説明

表示装置用サブストレート

【課題】軽量薄型で表示品位の良い表示装置用の表示装置用サブストレートの提供。
【解決手段】芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドを主成分とする300℃でのカール度10%以下のポリイミドフィルムを絶縁基材とし該ポリイミドフィルム絶縁基材の表面に、半導体薄膜素子および配線用薄膜を直接形成した液晶表示素子(TN液晶、STN液晶、強誘電液晶、ゲストホスト型液晶、コレステリック液晶等々)、EL表示素子、電気泳動型表示素子、エレクトロクロミック型表示素子などの表示装置用サブストレート、このうちより好ましいのは、絶縁基材がベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドベンゾオキサゾールを主成分とする線膨張係数が−5〜16ppm/℃のポリイミドフィルムである表示装置用サブストレートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲性を有する表示装置用サブストレートに関し、さらに詳しくは、半導体薄膜素子および配線用薄膜を特定ポリイミドフィルムに直接形成した表示装置用サブストレートと表示素子を含む表示装置における表示装置用サブストレートであり、耐熱性のある特定物性のポリイミドフィルムを支持体として形成された半導体薄膜素子および配線用薄膜などを含む保持回路を含む表示装置用サブストレートに関する。
本発明は、表示装置用の部材となるに表示装置用サブストレート関する。
表示装置としてはさらに具体的には、薄型テレビジョン、壁掛けテレビジョン、ハンドヘルドテレビジョン、据置型パーソナルコンピュータの表示部、モバイル型パーソナルコンピュータ、携帯型表示装置、音響機器の表示部、携帯型音楽再生機の表示部、車載用アミューズメント機器の表示部、携帯型通信機器の表示、たとえば携帯電話、自動車などの移動車両、船舶、航空機などのコクピットにおける表示装置、カーナビゲーションシステムの表示部、公共交通機関での案内表示、広告、広報媒体、腕時計、ヘッドマウントディスプレイ、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラなどや、電子辞書、PDA、電子手帳、GPS、携帯型ゲーム機、携帯型カラオケ機、玩具の表示部、デジタルおよび銀塩カメラ表示部および状態表示・コントロール部の表示部、コンピューターディスプレーや、テレビモニターの状態表示・コントロール部の表示部、腕時計、腕時計以外の時計で電子表示装置を用いているもの。また、各種家電機器などのリモコンの表示部、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、電気がま、ジャーポット、食器洗い乾燥機、電気冷蔵庫、クッキングヒーター、換気扇、電気温水器、自然冷媒ヒートポンプ式給湯機、家庭用電気井戸ポンプ、空気清浄機、電気洗濯機、洗濯機(全自動式・二槽式)、洗濯乾燥機、電気掃除機、温水洗浄便座、電気かみそり、家庭用生ゴミ処理機、クーラー、などの家電製品の表示部、電気照明器具の表示部、ビデオレコーダー、DVDレコーダー、HDレコーダー、ステレオ、ホームシアターシステム、ラジオなどのAV機器の表示部、複写機、プリンター、FAX、電話などの事務機器の表示部、プリンター、CDドライブ、FDドライブ、MOドライブ、DVDドライブ、ハードディスク、メモリーカードリーダー・ライター、モデム、ルーター、ハブ等のコンピューター周辺機器およびコンピューター本体の表示部、ドアホン、火災報知システム、ガス検知、セキュリティーシステムなどの住宅、建物設備の表示部、ヘルスメーター、血圧測定器、電気マッサージ器具、などの健康増進機器の表示部、土木建設機械、鉱山機械、化学機械および貯蔵槽、パルプ・製紙機械、プラスチック加工機械、ポンプ、圧縮機および送風機、油圧機械および空気圧機器、動力伝導装置、農業用機械器具および木材加工機械、金属工作機械、金属加工機械および鋳造装置、食料品加工機械、包装機械および荷造機械、ミシンおよび繊維機械、冷凍機および冷凍機応用製品、自動販売機、自動改札機・自動入場機、回転電気機械、静止電気機械器具、開閉制御装置、半導体関連、家電関係、自動車など種々産業での生産設備、工作機械の表示部、電子交換機、デジタル伝送装置、通信設備内の表示部、現金自動預払機(支払機を含む)などの端末装置、電気計測器および電子応用装置、計測機器等の表示部などが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
薄型の表示装置としては液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマディスプレイ、電気泳動型表示装置、フィールドエミッション型表示装置、エレクトロクロミック表示装置、回転球型表示装置、回転円筒型表示装置、電子噴流体など乾式粉体の移動を利用した表示装置などが知られている。
かかる表示装置は表示原理そのものを具現化した表示パネルと、駆動信号を生成し伝達するための駆動回路などを含む回路パネルをその構成部材として含んでいる。
かかる駆動信号の生成と伝達は、ドライバICと呼ばれる集積回路によってなされ、一般にテープサブストレートと呼ばれる極薄型の回路基板を介して表示パネルと接続されている。
