説明

表示装置

【課題】明暗むらが認識され難く、従って表示品位が高く、低コストで実現できる表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】導光板10上に各領域で表面粗さが互いに異なるグラデーションブラストパターン100を形成し、表示板20上に図柄110を形成する。そして、グラデーションブラストパターン100の表面粗さが互いに異なる各領域の境界K1に発生する暗線120と、図柄110上のより高いコントラストの境界K2との位置を合わせる。これにより、人間の目は最もコントラストが高いものを最初に認識するという特性(ウェーバー・フェヒナーの法則)をもっているため、観察者は、図柄110を最初に認識し、暗線120はその高いコントラストの認識に埋没してしまうために非常に認識し難くなる。このため、暗線120の存在に基づく表示品位の低下を抑制するという効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、面状光源を用いた表示装置に係り、特に、面状に発光させる手段としてその側面から光を導入する導光板を用いた誘導灯や看板、更には、いわゆるサイドライトタイプの液晶表示装置等の表示装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や誘導灯、看板等の表示装置では、表示対象である図柄を表示した表示板の背面側に面状光源装置を設けて、当該図柄の視認性を向上している。
このような表示装置においては、装置の小型化・薄型化といった要求に応えるべく、光源を表示板の外側に配置し、表示板の背面側に設置した導光板の側面から光を導入して面状に発光させる方式の面状光源装置が多く採用されている。この種の導光板には、その表示板と対向する面と反対側の面に、シボと称される突起が所定の密度や形状、大きさで形成され、導光板から出射する光の方向や広がり、輝度の分布等を調整する加工面を有している。更に、この導光板の背面側に反射シートを配するというものである。
【0003】
シボのパターンは、前述のように面状光源装置が所望の配光分布や輝度分布が得られるように設計される。ここで、シボとしては、例えば、一定圧力のブラスト圧でショットブラスト材を導光板成形金型表面に帯状に投射して表面粗さを調整し、このパターンを成形時に導光板に転写する加工方法によって得られたパターン(以下、ブラストパターンと称する)が選定される。この場合、側面から導入された光は次第に減衰するため、導光板全面を均一な表面粗さに加工すると輝度分布を均一にすることが困難となる。そのため、表面粗さを導光板の光入射主面からの距離に応じて変化させる、いわゆるグラデーションブラストパターンを用いることが多い。グラデーションブラストパターンを用いた場合には、表面粗さが変化する部分に明暗むらが生じることが問題となっており、この対策として隣り合う領域の表面粗さの差を極力小さくする加工方法が開示されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−122742号公報
【特許文献2】特開2003−39487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の特許文献においては、表面粗さが異なる複数の領域に分割してシボ加工を施す場合に、シボを形成する際の圧力変化量の差を所定の値以下とするなどの方法によって、グラデーションブラストパターンの隣り合う領域の表面粗さの差を微小とし、表面粗さが変化する部分に生じる明暗むらのコントラストを低減する方法が開示されている。
しかしながら、これら特許文献に記載されているようなグラデーションブラストパターンは、厳密に表面粗さを調整できる大がかりな装置によらなければ加工することができないため、従来用いられているショットブラスト加工機では実現が困難である。更に、導光板の光入射主面から入射した光を効率良く表示板側に出射するためには、導光板の光入射主面と略対向する側面(反光入射主面と称する)の近傍では表面粗さをできる限り大きくする、つまり、光入射主面近傍と反光入射主面近傍とで表面粗さの差をできる限り大きくすることが望ましい。この場合、グラデーションブラストパターンの隣り合う領域の表面粗さの差を微小とすると非常に多数の領域に分割しなければならない。
【0006】
