説明

表示装置及び表示方法

【課題】メモリの容量を大幅に削減できると共に、あらゆる使用をした場合にも精度の高い補正を可能とする表示装置及び表示方法を提供する。
【解決手段】自発光素子を備える複数の画素で構成される表示画面に、自然画を表示するとともに、予め決められた文字、記号又は図形を単独で若しくは二以上組み合わせたパターンを表示する表示装置であって、パターンの形状、表示位置、大きさならびに階調と、パターンの累積表示時間とを記憶するパターン記憶部102と、自発光素子の輝度低下特性を記憶する輝度低下特性記憶部103と、パターンが表示される画素毎に累積輝度低下量を算出する累積輝度低下量演算部104と、累積輝度低下量に基づいて、パターンが表示される画素毎に補正量を算出する補正量演算部105と、補正量を用いて入力画像を補正し、表示画面に表示する画像生成部106と、を有することを特徴とする表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光素子を備える画素に画像を表示する表示装置及び表示方法に関し、特に輝度の低下量に基づいて画像を補正して表示する表示装置及び表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子等のフラットパネル対応の自発光素子(自発光型デバイス)が注目されているが、これらの自発光素子は発光することで輝度が低下するという特徴がある。
【0003】
自発光素子を備える画素を、マトリクス状に複数配置したディスプレイでは、例えば黒い背景に白い固定パターンが表示される場合、黒い部分は点灯していないので劣化しないが、白い部分は点灯するので劣化して輝度が低下する。そして、輝度が低下した部分は、その後の画像表示時に、焼き付きとして認識され、画質を著しく悪化させてしまう。特に、上記ディスプレイがデジタルカメラのモニタとして使用される場合には、モニタに撮影条件を示すアイコンやテキスト等の固定パターンが表示される。このような固定パターンが表示される部分は輝度が低下しやすいため、この部分が焼き付きとして認識されやすい。よって、自発光素子の輝度の低下を補正する技術が求められるが、コストを考慮すると、補正に必要なデータを記憶するメモリの容量を小さくできるのが良い。このようにできると、メモリエラー等に対する対策(データのミラー化、バックアップメモリの追加等)も採りやすくなる。
【0004】
特許文献1には、表示モード毎の点灯時間の積算時間と、表示モード毎の入力データとして想定される平均画像データとを用いて入力データを画素毎に補正することにより、補正に必要なデータを記憶するメモリの容量を小さくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−13470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、メモリの容量削減が可能であるものの、劣化量予測に際して、モニタモード、ライブビューモード、各種設定モード等の各表示モードにおける表示画像の想定平均画像データを用いている。このため、各表示モードにおいて想定通りの使用を行っている場合には効率良く補正を実現できるが、ある程度偏った使用や想定外の使用を行って特定のパターンが頻出するような場合には補正の効果が低減する可能性がある。
【0007】
また、ある程度偏った使用に対しても対応できるように表示モード数を増やした場合には、記憶しなければならない想定平均画像データが増大し、不揮発性メモリの容量が大きくなるという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は、メモリの容量を大幅に削減できると共に、あらゆる使用をした場合にも精度の高い補正を可能とする表示装置及び表示方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、自発光素子を備える複数の画素で構成される表示画面に、自然画を表示するとともに、予め決められた文字、記号又は図形を単独で若しくは二以上組み合わせたパターンを、表示画面の予め決められた位置に予め決められた大きさと予め決められた階調で表示する表示装置であって、
前記パターンの形状、表示位置、大きさならびに階調と、前記パターンの累積表示時間とを記憶するパターン記憶部と、
前記自発光素子の輝度低下特性を記憶する輝度低下特性記憶部と、
前記パターン記憶部と前記輝度低下特性記憶部に記憶されたデータを用いて、前記パターンが表示される画素毎に累積輝度低下量を算出する累積輝度低下量演算部と、
