説明

衛生設備室ユニット

【課題】床表面部分を床本体に対して強く拘束せずに設けた場合に、床表面と他部材との境界部に隙間が露見しないようにした衛生設備室ユニットを提供する。
【解決手段】衛生設備室が設置される建物床上に設けられ、防水性を有する床本体と、床本体の表面上に取り外し可能に固定されて床本体の表面を覆う表面部材と、衛生設備室の出入口部に設けられるドア枠と、を備え、ドア枠は、床本体の出入口部側の縁部の上に設けられ、表面部材の出入口部側の縁部を納めて覆い隠す下枠と、下枠の上に立設される縦枠と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば浴室などの衛生設備室ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室の床としては、樹脂の一体成型品が多く用いられている(例えば特許文献1)。しかし、樹脂の一体成型品で浴室の床を構成すると、浴室の床に求められる強度、防水性、成形性、意匠性、コストなど、様々な要件をバランスよく満たす材料を用いなければならず、材料選択の自由度が低く、結果として、コスト、表面意匠、表面物性、その他付加機能に制約が生じ、様々な要求に合わせた商品設計が難しかった。
【0003】
一体成型の問題を解決するため、別部材で、浴室床の本体となる部分と、表面部分とを構成することが考えられるが、この場合、同一材料から構成されないため、マテリアルリサイクルの観点から廃棄時に床本体と表面部分とを分離できる構成が望ましく、また、メンテナンスや、表面部材を交換可能にして商品価値を高める観点などから、建物に設置した後でも、床本体に対して表面部材を取り外せるようにすることが望ましい。
【0004】
表面部材を床本体に対して取り外し可能に取り付けるためには、表面部材と床本体とは互いに強固かつ恒久的に固定されないようにする必要があり、すなわち、表面部材が床本体に対して強く拘束されないようにする必要がある。しかし、このような構造とした場合には、表面部材の経時的な収縮などによって、表面部材と、ドア枠などの他部材との間の境界部分に隙間が生じ、意匠性を損ねたり、その隙間に水分やゴミなどが入り込むことによる不具合が懸念される。
【特許文献1】特開平6−93745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、床表面部分を床本体に対して強く拘束せずに設けた場合に、床表面と他部材との境界部に隙間が露見しないようにした衛生設備室ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、衛生設備室が設置される建物床上に設けられ、防水性を有する床本体と、前記床本体の表面上に取り外し可能に固定されて前記床本体の表面を覆う表面部材と、衛生設備室の出入口部に設けられるドア枠と、を備え、前記ドア枠は、前記床本体の前記出入口部側の縁部の上に設けられ、前記表面部材の前記出入口部側の縁部を納めて覆い隠す下枠と、前記下枠の上に立設される縦枠と、を有することを特徴とする衛生設備室ユニットが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、床表面部分を床本体に対して強く拘束せずに設けた場合に、床表面と他部材との境界部に隙間が露見しないようにした衛生設備室ユニットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ構成要素には同一の符号を付している。
【0009】
本実施形態では、衛生設備室として、例えば浴室を例に挙げて説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る浴室ユニットにおける床の構成を例示する分解斜視図である。図3に表す床は、例えば浴室における洗い場の床である。その床は、浴室が設置される建物床上に設けられる床本体2と、床本体2の表面を覆う表面部材4とを備える。
【0010】
床本体2は、樹脂材料を浅底の器状(パン状)に成型してなる。床本体2の縁部には、側壁部6が立設されている。床本体2の裏面側には、強度を高めるための補強リブが必要に応じて設けられる。
【0011】
