説明

表皮貼り込み製品の製造方法

【課題】縫合ラインの位置が一定の表皮貼り込み製品を容易に得ることができる製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】表面に接着剤が塗布された基材11の接着剤塗布表面13上方にカバー体71を配置し、カバー体71で基材11の接着剤塗布表面13を覆い、カバー体71上に、複数の表皮片が縫合により連結されて表皮片の連結部に段差を有する表皮15を載置して基材の接着剤塗布表面13上方に表皮15を位置させ、表皮15の表面にブレードの刃52を配置し、表皮の連結部の段差部位16aがブレードの刃52に当たるまで表皮15をずらして縫合ライン21aの位置決めを行い、位置決め後の縫合ライン21aの位置を維持し、カバー体71を表皮15と基材11間から退避させて基材の接着剤塗布表面13に表皮15を積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表皮を縫合ラインが一定位置となるようにして基材表面に貼り込んだ表皮貼り込み製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の内装部品として、基材の表面に表皮を貼り込んだ表皮貼り込み製品がある。例えば、インストルメントパネルのメーターフード(速度計等を包囲する部分)や、グローブボックスの開閉蓋、ピラーガーニッシュ等には、合成樹脂製の基材表面に表皮を接着したものがある。
【0003】
また、装飾性を高めるため、複数の表皮片を縫合により連結した表皮を用い、縫合ライン(ステッチ)によって装飾性を高めることが提案されている。しかし、表皮を基材の表面に貼り込む際に、縫合ラインが波打ったり、ゆがんだりし易く、縫合ラインの位置を一定にするのが難しい問題がある。特に表皮が織布等からなる場合には、表皮を基材に手作業で貼り込む際に表皮が部分的に伸び易く、それによって縫合ラインが波打ったり、ゆがんだりし易く、縫合ラインを一定の位置とするのが難しい。しかも、縫合ラインは目に付きやすく、しかも装飾性を高める部分であるため、縫合ラインが波打ったりしていると、装飾性を損ない、製品価値を失うことにもなる。
【0004】
【特許文献1】特開平6−190921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は前記の点に鑑みなされたものであって、縫合ラインが一定位置にある表皮貼り込み製品を容易に得ることができる製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、複数の表皮片が縫合により連結されて前記表皮片の連結部に段差を有する表皮を基材の表面に貼り込んだ表皮貼り込み製品の製造方法において、表面に接着剤が塗布された基材の接着剤塗布表面上方にカバー体を配置し、前記カバー体で前記基材の接着剤塗布表面の少なくとも一部を覆うカバー体配置工程と、前記カバー体上に前記表皮を載置して前記基材の接着剤塗布表面上方に前記表皮を位置させる表皮配置工程と、前記表皮の表面にブレードの刃を当接し、前記連結部の段差部位が前記ブレードの刃に当たるまで前記表皮をずらして前記縫合ラインの位置決めを行い、前記位置決め後の縫合ラインの位置を維持する縫合ライン位置決め工程と、前記カバー体を前記表皮と前記基材間から退避させて前記表皮をそれまで前記カバー体で覆われていた前記基材の接着剤塗布表面に積層するカバー体退避工程と、よりなることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記カバー体配置工程時、前記カバー体が前記基材の接着剤塗布表面を一部残して覆い、前記表皮配置工程時、前記カバー体で覆われていない前記基材の接着剤塗布表面上に前記表皮の連結部の段差部位付近が位置するように前記表皮を前記カバー体上に載置し、前記縫合ライン位置決め保持工程時、前記カバー体で覆われていない前記基材の接着剤塗布表面上に位置する前記表皮の段差部近くに前記ブレードの刃を当接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、複数の表皮片が縫合により連結されて前記表皮片の連結部に段差が形成された表皮の表面にブレードの刃を当接し、前記連結部の段差部位が前記ブレードの先端に当たるまで前記表皮をずらして段差部位の位置決めを行うことによって、段差部位との位置関係が一定(例えば略平行等)となっている縫合ラインの位置決めを行うため、表皮の縫合ラインを容易に一定の位置にすることができる。しかも、その際、基材の接着剤塗布表面の少なくとも一部と表皮の間にカバー体が介在することによって、縫合ラインの位置決めのために行う表皮のずらし作業をスムーズに行うことができる。