説明

表示パネルの駆動回路および表示装置

【課題】簡易かつ安価な回路構成で、安定した駆動波形を出力することのできる、表示パネルの駆動回路および表示装置を提供する。
【解決手段】配線および前記配線に接続される表示素子を有する表示パネルを駆動するための駆動回路であって、前記配線の電位を第1の電位に向けて遷移させる第1のスイッチと、前記配線の電位を前記第1の電位に保つフィードバックアンプと、前記フィードバックアンプの出力を前記配線に供給するかしないかを選択する第2のスイッチと、を有している。前記第1のスイッチと前記第2のスイッチは並列に前記配線と接続されている。前記第1のスイッチの駆動能力は、前記フィードバックアンプの駆動能力よりも低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルの駆動回路および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線表示装置、プラズマ表示装置、有機EL表示装置などの平面型表示装置が知られている。この種の表示装置は、多数の表示素子がマトリクス状に配列された表示パネル(マトリクスパネル)と、表示素子を駆動するための駆動回路と、を備えている。
【0003】
特開2003−131611号公報(特許文献1)には、オペアンプを用いて電圧のフィードバック制御を行う表示装置の駆動回路が開示されている。しかしこの回路構成では、電位遷移時のオーバーシュートやアンダーシュートを抑制するために、選択電位から非選択電位までの広い出力電圧範囲にわたり、アンプの位相特性を確保する必要があった。
【0004】
特開2004−4429号公報(特許文献2)には、オン抵抗の異なる複数のMOSFETを組み合わせて用いる駆動回路が開示されている。ただしこの回路構成では、MOSFETのオン抵抗に起因する電圧降下を回避するために、MOSFETサイズを大きくする必要があった。
【特許文献1】特開2003−131611号公報
【特許文献2】特開2004−4429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、簡易かつ安価な回路構成で、安定した駆動波形を出力することのできる、表示パネルの駆動回路および表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様は、
配線および前記配線に接続される表示素子を有する表示パネルを駆動するための駆動回路であって、
前記配線の電位を第1の電位に向けて遷移させる第1のスイッチと、
前記配線の電位を前記第1の電位に保つフィードバックアンプと、
前記フィードバックアンプの出力を前記配線に供給するかしないかを選択する第2のスイッチと、を有しており、
前記第1のスイッチと前記第2のスイッチは並列に前記配線と接続されており、
前記第1のスイッチの駆動能力は、前記フィードバックアンプの駆動能力よりも低いことを特徴とする表示パネルの駆動回路である。
【0007】
本発明の第二態様は、
前記駆動回路と、
前記駆動回路によって駆動される表示パネルと、を備えることを特徴とする表示装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易かつ安価な回路構成で、安定した駆動波形を出力することのできる、表示パネルの駆動回路および表示装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
【0010】
本発明は、多数の表示素子がマトリクス状に配列された表示パネル(マトリクスパネル)を有する画像表示装置に好ましく適用できる。この種の画像表示装置としては、電子線表示装置、プラズマ表示装置、有機EL表示装置などがある。電子線表示装置では、表示素子として、FE型電子放出素子、MIM型電子放出素子、表面伝導型放出素子などの冷陰極素子が好ましく用いられる。
【0011】
<第1実施形態>
(画像表示装置の構成)
