衝突軽減装置
【課題】他車両が自車両に衝突した場合に発生する被害を軽減する上で有利な衝突軽減装置を提供する。
【解決手段】衝突軽減ECU46は、危険予測判定手段48と、強制操舵手段50とを実現する。危険予測判定手段48は、他車両が自車両に衝突することで自車両が該自車両の位置している自車線から対向車線あるいは自車線に隣接する車線あるいは歩道に向かって運転者の意図に反して進入する事態が予測される危険予測状態であるか否かを判定するものである。強制操舵手段50は、危険予測判定手段48によって危険予測状態であると判定された場合に、自車両の操舵輪の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させるものである。
【解決手段】衝突軽減ECU46は、危険予測判定手段48と、強制操舵手段50とを実現する。危険予測判定手段48は、他車両が自車両に衝突することで自車両が該自車両の位置している自車線から対向車線あるいは自車線に隣接する車線あるいは歩道に向かって運転者の意図に反して進入する事態が予測される危険予測状態であるか否かを判定するものである。強制操舵手段50は、危険予測判定手段48によって危険予測状態であると判定された場合に、自車両の操舵輪の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は他車両が自車両に衝突した場合における被害を軽減する衝突軽減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自車両の走行状態や周囲の交通状況等に基づいて自車両の衝突可能性を予測し、衝突が不可避であると判断すると、自車両の制動装置を作動させて減速させたり、シートベルトを巻き上げて衝突時の衝撃に備えるようにしたプリクラッシュセーフティシステムが提案されている(特許文献1、2参照)。これらのプリクラッシュセーフティシステムでは、運転者が衝突前にブレーキを踏んだり、あるいは、ステアリングを操作するなどの衝突回避を的確に行えない場合があることを考慮して、早期に制動装置やシートベルトを作動させたり、あるいは、運転者の筋肉を刺激することで素早く耐ショック姿勢をとらせるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−74302号公報
【特許文献2】特開2010−76593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自車両が交差点前でステアリングを右方向に切った状態で右折待ちしているような状況、あるいは、隣接する車線に車線変更しようとしてステアリングを左あるいは右に切った状況を考える。このような状況下で後方から他車両が追突すると、自車両がステアリングを切った方向に押し出され、別の他車両に対して衝突する可能性がある。上記従来技術によれば、このような状況下において衝突が発生した場合の被害を軽減する上で一定の効果があるものの、自車両が別の他車両と衝突する可能性のある方向に進行してしまうことを抑制する上でさらに改善の余地がある。本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、他車両が自車両に衝突した場合に発生する被害を軽減する上で有利な衝突軽減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の衝突軽減装置は、他車両が自車両に衝突することで前記自車両が該自車両の位置している自車線から対向車線あるいは前記自車線に隣接する車線あるいは歩道に向かって運転者の意図に反して進入する事態が予測される危険予測状態であるか否かを判定する危険予測判定手段と、前記危険予測状態であると判定された場合に、前記自車両の操舵輪の向きを前記自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させる強制操舵手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、他車両が自車両に衝突しても、自車両が対向車線あるいは隣接する車線あるいは歩道に進入することが抑制されるため、発生する被害を軽減する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施の形態に係る衝突軽減装置10が設けられた車両の制御系の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態における衝突軽減ECU46の機能ブロック図である。
【図3】(A)、(B)は自車線の延在方向と自車両2の中心を通り前後方向に延在する中心線CLとがなす車両角度θの検出方法の一例を示す説明図である。
【図4】(A)、(B)は自車線の延在方向と自車両2の中心を通り前後方向に延在する中心線CLとがなす車両角度θの検出方法の他の例を示す説明図である。
【図5】(A)、(B)は自車線の延在方向と自車両2の中心を通り前後方向に延在する中心線CLとがなす車両角度θの検出方法のさらに他の例を示す説明図である。
【図6】衝突予測手段48Eの構成を示す機能ブロック図である。
【図7】第1の実施の形態における衝突軽減装置10の動作フローチャートである。
【図8】第1の動作例における自車両2の位置関係を示す説明図である。
【図9】第2の動作例における自車両2の位置関係を示す説明図である。
【図10】第3の動作例における自車両2の位置関係を示す説明図である。
【図11】第2の実施の形態における衝突軽減ECU46の機能ブロック図である。
【図12】第2の実施の形態における衝突軽減装置10の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態の衝突軽減装置10について図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施の形態の衝突軽減装置10は、パワーステアリング装置12を備える車両に設けられている。本実施の形態では、パワーステアリング装置12は、操舵系14と、操舵トルクセンサ16と、パワーステアリングモータ18と、車速センサ20と、パワーステアリングECU22とを含んで構成されている。
【0009】
操舵系14は、車両を操舵する際に操作されるステアリングホイール1402と、ステアリングホイール1402に連結されたステアリングシャフト1404と、ステアリングシャフト1404の回転に基づいて操舵輪を操舵する操舵機構1406などを含んで構成されている。操舵トルクセンサ16は、操舵機構1406に設けられ、運転者によるステアリングホイール1402の操作によりステアリングシャフト1404に加えられた操舵トルクを検出するものである。パワーステアリングモータ18は、操舵機構1406に操舵補助トルクを付与するアクチュエータである。車速センサ20は、自車両の走行速度を検出するものである。
【0010】
パワーステアリングECU22は、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されており、前記制御プログラムを実行することにより動作する。パワーステアリングECU22は、前記CPUが動作することにより、操舵補助トルク決定手段22Aと、モータ制御手段22Bとを実現する。操舵補助トルク決定手段22Aは、操舵トルクセンサ16によって検出された操舵トルクと、車速センサ20によって検出された車速とに基づいて、操舵機構1406に付与すべき操舵補助トルクを決定するものである。モータ制御手段22Bは、操舵補助トルク決定手段22Aによって決定された操舵補助トルクが操舵補助トルク操舵機構1406に付与されるようにパワーステアリングモータ18を駆動制御するものである。具体的には、操舵トルクおよび操舵補助トルク(モータ駆動電流値)の関係を示すアシストマップが予め定められており、このアシストマップは、例えば、パワーステアリングECU22のROMなどに格納されている。そして、操舵補助トルク決定手段22Aによる操舵補助トルクの決定は、操舵トルクセンサ16によって検出された操舵トルクに対応する操舵補助トルク(モータ駆動電流値)をアシストマップから特定することによってなされる。また、モータ制御手段22Bによるパワーステアリングモータ18の駆動制御は、前記のアシストマップから決定された操舵補助トルク(モータ駆動電流値)に基づいてなされる。すなわち、パワーステアリング装置12は、運転者によるステアリングホイール1402の操作に基づいて操舵補助トルクを操舵系14に付与するものである。また、モータ制御手段22Bは、後述する衝突軽減ECU46の強制操舵手段50の制御に基づいてパワーステアリングモータ18を駆動制御するものである。
【0011】
また、車両には、衝突時における乗員の保護を図る安全装置として、自動ブレーキ装置24と、エアバック装置26と、シートベルト装置28とが設けられている。自動ブレーキ装置24は、ブレーキECU24Aによって制御され、例えば後述する前方レーダセンサ3202によって検出される前方車両との車間距離がしきい値を下回ったときに(衝突が予測されるときに)自動的に車両に制動をかけるものである。エアバック装置26は、エアバックECU26Aによって制御され、例えば後述する加速度センサ40によってしきい値を超える衝撃が検出されるときに(衝突が検出されるときに)エアバックを自動的に展開することで乗員を保護するものである。シートベルト装置28は、シートベルトECU28Aによって制御され、例えば後述する加速度センサ40によってしきい値を超える衝撃が検出されるときに(衝突が検出されるときに)シートベルトを巻き取ることで乗員を保護するものである。なお、各ECUは、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されており、前記制御プログラムを実行することにより動作する。
【0012】
次に、衝突軽減装置10について説明する。図1に示すように、衝突軽減装置10は、複数のカメラ30と、複数のレーダセンサ32と、操舵角センサ34と、ブレーキペダルスイッチ36と、アクセルペダルスイッチ38と、加速度センサ40と、ナビゲーション装置42と、方向指示器スイッチ44と、衝突軽減ECU46とを含んで構成されている。また、衝突軽減ECU46、前記のパワーステアリングECU22、ブレーキECU24A、エアバックECU26B、シートベルトECU28B、複数のカメラ30、複数のレーダセンサ32、操舵角センサ34、ブレーキペダルスイッチ36、アクセルペダルスイッチ38、加速度センサ40、ナビゲーション装置42、方向指示器スイッチ44は、それぞれCAN(Controller Area Network)バス46などの従来公知のバスを介して情報、データの授受を行う。
【0013】
本実施の形態では、複数のカメラ30は、前方カメラ3002、後方カメラ3004、左方カメラ3006、右方カメラ3008の4つのカメラで構成され、4つのカメラは車両に設けられている。前方カメラ3002は、車両の前方を撮像することにより、画像情報を生成するものである。したがって、画像情報には、道路の走行車線(走行レーン)を区分する左右の境界線としての白線(レーンマーカー)が含まれる。後方カメラ3004は、車両の後方を撮像することにより、画像情報を生成するものである。したがって、画像情報には、道路の走行車線(走行レーン)を区分する左右の境界線としての白線が含まれる。左方カメラ3006、右方カメラ3008は、車両の左側方、右側方をそれぞれ撮像することにより、画像情報を生成するものである。
【0014】
