説明

表示装置および電子機器

【課題】外光反射を抑え、かつ発光層から出射された光の取り出し効率の低下を抑えることの可能な表示装置および電子機器を提供する
【解決手段】発光層と、前記発光層側から入射した光を表示面側に反射する反射部と、
前記表示面に設けられた吸収型偏光板と、前記発光層と前記吸収型偏光板との間の位相差板と、前記位相差板と前記吸収型偏光板との間に設けられ、前記位相差板の透過光のうち、所定の光軸方向の光を反射する反射型偏光板と、前記発光層と前記反射型偏光板との間に設けられると共に、外光の一部を吸収する外光反射抑制層とを備えた表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、例えば有機EL表示装置等の自発光型の表示装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信産業の発達が加速するのに伴い、高性能な表示素子が要求されている。例えば有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイ,無機ELディスプレイおよびFED(Field Emission Display)は、自発光型の表示素子を用いた表示装置であり、視野角の広さ、コントラスト、応答速度の点から次世代表示装置として注目されている。例えば、有機EL素子は、駆動基板側から、下部電極,発光層,上部電極および対向基板を順に備えており、駆動基板側から表示光を取り出すボトムエミッション型、対向基板側から表示光を取り出すトップエミッション型に大別される。
【0003】
自発光型の表示装置では、発光層からの出射光を効率良く取り出すために、発光層に対して、表示面と反対側に反射部を設けておく方法が提案されている。例えば、トップエミッション型であれば、下部電極をアルミニウム(Al),銀(Ag)あるいはこれらの合金等の光反射性の金属により構成して反射部とする。これにより、発光層から、対向基板側に直接出射される光に加えて、発光層から下部電極側に出射された光の反射光を表示光として取り出すことが可能となる。
【0004】
しかしながら、この反射部は、表示面側から入射する外光をも反射するため、実コントラストが低下し、画品位および視認性を低下させる虞がある。特に、屋外での使用時には、その影響が大きい。このような外光反射を抑制するため、円偏光板を対向基板の表示面側に設けた構成が提案されている。円偏光板は、吸収型偏光板とλ/4位相差板を組み合わせたものである。この円偏光板を備えた表示装置では、表示面側から入射した外光が、まず、吸収型偏光板を通り、直線偏光となってλ/4位相差板を通過する。λ/4位相差板を通過した円偏光は、反射部(下部電極)で反射されて、再びλ/4位相差板を通過して直線偏光となる。この2度λ/4位相差板を通過した光は、最初のλ/4位相差板通過前と比較すると、λ/2位相がずれているため、表示面側に出射されずに、吸収型偏光板に吸収される。
【0005】
上記の機構により、円偏光板では、外光由来の反射光をほぼ完全に抑えることができるが、同時に、発光層からの出射光も大きく減衰させてしまうため、光出力の低下が生じ、消費電力の増大および電流密度の増加による低寿命化につながる。例えば、円偏光板の光透過率は、40%前後である。この問題に対して、吸収型偏光板とλ/4位相差板との間に吸収型偏光板と光軸方向が同一の反射型偏光板を挟持させることにより、光出力を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1,2)。この方法では、発光層からの出射光のうち、反射型偏光板および吸収型偏光板の光軸方向と直交する光軸方向の光は、反射型偏光板、反射部それぞれで順に反射されてλ/4位相差板を2度通過する。これにより、λ/2位相がずれ、この光が表示面側に取り出される。よって、光出力は吸収型偏光板の光透過率(平行方向)の平方根(√)の2倍となり、発光層から出射された光の90%程度にまで向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−243769号公報
【特許文献2】特開2001−357979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このように吸収型偏光板とλ/4位相差板との間に反射型偏光板を設けると、外光由来の反射光も吸収型偏光板を通過して表示面に出射されるため、外光の反射抑制効果は低下する。
【0008】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、外光反射による画品位および視認性の低下を防止し、かつ、発光層からの光取り出し効率の低下を抑えた表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術による表示装置は、発光層と、発光層側から入射した光を表示面側に反射する反射部と、表示面に設けられた吸収型偏光板と、発光層と吸収型偏光板との間の位相差板と、位相差板と吸収型偏光板との間に設けられ、位相差板の透過光のうち、所定の光軸方向の光を反射する反射型偏光板と、発光層と反射型偏光板との間に設けられると共に、外光の一部を吸収する外光反射抑制層とを備えたものである。本技術による電子機器は、上記表示装置を備えたものである。
【0010】
本技術の表示装置では、表示面側から入射した外光は、反射部と反射型偏光板との間で反射を繰り返す間に外光反射抑制層により一部が吸収され、減衰していく。一方、発光層からの出射光のうち、表示面側に取り出される光には、反射型偏光板および吸収型偏光板を直接通過するものに加え、反射型偏光板と反射部との間で反射されて、位相差板を複数回通過した後、表示面側に取り出されるものが含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本技術の表示装置および電子機器によれば、発光層と反射型偏光板との間に外光反射抑制層を設けるようにしたので、外光反射を抑えることができる。また、位相差板と吸収型偏光板との間の反射型偏光板により、発光層からの光取り出し効率を向上させることができる。よって、外光反射による画品位および視認性の低下を防止すると共に、低消費電力化および長寿命化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図3】図1に示した表示領域の一部の構成を表す断面図である。
【図4】図3に示した発光層から出射された光の表示面側へ取り出しについて説明するための断面図である。
【図5】図4に示した出射光の偏光方向を説明するための模式図である。
【図6】比較例1に係る表示装置の一部の構成を表す断面図である。
【図7】図3に示した外光反射抑制層の光透過率と光取り出し効率との関係を表す図である。
【図8】図3に示した外光反射抑制層の効果を説明するための断面図である。
【図9】図8に示した外光の偏光方向を説明するための模式図である。
【図10】比較例2に係る表示装置の一部の構成を表す断面図である。
【図11】図3に示した外光反射抑制層の配置位置を変えた場合の断面図である。
