説明

表面保護パネル及び液晶画像表示装置

【課題】 ガスバリア性や透明性、耐熱性を有し、さらに表面硬度、耐衝撃性、打ち抜き加工性、耐候性の全てに優れた表面保護パネル、及びそれを用いて作製した、光反射によるギラつきの少ない液晶画像表示装置の提供。
【解決手段】 構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む脂肪族ポリカーボネート樹脂(a1)を主成分とする層(X層)を有する透明樹脂層(A層)と、ガスバリア性透明樹脂層(B層)とを積層してなることを特徴とする表面保護パネルの作製。


(但し、上記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、携帯ゲーム機、携帯パソコン、モバイル端末、テレビ、タッチパネルなどの液晶表示板を備えた液晶画像表示装置において、液晶表示板の前面側(即ち視認側)に配置する表面保護パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から液晶表示板を備えた液晶画像表示装置において、液晶表示板を保護する表面保護パネルとしてガラス板が配置されてきた。しかし近年は表面保護パネルの軽量化や耐衝撃性向上の要請に応えるため、ガラス板に代替してアクリル樹脂や芳香族ポリカーボネート樹脂等の透明樹脂板が用いられるようになってきた。
【0003】
また液晶表示板と表面保護パネルとの間に空間を設けることにより、緩衝性を高めて液晶表示板の損傷を防止する工夫がなされてきたが、液晶表示板の表面や表面保護パネルの表面で光反射が起こることで、屋外で使用する際に画像の視認性が低下したり、製品の薄型化の妨げになったりする問題が生じていた。これらを解決するために液晶表示板と表面保護パネルとを、薄く透明な粘着層を介して直接積層し封止する手法が提案されるようになってきた。
【0004】
さらに近年画像表示装置の小型化や薄型化が進むにつれて使用環境が多様化し、例えばモバイルパソコン、小型携帯ゲーム機、カーナビゲーションシステムのタッチパネルディスプレイなど、屋外での使用頻度が増加してきたり、高温多湿な国や地域でもこうした画像表示装置が広く普及してきたりしている。
【0005】
透明樹脂板はガラス板に比べて水蒸気バリア性やガスバリア性が一般に劣るため、表面保護パネルとして長期間使用したり、高温多湿な環境で搬送・保管・使用したりすると、透明樹脂板から放出されるアウトガス、透明樹脂板の耐候劣化に伴って放出される分解劣化物、前面側から透明樹脂板内部を透過してくる水蒸気等の外部ガスが、液晶表示板まで到達し、液晶画像表示装置の内部に水滴や曇りを生じる等の不具合が起こっていた。
【0006】
こうした外部ガスの侵入防止に関して、例えば特許文献1においては、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムや2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムなどの基材フィルムに金属酸化物膜を形成してなる透明ガスバリア性フィルムを、透明合成樹脂板の両面に積層してなる構成の透明ガスバリア性フィルム積層板が開示されている。特許文献2においては、延伸変性PETフィルムに金属酸化物膜を形成してなる水蒸気バリア性フィルムを、透明合成樹脂板の片面側にのみ積層してなる構成の水蒸気バリア性透明積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−145658号公報
【特許文献2】特開2007−152847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、表面保護パネルの使用環境が多様化するにつれて、従来の技術において想定されなかった課題が新たに見出されるようになってきた。特許文献1や特許文献2に記載の積層体に用いる透明樹脂板には、アクリル樹脂や芳香族ポリカーボネート樹脂のみを用い
ているため、当該積層体はガスバリア性や透明性、耐熱性には優れるものの、爪などによって容易に傷がつかないような高い表面硬度や、シートから製品を打ち抜く際にクラック等が生じないような耐衝撃性及び打ち抜き加工性、さらに屋外での使用においても色調が変化することなく、外観を維持できる耐候性については、改良の余地が多く残されていた。
【0009】
そこで本発明の目的は、ガスバリア性や透明性、耐熱性を有し、さらに表面硬度、耐衝撃性、打ち抜き加工性、耐候性の全てに優れた表面保護パネル、及びそれを用いて作製した、光反射によるギラつきの少ない液晶画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、液晶表示板を備えた液晶画像表示装置において、液晶表示板の前面側に配置する表面保護パネルが、特定の脂肪族ポリカーボネート樹脂層を含む透明樹脂層と、ガスバリア層を有するガスバリア性透明樹脂層とを積層してなるものとすることで、上記課題を全て解決することを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
なお、本発明において「主成分とする」とは、当該層における対象成分の比率が50重量%以上、好ましくは75重量%以上、さらに好ましくはで90重量%以上(100重量%を含む)であることをいう。
