説明

表皮一体発泡成形品

【課題】 ヘッドレストに適応可能な低反発弾性率を確保しつつ、地球温暖化防止に寄与可能な表皮一体発泡成形品を得る。
【解決手段】 軟質ポリウレタンフォーム12を成すポリオール成分14、イソシアネート成分16のうちのポリオール成分14に植物系原料14−1を含有させることで軟質ポリウレタンフォームの反発弾性率が低下する現象に着目し、ポリオール成分14にのみ植物系原料14−1を所定量含有させることによりその反発弾性率を45%未満にした軟質ポリウレタンフォームを、表皮一体発泡成形品、たとえばヘッドレスト10のクッション体として用いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋状表皮体内に軟質ポリウレタンフォームを加圧注入し発泡させてなる表皮一体発泡成形品、特に自動車用シートのヘッドレストとして用いられる表皮一体発泡成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用シートのヘッドレストとして、たとえば、ステーやフレーム等の芯材を内挿した袋状表皮体内にクッション体となる軟質ポリウレタンフォームを加圧注入し発泡させることにより芯材、袋状表皮体を共に一体に成形した、いわゆる表皮一体発泡成形品としてなるものが知られている。
【0003】
ところで、ヘッドレストのクッション体として用いられた軟質ポリウレタンフォームは、通常、廃車処分の際にシュレッダー処理されて焼却される。しかしながら、この種の軟質ポリウレタンフォームは、特開平07−206961号公報等に開示のように一般的に石油系原料から製造されているため、地球温暖化の原因の一つとされている温室効果ガスである二酸化炭素が、その焼却の際に発生することが避けられない。加えて、石油等の有限な資源の枯渇を防止するためにも、軟質ポリウレタンフォームにおける石油系原料の使用量の削減が望まれている。
【0004】
ここで、軟質ポリウレタンフォームの原料として、植物系原料が着目されている(特開2008−056779号公報等)。植物系原料を多く含む軟質ポリウレタンフォームであれば、焼却によって二酸化炭素が発生しても地球規模でいえば地球温暖化は防止できるものと考えられているからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−206961号公報
【特許文献2】特開2008−056779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、自動車用シートのヘッドレストのクッション体として用いられる軟質ポリウレタンフォームには、低反発特性を有していることが衝撃吸収の点から求められ、その要求される反発弾性率は、クッション性の重視されるシートクッションやシートバックのシートパッドとは大きく異なるものとなっている。
【0007】
通常、軟質ポリウレタンフォームを低反発化させるには、物質の結合に用いられる架橋剤を多く含ませることが一般的に行われているが、架橋剤自体が石油系原料からなるものであるため、この架橋剤の増加を伴う軟質ポリウレタンフォームの低反発化は地球温暖化防止の観点から見れば好ましいものとはいえない。
【0008】
本発明は、ヘッドレストに適応可能な低反発弾性率を確保しつつ、地球温暖化防止に寄与可能な表皮一体発泡成形品の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここで、本発明においては、軟質ポリウレタンフォームを成すポリオール成分、イソシアネート成分のうちのポリオール成分に植物系原料を含有させることで軟質ポリウレタンフォームの反発弾性率が低下する現象に着目した。そして、上記の目的のために、請求項1に係る本発明の表皮一体発泡成形品によれば、軟質ポリウレタンフォームを成すポリオール成分、イソシアネート成分のうちのポリオール成分にのみ植物系原料を所定量含有させることによりその反発弾性率を45%未満にした軟質ポリウレタンフォームを、クッション体として用いている。
【0010】
そして、本願の請求項2によれば、自動車用シートのヘッドレストを表皮一体発泡成形品として具体化している。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明では、クッション体を成す軟質ポリウレタンフォームが、ポリオール成分に植物系原料を含有させたものであるため、石油系原料の使用量が低減される。そして、そのポリオール成分への植物系原料の含有により、軟質ポリウレタンフォームの反発弾性率を45%未満としているため、軟質ポリウレタンフォームの低反発化が石油系原料からなる架橋剤の増加を伴うことなく可能となる。従って、軟質ポリウレタンフォームの低反発化と地球温暖化防止への寄与との両立が可能になる。
【0012】
また、請求項2に係る本発明では、表皮一体発泡成形品を自動車用シートのヘッドレストとして具体化しており、反発弾性率を45%未満とした軟質ポリウレタンフォームをヘッドレストのクッション体として用いれば、着座者頭部に対する適切な支持が十分に確保可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の表皮一体発泡成形品としてなるヘッドレストの概略縦断面図を示す。
【図2】本発明の表皮一体発泡成形品のクッション体として用いられる軟質ポリウレタンフォームの成分グラフを示す。
【図3】反発弾性率とポリオール成分への植物系原料の含有率との関係を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
軟質ポリウレタンフォームを成すポリオール成分、イソシアネート成分のうちのポリオール成分にのみ植物系原料を所定量含有させることによりその反発弾性率を45%未満にした軟質ポリウレタンフォームを、表皮一体発泡成形品、たとえば自動車用シートのヘッドレストのクッション体に用いている。