【図12】図11に示した発光層から出射された光の表示面側への取り出しについて説明するための断面図である。
【図13】変形例1に係る表示装置のλ/4位相差板の構成を表す断面図である。
【図14】変形例2に係る表示装置の構成を表す断面図である。
【図15】本開示の第2の実施の形態に係る表示装置の構成を表す断面図である。
【図16】上記実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図17】上記実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図18】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側からみた外観を表す斜視図である。
【図19】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図20】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図21】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明
は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(外光反射抑制層を、発光層と位相差板との間に設けた例)
2.変形例1(外光反射抑制層を位相差板の一部に設けた例)
3.変形例2(外光反射抑制層をカラーフィルタ層の一部に設けた例)
4.第2の実施の形態(外光反射抑制層を、位相差板と反射型偏光板との間に設けた例 )
【0014】
<第1の実施の形態>
[表示装置1の構成]
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る表示装置(表示装置1)の構成を表すものである。この表示装置1は、有機EL(Electroluminescence)表示装置であり、例えば、基板11の上に、表示領域110として、各々、赤色,緑色および青色を発光する複数の有機EL素子10がマトリクス状に配置されている。表示領域110の周辺には、映像表示用のドライバ信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が設けられている。
【0015】
(全体構成)
表示領域110内には画素駆動回路140が設けられている。図2は、画素駆動回路140の一例を表したものである。画素駆動回路140は、後述する下部電極12の下層に形成されたアクティブ型の駆動回路である。すなわち、この画素駆動回路140は、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、これらトランジスタTr1,Tr2の間のキャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された有機EL素子10とを有する。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガ構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガ構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0016】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、1つの有機EL素子10に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0017】
(有機EL素子)
図3は図1に示した表示領域110の1つの有機EL素子10に対応する部分の断面構成を表したものである。有機EL素子10は、それぞれ基板11の側から画素駆動回路140の駆動トランジスタTr1(図示せず)、平坦化絶縁層(図示せず)、陽極としての下部電極12(反射部)、隔壁(後述の図14 隔壁15)、有機層13および陰極としての上部電極14がこの順に積層された構造を有している。有機層13は、下部電極12側から正孔注入層131、正孔輸送層132、発光層133、電子輸送層134、電子注入層135をこの順に有している。
【0018】
このような有機EL素子10は、保護層21により被覆され、更にこの保護層21上に封止部22を間にしてガラスなどよりなる対向基板23が全面にわたって張り合わされている。対向基板23上には、外光反射抑制層24、λ/4位相差板25(位相差板)、反射型偏光板26および吸収型偏光板27が、この順に設けられている。表示装置1は、トップエミッション型であり、対向基板23側(吸収型偏光板27側)から表示光が取り出される。
【0019】
基板11は、その一主面側に有機EL素子10が配列形成される支持体である。例えば石英、ガラス、金属箔、もしくは樹脂製のフィルムやシートなどの公知のものを用いればよい。中でも、石英やガラスを用いることが好ましい。樹脂製のものを使用する場合には、その材質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるメタクリル樹脂類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル類、もしくはポリカーボネート樹脂などを用いることが可能であるが、この場合には透水性や透ガス性を抑えるため、積層構造とし、表面処理を行うことが好ましい。
【0020】
平坦化絶縁層は、画素駆動回路140が形成された基板11の表面を平坦化するためのものであり、駆動トランジスタTr1と下部電極12とを接続するための微細な接続孔(図示せず)が形成されるためパターン精度が良い材料により構成されていることが好ましい。平坦化絶縁層の構成材料としては、例えば、ポリイミド等の有機材料、あるいは酸化シリコン(SiO2)などの無機材料が挙げられる。
【0021】
下部電極12は、平坦化絶縁層上にそれぞれ個々の有機EL素子10ごとに設けられ、光反射性の高い金属、例えばクロム(Cr),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W),アルミニウム(Al)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金からなる。あるいは、上述の金属膜と透明導電膜との積層構造としてもよい。透明導電膜としては、例えば、インジウムとスズの酸化物(ITO)、酸化インジウム亜鉛(InZnO)、酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)との合金などが挙げられる。下部電極12が陽極として用いられる場合には、正孔注入性の高い材料により構成されていることが好ましいが、アルミニウム合金のような仕事関数の大きさが十分でない材料であっても、適切な正孔注入層131を設けることにより、陽極として機能させることが可能である。表示装置1では、発光層133から基板11側に出射された光は、下部電極12により、表示面側に反射される。
【0022】
