説明

表示装置

【課題】車両の運転者などは昼間や夜間の車両照明時等において違和感を覚えることなく通常の表示装置として標識を認識し、照明のない夜間や停電時などの暗所においても容易に標識を視認できる、表示装置を提供する。
【解決手段】光源から放射された入射光を蓄積する蓄光部2と、標識を表示する標識部3と、入射光を反射し反射光として蓄光部2へ入射させる反射部4と、からなり、入射光と反射光とを同時に蓄光部2に入射し蓄光として蓄光部2に蓄積し、入射光が停止されると蓄光部2に蓄積された蓄光を放射して標識部3の標識を表示することを特徴とする表示装置1で構成されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路の規制標識、表示標識、警戒標識、指示標識などの道路標識、災害時の誘導標識や津波標識などの注意喚起標識、河川の水位標識、工事標識などに使用される表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、特許文献1に示されるような、背景用反射シート上に道路標識等を表示するための表示用反射シートを貼付しこれらに照明を当てると道路標識等が識別出来、更に背景用反射シート上に照明された光を蓄積して蓄光とする蓄光材含有樹脂体を配置固定することにより、照明が当てられなくなっても蓄光により道路標識等が識別出来るような表示装置が提案されている。 図3は、従来の表示装置を説明するための断面図である。
以下従来例について、図3に基づいて詳細に説明する。
【0003】
図3において、従来の表示装置101は、アルミ製の面状の基材102と、その基材102の全面にわたって貼付される白色の背景用反射シート103と、背景用反射シート103面上に一部が露呈するように貼付される所定色の表示用反射シート104と、背景用反射シート103面上に表示用反射シート104が貼られずに露呈する部分上の全面にわたって配置固定される蓄光材含有樹脂体105とから構成される。
【0004】
背景用反射シート103、表示用反射シート104としては汎用される再帰反射機能を持つものが用いられ、例えば、ガラスビーズなどの微小球レンズと金属膜光反射層からなるレンズ型再帰反射要素、相対する面が互いに略90度の角度で向かい合うように配置されているキューブコーナー型再帰反射要素などが用いられる。
【0005】
次に、表示装置101の使用状態を説明する。昼間においては外光が当たることで表示装置101は白色の背景用反射シート103よりなる背景上に表示用反射シート104よりなる所定色の表示模様の標識を呈する。その際、背景用反射シート103上には多数の蓄光材含有樹脂体105がドット状に存在するが、それらは透明性を有するので光を透過させ、さらに、それらがドット状に多数の不連続形態として配置されていることで背景用反射シート103からの反射光は前方を中心にして四方に拡散される。
【0006】
夜間において、表示装置101が近傍の車両、照明具等の照明光により照らされる場合は、上記の昼間とほぼ同様にして白色の背景用反射シート103よりなる背景上に表示用反射シート104よりなる所定色の標識を呈する。これに対し、夜間停電時など暗い所では背景用反射シート103、表示用反射シート104の反射光はともに無くなるが、ドット状に配置固定された蓄光材含有樹脂体105部分から放射される蓄光により背景用反射シート103のエリアは全体が発光する状態となり、表示用反射シート104が照明されて標識が相対的に所定色あるいは黒抜き模様として表示される。
【特許文献1】特開2008−165203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の提案のように、背景用反射シートの反射性を有する反射面にドット状に配置固定された蓄光材含有樹脂体は、光が当たっているときは反射光を散乱させて表示用反射シートの標識周辺を不鮮明なものとし、光が当たっていないときは蓄光を放射して表示用反射シートを照明するが背景用反射シート上にドット状に配置固定されているため蓄光材含有樹脂体の占める割合は背景用反射シートの面積に比較し半分以下となり蓄積される蓄光量は少ないので表示用反射シートの標識を十分に照明するにはいたらず、このため光の照射のない夜間等において標識は暗く視認が容易でない、などの問題点がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みて行ったものであり、昼間においては光の当たる通常の表示装置として標識周辺は鮮明に認識され、また、夜間の光源がある場合においても昼間と同様に光の当たる通常の表示装置として鮮明に認識され、さらに、照明のない夜間暗所や停電時などにおいても蓄積される蓄光量が多く得られるので標識の視認が容易になされて案内機能が確実に発揮される表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、太陽、自動車の照明ランプ等の光源から放射された入射光を