さらに、位置決め後の縫合ラインの位置を維持した状態で、表皮と基材の接着剤塗布表面との間に介在するカバー体を退避させて除去することにより、表皮をそれまでカバー体で覆われていた基材の接着剤塗布表面に積層しているため、表皮の縫合ラインの位置を一定にして表皮の表面に容易に貼り込むことができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、基材の接着剤塗布表面の一部と表皮が接触し、基材の接着剤塗布表面の他の部分についてはカバー体により表皮との接触が妨げられた状態で、表皮をずらして縫合ラインの位置決めを行うため、基材の接着剤塗布表面の粘着性に起因する表皮のずらし難さを少なくすることができる。しかも、カバー体で覆われていない基材の接着剤塗布表面上に位置する表皮の表面にブレードの刃を当接して前記縫合ラインの位置決めを行うため、表皮における位置決め後の縫合ライン付近は、基材の接着剤塗布表面にブレードの刃で押し付けられて当接した状態となり、位置決め後の縫合ラインの状態(位置を含む)が、接着剤の粘着性とブレードの刃による押圧とによって維持されることになり、カバー体の退避時に縫合ラインがずれるのを容易かつ確実に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下この発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の製造方法で製造された表皮貼り込み製品の一例を示す斜視図、図2は図1のA−A断面図、図3は表皮の一例を示す斜視図、図4は図3のB−B断面図、図5は貼り込み製品の製造方法に使用する表皮貼り込み装置の一例を示す斜視図、図6は同表皮貼り込み装置の正面図、図7は同表皮貼り込み装置の平面図、図8は同表皮貼り込み装置の右側面図、図9は基材載置台に基材を載置する際の基材および基材載置台の断面図、図10は基材の接着剤塗布表面上方にカバー体を配置する際の基材、カバー体および基材載置台の断面図、図11はカバー体上に表皮を載置する際の表皮、カバー体および基材載置台の断面図、図12は表皮の表面にブレードの刃を当接する際のブレードの刃、表皮、カバー体等の断面図、図13は表皮の端を引っ張る際を示すブレードの刃、表皮、カバー体等の断面図、図14はカバー体を表皮と基材の間から退避させる際を示すブレードの刃、表皮、カバー体、基材等の断面図、図15はブレードの刃を表皮表面から除去する際を示すブレードの刃、表皮、基材等の断面図、図16は表皮の端を基材の縁裏面に接着する際を示す表皮および基材等の断面図である。
【0011】
図1および図2に示す表皮貼り込み製品10は、自動車のグローブボックスにおける開閉蓋として使用される板状の部品である。前記表皮貼り込み製品10は、合成樹脂製の基材11と、その表面に接着剤を用いて貼り込まれた表皮15とよりなる。
【0012】
前記表皮15は、ファブリック等からなり、図3および図4に示すように、複数の表皮片17,19の端部17a,19aを重ねて縫合によって連結したものであり、前記基材11の表面に接着剤で接着される。前記表皮15の周縁は、前記基材11の縁を巻き込んで基材11の裏面に接着固定される。符号16は表皮片の連結部、21,22は縫合糸である。なお、図示の例では表皮15の一方の表皮片17の端部17aは裏側へ折り重ねられて他の表皮片19の端部19aと縫合され、美観に劣る表皮片17の切断端面が露出しないようにされている。また、前記縫合糸21は、表皮の外面に縫合ライン21aとして現れ、表皮貼り込み製品10の装飾性を高める作用を有する。前記縫合ライン21aはステッチとも称され、要求される装飾性に応じた縫い方とされる。
【0013】
前記表皮15において前記表皮片の連結部16は、一方の表皮片17の端部17aが他方の表皮片19の端部19aに重なっているため、一方の表皮片端部17aの厚みによる段差dを有している。符号16aは前記段差dの存在する段差部位である。図示の例の連結部16における段差dは、前記表皮片19側で低くなっている。なお、図3における表皮15の側部に形成されている切り欠き23は、後述のカバー体71上に表皮15を載置する際の位置合わせ用の目印であり、これに関しては後に説明する。
【0014】
次に、前記表皮貼り込み製品10の製造方法について説明する。図5〜図8に、前記表皮貼り込み製品10の製造方法に用いる表皮貼り込み装置の一例を示す。図示の表皮貼り込み装置30は、前記表皮15の段差部位16aの位置を一定にして前記表皮15を基材11に貼り込むことにより、前記縫合ライン21aを位置ずれおよび波打ちの無い一定の位置にして表皮貼り込み製品10を製造するために用いられるものである。
【0015】
前記表皮貼り込み装置30は、フレーム31に基材載置台41、ブレード51およびカバー体71が設けられている。
【0016】