前記累積輝度低下量に基づいて、前記パターンが表示される画素毎に補正量を算出する補正量演算部と、
前記補正量を用いて入力画像を補正し、前記表示画面に表示する画像生成部と、
を有することを特徴とする表示装置を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、自発光素子を備える複数の画素で構成される表示画面に、自然画を表示するとともに、予め決められた文字、記号又は図形を単独で若しくは二以上組み合わせたパターンを、表示画面の予め決められた位置に予め決められた大きさと予め決められた階調で表示する表示方法であって、
前記自発光素子の輝度低下特性が予め用意され、
前記パターンの累積表示時間を記憶するステップと、
前記予め用意されたデータと前記ステップで記憶されたデータを用いて、前記パターンが表示される画素毎に累積輝度低下量を算出するステップと、
前記累積輝度低下量に基づいて前記パターンが表示される画素毎に補正量を算出するステップと、
前記補正量を用いて入力画像を補正し、前記表示画面に表示するステップと、
を有することを特徴とする表示方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アイコン等の固定パターンの形状、表示位置、大きさ、階調及び累積表示時間(累積出現時間)を記憶するだけで焼き付き補正が可能なため、各画素の点灯履歴を全て記憶する必要がなく、メモリの容量を大幅に削減できる。また、焼き付きが視認されやすい固定パターンそれぞれについて補正を行うため、精度の高い補正が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】(a)パターンのみの画像の例、(b)自然画と固定パターンの合成画像の例である。
【図3】パターン形状の一例とそれを2値化したデータマトリクスを示す図である。
【図4】パターン形状の例、それらを2値化したデータマトリクス、それらの輝度低下見積もり時間のデータマトリクスを示す図である。
【図5】輝度低下見積もり時間のデータマトリクスの作成を説明する図である。
【図6】有機EL素子の(a)輝度低下特性、(b)補正係数の例を示す図である。
【図7】本発明を用いた制御フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカムコーダ等の背面モニタには、主に、撮影のためのピント合わせ等に用いるライブビュー表示、撮影した静止画又は動画を確認する確認モニタ表示、カメラの各種設定を行うための設定メニュー表示等が出力される。これらのアプリケーションで表示するのは、撮影する(又は撮影した)自然画と、カメラの各種設定状況や現在の使用状況を表示するための数字やアイコン等からなる固定パターンと、それらが合成された画像とである。これらのうち、固定パターンは予め決められた形状、位置、大きさ、階調で表示されるため、それが表示される部分の輝度が低下しやすく、モニタの焼き付きの原因になっていた。また、これらの固定パターンはユーザに注意を促すように高輝度で目立つ表示になる場合が多く、それも焼き付きを促進する要因となっている。
【0014】
一方、カメラで撮影した静止画、ライブビューやビデオで撮影した動画等は自然画と呼ばれ、高輝度でかつ境目のはっきりした構造が長時間出現することは少ないため、これらの画像によって視認される焼き付きは生じにくいことも分かっている。
【0015】
以上のことを考慮し、本発明者らは、デジタルカメラ等のアプリケーションにおいて、アイコン等の固定パターンが表示される画素の補正量を算出し、算出した補正量を入力画像に適用して表示することで焼き付きを抑制する大きな効果が得られることを見出した。尚、本発明において、「入力画像」とは、自然画のみの画像、アイコン等の固定パターンのみの画像、又は自然画と固定パターンの合成画像を指すものとする。また、「自然画」とは、アイコン等の固定パターン以外を指すものとする。
【0016】
以下に、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。尚、本実施形態では、有機EL素子を備える画素に画像を表示する表示装置及び表示方法を例に挙げて説明するが、本発明の表示装置及び表示方法に適用可能な自発光素子は有機EL素子に限定されるわけではない。
【0017】
図1は、本発明の構成の概略を示すブロック図である。表示装置に入力される情報は、撮影後やライブビュー等の自然画の画像データと、それと合成されて表示される固定パターン(以下、単に「パターン」という。)の番号(パターン番号)である。
