表示装置
【課題】視覚的な画質を高品質に保ちつつ節電を行う。
【解決手段】RGBWのサブピクセルを持つ表示装置において、所定の範囲以内に人が存在するかどうかを検知する人検知センサ12を有する。そして、所定範囲内に人が存在する場合と存在しない場合でWの使用率を変更する。
【解決手段】RGBWのサブピクセルを持つ表示装置において、所定の範囲以内に人が存在するかどうかを検知する人検知センサ12を有する。そして、所定範囲内に人が存在する場合と存在しない場合でWの使用率を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RGBWのサブピクセルをもつ表示装置、特にWの使用率の決定に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に、通常の赤、緑、青(R、G、B)の3つのサブピクセル3で1つの画素2を構成するマトリクス型有機ELパネル1のドット配列の一例を示す。図2及び図3に、サブピクセル3として、R、G、Bに加えて白(W)も使用するマトリクス型有機ELパネル1のドット配列の一例を示す。図2では、サブピクセル3を水平方向に並べ1つの画素2を形成し、図3ではサブピクセル3を2行2列に並べ一つの画素2を形成している。RGBW型の有機ELパネル1は、R、G、Bよりも発光効率の高いWサブピクセルを使用することにより、パネルとしての消費電力の低減や輝度の向上を目的としている。RGBW型パネルを実現する方法として、各サブピクセルにそれぞれの色を発光する有機EL素子を用いる方法と、白色有機EL素子に赤、緑、青の光学フィルタを重ね、W以外のサブピクセルを実現する方法とがある。
【0003】
図4は、CIE1931色度図であり、通常の赤、緑、青(R、G、B)の3原色に加えて白色画素として使用する白(W)の色度の一例が示されている。なお、このWの色度は必ずしもディスプレイの基準白色と一致させる必要は無い。
【0004】
図5に、R=1、G=1、B=1の時にディスプレイの基準白色が表示できるRGB入力信号をRGBWの画像信号に変換する方法を示す。まず、Wサブピクセルの発光色がディスプレイの基準白色と一致していない場合は、入力RGB信号に対して次のような演算を行い、Wサブピクセルの発光色への正規化を行う。
【0005】
【数1】
【0006】
ここで、R、G、Bは入力信号、Rn、Gn、Bnは正規化された赤、緑、青信号であり、a、b、cはそれぞれR=1/a、G=1/b、B=1/cの時、W=1と同等な輝度及び色度となるように選んだ係数である。
【0007】
最も基本的なS、F2、F3の演算式の例として、以下のようなものが考えられる。
S=min(Rn、Gn、Bn) 式2
F2(S)=−S 式3
F3(S)=S 式4
【0008】
この場合、表示する画素の色が無彩色に近いほどWサブピクセルを点灯させる割合が多くなることがわかる。従って、表示する画像の中に無彩色に近い色の割合が多いほど、RGBのみを使用するときに比べてパネルの消費電力は低くなる。
【0009】
最後の基準白色への正規化は、Wサブピクセルの発光色への正規化と同様にWサブピクセルの発光色がディスプレイの基準白色と一致していない場合に行う処理で、以下の演算を行う。
【0010】
【数2】
【0011】
通常、純色のみで構成された画像は少なく、Wサブピクセルが使用される場合がほとんどなので、RGB画素のみを使用した時に比べて平均的には全体の消費電力が低くなる。
【0012】
F2、F3として次式を用いた場合は、Mの値によってWサブピクセルの使用率が変わる。
F2(S)=−MS 式6
F3(S)= MS 式7
【0013】
ここで、Mは、0≦M≦1の定数である。
【0014】
消費電力の点からは式2〜式4で表される、M=1、すなわち使用率100%を用いるのが一番よい。しかし、視覚的な解像度の点からはできるだけRGBW全てが点灯するようなMの値を選ぶ方がよい。このことを以下に説明する。
【0015】
図1のようにRGBサブピクセルを縦横に並べて配置するパネルでは、視覚的な解像度を向上するために図6に示すように各色の信号の位相とパネルのサブピクセルの位置とを一致させることが行われている。この場合、入力画像信号の水平方向の解像度はパネルの水平画素数の3倍であり、すなわちパネルの水平方向のサブピクセルの数と同じである必要があるが、図6に示すようなタイミングで各色のサンプリングを行うことにより見た目の解像度が上がる。すなわち、各色信号の位相とパネルのサブピクセルの位置とを一致させることにより、RGBの3つのサブピクセルをともに同じ位相の信号データで駆動(図7)するよりも見た目の解像度の高い表示画像が得られる。これは、入力信号の各サブピクセルの位置での輝度情報が各色の持つ輝度成分によりある程度再現できることによる。
