説明

表示装置

【課題】表示画面の主視野角方向である正面方向からの視認に対しては、表示画面に表示された情報を良好に視認可能とし、それ以外の方向からの視認に対しては、表示画面の全領域において、表示された情報を視認困難とする表示装置を提供すること。
【解決手段】所望の情報が表示される表示パネル2と、前記表示パネル2に積層して配置された視野角制御パネル1とを備えてなる表示装置において、前記視野角制御パネル1を、電極13が形成された一対の基板12間に液晶層が配設された液晶表示素子11とし、前記液晶層の液晶17を平行配向とし、位相差値ΔnLC・dLCを0.3〜0.8μmとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視野角制御パネルを備え、同一の表示画面に、視野角制御によって、所望の情報の視認が良好にできる領域(良好可視領域あるいは可視領域に相当)と、所望の情報の視認が困難な領域(不良可視領域あるいは不可視領域に相当)が形成されるように調整された表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話やPDA等に利用されている表示装置は、その画面サイズが大きくなるに従って広視野角化が要求されていた。
【0003】
しかしながら、携帯電話やPDA等に利用されている表示装置には、メール等のようにセキュリティ性の高い情報が表示される場合が多く、広視野角の表示装置に当該セキュリティ性の高い情報を表示すると、表示画面を覗き見ることのできる位置にいる不特定者から表示を見られてしまう可能性がある。そこで、プライバシー保護の要求からは、視野角を特定の範囲に制御する必要性が高まってきている。
【0004】
これまでの表示装置の視野角を所定の範囲に限る制御技術の1つとして、所望の情報を表示するための液晶層と前記液晶層を挟む配向膜とを具備し、表示画面に対応する全領域の配向膜を複数の領域に区画するとともに、隣接する前記領域の配向方向を複数の方向とすることで表示装置の視野角を異ならせる構成のものがある。
【0005】
このように構成された表示装置は、配向膜上の配向処理方向によって液晶表示の視野角が異なることを応用するものであり、特定の方向から表示画面を見たときに一部の領域を、所望の情報の視認が極めて困難な不良可視領域(あるいは前記情報を全く視認することのできない不可視領域)とする(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−264768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この従来技術において、表示画面に対応する全領域の配向膜を複数の領域に区画し、隣接する領域の配向方向を異ならせるようにラビング等の配向処理が行われれば、前記不良可視領域は例えば市松模様に配列されることとなる。
【0008】
しかしながら、市松模様を構成する各不良可視領域の大きさや濃度にもよるが、例えば、その市松模様に配列された不良可視領域と、表示画面全体に大きく映し出された所望の情報としての1つの物体の画像が重なった場合、前記画像のうち半分が前記市松模様よって部分的に視認不可となるとしても、前記画像の残り半分は前記不良可視領域によっては遮られずに視認可能であるため、前記画像全体のフォルムは容易に判別されてしまう。同様に、市松模様状に配列された不良可視領域と文章が重なった場合、前記文章の半分は不良可視領域によって文字の識別が困難であるとしても、残りの文章の半分は前記市松模様によって遮られずに文字は識別されるので、その文章の内容も、視認可能な文字を断片的に繋げれば容易に想像され、判別されてしまう可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、表示画面の主視野角方向である正面方向からの視認に対しては、表示画面に表示された情報を良好に視認可能とし、特に、左右方向からの視認に対しては、表示画面の全領域において、表示された情報を視認困難とする表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、本発明の第1の態様の表示装置は、所望の情報が表示される表示パネルと、前記表示パネルに積層して配置された視野角制御パネルとを備えてなる表示装置において、前記視野角制御パネルは電極が形成された一対の基板間に液晶層が配設された液晶表示素子であって、前記液晶層の液晶は平行配向であり、位相差値ΔnLC・dLCが0.3〜0.8μmであることを特徴とする。