隔壁は、下部電極12と上部電極14との間の絶縁性を確保すると共に、発光領域を所望の形状に成形するためのものであり、発光領域に対応して開口部が設けられている。隔壁は、例えばSiO2等の無機絶縁材料の上に、ポジ型感光性ポリベンゾオキサゾールまたはポジ型感光性ポリイミド等の感光性樹脂を積層させて形成する。隔壁の上層、すなわち、正孔注入層131ないし上部電極14は、開口部だけでなく隔壁の上に設けられていてもよいが、発光が生じるのは開口部のみである。
【0023】
正孔注入層131は、複数の有機EL素子10に共通して設けられており、正孔注入効率を高めると共に、リークを防止するバッファ層としての機能を有する。この正孔注入層131は、例えば、5nm〜100nmの厚みで形成されていることが好ましく、8nm〜50nmであることがより好ましい。
【0024】
正孔注入層131の構成材料は、例えば、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリフェニレンおよびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体、ポリキノリンおよびその誘導体、ポリキノキサリンおよびその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖または側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)またはカーボン等が挙げられるが、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよい。
【0025】
正孔注入層131が、高分子材料からなる場合、重量平均分子量(Mw)は、例えば2000〜300000程度であり、5000〜200000程度であることが好ましい。Mwが5000未満では、正孔輸送層132以降を形成する際に溶解してしまう虞があり、300000を超えると、材料のゲル化により成膜が困難になる虞がある。
【0026】
正孔注入層131に使用される典型的な高分子材料としては、例えば、ポリアニリンおよび/またはオリゴアニリンあるいはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などのポリジオキシチオフェンが挙げられる。具体的には、例えばエイチ・シー・スタルク製の商品名Nafion(商標)および商品名Liquion(商標)、日産化学製の商品名エルソース(商標)および綜研化学製の導電性ポリマーベラゾール等を使用することができる。
【0027】
正孔輸送層132は、発光層133への正孔輸送効率を高めるためのものであり、正孔注入層131の上に複数の有機EL素子10に共通して設けられている。
【0028】
正孔輸送層132の厚みは、素子の全体構成にもよるが、例えば、10nm〜200nmであることが好ましく、15nm〜150nmであることがより好ましい。正孔輸送層132を構成する高分子材料としては、有機溶媒に可溶な発光材料、例えば、ポリビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリフルオレンおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリシランおよびその誘導体、側鎖または主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体あるいはポリピロール等が使用できる。
【0029】
高分子材料の重量平均分子量(Mw)は、例えば50000〜300000程度であり、特に100000〜200000程度であることが好ましい。Mwが50000未満では、発光層133を形成するときに、高分子材料中の低分子成分が脱落し、正孔注入・輸送層にドットが生じるため、有機EL素子10の初期性能が低下したり、素子の劣化を引き起こす虞がある。一方、300000を超えると、材料のゲル化により成膜が困難になる虞がある。
【0030】
なお、重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒として、ゲルパーエミーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた値である。
【0031】
発光層133は、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものであり、例えば、赤色の光を発光する有機EL素子10および緑色の光を発光する有機EL素子10には、赤色発光層および緑色発光層が各有機EL素子10ごとに設けられ、青色を発光する有機EL素子10には、各有機EL素子10に共通の青色発光層が設けられている。赤色発光層および緑色発光層の厚みは、素子の全体構成にもよるが、例えば、10nm〜200nmであることが好ましく、15nm〜150nmであることがより好ましい。赤色発光層および緑色発光層を構成する高分子材料としては、例えばポリフルオレン系高分子誘導体、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素あるいは上記高分子に有機EL材料をドープして用いることができる。具体的には、例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッドあるいはクマリン6等をドープすることにより用いることができる。発光層の構成は上記のようなものに限らず、例えば、赤色発光層,緑色発光層,青色発光層が個々の有機EL素子10それぞれに配置されていてもよい。
【0032】
青色発光層は、例えばホスト材料としてのアントラセン化合物に、ゲスト材料として青色もしくは緑色の低分子蛍光性色素,りん光色素あるいは金属錯体等の有機発光材料をドーピングしたものである。
【0033】
電子輸送層134は、発光層133への電子輸送効率を高めるためのものであり、複数の有機EL素子10に共通層として設けられている。電子輸送層134の材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、フェナントロリン、フェナントレン、ピレン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、フラーレン、オキサジアゾール、フルオレノン、アントラセン、ナフタレン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベンまたはこれらの誘導体や金属錯体、例えばトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(略称Alq3)を用いることができる。
【0034】
電子注入層135は、電子注入効率を高めるためのものであり、電子輸送層134の全面に共通層として設けられている。電子注入層135の材料としては、例えば、リチウム(Li)の酸化物である酸化リチウム(Li2O)やセシウムの複合酸化物である炭酸セシウム(Cs2Co3)あるいはこれらの混合物を用いることができる。また、カルシウム(Ca),バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、リチウム,セシウム等のアルカリ金属,インジウム(In)あるいはマグネシウム等の仕事関数の小さい金属を単体あるいは合金で用いてもよく、または、これらの金属の酸化物,複合酸化物,フッ化物の単体あるいは混合物を用いてもよい。