【0016】
図2、図3のようなRGBWサブピクセルを使用した場合も同様に各色信号の位相とパネルのサブピクセルの位置を一致させることで、見た目の解像度を上げることが可能である。図2のようにサブピクセルが配置されている場合でWの使用率が50%程度の時のサンプリングの例を図8に示す。
【0017】
一方、Wの使用率が100%のとき、すなわち式6,7におけるM=1の場合は、無彩色に近い画像であればあるほどRGBサブピクセルの発光量が少ないために効果が少なくなる。特に、W原色が基準白色と同じ場合、白黒画像を表示したときにRGBサブピクセルを全く使用しないことになるので、図9に示すように、解像度はWのサブピクセル数と同じになる。
【0018】
このように、消費電力と見た目の解像度はMの値により変化し、お互いにトレードオフの関係となっている。そこで、特許文献1では、表示画像の部分的な空間周波数成分を検出し、その検出結果に応じてWの使用率(M)を適応的に変化させ、解像度の低下を抑えつつ消費電力を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2006−003475
【特許文献2】特開2004−280108
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
特許文献1の方法によれば、絵柄によっては平均消費電力をM=1の場合にかなり近づけることができ、同時に、画像のエッジ部分ではMの値を下げて画質を改善することができる。しかしながらこの方法でも、無彩色に近く空間周波数の低い部分での画質が、Mが一定で画質に最適化した場合と比べると見劣りする場合がある。すなわち、この部分ではMが大きくなるのでWサブピクセルのみが強く点灯し、近距離から見た場合に図2の配列では図10のようにストライプ状に、また図3の配列ではドット状に見えてしまうことがある。
【0021】
一方、視力1.0の人の場合、視角にして1分が分解能であり、走査線数が1100本とすれば視距離が3H(画面の高さの3倍)以上になると走査線が見えなくなると言われている。したがって、所定の距離以上から見る場合は、図2、図3のような正方画素を持つ表示装置ではM=1としても画質的に問題はない。このように、1画素が複数のサブピクセルにより構成される表示装置では、各サブピクセルが識別できないような距離で画像を見ることが望ましいが、サブピクセルの大きさは画素数や画面サイズなどの仕様によりまちまちであり、表示装置と鑑賞者との距離も使用環境によって変わり、常にこの条件を満たすことは難しい。
【0022】
また、デジタルサイネージ(電子看板)などの用途においては、普段は表示装置から離れた場所に人が居るが、その人たちの中でその内容に興味を持った人が近づいてきて内容を詳細に見るというケースも考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、RGBWのサブピクセルで構成された画素をマトリクス状に配置した表示装置であって、表示装置の周囲に存在する人を検知する人検知センサを備え、その検出結果に応じてWの使用率を変更することを特徴とする。
【0024】
また、前記人検知センサは、表示装置から所定の範囲以内に人が存在するかどうかを検知するセンサであり、表示装置は、所定範囲内に人が存在する場合と存在しない場合でWの使用率を変更することが好適である。
【0025】
また、前記人検知センサは、最も近くに存在する人の距離を測定するセンサであって、表示装置は検出した距離に応じてWの使用率を変更することが好適である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、視覚的な画質を高品質に保ちつつ節電を行う。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】RGBサブピクセルを有する表示装置の構成を示す図である。
【図2】RGBWサブピクセルを有する表示装置の構成例を示す図である。
【図3】RGBWサブピクセルを有する表示装置の他の構成例を示す図である。
【図4】CIE1931色度図である。
【図5】RGBWへの変換の処理を説明する図である。
【図6】各色の信号の位相とパネルのサブピクセルの位置を一致させる処理の説明図である。
【図7】各色の信号の位相とパネルのサブピクセルの位置を一致させる処理の説明図である。
【図8】各色の信号の位相とパネルのサブピクセルの位置を一致させる処理の説明図である。
【図9】白黒の信号の位相とパネルのサブピクセルの位置を一致させる処理の説明図である。
【図10】画質の低下を説明する図である。
