説明

表皮一体発泡品

【課題】複数の所定形状に裁断した表皮片を接ぎ合わせて袋状の表皮を形成し、この表皮内にパッド成形用の発泡液を注入して表皮と一体にパッドを発泡成形する表皮一体発泡品において、前記発泡液が外部に漏出せず、表皮内に空気溜りが発生しないようにする。
【解決手段】複数の表皮片10、11を点状に溶着した溶着部20、21、22により表皮片10、11を接ぎ合わせると共に、溶着部20、21、22間に通気部23、24、25を設けて表皮内の空気、発泡ガスを外部に放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用シートに備えるヘッドレスト、アームレストなどの表皮一体発泡品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヘッドレストなどには、複数の所定形状に裁断した表皮片をミシンで縫製して袋状の表皮を形成し、この表皮内に、発泡体製パッドを表皮と一体に発泡成形したものが知られている(例えば、特許第3494774号公報参照)。
【0003】
この表皮は複数の表皮片をミシン縫いして接ぎ合わせて袋状に形成しているため、接ぎ目、ミシン針の針孔などから、パッド発泡液が外部に漏出することがないようにしている。
【0004】
即ち、図4に示すように、表皮片10、11の端末を縫糸20A、20Aで接ぎ合わせた後、この接ぎ合わせた部分に、シール材30Aを縫糸30Aで縫着して、表皮片
10、11の接ぎ目、ミシン針の針孔などからのパッド発泡液の漏出を防止している。
【0005】
ところが、図4に示すように、表皮片10、11を接ぎ合わせて、シール材30Aを接ぎ目に設けた表皮に、パッド発泡液を注入してパッド4を発泡成形すると、パッド発泡液は外部に漏出しないが、図4に示すように、空気溜りHが発生し、所定の外形形状にヘッドレストA´が成形できない不具合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3494774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、従来品は表皮片10、11の端末をミシンで接ぎ合わせた後、シール材30Aを接ぎ合わせ個所に縫着しなければならないため、表皮の縫製工数もかかるし、前記空気溜りHの発生により、発泡品の外観品質も損なわれる不具合があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するための本発明に係る表皮一体発泡品構造は、複数の所定形状に裁断した表皮片を接ぎ合せて袋状の表皮を形成し、該表皮内にパッド成形用の発泡液を注入して表皮と一体にパッドを発泡成形する表皮一体発泡品構造において、前記表皮片を重ねて接ぎ合わせる接ぎ合わせ個所に、該接ぎ合わせ個所に沿って、接ぎ合わせる表皮片を部分的に溶着した溶着部と、この溶着部間に有する非溶着個所からなる通気部とを有することである。
【0009】
以上の溶着部はミシンタイプの超音波溶着機などで、重ねた表皮片の端末に沿って行い、通気部は溶着部に溶着されない非溶着部で、パッド発泡時の袋状の表皮内の空気が接ぎ合わせ個所より外部に放出し、パッド成形用の発泡液が外部に浸出しない程度に前記溶着部を形成されている。
【0010】
そのため、溶着部は接ぎ合わせ方向に、溶着位置が異なるように、複数の点線状など部分的に溶着し、この溶着部間の非溶着個所を通気部とするのが好ましい。
【0011】
また、接ぎ合わせる表皮片が超音波等で溶着し難い場合には、前記接ぎ合わせる部分の表皮片間に、溶着片を介在させることが望ましい。
【0012】
斯様に、接ぎ合わせる表皮片間に溶着片を介在させることにより、接ぎ合わせ強度を向上し得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の表皮片を接ぎ合わせて袋状に形成する際、その接ぎ合わせ個所に、パッド成形用の発泡液漏出防止用のシール材が不要になるし、一体発泡品内に空気溜りができず、一体発泡品の外観品質を向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る一体発泡品たるヘッドレストの断面図である。
【図2】表皮片の接ぎ合わせ個所を示す部分斜視図である。
【図3】表皮片間の接ぎ合わせ個所に溶着片を介在させた状態の部分斜視図である。
【図4】従来品の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例を図1−図3に基づいて説明する。
【0016】
図1、2は本発明の第1実施例を示し、斯かる実施例に係る表皮一体発泡品は自動車用シートに備えるヘッドレストAを示し、図中10、11、12は表皮片で、この複数の所定形状に裁断した表皮片10…を接ぎ合わせて袋状の表皮が形成されている。図中(イ)…は表皮片の接ぎ合わせ個所を示す。
【0017】
