説明

表示装置

【課題】複数の発光領域に区分けされて発光する面状発光素子を用いた表示装置において、面状発光素子によりパターン表示する際、その駆動回路を簡略化する。
【解決手段】面状発光素子1は、2つ発光領域に区分けされた発光層5を透明電極4を含む電極により挟持すると共に、各発光領域の境界近傍に透明電極4に電力供給するための補助電極7、8を備える。各発光領域は2つのグループA、Bにグルーピングされ、補助電極7、8は各グループA、Bに対応して設けられると共に、電力供給対象に指定されたグループの発光領域の透明電極4とは導通され、指定されたグループ以外の発光領域の境界近傍ではその透明電極4と絶縁されている。これにより、各発光領域のグループ別点灯によりパターン表示する際、各グループの発光領域毎に補助電極7、8により給電できるので、各発光領域を個別に駆動する必要がなく駆動回路を簡略化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発光領域に区分けされて発光する有機EL等の面状発光素子を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の表示装置として、例えば、EL(エレクトロルミネッセンス)素子やLED(発光ダイオード)素子を用い、複数のデータ線及び走査線によりマトリクス状に区分けされた複数の画素を、薄膜トランジスタ(TFT)の駆動回路で個々に駆動して点灯表示するアクティブマトリクス型の表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような表示装置は、例えば案内標識として、面状発光素子の発光領域を2つに区分けしてパターン表示する際、パターン内の各画素の輝度が同じであったとしても、画素毎に別々に走査駆動するので、駆動回路が複雑となる。
【0003】
また、面状発光素子を複数個のEL体で構成し、各EL体を平面的に交互に配置して2つのEL体グループに分け、グループ毎の各EL体に対向して複数に分割された光透明性パターンをそれぞれ配置し、各グループへの給電を切換えて表示内容を切換える表示装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この表示装置は隣接するEL体が交互に点灯するだけであり、別途、光透明性パターンを必要とし、面状発光素子だけでパターン表示をすることは困難である。
【0004】
このようなEL体では、透明体の光放出部から光を取り出すために、それに対応する面の素子電極としてITO(酸化インジウム錫)からなる透明電極が用いられる。しかし、ITOは導電性ではあるが、抵抗率が大きいため、給電された透明電極上では、給電部からの距離が長くなるほど電圧降下が大きくなり、EL体の発光層への印加電圧が低下して行き、発光層へ供給される電圧が位置によって変動するため、輝度むらを生じ易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4329789号
【特許文献2】特開2003−255871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、複数の発光領域に区分けされて発光する面状発光素子を用いた表示装置において、面状発光素子によるパターン表示をする際、その駆動回路を簡略化することができる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、複数の発光領域に区分けされた発光層を該発光層に電源供給するための透明電極を含む電極により挟持すると共に、前記各発光領域の境界近傍に前記透明電極に電力供給するための補助電極を配置して成る面状発光素子を備えた表示装置であって、前記複数の発光領域は、少なくとも2つのグループにグルーピングされており、前記補助電極は、前記グループの各々に対応して設けられると共に、電力供給対象であるグループが指定されており、指定されたグループの発光領域の透明電極とは導通され、指定されたグループ以外の発光領域の境界近傍ではその透明電極と絶縁処理されているものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の表示装置において、前記補助電極の電気抵抗が前記透明電極のそれより小さいものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の表示装置において、一方の発光領域グループ用の補助電極と、もう一方の発光領域グループ用の補助電極とが発光領域を挟んで交互に配列されているものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の表示装置において、前記面状発光素子は、通常時に複数のグループの発光領域を一定輝度で点灯し、非常時に少なくとも一方の発光領域を点滅させるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、電力供給対象に指定されたグループの個々の発光領域は、各発光領域の境界近傍に配置される補助電極を介して給電され、指定されないグループとは絶縁されるので、グループの各発光領域によりパターン表示する際、グループの個々の発光領域を点灯するための駆動回路を個別に設ける必要がなく、各グループに対し1つ用意すればよいため、駆動回路を簡略化できる。
【0012】
請求項2の発明によれば、補助電極で接続される発光領域間の電位差を、発光領域内の透明電極による電位差よりも小さくできるので、各発光領域同士の輝度むらが各発光領域内の輝度むらより小さくなる。これにより、発光領域を複数並べて面状発光素子を構成する際、少なくとも発光領域間の輝度むらが見え難くなる。
【0013】
請求項3の発明によれば、発光領域グループ間で補助電極を共用できるので、補助電極の本数を少なくでき、非発光部の面積を小さくできると共に、電力給電のための駆動回路と補助電極との接続数が減り、それらの電気接続が容易になる。