【図11】実施形態の構成を示す図である。
【図12】実施形態のRGBWへの変換処理を示す図である。
【図13】RGBからRGBWへの変換のための構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0029】
図11は、実施形態に係る表示装置(モニタ)10の外観を示す図であり、表示装置10は、人の存在を検知する人検知センサ12を有しており、このセンサ12によって、表示装置10を鑑賞する人の存在を検知する。
【0030】
例えば、52インチ型のフルハイビジョンモニタ(1920×1080画素)を考えると、画面の高さ(H)は約65cmなので、前述の走査線(画素)が見えない視距離3Hは195cmとなり、2m以内で鑑賞する場合は画素が見える可能性がある。したがって、モニタ10に付属した人検知センサ12により、2m以内に人がいることを検知した場合は式6、7におけるMの値を例えば0.5とし、それ以外のときは1とすれば、常に必要十分な画質を保ちながら、使用状況に応じた節電が可能となる。
【0031】
人検知センサ12としては、例えば人の発する赤外線を捕らえ、人の微妙な動きを検出することにより所定範囲内に人がいることを検知する赤外線式のモーションセンサなどが使用できる。
【0032】
また、前記の文献1で述べられている手法と組み合わせることも好適である。例えば、人が所定の距離以内にいる場合は画像の空間周波数成分に応じてMの値を変化させ、所定の距離以上の場合はM=1とする。
【0033】
また、表示装置10と人との距離を計測可能な人検知センサを備えている場合には距離に応じてMの値を滑らかに変化させてもよい。例えば、走査線1080本を持つフルハイビジョンモニタの例であれば3H以下の距離ではM=0.5、5H以上の距離ではM=1とし、3Hから5Hの間は距離とともにMが大きくなるようにする。人の距離を計測する方法としては、例えばカメラなどを装備し、表示装置の前面の撮影画像を分析して人の存在とその距離を推定する方法などがある。
【0034】
以上、F2及びF3は式6及び式7を基にして述べてきたので、表示される画像の輝度や色度は入力RGBに忠実に再現される。
【0035】
しかし、本実施形態は、表示画像の輝度や色度が入力画像と異なるような場合にも適用できる。特許文献2では、消費電力を抑えるため、機器の使用環境によって色の飽和度を変化させている。視認性の点では色の飽和度よりも輝度のほうが重要であるという観点から、周囲が明るい場合などには色の飽和度が下がる程度まで発光効率のよいWをより強く発光させ、輝度を増大させながらも消費電力の上昇を抑えている。前述のデジタルサイネージへの応用として、人が所定の範囲内に存在しない場合は特許文献2に記載された方法で節電しながら輝度を上げ、人が所定の範囲内にいる場合は、近くで見やすい所定の輝度にすると同時にWの使用率を50%にして視覚的な解像度を高くするなどの方法が適用できる。
【0036】
図12に、人検知センサ12を持つ表示装置10において、R=1、G=1、B=1の時にディスプレイの基準白色が表示できるRGB入力信号をRGBWの画像信号に変換する手順を示す。RGBの入力信号について、式1の演算を行い白原色への正規化を行う(S11)。正規化後の信号を、Rn、Gn、Bnとする。なお、このS11の正規化は、必ずしも行う必要はない。
【0037】
次に、信号Rn、Gn、Bnについて、F1(Rn,Gn,Bn)という演算でWの輝度に対応するSを算出する(S12)。演算F1は、例えば式2のように、最小値を選択する演算である。そして、Sに基づいて、F2(S,H)の演算を行う(S13)。例えば、人が所定の距離範囲内に存在する時にH=1を、存在しない時にH=0を出力する人検知センサを用い、次式を適用すれば、所定範囲内に人がいるときは式6におけるMの値を0.5とした式となり、そうでないときは式6のMの値を1とした式となる。
F2(S,H)=−(1−0.5H)S 式8
【0038】
得られたF2(S,H)をRn、Gn、Bnに加算することで(S14)、Wのサブピクセルの輝度に相当する輝度をRn、Gn、Bnから減算し、Rn’,Gn’,Bn’を得る(S14)。そして、必要であれば、基準白色への正規化を行い(S15)、各サブピクセル毎の輝度R’,G’,B’を出力する。
【0039】
一方、Sに基づいてF3(S,H)も算出する(S16)。F3は、次式のように上述のS13と符号のみ異なる式とすれば、表示される画像の輝度や色度は入力RGBに忠実に再現される。
F3(S,H)=(1−0.5H)S 式9
そして、得られたF3(S,H)をWのサブピクセルの輝度Whとして出力する。
【0040】
