説明

表示装置、表示方法、ならびに、プログラム

【課題】放出される電磁波を介して画面に表示される情報が漏洩するのを防止する表示装置等を提供する。
【解決手段】表示装置101の表示パネル102の表示素子は、互いに異なる位置に所定の順序で配置され、そのそれぞれは、画素値が与えらると、当該画素値に対応付けられる色相、明度、彩度に色彩を変化させ、信号受付部103は、複数の表示素子に与えるべき画素値が所定の順序で伝送される入力信号を受け付け、記憶部104は、当該入力信号を所定個数の画素値分だけ受け付けるごとに、当該入力信号により指定される画素値と、当該画素値が与えられるべき表示素子の位置と、の対を記憶し、制御部105は、記憶された対のそれぞれを当該所定の順序とは異なる順序で、たとえばランダムもしくは並列に、取得して、表示パネル102の当該取得された対の位置に配置される表示素子に、当該取得された対の画素値を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ等に用いられる表示装置から放出される電磁波を介して画面に表示される情報が漏洩するのを防止するのに好適な表示装置、表示方法、ならびに、これらをコンピュータにより実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パーソナルコンピュータが画面表示に用いるディスプレイ装置等の電子機器が発する電磁波を取得して、情報を抽出し、画面表示されている情報等を盗み出す不正行為に対応するための対策が種々提案されている。
【0003】
情報漏洩を防止するためのハードウェア的な対策としては、漏れ電磁波を低減するために、各種のシールドを設ける手法のほか、以下の文献に開示されるような、ソフトウェア的な技術も存在する。
【非特許文献1】H.Tanaka,O.Takizawa and A.Yamamura, Evaluation and Improvement of the Tempest Fonts, Information Security Applications, 5th International Workshop (WISA 2004), Lecture Notes in Computer Science, vol.3325, pp.457--469, Sringer-Verlag, 2004年8月
【0004】
ここで、[非特許文献1]に開示の技術では、表示装置で用いられる文字の形状に画像処理を施し、漏れ電磁波からの文字画像の視認性を低下させることにより、情報漏洩を防止する技術が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、表示装置が用いられる用途によっては、文字の形状に画像処理を施すことができない場合も多い。このような場合に対応するには、任意の画像を画面に表示する際に、漏れ電磁波からの画像の復元を困難にする技術が強く求められている。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためのもので、ディスプレイ等に用いられる表示装置から放出される電磁波を介して画面に表示される情報が漏洩するのを防止するのに好適な表示装置、表示方法、ならびに、これらをコンピュータにより実現するためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の原理にしたがい、以下の発明を開示する。
【0008】
本発明の第1の観点に係る表示装置は、複数の表示素子、信号受付部、記憶部、制御部を備え、以下のように構成する。
【0009】
すなわち、複数の表示素子は、互いに異なる位置に所定の順序で配置され、そのそれぞれは、画素値が与えらると、当該画素値に対応付けられる色相、明度、彩度に色彩を変化させる。
【0010】
一方、信号受付部は、複数の表示素子に与えるべき画素値が所定の順序で伝送される入力信号を受け付ける。
【0011】
さらに、記憶部は、当該入力信号を所定個数の画素値分だけ受け付けるごとに、当該入力信号により指定される画素値と、当該画素値が与えられるべき表示素子の位置と、の対を記憶する。
【0012】
そして、制御部は、記憶された対のそれぞれを当該所定の順序とは異なる順序で取得して、複数の表示素子のうち当該取得された対の位置に配置される表示素子に、当該取得された対の画素値を与える。
【0013】
なお、当該異なる順序には、ランダムな順序と、並列に対を取得して、並列に表示素子に画素値を与える順序とがありうる。
【0014】
また、本発明の表示装置において、信号受付部に受け付けられる入力信号には、所定の同期信号が所定の同期周期で与えられ、入力信号に含まれる画素値が与えられるべき表示素子の位置は、各同期周期において当該画素値が配置された相対的な時間的位置により定められるように構成することができる。