近年の表示パネルの高精細化に伴い、ドライバICから導かれる駆動信号線の本数は極めて多数にのぼり、配線のピッチは非常に小さくなっている。そのため、温度変化、湿度変化による配線ピッチの伸縮やテープサブストレートの反り、ねじれ、変形による配線の接続不良が、製品収率に及ぼす影響が高くなってきている。
【0003】
これら従来の表示装置としては、例えば印刷物のように目になじみ易く、また、外光による目の疲労のない受光型の表示装置として、球状、楕円体又は柱片状の表示素子と、表示素子の単数、又は複数個を透明な中空筒体に封入した表示装置(特許文献1参照)や、電界の印加により光学的反射特性が変化する複数のマイクロカプセルを所望の位置に確実に設置することにより、高精細且つ高品位な複数色およびカラー表示が可能な表示装置(特許文献2参照)や、画素電極とエレクトロクロミック層が形成されたアレイ側基板と、対向電極とエレクトロクロミック層が形成されたカラーフィルタ側基板と、アレイ側基板とカラーフィルタ側基板との間に注入された電解層からなるエレクトロクロミック表示装置において、画素電極およびエレクトロクロミック層の周辺に隔壁を設けることで、隣接する画素との間で、画素電極同士の短絡や、エレクトロクロミック層同士の短絡が生じないようにした高精細エレクトロクロミック表示装置(特許文献3参照)などが提案されており、その他液晶表示素子(TN液晶、STN液晶、強誘電液晶、ゲストホスト型液晶、コレステリック液晶等々)、EL表示素子、電気泳動型表示素子、エレクトロクロミック型表示素子、酸化還元型表示素子、回転球型又は回転円筒型表示素子、電子粉流体型表示素子(特許文献4参照)なども知られている。
【特許文献1】特開2002−202536号公報
【特許文献2】特開2002−365668号公報
【特許文献3】特開2005−049770号公報
【特許文献4】特開2003−248245号公報
【0004】
これら前記のような種々の表示素子が多く知られており、これらの表示素子と一体となって作用する駆動部を担う半導体などの表示装置として具備すべきその他素子を備えた表示装置も多く提案されている。
例えば、画素TFTと駆動回路TFTとが同一基板上に一体形成された、アクティブマトリックス型半導体表示装置において、画素領域と駆動回路領域との間に配置されたギャップ保持材(このギャップ保持材としてポリイミド樹脂が例示)によってセルギャップの制御を行い、半導体表示装置全体にわたって均一なセル厚を得ることができ、従来の粒形のスペーサを用いないので、アクティブマトリックス基板と対向基板とを貼り合わせる時に、駆動回路TFTには応力が生じることがない駆動回路TFTにダメージを与えることを防ぐことができるアクティブマトリックス型半導体表示装置(特許文献5参照)や、一対の基板間に液晶を封入し、一方の基板上に層間絶縁膜(ポリイミド樹脂などが例示)を介して縦横に交差状態でマトリクス状に配列したゲート配線およびソース配線とを形成し、前記ゲート配線およびソース配線に電気的に接続させて薄膜トランジスタを形成するとともに、前記ゲート配線と前記ソース配線とによって区画した領域に前記薄膜トランジスタに電気的に接続させて画素電極を形成してなり、前記薄膜トランジスタをなすゲート電極と半導体能動層との間に介設したゲート絶縁膜の誘電率が前記層間絶縁膜の誘電率よりも大きい液晶表示装置(特許文献6参照)や、ベースフィルムの厚さ段差によるリード断線を防止することにより、信頼性を向上させた、半導体集積回路素子搭載用デバイスホールを有する有機絶縁テープと、該有機絶縁テープに貼付けされ、半導体集積回路素子ボンディング用のインナーリードと、出力側,入力側アウターリードの配線パターンが形成されている金属箔層と、前記インナーリードに、前記有機絶縁テープの幅方向に対して長手方向が平行になるように配置して接続した、縦横比が約4以上である半導体集積回路素子を有する液晶ドライバ用テープキャリアパッケージ(特許文献7参照)や、これら表示装置の種々素子の絶縁基材に種々のポリイミド樹脂やフィルム(特許文献4参照)が多く提案されている。
【特許文献5】特開平10−319440号公報
【特許文献6】特開平10−048610号公報
【特許文献7】特開2002−277894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、表示装置用サブストレートの製造プロセス中に絶縁機材(基板)に加わる加熱冷却の繰り返しに耐え、さらに回路などの形成工程において熱ストレスが加わった場合にも十分な信頼性を保持する表示装置用サブストレート、軽量薄型の表示装置用サブストレートとそれを構成要素として含んだ表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の物性を有する耐熱性高分子フィルムであるポリイミドフィルムを表示装置用サブストレートの絶縁基材に用いることによりその目的を達することを見出した。
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
1.芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドを主成分とする300℃でのカール度10%以下のポリイミドフィルムを絶縁基材とし、該ポリイミドフィルム絶縁基材の表面に、半導体薄膜素子および配線用薄膜を直接形成したことを特徴とする表示装置用サブストレート。
