説明

衣類乾燥機

【課題】ペルチェユニットの成績係数を全乾燥工程にわたって良好な値に維持し、消費電力の低減、乾燥時間の短縮を図る。
【解決手段】乾燥時に内部が乾燥室となる外槽と、この外槽内に回転自在に配置され洗濯物を収容する回転ドラムと、回転ドラムを駆動するモータと、回転ドラムを支持するとともに筐体をなす外枠と、加熱手段及び送風手段による温風を、回転ドラム内の洗濯物に送風するための送風路を有する乾燥装置と、外槽から排出される水を排出する排水ホースとを備えた乾燥機または洗濯乾燥機において、加熱手段の一つとして、放熱面により前記送風路内の空気を加熱するペルチェ素子を使用し、このペルチェ素子の吸熱面を送風路外に配置するとともに、送風路内に外枠内を通過し、回転ドラムを駆動するモータの排熱等により加熱された外気の導入量を吸気手段により調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類を乾燥する手段を備えた乾燥機又は洗濯乾燥機等の衣類乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥機又は洗濯から乾燥までを連続して行える洗濯乾燥機による衣類の乾燥は、送風ファンと熱源により高温・低湿度の空気を作り、これを洗濯槽内に吹込み、衣類の温度を高くし、衣類から水分を蒸発させ、蒸発した水分を機外へ排出することにより行う。これに関する従来技術として特許文献1ないし5がある。
【0003】
蒸発した水分の除去方法としては、そのまま洗濯乾燥機外へ排出する排気方式(常に新しい空気を供給)と蒸発した水分を冷やし凝縮させて水分を除去する除湿方式(同じ空気を循環させる)がある。
下記特許文献1には、時間短縮と使用水量や消費電力を低減するため乾燥工程の前半に空冷または水冷除湿を行い、後半に周囲の乾燥した外気を導入し、洗濯物に吹付けた後の温風空気をそのまま排気することが示されている。
また、下記特許文献4、5には、ペルチェユニットの吸熱部で吸熱された冷却媒体を循環空気の冷却除湿に用い、放熱部を冷却除湿後の空気の加熱に用いることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−104715号公報
【特許文献2】特開2008−110135号公報
【特許文献3】実開平3−128094号公報
【特許文献4】特開2006−115950号公報
【特許文献5】特開平8−57194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、洗濯物に吹付けた後の温風空気をそのまま排気する従来技術では、時間短縮と使用水量や消費電力の低減を図ることはできるが、乾燥機または洗濯乾燥機周囲の室内に高湿な空気をそのまま排気してしまい、室内の環境を悪化させてしまう。
また同じ空気を循環させる方式において、ペルチェユニットを用いた従来技術では、乾燥初期ではペルチェユニットの吸熱側で吸熱された低温の冷却媒体を用いて循環空気を冷却するため、乾燥に必要な温風温度まで空気を再加熱する熱量が必要となる。
さらに乾燥が進むにしたがって、洗濯槽からの戻りの循環空気が温まるとペルチェユニットの放熱面温度と吸熱面温度の差が大きい運転となり、乾燥初期よりもペルチェユニットの成績係数が悪くなり、除湿能力が低下し、乾燥時間が延びてしまう。
また、ペルチェユニットの放熱側と吸熱側を、乾燥用空気の加熱と、乾燥後の空気の除湿に使用するため、設計上設置箇所に制約が生じ、配置上の自由度がないという問題点もある。
【0006】
そこで、本発明は、循環ダクトを備え空気を循環させる構造を採用しながら、空気の一部または全量を外気から循環ダクト内に導入することにより、高湿な空気を室内へ排気することなく、しかも、循環ダクトを流れる空気が過度に温度上昇するのを防止することにより、ペルチェユニットの成績係数を全乾燥工程にわたって良好な値に維持し、消費電力の低減、乾燥時間の短縮を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の乾燥機または洗濯乾燥機においては、次のような技術的手段を講じた。すなわち、