前記基材載置台41は、前記フレーム31の上下中間位置に設けられた支持プレート32上に取り付けられている。前記基材載置台41の上面は基材載置面42となっている。前記基材載置面42は前記基材11の裏面形状と略等しい形状とされている。本実施例では、前記基材載置面42の前端側(作業者側)は、図9等に示すように、前記基材11が前記基材載置面42に載置された際に、前記基材11の縁裏面の接着剤12aが接触しないように、前記基材11の厚みよりも深い凹部42aが形成されている。また、前記基材載置面42には、前記基材11を正しく載置できるように、基材11裏面の凸部やクリップ、あるいは凹部等が嵌る位置決め手段が適宜設けられる。
【0017】
前記ブレード51は、前記支持プレート32上方に設けられ、前記基材載置面42に接近および離間可能とされている。前記ブレード51は、横棒状からなり、前記基材載置面42に接近した際に、前記基材載置面42の上方に左右方向に沿って位置するように設けられている。前記ブレード51には下向きに刃52が突設されている。前記刃52は、前記表皮貼り込み製品10となった際における表皮10の段差部位16aの状態に合致した形状とされ、前記ブレード51が基材載置面42に接近した際に、前記基材載置面42上に載置されている基材11の上方所定位置、すなわち表皮貼り込み製品10とされた際の前記表皮15の段差部位16aの位置と対応する位置に刃先が来るようにされる。
【0018】
前記ブレード51は、前記ブレード51の左右側部に形成されたブレード揺動腕部53によって、前記支持プレート32に取り付けられている。前記ブレード揺動腕部53は、前記支持プレート32における前記基材載置台41よりも前方側(手前側)に立設された取り付け部58,59に、前後揺動可能に下部で軸着される。前記ブレード揺動腕部53の外面には、前記ブレード揺動腕部53を揺動させる際に作業者が把持して操作するためのブレード操作レバー55が設けられている。前記ブレード操作レバー55を前記基材載置台41側へ押すことによって前記ブレード51の刃52が前記基材載置面42に接近し、それに対して前記ブレード操作レバー55を前記基材載置台41側とは反対の作業者側へ引くことにより、前記ブレード51の刃52が前記基材載置面42から遠ざかる。符号56は前記腕部53の軸着用シャフトである。
【0019】
前記カバー体71は、前記接着剤が塗布された基材11の接着剤塗布表面13(図9等に示す)の上方を覆うことのできる大きさの板状とされ、側部には角棒状の補強部71aが設けられている。また、本実施例のカバー体71は、横幅が前記基材11の横幅よりも所定量大とされ、その左右の側部の上面に表皮載置時の位置合わせ用ピン72が立設されている。前記位置合わせ用ピン72に前記表皮15の側部の切り欠き23を合わせて、前記表皮15をカバー体71上に載置することにより、前記表皮15の大まかな位置合わせを行うことができる。前記位置合わせ用ピン72間の間隔は、前記表皮15の横幅よりも大とされ、前記位置合わせ用ピン72と前記表皮15の切り欠き23が係合しないようにされている。
【0020】
前記カバー体71は、前記基材載置面42の上方と他の位置間を移動可能とされている。本実施例では、前記基材載置台41の後方側から、基材載置面42の上方へ移動し、また前記基材載置面42の上方から後方へ退避可能に設けられている。前記カバー体71の移動は、前記基材載置面42に載置された基材11の接着剤塗布表面13との間に所定の隙間(例えば数mm)を設けて、前記接着剤塗布表面13の上方を接着剤塗布表面13に対して略平行に移動するようにされている。
【0021】
前記カバー体71は、左右の側部に形成されたカバー体揺動用腕部73により前記フレーム31に取り付けられている、前記カバー体揺動用腕部73は、前記フレーム31において支持プレート32よりも下方位置に立設されたカバー体取り付け部78に、前後揺動可能に下部で軸着されている。前記カバー体揺動用腕部73の外面には、前記カバー体71を移動させる際に作業者が把持して操作するためのカバー体操作レバー75が設けられている。前記カバー体操作レバー75を手前(作業者側)へ引くことによって、前記カバー体揺動用腕部73が手前(前方)へ揺動して、前記基材載置面42に載置されている前記基材11の上方所定位置へ、前記カバー体71が移動する。一方、前記カバー体操作レバー75を後方(作業者から遠ざかる方向)へ倒すことにより、前記カバー体揺動用腕部73が後方へ揺動して、前記カバー体71が前記基材11の上方から他の位置、図示の例では後方へ退避する。符号79はカバー体軸着用シャフトである。
【0022】