図2A及び図2Bは、画像表示装置の構成を示す図であり、図2Aは平面図、図2Bは断面図である。画像表示装置は、マトリクスパネル(表示パネル)1、制御部4、走査駆動部5、変調駆動部6を備えている。走査駆動部5と変調駆動部6はそれぞれIC(集積回路)で構成されている。マトリクスパネル1は、複数の電子放出素子3A(「電子源」ともいう)が配置されたリアプレート1Aと、蛍光体3Cが配置されたフェースプレート3Bとを備える。ここでは電子放出素子3Aとして、表面伝導型放出素子が用いられている。リアプレート1A上の電子放出素子は、走査配線2と変調配線3によってマトリクス駆動される。各走査配線2は、フレキシブルプリント配線板(FPC)等を介して走査駆動部5の出力端子に接続される。また各変調配線3は、FPC等を介して変調駆動部6の出力端子に接続される。
【0012】
制御部4が走査駆動部5と変調駆動部6を制御し、走査配線2と変調配線3の間にたとえば数十ボルトの駆動電圧を印加することにより、電子放出素子3Aから電子が放出される。フェースプレート3Bには、数kVから数十kVの高圧が印加されている。電子放出素子3Aから放出された電子は、フェースプレート3Bに引き寄せられ、蛍光体3Cに衝突する。これにより発光が得られる。このときの明るさは、所定期間中に蛍光体3Cに衝突する電子の量により決まる。したがって、駆動電圧の値、もしくは、印加期間、またはその両方により、明るさを制御することが可能である。これにより階調表示が可能となる。
【0013】
この実施形態では、走査配線2に印加する走査信号および変調配線3に印加する変調信号の電圧を制御部4が制御することにより、さまざまな映像の表示を行う。また、上述したように、蛍光体3Cの発光により得られる明るさは、電子放出素子の駆動電圧(走査信号と変調信号の電位差)によって決まる。したがって、正確な輝度特性を得るために、電子放出素子3Aの駆動電圧の安定化、すなわち、駆動電圧の波形暴れ(オーバーシュート、アンダーシュート、リンギングなど)の防止が重要となる。
【0014】
(駆動部)
走査駆動部5は、一または複数の走査配線2を選択するための駆動回路である。走査駆動部5は、選択する走査配線2には選択電位を印加し、それ以外の走査配線2には非選択電位を印加する。選択する走査配線2を順次切り替えることによって、垂直方向の走査が実現される。この走査駆動部5は、集積回路によって構成されている。一つの集積回路で全ての走査配線の走査を行う構成にすると、集積回路から各走査配線までの経路長の差が大きくなってしまう。この問題を解決するために、本実施形態では、複数(4つ)の集積回路を用いて走査駆動部5を構成している。
【0015】
変調駆動部6は、入力画像信号に基づき変調された変調信号を、各変調配線3に印加する駆動回路である。変調信号は、単一または複数の定電圧電源の出力から生成される。変調駆動部6も複数の集積回路(ここでは5個の集積回路)によって構成される。
【0016】
(変調信号)
図4を参照して、変調信号について説明する。207は、Nラインの走査配線に印加される走査信号の波形を示し、208は、N+1ラインの走査配線に印加される走査信号の波形を示す。選択されるラインには、所定の期間(たとえば一水平走査期間)、マイナス十数V〜数十Vの選択電位が印加される。209は、ある変調配線に印加される変調信号の波形を示している。変調駆動部6は、走査配線に選択電位が印加されている期間(ローの期間)に、変調信号を出力する。この実施形態では、プラス数十Vのパルス幅変調波形の変調信号が用いられる。通常、表面伝導型放出素子を用いた画像表示装置においては、パルス幅が広いほど、輝度の積分値が大きくなり、明るくなる。したがって、図4の例では、Nラインの表示素子よりも、N+1ラインの表示素子のほうが、輝度が大きくなる。
【0017】
(走査駆動部)
次に、走査駆動部5の構成および動作について具体的に説明する。図3は、走査駆動部5のブロック図である。図3に示すように、走査駆動部5は、シフトレジスタ部7、バッファスイッチ8、フィードバックスイッチ9B、フィードバックアンプ9を有する。
【0018】
シフトレジスタ部7は、選択するラインを決定し、制御信号を生成・出力するロジック回路である。シフトレジスタ部7は、不図示のDフリップフロップにより構成されるシフトレジスタと、シフトレジスタの出力・シフトクロック・シフトデータの出力の論理演算を行う論理素子と、から構成される。
【0019】
バッファスイッチ8は、シフトレジスタ部7から出力されるシフトデータ(制御信号)を、走査配線の駆動に必要な電圧・電流レベルに変換し出力する機能をもつ回路である。