本実施の形態では、複数のレーダセンサ32は、前方レーダセンサ3202、後方レーダセンサ3004、左右の側方レーダセンサ3206、3208の4つのミリ波レーダセンサで構成され、4つのレーダセンサは車両に設けられている。前方レーダセンサ3202は、車両前方の先行車両を捕捉し自車両と先行車両との車間距離を検出する。後方レーダセンサ3204は、車両後方の後続車両を捕捉し自車両と後続車両との車間距離を検出する。左右の側方レーダセンサ3206、3208は側方において周囲の車両との距離を検出する。操舵角センサ34は、操舵系14に設けられ、ステアリングホイール1402の回転角度であるハンドル角(操舵角)を検出するものであり、言い換えると、車両の操舵輪の向きを検出するものである。ブレーキペダルスイッチ36は、ブレーキペダルが操作されているか否かを検出するものである。アクセルペダルスイッチ38は、アクセルペダルが操作されているか否かを検出するものである。加速度センサ40は、車両に設けられ、車両に発生する加速度を検出することにより、車両に加えられた衝撃を検出するものである。
【0015】
ナビゲーション装置42は、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)を構成するGPS衛星から送信される測位用電波を受信し、受信した測位用電波を基に、車両の位置を検出し、当該位置を示す測位情報を生成する。また、検出した測位情報に対応する地図情報をデータベースから読み出してディスプレイ上に表示する。また、測位情報と地図情報とに基づいて、指定した目的地への道路案内を行うナビゲーション機能を有している。したがって、ナビゲーション装置42は、例えば、自車両が交差点の手前あるいは交差点内に位置している場合、次のような状況であることを判定できる。
1)自車両が交差点手前あるいは交差点内に位置している。
2)自車両が交差点の右折レーンに位置している。
なお、ナビゲーション装置42に代えて、路車間通信用の受信機を設け、この受信機によって受信される路車間通信情報に含まれる交差点の情報に基づいて自車両が交差点の手前あるいは交差点内に位置していることを判定することも可能である。方向指示器スイッチ44は、右左折や進路変更の際に、その方向を周囲に表示する方向指示器を操作するスイッチであり、左および右に対応した方向指示器信号を生成する。
【0016】
衝突軽減ECU46は、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されており、前記制御プログラムを実行することにより動作する。衝突軽減ECU46は、前記CPUが動作することにより、図2に示すように、危険予測判定手段48と、強制操舵手段50とを実現する。危険予測判定手段48は、他車両が自車両に衝突することで自車両が該自車両の位置している自車線から対向車線あるいは自車線に隣接する車線あるいは歩道に向かって運転者の意図に反して進入する事態が予測される危険予測状態であるか否かを判定するものである。また、強制操舵手段50は、危険予測判定手段48によって危険予測状態であると判定された場合に、自車両の操舵輪の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させるものである。
【0017】
危険予測判定手段48について詳細に説明する。危険予測判定手段48は、停止検出手段48Aと、交差点検出手段48Bと、右折向き検出手段48Cと、操舵輪向き検出手段48Dと、衝突予測手段48Eとを含んで構成されている。停止検出手段48Aは、自車両が停止状態にあることを検出するものである。停止検出手段48Aによる自車両の停止状態の検出は、例えば以下のようにしてなされる。すなわち、ブレーキペダルスイッチ36によってブレーキペダルの操作状態が検出され、かつ、アクセルペダルスイッチ38によってアクセルペダルの非操作状態が検出されること。交差点検出手段48Bは、図8に示すように、自車両2が交差点Kの手前あるいは交差点K内に位置していることを検出するものである。なお、図中、符号4は自車両2の操舵輪を示し、符号Mは右折レーンを示す矢印マークを示す。また、符号Lw0は中央線を示す実線の白線、符号Lw1は車線境界線を示す実線の白線、符号Lw2は車線境界線を示す破線の白線である。以下では、これら白線Lw0,Lw1,Lw2をまとめて示す場合には単に白線Lwと示す。交差点検出手段48Bによる交差点Kの手前あるいは交差点K内の検出は、例えば以下のようにしてなされる。
1)ナビゲーション装置42によって自車両2の位置が交差点Kの手前あるいは交差点K内であることが検出されること。
2)ナビゲーション装置42によって自車両2の位置が右折レーンに該当していることが検出されること。
3)前方カメラ3002で撮像された車両前方の画像情報を画像処理することにより、右折レーンの矢印マークなどが検出されること。この場合、交差点検出手段48Bは、画像処理を行う従来公知のソフトウェアによって構成される。
【0018】
右折向き検出手段48Cは、操舵輪4の向きが右折を行うために必要な向きとなっていることを検出するものである。右折向き検出手段48Cによる操舵輪4が右折向きであることの検出は、例えば以下のようにしてなされる。図3(A)、(B)に示すように、前方カメラ3002で撮像された車両前方の画像情報を画像処理することにより、自車線の延在方向(すなわち自車線の白線Lw(その延長線を含む))と自車両2の中心を通り前後方向に延在する中心線CLとがなす角度を車両角度θとして検出する。なお、白線を含む画像情報から白線を検出するなどの画像処理を行う方法としては、例えば、特開2003−40036号公報、特開2003−179915号公報などに記載されているように、撮像された画像情報(画面)を横走査したときに輝度変化の大きい点を候補点として、候補点群を直線式に当てはめる方法、Hough変換によって直線を検出する方法など従来公知のさまざまな方法が使用可能である。右折向き検出手段48Cは、車両角度θと、操舵角センサ34によって検出される操舵角φとの少なくとも一方の角度が右折する方向に対応する角度であることをもって操舵輪4の向きが右折を行うために必要な向きとなっていることを検出する。本例では、中心線CLと白線Lwとが平行した状態での車両角度θを0度とし、図3(B)に示すように中心線CLが白線Lwに対して右折する方向に傾斜して交差する場合の車両角度θが正の値をとり、中心線CLが白線Lwに対して左折する方向に傾斜して交差する場合の車両角度θが負の値をとるものとする。また、ステアリングホイール1402の中立位置で操舵角φ=0度、ステアリングホイール1402(図1)を中立位置よりも右に切ると操舵角φが正の値をとり、ステアリングホイール1402を中立位置よりも左に切ると操舵角φが負の値をとるものとする。図3(A)は車両角度θ=0度、操舵角φ>0度の状態を示し、図3(B)は車両角度θ>0度、操舵角φ=0度の状態を示しており、何れの場合も右折向き検出手段48Cによって操舵輪4が右折向きであることが検出される。なお、図示しないが、車両角度θ>0度、かつ、操舵角φ>0度の場合も右折向き検出手段48Cによって操舵輪4が右折向きであることが検出される。
【0019】
操舵輪向き検出手段48Dは、操舵輪4の向きが自車線の延在方向と交差した状態であることを検出するものである。言い換えると、操舵輪4の向きが自車線の境界線を示す白線Lwの延在方向と交差した状態であることを検出するものである。操舵輪4の向きが自車線の境界線を示す白線Lwの延在方向と交差した状態は以下のように2種類に分けられる。
1)操舵輪4の向きが自車線の境界線を示す白線Lwの延在方向に対して右方向に傾斜して交差する状態。具体的には、自車両2が自車線から右隣の車線に車線変更しようとする状態。
2)操舵輪4の向きが自車線の境界線を示す白線Lwの延在方向に対して左方向に傾斜して交差する状態。具体的には、自車両2が自車線から左隣の車線に車線変更しようとする状態、あるいは、自車両2が自車線から歩道を通過して駐車場などの施設に進入しようとする状態。
操舵輪向き検出手段48Dによる操舵輪4の向きが自車線の延在方向と交差した状態であることの検出は、例えば以下のようにしてなされる。右折向き検出手段48Cの場合と同様に、図4(A)、(B)、図5(A),(B)に示すように、前方カメラ3002で撮像された車両前方の画像情報を画像処理することにより、自車線の延在方向(すなわち自車線の白線Lw(その延長線を含む))と自車両2の中心を通り前後方向に延在する中心線CLとがなす角度を車両角度θとして検出する。操舵輪向き検出手段48Dは、車両角度θと、操舵角センサ34によって検出される操舵角φとの少なくとも一方の角度が0度よりも大、あるいは、小となることをもって操舵輪4の向きが自車線の延在方向と交差した状態であることを検出する。図4(A)は車両角度θ=0度、操舵角φ>0度の状態を示し、図4(B)は車両角度θ>0度、操舵角φ=0度の状態を示しており、何れの場合も操舵輪向き検出手段48Dによって操舵輪4の向きが自車線の延在方向に対して、右方向に向かって傾斜する方向で交差した状態であることが検出される。図5(A)は車両角度θ=0度、操舵角φ<0度の状態を示し、図5(B)は車両角度θ<0度、操舵角φ=0度の状態を示しており、何れの場合も操舵輪向き検出手段48Dによって操舵輪4の向きが自車線の延在方向に対して、左方向に向かって傾斜する方向で交差した状態であることが検出される。なお、図示しないが、車両角度θ>0度、かつ、操舵角φ>0度の場合、車両角度θ<0度、かつ、操舵角φ<0度の場合であっても、操舵輪向き検出手段48Dによって操舵輪4の向きが自車線の延在方向に対して、右方向あるいは左方向に向かって傾斜する方向で交差した状態であることが検出される。
【0020】
衝突予測手段48Eは、他車両の自車両2への衝突を予測するものである。衝突予測手段48Eによる他車両の自車両2への衝突の予測は、レーダセンサ32を用いて車間距離と相対速度とに基づいて行う方法と、カメラ30で撮像した画像情報に基づいて行う方法とが例示される。また、これら2つの方法の一方のみを使用しても、あるいは、2つの方法を組み合わせてもよい。
1)レーダセンサ32を用いる方法:
図9に示すように、後方レーダセンサ3204により自車両2と後続車両2Aとの間の車間距離d1が検出される。衝突予測手段48Eは、車間距離d1の時間変化から相対速度Vcを演算すると共に、車間距離d1および相対速度Vcに基づいて、自車両2と後続車両2Aとが衝突する可能性を判断することにより他車両としての後続車両2Aの自車両2への衝突を予測する。例えば、車間距離d1が一定値以下となったとき、或いは、相対速度Vcが一定値以上となったとき、更には、これらの組み合わせに基づいて他車両の自車両2への衝突を予測する。なお、前方レーダセンサ3202を用いて同様の処理を行うことにより、他車両としての先行車両の自車両2への衝突を予測することもできる。
上述の場合、理解を容易にするため前方レーダセンサ3202や後方レーダセンサ3204のみを使用する場合について説明したが、斜め衝突や側突も考えられるため、実際には側方レーダセンサ3206、3208からの情報も組み合わされ実質的に全方位に対応できるようになっている。
【0021】
2)画像情報に基づいて行う方法:
具体的には特開2005−306320号公報などに開示されているように画像情報から算出したオプティカルフローベクトルに基づいて接近物体を検出する方法を用いる。なお、本例では、カメラ30が前方カメラ3002であり、左右側方から自車両2の進行方向に接近する他車両を検出し、他車両の自車両2に対する衝突を予測する場合について例示する。図6に示すように、衝突予測手段48Eは、撮像画像のオプティカルフローベクトルを算出するオプティカルフロー算出部52と、オプティカルフロー算出部52で算出されたオプティカルフローベクトルに基づいて自車両への接近物体を検出する接近物体検出部52とを備えている。なお、以下の説明では、各オプティカルフローベクトルについては、単にフローベクトルと呼び、これらのフローベクトルの集合体については、オプティカルフローと呼ぶことにする。
【0022】
オプティカルフロー算出部52は、カメラ30(前方カメラ3002)が撮像した左右側方の各々の画像のオプティカルフローを個別に算出することができるようになっており、左側方の画像のオプティカルフローと、右側方の画像のオプティカルフローとを、それぞれ算出するようになっている。なお、オプティカルフローの算出については、前方カメラ3002が撮像した画像のうち連続する2枚の画像間において、同一の対象物に対応する点を特徴点として算出(演算処理によって検出)し、この特徴点の移動方向と移動距離とをフローベクトルとして算出する方法が用いられるようになっている。また、撮像した画像内の全領域においてフローベクトルが算出されて、画像内の移動物体の位置,移動方向等の情報を認識できるようになっている。