【0018】
パターンは、形状、表示位置、サイズ、階調といった属性を持っており、このパターンがデジタルカメラ等のシステムにより予め用意される。同じ形状のアイコンでも、画面の端に小さく表示される場合と中央に大きく表示される場合とがあるとすると、これらは別のパターンとして扱う。各パターンは表示位置が予め決められているため、各パターンが表示される画素も予め決められていることになる。
【0019】
パターンは、「A」「B」「0」「1」等の文字だけでなく、これらを組み合わせたものであってもよい。組み合わせとしては、文字同士、記号同士、図形同士の組み合わせでも良いし、文字と記号、文字と図形、記号と図形の組み合わせでも良い。
【0020】
パターンの形状(パターン形状)とは、そのパターンが持つ文字、記号又は図形の形状である。2以上の文字、記号又は図形からなるパターンの場合は、それらの文字などの並び方も含めて形状というものとする。
【0021】
パターンの形状は、ビットマップ形式でメモリに記憶され、記憶位置のアドレスをパターンの形状を示すインデックス(表1のイメージ番号)に対応させる。パターンごとにビットマップ形式で記憶すると記憶容量がかさむので、1つ1つの文字・数字・記号の形状をビットマップ形式で記憶しておき、複数の文字などからなるパターンについてはそれらのアドレスの組み合わせを対応させることが好ましい。
【0022】
パターンは個々にパターン番号がふられており、形状、表示位置、サイズ、階調の各データを伴っている。
【0023】
表1は、パターンのデータ構造を示している。表1のイメージ番号はパターン形状を示すインデックス、位置はパターンを表示する際の画面上の位置を示す情報、サイズSはパターンを表示する際の大きさを示す情報、階調Lはパターンを表示する際の階調を示す情報である。表1のa、b、c、d、k、l、m、n、p、q、r、u、v、w、x、y、N、Tはそれぞれ正の整数を示す。また、サイズS、階調Lには具体的な数値が例として入っている。累積表示時間Ts以外のデータはあらかじめシステムで決められて固定されており、これらを総称してパターン表示情報という。
【0024】
【表1】

【0025】
表1の累積表示時間Tsは、パターンを表示した時間の累積値である。累積表示時間は、システムにより計測される。
【0026】
表1にシステムの総駆動時間Ttをパターン番号:0として加えても良い。
【0027】
図1の表示装置は、画像生成部101と、パターン記憶部102と、輝度低下特性記憶部103と、累積輝度低下量演算部104と、補正量演算部105と、を有する。
【0028】
パターン記憶部102は、表1のパターン表示情報とパターン累積表示時間を記憶し、別途、ビットマップ形式のパターン形状も記憶する。パターン累積表示時間は、そのパターンの表示が一定の時間続くとその時間を加えるように更新される。
【0029】
輝度低下特性記憶部103は、画素を構成する自発光素子の典型的な輝度低下特性(発光時間に対する輝度の低下量)をあらかじめ測定しておき、それを記憶する。輝度低下特性とは、画素毎の駆動時間と輝度の関係を示すデータである。輝度低下特性については実施例1で詳しく説明する。
【0030】
パターン記憶部102と輝度低下特性記憶部103は、表示装置の電源が切られた後も情報を保存しておくため、不揮発性メモリを用いて構成される。
【0031】
累積輝度低下量演算部104は、パターン記憶部102からパターン表示情報、パターン形状、パターン累積表示時間を読み出し、輝度低下特性記憶部103から輝度低下特性を読み出す。そして、読み出したこれらのデータに基づいて、パターンが表示される画素毎に累積輝度低下量を算出し、算出した値を補正量演算部105に送る。
【0032】
補正量演算部105は、累積輝度低下量演算部104で算出された累積輝度低下量を受け取る。そして、パターンが表示される画素毎に補正量を算出し、算出した値を画像生成部101に送る。
【0033】
画像生成部101は、パターン記憶部102からパターン表示情報とパターン形状を読み出し、表示すべき自然画とパターンの合成画像に、補正量演算部105で算出された補正量を適用し、その画像を出力画像としてパネルに送り、表示画面に表示する。補正されるのは、パターンが表示される画素のみである。
【0034】
累積輝度低下量演算部104と補正量演算部105は、画像データが更新されるたびに動作して補正量を算出する。または、後の実施例で説明するように、表示装置の電源が入った直後に動作し、そのときに算出した補正量を、表示動作中保持していてもよい。その場合は、画像生成部101内に、各画素の補正量のデータマトリクスを記憶する補正量記憶部106を備えておく。