【0012】
第1の発明によれば、構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む脂肪族ポリカーボネート樹脂(a1)を主成分とする層(X層)を有する透明樹脂層(A層)と、ガスバリア性透明樹脂層(B層)とを積層してなる表面保護パネルが提供される。
【0013】
【化1】

【0014】
(但し、上記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
【0015】
第2の発明によれば、第1の発明において、前記A層は、前記X層と、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含まない脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂(a2)を主成分とする層(Y層)とを積層してなることを特徴とする。
【0016】
第3の発明によれば、第2の発明において、前記A層は、前記Y層の両面に前記X層を積層してなることを特徴とする。
【0017】
第4の発明によれば、第1から第3のいずれかの発明において、前記ジヒドロキシ化合物が、下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物であることを特徴とする。
【0018】
【化2】

【0019】
第5の発明によれば、第1から第4のいずれかの発明において、前記B層を構成する基材フィルム(b1)は、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、セルロース樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂及びポリアミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を主成分とすることを特徴とする。
【0020】
第6の発明によれば、第1から第5のいずれかの発明において、前記B層を構成するガスバリア層(b2)が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、インジウムスズ酸化物、窒化ケイ素及びフッ化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物であることを特徴とする。
【0021】
第7の発明によれば、第1から第6のいずれかの発明において、前記A層と前記B層とが、接着剤層を介して積層されることを特徴とする。
【0022】
第8の発明によれば、第1から第7のいずれかの発明において、前記A層の前面側に反射防止層、防汚層、ハードコート層の何れかを積層し、背面側に前記B層を積層してなることを特徴とする。
【0023】
第9の発明によれば、第1から第8のいずれかの発明にて提供される表面保護パネルにおける前記B層と液晶表示板とが、粘着層を介して積層されてなる、液晶画像表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ガスバリア性や透明性、耐熱性を有し、さらに表面硬度、耐衝撃性、打ち抜き加工性、耐候性の全てに優れた表面保護パネル、及びそれを用いて作製した、光反射によるギラつきの少ない液晶画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の液晶画像表示装置の層構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態の例について説明する。但し、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0027】
本発明の表面保護パネル(以下、「本表面保護パネル」と称することもある)は、液晶表示板を備えた液晶画像表示装置において、液晶表示板の外側、すなわち視認側に配置する表面保護パネルであって、透明樹脂層に、ガスバリア層を有するガスバリア性透明樹脂層を積層してなる構成を備えたものである。
なお「視認側」とは、利用者が液晶画像表示装置の液晶画像を視認する場合における視認者側という意味であり、本発明においては「前面側」とも称することとする。そして、本発明の表面保護パネルにおいて、前面側の対面であって、液晶画像表示装置においては液晶表示板側に位置する面を「背面側」と称することとする。
【0028】
<透明樹脂層(A層)>
本発明における透明樹脂層(A層)は、主に液晶画像表示装置の破損防止の表面保護パネルの役割を果たす層であり、本発明においては下記詳述の特定の脂肪族ポリカーボネート樹脂(a1)を主成分とする層(X層)を構成中に有することが必須であって、当該X層のみからなるものでも良く、さらに前記a1以外の樹脂(a2)を主成分とする層(Y層)と積層してA層とすることも可能である。
【0029】
屋外での使用機会が増えるにつれて偏光レンズを備えたサングラスを掛けた状態でディスプレイを目視する機会も増えてきており、このとき表面保護パネルの光学異方性が大きいと液晶画像を認識できなくなる不都合が生じることがある。本来A層の光学異方性に特段の制限は無いが、こうした不都合を解消するためには、実質的に延伸されていないA層を用いることが好ましい。
【0030】