【0015】
また、本発明の表示装置において、信号受付部に受け付けられる入力信号は、アナログ映像信号、もしくは、ディジタル映像信号であるように構成することができる。
【0016】
また、本発明の表示装置において、制御部は、種から発生される擬似乱数列により、当該対をランダムに取得する順序を定め、制御部は、所定のタイミングで、記憶工程にて記憶される対のハッシュ値を当該擬似乱数列の種とするように構成することができる。
【0017】
また、本発明の表示装置において、当該所定のタイミングは、信号受付部において当該入力信号との同期がとれてから所定時間経過後であるように構成することができる。
【0018】
また、本発明の表示装置において、当該所定のタイミングには、所定の時間間隔おきに生じるものが含まれるように構成することができる。
【0019】
また、本発明の表示装置は、記憶部に記憶された対の画素値から計算される値を不揮発に記憶し、表示装置が動作を開始すると、不揮発に記憶されたハッシュ値を当該擬似乱数列の種とするように構成することができる。
【0020】
本発明のそのほかの観点に係る表示方法は、互いに異なる位置に所定の順序で配置される複数の表示素子であって、そのそれぞれは、画素値が与えらると、当該画素値に対応付けられる色相、明度、彩度に色彩を変化させる複数の表示素子、信号受付部、記憶部、制御部を有する表示装置が実行し、信号受付工程、記憶工程、制御工程を備え、以下のように構成する。
【0021】
すなわち、信号受付工程では、信号受付部が、複数の表示素子に与えるべき画素値が所定の順序で伝送される入力信号を受け付ける。
【0022】
一方、記憶工程では、記憶部が、当該入力信号を所定個数の画素値分だけ受け付けるごとに、当該入力信号により指定される画素値と、当該画素値が与えられるべき表示素子の位置と、の対を記憶する。
【0023】
さらに、制御工程では、制御部が、記憶された対のそれぞれを当該所定の順序とは異なる順序で取得して、複数の表示素子のうち当該取得された対の位置に配置される表示素子に、当該取得された対の画素値を与える。
【0024】
なお、当該異なる順序には、ランダムな順序と、並列に対を取得して、並列に表示素子に画素値を与える順序とがありうる。
【0025】
また、本発明の表示方法において、信号受付工程にて受け付けられる入力信号には、所定の同期信号が所定の同期周期で与えられ、入力信号に含まれる画素値が与えられるべき表示素子の位置は、各同期周期において当該画素値が配置された相対的な時間的位置により定められるように構成することができる。
【0026】
また、本発明の表示方法において、信号受付工程にて受け付けられる入力信号は、アナログ映像信号、もしくは、ディジタル映像信号であるように構成することができる。
【0027】
また、本発明の表示方法において、制御工程では、種から発生される擬似乱数列により、当該対をランダムに取得する順序を定め、制御工程では、所定のタイミングで、記憶工程にて記憶される対のハッシュ値を当該擬似乱数列の種とするように構成することができる。
【0028】
また、本発明の表示方法において、当該所定のタイミングは、信号受付工程にて当該入力信号との同期がとれてから所定時間経過後であるように構成することができる。
【0029】
また、本発明の表示方法において、当該所定のタイミングには、所定の時間間隔おきに生じるものが含まれるように構成することができる。
【0030】
また、本発明の表示方法において、表示装置が、記憶工程にて記憶された対のハッシュ値を計算して不揮発に記憶する工程をさらに備え、表示装置が動作を開始すると、不揮発に記憶されたハッシュ値を当該擬似乱数列の種とするように構成することができる。
【0031】
本発明のその他の観点に係るプログラムは、互いに異なる位置に所定の順序で配置される複数の表示素子であって、そのそれぞれは、画素値が与えらると、当該画素値に対応付けられる色相、明度、彩度に色彩を変化させる複数の表示素子に接続される表示装置制御用コンピュータを、上記の表示装置の各部として機能させ、コンピュータに、上記の表示方法の各工程を実行させるように構成する。
【0032】
当該プログラムは、コンピュータ読取可能な情報記録媒体(コンパクトディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、ディジタルビデオディスク、磁気テープ、または、半導体メモリを含む。)に記録することができる。
【0033】
