衝撃試験装置及び衝撃試験方法
【課題】 衝撃吸収材料の衝撃力作用時における衝撃応力―歪み特性等を得ることができる衝撃試験装置及び衝撃試験方法を提供する。
【解決手段】 試験片2を任意の保持力で保持する保持部材3と、試験片2に衝撃力を負荷する衝撃負荷部材4と、衝撃負荷部材4による試験片2に対する衝撃力を検出する力センサ5と、試験片2の衝撃負荷部材4による衝撃力負荷時の変位を検出する高速度カメラ6と、力センサ5からの信号と、高速度カメラ6からの信号とを同期させて試験片2に衝撃力が作用した時の衝撃応力―歪み特性曲線を出力する出力装置部7と、から構成される。
【解決手段】 試験片2を任意の保持力で保持する保持部材3と、試験片2に衝撃力を負荷する衝撃負荷部材4と、衝撃負荷部材4による試験片2に対する衝撃力を検出する力センサ5と、試験片2の衝撃負荷部材4による衝撃力負荷時の変位を検出する高速度カメラ6と、力センサ5からの信号と、高速度カメラ6からの信号とを同期させて試験片2に衝撃力が作用した時の衝撃応力―歪み特性曲線を出力する出力装置部7と、から構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験片の衝撃応力―歪み特性を得ることができる衝撃試験装置及び衝撃試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、材料の衝撃強さを測定する方法として、アイゾット式またはシャルピー式衝撃試験が知られている(例えば、特許文献1参照。)。これらの方法では、試験片を破壊し、その破壊時における試験片に作用する衝撃エネルギー(衝撃力)から試験片の衝撃強さを測定することは可能である。しかしながら、発泡材料、粘弾性材料やこれらを組み合わせた材料からなる衝撃吸収材料で形成された試験片の場合には、試験片が衝撃時に弾性変形して、衝撃エネルギー(衝撃力)を吸収するため、試験片に作用する衝撃力や、この衝撃力の作用時における試験片の衝撃応力−歪み特性等を評価することは困難であった。そのため、衝撃吸収材料においては、リュプケ式反発弾性試験方法や、トリプソ式反発弾性試験方法(例えば、非特許文献1参照。)によって求められる衝撃吸収性あるいは反発性を測定することによって、衝撃吸収材料の特性評価がなされていた。
【0003】
ところで、各種機械、電化製品等の衝撃吸収材料として、発泡材料や粘弾性材料、あるいはこれらを組み合わせた材料が使用されてきたが、近年になり、携帯型の機械、電化製品(例えば、携帯電話等である。)が増加してきており、これら各種製品は、これまで考えられなかったような衝撃力の受け方をするようになってきている。
【0004】
また、これら衝撃吸収材料は、材質や内部形態等によって衝撃吸収特性が異なることから、従来の衝撃試験方法や反発弾性試験方法等によって画一的に評価することが困難となってきた。そのため、これら衝撃吸収材料を実機に装着して衝撃落下試験等を行うことによって、製品の衝撃に対する耐久性評価試験等が行われている。
【特許文献1】特開平2−13825号公報
【非特許文献1】財団法人日本工業規格協会編、JISハンドブック ゴム(1999年4月1日発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の製品の多様化、製品開発のスピード化に伴って、実機試験ではなく、衝撃吸収材料の品質管理を行う上で、この衝撃吸収材料を試験片として衝撃力を負荷し、衝撃応力-歪み特性等を得られる衝撃吸収材料の評価方法が要望されるようになってきている。
【0006】
そこで、本発明は、発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなる衝撃吸収材料の衝撃力作用時における衝撃応力―歪み特性等を得ることができる衝撃試験装置及び衝撃試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため請求項1に係る衝撃試験装置は、試験片を任意の保持力で保持する保持手段と、前記保持手段に保持された試験片に衝撃力を負荷する衝撃負荷手段と、前記衝撃負荷手段によって試験片に負荷された衝撃力を検出する衝撃力検出手段と、前記衝撃力検出手段の衝撃力検出時における該試験片の変位を検出する変位検出手段と、前記衝撃力検出手段によって検出された衝撃力と前記変位検出手段によって検出された変位とに基づいて、該試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る衝撃試験装置は、請求項1に記載の衝撃試験装置において、前記保持手段に保持されている試験片を所定温度に維持する温度維持手段を備え、前記所定温度は、設定変更可能であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る衝撃試験装置は、請求項2に記載の衝撃試験装置において、前記保持手段に保持されている試験片を所定湿度の雰囲気中に維持する湿度維持手段を備え、前記所定湿度は、設定変更可能であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る衝撃試験装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の衝撃試験装置において、前記衝撃負荷手段は、一端が回動可能に軸支された振り子式のハンマと、前記ハンマを所定角度に持ち上げて保持するハンマ保持手段と、を有し、前記ハンマ保持手段に保持されたハンマを振り下ろすことによって前記衝撃力を負荷することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る衝撃試験装置は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の衝撃試験装置において、前記衝撃力検出手段は、前記試験片の前記衝撃負荷手段による衝撃力を受ける面に対して該試験片を挟んで他方側に設けられた力センサを有し、前記力センサを介して前記衝撃力を検出することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る衝撃試験装置は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の衝撃試験装置において、前記変位検出手段は、高速度カメラを有し、前記高速度カメラを介して前記変位を検出することを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に係る衝撃試験装置は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の衝撃試験装置において、前記試験片は、衝撃吸収材料であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に係る衝撃試験方法は、保持手段によって試験片を任意の保持力で保持する保持工程と、前記保持工程で保持された試験片に衝撃負荷手段によって衝撃力を負荷する衝撃負荷工程と、前記衝撃負荷工程で試験片に負荷された衝撃力を衝撃力検出手段によって検出すると共に、該衝撃力の検出時における該試験片の変位を変位検出手段によって検出する検出工程と、前記検出工程で検出された衝撃力と変位とに基づいて、該試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を出力する出力工程と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項9に係る衝撃試験方法は、請求項8に記載の衝撃試験方法において、前記変位検出手段は、高速度カメラを有し、前記高速度カメラを介して前記変位を検出することを特徴とする。
【0016】
また、請求項10に係る衝撃試験方法は、保持手段に試験片を装着しない状態で衝撃負荷手段によって衝撃力を負荷する第1衝撃負荷工程と、前記第1衝撃負荷工程で負荷された衝撃力を衝撃力検出手段によって検出する第1検出工程と、前記保持手段によって試験片を任意の保持力で保持する保持工程と、前記保持工程で保持された試験片に前記衝撃負荷手段によって衝撃力を負荷する第2衝撃負荷工程と、前記第2衝撃負荷工程で試験片に負荷された衝撃力を前記衝撃力検出手段によって検出する第2検出工程と、前記第1検出工程で検出された衝撃力から前記第2検出工程で検出された衝撃力を減算して求めた衝撃力を該第1検出工程で検出された衝撃力で除算して該試験片の衝撃吸収率として出力する出力工程と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項11に係る衝撃試験方法は、請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の衝撃試験方法において、前記保持工程は、保持されている試験片を所定温度に維持する温度維持工程を含み、前記所定温度は、設定変更可能であることを特徴とする。
【0018】
また、請求項12に係る衝撃試験方法は、請求項11に記載の衝撃試験方法において、前記保持工程は、保持されている試験片を所定湿度の雰囲気中に維持する湿度維持工程を含み、前記所定湿度は、設定変更可能であることを特徴とする。
【0019】
また、請求項13に係る衝撃試験方法は、請求項8乃至請求項12のいずれかに記載の衝撃試験方法において、前記衝撃負荷手段は、一端が回動可能に軸支された振り子式のハンマと、前記ハンマを所定角度に持ち上げて保持するハンマ保持手段と、を有し、前記ハンマ保持手段に保持されたハンマを振り下ろすことによって前記衝撃力を負荷することを特徴とする。
【0020】
また、請求項14に係る衝撃試験方法は、請求項8乃至請求項13のいずれかに記載の衝撃試験方法において、前記衝撃力検出手段は、前記試験片の前記衝撃負荷手段による衝撃力を受ける面に対して該試験片を挟んで他方側に設けられた力センサを有し、前記力センサを介して前記衝撃力を検出することを特徴とする。
【0021】
更に、請求項15に係る衝撃試験方法は、請求項8乃至請求項14のいずれかに記載の衝撃試験方法において、前記試験片は、衝撃吸収材料であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る衝撃試験装置では、試験片を任意の保持力で保持して、この試験片に衝撃力を負荷することが可能となる。また、衝撃力検出手段によって検出された試験片に負荷された衝撃力と、変位検出手段によって検出された該試験片の衝撃力負荷時の変位とに基づいて、該試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を得ることが可能となる。
【0023】
また、請求項2に係る衝撃試験装置では、保持手段に保持されている試験片を任意の設定温度に維持して衝撃力を負荷することが可能となる。これにより、任意の設定温度における 試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を得ることが可能となる。
【0024】
また、請求項3に係る衝撃試験装置では、保持手段に保持されている試験片を任意の設定温度及び任意の設定湿度の雰囲気中に維持して衝撃力を負荷することが可能となる。これにより、任意の設定温度及び任意の設定湿度の雰囲気中における試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を得ることが可能となる。
【0025】
また、請求項4に係る衝撃試験装置では、ハンマ保持手段によって所定角度に保持された振り子式のハンマを振り下ろすことによって試験片に衝撃力を負荷するため、保持手段に保持される試験片に一定の衝撃力を負荷することが可能となる。このため、試験片毎の衝撃吸収特性や衝撃応力−歪み特性等の比較検討を容易に行うことが可能となる。
【0026】