【0035】
また、本発明の表示方法は、累積表示時間を記憶するステップと、累積輝度低下量を算出するステップと、補正量を算出するステップと、補正量を用いて入力画像を補正し、表示画面に表示するステップと、を有する。
【0036】
累積表示時間を記憶するステップでは、パターン毎の表示時間の累積値を記憶する。
【0037】
累積輝度低下量を算出するステップでは、パターン表示情報、パターン形状、パターン累積表示時間、輝度低下特性に基づいて、パターンが表示される画素毎に累積輝度低下量を算出する。
【0038】
補正量を算出するステップでは、算出された累積輝度低下量に基づいてパターンが表示される画素毎に補正量を算出する。
【0039】
補正量を用いて入力画像を補正し、表示画面に表示するステップでは、表示すべき自然画とパターンの合成画像に、算出された補正量を適用し、その画像を出力画像としてパネルに送り、表示画面に表示する。
【0040】
ここで、パターンの例を示す。図2(a)はパターンのみの画像の例であり、黒い背景にパターンが並んでいる。一方、図2(b)は自然画と固定パターンの合成画像の例であり、オートホワイトバランスモードであることを示す「AWB」、フォーカスエリアを示す中央の四角、各種撮影条件を示す「125」「5.6」等がパターンである。
【0041】
上記構成を、有機EL素子を備える複数の画素を有する表示装置に適用し、入力画像の補正を行う実施例について、以下に説明する。
【0042】
[実施例1]
パターン形状の一例として、文字「A」を示す画像情報(ビットマップ)を図3(a)に示す。白い部分が点灯、黒い部分が消灯され、文字「A」として表示される。図3の例では8×8のサイズであるが、サイズは大きくても小さくても良い。実際には、パターン形状は形状のみ記憶するため、2値のデータで良く、0と1の2値を用いると、図3(b)のようなデータマトリクスとして表される。即ち、点灯部分を1、消灯部分を0として記憶される。図3(a)のようなパターン形状は、予め製品出荷の際に固定パターンの形状を示す画像情報としてパターン記憶部102(図1)に保持しており、使用時にイメージ番号に対応させて呼び出される。尚、これらパターン形状は、前述のように2値のデータマトリクスとして保存しても良いし、更に画像圧縮や画像ベクトル化によって変換して保存しても良い。
【0043】
次に、上記パターン形状、表1のパターン表示情報、パターン累積表示時間、輝度低下特性を用いた累積輝度低下量の算出処理、補正量の算出処理及び出力画像の生成処理を、図4に示す2つのパターン形状を例として説明する。
【0044】
(累積輝度低下量演算部104の動作)
表1の1段目(パターン番号:1)のイメージ番号はpであり、このイメージ番号に対応するパターン形状を図4(a)に示す。このパターン形状を2値で表したデータマトリクスは図4(b)のとおりであり、このデータマトリクスのj行i列目の要素をp(i,j)とする。p(i,j)はイメージ番号pのj行i列目が点灯するかどうかを示しており、値は上述のとおり0(消灯)、1(点灯)である。
【0045】
これらを用いてデータマトリクスのj行i列目の要素における輝度低下見積もり時間tijを下記式(1)に従って求める。
ij = p(i,j)×L×Ts ・・・(1)
【0046】
輝度低下見積もり時間tijにより構成されるデータマトリクスは図4(c)のように表される。階調L、累積表示時間Tsは表1の値を用いた。点灯したパターンの階調と累積表示時間の積算値を用いて輝度低下見積もり時間tijを求めることにより、階調Lを輝度低下見積もり時間tijに変換して評価できる。尚、有機EL素子毎に輝度低下特性が異なるため、この変換を行う際には、階調Lを有機EL素子の輝度低下特性に合わせて設定する必要がある。
【0047】
また、サイズSに関してはパターン形状のデータマトリクスそのもののサイズを大きくするために用いる。例えば表1の4段目(パターン番号:4)では、サイズS=6であるため、イメージ番号pの画像を縦横各々6倍に拡大したサイズ(48×48)で処理するものとする。
【0048】
表1の2段目(パターン番号:2)のイメージ番号はqであり、このイメージ番号に対応するパターン形状を図4(d)に示す。このパターン形状を2値で表したデータマトリクスは図4(e)のとおりであり、このデータマトリクスのj行i列目の要素をq(i,j)とする。パターン番号:2についても上記と同様に行なうと、q(i,j)データマトリクス、表1の階調L、累積表示時間Tsを用いて、輝度低下見積もり時間tijにより構成されるデータマトリクスは図4(f)のように表される。
