説明

衣料用洗浄剤組成物

【課題】機能性材料である疎水性化合物を多糖誘導体で被覆した粒子にすることで機能性材料の衣類へ吸着性に優れた衣料用洗浄剤組成物を提供することにある。
【解決手段】(a)疎水性化合物を(b)多糖誘導体で乳化した粒子を含有する衣料用洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の機能性材料を繊維に吸着させるため、衣料用洗浄剤が使用されている。例えば、シリコーン、中でも、アミノ変性シリコーンは、アミノ基により繊維への吸着量が増加することで高い柔軟効果が発現するため、これらの成分を機能性材料として含有した衣料用洗浄剤が知られている(特許文献1〜2参照)。
【特許文献1】特開平9−67594公報
【特許文献2】特開平10−60480公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記機能性材料の衣類への吸着能は、界面活性剤により阻害され易いため、これらの機能性材料は、もっぱら仕上げ剤等のように、洗浄剤組成物と区別して使用されている。
例えば、衣料用洗浄剤に機能性材料を配合すると、幾度の濯ぎ工程も加算されるため、仕上げ剤とした場合に比べて、機能性材料の衣類への吸着量は著しく低下し、満足できる効果を得ることができていないのが現状である。
【0004】
したがって、本発明の課題は、機能性材料である疎水性化合物を多糖誘導体で乳化した粒子にすることで機能性材料の衣類へ吸着性に優れた衣料用洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要旨は、(a)疎水性化合物を(b)多糖誘導体で乳化した粒子を含有する衣料用洗浄剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の衣料用洗浄剤組成物は、洗い工程から機能性材料を衣類に効率よく吸着させることができる上に、濯ぎ工程においても、この機能性材料の残留性に優れることから、衣料の風合いを向上したり、衣料の付加価値を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の洗浄剤組成物は、(a)疎水性化合物を(b)多糖誘導体で乳化した粒子を含有する点に一つの大きな特徴があり、かかる構成を有することで、機能性材料を効率よく吸着させることができる上に、濯ぎ工程を経ても、機能性材料がほぼ残留するという効果が奏される。
【0008】
乳化とは、疎水性化合物を多糖誘導体でカプセル状に内包した会合体であり、内層が油剤/外層が多糖誘導体で構成されるいわば、ミセル様閉環構造の事を意味するものである。
【0009】
本発明に用いられる(a)疎水性化合物としては、シリコーン油、炭化水素類、高級アルコール類、ステロール類、フッ素系油剤、植物性又は動物性油脂、脂肪酸エステル類、脂肪酸、天然精油、ビタミン誘導体、及びセラミド群からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。特に、シリコーン油、炭化水素類、高級アルコール類、ステロール類、フッ素系油剤が好ましく、中でもシリコーン油が好ましい。
【0010】
シリコーン油としては、例えばジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチル水素シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル変性シリコーン、アルキルポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、高級アルコールエステル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、フルオロアルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルビトール変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン等が挙げられる。特に、繊維処理剤として用いる場合にはポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーンが好ましく、特にアミノ変性シリコーンとアミノポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
【0011】
炭化水素類としては、例えば固体状又は液体状パラフィン、ワセリン、クリスタルオイル、セレシン、オゾケライト、モンタンロウ、スクアラン、スクアレン等が挙げられる。
【0012】