2.表示素子が、液晶表示素子、EL表示素子、電気泳動型表示素子、エレクトロクロミック型表示素子、酸化還元型表示素子、回転球型又は回転円筒型表示素子、および乾式粉体の移動による表示形式の表示素子いずれかから選ばれた1種以上の表示素子である前記1に記載の表示装置用サブストレート。
3.液晶表示素子が、TN液晶、STN液晶、強誘電液晶、ゲストホスト型液晶、およびコレステリック液晶いずれかから選ばれた1種以上の液晶表示素子である前記2に記載の表示装置用サブストレート。
4.絶縁基材がベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドベンゾオキサゾールを主成分とする線膨張係数が−5〜16ppm/℃のポリイミドフィルムである前記1〜3いずれかに記載の表示装置用サブストレート。
5.絶縁基材がベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドベンゾオキサゾールを主成分とする面配向係数が0.75以上であり、引張弾性率が5GPa以上であり、引張破断強度が300MPa以上のポリイミドフィルムである前記1〜4いずれかに記載の表示装置用サブストレート。
【発明の効果】
【0007】
本発明において用いられる特定物性の耐熱高分子フィルムであるポリイミドフィルムは、加熱・冷却による熱履歴において平面性の維持に優れ、かつ線膨張係数が低く、半導体材料に近いために、半導体に加わる熱ストレスを低減することが出来る。また、高い引張弾性率と高い引張破断強度を実現可能であるために半導体形成時の機械的なストレスに対する影響も小さい。すなわち引張弾性率の低い材料である場合、半導体膜形成時に基板フィルムを固定するために加えられるストレスにより基板が変形した状態に保たれるため、ストレスを開放した際に逆に基材上に形成された半導体層や発光層に応力が加わってしまい良好な特性を発揮することが出来ない。また本発明のポリイミドフィルムは、特に薄膜半導体層を形成する際に必要となる高温に十分耐えうる耐熱性を有するため、良質な半導体薄膜素子および配線用薄膜などを有する表示装置用サブストレートを作製することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の表示装置用サブストレート内において、駆動回路はスイッチング用薄膜トランジスタであり、表示パネル(素子)をアクティブ駆動させるためのソース電極、ゲート電極などからなるTFT或いはMIM(メタルインシュレーターメタル構造のダイオード)が、絶縁基材上のアモルファスシリコン層や低温ポリシリコン層に形成され、その上を平坦化膜で覆われているものである。ここでは、シリコンで説明するが、必ずしも、シリコンには限定されず、有機トランジスタの使用などでも良い。
【0009】
本発明における液晶表示素子(TN液晶、STN液晶、強誘電液晶、ゲストホスト型液晶、コレステリック液晶等々)電気泳動型、エレクトロクロミック型、回転球型、ないし回転円筒型、乾式粉体の移動による表示形式とは、それぞれ、液晶配向、電気泳動現象、エレクトロクロミック現象、球状、円筒状の部材の回転、粉体の移動により画像を形成する方式を言う。以下、この発明の表示パネルおよびその製造方法について、より具体化した実施の形態を用いて説明するが、この発明はこの実施の形態により限定されるものではない。
本発明における絶縁基材としてのフィルムは、300℃でのカール度10%以下のポリイミドフィルムであれば、特に限定されるものではなく、ポリイミドフィルムを得るための芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類との反応は、溶媒中で芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類とを(開環)重付加反応に供してポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液を得て、次いで、このポリアミド酸の溶液から前駆体フィルム(グリーンフィルム)を成形した後に乾燥・熱処理・脱水縮合(イミド化)することにより製造される。
【0010】
以下ポリイミドフィルムについて詳述する。
本発明におけるポリイミドフィルムは、特に限定されるものではないが、下記の芳香族
ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙
げられる。
A.ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
B.ジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
D.上記のABCの一種以上の組み合わせ。
本発明で特に好ましく使用できるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを反応させて得られるポリイミドベンゾオキサゾールを主成分とするポリイミドベンゾオキサゾールフィルムに使用される、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類として、下記の化合物が例示できる。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
【化5】

