説明

表示装置、表示装置の特性量測定方法及びコンピュータプログラム

【課題】ユーザが手動測光器を用いて表示部の測光を行うことなく、キャリブレーション又は特性のチェック等のために液晶パネルの表示部の特性量を測定することができる表示装置、表示装置の特性量測定方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】入力された画像信号の階調値に基づいて表示画像を表示部に表示させる表示装置において、入力された画像信号の階調値を、前記表示部の表示むらの特性に応じて補正し、前記表示部の周辺部の特性量を検出し、前記検出手段が検出した特性量の検出位置を特定し、前記検出手段によって検出された周辺部の特性量と前記むら補正手段によって補正された補正値に基づいて前記表示面の中央部の特性量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリブレーション又は特性のチェック等のために表示部の特性量を測定することができる表示装置、表示装置の特性量測定方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画質劣化防止を目的として、表示装置の表示部に対向して設けられた測光部にて表示部の特性量を自動で測定し、測定された特性量に基づいて表示部の特性量を調整する表示装置が増えてきている。
【0003】
特に近年普及している液晶パネルを用いた場合、一対のガラス基板の間に液晶物質を封入した液晶パネルと、この液晶パネルの背面に配置されたバックライトとを備える構成であり、PC(パーソナルコンピュータ)又は再生装置等の外部装置から与えられる画像信号に応じて液晶パネルを駆動することにより、画像を表示する。液晶表示装置には液晶パネルの駆動回路としてゲートドライバ及びソースドライバが搭載してあり、ゲートドライバ及びソースドライバが液晶パネルの各画素を駆動するトランジスタのゲート及びソースに接続されて、入力された画像信号に基づいてトランジスタのオン/オフを制御すると共に、オンに制御されたトランジスタに画像信号に応じた電圧(液晶パネルへの入力レベル)を印加して、液晶物質の電気光学特性により決定される光透過率を変化させる。これにより、液晶表示装置は、バックライトから照射されて液晶パネルを透過する光の量を画素毎に制御して画像を階調表示することができる。
【0004】
液晶パネルは液晶物質が封入されたガラス基板間の対向距離、所謂液晶ギャップにより液晶物質の電気光学特性が決定されるが、製造バラツキなどの要因で設計値に対して液晶ギャップが狭い画素と広い画素とが混在し、液晶パネルの光透過率が設計値からずれ、所望の階調特性が得られない場合がある。この対策として、入力された画像信号による階調レベル(階調値)と、この階調レベルに対応する液晶パネルへの入力レベルとが関連付けられたLUT(ルック・アップ・テーブル)をメモリなどに記憶しておき、LUTに基づいて階調レベルを入力レベルに変換することによって、液晶表示装置毎に固有の階調特性を補正し、所望の階調特性を実現することが行われている。
【0005】
しかし、液晶パネル及びバックライト等の特性は、液晶表示装置の使用に伴って経年変化する。このため、経年変化が生じている場合には、液晶表示装置の製造時又は出荷時等に記憶されたLUTに基づいて階調特性を補正しても所望の階調特性を実現することができないおそれがある。この問題に対して、液晶表示装置の出荷後に、ユーザ側でLUTを更新する、所謂キャリブレーションを行うことによって対処することが可能である。
【0006】
所望の階調特性を実現する方法として、液晶表示部に対向して設けられた測光部にて検出した画質データを測定し、予め定めた理想的な登録画質データを記憶しておき、測定した測定画質データと登録画質データとの差分データを抽出して、差分データが所定の値以下となるように液晶表示部を制御する自己調整型表示システムが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
さらに、複数の階調毎に液晶パネルの表示部の中央部の輝度値と周辺部の輝度値との相対比を予め記憶しておき、液晶パネルの表示部の周辺部に設置されたスイングセンサで測光した周辺部の輝度値と予め記憶してある相対比とに基づき、表示部の中央部の輝度値を算出し、算出された輝度値に基づき、液晶パネルの輝度値を所要の輝度値に調整して表示する液晶表示装置が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−208548号公報