【0011】
本実施の態様によれば、視野角制御パネルに適正な電圧を与えることで左右の視野角方向においてダミーパターンが視認され、表示画面の上下方向においては良好可視領域が形成され、左右方向においてはダミーパターンを表示パネルに表示される情報と重ねた二重表示を行なう不良可視領域が形成され、該表示装置の使用者は良好な表示品位で情報を視認しつつ、プライベートな情報を不特定者の視認から保護することができる。
【0012】
また、本発明の第2の態様の表示装置は、前記表示パネルは電極が形成された一対の透明基板間に液晶層が配設された液晶表示素子であり、本発明の第3の態様の表示装置は、第2の態様の表示装置において、前記視野角制御パネルおよび表示パネルはそれぞれ視認側および反視認側に偏光板を有していることを特徴とする。
【0013】
これらの実施の態様によれば、簡単かつ安価に表示装置を構成することができ、また、偏光軸の軸角方向を調整することで、光の振動方向を規制することが可能となる。
【0014】
そして、本発明の第4の態様の表示装置は、第2の態様の表示装置において、前記視野角制御パネルは前記表示パネルの上位に配置され、視認側には偏光板、反視認側には反射偏光板をそれぞれ有しており、前記表示パネルは視認側および反視認側に偏光板をそれぞれ有していることを特徴とする。
【0015】
本実施の態様によれば、反射偏光板を配設したことにより、透過表示時においては、前述の第1の態様の効果を得ることができるとともに、外光を利用した反射表示時においては、前記反射偏光板の反射光を利用して不良可視領域を形成し、プライベートな情報を不特定者の視認から保護するとともに、特殊な表示効果(見栄え)を実現することができる。
【0016】
また、本発明の第5の態様の表示装置は、第1乃至第4の態様の表示装置において、前記表示パネルと前記視野角制御パネルとの間には、光の偏光軸角を所定角度だけ回転誘導する旋光素子が配設されていることを特徴とする。
【0017】
本実施の態様によれば、旋光素子により、下位に配置された表示パネルまたは視野角制御パネルを透過した光を上位に位置する視野角制御パネルまたは表示パネルへ導くことができる。特に、第3の態様の表示装置においては、下位に配置された表示パネルまたは視野角制御パネルを透過した光を、偏光板による吸光を最小限に抑えた状態で、上位に位置する視野角制御パネルまたは表示パネルへ導くことができ、また、第4の態様の表示装置においては、透過表示時において、下位に配置された表示パネルを透過した光を、反射偏光板による吸光を最小限に抑えた状態で、上位に位置する視野角制御パネルへ導くことができる。よって、表示装置は明るく良好な視認性を得ることができる。
【0018】
そして、本発明の第6の実施の形態の表示装置は、前記第2乃至第5の態様の表示装置において、前記視野角制御パネルの液晶層と表示パネルの液晶層との間に光拡散層が配設されていることを特徴とする。
【0019】
本実施の態様によれば、光拡散層が両液晶間を透過する光を拡散するので、前記光路をぼかしてライン状の着色部が視認されにくくし、良好な表示画面の視認性を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、表示画面の主視野角方向である正面方向からの視認に対しては、表示画面に表示された情報を良好に視認可能とし、側面方向からの視認に対しては、表示画面の全領域において、表示された情報を視認困難あるいは視認不可とすることができ、パーソナルな情報を不特定者の視認から保護することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明に係る表示装置の一実施の形態における模式的断面図である。
【0022】
本実施形態の表示装置は、視野角制御パネル1、表示パネル2およびバックライトユニット3を備え、前記視野角制御パネル1は、前記表示パネル2の視認側に配設されている。また、前記表示パネル2の反視認側にはバックライトユニット3が配設されている。
【0023】
本実施形態においては、前記視野角制御パネル1として液晶表示素子11を用いる。
【0024】
前記液晶表示素子11には、主視野角方向においては前記表示パネル2に表示される所望の情報が視認され、主視野角以外の方向においてはダミー表示が視認されるように、外部からの電気信号により透過率および/または色が変化しうる部分が備えられている。
