説明

表示装置

【課題】立体視可能な表示装置で、表示画像中の対象物に動きを与えることができる。
【解決手段】板状の導光板3と、導光板3の端部3aから光を入射させる光源4と、導光板3の表面3b側に配置した、パララックスバリア方式又はレンズアレイ方式におけるマスク11又はレンズアレイと、を備えた表示装置であって、導光板3に、その端部3bから入射した光源4からの光を表面3b側に反射させる反射面6aを有するドット状の反射部6を設け、導光板3とマスク11又はレンズアレイとを、相対的に移動可能とすることを特徴とする表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイなどに用いられる表示装置に関し、詳しくは表示画像を立体的に観察者に視認させる立体視のための表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(発光ダイオード)は、高効率、長寿命の光源として、様々な用途に使われている。LEDは指向性を持つ点状光源であり、単独ではスポット照明などとしての使用に制限される。このため、透明な樹脂板等の導光板と組み合わせて線状や面状の光源として使用される場合も多い。この例としては、液晶バックライト、広告用ライトパネル等が挙げられる。
【0003】
また、LEDを利用した表示装置として、透明なアクリル、ポリカーボネート等の導光板の表面にドット状の切り欠き(以下、単に、ドットともいう)を入れて、導光板の側面から入射されたLED光をドットで反射させて表面に模様を描く表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この表示装置は、ドットで反射されたLED光がなす模様を透明な導光板上に表示させるものであり、透明性があり意匠性に優れるため、ディスプレイ等に用いられている。
【0004】
このような「導光体を用いた表示装置」に後述する立体視などの様々な効果を与えるために、パララックスバリア方式やレンズアレイ方式などの視差を利用した方式を用いることができる(例えば、特許文献2参照)。パララックスバリア方式では、パララックスバリアと呼ばれる遮光部と開口部が交互かつ所定の繰り返しピッチで並んだマスクを利用する。レンズアレイ方式では、微小なレンズが所定の繰り返しピッチで並んだレンズアレイを利用する。なお、これらの方式を用いた「導光体を用いた表示装置」では、前記パララックスバリアやレンズアレイの背後に、視点ごとの画像を分割して並べた画像(以下、分割画像ともいう)を表示させる。
【0005】
パララックスバリア方式とレンズアレイ方式は基本的原理が同じなので、以下、主にパララックスバリア方式を用いた「導光体を用いた表示装置」について説明する。
図8に示すように、パララックスバリア方式で用いられるマスクには、分割画像が表示される画像面(上述した導光板にドット加工を施す例では、ドット加工面に相当)から一定の距離をおいて、スリット(開口部)と遮光部を交互かつ一定の繰り返しピッチで配置したものが用いられる。ここではA、B、Cの3つの視点が設定されており、それらの視点ごとの画像A、B、Cを、視点A、B、Cのそれぞれから見える領域A、B、Cに表示する。なお、表示画像は、マスクからの距離に比べて視点からの距離を充分大きくとることができるので、「各領域の幅」≒「スリット幅」となり、この例の3視点の場合、「遮光部幅」/「スリット幅」=(視点数−1)=2の関係が成り立つ。
【0006】
ここで、視点A、B、Cのそれぞれからは、視点ごとの画像A、B、Cのいずれかのみが見えることになる。観察者から見える画像は、遮光部でスリット状に遮蔽された断続的なものとなるが、マスクの繰り返しピッチが画像全体に比べて充分小さければ、充分に連続した一体の画像として認識できる。
【0007】
ここまでの説明では、視点は単一のものとして説明したが、実際には観察者の目は左右2視点あり、視差により各々の目で異なる角度から対象物を見ている。このため、視差を考慮した左右で異なる画像を見させることにより対象物を立体として認識させることが可能となる。なお、このような立体視が可能な表示装置を、ステレオグラムと呼ぶことがある。
【0008】
図9に示すように、視点A、Bを、右眼、左眼の視点に設定し、各視点で視差を考慮した異なる画像を見せることにより、画像中の対象物が立体として認識される。また、視点Bと視点Cを、右眼、左眼の視点として同様に設定することにより、右眼、左眼の視点を、B、Cに移した場合も同様に画像中の対象物が立体として認識される。