【特許文献2】特開2007−034209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の自己調整型表示システムのように、測光部を液晶表示装置のベゼルに収容する構成とした場合、測光部により測光できる範囲は液晶の表示部の周辺部のみである。液晶パネルは表示部の周辺部ほど表示むらが発生しやすいため、表示部の周辺部での測光結果を基にキャリブレーションを行う場合には、最適な階調特性で表示を行うことができないおそれがある。特許文献1においても、ユーザが手動測光器にて表示部の中央部の測光を行い、周辺部の測光結果と相関させることができると記載してあるが、その詳細な方法については言及されていない。
【0009】
また、特許文献2に記載の表示装置のように、複数の階調毎に液晶パネルの表示部の中央部の輝度値と周辺部の輝度値との相対比を予め記憶しておく構成とした場合、相対比LUTは液晶表示装置が表示することができる複数の階調毎に相対比を予め取得する必要があるため、相対比LUTの取得に時間がかかるという問題もあった。この作業はユーザが行わなければならないため操作に慣れていないユーザにとっては煩わしいという問題がある。
【0010】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ユーザが手動測光器を用いて表示部の測光を行うことなく、キャリブレーション又は特性のチェック等のために液晶パネルの表示部の特性量を測定することができる表示装置、表示装置の特性量測定方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するためにこの発明に係る表示装置は、入力された画像信号の階調値に基づいて表示画像を表示部に表示させる表示装置において、入力された画像信号の階調値を、前記表示部の表示むらの特性に応じて補正するむら補正手段と、前記表示部の周辺部の特性量を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した特性量の検出位置を特定する検出位置特定手段と、前記検出手段によって検出された周辺部の特性量と前記むら補正手段によって補正された補正値に基づいて前記表示面の中央部の特性量を算出する算出手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、上述した課題を解決するためにこの発明に係る特性量測定方法は、入力された画像信号の階調値に基づいて表示画像を表示部に表示させる表示装置において、入力された画像信号の階調値を、前記表示部の表示むらの特性に応じて補正し、前記表示部の周辺部の特性量を検出し、前記検出手段が検出した特性量の検出位置を特定し、前記検出手段によって検出された周辺部の特性量と前記むら補正手段によって補正された補正値に基づいて前記表示面の中央部の特性量を算出することを特徴とする。
【0013】
また、上述した課題を解決するためにこの発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、表示装置の特性量測定を実行させるためのコンピュータプログラムにおいて、 コンピュータを、前記表示部の周辺部の特性量並びに前記表示部の中央部及び周辺部の特性量を関連付ける関連値に基づいて、前記表示部の中央部の特性量を算出する算出手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、ユーザが手動測光器を用いて表示部の測光を行うことなく、キャリブレーション又は特性のチェック等のために液晶パネルの表示部の特性量を測定することができる表示装置、表示装置の特性量測定方法及びコンピュータプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明に係る表示装置の外観を示す模式的斜視図である。図において1はカラー表示の表示装置である。表示装置1は、略矩形の板状をなす本体部分の正面に表示部2が設けられて映像を表示するようにしてあると共に、背面にスタンドが設けられて机上または床上等に表示部2が略垂直となるように本体部分を支持するようにしてある。
【0016】
また、表示装置1の本体部分の上側には、表示部2の周辺の輝度や色度等を表す特性量を検知するスイングセンサ30が着脱可能に取り付けてある。スイングセンサ30は、略長方形の板状をなして一端部分近傍に光センサが配されると共に、他端部を回動可能に枢支された移動部31を有している。移動部31は、光センサは表示部2の周辺部に対向する位置と、スイングセンサ30の本体部分に設けられた収容部32内に収容されて表示部2に対向しない位置との間を、DCモータの動力により移動するようにしてある。移動部31を自動的に移動させることにより表示部2の特性量を自動的に検知することも可能である。
