説明

表面が滑らかな、球から楕円球形状である重合物微粒子

【課題】
本発明が解決しようとする課題は熱可塑性重合物の製造方法、重合度に因らず、汎用重合物を原料として、粒度分布幅の狭く、平均粒径が50μm以下の重合体微粒子を廉価に供給することであり、その簡便な製造法を提供することである。
【解決手段】
本発明の微粒子は常温気体不飽和化合物原料を含有する熱可塑性付加重合物で分子量が10000以上、またはおよび熱可塑性縮重合物からなり、平均粒径が50μm以下で、粒度分布幅の小さく、表面が滑らかな、球から楕円球形状である微粒子である。好ましくは常温気体不飽和化合物原料がエチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレンの少なくとも1種であり、拡散フィルムなどの光散乱用、化粧品の滑り効果剤用、ブロッキング防止剤として使用される。また、剪断応力下、溶融重合物と分散媒が準安定なエマルジョンを形成する系からなり、このエマルジョンを維持した状態で冷却固化する重合体微粒子の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光散乱微粒子用微粒子、化粧品用微粒子、ブロッキング防止用微粒子などの用途の重合物微粒子及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
重合物の粒状化にはハンマーミルなどを使用した物理粉砕が一般的であるが、重合物の場合、柔らかく微粉砕することが出来ない。さらに微粉砕する場合には液体窒素または液体天然ガスなどで低温に冷却し、硬度を上げ、脆くした状態で粒子を衝突させ粉砕するジェットミルを使用される。しかし、この方法では得られる粒子形状は不定形であり、表面が滑らかにならない欠点がある。また、高価な冷凍粉砕機械を使用し、生産性が低く加工費が高価で経済的に好ましくない。さらに、コンタミの混入の惧れがある。
【0003】
表面が滑らかな粒子形状を得られる製造方法としては乳化重合が一般的である。しかし、乳化重合法は付加重合物のみに限定され、縮重合物では適用することが出来ない。一般的な乳化重合物のモノマーは常温液体のアクリル系が多く、常温気体原料ポリオレフィンでは反応装置が高価となり、また特許文献1に記載されているように水により通常重合触媒が失活するため、水が触媒毒とならない希土類元素を含む特殊触媒を必要とし、経済的、実用的に不利である。また、乳化重合物の乳化剤、コロイドなどの添加剤の混入が避けられない欠点がある。
【0004】
重合物の種類を問わないケミカル粉砕はポリマー溶液を冷却することにより、溶解度を越えたポリマーを析出させる方法であり、工程が長く、収率が低いため加工費が高価で経済的に好ましくない。また、特許文献2に記載されているナイロン樹脂粒子は一見球状であっても、詳細に見ると析出に異方性があり不定形の粒状物しかえられず、表面の滑らかな粒子が得られない。また、析出する際に先に析出した粒子が核となり、逐次析出するため粒度分布の幅が広くなるという欠点がある。
【0005】
低分子量重合体オレフィンであるポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスは分子量が10000未満であり、通常は5000以下である。このような低分子量重合体オレフィンは流動パラフィンなどの溶媒中で、加圧加熱することにより、溶解させ、冷却途上で準安定なエマルジョン状態とし、急冷することにより、球状で表面が滑らかな微粒子を製造することが出来る。しかし、分子量が10000以上では加熱されたパラフィンオイルに溶解しなくなるため、この方法を使用することが出来ない。
【特許文献1】特表2003−517062号公報