【0049】
次に、上記輝度低下見積もり時間のデータマトリクスを用いて、ディスプレイの各画素に展開する方法を、図5を用いて説明する。図5はディスプレイパネルの一部を示しており、各メッシュは画素の並びを示している。例えば全体のサイズは、SVGAであれば800×600ピクセルの大きさがある。
【0050】
まず、表1よりパターン番号:1は図4(c)のデータマトリクスを(k,l)の位置に配置する(図5(a))。次に、パターン番号:2は図4(f)のデータマトリクスを(m,n)の位置に配置するが、その際に両者が重なる部分については各要素即ち輝度低下見積もり時間をそれぞれ加算する(図5(b))。このようにすることで、いろいろなパターンが重なって表示された際にも適切な輝度低下見積もり時間を算出することが可能となる。上記加算処理を、表示する全てのパターンについて順次行なえば、使用履歴に応じた輝度低下見積もり時間のデータマトリクスが算出される。これにより各画素がパターン表示によってどの程度負荷を受けたかが推定可能となる。
【0051】
続いて、この輝度低下見積もり時間から累積輝度低下量を見積もる手順を説明する。図1の輝度低下特性記憶部103には図6(a)のような輝度低下見積もり時間に対する輝度低下特性が保持されている。これを用いることによって、前述の輝度低下見積もり時間のデータマトリクスの各画素の値に対してそれぞれ累積輝度低下量が推定され、結果として各画素の累積輝度低下量のデータマトリクスが形成される。
【0052】
(補正量演算部105の動作)
上記累積輝度低下量のデータマトリクスに基づいて補正量データマトリクスを作成し、補正信号として図1の画像生成部101に送る。累積輝度低下量から補正量データマトリクスを求める場合には、図6(a)の輝度低下特性から、出力を1に戻すよう補正をかける。即ち、図6(a)の輝度低下の逆数を求めることによって補正量データマトリクスを構成する。輝度低下特性を記憶する代わりに、図6(b)のように、補正特性として予め輝度低下見積もり時間に対する補正係数の値を記憶させて用いることも可能である。
【0053】
輝度低下特性は、補正を行うことによって生じる負荷の影響を考慮に入れた輝度低下特性であることが望ましい。有機EL素子の輝度低下特性は一定電流、又は一定電圧を印加して求めることが一般的である。それは、表示デバイスとして使用する場合に定電流駆動、又は定電圧駆動を行なうからである。しかしながら、輝度補正をした場合の駆動は一定の電圧でも一定の電流でもない。即ち、一定輝度による効率劣化特性を基にした輝度低下特性が必要であり、補正係数はそうして求められた輝度低下特性から算出する。
【0054】
(画像生成部101の動作)
上記補正データマトリクスを自然画と固定パターン情報から構成した画像にかけることによって出力画像に補正を加えパネルに出力する。これにより補正が完了する。
【0055】
次に、図7を用いて、補正処理、データ蓄積処理の手順の一例を示す。既に説明したとおり有機EL素子等の自発光素子を用いたディスプレイは発光による輝度低下を生じる。ところがそれは一般的にはある程度時定数の長い、ゆっくりした変化であるため、デジタルカメラのような間欠的に駆動するものについては、駆動時にリアルタイムで駆動負荷を補正にフィードバックする必要性は低いと考えられる。そこで、本実施例では、電源オン時にその回の駆動に使用する補正量を決め、実際の駆動中は補正量を変化させない方法が有効である。こうすることにより演算量を減らすだけでなく、演算に伴う消費電力を抑えることも可能である。
【0056】
本実施例の制御の流れを図7に示す。図7(701〜708)が表示装置立ち上げ時の処理シーケンス、図7(709〜715)が表示動作時の各フレームでの処理シーケンスである。
【0057】
まず、表示装置立ち上げ(電源オン)時の動作について説明する。
【0058】
電源オン(701)の後、パターン表示情報、前回までの駆動で記憶されたパターン累積表示時間をパターン記憶部102から読み出す(702)。その後、これらのデータに対応するパターン形状をパターン記憶部102から順次読み出し(703)、これらのデータを用いて、累積輝度低下量演算部104でパターンを表示する画素毎の輝度低下見積もり時間を算出する(704)。累積輝度低下量演算部104では、更に予め用意された輝度低下特性を輝度低下特性記憶部103から読み出し(705)、このデータと輝度低下見積もり時間により、パターンを表示する画素毎の累積輝度低下量を算出する(706)。次に、算出された累積輝度低下量に基づいて、補正量演算部105でパターンを表示する画素毎の補正量を算出し(707)、算出した補正量を表示装置内に設けられた補正量記憶部に記憶する(708)。算出した補正量は電源オン時のみ保持していれば良いため、不揮発性のメモリに記憶される必要はない。尚、補正量記憶部はなくても良い。
