に、同様の問題が発生していると、地上アンテナ8の受信信号電力(Pr)も図2の(c)に示すように占有周波数帯域スペクトラムの特性が悪化する。従って、図2の(b),(c)の[B]に示すように悪化した特性を、図2の(b),(c)の[A]に示すような理想の特性にすることができれば、上記した問題は解消される。
【0037】
問題発生時には、地上アンテナ8の受信信号電力は図2(c)の[B]に示すようになるので、地上局2の受信機9は、図2(b)の[A]に示すアンテナゲイン特性によって衛星搭載アンテナ5から送信されることを前提にして作られている。このような受信機9で、その信号を受信して復調すると、多くのビットエラーを含むことが知られている。
【0038】
図3は、人工衛星の座標定義を説明する図である。地球200に対する人工衛星1の座標X、Y、Zは、図3に示すように定義する。ここで、Xは衛星軌道方向R上の人工衛星1の進行方向であり、その進行方向を正とする。Yは方向Xに直交する方向である。また、Zは地球200の中心方向であり、地球中心(地心)方向が正である。
【0039】
衛星搭載アンテナ5は、指向中心方向の角度をθax,θayとする。この角度θax,θayは、人工衛星1の運用者(所有機関等)から提供される情報を基に決定する。なお、衛星搭載アンテナ5が可動機構を持たない場合、角度θax,θayは固定値となる。また、人工衛星1から地上アンテナ8を見たボアサイト角(視野角)θbx,θbyは次の様にして求められる。
(i)軌道予測演算によって人工衛星1の位置を求める。
(ii)地上アンテナ8の位置を与える。
(iii)上記(i)、(ii)によって与えられた3次元座標位置からθbx,θbyを求める。
【0040】
上記(i),(ii)の情報から或る時刻におけるボアサイト角θbx,θbyを求めることができる。具体的には、次の様に時刻に対するテーブルを予め用意しておき、受信時に時刻を基準として必要な定数を表1のように読み取る。
【0041】
【表1】
【0042】
衛星搭載アンテナ5のθbx,θby方向のアンテナゲインGtx’(θax,θay,θbx,θby)は次の数式(2)で与えられる。
【0043】
(数2)
Gtx'(θax,θay,θbx,θby)
=Gtx(θax,θay,θbx,θby)
+Gti(θax,θay,θbx,θby) ・・・(2)
【0044】
図4は、衛星搭載アンテナの指向中心方向(θax,θay)=(0,0)時における人工衛星搭載アンテナのボアサイト方向ゲインGtx(θax,θay,θbx,θby)を示す図である。この図4からボアサイト方向ゲインGtxの特性を知ることができる。
【0045】
図5は、人工衛星搭載機器による電波干渉を考慮した追尾受信システムの受信信号電力Prの補正に用いるアンテナゲイン変化を示す図である。図5は、衛星搭載アンテナ5の指向中心方向が或る方向(θax,θay)=(0,0)時におけるボアサイト角(θbx,θby)対アンテナゲイン変化Gti(θax,θay,θbx,θby)、つまり、或る一方向(θax,θay)の場合についての(θbx,θby)対アンテナゲインの変化Gtiを示している。Gtiは、予め全ての角度θax,θay,θbx,θbyについて求めておく。また、角度θax,θay,θbx,θbyの組み合わせに対するGtiは、実測により求めても良い、衛星搭載アンテナ5及び観測機器6(衛星搭載機器)の物理形状を入力定数にしてコンピュータシミュレーションによって求めても良い。
【0046】
地上アンテナ8で受信される受信信号電力Prを求める場合、上記数式(1)に従うが、まず、衛星搭載アンテナ5の指向中心方向(θax,θay)と、人工衛星1から地上アンテナ8を見たボアサイト角θbx,θbyとを与え、図4から角度θax,θayに対するアンテナゲインGtxをGtx(θax,θay,θbx,θby)を求める。
【0047】
次に、図5からアンテナゲイン変化GtiをGti(θax,θay,θbx,θby)により求める。そして、Gtx(θax,θay,θbx,θby)、とGti(θax,θay,θbx,θby)を加えたものをGtx'とする。このGtx'を上記数式(1)のGtxに代入して受信信号電力Prを求める。
【0048】
図6は、人工衛星の衛星搭載機器が移動した状態の一例を示す図である。図6に示すように衛星搭載機器16の移動によって電波干渉状態が変化する場合、その衛星搭載機器16の移動方向を衛星搭載機器16の方向θex,θeyとして与え、その移動に対するアンテナゲインの変化をGti(θax,θay,θbx,θby,θex,θey)とし、数式(3)によってGtx'(θax,θay,θbx,θby,θex,θey)を求めればよい。
【0049】
(数3)
Gtx'(θax,θay,θbx,θby,θex,θey)
=Gtx(θax,θay,θbx,θby)
+Gti(θax,θay,θbx,θby,θex,θey) ・・・(3)
【0050】
