説明

表示パネル、表示装置

【課題】正面輝度の向上と色純度の向上の両立を図る。
【解決手段】表示面側Fから光を放出して画像を表示する表示パネル10であって、表面に反射面を有する反射層12と、反射層12の表示面側Fに形成される第一電極14と、第一電極14の表示面側Fに形成される発光層15と、発光層15の表示面側Fに形成される第二電極16と、反射層12と第一電極14との間に介在するフィルタ13と、第二電極16の表示面側Fに配置され、発光層15を封止する封止層17と、封止層17の表示面側に直接配置され、発光層15から放出される光の垂直反射を抑止する面であって封止層17の表示面側の面と非平行な反射抑止面19を備えるレンズ体18であって、レンズ体18の屈折率と封止層17の屈折率との差が、レンズ体18の屈折率とフィルタ13の屈折率との差未満であるレンズ体とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、表示パネル、表示装置に関し、特にフラットディスプレイなどに用いられる有機発光材料を備える表示パネル、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電流駆動型の有機発光体(OLM:Organic Luminescent Material)を用いた表示パネルとして、有機発光表示パネル(OLED:Organic Light Emitting Display)が知られている。この表示パネルは、視野角特性が良好で、消費電力が少ないという利点を有するため、次世代の表示パネルの候補として注目されている。有機発光表示パネルを用いた表示装置をフルカラー化する構成としては、青、緑、赤に発光する画素を平面内に密に配置し各画素の発光強度を制御することで画像を表示させる構成が提案されている。
【0003】
例えば、透明基板の上に直接配置された透明電極、有機発光部および反射電極を順次積層した構成を採用し、前記有機発光部よりも前記透明基板側に有機発光部から放出される光の色調を調整するフィルタを設けた構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、基板の上に直接配置された反射電極、有機発光部および透明電極を順次積層した構成を採用し、前記透明電極の上にフィルタを設けた構成が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、基板の上に直接配置された反射電極、透明導電層、有機発光部および半透過電極を順次積層した構成を採用し、反射電極と半透過電極との間で光を共振させることでフィルタとして機能させる構成が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−132081号公報
【特許文献2】特開2000−195670号公報
【特許文献3】特開2005−116516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の表示パネル10においては、図6に示すように、不要な波長領域の成分を吸収するということを目的として表示面側Fに外側フィルタ23が設けられている。さらに、正面から観た際の表示パネル10の輝度である正面輝度を向上させようとする場合、レンズ体18と称される表面に曲面を備えた部材を表示パネル10の表示面に配置することが考えられる。
【0008】
ところが、本願発明者らが従来の表示パネル10のような外側フィルタ23を備えた表示パネルにレンズ体18を適用したところ、正面輝度が低下するという知見を得た。
【0009】
そこで、さらに鋭意実験と研究の結果、正面輝度の低下は、外側フィルタ23の屈折率とレンズ体18の屈折率との差が大きいことから、レンズ体18と外側フィルタ23との界面で光の一部が反射し、光の取り出し効率を低下させるという現象を見いだした。
【0010】
本願発明はこのような知見に基づきなされたものでありレンズ体を用いて表示パネルの正面輝度の向上を図りつつ、フィルタによって高い色再現性を確保することができる表示パネル、表示装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本願発明にかかる表示パネルは、表示面側から光を放出して画像を表示する表示パネルであって、表面に反射面を有する反射層と、前記反射層の表示面側に層状に形成される第一電極と、前記第一電極の表示面側に層状に形成される発光層であって、赤色の波長の光を放出する赤有機発光部と、緑色の波長の光を放出する緑有機発光部と、青色の波長の光を放出する青有機発光部とを画素毎に備える発光層と、前記発光層の表示面側に層状に形成され、前記発光層から放出される光を透過する第二電極と、前記反射層と前記第一電極との間に介在し、前記発光層から放出される光の透過率を波長毎に調整するフィルタと、前記第二電極の表示面側に層状に配置され、前記発光層を封止する封止層と、前記封止層の表示面側に直接配置され、前記発光層から放出される光の垂直反射を抑止する面であって前記封止層の表示面側の面と非平行な反射抑止面を備えるレンズ体であって、当該レンズ体の屈折率と前記封止層の屈折率との差が、当該レンズ体の屈折率と前記フィルタの屈折率との差未満であるレンズ体とを備えることを特徴としている。