また、請求項5に係る衝撃試験装置では、試験片の衝撃力を受ける面に対して該試験片を挟んで他方側に力センサを設け、該力センサ介して衝撃負荷手段によって負荷された衝撃力を検出するため、試験片に衝撃力が負荷された際に、確実に試験片に作用した衝撃力を検出することができる。
【0027】
また、請求項6に係る衝撃試験装置では、高速度カメラを介して衝撃力が負荷された際の試験片の変位を時間変化と共に観察することが可能となり、試験片の衝撃応力−歪み特性情報を容易に得ることができる。
【0028】
また、請求項7に係る衝撃試験装置では、試験片が発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなり、衝撃作用時に衝撃を緩和、吸収するような衝撃吸収材料であっても、該試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を得ることが可能となる。このため、製品の形態等が異なる場合や、衝撃力の作用の方法が異なる場合であっても、発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなる衝撃吸収材料の衝撃力作用時における衝撃応力―歪み特性等を実機試験することなく確実に求めることができる。
【0029】
また、請求項8に係る衝撃試験方法では、保持工程で試験片を任意の保持力で保持して、衝撃負荷工程でこの試験片に衝撃力を負荷することが可能となる。また、検出工程で試験片に負荷された衝撃力を検出すると共に、該衝撃力の検出時における該試験片の変位を検出し、出力工程で検出された衝撃力と変位とに基づいて、該試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を得ることが可能となる。
【0030】
また、請求項9に係る衝撃試験方法では、検出工程において、高速度カメラを介して衝撃力が負荷された際の試験片の変位を検出するため、衝撃力が負荷された際の試験片の変位を時間変化と共に観察することが可能となり、試験片の衝撃応力−歪み特性情報を容易に得ることができる。
【0031】
また、請求項10に係る衝撃試験方法では、先ず、第1検出工程で保持手段に試験片を装着しない状態で衝撃負荷手段による衝撃力を検出し、続いて、この保持手段に試験片を任意の保持力で保持した後、第2検出工程で衝撃負荷手段による該試験片への衝撃力を検出することによって、第1検出工程で検出された衝撃力から第2検出工程で検出された衝撃力を減算して求めた衝撃力を該第1検出工程で検出された衝撃力で除算して該試験片の衝撃吸収率を得ることが可能となる。
【0032】
また、請求項11に係る衝撃試験方法では、温度維持工程で試験片を任意の設定温度に維持して、この試験片に衝撃力を負荷することが可能となる。これにより、任意の設定温度における 試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報又は衝撃吸収率を得ることが可能となる。
【0033】
また、請求項12に係る衝撃試験方法では、温度維持工程で試験片を任意の設定温度に維持すると共に、湿度維持工程で試験片を任意の設定湿度の雰囲気中に維持して、この試験片に衝撃力を負荷することが可能となる。これにより、任意の設定温度及び任意の設定湿度の雰囲気中における試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報又は衝撃吸収率を得ることが可能となる。
【0034】
また、請求項13に係る衝撃試験方法では、一端が回動可能に軸支された振り子式のハンマを所定角度に持ち上げた後、このハンマを振り下ろすことで衝撃力を負荷するため、試験片に一定の衝撃力を負荷することが可能となる。このため、試験片毎の衝撃吸収特性や衝撃応力−歪み特性等の比較検討を容易に行うことが可能となる。
【0035】
また、請求項14に係る衝撃試験方法では、試験片の衝撃力を受ける面に対して該試験片を挟んで他方側に力センサを設け、該力センサを介してこの衝撃力を検出するため、試験片に衝撃力が負荷された際に、確実に試験片に作用した衝撃力を検出することができる。
【0036】
更に、請求項15に係る衝撃試験方法では、試験片が発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなり、衝撃作用時に衝撃を緩和、吸収するような衝撃吸収材料であっても、該試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報又は衝撃吸収率を得ることが可能となる。このため、製品の形態等が異なる場合や、衝撃力の作用の方法が異なる場合であっても、発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなる衝撃吸収材料の衝撃力作用時における衝撃応力―歪み特性又は衝撃吸収率等を実機試験することなく確実に求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る衝撃試験装置及び衝撃試験方法を具体化した実施例1及び実施例2について説明する。
【実施例1】
【0038】
先ず、実施例1に係る衝撃試験装置の概略構成について図1乃至図4に基づき説明する。
図1乃至図4に示すように、実施例1に係る衝撃試験装置1は、試験片2を任意の保持力で保持する保持手段としての保持部材3と、試験片2に衝撃応力を負荷する衝撃負荷手段としての衝撃負荷部材4と、衝撃負荷部材4による試験片2に対する衝撃力を検出する衝撃力検出手段としての力センサ5と、試験片2の衝撃負荷部材4による衝撃力作用時の変位を検出する変位検出手段としての高速度カメラ6と、力センサ5からの信号と、高速度カメラ6からの信号とを同期させて試験片2に衝撃力が作用した時の該試験片2の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力―歪み特性情報としての衝撃応力−歪み特性曲線を出力する出力手段としての出力装置部7と、で構成される。
【0039】
また、試験片2を任意の保持力で保持する保持部材3は、テーブル10に固定された固定治具11と、固定治具11に対向して試験片2を挟み込んで保持できるようスライド可能な押さえ治具12と、で構成されている。この押さえ治具12は、テーブル10上をスライド可能な台座13にスライド可能に設置されており、台座13と一体にテーブル10上をスライド可能となっている。また、この台座13には、台座13をスライドさせる際のレバー14と、レバー14によってスライドされて仮位置決定された後にテーブル10に固定する固定部材15と、が設けられている。さらに、押さえ治具12には押さえ圧力調整手段16が設けられている。この押さえ圧力調整手段16には、押さえ治具12に連動するデジタルゲージ等が設けられていることが好ましい。そして、この押さえ圧力調整手段16は、仮位置で固定された台座13上を押さえ治具12を試験片2に対して前後方向(図1中において、左右方向)に微調整することが可能であり、これによって保持される試験片2に作用する保持力を調整することが可能となる。
【0040】
また、この保持部材3によって保持された試験片2に衝撃力を負荷する衝撃負荷部材4は、一端22が支柱20に対して回動可能に軸支され、他端側にハンマ24を有するシャフト23と、ハンマ24を所定角度に持ち上げて保持するアーム21とで構成されている。アーム21は、所定の角度に固定保持できるようになっている。ここで、ハンマ24は、鋼球を使用することで、アーム21の一端に電磁石25を設けることによってハンマ24を一体に所定角度持ち上げることが可能となっている。なお、ハンマ24をアーム21と共に持ち上げることが可能で、さらに、容易にハンマ24とアーム21とを切り離すことができるものであれば、電磁石25に限定されるものではない。また、ハンマ24は、球状に限らず、例えば、ブロック状であってもよい。
【0041】
また、衝撃負荷部材4による試験片2に作用する衝撃力を検出する力センサ5は、固定治具11の試験片2と接する面の他面側に設けられている。実施例1における力センサ5としては、圧電素子で構成される力センサが好ましい。力センサ5を用いることによって、衝撃負荷部材4のハンマ24が試験片2に衝撃力を作用した際に確実にこの衝撃力を検出することができる。なお、力センサに代えて、歪ゲージを用いることも可能である。
【0042】
また、試験片2の衝撃力負荷時の変位を検出する高速度カメラ6は、図4に示すように、試験片2の変位が直接観察できるような高速度カメラを用いることが好ましい。ここで、用いられる高速度カメラとしては、撮像間隔が200μs以下、好ましくは100μs以下、より好ましくは75μs以下のものが好ましい。
【0043】
また、図4に示すように、試験片2は固定治具11と押さえ治具12間にアクリル樹脂等の樹脂製板材、アルミニウム板等の金属製板材等の高弾性な板材で構成される支持板28を介して挟持されている。
また、図4に示すように、衝撃応力―歪み特性曲線を出力する出力装置部7は、変位検出手段である高速度カメラ6からの変位検出信号(画像信号)を出力する第1制御手段32と、衝撃力検出手段である力センサ5からの信号と、第1制御手段32からの変位検出信号(画像信号)を同期させる同期手段35と、第1制御手段32からの変位検出信号(画像信号)の画像を解析し、変位を試験片2の無負荷時の厚さで除算して歪を算出すると共に、同期手段35で同期された力センサ5からの信号を解析し、衝撃力を算出後、試験片2の支持板28に当接する面の面積で除算して衝撃応力を算出して、衝撃応力―歪み特性曲線を出力する第2制御手段30と、で構成されている。ここで、力センサ5からの信号と、第1制御手段32からの変位検出信号(画像信号)との同期は、ハンマ24が試験片2の手前に設けられた速度センサ34の前を通過した際に発せられる速度計33からの信号をきっかけとして第1制御手段32及び同期手段35が同時に各々の信号を検出するようにすることで行われている。
【0044】
次に、上記のように構成された衝撃試験装置1による衝撃試験方法について説明する。
(保持工程)
まず、保持部材3の固定治具11及び押さえ治具12間に試験片2を挿入せずにアクリル樹脂からなる支持板28のみを挿入する。そして、レバー14によって台座13を固定治具11側にスライドさせて支持板28におおよそ密着させて台座13を仮固定する。次いで、押さえ圧力調整手段16によって台座13を微調整し、固定治具11と支持板28とを密着固定する。そして、このとき押さえ圧力調整手段16に設けられているメモリをリセットし、押さえ治具12の位置を基準点とする。
【0045】
次に、試験片2の厚みを予め測定する。そして、押さえ圧力調整手段16を調整し、押さえ治具12を基準点から試験片2の厚み分移動させ、固定治具11と支持板28との間に試験片2をセットする。このとき、発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなり、衝撃作用時に衝撃を緩和、吸収する衝撃吸収材料で形成された試験片2を装着した場合には、押さえ圧力調整手段16のゲージを確認しながら試験片2の厚さを考慮しつつ押さえ圧力を調整することによって、この試験片2を実機の装着状態に近い圧縮率で固定することが可能となる。また、試験片2の一方の面の一部または全面に粘着剤等を設けることで、固定治具11に貼付可能となり、確実に固定治具11に固定することができる。
【0046】
(衝撃負荷工程)
試験片2のセット終了後、アーム21の一端に設けられている電磁石25のスイッチを入れ、ハンマ24をアーム21に固定保持する。そして、アーム21を任意の所定角度に振り上げて固定後、電磁石25のスイッチを切り、ハンマ24を保持部材3に保持されている支持板28に衝突させる(図2参照)。
(検出工程)
また、このときの衝撃力を力センサ5によって測定する。
