説明

表示装置

【課題】 レーザ光照射装置の運転に関わるインジケーター等の表示は作業者が保護メガネを着用した状態で見えるように行い、作業者の目に有害なレーザ光のみ遮断する表示装置を構成することで、作業の安全性、能率、正確さを高める。
【解決手段】 本発明の表示装置は、レーザ光5などの可視光を遮断するための保護メガネ7に対して、保護メガネ7によるレーザ光などの可視光の遮断領域と異なる領域の発光領域を有するLED12、13,14を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光などの可視光を用いる機器に設けられる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、レーザ光線は研究用途だけでなく、工業用途では加工、切断、溶接等に用いられ、また医療用途ではレーザメス、歯科治療、光直接治療等で患部に光を照射することで治療を行う等の、レーザ光照射装置のアプリケーションが開発されてきている。
【0003】
レーザ光は一般的に集光性が高く、目に入ると失明の危険性があり、取り扱いには注意を要するものである。そのため、作業者が目に入る事を防ぐためにそのレーザ光をカットする保護メガネを着用し作業を行うようにしていた。
例えば、レーザ照射部の破損を検知するシステムにおいて保護メガネを用いる技術が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10-6053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、レーザ光照射装置のレーザ光が可視光のものである場合は、可視光をカットするようなフィルターを用いた保護メガネを用いることになる。このとき一般的なレーザ光照射装置の周辺の付帯装置である電源のパワーメーター、スペクトルアナライザー等に用いられているインジケーターなどの数値表示用の発光装置に使用している発光光とレーザ光とが近い波長のものである場合、これら付帯装置の表示は保護メガネによりレーザ光と共に数値表示の発光光がカットされるため、数値表示の発光光を見ることができなくなり、装置の操作をしている人は安全に動作させることができないという不都合があった。
【0005】
レーザ光照射装置をある状況にセッティングして、自動的に作業が行える工業用の加工機であれば、調整時のみの問題であるが、医療用途の場合には、自動的に医療行為を行うことができず、医師が実際に患者の様子を確認しながら、レーザ光照射装置を操作することになる。このため、作業者が保護メガネを装着した状態で、レーザ光照射装置の周辺の付帯設備を安全に操作できることは非常に重要である。
【0006】
そこで、本発明は、レーザ光照射装置の運転に関わるインジケーター等の表示は作業者が保護メガネを着用した状態で見えるように行い、作業者の目に有害なレーザ光のみ遮断する表示装置を構成することで、作業の安全性、能率、正確さを高めることができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の表示装置は、可視光を遮断するための保護メガネに対して、保護メガネによる可視光の遮断領域と異なる領域の発光領域を有する発光手段を備えたものである。
【0008】
これにより、レーザなどの可視光に関わる機器に用いるインジケーターなどの数値表示用の発光部品に保護メガネによる可視光の遮断領域と異なる領域の発光領域を有する発光手段として白色の発光光を用いることにより、作業者が保護メガネを装着した状態で、白色の発光光により数値表示を見ることができるため、作業者がレーザ光照射装置の周辺の付帯設備を安全に操作することができる。
【0009】
また、本発明の表示装置は、可視光を用いる機器に使用する可視光の領域を判断する判断手段と、可視光の領域に対して保護メガネによる可視光の遮断領域以外の領域を選択する選択手段と、可視光の遮断領域以外の領域に対して使用する複数の発光領域を有する発光手段と、可視光の遮断領域以外の領域に対応する発光領域に発光手段を切り替える切替手段とを備えたものである。
【0010】
これにより、使用するレーザなどの可視光の波長領域に応じて、保護メガネによる可視光の遮断領域以外の領域を選択し、この遮断領域以外の領域に対応する発光領域に発光手段を切り替え、レーザなどの可視光に関わる機器に用いるインジケーターなどの数値表示用の発光部品に保護メガネによる可視光の遮断領域と異なる領域の発光領域を有する発光手段として遮断領域以外の領域の色の発光光を用いることにより、作業者が保護メガネを装着した状態で、遮断領域以外の領域の色の発光光により数値表示を見ることができるため、作業者がレーザ光照射装置の周辺の付帯設備を安全に操作することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業者が保護メガネを装着した状態で、レーザなどの可視光を用いた機器に設けられる数値表示用の発光光を見ることができるので、作業者がレーザ光照射装置などの機器を安全に操作することができるようになる。
【0012】
また、レーザなどの可視光を用いた工業用システムでは精度の高い加工を行うことが可能になると共に、レーザなどの可視光を用いた医療用システムでは、安全にしかも丁寧な治療を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について、適宜、図面を参照しながら説明する。