そして、上記の情報記録媒体は、コンピュータとは独立して配布、販売することができるほか、インターネット等のコンピュータ通信網を介して上記のプログラムそのものを配布、販売することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、ディスプレイ等に用いられる表示装置から放出される電磁波を介して画面に表示される情報が漏洩するのを防止するのに好適な表示装置、表示方法、ならびに、これらをコンピュータにより実現するためのプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に本発明の実施形態を説明する。なお、以下にあげる実施形態は、説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば、これらの各要素または全要素を、これと均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【実施例1】
【0036】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る表示装置の概要構成を示す模式図である。以下、本図を参照して説明する。
【0037】
表示装置101は、複数の表示素子を有する表示パネル102、信号受付部103、記憶部104、制御部105を備える。
【0038】
表示パネル102は、典型的には、アクティブ・マトリクス方式のTFT(Thin Film Transistor)型液晶を利用する。アクティブ・マトリクス方式のTFT型液晶では、複数の液晶セルを表面に格子状に配列させた構造を持っており、各液晶セルに電圧を印加すると、光の透過性が変化する。この透過性を制御することにより、表示パネル102上で画素の色彩(白黒の場合は明暗。カラーの場合は、明度、彩度、色相。後者では、RGB(Red Green Blue)の各光を透過させる程度を変化させることで、各種色彩を表現する。)を変化させることができる。
【0039】
図2は、表示パネル102の典型的な構成を示す模式図である。以下、本図を参照して説明する。
【0040】
表示パネル102には、本図(a)に示すように、表示素子として機能する液晶セル201が複数用意されている。一つの液晶セル201は、TFT 202と、付加容量203と、液晶容量204と、からなる。また、図中の白丸は、共通電極であり、グランドに相当する。
【0041】
ここで、液晶容量204に印加される電圧により、当該液晶セル201の光の透過性が変化する。液晶容量204に並列接続された付加容量203は、TFT 202により印加された電圧を保持するために用いられる。
【0042】
本図においては、理解を容易にするため、1つの画素が、1つの液晶セル201からなり、モノクロ多段階で表示される様子を示しているが、カラー表示の場合には、1つの画素は、RGBの3つの液晶セル201がそれぞれ駆動されることとなる。以下、理解を容易にするため、カラーの場合をモノクロの場合に代表させて説明する。
【0043】
さて、本図(b)に示すように、表示パネル102において、液晶セル201は、H行×W列の格子状に配置されており、各液晶セル201を個別に駆動させるために、走査電極駆動回路211と信号電極駆動回路212とが接続されている。これらの駆動回路211、212は、本実施形態では、制御部105により制御される。
【0044】
走査電極駆動回路211は、TFT 202をON状態にするために、1行ずつ制御パルスを印加する。一方、信号電極駆動回路212は、TFT 202をON状態にするために、1列ずつ制御パルスを印加する。走査電極駆動回路211がi行目(i = 0,1,…,H-1)に、所定電圧を印加し、信号電極駆動回路212がj列目(j = 0,1,…,W-1)に、画素値に対応する信号電圧の信号パルスを印加すると、位置(i,j)に配置される液晶セル201のみが駆動されることになる。液晶セル201に印加された信号電圧は、次の信号電圧が印加されるまで、付加容量203によって保持される。
【0045】
一般的には、入力信号は、垂直同期信号に挟まれる区間で1画面を表現し、水平同期信号が垂直同期信号区間を分割し、水平同期信号に挟まれる区間で1行を表現し、当該水平同期信号に挟まれる区間の時間的な位置に1つの液晶セル201に対して印加される信号電圧が配置される。
【0046】
したがって、垂直同期ならびに水平同期がとれた後は、上記(i,j)の単純な2重ループによって液晶セル201が順番に駆動されることになる。
【0047】
信号電圧は、典型的には、アナログ表現もしくはディジタル表現されたRGB信号として伝送され、必要に応じてディジタル/アナログ変換が実行される。
【0048】