図7は、衛星搭載アンテナのビーム方向と人工衛星搭載機器との電波干渉を説明する図である。上記の説明では、衛星搭載アンテナ5の指向中心方向の角度θax,θayと人工衛星1から地上アンテナ8を見たボアサイト角θbx,θbyとでGtxを表現したが、衛星搭載アンテナ5のビーム方向と地上アンテナ8とは、図7に示す関係にあるので、GtxとGtiのそれぞれを地上アンテナの仰角(Elevation:El)、方位角(Azimuth:Az)で表現し、Gtx(Az,El)とGti(Az,El)のように表現してもよい。また、地上アンテナ8の方向は、X−Y方式などで表現してもよい。なお、人工衛星1から地上アンテナ8を見たボアサイト角θbx,θbyは、人工衛星1の運用者から提供されるオービットエフェメリスを使用して軌道予測演算を行うことにより人工衛星1の位置を求め、その結果と地上アンテナ8の位置とから求める。
【0051】
また、上記数式(1)及び(2)では、衛星搭載アンテナ5がボアサイト方向θax,θayに対して可変できる場合や、衛星搭載機器16が角度θex,θey方向に移動できる場合について示したが、衛星搭載アンテナ5が特定方向に固定されている場合や、衛星搭載機器16が特定方向に固定されている場合には、上記数式(1)及び(2)の中から角度θax,θay,θex,θeyを除いてもよい。
【0052】
(復調部の構成)
次に、上記した方法に基づいて受信信号電力Prの補正を行う復調部の構成について説明する。図8は、地上局の受信機の復調部の構成を示すブロック図である。復調部14は、受信信号及びcosωtの搬送波が入力される乗算器141と、乗算器141による乗算結果に対して帯域制限を行うLPF(ローパスフィルタ)142と、LPF142からのアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D(アナログ/ディジタル)変換器143と、衛星搭載アンテナ5の角度θax,θax,θbx,θbxに起因して生じる周波数特性の変動を補正するディジタルフィルタ(補正回路)144と、ディジタルフィルタ144からの信号をディジタルからアナログに変換するD/A(ディジタル/アナログ)変換器145と、D/A変換器145からの信号の帯域を制限した復号信号αを出力するLPF146と、受信信号及び−sinωtの搬送波が入力される乗算器147と、乗算器147による乗算結果に対して帯域制限を行うLPF148と、LPF148からのアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器149と、上記角度θax,θax,θbx,θbxに起因して生じる周波数特性の変動を補正するディジタルフィルタ(補正回路)150と、ディジタルフィルタ150からの信号をディジタルからアナログに変換するD/A変換器151と、D/A変換器151からの信号の帯域を制限すると共に復号信号βを出力するLPF152と、角度定数(θax,θax,θbx,θbx)に基づいてディジタルフィルタ144,150のフィルタ定数を変更するフィルタ定数設定テーブル153とを備えている。
【0053】
フィルタ定数設定テーブル153は、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)コンピュータソフトウェア等を用いて構築することができる。
【0054】
図8において、ディジタルフィルタ144、D/A変換器145、LPF146からなる組み合わせ、及びディジタルフィルタ150、D/A変換器151、LPF152からなる組み合わせのそれぞれは、DFU(Digital Filter Unit:ディジタルフィルタユニット)を構成している。
【0055】
(ディジタルフィルタの構成)
図9は、ディジタルフィルタの詳細を示すブロック図である。ディジタルフィルタ144,150は、例えばFIR(Finite Impulse Response)型やIIR(Infinite Impulse Response)型のフィルタであると共に同一の構成である。従って、ここではディジタルフィルタ144の構成について説明する。ディジタルフィルタ144は、A/D変換部143からの信号を順次遅延するように直列接続されたn個の遅延器17−1〜17−nと、入力信号又は遅延信号とフィルタ定数設定テーブル153からのパラメータh0〜hnとを乗算するn個の乗算器18−1〜18−nと、乗算器18−1〜18−nの乗算結果を加算するn個の加算器19−1〜19−nとを備えている。
【0056】
【表2】
【0057】
表2は、フィルタ定数設定テーブル153のテーブル内容の一例を示す。このフィルタ定数設定テーブル153は、衛星搭載アンテナ5の或る角度θax,θax,θbx,θbxにおけるパラメータh0〜hnを示している。
【0058】
乗算器18−1は入力信号とフィルタ定数設定テーブル153からのパラメータh0とを乗算し、乗算器18−2〜18−nは、遅延器17−2〜17−nの1つの出力信号とパラメータh1〜hn(以下、単にhとも言う)とを乗算する。加算器19−1〜19−nは、乗算器18−n側から乗算器18−1に向けて乗算器18−1〜18−nの出力信号を順次加算するように接続されている。
【0059】