【0025】
すなわち、本実施形態において、前記視野角制御パネル1を構成する液晶表示素子11は、図2に示すように、間隔を隔ててほぼ平行に配置された2枚の透明基板12(以下、視認側に配置される透明基板12を第1透明基板12a、反視認側に配置された透明基板12を第2透明基板12bという)を有しており、第1透明基板12aおよび第2透明基板12bの内側表面には、それぞれ第1電極13a、第2電極13bが形成され、ダミー表示用のパターン(以下、ダミーパターンという)が形成されている。前記ダミーパターンとしては、例えば、連続して配列された任意の文字(意味のある繋がりとするならば文章)や、同じ模様を連続させて配列させたパターンなどを例示することができる。本実施形態においては、表示パネル2に表示される文字の大きさと略同等とされたひらがなの連続した文章がダミーパターンとして形成されている場合を例として、以下、説明する。
【0026】
また、前記第1電極13aおよび第2電極13bの上面には、それぞれ各電極間に印加される電圧に応じて液晶分子の配向を制御する第1配向膜14a、第2配向膜14bが形成されている。
【0027】
そして、前記第1透明基板12aと第2透明基板12bは、第1配向膜14aと第2配向膜14bを対向させて配置され、その間にセルギャップを一定の距離に保つためのスペーサ15を散布した状態で周囲をエポキシ樹脂等からなる周辺シール材16によってシールされている。更に、第1透明基板12a、第2透明基板12bおよび周辺シール材16によって囲繞され空間部には、液晶17が封入され、液晶層とされている。本実施形態において、前記液晶層の位相差値ΔnLC・dLCは0.3〜0.8μmの範囲内となるように調整されている。その理由については、後述する。
【0028】
なお、前記第1透明基板12aおよび第2透明基板12bとしては、それぞれ透光性の材料、例えばガラス、合成樹脂等を使用することができ、前記第1電極13aおよび第2電極13bとしては、透光性の導電膜、例えばITO等を使用することができる。前記第1配向膜14aおよび第2配向膜14bは、ポリイミドなどの高分子膜からなり、前記第1透明基板12および第2透明基板12の近傍の液晶を配向させるためにラビング処理が施され、配向異方性の膜として形成されている。そして、本実施形態においては、前記液晶層の液晶17は前記第1配向膜14a、第2配向膜14bの配向方向に沿って平行配向とされている。
【0029】
また、前記視野角制御パネル1の視認側および反視認側にはそれぞれ、光の振動方向を規制すべく、偏光軸(透過軸)を所定の方向に配置した第1偏光板4a、第2偏光板4bが配設されている。前記第1偏光板4a、第2偏光板4bは、偏光軸と吸収軸が直交する偏光板である。
【0030】
図3には、視野角制御パネル1の配向膜のラビング方向、および第1偏光板4a並びに第2偏光板4bの偏光軸方向について示す。この図に示すように、視野角制御パネル1の配向膜のラビングは、視角に対して平行な方向で、視野角制御パネル1の視認側および反視認側で逆方向になるように施されており、前記第1偏光板4a、第2偏光板4bは共に、それぞれの偏光軸が視角と平行、または視角と直交するように配置されている。なお、本文中に用いる「偏光軸」は、「透過軸」と同意である。
【0031】
また、本実施形態のように、視野角制御パネル1が表示パネル2の視認側に配設される場合、視野角制御パネル1の反視認側に配設される第2偏光板4bの軸角と表示パネル2の第1偏光板5aの軸角が一致していればどちらかの偏光板を省略することも可能である。この場合に、第2偏光板4bの配設を省略することにより、偏光板4の吸光に伴う輝度の低下を防止することや、表示装置の厚さを薄くすることができる。
【0032】
さらに、前記視野角制御パネル1は前記バックライトユニット3と表示パネル2との間に配設することも可能である。
【0033】
また、前記表示パネル2は、電極(図示せず)が形成された一対の透明基板22a、22b間に液晶層27が配設された、TN型、STN型、IPS型、VA型などの公知の液晶表示素子21を用いるものとする。なお、TN液晶以外については、視認側の偏光板5aと透明基板22aの間、および反視認側の偏光板5bと透明基板22bとの間に位相差板を配設することがあるが、本実施形態においては省略している。液晶表示素子21の構造については、前述の視野角制御パネル1として用いられる液晶表示素子11と電極13のパターン形状の点において相違するが、その他の構造については略同様であるので説明を省略する。