【0035】
上部電極14は、下部電極12と絶縁された状態で電子注入層135の上に全面に亘り設けられている。すなわち、複数の有機EL素子10の共通電極となっている。上部電極14は、例えば、3nm以上8nm以下の厚さの金属導電膜よりなり、具体的には、例えばアルミニウム(Al),マグネシウム,カルシウムまたはナトリウム(Na)を含む合金からなる。特に、マグネシウムと銀との合金(Mg−Ag合金)は、光透過性および導電性が良好であるため好ましい。マグネシウムと銀との比率は特に限定されないが、膜厚比でMg:Ag=20:1〜1:1の範囲であることが好ましい。また、上部電極14に、アルミニウムとリチウムとの合金(Al−Li合金)を用いてもよい。
【0036】
上部電極14は、アルミキノリン錯体、スチリルアミン誘導体あるいはフタロシアニン誘導体等の有機発光材料を含有した混合層から形成されていてもよい。この場合には、更に第3層としてMg−Ag合金のような光透過性を有する層を別途備えていてもよい。
【0037】
(保護層,封止部および対向基板)
保護層21は、絶縁性材料,導電性材料のいずれにより構成されていてもよく、例えば2μm〜3μmの厚みで形成されている。例えば、アモルファスシリコン(α−シリコン),アモルファス炭化シリコン(α−SiC),アモルファス窒化シリコン(α−Si1-Xx)あるいはアモルファスカーボン(α−C)等の無機アモルファス性の絶縁性材料を用いることができる。このような材料は、グレインを構成しないため透水性が低く、良好な保護膜となる。封止部22は、熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂などにより構成されている。
【0038】
対向基板23は、有機EL素子10の上部電極14の側に位置し、封止部22と共に有機EL素子10を封止するものである。対向基板23は、ガラス等により構成されている。
【0039】
対向基板23には、例えば、カラーフィルタ(図14 カラーフィルタ231R,231G,231B)およびブラックマトリクス(図14 ブラックマトリクス232)を有するカラーフィルタ層(図14 カラーフィルタ層23C)が設けられている。
【0040】
カラーフィルタとして、赤色フィルタ(カラーフィルタ231R),緑色フィルタ(カラーフィルタ231G)および青色フィルタ(カラーフィルタ231B)が、それぞれ赤色を発光する有機EL素子10,緑色を発光する有機EL素子10および青色を発光する有機EL素子10に対応して順に配置されている。赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、それぞれ例えば矩形状で隙間なく形成されている。これらのカラーフィルタは、顔料を含む樹脂により構成されており、顔料を適宜選択することより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整することができる。
【0041】
ブラックマトリクスは、例えば黒色の着色剤を含み、光学濃度が1以上の黒色の樹脂膜または薄膜の干渉を利用した薄膜フィルタにより構成されている。黒色の樹脂膜は、安価かつ容易に形成することができるため好ましい。薄膜フィルタは、例えば、金属,金属窒化物あるいは金属酸化物からなる薄膜を少なくとも1層有し、薄膜の干渉を利用して光を減衰させるものである。具体的には、クロムと酸化クロム(III)(Cr23)とを交互
に積層させたものを用いることができる。
【0042】
カラーフィルタの表面(封止部22との対向面)はオーバーコート層により覆われている。オーバーコート層は、カラーフィルタ表面の平坦性を高め、保護するためのコーティング剤であり、樹脂等の有機材料やSiO,SiNあるいはITOなどの無機材料からなる。
【0043】
(外光反射抑制層)
外光反射抑制層24は、表示面側(吸収型偏光板27側)から入射する外光および下部電極12により反射されて基板11側から入射する外光の一部を吸収するものである。この外光反射抑制層24により、下部電極12で反射された外光の表示面側への出射を抑えることができる。外光反射抑制層24は、下部電極12で反射された外光だけでなく、例えば、周囲の配線により反射された外光も吸収して減衰させる。本実施の形態では、外光反射抑制層24は発光層133とλ/4位相差板25との間に設けられている。詳細には、対向基板23とλ/4位相差板25との間に設けられ、これらに接している。外光反射抑制層24の外光(波長380nm〜780nm、特に、430nm〜680nm)に対する光透過率は、表面反射を除き、例えば95%〜71%であり、75%より大きいことがより好ましい。75%より大きければ、外光反射を抑えつつ、輝度を10%以上向上させることができるためである。
【0044】
外光反射抑制層24は、例えば、樹脂に染料あるいは顔料を所定の濃度で混合させたものにより構成され、例えば30nm〜500nmの厚みを有するものである。例えば樹脂材料として、PET(Polyethylene terephthalate),TAC(Triacetylcellulose),PVA(Polyvinylalcohol)あるいはアクリル等の樹脂材料を用い、これに例えばアゾ染料あるいは顔料を混合させる。
【0045】
(λ/4位相差板)
λ/4位相差板25は、発光層133と吸収型偏光板27との間に設けられ、吸収型偏光板27と組み合わせることにより、円偏光板として機能するものである。表示面側から吸収型偏光板27に入射した外光は、直線偏光となり、この直線偏光がλ/4位相差板25を通過することにより、円偏光となる。λ/4位相差板25では、例えば、波長板(図13 波長板251)の両面がTAC(Triacetylcellolose)層(図13 TAC層252)により保護されている。
【0046】
(反射型偏光板)
反射型偏光板26は、λ/4位相差板25と吸収型偏光板27との間に設けられており、所定方向の光軸の光を反射し、これと直交する方向の光を透過するものである。この反射型偏光板26と下部電極12との間で、発光層133から出射された光を反射させることにより、λ/4位相差板25を2回通過させ、表示面側に透過させる。これにより、光の取り出し効率が向上する。反射型偏光板26は、例えば、ガラス基板の表面にアルミニウム,銀またはクロム等の金属ワイヤを定周期で平行に配置したものであり、この金属ワイヤが下部電極12に対向するように配置されている。
【0047】
(吸収型偏光板)
吸収型偏光板27は表示面に設けられ、入射した外光のうち、所定方向の光軸の光を吸収し、これと直交する方向の光を透過する。この吸収型偏光板27の偏光軸と、反射型偏光板26の偏光軸とは平行である。吸収型偏光板27は、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)系フィルム等の親水性高分子フィルムにヨウ素または二色性染料を吸着させて延伸したものにより構成されている。
【0048】
[表示装置1の製造方法]
以下、表示装置1の製造方法について説明する。