高級アルコール類としては、炭素数10〜18、好ましくは12〜18の飽和又は不飽和の脂肪アルコール、具体的にはデシルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノールアルコール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、フェニルエチルアルコール、セタノール、2-オクチルデカノール、バチルアルコール、2-ヘキシルデカノール等が挙げられる。特に、繊維処理剤として用いる場合にはオレイルアルコール、セタノール、ステアリルアルコールが好ましい。
【0013】
ステロール類としては、例えばコレステロール、イソステアリン酸コレステリル、プロビタミンB3、カンベステロール、ステグマスタノール、スタグマステロール、5-ジヒドロコレステロール、α-スピナステロール、パリステロール、クリオナステロール、γ-シチステロール、ステグマステノール、サルガステロール、アペナステロール、エルゴスタノール、エルゴスタジエノール、エルゴステロール、22-ジヒドロエルゴステロール、プラシカステロール、24-メチレンコレステロール、5-ジヒドロエルゴステロール、β-シトステロール、コレスタトリエン-3β-オール、コプロスタノール、コレスタノール、7-デヒドロコレステロール、24-デヒドロコレスタジオン-3β-オール、エキレニン、エキリン、エストロン、17β-エストラジオン、アンドロスト-4-エン-3β,17β-ジオール、デヒドロエビアンドロステロール、アルケニルコハク酸コレステリル等が挙げられる。特に、コレステロール、イソステアリン酸コレステリル、アルケニルコハク酸コレステリルが好ましい。
【0014】
フッ素系油剤としては、パーフルオロアルカン、パーフルオロポリエーテル、フッ素変性シリコーン等が挙げられ、常温で液体のパーフルオロ有機化合物が好ましい。具体的にはパーフルオロデカリン、パーフルオロテトラヒドロフラン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロペンタン、パーフルオロデカン、パーフルオロドデカン等が挙げられる。
【0015】
植物性又は動物性油脂としては、オリーブ油、アボガド油、月見草油、ホホバ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ハッカ油、ヒマワリ油、ナタネ油、ゴマ油、小麦胚芽油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、ヤシ油、パーム油、牛脂、豚脂、魚油、馬脂、黄卵油、カルナウバロウ、ラノリン等が挙げられる。またこれらの油脂を更に金属触媒を用いて部分水素化あるいは完全水素化した半硬化油、あるいは完全硬化油等も用いることができる。特に、繊維処理剤として用いる場合にはオリーブ油、ヒマワリ油が好ましい。
【0016】
脂肪族エステル類としては、分子量300〜3000のもの、具体的には炭素数10〜18の脂肪酸と炭素数1〜6の1〜6価のアルコールとのエステル化合物が好ましい。アルコールの具体例としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノールから選ばれる1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等の2価アルコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、グルコース、ソルビトール、ソルビタン等の3価以上のアルコールが挙げられる。特に、イソプロピルラウレート、イソプロピルミリステート、ペンタエリスリトールモノステアレートが好ましい。
【0017】
脂肪酸としては炭素数10〜18、好ましくは12〜18の飽和又は不飽和脂肪酸、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。特に、繊維処理剤として用いる場合にはオレイン酸、パルミトレイン酸が好ましい。
【0018】
天然精油としては、ローズマリー、ルイボス、ローヤルゼリー、ハマメリス、リグナン等が挙げられる。
【0019】
ビタミン誘導体としては、ビタミンE、油溶性ビタミンC、ビタミンA、ビオチン、パンテノール等が挙げられる。
【0020】
また、これらの(a)成分としては、乳化物の貯蔵安定性の観点から、その水に対する溶解度は、1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。
乳化物の貯蔵安定性及び製造適性の観点から、(a)成分の融点は、70℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましい。
中でも、(a)成分としては、乳化物の貯蔵安定性及び製造適性の観点から、水に対する溶解度が1質量%以下であり、且つ融点が70℃以下であるものがさらに好ましい。
かかる物性を有する(a)成分としては、ジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリルエーテル、パーフルオロポリエーテル等が好ましい。