【0034】
そして、前記表示パネル2の視認側および反視認側にはそれぞれ、光の振動方向を規制すべく、偏光軸を所定の方向に配置した第1偏光板5a、第2偏光板5bが配設されている。
【0035】
前記バックライトユニット3は、蛍光管等の光源(図示せず)とこの光源の光を前記表示パネル2方向へ反射させるための導光板(図示せず)などを有する公知のものとし、説明を省略する。
【0036】
このように構成された本実施形態の表示装置においては、バックライトユニット3の光源を出射された光は表示パネル2の第2偏光板5bと表示パネル2を透過し、前記表示パネル2の第1偏光板5aおよび視野角制御パネル1の第2偏光板4bによって直線偏光とされ、そのまま視野角制御パネル1の液晶層へ入射する。
【0037】
そして、視野角制御パネル1の第1電極13aおよび第2電極13bに電圧が印加されていないとき、液晶層中の液晶分子はこの入射する直線偏光と同じ向きおよび直交する向きに配向されている。従って、入射した光は複屈折効果が生じることなく、そのまま液晶層を透過することとなる。
【0038】
そして、視野角制御パネル1の第1偏光板4aの偏光軸の方向は、視野角制御パネル1の液晶層を透過した直線偏光と同じ向きに配設されているので、入射した光はそのまま透過することとなる。
【0039】
また、視野角制御パネル1の第1電極13aおよび第2電極13bに電圧が印加されたとき、正の誘電率異方性を有する液晶分子は、第1透明基板12aと第2透明基板12bに垂直(電界と同じ向き)に配列方向を変化させる。このとき、入射した光は表示画面と垂直方向では複屈折効果が生じることなく、そのまま液晶層を透過するが、斜め方向では複屈折が生じて透過率や色が変化する。この透過率や色の違いがダミーパターンとなって見えることとなる。
【0040】
さらに、本実施形態の表示パネル2においては、表示パネル2に表示される文字の大きさと略同等とされたひらがなの連続した文章が前記視野角制御パネル1にダミーパターンとして形成されるため、前記視野角制御パネル1の第1電極13aおよび第2電極13bに電圧が印加されたとき、このダミーパターンが視野角制御パネル1に表示される。
【0041】
そして、このダミーパターンは、表示画面の全領域において、主視野角方向となる正面方向からは、視野角制御パネル1内に入射した光がそのまま液晶層を透過するため視認されることはないが、正面以外の斜め方向からは、視野角制御パネル1内に入射した光は複屈折が生じて透過率や色が変化するため、表示パネル2に表示される情報と重なって視認されることとなる。
【0042】
特に、本実施形態においては、前記ダミーパターンをひらがなが配列された文章としたことにより、表示パネル2に表示させる所望の情報が文字情報である場合には、特に、情報としての文字と、ダミーパターンの文字とが重なり合って表示されることにより、不特定者が情報としての文字を視認することも妨害することができる。
【0043】
ここで、液晶層の液晶17を平行配向とされた本実施形態の前記視野角制御パネル1における前記液晶層の位相差値ΔnLC・dLCと、前記第1電極13aおよび第2電極13bに印加される電圧値について説明する。
【0044】
図4は、液晶層の液晶17を平行配向とされた本実施形態の前記視野角制御パネル1における前記液晶層の位相差値ΔnLC・dLCを0.5μmとした場合における電圧変化(0V〜7V)と透過率の視野角依存性の実験結果を示している。また、図5は、前記液晶層の位相差値ΔnLC・dLCを1.0μmとした場合における電圧変化(0V〜7V)と透過率の視野角依存性の実験結果を示している。図4及び図5中、同心円とされ、20°間隔で0〜80°まで示された円状のラインは、液晶表示装置の表示面の法線からの傾き角(θ)を示しており、同図の中心点から放射線状に延在し、同図を12分割するラインは、表示装置の表示画面の3時方向を0°と仮定した場合における時計回りの角度(φ)を示している。ここで、透過率は視野角制御パネル1に表示されるダミーパターンの電圧印加部分の透過率である。この透過率が小さくなると電圧無印加部分とのコントラストが大きくなり、ダミーパターンを視認しやすくなる。すなわち、透過率が小さい領域は、表示パネル2の表示とダミーパターンが重なり合って表示されることにより、情報を不特定者の視認から保護することができる。また、図4及び図5中、実線で示されるラインは、透過率を0.2とするラインであり、本実施形態においては、0.2以上の透過率を得られる領域を「良好可視領域」とする。また、長破線で示されるラインは、透過率を0.1とするラインであり、本実施形態においては、0.1以上0.2以下の透過率を得られる領域を「可視領域」とし、0.1以下のコントラストを得られる領域を「不良可視領域」とする。さらに、2点鎖線で示されるラインは、透過率を0.05とするラインであり、本実施形態においては、0.05以下のコントラストの領域を「不可視領域」とする。