図6は、一般的な光源とLED(Light Emitted Device)のスペクトルを示す図である。
図6において、青色LED62は、400〜510nmの波長領域、赤色LED62は、620〜700nmの波長領域となり比較的狭い限定された波長領域である。これに対して、白色LED61は、400〜750nmの波長領域、蛍光灯64は、370〜710nmの波長領域となり比較的広い広帯域の波長領域である。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態によるレーザ測定システムを示す図である。
図1において、レーザ光照射装置としてのレーザ測定器1からターゲットにレーザ光5を照射することによる反射光によりターゲットの測定を行うレーザ測定システムを例としてあげて説明する。
【0015】
図1に示すレーザ測定システムは、レーザ測定器1の他に、周辺の付帯装置として、レーザ測定器1に対するレーザ発光のための定電圧電源を供給する電源2と、レーザ測定器1におけるレーザ発光による発熱の吸熱をペルチエ効果を利用して行うペルチエクーラーコントローラ3とを有している。
【0016】
ここで、レーザ測定器1には、アナログ表示器11の他に、数値を表示する発光ダイオードとしてLED12が設けられている。また、電源2にも数値を表示する発光ダイオードとしてLED13が設けられている。また、ペルチエクーラーコントローラ3にも数値を表示する発光ダイオードとしてLED13が設けられている。これらのLED12、13,14は、レーザ測定器1に何アンペアの電流が流れているかという電流値を表示するため、この表示が作業者6に見えないと適正な作業を行うことができないことになる。
【0017】
ここで、作業者6がレーザ保護メガネ7を用いた場合は、レーザ測定器1のLED12の表示は保護メガネ7によりレーザ光5と共にLED12の数値表示の発光光がカットされるため、作業者6が数値表示の発光光を見ることができなくなり、さらに、電源2に使用されているLED13及びペルチエクーラーコントローラ3に使用されているLED14で構成されたインジケーターなどの数値表示が読めなくなる。特に広く用いられている赤色のLEDは光直接療法で用いられる640〜670nmの可視光のレーザ光と重なる領域となる。
【0018】
そこで、本発明の実施の形態では、レーザに関わる機器に用いるインジケーターなどの数値表示用の発光部品に保護メガネ7によるレーザ光5の遮断領域と異なる領域の発光領域を有するLED12、13,14として白色の発光光を用いることにより、作業者6が保護メガネ7を装着した状態で、LED12、13,14の白色の発光光により数値表示を見ることができるため、白色のLEDを装置のインジケーターなどの数値表示に用いることで、使用しているレーザ光5の領域にあわせた遮断領域を有する保護メガネ7を用いても必ず、その波長以外の光が作業者6の目に届くようにすることができる。
【0019】
図2は、LEDの構成を示す図であり、図2AはLED形表示器、図2Bは白色LEDの構成例である。
図2Aに示すように、LED形表示器は、7セグメントLED21で構成することにより、0〜9までの数字を表示することができる。また、図2Bに示すように、白色LEDは、青色LED22からの青色の光を蛍光材料24を塗布したリフレクタ23により波長変換させることにより生成することができる。
【0020】
ここで、蛍光材料24としては、例えば、バンドギャップの狭い半導体を用いることにより、例えば黄色に波長変換を行う半導体材料を用いれば、元の青色の光と変換された黄色が適度に交じり合い白色の光を得ることができる。
【0021】
図3は、白色LEDのスペクトルを示す図である。図3は、白色LEDとHe−Neレーザのスペクトルを示している。
図3において、白色LEDのスペクトル領域31は、比較的広い広帯域の400〜750nmの波長領域であるため、レーザ光32の640nmの波長領域と一部に重複する領域を有する。
【0022】
図4は、保護メガネ透過後の白色LEDのスペクトルを示す図である。
このレーザ光の640nmの波長領域をカットする保護メガネを選ぶ。例えば、この保護メガネとして、例えば、Newport社のG2277の保護メガネを使用する。この保護メガネは610〜690nmで光線を遮断するカット領域41を有するので、図4に示す保護メガネ透過後の白色LEDのスペクトルのように、レーザ光のスペクトルと白色LEDのスペクトルの一部のカット領域41が欠損した残余の白色LEDのスペクトルを作業者は保護メガネ越しに見ることができる。
【0023】
このカット領域41が欠損した残余の白色LEDのスペクトルの保護メガネによる透過光があれば、作業者がインジケーターなどの数値表示を十分に見ることができ、これにより、作業者が安全に作業をすることができる。
【0024】
図5は、レーザ波長に応じたLEDの切替を示す図である。
図5において、使用レーザ判断部51は、図1に示したレーザ測定器1において使用されるレーザ光の領域がどの領域であるかを判断する。カット領域外選択部52は、保護メガネによりカットされるレーザ光の領域以外の領域を選択する。使用LED切替部53は、選択されたレーザ光の領域以外の領域に対応する発光領域を有するLED54に切替を行う。
