説明

表示装置用基板

【課題】本発明の目的は、従来の基板に比較して大幅に軽量化でき、かつ透明性とガスバリア性を兼ね備えた表示装置用基板を提供することである。
【解決手段】本発明は、透光性を有する少なくとも一対の超薄ガラス板間に、該超薄ガラス板の少なくとも1枚の厚さ以上の厚さを有する、少なくとも1層の接着性透光性樹脂層を含む板状体層が介在される表示装置用基板であって、該超薄ガラス板の表面粗さ(Ra値)が0.5nm以下であることを特徴とする表示装置用基板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超薄ガラス板を用いた表示装置用基板に関する。更に、本発明は、機能を備えた液晶ディスプレー、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等、従来ガラス基板が使用されていた用途に用いた際に、従来のガラス基板に比較して大幅に軽量化でき、かつ透明性とガスバリア性を兼ね備えた表示装置用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報機器、通信機器、AV(オーディオアンドビジュアル)機器およびゲーム機器などに使用される大面積または中面積の表示装置として、STN(スーパーツイステッドネマティック)型液晶表示装置、MIM(Metal Insulator Metal)液晶表示装置およびTFT(薄膜トランジスタ)液晶表示装置などがある。これらの液晶表示装置の基板としては、厚さ0.7mmのホウケイ酸ガラス板、厚さ1mmまたは厚さ0.7mmのソーダライムガラス板および厚さ1.1mmの無アルカリガラス板などが使用されている。また、厚さ0.5mmのガラス板を使用する基板も、検討されている。しかし、近年前述の情報機器、通信機器、AV機器およびゲーム機器などの薄型軽量化を進めるため、これらの機器に備えられる表示装置の薄型軽量化が図られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開昭61−86252号公報)には、厚さ100μmの耐熱性に優れたPESフィルムから成る透明プラスチックフィルムの一方表面上に、厚さ2μmのウレタン樹脂をアンダーコートとして、厚さ5μmのPVA(ポリビニルアルコール)樹脂から成るガスバリアコートが設けられることが開示されている。
【0004】
例えば、液晶表示装置などの表示装置の薄型軽量化を図るため、特許文献2(特開昭61−116331号公報)および特許文献3(特開昭61−116332号公報)に開示されるように、表示装置が形成される基板上に、偏光膜などの光学部材を予め形成しておくことが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献2には、厚さ50μmのPESフィルムの一方表面に1軸延伸PVAフィルムに染料分子を吸着した偏光板が、ウレタン系接着剤を介して貼合わされる。これに積層して、紫外線吸収剤を含む厚さ50μmのTAC(トリアセチルセルロース)フィルムが、保護コートとしてウレタン系接着剤を介して貼合わされる。また、前記PESフィルムの他方表面上には、酸化インジウムから成る透明導電膜のアンダーコートが設けられる。
【0006】
例えば、特許文献4(特開昭59−224876号公報)および非特許文献1「Penz,P.A.ら,SID’81Digests,11.7,pp,116-118,Apr.1981」に示されるように、PESフィルム以外に、1軸延伸ポリエステルフィルムを使用した基板や、フェノキシ系フィルムなどを使用した基板が提案されている。
【0007】
例えば、特許文献5(特開平7−43696号公報)には、厚さ1.5μm以上250μm未満の超薄ガラス板間に1層の接着性透明性樹脂が介在される表示装置用基板が開示されている。この時使用される超薄ガラスはペン入力の書き味向上などの理由で片面に研磨が施されている。これは、後加工が必要なためコスト高になる。
【0008】
以上、例示したいずれの手法も現在求められている表示装置部材として軽量化やガスバリア性の面で不十分で、液晶セル中に気泡を生じ、十分な表示信頼性を得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−86252号公報