【0023】
接近物体検出部54は、オプティカルフロー算出部52で算出されたフローベクトルに基づいて、自車両2へ接近する物体を検出するようになっている。具体的には、左右側方の画像中において、自車両2の進行方向側への勾配を有するフローベクトルに基づいて、自車両2への接近物体を検出するようになっている。例えば、左側方の画像では、画像上で右方向のベクトル成分を有するフローベクトルを抽出し、一方、右側方の画像では、画像上で左方向のベクトル成分を有するフローベクトルを抽出する。そして、抽出されたフローベクトルが、自車両2に接近する接近物体(すなわち、フローベクトルを有する移動物体のうち、自車両2に接近する物体)によるフローベクトルであると判断し、接近物体を認識するようになっている。
【0024】
つまり、単にオプティカルフローを利用して移動物体を認識しただけでは、その移動物体が自車両2に接近しているかどうかを判断することが困難であるが、接近物体検出部54が、オプティカルフロー算出部52で認識された移動物体のうち、自車両2へ接近する物体のフローベクトルを、それが存在する領域とその方向とに基づいて抽出,選別して認識することで、自車両2に対して接近している、ひいては、自車両2にとって危険である可能性のある移動物体を認識する。また、自車両2の進行方向側へのベクトル成分を有するフローベクトルの大きさに着目すれば、そのフローベクトルが大きい場合には、たとえそのフローベクトルを発生させている接近物体が自車両2から離れた距離にあったとしても、高速で自車両2に接近していることになるため自車両2にとって危険である可能性が高く、一方、その移動物体がたとえ高速で自車両2に接近していなくても、自車両2にとって近い距離にあれば、その移動物体が危険である可能性が高いことに変わりはなく、この場合にも車両2の進行方向側へのベクトル成分を有するフローベクトルが大きくなる。
【0025】
したがって、車両2の進行方向側へのベクトル成分を有するフローベクトルの大きさが大きくなるほど、接近物体の車両2に対する危険度が上昇することになる。したがって、危険度がしきい値を超えたならば、言い換えると、前記のフローベクトルの大きさがしきい値を超えたならば、接近物体である他車両の自車両2への衝突を予測することができる。
衝突予測手段48Eは、このようにして自車両2に接近している移動物体を検出することで他車両の自車両2への衝突を予測する。なお、本例では、カメラ30が前方カメラ3002であり、自車両2の前方で左右側方から自車両2の進行方向に接近する他車両を検出し、他車両の自車両2に対する衝突を予測する場合について説明した。しかしながら、上記と同様の原理を用いれば、衝突予測手段48Eによって自車両2の全周における画像情報に基づいて、他車両の自車両2に対する衝突を予測することができる。この場合、衝突予測手段48Eは、前後左右のカメラ3002、3004、3006、3008によって自車両2の全周にわたって撮像した画像情報に基づいてフローベクトルを算出し、これら自車両2に接近する方向の成分を有するフローベクトルの大きさがしきい値を超えたならば、他車両の自車両2に対する衝突を予測すればよい。
【0026】
本実施の形態では、危険予測判定手段48による危険予測状態の判定は、以下に示す2つの方法でなされる。
1)停止検出手段48Aによる自車両2の停止の検出と、交差点検出手段48Bによる自車両2が交差点前あるいは交差点K内に位置していることの検出と、右折向き検出手段48Cによる操舵輪4の向きの検出とが全てなされたことをもって危険予測判定手段48は危険予測状態であると判定する。言い換えると、危険予測判定手段48は、自車両2が交差点K手前あるいは交差点K内で停車し、かつ、自車両2の操舵輪4が自車両2が右折する方向に操舵されているという条件が成立したことをもって危険予測状態であると判定する。
2)停止検出手段48Aによる自車両2の停止の検出と、操舵輪向き検出手段48Dによる操舵輪4の向きの検出と、衝突予測手段48Eによる衝突予測とのが全てなされたことをもって危険予測判定手段48は危険予測状態であると判定する。言い換えると、危険予測判定手段48は、自車両2の操舵輪4が自車線の延在方向と交差した状態で停車し、かつ、他車両の自車両への衝突が予測されるという条件が成立したことをもって危険予測状態であると判定する。
【0027】
強制操舵手段50は、車両角度算出手段56と、強制操舵角算出手段58とを含んで構成されている。車両角度算出手段56は、右折向き検出手段48Cの場合と同様の原理により、前方カメラ3002で撮像された車両前方の画像情報を画像処理することにより、自車線の延在方向(すなわち自車線の白線Lw(その延長線を含む))と自車両2の中心を通り前後方向に延在する中心線CLとがなす角度を車両角度θとして検出するものである。強制操舵角算出手段58は、車両角度算出手段56で算出された車両角度θと、操舵角センサ34で検出された操舵角φとに基づいて、自車両2の操舵輪4の向きを自車線の延在方向と平行する向きにするに足る強制操舵角αを算出するものである。したがって、強制操舵手段50による自車両2の操舵輪4の向きの強制的な変化は、強制操舵角αに基づいてなされる。すなわち、強制操舵手段50は、操舵輪4の向きが強制操舵角α分だけ変化するように、モータ制御手段22Bに指令を与え、これによりモータ制御手段22Bがパワーステアリングモータ18を駆動制御する。言い換えると、強制操舵手段50は、自車両2の操舵輪4の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させるに足る操舵トルク(モータ駆動電流値)をモータ制御手段22Bに供給する。
【0028】
次に、衝突軽減装置10の動作について図7のフローチャートを参照して説明する。まず、図7のフローチャートと図8を参照して第1の動作例について説明する。図8は、第1の動作例を示すものであり、自車両2が十字路をなす交差点Kの手前の右折レーンに停車し自車線の後方から後続車2Aが接近している状態を示す説明図である。本例では、自車両2の操舵輪4の向きは右折向きとなっている。衝突軽減ECU46は、停止検出手段48Aにより自車両2が停止状態にあるか否かを判定する(ステップS10)。本例では、ステップS10の判定結果が肯定となるため、交差点検出手段48Bにより自車両2が交差点Kの手前あるいは交差点K内に位置しているか否かを判定する(ステップS12)。本例では、ステップS12の判定結果が肯定となるため、右折向き検出手段48Cにより自車両2の操舵輪4の向きが右折向きであるか否かを判定する(ステップS14)。本例では、ステップS14の判定結果が肯定となり、したがって、危険予測判定手段48によって危険予測状態であると判定される。これにより、強制操舵手段50は、自車両2の操舵輪4の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させる(ステップS16)。したがって、第1の動作例の場合、自車線の後方から自車両2に接近する後続車両2Aが自車両2に衝突したとしても、自車両2は操舵輪4の向きが自車線と平行となるため、自車両2は対向車線へ押し出されることが回避される。そのため、対向車線を走行する対向車両2Cがあったとしても、自車両2が対向車両2Cと衝突することが回避される。なお、各ステップS10、S14,S18、S20の判定結果が否定となる場合にはステップS10に移行して同様の処理が実行される。このことは以下に示す第2、第3の動作例の場合も同様である。
【0029】
次に、図7のフローチャートと図9を参照して第2の動作例について説明する。図9は、第2の動作例を示すものであり、自車両2が片側2車線の左側の車線で停車し右側の車線に車線変更するために操舵輪4を右方向に向けており自車線の後方から後続車2Aが接近している状態を示す説明図である。衝突軽減ECU46は、停止検出手段48Aにより自車両2が停止状態にあるか否かを判定する(ステップS10)。本例では、ステップS10の判定結果が肯定となるため、交差点検出手段48Bにより自車両2が交差点Kの手前あるいは交差点K内に位置しているか否かを判定する(ステップS12)。本例では、ステップS12の判定結果が否定となるため、操舵輪向き検出手段48Dにより自車両2の操舵輪4の向きが自車線の延在方向と交差した状態であるか否かを判定する(ステップS18)。本例では、ステップS18の判定結果が肯定となるため、衝突予測手段48Eにより他車両の自車両2への衝突が予測されるか否かを判定する(ステップS20)。本例では、衝突予測手段48Eにより自車線の後方から自車両2に接近する後続車両2Aの自車両2への衝突が予測されると、危険予測判定手段48によって危険予測状態であると判定され、したがって、強制操舵手段50は、自車両2の操舵輪4の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させる(ステップS16)。したがって、第2の動作例の場合、自車線の後方から自車両2に接近する後続車両2Aが自車両2に衝突したとしても、自車両2は操舵輪4の向きが自車線と平行となるため、自車両2は自車線に隣接する車線へ押し出されることが回避される。そのため、隣接する車線の後方から前方に走行する他車両2Bがあったとしても、自車両2が他車両2Bと衝突することが回避される。
【0030】
次に、図7のフローチャートと図10を参照して第3の動作例について説明する。図10は、第3の動作例を示すものであり、自車両2が片側2車線の左側の車線で停車し左側の歩道6を横切って歩道6の左側に位置する駐車場Pに進入するために操舵輪を左方向に向けており自車線の後方から後続車2Aが接近している状態を示す説明図である。衝突軽減ECU46は、停止検出手段48Aにより自車両2が停止状態にあるか否かを判定する(ステップS10)。本例では、ステップS10の判定結果が肯定となるため、交差点検出手段48Bにより自車両2が交差点Kの手前あるいは交差点K内に位置しているか否かを判定する(ステップS12)。本例では、ステップS12の判定結果が否定となるため、操舵輪向き検出手段48Dにより自車両2の操舵輪4の向きが自車線の延在方向と交差した状態であるか否かを判定する(ステップS18)。本例では、ステップS18の判定結果が肯定となるため、衝突予測手段48Eにより他車両の自車両2への衝突が予測されるか否かを判定する(ステップS20)。本例では、衝突予測手段48Eにより自車線の後方から自車両2に接近する後続車両2Aの自車両2への衝突が予測されると、危険予測判定手段48によって危険予測状態であると判定され、したがって、強制操舵手段50は、自車両2の操舵輪4の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させる(ステップS16)。したがって、第3の動作例の場合、自車線の後方から自車両2に接近する後続車両2Aが自車両2に衝突したとしても、自車両2は操舵輪4の向きが自車線と平行となるため、自車両2は自車線に隣接する歩道6へ押し出されることが回避される。そのため、自車両2が歩道6を通行している歩行者や構造物に向かって押し出され、歩行者や構造物にぶつかることを回避できる。
【0031】
以上説明したように本実施の形態によれば、危険予測判定手段48により他車両が自車両2に衝突することで自車両2が自車線から対向車線あるいは自車線に隣接する車線あるいは歩道に向かって運転者の意図に反して進入する事態が予測される危険予測状態であると判定されると、強制操舵手段50により自車両2の操舵輪4の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させるようにした。したがって、他車両が自車両2に衝突しても、自車両2が対向車線あるいは隣接する車線あるいは歩道に進入することが抑制されるため、発生する被害を軽減する上で有利となる。また、他車両が自車両2に実際に衝突する前の時点で危険予測状態を判定するので、操舵輪4の向きを車線の延在方向と平行する向きに早期に変化させることができ、したがって、他車両が自車両2に衝突した場合に発生する被害を軽減する上でより一層有利となる。