また、図13にこの表示装置の構成例を示す。画像信号RGBは、RGB→RGBW変換部20に入力され、上述のような演算によって、R’,G’,B’,Wが算出される。ここで、このRGB→RGBW変換部20には、W使用率決定部22からのW使用率についての信号が供給される。W使用率決定部22は、人検知センサ12からの信号に応じてW使用率についての信号を出力する。所定距離内に人がいないときには、Wの使用率が最大になるようにし、所定距離内に人がいる場合にはWの使用率を制限する。RGB→RGBW変換部20は、W使用率決定部22からの信号に対応したWの使用率を用い、R’,G’,B’,Wを算出し、表示部である有機ELパネル24に供給する。従って、鑑賞する人の距離に応じて、知覚される画質に問題が生じない範囲においてWの使用率を変更し、表示を行う。
【符号の説明】
【0041】
20 RGB→RGBW変換部、22 W使用率決定部、24 有機ELパネル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、RGBWのサブピクセルをもつ表示装置、特にWの使用率の決定に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に、通常の赤、緑、青(R、G、B)の3つのサブピクセル3で1つの画素2を構成するマトリクス型有機ELパネル1のドット配列の一例を示す。図2及び図3に、サブピクセル3として、R、G、Bに加えて白(W)も使用するマトリクス型有機ELパネル1のドット配列の一例を示す。図2では、サブピクセル3を水平方向に並べ1つの画素2を形成し、図3ではサブピクセル3を2行2列に並べ一つの画素2を形成している。RGBW型の有機ELパネル1は、R、G、Bよりも発光効率の高いWサブピクセルを使用することにより、パネルとしての消費電力の低減や輝度の向上を目的としている。RGBW型パネルを実現する方法として、各サブピクセルにそれぞれの色を発光する有機EL素子を用いる方法と、白色有機EL素子に赤、緑、青の光学フィルタを重ね、W以外のサブピクセルを実現する方法とがある。
【0003】
図4は、CIE1931色度図であり、通常の赤、緑、青(R、G、B)の3原色に加えて白色画素として使用する白(W)の色度の一例が示されている。なお、このWの色度は必ずしもディスプレイの基準白色と一致させる必要は無い。
【0004】
図5に、R=1、G=1、B=1の時にディスプレイの基準白色が表示できるRGB入力信号をRGBWの画像信号に変換する方法を示す。まず、Wサブピクセルの発光色がディスプレイの基準白色と一致していない場合は、入力RGB信号に対して次のような演算を行い、Wサブピクセルの発光色への正規化を行う。
【0005】
【数1】
【0006】
ここで、R、G、Bは入力信号、Rn、Gn、Bnは正規化された赤、緑、青信号であり、a、b、cはそれぞれR=1/a、G=1/b、B=1/cの時、W=1と同等な輝度及び色度となるように選んだ係数である。
【0007】
最も基本的なS、F2、F3の演算式の例として、以下のようなものが考えられる。
S=min(Rn、Gn、Bn) 式2
F2(S)=−S 式3
F3(S)=S 式4
【0008】
この場合、表示する画素の色が無彩色に近いほどWサブピクセルを点灯させる割合が多くなることがわかる。従って、表示する画像の中に無彩色に近い色の割合が多いほど、RGBのみを使用するときに比べてパネルの消費電力は低くなる。
【0009】
最後の基準白色への正規化は、Wサブピクセルの発光色への正規化と同様にWサブピクセルの発光色がディスプレイの基準白色と一致していない場合に行う処理で、以下の演算を行う。
【0010】
【数2】
【0011】
通常、純色のみで構成された画像は少なく、Wサブピクセルが使用される場合がほとんどなので、RGB画素のみを使用した時に比べて平均的には全体の消費電力が低くなる。
【0012】
F2、F3として次式を用いた場合は、Mの値によってWサブピクセルの使用率が変わる。
F2(S)=−MS 式6
F3(S)= MS 式7
【0013】
ここで、Mは、0≦M≦1の定数である。
【0014】
消費電力の点からは式2〜式4で表される、M=1、すなわち使用率100%を用いるのが一番よい。しかし、視覚的な解像度の点からはできるだけRGBW全てが点灯するようなMの値を選ぶ方がよい。このことを以下に説明する。
【0015】