コンピュータ本体からケーブル等を介して、画像表示用に送られる表示装置101への入力信号は、アナログRGB(Red Green Blue)コンポーネント映像信号のようにアナログ表現にすることもDVI(Digital Video Interface)信号のようにディジタル表現にすることも可能であるが、表示装置101において液晶セル201を駆動する信号電圧が生じることにかわりはない。
【0049】
ケーブル等からの電磁波漏れは、ツイスト線を利用したり、同軸ケーブルのようなシールド等を用いることで比較的容易に防止することができる。一方、表示パネル102ならびに液晶セル201は、ユーザに対して露出している必要があるため、液晶セル201を駆動する信号電圧からの電磁波漏れは、防止が比較的難しい。
【0050】
そこで本発明では、液晶セル201を駆動する順序をランダムに変更することで、電磁波漏れが生じたとしても、それから表示画像を復元できなくして、情報漏洩に対処するのである。以下、詳細に説明する。
【0051】
図3は、本実施形態に係る表示装置101にて実行される表示処理の制御の流れを示すフローチャートである。以下、本図を参照して説明する。本処理は、表示装置101に電源を投入することで開始される。
【0052】
すなわち、表示装置101は、電源が投入されると、各種の初期化を行う(ステップS300)。アクティブ・マトリックス方式TFT型液晶を用いた液晶パネルの一般的な初期化の他、以下のような初期化も行う。
【0053】
すなわち、表示装置101の各種設定を記憶する不揮発性メモリ内に用意された乱数種領域sから記憶された値を読み出し、これを、表示装置101にて一時的な情報記憶のために利用されるRAM(Random Access Memory)内に用意された変数rに代入する(r←s)。
【0054】
sに記憶される値は、典型的には後述するように適宜更新され、電源を投入するごとに異なる値とすることが望ましい。後述する手法による他、当該表示装置101の製造番号情報等の定数を採用しても良いし、当該表示装置101に電源を投入した時刻をリアルタイムクロックで入手する等としても良い。
【0055】
ついで、アナログ映像信号インターフェースやディジタル映像信号インターフェースにより構成される信号受付部103は、入力信号との垂直同期を取る(ステップS301)。映像信号としては、アナログRGB信号およびコンポーネント信号や、RGB個別伝送ディジタル信号およびコンポーネント信号、LVDS、DVI、HDMI等の各種のディジタル映像信号等、各種の信号を採用することができる。
【0056】
垂直同期がとれたら、信号受付部103は、入力信号との水平同期を取る(ステップS302)。
【0057】
さらに、表示装置101を制御するCPU(Central Processing Unit)や各種コントローラは、現在受け入れている入力信号の画素値を取得し(ステップS303)、現在の時刻がステップS302において同期が取れた時刻からどれだけ経過しているかを調べる(ステップS304)。そして、当該経過時間から当該画素値を与えるべき表示素子の位置を取得する(ステップS305)。
【0058】
上記のように、垂直同期信号が検出されてから何回水平同期信号が検出されたかから、画素値が与えられるべき場所の行番号iが得られ、水平同期信号が検出されてから現在までの経過時間によって、画素値が与えられるべき場所の列番号jが得られる。なお、当該「時刻」「経過時間」の取得は、リアルタイムクロックを利用する必要はなく、DVI信号やアナログRGB信号で伝達される信号から得ることも可能である。
【0059】
そして、ステップS303で取得された画素値と、ステップS305で取得された位置とを対にして、RAM内に用意されたキューQに追加する(ステップS306)。したがって、CPU等は、RAM内に用意されたキューQと共働して、記憶部104として機能する。
【0060】
そして、キューQに記憶されている対の個数(#Q)が所定個数になったかを調べ(ステップS307)、なっていなければ(ステップS307;No)、ステップS303に戻る。本実施形態では、当該所定個数として、表示パネル102の1行の表示素子数Wを採用する。
【0061】
キューQに記憶されている対の個数(#Q)が所定個数(W)になったら(ステップS307;Yes)、整数の擬似乱数を生成する(ステップS308)。たとえば線形合同法を用いて擬似乱数を生成する場合には、所定の関数fをrに適用する計算を行い、当該計算により値f(r)を、rに代入し、当該値rを乱数として採用する(r←f(r))。このような乱数の計算には、種々の技術を利用することができる。
【0062】
そして、キューQから、r mod #Q番目の対を除去し(ステップS309)、当該除去された対に指定される場所の表示素子の液晶セル201に、当該除去された対に指定される画素値の電圧を印加して、当該表示素子の色彩を変化させる(ステップS310)。ここで「a mod b」は、aをbで割ったときの余りを意味する。