【0016】
【化6】

【0017】
【化7】

【0018】
【化8】

【0019】
【化9】

【0020】
【化10】

【0021】
【化11】

【0022】
【化12】

【0023】
【化13】

【0024】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上使用することが好ましい。
【0025】
本発明は、前記事項に限定されず下記の芳香族ジアミンを使用してもよいが、好ましくは全芳香族ジアミンの30モル%未満であれば下記に例示されるベンゾオキサゾール構造を有しないジアミン類を一種又は二種以上、併用してのポリイミドフィルムである。
そのようなジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0026】
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
【0027】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0028】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0029】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0030】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0031】
本発明で用いられる芳香族テトラカルボン酸類は例えば芳香族テトラカルボン酸無水物類である。芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0032】
【化14】

【0033】
【化15】

【0034】
【化16】

【0035】
【化17】

【0036】
【化18】

【0037】
【化19】

【0038】
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%未満であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種又は二種以上、併用しても構わない。そのようなテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、
【0039】
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0040】
前記芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸(無水物)類とを重縮合(重合)してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。 これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの質量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるような量が挙げられる。
【0041】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の質量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが3.0dl/g以上が好ましく、4.0dl/g以上がさらに好ましく、これらの還元粘度とすることで、得られるポリイミドベンゾオキサゾールの線膨張係数が−5〜16(ppm/℃)となす制御がし易くなる。
【0042】
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の有機溶媒溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
【0043】
高温処理によるイミド化方法としては、従来公知のイミド化反応を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができる。
【0044】
熱閉環法の加熱最高温度は、100〜500℃が例示され、好ましくは200〜480℃である。加熱最高温度がこの範囲より低いと充分に閉環されづらくなり、またこの範囲より高いと劣化が進行し、複合体が脆くなりやすくなる。より好ましい態様としては、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間処理する2段階熱処理が挙げられる。
【0045】
化学閉環法では、ポリアミド酸溶液のイミド化反応を一部進行させて自己支持性を有する前駆体複合体を形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。
この場合、イミド化反応を一部進行させる条件としては、好ましくは100〜200℃による3〜20分間の熱処理であり、イミド化反応を完全に行わせるための条件は、好ましくは200〜400℃による3〜20分間の熱処理である。
【0046】
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
【0047】
本発明の表示装置用サブストレートにおけるその絶縁基材としてのポリイミドフィルムは、300℃でのカール度が10%以下のフィルムであり、フィルムの300℃のカール度(以下、300℃におけるフィルムのカール度ともいう)とは、所定の熱処理を行った後のフィルムの面方向に対する厚さ方向への変形度合を意味し、具体的には、図1に示すように、50mm×50mmの試験片を、300℃で10分間熱風処理した後に、平面上に試験片を凹状となるように静置し、四隅の平面からの距離(h1、h2、h3、h4:単位mm)の平均値をカール量(mm)とし、試験片の各頂点から中心までの距離(35.36mm)に対するカール量の百分率(%)で表される値である。
試料片は、フィルムの全長に対して5分の1の長さピッチで幅方向に2点(幅長の1/3と2/3の点)を試験片の中心点として計10点をサンプリングし、測定値は10点の平均値とする。
但し、10点のサンプリングをするに十分なフィルムがない場合は、可能な限り等間隔でサンプリングする。
具体的には、次式によって算出される。
カール量(mm)=(h1+h2+h3+h4)/4
カール度(%)=100×(カール量)/35.36
【0048】
本発明において、ポリイミドフィルムの400℃のカール度とは、前記の300℃における測定時の熱処理を400℃で10分間熱風処理する以外は同様に測定したものである。
本発明における300℃のカール度は、より好ましくは8%以下でありさらに好ましくは5%以下である、さらに400℃でのカール度が10%以下のフィルムが好ましい。
本発明における表示装置用サブストレートにおける基材フィルムは、好ましくはポリイミドフィルムであり、さらに好ましくはベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドベンゾオキサゾールを主成分とする線膨張係数が−5〜16ppm/℃のポリイミドフィルムであり、また特に好ましくはベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸(無水物)類とを反応させて得られるポリイミドベンゾオキサゾールを主成分とする面配向係数が0.75以上であり、引張弾性率が5GPa以上であり、引張破断強度が300MPa以上のポリイミドフィルムである。
【0049】