【0021】
なお、(a)成分の溶解度は、20℃の水100gに溶解し得る溶質の質量として定義する。
また、(a)成分の融点は、JIS K 0064 化学製品の融点及び溶解範測定方法 3.1目視による方法に記載の方法に従って測定することができる。
【0022】
本発明に用いられる(b)多糖誘導体としては、多糖類のヒドロキシ基の水素原子の一部又は全てが式(I):
−R−(OA)−B−R (I)
[式中、Rはヒドロキシ基又はオキソ基で置換されてもよい炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を示し、Aは炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を示し、aは平均値で1〜300の数を示し、a個のAは同一でも異なってもよい。Bは−O−、
【0023】
【化1】

【0024】
又は
【0025】
【化2】

【0026】
から選ばれる基を示し、Rはヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数4〜30の直鎖もしくは分岐のアルキル基あるいはヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜5のスルホアルキル基を示す。]
で表される基で置換されている多糖誘導体をいう。
【0027】
式中、Rは、好ましくはエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、2-ヒドロキシトリメチレン基、1-ヒドロキシトリメチレン基、1-オキソエチレン基、1-オキソトリメチレン基、1-メチル-2-オキソエチレン基であり、特に2-ヒドロキシトリメチレン基、1-ヒドロキシトリメチレン基が好ましい。Aとしては、ヒドロキシ基又はオキソ基で置換されていてもよい炭素数2又は3のアルキレン基が好ましく、具体的にはエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、2-ヒドロキシトリメチレン基、1-ヒドロキシメチルエチレン基、1-オキソエチレン基、1-オキソトリメチレン基、1-メチル-2-オキソエチレン基等が挙げられ、エチレン基、プロピレン基が好ましい。aで表される(−OA−)の平均付加モル数は、(a)成分の吸着性の点から、8〜120が好ましく、10〜60が更に好ましく、10〜20が特に好ましい。また、a個のAは同一でも異なっていてもよい。Bはエーテル基(-O-)又はカルボキシル基
【0028】
【化3】

【0029】
、又はオキシカルボニル基
【0030】
【化4】

【0031】
であるが、エーテル基が好ましい。Rは、好ましくはヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数5〜25、更に6〜20のアルキル基であるか、又は2-スルホエチル基、3-スルホプロピル基、3-スルホ-2-ヒドロキシプロピル基、2-スルホ-1-(ヒドロキシメチル)エチル基であるが、安定性の点から、アルキル基、特に直鎖アルキル基が好ましい。具体的にはオクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ヘキシルデシル基、オクチルドデシル基等が好ましい。
【0032】
多糖類としては、セルロース、グァーガム、デンプン、ブルラン、デキストラン、フルクタン、マンナン、寒天、カラギーナン、キチン、キトサン、ペクチン、アルギン酸、ヒアルロン酸等の多糖;これらにメチル基、エチル基等のアルキル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基、カルボキシメチル基等が置換した誘導体が挙げられる。これらの置換基は、構成単糖残基中に単独で又は複数の組み合わせで置換することができ、これら多糖の誘導体の例としては、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜3)セルロース、アルキル(炭素数1〜3)セルロース、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜3)デンプン、アルキル(炭素数1〜3)デンプン、カルボキシメチル化デンプン、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜3)グァーガム、アルキル(炭素数1〜3)グァーガム等が挙げられる。本発明に用いられる多糖類としては、セルロース、デンプン、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜3)セルロース、アルキル(炭素数1〜3)セルロースが好ましく、特にヒドロキシエチルセルロースが好ましい。