【特許文献2】特開平5−32795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は熱可塑性重合物の製造方法、重合度に因らず、汎用重合物を原料として、粒度分布幅の狭く、平均粒径が50μm以下の重合体微粒子を廉価に供給することであり、その簡便な製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の微粒子は常温気体不飽和化合物原料を含有する熱可塑性付加重合物で分子量が10000以上、またはおよび熱可塑性縮重合物からなり、平均粒径が50μm以下で、粒度分布幅の小さく、表面が滑らかな、球から楕円球形状である微粒子である。好ましくは常温気体不飽和化合物原料がエチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレンの少なくとも1種であり、レンチキュラースクリーン、拡散フィルムなどの光散乱用、化粧品の延び向上、シワボカシ効果や、触感に変化を与える滑り効果剤用、ブロッキング防止剤として使用される。また、剪断応力下、溶融重合物と分散媒が準安定なエマルジョンを形成する系からなり、このエマルジョンを維持した状態で冷却固化する重合体微粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の重合体微粒子は汎用重合体を原料とし、一般的な2軸押出し機を使用するため廉価に供給することが出来る。また、溶融状態で準安定なエマルジョン状態を維持したまま急冷するため、表面が滑らかな球状又は楕円球状の微粒子が得られ、粒径分布幅も小さく、光散乱、化粧品、ブロッキング防止剤、トナー、インキ、塗料んどの原料として利用することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の重合体微粒子は常温気体不飽和化合物原料を含有する熱可塑性付加重合物で分子量が10000以上、またはおよび熱可塑性縮重合物からなり、平均粒径が50μm以下で、粒度分布幅の小さく、表面が滑らかな、球から楕円球形状である微粒子である。好ましくは常温気体不飽和化合物原料がエチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレンの少なくとも1種であり、また分散媒に親和性のある重合体Aと微粒子を主として形成する重合体に親和性のある重合体Bからなるブロックコポリマーを1重量%以上含有する。レンチキュラースクリーン、拡散フィルムなどの光散乱用、化粧品の延び向上、シワボカシ効果や、触感に変化を与える滑り効果剤用、ブロッキング防止剤として使用される。また、剪断応力下、溶融重合物と分散媒が準安定なエマルジョンを形成する系からなり、このエマルジョンを維持した状態で冷却固化する重合体微粒子の製造方法である。
【0010】
本発明の原料重合体は熱可塑性重合体であれば良く、ポリオレフィン、ポリスチレンなどの付加重合物、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルなどの縮重合物、及び共重合物などがあり、汎用樹脂としても市販されている。また、汎用樹脂であるため着色顔料を含んだマスターバッチなども市販され、廉価に混合使用することが出来トナー、インキ、塗料などの原料として好適である。
【0011】
エチレン、プロピレン、ブチレンなど常温気体モノマーの分子量が大きいポリオレフィン、および縮重合物の表面が滑らかな球状微粒子の製造は従来の方法では製造が困難であるため、本発明の独壇場である。
【0012】
分散媒に親和性のある重合体Aと微粒子を主として形成する重合体に親和性のある重合体Bからなるブロックコポリマーは重合体Aおよび重合体Bにより異なるため、適宜選択する必要がある。新日本石油(株)製ベンゼン化合物であるハイゾールSASを分散媒とし、プロピレンの微粒子を製造する場合、例えばスチレンとエチレンプロピレンブロック共重合体がクラレ(株)から市販されているセプトン(商標名)を使用すると良い。セプトンはホットメルト原料など多用途に大量に使用されているため、比較的廉価である。縮重合物用のブロックコポリマーとしては例えば、各種熱可塑性ウレタン、ポリブチレンテレフタレート・ポリオールブロック共重合体が東レ(株)からハイトレル(商標名)、ポリアミド・ポリオールブロック共重合体がアルケマ(株)からベバックス(商標名)などとして既に大量に市販され、使用することが出来る。分散媒としてはトリオキサン、グリセリンなどが良い。
【0013】