【0059】
次に、各フレーム表示の際の動作について説明する。
【0060】
フレーム動作が開始されると自然画とパターン番号が入力される(709、710)。次に、パターン番号がパターン記憶部102に記憶される(711)。パターン記憶部102は表示履歴を保持するため電源オフ時も保持する必要があるため、不揮発性メモリで構成される。次に、画像生成部101でパターン番号に対応するパターン表示情報、パターン形状を参照し(712)、立ち上げ時に保持したパターンを表示する画素毎の補正量を参照する(713)。そして、自然画と、パターン表示情報、パターン形状からなる画像を合成し(714)、その合成画像にパターンを表示する画素毎の補正量を適用して出力画像を作成した後、パネルへ画像を出力(715)してフレーム毎のシーケンスを終了する。
【0061】
本実施例で必要な不揮発性メモリ量について以下に説明する。
【0062】
本システムで不揮発性メモリに保持する情報は、表示履歴を記憶するために必要な表1に示すパターン表示情報、パターン累積表示時間、パターン形状、輝度低下特性である。パターン表示情報及びパターン累積表示時間は表1の括弧に示したビット数程度で実現可能である。イメージ番号は16ビット、位置は16×2=32ビット、サイズSは16ビット、階調Lは4ビット、表示時間Tsは32ビットとして、合計で100ビットとなる。パターン番号の数Nを100程度とした場合でも1.25kB(キロバイト)となる。パターン形状は図3(b)に示したデータマトリクスでは8×8=64ビットであるが、もっと大きな場合でも、例えば32×32=1024ビットである。この大きさのパターンが100あった場合でも13kB程度のメモリ量となる。図3(b)のように2値化したデータマトリクスは既に説明したとおり画像圧縮やベクトル化によってさらに数分の1程度に小さくなると考えられる。仮に圧縮しない場合でもパターン表示情報と併せて15kB程度であり、RGBのそれぞれについて考えても15×3=45kBの容量であった。
【0063】
一方、同じSVGAのディスプレイにおいて、画素ごとに点灯時間データ積算を行う場合の必要メモリ容量は、1画素について時間情報32ビット(表1と同様)、階調情報4ビット(表1と同様)、画素数が800×600である。よって、(32+4)×600×800=17280000ビット(2.16MB)となる。更に、RGBの3色を考えると3倍の6.6MBのメモリが必要になる。
【0064】
また、別の方法として特許文献1に記載のように表示モード毎の想定平均画像データを保持する場合、SVGAのディスプレイにおける表示モード毎の想定平均画像データは1面につき8×800×600=3840000ビット(480kB)となる。更に、RGBの3色を考えると3倍の1.44MB/モードである。これと比較しても本発明では、パターンごとに累積表示時間を記憶するようにした結果、大幅にメモリ容量を削減できることが分かる。
【0065】
また、上記実施例によって補正を行ったところ、固定のパターンによる焼き付き量が最大で1%以下となることを確認した。即ち、駆動時間に対する輝度低下量が1%以下であった。
【0066】
[実施例2]
更に補正の精度を上げる方法として、実施例1の輝度低下見積もり時間の算出方法を変更した実施例を以下に示す。
【0067】
有機EL素子を備えるパネルを例えばデジタルカメラやデジタルビデオカムコーダの背面モニタとして駆動した場合、パターンが表示されていない場合には自然画相当の画像が表示されている。既に説明したとおり、自然画自体では視認されるような焼き付きは生じにくいが、自然画を表示した場合でも有機EL素子の劣化は起こる。従って、更に補正精度を上げるためには自然画表示時の輝度低下量を勘案する必要がある。
【0068】
デジタルカメラ等のアプリケーションの場合、パターン表示されていない時には自然画が表示されていることが多いため、自然画の表示時間Tn≒Tt−Tsとする。Ttはシステムの総駆動時間である。また、自然画の平均輝度をLnとした場合、輝度低下見積もり時間tij’のデータマトリクスは下記式(2)から決定できる。
ij’ = p(i,j)×L×Ts+(Tt−Tn)×Ln ・・・(2)
【0069】