床本体2は、浴室洗い場の床として機能するのに十分な強度を有するとともに、浴室外部に湯水を漏出させない防水性を有する。また、建物の床と、床本体2との間に、例えば鋼材などからなる架台を設けてもよい。その架台に、床として必要な強度の大部分を担わせるようにすれば、床本体2にはそれほど強度は必要とされず防水性さえ有すればよい。
【0012】
床本体2には、排水ピット14及び作業用開口12(図3では、着脱自在の蓋10で塞がれている)が、貫通孔として形成されている。排水ピット14が設けられた部分は、床本体2表面からくぼんでおり、床本体2表面には、そのくぼんだ部分に向けて下向き傾斜した排水勾配が付けられている。
【0013】
表面部材4には排水用開口16が形成され、その排水用開口16を、上記排水ピット14に一致させて、表面部材4は床本体2の表面を覆っている。表面部材4は、床本体2の表面上に取り外し可能に固定される。
【0014】
図4は、床本体2と表面部材4との固定構造の一具体例を表す模式図である。
本具体例では、表面部材4は、テープ状の粘着材(両面テープ)18によって、床本体2の表面上に固定される。
【0015】
図5は、床本体2と表面部材4との固定構造の他の具体例を表す模式図である。
本具体例では、表面部材4は、粘性を有する不定形の粘着材(例えばパテなど)24によって、床本体2の表面上に固定される。
【0016】
また、本具体例では、床本体2において粘着材24が供給される部分に、粘着材24が入り込む逃げ溝22を設けている。逃げ溝22は、床本体2の表面からくぼんで設けられている。床本体2表面上への粘着材24の供給時に、粘着材24が局所的に盛り上がった部分が生じても、粘着材24が逃げ溝22に入り込むことで、床本体2表面上における粘着材24の凹凸が緩和され、結果として粘着材24の上に貼り付けられる表面部材4における良好な平坦性を確保できる。
【0017】
表面部材4は、前述したテープ状の粘着材18やパテ状の粘着材24によって、床本体2の表面上に強固且つ恒久的な接着力で拘束されない。ただし、表面部材4は、床本体2に対して、浮きやズレが生じないなど、快適且つ安全な使用を妨げない状態で固定される。表面部材4は、光や熱を加えることなく、また工具を用いることなく、人の力だけで簡単に床本体2から取り外す(剥がす)ことができる。
【0018】
図6は床本体2と表面部材4との固定構造のさらに他の具体例を表す模式図である。
本具体例では、表面部材4の裏面に設けた係合部27と、床本体2の表面からくぼんだ部分に設けた被係合部28との係合により、表面部材4が床本体2の表面上に固定される。
【0019】
本具体例では、表面部材4と床本体2との固定に、いわゆる「面ファスナー」を用いており、表面部材4の裏面に例えばループ状の係合部27を設け、床本体2の凹部26に例えばフック状の被係合部28を設けている。フック状の被係合部28が、ループ状の係合部27に引っ掛かることでそれら両者は係合し、表面部材4は、床本体2表面に対して剥離可能に固定される。なお、表面部材4側にフックを、床本体2側にループを設けてもよく、さらには、表面部材4側にフックとループの両方を混在させ、床本体2側にもフックとループの両方を混在させてもよい。また、フックとループとの組み合わせに限らず、例えばマッシュルーム状に立設された部分の頭と頭とをかみ合わす形態の面ファスナーを用いてもよい。
【0020】
係合部27と、被係合部28とは、床本体2に設けられた凹部26内で互いに係合するため、それら係合箇所が床本体2表面から盛り上がることがなく、よって、表面部材4は良好な平坦性を確保できる。
【0021】
図7は床本体2と表面部材4との固定構造のさらに他の具体例を表す模式図である。
本具体例においても、表面部材4の裏面に設けた係合部32と、床本体2の表面からくぼんだ部分に設けた被係合部34との係合により、表面部材4が床本体2の表面上に固定される。
【0022】
表面部材4の裏面には、弾性変形可能な凸状の係合部32が設けられ、床本体2には凹状の被係合部34が設けられている。係合部32が弾性変形して、被係合部34に圧入されることでそれら両者は係合し、表面部材4は、床本体2表面に対して剥離可能に固定される。係合部32と、被係合部34とは、床本体2表面からくぼんだ部分で互いに係合するため、それら係合箇所が床本体2表面から盛り上がることがなく、よって、表面部材4は良好な平坦性を確保できる。