【0045】
なお、本実験に用いた前記視野角制御パネルの液晶は、大日本インキ化学工業社製のRDP−86030である。
【0046】
そして、前記液晶層の位相差値ΔnLC・dLCを0.5μmとした視野角制御パネル1は、図4に示すように、印加電圧を3.0〜4.0Vの範囲内とすることにより、透過率が0.2以上であって良好な表示を得られる良好可視領域を、表示画面に対する上下方向(12時・6時方向)においては法線からの傾き角θを0〜60°の範囲、左右方向(9時・3時方向)においては法線からの傾き角θを0〜30°の範囲に形成することができる。そして、透過率が0.1以下の不良可視領域を、表示画面に対する上下方向においては法線からの傾き角θを70°以上の範囲、左右方向においては法線からの傾き角θを40°以上の範囲に形成し、さらには、透過率が0.05以下の不可視領域を表示画面に対する左右方向において、法線からの傾き角θが50°以上の範囲に形成することが可能となることが分かった。
【0047】
携帯電話機などの表示画面を考えれば、該表示装置の使用者は表示画面の正面方向に位置し、不特定者は左右方向に位置する場合が多い。よって、図4に示す3.0〜4.0Vの電圧印加時のような視野角依存性を得ることができれば、正面方向からの視認に対しては、表示画面に表示された情報を良好に視認可能とし、正面以外の方向からの視認に対しては、前記不良可視領域または不可視領域においてダミーパターンを表示パネル2に表示される所望の情報と重ねることにより、前記情報を視認不良あるいは視認不可とすることができる。よって、プライベートな情報を不特定者の視認から保護することが可能となる。
【0048】
本試験の条件下においては、印加電圧を3.0Vよりも低くすると、良好可視領域は左右方向においても法線からの傾き角θを0〜55°とする範囲まで広がってしまい、不良可視領域は法線からの傾き角θを70°以上とする範囲となって、殆ど存在しないような状態となり、携帯電話等の表示画面を不特定者の視認から保護することが期待できるものとはならなかった。また、印加電圧を4.0Vよりも高くすると、良好可視領域も、特に上半分(9時〜3時方向)の領域において、法線からの傾き角θを0〜60°とする範囲まで広がってしまい、それに伴って、不良可視領域は、表示画面に対する左右方向において、法線からの傾き角θが70°以上の範囲に狭まるため、やはり、携帯電話等の表示画面を不特定者の視認から保護することが充分には期待できるものにはならなかった。
【0049】
さらに、液晶層の位相差値ΔnLC・dLCを1.0μmとした視野角制御パネル1には、図5に示すように、前述の液晶層の位相差値ΔnLC・dLCを0.5μmとした視野角制御パネル1と同様な効果を得られる印加電圧の適正範囲はなかった。
【0050】
すなわち、液晶層の位相差値ΔnLC・dLCを1.0μmとした視野角制御パネル1は、印加電圧を3.0Vよりも低くすると、良好可視領域が上下方向においては、法線からの傾き角θを0〜60°、左右方向においては法線からの傾き角θを0〜55°とする範囲までと広がってしまい、不良可視領域は、表示画面に対する上下左右方向において、法線からの傾き角θが70°以上の範囲に狭まってしまった。また、印加電圧を3.0Vとすると、良好可視領域は右上・左上方向(2時・10時方向)において、法線からの傾き角θを0〜30°とする範囲まで狭くなり、不良可視領域は法線からの傾き角θを40°以上とする範囲で広がってはいるものの、下半分(3時〜9時方向)の領域において、相変わらず、良好可視領域は法線からの傾き角θを0〜60°とする範囲であって広く、不良可視領域は法線からの傾き角θが70°以上の範囲であって狭いため、携帯電話等の表示画面を不特定者の視認から保護することができるものとはならなかった。さらに、印加電圧を4.0V以上とすると、良好可視領域が上下方向においては、法線からの傾き角θを0〜60°、左右方向においては法線からの傾き角θを0〜20°とする範囲に形成される。そして、表示画面に対する左右方向における法線からの傾き角θを30〜50°とする範囲には、不良可視領域あるいは不可視領域が形成されるが、法線からの傾き角θを50〜60°とする範囲に、再び、可視領域が形成されるといった特徴を有する視野角依存性を示すようになった。携帯電話機などの表示画面を視認する不特定者は、表示画面の左右方向に位置する場合が多いので、表示画面の左右方向において、表示画面を視認可能な範囲が不可視領域中に光抜け状に形成されてしまうことは好ましくない。