【0020】
フィードバックスイッチ9Bは、シフトレジスタ部7からの信号に基づいて、アンプ9の入力9Aと接続するIC駆動出力(出力パッド)10を切り替える回路である。選択中のライン(走査配線)の電位が、アンプ9にフィードバックされる。アンプ9の他方の入力には、基準電位refとして選択電位V1が接続されている。アンプ9は、選択中の走査配線の電位と基準電位refとを比較し、それらの差に応じた信号でバッファスイッチ8を制御する。これにより、選択中の走査配線の電位が基準電位refに保たれるようにする。
【0021】
次に、バッファスイッチとアンプの動作を具体的に説明する。ただし、説明の簡単のため、1ch分の出力に関わる構成のみを示す。
【0022】
まず図7および図8を参照して従来の構成を説明する。図7のフィードバック用NchMOSFET13は、図3のフィードバックスイッチ9Bにあたるものである。STRONG駆動PchMOSFET12は、走査配線を非選択電位V2に規定するためのスイッチであり、IC駆動出力10を非選択電位V2に制御する。STRONG駆動NchMOSFET11は、走査配線を選択電位V1に規定するためのスイッチである。各走査配線用のSTRONG駆動NchMOSFET11のソース端子が共通ラインに接続され、その共通ラインがAMP_NchMOSFET14を介してOPAMP15の出力端子に接続される。フィードバック用NchMOSFET13には、選択期間のあいだ、図8のNラインFB選択SW信号101が入力される。フィードバック用NchMOSFET13がオンになり、選択されているIC駆動出力10の電位がOPAMP15にフィードバックされる。走査配線に流れる電流とSTRONG駆動NchMOSFET11のオン抵抗に起因する電圧降下により、IC駆動出力10の電位は選択電位V1よりも低い。そこで、OPAMP15は、IC駆動出力10の電位と、Ref電位(選択電位V1)と、を比較し、IC駆動出力10がRef電位になるようにAMP_NchMOSFET14を制
御する。その結果、図8のNライン出力波形103を得ることが出来る。
【0023】
従来はこのように、アンプ回路の動作電圧は非選択電位V2から選択電位V1の間の全ての電位に対応する必要があった。波形暴れ等を抑えるには、アンプ帯域とスルーレートを全ての走査電圧範囲で制御しなければならなかった。したがって、OPAMP15およびAMP_NchMOSFET14には全ての電圧範囲で高速性が要求され、コストアップの一因となっていた。
【0024】
本実施形態では、このようなAMP回路に対する厳しい要求を不要とする回路構成および駆動方法を実現する。図1、図4を用いて本実施形態の走査駆動部の構成を具体的に説明する。図1は、図示の簡単のため、2ch分の出力回路の構成のみ示しているが、出力回路はch数(走査配線の数)分設けられる。フィードバックアンプは、複数のchに共通に設けられる。
【0025】
図1において、IC駆動出力10は走査配線2に接続される出力パッドである。非選択電位V2用の駆動手段として、STRONG駆動PchMOSFET12とWEAK駆動PchMOSFET17の2つのスイッチが、走査配線に対して並列に接続されている。STRONG駆動PchMOSFET12は、走査配線2を非選択電位V2に駆動するためのスイッチである。WEAK駆動PchMOSFET17は、STRONG駆動PchMOSFET12よりも駆動能力が低い(たとえばオン抵抗が10倍以上高い)スイッチであり、走査配線の電位を選択電位から非選択電位に向けて遷移させるために用いられる。
【0026】
選択電位V1用の駆動手段として、STRONG駆動NchMOSFET11とWEAK駆動NchMOSFET16の2つのスイッチが、走査配線に対して並列に接続されている。また、走査配線の電位がフィードバックされるOPAMP15が設けられており、OPAMP15の出力はSTRONG駆動NchMOSFET11のソースに接続されている。ここで、WEAK駆動NchMOSFET16(第1のスイッチ)は、STRONG駆動NchMOSFET11よりも駆動能力が低い(たとえばオン抵抗が10倍以上高い)スイッチであり、走査配線の電位を非選択電位から選択電位(第1の電位)に向けて遷移させるために用いられる。またWEAK駆動NchMOSFET16の駆動能力はOPAMP15の駆動能力よりも低い。OPAMP15は、走査配線の電位を選択電位に保つためのフィードバックアンプである。そして、STRONG駆動NchMOSFET11(第2のスイッチ)は、OPAMP15の出力を走査配線に供給するかしないかを選択するためのスイッチである。