【特許文献2】特開昭61−116331号公報
【特許文献3】特開昭61−116332号公報
【特許文献4】特開昭59−224876号公報
【特許文献5】特開平7−43696号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Penz,P.A.ら,SID’81Digests,11.7,pp,116-118,Apr.1981
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、前記課題を解消し、表示装置の薄型軽量化を実現するとともに、表示装置の表示信頼性を向上することである。すなわち、従来の基板に比較して大幅に軽量化でき、かつ透明性とガスバリア性を兼ね備えた表示装置用基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、透光性を有する少なくとも一対の超薄ガラス板間に、該超薄ガラス板の少なくとも1枚の厚さ以上の厚さを有する、少なくとも1層の接着性透光性樹脂層を含む板状体層が介在される表示装置用基板であって、該超薄ガラス板の表面粗さ(Ra値)が0.5nm以下であることを特徴とする表示装置用基板である。
また、本発明は、前記超薄ガラス板が、オーバーフロー法により作られたことを特徴とする。
また、本発明は、前記超薄ガラス板が、超薄ガラス板の厚さが5μm以上155μm未満であることを特徴とする。
また、本発明は、前記一対の超薄ガラス板のうち、少なくとも一方の超薄ガラス板の基板外方表面となる面には、反射防止処理が施されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記板状体層が、光学部材を含むことを特徴とする。
また、本発明は、前記光学部材が、偏光板であることを特徴とする。
また、本発明は、前記光学部材が、位相差板であることを特徴とする。
また、本発明は、前記光学部材が、反射板であることを特徴とする。
また、本発明は、前記光学部材が、半透過反射板であることを特徴とする。
また、本発明は、前記光学部材が、複数の位相差板であることを特徴とする。
また、本発明は、前記光学部材が、捩れ位相差板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従えば、本発明の表示装置用基板は、超薄ガラス板間に少なくとも1層の樹脂層を含む板状体層が介在される。特に、オーバーフロー法によりつくられた超薄ガラス板、厚さを5μm〜155μm、表面粗さのRaを0.5以下にすることによって、従来のガラス基板より薄型軽量で後加工が必要ない表示装置用基板を作成することができる。また、この表示用基板は、両面に超薄ガラス板を備えるので、基板表面が傷付きにくく、基板を介して空気が透過することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例である表示装置用基板1の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施例である有機ELディスプレイ9の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(表示装置用基板)
本発明の表示装置用基板は、透光性を有する少なくとも一対の超薄ガラス板間に、少なくとも1層の透光性樹脂層を含む板状体層が介在させたものである。
本発明の表示装置用基板を構成する超薄ガラス板の枚数は、少なくとも2枚(1対)である。
【0016】
本発明の表示装置用基板は、両面に超薄ガラス板を備えるので、基板表面が傷付きにくく、基板を介して空気が透過することを防止することができる。さらに、基板の耐熱性、耐薬品性を向上することができる。また基板の熱膨張を低く抑えることができるので、基板の熱膨張による電極の断線を防止することができる。さらに、基板の強度を高めることができるので、液晶セルのセル厚を均一に形成でき、液晶セルの表示の均一性を向上することができる。
【0017】
尚、透明性を有する超薄ガラス板とは、「波長450nmにおける光線透過率が50%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上」又は「ヘイズ6%以下、好ましくはヘイズ2%以下、さらに好ましくは1%以下」のガラス板のことである。