ディジタルフィルタ144,150の特性は、フィルタ定数設定テーブル153からのパラメータhによって可変できるようになっている。パラメータhは、衛星搭載アンテナ5の指向中心方向θax,θay及び人工衛星1から地上アンテナ8を見たボアサイト角θbx,θbyに対応している。フィルタ定数設定テーブル153は、衛星搭載機器が干渉していない状況下で計測される占有帯域の周波数スペクトラムを基準として、衛星搭載アンテナ5の角度θax,θay,θbx,θbyが変化した場合に発生する占有帯域の周波数スペクトラム変化を打ち消すように増幅又は減衰するようにディジタルフィルタ144,150の特性を逐次変化させることによって、衛星搭載アンテナ5の角度θax,θay,θbx,θbyが変化した場合でも、復調部14に入力される占有帯域の周波数スペクトラムが変化しないようにする。
【0060】
【表3】
【0061】
表3は、ディジタルフィルタ144,150の特性を逐次変化させるテーブルの一例を示す。表3の様に、FIRフィルタの定数を時刻と共に用意しておき、受信時刻に相当するフィルタ定数をディジタルフィルタ144,150に逐次ロードする。
【0062】
【表4】
【0063】
表4は、フィルタ定数設定テーブル153に設定されている定数(Gti)の内容例を示す。フィルタ定数設定テーブル153は、時刻を基準にしてディジタルフィルタ144,150のパラメータh0〜hnをディジタルフィルタ144,150のそれぞれへロードするものである。表3に示す例は、或る角度定数(θax,θay,θbx,θby)におけるn個の定数(h0〜hn)を示している。実際に使用するフィルタ定数設定テーブル153は、角度θax,θay,θbx,θbyの全ての組み合わせについてパラメータh0〜hnが定められている。
【0064】
(復調部の動作)
次に、図8及び図9を参照して復調部14の動作を説明する。ダウンコンバータ13からの信号は、cosωtを搬送波とする乗算器141及び−sinωtを搬送波とする乗算器147のそれぞれに入力されることにより位相検波が行われる。位相検波された2つの信号はLPF142,148によって帯域制限された後、ディジタルフィルタ144,150に入力される。
【0065】
ディジタルフィルタ144,150では、LPF142,148の出力信号に対して「たたみ込み演算」が行われる。図9に示す遅延器17−1〜17−nでは現在の入力と過去の入力が求められ、これらの信号に対し、乗算器18−1〜18−nはフィルタ定数設定テーブル153からの係数h0〜hnを掛けることにより、加算器19−1からフィルタ出力を得る。
【0066】
フィルタ定数設定テーブル153は、角度θax,θay,θbx,θbyにおける定数を生成し、この定数に基づいてディジタルフィルタ144,150のフィルタ定数を変更し、図2の[A]のような理想の周波数帯域スペクトラムトラムが得られるようにディジタルフィルタ144,150のフィルタ特性を補正する。ディジタルフィルタ144,150の出力信号は、D/A変換部145,151によってディジタル信号からアナログ信号に変換され、更にLPF146,152を通すことにより復号信号α,βが取り出される。
【0067】
(第1の実施の形態の効果)
第1の実施の形態によれば、復調部14にディジタルフィルタ144,150を設け、フィルタ定数設定テーブル153からのパラメータhに基づいてディジタルフィルタ144,150の周波数特性を変更して受信信号電力Prのスペクトラムを補正できるようにしたため、信号強度の変化の影響を受けることなく人工衛星1を追尾することができる。
【0068】
[第2の実施の形態]
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る地上局の受信機の構成を示すブロック図である。図8に示す第1の実施の形態がDFU15を復調部14に設けていたのに対し、本実施の形態はダウンコンバータ13にDFU15を接続し、このDFU15と復調部14を含む受信部20との間に受信フィルタ154を接続したものである。なお、受信部20は、図8からDFU15を除いた構成になる。また、受信部20はアナログによる構成であってもよい。この場合、受信部20の前段にD/A変換器を設ける。
【0069】
本実施の形態のDFU15は、受信信号の占有帯域内のレベルを図2の(c)の理想のスペクトラムと同等になるように補正する。この第2の実施の形態により得られる効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0070】
[第3の実施の形態]
図11は、本発明の第3の実施の形態に係る地上局の受信機の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、図10に示す第2の実施の形態において、受信フィルタ154とDFU15とを入れ換えたものである。この第3の実施の形態により得られる効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0071】
[第4の実施の形態]