【0063】
そして、キューQが空になるまで(すなわち、#Q = 0となるまで)、ステップS308以降の処理を繰り返す(ステップS311)。
【0064】
上記のように、本実施形態では、所定個数Wを、表示パネル102の1行の画素数としているから、ステップS308〜ステップS311の処理の間現在行iの液晶セル201を駆動するように、表示パネル102の走査電極駆動回路211がi行目に所定電圧の制御パルスを印加し続ければ良い。また、本実施形態では、キューQに登録される対に指定される場所の行番号はいずれも共通するから、対に指定する場所の情報としては、列番号のみを指定することとしても良い。
【0065】
一方、表示パネル102の信号電極駆動回路212は、ステップS309において除去された対に指定される列番号jに対して、対に指定される画素値の信号電圧の信号パルスをステップS310において印加して、液晶セル201を駆動することになる。
【0066】
そして、当該行の印加が終了したら(ステップS311;Yes)、画面全体の描画が完了したか、すなわち、現在描画した行番号iが、表示パネル103の最終行の番号(表示パネル103の行数をHとすると、最終行の番号はH-1に相当する。)になっているか否かを調べ(ステップS312)、そうでなければ(ステップS312;No)、ステップS301に戻る。
【0067】
したがって、表示装置101のCPU等は、RAM等共働して、制御部105として機能する。
【0068】
一方、行番号iが表示パネルの行数Hになっていれば(ステップS312;Yes)、全画面の描画が終わったころになるから、現在RAMに記憶されているrの値を、sに格納してから(ステップS313)、ステップS301に戻る。
【0069】
このような処理を行うことによって、sには、記憶部104に記憶される対の画素値から計算される値が、不揮発に記憶されることになる。
【0070】
なお、ステップS313の処理は、1画面を表示するごとに行うのではなく、適当な時間間隔で行うこととしても良いし、表示装置101の電源を投入してから一定時間が経過した後に行うこととしても良いし、表示装置101自体にスクリーンセーバー機能が実装されている場合には、スクリーンセーバーが開始された際にステップS313の処理を実行することとしても良い。
【0071】
本実施形態においては、各行の表示素子に対する信号電圧の印加の順序をランダムに変化させることによって、漏れ電波からの表示画像の復元を困難にしているが、順序をランダムにする手法については、たとえば、全画面分の(H×W個の)画素値とその位置の対をキューQに格納してから、ランダムに対を取得して、表示素子を駆動することとしたり、1行をさらに複数に分割して、その中でランダムに位置の変更を行うこととしても良い。
【実施例2】
【0072】
上記実施形態では、表示素子を駆動する順序をランダムにすることによって、表示画像の復元を困難にしていたが、本実施形態は、上記実施形態と組み合わせても、単独でも利用可能な手法であり、これも表示画像の復元を困難にする手法である。
【0073】
すなわち、従来の表示パネル102においては、シリアルな順序、すなわち、表示画面内で表示素子が並べられる順序で表示素子を駆動することから、画像情報が復元されることとなっていた。
【0074】
上記実施形態では、ランダムな順序を採用することで、「表示画面内で表示素子が並べられる順序」すなわち、「入力信号に画素値が指定される順序」とは異なる順序で表示素子を駆動している。
【0075】
本実施形態では、パラレルな順序を採用することで、「入力信号に画素値が指定される順序」とは異なる順序で表示素子を駆動するものである。
【0076】
従来の表示パネル102および上記実施形態においては、ある瞬間に信号電圧を印加できる表示素子は、1つに限られていた。これは、走査電極駆動回路211による信号線が行方向の液晶セル201で共有されており、信号電極駆動回路212による信号線が列方向の液晶セル201で共有されているからである。
【0077】
そこで、本実施形態では、画素値とその位置との対を、全画面分だけRAMに蓄積してから、これを並列に電圧印加可能な複数のグループに分割して、並列に駆動する、というものである。典型的には、各グループに属する表示素子の個数は等しいものとし、各グループから1個ずつ表示素子を選択して、これらに同時にパラレルに画素値を表す信号電圧を印加する。
【0078】
図4は、本実施形態に係る表示装置101の概要構成を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