【0009】
また、レンズアレイ方式でも、図10に示すように、視点A、B、Cのそれぞれからは、視点ごとの画像A、B、Cのいずれかのみが見えるようにできるので、立体視効果を得るようにできる。
【0010】
なお、パララックスバリア方式とレンズアレイ方式とは、画像面の明るさの点で異なっている。パララックスバリア方式では、視点数が多くなると開口部の面積が相対的に小さくなるので、外光が入らなくなって画像面が暗くなる。このため、通常、バックライトなどの内照方式の照明が必要である。これに対して、レンズアレイ方式では、視点数が多くなっても開口部の面積は変わらないので、画像面は明るいままである。このため、通常、照明を設けることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2007/123202号
【特許文献2】特開2003−295117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来、パララックスバリア方式やレンズアレイ方式の「導光体を用いた表示装置」においては、表示画像中の対象物に動きを与えることができなかった。従って、例えば、注意喚起のための表示を行っても、期待した効果が得られないことがあった。
【0013】
この発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、パララックスバリア方式やレンズアレイ方式の「導光体を用いた表示装置」で、表示画像中の対象物に動きを与えることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題に対し、本発明の以下の手段により解決を図る。
すなわち、本発明の請求項1に係る表示装置は、板状の導光板と、該導光板の端部から光を入射させる光源と、前記導光板の表面側に配置した、パララックスバリア方式又はレンズアレイ方式におけるマスク又はレンズアレイと、を備えた表示装置であって、前記導光板に、その端部から入射した前記光源からの光を表面側に反射させる反射面を有するドット状の反射部を設け、前記導光板と前記マスク又はレンズアレイとを、相対的に移動可能とすることを特徴とする。
また、本発明の請求項2に係る表示装置は、請求項1に記載の表示装置において、前記反射部が、前記導光板に形成された切欠きからなり、前記反射面の前記導光板の表面に対する傾斜角度は40度以上60度以下であることを特徴とする。
また、本発明の請求項3に係る表示装置は、請求項1又は2に記載の表示装置において、前記導光板と前記マスク又はレンズアレイとが、互いの平行を保ちつつ相対的に移動可能であることを特徴とする。
また、本発明の請求項4に係る表示装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示装置において、前記導光板と前記マスク又はレンズアレイのうちの少なくとも一方に、前記導光板と前記マスク又はレンズアレイとの間の距離を一定以下となるように規制する規制手段を設けることを特徴とする。
また、本発明の請求項5に係る表示装置は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置において、前記導光板と前記マスク又はレンズアレイの間に、前記導光板と前記マスク又はレンズアレイとを離間させる方向に付勢する付勢手段を設けることを特徴とする。
また、本発明の請求項6に係る表示装置は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の表示装置において、前記マスクを、前記導光板とは異なる透明板又は透明フィルム上の印刷物として構成することを特徴とする。
また、本発明の請求項7に係る表示装置は、請求項4に記載の表示装置において、前記規制手段は、前記導光板の表面側に立設した2本以上の頭付き軸部材であることを特徴とする。