【0032】
なお、本実施の形態では、後続車両2Aが後方から自車両2に衝突する場合について説明したが、実際には、他車両が前方から自車両2に衝突する場合、他車両が左右側方から自車両2に衝突する場合、あるいは、他車両が斜め前方、斜め後方から自車両2に衝突する場合がある。これらの場合、自車両2の操舵輪4の向きが自車線と交差する方向であると、他車両が自車両2に衝突することによって、自車両2が操舵輪4の向きに応じて自車線と交差する方向に大きく移動してしまうおそれがある。これに対して、本実施の形態のように、自車両2の操舵輪4の向きが自車線と平行であれば、他車両が自車両2に衝突したとしても、自車両2が自車線と交差する方向に移動することを最低限に抑制する上で有利となる。
【0033】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。図11は第2の実施の形態の衝突軽減ECU46の機能ブロック図、図12は第2の実施の形態の衝突軽減装置10の動作フローチャートである。なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分、部材には同一の符号を付してその説明を簡単にするか、あるいは、省略する。第1の実施の形態では、自車両2が停止している状況で危険予測判定手段48による危険予測状態の判定を行う場合について説明した。しかしながら、本発明は、自車両2が走行中である場合にも無論適用可能である。この場合は、例えば、交差点を右折して走行中、あるいは、隣接する車線への車線変更をするための走行中、あるいは、歩道を横切って走行中という状況下において、衝突予測手段48Eにより他車両の自車両2への衝突が予測された場合に、危険予測判定手段48が危険予測状態であると判定し、強制操舵手段50により自車両2の操舵輪4の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させる。
【0034】
以下、第2の実施の形態について説明する。図11に示すように、第1の実施の形態と同様に、衝突軽減ECU46は、危険予測手段48と、強制操舵手段50とを含んで構成されている。危険予測手段48は、走行検出手段48Fと、方向指示器信号検出手段48Gと、第1の実施の形態と同様の衝突予測手段48Eとを含んで構成されている。走行検出手段48Fは、車速センサ20から供給される車速情報に基づいて自車両2が走行中であることを検出するものである。方向指示器信号検出手段48Gは、方向指示器スイッチ44から供給される方向指示器信号を検出することで方向指示器が左方向にあるいは右方向に動作していることを検出するものである。危険予測判定手段48による危険予測状態の判定は、以下に示す方法でなされる。走行検出手段48Fによる自車両2の走行の検出と、方向指示器信号検出手段48Gによる方向指示器の動作の検出と、衝突予測手段48Eによる衝突予測との全てがなされたことをもって危険予測判定手段48は危険予測状態であると判定する。言い換えると、危険予測判定手段48は、自車両2が走行し、かつ、方向指示器が動作し、かつ、他車両の自車両2への衝突が予測されるという条件が成立したことをもって危険予測状態であると判定する。
【0035】
次に、衝突軽減装置10の動作について図12のフローチャートを参照して説明する。
衝突軽減ECU46は、走行検出手段48Fにより自車両2が走行状態にあるか否かを判定する(ステップS30)。ステップS30の判定結果が肯定であれば、方向指示器検出手段48Gにより方向指示器が動作しているか否かを判定する(ステップS32)。ステップS32の判定結果が肯定であれば、衝突予測手段48Eにより他車両の自車両2への衝突が予測されるか否かを判定する(ステップS34)。ステップS34の判定結果が肯定であれば、危険予測判定手段48によって危険予測状態であると判定され、したがって、強制操舵手段50は、自車両2の操舵輪4の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させる(ステップS36)。なお、各ステップS30、S32,S34の判定結果が否定となる場合にはステップS30に移行して同様の処理が実行される。
【0036】
以下、図8、図9、図10を流用して説明する。図8に示すように、自車両2が右折するために走行している場合、自車線の後方から自車両2に接近する後続車両2Aが自車両2に衝突したとしても、自車両2は操舵輪4の向きが自車線と平行となるため、自車両2は対向車線へ押し出されることが回避される。そのため、対向車線を走行する対向車両2Cがあったとしても、自車両2が対向車両2Cと衝突することが回避される。図9に示すように、自車両2が右側の車線に車線変更するために走行している場合、自車線の後方から自車両2に接近する後続車両2Aが自車両2に衝突したとしても、自車両2は操舵輪4の向きが自車線と平行となるため、自車両2は自車線に隣接する車線へ押し出されることが回避される。そのため、隣接する車線の後方から前方に走行する他車両2Bがあったとしても、自車両2が他車両2Bと衝突することが回避される。図10に示すように、自車両2が歩道6を横切るために走行している場合、自車線の後方から自車両2に接近する後続車両2Aが自車両2に衝突したとしても、自車両2は操舵輪4の向きが自車線と平行となるため、自車両2は自車線に隣接する歩道6へ押し出されることが回避される。そのため、自車両2が歩道6を通行している歩行者や構造物に向かって押し出され、歩行者や構造物にぶつかることを回避できる。
【0037】
以上説明したように第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、他車両が走行中の自車両2に衝突しても、自車両2が対向車線あるいは隣接する車線あるいは歩道に進入することが抑制されるため、発生する被害を軽減する上で有利となる。また、他車両が走行中の自車両2に実際に衝突する前の時点で危険予測状態を判定するので、操舵輪4の向きを車線の延在方向と平行する向きに早期に変化させることができ、したがって、他車両が自車両2に衝突した場合に発生する被害を軽減する上でより一層有利となる。
【0038】
なお、第1、第2の実施の形態では、危険予測判定手段48により危険予測状態が判定された場合に、強制操舵手段50により操舵輪4の向きを強制的に変化させる場合について説明した。しかしながら、自車両2に対する他車両の衝突が生じたか否かを判定する衝突判定手段をさらに設け、衝突判定手段によって自車両2に対する他車両の衝突が検出されたならば、強制操舵手段50により操舵輪4の向きを車線の延在方向と平行する向きに変化させてもよい。前記の衝突判定手段は、加速度センサ40によって予め定められた値を超える衝撃が検出された場合に他車両の衝突を判定するか、あるいは、エアバック装置26とシートベルト装置28との何れかが動作した場合に他車両の衝突を判定すればよい。このようにすると、万一、何らかの異常により危険予測判定手段48による危険予測判定が正常に実行されなかった場合であっても、自車両2が対向車線あるいは隣接する車線あるいは歩道に進入することが抑制されるため、発生する被害を軽減する上で有利となり、衝突軽減装置10の信頼性を高める上でより一層有利となる。危険予測判定手段48による危険予測判定が正常に実行されない原因としては、例えば、カメラ30、レーダセンサ32、ナビゲーション装置42、方向指示器スイッチ44などの誤動作や故障が想定される。
【符号の説明】
【0039】
2……自車両、4……操舵輪、10……衝突軽減装置、48……危険予測手段、48A……停止検出手段、48B……交差点検出手段、48C……右折向き検出手段、48D……操舵輪向き検出手段、48E……衝突予測手段、48F……走行検出手段、48G……方向指示器検出手段、50……強制操舵手段、56……車両角度算出手段、58……強制操舵角算出手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は他車両が自車両に衝突した場合における被害を軽減する衝突軽減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自車両の走行状態や周囲の交通状況等に基づいて自車両の衝突可能性を予測し、衝突が不可避であると判断すると、自車両の制動装置を作動させて減速させたり、シートベルトを巻き上げて衝突時の衝撃に備えるようにしたプリクラッシュセーフティシステムが提案されている(特許文献1、2参照)。これらのプリクラッシュセーフティシステムでは、運転者が衝突前にブレーキを踏んだり、あるいは、ステアリングを操作するなどの衝突回避を的確に行えない場合があることを考慮して、早期に制動装置やシートベルトを作動させたり、あるいは、運転者の筋肉を刺激することで素早く耐ショック姿勢をとらせるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−74302号公報
【特許文献2】特開2010−76593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自車両が交差点前でステアリングを右方向に切った状態で右折待ちしているような状況、あるいは、隣接する車線に車線変更しようとしてステアリングを左あるいは右に切った状況を考える。このような状況下で後方から他車両が追突すると、自車両がステアリングを切った方向に押し出され、別の他車両に対して衝突する可能性がある。上記従来技術によれば、このような状況下において衝突が発生した場合の被害を軽減する上で一定の効果があるものの、自車両が別の他車両と衝突する可能性のある方向に進行してしまうことを抑制する上でさらに改善の余地がある。本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、他車両が自車両に衝突した場合に発生する被害を軽減する上で有利な衝突軽減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の衝突軽減装置は、他車両が自車両に衝突することで前記自車両が該自車両の位置している自車線から対向車線あるいは前記自車線に隣接する車線あるいは歩道に向かって運転者の意図に反して進入する事態が予測される危険予測状態であるか否かを判定する危険予測判定手段と、前記危険予測状態であると判定された場合に、前記自車両の操舵輪の向きを前記自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させる強制操舵手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、他車両が自車両に衝突しても、自車両が対向車線あるいは隣接する車線あるいは歩道に進入することが抑制されるため、発生する被害を軽減する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施の形態に係る衝突軽減装置10が設けられた車両の制御系の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態における衝突軽減ECU46の機能ブロック図である。
【図3】(A)、(B)は自車線の延在方向と自車両2の中心を通り前後方向に延在する中心線CLとがなす車両角度θの検出方法の一例を示す説明図である。
【図4】(A)、(B)は自車線の延在方向と自車両2の中心を通り前後方向に延在する中心線CLとがなす車両角度θの検出方法の他の例を示す説明図である。
【図5】(A)、(B)は自車線の延在方向と自車両2の中心を通り前後方向に延在する中心線CLとがなす車両角度θの検出方法のさらに他の例を示す説明図である。