実質的に延伸されていない樹脂層を作製する方法としては、例えばポリマー溶液又はモノマー溶液を溶液キャスト法で製膜して延伸せずにシート状に形成する方法、溶融押出成形で製膜して延伸せずに金属ベルトや金属薄層を持つ弾性ロールで圧着してシート状に形成する方法、等が挙げられる。
【0031】
A層を多層の構成とする場合の製造方法は、構成する各層を単層で製膜してから熱融着等で積層してもよいが、工程の簡略化、歩留まり向上等の観点から、共押出しして製膜する方法で製造することが好ましい。その方法は特に制限されるものではなく、Tダイキャスト法、カレンダー法等の公知の方法を用いることができる。
【0032】
A層の厚さは、液晶画像表示装置の破損防止の役割を果すことができればよく、通常0.3mm以上、3mm以下であるが、本発明によれば0.15mm以上、0.3mm以下の範囲においても不具合なく使用することができ、部材の薄肉軽量化に資することができる。
【0033】
<脂肪族ポリカーボネート樹脂(a1)>
本発明においては、構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む脂肪族ポリカーボネート樹脂(a1)が用いられる。
【0034】
【化3】

【0035】
(但し、前記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
すなわち、前記ジヒドロキシ化合物は、二つのヒドロキシル基と、更に前記一般式(1)の部位を少なくとも含むものを言う。
【0036】
前記ジヒドロキシ化合物としては、分子構造の一部が前記一般式(1)で表されるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキ
シエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール、下記一般式(3)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を有する化合物が挙げられる。具体的には、下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。また、下記一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物としては、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン(慣用名:スピログリコール)、3,9−ビス(1,1−ジエチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(1,1−ジプロピル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどが挙げられる。
これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0037】
【化4】

【0038】
【化5】

【0039】
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1から炭素数3のアルキル基である。)
【0040】
前記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物は、生物起源物質を原料として糖質から製造可能なエーテルジオールである。とりわけイソソルビドは澱粉から得られるD−グルコースを水添してから脱水することにより安価に製造可能であって、資源として豊富に入手することが可能である。これら事情により、イソソルビドを主たる構成成分とすることが最適である。
【0041】
本発明における脂肪族ポリカーボネート樹脂(a1)は構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位を有していてもよく、例えば、国際公開第2004/111106号パンフレットに記載の脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位や、国際公開第2007/148604号パンフレットに記載の脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を挙げることができる。
【0042】
前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、及び1
,6−ヘキサンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有することが好ましい。
【0043】
前記脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも、5員環構造又は6員環構造を含むものであることが好ましい。6員環構造は共有結合によって椅子形又は舟形に固定されていてもよい。5員環構造又は6員環構造である脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことにより、得られるポリカーボネートの耐熱性を高くすることができる。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は通常70以下であり、好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。