(1)乾燥時に内部が乾燥室となる外槽と、該外槽内に回転自在に配置され洗濯物を収容する回転ドラムと、該回転ドラムを駆動するモータと、該回転ドラムを支持するとともに筐体をなす外枠と、加熱手段及び送風手段による温風を、前記回転ドラム内の洗濯物に送風するための循環ダクトを有する乾燥装置と、前記外槽から排出される水を排出する排水ホースとを備えた乾燥機または洗濯乾燥機において、前記加熱手段の一つは、放熱面により前記循環ダクト内の空気を加熱するペルチェ素子であり、前記ペルチェ素子の吸熱面を前記送風路外に配置するとともに、前記送風路内に前記外枠内を通過した後の外気の導入量を調整する吸気手段を設けた。
【0008】
(2)上記の乾燥機または洗濯乾燥機において、前記吸気手段による外気の導入に合わせ、前記回転ドラム通過後の空気を、前記ペルチェ素子の吸熱面に供給する吸熱用媒体と熱交換させた後、前記排水ホースを介して外部に排出するようにした。
【0009】
(3)上記の乾燥機または洗濯乾燥機において、前記吸気手段の開度を洗濯物の重量に応じた設定開度に予め制御し、乾燥工程の全期間において、該設定開度により定まる外気を導入するようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記(1)の技術的手段によれば、乾燥装置の温風形成用加熱手段としてペルチェ素子を利用した場合、吸気弁により、所定量の送風路内に外枠内を通過した後の外気が導入されるため、外枠内の排熱を吸収しつつ、ペルチェ素子の放熱面の過度な温度上昇が防止できる。さらにペルチェユニット吸熱面を循環ダクト内に設置せず、また吸熱面通過後の冷却水も循環ダクト内に流さないため、ペルチェ放熱面によるダクト内空気の加熱量を抑えられることにより、ペルチェ放熱面によるダクト内空気の加熱量が抑制され、ペルチェ入力を抑えた運転とすることができ、ほぼ乾燥全期間でペルチェ素子の成績係数を高く維持して、消費電力の低減、乾燥時間の短縮を実現することができる。
【0011】
本発明の上記(2)の技術的手段によれば、さらに、回転ドラム通過後の空気を、ペルチェ素子の吸熱面に熱を供給する吸熱用媒体と熱交換させることにより、ペルチェ素子の吸熱面の過度な冷却を防止することができ、ペルチェ素子の成績係数を一層高く維持することができる。
【0012】
本発明の上記(3)の技術的手段によれば、さらに、吸気手段の開度が洗濯物の重量に応じた設定開度に予め制御されるため、洗濯物の重量の変化にかかわらず、ペルチェ素子の成績係数を高く維持して、消費電力の低減、乾燥時間の短縮を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施例に係る洗濯乾燥機の斜視図を示す。
【図2】本発明の第1の実施例に係る洗濯乾燥機が乾燥工程にある際の断面図を示す。
【図3】ペルチェ素子の放熱面と吸熱面の温度差に対する最大成績係数の関係の模式図を示す。
【図4】本発明の第1の実施例で使用するペルチェユニットの斜視図を示す。
【図5】本発明の第1の実施例に係る洗濯乾燥機の乾燥工程における運転パターンを示す。
【図6】本発明の第1の実施例に係る洗濯乾燥機の制御装置のブロック図を示す。
【図7】本発明の第1の実施例に係る洗濯乾燥機の制御処理プログラムのフローチャートを示す。
【図8】本発明の第2の実施例に係る洗濯乾燥機が乾燥工程にある際の断面図を示す。
【図9】本発明の第2の実施例で使用する排熱回収熱交換器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面により説明する。
図1は、本発明の第1の実施例に係る洗濯乾燥機の斜視図を示し、ベース1の上部には鋼板と樹脂成形品で組合わされて筐体をなす外枠2が載せられている。この外枠2の正面には洗濯物30を出し入れするドア3と前面カバー22及び背面には背面カバー23が設けられている。
【0015】
図2は、本発明の第1の実施例に係るもので、回転ドラムに温風を送風して乾燥対象物である衣類から水分を蒸発させ、この水分を含んだ高湿空気を、排水ホースを介して機外に排気させる乾燥工程時の洗濯乾燥機の断面図を示す。
【0016】
まず、洗濯乾燥機の概略構造及び洗濯脱水工程について説明する。
外枠2の内側には外槽20が設けられており、下部の複数個のサスペンション21により支持されている。
外槽20の内側にある回転ドラム29にはドア3を開けて投入された洗濯物30があり、回転ドラム29の開口部の外周には脱水時の洗濯物30のアンバランスによる振動を低減するための流体バランサー31が設けられている。
【0017】