図中4は前記袋状の表皮内にパッド成形用の発泡液を注入して発泡成形したパッドで、このパッド4を発泡成形する前に表皮内に、シートに取付けるステー5が装入されている。以上のパッド成形用の発泡液は表皮片12に開口した注入孔(不図示)に注入ノズルを挿入して注入する。
【0018】
以上の表皮片10、11、12は超音波、高周波などによる溶着によって接ぎ合わされている。
【0019】
図2は以上の溶着による接ぎ合わせ個所を示し、図中20…、21…、22…は点線状など部分的に溶着した溶着部、23…、24…、25は非溶着部、通気部を各々示す。
【0020】
以上の溶着部20…は、例えば、ミシンタイプの超音波溶着機を使用して行う。即ち、表皮片10、11の端末110、111を揃えて下電極上に載置し、棒状又はローラからなる上電極で、表皮片10、11の端末110、111に沿って加圧して行う。
【0021】
そして、溶着部20、21、22は、図2に示すように、端末110、111から内方に向けて多段状に、且つ位相が異なるようにし、また、各溶着部20、21、22の溶着面積が異なるように…などして、各溶着部20、21、22間に存在する非溶着部23、24、25から、空気が抜出するが、パッド発泡用の発泡液が漏出しないように形成されている。
【0022】
以上の溶着は各表皮片10、11の外面10A、11A側を接合するように、下電極上に載置して行い、溶着による接ぎ合わせ後、外面10A、11Aが外側になるように折り返して袋状の表皮を形成する。
【0023】
また、各表皮片10、11、12は、従来ヘッドレストなどに使用されている通気性を有さない部材、内面にコーティング加工した部材などを使用して、各表皮片10、11、12自体からの前記発泡液の漏出、空気もれを防止している。
【0024】
図3は、各表皮片10、11の超音波、高周波などによる溶着強度が不足する場合の接ぎ合わせを示し、各表皮片10、11の端末110、111に沿って、テープ状などの超音波、高周波溶着性に優れた部材からなる溶着片3を介在させて、表皮片10、
11を溶着して接ぎ合わせる。
【0025】
斯様に溶着片3を表皮片10、11間に介在させることにより、溶着部20…の溶着
強度が向上するし、溶着部20…間に存在する非溶着部23…からの前記発泡液が漏出でき、また、発泡液の発泡時の発泡ガス等の外部への放出がより可能となる。
【0026】
以上の表皮一体発泡品は、複数の表皮片10、11、12を部分的な溶着により継ぎ合せて表皮を形成しているため、接ぎ合わせ個所に沿って溶着部20、21、22と通気部23、24、25が存在する。
【0027】
依って、この袋状の表皮内にステー5などのフレームを装入した後、表皮内に、パッド成形用の発泡液を注入してパッド4を表皮と一体に発泡成形すると、表皮内の空気或いは発泡成形時に発生する発泡ガスが、表皮の接ぎ個所全体より外部に放出される。
【0028】
そのため、表皮内に空気溜りが発生しないし、発泡液が表皮内に均一に分散されて発泡成形され、外観品質に優れた表皮一体発泡品を製造できる。
【0029】
加えて、複数の表皮片を縫い付けて接ぎ合わせる従来品に比べ、各表皮片の端末に近い位置での溶着による接ぎ合わせのため、縫着の際の縫い代を短くできるし、また、縫着作業に対して接ぎ合わせ工数を低減でき、しかも、シール材が不要となる。更に、発泡液は表皮の接ぎ個所より外部に漏出することはない。
【0030】
図示するものは、表皮一体発泡品として、ヘッドレストを示したが、アームレスト、コンソールボックスなどの表皮一体発泡品にも本発明は利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
4はパッド、 10、11、12は表皮片、 20、21、22は溶着部、
23、24、25は通気部、 イは接ぎ合わせ個所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の所定形状に裁断した表皮片を接ぎ合せて袋状の表皮を形成し、該表皮内にパッド成形用の発泡液を注入して表皮と一体にパッドを発泡成形する表皮一体発泡品構造において、
前記表皮片を重ねて接ぎ合わせる接ぎ合わせ個所に、該接ぎ合わせ個所に沿って、接ぎ合わせる表皮片を部分的に溶着した溶着部と、この溶着部間に有する非溶着個所からなる通気部とを有する表皮一体発泡品構造。
【請求項2】
前記接ぎ合わせる部分の表皮片間に、溶着片を介在させてなる請求項1記載の表皮一体発泡品構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−173342(P2011−173342A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39544(P2010−39544)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】