また、多糖の誘導体において、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はカルボキシメチル基の置換度は、構成単糖残基当たり0.01〜3.5が好ましく、0.1〜3が更に好ましく、1〜3が特に好ましく、1.5〜2.8が最も好ましい。また、上記多糖の誘導体の置換基は、ヒドロキシエチル基やヒドロキシプロピル基のヒドロキシ基に更に置換して、例えば、ポリオキシエチレン鎖等を形成することで、構成単糖残基当たり3.0を超える置換度も可能であり、その構成単糖残基当たりの置換度は0.1〜10.0、特に0.5〜5.0が好ましい。また、これら多糖類の重量平均分子量は、好ましくは1万〜1000万、更に好ましくは5万〜500万、特に好ましくは10万〜200万、最も好ましくは10万〜100万である。
【0033】
(a)成分の粒子中の含有量としては、(a)成分由来の機能性発現及び乳化物の貯蔵安定性、製造適性の観点から、0.1〜60質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
【0034】
(b)成分の粒子中の含有量としては、(b)成分の吸着性及び乳化物の貯蔵安定性、製造適性の観点から、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
【0035】
本発明の衣料用洗浄剤組成物には、(a)成分、(b)成分以外に、水溶性の有機溶剤を含有してもよい。
【0036】
本発明に用いられる水溶性の有機溶媒〔(以下、(d)成分〕としては、グリセリン、エチレングルコール、プロピレングリコールが好ましい。これらの有機溶媒は、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、グリセリン、エチレングルコール、プロピレングリコールを混合して用いるのが好ましい。
【0037】
(d)成分の粒子中の含有量としては、乳化物の貯蔵安定性及び(a)成分を安定に溶解、分散もしくは可溶化させること、(a)成分の吸着性の観点から、0.1〜40質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0038】
前記粒子には、香料、植物エキス、ビタミン、セラミド、蛍光剤、漂白剤、染料、顔料、抗酸化剤、紫外線吸収剤等の他の成分を配合しうる。
【0039】
本発明における、前記(a)成分を(b)成分で乳化した粒子の製造方法としては、O/W型乳化法が挙げられる。具体的には、(b)成分を外殻として(a)成分を内包するカプセル状の粒子が分散したO/W型乳化組成物を調製する方法が挙げられる。該方法においては、(b)成分として前記式で表される基で置換されている多糖誘導体を用いる場合、(b)成分中のヒドロキシル基が乳化処理対象物である(a)成分と相互作用するため又は(b)成分中のアルキル基が(a)成分と相互作用し、効率よく乳化することで、この乳化物が効率的に繊維上に吸着し、(a)成分を繊維に付与できる点から、好ましい。
なお、他の乳化方法の条件(温度、時間等)については、特に限定はない。また、前記水溶性の有機溶剤や他の成分は、(a)成分、(b)成分のいずれに混合してもよいし、粒子形成後に別途添加してもよい。好ましくは、(b)成分にグリセリン等の有機溶媒を混合した後、(a)成分を混合し、乳化粒子を形成させる。
【0040】
本発明の衣料用洗浄剤組成物(以下、本発明の組成物ともいう)は、前記のようにして得られる粒子以外に、界面活性剤、水溶性の有機溶剤(d)、水、香料、酵素、着色剤、pH調整剤、粘度調整剤等のその他の成分を含有しうる。
【0041】
なお、(a)成分由来の機能性発現及び(b)成分の吸着性の観点から、本発明の組成物中における(a)成分/(b)成分の質量比は、1〜100であることが好ましく、10〜50がより好ましい。
【0042】
また、本発明に使用される界面活性剤〔以下、(c)成分〕は、アルキル基の炭素数8〜15のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル基の炭素数8〜36のアルキル硫酸エステル塩、オキシエチレン基の平均付加モル数が1〜4、アルキル基の炭素数8〜36のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、炭素数12〜22のアルキル基を有するアルキルエーテルカルボン酸塩、炭素数12〜22のアルキル基を有するアルキルエーテルリン酸塩から選ばれる陰イオン界面活性剤;オキシアルキレン基の平均付加モル数が4〜20、アルキル基の炭素数が8〜18のポリオキシエチレン(及び/又はポリオキシプロピレン)アルキルエーテル、アルキル基の炭素数が8〜16、平均縮合度が1〜5のアルキルポリグルコシド、炭素数10〜16の脂肪酸ソルビタンエステルから選ばれる非イオン界面活性剤;エステル基又はアミド基で分断されていてもよい炭素数が12〜22のアルキル基を1つ又は2つ有する4級アンモニウム型陽イオン界面活性剤、又はアミン塩型界面活性剤;炭素数10〜18のアルキル基を有するスルホベタイン型又はカルボベタイン型両性界面活性剤を挙げることができる。これらの界面活性剤の中では、洗浄力、起泡力の観点から陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、及び陰イオン界面活性剤から選ばれる化合物が好適である。