【0027】
フィードバック用NchMOSFET13は、選択されている(選択電位で駆動されている)走査配線の電位を、OPAMP15の入力に接続するためのスイッチである。フィードバックオフスイッチ18は、走査配線の電位を選択電位から非選択電位へ、あるいは、非選択電位から選択電位へ遷移する際に、OPAMP15の出力をRef電位に固定するためのスイッチである。フィードバックオフスイッチ18のゲートには、シフトクロック200(図4参照)と同じ波形をレベルシフトした信号を入力する。そのDC電位は、LoがAMP_NchMOSFET14のドレイン電圧、Hiがそのドレイン電圧+5Vである。フィードバックオフスイッチ18は、走査配線の電位遷移期間、すなわちいずれの走査配線も選択電位になっていない時に、オンになる。
【0028】
次に、図4を参照して、走査配線の駆動方法について具体的に説明する。
【0029】
シフトレジスタ部7は、シフトクロック200とシフトデータ200Aに基づき、Nライン選択WEAK_SW信号201を出力する。Nライン選択WEAK_SW信号201
は、不図示のレベルシフタにより、WEAK駆動NchMOSFET16のゲートを駆動できる電圧レベルまでレベルシフトされる。WEAK駆動NchMOSFET16は、Nライン選択WEAK_SW信号201がHiの期間、オンする。その結果、Nライン駆動波形207(Nラインの走査配線に出力される信号の波形)は、非選択電位(たとえば+10V)から選択電位(たとえば−10V)へ安定的に遷移する。WEAK駆動NchMOSFET16のオン抵抗は、電位遷移時に波形暴れ(オーバーシュート、アンダーシュートなど)が起こらないよう、数十オームから数十キロオームに設定されている。このようにして、走査配線の電位は選択電位に規定される。
【0030】
次に、シフトレジスタ部7は、NラインFB_SW・Nライン選択AMP_SW信号202を出力する。この信号はバッファスイッチ8内のレベルシフタにより、STRONG駆動NchMOSFET11のゲートとフィードバック用NchMOSFET13のゲートを駆動できる電圧レベルへシフトされる。その結果、STRONG駆動NchMOSFET11とフィードバック用NchMOSFET13は同時にオンする。さらに、NラインFB_SW・Nライン選択AMP_SW信号202を反転し、レベルシフトし、フィードバックオフスイッチ18をオフする。これにより、選択されている走査配線の電位をRef電位(選択電位(たとえば−10V))に制御する。
【0031】
このようなフィードバック制御により、走査配線2の電流変化とSTRONG駆動NchMOSFET11のオン抵抗による電圧降下の影響が補正され、走査配線の電位が一定に保たれる。
【0032】
その後、NラインFB_SW・Nライン選択AMP_SW信号202がLoになると、NラインのIC駆動出力10はフィードバック回路から切り離される。同時に、N+1ライン選択WEAK_SW信号204がレベルシフトされる。N+1ライン選択WEAK_SW信号204がHiの期間、N+1ラインのWEAK駆動NchMOSFET16がオンすると共に、NラインのWEAK駆動PchMOSFET17がオンする。WEAK駆動PchMOSFET17のオン抵抗は、電位遷移時に波形暴れが起こらないよう、数十Ωから数十キロオームに設定されている。これによりNライン駆動波形207は、選択電位から非選択電位へ安定的に遷移する。その後、STRONG駆動PchMOSFET12が、NラインのIC駆動出力を非選択電位に固定する。
【0033】