【0014】
請求項4の発明によれば、非常時に少なくとも一方の発光領域を点滅させるので、通常時に比べ、誘目性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る表示装置の素子基板を透視した平面図、(b)は(a)のX1−X1線断面図。
【図2】同表示装置の面状発光素子と駆動回路との接続を示す図。
【図3】(a)は本発明の第2の実施形態に係る表示装置の素子基板を透視した平面図、(b)は(a)のX2−X2線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る表示装置について図1(a)、(b)及び図2を参照して説明する。本実施形態における表示装置は、有機分子で構成された有機EL発光素子等を有する面状発光素子1と、この面状発光素子1を駆動するための表示駆動部20と備える。面状発光素子1は、有機ELの発光層5が設けられる素子基板2と、素子基板2と対向し発光層5を封止するための封止基板3と、発光層5を挟持して給電するための透明電極4及びアルミ電極6と、透明電極4に給電するための補助電極7、8とを備える。透明電極4は正電極となり、アルミ電極6は負電極となる。なお、発光層5は、通常、正電極側に正孔輸送層(不図示)及びに負電極側に電子輸送層(不図示)等が形成されるが、ここでは、これら各輸送層を含めて発光層とし、また、それらの構造は上記に限定されるものでない。
【0017】
素子基板2は、ガラス等の矩形の透明部材から成り、その上に透明電極4が形成され、この透明電極4上に発光層5及びアルミ電極6が積層され、その上からシリコン樹脂等からなる封止基板3により封止されて、面状発光素子1が形成される。素子基板2の発光層5が形成された反対面側(裏面側)は、EL発光の光放出面となっており、この光放出面より発光層5からの光を出射するため、透明電極4は透明性を成す、例えばITO(酸化インジウム錫)で構成される。
【0018】
発光層5は、複数の矩形の発光領域に区分けされ、各発光領域はそれぞれ別々の透明電極4を持ち、アルミ電極6を互いに共通の負電極とし、別々に電力駆動されるようになっている。これら発光領域は、少なくとも2つのグループ(ここでは、グループA、B)にグルーピングされており、各発光領域の境界近傍に沿って透明電極4に電力供給するための補助電極7、8が配置されている。4つの発光領域は、四角状に隣接して配置され、グループAはL字状に配置された3つの発光領域Aから成り、グループBは発光領域Aに隣接する1つの発光領域Bから成る。ここでは、グループAの発光領域を発光領域Aとし、グループBの発光領域を発光領域Bとする。
【0019】
補助電極7、8は、例えば導電性がITOに比較して極めて高い矩形状の金属薄膜から成り、グループA、Bの各々に対応して設けられる。補助電極7、8は、電力供給対象であるグループがそれぞれA、Bと指定されており、それぞれ指定されたグループA、Bの発光領域A、Bの各透明電極4と導通され、指定されたグループ以外の発光領域の境界近傍では、絶縁層9により透明電極4と絶縁されている。
【0020】
面状発光素子1の作成においては、素子基板2上に4つに区分けされた発光領域A、Bに対応する位置に透明電極4をITOで薄膜形成し、1列に並ぶ2つの発光領域A、及び1列に並ぶ発光領域A、Bの側辺に沿って、それらの左右に補助電極7、8をそれぞれ接合して配置する。このとき、発光領域A、Bの左または右側辺では、補助電極7を発光領域Bの透明電極4と絶縁する部分と、補助電極8を発光領域Aの透明電極4と絶縁する部分とに、それらの部分以外をマスクカバーして蒸着等により絶縁層9が部分的に形成される。
【0021】
補助電極7、8が発光領域B、Aの透明電極4とそれぞれ絶縁層9で絶縁された状態で、補助電極7、8は、発光領域A及びBの透明電極4とそれぞれ直接接合するように、各発光領域A、Bの周辺に沿ってそれぞれ形成される。ここで、透明電極4上に有機薄膜を有する発光層5が形成される。さらに、その上を覆い、補助電極7、8をアルミ電極6と絶縁するために、再度、絶縁層9が形成される。この状態で、アルミ電極6が発光領域全体を覆うように、素子基板2上に蒸着等で形成された後、素子基板2が矩形の蓋状を成す絶縁性の封止基板3で覆われて面状発光素子1が形成される。なお、これら透明電極4、発光層5、アルミ電極6、補助電極7、8、及び絶縁層9等は蒸着や印刷技術等で形成され、また、その製作プロセスは上記に限られたものではない。
【0022】
素子基板2の封止基板3側の面には、封止基板3の周縁の少なくとも一部から導出された補助電極7、8及びアルミ電極6が延在配置され、補助電極7、8は、各端部でそれぞれグループA、Bに給電するための接続端子10、接続端子11に接続され、アルミ電極6は、共通給電端子となる接続端子12に接続される。
【0023】
ここで、図2を参照して表示駆動部20について説明する。表示駆動部20は、グループA、Bの各発光領域A、Bをそれぞれ点灯駆動するための駆動回路21、22と、これらを制御するための制御部23とを有し、面状発光素子1に駆動電力を供給する。駆動回路21、22は、面状発光素子1の接続端子10、接続端子11にそれぞれ接続され、制御部23により制御されて面状発光素子1を点灯制御する駆動電圧(駆動電力)を供給する。また、制御部23は、通常時に複数のグループ、例えば、グループA、Bの発光領域A、Bを一定輝度で点灯し、非常時に少なくとも一方のグループの発光領域を点滅させる制御を可能とする。
【0024】
上記のような構成の面状発光素子1は、発光層5のグループAに対応する補助電極7とアルミ電極6とに通電すると、発光層5のグループAの発光領域Aが発光し、グループBの発光領域Bに対応する補助電極8とアルミ電極6とを通電すると、グループBの発光領域Bが点灯する。また、グループA、Bは、それらの複数の発光領域A、Bの透明電極4と、各発光領域の境界近傍に位置する補助電極7、8とをそれぞれ接続、または絶縁することにより、順次隣接する発光領域を組合わせて、任意の発光パターンを形成することができる。なお、電気接続部材や電気接続手段は上記の例に限るものではない。