【0017】
図2は、本発明に係る特性量測定方法を実行するための装置の構成を示すブロック図である。本発明に係る特性量測定方法は、上述の表示装置1及びスイングセンサ30と、これら2つの装置を制御するPC40とを用いて行うことができる。
【0018】
表示装置1は、液晶パネル3、バックライト4、制御部5、ROM6、RAM7、記憶部8、信号入力部9、バックライト駆動部10、操作部11、液晶駆動部12等を備えている。表示装置1の信号入力部9は、PC40などの外部機器にケーブルを介して接続される接続端子を有しており、外部機器から入力される画像信号を取得するようにしてあり、表示装置1はこの画像信号に基づいて液晶パネル3の表示部2に画像を表示するようにしてある。なお、信号入力部9に入力される画像信号は、アナログの信号形式又はデジタルの信号形式のいずれであってもよい。
【0019】
制御部5は、バスを介して表示装置1内の各部に接続してあり、これらの動作を制御することによって、画像の表示などの種々の処理を実行するようにしてある。ROM6は、例えばマスクROM又はEEPPROM等の不揮発性のメモリ素子により構成してあり、制御部5の動作に必要な各種のプログラム及びデータ等が予め記憶してある。RAM7は、SRAM又はDRAM等の書き換え可能なメモリ素子により構成してある。例えば、制御部5はROM6に記憶されたプログラムをRAM7にロードしてプログラムを実行し、プログラムの実行に伴って生成された一時的なデータをRAM7に記憶するようにしてある。
【0020】
操作部11は、表示装置1を操作するための各種のファンクションキーなどを有している。例えば、バックライト4の光量を調整し、表示部2の明るさ(ブライトネス)を設定するブライトネス設定キー11a、階調特性補正(キャリブレーション)処理を行うか否かを指示するキャリブレーション実行キー11b等の各種の設定キーが設けてある。操作部11は、これらのファンクションキーに対するユーザの操作を受け付けて、制御部5へ通知するようにしてあり、制御部5は受け付けたユーザの操作に応じて各部を制御し、設定を更新するようにしてある。
【0021】
液晶パネル3は、一対のガラス基板が対向配置され、その間隙内に液晶物質である液晶層が形成された構造を成している。一方のガラス基板には、複数の画素電極と、画素電極のそれぞれにドレインを接続したTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)とが設けてあり、他方のガラス基板には共通電極が設けてある。TFTのゲート及びソースは、液晶駆動部12のゲートドライバ12a及びソースドライバ12bの各出力段にそれぞれ接続してある。
【0022】
信号入力部9は、信号線Lを介して外部のPC40に接続されており、PC17から出力された画像信号を受け取る。制御部5は、記憶部8に記憶してあるLUT8bに基づいて、信号入力部9で受け取った画像信号を補正して液晶駆動部12へ出力する。
【0023】
液晶駆動部12は、制御部5に制御されて、信号入力部9に入力された画像信号に基づいて液晶パネル3を駆動するようにしてある。液晶駆動部12のゲートドライバ12aは、液晶パネル3が有する多数のTFTのゲートに、入力された画像信号に応じて選択的に電圧を印加するようにしてあり、同様にソースドライバ12bは、TFTのソースに、入力された画像信号に応じた電圧値で電圧を印加するようにしてある。
【0024】
液晶パネル3は、ゲートドライバ12aから印加される電圧によって各画素のTFTのオン/オフが制御され、ソースドライバ12bから入力される出力電圧(液晶パネル3への入力レベル)をオン期間に各画素のTFTに印加することにより、液晶物質の電気光学特性によって決定される光透過率を制御して、光源からの光の透過を調整し、画像を階調表示するようにしてある。液晶パネル3は一対の偏光板(図示は省略する)で挟まれ、更にその背面に光源としてのバックライト4が配設してある。また、液晶パネル3の正面側は外部に露出しており、正面側が画像を表示する表示部2を成している。
【0025】