【0043】
本発明の組成物中の界面活性剤の含有量は、好ましくは0.01〜70質量%、より好ましくは5〜50質量%である。
【0044】
本発明の組成物には、組成物の貯蔵安定性及び粘度調整の観点から、水溶性の有機溶媒〔以下(d)成分〕を用いることが好ましい。具体的に好ましい有機溶剤としてはエタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオールが好適であり、特にグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールが好ましい。このような有機溶剤は、本発明の組成物中に好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは1〜20質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。
【0045】
本発明の組成物には、炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物、及びこれらのアルキレンオキシド付加物(以下(e)成分)を0.1〜10質量%、特に0.5〜5質量%配合することが好ましい。エステル化合物としては、トリグリセライド、ジグリセライド、モノグリセライド、ペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリエステル、ソルビタンエステルが好ましい。また、これら化合物にアルキレンオキシドを付加させる場合には、エチレンオキシドが好適であり、平均付加モル数は、10〜200、好ましくは20〜150である。
【0046】
また、本発明の組成物には、組成物の貯蔵安定性及び製造適性の観点から、水(以下(f)成分)を含有することが好ましい。水としては、イオン交換水、蒸留水、滅菌水等を用いることができる。
【0047】
(a)成分と(b)成分とから構成される乳化粒子の含有量としては、本発明の組成物中において、1〜50質量%が好ましく、2.5〜30質量%がより好ましい。
【0048】
本発明の組成物の製造方法としては、特に限定されない。例えば、前記のように、上記(a)成分を(b)成分で乳化した粒子を形成した後、他の成分と混合する方法でもよいが、該粒子を効率よく形成させる目的から、下記製造方法で製造することが好ましい。
常温にて(b)成分、必要に応じて(c)成分、(d)成分を、必要量の15%相当量の(f)成分に添加し、次に昇温後80℃にて攪拌した後、25℃まで冷却する。次に、必要に応じて(e)成分を攪拌しながら添加し、攪拌放置する。その後、(a)成分をゆっくり添加する。(a)成分が常温で固体、若しくは流動しない状態の場合には融点、若しくは流動点以上に加温して添加することが望ましい。また、その場合には、途中の中間配合液(以下(g)溶液)も(a)成分の融点、又は流動点以上の温度に加温することが望ましい。添加後さらに攪拌した後、配合物の温度を60℃、若しくは(a)成分の融点、若しくは流動点以上に上昇させ、さらに攪拌し、組成物を得る。そのままの温度か必要に応じて40℃程度まで冷却し、上記の方法で得られた組成物に残りの(f)成分をゆっくり添加し、攪拌する。また、必要に応じてpHを調整した後、ゆっくり常温まで配合物の温度を下げて、O/W型乳化組成物を得る。上記製造方法において、(a)成分の一部を(b)成分と一緒に添加してもよい。
【0049】
本発明では、(g)の溶液を20〜75℃、好ましくは30〜60℃に調整し、(f)の水を20〜90℃、好ましくは30〜70℃で混合することが好適である。(f)の添加速度は、(g)の溶液1リットル当たり、0.001〜0.1リットル/分程度の割合が好ましい。(c)成分及び(e)成分は、(g)に予め添加してもよく、(d)に予め溶解していてもよく、さらには(g)と(f)を混合した後に添加してもよい。
【0050】
本発明では、このような製造方法を用いることで、(b)成分を外殻とし、(a)成分を内包するカプセル状の粒子が分離したO/W型乳化組成物を得ることができる。このようなO/W型乳化組成物は、繊維に対して高い吸着性を有し、効率よく(a)成分を繊維に付与することが可能となるのに加え、高い洗浄力も有する。
【0051】
本発明の組成物には、さらに通常、洗剤に配合される香料、色素等の成分を配合してもよい。
【0052】