【0049】
(下部電極12の形成工程)
まず、上述した材料よりなる基板11の上に駆動トランジスタTr1を含む画素駆動回路140を形成し、例えば感光性樹脂よりなる平坦化絶縁層を設ける。次いで、基板11の全面に例えばAl,AgあるいはAl,Agのいずれかを含む合金よりなる金属導電膜を形成し、この導電膜をパターニングして下部電極12を形成する。このとき、下部電極12は平坦化絶縁層のコンタクトホール(図示せず)を介して駆動トランジスタTr1のドレイン電極と導通させておく。
【0050】
(隔壁の形成工程)
続いて、下部電極12上および平坦化絶縁層上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長法)によりSiO2等の無機絶縁材料を成膜してパターニングを行い、更に感光性樹脂を積層させて隔壁を形成する。
【0051】
隔壁を形成した後、基板11の表面、即ち下部電極12および隔壁を形成した側の面を酸素プラズマ処理し、表面に付着した有機物等の汚染物を除去して濡れ性を向上させる。具体的には、基板11を所定温度、例えば70℃〜80℃程度に加熱し、続いて大気圧下で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。
【0052】
(撥水化処理工程)
次いで、大気圧下で四フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CF4プラズマ処理)を行い、続けてプラズマ処理のために加熱された基板11を室温まで冷却する。この作業により、特に隔壁の上面および側面についての撥水化処理(撥液化処理)がなされ、その濡れ性が低下する。
【0053】
(正孔注入層131および正孔輸送層132の形成工程)
撥水化処理を行った後、上述した材料よりなる正孔注入層131および正孔輸送層132を複数の有機EL素子10に共通して形成する。例えば、蒸着法により上述の材料よりなる正孔注入層131および正孔輸送層132をこの順に下部電極12上および隔壁上に成膜する。
【0054】
(発光層133の形成工程)
正孔輸送層132を形成した後、発光層133を正孔輸送層132上に形成する。発光層133は、例えば、赤色を発光する有機EL素子10および緑色を発光する有機EL素子10の正孔輸送層132上にそれぞれ赤色発光層および緑色発光層を形成し、この後、例えば蒸着法により青色を発光する有機EL素子10の正孔輸送層16の全面に、上述した材料よりなる青色発光層を共通層として形成する。
【0055】
(電子輸送層134,電子注入層135および上部電極14の形成工程)
発光層133を形成した後、例えば蒸着法により、上述した材料よりなる電子輸送層134,電子注入層135および上部電極14を形成する。
【0056】
上部電極14を形成した後、例えば蒸着法やCVD法により、保護層21を形成する。この際、発光層133等の劣化に伴う輝度の低下を防止するため、成膜温度を常温に設定し、加えて保護層21の剥がれを防止するため、膜のストレスが最小となる条件で成膜を行うことが好ましい。
【0057】
電子輸送層134,電子注入層135,上部電極14および保護層21は、マスクを用いることなく、全面に形成される。所謂ベタ膜である。また、電子輸送層134,電子注入層135,上部電極14および保護層21は、大気に曝露されることなく同一の成膜装置内で連続して形成されることが好ましい。大気中の水分による劣化が防止されるためである。
【0058】
なお、下部電極12と同一工程で補助電極(図示せず)を形成した場合、上部電極14の形成前に、補助電極の上部に形成された正孔注入層131から電子注入層135までをレーザアブレーション等により除去してもよい。これにより上部電極14を補助電極に直接接続させ、コンタクトを向上させることができる。
【0059】
保護層21を形成した後、封止部22を間にして保護層21の上に対向基板23を貼り合わせる。なお、対向基板23にはあらかじめ、上述した材料よりなるカラーフィルタ層を形成しておく。
【0060】
(外光反射抑制層24の形成工程)
対向基板23を貼り合わせた後、例えば、アクリル系樹脂にアゾ染料を所定濃度で混合させた樹脂層を対向基板23上に塗布し、これを硬化させることにより外光反射抑制層24を形成する。
【0061】
(λ/4位相差板25,反射型偏光板26および吸収型偏光板27の形成工程)
外光反射抑制層24を形成した後、λ/4位相差板25,反射型偏光板26および吸収型偏光板27をこの順に、外光反射抑制層24上に設ける。対向基板23の一方の面上に外光反射抑制層24,λ/4位相差板25,反射型偏光板26および吸収型偏光板27を予め形成しておき、これを保護層21に貼り合わせるようにしてもよい。
以上の工程により、図1乃至図3に示した表示装置1が完成する。
【0062】
[表示装置1の作用・効果]
この表示装置1では、各画素に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタTr2のゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。すなわち、この保持容量Csに保持された信号に応じて駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、これにより、有機EL素子10に駆動電流Idが注入され、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、上部電極14,カラーフィルタ,対向基板23,外光反射抑制層24,λ/4位相差板25,反射型偏光板26および吸収型偏光板27を透過して表示面に取り出される。
【0063】
その際、赤色を発光する有機EL素子10には、赤色発光層と青色発光層とが設けられているが、最もエネルギー準位の低い赤色にエネルギー移動が起こり、赤色発光(波長620nm〜750nm)が支配的となる。緑色を発光する有機EL素子10には、緑色発光層と青色発光層とが設けられているが、よりエネルギー準位の低い緑色にエネルギー移動が起こり、緑色発光(波長495nm〜570nm)が支配的となる。青色を発光する有機EL素子10は、青色発光層のみを有するので、青色発光(波長450nm〜495nm)が生じる。ここでは、発光層133と反射型偏光板26との間の外光反射抑制層24により、外光の下部電極12による反射光が表示面側に出射されるのを抑えることができる。また、λ/4位相差板25と吸収型偏光板27との間の反射型偏光板26により、発光層133から出射された光の光取り出し効率を向上させることができる。以下、これについて説明する。
【0064】
発光層133から出射された光の表示面側への取り出し経路は、図4(A),図4(B)に表したように2つに大別される。図5は、このときの光の偏光方向を模式的に表したものである。図5(A)のように発光層133から出射された非偏光状態の光のうち、図5(B)に表した光軸方向の光は、反射型偏光板26および吸収型偏光板27をそのまま透過する(図4(A))。一方、図5(B)と直交する光軸方向の光(図5(C))は、反射型偏光板26で反射され、λ/4位相差板25を通過すると図5(D)のような円偏光となる。この光は、下部電極12で反射されて円偏光状態が反転し(図5(E))、再び、λ/4位相差板25を通過すると、反射型偏光板26での反射前(図5(C))から90°傾いた直線偏光となり(図5(F))、反射型偏光板26および吸収型偏光板27を透過する(図4(B))。