図1のようにRGBサブピクセルを縦横に並べて配置するパネルでは、視覚的な解像度を向上するために図6に示すように各色の信号の位相とパネルのサブピクセルの位置とを一致させることが行われている。この場合、入力画像信号の水平方向の解像度はパネルの水平画素数の3倍であり、すなわちパネルの水平方向のサブピクセルの数と同じである必要があるが、図6に示すようなタイミングで各色のサンプリングを行うことにより見た目の解像度が上がる。すなわち、各色信号の位相とパネルのサブピクセルの位置とを一致させることにより、RGBの3つのサブピクセルをともに同じ位相の信号データで駆動(図7)するよりも見た目の解像度の高い表示画像が得られる。これは、入力信号の各サブピクセルの位置での輝度情報が各色の持つ輝度成分によりある程度再現できることによる。
【0016】
図2、図3のようなRGBWサブピクセルを使用した場合も同様に各色信号の位相とパネルのサブピクセルの位置を一致させることで、見た目の解像度を上げることが可能である。図2のようにサブピクセルが配置されている場合でWの使用率が50%程度の時のサンプリングの例を図8に示す。
【0017】
一方、Wの使用率が100%のとき、すなわち式6,7におけるM=1の場合は、無彩色に近い画像であればあるほどRGBサブピクセルの発光量が少ないために効果が少なくなる。特に、W原色が基準白色と同じ場合、白黒画像を表示したときにRGBサブピクセルを全く使用しないことになるので、図9に示すように、解像度はWのサブピクセル数と同じになる。
【0018】
このように、消費電力と見た目の解像度はMの値により変化し、お互いにトレードオフの関係となっている。そこで、特許文献1では、表示画像の部分的な空間周波数成分を検出し、その検出結果に応じてWの使用率(M)を適応的に変化させ、解像度の低下を抑えつつ消費電力を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2006−003475
【特許文献2】特開2004−280108
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
特許文献1の方法によれば、絵柄によっては平均消費電力をM=1の場合にかなり近づけることができ、同時に、画像のエッジ部分ではMの値を下げて画質を改善することができる。しかしながらこの方法でも、無彩色に近く空間周波数の低い部分での画質が、Mが一定で画質に最適化した場合と比べると見劣りする場合がある。すなわち、この部分ではMが大きくなるのでWサブピクセルのみが強く点灯し、近距離から見た場合に図2の配列では図10のようにストライプ状に、また図3の配列ではドット状に見えてしまうことがある。
【0021】
一方、視力1.0の人の場合、視角にして1分が分解能であり、走査線数が1100本とすれば視距離が3H(画面の高さの3倍)以上になると走査線が見えなくなると言われている。したがって、所定の距離以上から見る場合は、図2、図3のような正方画素を持つ表示装置ではM=1としても画質的に問題はない。このように、1画素が複数のサブピクセルにより構成される表示装置では、各サブピクセルが識別できないような距離で画像を見ることが望ましいが、サブピクセルの大きさは画素数や画面サイズなどの仕様によりまちまちであり、表示装置と鑑賞者との距離も使用環境によって変わり、常にこの条件を満たすことは難しい。
【0022】
また、デジタルサイネージ(電子看板)などの用途においては、普段は表示装置から離れた場所に人が居るが、その人たちの中でその内容に興味を持った人が近づいてきて内容を詳細に見るというケースも考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、RGBWのサブピクセルで構成された画素をマトリクス状に配置した表示装置であって、表示装置の周囲に存在する人を検知する人検知センサを備え、その検出結果に応じてWの使用率を変更することを特徴とする。
【0024】
また、前記人検知センサは、表示装置から所定の範囲以内に人が存在するかどうかを検知するセンサであり、表示装置は、所定範囲内に人が存在する場合と存在しない場合でWの使用率を変更することが好適である。
【0025】
また、前記人検知センサは、最も近くに存在する人の距離を測定するセンサであって、表示装置は検出した距離に応じてWの使用率を変更することが好適である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、視覚的な画質を高品質に保ちつつ節電を行う。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】RGBサブピクセルを有する表示装置の構成を示す図である。
【図2】RGBWサブピクセルを有する表示装置の構成例を示す図である。
【図3】RGBWサブピクセルを有する表示装置の他の構成例を示す図である。
【図4】CIE1931色度図である。
【図5】RGBWへの変換の処理を説明する図である。
【図6】各色の信号の位相とパネルのサブピクセルの位置を一致させる処理の説明図である。
