説明

表示装置

【課題】設計自由度が高く、製造コストが低い表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置1は、複数の無機EL表示素子10と、無機EL表示素子10に駆動電圧を印加する電極ライン11と、電極ライン11に駆動電圧を供給する複数の駆動用IC13と、複数の駆動用IC13に電気的に接続されており、駆動電圧を生成させる電源回路15とを有し、複数の駆動用IC13のそれぞれは電極ライン11に電気的に接続されている接続電極端子18aと、電極ライン11に電気的に接続されていない非接続電極端子18bとを備えており、複数の駆動用IC13のそれぞれの最大消費電力が略同一である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は従来の無機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、「無機EL表示装置」とすることがある。)100の構成を示す模式図である。
【0003】
無機EL表示装置100は、外部から入力される入力信号に応じて各部の動作タイミングを制御する駆動制御回路117と、駆動電圧を生成させる変調駆動電源回路115と、変調駆動電源回路115と駆動制御回路117とに電気的に接続された複数のカラム側駆動用集積回路(以下、「集積回路」のことを「IC」とすることがある。)113と、パルス状の書き込み電圧を生成させる書き込み駆動電源回路116と、書き込み駆動電源回路116と駆動制御回路117とに電気的に接続された複数の走査側駆動用IC114とを有する。カラム側駆動用IC113及び走査側駆動用IC114は複数の電極端子118を有する。カラム側駆動用IC113の電極端子118の一部はカラム側電極ライン111に電気的に接続されている。走査側駆動用IC114の電極端子118の一部は走査側電極ライン112に電気的に接続されている。カラム側電極ライン111と走査側電極ライン112との交差部のそれぞれには、無機エレクトロルミネッセンス表示素子(以下、「無機EL表示素子」とすることがある。)110が形成されている。
【0004】
近年、無機EL表示装置100の製造コストを低減させるため、カラム側駆動用IC113及び走査側駆動用IC114に既製のICが用いられることが多くなってきている。既製のICが有する電極端子の本数は決まっているため、駆動用IC113、114として既製のICを用いた場合、駆動用IC113、114に接続させたい電極ライン111、112の本数が駆動用IC113、114の有する電極端子118の本数の整数倍にならないという事態が生じ得る。換言すれば、電極ライン111、112に接続されない非接続電極端子118bが存在するという事態が生じ得る。例えば、カラム側電極ライン111の本数が640本の無機EL表示装置100を、電極端子数が192本のカラム側駆動用IC113を用いて駆動させるためには、4個のカラム側駆動用IC113が必要となる。4個のカラム側駆動用IC113を用いた場合、電極端子数の総合計が768本となり、128本の非接続電極端子118bが生じる。
【0005】
従来、図10に示すように、非接続電極端子118bは一端(一般的には右端)に設けられたカラム側駆動用IC113にかためて設けられ、一端に設けられたカラム側駆動用IC113c以外のカラム側駆動用IC113a、113b等はカラム側電極ライン111に電気的に接続されている接続電極端子118aのみを有するように構成されている。一般的に、表示画面の一端側の表示データから他端側の表示データへと連続して入力されるため、このように構成することによって、表示データに特別な加工を施すことが不要となり、無機EL表示装置100の制御が容易になるためである。しかしながら、この構成では、電極端子118から電極ライン111への電極取り出し角が浅くなる等の諸問題が発生する。
【0006】
これら諸問題を解決する技術が、例えば特許文献1〜3に開示されている。特許文献1には、非接続電極端子(TCPの接続余り)を両端に配設された駆動用ICに割り振る技術が開示されている。また、特許文献2及び3には非接続電極端子を少なくする技術が開示されている。
【特許文献1】特開平6−138472号公報
【特許文献2】特開平8−328513号公報
【特許文献3】特開2002−207452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された表示装置によれば、TCPの接続余りが右端のTCPに集中しないので、斜め配線の角度、長さがばらつき、かつ、斜め配線の角度が小さくなるのを抑制することができる。また、配線の設計が容易となり、斜め配線の抵抗の増大やばらつき、斜め配線どうしの短絡不良の発生を抑制することができる。かつ、コンパクト設計に対して有利であり、表示部の配線とTCPとの高密度接続を可能にすることができると記載されている。しかしながら、特許文献1に記載された表示装置には、TCPごとの最大消費電力のばらつきが大きいという問題がある。具体的には、接続余りを有する、両端に設けられたTCPよりも、接続余りを有さない、中央部に設けられたTCPの方が最大消費電力が大きくなる。このため、中央部に設けられた接続余り(非接続電極端子)を有さないTCPの最大消費電力がTCPの定格電力を超える虞があるという問題がある。このため、特許文献1に記載された表示装置では、使用できるTCPに制限があり、設計自由度が低いという問題がある。場合によっては、専用のTCPを設計・製造する必要が生じるため、製造コストが高いという問題もある。