【0065】
よって、図4(A)の光の経路では、外光反射抑制層24,λ/4位相差板25,反射型偏光板26および吸収型偏光板27をこの順に進み、図4(B)の光の経路では、外光反射抑制層24,λ/4位相差板25,反射型偏光板26での反射,λ/4位相差板25,外光反射抑制層24,下部電極12での反射,外光反射抑制層24,λ/4位相差板25,反射型偏光板26および吸収型偏光板27をこの順に進む。即ち、発光層133から出射された光の強度をI0、外光反射抑制層24の光透過率をTa、反射型偏光板26の自然光に対する反射率をr、下部電極12の反射率をR、吸収型偏光板27の偏光軸に平行方向の光透過率をTpとすると、図4(A)の取り出し光の強度I1、図4(B)の取り出し光の強度I2は、それぞれ数式(1)、数式(2)で表される。以降の数式においてもこれらの表記は同様である。
【数1】

【数2】

【0066】
表示面側から取り出される表示光の強度Iは、I1とI2との和となり、数式(3)で表される。
【数3】

【0067】
これに対し、図6は、比較例1に係る表示装置(表示装置100)での光取り出し経路を表したものである。表示装置100には、外光反射抑制層24および反射型偏光板26が設けられていない。よって、表示装置100では、発光層133より出射された光のうち、表示面側に取り出されるのは、反射型偏光板26および吸収型偏光板27の偏光軸と同一方向の光のみである。
【0068】
ここで、表示装置100の表示光の強度I’に対する表示装置1の表示光の強度Iの比を表示光の取り出し改善率αとすると、式(4)のように表すことができる。なお、式(4)では、r=0.5,R=0.9,Tp=0.86,表示装置100でのλ/4位相差板25および吸収型偏光板27の単体光透過率を0.43としている。
【数4】

【0069】
図7は、外光反射抑制層24の光透過率Taと改善率αとの関係を表したものである。αが1より大きければ、表示装置100よりも、本実施の形態の表示装置1の取り出し光の強度が大きい、即ち、光取り出し効率が向上していることを表す。上記の条件下では、外光反射抑制層24の光透過率Taが0.71(71%)よりも大きければ、光取り出し効率は向上し、0.75以上であれば、光取り出し効率は10%以上向上する。光取り出し効率を考える上で、Taの上限値はないが、本来の外光の反射を抑える効果を発揮させるため、0.95以下であることが好ましい。
【0070】
図8は、表示装置1における外光反射の経路を表したものである。図9には、このときの光の偏光方向を模式的に表す。表示面側から表示装置1に入射した外光は、図9(A)のように非偏光状態であるが、吸収型偏光板27および反射型偏光板26を通過する際に、直線偏光となり(図9(B))、強度はおよそ半分になる。この光は、λ/4位相差板25を通過して円偏光となり(図9(C))、下部電極12で反射されて、円偏光状態が反転する(図9(D))。続いて、λ/4位相差板25を通過することにより、直線偏光となる(図9(E))が、この光軸方向は、最初のλ/4位相差板25通過前(図9(B))と直交するため、反射型偏光板26により反射されて(図9(F))、λ/4位相差板25を通過する(図9(G))。この円偏光は、下部電極12により、反射されて円偏光状態が再び反転し(図9(H))、λ/4位相差板25を通過して、吸収型偏光板27および反射型偏光板26の偏光軸と平行な直線偏光となり(図9(I))、表示面側に出射される。
【0071】
よって、表示装置1に入射した外光は、吸収型偏光板27,反射型偏光板26,λ/4位相差板25,外光反射抑制層24,下部電極12での反射,外光反射抑制層24,λ/4位相差板25,反射型偏光板26での反射,λ/4位相差板25,外光反射抑制層24,下部電極12での反射,外光反射抑制層24,λ/4位相差板25,反射型偏光板26および吸収型偏光板27をこの順に進む。即ち、表示装置1に入射した外光の強度をL0とすると、表示面側に出射される外光の反射光の強度Lrは、数式(5)で表される。
【数5】

【0072】
これに対し、図10は、比較例2に係る表示装置(表示装置101)の、外光の反射光を表したものである。表示装置101には、外光反射抑制層24が設けられていないため、外光が大きく減衰されるのは、吸収型偏光板27および反射型偏光板26への入射時(図9(B))のみである。
【0073】
即ち、表示装置101の外光の反射光の強度Lr’に対する表示装置1の反射光の強度Lrの比を抑制率βとすると、数式(6)のように表すことができる。例えば、外光反射抑制層24の光透過率Taが、Ta=0.841のとき、β=0.5であり、外光反射抑制層24を4回通過する間にL0を半分にまで減衰させることができる。また、例えば、更にR=0.9,r=0.5,Tp=0.86とすると、外光反射は、入射時(L0)の約18.4%まで減衰されることになる(数式(5))。
【数6】

【0074】
なお、外光反射の強度には、上述のパラメータの他、開口率,カラーフィルタおよびブラックマトリクスの光透過率も影響を与える。このような因子を含めて、表示装置1全体としての反射率が4%以下となることが、視認性を高めるうえで好ましい。換言すれば、このような因子を考慮したうえで、全体の反射率が4%以下となるように外光反射抑制24の光透過率Taを設定することが好ましい。
【0075】
本実施の形態では、外光反射抑制層24を発光層133と反射型偏光板26との間に配置することにより、高効率に外光反射を減衰させ、かつ表示面側から取り出される光の取り出し効率を向上させている。例えば、図11に表したように外光反射抑制層(外光反射抑制層124)を、最表面(吸収型偏光板27の表示面側)に設けることも考えられる。しかしながらこの場合、入射した外光の外光反射抑制層の通過は2回であるため、反射光の強度Lr”は、数式(7)のようになり、減衰効果は低くなる。Ta’は、外光反射抑制層124の光透過率を表す。外光反射抑制層を2回通過する間に、上記と同様に光の強度を約半分に減衰させるためには、外光反射抑制層124の光透過率Ta’を、0.707まで落とさなければならない。
【数7】

【0076】
一方、外光反射抑制層124が最表面にある場合、発光層133から出射された光は、図12(A),図12(B)に表したように、λ/4位相差板25,反射型偏光板26,吸収型偏光板27および外光反射抑制層124または、λ/4位相差板25,反射型偏光板26での反射,下部電極12での反射,λ/4位相差板25,反射型偏光板26,吸収型偏光板27および外光反射抑制層124をこの順に進む。即ち、この時の発光層133から表示面側に取り出される光の強度I”は、数式(8)のように表される。発光層133と反射型偏光板26との間に外光反射抑制層24を配置した場合(図3)と同程度の外光反射抑制効果が得られるよう、Ta’の値を小さくすると、表示光の取り出し効率が低下する。Ta’=0.707,Ta=0.841として実験を行った結果、本実施の形態における表示光の強度Iは、I”に比較して、約10%の輝度の向上が確認された。