【0023】
図6、図7に表される前述した各具体例において、表面部材4は、床本体2の表面上に強固且つ恒久的な接着力で拘束されない。ただし、表面部材4は、床本体2に対して、浮きやズレが生じないなど、快適且つ安全な使用を妨げない状態で固定される。表面部材4は、光や熱を加えることなく、また工具を用いることなく、人の力だけで簡単に床本体2から取り外す(剥がす)ことができる。
【0024】
図3に表すように、床本体2の表面において、縁部近傍部分には防水シール材8aが設けられ、さらに、この防水シール材8aの内側にも、防水シール材8bが設けられている。防水シール材8a、8bは、床本体2表面に形成された溝内に充填された、例えばシリコンからなる。あるいは、床本体2の表面上に直接防水シール材8a、8bを設けてもよい。それぞれの防水シール材8a、8bは、ひとつながりの枠状に形成されている。床本体2の表面上に、表面部材4が取り付けられると、防水シール材8a、8bは表面部材4の裏面に密着する。これにより、表面部材4の裏面において、防水シール材8a、8bより内側の領域への浸水を防止することができ、表面部材4の裏面側に入り込んだ水を、表面部材4の表面側から使用者が踏むことによる異音発生などの不具合を防げる。
【0025】
なお、前述した図4、図5に表される粘着材18、24を用いた固定構造の場合には、その粘着材18、24として防水性を有するものを使えば、表面部材4の固定を担う粘着材18、24自体を防水シール材としても機能させることができる。この場合、別途防水シール材を設けなくてもよく、コスト低減が図れる。あるいは、上記防水シール材8a、8bと、防水性を有する粘着材18、24とを併用すれば、より防水性を高め、信頼性及び商品価値を高めることができる。
【0026】
床本体2の材料と、表面部材4の材料とは、異なる特性を有する。これは、床本体2と表面部材4とを異なる材料にすることに限らず、同材料であっても床本体2と表面部材4とでグレードの異なる材料を使うことも含む。
【0027】
例えば、床本体2は、品質グレードが比較的低いFRP(Fiber Reinforced Plastic)を成型して構成される。低グレードFRPの成型体は、通常のユニットバスに用いられるFRP成型体よりも安価であるが、表面の色むら、ヒケ、その他表面不良などが生じやすく、触感や意匠性に難があり、使用が敬遠されていた。しかし、本実施形態では、床本体2の表面は、表面部材4によって覆い隠されるため、床本体2には意匠性や付加価値の高い表面物性は要求されない。その結果、素材選択自由度が広がり、床本体2として、例えば低グレードFRPを用いることでコストを抑えることができる。
【0028】
そして、浴室床としての最表面部分には、床本体2とは別体で、意匠性、成形性、表面物性等に優れた材料からなる表面部材4を設けている。浴室の床として必要な強度の確保は、床本体2あるいはその下に別途設けられる架台が担うので、表面部材4には強度は必要とされず、よって、薄くてよい。したがって、意匠性や触感に優れ高級感がある比較的高価な素材を表面部材4に用いたとしても、その素材は多く必要とされないので、それほど大きなコスト上昇をまねかない。
【0029】
例えば、強度、防水性、成形性、意匠性、コストなど様々な要件をバランスよく満たしたFRPのモノコック構造を採用した従来例と同じFRPでもって表面部材4を構成しても、従来に比べてそのFRP材料の使用量が減るので、床本体2として前述したような、より安価な低グレードFRPを用いれば、浴室の床全体としてのコストを従来に比べて低減できる。
【0030】
本実施形態に係る床は、単一材料による一体構造でないため、様々な付加価値を与えやすい。単一材料による一体構造では強度的な理由で使用不可能であった軟質材料や断熱性材料を、表面部材4の材料として用いることで、やわらかい、あたたかいといった質感を付加価値として加えることができ、商品価値を高めることができる。さらには、表面部材4の表面に、滑り止め用のパターンを形成したり、また、長方形状の凸形状部を縦・横、互いにずらして配置し、排水性に非常に優れた網目状の水路を形成してもよい。