本発明のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)の線膨張係数は、−5〜16ppm/℃(×10-6cm/cm/℃)であることが好ましく、2〜10ppm/℃であることが、なお好ましく、3〜9ppm/℃であることが、特に好ましい。 これらの線膨張係数は、ジアミンとテトラカルボン酸無水物の種類と割合、並びに面配向係数に依存する。線膨張係数はベンゾオキサゾール構造を有するジアミン成分を増すことにより低下させることができ、全ジアミン成分の50%以上、ベンゾオキサゾール構造のジアミンを用いることにより所定の範囲に収めることができる。
線膨張係数がこの範囲を高低いずれの方向に逸脱しても、半導体層に加わるストレスが増加し、光電変換効率が著しく低下してしまう。すなわち、半導体薄膜を形成する際には、基板は所定温度で熱せられる訳であり、室温に冷却される際に、半導体薄膜の線膨張係数と、基材フィルムの線膨張係数の差異に応じた応力が半導体、および基材フィルムの両方に加わる訳である。半導体層に加わったストレスは前述の通り、光電変換効率を低下させるばかりでなく、素子そのものの寿命、信頼性を低下させてしまう。同時に基板側に加わったストレスは、基板と半導体薄膜との接着性を阻害するものとなる。
また面配向係数が0.75以上であり、引張弾性率が5GPa以上であり、引張破断強度が300MPa以上のポリイミドフィルムであることによって、更なる耐熱性の向上効果が得られる。
【0050】
本発明におけるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)の引張弾性率が5GPa以上であることが好ましい。引張弾性率がこの範囲に満たない場合、外力によりフィルムが変形しやすくなり、結果として、フィルム表面に形成された半導体薄膜に破断や欠陥が生じやすくなる。引張弾性率は7GPa以上が好ましく、さらには9GPa以上が好ましい。引張弾性率の上限は特に制限されないが、事実上25GPa程度である。
ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの引張弾性率は、分子構造と面配向によって制御可能である。引張弾性率は分子構造、すなわちジアミンとテトラカルボン酸無水物の種類と割合、と密度に依存する。引張弾性率はベンゾオキサゾール構造を有するジアミン成分を増すことにより上げることができ全ジアミン成分の50%以上ベンゾオキサゾール構造のジアミンを用いることにより所定の範囲に収めることができる。面配向係数の制御は、一般に、グリーンフィルム成膜時の昇温プロファイルを調整したり、イミド化時又は、その前に延伸を施したりする手段などが挙げられ、本発明のフィルムにもかかる手段を適用し得る。たとえば、ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの面配向係数を高くするためには、グリーンフィルムに加える熱量を小さくしたり、イミド化反応前、ないし反応中にフィルムを縦方向、横方向、あるいは縦横両方向に延伸したりする手段が挙げられる。
【0051】
本発明のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)の引張破断強度は300MPa以上であることが好ましい。引張破断強度がこの範囲に満たない場合、外力によりフィルム基材のみならず半導体層にダメージが生じやすくなる。上限に関しては特に制限されない。ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの引張破断強度は、ポリアミド酸の分子量、ならびに、グリーンフィルム作製からイミド化工程までの、アミド結合の加水分解の程度を所定の範囲に収めることにより達成可能である。
より具体的には、ポリアミド酸溶液の還元粘度が1.2以上、好ましくは1.5以上、なお好ましくは1.7以上とし、さらにポリアミド酸溶液を支持体に塗布する時点から、イミド化が完了するまでの間の作業雰囲気の相対湿度を75%RH以下、好ましくは60%RH以下、なお好ましくは不活性ガス雰囲気とする事により所定の引張破断強度を実現することが出来る。
【0052】
本発明において好ましく用いられるイミド化方法は先に述べたように熱閉環法である。熱閉環法とは、ポリアミド酸を加熱することでイミド化する方法である。本発明ではポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を促進しても構わない。この方法では、ポリアミド酸溶液を支持体に塗布した後、イミド化反応を一部進行させて自己支持性を有するフィルムを形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
【0053】
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
【0054】
支持体に形成されたポリイミドフィルムの前駆体(グリーンフィルム)を完全にイミド化する前に支持体から剥離してもよいし、イミド化後に剥離してもよい。
さらに本発明ではフィルムの生産性、巻き取り性、操作性の向上のために、滑剤を添加することが出来る。滑剤としてはシリカ、アルミナなどの金属酸化物や無機塩類に代表される無機ないし有機の微粒子を用いることができる。好ましく用いることができる滑剤の粒子径は0.01〜10μmの範囲であり、その添加量はフィルム全体の0.001〜1%程度の範囲である。
【0055】
本発明におけるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムは、通常は無延伸フィルムであるが、1軸又は2軸に延伸しても構わない。ここで、無延伸フィルムとは、テンター延伸、ロール延伸、インフレーション延伸などによってフィルムの面拡張方向に機械的な外力を意図的に加えずに得られるフィルムをいう。
本発明におけるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムは、そのまま、あるいは表面処理剤あるいは表面活性化剤で処理していない場合は、好適にはコロナ放電処理、低圧あるいは常圧プラズマ処理、真空プラズマ処理、紫外線照射、火炎処理等で表面処理を施す。
【0056】
次に本発明の表示装置用サブストレート適用例の一例有機EL表示装置(パネル)について説明する。これまでに述べてきたようにポリイミド(ベンゾオキサゾール)フィルムに、裏面電極となる導電層、駆動回路やスイッチング素子となる薄膜シリコン等からなる半導体層の機能薄膜、機能厚膜を積層・パターニングする事により実現される。
まず、フィルム(基板)上に第一電極を形成する。第一電極についても透明である必要はない。ほとんどの場合には金属薄膜が用いられ、用いる有機物材料との相性を考慮して適宜選択すればよい。一般的な有機EL素子においては、金属薄膜は電子注入電極として機能する場合が多いので、電子注入を容易にするような仕事関数の小さな金属が望ましく、具体的には、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、カルシウムなどが挙げられる。逆に、金属薄膜を正孔注入電極として機能させる場合には、正孔注入を容易にするような仕事関数の大きな金属が望ましい。具体的には、金、白金、銅、ニッケルなどが挙げられる。
第一電極の成膜方法としても、公知の手法が適用可能であり、蒸着法、スパッタ法、電子ビーム法、メッキ法などが挙げられる。また、パターニングに関しても、特に限定されるものではなく、公知のシャドウマスク法、フォトリソグラフィ法などが適用可能である。
第一電極の膜厚は、用いる金属材料にもよるが、500Å〜1μm程度である。