以上述べた本実施形態の回路構成によれば、OPAMP15のフィードバック制御によって、走査配線の駆動信号の電位(選択電位)が適正な値に維持される。また、電位の遷移時には駆動能力の低いスイッチが利用されるので、電位の急激な変化を抑制でき、オーバーシュート、アンダーシュート、リンギングなどの波形暴れの発生を防止できる。さらに、OPAMP15が動作するタイミングは、WEAK駆動NchMOSFET16により選択電位に遷移した後であるため、OPAMP15の出力電位はRef電位(選択電位)である−10V付近をほとんど動かない。それゆえ、スルーレートおよびAMP帯域に対する要求は−10V付近の小さい電圧範囲で保証すればよい。このように、電圧遷移時に用いる専用のスイッチを設けたことにより、OPAMP15に対する性能要求が緩和される。したがって、フィードバックアンプを有する信頼性の高い駆動回路を安価に製造することが可能となる。
【0034】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、シフトレジスタ部7から送出する制御信号によってスイッチ駆動からAMP駆動への切り替えを制御していた。通常、シフトレジスタのようなロジック回路は低電圧(たとえば3.3V)で動作している。それゆえ、約十〜数十ボルトの駆動電圧を出力するスイッチを駆動するには、制御信号の電圧レベルをレベルシフタによってシフトする必要がある。
【0035】
これに対して、第2実施形態では、スイッチ駆動からAMP駆動への切り替えを、バッファスイッチ8内のセルフスイッチ(制御回路)で実現するところに特徴がある。これにより、回路構成の簡易化と、スイッチからAMPへの正確な切り替えタイミングの実現とを図っている。これ以外の構成は第1実施形態と同様であるため、以下、第2実施形態に特徴的な構成を中心に説明を行う。
【0036】
(走査駆動部)
図5は、第2実施形態の走査駆動部のブロック図である。図5に示すように、STRONG駆動PchMOSFET12のゲートには、Pch用セルフスイッチ19が接続されている。Pch用セルフスイッチ19は、STRONG駆動PchMOSFET12を制御する制御信号を、WEAK駆動PchMOSFET17の出力に応じて出力する回路である。また、STRONG駆動NchMOSFET11のゲートには、Nch用セルフスイッチ20が接続されている。Nch用セルフスイッチ20は、STRONG駆動NchMOSFET11(第2のスイッチ)を制御する制御信号を、WEAK駆動NchMOSFET16(第1のスイッチ)の出力に応じて出力する回路である。
【0037】
(セルフスイッチ)
図6は、セルフスイッチの回路構成を示している。セルフスイッチは、オペアンプからなる電圧比較器43と、ANDゲート回路44とから構成される。Pch用セルフスイッチ19とNch用セルフスイッチ20の基本構成は同一である。
【0038】
電圧比較器43の入力40は、走査配線(WEAK_MOSFET16、17の出力)に接続され、入力41は、基準電位に接続される。Pch用セルフスイッチ19では、非選択電位V2より低い電位(たとえばV2−1ボルト)に基準電位が設定される。また、Nch用セルフスイッチ20では、選択電位V1より高い電位(たとえばV1+1ボルト)に基準電位が設定される。
【0039】
VCとVEは電圧比較器43の電源端子である。電圧比較器43は、選択電位V1または非選択電位V2と同程度の入出力電圧を扱うため、それに応じた電源電圧を必要とする。本実施形態では、VCをGNDへ、VEを選択電位V1−数V(たとえばV1−5ボルト)の電源へ接続した。このように、セルフスイッチには、シフトレジスタ部7に供給される電源電圧(たとえば3.3ボルト以下)よりも高い電源電圧(たとえば、5ボルト以上数十ボルト以下)が供給される。
【0040】
ANDゲート回路44の入力は、電圧比較器43の出力と、WEAK_MOSFETのゲート(レベルシフタの出力)と、に接続されている。またANDゲート回路44の出力は、STRONG_MOSFETのゲートに接続されている。
【0041】
(Pch用セルフスイッチの動作)
Pch用セルフスイッチ19の動作について具体的に説明する。
【0042】