【0012】
これにより、封止層とレンズ体とはこれらの間にフィルタが介在することなく直接接続され、前記レンズ体の屈折率は前記封止層の屈折率と同一または近似するため、封止層とレンズ体との界面で発光層から放出される光の一部が反射される現象を抑止することが可能となる。従って、レンズ体本来の作用である正面輝度の向上を充分に図ることができる。一方、発光層から放出され反射層で反射する光は、フィルタを2回通過することとなるため、表示面側に放出される光の色純度を向上させることが可能となる。以上から、表示パネルから放出される光の取り出し効率を向上させ、特に、表示パネルの正面輝度を向上させることができ、加えて、色純度の向上も図ることができる為、明るくかつ色再現性の優れた表示パネルを提供することが可能となる。
【0013】
さらに、前記レンズ体の表示面側に配置され、前記画素全体を覆うカバー体と、前記レンズ体と前記カバー体との間に介在し、前記レンズ体と前記カバー体とを接着する接着層とを備え、前記レンズ体の屈折率と前記接着層の屈折率との差、及び、前記接着層の屈折率と前記カバー体の屈折率との差は、いずれも前記レンズ体の屈折率と前記フィルタの屈折率との差未満であることが好ましい。
【0014】
これにより、表示パネル全体の機械的強度を向上させるためのカバー体を接着層を介して取り付けた場合においても、表示面側に放出される光の界面による反射を抑止して、光の取り出し効率を高い状態で維持することが可能となる。
【0015】
上記目的を達成するために、本願発明にかかる表示装置は、表示面側から光を放出して画像を表示する表示装置であって、表面に反射面を有する反射層と、前記反射層の表示面側に層状に形成される第一電極と、前記第一電極の表示面側に層状に形成される発光層であって、赤色の波長の光を放出する赤有機発光部と、緑色の波長の光を放出する緑有機発光部と、青色の波長の光を放出する青有機発光部とを画素毎に備える発光層と、前記発光層の表示面側に層状に形成され、前記発光層から放出される光を透過する第二電極と、前記反射層と前記第一電極との間に介在し、前記発光層から放出される光の透過率を波長毎に調整するフィルタと、前記第二電極の表示面側に層状に配置され、前記発光層を封止する封止層と、前記封止層の表示面側に直接配置され、前記発光層から放出される光の垂直反射を抑止する面であって前記封止層の表示面側の面と非平行な反射抑止面を備えるレンズ体であって、当該レンズ体の屈折率と前記封止層の屈折率との差が、当該レンズ体の屈折率と前記フィルタの屈折率との差未満であるレンズ体とを備えることを特徴としている。
【0016】
これにより、封止層とレンズ体とはこれらの間にフィルタが介在することなく直接接続され、前記レンズ体の屈折率は前記封止層の屈折率以下(同一も含む)であるため、封止層とレンズ体との界面で発光層から放出される光の一部が反射される現象を抑止することが可能となる。従って、レンズ体本来の作用である正面輝度の向上を充分に図ることができる。一方、発光層から放出され反射層で反射する光は、フィルタを2回通過することとなるため、表示面側に放出される光の色純度を向上させることが可能となる。以上から、表示パネルから放出される光の取り出し効率を向上させ、特に、表示パネルの正面輝度を向上させることができ、加えて、色純度の向上も図ることができる為、明るくかつ色再現性の優れた表示パネルを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本願発明によれば、正面輝度の向上を目的として配置されるレンズ体を設けたとしても、発光層から放出される光の一部が界面で反射することを防止することができ、光の取り出し効率を高い状態で維持することが可能となる。また、フィルタを発光層から見て表示面側ではなく反射層側に設けている。従って、発光層から放出された光はフィルタでその一部についてフィルタリングされ、反射層で反射した光がフィルタを再度通過する。つまりフィルタを光が2回通過するので充分に色純度を向上させることが可能となる。以上により、光取り出し効率を高い状態で維持し、かつ色再現性に優れた表示が可能な表示パネル、および、それを用いた表示装置を提供することが可能となる。
【0018】
また、フィルタの上に第一電極、発光層、第二電極を順次積層する一連のプロセスを行うことにより、フィルタの位置ずれを抑止することができ、光取り出し効率を向上させることができる。さらに、フィルタを配置した後に発光層を設けることができるので、フィルタに用いた材料の発光層への侵入を阻止することができる。さらに、レンズ体を用いることで特に表示パネル正面の光取り出し効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本願発明の実施の形態に係る表示パネルの一部を示す断面図である。
【図2】他の実施の形態に係る表示パネルの一部を示す断面図である。
【図3】図1の詳細を示す断面図である。
【図4】レンズ体の貼り合わせプロセスを段階を追って示す断面図である。
【図5】表示パネルを備えた表示装置とその周辺機器を示す図である。