さらに、本発明の請求項8に係る表示装置は、請求項6に記載の表示装置において、前記透明板又は透明フィルムを平行リンク機構を構成するように回動可能に支持する複数のリンクと、前記リンクを回動させるための駆動手段とからなる機構により、前記導光板と前記マスク又はレンズアレイとを相対的に移動可能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、パララックスバリア方式やレンズアレイ方式の「導光体を用いた表示装置」で、表示画像中の対象物に動きを与えることができる。特に、導光板とマスクとを、互いの平行を保ちつつ相対的に移動可能とすることにより、右眼用の反射部から右眼に達する光と、左眼用の反射部から左眼に達する光との交差点(浮き量)も可変となる。このため、表示画像中の立体的に認識される対象物が観察者に対して近づいたり遠ざかったりするといった動きを与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る第一実施形態に係る3次元表示装置を示した斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】反射部の拡大図である。
【図4】表示画像が立体的な画像として観察者に視認される原理を説明する図である。
【図5】本発明の3次元表示装置の原理について説明する図である。
【図6】本発明に係る第二実施形態に係る3次元表示装置を示した側面図である。
【図7】本発明に係る第三実施形態に係る3次元表示装置を示した側面図である。
【図8】パララックスバリア方式の原理を説明する図である。
【図9】パララックスバリア方式の原理を説明する図である。
【図10】レンズアレイ方式の原理を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第一実施形態>
以下、この発明の第一実施形態における表示装置を図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の表示装置1を示す斜視図であり、図2は図1のII−II線に沿う断面図である。図3は、本発明の表示装置を構成する導光板に形成された反射面の拡大図である。
【0018】
本発明の表示装置1は、導光板3とマスク板10とから構成されている。マスク板10は、頭付き軸部材21(規制手段)によって導光板3に取り付けられている。導光板3の表面3bとマスク板10のマスク11の間に間隔が設けられており、かつ、マスク板10は導光板3に対して可動状態で取り付けられている。また、導光板3とマスク板10との間には圧縮バネ22(付勢手段)が介在している。
【0019】
まず、導光板3について説明する。図1の斜視図、及び図2の断面図に示されるように、導光板3は透明な板状であり、導光板3の端面3a(端部)には光源4が設けられている。
光源4としては、LED、LD(レーザーダイオード)などを用いることができ、例えば導光板3の一辺の端面3aに沿って配列された複数のLEDで構成することができる。なお、光源4としては、白、赤、緑、青などの色光を発するものを任意に選択することができる。
【0020】
導光板3は裏面3c(他方の面)に複数の反射部6(後述)からなる表示面5が形成された平面視矩形の透明板から構成されている。導光板3は、透明な材料であればよく、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、シクロポリオレフィン樹脂等などの合成樹脂からなる板や、ガラス板などが用いられ、その中でも透明性、加工の容易さなどの点からアクリル板が好ましい。
導光板3の厚さは、例えば0.3mm〜10mmとすることができる。また、導光板3の四隅には、後述するマスク板10を取り付けるためのネジ穴9が形成されている。
なお、本発明において、透明であるとは、導光板の裏面3cに形成された反射部6(後述)からの反射光が視認できる程度の光透過性をもつことをいう。
【0021】
図3に示すように、前記表示面5を構成する複数の反射部6は、導光板3の裏面3cに形成された切欠きであり、光源4から出射されて端面3aから入射した光を導光板3の表面3b側に反射する反射面6aを有する。
図3に示す例では、反射部6は、反射面6aを斜辺とする三角形となる断面を有する。反射部6の形状は断面V字状ということもできる。反射面6aは、反射部6を構成する2つの面のうち光源4に近い方の面である。
【0022】
反射部6は、導光板3内に形成されて、光源4からの光を表面3b側に反射する構造であればよく、その構成は図示例に限定されない。例えば、四角形以上の多角形(例えば台形)、扇形などの断面形状をもつ切欠きであってもよい。また、導光板3に形成された貫通孔であってもよいし、導光板3内に形成された空間部であってもよい。
反射部6の平面視形状は、特に限定されないが、矩形、三角形、五角形などの多角形、円形、楕円形などであってよい。