【0008】
特許文献2及び3に記載された表示装置も非接続電極端子を有することには変わりはなく、一般的に非接続電極端子は一部の駆動用IC(例えば、端に設けられた駆動用IC)にかためて設けられているため、特許文献1に記載された表示装置と同様に上記問題を有する。
【0009】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、設計自由度が高く、安価に製造することができる表示装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る表示装置は、複数の表示素子と、複数の表示素子のそれぞれに駆動電圧を印加する電極ラインと、電極ラインに駆動電圧を供給する複数の駆動用回路と、複数の駆動用回路に電気的に接続されており、駆動電圧を生成させる電源回路とを有する。複数の駆動用回路のそれぞれは電極ラインに電気的に接続されている接続電極端子と、電極ラインに電気的に接続されていない非接続電極端子とを備えている。本発明に係る表示装置では、複数の駆動用回路のそれぞれの最大消費電力が略同一である。
【0011】
このため、本発明に係る表示装置によれば、最も最大消費電力が大きい駆動用回路の最大消費電力を低減することができる。このため、駆動用回路の最大消費電力が駆動用回路の定格電力を超えることを抑制することができるため、駆動用回路の選択の余地を広げることができる。従って、設計自由度が高く、安価な表示装置を実現することができる。
【0012】
本発明に係る表示装置では、複数の駆動用回路のそれぞれが略同数の接続電極端子を備えていてもよい。このように構成することによって、複数の駆動用回路のそれぞれの最大消費電力を略同一にすることができる。尚、上述のように、制御容易性の観点から原則として非接続電極端子は一端に設けられた駆動用回路(又は両端に設けられた駆動回路)にかためて設けられる。また、上記駆動用回路の最大消費電力と定格電力との問題は、本発明者が誠意研究した結果、初めて見出されたものである。このため、非接続電極端子を複数の駆動用回路のそれぞれに略同一に割り振ることは、所謂当業者が容易に設計し得ることではない。
【0013】
本発明に係る表示装置では、駆動用回路が電極ラインに変調電圧を印加するものであってもよい。
【0014】
本発明に係る表示装置では、表示素子が無機エレクトロルミネッセンス表示素子又はプラズマ表示素子であってもよい。言い換えれば、本発明に係る表示装置は無機エレクトロルミネッセンス表示装置又はプラズマ表示装置であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、設計自由度を高くすることができ、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は実施形態に係る無機EL表示装置1の構成を表す模式図である。
【0018】
図2は無機EL表示素子10の構成を表す断面図である。
【0019】
無機EL表示装置1は、相互に並行に延びる複数のカラム側電極ライン11と、カラム側電極ライン11の延びる方向に角度をなして(一般的には、直交して)相互に並行に延びる複数の走査側電極ライン12と、カラム側電極ライン11と走査側電極ライン12との交差部のそれぞれに形成された無機EL表示素子10とを有する。無機EL表示素子10はマトリクス状に配設されている。
【0020】
図2に示すように、無機EL表示素子10は、カラム側電極ライン11と、走査側電極ライン12と、カラム側電極ライン11及び走査側電極ライン12により狭持された積層とにより形成されている。該積層は、カラム側電極ライン11の上に設けられた第1誘電層10aと、第1誘電層10aの上に設けられた無機EL発光層10bと、無機EL発光層10bと走査側電極ライン12との間に設けられた第2誘電層10cとにより構成されている。
【0021】
図1に示すように、カラム側電極ライン11はカラム側駆動用IC(カラム側駆動回路)13に電気的に接続されている。カラム側駆動用IC13は変調駆動電源回路15及び駆動制御回路17に電気的に接続されている。一方、走査側電極ライン12は走査側駆動用IC(走査側駆動回路)14に電気的に接続されている。走査側駆動用IC14は書き込み駆動電源回路16及び駆動制御回路17に電気的に接続されている。変調駆動電源回路15及び駆動電源回路16は、それぞれ電源(例えば、12Vの電源)に接続されている。カラム側駆動用IC13及び走査側駆動用IC14はそれぞれ複数の電極端子18を有しており、カラム側電極ライン11及び走査側電極ライン12はそれぞれ駆動用IC13、14が有する電極端子18に接続されている。