【0031】
表面部材4は、床本体2と、製造段階で一体的に成型されたり、恒久的に接着されているわけではなく、図4〜7を参照して前述したように、床本体2に対して取り外し可能な状態で固定されるので、廃棄の際に、床本体2と表面部材4とを分離して分別することができ、リサイクル性に優れる。
【0032】
表面部材4を床本体2から取り外し、さらに床本体2に形成された作業用開口12を塞ぐ蓋10を取り外すことで、作業用開口12を通じた、床本体2裏側に設けられた構成物の修理やメンテナンスが可能となり、急なトラブル発生に対して簡単に対応できる。また、組み立て施工時においても、作業用開口12を通じて、床本体2の裏側に設けられた架台、支持脚等の設置高さの調整等を行え、作業性を向上できる。
【0033】
FRPのモノコック構造からなりその表面が意匠面となる従来の構造では、床面に作業用開口を形成すると意匠性を損なってしまうが、本実施形態では、表面部材4を床本体2上に設けることで、蓋10と作業用開口12との境目(隙間)を隠すことができる。また、蓋10と作業用開口12との境目は、表面部材4によって覆われるので、その境目に直接湯水がかかることがない。したがって、蓋10によって作業用開口12を覆う構造に高度な水密性は不要であり、その分、構造を簡単にしてコストアップを抑制できる。
【0034】
表面部材4は、床本体2に対して、恒久的に接着固定されるのではなく、着脱自在であるので、表面部材4の交換を簡単に行える。例えば、賃貸物件における入居者の入れ替わり時、また、例えば子供やお年寄りがいる家庭では、滑りにくい、やわらかい、あたたかいといったものに、あるいは高級仕様、コスト優先仕様など、好みや必要な機能に応じて、自由に表面部材4を選択交換でき、使用者の満足度を高めることができる。
【0035】
図4、5を参照して説明した粘着材18、24を使った具体例の場合、表面部材4と床本体2とを全面貼着してもよいし、部分的に貼着してもよい。粘着材18、24の接着力が強固であると、特に全面貼着もしくは貼着面積が比較的広い場合、表面部材4が床本体2に対して位置がずれて貼着されてしまった場合に剥がして貼り直すのが困難である。本実施形態では、表面部材4は使用上の不具合が生じない程度の力で床本体2に固定されればよく、恒久的な堅固な固定力は必要ない。よって、粘着材18、24の粘着力(タック力)はそれほど強くないため、一度貼られた表面部材4を剥離し、位置を補正して貼り直す作業を容易に行える。
【0036】
床本体2としては、FRPに限らず、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS、ポリ塩化ビニール等の汎用熱可塑性樹脂の成型品を用いることができる。熱可塑性樹脂は、再度溶かして作り直しが可能であるため、リサイクル性に優れる。床本体2や表面部材4に用いる樹脂は、石油を主原料として新たに生成されたものであってもよいし、廃プラスチック等から再生された再生樹脂であってもよい。再生樹脂を用いた場合は、素材コストのさらなる低減が図れると共に、資源の有効利用にもなる。
【0037】
次に、図1は、本発明の実施形態に係る浴室ユニットにおけるドア枠51の斜視図である。図1において、表面部材4を、2点鎖線で表す。
図2は、同浴室ユニットにおけるドア枠設置部分の断面構造を表す模式図である。
【0038】
浴室と、浴室に隣接する例えば脱衣室との間には、それら両室の行き来を可能にする出入口部50が設けられる。その出入口部50には、ドア枠51が配設される。ドア枠51によって囲まれた内側の空間に、図示しないドアが取り付けられる。
【0039】
ドア枠51は、下枠52と、左右の縦枠53a、53bと、上枠(図示せず)とを組み合わせて構成される。
【0040】
下枠52は、図2に表すように、床本体2の出入口部50側の縁部と、脱衣室の床55との間にまたがるように支持される。
【0041】
下枠52の長手方向(床本体2の出入口部50側の縁部に沿った方向)の左右の両端部のそれぞれには、縦枠53a、53bが設けられている。縦枠53a、53bは、下枠52の上に立設されている。
【0042】