本発明の組成物は、例えば、通常の洗濯に使用することができ、その使用量としては、洗濯水に対して、0.0005〜10質量%、好ましくは0.005〜5質量%、より好ましくは0.05〜3質量%、特に好ましくは0.05〜2質量%、最も好ましくは0.1〜1質量%となる量である。
【0053】
以上のようにして得られた本発明の洗浄剤組成物は、衣料用洗剤、布帛処理剤等の用途に好適に使用される。
【実施例】
【0054】
実施例に用いた重質液体洗剤、軽質液体洗剤の配合成分を以下にまとめて示す。なお、重質液体洗剤については表1、軽質液体洗剤については表2に示す。
【0055】
〔重質液体洗剤〕
非イオン界面活性剤A:炭素数12〜14の1級アルコールにEOを平均12モル付加させたもの
非イオン界面活性剤B:炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均7モル、POを平均2モル、EOを平均3モルの順で付加させたもの
非イオン界面活性剤C:炭素数12〜14の2級アルコールにEOを平均7モル付加させたもの
非イオン界面活性剤D:炭素数10〜14の2級アルコールにEOを平均9モル、POを平均1モルの順で付加させたもの
脂肪酸:ルナックL−55(花王株式会社製)
高分子化合物a:特開平10−60476号公報の4頁段落0020の合成例1の方法で合成した高分子化合物
酵素:プロテアーゼ(エバラーゼ16.0L−EX、ノボザイム製)
ジメチルシリコーン:SH−200(20万CS、信越化学工業株式会社製)
多糖誘導体A:
重合平均分子量20万、ヒドロキシエチル基の置換度2.5のヒドロキシエチルセルロース(NATROZOL 250G、ハーキュレス社製)160g、含水80%イソプロピルアルコール1280g、48%水酸化ナトリウム水溶液9.8gを混合してスラリー液を調整し、窒素雰囲気下、室温で30分攪拌した。この溶液にC1225O−(CHO)13−CH−CO31.8gを加え、80℃、8時間反応させてポリオキシアルキレン化を行った。反応終了後、反応液を酸酸で中和し、反応生成物を濾別した。反応生成物をイソプロピルアルコール700gで2回洗浄後、減圧下60℃で一昼夜乾燥し、ポリオキシアルキレン化されたヒドロキシセルロース誘導体(多糖誘導体A)152gを得た。
【0056】
多糖誘導体B:
重合平均分子量50万、ヒドロキシエチル基の置換度1.8のヒドロキシエチルセルロース(HEC−QP−4400H、ユニオンカーバイド社製)80g、含水80%イソプロピルアルコール640g、48%水酸化ナトリウム水溶液5.4gを混合してスラリー液を調整し、窒素雰囲気下、室温で30分攪拌した。この溶液にC1225O−(CHO)13−CH−CO12.8gを加え、80℃、8時間反応させてポリオキシアルキレン化を行った。
反応終了後、反応液を酢酸で中和し、反応生成物を濾別した。反応生成物をイソプロピルアルコール500gで2回洗浄後、減圧下60℃で一昼夜乾燥し、ポリオキシアルキレン化されたヒドロキシセルロース誘導体(多糖誘導体B)73gを得た。
【0057】
〔軽質液体洗剤〕
非イオン界面活性剤a:炭素数10〜14の第1級アルコールにEOを平均12モル付加させたもの
非イオン界面活性剤b:炭素数10〜14の第2級アルコールにEOを平均7モル付加させたもの
非イオン界面活性剤c:炭素数10〜14の第2級アルコールにEOを平均3モル付加させたもの
アミノ変性シリコーン:BY−16−906(東レダウコーニング・シリコーン株式会社製)
アミノポリエーテル変性シリコーン:SF8427(東レダウコーニング・シリコーン株式会社製)
高分子化合物b:ペンテン/マレイン酸コポリマー(モル比50/50、平均分子量1万)
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
実施例1〜4、比較例1〜3
下記方法で表1に示す各成分を混合して組成物(A1)及び組成物(B1)を調製した後、これらを質量比にて等量混合することで、洗浄剤組成物を調製した。
【0061】
ここで、組成物(B1)については、25℃にて多糖誘導体(b成分)、グリセリンを必要量の15%相当分の水で添加した。80℃に加熱して、充分攪拌した後、60℃まで再び加温し、充分攪拌した。40℃まで冷却した後、残りの水をゆっくり添加して充分攪拌し、組成物(B1)を調製した。組成物(B2)についても、組成物(B1)と同様にして調製した。なお、得られた組成物を水で500倍に希釈し、プレパラート上に適量のせ、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE VH-85C)で乳化した粒子の状態を観察することができる。
【0062】
実施例5〜8、比較例4〜6
下記方法で表2に示す各成分を混合して組成物(A2)及び組成物(B2)を調製した後、これらを質量比にて等量混合することで、衣料用洗浄剤組成物を調製した。
【0063】
実施例1〜8、比較例1〜6で得られた洗浄剤組成物を下記方法で洗浄し、その吸着促進効果、柔軟効果を評価した。結果を表1、2に示す。