従って、ショットブラスト材を投射するノズル径を一定以上小さくできないこととの兼ね合いで、反光入射主面近傍の表面粗さを所望の値に加工できないという問題があった。このため、面状光源装置の表示品位を高める、特に明暗むらなどの表示面の均整度を著しく損なう要因を抑制する必要がある場合には、前述のようなグラデーションブラストパターンの加工技術によって明暗むらのコントラストを低減する方法では、光入射主面から入射した光を効率良く表示板側に出射することが困難であった。
【0007】
また、グラデーションブラストパターンの隣り合う領域の表面粗さの差を微小としても、一般に導光板と表示板との間に配置される光学シートなどの光学材料の、光を拡散する機能が十分でなければ表面粗さが変化する部分に生じる明暗むらが認識されるため、これら光学材料には高価な素材を用いる必要があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、明暗むらが認識され難く、従って表示品位が高く、低コストで実現できる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る表示装置は、表面および裏面の少なくとも一方に、面上の領域によって表面粗さを互いに異ならせる表面粗し加工がなされた導光板、この導光板にその側面から光を導入する光源、および上記導光板と平行に配置され表示対象である図柄が表示された表示板を備え、上記導光板内を経て上記表面粗し加工部分の光の散乱作用によって出射し上記表示板を経た光の像から上記図柄を観察者に視認させるようにした表示装置において、
上記導光板面上の表面粗さが互いに異なる第1の境界で明暗により発生する第1のコントラストに対し、上記表示板面上の上記第1の境界またはその近傍に相当する位置で第2のコントラストが発生するよう、上記表示板上に表示する図柄に上記第2のコントラストを発生させる第2の境界を形成する。そして、上記第2のコントラストのコントラスト強度を上記第1のコントラストのコントラスト強度より高いものとする。
【発明の効果】
【0010】
導光板面上の表面粗さが変化する第1の境界で明暗むら(第1のコントラスト)が発生しても、表示板の図柄には該境界またはその近傍に相当する位置に該明暗むらよりコントラスト強度が高い第2の境界が形成されているので、観察者からの認識では、上記第1の境界に発生する第1のコントラストが上記第2の境界で発生する第2のコントラクトとのコントラスト差で埋没して視認されなくなる。この結果、表示品位が高く、低コストで実現できる表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
本発明に係る面状光源装置の一実施形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明に係る表示装置の分解斜視図である。また、図2は、本実施の形態1の表示装置を構成する導光板10に形成されたグラデーションブラストパターン100を示したものであり、図3は、本実施の形態1の表示装置を構成する表示板20に印刷された図柄110を示すものである。なお、ブラスト加工面に形成された微小な凹凸、光源に電力を供給するための配線・電源、各構成部材を組み付けるための保持構造やねじ等は図示を省略している。
【0012】
図1に示したように、表示装置は、導光板10、表示板20、拡散シート30、反射シート40、LED50、LED実装基板60、光源ホルダ70および筐体80を備えている。
【0013】
ここで、導光板10としては、メタクリル樹脂(PMMA)を用い射出成形法によって作製した略直方体、厳密には後述するように、図中左端から右端にかけて厚さを次第に低減したテーパ状の形状をしたものを用いている。導光板10は、面状光源として光を放射する側、つまり導光板出射面側(図1では上面)に第一の主面11を、第一の主面11を表面とするとその裏面となる面(図1では下面)に第二の主面12を、第一の主面11と第二の主面12に略直交し光源50と対向する側面に光入射主面13を、そして、光入射主面13の反対側の反光入射面14を有している。第二の主面12には、第一の主面11から効率良く光を出射するために面粗し処理として、ブラスト加工によるグラデーションブラストパターン100(図2)を施している。
【0014】
また、導光板10は、200mm×205mmの略正方形としており、光入射主面13は幅200mmで厚さ4mm、反光入射主面14は光入射主面13と同様の幅で厚さ1.2mmとしている。そして、第一の主面11および第二の主面12が角度0.7°のテーパを形成しており、光入射主面13の側から反光入射側14に向かって厚さが減少する形状としている。ここで、本実施の形態1では、導光板10に施されたグラデーションブラストパターン100は、射出成形用の金型にノズル径5mmのショットブラスト装置を用いて施したブラスト加工の凹凸を成形転写したものである。