【0044】
前記5員環構造又は6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物としては、上述の国際公開第2007/148604号パンフレットに記載のものを挙げることができ、中でも、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール及びペンタシクロペンタデカンジメタノールを好適に例示することができ、中でもシクロヘキサンジメタノール又はトリシクロデカンジメタノールが経済性や耐熱性などから最も好ましく、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
尚、シクロヘキサンジメタノールの中でも、工業的に入手が容易である、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0045】
前記脂肪族ポリカーボネート樹脂(a1)の、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合としては、好ましくは35モル%以上、より好ましくは40モル%以上であって、また、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下であればよい。こうした範囲とすることで、該脂肪族ポリカーボネート樹脂(a1)の硬度は芳香族ポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂との中間の値を取るようになり、表層にアクリル樹脂層が配置された表面保護パネルよりも打ち抜き加工性が飛躍的に向上する。具体的には、90モル%以下であることによって、表面硬度や耐熱性が優れ、かつ耐衝撃性の低下を抑止できるため、打ち抜き加工時の歩留まりの低下や、表面保護パネルとしての製品を取扱う際の破損などの種々の不具合を防止できる。一方、35モル%以上であることによって、耐衝撃性や打ち抜き加工性が優れ、かつ表面硬度や耐熱性の低下を抑止できる。
【0046】
前記脂肪族ポリカーボネート樹脂(a1)は、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、更に脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とからなることが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が含まれていてもよい。
【0047】
前記脂肪族ポリカーボネート樹脂(a1)のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により測定され、通常45℃以上、155℃以下であり、80℃以上、155℃以下であることが好ましく、100℃以上、155℃以下であることがさらに好ましい。尚、通常は単一のガラス転移温度を有する。前記ガラス転移温度は、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位に由来するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の種類や含有量を適宜選択することで調整が可能である。前記脂肪族ポリカーボネート樹脂(a1)は、ガラス転移温度を前記範囲とすることによって搬送時、保管時、使用時等で想定される熱環境に十分耐えることができる。
【0048】
前記脂肪族ポリカーボネート樹脂(a1)は、一般に用いられる重合方法で製造することができ、ホスゲン法、炭酸ジエステルと反応させるエステル交換法のいずれでも良い。なかでも、重合触媒の存在下に、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有する
ジヒドロキシ化合物と、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物と、必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを反応させるエステル交換法が好ましい。エステル交換法は、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物と、脂肪族又は脂環式ジヒドロキシ化合物と、必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを塩基性触媒、さらにはこの塩基性触媒を中和する酸性物質を添加し、エステル交換反応を行う製造方法である。
【0049】
炭酸ジエステルの代表例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーネート、ビス(ビフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、特にジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。
【0050】