上記ブロックコポリマーはポリマー界面活性剤として作用し、皮膜状の界面形成を行うため、分子量は小さい方が好ましい。好ましくは重合体微粒子総重量の1重量%以上である。このブロックコポリマーを併用すると分散媒と微粒子ポリマーの選定範囲が広くなり、好ましい。
【0014】
分散媒は重合物の融点以上に加熱して製造するため、耐熱性のある分散媒が好ましい。また、重合物と親和性がないと剪断力がなくなると相分離を起こし、エマルジョンが破壊されてしまうため、適宜選定する必要がある。分散媒は多くの場合、洗浄し、再使用される。次の用途で用いられる分散媒を使用するとこの洗浄工程を省略することが出来、また、微粒子の2次凝集を防ぐことも出来るため好ましい。例えば化粧品に多く使用されるグリセリン、低モルポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどはこの好例である。
【0015】
本発明に使用する混合攪拌機としては一般的な2軸押出し機、ニーダーなどを使用することが出来る。中では剪断力が大きく、取り出しまでの滞留時間が短い2軸押出し機が好ましい。また分散媒液体を途中で注入可能なプランジャーまたはギヤポンプなどの計量ポンプ付き2軸押出し機が好ましい。
【0016】
原料重合体はペレット状でホッパーから計量供給されるが、ブロックコポリマーも同時に計量供給される。2軸押出し機のユニットは攪拌効率の良いユニットを選別し、混合、攪拌設定最高温度は重合物の融点以上が好ましいが、剪断力により発熱するため実質温度が融点以上に保持されれば良い。混合、攪拌工程以降は速やかに吐出、冷却されることが好ましく、索状にノズルから取り出した後、水冷、または水中カッターで急冷、カットすることが好ましい。
【0017】
微粒子の平均径は微粒子を十分に希釈後、超音波により分散し、撮影したSEM写真をScionイメージにより画像解析し、求めた。
【実施例】
【0018】
(実施例1)
水中カッター付き30mmφ、神戸製鋼(株)製2軸押出し機を使用し、最高設定温度250℃、吐出量20kg/時、回転速度200rpm、MFR8で分子量約20万のポリプロピレン30重量部、溶融後の部分に分散媒出光興産(株)製パラフィンオイル(ダフニーオイルCP12N)70重量部をプランジャーポンプで注入し、溶融混合・攪拌し、準安定なエマルジョン状態でノズルから押出し、水中カットし、分散媒YSオイルをアセトンで洗浄し、乾燥後、本発明のポリプロピレン微粒子を製造した。SEM写真の画像解析結果、得られた微粒子は球形換算平均半径38μmの滑らかな表面のほぼ球状であった。分散媒パラフィンオイルは非極性でポリプロピレンと親和性に優れた分散媒であった。
【0019】
(比較例1)
実施例1と同様にし、分散媒をグリセリンにのみ変更し、製造したが、極性の大きいグリセリンとポリプロピレンは相分離を起こし、微粒子を製造することは出来なかった。
【0020】
(実施例2)
実施例1と同様にし、分散媒を新日本石油(株)製ベンゼン化合物であるハイゾールSASに、ポリプロピレンをMFR1、分子量約30万のLLポリエチレンに、ポリエチレン重量に対し5重量%のセプトンSEPS2002をさらに添加するのみ変更し、本発明の本発明のポリエチレン微粒子を製造した。SEM写真の画像解析結果、得られた微粒子は球形換算平均半径32μmの滑らかな表面の楕円球状であった。セプトンSEPS2002はスチレン含有量30%のブロックコポリマーである。
【0021】
(実施例3)
水中カッター付き30mmφ、神戸製鋼(株)製2軸押出し機を使用し、最高設定温度230℃、吐出量20kg/時、回転速度200rpm、IV値。65のポリブチレンテレフタレート30重量部、ポリブチレンテレフタレート・テトラメチレンポリオールブロック共重合物6重量部、溶融後の部分に分散媒トリオキサン65重量部をプランジャーポンプで注入し、溶融混合・攪拌し、準安定なエマルジョン状態でノズルから押出し、水中カットし、分散媒トリオキサンをアセトンで洗浄し、乾燥後、本発明の本発明のポリブチレンテレフタレート微粒子を製造した。SEM写真の画像解析結果、得られた微粒子は球形換算平均半径2.7μmの滑らかな表面のほぼ球状であった。
【0022】
(実施例4)