【0018】
(超薄ガラス板)
本発明における超薄ガラス板は、表面粗さ(Ra値)が0.5nm以下であることを必要とする。超薄ガラス板は、両面の表面粗さ(Ra値)が0.5nm以下であることが好ましい。表面粗さ(Ra値)が0.5nm以下であると、例えば、本発明の表示装置用基板を、表示装置に積層されるタブレットなどの表面に配置させた場合に、ペン入力の書き味を向上することができる。
【0019】
また、表面粗さ(Ra値)が0.5nm以下であると、例えば、本発明の表示装置用基板を液晶表示装置に用いた場合、液晶セルのセル厚を精度よく均一にすることができ、表示むらのない液晶表示装置を形成することができる。
一方、表面粗さ(Ra値)が0.5nmを超える場合、例えば、表示装置の表面で透過光が散乱し、受発信する信号にノイズを生じさせるなどの不具合がある。
【0020】
超薄ガラス板の表面粗さ(Ra値)は、上記の理由から0.5nm以下であることが、好ましくは0.3nm以下であることが特に好ましい。
なお、超薄ガラス板の表面粗さ(Ra値)は、垂直分解能0.05nm程度の市販されている走査型プローブ顕微鏡(SPM)によって測定できる。
【0021】
(超薄ガラス板の厚さ)
本発明における超薄ガラス板は、厚さが5μm以上155μm未満であることが好ましい。特に好ましくは、厚さ20μm以上105μm未満である。さらに好ましくは厚さ30μm以上60μm以下である。超薄ガラス板の厚さを上記の範囲にすることにより、従来のガラス基板より薄型軽量の表示装置用基板を作成することができる。また、超薄ガラス板を用いていても、表示装置用基板に必要な強度を確保できる。また、熱圧着法によりガラス板と樹脂を接着する際、従来ガラスに比べ短時間で成形することが出来るという生産性の点から有利である。
【0022】
(超薄ガラス板の製法)
本発明の超薄ガラス板には、各種成形法によって成形されたものを採用することが可能である。例えばロールアウト法、リドロー法、ダウンドロー法、フロート法等を必要に応じて使用することが可能である。
【0023】
ただし、前記フロート法を使用した場合、溶融金属(溶融錫)の上面に溶融ガラスを流し込んでガラス層を形成するという手法のため、このフロート法により成形されたガラス基板は、溶融錫との接触側に対応する片面を精密研磨する必要が出てくる。この場合、出来たガラス面も例えば表面粗さRa20nm程度である。しかし、研磨回数などのファクターを調整することにより目的物に近い表面を作りだすことは可能ある。ただし、工業的にコストが上がり現実的ではない。
【0024】
本発明における超薄ガラス板は、上記の成形法のうちオーバーフロー法により作成されたものであることが特に好ましい。オーバーフロー法の場合、ガラス固化工程で上記のような溶融金属との接触がないため、オーバーフロー法により作成された超薄ガラス板は、表面が極めて平滑で、均質なものが出来き、本発明の表示装置用基板に好適に用いることができる。また、後工程でガラスの研磨等の作業をする必要がなく、生産コストの面でも優位である。
【0025】
即ち、オーバーフロー法により超薄ガラス板を作成することにより、表面粗さRa値が0.5nm以下の超薄ガラス板を効率良く作成することができる。また、オーバーフロー法により超薄ガラス板を作成することにより、厚さが5μm以上、155μm未満の超薄ガラス板を効率良く作成することができる。
【0026】
ここで、オーバーフロー成形方法であるとは、上部が開口した樋形状の溶融ガラス供給溝をオーバーフロー成形装置頂部に有し、このガラス供給溝の両側壁頂部をオーバーフローの堰とし、かつ両側壁の外面部の断面が略楔形となるように両側壁の外面同士を下方に向けて相互に接近させて下端で終結させた成形体を備え、溶融ガラスをガラス供給溝の一端から連続的に供給して両側壁頂部稜線からオーバーフローさせ、両側壁外面に沿って流下させて略楔形下端で合流させて板ガラスとすることのできる板ガラスの成形装置を使用し、板ガラスを成形する方法であることを意味している。
【0027】
このような製造方法で製造された板ガラスであれば、ガラス溶融時の自由表面を維持してガラス表面が形成されるため、ガラス透光面に強度に影響するような傷等が製造時に形成され難い。そのため、高い形状品位の板ガラスを成形し易く、板ガラスの強度低下となる原因を低減できるため、好ましい。