なお、ここでは、導光板10への表面粗し加工をその第二の主面12のみに施しているが、第一の主面11のみ、または、両者11、12に施すようにしてもよい。
【0015】
光源であるLED50は、LED実装基板60上に実装され、導光板10の光入射主面13と対向するように設置されている。本実施の形態1では、LED50として、日亜化学工業株式会社製の表面実装型白色LED「NFSW036C」を用い、光入射主面13の長手方向に沿って4個並べて実装している。また、LED実装基板60には、LED50に駆動電力を供給するための配線(図示せず)を接続するためのコネクタ(図示せず)が光入射主面13の外側に配置されている。光源ホルダ70は、アルミニウムの押出成形によって作製した略コの字型の形状をしたものを用いた。光源ホルダ70は、その内面側の一方の面、光入射主面13と対向する面にLED実装基板60を配置している。
【0016】
図2に示すグラデーションブラストパターン100は、表面粗さRaが互いに異なる7つの領域に分割されており、各領域101乃至107は、下表1のような寸法、表面粗さRaに設定されている。なお、図2に破線で示すK1は、表面粗さが互いに異なる第1の境界を示し、この第1の境界が明暗むらの境界線となることから、以下、適宜、暗線とも称する。
【0017】
【表1】

【0018】
また、表示板20は、基材として透明アクリル板を用いており、図3に示すように導光板10と対向する面と反対側の面にスクリーン印刷法を用いて黒色のインキ(顔料)を用いて透過率50%の長方形の図柄110が印刷されており、その他の部分は透過率90%の塗膜が形成されている。ここで、図柄110は、180×40mmの長方形であり、光入射主面13と平行に、光入射主面13からの距離が80mmから120mmの領域に幅180mmのパターンとして印刷されている。つまり、表示板20に印刷された図柄110は、前述のようにグラデーションブラストパターン100の表面粗さの互いに異なる領域101と領域102との第1の境界K1および領域102と領域103との第1の境界K1を、図柄110の切り替え点、即ち、インキの付着の有無の第2の境界K2とその位置を一致させている。
【0019】
次に、導入した光の動きについて説明する。LED50から発した光は、光入射主面13から導光板10に入射し、導光板10内を第一の主面11および第二の主面12で全反射しつつ導光され、その間、第二の主面12に形成されたブラスト加工面に点在する凹凸によって、その表面粗さに応じた乱反射成分を生じ、第一の主面11から出射される。つまり、表面粗さが大きければ導光モードにある光の内、より多くの光を第一の主面11から出射することとなる。従って、一般にグラデーションブラストパターン100は、上記表1に示したように、導光モードにある光量が大きい領域、つまり光入射主面13に近い領域では表面粗さを小さくし、光入射主面13からの距離が大きくなるにしたがって表面粗さを大きくするように設計される。
伝搬する光が反光入射主面14から出射すると筐体80内面でその一部が吸収されて光のロスが生じてしまうため、反光入射主面14から出射する光を極力減少させる必要がある。このため、特に、反光入射主面14近傍では、表面粗さは最も大きな値に設定される。
【0020】
本実施の形態1における構成によって、導光板10の第一の主面11から出射された光の強度と光入射主面13からの距離との関係を図4に示す。ここで、図4では、表面粗さの互いに異なる隣り合う領域での光の出射強度の差をより分かりやすく示すために、図1の構成から拡散シート30および表示板20を除いた構成で光の出射強度を示している。
【0021】
図4から分かるように、グラデーションブラストパターン100の互いに異なる表面粗さを有する隣り合う領域の境界(第1の境界)では、最大で20%程度の輝度差(第1のコントラスト)が生じる。拡散シート30を導光板10の第一の主面11側に配置すると、拡散シート30の作用によって生じる光が拡散される効果で輝度差のコントラストは緩和されるが、完全に認識できないレベルまで輝度差のコントラストを低減することはできず、最大で10%程度の輝度差が残った。この結果、領域101乃至107の各領域の境界において、暗線が確認された。
【0022】
一方、表示板20に印刷された図柄110とその他の領域では約1.8倍という非常に高い輝度差の第2のコントラストがある。前述のグラデーションブラストパターン100に起因する暗線のうち、領域101と領域102との境界、および領域102と領域103との境界については、図柄110によって生じる輝度差の境界と位置がほぼ一致している。