回転ドラム29の内側には洗濯物30を、上方まで持ち上げて自重で落下させる複数個のリフター33が設けられており、この回転ドラム29は回転ドラム用金属製フランジ34に連結された主軸35を介してドラム駆動用モータ36に直結されている。
外槽20の開口部には弾性体からなるゴム系のパッキン38が取付けられており、外槽20内とドア3との水密性を維持し、洗い,すすぎ及び脱水時の水漏れの防止が図られている。
また、回転ドラム29には、側壁に遠心脱水及び通風用の多数の小孔(図示せず)を有しており、この小孔を通過した水は、外槽20の底壁に開口した排水口37及び排水弁8を介して排水ホース9に到り、下水に排出される。
【0018】
乾燥装置6は、回転ドラム29内の洗濯物30に送風を導く送風路を構成する循環ダクト5と送風手段たるファン61とペルチェユニット70及びヒータ62とから構成され、外槽20と分離して外枠2に固定(図示せず)されている。
ペルチェユニット70は外枠2内の最上方付近に配置され、ファン61の上流側において、循環ダクト5の内部に後述する放熱フィン72(図4)を有し、ファン61に送給される空気を加熱する加熱手段を構成している。
【0019】
そして、循環ダクト5と通風口32は柔軟構造のベローズ4で略水平に接続し、ヒータ62の出口と吹出しノズル11は外槽20の最上面から中心までの間に且つ外槽20の中心より前面の位置に柔軟構造のベローズ7で外槽20に対し略垂直に接続して外槽20の振動を吸収している。排水口37,ファン61の吸気口及び吐出口には温度センサ(図示せず)が設けてある。
【0020】
このように構成したドラム式洗濯乾燥機は、洗濯工程においては、回転ドラム29内に洗濯物を投入し、排水弁8を閉じた状態で給水して外槽20に洗濯水を溜め、回転ドラム29を回転させて洗濯物30を洗濯する。また、脱水工程においては、排水弁8を開いて外槽20内の洗濯水を排水し、回転ドラム29を回転させて遠心脱水する。
【0021】
次に乾燥工程について説明する。
まず、ペルチェユニット70の吸熱面側に設けた熱交換ユニット74に通水するとともにペルチェユニット70に通電する。そして、ペルチェユニット70の放熱フィン72の直上流側に設けた吸気弁13を開くことにより、ベース1下部の隙間から外枠2の内部に吸込まれた外部空気16は、外槽20の側面を流れながら外槽20、モータ36,ファン61の排熱を受けながら温められ、外槽20の上面と外枠2の空間に溜められた高温の内部空気14とともにファン61へ吸込まれる。なお、吸気弁13の開度調整については後述する。
【0022】
吸込まれた外枠2の内部空気14は洗濯物30に吹付けられ、洗濯物30から水分を奪い、湿潤して排水口37、排水弁8から排水ホース9を通り、排水トラップ10の水封じを破って排水孔39に排出される。
なお、一般的な排水トラップの場合、水封じ高さは50〜80mm程度あるため、水封じを破るには排水ホース9側の圧力は約1000Pa以上必要となる。
また、排水孔39からの下水管の臭気を抑えるため、水封じを破った後も高い圧力(所定以上の圧力)を確保する必要があり、排水ホース9からの排気による送風排気工程中は、常に高い圧力を保つようにファン61を制御する。
【0023】
熱交換ユニット74に通水する吸熱用媒体としての水は、はじめ給水弁78を開くことにより、上水道等外部から給水させ、熱交換ユニット74を通過した水は外枠2内の下部に設けた貯水槽90に溜めていく。そして、貯水槽90に水が満たされるタイミングにおいて、給水弁78を閉じ、三方弁101を戻り管側に切り換えるとともに、循環ポンプ98を駆動させて、貯水槽90に溜めた水をペルチェユニット70の吸熱面側に設けた熱交換ユニット74に送給する。
【0024】
後述するように、循環させる水はペルチェ素子の吸熱面で吸熱されるにしたがい、その温度が低下していくため、乾燥時間が経過するにつれ、ペルチェ素子の吸熱面温度も除々に低下していき、成績係数は乾燥初期と比較して低下することになる。そこで、この実施例では、熱交換ユニット74に接続された入口水パイプ75には、ドラム駆動モータ36等の排熱で暖まった枠体2内における上部の空気と熱交換させる排熱回収フィン73が設けられており、極度な水温低下を防止するようにしている。
【0025】