図12は、本発明の第4の実施の形態に係る地上局の受信機及びその変形例を示し、(a)は第4の実施の形態を示すブロック図、(b)は(a)の変形例を示すブロック図である。本実施の形態は、図10に示す第2の実施の形態において、複数のDFU(DFU15A〜15C)を補正回路として用い、このDFU15A〜15Cと受信フィルタ154との間にスイッチ21を設けた構成にしたものである。スイッチ21は、図示しない制御部によって切り替え制御される。DFU15A〜15Cは各入力部が並列接続され、3つの出力部はスイッチ21によって1つが選択されて受信フィルタ154に印加される。この場合、DFU15A〜15Cのディジタルフィルタ144のパラメータhは異なる値の固定値とする。なお、図12の(a)において、DFU15A〜15Cはアナログフィルタであってもよい。
【0072】
スイッチ21を制御する制御部は、復調された信号に基づいてDFU15A〜15Cの中で最もビットエラーが少なかったものを検出し、スイッチ21を動作させてDFU15A〜15Cのうちの1つを選択する。ビットエラーが最も少ないものを選択する方法として、制御部により、送信データに含まれるリードソロモン符号を復号する際にエラーを判断する、ターボ符号を復号する際にエラーを判断する等の方法がある。
【0073】
[第4の実施の形態の変形例]
図12の(b)に示す受信機9の構成は、同図の(a)に示す構成において、DFU15Aにフィルタ154A及び受信部20Aを直列接続し、DFU15Bにフィルタ154B及び受信部20Bを直列接続し、DFU15Cにフィルタ154C及び受信部20Cを直列接続したものである。受信部20A〜20CはPSKディジタル方式により構成されている。なお、図12の(b)において、DFU15A〜15Cはアナログフィルタであってもよい。
【0074】
この構成においては、DFU15A〜DFU15Cの各々の出力に応じて受信部20A〜20Cが動作するが、DFU15A〜DFU15Cは相互に設定値が異なっているため、受信部20A〜20Cが共に同一構成及び同一仕様であっても、受信部20A〜20Cで得られるビットエラーは異なる。そこで、受信部20A〜20Cの中で最もビットエラーが少なかったものを図示しない制御部により選択する。
【0075】
(第4の実施の形態及びその変形例の効果)
第4の実施の形態及びその変形例によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られると共に、衛星搭載アンテナ5の角度θax,θay,θbx,θbyが変化したときでも復調器14に入力される占有帯域の周波数スペクトラムの変化がそれほど大きくない場合に対応でき、これによりフィルタ定数設定テーブル153を不要にすることができる。
【0076】
また、人工衛星1が高速で通信を行う地球観測衛星であった場合、現在入手可能な最高速のデバイスを使用しても、図8に示す第1の実施の形態の構成では高速化は難しいが、第4の実施の形態の構成によれば容易に通信の高速化を達成することができる。
【0077】
[第5の実施の形態]
図13は、本発明の第5の実施の形態に係る地上局の受信機の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、第1の実施の形態の図8において、A/D変換器143とフィルタ定数設定テーブル153との間にA/D変換器143の出力信号に対してFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理を行うFFT部155を設けたものである。図13においては、復号信号α側の構成のみを示しているが、復号信号β側も同様の構成であり、A/D変換器149とフィルタ定数設定テーブル153との間にFFT部155と同構成のFFT部が設けられる。ここでは、復号信号α側の構成及び動作について説明し、復号信号β側についての説明は省略する。
【0078】
本実施の形態においては、ディジタルフィルタ144は、図9に示した構成を有すると共に占有帯域の電力エネルギースペクトル分布を一定にするためのフィルタ特性が複数設定される。その一例が図14及び図15である。図14及び図15は、占有帯域の電力エネルギースペクトル分布を一定にするためのフィルタ特性を示している。図14及び図15において、横軸はFFTによって求められたスペクトラムの正規化周波数を示し、縦軸は正規化振幅を示している。
【0079】
ディジタルフィルタ144のフィルタ特性は、Fil.#1(図14の(a))、Fil.#2(図14の(b))、Fil.#3(図15の(a))、Fil.#4(図15の(b))の4種が用意されている。図14の(a)に示すNf1,Nf2,Nf3,・・・Nfnは、或る周波数に対する振幅である。ここでは、フィルタ特性を4種としたが、実際には、より多くのフィルタを用意する。Fil.#1〜Fil.#4の特性は、表1に示すフィルタ定数(h0-hn)の値を変化させることによって達成される。
【0080】
次に、図13に示す受信機9の動作について説明する。入力である受信信号は、LPF142及びA/D変換器143でディジタル化された後、この信号はFFT部155によって占有帯域の電力エネルギースペクトラム(スペクトラム分布)が求められる。フィルタ定数設定テーブル153は、FFT部155による電力エネルギースペクトラムと理想の通信状況下で計測される占有帯域の周波数スペクトラムとの差を0にするためのディジタルフィルタ144の定数を求め、この定数をディジタルフィルタ144に付与する。なお、ディジタルフィルタ144が動作する範囲又はディジタルフィルタ144の定数を制限するため、角度定数(θax,θay,θbx,θby)をフィルタ定数設定テーブル153に付与している。