ここで、試験片2を挿入する前に、固定治具11と支持板28とを密着固定して、同様にしてハンマ24を支持板28に衝突させ、この際の衝撃力を測定しておき、下記(1)式で計算することによって試験片2の衝撃吸収率(%)を測定することができる。
【0047】
衝撃吸収率(%)={(支持板のみの衝撃力−試験片挿入時の衝撃力)/支持板のみの衝撃力}×100・・・(1)
【0048】
続いて、ハンマ24が支持板28に衝突した時における、試験片2の変位の測定方法について説明する。
試験片2に負荷された衝撃力は、前述した方法によりハンマ24の衝突時における力センサ5によって検出する。この力センサ5からの信号は、同期手段35に入力される。一方、このときの試験片2の変位については、高速度カメラ6で撮影し、その撮像信号が第1制御手段32を経て同期手段35に入力される。ここで、同期手段35による力センサ5からの信号及び高速度カメラ6からの信号の同期は、図4に示すように、ハンマ24が保持部材3の直前に設けられている速度センサ34を通過することで速度計33から信号が発信し、第1制御手段32に入力されると共に、該第1制御手段32を介して同期手段35に同期信号が入力される。そして、この速度計33からの信号をきっかけとして高速度カメラ6による撮像が開始されると共に、同期手段35からの力センサ5の信号が発信されるようになる。これによって、高速度カメラ6の撮像開始と力センサ5による衝撃力測定が同時に開始され、各測定時間における試験片2の変位を該試験片2に作用する衝撃力に同期させて測定することが可能となる。
【0049】
(出力工程)
そして、同期手段35によって同期された力センサ5からの信号及び高速度カメラ6からの撮像信号は、第2制御手段30に入力される。この第2制御手段30において、力センサ5からの信号は、衝撃力に変換され、高速度カメラ6からの撮像信号は、画像処理されて変位に変換される。ここで、高速度カメラ6からの撮像信号を画像処理によって変位へ変換するには、試験片2あるいは支持板28の端面にマークを記入しておく。そして、このマークの軌跡を数値化することによって行われる。また、第2制御手段30は、各測定時間における衝撃力と変位とのデータ値を取得後、各衝撃力を試験片2の支持板28に当接する面の面積で除算すると共に、各変位を試験片2の無負荷時の厚さで除算して衝撃応力―歪み特性曲線を出力することが可能となる。例えば、第2制御手段30を液晶表示画面を有するパーソナルコンピュータ等で構成し、この衝撃応力―歪み特性曲線を液晶表示画面に表示することが可能となる。
【0050】
以上のようにして、試験片2が発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなり、衝撃力作用時に衝撃力を緩和、吸収する衝撃吸収材料であっても、衝撃試験装置1は、該試験片2の衝撃力作用時における衝撃応力−歪み特性曲線を出力することが可能となる。また、衝撃試験装置1は、同時に試験片2の衝撃吸収率をも出力することが可能となる。
【0051】
ここで、上記構成の衝撃試験装置1にポリプロピレン製の発泡材料で形成された試験片2を装着して行った衝撃試験の一例について説明する。
この試験片2は、ポリプロピレン製の発泡材料で形成された衝撃吸収材料を20mm×20mm×1mmとなるように切り出し、90mm×80mm×3mmのアクリル樹脂製の支持板28を介して保持部材3によって保持した。このとき、押さえ治具12は、基準点から少し押し込んだ状態とし、試験片2を厚さ方向に30%圧縮した状態に保持した。そして、ハンマ24を支柱20に対して45度となるように振り上げた状態にセットした後、該ハンマ24をアーム21から切り離し、支持板28に衝突させた。この際、高速度カメラ6(例えば、Photron社製FASTCAM)によって随時試験片2の変位の撮像を行った。また、室温20℃、湿度60%の環境でこの衝撃試験を行った。
以上の試験条件で得られた衝撃応力―歪み特性曲線45を図5に示す。図5に示すように、試験片2がポリプロピレン製の発泡材料などの衝撃吸収材料であっても衝撃応力―歪み特性曲線45を得ることができた。
【0052】
また、この試験片2を厚さ方向に30%圧縮した状態に保持して、ハンマ24を支柱20に対して30度、45度、60度、75度、90度の各角度に振り上げた状態にセットした後、該ハンマ24をアーム21から切り離し、支持板28に衝突させた。そして、上記(1)式によって得られた該試験片2の衝撃吸収率を図6に示す。図6に示すように、試験片2がポリプロピレン製の発泡材料などの衝撃吸収材料であってもハンマ24の各振り上げ角度に対する衝撃吸収率を得ることができた。
【実施例2】
【0053】
次に、実施例2に係る衝撃試験装置の概略構成について図7乃至図9に基づいて説明する。尚、以下の説明において上記図1乃至図4の実施例1に係る衝撃試験装置1の構成等と同一符号は、該実施例1に係衝撃試験装置1等の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
実施例2に係る衝撃試験装置の概略構成及び制御構成は、実施例1に係る衝撃試験装置1とほぼ同じ構成である。
但し、図7乃至図9に示すように、実施例2に係る衝撃試験装置51は、実施例1に係る衝撃試験装置1を構成する力センサ5が取り付けられた保持部材3及び衝撃負荷部材4を温度維持手段及び湿度維持手段としての恒温恒湿槽52の断熱箱体54内に配置した点において上記実施例1に係る衝撃試験装置1の構成と異なっている。
【0054】
図7及び図8に示すように、恒温恒湿槽52は、前面に矩形の開口53を備えた断熱箱体54と、その開口53を閉塞するように開口53の一側の端縁部に回動自在に枢支されて、開閉自在に取り付けられた断熱扉55と、該断熱箱体54の下側に配設される冷凍機ユニット56とから構成されている。また、断熱箱体54内の奥側には、冷凍機ユニット56の前面側に配置された給水タンク57から給水される加湿器58と、この加湿器58の上側に配置されて冷凍機ユニット56によって冷却される冷却・除湿器59と、この冷却・除湿器59の上側に配置されるヒータ60と、このヒータ60の上側に配置される送風機61とから構成されている。また、送風機61の吹き出し口近傍には、不図示の湿度センサと温度センサとが配置されている。
また、断熱箱体54の左側壁面の中央下部には、観測用窓62が設けられ、該断熱箱体54内に配置される保持部材3に保持される試験片2の変位を観察可能に構成されている。また、この観測用窓62の外側には、透明なアクリル板などで形成され略中央部に縦長の貫通孔が穿設された略四角形の保護板64が設けられている。そして、この保護板64の外側には、高速度カメラ6と照明装置66とが配置され、保持部材3に保持される試験片2の変位を観測可能に構成されている。
【0055】
また、この観測用窓62の横側には、断熱箱体54内に配置される衝撃負荷部材4の電磁石25と、速度計33と、力センサ5との各配線を外側に引き出すための配線取出口67が設けられている。
また、断熱扉55の右側には、冷凍機ユニット56、加湿器58、冷却・除湿器59、ヒータ60及び送風機61を駆動制御する制御回路部(不図示)を備えた操作部68が設けられ、該断熱箱体54内の温度及び湿度を所定温度及び所定湿度に設定可能に構成されている。ここで、恒温恒湿槽52は、断熱箱体54内の温度を−40℃乃至+100℃の範囲内の任意の温度に設定可能に構成され、また、該断熱箱体54内の湿度を0%乃至100%の範囲内の任意の湿度に設定可能に構成されている。
【0056】
また、図9に示すように、断熱箱体54内には、試験片2の手前に設けられる速度センサ34と、この速度センサ34に接続される速度計33とが配置されている。
また、図9に示すように、衝撃応力―歪み特性曲線を出力する出力装置部7は、断熱箱体54の外側に配置され、変位検出手段である高速度カメラ6からの変位検出信号(画像信号)を出力する第1制御手段32と、衝撃力検出手段である力センサ5からの信号と、第1制御手段32からの変位検出信号(画像信号)を同期させる同期手段35と、第1制御手段32からの変位検出信号(画像信号)の画像を解析し、変位を試験片2の無負荷時の厚さで除算して歪を算出すると共に、同期手段35で同期された力センサ5からの信号を解析し、衝撃力を算出後、試験片2の支持板28に当接する面の面積で除算して衝撃応力を算出して、衝撃応力―歪み特性曲線を出力する第2制御手段30と、で構成されている。ここで、力センサ5からの信号と、第1制御手段32からの変位検出信号(画像信号)との同期は、ハンマ24が試験片2の手前に設けられた速度センサ34の前を通過した際に発せられる速度計33からの信号をきっかけとして第1制御手段32及び同期手段35が同時に各々の信号を検出するようにすることで行われている。
【0057】
次に、上記のように構成された衝撃試験装置51による衝撃試験方法について説明する。
(保持工程)
まず、断熱箱体54内に配置される保持部材3の固定治具11及び押さえ治具12間に試験片2を挿入せずにアクリル樹脂からなる支持板28のみを挿入する。そして、レバー14によって台座13を固定治具11側にスライドさせて支持板28におおよそ密着させて台座13を仮固定する。次いで、押さえ圧力調整手段16によって台座13を微調整し、固定治具11と支持板28とを密着固定する。そして、このとき押さえ圧力調整手段16に設けられているメモリをリセットし、押さえ治具12の位置を基準点とする。
【0058】
次に、室内で試験片2の厚みを予め測定する。そして、押さえ圧力調整手段16を調整し、押さえ治具12を基準点から試験片2の厚み分移動させ、固定治具11と支持板28との間に試験片2をセットする。このとき、発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなり、衝撃作用時に衝撃を緩和、吸収する衝撃吸収材料で形成された試験片2を装着した場合には、押さえ圧力調整手段16のゲージを確認しながら試験片2の厚さを考慮しつつ押さえ圧力を調整することによって、この試験片2を実機の装着状態に近い圧縮率で固定することが可能となる。また、試験片2の一方の面の一部または全面に粘着剤等を設けることで、固定治具11に貼付可能となり、確実に固定治具11に固定することができる。そして、試験片2のセット終了後、アーム21の一端に設けられている電磁石25のスイッチを入れ、ハンマ24をアーム21に固定保持する。そして、アーム21を任意の所定角度に振り上げて固定する。
【0059】
(温度維持工程・湿度維持工程)
そして、アーム21を任意の所定角度にセット後、断熱扉55を閉塞し、操作部68を介して恒温恒湿槽52の設定温度及び設定湿度を所定温度及び所定湿度に設定して、所定時間(例えば、約30分乃至約2時間)運転する。これにより、試験片2の温度を設定温度まで確実に上昇させてに維持すると共に、この試験片2を設定湿度の雰囲気中に維持することができる。
【0060】
(衝撃負荷工程)
その後、電磁石25のスイッチを切り、ハンマ24を保持部材3に保持されている支持板28に衝突させる(図9参照)。
(検出工程)
また、このときの衝撃力を力センサ5によって測定する。
ここで、試験片2を挿入する前に支持板12のみの場合に、同様にしてハンマ24を支持板12に衝突させ、この際の衝撃力を測定しておき、上記(1)式で計算することによって各設定温度及び各設定湿度の雰囲気中における試験片2の衝撃吸収率(%)を測定することができる。
【0061】
続いて、ハンマ24が支持板28に衝突した時における、試験片2の変位の測定方法について説明する。