【0023】
導光板3に対する反射面6aの傾斜角度(図3に示す角度α)は、小さすぎれば出射光の傾斜角度が小さくなり、表示装置1を正面から見たときの反射部6の視認性が低下する。また、傾斜角度αが大きすぎれば、光の入射角度が臨界角を超え、反射面6aを透過する光の割合が増加するため、光の反射効率が低下し、光の利用効率が低くなる。
このため、反射面6aの傾斜角度αは、40度以上60度以下が好ましく、45度以上55度以下がさらに好ましい。傾斜角度αを前記範囲とすることによって、光の反射効率を高くするとともに、反射光を表面1bに対し垂直またはそれに近い角度で出射させ、反射部6の視認性を高めることができる。
反射部6を構成する2つの面のうち光源4から遠い方の面6bの傾斜角度(図3に示す角度β)は、100度以下とすると、平面視したときの反射部6の面積を小さくできるため好ましい。
【0024】
表示面5は、複数の反射部6からなるものであれば特に限定されないが、これら反射部6が所定の表示画像をなすように配列された構成が好ましい。例えば、文字、記号、図形、模様、またはこれらのうち2以上の組み合わせとなる配列が可能である。
また、本実施形態の表示面5は、導光板3の裏面3cと略一致しているが、例えば、反射部6が、導光板3内に形成された空間であった場合には、表示面5は、導光板3の表面3bと裏面3cとの間に位置することになる。
【0025】
本発明の3次元表示装置を構成する導光板3は、光源4からの光を端面3aから入射させ、次いで、反射部6の反射面6aで反射させ、次いで、表面3b側から出射させることができる。光源4からの光は、反射面6aで反射し、ほぼ一定の方向(図示例では表面3bにほぼ垂直な方向)に向かうため、反射光の強度は十分に大きくなる。
表示画像はこの反射光から構成されるため、マスク11を使用するにもかかわらず、非常に明るい画像が得られる。また、前記反射光により表示が構成されるため、バックライト等の照明が不要であり、薄型化が可能である。
【0026】
次に、マスク板10について説明する。マスク板10は、その裏面10bにマスク11が印刷された、平面視が前記導光板3と略同形の透明板又は透明フィルムによって形成されている。
マスク板10は、導光板3と同様に、透明な材料であればよく、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、シクロポリオレフィン樹脂等などの合成樹脂からなる板や、ガラス板などが用いられ、その中でも透明性、加工の容易さなどの点からアクリル板が好ましい。
マスク板10の厚さは、例えば0.1mm〜10mmとすることができる。また、マスク板10の四隅には、マスク板10を導光板3に取り付ける際に用いる頭付き軸部材21用の取付孔13が形成されている。
【0027】
マスク11は、マスク10の裏面10bに印刷された遮光面であり、複数のスリット部(開口部)11aを除いて黒色に印刷されており、印刷部が遮光部11bとなる。スリット部11aは、所定の間隔をおいて互いに平行に配置されている。
【0028】
次に、導光板3と、マスク板10とを組み合わせた、表示装置1について説明する。
上述したように導光板3には、ネジ穴9が形成されており、平面視が前記導光板3と略同形のマスク板10には、前記ネジ穴9に対応して取付孔13が形成されている。マスク板10は、先端部に前記ネジ穴9に対応したネジ溝が形成された頭付き軸部材21を用いて、導光板3に取り付けられる。
図1に示すように、頭付き軸部材21は、頭部21a(規制手段)、胴部21b、及びネジ部21cより構成されている。頭付き軸部材21の胴部21bの外径は、取付孔13の内径よりも僅かに小さく形成されており、これによって、マスク板10は頭付き軸部材21の長手方向に摺動可能となっている。取付孔13の内面にすべり軸受などを組み込むことによって、胴部21bとの摩擦を低減することが好ましい。また、頭付き軸部材21の頭部21a(規制手段)によって、マスク板10と導光板3との距離は一定以下になるように規制される。
【0029】
また、図1及び図2に示すように、圧縮バネ22(付勢手段)が導光板3とマスク板10との間に介在するように取り付けられる。この際、頭付き軸部材21は圧縮バネ22を貫通するように取り付けられるため、圧縮バネ22の内径は、頭付き軸部材21の胴部21bよりもやや大きいものが選択される。マスク板10は、圧縮バネ22を介在させることによって、常に上方に付勢されるようになっている。