バックライト4はバックライト駆動部10から与えられる出力電圧により駆動されており、バックライト駆動部10は制御部5により制御されて、ユーザが操作部11を操作して設定したブライトネスに応じて出力電圧を調整してバックライト4へ与え、バックライト4の輝度を調整するようにしてある。これにより、液晶パネル3の表示部2でのブライトネスを調整することができる。
【0026】
記憶部8は、キャリブレーションプログラム8a、理想階調特性テーブル8b、LUT8c、第1テーブル8d、第2テーブル8e、検出位置8f等を記憶している。理想階調テーブル8bは、表示装置1の各階調値(例えば0〜255の各階調値、すなわち、0〜255の各階調レベル)における所要の輝度値を示すものである。LUT8cは、入力された画像信号により表現される階調レベルと、その階調レベルに対応する液晶パネル3への入力レベルとが関連付けられたテーブルである。
【0027】
第1テーブル8d及び第2テーブル8eは、後述する画像処理に要する各種テーブル及びデータが予め記憶されている。なおここでは第1テーブル8d及び第2テーブル8eとの表現を用いているが、本発明の無数にある記憶形式の一例として表現しているだけであり、記憶される各種情報は必ずしもテーブル形式で記憶する必要はなく、表示装置1に係るハードウェア、ソフトウェア、目的及びその他の要因に応じて適宜設計されるものである。
【0028】
検出位置8fは、第1テーブル8d及び第2テーブル8eから算出された調整輝度値と光センサ33によって検出された表示部2の周辺部の輝度値により特定された光センサ33の位置の座標データである。
【0029】
むら補正処理部13は、信号入力部9が受け付けた画像信号に基づく画像に対して表示むらを補正する。なお、信号入力部9から受け付けた画像信号がアナログ信号である場合には、適宜アナログ/デジタル変換が行われる。
【0030】
むら補正処理部13は、信号入力部9が受け付けた画像信号の階調値に対応する第1テーブル8dを選択し、第1テーブル8dに記録された各画面領域の輝度値に基づいて目標輝度値を抽出し、抽出した輝度値を目標輝度値に補正する輝度値補正量を算出し、輝度値補正量に基づいて、画面領域毎に第2テーブル8eを選択し、第2テーブル8eから、階調値及び補正係数の関係を夫々抽出し、階調値及び階調値に関連付けられている補正係数にて補正した輝度補正量に基づいて、補正した階調値を算出し、液晶駆動部12へ出力する。これにより、表示装置1に表示される画像の表示むらを調整することができる。
【0031】
図3は、本発明に係る特性量測定方法における表示むらの測定例を概念的に示す斜視図である。図2に示す表示装置1の表示部2には、表示画面全体に特定の階調の画像が表示されており、表示されている画像の特性量を測定装置50により測定する。これにより階調と、表示画面に表示される画像の特性量との関係を求めることができ、また特定の階調に対する表示画面全体の特性量の分布、即ち表示むらを求めることができる。
【0032】
図4は、本発明の実施の形態における表示装置1に記憶されている第1テーブル8dの記憶内容の一例を概念的に示す説明図である。図4に示す第1テーブル8dは、図3に示す様に、表示部2の全体に白色を表示し、測定器50を用いて測定した輝度値に基づき作成されるテーブルであり、表示部2の画面を区分した各画面領域の輝度値を表示している。図3に示す様に同じ階調値に基づく画像を表示した時であっても表示される画像の輝度の測定値は480〜336(cd/m2)のバラツキをもって分布している。
【0033】
なお図4では、便宜上、画面領域の形状及び大きさが同じである9個の画面領域に区分した例を示しているが、実際には輝度むらに基づいて形状及び大きさが夫々決定される。例えば48等の多数の画面領域に区分することも可能であり、更には画素毎に区分することも可能である。また、第1テーブル8dには、輝度値そのものではなくても、輝度を示す値であればよい。例えば各画面領域の夫々の輝度値の最大値、平均値等の基準値を設定し、設定した基準値に基づき輝度値を正規化した値を第1テーブル8dに記録することも可能である。
【0034】
図5は、本発明の実施の形態における表示装置1に記憶されている第2テーブル8eの記憶内容の一例を概念的に示す説明図である。第2テーブル8eは、輝度値を補正して輝度むらを無くすことを目的として階調値を補正する補正係数を示したテーブルであり、階調値と、階調を補正する補正係数とが対応付けて記憶されている。輝度値の補正量により、階調値の補正係数が異なるため、第2テーブル8eは、輝度値補正量毎に記憶されている。図5に例示した第2テーブル8eは、輝度値を10%低下させる補正を行う場合の階調値及び補正係数を記憶している。なお、全ての輝度値補正量に対応する第2テーブル8eを準備する必要はなく、例えば輝度を5%低下させる補正を行う第2テーブル8e、10%低下させる第2テーブル8e及び20%低下させる第2テーブル8eを予め記憶しておき、5%、10%及び20%以外の率の補正を行う場合、夫々の第2テーブル8eに記憶されている値を加重平均して補間する様にすればよい。