試験片2に負荷された衝撃力は、前述した方法によりハンマ24の衝突時における力センサ5によって検出する。この力センサ5からの信号は、同期手段35に入力される。一方、このときの試験片2の変位については、観測用窓62を介して高速度カメラ6で撮影し、その撮像信号が第1制御手段32を経て同期手段35に入力される。ここで、同期手段35による力センサ5からの信号及び高速度カメラ6からの信号の同期は、図9に示すように、ハンマ24が保持部材3の直前に設けられている速度センサ34を通過することで速度計33から信号が発信し、第1制御手段32に入力されると共に、該第1制御手段32を介して同期手段35に同期信号が入力される。そして、この速度計33からの信号をきっかけとして高速度カメラ6による撮像が開始されると共に、同期手段35からの力センサ5の信号が発信されるようになる。これによって、高速度カメラ6の撮像開始と力センサ5による衝撃力測定が同時に開始され、設定温度及び設定湿度の雰囲気中において、各測定時間における試験片2の変位を該試験片2に作用する衝撃力に同期させて測定することが可能となる。
【0062】
(出力工程)
そして、同期手段35によって同期された力センサ5からの信号及び高速度カメラ6からの撮像信号は、第2制御手段30に入力される。この第2制御手段30において、力センサ5からの信号は、衝撃力に変換され、高速度カメラ6からの撮像信号は、画像処理されて変位に変換される。ここで、高速度カメラ6からの撮像信号を画像処理によって変位へ変換するには、試験片2あるいは支持板28の端面にマークを記入しておく。そして、このマークの軌跡を数値化することによって行われる。
また、第2制御手段30は、各測定時間における衝撃力と変位とのデータ値を取得後、各衝撃力を試験片2の支持板28に当接する面の面積で除算すると共に、各変位を試験片2の無負荷時の厚さで除算して、設定温度及び設定湿度の雰囲気中における衝撃応力―歪み特性曲線を出力することが可能となる。例えば、第2制御手段30を液晶表示画面を有するパーソナルコンピュータ等で構成し、この設定温度及び設定湿度の雰囲気中における衝撃応力―歪み特性曲線を液晶表示画面に表示することが可能となる。
【0063】
以上のようにして、設定温度及び設定湿度の雰囲気中における衝撃応力―歪み特性曲線を出力することができるため、例えば、試験片2に、発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなり、衝撃力作用時に衝撃力を緩和、吸収する衝撃吸収材料であっても、衝撃試験装置51は、任意の設定温度及び設定湿度の雰囲気中での該試験片2の衝撃力作用時における衝撃応力―歪み特性曲線を出力することが可能となる。また、衝撃試験装置51は、同時に任意の設定温度及び設定湿度の雰囲気中での試験片2の衝撃吸収率をも出力することが可能となる。
【0064】
ここで、上記構成の衝撃試験装置51にポリプロピレン製の発泡材料で形成された試験片2を装着して、各設定温度−20℃、+20℃、+60℃及び設定湿度60%で行った衝撃試験の一例について説明する。
この試験片2は、ポリプロピレン製の発泡材料で形成された衝撃吸収材料を20mm×20mm×1mmとなるように切り出し、90mm×80mm×3mmのアクリル樹脂製の支持板28を介して保持部材3によって保持した。このとき、押さえ治具12は、基準点から少し押し込んだ状態とし、試験片2を厚さ方向に30%圧縮した状態に保持した。そして、ハンマ24を支柱20に対して45度となるように振り上げた状態にセットした後、各設定温度−20℃、+20℃、+60℃及び設定湿度60%にそれぞれ約1時間放置した後、該ハンマ24をアーム21から切り離し、支持板28に衝突させた。この際、高速度カメラ6(例えば、Photron社製FASTCAM)によって随時試験片2の変位の撮像を行った。
以上の試験条件で得られた各設定温度−20℃、+20℃、+60℃及び設定湿度60%における各衝撃応力―歪み特性曲線71、72、73を図10に示す。図10に示すように、試験片2がポリプロピレン製の発泡材料などの衝撃吸収材料であっても各設定温度−20℃、+20℃、+60℃及び設定湿度60%における各衝撃応力―歪み特性曲線71、72、73を得ることができた。
【0065】
尚、本発明は上記実施例1及び実施例2に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。
【実施例3】
【0066】
図11に示すように、試験片2の変位の測定は、上述した高速度カメラ6による測定に替えて、例えば、支持板28のハンマ24の衝突場所に近い場所に加速度センサ81を取り付け、ハンマ24衝突時の加速度を2回積分して試験片2の変位を求めることも可能である。
【実施例4】
【0067】
図12に示すように、試験片2の変位の測定は、上述した高速度カメラ6による測定に替えて、支持板28に金属箔82を貼付し、レーザドップラ振動計83からレーザを発信し、その金属箔82の振動から試験片2の変位を測定することも可能である。
【実施例5】
【0068】
また、上述の実施例1及び実施例2においては、支持板28を介して試験片2を保持した場合を例にとって説明したが、例えば、ハンマ24にブロック状のものを用いることによって、支持板28を用いることなく発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなる衝撃吸収材料の試験片2の全面に一様に衝撃力を負荷して、該試験片2の衝撃応力―歪み特性曲線や衝撃吸収率を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1に係る衝撃試験装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】実施例1に係る衝撃試験装置の衝撃力負荷時の状態を説明する正面図である。
【図3】実施例1に係る衝撃試験装置の概略構成を平面図、正面図、左側面図、右側面図によって示す図である。
【図4】実施例1に係る衝撃試験装置の試験片の衝撃力及び変位を検出して衝撃応力−歪み特性情報を出力する出力装置部の概略構成を示す図である。
【図5】実施例1に係る衝撃試験装置によって得られた衝撃応力―歪み特性曲線の一例を示す図である。
【図6】実施例1に係る衝撃試験装置によって得られたハンマの振り上げ角度に対する衝撃吸収率の一例を示す図である。
【図7】実施例2に係る衝撃試験装置の概略構成を示す正面図である。
【図8】実施例2に係る衝撃試験装置の概略構成を示す左側面図である。
【図9】実施例2に係る衝撃試験装置の試験片の衝撃力及び変位を検出して衝撃応力−歪み特性情報を出力する出力装置部の概略構成を示す図である。
【図10】実施例2に係る衝撃試験装置によって得られた各設定温度−20℃、+20℃、+60℃及び設定湿度60%における各衝撃応力―歪み特性曲線の一例を示す図である。
【図11】他の実施例に係る衝撃試験装置の保持手段の支持板に加速度センサを取り付けた状態を示す部分拡大図である。
【図12】他の実施例に係る衝撃試験装置の保持手段の支持板に金属箔を貼付してレーザドップラ振動計によって変位を測定する測定方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0070】
1、51 衝撃試験装置
2 試験片
3 保持部材
4 衝撃負荷部材
5 力センサ
6 高速度カメラ
7 出力装置部
52 恒温恒湿槽
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験片の衝撃応力―歪み特性を得ることができる衝撃試験装置及び衝撃試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、材料の衝撃強さを測定する方法として、アイゾット式またはシャルピー式衝撃試験が知られている(例えば、特許文献1参照。)。これらの方法では、試験片を破壊し、その破壊時における試験片に作用する衝撃エネルギー(衝撃力)から試験片の衝撃強さを測定することは可能である。しかしながら、発泡材料、粘弾性材料やこれらを組み合わせた材料からなる衝撃吸収材料で形成された試験片の場合には、試験片が衝撃時に弾性変形して、衝撃エネルギー(衝撃力)を吸収するため、試験片に作用する衝撃力や、この衝撃力の作用時における試験片の衝撃応力−歪み特性等を評価することは困難であった。そのため、衝撃吸収材料においては、リュプケ式反発弾性試験方法や、トリプソ式反発弾性試験方法(例えば、非特許文献1参照。)によって求められる衝撃吸収性あるいは反発性を測定することによって、衝撃吸収材料の特性評価がなされていた。
【0003】
ところで、各種機械、電化製品等の衝撃吸収材料として、発泡材料や粘弾性材料、あるいはこれらを組み合わせた材料が使用されてきたが、近年になり、携帯型の機械、電化製品(例えば、携帯電話等である。)が増加してきており、これら各種製品は、これまで考えられなかったような衝撃力の受け方をするようになってきている。
【0004】
また、これら衝撃吸収材料は、材質や内部形態等によって衝撃吸収特性が異なることから、従来の衝撃試験方法や反発弾性試験方法等によって画一的に評価することが困難となってきた。そのため、これら衝撃吸収材料を実機に装着して衝撃落下試験等を行うことによって、製品の衝撃に対する耐久性評価試験等が行われている。
【特許文献1】特開平2−13825号公報
【非特許文献1】財団法人日本工業規格協会編、JISハンドブック ゴム(1999年4月1日発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の製品の多様化、製品開発のスピード化に伴って、実機試験ではなく、衝撃吸収材料の品質管理を行う上で、この衝撃吸収材料を試験片として衝撃力を負荷し、衝撃応力-歪み特性等を得られる衝撃吸収材料の評価方法が要望されるようになってきている。
【0006】
そこで、本発明は、発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなる衝撃吸収材料の衝撃力作用時における衝撃応力―歪み特性等を得ることができる衝撃試験装置及び衝撃試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため請求項1に係る衝撃試験装置は、試験片を任意の保持力で保持する保持手段と、前記保持手段に保持された試験片に衝撃力を負荷する衝撃負荷手段と、前記衝撃負荷手段によって試験片に負荷された衝撃力を検出する衝撃力検出手段と、前記衝撃力検出手段の衝撃力検出時における該試験片の変位を検出する変位検出手段と、前記衝撃力検出手段によって検出された衝撃力と前記変位検出手段によって検出された変位とに基づいて、該試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る衝撃試験装置は、請求項1に記載の衝撃試験装置において、前記保持手段に保持されている試験片を所定温度に維持する温度維持手段を備え、前記所定温度は、設定変更可能であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る衝撃試験装置は、請求項2に記載の衝撃試験装置において、前記保持手段に保持されている試験片を所定湿度の雰囲気中に維持する湿度維持手段を備え、前記所定湿度は、設定変更可能であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る衝撃試験装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の衝撃試験装置において、前記衝撃負荷手段は、一端が回動可能に軸支された振り子式のハンマと、前記ハンマを所定角度に持ち上げて保持するハンマ保持手段と、を有し、前記ハンマ保持手段に保持されたハンマを振り下ろすことによって前記衝撃力を負荷することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る衝撃試験装置は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の衝撃試験装置において、前記衝撃力検出手段は、前記試験片の前記衝撃負荷手段による衝撃力を受ける面に対して該試験片を挟んで他方側に設けられた力センサを有し、前記力センサを介して前記衝撃力を検出することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る衝撃試験装置は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の衝撃試験装置において、前記変位検出手段は、高速度カメラを有し、前記高速度カメラを介して前記変位を検出することを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に係る衝撃試験装置は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の衝撃試験装置において、前記試験片は、衝撃吸収材料であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に係る衝撃試験方法は、保持手段によって試験片を任意の保持力で保持する保持工程と、前記保持工程で保持された試験片に衝撃負荷手段によって衝撃力を負荷する衝撃負荷工程と、前記衝撃負荷工程で試験片に負荷された衝撃力を衝撃力検出手段によって検出すると共に、該衝撃力の検出時における該試験片の変位を変位検出手段によって検出する検出工程と、前記検出工程で検出された衝撃力と変位とに基づいて、該試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を出力する出力工程と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項9に係る衝撃試験方法は、請求項8に記載の衝撃試験方法において、前記変位検出手段は、高速度カメラを有し、前記高速度カメラを介して前記変位を検出することを特徴とする。