蓄積する蓄光部2と、記号や文字等の標識を表示する標識部3と、入射光を反射し反射光として蓄光部2へ入射させる反射部4と、から構成され、入射光と反射光とを同時に蓄光部2に入射し蓄光として蓄光部2に蓄積し、入射光が停止されると蓄光部2に蓄積された蓄光を放射して標識部3の記号や文字等の標識を表示する表示装置1を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、車両の運転者などは昼間や夜間の車両照明時等においては違和感を覚えることなく通常の表示装置として標識を認識し、照明のない夜間や停電時などの暗所においても容易に標識を視認できる、表示装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態について、以下図1、図2に基づいて詳細に説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の表示装置1を示す図であり、(1)は側面図、(2)は正面図を示す。
図2は、図1(2)のA−A断面を示す図であり、(1)は入射光による動作を説明するための図であり、(2)は入射光が消滅した場合の動作を説明するための図である。
【0013】
図1(1)、図1(2)に示されるように本発明の実施形態においては、光源から放射される光を受光して蓄光し、光源から放射される光が消滅すると蓄光された光を放出して標識を表示する表示装置1は、太陽、自動車の照明ランプ等の光源から放射された入射光を蓄積する蓄光部2と、記号や文字等の標識を表示する標識部3と、入射光を反射し反射光として蓄光部2へ入射させる反射部4と、反射部4に固定され蓄光部2と標識部3とを保持する保持5と、から構成されるものである。
【実施例】
【0014】
次に詳細に実施例を図1、図2を用いて説明すると、
表示部1においては、蓄光部2はプラスチックやガラスからなる透明部材21に光を照射すると蓄光として蓄積し光の照射が消滅すると蓄積した蓄光を放射する半透明で乳白色の塗料或いはシール等からなる蓄光材22を塗布或いは貼付してなり、標識部3はプラスチックやガラスからなるコの字状の透明部材31の表面に記号や文字等の標識を表示する光を透過しない所定色の塗料或いはシール等の標識材32を塗布或いは貼付してなり、反射部4は金属、プラスチック、木材等からなる半円筒部材41にアルミ箔、アルミ蒸着材、白色塗料等の反射材42を内側に付加してなり、保持部5は半円板の金属、プラスチック、木材等からなり、反射部4の両側に保持部5を接着剤或いは螺子類で固定し、保持部5の両方の中央部分に蓄光部2を接着剤或いは螺子類で固定し、標識部3を蓄光部2に嵌め込むことにより構成されるものである。
尚、標識部3は、着脱可能に設定され、標識内容に応じて交換するものとする。
また、半円筒部材41は他の形状、例えば半楕円形状或いは中央が平面で周辺が傾斜形状とし保持部5の形状をこれらの端部を覆う形状としても、同等の効果が得られることはもちろんである。
【0015】
次に動作を説明する。
(1)入射光が照射される場合、
図2(1)に示されるように、例えば、太陽、自動車の照明ランプ等の光源から放射された入射光P0〜P3が表示装置1に照射されると、
入射光P0は、反射部4の反射材42で反射され反射光となって、蓄光部2の透明部材21を通過して蓄光材22に蓄光として蓄積される。
【0016】
入射光P1は、標識材32に照射されるが標識材32は不透明なため蓄光部2には到達せず、標識材32で反射或いは吸収されて所定色の標識を表示する。
【0017】
入射光P2は、標識部2の透明部材21の中央を通過して蓄光材22に照射され蓄光として蓄積される。入射光P2の一部は蓄光材22を透過し透明部材21を通過して反射材42に到達するが、反射材42で反射され反射光となって透明部材21を通過して蓄光材22に蓄光として加算され蓄積される。
【0018】
入射光P3は、標識部2の透明部材21の端を通過して蓄光材22に照射され蓄光として蓄積される。入射光P3の一部は蓄光材22を透過し透明部材21を通過して反射材42に到達するが、反射材42で反射され反射光となって透明部材21を通過して蓄光材22に蓄光として加算されて蓄積される。
【0019】
反射材42は、それぞれの入射光を図の点線で示すように複数方向に反射させて反射光とするので蓄光材22全体にわたって反射光は照射され蓄光として加算されて蓄積される。
従って、標識材32で遮られ入射光P1が届かない蓄光材22の位置にも蓄光は蓄積される。また、太陽、自動車の照明ランプ等の光源から放射される入射光は、説明のための入射光P0〜P3のように部分的に限定されるものではなく、表示装置1全体に連続して放射されることは自明である。
【0020】