前記脂肪族ポリカーボネート樹脂(a1)は、可視光〜近紫外波長領域での光吸収が殆ど無いため、特段の紫外線吸収剤を配合しなくても経時的な黄変劣化が起こらない利点がある。しかし前記a1を主成分とする層(X層)を透過した紫外線が下層で吸収されて下層が黄変劣化することを抑制するために、前記X層には必要最低限の紫外線吸収剤を配合することができる。用いる紫外線吸収剤は特に制限はないが、芳香族ポリカーボネート樹脂に通常用いられるものを好適に用いることができ、例えばチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社の「チヌビン1577FF」等を挙げることができる。
【0051】
前記X層には任意の添加成分として、透明着色剤、ブルーイング剤、酸化防止剤、熱安定剤等を、本発明の本質を損なわない範囲で添加しても良い。
【0052】
前記a1はその共重合成分を調整することにより高表面硬度のものから、比較的低表面硬度だが耐衝撃性に優れるものまで製造することができる。よって、組成や配合比の異なる複数種のa1を主成分とする層を各々積層したものをX層として、これを前記A層の一部として用いることもできる。
【0053】
前記X層は表面硬度が高く耐候性にも優れるため、前記A層内においては少なくとも前面側に設けられることが好ましい。特には前記A層の温度環境の変化による反りを抑制する等のために、前記A層において、後述するY層の両面に前記X層を積層して、中心対称の層構造とすることがさらに好ましい。
【0054】
本発明におけるX層の厚さは30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましい。X層の厚さが30μm以上であることにより、A層の表面硬度を向上させることが可能であるほか、X層に紫外線吸収剤を配合した場合に、下層に紫外線が容易に透過することを抑止できる。
【0055】
またX層の厚さの上限値は、特段の制限はなく、例えばX層のみをもってA層としてもよいし、前記下限値以上の厚さでX層を設けて高表面硬度を有しながら、打ち抜き加工性や耐衝撃性に優れるY層を積層することで、各種性能のバランスを取るように用途等に合わせて設計してもよい。
【0056】
本発明におけるX層は透明、すなわち目視で背面が視認できることが重要であり、その全光線透過率(JIS K 7361−1)は、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上であれば、本発明におけるA層、さらには本発明の表面保護パネルの透明性を維持することができるとともに、光反射によるギラつきを抑制することができる。前記a1の重合比や前記X層の組成比などを調整することによって、前記の全光線透過率を実現
することができる。
【0057】
<a1以外の樹脂(a2)を主成分とする層(Y層)>
a1以外の樹脂(a2)を主成分する層(Y層)は、前記X層とY層とを積層してなるA層が目視で透明と視認されれば、特に主成分とする樹脂a2を制限するものではない。例えば、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含まない脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂をa2として例示することができる。中でも、透明性、耐熱性、耐衝撃性の観点から、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含まない脂肪族ポリカーボネート樹脂や、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0058】
このとき、Y層は前記a2を主成分とする層を単層でY層としても良いし、前記a2を主成分とする層を2層以上積層したものをY層とすることもできる。
【0059】
本発明におけるY層は透明、すなわち目視で背面が視認できることが好ましく、その全光線透過率(JIS K 7361−1)は、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上であれば、本発明におけるA層、さらには本発明の表面保護パネルの透明性を維持することができるとともに、光反射によるギラつきを抑制することができる。Y層の樹脂の組成比などを調整することによって、前記の全光線透過率を実現することができる。
【0060】
<ガスバリア性透明樹脂層(B層)>
本発明におけるガスバリア性透明樹脂層(B層)は、基材フィルム(b1)と、その片面又は両面にガスバリア層(b2)を積層してなる構成を備えた層であり、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で他の層を積層してもよい。
【0061】
前記基材フィルム(b1)は、主にガスバリア層(b2)の支持体の役割を果たすものであり、目視で透明と視認されれば、その材質は特に限定するものではない。例えば、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、セルロース樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂及びポリアミド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を基材フィルムの主成分として例示することができる。中でも、光学的等方性、透明性、剛性などの観点から、セルロース樹脂、その中でもトリアセチルセルロース(TAC)が好ましい。
【0062】