【図6】衝突予測手段48Eの構成を示す機能ブロック図である。
【図7】第1の実施の形態における衝突軽減装置10の動作フローチャートである。
【図8】第1の動作例における自車両2の位置関係を示す説明図である。
【図9】第2の動作例における自車両2の位置関係を示す説明図である。
【図10】第3の動作例における自車両2の位置関係を示す説明図である。
【図11】第2の実施の形態における衝突軽減ECU46の機能ブロック図である。
【図12】第2の実施の形態における衝突軽減装置10の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態の衝突軽減装置10について図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施の形態の衝突軽減装置10は、パワーステアリング装置12を備える車両に設けられている。本実施の形態では、パワーステアリング装置12は、操舵系14と、操舵トルクセンサ16と、パワーステアリングモータ18と、車速センサ20と、パワーステアリングECU22とを含んで構成されている。
【0009】
操舵系14は、車両を操舵する際に操作されるステアリングホイール1402と、ステアリングホイール1402に連結されたステアリングシャフト1404と、ステアリングシャフト1404の回転に基づいて操舵輪を操舵する操舵機構1406などを含んで構成されている。操舵トルクセンサ16は、操舵機構1406に設けられ、運転者によるステアリングホイール1402の操作によりステアリングシャフト1404に加えられた操舵トルクを検出するものである。パワーステアリングモータ18は、操舵機構1406に操舵補助トルクを付与するアクチュエータである。車速センサ20は、自車両の走行速度を検出するものである。
【0010】
パワーステアリングECU22は、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されており、前記制御プログラムを実行することにより動作する。パワーステアリングECU22は、前記CPUが動作することにより、操舵補助トルク決定手段22Aと、モータ制御手段22Bとを実現する。操舵補助トルク決定手段22Aは、操舵トルクセンサ16によって検出された操舵トルクと、車速センサ20によって検出された車速とに基づいて、操舵機構1406に付与すべき操舵補助トルクを決定するものである。モータ制御手段22Bは、操舵補助トルク決定手段22Aによって決定された操舵補助トルクが操舵補助トルク操舵機構1406に付与されるようにパワーステアリングモータ18を駆動制御するものである。具体的には、操舵トルクおよび操舵補助トルク(モータ駆動電流値)の関係を示すアシストマップが予め定められており、このアシストマップは、例えば、パワーステアリングECU22のROMなどに格納されている。そして、操舵補助トルク決定手段22Aによる操舵補助トルクの決定は、操舵トルクセンサ16によって検出された操舵トルクに対応する操舵補助トルク(モータ駆動電流値)をアシストマップから特定することによってなされる。また、モータ制御手段22Bによるパワーステアリングモータ18の駆動制御は、前記のアシストマップから決定された操舵補助トルク(モータ駆動電流値)に基づいてなされる。すなわち、パワーステアリング装置12は、運転者によるステアリングホイール1402の操作に基づいて操舵補助トルクを操舵系14に付与するものである。また、モータ制御手段22Bは、後述する衝突軽減ECU46の強制操舵手段50の制御に基づいてパワーステアリングモータ18を駆動制御するものである。
【0011】
また、車両には、衝突時における乗員の保護を図る安全装置として、自動ブレーキ装置24と、エアバック装置26と、シートベルト装置28とが設けられている。自動ブレーキ装置24は、ブレーキECU24Aによって制御され、例えば後述する前方レーダセンサ3202によって検出される前方車両との車間距離がしきい値を下回ったときに(衝突が予測されるときに)自動的に車両に制動をかけるものである。エアバック装置26は、エアバックECU26Aによって制御され、例えば後述する加速度センサ40によってしきい値を超える衝撃が検出されるときに(衝突が検出されるときに)エアバックを自動的に展開することで乗員を保護するものである。シートベルト装置28は、シートベルトECU28Aによって制御され、例えば後述する加速度センサ40によってしきい値を超える衝撃が検出されるときに(衝突が検出されるときに)シートベルトを巻き取ることで乗員を保護するものである。なお、各ECUは、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されており、前記制御プログラムを実行することにより動作する。
【0012】
次に、衝突軽減装置10について説明する。図1に示すように、衝突軽減装置10は、複数のカメラ30と、複数のレーダセンサ32と、操舵角センサ34と、ブレーキペダルスイッチ36と、アクセルペダルスイッチ38と、加速度センサ40と、ナビゲーション装置42と、方向指示器スイッチ44と、衝突軽減ECU46とを含んで構成されている。また、衝突軽減ECU46、前記のパワーステアリングECU22、ブレーキECU24A、エアバックECU26B、シートベルトECU28B、複数のカメラ30、複数のレーダセンサ32、操舵角センサ34、ブレーキペダルスイッチ36、アクセルペダルスイッチ38、加速度センサ40、ナビゲーション装置42、方向指示器スイッチ44は、それぞれCAN(Controller Area Network)バス46などの従来公知のバスを介して情報、データの授受を行う。
【0013】
本実施の形態では、複数のカメラ30は、前方カメラ3002、後方カメラ3004、左方カメラ3006、右方カメラ3008の4つのカメラで構成され、4つのカメラは車両に設けられている。前方カメラ3002は、車両の前方を撮像することにより、画像情報を生成するものである。したがって、画像情報には、道路の走行車線(走行レーン)を区分する左右の境界線としての白線(レーンマーカー)が含まれる。後方カメラ3004は、車両の後方を撮像することにより、画像情報を生成するものである。したがって、画像情報には、道路の走行車線(走行レーン)を区分する左右の境界線としての白線が含まれる。左方カメラ3006、右方カメラ3008は、車両の左側方、右側方をそれぞれ撮像することにより、画像情報を生成するものである。
【0014】
本実施の形態では、複数のレーダセンサ32は、前方レーダセンサ3202、後方レーダセンサ3004、左右の側方レーダセンサ3206、3208の4つのミリ波レーダセンサで構成され、4つのレーダセンサは車両に設けられている。前方レーダセンサ3202は、車両前方の先行車両を捕捉し自車両と先行車両との車間距離を検出する。後方レーダセンサ3204は、車両後方の後続車両を捕捉し自車両と後続車両との車間距離を検出する。左右の側方レーダセンサ3206、3208は側方において周囲の車両との距離を検出する。操舵角センサ34は、操舵系14に設けられ、ステアリングホイール1402の回転角度であるハンドル角(操舵角)を検出するものであり、言い換えると、車両の操舵輪の向きを検出するものである。ブレーキペダルスイッチ36は、ブレーキペダルが操作されているか否かを検出するものである。アクセルペダルスイッチ38は、アクセルペダルが操作されているか否かを検出するものである。加速度センサ40は、車両に設けられ、車両に発生する加速度を検出することにより、車両に加えられた衝撃を検出するものである。
【0015】
ナビゲーション装置42は、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)を構成するGPS衛星から送信される測位用電波を受信し、受信した測位用電波を基に、車両の位置を検出し、当該位置を示す測位情報を生成する。また、検出した測位情報に対応する地図情報をデータベースから読み出してディスプレイ上に表示する。また、測位情報と地図情報とに基づいて、指定した目的地への道路案内を行うナビゲーション機能を有している。したがって、ナビゲーション装置42は、例えば、自車両が交差点の手前あるいは交差点内に位置している場合、次のような状況であることを判定できる。
1)自車両が交差点手前あるいは交差点内に位置している。
2)自車両が交差点の右折レーンに位置している。
なお、ナビゲーション装置42に代えて、路車間通信用の受信機を設け、この受信機によって受信される路車間通信情報に含まれる交差点の情報に基づいて自車両が交差点の手前あるいは交差点内に位置していることを判定することも可能である。方向指示器スイッチ44は、右左折や進路変更の際に、その方向を周囲に表示する方向指示器を操作するスイッチであり、左および右に対応した方向指示器信号を生成する。
【0016】
衝突軽減ECU46は、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されており、前記制御プログラムを実行することにより動作する。衝突軽減ECU46は、前記CPUが動作することにより、図2に示すように、危険予測判定手段48と、強制操舵手段50とを実現する。危険予測判定手段48は、他車両が自車両に衝突することで自車両が該自車両の位置している自車線から対向車線あるいは自車線に隣接する車線あるいは歩道に向かって運転者の意図に反して進入する事態が予測される危険予測状態であるか否かを判定するものである。また、強制操舵手段50は、危険予測判定手段48によって危険予測状態であると判定された場合に、自車両の操舵輪の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させるものである。
【0017】
危険予測判定手段48について詳細に説明する。危険予測判定手段48は、停止検出手段48Aと、交差点検出手段48Bと、右折向き検出手段48Cと、操舵輪向き検出手段48Dと、衝突予測手段48Eとを含んで構成されている。停止検出手段48Aは、自車両が停止状態にあることを検出するものである。停止検出手段48Aによる自車両の停止状態の検出は、例えば以下のようにしてなされる。すなわち、ブレーキペダルスイッチ36によってブレーキペダルの操作状態が検出され、かつ、アクセルペダルスイッチ38によってアクセルペダルの非操作状態が検出されること。交差点検出手段48Bは、図8に示すように、自車両2が交差点Kの手前あるいは交差点K内に位置していることを検出するものである。なお、図中、符号4は自車両2の操舵輪を示し、符号Mは右折レーンを示す矢印マークを示す。また、符号Lw0は中央線を示す実線の白線、符号Lw1は車線境界線を示す実線の白線、符号Lw2は車線境界線を示す破線の白線である。以下では、これら白線Lw0,Lw1,Lw2をまとめて示す場合には単に白線Lwと示す。交差点検出手段48Bによる交差点Kの手前あるいは交差点K内の検出は、例えば以下のようにしてなされる。
1)ナビゲーション装置42によって自車両2の位置が交差点Kの手前あるいは交差点K内であることが検出されること。
2)ナビゲーション装置42によって自車両2の位置が右折レーンに該当していることが検出されること。
3)前方カメラ3002で撮像された車両前方の画像情報を画像処理することにより、右折レーンの矢印マークなどが検出されること。この場合、交差点検出手段48Bは、画像処理を行う従来公知のソフトウェアによって構成される。
【0018】