【0035】
表示装置1に取り付けられるスイングセンサ30は、光センサ33、DCモータ34、モータ駆動部35及びI/F(インタフェース)部36等を備える構成である。上述の移動部31に設けられる光センサ33は、フォトトランジスタなどの受光素子及びA/D変換回路等を有するものであり、液晶パネル3の表示面2の周辺部の特性量に応じて受光素子が出力する電圧をA/D変換回路によりデジタルの電気信号に変換して出力するようにしてある。
【0036】
また、DCモータ34は、移動部31を液晶ディスプレイ3の表示面2に沿って回動させる動力を発生するものであり、モータ駆動部35から与えられる電圧により駆動されるようにしてある。モータ駆動部35は、所望の電圧を発生してDCモータ34に印加し、DCモータ34の回転方向及び回転量を制御することによって、光センサ33による表示面2の特性量の検出位置又は非検出位置のいずれかに移動部31を移動させるようにしてある。
【0037】
また、光センサ33及びモータ駆動部35はI/F部36にそれぞれ接続してある。I/F部36はケーブルを介してPC40に接続してあり、光センサ33が検知した表示面2の特性量をデジタルのデータとしてPC40へ与えると共に、PC40からの制御命令を取得してモータ駆動部35に与えるようにしてある。これにより、モータ駆動部35がDCモータ34を駆動し、移動部31を移動させて光センサ33による特性量の検出を行うようにしてある。
【0038】
表示装置1の継続的な使用により液晶パネル3に経年変化が生じ、液晶パネル3の表示特性に若干の変化が生じた場合、予め記憶したLUT8cによる階調レベルから入力レベルへの変換では、理想階調テーブル8bに記憶された理想的な特性量で映像を表示できない場合がある。このため、変化した液晶パネル3の表示特性に合わせてLUT8cを更新する処理(以下、キャリブレーション処理という)を行うキャリブレーションプログラム8aが記憶部8に記憶してあり、キャリブレーションプログラム8aを制御部5が実行してLUT8cを更新することにより、液晶パネル3にて理想的な特性量で映像を表示できるようにしてある。なお、キャリブレーション処理は、ユーザが操作部11を操作することによりキャリブレーションプログラム8aを実行させてもよく、予め定められた周期で自動的に行わせてもよく、PC40がLANなどのネットワークに接続する機能を有している場合にはサーバコンピュータなどによる遠隔操作で行わせてもよい。
【0039】
キャリブレーションプログラム8aによるキャリブレーション処理では、スイングセンサ30を用いて表示装置1の表示部2の特性量を検出し、理想階調テーブル8bに記憶された理想的な特性量との差を打ち消すように、LUT8cに記憶された入力レベルを更新する。しかし、スイングセンサ30は表示部2の周辺部の特性量を検出する構成であるが、キャリブレーション処理は表示部2の中央部の特性量を基に行うことが好ましい。そこで記憶部8には、各画面領域について測定した夫々の輝度値を画像信号の階調値に対応付けて付けて記憶された第1テーブル8dと、輝度値を補正して輝度むらを無くすことを目的として階調値と階調を補正する補正係数とが対応付けて記憶された第2テーブル8eが記憶してあり、キャリブレーションプログラム8aは、表示面の画面領域毎に検出位置特定用画面を表示して特性量を検出することでスイングセンサ30の正確な位置を特定し、スイングセンサ30検出位置に対応する輝度値と中央部の輝度値を第1テーブル8d及び第2テーブル8eから取得することで、スイングセンサ30が検出した表示面2の周辺部の特性量と中央部の特性量の相対比を算出し、中央部の特性量を基にキャリブレーション処理を行うようにしてある。
【0040】
キャリブレーションプログラム8aによりキャリブレーション処理を行う場合には、スイングセンサ30の光センサ33の検出位置を特定することが必要となる。図6は、発明の実施の形態における液晶パネル3の表示部2の周辺部の輝度値から光センサ33の検出位置を特定する方法を概念的に示す説明図である。まず、図6に示す表示装置1に全白(255階調)画面を表示し、スイングセンサ30で表示部2の周辺部の輝度値を測定する。次に図6に示す表示装置1の表示部2は、ユニフォミティ補正点によって複数の画面領域に区分されており、画面領域毎に夫々異なる階調を表示し(図6(b))、スイングセンサ30で表示部2の周辺部の輝度値を測定する。全白画面表示時の輝度値と画面領域毎に夫々異なる階調を表示した時の測定結果から輝度値の低下率を算出し、表示装置1が現在表示しているガンマ値に基づいて、光センサ33の検出位置に対応する画面領域を特定する。