下枠52において、浴室側の前端部54は、浴室側の部分が開口された断面「コ」の字状を呈する。その前端部54の内部空間54aに、表面部材4の出入口部50側の縁部が納められる。したがって、表面部材4の出入口部50側の縁部は、断面「コ」の字状の前端部54によって覆い隠され、外部に露見しない。
【0043】
表面部材4は、前述したように、床本体2に対して強固な力で固定されて拘束されていないため、面方向に、ある程度の変形が許容された状態にある。特に、軟らかくするために可塑剤を含ませた表面部材4を用いた場合には、使用しているうちに可塑材が溶出して、表面部材4が収縮しやすい傾向がある。表面部材4に収縮が生じたり、あるいは製品の寸法誤差などにより、表面部材4の縁部が内側に位置ずれしてしまった場合でも、本実施形態によれば、表面部材4の縁部は下枠52の前端部54の中に納められているため、表面部材4の縁部と、下枠52との間に隙間が生じることがなく、また、表面部材4の縁部と、床本体2の側壁部6との間の隙間が外部に露見されることもない。
【0044】
下枠前端部54の上側部分と、表面部材4の縁部との間の隙間47には、防水性を有する押さえ目地45が差し込まれ、その隙間47が、押さえ目地45によって覆い隠される。また、押さえ目地45は、表面部材4の縁部を、床本体2や下枠52に対して押さえ込んで固定させる役割も担う。
【0045】
以上説明したように、表面部材4の縁部を下枠前端部54の中に納め、また表面部材4と下枠52との境界に押さえ目地45を差し込むことで、表面部材4と下枠52との境界に隙間ができず、見栄え(意匠性)を損ねない。また、その隙間にゴミや湯水が入り込むことによる汚れや機能的な不具合も生じない。
【0046】
ドア枠と、表面部材4の縁部との間の隙間を防ぐため、図10、11に表す比較例のように、表面部材4の縁部の上にドア枠を載せて表面部材4の縁部を隠す構造が考えられるが、この構造の場合、表面部材4の縁部の上に、ドア枠及びこの内側に取り付けられるドアの荷重がかかるため、浴室の施工完了後に、床本体2に対して表面部材4を取り外したり、取り付けたりする際には、ドア枠及びドアを取り外さなければならない。
【0047】
これに対して、本実施形態では、表面部材4の縁部は、下枠前端部54の中で固定されていないため、表面部材4の取り外しや取り付けの際には、ドア枠51及びドアを取り外すことなく、それらを設置した状態のまま、下枠前端部54の内部空間54aに対して、表面部材4の縁部を出し入れするだけでよい。この結果、組み立て時の表面部材4の位置調整、組み立て後のメンテナンス、表面部材4の交換などの作業を簡単に行える。なお、表面部材4の縁部の面方向の位置ずれを抑制するため、下枠前端部54の内壁面に、表面部材4の縁部を厚み方向に挟み込む突起部58を設けてもよい。
【0048】
すなわち、本実施形態では、床本体2に対する表面部材4の取り外しや取り付けを簡単に行える構造を採用しつつ、表面部材4が床本体2に対して強く拘束されないことによる不具合(表面部材4の収縮によって、表面部材4の縁部と、他部材との間に隙間が形成されることなど)を回避することができる。
【0049】
また、図10、11に表される比較例では、浴室出入口部の足もとには、下枠72の高さ分の段差が形成される。これに対して、断面「コ」字状の下枠前端部54の中に表面部材4の縁部を納める構造を採用した本実施形態では、図2に表すように、「コ」字状部分の上壁部の厚みもしくはそれより少し大きな高さ分の段差で済み、これは、下枠の全高さ分の段差が形成される図11の比較例よりも浴室出入口部の段差を抑えることができる。この結果、浴室への入退室に際して、特に高齢者や足の不自由な使用者の負担を軽減し、また、車いすごと浴室に入退室する動作も容易になる。
【0050】
従来、浴室ユニットのドア枠は、図10に表す組み合わせ構造が多く採用されている。すなわち、縦枠53a、53bは、下枠72の上に載らず、下枠72の左右の両端に配置されて浴室床上に支持される。これに対して、本実施形態では、図1に表すように、縦枠53a、53bは、下枠52の上に載っており、下枠52だけが直接床本体2の上に載っている。したがって、表面部材4の縁部を納める空間54aと、表面部材4の縁部においてドア枠設置部以外に設けられる壁パネル40と表面部材4との境界部とが、縦枠53a、53bによって分断されずに連続してつながり、それらに、押さえ目地45を途中で途切れさせることなく連続した状態で差し込むことができる。この結果、押さえ目地45に途中で切れ目が生じないため、表面部材4の縁部付近における水密性や意匠性を損ねず、また、表面部材4の確実な押さえ効果も確保できる。