右折向き検出手段48Cは、操舵輪4の向きが右折を行うために必要な向きとなっていることを検出するものである。右折向き検出手段48Cによる操舵輪4が右折向きであることの検出は、例えば以下のようにしてなされる。図3(A)、(B)に示すように、前方カメラ3002で撮像された車両前方の画像情報を画像処理することにより、自車線の延在方向(すなわち自車線の白線Lw(その延長線を含む))と自車両2の中心を通り前後方向に延在する中心線CLとがなす角度を車両角度θとして検出する。なお、白線を含む画像情報から白線を検出するなどの画像処理を行う方法としては、例えば、特開2003−40036号公報、特開2003−179915号公報などに記載されているように、撮像された画像情報(画面)を横走査したときに輝度変化の大きい点を候補点として、候補点群を直線式に当てはめる方法、Hough変換によって直線を検出する方法など従来公知のさまざまな方法が使用可能である。右折向き検出手段48Cは、車両角度θと、操舵角センサ34によって検出される操舵角φとの少なくとも一方の角度が右折する方向に対応する角度であることをもって操舵輪4の向きが右折を行うために必要な向きとなっていることを検出する。本例では、中心線CLと白線Lwとが平行した状態での車両角度θを0度とし、図3(B)に示すように中心線CLが白線Lwに対して右折する方向に傾斜して交差する場合の車両角度θが正の値をとり、中心線CLが白線Lwに対して左折する方向に傾斜して交差する場合の車両角度θが負の値をとるものとする。また、ステアリングホイール1402の中立位置で操舵角φ=0度、ステアリングホイール1402(図1)を中立位置よりも右に切ると操舵角φが正の値をとり、ステアリングホイール1402を中立位置よりも左に切ると操舵角φが負の値をとるものとする。図3(A)は車両角度θ=0度、操舵角φ>0度の状態を示し、図3(B)は車両角度θ>0度、操舵角φ=0度の状態を示しており、何れの場合も右折向き検出手段48Cによって操舵輪4が右折向きであることが検出される。なお、図示しないが、車両角度θ>0度、かつ、操舵角φ>0度の場合も右折向き検出手段48Cによって操舵輪4が右折向きであることが検出される。
【0019】
操舵輪向き検出手段48Dは、操舵輪4の向きが自車線の延在方向と交差した状態であることを検出するものである。言い換えると、操舵輪4の向きが自車線の境界線を示す白線Lwの延在方向と交差した状態であることを検出するものである。操舵輪4の向きが自車線の境界線を示す白線Lwの延在方向と交差した状態は以下のように2種類に分けられる。
1)操舵輪4の向きが自車線の境界線を示す白線Lwの延在方向に対して右方向に傾斜して交差する状態。具体的には、自車両2が自車線から右隣の車線に車線変更しようとする状態。
2)操舵輪4の向きが自車線の境界線を示す白線Lwの延在方向に対して左方向に傾斜して交差する状態。具体的には、自車両2が自車線から左隣の車線に車線変更しようとする状態、あるいは、自車両2が自車線から歩道を通過して駐車場などの施設に進入しようとする状態。
操舵輪向き検出手段48Dによる操舵輪4の向きが自車線の延在方向と交差した状態であることの検出は、例えば以下のようにしてなされる。右折向き検出手段48Cの場合と同様に、図4(A)、(B)、図5(A),(B)に示すように、前方カメラ3002で撮像された車両前方の画像情報を画像処理することにより、自車線の延在方向(すなわち自車線の白線Lw(その延長線を含む))と自車両2の中心を通り前後方向に延在する中心線CLとがなす角度を車両角度θとして検出する。操舵輪向き検出手段48Dは、車両角度θと、操舵角センサ34によって検出される操舵角φとの少なくとも一方の角度が0度よりも大、あるいは、小となることをもって操舵輪4の向きが自車線の延在方向と交差した状態であることを検出する。図4(A)は車両角度θ=0度、操舵角φ>0度の状態を示し、図4(B)は車両角度θ>0度、操舵角φ=0度の状態を示しており、何れの場合も操舵輪向き検出手段48Dによって操舵輪4の向きが自車線の延在方向に対して、右方向に向かって傾斜する方向で交差した状態であることが検出される。図5(A)は車両角度θ=0度、操舵角φ<0度の状態を示し、図5(B)は車両角度θ<0度、操舵角φ=0度の状態を示しており、何れの場合も操舵輪向き検出手段48Dによって操舵輪4の向きが自車線の延在方向に対して、左方向に向かって傾斜する方向で交差した状態であることが検出される。なお、図示しないが、車両角度θ>0度、かつ、操舵角φ>0度の場合、車両角度θ<0度、かつ、操舵角φ<0度の場合であっても、操舵輪向き検出手段48Dによって操舵輪4の向きが自車線の延在方向に対して、右方向あるいは左方向に向かって傾斜する方向で交差した状態であることが検出される。
【0020】
衝突予測手段48Eは、他車両の自車両2への衝突を予測するものである。衝突予測手段48Eによる他車両の自車両2への衝突の予測は、レーダセンサ32を用いて車間距離と相対速度とに基づいて行う方法と、カメラ30で撮像した画像情報に基づいて行う方法とが例示される。また、これら2つの方法の一方のみを使用しても、あるいは、2つの方法を組み合わせてもよい。
1)レーダセンサ32を用いる方法:
図9に示すように、後方レーダセンサ3204により自車両2と後続車両2Aとの間の車間距離d1が検出される。衝突予測手段48Eは、車間距離d1の時間変化から相対速度Vcを演算すると共に、車間距離d1および相対速度Vcに基づいて、自車両2と後続車両2Aとが衝突する可能性を判断することにより他車両としての後続車両2Aの自車両2への衝突を予測する。例えば、車間距離d1が一定値以下となったとき、或いは、相対速度Vcが一定値以上となったとき、更には、これらの組み合わせに基づいて他車両の自車両2への衝突を予測する。なお、前方レーダセンサ3202を用いて同様の処理を行うことにより、他車両としての先行車両の自車両2への衝突を予測することもできる。
上述の場合、理解を容易にするため前方レーダセンサ3202や後方レーダセンサ3204のみを使用する場合について説明したが、斜め衝突や側突も考えられるため、実際には側方レーダセンサ3206、3208からの情報も組み合わされ実質的に全方位に対応できるようになっている。
【0021】
2)画像情報に基づいて行う方法:
具体的には特開2005−306320号公報などに開示されているように画像情報から算出したオプティカルフローベクトルに基づいて接近物体を検出する方法を用いる。なお、本例では、カメラ30が前方カメラ3002であり、左右側方から自車両2の進行方向に接近する他車両を検出し、他車両の自車両2に対する衝突を予測する場合について例示する。図6に示すように、衝突予測手段48Eは、撮像画像のオプティカルフローベクトルを算出するオプティカルフロー算出部52と、オプティカルフロー算出部52で算出されたオプティカルフローベクトルに基づいて自車両への接近物体を検出する接近物体検出部52とを備えている。なお、以下の説明では、各オプティカルフローベクトルについては、単にフローベクトルと呼び、これらのフローベクトルの集合体については、オプティカルフローと呼ぶことにする。
【0022】
オプティカルフロー算出部52は、カメラ30(前方カメラ3002)が撮像した左右側方の各々の画像のオプティカルフローを個別に算出することができるようになっており、左側方の画像のオプティカルフローと、右側方の画像のオプティカルフローとを、それぞれ算出するようになっている。なお、オプティカルフローの算出については、前方カメラ3002が撮像した画像のうち連続する2枚の画像間において、同一の対象物に対応する点を特徴点として算出(演算処理によって検出)し、この特徴点の移動方向と移動距離とをフローベクトルとして算出する方法が用いられるようになっている。また、撮像した画像内の全領域においてフローベクトルが算出されて、画像内の移動物体の位置,移動方向等の情報を認識できるようになっている。
【0023】
接近物体検出部54は、オプティカルフロー算出部52で算出されたフローベクトルに基づいて、自車両2へ接近する物体を検出するようになっている。具体的には、左右側方の画像中において、自車両2の進行方向側への勾配を有するフローベクトルに基づいて、自車両2への接近物体を検出するようになっている。例えば、左側方の画像では、画像上で右方向のベクトル成分を有するフローベクトルを抽出し、一方、右側方の画像では、画像上で左方向のベクトル成分を有するフローベクトルを抽出する。そして、抽出されたフローベクトルが、自車両2に接近する接近物体(すなわち、フローベクトルを有する移動物体のうち、自車両2に接近する物体)によるフローベクトルであると判断し、接近物体を認識するようになっている。
【0024】
つまり、単にオプティカルフローを利用して移動物体を認識しただけでは、その移動物体が自車両2に接近しているかどうかを判断することが困難であるが、接近物体検出部54が、オプティカルフロー算出部52で認識された移動物体のうち、自車両2へ接近する物体のフローベクトルを、それが存在する領域とその方向とに基づいて抽出,選別して認識することで、自車両2に対して接近している、ひいては、自車両2にとって危険である可能性のある移動物体を認識する。また、自車両2の進行方向側へのベクトル成分を有するフローベクトルの大きさに着目すれば、そのフローベクトルが大きい場合には、たとえそのフローベクトルを発生させている接近物体が自車両2から離れた距離にあったとしても、高速で自車両2に接近していることになるため自車両2にとって危険である可能性が高く、一方、その移動物体がたとえ高速で自車両2に接近していなくても、自車両2にとって近い距離にあれば、その移動物体が危険である可能性が高いことに変わりはなく、この場合にも車両2の進行方向側へのベクトル成分を有するフローベクトルが大きくなる。
【0025】
したがって、車両2の進行方向側へのベクトル成分を有するフローベクトルの大きさが大きくなるほど、接近物体の車両2に対する危険度が上昇することになる。したがって、危険度がしきい値を超えたならば、言い換えると、前記のフローベクトルの大きさがしきい値を超えたならば、接近物体である他車両の自車両2への衝突を予測することができる。
衝突予測手段48Eは、このようにして自車両2に接近している移動物体を検出することで他車両の自車両2への衝突を予測する。なお、本例では、カメラ30が前方カメラ3002であり、自車両2の前方で左右側方から自車両2の進行方向に接近する他車両を検出し、他車両の自車両2に対する衝突を予測する場合について説明した。しかしながら、上記と同様の原理を用いれば、衝突予測手段48Eによって自車両2の全周における画像情報に基づいて、他車両の自車両2に対する衝突を予測することができる。この場合、衝突予測手段48Eは、前後左右のカメラ3002、3004、3006、3008によって自車両2の全周にわたって撮像した画像情報に基づいてフローベクトルを算出し、これら自車両2に接近する方向の成分を有するフローベクトルの大きさがしきい値を超えたならば、他車両の自車両2に対する衝突を予測すればよい。
【0026】
本実施の形態では、危険予測判定手段48による危険予測状態の判定は、以下に示す2つの方法でなされる。
1)停止検出手段48Aによる自車両2の停止の検出と、交差点検出手段48Bによる自車両2が交差点前あるいは交差点K内に位置していることの検出と、右折向き検出手段48Cによる操舵輪4の向きの検出とが全てなされたことをもって危険予測判定手段48は危険予測状態であると判定する。言い換えると、危険予測判定手段48は、自車両2が交差点K手前あるいは交差点K内で停車し、かつ、自車両2の操舵輪4が自車両2が右折する方向に操舵されているという条件が成立したことをもって危険予測状態であると判定する。
2)停止検出手段48Aによる自車両2の停止の検出と、操舵輪向き検出手段48Dによる操舵輪4の向きの検出と、衝突予測手段48Eによる衝突予測とのが全てなされたことをもって危険予測判定手段48は危険予測状態であると判定する。言い換えると、危険予測判定手段48は、自車両2の操舵輪4が自車線の延在方向と交差した状態で停車し、かつ、他車両の自車両への衝突が予測されるという条件が成立したことをもって危険予測状態であると判定する。
【0027】