【0041】
図6では、全白画面時と表示画面毎に夫々異なる階調を表示した時の表示部2の周辺部の特性量から光センサ33の検出位置を特定する構成としたが、これに限らず、表示画面毎に順に特定階調を表示させ、特定階調に対応する特性量を光センサ33が検出するまで測定を繰り返す構成としてもよい。
【0042】
次に、本発明に係る表示装置1の特性量測定方法を、フローチャートを用いて説明する。本発明に係る表示装置1の特性量測定方法は、スイングセンサ30を用いて表示部2の中央部の輝度値及び周辺部の輝度値の相対比を測定するコレレーション処理を含んでいる。まず、コレレーション処理について説明する。
【0043】
図7及び図8は、本発明の表示装置1のコレレーション処理の手順を示すフローチャートである。表示装置1のコレレーション処理は、キャリブレーションプログラム8aの一機能として実行することができ、操作部11の操作によりこの処理を実行する指示が与えられた場合には、まず、表示装置1のベゼルにスイングセンサ30の取り付けを要求するメッセージを表示する(ステップS1)。その後、表示装置1のベゼルにスイングセンサ30が取り付けられて、例えば取り付け完了を通知する操作がなされたか否かを調べることによって、スイングセンサ30の取り付けが完了したか否かを調べ(ステップS2)、取り付けが完了していない場合には(S2:NO)、ステップS1へ戻ってメッセージの表示を継続して行い、取り付けが完了するまで待機する。
【0044】
表示装置1のベゼルにスイングセンサ30の取り付けが完了した場合(S2:YES)、表示部2の全体に白色を表示し(ステップS3)、スイングセンサ30を起動して(ステップS4)、光センサ33が表示部2の周辺部に対向するように移動部31を移動させる。次いで、表示装置1のバックライト4を消灯し、スイングセンサ30による検出を行って、このときの検出値を基準値とする0調整を行う(ステップS5)。
【0045】
次いで、バックライト4を点灯して、ブライトネス設定を予め定められた設定に調整し(ステップS6)、スイングセンサ30によって表示部2の周辺部の輝度値LPWを測定する(ステッSプ7)。
【0046】
次いで、表示装置1の機種情報を取得し(ステップS8)、輝度むら補正の補正点数情報を取得する(ステップS9)。表示を白色表示から輝度むら補正点4点で構成される画面領域毎に異なる階調を表示するグレースケール画面に変更し(ステップS10)、スイングセンサ30によって表示部2の周辺部の輝度値LPGを測定する(ステップS11)。制御部5は、輝度値の相対比LPG/LPWを算出する(ステップS12)。表示階調のレベルの設定は、表示面全体に適用してもよいし、光センサが測定対象とするおおよその領域にのみ適用してもよい。
【0047】
次いで、表示装置1が表示しているガンマ値Gを取得し(ステップS21)、制御部5は、表示装置1が表示しているガンマ値Gとステップ12で算出した輝度値の相対比LPG/LPWとを比較し(ステップS22)、相対比LPG/LPWがガンマGでの理想輝度相対比と一致する場合(S22:YES)、光センサ33の検出位置に対応する画面領域Bを特定し(ステップS23)、第1テーブル8d及び第2テーブル8eを基に、画面領域Bを構成する4点の輝度むら補正点P1〜P4の夫々の補正点に対応する輝度調整値を取得する(ステップS24)。取得した4点の輝度調整値と、スイングセンサ30の測定値から線形補間をして光センサ33の検出位置座標Dを算出し(ステップS25)、光センサ33の検出位置座標Dを記録する(ステップS26)。
【0048】
表示装置1が表示しているガンマ値Gとステップ12で算出した輝度値の相対比LPG/LPWとを比較し、相対比LPG/LPWがガンマGでの理想輝度相対比と一致しない場合(S22:NO)、光センサ33が隣り合う画面領域の境界線上にあると考えられる。この場合、光センサ33が一つの画面領域内に収まるように画面領域を構成する補正点をずらし、ステップS10へ戻り、ステップS10〜S22の処理を行う。
【0049】