WEAK駆動PchMOSFET17がオンし、出力10の電位が非選択電位V2に向けて上昇する。Pch用セルフスイッチ19の電圧比較器43は、出力10の電位と基準電位(たとえばV2−1ボルト)とを比較する。出力10の電位が基準電位を超えると、電圧比較器43がオン信号を出力する。ANDゲート回路44は、電圧比較器43の出力と、WEAK駆動PchMOSFET17のゲート制御信号を反転した信号と、のANDをとる。すなわち、WEAK駆動PchMOSFET17がオン状態であり、且つ、出力10の電位が非選択電位V2(目標値)近くまで上昇したときに、ANDゲート回路44からSTRONG駆動PchMOSFET12にゲート制御信号が出力される。これによ
りSTRONG駆動PchMOSFET12がオンになる。なお、WEAK駆動NchMOSFET16がオンするまで、不図示のラッチ回路によってSTRONG駆動PchMOSFET12のオン状態が維持される。
【0043】
(Nch用セルフスイッチの動作)
Nch用セルフスイッチ20の動作について具体的に説明する。
【0044】
WEAK駆動NchMOSFET16がオンし、出力10の電位が選択電位V1に向けて下降する。Nch用セルフスイッチ20の電圧比較器43は、出力10の電位と基準電位(たとえばV1+1ボルト)とを比較する。出力10の電位が基準電位より低くなると、電圧比較器43がオン信号を出力する。ANDゲート回路44は、電圧比較器43の出力と、WEAK駆動NchMOSFET16のゲート制御信号の電圧と、のANDをとる。すなわち、WEAK駆動NchMOSFET16がオン状態であり、且つ、出力10の電位が選択電位V1(目標値)近くまで低下したときに、ANDゲート回路44からSTRONG駆動NchMOSFET11にゲート制御信号が出力される。これによりSTRONG駆動NchMOSFET11がオンになる。なお、WEAK駆動PchMOSFET17がオンするまで、不図示のラッチ回路によってSTRONG駆動NchMOSFET11のオン状態が維持される。
【0045】
第1実施形態のレベルシフタを用いた構成では、各レベルシフタのタイミングにより各MOSFETの駆動を制御しているため、高速かつ高精度のレベルシフタが必要であった。これに対し、本実施形態の構成では、出力電位に応じて(つまり、出力電位が目標値に近づくと)、セルフスイッチがMain_MOSFETの駆動を自動的に開始する。よって適切かつ正確なタイミングで各MOSFETを駆動することができる。そして、精度に対する要求が小さくなるので、回路を単純化できる。しかも、レベルシフタの数を大幅に削減できるので、駆動ICのチップ面積を小さくできる。
【0046】
<第3実施形態>
上記、第1および第2の実施形態では、走査駆動部5は、画像表示装置のマトリクスパネルを駆動したが、本実施形態では、走査駆動部5は液晶表示装置のLEDバックライトを駆動する。これにより、バックライトの輝度むらを抑えながら、ローコスト線順次駆動が可能となる。図9A及び図9Bは、液晶表示装置のLEDバックライトの駆動を行う構成を示す図であり、図9Aは平面図、図9Bは断面図である。
【0047】
液晶表示装置のLEDバックライトは、LEDマトリクス51、制御部56、ライン駆動部57、カラム駆動部58を備えている。ライン駆動部57とカラム駆動部58はそれぞれIC(集積回路)で構成されている。
【0048】
LEDマトリクス51は、複数のLEDブロック54(LEDをシリーズ接続したもの)が配置され、液晶パネル55の裏面で液晶パネルに合わせて発光させることにより所望の画像を表示する。
【0049】
LEDマトリクス51上のLEDブロック54は、ライン選択配線52とカラム選択配線53によってマトリクス駆動される。各ライン選択配線52は、抵抗59を介してライン駆動部57の出力端子に接続される。また各カラム選択配線53は、カラム駆動部58の出力端子に接続される。
【0050】
制御部56がライン駆動部57とカラム駆動部58を制御し、ライン選択配線52とカラム選択配線53の間に抵抗59を介して、たとえば数十ボルトの駆動電圧を印加することにより、LEDブロック54を発光させる。液晶パネル55の映像に合わせて、LED
ブロックを発光させることにより、画面の明るい箇所を明るく発光させ、また、画面の暗い箇所を暗く発光させることにより映像に合わせた輝度制御(ローカルディミング)が可能となる。
【0051】
この実施形態では、カラム選択配線53に切り替えるタイミング、選択時間と、ライン選択配線52に電圧を印加するタイミングを、制御部56が制御することにより、映像に同期して輝度制御を行う。