前記基材フィルム(b1)の厚さは、ガスバリア層(b2)の製膜時の機械的強度、圧着時のシワ入り防止などの役割を果たし得る厚さであれば特に限定するものではない。一般的には10μm以上、188μm以下の厚さ範囲であるのが好ましく、特に25μm以上、80μm以下の厚さ範囲であるのが好ましい。
【0063】
前記基材フィルム(b1)は、前記A層同様に光学異方性に特段の制限は無いが、前記目的のために、実質的に延伸されていないことが好ましい。基材フィルム(b1)の製造方法も、A層同様に光学異方性が小さい樹脂層となるような方法を適宜選択することができる。
【0064】
前記ガスバリア層(b2)は、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、インジウムスズ酸化物、窒化ケイ素及びフッ化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物から形成することができる。中でも、酸化ケイ素、酸化アルミニウムは、透明で緻密な膜を安価に作ることができるので好適である。
【0065】
前記ガスバリア層(b2)の形成方法は、特に限定するものではないが、例えば物理蒸着(PVD)法、化学蒸着(CVD)法、スパッタリング法などを好ましく例示することができる。
【0066】
前記ガスバリア層(b2)の厚さは、特に限定するものではないが、通常0.1nm以上、好ましくは0.5nm以上とする。こうすることで十分なガスバリア性を発現させることができる。また通常500nm以下、好ましくは100nm以下とする。こうすることでガスバリア層(b2)の亀裂や剥離の発生を十分抑制することができる。
【0067】
なお、基材フィルム(b1)とガスバリア層(b2)との密着性向上のため、基材フィルムとガスバリア層との間にプライマー層を設けてもよい。プライマー層(アンカーコート層)の形成法は、基材フィルム(b1)の表面にプライマーコート剤を塗布する方法等を挙げることができる。
例えばプライマーコート剤としては、溶剤溶解性又は水溶性のポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂及びアルキルチタネート等を単独、あるいは2種以上併せて使用することができる。
【0068】
本発明におけるB層は透明、すなわち目視で背面が視認できることが重要であり、その全光線透過率(JIS K 7361−1)は、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上であれば、本発明の表面保護パネルの透明性を維持することができるとともに、光反射によるギラつきを抑制することができる。前記基材フィルムの組成比や、前記ガスバリア層の厚みなどを調整することによって、前記の全光線透過率を実現することができる。
【0069】
本発明におけるB層の酸素透過度(JIS K 7126)は、好ましくは5.0(c
c/m ・24hrs.atm)以下、より好ましくは2.5(cc/m・24hr
s.atm)以下、さらに好ましくは1.0(cc/m ・24hrs.atm)以下
であれば、前記A層や後述する接着剤層から放出されるアウトガス、前記A層や後述する接着剤層の耐候劣化に伴って放出される分解劣化物が、液晶表示板まで到達することがないため好適である。
【0070】
本発明におけるB層の水蒸気透過度(JIS K 7129)は、好ましくは5.0(
cc/m ・24hrs.atm)以下、より好ましくは2.5(cc/m・24h
rs.atm)以下、さらに好ましくは1.0(cc/m ・24hrs.atm)以
下であれば、前面側から前記A層や後述する接着剤層の内部を透過してくる水蒸気が、液晶表示板まで到達することがないため好適である。
【0071】
<A層とB層の積層方法>
本発明において、ガスバリア性透明樹脂層(B層)は、透明樹脂層(A層)に直接積層してもよいが、接着剤層を介して積層することもできる。この時、B層の積層面としては特に制限されること無く、ガスバリア層の有無に関わらず、一方の面を直接、または接着剤層を介してA層に積層することができる。
【0072】
直接積層する方法としては、特に限定するものではないが、例えば熱融着などによって直接ラミネートする方法を挙げることができる。
【0073】
一方、接着剤層を介して積層する場合は、例えば接着剤を塗布した後に、圧着ロールで
連続的に貼り合わせる方法などを挙げることができる。この際、接着剤としては、例えばドライラミネート型接着剤、UV硬化型接着剤、エポキシ系接着剤、熱可塑性接着剤などを挙げることができる。中でも、透明で耐候性があり凝集力の高いアクリル系の接着剤が好ましい。
この時、前記接着剤層の全光線透過率(JIS K 7361−1)は85%以上であるのが好ましく、特に88%以上であるのが好ましい。
【0074】
<A層及びB層以外の層>
本表面保護パネルは、前記A層と、前記B層とを積層してなる構成であるが、さらにこれら以外の層を積層して作製することもできる。
【0075】
例えば、透明樹脂層(A層)の片面にガスバリア性透明樹脂層(B層)を積層し、かつ他方の片面に、反射防止層、防汚層、ハードコート層の何れか1種類以上を積層してなる構成を採用することもできる。好ましくは、前記A層の前面側に反射防止層、防汚層、ハードコート層の何れかを積層し、背面側に前記B層を積層することで、屋外での画像表示装置の視認性をより一層向上させることが可能である。