【0016】
また、請求項10に係る衝撃試験方法は、保持手段に試験片を装着しない状態で衝撃負荷手段によって衝撃力を負荷する第1衝撃負荷工程と、前記第1衝撃負荷工程で負荷された衝撃力を衝撃力検出手段によって検出する第1検出工程と、前記保持手段によって試験片を任意の保持力で保持する保持工程と、前記保持工程で保持された試験片に前記衝撃負荷手段によって衝撃力を負荷する第2衝撃負荷工程と、前記第2衝撃負荷工程で試験片に負荷された衝撃力を前記衝撃力検出手段によって検出する第2検出工程と、前記第1検出工程で検出された衝撃力から前記第2検出工程で検出された衝撃力を減算して求めた衝撃力を該第1検出工程で検出された衝撃力で除算して該試験片の衝撃吸収率として出力する出力工程と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項11に係る衝撃試験方法は、請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の衝撃試験方法において、前記保持工程は、保持されている試験片を所定温度に維持する温度維持工程を含み、前記所定温度は、設定変更可能であることを特徴とする。
【0018】
また、請求項12に係る衝撃試験方法は、請求項11に記載の衝撃試験方法において、前記保持工程は、保持されている試験片を所定湿度の雰囲気中に維持する湿度維持工程を含み、前記所定湿度は、設定変更可能であることを特徴とする。
【0019】
また、請求項13に係る衝撃試験方法は、請求項8乃至請求項12のいずれかに記載の衝撃試験方法において、前記衝撃負荷手段は、一端が回動可能に軸支された振り子式のハンマと、前記ハンマを所定角度に持ち上げて保持するハンマ保持手段と、を有し、前記ハンマ保持手段に保持されたハンマを振り下ろすことによって前記衝撃力を負荷することを特徴とする。
【0020】
また、請求項14に係る衝撃試験方法は、請求項8乃至請求項13のいずれかに記載の衝撃試験方法において、前記衝撃力検出手段は、前記試験片の前記衝撃負荷手段による衝撃力を受ける面に対して該試験片を挟んで他方側に設けられた力センサを有し、前記力センサを介して前記衝撃力を検出することを特徴とする。
【0021】
更に、請求項15に係る衝撃試験方法は、請求項8乃至請求項14のいずれかに記載の衝撃試験方法において、前記試験片は、衝撃吸収材料であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る衝撃試験装置では、試験片を任意の保持力で保持して、この試験片に衝撃力を負荷することが可能となる。また、衝撃力検出手段によって検出された試験片に負荷された衝撃力と、変位検出手段によって検出された該試験片の衝撃力負荷時の変位とに基づいて、該試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を得ることが可能となる。
【0023】
また、請求項2に係る衝撃試験装置では、保持手段に保持されている試験片を任意の設定温度に維持して衝撃力を負荷することが可能となる。これにより、任意の設定温度における 試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を得ることが可能となる。
【0024】
また、請求項3に係る衝撃試験装置では、保持手段に保持されている試験片を任意の設定温度及び任意の設定湿度の雰囲気中に維持して衝撃力を負荷することが可能となる。これにより、任意の設定温度及び任意の設定湿度の雰囲気中における試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を得ることが可能となる。
【0025】
また、請求項4に係る衝撃試験装置では、ハンマ保持手段によって所定角度に保持された振り子式のハンマを振り下ろすことによって試験片に衝撃力を負荷するため、保持手段に保持される試験片に一定の衝撃力を負荷することが可能となる。このため、試験片毎の衝撃吸収特性や衝撃応力−歪み特性等の比較検討を容易に行うことが可能となる。
【0026】
また、請求項5に係る衝撃試験装置では、試験片の衝撃力を受ける面に対して該試験片を挟んで他方側に力センサを設け、該力センサ介して衝撃負荷手段によって負荷された衝撃力を検出するため、試験片に衝撃力が負荷された際に、確実に試験片に作用した衝撃力を検出することができる。
【0027】
また、請求項6に係る衝撃試験装置では、高速度カメラを介して衝撃力が負荷された際の試験片の変位を時間変化と共に観察することが可能となり、試験片の衝撃応力−歪み特性情報を容易に得ることができる。
【0028】
また、請求項7に係る衝撃試験装置では、試験片が発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなり、衝撃作用時に衝撃を緩和、吸収するような衝撃吸収材料であっても、該試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を得ることが可能となる。このため、製品の形態等が異なる場合や、衝撃力の作用の方法が異なる場合であっても、発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなる衝撃吸収材料の衝撃力作用時における衝撃応力―歪み特性等を実機試験することなく確実に求めることができる。
【0029】
また、請求項8に係る衝撃試験方法では、保持工程で試験片を任意の保持力で保持して、衝撃負荷工程でこの試験片に衝撃力を負荷することが可能となる。また、検出工程で試験片に負荷された衝撃力を検出すると共に、該衝撃力の検出時における該試験片の変位を検出し、出力工程で検出された衝撃力と変位とに基づいて、該試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を得ることが可能となる。
【0030】
また、請求項9に係る衝撃試験方法では、検出工程において、高速度カメラを介して衝撃力が負荷された際の試験片の変位を検出するため、衝撃力が負荷された際の試験片の変位を時間変化と共に観察することが可能となり、試験片の衝撃応力−歪み特性情報を容易に得ることができる。
【0031】
また、請求項10に係る衝撃試験方法では、先ず、第1検出工程で保持手段に試験片を装着しない状態で衝撃負荷手段による衝撃力を検出し、続いて、この保持手段に試験片を任意の保持力で保持した後、第2検出工程で衝撃負荷手段による該試験片への衝撃力を検出することによって、第1検出工程で検出された衝撃力から第2検出工程で検出された衝撃力を減算して求めた衝撃力を該第1検出工程で検出された衝撃力で除算して該試験片の衝撃吸収率を得ることが可能となる。
【0032】
また、請求項11に係る衝撃試験方法では、温度維持工程で試験片を任意の設定温度に維持して、この試験片に衝撃力を負荷することが可能となる。これにより、任意の設定温度における 試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報又は衝撃吸収率を得ることが可能となる。
【0033】
また、請求項12に係る衝撃試験方法では、温度維持工程で試験片を任意の設定温度に維持すると共に、湿度維持工程で試験片を任意の設定湿度の雰囲気中に維持して、この試験片に衝撃力を負荷することが可能となる。これにより、任意の設定温度及び任意の設定湿度の雰囲気中における試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報又は衝撃吸収率を得ることが可能となる。
【0034】
また、請求項13に係る衝撃試験方法では、一端が回動可能に軸支された振り子式のハンマを所定角度に持ち上げた後、このハンマを振り下ろすことで衝撃力を負荷するため、試験片に一定の衝撃力を負荷することが可能となる。このため、試験片毎の衝撃吸収特性や衝撃応力−歪み特性等の比較検討を容易に行うことが可能となる。
【0035】
また、請求項14に係る衝撃試験方法では、試験片の衝撃力を受ける面に対して該試験片を挟んで他方側に力センサを設け、該力センサを介してこの衝撃力を検出するため、試験片に衝撃力が負荷された際に、確実に試験片に作用した衝撃力を検出することができる。
【0036】
更に、請求項15に係る衝撃試験方法では、試験片が発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなり、衝撃作用時に衝撃を緩和、吸収するような衝撃吸収材料であっても、該試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報又は衝撃吸収率を得ることが可能となる。このため、製品の形態等が異なる場合や、衝撃力の作用の方法が異なる場合であっても、発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなる衝撃吸収材料の衝撃力作用時における衝撃応力―歪み特性又は衝撃吸収率等を実機試験することなく確実に求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る衝撃試験装置及び衝撃試験方法を具体化した実施例1及び実施例2について説明する。
【実施例1】
【0038】
先ず、実施例1に係る衝撃試験装置の概略構成について図1乃至図4に基づき説明する。
図1乃至図4に示すように、実施例1に係る衝撃試験装置1は、試験片2を任意の保持力で保持する保持手段としての保持部材3と、試験片2に衝撃応力を負荷する衝撃負荷手段としての衝撃負荷部材4と、衝撃負荷部材4による試験片2に対する衝撃力を検出する衝撃力検出手段としての力センサ5と、試験片2の衝撃負荷部材4による衝撃力作用時の変位を検出する変位検出手段としての高速度カメラ6と、力センサ5からの信号と、高速度カメラ6からの信号とを同期させて試験片2に衝撃力が作用した時の該試験片2の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力―歪み特性情報としての衝撃応力−歪み特性曲線を出力する出力手段としての出力装置部7と、で構成される。
【0039】