次いで基板上にアクティブ駆動用のTFT(薄膜トランジスタ)を形成する。
本発明の一例である有機EL表示装置(パネル)は、第二電極側より発光を取り出す構成であるから、特に透明性を意識する必要はなく、公知の方法により、アモルファスシリコン、ポリシリコンなどからなるTFTを形成すればよい。また、TFTの代わりにMIM(メタルインシュレーターメタル構造のダイオード)であってもなんら差し支えない。また、TFTはチャネル・エッチ型、チャネル保護型、スタガ型、逆スタガ型や、その他公知の半導体技術による、ものでなんら差し支えない。
【実施例】
【0057】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0058】
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
2.フィルムの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン(商品名)1254D)を用いて測定した。
【0059】
3.フィルムの引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度
測定対象のフィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(商品名)、機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度を測定した。
【0060】
4.フィルムの線膨張係数(CTE)
測定対象のフィルムについて、下記条件にてMD方向およびTD方向の伸縮率を測定し、30℃〜45℃、45℃〜60℃、…と15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。MD方向、TD方向の意味は上記「3.」の測定と同様である。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0061】
5.フィルムの融点、ガラス転移温度
測定対象のフィルムについて、下記条件で示差走査熱量測定(DSC)を行い、融点(融解ピーク温度Tpm)とガラス転移点(Tmg)をJIS K 7121に準拠して求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製DSC3100S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料質量 ; 4mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温終了温度 ; 600℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0062】
6.フィルムの熱分解温度
測定対象のフィルムを充分に乾燥したものを試料として、下記条件で熱天秤測定(TGA)を行い、試料の質量が5%減る温度を熱分解温度とみなした。
装置名 ; MACサイエンス社製TG−DTA2000S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料質量 ; 10mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0063】
7.フィルムの面配向係数
測定対象のフィルムを測定治具に装着して以下の条件にてX線回折測定を行って、2θ=21.8°付近に現れる回折ピークについての極点図を求めた。
装置名 ;(株)リガク製RINT 2100PC、多目的試料台
電圧、電流値 ;40kV、40mA
測定法 ;反射法および透過法
走査範囲 ;反射法 α;15〜90°/2.5°間隔
β;0〜360°/5°間隔
反射法 α;0〜15°/2.5°間隔
β;0〜360°/5°間隔
スリット ;DS 0.1mm、SS 7mm、RS 7mm、
縦発散制限スリット 1.2mm
走査スピード ;連続(360°/min)
検出器 ;シンチレーションカウンター
【0064】
図2は、この極点図を模式的に表したものである。図中、2本の破線部における回折強度プロファイルからピーク半値幅(HMDおよびHTD)を求め、HMDおよびHTDの平均値をHa(単位:°)と定義した。尚、ピーク半値幅は、リガク製解析プログラムを用いて求めた。このようにして得られたHaから、ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの面配向係数を次式により算出した。
面配向係数 =(180°− Ha)÷180°
【0065】
〔ポリアミド酸溶液の重合例1〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を1.22質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を、容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。予備分散液中の平均粒子径は0.11μmであった。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、223質量部の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを入れた。次いで、4000質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて24時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.8dl/gであった。
【0066】
〔ポリアミド酸溶液の重合例2〕
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後,5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックスDMAC−ST30(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液Bが得られた。このもののηsp/Cは4.0dl/gであった。
【0067】
〔ポリアミド酸溶液の重合例3〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を7.6質量部、N−メチル−2−ピロリドン390質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、200質量部のジアミノジフェニルエーテルを入れた。次いで、3800質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を390質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて5時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Cが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.7dl/gであった。
【0068】
〔ポリアミド酸溶液の重合例4〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を3.7質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、108質量部のフェニレンジアミンを入れた。次いで、3600質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と292.5質量部のジフェニルテトラカルボン酸二無水物を加えて、25℃にて12時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Dが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は4.5dl/gであった。