【0022】
無機EL表示装置1では、複数のカラム側駆動用IC13が有する電極端子18の総数がカラム側電極ライン11の総数より多い。このため、複数設けられたカラム側駆動用IC13のそれぞれは、カラム側電極ライン11に接続された接続電極端子18aと、カラム側電極ライン11に接続されていない非接続電極端子18bとを有する。同様に、複数の走査側駆動用IC14が有する電極端子18の総数が走査側電極ライン12の総数より多い。このため、複数設けられた走査側駆動用IC14のそれぞれは、走査側電極ライン12に接続された接続電極端子18aと、走査側電極ライン12に接続されていない非接続電極端子18bとを有する。
【0023】
駆動制御回路17は、外部より入力される入力信号に応じ、無機EL表示装置1の各部の動作タイミングを制御する。駆動制御回路17は、例えば、カラム側駆動用IC13及び走査側駆動用IC14に制御信号を入力する。また、駆動用制御回路17はカラム側駆動用IC13に表示データ信号を入力する。変調駆動電源回路15は、電源から供給された(例えば、12Vの)電圧を昇圧させてパルス状の変調電圧を生成させる。書き込み駆動電源回路16は、電源から供給された(例えば、12Vの)電圧を昇圧させてパルス状の書き込み電圧を生成させる。カラム側駆動用IC13は、駆動制御回路17から入力された制御信号及び表示データ信号に応じて、変調駆動電源回路15から入力された変調電圧を、カラム側電極ライン11を介して、無機EL表示素子10に印加する。一方、走査側駆動用IC14は、駆動制御回路17から入力された制御信号に応じて、書き込み駆動電源回路16から入力されたパルス状の書き込み電圧を、走査側電極ライン12を介して、無機EL表示素子10に印加する。
【0024】
図3はカラム側駆動用IC13の一部分の回路構成を表す模式図である。
【0025】
カラム側駆動用IC13は、カラム制御部13aと、カラム制御部13aに電気的に接続されたカラム側ドライバ13bとを含む。カラム制御部13aはその一端が駆動制御回路17に電気的に接続されている。駆動制御回路17からカラム側駆動用IC13に入力された制御信号及び表示データ信号は、カラム制御部13aを経由してカラム側ドライバ13bに入力される。カラム側ドライバ13bは、スイッチング素子としての2個の電界効果トランジスタ(以下、「FET」とすることがある。)13c及び13dを備えている。FET13c、13dの一端はそれぞれカラム側電極ライン11に接続されている。FET13cは一端が変調駆動電源回路15に電気的に接続されており、変調駆動電源回路15から駆動電圧の供給を受ける。一方、FET13dの一端はグランド(GND)に電気的に接続されている。
【0026】
制御信号及び表示データ信号が駆動制御回路17からカラム側ドライバ13bに入力されると、それら信号に基づいてFET13c及び13dのオン/オフが切り替えられる仕組みとなっている。例えば、制御信号及び表示データ信号により、FET13cがオンされ、FET13dがオフされた場合は、FET13に接続されたカラム側電極ライン11は変調駆動電源回路15に接続され、変調電圧がカラム側電極ライン11を介して無機EL表示素子10に印加される。一方、FET13cがオフされ、FET13dがオンされた場合は、カラム側電極ライン11を介して無機EL表示素子10がグランドに接続される。
【0027】
図4は無機EL表示素子10の輝度と印加電圧との相関を示すグラフである。
【0028】
図5は無機EL表示素子10に印加される電圧と、無機EL表示素子10の発光/非発光との関係を示した図である。尚、図5に示す電圧値は一例であって、本発明は何ら図5に限定されるものではない。
【0029】
以下、図4及び図5を参照しながら、無機EL表示素子10の発光/非発光の制御方法の一例について詳細に説明する。
【0030】
図4に示すように、無機EL表示素子10は閾値電圧(スレッシュ電圧:Vth)を閾として発光を開始する。無機EL表示素子10に印加する電圧が閾値電圧から大きくなるに従って無機EL表示素子10の発光輝度も増大する。無機EL表示素子10に印加される電圧が所定の電圧(Vth+VM)以上の電圧範囲では無機EL表示素子10の発光強度は電圧に関わらずほぼ一定となる。このような無機EL発光素子10の特性を生かして無機EL表示素子10が制御される。
【0031】
図5に示すように、無機EL表示素子10には、走査側電極ライン12から220V(Vth+VM)又は−160V(|−160V|<|−Vth|)が印加される。一方、カラム側電極ライン11からは0V(グランド)又は60Vが印加される。図5の(a)に示す場合のように、走査側電極ライン12から220Vが印加され、カラム側電極ライン11がグランドに接地されている場合(0Vが印加される場合)は、無機EL表示素子10には、閾値電圧以上の220Vが印加される。このため、無機EL表示素子10は発光する。図5(b)に示す場合のように、走査側電極ライン12からは−160Vが印加され、カラム側電極ライン11からは60Vが印加される場合は、無機EL表示素子10には、閾値電圧以上の220Vが印加される。このため、図5(b)に示す場合においても図5(a)に示す場合と同様に、無機EL表示素子10は発光する。