【図7】各色の信号の位相とパネルのサブピクセルの位置を一致させる処理の説明図である。
【図8】各色の信号の位相とパネルのサブピクセルの位置を一致させる処理の説明図である。
【図9】白黒の信号の位相とパネルのサブピクセルの位置を一致させる処理の説明図である。
【図10】画質の低下を説明する図である。
【図11】実施形態の構成を示す図である。
【図12】実施形態のRGBWへの変換処理を示す図である。
【図13】RGBからRGBWへの変換のための構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0029】
図11は、実施形態に係る表示装置(モニタ)10の外観を示す図であり、表示装置10は、人の存在を検知する人検知センサ12を有しており、このセンサ12によって、表示装置10を鑑賞する人の存在を検知する。
【0030】
例えば、52インチ型のフルハイビジョンモニタ(1920×1080画素)を考えると、画面の高さ(H)は約65cmなので、前述の走査線(画素)が見えない視距離3Hは195cmとなり、2m以内で鑑賞する場合は画素が見える可能性がある。したがって、モニタ10に付属した人検知センサ12により、2m以内に人がいることを検知した場合は式6、7におけるMの値を例えば0.5とし、それ以外のときは1とすれば、常に必要十分な画質を保ちながら、使用状況に応じた節電が可能となる。
【0031】
人検知センサ12としては、例えば人の発する赤外線を捕らえ、人の微妙な動きを検出することにより所定範囲内に人がいることを検知する赤外線式のモーションセンサなどが使用できる。
【0032】
また、前記の文献1で述べられている手法と組み合わせることも好適である。例えば、人が所定の距離以内にいる場合は画像の空間周波数成分に応じてMの値を変化させ、所定の距離以上の場合はM=1とする。
【0033】
また、表示装置10と人との距離を計測可能な人検知センサを備えている場合には距離に応じてMの値を滑らかに変化させてもよい。例えば、走査線1080本を持つフルハイビジョンモニタの例であれば3H以下の距離ではM=0.5、5H以上の距離ではM=1とし、3Hから5Hの間は距離とともにMが大きくなるようにする。人の距離を計測する方法としては、例えばカメラなどを装備し、表示装置の前面の撮影画像を分析して人の存在とその距離を推定する方法などがある。
【0034】
以上、F2及びF3は式6及び式7を基にして述べてきたので、表示される画像の輝度や色度は入力RGBに忠実に再現される。
【0035】
しかし、本実施形態は、表示画像の輝度や色度が入力画像と異なるような場合にも適用できる。特許文献2では、消費電力を抑えるため、機器の使用環境によって色の飽和度を変化させている。視認性の点では色の飽和度よりも輝度のほうが重要であるという観点から、周囲が明るい場合などには色の飽和度が下がる程度まで発光効率のよいWをより強く発光させ、輝度を増大させながらも消費電力の上昇を抑えている。前述のデジタルサイネージへの応用として、人が所定の範囲内に存在しない場合は特許文献2に記載された方法で節電しながら輝度を上げ、人が所定の範囲内にいる場合は、近くで見やすい所定の輝度にすると同時にWの使用率を50%にして視覚的な解像度を高くするなどの方法が適用できる。
【0036】
図12に、人検知センサ12を持つ表示装置10において、R=1、G=1、B=1の時にディスプレイの基準白色が表示できるRGB入力信号をRGBWの画像信号に変換する手順を示す。RGBの入力信号について、式1の演算を行い白原色への正規化を行う(S11)。正規化後の信号を、Rn、Gn、Bnとする。なお、このS11の正規化は、必ずしも行う必要はない。
【0037】
次に、信号Rn、Gn、Bnについて、F1(Rn,Gn,Bn)という演算でWの輝度に対応するSを算出する(S12)。演算F1は、例えば式2のように、最小値を選択する演算である。そして、Sに基づいて、F2(S,H)の演算を行う(S13)。例えば、人が所定の距離範囲内に存在する時にH=1を、存在しない時にH=0を出力する人検知センサを用い、次式を適用すれば、所定範囲内に人がいるときは式6におけるMの値を0.5とした式となり、そうでないときは式6のMの値を1とした式となる。
F2(S,H)=−(1−0.5H)S 式8
【0038】
得られたF2(S,H)をRn、Gn、Bnに加算することで(S14)、Wのサブピクセルの輝度に相当する輝度をRn、Gn、Bnから減算し、Rn’,Gn’,Bn’を得る(S14)。そして、必要であれば、基準白色への正規化を行い(S15)、各サブピクセル毎の輝度R’,G’,B’を出力する。
【0039】