【0023】
このような構成によれば、よりコントラストの高い図柄110のエッジ部分(第2の境界)とグラデーションブラストパターン100の領域101と領域102との境界、および領域102と領域103との境界が一致しているため、前述の領域101と領域102との境界、および領域102と領域103との境界において認識された暗線は、図柄110のエッジ部分で確認される明暗のコントラストに埋没し、認識ができなくなるという作用を生じる。更に、図柄110は、導光板10の幅よりも狭い幅に設定されているため、第一の主面11の光入射主面13と直交する方向の縁部分では前記暗線が確認されるはずであるが、より高い明暗のコントラストを示す図柄110のエッジ部がより強い印象を観察者に与えるため、暗線は確認できない。従って、導光板10上の第1の境界と図柄110上の第2の境界との位置が完全に一致していなくても、近傍にあれば、同様の効果を奏することが期待できる。
【0024】
図5は、この効果を簡単に示したものである。なお、破線で示す暗線120は、前述の領域101と領域102との境界、および領域102と領域103との境界に生じるもののみを示し、その他のものは省略している。図5に示される暗線120は、図柄110の有無に拘わらず、左右の図で等しい明暗コントラストで示している。ところが、人間の目は最もコントラストが高いものを最初に認識するという特性(ウェーバー・フェヒナーの法則)をもっているため、左の図では図柄110を最初に認識し、暗線120はその高いコントラストの認識に埋没してしまうために非常に認識し難くなる。
つまり、グラデーションブラストパターン100の表面粗さが互いに異なる各領域の境界K1に発生する暗線は、図柄110上のより高いコントラストの境界K2と位置を合わせることで、観察者に認識され難くすることができ、そのために表示品位の低下を抑制するという効果を得ることができる。
【0025】
また、暗線が発生しないレベルにまで表面粗さの差を小さくする必要がないために、表面粗さを厳密に調整するための大がかりな装置を必要としない。従って、生産設備の小型化と生産工程の簡便化、省エネルギ、長寿命化が実現する。更に、グラデーションブラストパターン100の隣り合う領域の表面粗さの差を微小とした場合には反光入射主面14近傍の表面粗さを大きな値とすることができないという問題を回避でき、簡便・安価に表示品位が高く、かつ導光板10に入射した光の出射効率が高い表示装置を提供することができる。
【0026】
なお、図5では、導光板10上のグラデーションブラストパターン100の領域101と領域102との境界、および領域102と領域103との境界のみに着目して説明したが、他の領域間の第1の境界に対しても、全く同様の要領により、各第1の境界に対応して表示板20上の図柄110に各第2の境界を形成する必要がある。
【0027】
また、以上で説明した内容は、この発明の実施の形態1として示した一例であり、本発明の適用上これらの内容に限定されるものではない。例えば、導光板10の材料として、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィン(COP)樹脂などの透明樹脂を用いることができる。また、光源50も、LEDに限らず、配向分布・光出力・発光色等が所望の特性を満たすものを選定すれば他の種類の光源を採用することが出来る。
また、拡散シート30は必要に応じて設ければよいが、光の配向分布を整える作用を有したプリズムシートに置き換える、また、この種プリズムシートを追加してもよい。更には、拡散シートを複数枚用いることもできる。プリズムシートや拡散シートを追加した場合には、前述の暗線の明暗コントラストを弱める効果が期待できるために、グラデーションブラストパターン100の表面粗さの境界と合わせる図柄110の境界のコントラストがより低くても前述の効果を得ることができる。
【0028】
また、プリズムシートや拡散シートによって光が拡散され、グラデーションブラストパターン100の表面粗さの境界に生じる暗線のエッジをぼやけさせる効果があるため、グラデーションブラストパターン100の表面粗さの境界と表示板20に示される図柄110の境界の位置がある程度ずれても(本実施の形態1の例では、拡散シート1枚ではおよそ5mm以下としなければならなかった位置ずれをおよそ15mmの位置ずれがあっても)上記の効果を得ることができる。
【0029】
実施の形態2.