【数8】

【0077】
外光反射を抑え、かつ、発光層から出射される光の光取り出し効率を向上させる方法としては、λ/4位相差板を反射型のコレステリック液晶により構成する方法も提案されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、1種類の液晶材料によりこの効果を実現できる波長範囲は100〜150nm程度であり、可視光領領域全体を網羅することはできない。例えば、広範囲の波長領域に適用するには、発光色に応じた塗り分けや、積層構造等が必要になり、実用化は困難である。
【0078】
以上のように、本実施の形態では、発光層133と反射型偏光板26との間、具体的には、対向基板23とλ/4位相差板25との間に外光反射抑制層24を設けるようにしたので、外光の反射光の強度Lrを弱め、表示面側への出射を抑えることができる。また、λ/4位相差板25と吸収型偏光板27との間の反射型偏光板26により、発光層133からの出射される光の取り出し効率を向上させることができる。よって、外光反射による画品位および視認性の低下を防止すると共に、低消費電力化および長寿命化が可能となる。
【0079】
また、外光反射抑制層24は、例えば樹脂材料に染料を混合させることにより調製可能であり、容易に形成して実用化することができる。
【0080】
以下、上記実施の形態の変形例および他の実施の形態について説明するが、以降の説明において上記実施の形態と同一構成部分については同一符号を付してその説明は適宜省略する。
【0081】
<変形例1>
図13は、上記実施の形態の変形例1に係る表示装置(表示装置1A)の一部の断面構成を表したものである。この表示装置1Aは、λ/4位相差板25の一部に外光反射抑制層(外光反射抑制層24a)が含まれている点で、上記実施の形態の表示装置1と異なるものである。その点を除き、表示装置1Aは表示装置1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0082】
上述のように、λ/4位相差板25は、波長板251の両面にTAC層を備えている。ここでは、波長板251の、反射型偏光板26側の面にTAC層252、対向基板23側の面に外光反射抑制層24aをそれぞれ設けている。外光反射抑制層24aは、TACに上述の染料を混合することにより構成したものである。外光反射抑制層24aは、波長板251の反射型偏光板26側の面に設けてもよく、あるいは、両面に設けるようにしてもよい。このように、λ/4位相差板25の一部を外光反射抑制層24aにより構成することで、表示装置1Aの薄型化が可能となる。
【0083】
<変形例2>
図14は、変形例2に係る表示装置(表示装置1B)の断面構成を表したものである。この表示装置1Bは、カラーフィルタ層(カラーフィルタ層23C)の一部に外光反射抑制層(外光反射抑制層24b)が含まれている点で、上記実施の形態の表示装置1と異なるものである。その点を除き、表示装置1Bは表示装置1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0084】
上述のように、カラーフィルタ層23Cは、カラーフィルタ231R,231G,231B、ブラックマトリクス232およびオーバーコート層により構成されている。外光反射抑制層24bは、このオーバーコート層に染料を混合させたものである。このようにカラーフィルタ層23Cの一部を外光反射抑制層24bにより構成することで、表示装置1Bの薄型化が可能となる。
【0085】
<第2の実施の形態>
本開示の第2の実施の形態に係る表示装置(表示装置2)は、外光反射抑制層24をλ/4位相差板25と反射型偏光板26との間に設けている点で、上記第1の実施の形態と異なるものである。その点を除き、表示装置2は表示装置1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0086】
図15は、表示装置2の断面構成を表したものであり、表示装置1と同様に、有機EL素子10が、保護層21,封止部22および対向基板23により封止されている。表示装置2では、対向基板23の表示面側の構成が異なり、λ/4位相差板25、外光反射抑制層24、反射型偏光板26および吸収型偏光板27が、この順に設けられている。
【0087】
(モジュールおよび適用例)
以下、上記実施の形態および変形例で説明した表示装置の適用例について説明する。上記実施の形態等の表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0088】
(モジュール)
上記実施の形態等の表示装置は、例えば、図16に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板11の一辺に、保護層21および封止部22から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0089】
(適用例1)
図17は、上記実施の形態等の表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記実施の形態等に係る表示装置により構成されている。
【0090】
(適用例2)
図18は、上記実施の形態等の表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記実施の形態に係る有機EL表示装置により構成されている。
【0091】
(適用例3)
図19は、上記実施の形態等の表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記実施の形態等に係る表示装置により構成されている。
【0092】
(適用例4)
図20は、上記実施の形態等の表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記実施の形態等に係る表示装置により構成されている。
【0093】
(適用例5)
図21は、上記実施の形態等の表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記実施の形態等に係る表示装置により構成されている。
【0094】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本技術を説明したが、本技術は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記変形例1,2では、それぞれλ/4位相差板25,カラーフィルタ層23Cの一部を外光反射抑制層24a,24bにより構成する場合を例示したが、外光反射抑制層を、例えば、保護層21,封止部22あるいは対向基板23により構成するようにしてもよい。
【0095】
また、上記実施の形態等では、外光反射抑制層24,24a,24bが1層である場合を例示したが、外光反射抑制層が複数層により構成されていてもよい。
【0096】