【0028】
(超薄ガラス板の材質)
本発明に用いる超薄ガラス板の材質としては、所望の硬度と密度を有する多成分系酸化物ガラスであればどのようなものであってもよい。例えば、本発明を適用することのできる材質としては、アルカリガラス、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、アルミノシリケートガラス等が特に好適であり、その中でも無アルカリガラスは最も好ましい。
【0029】
本発明に適用する超薄ガラス板として、例えば無アルカリガラスを選択する場合には、より好ましい材質の1つとして次の様なものがある。それはガラス組成が酸化物換算の質量百分率表示で、SiO50%〜85%、Al2%〜30%、RO(R=Na+K+Li)0.1質量%以下となるようなものである。また、本発明に適用する板ガラスが含有する鉄成分であるFeは板ガラスに青緑色あるいは茶色の着色を板ガラスに与えるために、その含有率としては0.2%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.1%以下であり、無色透明性が必要とされる場合には0.05%以下であることが好ましい。本発明においては超薄ガラス板を積層する構成により板ガラスの色が強調されるために、板ガラス積層構造体を構成する板ガラス素材の着色を管理することが必要となる。
【0030】
(透光性樹脂層)
本発明の表示装置用基板には、一対の超薄ガラス板間に、該超薄ガラス板の少なくとも1枚の厚さ以上の厚さを有する、少なくとも1層の透光性樹脂層が介在される。
【0031】
透光性樹脂とは、ヘイズが6%以下、好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下で、組み立て工程が終了した後、実使用上でガラスと樹脂の剥離が起らないものであればよい。具体的には、60℃、相対湿度90%下、100時間放置した際、剥離や気泡の進入が起こらない樹脂のことである。
【0032】
透光性樹脂とは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの如きエステル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(ASポリマー類)の如きスチレン系ポリマー、ポリエチレンやポリプロピレン、環状構造ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィンやエチレン・プロピレン共重合体の如きオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレートの如きアクリル系ポリマー、二酢酸セルロースや三酢酸セルロースの如きセルロース系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミドの如きアミド系ポリマーがあげられる。またカーボネート系ポリマーや塩化ビニル系ポリマー、イミド系ポリマーやスルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホンやポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドやビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマーやビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマーやポリオキシメチレン、シリコーン系ポリマーやウレタン系ポリマー、エーテル系ポリマーや酢酸ビニル系ポリマー、前記ポリマーのブレンド物、あるいはフェノール系やメラミン系、アクリル系やウレタン系、ウレタンアクリル系やエポキシ系やシリコーン系等の熱硬化型、ないし紫外線硬化型のポリマー類なども前記した透明ポリマーの例としてあげられる。これらの樹脂層は、単一層であっても、さらに多層構造(複数樹脂層の多層構造)となっているものであってよい。
【0033】
また、各層間の接着を目的にポリビニルブチラール系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、UV硬化型アクリル樹脂、アクリル系粘着剤、ウレタン系接着剤などを層間に挟み込んでもよい。これらの硬化方法は、オートクレーブ法、真空減圧法、紫外線照射などである。