【0069】
〔ポリイミドフィルムの製造例1〜4〕
重合例1〜4で得たポリアミド酸溶液を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績株式会社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、650μm、塗工幅1240mm)、4つの乾燥ゾーンを有する連続式乾燥炉に通して下記所定条件で乾燥した。
第1ゾーン 上側温度 105℃、下側温度 110℃
風量 上下とも20立方m/分
第2ゾーン 上側温度 110℃、下側温度 110℃
風量 上下とも30立方m/分
第3ゾーン 上側温度 110℃、下側温度 110℃
風量 上下とも20立方m/分
第4ゾーン 上側温度 110℃、下側温度 110℃
上側風量 15立方m/分、下側風量 20立方m/分
各ゾーンの長さは同じであり、総乾燥時間は15分である。
また風量は各ゾーン毎の吹き出し口からの風量の総計である。
乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムをポリエステルフィルムから剥離して、両端をカットし、厚さ39μm、幅1200mmのそれぞれのグリーンフィルムを得た。
得られたグリーンフィルムを、ピンテンターにて両端を把持した状態で窒素置換された連続式の熱処理炉に通し、第1段が180℃で5分、昇温速度4℃/秒で昇温して第2段として400℃で5分の条件で2段階の加熱を施して、イミド化反応を進行させた。その後、5分間で室温にまで冷却することで、褐色を呈する厚さ25μmのポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0070】
〔ポリイミドフィルムの製造例5〕
重合例2で得たポリアミド酸溶液を、厚さ0.5mm、幅750mm、表面粗度0.005μmまで研磨したステンレスベルトにスキージ/ベルト間のギャップを680μmとしてコーティングし、3つの熱風式乾燥ゾーンを備えた乾燥機にて
第1ゾーン 温度:105℃、風量:10立方m/分 乾燥時間:4分間
第2ゾーン 温度:115℃、風量:20立方m/分 乾燥時間:4分間
第3ゾーン 温度:110℃、温度:25立方m/分 乾燥時間:4分間
にて乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムをステンレスベルトから剥離し厚さ39μmのグリーンフィルムを得た。
得られたグリーンフィルムを、窒素置換された連続式の熱処理炉に通し、第1段が180℃で3分、昇温速度4℃/秒で昇温して第2段として460℃で2分の条件で2段階の加熱を施して、イミド化反応を進行させた。その後、5分間で室温にまで冷却することで、褐色を呈する厚さ25μmのポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0071】
〔ポリイミドフィルムの製造例6〜9〕
重合例1〜4で得たポリアミド酸溶液を、厚さ0.5mm、幅750mm、表面粗度0.005μmまで研磨したステンレスベルトにスキージ/ベルト間のギャップを680μmとしてコーティングし、3つの熱風式乾燥ゾーンを備えた乾燥機にて
第1ゾーン 温度:110℃、風量:10立方m/分 乾燥時間:2分間
第2ゾーン 温度:130℃、風量:25立方m/分 乾燥時間:2分間
第3ゾーン 温度:135℃、温度:25立方m/分 乾燥時間:2分間
にて乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムをステンレスベルトから剥離し厚さ36μmのグリーンフィルムを得た。
得られたグリーンフィルムを、窒素置換された連続式の熱処理炉に通し、第1段が180℃で3分、昇温速度4℃/秒で昇温して第2段として460℃で2分の条件で2段階の加熱を施して、イミド化反応を進行させた。その後、5分間で室温にまで冷却することで、褐色を呈する厚さ25μmのポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0072】
表示用パネル作製例として、図3のような構造が用いられる。
絶縁基板上にはAlを200nmスパッタにて形成して、パターン化してゲート配線バスライン、ゲート電極およびゲート配線を形成する。この時点では、各ゲート配線はゲート配線バスラインに接続しておく。このゲート配線バスラインは、陽極化成時に電源供給ラインとして使用する。この後、フォトレジストを3μm塗布しフォトエッチングプロセスにより、領域A、Bのレジストを除去する。領域AはTFTの部分、Bha配線交差部である。この状態で、基板を化成液に浸して、ゲート配線のバスラインに+72Vの電圧を30分加えることで、領域A、BでのAlのうち70nmがAl23になり、100nm程度のAl23膜が得られる。化成液としては、3%酒石酸溶液をエチレングリコールで希釈し、アンモニア水を添加して、PH7.0に調整した。レジストを除去した後大気中で200℃1時間加熱を行う。このことで、Al23膜のリーク電流の低減をもくろむ。
この上に、プラズマCVD法によって窒化シリコンを300nm製膜し、水素化非晶質シリコン(a−Si)100nm、第2の窒化シリコンを200nm製膜する。このときの基板温度は380℃とした。この後に、第2の窒化シリコンをパターン化して、TFTのチャネル上を配線交差部のみとした。
ついでリン2%程度のドープした、非晶質シリコンn層を50nm堆積し、パターン化して、TFTのソース・ドレイン部のみに残す。このときa−Siも同時に除去する。Crを100nm、Alを500nm、スパッタリングにて堆積し、パターン化して、信号線、TFTのドレイン、ソース電線などを形成する。このAl加工時に先に形成したゲート配線バスラインを除去して、各々のゲート配線を分離する。
次に透明電極のITOを100nmスパッタリングにて形成して、画素電極、端子等を形成する。最後に、プラズマCVDにて、窒化シリコンを1μm程度堆積させ、
フォトエッチングプロセスによって端子部常の窒化シリコンを除去して、TFT基板が完成する。
画素電極上に発光層を形成する。ここでは発光物質としてドープ処理していないポリ(パラ−フェニレンビニレン)を含む有機層をスクリーン印刷法を用いて形成した。膜の乾燥温度は最高180℃である。最後に第二電極としてITOを発光層上にスパッタリングし、フッ素樹脂コーティングを行って保護膜として形成し、有機EL素子使用表示装置を作製した。この際基板温度を350℃まで加熱している。
得られた製造例1のフィルムを使用した有機EL素子使用表示装置にピークトゥピーク60Vの1000Hzの交番電圧を印可したところ、鮮やかな緑色に発光した(表1中に鮮緑又は緑と記載)。以下同様に、他のフィルムを用いて自発光型表示装置を製作し、発光効率を測定、比較した。結果を表1に示す。
表1に示した結果から明らかなとおり、実施例の表示装置においては良好な発光を得られているが、比較例の表示装置においては十分な発光を得ていない(表1中に暗緑又は発光せずと記載)。これは、プロセス中の温度の上下により使用したフィルムの高温での平面維持性に劣るための導電層、特に透明導電層にダメージがあったためと推察される。
【0073】
【表1】