また、本実施例では、図10に示すように、前記カバー体71が前記基材11の接着剤塗布表面13上方所定位置に配置される際に、前記基材11の接着剤塗布表面13の一部を残して覆うようにされており、そのためのカバー体移動規制手段が設けられている。前記基材11の接着剤塗布面13においてカバー体71で覆われない部分13aは、前記基材11の一端部側の部分とされ、図示の例では作業者側へ向けて基材載置面42に載置される基材11の一端部側とされ、表面が窪んだ帯状の部分となっている。前記移動規制手段は、前記カバー体揺動用腕部73を前方へ所定量揺動させた際に、前記カバー体揺動用腕部73に形成されている開口部74の内周縁が、前記フレーム31に設けられている移動規制用ピン76と当たることにより、前記カバー体揺動用腕部73の揺動、すなわちカバー体71の移動を規制するように構成されている。
【0023】
前記表皮貼り込み装置30を用いて行う表皮貼り込み製品の製造方法について説明する。表皮貼り込み製品の製造は、カバー体配置工程と、表皮配置工程と、縫合ライン位置決め工程と、カバー体退避工程とより行われる。
【0024】
カバー体配置工程では、まず、図9に示すように、表面に接着剤12が塗布された前記基材11を基材載置台41の基材載置面42に配置する。本実施例では、前記接着剤12は、基材11の縁の裏面にも塗布されている。符号12aは基材11の縁裏面の接着剤である。前記接着剤12は速乾性ではないものとされ、例えば、ゴム系接着剤、品名:F600青B(セメダイン製)を使用することができる。また、前記のように基材11の縁の裏面は前記基材載置面42の凹部42aから浮いており、前記基材11の裏面の接着剤12aが、前記基材載置面42と接触していない状態となる。次に、前記カバー体操作レバー75を手前に引いて、図10に示すように、前記カバー体71を前記基材11の接着剤塗布表面13の上方に配置する。このとき、前記カバー体71は、前記カバー体移動規制手段により移動量が規制され、前記基材11の接着剤塗布表面13を作業者側の一端部側で帯状に残して覆う。前記接着剤塗布表面13においてカバー体71で覆われない部分13aは、上方が前記カバー体71から露出して開放された状態となる。また、前記カバー体71で覆われる前記基材11の接着剤塗布表面13と前記カバー体71との間には隙間が形成されている。
【0025】
表皮配置工程では、図11に示すように、前記カバー体71上に前記表皮15を載置して、前記基材11の接着剤塗布表面13上方に前記表皮15を位置させる。その際、前記カバー体71に立設されている前記位置合わせ用ピン72に、前記表皮15の側部の切り欠き23を合わせて前記表皮15のおよその位置合わせを行う。この位置合わせにより前記表皮15は、前記カバー体71で覆われていない前記基材11の接着剤塗布表面13a上に、前記表皮15の連結部16の段差部位16a付近が位置するようになる。
【0026】
縫合ライン位置決め工程では、前記ブレード操作レバー55を作業者から遠ざかる方向へ押して、前記ブレード51を前記基材載置面42上へ移動させ、図12に示すように、前記表皮15の表面に配置する。その際、図示の例では前記カバー体71で覆われていない前記基材15の接着剤塗布表面13a上に位置する前記表皮15の段差部16a近くに、前記ブレードの刃52を当接し、前記ブレードの刃52で前記表皮15を押して、前記カバー体71で覆われていない前記基材15の接着剤塗布表面13aに、前記表皮15の裏面を当接させる。なお、前記ブレードの刃52は、前記表皮15の段差部16a近くの低くなった表皮片19上に配置される。そして、図13に示すように、前記ブレード51の下方から手前側へ出ている前記表皮15の端15aを手作業等で引っ張り、前記連結部16の段差部位16aが前記ブレードの刃52に当たるまで前記表皮15をずらして前記縫合ライン21aの位置決めを行う。また、前記ブレードの刃52によって、前記表皮15を、前記カバー体71で覆われていない基材11の接着剤塗布表面13aへ押し付けることによって、前記ブレードの刃52と前記カバー体71で覆われていない基材11の接着剤塗布表面13a間で表皮15を保持し、前記位置決め後の縫合ライン21aの位置を維持する。
【0027】
カバー体退避工程では、前記カバー体操作レバー75を作業者から遠ざかる後方へ押して、図14に示すように、前記カバー体71を前記表皮15と前記基材11間から前記基材載置台41の後方へ退避させ、前記表皮15と前記基材11間から除去する。これによって、前記表皮15は、それまで前記カバー体71で覆われていた基材11の接着剤塗布表面13に積層され、接着剤塗布表面13の接着剤に表皮15の裏面が接触する。
【0028】
その後、前記ブレード操作レバー55を手前側へ引いて、図15に示すように、前記ブレード51を前記基材載置台41から遠ざけてブレードの刃52を前記表皮15の表面から離す。そして、図16のように、前記基材11と表皮15を前記基材載置台41から外し、前記表皮15の端15aで前記基材11の端部を巻き込み、前記表皮15の端15aを前記基材11の端部裏面に接着剤12aで接着固定する。これによって、表皮貼り込み製品を得る。
【0029】