【0025】
本実施形態によれば、電力供給対象に指定されたグループA、Bの個々の発光領域A、Bは、補助電極7、8を介してそれぞれ給電され、指定されないグループとは絶縁されるので、グループの各発光領域によりパターン表示する際、グループの個々の発光領域を点灯するための駆動回路を個別に設ける必要がなく、グループA、Bに対応して駆動回路21、22のように、各グループに対し1つ用意すればよいため、駆動回路を簡略化できる。
【0026】
また、補助電極7、8の電気抵抗を透明電極4のそれより小さくしたことにより、補助電極7、8で接続される発光領域間の電位差を、発光領域内の透明電極4による電位差よりも小さくできるので、各発光領域同士の輝度むらが各発光領域内の輝度むらより小さくなる。これにより、発光領域を複数並べて面状発光素子を構成する際、少なくとも発光領域間の輝度むらが見え難くなる。さらに、補助電極7、8から透明電極4に給電する際、各発光領域A、Bの境界近傍に沿って補助電極7、8と発光領域A、Bの各透明電極4とを接合させることにより、透明電極4の電気抵抗を低下することができるので、透明電極内の電位差を小さくでき、発光領域A、B内の輝度むらを低減できる。
【0027】
また、面状発光素子1に有機EL発光素子を用いたことにより、低電圧、低電流の駆動が可能となり、供給電力に対して発光輝度が大きく、発光効率が良い。また、面状発光素子1はグループA、Bの発光色を、オンオフの白黒だけでなく、例えば白と緑のように、有色の発光素子等を用いて2色構成などとしてもよい。
【0028】
また、面状発光素子1は制御部23により、通常時にグループA、Bの発光領域A、Bを一定輝度で点灯し、非常時に少なくとも一方のグループの発光領域を点滅させることにより、通常時に比べ、誘目性を高くできる。
【0029】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る表示装置について図3を参照して説明する。本実施形態は、前記実施形態において、一方の発光領域グループ用の補助電極と、もう一方の発光領域グループ用の補助電極とが発光領域を挟んで交互に配列されているものである。
【0030】
本実施形態においては、補助電極7、8は発光領域グループAの発光領域A、又は発光領域グループBの発光領域Bを挟んで交互に位置される。ここでは、発光領域Aと隣接する発光領域Bとの間に補助電極8が形成され、補助電極8を挟む発光領域A及び発光領域Bの領域境界の各反対側に補助電極7がそれぞれ配置されている。発光領域Bの透明電極4は、その矩形の領域境界に沿う一辺が補助電極8と略平行して接合され、他辺が補助電極7と絶縁層9により絶縁されている。これと同様に、発光領域Aの透明電極4は、絶縁層9により補助電極8と絶縁され、補助電極7と接合されている。
【0031】
本実施形態によれば、発光領域グループA、B間で補助電極7又は8を共用できるので、面状発光素子1の補助電極の本数が少なくなり、発光領域間隔を狭くでき非発光部の面積を小さくできると共に、電力給電用の駆動回路と補助電極との接続数が減るので、それらの電気接続が容易になる。
【0032】
なお、本発明は上記各種実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を変更しない範囲で適宜に種々の変形が可能である。例えば、上記各実施形態においては、面状発光素子の発光領域を4領域とし、発光領域グループを2グループとしたが、これに限らず発光領域を4領域以上、発光領域グループを2グループ以上としてもよい。また、発光領域A、Bを正方形状としたが、他の多角形や曲線を含む形状等としてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 面状発光素子
4 透明電極
5 発光層
7、8 補助電極
9 絶縁層
A、B 発光領域、グループ(発光領域グループ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光領域に区分けされた発光層を該発光層に電源供給するための透明電極を含む電極により挟持すると共に、前記各発光領域の境界近傍に前記透明電極に電力供給するための補助電極を配置して成る面状発光素子を備えた表示装置であって、
前記複数の発光領域は、少なくとも2つのグループにグルーピングされており、
前記補助電極は、前記グループの各々に対応して設けられると共に、電力供給対象であるグループが指定されており、指定されたグループの発光領域の透明電極とは導通され、指定されたグループ以外の発光領域の境界近傍ではその透明電極と絶縁処理されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記補助電極の電気抵抗が前記透明電極のそれより小さいことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
一方の発光領域グループ用の補助電極と、もう一方の発光領域グループ用の補助電極とが発光領域を挟んで交互に配列されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記面状発光素子は、通常時に複数のグループの発光領域を一定輝度で点灯し、非常時に少なくとも一方の発光領域を点滅させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−170290(P2011−170290A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36562(P2010−36562)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】