特開2004-217580号公報に準じ、イの成分を混合した後、3本ロールをかけて、均一に分散させ、しかる後、予め90℃に加熱して可溶化し、室温まで冷却しておいたロと、ハを加えて、ニーダーで80℃に加温しながら、混練り、混合し、室温まで冷却し、金皿に秤取り、加温下加圧成型し、粉体含有固形化粧料を製造した。これらについて、パネラーを用いて、パフへののり具合、肌へののり具合を評価した。本発明のポリエチレン微粒子の代わりにマイカを増量した比較例と比較し、本発明のポリエチレン微粒子を使用した化粧料の方がのりが著しく改善することがわかった。

ソルビタンセスキオレート 1.5重量部、セチルイソオクタネート 18 重量部、二酸化チタン 25 重量部、群青 0.5重量部、ベンガラ 0.7重量部、黄色酸化鉄 5 重量部

実施例2で製造した本発明ポリエチレン微粒子 2 重量部、セチルイソオクタネート 5 重量部

マイカ 42.3重量部
【0023】
(実施例5)
特開2005-128577号公報に準じ、両面に易接着処理を施した厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム基材の片面に、以下に示す組成の光拡散インキを塗布、乾燥させて光拡散層を形成後、他面に粘着剤(東洋インキ製造(株)製BPS3233D)を塗布、乾燥させて粘着層を形成して光拡散フィルム とした。光拡散フィルム の光拡散層の膜厚は乾燥後の膜厚で15μm、粘着層の乾燥後の膜厚は20μmである。このフィルムを使用することにより、画像が改善され、迷光がなくなり、解像度が改善され、鮮明感が得られた。
光拡散インキ組成
アクリル樹脂(三菱レーヨン(株)製 ダイヤナールBR−60) 30重量部
光拡散微粒子
実施例3の本発明のポリエステル微粒子 7重量部
メチルエチルケトン 28重量部
トルエン 28重量部
ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製 バイロン200) 30重量部
【0024】
(実施例6)
MFR3のLLDPEに実施例3の本発明のポリエステル微粒子1重量部をドライブレンドし、定法により220℃でTダイ法により厚さ15μmのフィルムを製造した。ポリエステル微粒子を配合しないフィルムではタッキングが著しかったが、ポリエステル微粒子を配合することにより、優れたブロッキング効果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温気体不飽和化合物原料を含有する熱可塑性付加重合物で分子量が10000以上、またはおよび熱可塑性縮重合物からなり、平均粒径が50μm以下で、粒度分布幅の小さく、表面が滑らかな、球から楕円球形状である微粒子。
【請求項2】
常温気体不飽和化合物原料がエチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレンの少なくとも1種である請求項1の微粒子。
【請求項3】
レンチキュラースクリーン、拡散フィルムなどに使用される請求項1の光散乱用微粒子。
【請求項4】
化粧品の延び向上、シワボカシ効果や、触感に変化を与える滑り効果剤用として使用される請求項1の化粧品用微粒子。
【請求項5】
ブロッキング防止剤として使用される請求項1の微粒子。
【請求項6】
剪断応力下、溶融重合物と分散媒が準安定なエマルジョンを形成する系からなり、このエマルジョンを維持した状態で冷却固化する請求項1の重合体微粒子の製造方法。
【請求項7】
分散媒に親和性のある重合体Aと微粒子を主として形成する重合体に親和性のある重合体Bからなるブロックコポリマーを1重量%以上含有する請求項1の微粒子。

【公開番号】特開2007−112888(P2007−112888A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305117(P2005−305117)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000117319)ヤスハラケミカル株式会社 (85)
【出願人】(503188092)有限会社サンサーラコーポレーション (14)
【Fターム(参考)】