【0030】
本発明の表示装置1は、上述したような構成とし、マスク板10を、例えば人の手によって押圧することによって、マスク11と導光板3の裏面3cとが、互いの平行を保ちつつ相対的に移動可能としている。つまり、マスク11と、反射部6が形成されている表示面5とは、互いの平行を保ちつつ相対的に移動可能である。
【0031】
なお、導光板3又はマスク板10には、マスク板10の可動域を制限するようなストッパー(図示せず)が形成されていることが好ましい。
【0032】
次に、本発明の実施形態に係る表示装置1の作用について図を参照して説明する。まず、図4を参照して、表示画像を立体的に観察者に視認させる原理を説明する。
図4のx軸は、導光板3の表示面5に対応し、z軸は導光板3の表示面5からの距離に対応している。また、符号Mはマスク(遮光部)を示すものであり、該マスクMにはスリットS(開口部)が設けられている。符号Dは表示面5を構成する反射部である。点線は、光源から光が入射した際に、反射部で反射した光が、反射部Dから両眼に達する光を示すものである。
【0033】
図4に示すように、反射部Dの位置は、マスクMのスリットSを通して、右眼R(一方の眼)と左目L(他方の眼)のいずれか一方に観察可能となる位置とされる。反射部Dのうち1つが、観察者の右眼Rと左眼Lのうちいずれか一方に視認され、他の反射部Dのうち1つが右眼Rと左眼Lのうち他方に視認されることによって、反射光は立体像として認識される。
【0034】
右眼R用の反射部D1はスリットSを通して右眼Rに観察されるが、マスクMにより遮られることで左眼Lには観察されない。左眼L用の反射部D2はマスクMにより遮られることで右眼Rには観察されないが、左眼LにはスリットSを通して観察される。
右眼R用の反射部D1から右眼Rに達する光と、左眼L用の反射部D2から左眼Lに達する光との交差点Cは、x軸(導光板3の裏面3c)から離れた位置にあるため、両眼の視差により反射光は立体的な画像として認識される。
【0035】
次に、本発明の表示装置1の原理について説明する。
図5は、マスクMとx軸(導光板3の表示面5)との距離dを変化させた様子を示す図である。図5において、前記距離は、d0からd1に変化している。図5より、マスクMと反射ドットとの距離を変化させることによって、反射部D1から反射する光と、反射部D2から反射する光との交差点Cが、マスクMの移動方向に沿う方向に移動することがわかる。その変化量はdの変化量と比例する。例えば、dが2倍(d1=2×d0)となれば、zも2倍となる。
本発明の表示装置1の特徴は、この原理に基づき、マスク11の導光板3に対する位置を可変とすることを可能にした機構(可変機構)を有することである。
【0036】
図1及び図2に示す、本発明の第一実施形態に係る表示装置1は、通常状態においては、マスク板10が、上方向(マスク板10が導光板3から離れた方向)に付勢されている。この状態において、導光板3の裏面3cからマスク板10のマスク11との距離は、5mmである。この状態から、例えば観察者の手によって、マスク板10を押圧すると、前記距離が2mmとなり変化する。これによって、上で説明したように、反射部6から反射する光の交差点が移動し、立体的な表示画像として視認された表示画像が、観察者に対して遠ざかるような効果が生じる。
また、マスク板10を押圧した状態から、マスク板10を開放すると、立体的な表示画像として視認された表示画像が、観察者に対して近づくような効果が生じる。
【0037】
また、本実施形態に係る表示装置1は、表示画像を立体的に観察者に視認させるための手法としてパララックスバリア方式を採用したが、この方式に限ることはなく、レンズアレイ方式を採用し、レンズアレイと画像表示面との距離を可変とすることによって同様の効果を奏するような3次元表示装置としてもよい。
【0038】
例えば、このような機構を有する表示装置1は、自由に観察者がマスク板10を押すことができるように設置することによって、観察者に対して画像が近づいたり遠ざかったりするアミューズメント用途の表示装置として利用することができる。
【0039】
<第二実施形態>
図6は、本発明の第二実施形態に係る表示装置1bを示すものである。