【図6】従来の表示パネルの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本願発明の実施の形態に係る表示パネルについて、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面において、実質的に同一の部材には同一の符号を付している。また、図面は説明のために一部を強調するなどデフォルメすることがあり、必ずしも図面に現れる比率が正しいとは限らない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本願発明の実施の形態に係る表示パネルの一部を示す断面図である。
【0022】
この表示パネル10は、基板11とは逆側の面(表示面側F)から光を放出して画像を表示するトップエミッション型の表示パネルであり、基板11の表示面側Fの表面に、反射層12が形成されている。反射層12の表面には、フィルタ13が形成されている。フィルタ13の表面には、第一電極14が形成されている。第一電極14の表面には発光層15が形成されている。発光層15の表面には、第二電極16が備えられている。第二電極16の表面には封止層17が形成されている。封止層17の表面にはレンズ体18が形成されている。また、表示パネル10は、バンク21によって画素部20毎に分割されており、画素部20は、赤画素部20Rと緑画素部20Gと青画素部20Bの3種類を含んでいる。
【0023】
本実施の形態の場合、発光層15は、有機発光層を含む多層構造となっており、第一電極14側から順に、電子輸送層、有機発光層、正孔輸送層が順次積層された構造となっている(図示せず)。
【0024】
この表示パネル10では、発光層15の表示面側Fではなく、反射層12側にフィルタ13を設けていることを特徴の一つとする。発光層15から放出された光のうち反射層12側へ放出された光はフィルタ13でフィルタリングされ、反射層12で反射された後に再びフィルタ13でフィルタリングされる。そのため、フィルタ13を光が2回通過するのでフィルタリング効率を向上させることができる。また、表示面側Fにフィルタが配置されないため、発光層15から取り出される光の取り出し効率の低下を抑えることができる。
【0025】
以下に、この表示パネル10を構成する各構成部材について説明する。
【0026】
<基板>
基板11は、表示パネル10全体の基礎となる部材であり、その材質は、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコン系樹脂などのプラスチック、アルミナ、金属等、任意の材質を採用しうる。また、基板11は剛性のある板ばかりでなく、可撓性のあるフィルムや金属ホイル等でもかまわない。
【0027】
<反射層>
反射層12は、表面に反射面を有するミラーであり、発光層15から放出される光を表示面側Fに反射させて光の取り出し効率を向上させる層である。反射層12を構成する材料としてはマグネシウムや銀、あるいはそれらの合金等を例示することができる。この反射層12は、膜厚が5〜50nmであることが好ましい。
【0028】
なお、反射層12は、赤画素部20R、緑画素部20G、青画素部20Bの画素部20毎に設けられているが、本願発明に係る表示パネル10は特に限定されるわけではなく、基板11の表面全体にわたって反射層12が設けられるものでもよい。また、基板11自体が反射層12として機能するものでもかまわない。
【0029】
特に、反射層12は、アルミニウム、マグネシウム、金、銀、銅、クロム、ニッケル、パラジウム、ネオジウム、モリブデンおよびこれらの1種類以上を含む合金の群から選ばれることが好ましい。これらは、比較的入手が容易で、容易に成膜可能である。また、基板11の表面に成膜した場合に、可視光において高い反射率を有するからである。
【0030】
<フィルタ>
フィルタ13は、発光層15で放出された光の一部を透過させ、一部を吸収し、吸収した波長とは異なる波長の光を放出する機能を有する。このフィルタ13としては、着色透明フィルタ、ダイクロイックミラー、バンドパスフィルタなどを用いることができる。また、フィルタ13の構成材料の例としては、有機顔料、粒子添加有機顔料、金属酸化物、その金属酸化物を含有した樹脂を挙示することができる。
【0031】
また、フィルタ13は、無機または有機の蛍光色素を含有するものでもよい。これにより発光層15から放出される光を色変換することができ、表示パネル10の表示性能(例えば色再現性)を調整することが可能となるからである。
【0032】
フィルタ13は、反射層12の表示面側Fに表示パネル10全体にわたって一様に設けられている。なお、フィルタ13は、画素部20毎に異なる特性を保持させてもかまわない。また、青画素部20Bに対応する部分にのみフィルタ13を設けるなど、部分的にフィルタ13を設けるものでもよい。
【0033】
ここでフィルタ13の屈折率は、450nmの波長の光で計測した場合、1.60±20%である。
【0034】
<第一電極>