【0025】
ここで、LED54は、例えば、赤色又は緑色の異なる発光領域の発光素子をワンチップ内に設けるように構成されている。そして、表示装置内の図示しないCPU(Central Processing Unit)が、使用レーザ判断部51、カット領域外選択部52、使用LED切替部53を構成する。そして、レーザ測定器1、電源2及びペルチエクーラーコントローラ3に設けられる表示装置は、レーザ測定器1との通信を行いながら上述した動作を実行する。
【0026】
上述した図1〜図4では、レーザ測定器1において赤色のレーザ光を照射する例について説明を行っているが、この図5では可視光のどの波長のレーザ光でも、これと同じように、レーザ光を含むスペクトルの一部を保護メガネでカットすることになるので、作業者が保護メガネを装着した状態で、遮断領域以外の領域の色の発光光のLEDにより数値表示を行うことにより、作業者がインジケーターなどの数値表示を見ることができる。
【0027】
予め、使用するレーザの波長が決まっているならば、白色LEDでなくても、レーザ光と波長の違うLEDを切り替えて使用することで同様の効果を得られる。
【0028】
上述した実施の形態では、レーザ測定システムについてのみを説明したが、これに限らず、工業用システム又は医療用システムに適用することができることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態によるレーザ測定システムを示す図である。
【図2】LEDの構成を示す図であり、図2AはLED形表示器、図2Bは白色LEDの構成例である。
【図3】白色LEDのスペクトルを示す図である。
【図4】保護メガネ透過後の白色LEDのスペクトルを示す図である。
【図5】レーザ波長に応じたLEDの切替を示す図である。
【図6】一般的な光源とLEDのスペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1…レーザ測定器、2…電源、3…ペルチエクーラーコントローラ、4…ターゲット、5…レーザ光、6…作業者、7…レーザ保護メガネ、11…アナログ表示器、12…LED、13…LED、14…LED、21…7セグメントLED、22…青色LED、23…リフレクタ、31…白色LEDスペクトル、32…レーザスペクトル、41…カット領域、51…使用レーザ判断部、52…カット領域外選択部、53…使用LED切替部、54…LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を対象物に照射して用いる機器及び上記可視光を用いる機器と共に使用する周辺機器に設けられる表示装置において、
上記可視光を遮断するための保護メガネに対して、上記保護メガネによる可視光の遮断領域と異なる領域の発光領域を有する発光手段を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の表示装置において、
上記発光手段は、自光式で数字を発光するものであることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1記載の表示装置において、
上記発光手段は、白色発光ダイオードを用いるものであることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1記載の表示装置において、
上記発光手段は、青色発光ダイオード及び蛍光材料を用いるものであることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
可視光を対象物に照射して用いる機器及び上記可視光を用いる機器と共に使用する周辺機器に設けられる表示装置において、
上記可視光を用いる機器に使用する上記可視光の領域を判断する判断手段と、
上記可視光の領域に対して保護メガネによる可視光の遮断領域以外の領域を選択する選択手段と、
上記可視光の遮断領域以外の領域に対して使用する複数の発光領域を有する発光手段と、
上記可視光の遮断領域以外の領域に対応する発光領域に上記発光手段を切り替える切替手段と
を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項5記載の表示装置において、
上記発光手段は、自光式で数字を発光するものであることを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項5記載の表示装置において、
上記発光手段は、赤色発光ダイオード及び緑色発光ダイオードを用いるものであることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項5記載の表示装置において、
上記発光手段は、ワンチップで構成されるものであることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−23666(P2006−23666A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203727(P2004−203727)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】