【0051】
図8は、本発明の実施形態に係る浴室ユニットにおける壁パネル設置部分の断面構造を表す模式図である。
【0052】
壁パネル40は、床本体2の縁部における側壁部6のすぐ内側に設けられている。壁パネル40の下端には、隙間形成部材42が設けられている。隙間形成部材42において、床本体2の側壁部6の反対側に位置する部分には開口が形成され、隙間形成部材42の内部には、その開口につながる空間が形成されている。壁パネル40は、隙間形成部材42を介して、床本体2上に載置支持されている。壁パネル40の下端と、床本体2との間には、隙間形成部材42の介在によって確保された隙間が形成されている。
【0053】
表面部材4の縁部4aは、壁パネル40の下まで延在して、隙間形成部材42の中に入り込んでおり、外部に露見していない。
【0054】
表面部材4は、前述したように、床本体2に対して強固な力で固定されて拘束されていないため、面方向に、ある程度の変形が許容された状態にある。特に、軟らかくするために可塑剤を含ませた表面部材4を用いた場合には、使用しているうちに可塑材が溶出して、表面部材4が収縮しやすい傾向がある。表面部材4に収縮が生じたり、あるいは製品の寸法誤差などにより、表面部材4の縁部4aが内側に位置ずれしてしまった場合でも、本実施形態によれば、表面部材4の縁部4aは壁パネル40の下に隠れているため、表面部材4の縁部4aと、壁パネル40の内壁面との間に隙間が生じることがなく、また、表面部材4の縁部4aと、床本体2の側壁部6との間の隙間が外部に露見されることもない。
【0055】
隙間形成部材42の開口には、防水性を有する押さえ目地45が差し込まれる。押さえ目地45は、表面部材4の表面と、隙間形成部材42の上側の内壁面との間に差し込まれる。これにより、表面部材4と、壁パネル40の内壁面との境界が、押さえ目地45によって覆い隠される。また、押さえ目地45は、表面部材4の縁部4aを床本体2に対して押さえ込んで固定させる役割も担う。
【0056】
本実施形態によれば、表面部材4と壁パネル40との境界に隙間が生じないので、見栄え(意匠性)を損ねることがなく、また、その隙間にゴミや湯水が入り込むことによる汚れや機能的な不具合も生じない。すなわち、本実施形態では、床本体2に対する表面部材4の取り外しを簡単に行える構造を採用しつつ、表面部材4が床本体2に対して強く拘束されないことによる不具合(表面部材4の収縮によって、表面部材4と壁パネル40との境に隙間が形成されることなど)を回避することができる。
【0057】
図9は、本発明の実施形態に係る浴室ユニットにおける排水トラップ設置部分の断面構造を表す模式図である。
【0058】
床本体2に開口された排水ピット14の下方には、排水トラップ61が配設されている。排水トラップ61は、床本体2の裏側に配設され、浴室の外部に導出された排水管66に接続されている。排水トラップ61は、フランジ付き継手62を介して、床本体2に結合されている。具体的には、フランジ付き継手62の外周面が、排水ピット14の開口内周部にねじ込まれている。また、フランジ付き継手62のフランジ部62aと、床本体2との間には、シールリング68が介在されている。
【0059】
表面部材4において、排水用開口16のまわりの部分は、排水ピット14が形成された部分のすり鉢状の窪みの内壁面に沿って窪まされ、排水用開口16のすぐ外側の部分は、押さえ部材64によって、フランジ付き継手62のフランジ部62aに対して押さえ込まれている。
【0060】
押さえ部材64は、筒部64aとその上端に一体に設けられたフランジ部64bとからなり、筒部64aの外周面が、フランジ付き継手62の内周面にねじ込まれることで排水トラップ61に対して結合されている。押さえ部材64のフランジ部64bと、フランジ付き継手62のフランジ部62aとの間に、表面部材4における排水用開口16のまわりの部分が挟み込まれている。したがって、表面部材4の排水用開口16の周縁部が押さえ部材64によって覆われて外部に露見せず、意匠性を損ねない。