【0051】
また、液晶層の位相差値ΔnLC・dLCを0.3μm未満とした視野角制御パネル1は、表示領域が全体的にグレーがかった透過率が低いものとなり、良好な視認性が得られない。
【0052】
このような結果から、平行配向とされた液晶層の位相差値ΔnLC・dLCを0.3μm〜0.8μmとすることで、表示画面の上下方向においては良好可視領域が形成され、左右方向においてはダミーパターンを表示パネル2に表示される情報と重ねられた表示を行なう不良可視領域が形成され、該表示装置の使用者は良好な表示品位で情報を視認しつつ、プライベートな情報を不特定者の視認から保護することができる。
【0053】
なお、前記電極に印加する電圧は、液晶層を構成する液晶17の特性によっても異なる。しかしながら、本実施形態のように、前記液晶層の位相差値ΔnLC・dLCを0.3μm〜0.8μmとすることにより、適正な電圧を与えることで、必ず、本実施形態に示すような視野角制御を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態の表示装置においては、図6に示すように、前述の表示装置における下位に配置された表示パネル2と上位に配置された視野角制御パネル1との間に、前記表示パネル2の視認側に配置された第1偏光板5aの偏光軸の軸角から、視野角制御パネル1の反視認側に配置された第2偏光板4b偏光軸の軸角へ、光の偏光軸角を回転誘導する旋光素子6を配設してもよい。特定の視野角方向(斜め方向)に液晶の複屈折を生じさせて透過率や色を変化させる大きなファクタとして視野角制御パネル1の配向方向がある。例えば、図7に示すように、左右方向から不特定者に情報が見えるのを防止するためには、視野角制御パネル1の配向方向を視野角制御方向(左右方向)と直交するように配置する必要がある。しかし、下位に配置する表示パネル2は、光学仕様によって、視野角制御パネル1の第2偏光板4bの偏光軸の軸角と表示パネル2の第1偏光板5aの偏光軸の軸角とを一致させることができない場合がある。このような偏光板の偏光軸の軸角の不一致が生じると、バックライトから透過する光が減少し、表示の見栄えに悪影響を及ぼす。このような不具合を防止するために旋光素子6を配置することが好ましい。すなわち、旋光素子6を採用することで、視野角制御パネル1と表示パネル2の組み合わせの自由度が向上する、また、図7に示す本実施形態では、視野角制御パネル1の第1偏光板4a、第2偏光板4bの偏光軸の軸角と視野角制御パネル1の配向方向は一致しているが、第1偏光板4aおよび第2偏光板4bの偏光軸の軸角を配向方向と直交するように配置しても左右方向の視野角を制御することができる。前記旋光素子6としては、例えば、水晶、ピッチ調整により旋光能が可変なコレステリック液晶を用いたセル、位相差値(リタデーション)がλ/2の位相差板などを例示することができる。
【0055】
例えば、図7に示すように、上位に位置する平行配向モードの視野角制御パネル1の反視認側に配設された第2偏光板4bの偏光軸の軸角が3時方向から90°、下位に位置する表示パネル2の視認側に配設された第1偏光板5aの偏光軸の軸角は3時方向から135°とした場合、その間に、旋光素子6として、位相差値がλ/2の位相差板を3時方向から112.5°の角度で配設する。
【0056】
これにより、下位に位置する表示パネル2を透過した光を偏光板4、5による吸光を最小限に抑えた状態で上位に位置する視野角制御パネル1へ導くことができるので、表示装置は良好な視認性を得ることができる。なお、位相差値がλ/2の位相差板を2枚使用することにより、光の波長差を原因とする表示画面の着色も補正することが可能となる。また、視野角制御パネル1と表示パネル2の位置関係(上位・下位)が逆の場合も同様である。
【0057】