また、試験片2を任意の保持力で保持する保持部材3は、テーブル10に固定された固定治具11と、固定治具11に対向して試験片2を挟み込んで保持できるようスライド可能な押さえ治具12と、で構成されている。この押さえ治具12は、テーブル10上をスライド可能な台座13にスライド可能に設置されており、台座13と一体にテーブル10上をスライド可能となっている。また、この台座13には、台座13をスライドさせる際のレバー14と、レバー14によってスライドされて仮位置決定された後にテーブル10に固定する固定部材15と、が設けられている。さらに、押さえ治具12には押さえ圧力調整手段16が設けられている。この押さえ圧力調整手段16には、押さえ治具12に連動するデジタルゲージ等が設けられていることが好ましい。そして、この押さえ圧力調整手段16は、仮位置で固定された台座13上を押さえ治具12を試験片2に対して前後方向(図1中において、左右方向)に微調整することが可能であり、これによって保持される試験片2に作用する保持力を調整することが可能となる。
【0040】
また、この保持部材3によって保持された試験片2に衝撃力を負荷する衝撃負荷部材4は、一端22が支柱20に対して回動可能に軸支され、他端側にハンマ24を有するシャフト23と、ハンマ24を所定角度に持ち上げて保持するアーム21とで構成されている。アーム21は、所定の角度に固定保持できるようになっている。ここで、ハンマ24は、鋼球を使用することで、アーム21の一端に電磁石25を設けることによってハンマ24を一体に所定角度持ち上げることが可能となっている。なお、ハンマ24をアーム21と共に持ち上げることが可能で、さらに、容易にハンマ24とアーム21とを切り離すことができるものであれば、電磁石25に限定されるものではない。また、ハンマ24は、球状に限らず、例えば、ブロック状であってもよい。
【0041】
また、衝撃負荷部材4による試験片2に作用する衝撃力を検出する力センサ5は、固定治具11の試験片2と接する面の他面側に設けられている。実施例1における力センサ5としては、圧電素子で構成される力センサが好ましい。力センサ5を用いることによって、衝撃負荷部材4のハンマ24が試験片2に衝撃力を作用した際に確実にこの衝撃力を検出することができる。なお、力センサに代えて、歪ゲージを用いることも可能である。
【0042】
また、試験片2の衝撃力負荷時の変位を検出する高速度カメラ6は、図4に示すように、試験片2の変位が直接観察できるような高速度カメラを用いることが好ましい。ここで、用いられる高速度カメラとしては、撮像間隔が200μs以下、好ましくは100μs以下、より好ましくは75μs以下のものが好ましい。
【0043】
また、図4に示すように、試験片2は固定治具11と押さえ治具12間にアクリル樹脂等の樹脂製板材、アルミニウム板等の金属製板材等の高弾性な板材で構成される支持板28を介して挟持されている。
また、図4に示すように、衝撃応力―歪み特性曲線を出力する出力装置部7は、変位検出手段である高速度カメラ6からの変位検出信号(画像信号)を出力する第1制御手段32と、衝撃力検出手段である力センサ5からの信号と、第1制御手段32からの変位検出信号(画像信号)を同期させる同期手段35と、第1制御手段32からの変位検出信号(画像信号)の画像を解析し、変位を試験片2の無負荷時の厚さで除算して歪を算出すると共に、同期手段35で同期された力センサ5からの信号を解析し、衝撃力を算出後、試験片2の支持板28に当接する面の面積で除算して衝撃応力を算出して、衝撃応力―歪み特性曲線を出力する第2制御手段30と、で構成されている。ここで、力センサ5からの信号と、第1制御手段32からの変位検出信号(画像信号)との同期は、ハンマ24が試験片2の手前に設けられた速度センサ34の前を通過した際に発せられる速度計33からの信号をきっかけとして第1制御手段32及び同期手段35が同時に各々の信号を検出するようにすることで行われている。
【0044】
次に、上記のように構成された衝撃試験装置1による衝撃試験方法について説明する。
(保持工程)
まず、保持部材3の固定治具11及び押さえ治具12間に試験片2を挿入せずにアクリル樹脂からなる支持板28のみを挿入する。そして、レバー14によって台座13を固定治具11側にスライドさせて支持板28におおよそ密着させて台座13を仮固定する。次いで、押さえ圧力調整手段16によって台座13を微調整し、固定治具11と支持板28とを密着固定する。そして、このとき押さえ圧力調整手段16に設けられているメモリをリセットし、押さえ治具12の位置を基準点とする。
【0045】
次に、試験片2の厚みを予め測定する。そして、押さえ圧力調整手段16を調整し、押さえ治具12を基準点から試験片2の厚み分移動させ、固定治具11と支持板28との間に試験片2をセットする。このとき、発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなり、衝撃作用時に衝撃を緩和、吸収する衝撃吸収材料で形成された試験片2を装着した場合には、押さえ圧力調整手段16のゲージを確認しながら試験片2の厚さを考慮しつつ押さえ圧力を調整することによって、この試験片2を実機の装着状態に近い圧縮率で固定することが可能となる。また、試験片2の一方の面の一部または全面に粘着剤等を設けることで、固定治具11に貼付可能となり、確実に固定治具11に固定することができる。
【0046】
(衝撃負荷工程)
試験片2のセット終了後、アーム21の一端に設けられている電磁石25のスイッチを入れ、ハンマ24をアーム21に固定保持する。そして、アーム21を任意の所定角度に振り上げて固定後、電磁石25のスイッチを切り、ハンマ24を保持部材3に保持されている支持板28に衝突させる(図2参照)。
(検出工程)
また、このときの衝撃力を力センサ5によって測定する。
ここで、試験片2を挿入する前に、固定治具11と支持板28とを密着固定して、同様にしてハンマ24を支持板28に衝突させ、この際の衝撃力を測定しておき、下記(1)式で計算することによって試験片2の衝撃吸収率(%)を測定することができる。
【0047】
衝撃吸収率(%)={(支持板のみの衝撃力−試験片挿入時の衝撃力)/支持板のみの衝撃力}×100・・・(1)
【0048】
続いて、ハンマ24が支持板28に衝突した時における、試験片2の変位の測定方法について説明する。
試験片2に負荷された衝撃力は、前述した方法によりハンマ24の衝突時における力センサ5によって検出する。この力センサ5からの信号は、同期手段35に入力される。一方、このときの試験片2の変位については、高速度カメラ6で撮影し、その撮像信号が第1制御手段32を経て同期手段35に入力される。ここで、同期手段35による力センサ5からの信号及び高速度カメラ6からの信号の同期は、図4に示すように、ハンマ24が保持部材3の直前に設けられている速度センサ34を通過することで速度計33から信号が発信し、第1制御手段32に入力されると共に、該第1制御手段32を介して同期手段35に同期信号が入力される。そして、この速度計33からの信号をきっかけとして高速度カメラ6による撮像が開始されると共に、同期手段35からの力センサ5の信号が発信されるようになる。これによって、高速度カメラ6の撮像開始と力センサ5による衝撃力測定が同時に開始され、各測定時間における試験片2の変位を該試験片2に作用する衝撃力に同期させて測定することが可能となる。
【0049】
(出力工程)
そして、同期手段35によって同期された力センサ5からの信号及び高速度カメラ6からの撮像信号は、第2制御手段30に入力される。この第2制御手段30において、力センサ5からの信号は、衝撃力に変換され、高速度カメラ6からの撮像信号は、画像処理されて変位に変換される。ここで、高速度カメラ6からの撮像信号を画像処理によって変位へ変換するには、試験片2あるいは支持板28の端面にマークを記入しておく。そして、このマークの軌跡を数値化することによって行われる。また、第2制御手段30は、各測定時間における衝撃力と変位とのデータ値を取得後、各衝撃力を試験片2の支持板28に当接する面の面積で除算すると共に、各変位を試験片2の無負荷時の厚さで除算して衝撃応力―歪み特性曲線を出力することが可能となる。例えば、第2制御手段30を液晶表示画面を有するパーソナルコンピュータ等で構成し、この衝撃応力―歪み特性曲線を液晶表示画面に表示することが可能となる。
【0050】
以上のようにして、試験片2が発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなり、衝撃力作用時に衝撃力を緩和、吸収する衝撃吸収材料であっても、衝撃試験装置1は、該試験片2の衝撃力作用時における衝撃応力−歪み特性曲線を出力することが可能となる。また、衝撃試験装置1は、同時に試験片2の衝撃吸収率をも出力することが可能となる。
【0051】
ここで、上記構成の衝撃試験装置1にポリプロピレン製の発泡材料で形成された試験片2を装着して行った衝撃試験の一例について説明する。
この試験片2は、ポリプロピレン製の発泡材料で形成された衝撃吸収材料を20mm×20mm×1mmとなるように切り出し、90mm×80mm×3mmのアクリル樹脂製の支持板28を介して保持部材3によって保持した。このとき、押さえ治具12は、基準点から少し押し込んだ状態とし、試験片2を厚さ方向に30%圧縮した状態に保持した。そして、ハンマ24を支柱20に対して45度となるように振り上げた状態にセットした後、該ハンマ24をアーム21から切り離し、支持板28に衝突させた。この際、高速度カメラ6(例えば、Photron社製FASTCAM)によって随時試験片2の変位の撮像を行った。また、室温20℃、湿度60%の環境でこの衝撃試験を行った。
以上の試験条件で得られた衝撃応力―歪み特性曲線45を図5に示す。図5に示すように、試験片2がポリプロピレン製の発泡材料などの衝撃吸収材料であっても衝撃応力―歪み特性曲線45を得ることができた。
【0052】
また、この試験片2を厚さ方向に30%圧縮した状態に保持して、ハンマ24を支柱20に対して30度、45度、60度、75度、90度の各角度に振り上げた状態にセットした後、該ハンマ24をアーム21から切り離し、支持板28に衝突させた。そして、上記(1)式によって得られた該試験片2の衝撃吸収率を図6に示す。図6に示すように、試験片2がポリプロピレン製の発泡材料などの衝撃吸収材料であってもハンマ24の各振り上げ角度に対する衝撃吸収率を得ることができた。
【実施例2】
【0053】
次に、実施例2に係る衝撃試験装置の概略構成について図7乃至図9に基づいて説明する。尚、以下の説明において上記図1乃至図4の実施例1に係る衝撃試験装置1の構成等と同一符号は、該実施例1に係衝撃試験装置1等の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
実施例2に係る衝撃試験装置の概略構成及び制御構成は、実施例1に係る衝撃試験装置1とほぼ同じ構成である。
但し、図7乃至図9に示すように、実施例2に係る衝撃試験装置51は、実施例1に係る衝撃試験装置1を構成する力センサ5が取り付けられた保持部材3及び衝撃負荷部材4を温度維持手段及び湿度維持手段としての恒温恒湿槽52の断熱箱体54内に配置した点において上記実施例1に係る衝撃試験装置1の構成と異なっている。
【0054】
図7及び図8に示すように、恒温恒湿槽52は、前面に矩形の開口53を備えた断熱箱体54と、その開口53を閉塞するように開口53の一側の端縁部に回動自在に枢支されて、開閉自在に取り付けられた断熱扉55と、該断熱箱体54の下側に配設される冷凍機ユニット56とから構成されている。また、断熱箱体54内の奥側には、冷凍機ユニット56の前面側に配置された給水タンク57から給水される加湿器58と、この加湿器58の上側に配置されて冷凍機ユニット56によって冷却される冷却・除湿器59と、この冷却・除湿器59の上側に配置されるヒータ60と、このヒータ60の上側に配置される送風機61とから構成されている。また、送風機61の吹き出し口近傍には、不図示の湿度センサと温度センサとが配置されている。