乾燥終了後は、排水孔39側の圧力より排水ホース9側の圧力を高く保ちながら水封じを破らない圧力レベルまでファン61の回転数を下げて、ペルチェユニット70の吸熱で用いた吸熱用媒体として水を溜めた貯水槽90の貯水弁91を開いて流し、排水トラップ10の水封じを回復させて乾燥工程終了となる。
このように、乾燥終了後に、排水ホース9側の圧力を所定以上に保ちながら排水ホースを経由して排水口39に水を供給することにより、排水口39からの臭気の逆流を抑えながら排水トラップ10の水封じを回復させることができる。
なお、この排水トラップの回復は、下水管からの臭気が逆流しない程度に排水ホース9側の圧力が高く保たれていれば、乾燥運転の最後又は乾燥運転の終了後のいずれで行ってもよい。
【0026】
次にペルチェ素子71の成績係数について説明する。
図3は、ペルチェ素子71の吸熱面と放熱面温度差に対する成績係数の変化を模式的に示したものであり、ここでいう成績係数は、放熱面での放熱量をペルチェ素子71の電気入力で除したものである。
図3から分かるように、ペルチェ素子71は、一般的に吸熱面と放熱面温度差が小さいほど吸熱面から放熱面へ効率よく熱をくみ上げることができ、温度差が大きくなるに従い、熱伝導などにより、効率は低下する。
【0027】
そこで、本実施例では、ファン61により循環ダクト5を介して回転ドラム29内に送風される空気の一部もしくは全量を機外へ排気し、それと同量の空気を、吸気弁13を介して外枠2内を通過した外気から吸気することにより、外枠2内の排熱を吸収しつつ、ペルチェユニット70の放熱フィン72を流れる空気を最適な温度に低下することができる。これにより、回転ドラム29へ送風する空気をペルチェユニット70で加熱させる際、放熱面温度をほぼ一定に保つことができ、ほぼ乾燥全期間で成績係数を高くさせた運転が可能となる。
【0028】
図4は、本実施例で用いるペルチェユニット70の概略構成図である。
ペルチェユニット70はペルチェ素子71と放熱面から放熱させるための放熱フィン72、及び吸熱面に取り付けられ、貯水槽90から入口水パイプ75を介して供給される吸熱用媒体としての水から熱をくみ上げるための熱交換ユニット74から主に構成されている。
前述のように、本実施例における乾燥工程では、常に外枠2内を通過させ、ドラム駆動用モータ36等の排熱により暖められた周囲外気を、吸気弁13を介して循環ダクト5に吸気させるとともに、その熱量を吸放熱面に設けた放熱フィン73により回収して水が加熱されるため、放熱面温度をほぼ一定に保つことができる。
【0029】
さらに、ペルチェ素子71に高い成績係数を維持させるためには、熱交換ユニット74に供給する吸熱用媒体として水の温度変化も抑えることが望ましい。
一般に、洗濯及び脱水時のドラム駆動用モータ36からの排熱は、乾燥時には、外枠2内の空気の自然対流により外枠2内の上部に溜められる。また、ファン61に内蔵されるファンモータは、主に乾燥時に使用されて発熱する。
したがって、ペルチェユニット70の吸熱面に流す吸熱用媒体へ効率よく排熱回収させるには、ペルチェユニット70を、ドラム駆動モータ36よりも上部で、ファンモータ近傍に設けるのが好ましい。
【0030】
以上のように本発明では、循環空気の加熱部と除湿部の熱源としてペルチェユニット70を用いることに伴う制約がないため、ペルチェユニットの配置は、吸気弁の直下流側とし、循環ダクトよりも外枠2の上部とするのが最適であるが、乾燥工程がある程度進行すると、ドラム駆動用モータ36からの排熱により、上部のみならず外枠2内全体がある程度加熱されるので、他の部品との配置関係によっては外枠2内のいずれに設けてもよい。
【0031】
図5は、本実施例における乾燥工程の運転パターンと回転ドラムに送り込む温風温度の変化を模式的に示したものである。
前述のように、乾燥工程では、外槽20の上面と外枠2との間の空間の空気を、吸気弁13を介して吸気させ、ペルチェユニット70で加熱した後、ドラムに送風する。温風は衣類を温め、衣類からはその一部の熱を費やして水分が蒸発する。
蒸発した水分を含んだ高湿空気を、吸気弁13を介して吸気したのと同量、排水ホース9を経由して排気させる。
【0032】
以上のように、常に周囲外気を導入し、ペルチェユニット70により加熱して温風を形成するため、温風温度は乾燥中期ではほぼ一定にできる。それに応じて排水ホース9から排出される空気の排気温度も乾燥中期ではほぼ一定となる。