また、視野角制御パネル1が表示パネル2の視認側に配設される場合、視野角制御パネル1の反視認側に配設される第2偏光板4bとして、偏光軸と吸収軸とを直交させた通常の偏光板ではなく、偏光軸と反射軸とを直交させた反射偏光板4b’を用いることもできる。
【0058】
図8には、前述の図3に示した視野角制御パネル1における第2偏光板4bを前記反射偏光板4b’に置き換えた場合における視野角制御パネル1の配向膜のラビング方向、反射偏光板4’の偏光軸および反射軸の軸角方向を示す。前述のように、視野角制御パネル1における第2偏光板4bを前記反射偏光板4b’に置き換える場合においては、反射偏光板4b’をその偏光軸が前記第2偏光板4bの偏光軸と同じ方向となるようにして配置するようにする。つまり、本実施形態においては、図8に示すように、視野角制御パネル1の配向膜のラビングは、視角に対して平行な方向で、視野角制御パネル1の視認側および反視認側で逆方向になるように施されている。そして、前記第1偏光板4aおよび反射偏光板4b’は、それぞれの偏光軸が視角と平行となるように配置されている。このように配置することで、反射偏光板4b’の反射軸は視角と直交するように配置される。なお、前記第1偏光板4aおよび反射偏光板4b’をそれぞれの偏光軸が視角と直交するように配置し、反射偏光板4b’の反射軸を視角と平行に配置させてもよい。
【0059】
このような反射偏光板4’を有する表示装置においては、前記旋光素子6により、透過表示時においては、下位に配置された表示パネル2を透過した光を、反射偏光板4b’による吸光を最小限に抑えた状態で、上位に位置する視野角制御パネル1へ導くことができるので、明るく良好な視認性を得ることができる。また、外光を利用した反射表示時においては、前記反射偏光板4’の反射光を利用して不良可視領域を形成し、プライベートな情報を不特定者の視認から保護するとともに、特殊な表示効果(見栄え)を実現することができる。
【0060】
さらに、前記視野角制御パネル1の液晶層と表示パネル2の液晶層との間に表面が微細な凹凸により粗面化され光拡散層7を配設してもよい。
【0061】
また、図9に示すように、上位に位置する視野角制御パネル1の反視認側に配設された第2透明基板12bと第2偏光板4bとの間に光拡散層7を配設したり、図10に示すように、上位に位置する視野角制御パネル1の第2偏光板12bの直下に光拡散層7を配設することができる。
【0062】
これらの構成を備えた表示装置によれば、前記光拡散層7によって両液晶間を透過する光を拡散することができる。すなわち、表示パネル2としてストライプ状のカラーフィルタが形成された液晶表示素子を用い、さらに、図11に示すように、前記視野角制御パネルに形成されたダミーパターンに前記カラーフィルタのストライプと同方向に延びる直線パターン(図11においては「P」の文字のダミーパターンを示す)が形成されている場合、前記ダミーパターンの内外で光の屈折率が異なることを原因として、前記ダミーパターンのアウトライン部分にライン状の着色部(図11中、ハッチで示す)が視認されること(以下、パターン見えという)が懸念される。しかしながら、本実施形態のように光拡散層7を配設することで、両液晶間を透過する光を拡散し、前記光路を暈かすことで、ライン状の着色部を視認されにくくすることができる。
【0063】
例えば、図9に示す構成を有する本実施形態の表示装置においては、表1に示すように、パターン見えはヘイズ値が10または20のときに視認され、画像ぼけはヘイズ値が60、70、80のときに発生した。よって、前記光拡散層のヘイズ値を30〜50とすることにより、所望の情報の表示状態に画像ぼけが発生せず、しかも、パターン見えが発生しないようにすることができる。
【0064】
【表1】

【0065】
また、図10に示す構成を有する本実施形態の表示装置においては、表2に示すように、パターン見えはヘイズ値が10または20のときに視認され、画像ぼけはヘイズ値が80のときに発生した。よって、前記光拡散層のヘイズ値を30〜70とすることにより、所望の情報の表示状態に画像ぼけが発生せず、しかも、パターン見えが発生しないようにすることができる。
【0066】
【表2】

【0067】
さらに、図3に示す反射偏光板4’を有する表示装置において、前記視野角制御パネル1の液晶層と前記反射偏光板4’との間に光拡散層7を配設する場合には、白っぽい拡散反射の表示を得ることができる。