強制操舵手段50は、車両角度算出手段56と、強制操舵角算出手段58とを含んで構成されている。車両角度算出手段56は、右折向き検出手段48Cの場合と同様の原理により、前方カメラ3002で撮像された車両前方の画像情報を画像処理することにより、自車線の延在方向(すなわち自車線の白線Lw(その延長線を含む))と自車両2の中心を通り前後方向に延在する中心線CLとがなす角度を車両角度θとして検出するものである。強制操舵角算出手段58は、車両角度算出手段56で算出された車両角度θと、操舵角センサ34で検出された操舵角φとに基づいて、自車両2の操舵輪4の向きを自車線の延在方向と平行する向きにするに足る強制操舵角αを算出するものである。したがって、強制操舵手段50による自車両2の操舵輪4の向きの強制的な変化は、強制操舵角αに基づいてなされる。すなわち、強制操舵手段50は、操舵輪4の向きが強制操舵角α分だけ変化するように、モータ制御手段22Bに指令を与え、これによりモータ制御手段22Bがパワーステアリングモータ18を駆動制御する。言い換えると、強制操舵手段50は、自車両2の操舵輪4の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させるに足る操舵トルク(モータ駆動電流値)をモータ制御手段22Bに供給する。
【0028】
次に、衝突軽減装置10の動作について図7のフローチャートを参照して説明する。まず、図7のフローチャートと図8を参照して第1の動作例について説明する。図8は、第1の動作例を示すものであり、自車両2が十字路をなす交差点Kの手前の右折レーンに停車し自車線の後方から後続車2Aが接近している状態を示す説明図である。本例では、自車両2の操舵輪4の向きは右折向きとなっている。衝突軽減ECU46は、停止検出手段48Aにより自車両2が停止状態にあるか否かを判定する(ステップS10)。本例では、ステップS10の判定結果が肯定となるため、交差点検出手段48Bにより自車両2が交差点Kの手前あるいは交差点K内に位置しているか否かを判定する(ステップS12)。本例では、ステップS12の判定結果が肯定となるため、右折向き検出手段48Cにより自車両2の操舵輪4の向きが右折向きであるか否かを判定する(ステップS14)。本例では、ステップS14の判定結果が肯定となり、したがって、危険予測判定手段48によって危険予測状態であると判定される。これにより、強制操舵手段50は、自車両2の操舵輪4の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させる(ステップS16)。したがって、第1の動作例の場合、自車線の後方から自車両2に接近する後続車両2Aが自車両2に衝突したとしても、自車両2は操舵輪4の向きが自車線と平行となるため、自車両2は対向車線へ押し出されることが回避される。そのため、対向車線を走行する対向車両2Cがあったとしても、自車両2が対向車両2Cと衝突することが回避される。なお、各ステップS10、S14,S18、S20の判定結果が否定となる場合にはステップS10に移行して同様の処理が実行される。このことは以下に示す第2、第3の動作例の場合も同様である。
【0029】
次に、図7のフローチャートと図9を参照して第2の動作例について説明する。図9は、第2の動作例を示すものであり、自車両2が片側2車線の左側の車線で停車し右側の車線に車線変更するために操舵輪4を右方向に向けており自車線の後方から後続車2Aが接近している状態を示す説明図である。衝突軽減ECU46は、停止検出手段48Aにより自車両2が停止状態にあるか否かを判定する(ステップS10)。本例では、ステップS10の判定結果が肯定となるため、交差点検出手段48Bにより自車両2が交差点Kの手前あるいは交差点K内に位置しているか否かを判定する(ステップS12)。本例では、ステップS12の判定結果が否定となるため、操舵輪向き検出手段48Dにより自車両2の操舵輪4の向きが自車線の延在方向と交差した状態であるか否かを判定する(ステップS18)。本例では、ステップS18の判定結果が肯定となるため、衝突予測手段48Eにより他車両の自車両2への衝突が予測されるか否かを判定する(ステップS20)。本例では、衝突予測手段48Eにより自車線の後方から自車両2に接近する後続車両2Aの自車両2への衝突が予測されると、危険予測判定手段48によって危険予測状態であると判定され、したがって、強制操舵手段50は、自車両2の操舵輪4の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させる(ステップS16)。したがって、第2の動作例の場合、自車線の後方から自車両2に接近する後続車両2Aが自車両2に衝突したとしても、自車両2は操舵輪4の向きが自車線と平行となるため、自車両2は自車線に隣接する車線へ押し出されることが回避される。そのため、隣接する車線の後方から前方に走行する他車両2Bがあったとしても、自車両2が他車両2Bと衝突することが回避される。
【0030】
次に、図7のフローチャートと図10を参照して第3の動作例について説明する。図10は、第3の動作例を示すものであり、自車両2が片側2車線の左側の車線で停車し左側の歩道6を横切って歩道6の左側に位置する駐車場Pに進入するために操舵輪を左方向に向けており自車線の後方から後続車2Aが接近している状態を示す説明図である。衝突軽減ECU46は、停止検出手段48Aにより自車両2が停止状態にあるか否かを判定する(ステップS10)。本例では、ステップS10の判定結果が肯定となるため、交差点検出手段48Bにより自車両2が交差点Kの手前あるいは交差点K内に位置しているか否かを判定する(ステップS12)。本例では、ステップS12の判定結果が否定となるため、操舵輪向き検出手段48Dにより自車両2の操舵輪4の向きが自車線の延在方向と交差した状態であるか否かを判定する(ステップS18)。本例では、ステップS18の判定結果が肯定となるため、衝突予測手段48Eにより他車両の自車両2への衝突が予測されるか否かを判定する(ステップS20)。本例では、衝突予測手段48Eにより自車線の後方から自車両2に接近する後続車両2Aの自車両2への衝突が予測されると、危険予測判定手段48によって危険予測状態であると判定され、したがって、強制操舵手段50は、自車両2の操舵輪4の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させる(ステップS16)。したがって、第3の動作例の場合、自車線の後方から自車両2に接近する後続車両2Aが自車両2に衝突したとしても、自車両2は操舵輪4の向きが自車線と平行となるため、自車両2は自車線に隣接する歩道6へ押し出されることが回避される。そのため、自車両2が歩道6を通行している歩行者や構造物に向かって押し出され、歩行者や構造物にぶつかることを回避できる。
【0031】
以上説明したように本実施の形態によれば、危険予測判定手段48により他車両が自車両2に衝突することで自車両2が自車線から対向車線あるいは自車線に隣接する車線あるいは歩道に向かって運転者の意図に反して進入する事態が予測される危険予測状態であると判定されると、強制操舵手段50により自車両2の操舵輪4の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させるようにした。したがって、他車両が自車両2に衝突しても、自車両2が対向車線あるいは隣接する車線あるいは歩道に進入することが抑制されるため、発生する被害を軽減する上で有利となる。また、他車両が自車両2に実際に衝突する前の時点で危険予測状態を判定するので、操舵輪4の向きを車線の延在方向と平行する向きに早期に変化させることができ、したがって、他車両が自車両2に衝突した場合に発生する被害を軽減する上でより一層有利となる。
【0032】
なお、本実施の形態では、後続車両2Aが後方から自車両2に衝突する場合について説明したが、実際には、他車両が前方から自車両2に衝突する場合、他車両が左右側方から自車両2に衝突する場合、あるいは、他車両が斜め前方、斜め後方から自車両2に衝突する場合がある。これらの場合、自車両2の操舵輪4の向きが自車線と交差する方向であると、他車両が自車両2に衝突することによって、自車両2が操舵輪4の向きに応じて自車線と交差する方向に大きく移動してしまうおそれがある。これに対して、本実施の形態のように、自車両2の操舵輪4の向きが自車線と平行であれば、他車両が自車両2に衝突したとしても、自車両2が自車線と交差する方向に移動することを最低限に抑制する上で有利となる。
【0033】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。図11は第2の実施の形態の衝突軽減ECU46の機能ブロック図、図12は第2の実施の形態の衝突軽減装置10の動作フローチャートである。なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分、部材には同一の符号を付してその説明を簡単にするか、あるいは、省略する。第1の実施の形態では、自車両2が停止している状況で危険予測判定手段48による危険予測状態の判定を行う場合について説明した。しかしながら、本発明は、自車両2が走行中である場合にも無論適用可能である。この場合は、例えば、交差点を右折して走行中、あるいは、隣接する車線への車線変更をするための走行中、あるいは、歩道を横切って走行中という状況下において、衝突予測手段48Eにより他車両の自車両2への衝突が予測された場合に、危険予測判定手段48が危険予測状態であると判定し、強制操舵手段50により自車両2の操舵輪4の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させる。
【0034】
以下、第2の実施の形態について説明する。図11に示すように、第1の実施の形態と同様に、衝突軽減ECU46は、危険予測手段48と、強制操舵手段50とを含んで構成されている。危険予測手段48は、走行検出手段48Fと、方向指示器信号検出手段48Gと、第1の実施の形態と同様の衝突予測手段48Eとを含んで構成されている。走行検出手段48Fは、車速センサ20から供給される車速情報に基づいて自車両2が走行中であることを検出するものである。方向指示器信号検出手段48Gは、方向指示器スイッチ44から供給される方向指示器信号を検出することで方向指示器が左方向にあるいは右方向に動作していることを検出するものである。危険予測判定手段48による危険予測状態の判定は、以下に示す方法でなされる。走行検出手段48Fによる自車両2の走行の検出と、方向指示器信号検出手段48Gによる方向指示器の動作の検出と、衝突予測手段48Eによる衝突予測との全てがなされたことをもって危険予測判定手段48は危険予測状態であると判定する。言い換えると、危険予測判定手段48は、自車両2が走行し、かつ、方向指示器が動作し、かつ、他車両の自車両2への衝突が予測されるという条件が成立したことをもって危険予測状態であると判定する。
【0035】
次に、衝突軽減装置10の動作について図12のフローチャートを参照して説明する。
衝突軽減ECU46は、走行検出手段48Fにより自車両2が走行状態にあるか否かを判定する(ステップS30)。ステップS30の判定結果が肯定であれば、方向指示器検出手段48Gにより方向指示器が動作しているか否かを判定する(ステップS32)。ステップS32の判定結果が肯定であれば、衝突予測手段48Eにより他車両の自車両2への衝突が予測されるか否かを判定する(ステップS34)。ステップS34の判定結果が肯定であれば、危険予測判定手段48によって危険予測状態であると判定され、したがって、強制操舵手段50は、自車両2の操舵輪4の向きを自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させる(ステップS36)。なお、各ステップS30、S32,S34の判定結果が否定となる場合にはステップS30に移行して同様の処理が実行される。
【0036】