なお、以下の説明において、図1に示す表示装置1と共通の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。また、図6は、表示装置1bの側面図であるが、図2の第一実施形態の断面図が、マスク11のスリット11aの長手方向に沿う方向から見た断面図である(ゆえにスリット11aが複数確認できる)のに対して、図6は、マスク11のスリットの長手方向に直交する方向から見た側面図である。
【0040】
本発明の第二実施形態に係る表示装置1bは、第一実施形態に係る表示装置1とほぼ同様の導光板3bと、マスク板10bとから構成されている。第一実施形態に係る3次元表示装置1と異なる点は、マスク11と導光板3bとの位置関係を可変とする機構である。
【0041】
本実施形態の可変機構は、マスク11と表示面5とを平行に保ちながら、距離を変化させることを可能にする平行リンク機構である。平行リンク機構は、表示装置1bの四隅に設けられた4個のリンク23から構成されている。リンク23は、図6からも明らかなように、マスク11と表示面5との平行を維持するとともに、両者の距離を変化させることができるように構成されている。リンク23はそれぞれ回転軸24によって、回動自在に固定されている。
また、マスク板10bと表示装置2bとの間には、圧縮バネ22(付勢手段)が配置されており、これによって、マスク板10bは、上方に付勢される。
【0042】
本実施形態の可変機構は、平行リンク機構であるため、マスク板10bと表示装置2bとの垂直方向の距離が変化すると同時に、水平方向の距離も変化する。ただし、マスク板10bは、スリットの長手方向に沿う方向に移動するように構成されているため、スリットがスリットの長手方向に垂直な方向に移動することはない。よって、導光板3bの表示面5とマスク11の距離は変化するものの、表示面5に垂直な方向から見て、スリットを通して見ることのできる表示面は変化しない。
【0043】
また本実施形態の表示装置1bのリンクの一つには、受動歯車25が回転軸24と回転中心が同一になるように取り付けられている。また該受動歯車25と勘合する駆動歯車26を介して、モーター27(駆動手段)が取り付けられている。モーター27は、図示しない制御装置によって制御されており、よって、マスク11と表示面5との距離を自在に制御することができる。
【0044】
本実施形態の表示装置1bは、上述したような構成とし、マスク11と表示面5とは互いの平行を保ちつつ相対的に移動可能となっており、この移動を自動的に行うことを可能としている。
例えば、このような機構を有する表示装置1bを、例えば自動ドアに設置することによって、注意喚起を促す画像に観察者に近づいたり遠ざかったりする動きを与えることができるため、観察者に対してより明りょうに注意喚起を促すことができる。
【0045】
<第三実施形態>
図7は、本発明の表示装置の第三実施形態1cを示すものであり、図7(a)は、マスク板10cと導光板3cが離れた状態を、図7(b)は、マスク板10cと導光板3cが接近した状態を示す。
なお、以下の説明において、図1に示す表示装置1と共通の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0046】
第三実施形態に係る表示装置1cは、マスク板10cと、押圧板15(規制手段)と一体化された導光板3cとから構成されている。押圧板15は、透明な板である。マスク板10cは、壁などに固定されているか、壁(パーテーション)や、扉そのものとして使用される板状の部材である。マスク板10cの所定位置には、後述する本実施形態の導光板3cを動作可能に固定するための取付孔13cが形成されている。
【0047】
導光板3cと押圧板15とは、前記マスク板10cを介して反対側に設置されているとともに、導光板3cと押圧板15とは前記取付孔13cを挿通した複数の円柱状の連結部材16によって接続されている。連結部材16はその両端において、導光板3cと押圧板15とを、導光板3cと押圧板15とが略平行となるように所定の方法で固定している。
図7に示すように、導光板3cとマスク板10cとは、引っ張りバネ17によって接続されている。これにより、導光板3cとマスク板10cとは、互いに接近するように付勢される。また、マスク板10cには、通常時のマスク11と導光板3cとの距離を一定に保つためのストッパー18が設けられている。
【0048】
本実施形態の表示装置1cは、上述したような構成とすることによって、図7(b)に示したような状態においては、導光板3cが上方向に付勢され、導光板3の表面がストッパー18に接触している。この状態においては、ストッパー18によってマスク11と導光板3cの表示面5は、接近した状態に保たれている。