【0081】
ディジタルフィルタ144は、図14及び図15に示すFil.#1〜Fil.#4の全てについて下記の数式4に示す定数を用いて電力エネルギースペクトラム(Prmse)を求める。ディジタルフィルタ144は、4つのPrmseのうち、Prmseが最も小さい値になった値をディジタルフィルタ144のパラメータhとして採用する。なお、数式4において、nはスペクトラムの数、Ofは受信又はFFT等によって得られたスペクトラム、Sfは標準とするスペクトラムである。
【0082】
【数4】
【0083】
以上により、ディジタルフィルタ144は占有帯域の電力エネルギースペクトラム分布を常に一定に保つように動作する。ディジタルフィルタ144の出力信号はD/A変換器145によってディジタルからアナログの信号に変換され、更にLPF146によって帯域制限された信号が出力信号となる。
【0084】
なお、第5の実施の形態において、ディジタルフィルタ144のパラメータの動作範囲を制限する必要がない場合、角度定数(θax,θay,θbx,θby)を用いずにフィルタ定数設定テーブル153から上記したパラメータをディジタルフィルタ144へ出力する構成であってもよい。
【0085】
(第5の実施の形態の効果)
第5の実施の形態によれば、受信信号に対してディジタルフィルタ144により図2の(c)に示す[B]のような特性のスペクトラムを[A]のような特性のスペクトラムに補正することができるため、人工衛星1の衛星搭載アンテナ5のビーム指向中心方向が変化し或いは複雑な形状の観測機器6が人工衛星1に搭載された場合でも、衛星搭載アンテナ5の位置関係に起因する信号干渉等の発生を防止することができる。
【0086】
(人工衛星側における周波数特性の補正)
次に、衛星搭載アンテナ5のビーム指向中心方向が変化した場合、人工衛星1と地上アンテナ8との間に人工衛星1に搭載されている観測機器6の一部が電波干渉を生じた場合等に対する対策、具体的には、図2の(b)に示す[B]のような特性のスペクトラムを[A]のような特性のスペクトラムに補正する人工衛星1側の実施の形態について説明する。
【0087】
[第6の実施の形態]
図16は、本発明の第6の実施の形態に係る人工衛星の送信機の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、上記した課題の(3)を解決するものであり、電波の干渉により衛星搭載アンテナ5の周波数に対するゲインが変化することに起因するビットエラーを低減できるように周波数特性の変動を補正する補正回路(後記するDFU23)及びフィルタ定数設定テーブル153を人工衛星1の送信機4に設けたものである。
【0088】
(人工衛星の送信機の構成)
変調部10は、ベースバンド信号をパラレル信号に変換するS/P(シリアル/パラレル)変換部101と、S/P変換部101の出力信号からPSK信号を得るデータ変換部102,103と、データ変換部102からの信号と搬送信号cosωtとを乗算する乗算器104と、データ変換部103からの信号と搬送信号−sinωtとを乗算する乗算器105と、乗算器104,105によるそれぞれの乗算結果を加算する加算器106と、加算器106の出力信号に対して帯域制限を行う送信フィルタ22と、送信フィルタ22に接続されたDFU(補正回路)23と、DFU23に接続された上記アップコンバータ11と、アップコンバータ11に接続された上記送信部12と、DFU23に角度定数を供与する上記したフィルタ定数設定テーブル153とを備えている。なお、DFU23は、図8に示したDFU15と同様の構成を有している。
【0089】
(人工衛星の送信機の動作)
“1”,“0”の2値により構成されたベースバンド信号(入力信号)は、S/P変換部101によってパラレル信号に変換される。このパラレル信号は、データ変換部102,103によってグレイ符号化及びレベル変換(+1,−1の信号にする処理)が行われ、変調信号が生成される。この変調信号は、乗算器104,105によって搬送信号に乗算されることにより、PSK信号が生成される。このPSK信号は送信フィルタ22を通してDFU23に入力される。
【0090】
本実施の形態におけるフィルタ定数設定テーブル153は、電波干渉が発生しない状況下で計測される占有帯域の周波数スペクトラムを基準として、衛星搭載アンテナ5の角度θax,θay,θbx,θbyが変化した場合に発生する占有帯域の周波数スペクトラムの変化を打ち消すべく、アップコンバータ11における信号が増幅又は減衰されるようにDFU23内のディジタルフィルタの特性を逐次変化させる。これにより、地上で受信される受信機9の占有帯域の周波数スペクトラムの変化を防止することができる。DFU23で処理された変調信号はアップコンバータ11に入力され、所望の周波数に変換された後、送信部12で電力増幅されて衛星搭載アンテナ5に給電される。
【0091】
(第6の実施の形態の効果)