【0068】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、旋光素子6の視野角制御パネル1と表示パネル2との間に配置した態様において、旋光素子6の両側に偏光板4b、5aを2枚配置したが、偏光板4b、5aのどちらか一方を省略してもよい。偏光板4b、5aの配設を省略することにより、偏光板4b、5aの吸光に伴う透過率の低下を防止することができるとともに、表示装置の厚みを薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態の表示装置の模式的断面図
【図2】本発明の実施形態の表示装置における視野角制御パネルの模式的断面図
【図3】本発明の実施形態の表示装置における視野角制御パネルの配向膜のラビング方向、および第1偏光板並びに第2偏光板の偏光軸方向を示す説明図
【図4】本発明の実施形態の表示装置における視野角制御パネルの液晶層の位相差値ΔnLC・dLCを0.5μmとした場合における電圧変化(0V〜7V)とコントラストの視野角依存性の実験結果を示す説明図
【図5】本発明の実施形態の表示装置における視野角制御パネルの液晶層の位相差値ΔnLC・dLCを1.0μmとした場合における電圧変化(0V〜7V)とコントラストの視野角依存性の実験結果を示す説明図
【図6】本発明の実施形態の表示装置において、旋光素子を配設した場合を示す模式的断面図
【図7】本発明の実施形態の表示装置における旋光素子の配設例を示す説明図
【図8】本発明の実施形態の表示装置において、図3の第2偏光板を反射偏光板に置き換えた場合の偏光軸および反射軸の軸角方向を示す説明図
【図9】本発明の実施形態の表示装置において、光拡散層を配設した場合を示す模式的断面図
【図10】本発明の実施形態の表示装置において、光拡散層を配設した他の場合を示す模式的断面図
【図11】パターン見えの具体例を示す説明図
【符号の説明】
【0070】
1 視野角制御パネル
2 表示パネル
3 バックライトユニット
4 (視野角制御パネルの)偏光板
4a 第1偏光板
4b 第2偏光板
4b’反射偏光板
5 (表示パネルの)偏光板
6 旋光素子
7 光拡散層
11 液晶表示素子
12 (視野角制御パネルの)透明基板
13 電極
14 配向膜
15 スペーサ
16 周辺シール材
17 液晶
22 (視野角制御パネルの)透明基板
27 (視野角制御パネルの)液晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の情報が表示される表示パネルと、前記表示パネルに積層して配置された視野角制御パネルとを備えてなる表示装置において、
前記視野角制御パネルは電極が形成された一対の基板間に液晶層が配設された液晶表示素子であって、前記液晶層の液晶は平行配向であり、位相差値ΔnLC・dLCが0.3〜0.8μmであることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記表示パネルは電極が形成された一対の透明基板間に液晶層が配設された液晶表示素子である請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記視野角制御パネルおよび表示パネルはそれぞれ視認側および反視認側に偏光板を有している請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記視野角制御パネルは前記表示パネルの上位に配置され、視認側に偏光板、反視認側に反射偏光板をそれぞれ有しており、前記表示パネルは視認側および反視認側に偏光板をそれぞれ有している請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記表示パネルと前記視野角制御パネルとの間には、光の偏光軸角を所定角度だけ回転誘導する旋光素子が配設されている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記視野角制御パネルの液晶層と表示パネルの液晶層との間には光拡散層が配設されている請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−148278(P2007−148278A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346063(P2005−346063)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】