以下、表示装置を誘導灯として使用するこの発明の実施の形態2について、図6乃至9を用いて説明する。図6は、本実施の形態2に係るグラデーションブラストパターン100の表面粗さと光入射主面13からの距離との関係を表した図である。図7(a)乃至(h)は、各種の誘導灯図柄21を示したものである。図8は、本実施の形態2に係る誘導灯装置の表示ユニット91を示した分解斜視図である。図9は、誘導灯装置90を示す斜視図である。
【0030】
誘導灯装置90は、表示ユニット91と、電源・電池・配線等を内包した本体ユニット92から構成されている。表示ユニット91は、誘導灯図柄21を緑色の透過性インクで印刷した透明なPMMA樹脂を射出成形法によって成形して得られた表示板20と、導光板10の第二の主面12に対向する面の光反射率が70%以上になるように調整された樹脂材料で成形された筐体80と、平滑面である第一の主面11、図6に示すグラデーションブラストパターン100が加工された第二の主面12および光入射主面13を有する導光板10と、LED50が実装されたLED実装基板60を配置した光源ホルダ70とから構成されている。
【0031】
光源ホルダ70は、アルミニウムの押出成形によって製作される。LED実装基板60は、LED50から発生する熱を光源ホルダ70に効率良く伝えるための熱伝導シート(図示せず)を介して、光源ホルダ70にネジ留めされている。光源ホルダ70の内面は、導光板10に入射しなかった光、および導光板10から出射してしまう光を再利用するため、反射率が高く、また反射率の波長依存性が小さい処理を施すのが好ましい。本実施の形態2では、光源ホルダ70の内面は、白色塗装による表面処理を施して反射率を75%としている。
なお、本実施の形態2については、ショットブラスト材の投射ノズルの径を2mmとし、導光板10の射出成形金型の一面にグラデーションブラスト加工を施し、これを成形転写することで導光板10の第二の主面12にグラデーションブラストパターン100を成形転写している。
【0032】
ところで、図6に示すグラデーションブラストパターン100は、導光板10からの出射光を一層効率的・均等に得るため、先の実施の形態1のパターン(図2、表1)に比較して、光入射主面13に近い前半部分の表面粗さを小さく、反光入射主面14に近い後半部分の表面粗さを大きくする傾向を一層進めたものである。そのため、特に、後半の、光入射主面13からの距離が125mm程度以降の部分では、表面粗さが互いに異なる境界の数が非常に多くなっており、これら多数の境界で発生する明暗によるコントラストが問題となる。即ち、導光板10上のこれら多数の境界(第1の境界)のそれぞれの位置に合わせて表示板20の図柄に多数の境界(第2の境界)を形成するとなると、図柄の製作デザインの自由度を大きく拘束することになる。
【0033】
しかるに、光の干渉の性質から、下式の条件を満たす場合は、表面粗さが互いに異なる境界であっても、観察者は当該境界にほとんど明暗むら(暗線)を認識しない。
【0034】
D>L1/2で、かつD>L2/2
但し、
L1:当該境界とその一側に隣接する境界との距離
L2:当該境界とその他側に隣接する境界との距離
D:導光板10の表面粗し加工面から表示板20の図柄表示面までの上記光の出射方向距離
【0035】
Dの具体例としては、3〜5mm程度である。また、L1、L2は、図6で示すように、例えば、光入射主面13からの距離が約85mmの位置にある1番目の境界K1−1では、
L1≒85mm L2≒40mm
となり、上式を満足せず、従って、この境界K1−1は、明暗むらとして認識される。
同様に、2番目の境界K1−2も上式を満足せず明暗むらとして認識される。
しかし、3番目の境界K1−3以降の境界では、L1=L2≒2mm程度であり、いずれも上式を満足し、観察者はそれらの境界には明暗むらをほとんど認識しないと言える。
【0036】
従って、図6に示すグラデーションブラストパターン100の場合には、表示板20上に形成する誘導灯図柄21で考慮が必要となる境界は、図6ではその左右方向のほぼ中央に位置する2箇所の境界(K1−1、K1−2)のみで済むわけである。
【0037】
以上の検討結果から、誘導灯図柄21は、図7(a)乃至(h)に示されるように、いずれもそのほぼ中央(図7では上下方向の中央)にその他の部分とは輝度・色度が共に異なる(輝度および色度のいずれかが異なるものでもよい)図柄を示すため、誘導灯図柄21と同じ位置またはその近傍でパターンが変化するように予め設定されたグラデーションブラストパターン100の表面粗さが異なる領域の境界(図6のK1−1、K1−2が相当)に生じる暗線は、明暗・色彩ともに高いコントラストを示す誘導灯図柄21のエッジのコントラストに埋没して認識され難くなる。
従って、導光板10の第一の主面11から出射する光では最大で10%の輝度差のコントラストが確認されるにも拘わらず、前記暗線のために表示品位が低下することはない。更に、先の実施の形態1の例と比較すると、誘導灯図柄21の領域のみ顔料を含んだ塗膜が形成されているためにグラデーションブラストパターン100の表面粗さが異なる領域の境界は、より高いコントラストに埋没されて認識し難くなる作用に加えて、塗膜に含まれる顔料粒子の表面で光が拡散される作用も生じることから、最もコントラストが高く、強く認識される誘導灯図柄21の領域においては、特に認識し難くなるため、表示品位の低下を抑制する効果が一層大きくなる。