第6の実施の形態によれば、変調部10とアップコンバータ11との間にDFU23を設け、衛星搭載アンテナ5の角度が変化した場合に発生する占有帯域の周波数スペクトラムの変化を打ち消すようにしたので、衛星搭載アンテナ5の周波数に対するゲインが変化することに起因して地上局2の受信機9に生じるビットエラーを低減することができる。
【0092】
[第7の実施の形態]
図17は、本発明の第7の実施の形態に係る人工衛星の送信機の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、図16に示す第6の実施の形態において、送信フィルタ22とDFU23を入れ換えたものであり、その他の構成は第6の実施の形態と同様である。この第7の実施の形態によれば、第6の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0093】
[第8の実施の形態]
図18は、本発明の第8の実施の形態に係る人工衛星の送信機の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、図17に示す第7の実施の形態において、送信フィルタ22の機能をDFU23に持たせて送信フィルタ22を除去できるようにしたものであり、その他の構成は第7の実施の形態と同様である。この第8の実施の形態によれば、第6の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0094】
[第9の実施の形態]
(送信機の構成)
図19は、本発明の第9の実施の形態に係る人工衛星の送信機の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、第5の実施の形態における図13の地上局2の受信機9の構成を人工衛星1の送信機4に適用したものであり、図13の構成からFFT部155を除去した構成になっている。人工衛星1においては、送信前の信号のスペクトラム分布が分かっていることから、FFT部155でスペクトラムを計測する必要がない。このため、本実施の形態ではFFT部155を設けていない。但し、FFT部155が設けてあっても、不都合は生じない。
【0095】
(送信機の動作)
図19の送信機4においては、例えば図16に示す変調部10からの送信信号に対し、LPF142及びA/D変換器143でディジタル化した後、ディジタルフィルタ144に印加される。ディジタルフィルタ144は、角度定数(θax,θay,θbx,θby)に基づいて動作するフィルタ定数設定テーブル153によりフィルタ定数が変更される。これにより、ディジタルフィルタ144は占有帯域の電力エネルギースペクトラム分布を常に一定に保つように動作し、その出力信号はD/A変換器145によってディジタルからアナログの信号に変換され、更にLPF146によって帯域制限された信号がアップコンバータ11に印加される。
【0096】
(第9の実施の形態の効果)
第9の実施の形態によれば、人工衛星1側でディジタルフィルタ144により送信信号に対して図2の(b)に示す[B]のような特性のスペクトラムを[A]のような特性のスペクトラムに補正することができるため、人工衛星1の衛星搭載アンテナ5のビーム指向中心方向が変化し或いは複雑な形状の観測機器6が人工衛星1に搭載された場合でも、衛星搭載アンテナ5の位置関係に起因する信号干渉等の発生を防止することができる。
【0097】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々な変形が可能である。例えば、人工衛星搭載機器による電波干渉に対して3つの解決方法を示したが、実際に応用する場合は、3つの内の2つ、望ましくは3つの方法を同時に採用するのが効果的で、実現も容易である。
【符号の説明】
【0098】
1 人工衛星
2 地上局
3 受信機
4 送信機
5 衛星搭載アンテナ
6 観測機器
7 制御部
8 地上アンテナ
9 受信機
10 変調部
11 アップコンバータ
12 送信部
13 ダウンコンバータ
14 復調部
15 DFU(ディジタルフィルタユニット)
15A DFU
15B DFU
15C DFU
16 衛星搭載機器
17−1〜17−n 遅延器
18−1〜18−n 乗算器
19−1〜19−n 加算器
20 受信部
20A 受信部
20B 受信部
20C 受信部
21 スイッチ
22 送信フィルタ
23 DFU
100 衛星通信システム
101 S/P変換部
102 データ変換部
103 データ変換部
104 乗算器
105 乗算器
106 加算器
141 乗算器
142 LPF(ローパスフィルタ)
143 A/D変換器
144 ディジタルフィルタ
145 D/A変換器
147 乗算器
148 LPF
149 A/D変換器
150 ディジタルフィルタ
151 D/A変換器
152 LPF
153 フィルタ定数設定テーブル
154 受信フィルタ
154A 受信フィルタ
154B 受信フィルタ
154C 受信フィルタ
155 FFT部
200 地球
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地球を周回する人工衛星と地球に設置された地上局との間で通信を行う衛星通信システムにおいて、