次いで、制御部5は、輝度値を第1テーブル8d及び第2テーブル8eに基づいて光センサ33の検出位置座標Dに対応する輝度調整値LPHを算出し(ステップS27)、同様に表示面2の中央部の輝度調整値LCHを算出し(ステップS28)、輝度値相対比LCH/LPHを算出する(ステップS29)。全ての処理が終了した場合、スイングセンサ30の移動部31を収容部32に収容する処理、液晶パネル3の表示を元に戻す処理等を含む終了処理を行って(ステップS30)、処理を終了する。
【0050】
以上の手順により表示装置1のコレレーションを行うことができ、キャリブレーション処理を行う際に検出位置座標Dを用いることによって、スイングセンサ30が検出した表示面2の周辺部の輝度値から中央部の輝度値を取得することができる。
【0051】
以上の構成の表示装置1、スイングセンサ30及びPC40を用いた特性量測定方法においては、表示むら補正用に用いる第1テーブル8dとして、表示部2を複数の画面領域に区分した各画面領域の輝度値に基づき作成し、第2テーブル8eとして、階調を補正する補正係数とが対応付けて記憶する。キャリブレーションなどの処理を行う際には、スイングセンサ30にて表示部2の周辺部の特性量を検出して、第1テーブル8d及び第2テーブル8eから表示部2の中央部の特性量を取得又は算出することによって、ユーザが手動測光器を用いて表示部の測光を行うことなく、キャリブレーション又は特性のチェック等のために液晶パネルの表示部の特性量を測定することができる。また、スイングセンサ30の検出値から精度のよいキャリブレーションなどの処理を行うことができるため、これらの処理の自動化を容易に実現可能となる。
【0052】
なお、本実施の形態においては、表示装置1は液晶パネル3を用いた構成としたが、これに限るものではなく、CRTやPDPを用いた構成としてもよい。また、表示部2の中央部の特性量の取得及び算出をキャリブレーション処理のために行う構成としたが、これに限るものではなく、表示装置1の表示特性のチェックなどの他の目的に行う構成としてもよい。また、また、スイングセンサ30を表示装置1とは別の装置とし、スイングセンサ30を表示装置1に取り付けて検出を行う構成としたが、これに限るものではなく、表示装置1に内蔵する構成としてもよい。また、キャリブレーション処理及びLUT8cの更新処理等を表示装置1が行う構成としたが、これに限るものではなく、PC40がこれらの処理を行う構成としてもよく、スイングセンサ30がこれらの処理を行う構成としてもよい。また、表示装置1が表示する画像に係る映像信号はPC40が出力する構成としたが、これに限るものではなく、その他の装置が出力する構成としても良い。
第1テーブル8d及び第2テーブル8eは複数階調別にもつことが可能で、その場は階調ごとに相対比を算出し、階調間においては線形補間やパネルのガンマ特性に近似した方法などで補間処理する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る表示装置に外観の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る表示装置における輝度むらの測定例を概念的に示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態における表示装置に記憶されている第1テーブルの記憶内容の一例を概念的に示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態における表示装置に記憶されている第2テーブルの記憶内容の一例を概念的に示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態における液晶パネルの表示部の周辺部の特性量から光センサの検出位置を特定する方法を概念的に示す説明図である。
【図7】コレレーション処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】コレレーション処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
1 表示装置
2 表示部
3 液晶パネル
4 バックライト
5 制御部
8 記憶部
9 信号入力部
10 バックライト駆動部
11 操作部
12 液晶駆動部
30 スイングセンサ
31 移動部
33 光センサ
40 PC
50 測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像信号の階調値に基づいて表示画像を表示部に表示させる表示装置において、
前記表示部の表示むらの特性に応じて、階調値を修正するむら補正手段と、