また、断熱箱体54の左側壁面の中央下部には、観測用窓62が設けられ、該断熱箱体54内に配置される保持部材3に保持される試験片2の変位を観察可能に構成されている。また、この観測用窓62の外側には、透明なアクリル板などで形成され略中央部に縦長の貫通孔が穿設された略四角形の保護板64が設けられている。そして、この保護板64の外側には、高速度カメラ6と照明装置66とが配置され、保持部材3に保持される試験片2の変位を観測可能に構成されている。
【0055】
また、この観測用窓62の横側には、断熱箱体54内に配置される衝撃負荷部材4の電磁石25と、速度計33と、力センサ5との各配線を外側に引き出すための配線取出口67が設けられている。
また、断熱扉55の右側には、冷凍機ユニット56、加湿器58、冷却・除湿器59、ヒータ60及び送風機61を駆動制御する制御回路部(不図示)を備えた操作部68が設けられ、該断熱箱体54内の温度及び湿度を所定温度及び所定湿度に設定可能に構成されている。ここで、恒温恒湿槽52は、断熱箱体54内の温度を−40℃乃至+100℃の範囲内の任意の温度に設定可能に構成され、また、該断熱箱体54内の湿度を0%乃至100%の範囲内の任意の湿度に設定可能に構成されている。
【0056】
また、図9に示すように、断熱箱体54内には、試験片2の手前に設けられる速度センサ34と、この速度センサ34に接続される速度計33とが配置されている。
また、図9に示すように、衝撃応力―歪み特性曲線を出力する出力装置部7は、断熱箱体54の外側に配置され、変位検出手段である高速度カメラ6からの変位検出信号(画像信号)を出力する第1制御手段32と、衝撃力検出手段である力センサ5からの信号と、第1制御手段32からの変位検出信号(画像信号)を同期させる同期手段35と、第1制御手段32からの変位検出信号(画像信号)の画像を解析し、変位を試験片2の無負荷時の厚さで除算して歪を算出すると共に、同期手段35で同期された力センサ5からの信号を解析し、衝撃力を算出後、試験片2の支持板28に当接する面の面積で除算して衝撃応力を算出して、衝撃応力―歪み特性曲線を出力する第2制御手段30と、で構成されている。ここで、力センサ5からの信号と、第1制御手段32からの変位検出信号(画像信号)との同期は、ハンマ24が試験片2の手前に設けられた速度センサ34の前を通過した際に発せられる速度計33からの信号をきっかけとして第1制御手段32及び同期手段35が同時に各々の信号を検出するようにすることで行われている。
【0057】
次に、上記のように構成された衝撃試験装置51による衝撃試験方法について説明する。
(保持工程)
まず、断熱箱体54内に配置される保持部材3の固定治具11及び押さえ治具12間に試験片2を挿入せずにアクリル樹脂からなる支持板28のみを挿入する。そして、レバー14によって台座13を固定治具11側にスライドさせて支持板28におおよそ密着させて台座13を仮固定する。次いで、押さえ圧力調整手段16によって台座13を微調整し、固定治具11と支持板28とを密着固定する。そして、このとき押さえ圧力調整手段16に設けられているメモリをリセットし、押さえ治具12の位置を基準点とする。
【0058】
次に、室内で試験片2の厚みを予め測定する。そして、押さえ圧力調整手段16を調整し、押さえ治具12を基準点から試験片2の厚み分移動させ、固定治具11と支持板28との間に試験片2をセットする。このとき、発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなり、衝撃作用時に衝撃を緩和、吸収する衝撃吸収材料で形成された試験片2を装着した場合には、押さえ圧力調整手段16のゲージを確認しながら試験片2の厚さを考慮しつつ押さえ圧力を調整することによって、この試験片2を実機の装着状態に近い圧縮率で固定することが可能となる。また、試験片2の一方の面の一部または全面に粘着剤等を設けることで、固定治具11に貼付可能となり、確実に固定治具11に固定することができる。そして、試験片2のセット終了後、アーム21の一端に設けられている電磁石25のスイッチを入れ、ハンマ24をアーム21に固定保持する。そして、アーム21を任意の所定角度に振り上げて固定する。
【0059】
(温度維持工程・湿度維持工程)
そして、アーム21を任意の所定角度にセット後、断熱扉55を閉塞し、操作部68を介して恒温恒湿槽52の設定温度及び設定湿度を所定温度及び所定湿度に設定して、所定時間(例えば、約30分乃至約2時間)運転する。これにより、試験片2の温度を設定温度まで確実に上昇させてに維持すると共に、この試験片2を設定湿度の雰囲気中に維持することができる。
【0060】
(衝撃負荷工程)
その後、電磁石25のスイッチを切り、ハンマ24を保持部材3に保持されている支持板28に衝突させる(図9参照)。
(検出工程)
また、このときの衝撃力を力センサ5によって測定する。
ここで、試験片2を挿入する前に支持板12のみの場合に、同様にしてハンマ24を支持板12に衝突させ、この際の衝撃力を測定しておき、上記(1)式で計算することによって各設定温度及び各設定湿度の雰囲気中における試験片2の衝撃吸収率(%)を測定することができる。
【0061】
続いて、ハンマ24が支持板28に衝突した時における、試験片2の変位の測定方法について説明する。
試験片2に負荷された衝撃力は、前述した方法によりハンマ24の衝突時における力センサ5によって検出する。この力センサ5からの信号は、同期手段35に入力される。一方、このときの試験片2の変位については、観測用窓62を介して高速度カメラ6で撮影し、その撮像信号が第1制御手段32を経て同期手段35に入力される。ここで、同期手段35による力センサ5からの信号及び高速度カメラ6からの信号の同期は、図9に示すように、ハンマ24が保持部材3の直前に設けられている速度センサ34を通過することで速度計33から信号が発信し、第1制御手段32に入力されると共に、該第1制御手段32を介して同期手段35に同期信号が入力される。そして、この速度計33からの信号をきっかけとして高速度カメラ6による撮像が開始されると共に、同期手段35からの力センサ5の信号が発信されるようになる。これによって、高速度カメラ6の撮像開始と力センサ5による衝撃力測定が同時に開始され、設定温度及び設定湿度の雰囲気中において、各測定時間における試験片2の変位を該試験片2に作用する衝撃力に同期させて測定することが可能となる。
【0062】
(出力工程)
そして、同期手段35によって同期された力センサ5からの信号及び高速度カメラ6からの撮像信号は、第2制御手段30に入力される。この第2制御手段30において、力センサ5からの信号は、衝撃力に変換され、高速度カメラ6からの撮像信号は、画像処理されて変位に変換される。ここで、高速度カメラ6からの撮像信号を画像処理によって変位へ変換するには、試験片2あるいは支持板28の端面にマークを記入しておく。そして、このマークの軌跡を数値化することによって行われる。
また、第2制御手段30は、各測定時間における衝撃力と変位とのデータ値を取得後、各衝撃力を試験片2の支持板28に当接する面の面積で除算すると共に、各変位を試験片2の無負荷時の厚さで除算して、設定温度及び設定湿度の雰囲気中における衝撃応力―歪み特性曲線を出力することが可能となる。例えば、第2制御手段30を液晶表示画面を有するパーソナルコンピュータ等で構成し、この設定温度及び設定湿度の雰囲気中における衝撃応力―歪み特性曲線を液晶表示画面に表示することが可能となる。
【0063】
以上のようにして、設定温度及び設定湿度の雰囲気中における衝撃応力―歪み特性曲線を出力することができるため、例えば、試験片2に、発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなり、衝撃力作用時に衝撃力を緩和、吸収する衝撃吸収材料であっても、衝撃試験装置51は、任意の設定温度及び設定湿度の雰囲気中での該試験片2の衝撃力作用時における衝撃応力―歪み特性曲線を出力することが可能となる。また、衝撃試験装置51は、同時に任意の設定温度及び設定湿度の雰囲気中での試験片2の衝撃吸収率をも出力することが可能となる。
【0064】
ここで、上記構成の衝撃試験装置51にポリプロピレン製の発泡材料で形成された試験片2を装着して、各設定温度−20℃、+20℃、+60℃及び設定湿度60%で行った衝撃試験の一例について説明する。
この試験片2は、ポリプロピレン製の発泡材料で形成された衝撃吸収材料を20mm×20mm×1mmとなるように切り出し、90mm×80mm×3mmのアクリル樹脂製の支持板28を介して保持部材3によって保持した。このとき、押さえ治具12は、基準点から少し押し込んだ状態とし、試験片2を厚さ方向に30%圧縮した状態に保持した。そして、ハンマ24を支柱20に対して45度となるように振り上げた状態にセットした後、各設定温度−20℃、+20℃、+60℃及び設定湿度60%にそれぞれ約1時間放置した後、該ハンマ24をアーム21から切り離し、支持板28に衝突させた。この際、高速度カメラ6(例えば、Photron社製FASTCAM)によって随時試験片2の変位の撮像を行った。
以上の試験条件で得られた各設定温度−20℃、+20℃、+60℃及び設定湿度60%における各衝撃応力―歪み特性曲線71、72、73を図10に示す。図10に示すように、試験片2がポリプロピレン製の発泡材料などの衝撃吸収材料であっても各設定温度−20℃、+20℃、+60℃及び設定湿度60%における各衝撃応力―歪み特性曲線71、72、73を得ることができた。
【0065】
尚、本発明は上記実施例1及び実施例2に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。
【実施例3】
【0066】
図11に示すように、試験片2の変位の測定は、上述した高速度カメラ6による測定に替えて、例えば、支持板28のハンマ24の衝突場所に近い場所に加速度センサ81を取り付け、ハンマ24衝突時の加速度を2回積分して試験片2の変位を求めることも可能である。
【実施例4】
【0067】
図12に示すように、試験片2の変位の測定は、上述した高速度カメラ6による測定に替えて、支持板28に金属箔82を貼付し、レーザドップラ振動計83からレーザを発信し、その金属箔82の振動から試験片2の変位を測定することも可能である。
【実施例5】
【0068】
また、上述の実施例1及び実施例2においては、支持板28を介して試験片2を保持した場合を例にとって説明したが、例えば、ハンマ24にブロック状のものを用いることによって、支持板28を用いることなく発泡材料や粘弾性材料あるいはこれらを組み合わせた材料からなる衝撃吸収材料の試験片2の全面に一様に衝撃力を負荷して、該試験片2の衝撃応力―歪み特性曲線や衝撃吸収率を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1に係る衝撃試験装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】実施例1に係る衝撃試験装置の衝撃力負荷時の状態を説明する正面図である。
【図3】実施例1に係る衝撃試験装置の概略構成を平面図、正面図、左側面図、右側面図によって示す図である。
【図4】実施例1に係る衝撃試験装置の試験片の衝撃力及び変位を検出して衝撃応力−歪み特性情報を出力する出力装置部の概略構成を示す図である。
【図5】実施例1に係る衝撃試験装置によって得られた衝撃応力―歪み特性曲線の一例を示す図である。
【図6】実施例1に係る衝撃試験装置によって得られたハンマの振り上げ角度に対する衝撃吸収率の一例を示す図である。
【図7】実施例2に係る衝撃試験装置の概略構成を示す正面図である。