前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナからの電波の放射領域に前記人工衛星に搭載された搭載機器が介在することにより前記地上局における受信強度が変化した場合でも前記地上局で受信された受信信号電力の占有周波数帯域の周波数特性が均一になるように前記地上局の受信信号又は前記人工衛星の送信信号を補正する補正回路が、前記地上局及び前記人工衛星の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の衛星通信システムにおいて、前記補正回路は、前記衛星搭載アンテナの角度の可変値をパラメータにして前記周波数特性を均一にするディジタルフィルタであり、前記地上局の受信機に設けられていることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の衛星通信システムにおいて、前記ディジタルフィルタは、前記受信機の復調部に設けられていることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項4】
請求項2に記載の衛星通信システムにおいて、前記ディジタルフィルタは、前記受信機のダウンコンバータと受信部との間に設けられていることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項5】
請求項2に記載の衛星通信システムにおいて、前記補正回路は、前記衛星搭載アンテナの角度の異なる固定値をパラメータにして前記周波数特性を均一にする複数のディジタルフィルタが前記地上局の受信機のダウンコンバータと受信部の間に設けられ、前記複数のディジタルフィルタのうち、受信時のビットエラーが最も少なかった1つが選択されることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項6】
請求項1に記載の衛星通信システムにおいて、前記補正回路は、前記ディジタルフィルタに入力される信号に対して高速フーリエ変換を行う高速フーリエ変換部と、該高速フーリエ変換部による処理結果及び前記衛星搭載アンテナの角度の可変値に基づいて前記周波数特性を均一にするディジタルフィルタとを有し、前記地上局の受信機に設けられていることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項7】
請求項1に記載の衛星通信システムにおいて、前記補正回路は、前記人工衛星に搭載の送信機の送信信号の周波数特性を補正するディジタルフィルタであり、前記送信機に設けられていることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項8】
請求項7に記載の衛星通信システムにおいて、前記ディジタルフィルタは、前記送信機に設けられた変調部と前記送信機に設けられたアップコンバータとの間に設けられていることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項9】
人工衛星から地球の地上局への電波の放射に対し、前記人工衛星に搭載の衛星搭載機器が干渉する可能性を前記人工衛星の運行状況から把握し、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナの角度に応じて前記地上局における受信信号電力の占有周波数帯域の周波数特性が均一になるように、前記地上局の受信機によってその受信信号の周波数特性を補正することを特徴とする衛星通信システムの周波数特性補正方法。
【請求項10】
請求項9に記載の衛星通信システムの周波数特性補正方法において、前記受信信号の補正は、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナの角度定数に基づいて周波数特性が変更されるディジタルフィルタに前記受信信号を通過させることにより行うことを特徴とする衛星通信システムの周波数特性補正方法。
【請求項11】
人工衛星から地球の地上局への電波の放射に対し、前記人工衛星に搭載の衛星搭載機器が干渉する可能性を前記人工衛星の運行状況から把握し、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナの角度に応じて前記地上局における受信信号電力の占有周波数帯域の周波数特性が均一になるように、前記人工衛星に搭載の送信機によってその送信信号の周波数特性を補正することを特徴とする衛星通信システムの周波数特性補正方法。
【請求項12】
請求項11に記載の衛星通信システムの周波数特性補正方法において、前記送信信号の補正は、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナの角度定数に基づいて周波数特性が変更されるディジタルフィルタに前記送信信号を通過させることにより行うことを特徴とする衛星通信システムの周波数特性補正方法。
【請求項1】
地球を周回する人工衛星と地球に設置された地上局との間で通信を行う衛星通信システムにおいて、