【0079】
表示装置101の表示パネル102の液晶セル201は、右・左および上・下の4つの領域401に分割されており、それぞれの領域401に独立して走査電極駆動回路211と信号電極駆動回路212とが接続されている。したがって、この4つの領域401の液晶セル201を並行して駆動することができる。なお、分割の個数は2×2に限られず、走査電極駆動回路211の個数Mと、信号電極駆動回路212の個数Nと、によって、M×N個とすることができる。
【0080】
また、必ずしも、長方形の表示画面を適当な数の長方形に分割して領域401を構成するのではなく、離間した行や列を櫛形に集めて領域を構成したり、すなわち、行番号や列番号を所定の数で割った余りが等しい行を集めて1つのグループとする等、種々の手法が考えられる。
【0081】
さて、各領域401は、互いに独立かつ並列に各領域401に属する表示素子に信号電圧を印加できるから、各領域401に対応するM×N個の配列(やキュー)をRAMに用意する。
【0082】
入力信号が受付けられると、これに含まれる画素値を印加すべき画面内の位置から、当該位置を含む領域401に対応付けられる配列(やキュー)を選択し、当該選択された配列(やキュー)に、当該画素値(と表示すべき位置)を順に記憶していく。
【0083】
そして、全画面の画素値がすべて、いずれかの配列(やキュー)に保存された後に、制御部105は、複数の走査電極駆動回路211と信号電極駆動回路212を並列に制御して、表示素子を各領域401で並列に駆動するのである。
【0084】
すなわち、制御部105は、各領域401ごとに、配列(やキュー)から画素値を取得して、この画素値を表示すべき位置を同定する。ランダムな順序を採用しない場合には、配列のインデックスから同定できる。ランダムな順序を採用する場合には、キューから取得した対を参照して、上記実施形態と同様に、画素値と位置の情報を得る。
【0085】
そして、制御部105は、各領域401において、取得された画素値を、同定された位置の表示素子に、同時に印加する。この処理は、各領域401ごとに並行してパラレルに行われるので、漏洩する電磁波は、同時に印加される電圧の総和に相当するものとなる。このため、元の画像を復元することは困難となる。
【0086】
本実施形態では、各領域401のそれぞれにおいて表示素子が駆動されるため、同時に駆動される表示素子同士の距離は、ある程度離れることとなる。
【0087】
隣り合う液晶セル201や近接する液晶セル201を同時に駆動したとしても、表示画像の復元は困難となると考えられるが、上記のように、同時に駆動される液晶セル201同士の距離は、できるだけ近接しないようにした方が、元の画像の復元可能性を低くすることができると考えられる。
【0088】
なお、本願で開示する各実施形態においては、アクティブ・マトリックス方式TFT型液晶を表示パネル102として採用しているが、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ等、種々の、各表示素子をシリアルに制御することを想定している表示装置であれば、本発明を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本発明によれば、ディスプレイ等に用いられる表示装置から放出される電磁波を介して画面に表示される情報が漏洩するのを防止するのに好適な表示装置、表示方法、ならびに、これらをコンピュータにより実現するためのプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一つの実施形態に係る表示装置の概要構成を示す模式図である。
【図2】表示パネルの典型的な構成を示す模式図である。
【図3】本実施形態の表示装置にて実行される表示処理の制御の流れを示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係る表示装置の概要構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0091】
101 表示装置
102 表示パネル
103 信号受付部
104 記憶部
105 制御部
201 液晶セル
202 TFT
203 付加容量
204 液晶容量
211 走査電極駆動回路
212 信号電極駆動回路
401 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる位置に所定の順序で配置される複数の表示素子であって、そのそれぞれは、画素値が与えらると、当該画素値に対応付けられる色相、明度、彩度に色彩を変化させる複数の表示素子、
前記複数の表示素子に与えるべき画素値が前記所定の順序で伝送される入力信号を受け付ける信号受付部、