【図8】実施例2に係る衝撃試験装置の概略構成を示す左側面図である。
【図9】実施例2に係る衝撃試験装置の試験片の衝撃力及び変位を検出して衝撃応力−歪み特性情報を出力する出力装置部の概略構成を示す図である。
【図10】実施例2に係る衝撃試験装置によって得られた各設定温度−20℃、+20℃、+60℃及び設定湿度60%における各衝撃応力―歪み特性曲線の一例を示す図である。
【図11】他の実施例に係る衝撃試験装置の保持手段の支持板に加速度センサを取り付けた状態を示す部分拡大図である。
【図12】他の実施例に係る衝撃試験装置の保持手段の支持板に金属箔を貼付してレーザドップラ振動計によって変位を測定する測定方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0070】
1、51 衝撃試験装置
2 試験片
3 保持部材
4 衝撃負荷部材
5 力センサ
6 高速度カメラ
7 出力装置部
52 恒温恒湿槽
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片を任意の保持力で保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された試験片に衝撃力を負荷する衝撃負荷手段と、
前記衝撃負荷手段によって試験片に負荷された衝撃力を検出する衝撃力検出手段と、
前記衝撃力検出手段の衝撃力検出時における該試験片の変位を検出する変位検出手段と、
前記衝撃力検出手段によって検出された衝撃力と前記変位検出手段によって検出された変位とに基づいて、該試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする衝撃試験装置。
【請求項2】
前記保持手段に保持されている試験片を所定温度に維持する温度維持手段を備え、
前記所定温度は、設定変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の衝撃試験装置。
【請求項3】
前記保持手段に保持されている試験片を所定湿度の雰囲気中に維持する湿度維持手段を備え、
前記所定湿度は、設定変更可能であることを特徴とする請求項2に記載の衝撃試験装置。
【請求項4】
前記衝撃負荷手段は、一端が回動可能に軸支された振り子式のハンマと、
前記ハンマを所定角度に持ち上げて保持するハンマ保持手段と、を有し、
前記ハンマ保持手段に保持されたハンマを振り下ろすことによって前記衝撃力を負荷することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の衝撃試験装置。
【請求項5】
前記衝撃力検出手段は、前記試験片の前記衝撃負荷手段による衝撃力を受ける面に対して該試験片を挟んで他方側に設けられた力センサを有し、
前記力センサを介して前記衝撃力を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の衝撃試験装置。
【請求項6】
前記変位検出手段は、高速度カメラを有し、
前記高速度カメラを介して前記変位を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の衝撃試験装置。
【請求項7】
前記試験片は、衝撃吸収材料であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の衝撃試験装置。
【請求項8】
保持手段によって試験片を任意の保持力で保持する保持工程と、
前記保持工程で保持された試験片に衝撃負荷手段によって衝撃力を負荷する衝撃負荷工程と、
前記衝撃負荷工程で試験片に負荷された衝撃力を衝撃力検出手段によって検出すると共に、該衝撃力の検出時における該試験片の変位を変位検出手段によって検出する検出工程と、
前記検出工程で検出された衝撃力と変位とに基づいて、該試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を出力する出力工程と、を備えたことを特徴とする衝撃試験方法。
【請求項9】
前記変位検出手段は、高速度カメラを有し、
前記高速度カメラを介して前記変位を検出することを特徴とする請求項8に記載の衝撃試験方法。
【請求項10】
保持手段に試験片を装着しない状態で衝撃負荷手段によって衝撃力を負荷する第1衝撃負荷工程と、
前記第1衝撃負荷工程で負荷された衝撃力を衝撃力検出手段によって検出する第1検出工程と、
前記保持手段によって試験片を任意の保持力で保持する保持工程と、
前記保持工程で保持された試験片に前記衝撃負荷手段によって衝撃力を負荷する第2衝撃負荷工程と、
前記第2衝撃負荷工程で試験片に負荷された衝撃力を前記衝撃力検出手段によって検出する第2検出工程と、
前記第1検出工程で検出された衝撃力から前記第2検出工程で検出された衝撃力を減算して求めた衝撃力を該第1検出工程で検出された衝撃力で除算して該試験片の衝撃吸収率として出力する出力工程と、を備えたことを特徴とする衝撃試験方法。
【請求項11】
前記保持工程は、保持されている試験片を所定温度に維持する温度維持工程を含み、
前記所定温度は、設定変更可能であることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の衝撃試験方法。
【請求項12】
前記保持工程は、保持されている試験片を所定湿度の雰囲気中に維持する湿度維持工程を含み、
前記所定湿度は、設定変更可能であることを特徴とする請求項11に記載の衝撃試験方法。
【請求項13】
前記衝撃負荷手段は、一端が回動可能に軸支された振り子式のハンマと、
前記ハンマを所定角度に持ち上げて保持するハンマ保持手段と、を有し、
前記ハンマ保持手段に保持されたハンマを振り下ろすことによって前記衝撃力を負荷することを特徴とする請求項8乃至請求項12のいずれかに記載の衝撃試験方法。
【請求項14】
前記衝撃力検出手段は、前記試験片の前記衝撃負荷手段による衝撃力を受ける面に対して該試験片を挟んで他方側に設けられた力センサを有し、
前記力センサを介して前記衝撃力を検出することを特徴とする請求項8乃至請求項13のいずれかに記載の衝撃試験方法。
【請求項15】
前記試験片は、衝撃吸収材料であることを特徴とする請求項8乃至請求項14のいずれかに記載の衝撃試験方法。
【請求項1】
試験片を任意の保持力で保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された試験片に衝撃力を負荷する衝撃負荷手段と、
前記衝撃負荷手段によって試験片に負荷された衝撃力を検出する衝撃力検出手段と、
前記衝撃力検出手段の衝撃力検出時における該試験片の変位を検出する変位検出手段と、
前記衝撃力検出手段によって検出された衝撃力と前記変位検出手段によって検出された変位とに基づいて、該試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする衝撃試験装置。
【請求項2】
前記保持手段に保持されている試験片を所定温度に維持する温度維持手段を備え、
前記所定温度は、設定変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の衝撃試験装置。
【請求項3】
前記保持手段に保持されている試験片を所定湿度の雰囲気中に維持する湿度維持手段を備え、
前記所定湿度は、設定変更可能であることを特徴とする請求項2に記載の衝撃試験装置。
【請求項4】
前記衝撃負荷手段は、一端が回動可能に軸支された振り子式のハンマと、
前記ハンマを所定角度に持ち上げて保持するハンマ保持手段と、を有し、
前記ハンマ保持手段に保持されたハンマを振り下ろすことによって前記衝撃力を負荷することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の衝撃試験装置。
【請求項5】
前記衝撃力検出手段は、前記試験片の前記衝撃負荷手段による衝撃力を受ける面に対して該試験片を挟んで他方側に設けられた力センサを有し、
前記力センサを介して前記衝撃力を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の衝撃試験装置。
【請求項6】
前記変位検出手段は、高速度カメラを有し、
前記高速度カメラを介して前記変位を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の衝撃試験装置。
【請求項7】
前記試験片は、衝撃吸収材料であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の衝撃試験装置。
【請求項8】
保持手段によって試験片を任意の保持力で保持する保持工程と、
前記保持工程で保持された試験片に衝撃負荷手段によって衝撃力を負荷する衝撃負荷工程と、
前記衝撃負荷工程で試験片に負荷された衝撃力を衝撃力検出手段によって検出すると共に、該衝撃力の検出時における該試験片の変位を変位検出手段によって検出する検出工程と、
前記検出工程で検出された衝撃力と変位とに基づいて、該試験片の衝撃応力とこの衝撃応力に対する歪みとの関係を表す衝撃応力−歪み特性情報を出力する出力工程と、を備えたことを特徴とする衝撃試験方法。
【請求項9】
前記変位検出手段は、高速度カメラを有し、
前記高速度カメラを介して前記変位を検出することを特徴とする請求項8に記載の衝撃試験方法。
【請求項10】
保持手段に試験片を装着しない状態で衝撃負荷手段によって衝撃力を負荷する第1衝撃負荷工程と、
前記第1衝撃負荷工程で負荷された衝撃力を衝撃力検出手段によって検出する第1検出工程と、
前記保持手段によって試験片を任意の保持力で保持する保持工程と、
前記保持工程で保持された試験片に前記衝撃負荷手段によって衝撃力を負荷する第2衝撃負荷工程と、
前記第2衝撃負荷工程で試験片に負荷された衝撃力を前記衝撃力検出手段によって検出する第2検出工程と、
前記第1検出工程で検出された衝撃力から前記第2検出工程で検出された衝撃力を減算して求めた衝撃力を該第1検出工程で検出された衝撃力で除算して該試験片の衝撃吸収率として出力する出力工程と、を備えたことを特徴とする衝撃試験方法。
【請求項11】
前記保持工程は、保持されている試験片を所定温度に維持する温度維持工程を含み、
前記所定温度は、設定変更可能であることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の衝撃試験方法。
【請求項12】
前記保持工程は、保持されている試験片を所定湿度の雰囲気中に維持する湿度維持工程を含み、
前記所定湿度は、設定変更可能であることを特徴とする請求項11に記載の衝撃試験方法。
【請求項13】
前記衝撃負荷手段は、一端が回動可能に軸支された振り子式のハンマと、
前記ハンマを所定角度に持ち上げて保持するハンマ保持手段と、を有し、
前記ハンマ保持手段に保持されたハンマを振り下ろすことによって前記衝撃力を負荷することを特徴とする請求項8乃至請求項12のいずれかに記載の衝撃試験方法。
【請求項14】
前記衝撃力検出手段は、前記試験片の前記衝撃負荷手段による衝撃力を受ける面に対して該試験片を挟んで他方側に設けられた力センサを有し、
前記力センサを介して前記衝撃力を検出することを特徴とする請求項8乃至請求項13のいずれかに記載の衝撃試験方法。
【請求項15】
前記試験片は、衝撃吸収材料であることを特徴とする請求項8乃至請求項14のいずれかに記載の衝撃試験方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−47277(P2006−47277A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72186(P2005−72186)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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