第一電極14は、発光層15の反射層12側であって反射層12の表示面側に層状に形成される導電性を備える層であり、発光層15に電力を供給するための電極である。すなわち第一電極14は、基板11の上に形成される駆動回路(図示せず)と接続される電極である。第一電極14は、発光層15から放出された光に対して十分な透光性を有する導電性材料により構成されている。第一電極14を構成する材料としては、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)や酸化インジウム亜鉛(Indium Zinc Oxide:IZO)などが好ましい。室温で成膜しても良好な導電性を得ることができるからである。
【0035】
また、第一電極14は、発光層15から発光する光、及び、フィルタ13でフィルタリングされた光のそれぞれについて高い透過率(例えば透過率が50%以上)を備えることが好ましい。これにより表示面側Fから放出される光の取り出し効率を高い状態で維持することができるからである。
【0036】
<発光層>
発光層15は、第一電極14の表示面側に層状に形成される層であって、第一電極14と第二電極16との間に電流を流すことにより光を放出する層である。発光層15は、バンク21によって画素部20毎に分断されており、主として赤色の光を放出する赤発光層15Rと、主として緑色の光を放出する緑発光層15Gと、主として青色の光を放出する青発光層15Bとを備えている。赤発光層15Rは、有機発光部の一つである赤有機発光部を備え、緑発光層15Gは、有機発光部の一つである緑有機発光部を備え、青発光層15Bは、有機発光部の一つである青有機発光部を備えている。
【0037】
発光層15としては、有機発光部のみで発光する場合、1層構造を採用することができる。また、有機発光部での発光を制御するために、有機発光部以外に機能を有する層を設けて多層構造としてもよい。例えば発光層15は、第1の第一電極14側から順に、電子輸送層、有機発光部、正孔輸送層が層状に構成される。さらに発光層15は、電子注入層や正孔注入層を備えてもよい。電子注入層及び正孔注入層などは、蒸着法、スピンコート法、キャスト法などにより形成できる。
【0038】
<電子輸送層>
電子輸送層とは電子輸送能を有する層である。電子輸送層としては、ニトロ置換フルオレノン誘導体、チオピランジオキサイド誘導体、ジフェキノン誘導体、ペリレンテトラカルボキシル誘導体、アントラキノジメタン誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリノン誘導体、キノリン錯体誘導体などの化合物を使用することができる。
【0039】
<有機発光部>
有機発光部とは、発光層15に含まれ、光を放出する部分であり、放出する光に対応した有機発光材料により構成される。
【0040】
有機発光材料の具体例としては、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、スチリル化合物、ジフェニルキノン化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属鎖体、2、2'−ビピリジン化合物の金属鎖体、シッフ塩とIII族金属との鎖体、オキシン金属鎖体、希土類鎖体などの蛍光物質を使用することができる。
【0041】
また、有機発光部は、蒸着法、スピンコート法、キャスト法など、ウエットプロセスでもドライプロセスでも形成できる。
【0042】
<正孔輸送層>
正孔輸送層とは、有機発光部が発光するために必要な正孔を輸送する層である。
【0043】
正孔輸送層を構成する材料の具体例としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、ブタジエン化合物、ポリスチレン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、テトラフェニルベンジン誘導体などを挙示することができる。正孔輸送層を構成する材料として特に好ましくは、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物が例示できる。
【0044】
<第二電極>
第二電極16は、発光層15の表示面側Fに層状に形成され、発光層15に電力を供給するための電極である。第二電極16は、発光層15から放出された光に対して十分な透光性を有する導電性材料により構成されている。第二電極16を構成する材料としては、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)や酸化インジウム亜鉛(Indium Zinc Oxide:IZO)などが好ましい。室温で成膜しても良好な導電性を得ることができるからである。
【0045】
また、第二電極16は、発光層15から発光する光については半透明であって、フィルタ13で変換された光について透明であることが好ましい。第二電極16がフィルタ13変換された光を選択的に透過させることで取り出す光の波長選択性を改善できる。
【0046】
<封止層>
封止層17は、第二電極の表示面側に層状に配置され、発光層15を封止する層であり、表示パネル10の表示面側Fにおいて表示パネル10の全領域にわたって形成されている。封止層17は、発光層15を構成する有機化合物が水分や酸素に晒されるとその特性が劣化し易いので、これを防止するために設けられる層である。本実施の形態の場合、封止層17の屈折率は、450nmの波長の光で計測した場合、1.50±20%である。