当該入力信号を所定個数の画素値分だけ受け付けるごとに、当該入力信号により指定される画素値と、当該画素値が与えられるべき表示素子の位置と、の対を記憶する記憶部、
前記記憶された対のそれぞれを当該所定の順序とは異なる順序で取得して、前記複数の表示素子のうち当該取得された対の位置に配置される表示素子に、当該取得された対の画素値を与える制御部
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、
当該異なる順序は、ランダムな順序である
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置であって、
前記制御部は、種から発生される擬似乱数列により、当該対をランダムに取得する順序を定め、
前記制御部は、所定のタイミングで、前記記憶部に記憶される対の画素値から計算される値を当該擬似乱数列の種とする
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の表示装置であって、
当該所定のタイミングには、前記信号受付部において当該入力信号との同期がとれてから所定時間経過後が含まれる
ことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項3に記載の表示装置であって、
当該所定のタイミングには、所定の時間間隔おきに生じるものが含まれる
ことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の表示装置であって、
前記表示装置は、前記記憶部に記憶された対の画素値から計算される値を不揮発に記憶し、
前記表示装置が動作を開始すると、前記不揮発に記憶された値を当該擬似乱数列の種とする
ことを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項1に記載の表示装置であって、
当該異なる順序は、並列に複数の対を取得する順序である
ことを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の表示装置であって、
前記信号受付部に受け付けられる入力信号には、所定の同期信号が所定の同期周期で与えられ、入力信号に含まれる画素値が与えられるべき表示素子の位置は、各同期周期において当該画素値が配置された相対的な時間的位置により定められる
ことを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の表示装置であって、
前記信号受付部に受け付けられる入力信号は、アナログ映像信号、もしくは、ディジタル映像信号である
ことを特徴とする表示装置。
【請求項10】
互いに異なる位置に所定の順序で配置される複数の表示素子であって、そのそれぞれは、画素値が与えらると、当該画素値に対応付けられる色相、明度、彩度に色彩を変化させる複数の表示素子、信号受付部、記憶部、制御部を有する表示装置が実行する表示方法であって、
前記信号受付部が、前記複数の表示素子に与えるべき画素値が前記所定の順序で伝送される入力信号を受け付ける信号受付工程、
前記記憶部が、当該入力信号を所定個数の画素値分だけ受け付けるごとに、当該入力信号により指定される画素値と、当該画素値が与えられるべき表示素子の位置と、の対を記憶する記憶工程、
前記制御部が、前記記憶された対のそれぞれを当該所定の順序とは異なる順序で取得して、前記複数の表示素子のうち当該取得された対の位置に配置される表示素子に、当該取得された対の画素値を与える制御工程
を備えることを特徴とする表示方法。
【請求項11】
請求項10に記載の表示方法であって、
当該異なる順序は、ランダムな順序である
ことを特徴とする表示方法。
【請求項12】
請求項11に記載の表示方法であって、
前記制御工程では、種から発生される擬似乱数列により、当該対をランダムに取得する順序を定め、
前記制御工程では、所定のタイミングで、前記記憶工程にて記憶される対の画素値から計算される値を当該擬似乱数列の種とする
ことを特徴とする表示方法。
【請求項13】
請求項12に記載の表示方法であって、
当該所定のタイミングは、前記信号受付工程にて当該入力信号との同期がとれてから所定時間経過後である
ことを特徴とする表示方法。
【請求項14】
請求項12に記載の表示方法であって、
当該所定のタイミングには、所定の時間間隔おきに生じるものが含まれる
ことを特徴とする表示方法。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか1項に記載の表示方法であって、
前記表示装置が、前記記憶部に記憶された対の画素値から計算される値を不揮発に記憶する工程
をさらに備え、