【0032】
図5(c)に示す場合のように、走査側電極ライン12から220Vが印加され、カラム側電極ライン11から60Vが印加される場合は、無機EL表示素子10には合計160Vが印加される。この場合、図4に示すように、無機EL表示素子10に印加される電圧(160V)は閾値電圧(Vth)以下であるため、無機EL表示素子10は発光しない。図5(d)に示す場合のように、走査側電極ライン12から−160Vが印加され、カラム側電極ライン11がグランドに接地されている場合(0Vが印加される場合)は、無機EL表示素子10には合計160Vが印加される。この場合、図4に示すように、無機EL表示素子10に印加される電圧(160V)は閾値電圧(Vth)以下であるため、無機EL表示素子10は発光しない。
【0033】
このような、図5(a)〜(d)のパターンを組み合わせることによって無機EL表示素子10の発光/非発光を制御することができる。
【0034】
無機EL表示装置1では、複数のカラム側駆動用IC13のそれぞれの最大消費電力が略同一となるように構成されている。このため、無機EL表示装置1では、最も最大消費電力が大きいカラム側駆動用IC13の最大消費電力を比較的小さくすることができる。このため、カラム側駆動用IC13の最大消費電力がカラム側駆動用IC13の定格電力を超えることを抑制することができる。よって、カラム側駆動用IC13の選択の余地を広げることができる。従って、本実施形態に係る無機EL表示装置1は設計自由度が高く、安価である。例えば、カラム側駆動用IC13を比較的定格電力の小さな汎用ICにより構成することも可能となる。
【0035】
複数のカラム側駆動用IC13のそれぞれの最大消費電力を略同一に構成するために、無機EL表示装置1では、複数のカラム側駆動用IC13のそれぞれは略同数の接続電極端子18aを有するように構成されている。例えば、カラム側電極ライン11の本数が640本でカラム側駆動用IC13が有する電極端子18の数が192本の場合は、カラム側駆動用IC13のそれぞれが160本の接続電極端子18a及び32本の非接続電極端子18bを有するように構成することができる。また、例えば、カラム側電極ライン11の本数が1120本でカラム側駆動用IC13が有する電極端子18の数が192本の場合は、2つのカラム側駆動用IC13はそれぞれ186本の接続電極端子18a及び6本の非接続電極端子18bを有し、4つのカラム側駆動用IC13はそれぞれ187本の接続電極端子18a及び5本の非接続電極端子18bを有するように構成することができる。
【0036】
走査側駆動用IC14についても、カラム側駆動用IC13と同様に、複数の走査側駆動用IC14のそれぞれは略同数の接続電極端子18aを有するように構成されており、複数の走査側駆動用IC14のそれぞれの最大消費電力が略同一となるように構成されている。このため、走査側駆動用IC14の最大消費電力が走査側駆動用IC14の定格電力を超えることを抑制することができる。よって、走査側駆動用IC14の選択の余地を広げることができる。従って、本実施形態に係る無機EL表示装置1は設計自由度が高く、安価である。例えば、走査側駆動用IC14を比較的定格電力の小さな汎用ICにより構成することも可能となる。
【0037】
以上、本実施形態では無機EL表示装置1を例として本発明を説明したが、本発明は何らこれに限定されるものではなく、プラズマ表示装置、有機EL表示装置、フィールドエミッション表示装置等の表示装置にも適用することができる。そのなかでも、本実施形態で説明した無機EL表示装置及びプラズマ表示装置では、電極ラインごとの電力が大きいため、本発明が特に好適に適用される。
【実施例】
【0038】
上記実施形態において説明した無機EL表示装置1を実施例とした。実施例1において、カラム側電極ライン11の本数は640本である。また、カラム側駆動用IC13の電極端子18の数は192本である。実施例1では、カラム側駆動用IC13のそれぞれが160本の接続電極端子18a及び32本の非接続電極端子18bを有する。
【0039】
まず、カラム側駆動用IC13の最大消費電力の一般式について図6を参照しながら詳細に説明する。
【0040】
図6は本実施例に係る無機EL表示装置1を表した模式図である。
【0041】
カラム側駆動用IC13における消費電力は概ねFET13c及び13dの抵抗値での消費と考えることができる。このため、無機EL表示素子10の容量Cと、カラム側駆動用IC13の(詳しくはFET13c及び13dの)抵抗RとのCR直列回路と等価と考えることができる。従って、一般的に、カラム側駆動用IC13での消費電力WR及び無機EL表示素子10での消費電力WCは下記数式1及び2で表される。
【0042】
【数1】