「反り」は、カール度測定時に常温(加熱なし)で評価した値である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上、述べてきたように本発明の表示装置は、芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドを主成分とする300℃でのカール度10%以下のポリイミドフィルムを絶縁基材とし、該ポリイミドフィルム絶縁基材の表面に、半導体薄膜素子および配線用薄膜を直接形成したことを特徴とする表示装置用サブストレートであり、絶縁基材として300℃でのカール度が10%以下のポリイミド(ベンゾオキサゾール)フィルムを用いているので、高温による平面維持性が優れているため、回路との位置ずれや、端子間の接続信頼性低下や導電材料や半導体チップの応力歪みにより引き起こされるクラック発生等の使用環境の温度変化による欠点発生等が抑制されるので、薄膜型表示装置としての信頼性向上に大変に有用なものであり、産業界に寄与することが大である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】フィルムのカール度の測定方法を示した模式図である。(a)は上面図であり、(b)は熱風処理前の(a)におけるa−aで示される断面図であり、(c)は熱風処理後の(a)におけるa−aで示される断面図である。
【図2】ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムのX線回折極点図を模式的に示した図である。
【図3】本発明の薄膜(自発光型)表示装置の模式概念図である。
【図4】本発明の表示装置の模式概念図である。
【符号の説明】
【0076】
(以下図1における符号)
1.(ポリイミド)フィルムの試験片
2.アルミナ・セラミック板
(以下図3における符号)
1.基板(支持体)
2.Al
3.陽極化成膜(Al23
4.窒化シリコン(1)
5.水素化非晶質シリコン
6.窒化シリコン(2)
7.非晶質シリコンn層
8.Cr
9.ゲート配線
10.信号線
11.ゲート配線バスライン
12.透明電極
A TFT部
B 配線交差部
(以下図4における符号)
1.基板(支持体)
2.第一電極
3.発光層
4.第二電極
5.隔壁
6.保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドを主成分とする300℃でのカール度10%以下のポリイミドフィルムを絶縁基材とし、該ポリイミドフィルム絶縁基材の表面に、半導体薄膜素子および配線用薄膜を直接形成したことを特徴とする表示装置用サブストレート。
【請求項2】
表示素子が、液晶表示素子、EL表示素子、電気泳動型表示素子、エレクトロクロミック型表示素子、酸化還元型表示素子、回転球型又は回転円筒型表示素子、および乾式粉体の移動による表示形式の表示素子いずれかから選ばれた1種以上の表示素子である請求項1に記載の表示装置用サブストレート。
【請求項3】
液晶表示素子が、TN液晶、STN液晶、強誘電液晶、ゲストホスト型液晶、およびコレステリック液晶いずれかから選ばれた1種以上の液晶表示素子である請求項2に記載の表示装置用サブストレート。
【請求項4】
絶縁基材がベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドベンゾオキサゾールを主成分とする線膨張係数が−5〜16ppm/℃のポリイミドフィルムである請求項1〜3いずれかに記載の表示装置用サブストレート。
【請求項5】
絶縁基材がベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドベンゾオキサゾールを主成分とする面配向係数が0.75以上であり、引張弾性率が5GPa以上であり、引張破断強度が300MPa以上のポリイミドフィルムである請求項1〜4いずれかに記載の表示装置用サブストレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−171596(P2007−171596A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369751(P2005−369751)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】