以下、図8、図9、図10を流用して説明する。図8に示すように、自車両2が右折するために走行している場合、自車線の後方から自車両2に接近する後続車両2Aが自車両2に衝突したとしても、自車両2は操舵輪4の向きが自車線と平行となるため、自車両2は対向車線へ押し出されることが回避される。そのため、対向車線を走行する対向車両2Cがあったとしても、自車両2が対向車両2Cと衝突することが回避される。図9に示すように、自車両2が右側の車線に車線変更するために走行している場合、自車線の後方から自車両2に接近する後続車両2Aが自車両2に衝突したとしても、自車両2は操舵輪4の向きが自車線と平行となるため、自車両2は自車線に隣接する車線へ押し出されることが回避される。そのため、隣接する車線の後方から前方に走行する他車両2Bがあったとしても、自車両2が他車両2Bと衝突することが回避される。図10に示すように、自車両2が歩道6を横切るために走行している場合、自車線の後方から自車両2に接近する後続車両2Aが自車両2に衝突したとしても、自車両2は操舵輪4の向きが自車線と平行となるため、自車両2は自車線に隣接する歩道6へ押し出されることが回避される。そのため、自車両2が歩道6を通行している歩行者や構造物に向かって押し出され、歩行者や構造物にぶつかることを回避できる。
【0037】
以上説明したように第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、他車両が走行中の自車両2に衝突しても、自車両2が対向車線あるいは隣接する車線あるいは歩道に進入することが抑制されるため、発生する被害を軽減する上で有利となる。また、他車両が走行中の自車両2に実際に衝突する前の時点で危険予測状態を判定するので、操舵輪4の向きを車線の延在方向と平行する向きに早期に変化させることができ、したがって、他車両が自車両2に衝突した場合に発生する被害を軽減する上でより一層有利となる。
【0038】
なお、第1、第2の実施の形態では、危険予測判定手段48により危険予測状態が判定された場合に、強制操舵手段50により操舵輪4の向きを強制的に変化させる場合について説明した。しかしながら、自車両2に対する他車両の衝突が生じたか否かを判定する衝突判定手段をさらに設け、衝突判定手段によって自車両2に対する他車両の衝突が検出されたならば、強制操舵手段50により操舵輪4の向きを車線の延在方向と平行する向きに変化させてもよい。前記の衝突判定手段は、加速度センサ40によって予め定められた値を超える衝撃が検出された場合に他車両の衝突を判定するか、あるいは、エアバック装置26とシートベルト装置28との何れかが動作した場合に他車両の衝突を判定すればよい。このようにすると、万一、何らかの異常により危険予測判定手段48による危険予測判定が正常に実行されなかった場合であっても、自車両2が対向車線あるいは隣接する車線あるいは歩道に進入することが抑制されるため、発生する被害を軽減する上で有利となり、衝突軽減装置10の信頼性を高める上でより一層有利となる。危険予測判定手段48による危険予測判定が正常に実行されない原因としては、例えば、カメラ30、レーダセンサ32、ナビゲーション装置42、方向指示器スイッチ44などの誤動作や故障が想定される。
【符号の説明】
【0039】
2……自車両、4……操舵輪、10……衝突軽減装置、48……危険予測手段、48A……停止検出手段、48B……交差点検出手段、48C……右折向き検出手段、48D……操舵輪向き検出手段、48E……衝突予測手段、48F……走行検出手段、48G……方向指示器検出手段、50……強制操舵手段、56……車両角度算出手段、58……強制操舵角算出手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他車両が自車両に衝突することで前記自車両が該自車両の位置している自車線から対向車線あるいは前記自車線に隣接する車線あるいは歩道に向かって運転者の意図に反して進入する事態が予測される危険予測状態であるか否かを判定する危険予測判定手段と、
前記危険予測状態であると判定された場合に、前記自車両の操舵輪の向きを前記自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させる強制操舵手段と、
を備えることを特徴とする衝突軽減装置。
【請求項2】
前記危険予測判定手段は、前記自車両が交差点手前あるいは交差点内で停車し、かつ、自車両の操舵輪が自車両が右折する方向に操舵されているという条件が成立したことをもって前記危険予測状態であると判定することを特徴とする請求項1記載の衝突軽減装置。
【請求項3】
前記危険予測判定手段は、
前記自車両が停止状態にあることを検出する停止検出手段と、
前記自車両が交差点手前あるいは交差点内に位置していることを検出する交差点検出手段と、
前記操舵輪の向きが右折を行うために必要な向きとなっていることを検出する右折向き検出手段とを含み、
前記危険予測判定手段による前記危険予測状態の判定は、前記停止検出手段による前記自車両の停止の検出と、前記交差点検出手段による自車両が交差点手前あるいは交差点内に位置していることの検出と、前記右折向き検出手段による前記操舵輪の向きの検出とが全てなされたことをもってなされる、
ことを特徴とする請求項2記載の衝突軽減装置。
【請求項4】
前記危険予測判定手段は、前記自車両の操舵輪が自車線の延在方向と交差した状態で停車し、かつ、前記他車両の前記自車両への衝突が予測されるという条件が成立したことをもって前記危険予測状態であると判定することを特徴とする請求項1記載の衝突軽減装置。
【請求項5】
前記危険予測判定手段は、
前記自車両が停止状態にあることを検出する停止検出手段と、
前記操舵輪の向きが前記自車線の延在方向と交差した状態であることを検出する操舵輪向き検出手段と、
前記他車両の前記自車両への衝突を予測する衝突予測手段とを含み、
前記条件は、前記停止検出手段による前記自車両の停止の検出と、前記操舵輪向き検出手段による前記操舵輪の向きの検出と、前記衝突予測手段による衝突予測との全てがなされることである、
ことを特徴とする請求項4記載の衝突軽減装置。
【請求項6】
前記危険予測判定手段は、前記自車両が走行し、かつ、方向指示器が動作し、かつ、前記他車両の前記自車両への衝突が予測されるという条件が成立したことをもって前記危険予測状態であると判定することを特徴とする請求項1記載の衝突軽減装置。
【請求項7】
前記危険予測判定手段は、
前記自車両が走行状態にあることを検出する走行検出手段と、
方向指示器が動作中であることを検出する方向指示器検出手段と、
前記他車両の前記自車両への衝突を予測する衝突予測手段とを含み、
前記条件は、前記走行検出手段による前記自車両の走行の検出と、前記方向指示器検出手段による前記方向指示器の動作の検出と、前記衝突予測手段による衝突予測とのが全てなされることである、
ことを特徴とする請求項7記載の衝突軽減装置。
【請求項8】
前記他車両が前記自車両に衝突したか否かを判定する衝突判定手段をさらに含み、前記他車両が衝突したと判定された場合に、前記強制操舵手段は前記自車両の操舵輪の向きを前記自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させることを特徴とする請求項1乃至7に何れか1項記載の衝突軽減装置。
【請求項9】
前記強制操舵手段は、
前記自車線の延在方向と前記自車両の中心を通り前後方向に延在する中心線とがなす角度を車両角度θとして検出する車両角度算出手段と、
前記車両角度と、前記自車両の操舵輪の操舵角とに基づいて、前記操舵輪の向きを前記自車線の延在方向と平行する向きに足る強制操舵角を算出する強制操舵角算出手段とを含み、
前記強制操舵手段による前記自車両の操舵輪の向きの強制的な変化は、前記強制操舵角に基づいてなされる、
ことを特徴とする請求項1乃至8に何れか1項記載の衝突軽減装置。
【請求項1】
他車両が自車両に衝突することで前記自車両が該自車両の位置している自車線から対向車線あるいは前記自車線に隣接する車線あるいは歩道に向かって運転者の意図に反して進入する事態が予測される危険予測状態であるか否かを判定する危険予測判定手段と、
前記危険予測状態であると判定された場合に、前記自車両の操舵輪の向きを前記自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させる強制操舵手段と、
を備えることを特徴とする衝突軽減装置。
【請求項2】
前記危険予測判定手段は、前記自車両が交差点手前あるいは交差点内で停車し、かつ、自車両の操舵輪が自車両が右折する方向に操舵されているという条件が成立したことをもって前記危険予測状態であると判定することを特徴とする請求項1記載の衝突軽減装置。
【請求項3】
前記危険予測判定手段は、
前記自車両が停止状態にあることを検出する停止検出手段と、
前記自車両が交差点手前あるいは交差点内に位置していることを検出する交差点検出手段と、
前記操舵輪の向きが右折を行うために必要な向きとなっていることを検出する右折向き検出手段とを含み、
前記危険予測判定手段による前記危険予測状態の判定は、前記停止検出手段による前記自車両の停止の検出と、前記交差点検出手段による自車両が交差点手前あるいは交差点内に位置していることの検出と、前記右折向き検出手段による前記操舵輪の向きの検出とが全てなされたことをもってなされる、
ことを特徴とする請求項2記載の衝突軽減装置。
【請求項4】
前記危険予測判定手段は、前記自車両の操舵輪が自車線の延在方向と交差した状態で停車し、かつ、前記他車両の前記自車両への衝突が予測されるという条件が成立したことをもって前記危険予測状態であると判定することを特徴とする請求項1記載の衝突軽減装置。
【請求項5】
前記危険予測判定手段は、
前記自車両が停止状態にあることを検出する停止検出手段と、
前記操舵輪の向きが前記自車線の延在方向と交差した状態であることを検出する操舵輪向き検出手段と、
前記他車両の前記自車両への衝突を予測する衝突予測手段とを含み、
前記条件は、前記停止検出手段による前記自車両の停止の検出と、前記操舵輪向き検出手段による前記操舵輪の向きの検出と、前記衝突予測手段による衝突予測との全てがなされることである、
ことを特徴とする請求項4記載の衝突軽減装置。
【請求項6】
前記危険予測判定手段は、前記自車両が走行し、かつ、方向指示器が動作し、かつ、前記他車両の前記自車両への衝突が予測されるという条件が成立したことをもって前記危険予測状態であると判定することを特徴とする請求項1記載の衝突軽減装置。
【請求項7】
前記危険予測判定手段は、
前記自車両が走行状態にあることを検出する走行検出手段と、
方向指示器が動作中であることを検出する方向指示器検出手段と、
前記他車両の前記自車両への衝突を予測する衝突予測手段とを含み、
前記条件は、前記走行検出手段による前記自車両の走行の検出と、前記方向指示器検出手段による前記方向指示器の動作の検出と、前記衝突予測手段による衝突予測とのが全てなされることである、
ことを特徴とする請求項7記載の衝突軽減装置。
【請求項8】
前記他車両が前記自車両に衝突したか否かを判定する衝突判定手段をさらに含み、前記他車両が衝突したと判定された場合に、前記強制操舵手段は前記自車両の操舵輪の向きを前記自車線の延在方向と平行する向きに強制的に変化させることを特徴とする請求項1乃至7に何れか1項記載の衝突軽減装置。
【請求項9】
前記強制操舵手段は、
前記自車線の延在方向と前記自車両の中心を通り前後方向に延在する中心線とがなす角度を車両角度θとして検出する車両角度算出手段と、
前記車両角度と、前記自車両の操舵輪の操舵角とに基づいて、前記操舵輪の向きを前記自車線の延在方向と平行する向きに足る強制操舵角を算出する強制操舵角算出手段とを含み、
前記強制操舵手段による前記自車両の操舵輪の向きの強制的な変化は、前記強制操舵角に基づいてなされる、
ことを特徴とする請求項1乃至8に何れか1項記載の衝突軽減装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−45984(P2012−45984A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187325(P2010−187325)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
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