前記表示部の周辺部の特性量を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出位置を特定する検出位置特定手段と、
前記検出手段によって検出された周辺部の特性量と前記むら補正手段によって補正された補正値に基づいて前記表示面の中央部の特性量を算出する算出手段と、
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記むら補正手段は、
前記表示部を複数の領域に区分した各画面領域について、階調値に基づき表示される表示画像の特性量を各々記録する、複数の階調値別にもつ第1記録手段と、
特性量に対する所定率の補正に用いる、階調値の修正に関する表示制御量を記録する、複数の階調値別にもつ第2記録手段と、
前記第1手段から夫々の階調値ごとに補正前の特性量を読み出し、前記読み出された特性量を夫々の階調値ごとに前記第2記録手段を参照して得られる表示制御量に従って演算する演算部と、
を備えることを特徴とする請求項第1記載の表示装置。
【請求項3】
前記むら補正手段は、
前記表示部を複数の領域に区分した各画面領域について、階調値に基づき表示される表示画像の特性量を各々記録する、複数の階調値別にもつ第1記録手段と、
特性量に対する所定率の補正に用いる、階調値の修正に関する表示制御量を記録する、複数の階調値別にもつ第2記録手段と、
前記第1手段から夫々の階調値ごとに補正前の特性量を読み出し、前記読み出された特性量を夫々の階調値ごとに前記第2記録手段を参照して得られる表示制御量に従って演算する演算部と、
前記演算部により演算された演算特性量が格納される、複数の階調値別にもつ第3記録手段と、
を備えることを特徴とする請求項第1記載の表示装置。
【請求項4】
前記検出位置特定手段は、
前記表示部の各画面領域に検出位置特定画面を表示させて前記検出手段によって前記表示部の周辺部の特性量を測定することで、前記検出手段の位置に対応する画面領域を特定し、
前記演算部によって演算された演算特性量から各画面領域を構成する複数点の演算特性量を取得し、
補間処理を行って前記検出手段が周辺部の特性量を検出した位置を特定すること
を特徴とする請求項2記載の表示装置。
【請求項5】
前記検出位置特定手段は、
前記表示部の各画面領域に検出位置特定画面を表示させて前記検出手段によって前記表示部の周辺部の特性量を測定することで、前記検出手段の位置に対応する画面領域を特定し、
複数の階調値別にもつ前記第3記録手段から夫々の階調値ごとに各画面領域を構成する複数点の演算特性量を取得し、
補間処理を行って前記検出手段が周辺部の特性量を検出した位置を特定すること
を特徴とする請求項3記載の表示装置。
【請求項6】
前記算出手段で算出された夫々の階調値ごとの特性量に基づいて階調間は補間処理を行い、前記表示部の特性量を調整する調整手段を備えることを特徴とする請求項5乃至請求項6の表示装置。
【請求項7】
入力された画像信号の階調値に基づいて表示画像を表示部に表示させる表示装置において、
入力された画像信号の階調値を、前記表示部の表示むらの特性に応じて修正し、
前記表示部の周辺部の特性量を検出し、
前記検出手段が検出した検出位置を特定し、
前記検出手段によって検出された周辺部の特性量と前記むら補正手段によって補正された補正値に基づいて前記表示面の中央部の特性量を算出することを特徴とする特性量測定方法。
【請求項8】
コンピュータに、表示装置の特性量測定を実行させるためのコンピュータプログラムにおいて、
コンピュータを、
前記表示部の周辺部の特性量並びに前記表示部の中央部及び周辺部の特性量を関連付ける関連値に基づいて、前記表示部の中央部の特性量を算出する算出手段として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
コンピュータを、
算出された前記表示部の中央部の特性量に基づいて前記表示部の特性量を調整する調整手段として機能させることを特徴とする請求項8記載のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−14004(P2012−14004A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151266(P2010−151266)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(391010116)株式会社ナナオ (160)
【Fターム(参考)】