更に、例えば、上記実施の形態等において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0097】
加えて、上記実施の形態等では、位相差板が、λ/4位相差板により構成されている場合を例示したが、他の位相差板により構成されるようにしてもよい。
【0098】
また、更に、上記実施の形態等では、本技術を有機EL表示装置に適用した場合について説明したが、無機EL表示装置やFED等、他の自発光型の表示装置にも適用可能である。
【0099】
なお、本技術は、以下のような構成をとることも可能である。
(1)発光層と、前記発光層側から入射した光を表示面側に反射する反射部と、前記表示面に設けられた吸収型偏光板と、前記発光層と前記吸収型偏光板との間の位相差板と、前記位相差板と前記吸収型偏光板との間に設けられ、前記位相差板の透過光のうち、所定の光軸方向の光を反射する反射型偏光板と、前記発光層と前記反射型偏光板との間に設けられると共に、外光の一部を吸収する外光反射抑制層とを備えた表示装置。
(2)前記外光反射抑制層は、前記発光層と前記位相差板との間に設けられている前記(1)に記載の表示装置。
(3)前記外光反射抑制層は、前記位相差板と前記反射型偏光板との間に設けられている前記(1)に記載の表示装置。
(4)前記外光反射抑制層の光透過率は71%から95%の範囲内である前記(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の表示装置。
(5)前記外光反射抑制層の光透過率は75%より大きい前記(4)に記載の表示装置。
(6)前記反射部は、前記発光層に電界をかけるための電極である前記(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の表示装置。
(7)前記外光反射抑制層は、樹脂および染料を含む前記(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の表示装置。
(8)前記外光反射抑制層は、前記位相差板の一部である前記(1)に記載の表示装置。
(9)前記外光反射抑制層は、TAC(Triacetyl Cellulose)および染料を含む前記(8)に記載の表示装置。
(10)前記位相差板と前記発光層との間にカラーフィルタ層を備え、前記外光反射抑制層は、前記カラーフィルタ層のうち前記発光層との対向面に設けられたオーバーコート層である前記(1)に記載の表示装置。
(11)前記発光層は、有機層により構成されている前記(1)乃至(10)のいずれか1つに記載の表示装置。
(12)前記位相差板は、λ/4位相差板である前記(1)乃至(11)のいずれか1つに記載の表示装置。
(13)表示装置を備え、前記表示装置は、発光層と、前記発光層側から入射した光を表示面側に反射する反射部と、前記表示面に設けられた吸収型偏光板と、前記発光層と前記吸収型偏光板との間の位相差板と、前記位相差板と前記吸収型偏光板との間に設けられ、前記位相差板の透過光のうち、所定の光軸方向の光を反射する反射型偏光板と、前記発光層と前記反射型偏光板との間に設けられると共に、外光の一部を吸収する外光反射抑制層とを備えた電子機器。
【符号の説明】
【0100】
1,1A,1B,2…表示装置、10…有機EL素子、11…基板、12…下部電極、13…有機層、14…上部電極、15…隔壁、21…保護層、22…封止部、23…対向基板、23C…カラーフィルタ層、24,24a,24b…外光反射抑制層、25…λ/4位相差板、26…反射型偏光板、27…吸収型偏光板、110…表示領域、120…吸信号線駆動回路、130…走査線駆動回路、140…画素駆動回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層と、
前記発光層側から入射した光を表示面側に反射する反射部と、
前記表示面に設けられた吸収型偏光板と、
前記発光層と前記吸収型偏光板との間の位相差板と、
前記位相差板と前記吸収型偏光板との間に設けられ、前記位相差板の透過光のうち、所定の光軸方向の光を反射する反射型偏光板と、
前記発光層と前記反射型偏光板との間に設けられると共に、外光の一部を吸収する外光反射抑制層と
を備えた表示装置。
【請求項2】
前記外光反射抑制層は、前記発光層と前記位相差板との間に設けられている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記外光反射抑制層は、前記位相差板と前記反射型偏光板との間に設けられている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記外光反射抑制層の光透過率は71%から95%の範囲内である
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記外光反射抑制層の光透過率は75%より大きい
請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記反射部は、前記発光層に電界をかけるための電極である
請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記外光反射抑制層は、樹脂および染料を含む
請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記外光反射抑制層は、前記位相差板の一部である
請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記外光反射抑制層は、TAC(Triacetyl Cellulose)および染料を含む
請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記位相差板と前記発光層との間にカラーフィルタ層を備え、
前記外光反射抑制層は、前記カラーフィルタ層のうち前記発光層との対向面に設けられたオーバーコート層である
請求項1に記載の表示装置。
【請求項11】
前記発光層は、有機層により構成されている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項12】
前記位相差板は、λ/4位相差板である
請求項1に記載の表示装置。
【請求項13】
表示装置を備え、
前記表示装置は、
発光層と、
前記発光層側から入射した光を表示面側に反射する反射部と、
前記表示面に設けられた吸収型偏光板と、
前記発光層と前記吸収型偏光板との間の位相差板と、
前記位相差板と前記吸収型偏光板との間に設けられ、前記位相差板の透過光のうち、所定の光軸方向の光を反射する反射型偏光板と、
前記発光層と前記反射型偏光板との間に設けられると共に、外光の一部を吸収する外光反射抑制層とを備えた
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−38014(P2013−38014A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175180(P2011−175180)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】