このようにして太陽、自動車の照明ランプ等の光源から放射された入射光が表示装置1に照射されると、蓄光部2の蓄光材22全体に入射光と反射光が合算されて蓄光として高効率に蓄積されるとともに蓄光材22は標識部3の標識材32部分を除いて入射光の一部を直接反射して乳白色で表示され、標識部3の標識材32は入射光を直接反射或いは吸収して標識材32の所定色となるから、表示装置1おいては蓄光材22の乳白色と標識材32の所定色が明確に区別されるので標識を鮮明に識別して表示することが出来る。
【0021】
(2)入射光が消滅した場合、
図2(2)に示されるように、入射光が消滅すると、例えば、蓄光部2の蓄光材22に蓄積された蓄光のうち標識部3方向に蓄光R2、蓄光R3、反射部4方向に蓄光B1〜蓄光B3が放射される。蓄光B1〜蓄光B3は透明部材21を通過して反射材42で反射され反射光となって再び透明部材21を通過し蓄光材22を透過して蓄光R2、蓄光R3に加算されて標識部3方向に放射される。尚、放射された蓄光は再度蓄光材22には蓄積されないので(波長選択性)、蓄光の反射光は蓄光材22を透過する。
【0022】
標識部3の標識材32は不透明なため蓄光部2から標識材32へ蓄光が照射されても標識材32は通過しない。このため、標識部3の標識材32の範囲は暗部(黒色相当)、標識材32以外の範囲は明部(蓄光照射)として表示される。
【0023】
また、標識材32の蓄光部2側を裏面として不透明なアルミ箔やアルミ蒸着或いは白色塗料の反射材で形成し、この裏面上に表示する所定色の塗料を塗布して標識材32の表面とすれば、蓄光部2から放射される蓄光は標識材32の裏面で反射された後蓄光部2を透過して反射部4に到達し反射材42で反射され反射光として再度蓄光部2へ到達したのち透過して蓄光R2、蓄光R3にさらに加算される。特に標識材32の占める割合が多い場合、標識材32の裏面を反射材で形成すれば標識材32以外の範囲の蓄光量をも増加することが出来る。
【0024】
このようにして入射光が消滅すると、蓄光部2の蓄光材22に蓄積された蓄光が標識部3の標識材32以外の範囲の方向に直接放射されると共に蓄光の反射光も加算されることにより標識材32以外の範囲の光量が増加されて標識部3から放射されるから、蓄光の通過しない標識部3の標識材32をより鮮明に表示することが出来る。尚、蓄光は説明のために用いられた蓄光R2、蓄光R3、蓄光B1〜蓄光B3のように部分的に限定されるものではなく、蓄光材22全体から連続して放射されることは自明である。
【0025】
以上述べてきたように、本発明の実施形態によれば、表示装置1に入射光が照射されると蓄光材22の乳白色と標識材32の所定色は明確に区別されるとともに蓄光材22に蓄光が直接光と反射光が加算されて高効率に蓄積され、入射光が消滅すると高効率に蓄積された蓄光が標識部3方向に直接放射されると共に蓄光の反射光も加算されるので標識部3の標識材32の範囲と標識材32以外の範囲とは明度差が大きくなり明確に識別される。
特に夜間においては、自動車等の照明による入射光が消滅した直後には高効率で蓄積された蓄光が大量に放射されるので、遠方からも標識材32を容易に識別することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、標識部2を外せば、夜間や停電時等においては省エネルギーの照明装置として機能させ、また、災害時に広域に停電が発生した場合においては、携帯性を付加することにより避難行動の際の避難誘導の目安として有効に機能させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の表示装置1を示す図であり、(1)は側面図、(2)は正面図を示す。
【図2】図1(2)のA−A断面を示す図で有り(1)は入射光による動作を説明するための図であり、(2)は入射光が消滅した場合の動作を説明するための図である。
【図3】従来例の表示装置を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 表示装置
2 蓄光部
3 標識部
4 反射部
5 保持部
21 透明部材
22 蓄光材
31 透明部材
32 標識材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽、自動車の照明ランプ等の光源から放射された入射光を蓄積する蓄光部と、記号や文字等の標識を表示する標識部と、前記入射光を反射し反射光として蓄光部へ入射させる反射部と、からなり、
前記入射光と前記反射光とを同時に前記蓄光部に入射し蓄光として前記蓄光部に蓄積し、前記入射光が停止されると前記蓄光部に蓄積された前記蓄光を放射して前記標識部の前記記号や文字等の標識を表示することを特徴とする表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−117568(P2010−117568A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290937(P2008−290937)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(305008961)
【Fターム(参考)】