一方、Sに基づいてF3(S,H)も算出する(S16)。F3は、次式のように上述のS13と符号のみ異なる式とすれば、表示される画像の輝度や色度は入力RGBに忠実に再現される。
F3(S,H)=(1−0.5H)S 式9
そして、得られたF3(S,H)をWのサブピクセルの輝度Whとして出力する。
【0040】
また、図13にこの表示装置の構成例を示す。画像信号RGBは、RGB→RGBW変換部20に入力され、上述のような演算によって、R’,G’,B’,Wが算出される。ここで、このRGB→RGBW変換部20には、W使用率決定部22からのW使用率についての信号が供給される。W使用率決定部22は、人検知センサ12からの信号に応じてW使用率についての信号を出力する。所定距離内に人がいないときには、Wの使用率が最大になるようにし、所定距離内に人がいる場合にはWの使用率を制限する。RGB→RGBW変換部20は、W使用率決定部22からの信号に対応したWの使用率を用い、R’,G’,B’,Wを算出し、表示部である有機ELパネル24に供給する。従って、鑑賞する人の距離に応じて、知覚される画質に問題が生じない範囲においてWの使用率を変更し、表示を行う。
【符号の説明】
【0041】
20 RGB→RGBW変換部、22 W使用率決定部、24 有機ELパネル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RGBWのサブピクセルで構成された画素をマトリクス状に配置した表示装置であって、
表示装置の周囲に存在する人を検知する人検知センサを備え、
その検出結果に応じてWの使用率を変更することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記人検知センサは、表示装置から所定の範囲以内に人が存在するかどうかを検知するセンサであり、
表示装置は、所定範囲内に人が存在する場合と存在しない場合でWの使用率を変更することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表示装置において、
前記人検知センサは、最も近くに存在する人の距離を測定するセンサであって、表示装置は検出した距離に応じてWの使用率を変更することを特徴とする表示装置。
【請求項1】
RGBWのサブピクセルで構成された画素をマトリクス状に配置した表示装置であって、
表示装置の周囲に存在する人を検知する人検知センサを備え、
その検出結果に応じてWの使用率を変更することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記人検知センサは、表示装置から所定の範囲以内に人が存在するかどうかを検知するセンサであり、
表示装置は、所定範囲内に人が存在する場合と存在しない場合でWの使用率を変更することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表示装置において、
前記人検知センサは、最も近くに存在する人の距離を測定するセンサであって、表示装置は検出した距離に応じてWの使用率を変更することを特徴とする表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−164137(P2011−164137A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23288(P2010−23288)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(510048417)グローバル・オーエルイーディー・テクノロジー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (95)
【氏名又は名称原語表記】GLOBAL OLED TECHNOLOGY LLC.
【住所又は居所原語表記】1209 Orange Street, Wilmington, Delaware 19801, United States of America
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(510048417)グローバル・オーエルイーディー・テクノロジー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (95)
【氏名又は名称原語表記】GLOBAL OLED TECHNOLOGY LLC.
【住所又は居所原語表記】1209 Orange Street, Wilmington, Delaware 19801, United States of America
【Fターム(参考)】
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