そして、衣類からの水分蒸発が進み、衣類に伝熱した熱量が蒸発に費やされずに衣類の温度上昇が進むと、温風との伝熱量も減り、排気温度は乾燥中期に比べて上昇してくるが、乾燥工程の末期であり、エネルギー損失はさほど大きくない。
【0033】
図6は、洗濯乾燥機の制御装置138のブロック図である。
150はマイクロコンピュータで、各スイッチ112,113,113aに接続される操作ボタン入力回路151や水位センサ134,温度センサ152と接続され、使用者のボタン操作や洗濯工程,乾燥工程での各種情報信号を受ける。マイクロコンピュータ150からの出力は、駆動回路154に接続され、給水電磁弁116,貯水弁91、ドラム駆動用モータ36,ペルチェユニット70,ファン61,ヒータ62,吸気弁13,給水弁78などに接続され、これらの開閉や回転,通電を制御する。また、使用者に洗濯機の動作状態を知らせるための7セグメント発光ダイオード表示器114や発光ダイオード156,ブザー157に接続される。
前記マイクロコンピュータ150は、電源スイッチ139が押されて電源が投入されると起動し、図7に示すような洗濯及び乾燥の基本的な制御処理プログラムを実行する。
【0034】
[洗濯工程及び脱水工程]
(1)ステップS101
洗濯乾燥機の状態確認及び初期設定を行う。
(2)ステップS102
操作パネル106の表示器114を点灯し、操作ボタンスイッチ113からの指示入力にしたがって洗濯/乾燥コースを設定する。指示入力がない状態では、標準の洗濯/乾燥コースまたは前回実施の洗濯/乾燥コースを自動的に設定する。例えば、操作ボタンスイッチ113aを指示入力された場合は、乾燥の高仕上げコースを設定する。
(3)ステップS103
操作パネル106のスタートスイッチ112からの指示入力を監視して処理を分岐する。
(4)ステップS104
洗濯を実行する。洗濯は洗い,中間脱水,すすぎ,最終脱水を順次実行するが、通常のドラム式洗濯乾燥機と同様であるので、詳細な説明は省略する。
(5)ステップS105
洗濯乾燥コースが設定されているかどうかを確認して処理を分岐する。洗濯コースのみが設定されている場合は、運転を終了する。
(6)ステップS106
外槽20の下部にある排水口37とファン吸気口の初期温度を測定する。
(7)ステップS107
洗濯乾燥コースが設定されている場合は、高速脱水を実行する。高速脱水は、回転ドラム29を高速で回転させ衣類から効果的に水分を脱水する(高速で遠心脱水)。本実施の形態例では、回転ドラムの回転数を毎分1700回転程度に設定している。
(8)ステップS108
高速脱水を開始してから、規定の時間になったかどうかを確認して処理を分岐する。
【0035】
[乾燥工程]
(9)ステップS109
温風温度、ペルチェユニット70の吸熱用媒体の初期温度を測定する。
(10)ステップS110
給水弁78を開き、ペルチェユニット70の熱交換ユニット74に通水する。
(11)ステップS111
乾燥工程を実行する。ファン61は高速回転、吸気弁13を開、ペルチェユニット70に規定電圧を通電し、回転ドラム29の正逆回転を繰り返し、回転ドラム29内の衣類の位置を入れ換えながら、高温の温風を衣類に吹き付け、衣類全体の温度が上昇し衣類から水分が蒸発する。
なお、吸気弁13の開度は、衣類の重量が大きいほど、大量の乾燥用空気が必要となることから、洗濯時間等を自動的に定めるため計測される衣類の重量と最適な吸気弁13の開度との対応マップ等を使用して、あらかじめ衣類の重量に応じた設定開度とする方式や衣類重量に応じた温風温度となるように常に開度を制御する方式などで調節することにより、衣類の重量に応じた乾燥運転に適したペルチェユニット70の放熱面温度を維持させることができる。
さらに、ペルチェユニット70の放熱フィン72を通過する空気の温度を測定し、最も効率のよい乾燥が行われるよう、ペルチェユニット70への通電量及び吸気弁13の開度を最適値にフィードバック制御するようにしてもよい。
(12)ステップS112
乾燥開始からの経過時間が規定の時間になったかどうかを確認して処理を分岐する。
(13)ステップS113
給水弁78を閉じて、循環ポンプ98を駆動させる。
(14)ステップS114
乾燥開始からの経過時間が規定の時間になったかどうかを確認して処理を分岐する。
(15)ステップS115
外槽下部排水口温度T1aと外気温度T2aを測定する(中間温度の設定)。