【0034】
また、板状体層は超薄ガラス板の少なくとも1枚の厚さ以上の厚さを有する。板状体層の厚さを上記範囲にすることにより、表示装置用基板の剛性を上げることが出来、例えば、液晶TVの偏光板として、実使用に耐えるものが出来る。
【0035】
(基板外方表面となる面)
また、本発明に従えば、表示装置用基板の一対の超薄ガラス板のうち、少なくとも一方の超薄ガラス板の基板外方表面となる面には、反射防止処理が施されている。したがって前記反射防止処理面が、前記表示装置用基板が備えられる表示装置の表示面側となるように配置されることによって、反射光による表示面のちらつきを防止することができる。
【0036】
(光学部材)
また、本発明に従えば、表示装置用基板の板状体層は、光学部材を含む。したがって、前記光学部材によって前記表示装置用基板が備えられる表示装置の表示品位を向上することができる。
【0037】
(偏光板)
また、本発明に従えば、表示装置用基板の前記光学部材は、偏光板である。したがって、前記表示装置用基板は、偏光板を用いる液晶表示装置などの表示装置に好適に使用することができる。さらに、偏光膜に保護層として備えられる透明フィルムは、PESフィルム以外に、PES系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、エポキシブタジエン共重合体系、ノルボルネン系、ポリエステル系などの他の透明フィルムが使用されてもよい。この場合、前記透明フィルムは、耐熱性が高く、複屈折性が小さいものが望ましい。
【0038】
(位相差板)
また、本発明に従えば、表示装置用基板の前記光学部材は、位相差板である。したがって前記表示装置用基板は、位相差板を用いる液晶表示装置などの表示装置に好適に使用することができる。
【0039】
(反射板)
また、本発明に従えば、表示装置用基板の前記光学部材は、反射板である。したがって前記表示装置用基板は、反射板を用いる表示装置に好適に使用することができる。
【0040】
(半透過反射板)
また、本発明に従えば、表示装置用基板の前記光学部材は、半透過反射板である。したがって前記表示装置用基板は、半透過反射板を用いる表示装置に好適に使用することができる。
【0041】
(複数の位相差板)
また、本発明に従えば、表示装置用基板の前記光学部材は、複数の位相差板である。したがって前記表示装置用基板は、複数の位相差板を用いる表示装置に好適に使用することができる。
【0042】
(捩れ位相差板)
また、本発明に従えば、表示装置用基板の前記光学部材は、捩れ位相差板である。したがって前記表示装置用基板は、捩れ位相差板を用いる表示装置に好適に使用することができる。
これら用途のうち、偏光板が特に好ましい。すなわち本発明を適応することにより基板の剛性/透明性を維持しつつ軽量化が実現でき、非常に有用である。
【実施例】
【0043】
以下実施例にて詳述する。ただし、本発明は実施例に限定されない。
尚、実施例中の各物性値は下記測定法による。
(表面粗さ(Ra値))
ガラスの表面粗さ(Ra値)は、垂直分解能0.05nmの走査型プローブ顕微鏡(SPM)で測定した。
(薄膜ガラスの平均厚み)
(株)ミツトヨ社製の厚み計測器にて測定した。
【0044】
[実施例1]
日本電気硝子社製の表面粗さRa値0.2nmで厚み50μmの無アルカリ超薄板ガラス上に酸化錫を5〜10重量%程度添加した酸化インジウムからなる金属酸化物ターゲットを備えたスパッタリング装置を用いて、0.5容量%の酸素ガスを添付したアルゴンからなるスパッタガスのガス圧を1.2〜5.0×10−2torr、基板温度を250℃としたスパッタリング条件で膜を作成した。これにより膜厚50nm、抵抗4.0×10−4Ω・cmのITO膜を被着することが出来た。これは従来のガラス基板をベースにしたものに比べ50〜80%程の軽量化することが出来た。さらに、これは液晶表示パネル、EL表示パネルなど平板表示デバイスにおける透明電極として広く活用できる。
【0045】
[比較例1]