【0064】
[吸着量測定方法]
綿メリヤス布(谷頭商店製)を2槽式洗濯機(VH-360S1)で市販洗剤(花王製アタック)を用いて5回累積洗浄し(洗剤濃度0.067質量%、水道水使用、水温20℃、10分洗浄後、15分流水濯ぎした後、5分間脱水)、自然乾燥させた。この綿メリヤス布を15cm×15cmに裁断し、試験布を調製した。この試験布3枚をTerg-O-Tometer(上島製作所製)を使用して、85r/min、20℃の水道水に実施例に示した組成の洗浄剤組成物0.133質量% (A成分及びB成分0.067質量%ずつ)になるような条件で添加して得られた洗剤水溶液600mlを用いて10分間洗浄し、水道水600mlを用いて5分間溜め濯ぎを行った。さらに、2分間脱水した後、平干しにて標準試験室(20℃、65%RH)で調湿させた。処理布1gを坩堝で灰化させた灰分にアルカリ1g(炭酸ナトリウム/硼酸=5/2:質量比)を加えて溶融させた。6N塩酸4mLで中和した後、純水でメスアップさせた試料をICP発光分析装置(原子吸収)で測定することによりシリコーンの吸着量を定量した。

〔評価基準〕
◎:比較例1に比べて、シリコーン吸着量が明らかに多い。
○:比較例1に比べて、シリコーン吸着量が比較例よりもやや多い。
×:比較例1に比べて、シリコーン吸着量が比較例と同等もしくは少ない。
【0065】
[柔軟効果判定方法]
全自動洗濯機(松下電器産業製;NA-F60K2型)を用いて、タオル(武井タオル製;TW200綿100%)12枚を標準コースで洗濯を行った。洗浄液は、洗浄剤組成物濃度0.133質量%(A及びB成分0.067質量%ずつ)とし、20℃水道水30Lを用いて予め調整し、使用した。洗浄処理したタオルを20℃、65%RHの標準試験室で24時間調湿した後、柔軟性について以下の基準で評価した。

〔評価基準〕
◎:比較例4に比べて、柔軟性が明らかに認められる。
○:比較例4に比べて、柔軟性がやや認められる。
×:比較例4に比べて、柔軟性が同等もしくは認めらない。
【0066】
表1、2に示される結果より、実施例1〜8で得られた洗浄剤組成物は、いずれも比較例1〜6で得られた洗浄剤組成物に比べて優れた吸着促進効果及び柔軟効果を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の洗浄剤組成物は、衣料用洗剤、布帛処理剤等に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)疎水性化合物を(b)多糖誘導体で乳化した粒子を含有する衣料用洗浄剤組成物。
【請求項2】
(a)成分/(b)成分の質量比が1〜100である請求項1記載の衣料用洗浄剤組成物。
【請求項3】
(a)成分の水に対する溶解度が1質量%以下であり、融点が70℃以下である請求項1記載の衣料用洗浄剤組成物。
【請求項4】
(a)成分がシリコーン油、炭化水素類、高級アルコール類、ステロール類、フッ素系油剤、植物性又は動物性油脂、脂肪酸エステル類、脂肪酸、天然精油、ビタミン誘導体、及びセラミド群からなる群より選ばれる1種以上である請求項1〜3いずれか記載の衣料用洗浄剤組成物。
【請求項5】
(b)成分が多糖類のヒドロキシ基の水素原子の一部又は全てが一般式:
−R−(OA)−B−R
[式中、Rはヒドロキシ基又はオキソ基で置換されてもよい炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を示し、Aは炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を示し、aは平均値で1〜300の数を示し、a個のAは同一でも異なってもよい。Bは−O−、
【化1】

又は
【化2】

から選ばれる基を示し、Rはヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数4〜30の直鎖もしくは分岐のアルキル基あるいはヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜5のスルホアルキル基を示す。]
で表される基で置換されている多糖誘導体である請求項1〜4いずれか記載の衣料用洗浄剤組成物。
【請求項6】
更にグリセリン、エチレングルコール及びプロピレングリコールからなる群より選ばれる1種以上を含有してなる請求項1〜5いずれか記載の衣料用洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2006−321900(P2006−321900A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146209(P2005−146209)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】