(16)ステップS116
乾燥開始からの経過時間が規定の時間になったかどうかを確認して処理を分岐する。
(17)ステップS117
終了判定のための外槽下部排水口温度T1bと外気温度T2bを測定する。
(18)ステップS118
外槽下部排水口温度と外気温度の各々中間温度と終了判定温度との差を求め(ΔT1=T1a-T1b, ΔT2=T2a-T2b)、さらにそれらの温度差(ΔT1-ΔT2)が規定温度以上であるかどうかを確認して処理を分岐する。
(19)ステップS119
乾燥開始からの経過時間が規定の時間になったかどうかを確認して処理を分岐する。
【0036】
[終了工程]
(20)ステップS120
排気開始から規定の時間が経過した場合、もしくは中間温度と終了温度の差が規定の温度より大きくなった場合、洗濯物の乾燥度(=乾布の質量/湿布の質量)が1.0以上となり乾燥が終了したと判断し、排水孔39側の圧力より排水ホース9側の圧力を高く保ちながら水封じを破らない圧力レベルまでファン61の回転数を下げた後、貯水槽90の貯水弁91を開いて水を流し、排水トラップ10の水封じを回復させる。
(21)ステップS121
貯水弁91を開いてからの経過時間が規定の時間になったかどうかを確認して処理を分岐する。
(22)ステップS122
水位センサ134の圧力が規定の圧力になったかどうかを確認して処理を分岐する。
(23)ステップS123
貯水弁91を開いてから規定の時間が経過した場合、もしくは水位センサ134の圧力が規定の圧力より大きくなった場合、排水トラップ10の水封じが回復したと判断し、ファン61を停止、モータ36を停止、吸気弁13を閉じ、貯水弁91を閉じて乾燥工程が終了する。
【0037】
このように構成した洗濯乾燥機は、乾燥工程全期間において、外枠2内の排熱を有効活用しつつ、ペルチェユニット70の成績係数の高い条件での運転が可能となり、消費電力量を削減できる。
発明者の実験によると、衣類5kg,ペルチェ素子入力約400W,風量約1.6m3/minの条件において、乾燥工程約120分の運転パターンは、通常の水冷除湿乾燥と比較して消費電力量を約15%削減できることが確認できた。
【0038】
さらに、ファン61へ吸込まれる筐体内部空気14が外槽20,モータ36,ファン61などの排熱により温められた場合、直接外部空気16を吸込んだ場合と比較して乾燥工程の消費電力量全体の約5%を削減することが可能になった。
また、外部空気16を吸込んでも排水ホース9より洗濯物30の水分を排水孔39に排出するため室内の環境を悪化させずに消費電力を削減することができる。
さらに、乾燥終了時に排水ホース9側の内圧を保ちながら排水トラップ10の水封じを回復させるため、排水孔39から逆流する下水の臭気が室内に漏れて環境を悪化させることはない。
【0039】
図8は、本発明におけるペルチェユニット70の吸熱側熱媒体の循環経路内に排熱回収熱交換器を設けた第2の実施例を示したものである。
本実施例では、貯水槽からの冷水とオーバーフロー管を通すドラムからの高湿空気とを熱交換させる排熱回収熱交換器99をオーバーフロー管の一部に設けた構成となっている。ペルチェ素子71の吸熱面に設けた熱交換ユニット74に流す冷水は、貯水槽に水が溜まり次第、熱交換ユニット74と貯水槽90の間で循環させる。このため、冷水はペルチェユニット70において吸熱されるに従い、温度は低下していく。このため、乾燥時間が経過するにつれ、ペルチェ素子71の吸熱面温度も除々に低下していき、成績係数は乾燥初期と比較して低下する。このため、吸熱面に流す入口水パイプ75には、ドラム駆動用モータ36等の排熱で暖まった筐体内上部の空気と熱交換させる吸熱フィンが設けてある。
本実施例では、さらにオーバーフロー管17から排気される高湿空気と貯水槽90からの水とを、ペルチェユニット70に流入させる前に熱交換させるため、ペルチェ素子71吸熱面に設けた熱交換ユニット74入口の冷水温度を上げることができる。これにより、ペルチェ素子吸熱面の温度低下を防ぐことができ、成績係数の低下をさらに防ぐことができる。
【0040】
図9は、図8に示す本発明で用いる排熱回収熱交換器99の具体例を示したものである。この排熱回収熱交換器99は、オーバーフロー管17の外周に、貯水槽90からペルチェユニット70の熱交換ユニット74に冷水を戻す戻り管97の一部を巻きつけた構成となっている。熱交換性能の向上のため、オーバーフロー管17、戻り管97ともに銅などの熱伝導性の良い材料が望ましい。またオーバーフロー管17と戻り管97の密着性の向上のため、オーバーフロー管17には、戻り管97の外周の略半分が収まるような凹凸(図示せず)を設けるのが好ましい。