【0043】
【数2】

【0044】
このように、容量Cと抵抗RとのCR直列回路と等価であると考えると、無機EL表示装置1は図7に表す等価回路で表すことができる。また、図7に表す等価回路は図8に示すように簡略化することができ、さらに図8に示す等価回路は図9のように簡略化することができる。ここで、変調電圧VMを印加する無機EL表示素子10の容量(C1〜Cx)の総和にyを乗じた値をCaとし、グランドに接続された無機EL表示素子10の容量(Cx+1〜Cn)の総和にyを乗じた値をCbとすると、Ca及びCbはそれぞれ下記数式3及び数式4により表される(図8参照)。Cは無機EL表示素子10のひとつあたりの容量である。図6に示すように、nはカラム側電極ライン11の総本数であり、xは無機EL表示素子10に変調電圧VMを印加するカラム側電極ライン11の本数である。yは走査側電極ライン12の本数である。
【0045】
【数3】

【0046】
【数4】

【0047】
変調電圧VMとグランドの間に存在する見かけ上の静電容量をCcとすると、Cc、Ca、及びCbは下記数式5の関係を有する(図9参照)。このため、数式3〜5より、CcはCa及びCbを用いて下記数式6によって表される。
【0048】
【数5】

【0049】
【数6】

【0050】
無機EL表示素子10に変調電圧VMを印加するFET13cの内部抵抗の総和R1、及び無機EL表示素子10をグランドにクランプするFET13dの内部抵抗の総和R2は、カラム側駆動用IC13に含まれるFET13のON抵抗の総和をRとすると、それぞれ下記数式7及び数式8によって表される。
【0051】
【数7】

【0052】
【数8】

【0053】
数式1及び6〜8より、抵抗R1における消費電力(変調電圧VMを印加するFET13aの消費電力の総和)WR1、及び抵抗R2における消費電力(無機EL表示素子10をグランドにクランプするFET13aの消費電力の総和)WR2はそれぞれ下記数式9及び数式10により表される。
【0054】
【数9】

【0055】
【数10】

【0056】
消費電力WR1が最大となるのは数式9を微分して得られる下記数式11が0である場合(WR1’=0の場合)である。すなわち、xが(1/3)nのときWR1は最大となる。従って、WR1の最大値WR1MAXは下記数式12により表される。ここで、カラム側駆動用IC13の1個あたりの電極端子18の数をmとすると、カラム側電極ライン11の総本数nが3m以上である場合は、カラム側駆動用IC13に接続されたカラム側電極ライン11のすべてに変調電圧VMが印加され、他のカラム側電極ライン11のすべてがグランドにクランプされているときにWR1は最大値WR1MAXをとる。一方、カラム側電極ライン11の総本数nが3m以下である場合は、カラム側駆動用IC13に接続されたカラム側電極ライン11の1/3に変調電圧VMが印加され、他のカラム側電極ライン11がグランドにクランプされているときにWR1は最大値WR1MAXをとる。
【0057】
【数11】