Lnはデジタルカメラ等による撮影画像やライブビュー等の動画の平均輝度相当の階調とする。数千枚のサンプル撮影静止画像を用いて調査を行ったところ、デジタルカメラのアプリケーションでは上記平均輝度が最大輝度のおよそ20%程度ということが分かった。よって、Lnを最大輝度の20%程度に設定し、点灯したパターンの階調と累積表示時間の積算値と、自然画のみの表示時間と自然画の平均輝度の積算値と、を加算した値を用いて輝度低下見積もり時間tij’を算出した。そして、算出した輝度低下見積もり時間tij’を用いて補正を行ったところ、固定パターンによる焼き付き量が最大で0.5%となることを確認した。即ち、駆動時間に対する輝度低下量が0.5%であった。
【0070】
尚、上述のLnは、デジタルカメラ、デジタルビデオカムコーダ等のアプリケーションによって異なる。本実施例ではデジタルカメラに用いる場合であるが、デジタルビデオカムコーダ等の別の装置に用いる際にはLnの値を変更することが望ましい。
【符号の説明】
【0071】
101:画像生成部、102:パターン記憶部、103:輝度低下特性記憶部、104:累積輝度低下量演算部、105:補正量演算部、106:補正量記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自発光素子を備える複数の画素で構成される表示画面に、自然画を表示するとともに、予め決められた文字、記号又は図形を単独で若しくは二以上組み合わせたパターンを、表示画面の予め決められた位置に予め決められた大きさと予め決められた階調で表示する表示装置であって、
前記パターンの形状、表示位置、大きさならびに階調と、前記パターンの累積表示時間とを記憶するパターン記憶部と、
前記自発光素子の輝度低下特性を記憶する輝度低下特性記憶部と、
前記パターン記憶部と前記輝度低下特性記憶部に記憶されたデータを用いて、前記パターンが表示される画素毎に累積輝度低下量を算出する累積輝度低下量演算部と、
前記累積輝度低下量に基づいて、前記パターンが表示される画素毎に補正量を算出する補正量演算部と、
前記補正量を用いて入力画像を補正し、前記表示画面に表示する画像生成部と、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
算出した前記補正量を記憶する補正量記憶部を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記累積輝度低下量演算部は、前記パターンが表示される画素毎に輝度低下見積もり時間を算出し、算出した輝度低下見積もり時間を用いて累積輝度低下量を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記累積輝度低下量演算部は、点灯した前記パターンの前記階調と前記累積表示時間の積算値を用いて前記輝度低下見積もり時間を算出することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記累積輝度低下量演算部は、点灯した前記パターンの前記階調と前記累積表示時間の積算値と、前記自然画のみの表示時間と前記自然画の平均輝度の積算値と、を加算した値を用いて前記輝度低下見積もり時間を算出することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項6】
自発光素子を備える複数の画素で構成される表示画面に、自然画を表示するとともに、予め決められた文字、記号又は図形を単独で若しくは二以上組み合わせたパターンを、表示画面の予め決められた位置に予め決められた大きさと予め決められた階調で表示する表示方法であって、
前記自発光素子の輝度低下特性が予め用意され、
前記パターンの累積表示時間を記憶するステップと、
前記予め用意されたデータと前記ステップで記憶されたデータを用いて、前記パターンが表示される画素毎に累積輝度低下量を算出するステップと、
前記累積輝度低下量に基づいて前記パターンが表示される画素毎に補正量を算出するステップと、
前記補正量を用いて入力画像を補正し、前記表示画面に表示するステップと、
を有することを特徴とする表示方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−57912(P2013−57912A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197617(P2011−197617)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】