【0041】
なお、以上の実施例では、洗濯から乾燥までを一貫して行う洗濯乾燥機について述べたが、乾燥のみ行う乾燥機に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のとおり、本発明によれば、大きなコストアップを招くことなく、衣類乾燥のための加熱手段としてのペルチェ素子の成績係数を良好に維持することができ、消費電力の低減、乾燥時間の短縮の観点で優れた効果を奏することができ、乾燥機または洗濯乾燥機の省エネ技術として広く利用されることが期待される。
【符号の説明】
【0043】
1 ベース
2 外枠
3 ドア
4,7 ベローズ
5 循環ダクト
6 乾燥装置
8 排水弁
9 排水ホース
10 排水トラップ
10a 穴
11 吹出しノズル
12 循環空気
13 吸気弁
14 筐体内部空気
16 外部空気
17 オーバーフロー管
18 排気ホース
20 外槽
21 サスペンション
22 前面カバー
23 背面カバー
27 フィルタダクト
29 回転ドラム
30 洗濯物
31 流体バランサー
32 通風口
33 リフター
34 フランジ
35 主軸
36 ドラム駆動用モータ
37 排水口
38 パッキン
39 排水孔
40 送風ダクト
40a 吹出し口
42 吸気口
51 冷却水供給管
53 循環空気
59 フィルタ
61 ファン
62 ヒータ
67 ブロワ
68,116 給水電磁弁
69 給水ホース
70 ペルチェユニット
71 ペルチェ素子
72 放熱フィン
73 排熱回収フィン
74 熱交換ユニット
75 入口水パイプ
76 出口水パイプ
77 前面支持パネル
78 給水弁
79 断熱材
80 排熱回収パイプ
81 循環ファン
82 吸気ダクト
83 三方弁
84 水位センサ
85 凝縮水トラップ
86 循環水ポンプ
87 排除弁
88 排水パイプ
89 ダクト戻りパイプ
90 貯水槽
91 貯水弁
93 バイパスパイプ
94 吸熱フィン
95 オーバーフロー管
96 除湿リブ
97 戻り管
98 循環ポンプ
99 排熱回収熱交換器
100 外気温度サーミスタ
101 三方弁
138 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥時に内部が乾燥室となる外槽と、該外槽内に回転自在に配置され洗濯物を収容する回転ドラムと、該回転ドラムを駆動するモータと、該回転ドラムを支持するとともに筐体をなす外枠と、加熱手段及び送風手段による温風を、前記回転ドラム内の洗濯物に送風するための循環ダクトを有する乾燥装置と、前記外槽から排出される水を排出する排水ホースとを備えた乾燥機または洗濯乾燥機において、
前記加熱手段の一つは、放熱面により前記送風路内の空気を加熱するペルチェ素子であり、前記ペルチェ素子の吸熱面を前記送風路外に配置するとともに、前記循環ダクト内に前記外枠内を通過した後の外気の導入量を調整する吸気手段を設けたことを特徴とする乾燥機または洗濯乾燥機。
【請求項2】
前記吸気手段による外気の導入に合わせ、前記回転ドラム通過後の空気を、前記ペルチェ素子の吸熱面に供給する吸熱用媒体と熱交換させた後、前記排水ホースを介して外部に排出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の乾燥機または洗濯乾燥機。
【請求項3】
前記吸気手段の開度を洗濯物の重量に応じた設定開度に予め制御し、乾燥工程の全期間において、該設定開度により定まる外気を導入するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の乾燥機または洗濯乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−120746(P2011−120746A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281098(P2009−281098)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】