この状態から、押圧板15を下方向に押圧することによって、マスク11と導光板3cの表示面5は図7(a)に示すように離間する。導光板3cとマスク11との間の距離は、押圧板15によって一定以下となるように規制される。このように、マスク11と表示面5との距離が遠ざかることによって、導光板3cに表示される立体的な画像として視認される表示画像は、観察者に対して遠ざかるような効果を奏する。
【0049】
例えば、このような機構を有する表示装置1cを、観察者が自由に押圧板15を押すことができるように設置することによって、観察者に対して画像が近づいたり遠ざかったりするアミューズメント用途の表示装置として利用することができる。
【0050】
本発明において、請求項1に記載されている「立体的に認識させる」とは、両眼で認識された表示画像が、もともと反射部の存在していた平面とは異なる空間上の位置に結像して見えるようにするという意味であり、認識された画像そのものが立体であるという意味ではない。
例えば認識された表示画像が平面や線、あるいは点であっても、それらが導光板と異なる空間上の位置に結像して見える場合、立体的に認識されると定義する。
これはステレオグラムにおける一般的な認識とも一致するものである。
【符号の説明】
【0051】
1…表示装置、3…導光板、4…光源、5…表示面、10…マスク板、11…マスク、21…頭付き軸部材、22…圧縮バネ(付勢手段)、23…リンク、24…回転軸、25…受動歯車、26…駆動歯車、27…モーター(駆動手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の導光板と、該導光板の端部から光を入射させる光源と、前記導光板の表面側に配置した、パララックスバリア方式又はレンズアレイ方式におけるマスク又はレンズアレイと、を備えた表示装置であって、
前記導光板に、その端部から入射した前記光源からの光を表面側に反射させる反射面を有するドット状の反射部を設け、
前記導光板と前記マスク又はレンズアレイとを、相対的に移動可能とすることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記反射部は、前記導光板に形成された切欠きからなり、前記反射面の前記導光板の表面に対する傾斜角度は40度以上60度以下であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記導光板と前記マスク又はレンズアレイとは、互いの平行を保ちつつ相対的に移動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記導光板と前記マスク又はレンズアレイのうちの少なくとも一方に、前記導光板と前記マスク又はレンズアレイとの間の距離を一定以下となるように規制する規制手段を設けることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記導光板と前記マスク又はレンズアレイの間に、前記導光板と前記マスク又はレンズアレイとを離間させる方向に付勢する付勢手段を設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記マスクを、前記導光板とは異なる透明板又は透明フィルム上の印刷物として構成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記規制手段は、前記導光板の表面側に立設した2本以上の頭付き軸部材であることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項8】
前記透明板又は透明フィルムを平行リンク機構を構成するように回動可能に支持する複数のリンクと、前記リンクを回動させるための駆動手段とからなる機構により、前記導光板と前記マスク又はレンズアレイとを相対的に移動可能とすることを特徴とする請求項6に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−8464(P2012−8464A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146303(P2010−146303)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】