【実施例】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。図1は表皮一体発泡成形品としてなるヘッドレスト10の概略縦断面図、図2は本発明の表皮一体発泡成形品(ヘッドレスト)のクッション体として用いられる軟質ポリウレタンフォーム12の成分グラフを示す。
図示のように、本発明の表皮一体発泡成形品(ヘッドレスト)10においては、軟質ポリウレタンフォーム12を成すポリオール成分14、イソシアネート成分16のうちのポリオール成分にのみ植物系原料14−1を所定量含有させることによりその反発弾性率を45%未満にした軟質ポリウレタンフォームを、表皮一体発泡成形品10、たとえば自動車用シートのヘッドレストのクッション体に用いている。
【0016】
図1を見るとわかるように、表皮一体発泡成形品としてなる自動車用シートのヘッドレスト10は、たとえば、ステー18等の芯材を内挿した袋状表皮体20の内部にクッション体となる軟質ポリウレタンフォーム12を加圧注入し発泡させることにより芯材、袋状表皮体を共に一体に成形されるが、この種の表皮一体発泡成形品の製造方法としては公知の方法が利用できるとともに、その製造方法自体はこの発明の趣旨でないため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0017】
ヘッドレスト10のクッション体となる軟質ポリウレタンフォームは、通常、ポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させることにより製造されるが、本発明において使用する軟質ポリウレタンフォームにおいては、軟質ポリウレタンフォームを成すポリオール成分、イソシアネート成分のうちのポリオール成分にのみ、植物系原料を所定量含有させるものとしている。
【0018】
ここで、ポリオール成分に植物系原料を含有させた場合の、反発弾性率とその含有率との関係グラフを図3に示す。この関係グラフを見るとわかるように、軟質ポリウレタンフォーム12においては、ポリオール成分14への植物系原料14−1の含有率が増すにつれ、軟質ポリウレタンフォーム自体の反発弾性率が低下する特性を有していることがわかる。本発明はこの特性を利用して、軟質ポリウレタンフォーム12を成すポリオール成分14、イソシアネート成分16のうちのポリオール成分にのみ植物系原料14−1を所定量含有させることにより、反発弾性率を45%未満とした軟質ポリウレタンフォームを得るものとし、ヘッドレスト10のクッション体としての適応性を確保している。
【0019】
なお、図2の参照符号14−2はポリオール成分14のうちの石油系原料を示す。そして、軟質ポリウレタンフォーム12におけるポリオール成分14とイソシアネート成分16との比率は約6:4であり、そのうちのポリオール成分の一部として植物系原料14−1が含有される。
【0020】
また、ここでいう植物系原料14−1としては、トウゴマの種子から得られるひまし油が例示できるが、軟質ポリウレタンフォーム12のポリオール成分構造に近い構造を有するものであれば足りるため、ひまし油に限定されず、他の植物系原料を利用することもできる。
【0021】
このようにしてなる軟質ポリウレタンフォーム12であれば、クッション体を成す軟質ポリウレタンフォームが、ポリオール成分に植物系原料を含有させたものであるため、石油系原料の使用量が低減される。そして、そのポリオール成分への植物系原料の含有により、軟質ポリウレタンフォームの反発弾性率を45%未満としているため、軟質ポリウレタンフォームの低反発化が石油系原料からなる架橋剤の増加を伴うことなく可能となる。従って、軟質ポリウレタンフォームの低反発化と地球温暖化防止への寄与との両立が可能になる。
【0022】
そして、反発弾性率が45%未満であれば、ヘッドレスト10において要求される衝撃吸収性能が確保されるため、ヘッドレストのクッション体としての軟質ポリウレタンフォームが容易に確保可能となる。
【0023】
なお、ここでは自動車用シートのヘッドレストを表皮一体発泡成形品として具体化しているが、これに限定されず、たとえば自動車用シートのアームレストに、この発明を応用してもよい。
【0024】
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何ら限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造などの施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
自動車用シートに限定されず、バス、電車、飛行機等の乗り物用シートに用いられる表皮一体発泡成形品にも、本発明は応用できる。
【符号の説明】
【0026】
10 表皮一体発泡成形品(ヘッドレスト)
12 軟質ポリウレタンフォーム
14 ポリオール成分
14−1 植物系原料
14−2 石油系原料
16 イソシアネート成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリオール成分とイソシアネート成分とを含む軟質ポリウレタンフォームを、袋状表皮体内で発泡成形されるクッション体として用いた表皮一体発泡成形品において、
上記ポリオール成分にのみ植物系原料を所定量含有させることによりその反発弾性率を45%未満にした上記軟質ポリウレタンフォームを、上記クッション体として用いたことを特徴とする表皮一体発泡成形品。
【請求項2】
自動車用シートのヘッドレストとしてなる請求項1記載の表皮一体発泡成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−208006(P2011−208006A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77005(P2010−77005)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】