【0052】
上述したLEDブロック54の発光により得られる明るさは、LEDブロック54印加電圧(抵抗59により制御されたLEDブロック54印加電流)によって決まる。したがって、正確でばらつきの無い輝度特性を得るために、LEDブロック54の駆動電圧(駆動電流)の安定化、すなわち、駆動電圧の波形暴れ(オーバーシュート、アンダーシュート、リンギングなど)の防止が重要となる。
【0053】
(駆動部)
ライン駆動部57は、一または複数のライン選択配線52を選択するための駆動回路である。ライン駆動部57は、選択するライン選択配線52にはマイナス数十Vの選択電位を
印加し、それ以外のライン選択配線52にはGND電位を印加する。選択するライン選択配線52を順次切り替えることによって、垂直方向のLEDブロック54の選択が実現される。このライン駆動部57は、集積回路によって構成されている。
【0054】
カラム駆動部58は、入力画像信号に基づき、カラム選択配線53を選択し、また、選択時間を制御し、各LEDブロック54の発光量を制御する駆動回路である。
【0055】
以上、述べた構成において、ライン駆動部57、カラム駆動部58を、第1および第2の実施形態で述べた走査駆動部5および変調駆動部6の回路構成を用いて実現することにより、オーバーシュート、アンダーシュート、リンギングを抑制出来る。その結果、LEDブロック54に印加する電圧(電流)および時間を正確に制御できるため、正確な輝度制御が可能となり、高精細な映像表現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、第1実施形態の走査駆動部の回路構成を示す図である。
【図2】図2Aは、画像表示装置の平面図であり、図2Bは、画像表示装置の断面図である。
【図3】図3は、走査駆動部のブロック図である。
【図4】図4は、第1実施形態の走査駆動部の動作および出力波形を示す図である。
【図5】図5は、第2実施形態の走査駆動部の回路構成を示す図である。
【図6】図6は、セルフスイッチの回路構成を示す図である。
【図7】図7は、従来の走査駆動部の回路構成を示す図である。
【図8】図8は、図7の回路の動作を説明する図である。
【図9】図9Aは液晶バックライトを駆動する構成の平面図であり、図9Bはその断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線および前記配線に接続される表示素子を有する表示パネルを駆動するための駆動回路であって、
前記配線の電位を第1の電位に向けて遷移させる第1のスイッチと、
前記配線の電位を前記第1の電位に保つフィードバックアンプと、
前記フィードバックアンプの出力を前記配線に供給するかしないかを選択する第2のスイッチと、
を有しており、
前記第1のスイッチと前記第2のスイッチは並列に前記配線と接続されており、
前記第1のスイッチの駆動能力は、前記フィードバックアンプの駆動能力よりも低い
ことを特徴とする表示パネルの駆動回路。
【請求項2】
前記第2のスイッチを制御する信号を、前記第1のスイッチの出力に応じて出力する制御回路を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の表示パネルの駆動回路。
【請求項3】
前記表示素子は、マトリクス駆動される表示素子であり、
前記配線は、マトリクス駆動のための走査配線である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の表示パネルの駆動回路。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の駆動回路と、
前記駆動回路によって駆動される表示パネルと、
を備えることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−211053(P2009−211053A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−850(P2009−850)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】