なお、表皮貼り込み製品によっては、前記表皮の端部で基材の端部を巻き込む必要が無い場合もある。また、前記実施例ではカバー体およびブレードは揺動により移動可能とされているが、スライドにより前進後退するものであってもよい。また、前記位置決め後の縫合ラインの位置維持は、他の方法、例えば縫合ライン位置決め後に表皮の縁を把持手段で把持することによって行ってもよい。さらにまた、前記実施例におけるカバー体で覆われない接着剤塗布表面13aを、表皮と基材間に配置した別のカバー体で覆い、このカバー体上に位置させた表皮の段差部位近くにブレードの刃を当接して前記縫合ラインの位置決めを行い、前記実施例で示したカバー体71を基材と表皮間から退避させた後に、前記ブレードの刃を表皮から離し、さらに別のカバー体を表皮と基材間から退避させるようにしてもよい。
【0030】
本発明は、自動車のグローブボックスの開閉蓋の製造に限定されるものではなく、種々の表皮貼り込み製品に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の製造方法で製造された表皮貼り込み製品の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】表皮の一例を示す斜視図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】貼り込み製品の製造方法に使用する表皮貼り込み装置の一例を示す斜視図である。
【図6】同表皮貼り込み装置の正面図である。
【図7】同表皮貼り込み装置の平面図である。
【図8】同表皮貼り込み装置の右側面図である。
【図9】基材載置台に基材を載置する際の基材および基材載置台の断面図である。
【図10】基材の接着剤塗布表面上方にカバー体を配置する際の基材、カバー体および基材載置台の断面図である。
【図11】カバー体上に表皮を載置する際の表皮、カバー体および基材載置台の断面図である
【図12】表皮の表面にブレードの刃を当接する際のブレードの刃、表皮、カバー体等の断面図である。
【図13】表皮の端を引っ張る際を示すブレードの刃、表皮、カバー体等の断面図である。
【図14】カバー体を表皮と基材の間から退避させる際を示すブレードの刃、表皮、カバー体、基材等の断面図である。
【図15】ブレードの刃を表皮表面から除去する際を示すブレードの刃、表皮、基材等の断面図である。
【図16】表皮の端を基材の縁裏面に接着する際を示す表皮および基材等の断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 表皮貼り込み製品
11 基材
12 接着剤
13 接着剤塗布表面
15 表皮
16 連結部
16a 段差部位
17,19 表皮片
21,22 縫合糸
21a 縫合ライン
30 表皮貼り込み装置
41 基材載置台
42 基材載置面
51 ブレード
52 ブレードの刃
71 カバー体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表皮片が縫合により連結されて前記表皮片の連結部に段差を有する表皮を基材の表面に貼り込んだ表皮貼り込み製品の製造方法において、
表面に接着剤が塗布された基材の接着剤塗布表面上方にカバー体を配置し、前記カバー体で前記基材の接着剤塗布表面の少なくとも一部を覆うカバー体配置工程と、
前記カバー体上に前記表皮を載置して前記基材の接着剤塗布表面上方に前記表皮を位置させる表皮配置工程と、
前記表皮の表面にブレードの刃を当接し、前記連結部の段差部位が前記ブレードの刃に当たるまで前記表皮をずらして前記縫合ラインの位置決めを行い、前記位置決め後の縫合ラインの位置を維持する縫合ライン位置決め工程と、
前記カバー体を前記表皮と前記基材間から退避させて前記表皮をそれまで前記カバー体で覆われていた前記基材の接着剤塗布表面に積層するカバー体退避工程と、
よりなることを特徴とする表皮貼り込み製品の製造方法。
【請求項2】
前記カバー体配置工程時、前記カバー体が前記基材の接着剤塗布表面を一部残して覆い、
前記表皮載置工程時、前記カバー体で覆われていない前記基材の接着剤塗布表面上に前記表皮の連結部の段差部位付近が位置するように前記表皮を前記カバー体上に載置し、
前記縫合ライン位置決め工程時、前記カバー体で覆われていない前記基材の接着剤塗布表面上に位置する前記表皮の段差部近くに前記ブレードの刃を当接することを特徴とする請求項1に記載の表皮貼り込み製品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2008−110543(P2008−110543A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295292(P2006−295292)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】