【0047】
封止層17は、前記屈折率の条件を満たす材料で形成すればよい。例えばシリコン樹脂やアクリル樹脂、エポキシ樹脂を挙示することができる。特に、耐湿性、耐水性に優れ、硬化時の収縮が少ないエポキシ系熱硬化型樹脂を用いることが好ましい。
【0048】
また、封止層17の形成方法としては、材料に応じて、ロールコート、スピンコート、スクリーン印刷法、スプレーコートなどのコーティング法、印刷法を用いることができる。また、封止層17の含有水分を除去するために、酸化バリウムや酸化カルシウムなどの乾燥剤を混入してもよい。
【0049】
<レンズ体>
レンズ体18は、封止層17の表示面側Fに直接配置され、発光層15から放出される光の垂直反射を抑止する面であって封止層17の表示面側Fの面と非平行な反射抑止面19を備え、封止層17の屈折率以下の屈折率の材質からなる部材である。本実施の形態の場合、レンズ体18は、ポリエチレンテレフタレートで形成されており、薄いシートの表面に半球状の膨出部(レンズ)が多数配置されるマイクロレンズアレイである。また、レンズ体18の屈折率は、450nmの波長の光で計測した場合、1.50±20%である。これにより、封止層17からレンズ体18に向かって進む光において封止層17とレンズ体18との界面で反射する光の量を従来のフィルタ13とレンズ体18との界面で反射する光の量よりも抑止することができる。
【0050】
また、レンズ体18は、反射抑止面19を有しているため、発光層15から表示面に対して垂直に放出される光がレンズ体18と表示面側Fの層(例えば空気層)との界面で垂直に反射することを抑止することが可能となる。これにより、光の干渉により光の強度が低下することを抑止することできる。また、レンズ効果により、発光層15から放射状に広がるように放出される光を表示パネル10の正面(表示面に垂直方向)に向けることができ、表示パネル10の正面輝度を向上させることが可能となる。
【0051】
なお、レンズ体18を構成する材料は特に限定されるものではない。例えば、アクリル樹脂やエポキシ樹脂からなるレンズ体18であってもよい。また、レンズ体18は、マイクロレンズアレイとして表示パネル10に設けられるばかりでなく、画素部20に対応する位置に個別に配置するものでもよい。
【0052】
上記構成によれば、封止層17とレンズ体18とはこれらの間にフィルタが介在することなく直接接続され、レンズ体18の屈折率と封止層17の屈折率とが近似するため、封止層17とレンズ体18との界面で発光層15から放出される光の一部が反射される現象を抑止することが可能となる。従って、レンズ体18の本来の作用である正面輝度の向上を充分に図ることができる。一方、発光層15から放出され反射層12で反射する光は、フィルタ13を2回通過することとなるため、表示面側Fに放出される光の色純度を向上させることが可能となる。以上から、表示パネル10から放出される光の取り出し効率を向上させ、特に、表示パネル10の正面輝度を向上させることができ、加えて、色純度の向上も図ることができる為、明るくかつ色再現性の優れた表示パネル10を提供することが可能となる。
【0053】
(実施の形態2)
次に、本願発明に係る表示パネル10の他の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態において、前記実施の形態と同じ機能を有する部材や層は同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
図2は、他の実施の形態に係る表示パネルの一部を示す断面図である。
【0055】
同図に示す表示パネル10は、トップエミッション型の表示パネルであり、前記実施の形態に加えてさらに、カバー体31と、接着層32とを備えている。
【0056】
<接着層>
接着層32は、レンズ体18とカバー体31との間に介在し、レンズ体18とカバー体31とを接着する層であり、レンズ体18の屈折率と接着層32の屈折率との差がレンズ体18の屈折率とフィルタ13の屈折率との差未満となる層である。本実施の形態の場合、接着層32の屈折率は、450nmの波長の光で計測した場合、1.40±20%である。接着層32を構成する材料としては、前記屈折率の条件を満たすことができるのであれば特に限定されるものではない。例えば接着層32を構成する材料としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン樹脂など光硬化型接着性樹脂、熱硬化型接着性樹脂、2液硬化型接着性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの酸変性物からなる熱可塑性接着性樹脂などを用いることができる。また、接着層32は、カバー体31を、レンズ体18の上方近傍に配置しておき、カバー体31とレンズ体18との間に充填することにより形成してもよい。
【0057】
<カバー体>