【0038】
以上のように、暗線が発生しないレベルまで表面粗さの差を小さくする必要がないために表面粗さを厳密に調整するための大がかりな装置を必要とせず、更にグラデーションブラストパターンの隣り合う領域の表面粗さの差を微小とした場合には反光入射主面近傍の表面粗さを大きな値とすることが困難であったという問題を回避でき、簡便・安価に表示品位が高く、かつ導光板に入射した光の出射効率が高い表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施の形態1における表示装置を説明する分解斜視図である。
【図2】図1の導光板10に形成されたグラデーションブラストパターン100を説明する平面図である。
【図3】図1の表示板20に印刷された図柄110を説明する平面図である。
【図4】導光板10の光入射主面13からの距離と光出射強度との関係を示す図である。
【図5】各部のコントラストに基づき、この発明の実施の形態1による効果を説明する図である。
【図6】この発明の実施の形態2の導光板10に形成されたグラデーションブラストパターン100の表面粗さと光入射主面13からの距離との関係を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態2の表示装置における誘導灯図柄21を説明する図である。
【図8】この発明の実施の形態2の誘導灯装置90における表示ユニット91を説明する分解斜視図である。
【図9】この発明の実施の形態2の誘導灯装置90を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
10 導光板、11 第一の主面、12 第二の主面、13 光入射主面、
14 反光入射主面、20 表示板、21 誘導灯図柄、30 拡散シート、
40 反射シート、50 LED、60 LED実装基板、70 光源ホルダ、
80 筐体、90 誘導灯装置、91 表示ユニット、92 本体ユニット、
100 グラデーションブラストパターン、110 図柄、120 暗線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面および裏面の少なくとも一方に、面上の領域によって表面粗さを互いに異ならせる表面粗し加工がなされた導光板、この導光板にその側面から光を導入する光源、および上記導光板と平行に配置され表示対象である図柄が表示された表示板を備え、
上記導光板内を経て上記表面粗し加工部分の光の散乱作用によって出射し上記表示板を経た光の像から上記図柄を観察者に視認させるようにした表示装置において、
上記導光板面上の表面粗さが互いに異なる第1の境界で発生する明暗による第1のコントラストよりコントラスト強度が高い第2のコントラストが、上記表示板面上の上記第1の境界またはその近傍に相当する位置で発生するよう、上記表示板上に表示する図柄に上記第2のコントラストを発生させる第2の境界を形成したことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
上記導光板への表面粗し加工は、上記導光板の上記光を導入する側面からの距離が増大するにつれてその表面粗さが増大するものであることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
上記導光板面上の表面粗さが互いに異なる境界であっても、下記条件を満足するものは、上記第1の境界に含めないようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
D>L1/2で、かつD>L2/2
但し、
L1:当該境界とその一側に隣接する境界との距離
L2:当該境界とその他側に隣接する境界との距離
D:上記導光板の表面粗し加工面から上記表示板の図柄表示面までの上記光の出射方向距離
【請求項4】
上記導光板と上記表示板との間に、内部を透過する光を拡散させる拡散シートを配置したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
上記表示板の図柄に形成する第2の境界は、色度および輝度の少なくともいずれか一方が変化する境界であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
上記図柄は、透光性の表示板に顔料を付着させて形成されたものであり、上記表示板の図柄に形成する第2の境界は、上記顔料の付着の有無の境界であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
上記図柄を上記観察者を目的の場所に誘導するものとした誘導灯として使用することを特徴とする請求項6記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−258317(P2009−258317A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106303(P2008−106303)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(390014546)三菱電機照明株式会社 (585)
【Fターム(参考)】