【0061】
また、排水トラップ設置部分において、床本体2に対する表面部材4の着脱を簡単に行える構造となっている。すなわち、表面部材4を床本体2から取り外す際には、押さえ部材64とフランジ付き継手62との結合を解除して、押さえ部材64のみを床本体2に対して取り外せばよく、床本体2の裏側にある排水トラップ61は取り外さなくてよい。
【0062】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0063】
本発明が適用される衛生設備室としては、例えば、浴槽と洗い場を備えた和風浴室、洗い場がなく浴槽の中で身体を洗う形態の洋風バスと便器、洗面器を一室に備えた洋風浴室、シャワー室、トイレ室、などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る浴室ユニットにおけるドア枠の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る浴室ユニットにおけるドア枠設置部分の断面構造を表す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る浴室ユニットにおける床の構成を例示する分解斜視図である。
【図4】図3に表す床本体と表面部材との固定構造の一具体例を表す模式図である。
【図5】図3に表す床本体と表面部材との固定構造の他の具体例を表す模式図である。
【図6】図3に表す床本体と表面部材との固定構造のさらに他の具体例を表す模式図である。
【図7】図3に表す床本体と表面部材との固定構造のさらに他の具体例を表す模式図である。
【図8】本発明の実施形態に係る浴室ユニットにおける壁パネル設置部分の断面構造を表す模式図である。
【図9】本発明の実施形態に係る浴室ユニットにおける排水トラップ設置部分の断面構造を表す模式図である。
【図10】比較例に係る浴室ユニットにおけるドア枠の斜視図である。
【図11】比較例に係る浴室ユニットにおけるドア枠設置部分の断面構造を表す模式図である。
【符号の説明】
【0065】
2…床本体、4…表面部材、8a,8b…防水シール材、12…作業用開口、14…排水ピット、16…排水用開口、18…粘着材、22…逃げ溝、24…粘着材、27…係合部、28…被係合部、32…係合部、34…係合部、40…壁パネル、45…押さえ目地、50…出入口部、51…ドア枠、52…下枠、53…縦枠、61…排水トラップ、64…押さえ部材、66…排水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生設備室が設置される建物床上に設けられ、防水性を有する床本体と、
前記床本体の表面上に取り外し可能に固定されて前記床本体の表面を覆う表面部材と、
衛生設備室の出入口部に設けられるドア枠と、
を備え、
前記ドア枠は、
前記床本体の前記出入口部側の縁部の上に設けられ、前記表面部材の前記出入口部側の縁部を納めて覆い隠す下枠と、
前記下枠の上に立設される縦枠と、
を有することを特徴とする衛生設備室ユニット。
【請求項2】
前記表面部材の縁部と、前記下枠との間の隙間に、防水性を有する押さえ目地が差し込まれることを特徴とする請求項1記載の衛生設備室ユニット。
【請求項3】
前記床本体に、排水ピットが形成され、
前記排水ピットに、排水管につながる排水トラップが配設され、
前記表面部材に、前記排水ピットに重ねられる排水用開口が形成され、
前記表面部材の前記排水用開口のまわりの縁部を、前記排水トラップとの間で挟み込む押さえ部材が、前記排水トラップに結合されることを特徴とする請求項1または2に記載の衛生設備室ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−82064(P2008−82064A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264716(P2006−264716)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】