前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナからの電波の放射領域に前記人工衛星に搭載された搭載機器が介在することにより前記地上局における受信強度が変化した場合でも前記地上局で受信された受信信号電力の占有周波数帯域の周波数特性が均一になるように前記地上局の受信信号又は前記人工衛星の送信信号を補正する補正回路が、前記地上局及び前記人工衛星の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の衛星通信システムにおいて、前記補正回路は、前記衛星搭載アンテナの角度の可変値をパラメータにして前記周波数特性を均一にするディジタルフィルタであり、前記地上局の受信機に設けられていることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の衛星通信システムにおいて、前記ディジタルフィルタは、前記受信機の復調部に設けられていることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項4】
請求項2に記載の衛星通信システムにおいて、前記ディジタルフィルタは、前記受信機のダウンコンバータと受信部との間に設けられていることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項5】
請求項2に記載の衛星通信システムにおいて、前記補正回路は、前記衛星搭載アンテナの角度の異なる固定値をパラメータにして前記周波数特性を均一にする複数のディジタルフィルタが前記地上局の受信機のダウンコンバータと受信部の間に設けられ、前記複数のディジタルフィルタのうち、受信時のビットエラーが最も少なかった1つが選択されることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項6】
請求項1に記載の衛星通信システムにおいて、前記補正回路は、前記ディジタルフィルタに入力される信号に対して高速フーリエ変換を行う高速フーリエ変換部と、該高速フーリエ変換部による処理結果及び前記衛星搭載アンテナの角度の可変値に基づいて前記周波数特性を均一にするディジタルフィルタとを有し、前記地上局の受信機に設けられていることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項7】
請求項1に記載の衛星通信システムにおいて、前記補正回路は、前記人工衛星に搭載の送信機の送信信号の周波数特性を補正するディジタルフィルタであり、前記送信機に設けられていることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項8】
請求項7に記載の衛星通信システムにおいて、前記ディジタルフィルタは、前記送信機に設けられた変調部と前記送信機に設けられたアップコンバータとの間に設けられていることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項9】
人工衛星から地球の地上局への電波の放射に対し、前記人工衛星に搭載の衛星搭載機器が干渉する可能性を前記人工衛星の運行状況から把握し、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナの角度に応じて前記地上局における受信信号電力の占有周波数帯域の周波数特性が均一になるように、前記地上局の受信機によってその受信信号の周波数特性を補正することを特徴とする衛星通信システムの周波数特性補正方法。
【請求項10】
請求項9に記載の衛星通信システムの周波数特性補正方法において、前記受信信号の補正は、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナの角度定数に基づいて周波数特性が変更されるディジタルフィルタに前記受信信号を通過させることにより行うことを特徴とする衛星通信システムの周波数特性補正方法。
【請求項11】
人工衛星から地球の地上局への電波の放射に対し、前記人工衛星に搭載の衛星搭載機器が干渉する可能性を前記人工衛星の運行状況から把握し、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナの角度に応じて前記地上局における受信信号電力の占有周波数帯域の周波数特性が均一になるように、前記人工衛星に搭載の送信機によってその送信信号の周波数特性を補正することを特徴とする衛星通信システムの周波数特性補正方法。
【請求項12】
請求項11に記載の衛星通信システムの周波数特性補正方法において、前記送信信号の補正は、前記人工衛星に搭載の衛星搭載アンテナの角度定数に基づいて周波数特性が変更されるディジタルフィルタに前記送信信号を通過させることにより行うことを特徴とする衛星通信システムの周波数特性補正方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−258507(P2010−258507A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102952(P2009−102952)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】
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