【0058】
【数12】

【0059】
本実施例の場合、カラム側電極ライン11の本数は640本であり、カラム側駆動用IC13の有する電極端子18の数は192本である。このため、カラム側電極ライン11の本数n(640)はカラム側駆動用IC13の有する電極端子18の数(192)に3を乗じた値(576)よりも大きい(640>192×3)。従って、本実施例においては、カラム側駆動用IC13の最大消費電力WRMAXはひとつのカラム側駆動用IC13に接続されたカラム側電極ライン11のすべてに変調電圧VMが印加され、他のカラム側電極ライン11のすべてがグランドにクランプされているときのカラム側駆動用IC13の消費電力となる。すなわち、本実施例におけるカラム側駆動用IC13の最大消費電力WRMAXは下記数式13により表され、5400yCV2(45CC2)となった。
【0060】
【数13】

【0061】
(比較例)下記相違点を除いて、上記実施例と同様の構成の無機EL表示装置を比較例とした。すなわち、比較例に係る無機EL表示装置が実施例に係る無機EL表示装置1と異なる点は、端部に設けられたひとつのカラム側駆動用IC13のみが64本のカラム側電極ライン11に接続され、残りのカラム側駆動用IC13はすべての電極端子18がカラム側電極ライン11に接続されている(すなわち、192本のカラム側電極ライン11に接続されている)点である。比較例においても、上記実施例と同様に、カラム側駆動用IC13の最大消費電力WRMAXはひとつのカラム側駆動用IC13に接続されたカラム側電極ライン11のすべてに変調電圧VMが印加され、他のカラム側電極ライン11のすべてがグランドにクランプされているときのカラム側駆動用IC13の消費電力となる。すなわち、本実施例におけるカラム側駆動用IC13の最大消費電力WRMAXは下記数式14により表され、6326.52yCV2(47.05CC2)となった。
【0062】
【数14】

【0063】
上述の通り、実施例ではカラム側駆動用IC13の最大消費電力WRMAXが5400yCV2(45CC2)となり、比較例(最大消費電力WRMAX;6326.52yCV2(47.05CC2))よりも最大消費電力WRMAXを約15%小さくすることができた。以上より、本発明によればカラム側駆動用ICの最大消費電力を低減することができることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施形態に係る無機EL表示装置1の構成を表す模式図である。
【図2】無機EL表示素子10の構成を表す断面図である。
【図3】カラム側駆動用IC13の一部分の回路構成を表す模式図である。
【図4】無機EL表示素子10の輝度と印加電圧との相関を示すグラフである。
【図5】無機EL表示素子10に印加される電圧と、無機EL表示素子10の発光/非発光との関係を示した図である。
【図6】本実施例に係る無機EL表示装置1を表した模式図である。
【図7】無機EL表示装置1の等価回路図である。
【図8】図7に示す等価回路を簡略化した回路図である。
【図9】図8に示す等価回路を簡略化した回路図である。
【図10】従来の無機EL表示装置100の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0065】
1、100 無機EL表示装置
10 無機EL表示素子
10a 第1誘電層
10b 無機EL発光層
10c 第2誘電層
11、111 カラム側電極ライン
12、112 走査側電極ライン
13、113 カラム側駆動用IC
13a カラム制御部
13b カラム側ドライバ
13c、13d FET
14、114 走査側駆動用IC
15、115 変調駆動電源回路
16、116 書き込み駆動電源回路
17、117 駆動制御回路
18、118 電極端子
18a 接続電極端子
18b 非接続電極端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示素子と、
前記複数の表示素子のそれぞれに駆動電圧を印加する電極ラインと、
前記電極ラインに前記駆動電圧を供給する複数の駆動用回路と、
前記複数の駆動用回路に電気的に接続されており、前記駆動電圧を生成させる電源回路とを有し、
前記複数の駆動用回路のそれぞれは前記電極ラインに電気的に接続されている接続電極端子と、前記電極ラインに電気的に接続されていない非接続電極端子とを備えている表示装置であって、
前記複数の駆動用回路のそれぞれの最大消費電力が略同一である表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載された表示装置において、
前記複数の駆動用回路のそれぞれは略同数の前記接続電極端子を備えている表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載された表示装置において、
前記駆動用回路は前記電極ラインに変調電圧を印加する表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載された表示装置において、
前記表示素子は無機エレクトロルミネッセンス表示素子又はプラズマ表示素子である表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−259587(P2006−259587A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80157(P2005−80157)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】