一方、実施例1と同様の条件でさらなる軽量化のために厚み100μmのポリエチレンナフタレートフィルムを実施例1の無アルカリ超薄板ガラスの代わりに用いた。その結果、基板の変形、焼け、クラックが入り、良好な透明電極を得ることは出来なかった。
【0046】
[実施例2]
図1は、本発明の一実施例である表示装置用基板1の構成を示す断面図である。前記基板1は、以下に示す手順で作成される。厚さ3mmの無アルカリガラス板を支持体として、以下に述べるそれぞれ20cm×20cmの大きさの部材を積層する。まず前記支持体上に日本電気硝子社製の表面粗さRa値0.2nmで厚み50μmの無アルカリ超薄板ガラス2を積層する。この上に厚さ150μmの変性ポリオレフィン系フィルムが積層され、2色性染料を吸着させた延伸PVA(ポリビニルアルコール)膜の両面に厚さ100μmのPES(ポリエーテルサルフォン)フィルムを備えた積層体に、さらに厚さ150μmの前記変性ポリオレフィン系フィルムが積層された透明性樹脂層3(偏光板)を形成し、これに日本電気硝子社製の表面粗さ Ra値0.2nmで厚み50μmの無アルカリ超薄板ガラス2を積層する。
このようにして支持体上に積層された基板1は、ゴム袋の中に収納され、温度90℃、真空度600mmHgで30分間減圧加熱され、予備接着が行われる。次いで、前記基板1は、端面にUV硬化型アクリル樹脂を塗布され、紫外線照射によって前記アクリル樹脂の硬化が行われる。これによって、基板1の端面が封止される。さらに基板1は、オートクレーブで140℃、15kg/cmで30分間加圧され、同時に基板1の端面に塗布されたUV硬化型アクリル樹脂の十分な硬化が行われる。
このように本実施例の表示装置用基板1は、偏光板3を備えるので、偏光板を必要とするTFT液晶表示装置、MIM液晶表示装置、STN系液晶表示装置、SH系液晶表示装置、TN系液晶表示装置、SSFLC(表面安定型強誘電性液晶)および反強誘電性液晶表示装置などの液晶装置に好適に用いることができる。また、この表示装置基板を作成する上で、オーバーフロー法で作成した表面平滑性の非常に高く、極薄のガラスを使用しているため、表面の研磨等との後加工の必要はなく、且つ、従来品に比べ同等以上の軽量化を実現した。
【0047】
[比較例2]
実施例2のオーバーフローにより作成された、Ra値0.2nm、厚み50μmの無アルカリ超薄板ガラスに替えて、切削加工により作成された、Ra値20nm、厚み200μmの無アルカリ超薄板ガラスを用いた以外は、実施例2と同様に表示装置用基板を作成した。得られた表示装置用基板は実施例2の基板に比較して充分な軽量化が実現できなかった。また、Ra20nmでは、表面平滑性が不足しているため樹脂層との界面接着性が不十分で、非常に微細な剥離が起こった。これにより偏光性が不十分になり表示むらが発生した。
【0048】
[実施例3]
次に、本実施例の別の形態を示す。
基本的に図1で示した手法を用いる。ただし、前記PVA膜の両面に厚さ100μmの帝人化成(株)製ポリカーボネートを使用した。それ以外は、図1で示したものと同様なものを原料とした。さらにオートクレーブの条件は、ポリカーボネートのTg付近の温度150℃程度で15kg/cmで30分間加圧された。このように本実施例の表示装置用基板は、偏光板を備えるので、偏光板を必要とするTFT液晶表示装置、MIM液晶表示装置、STN系液晶表示装置、SH系液晶表示装置、TN系液晶表示装置、SSFLC(表面安定型強誘電性液晶)および反強誘電性液晶表示装置などの液晶装置に好適に用いることができ、前記と同様の効果を発現できた。すなわち、オーバーフロー法で作成した表面平滑性の非常に高く、極薄のガラスを使用しているため、表面の研磨等との後加工の必要はなく、且つ、従来品に比べ同等以上の軽量化を実現した。
【0049】
[実施例4]
超薄板ガラス/変性ポリオレフィン系フィルム/ポリカーボネートフィルム/変性ポリオレフィン系フィルム/超薄膜ガラスを積層した表示装置用基板を作成した。変性ポリオレフィン系フィルムは三井化学(株)製アドマーを使用した。作成は実施例3と同様の条件で行った。
次に、この表示装置用基板を用いた表示デバイスについて、好適な実施の形態に基づいて説明する。図2は、本発明の表示デバイス(有機ELディスプレイ)の一例を示す断面図である。 また、図2中で前記の超薄板ガラス/変性ポリオレフィン系フィルム/ポリカーボネートフィルム/変性ポリオレフィン系フィルム/超薄膜ガラスを積層した表示装置用基板は4と記す。