前記表示装置が動作を開始すると、前記不揮発に記憶された値を当該擬似乱数列の種とする
ことを特徴とする表示方法。
【請求項16】
請求項10に記載の表示方法であって、
当該異なる順序は、並列に複数の対を取得する順序である
ことを特徴とする表示方法。
【請求項17】
請求項10から16のいずれか1項に記載の表示方法であって、
前記信号受付工程にて受け付けられる入力信号には、所定の同期信号が所定の同期周期で与えられ、入力信号に含まれる画素値が与えられるべき表示素子の位置は、各同期周期において当該画素値が配置された相対的な時間的位置により定められる
ことを特徴とする表示方法。
【請求項18】
請求項17に記載の表示方法であって、
前記信号受付工程にて受け付けられる入力信号は、アナログ映像信号、もしくは、ディジタル映像信号である
ことを特徴とする表示方法。
【請求項19】
互いに異なる位置に所定の順序で配置される複数の表示素子であって、そのそれぞれは、画素値が与えらると、当該画素値に対応付けられる色相、明度、彩度に色彩を変化させる複数の表示素子に接続される表示装置制御用コンピュータを、
前記複数の表示素子に与えるべき画素値が前記所定の順序で伝送される入力信号を受け付ける信号受付部、
当該入力信号を所定個数の画素値分だけ受け付けるごとに、当該入力信号により指定される画素値と、当該画素値が与えられるべき表示素子の位置と、の対を記憶する記憶部、
前記記憶された対のそれぞれを当該所定の順序とは異なる順序で取得して、前記複数の表示素子のうち当該取得された対の位置に配置される表示素子に、当該取得された対の画素値を与える制御部
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項20】
請求項19に記載のプログラムであって、
当該異なる順序は、ランダムな順序である
ように機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項21】
請求項20に記載のプログラムであって、
前記制御部は、種から発生される擬似乱数列により、当該対をランダムに取得する順序を定め、
前記制御部は、所定のタイミングで、前記記憶工程にて記憶される対の画素値から計算される値を当該擬似乱数列の種とする
ように機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項22】
請求項21に記載のプログラムであって、
当該所定のタイミングには、前記信号受付部において当該入力信号との同期がとれてから所定時間経過後が含まれる
ように機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項23】
請求項21に記載のプログラムであって、
当該所定のタイミングには、所定の時間間隔おきに生じるものが含まれる
ように機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項24】
請求項21から23のいずれか1項に記載のプログラムであって、
前記表示装置用コンピュータは、前記記憶部に記憶された対の画素値から計算される値を不揮発に記憶し、
前記表示装置用コンピュータが動作を開始すると、前記不揮発に記憶された値を当該擬似乱数列の種とする
ように機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項25】
請求項21から24のいずれか1項に記載のプログラムであって、
前記信号受付部に受け付けられる入力信号には、所定の同期信号が所定の同期周期で与えられ、入力信号に含まれる画素値が与えられるべき表示素子の位置は、各同期周期において当該画素値が配置された相対的な時間的位置により定められる
ように機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項26】
請求項25に記載のプログラムであって、
前記信号受付部に受け付けられる入力信号は、アナログ映像信号、もしくは、ディジタル映像信号である
ように機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項27】
請求項19に記載のプログラムであって、
当該異なる順序は、並列に複数の対を取得する順序である
ように機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−176009(P2009−176009A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13478(P2008−13478)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】