カバー体31は、レンズ体18の表示面側Fに配置され、画素部20全体を覆う板状の部材であり、表示パネル10全体の耐衝撃性や剛性を向上させるために設けられる。カバー体31は、発光層15の表示面側Fに配置されるため、発光層15から放出される光を透過する材質で構成され、接着層32の屈折率とカバー体31の屈折率との差がレンズ体18の屈折率とフィルタ13の屈折率との差未満となる材質で構成される。本実施の形態の場合、カバー体31の屈折率は、450nmの波長の光で計測した場合、1.50±20%である。具体的に、カバー体31を構成する材料としては、がラスを例示することができる。
【0058】
上記構成によれば、前記実施の形態1に記載の作用効果に加え、表示パネル10全体の機械的強度を向上させることができる。しかも、レンズ体18の屈折率と接着層32の屈折率とカバー体31の屈折率とが近似するため、レンズ体18と接着層32との界面や接着層32とカバー体31との界面で発光層15から放出される光の一部が反射される現象を抑止することが可能となる。従って、光の取り出し効率を高く維持し、かつ、正面輝度を高く維持しながら機械的強度の強い表示パネル10を提供することが可能となる。
【0059】
次に、上記表示パネル10を備えた表示装置50の説明をする。
【0060】
図5は、表示パネルを備えた表示装置とその周辺機器を示す図である。
【0061】
同図に示すように、表示装置50は、表示パネル10を備える薄型フラットTVである。表示装置50は、上記実施の形態1に係る表示パネル10を備えることにより、高精細、広視野角で美しく画像を表示することができる。また、表示パネル10の光取り出し効率が高いため、有機発光部に過度の電流を流して高い発光強度を得る必要が無く、長寿命の表示装置50を得ることが可能となる。また、上記実施の形態2に係る表示パネル10を備えることにより、上記効果を享受しつつ表示装置50の機械的強度の向上を図ることが可能となる。
【0062】
なお、本願発明に係る表示装置は、上述した実施の形態に限定されるものではない。実施の形態1及び2における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態も本願発明に含まれる。また、実施の形態1及び2に対して本願発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本願発明に係る表示パネルを内蔵した表示装置も本願発明に含まれる。
【0063】
また、上記実施の形態1や実施の形態2に係る表示パネル10は、パッシブマトリクス型表示パネルでも、アクティブマトリクス型表示パネルであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本願発明は、平面光源及びフラットディスプレイなどに用いられる有機発光表示パネルに利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 表示パネル
11 基板
12 反射層
13 フィルタ
14 第一電極
15 発光層
15B 青発光層
15G 緑発光層
15R 赤発光層
16 第二電極
17 封止層
18 レンズ体
19 反射抑止面
20 画素部
20B 青画素部
20G 緑画素部
20R 赤画素部
21 バンク
23 外側フィルタ
31 カバー体
32 接着層
50 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面側から光を放出して画像を表示する表示パネルであって、
表面に反射面を有する反射層と、
前記反射層の表示面側に層状に形成される第一電極と、
前記第一電極の表示面側に層状に形成される発光層であって、赤色の波長の光を放出する赤有機発光部と、緑色の波長の光を放出する緑有機発光部と、青色の波長の光を放出する青有機発光部とを画素毎に備える発光層と、
前記発光層の表示面側に層状に形成され、前記発光層から放出される光を透過する第二電極と、
前記反射層と前記第一電極との間に介在し、前記発光層から放出される光の透過率を波長毎に調整するフィルタと、
前記第二電極の表示面側に層状に配置され、前記発光層を封止する封止層と、
前記封止層の表示面側に直接配置され、前記発光層から放出される光の垂直反射を抑止する面であって前記封止層の表示面側の面と非平行な反射抑止面を備えるレンズ体であって、当該レンズ体の屈折率と前記封止層の屈折率との差が、当該レンズ体の屈折率と前記フィルタの屈折率との差未満であるレンズ体と
を備える表示パネル。
【請求項2】
さらに、
前記レンズ体の表示面側に配置され、前記画素全体を覆うカバー体と、
前記レンズ体と前記カバー体との間に介在し、前記レンズ体と前記カバー体とを接着する接着層とを備え、
前記レンズ体の屈折率と前記接着層の屈折率との差、及び、前記接着層の屈折率と前記カバー体の屈折率との差は、いずれも前記レンズ体の屈折率と前記フィルタの屈折率との差未満である
請求項1に記載の表示パネル。
【請求項3】
請求項1〜請求項2のいずれか1項に記載の表示パネルを備えた表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−60498(P2011−60498A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207084(P2009−207084)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】