有機ELディスプレイ9は、前述したような表示装置用基板4に隣接して、ITO電極6と、TPD発光層7と、ITO電極6とがこの順に設けられている。 ITO電極6と、TPD発光層7と、ITO電極6とは、それらの周囲を包囲する封止ガラス8で覆われている。封止ガラス8は、2液エポキシ接着剤5によって表示装置用基板4と接着される。封止ガラス8は、ITO電極6と、TPD発光層7と、ITO電極6との封止状態を保つ。
有機ELディスプレイ9の電極6、6間に通電すると、発光層7が、発光する。その光は、直接または反射されて表示装置用基板4を通過して照射される。
この有機ELディスプレイ9に、新規な表示装置用基板4を用いている、すなわち、超薄ガラス板の2重積層体であるため十分な水蒸気バリア性を有している。そのため、水分の浸入による発光層や電極層の劣化等が100時間たっても無く、有機ELディスプレイ9とした際の長期信頼性および表示品位に優れる。
例えば比較例3に示す樹脂基板に比べはるかに長い4万時間以上の良好な耐久性を示した。また、通常用いるガラス基板に比べ重さが3分の2程度になり軽量化に成功した。
なお、表示デバイスについて有機ELディスプレイ、液晶表示デバイスを例示して説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば電子ペーパー等の表示デバイスについても使用することができる。
【0050】
[比較例3]
実施例4で示した有機ELディスプレイ9において表示装置用基板4の代りに厚み300μの帝人化成(株)製ポリカーボネートシートを使用した。その結果、ダークスポトと呼ばれる非発光部が約30分後に発生した。この原因の詳細は不明であるが、水分等の影響が作用しているものものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の表示装置用基板は、タッチパネル、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等に用いる、偏光板、位相差板反射板、半透過反射板など光学部材の表示装置用基板として有用である。
【符号の説明】
【0052】
1:表示装置用基板
2:超薄ガラス
3:偏光板
4:表示装置用基板
5:接着剤
6:電極
7:発光層
8:封止剤
9:有機ELディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する少なくとも一対の超薄ガラス板間に、該超薄ガラス板の少なくとも1枚の厚さ以上の厚さを有する、少なくとも1層の透光性樹脂層が介在する表示装置用基板であって、該超薄ガラス板の表面粗さ(Ra値)が0.5nm以下であることを特徴とする表示装置用基板。
【請求項2】
前記超薄ガラス板がオーバーフロー法により作られた超薄ガラス板である請求項1記載の表示装置用基板。
【請求項3】
前記超薄ガラス板の厚さが5μm以上155μm未満である請求項1記載の表示装置用基板。
【請求項4】
前記一対の超薄ガラス板のうち、少なくとも一方の超薄ガラス板の基板外方表面となる面には、反射防止処理が施されている請求項1〜3のいずれか1項記載の表示装置用基板。
【請求項5】
前記板状体層が、光学部材を含む請求項1〜3のいずれか1項記載の表示装置用基板。
【請求項6】
前記光学部材が、偏光板である請求項5記載の表示装置用基板。
【請求項7】
前記光学部材が、位相差板である請求項5記載の表示装置用基板。
【請求項8】
前記学部材が、反射板である請求項5記載の表示装置用基板。
【請求項9】
前記光学部材が、半透過反射板である請求項5記載の表示装置用基板。
【請求項10】
前記光学部材が、複数の位相差板である請求項7記載の表示装置用基板。
【請求項11】
前記光学部材が、捩れ位相差板である請求項7記載の表示装置用基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−110757(P2011−110757A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267582(P2009−267582)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】