【0076】
本発明の表面保護パネルは、表面硬度に優れた表面保護パネルであって、その指標である鉛筆硬度は、F以上であることが好ましく、H以上であることがさらに好ましい。鉛筆硬度がかかる範囲にあることで、耐擦傷性に優れ、液晶画像表示装置用途に好適な表面保護パネルを提供することができる。例えば、前記A層の厚みや、前記脂肪族ポリカーボネート樹脂(a1)の組成を、本明細書に記載の好ましい範囲で調整することによって、鉛筆硬度をかかる範囲とすることができる。
【0077】
本発明の表面保護パネルは、耐衝撃性に優れた表面保護パネルであって、その指標である破壊エネルギー(kgf・mm)は、200kgf・mm以上であることが好ましく、500kgf・mm以上であることがより好ましく、800kgf・mm以上であることがさらに好ましい。破壊エネルギーがかかる範囲にあることによって、打ち抜き加工性に優れた表面保護パネルを提供することができる。
打ち抜き加工性は、後述するように打ち抜き試験片の加工断面が荒れたり、クラックが入ったりしていないかなどの点を目視により定性的に評価することができる。
例えば、前記A層の厚みや、前記脂肪族ポリカーボネート樹脂の組成、本発明の表面保護パネルの総厚みを、本明細書に記載の好ましい範囲で調整することによって、破壊エネルギーをかかる範囲とすることができる。
【0078】
本発明の表面保護パネルは、前記X層を構成する樹脂組成物への少量の紫外線吸収剤の添加でも耐候性(耐黄変劣化性)に優れた表面保護パネルであって、その指標である色差は、1.0以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.8以下であることがさらに好ましい。色差がかかる範囲にあることによって、全光線透過率の低下やヘーズの上昇、さらには外観の悪化を抑制した積層体を提供することができる。例えば、前記X層を構成する樹脂組成物100重量%に対し、好ましくは0.1重量%以上であって最小限の紫外線吸収剤を添加したり、前記X層の厚みを本明細書に記載の好ましい範囲で調整したりすることによって、色差をかかる範囲とすることができる。
【0079】
<液晶画像表示装置>
本表面保護パネルは、その前記B層側を、粘着層を介して液晶表示板に積層させることにより、液晶画像表示装置を構成することができる。中でも、屋外で使用されるような液晶画像表示装置、例えば携帯電話機、携帯ゲーム機、携帯パソコン、モバイル端末、テレビ、タッチパネルなどの液晶表示パネルを備えた液晶画像表示装置をより好適に構成することができる。
【0080】
この際、粘着層は、各種粘着剤を使用可能であるが、透明で耐候性があり凝集力の高いアクリル系粘着剤が好ましい。
【0081】
アクリル系粘着剤としては、例えばアクリル樹脂系のベースポリマーと、架橋モノマーと、架橋開始剤と、必要に応じてその他添加剤とを含有する接着性組成物からなる接着剤が好ましい。
ここで、ベースポリマーとしては、 (メタ)アクリル酸エステル系共重合体、特に(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体を用いるのが好ましい。
架橋モノマーとしては、アクリル系架橋モノマーを用いるのが好ましい。中でも、単官能(メタ)アクリレートよりは、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート、若しくは、単官能〜4官能(メタ)アクリレートの2種以上が混合してなる混合物などの多官能(メタ)アクリレートからなるモノマーを用いるのが好ましい。
架橋開始剤としては、光開始剤を用いるのが好ましく、開裂型の光開始剤、水素引抜型の光開始剤のいずれかを単独で使用してもよいし、また両者を併用してもよい。
【実施例】
【0082】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0083】
本発明における透明樹脂層(A層)として、以下の材料を用いた。
(A−1)イソソルビド:1,4−シクロヘキサンジメタノール=70:30のモル比率で共重合されてなる、脂肪族ポリカーボネート樹脂(ガラス転移温度:120℃)を溶融押出法で厚さ400μmに未延伸成膜したもの。
【0084】
(A−2)A−1の脂肪族ポリカーボネート樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユーピロンS3000、ガラス転移温度:150℃)とを、溶融押出法でそれぞれ50μm、400μmとなるよう共押出しで未延伸製膜したもの。
【0085】
(A−3)A−2で用いた芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融押出法で厚さ400μmに未延伸成膜したもの。
【0086】
(A−4)アクリル樹脂(三菱レイヨン社製、アクリペットVH5)を溶融押出法で厚さ400μmに未延伸成膜したもの。
【0087】
本発明におけるガスバリア性透明樹脂層(B層)として、以下の材料を用いた。
(B−1)厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)製未延伸フィルムの表面に酸化アルミニウムを真空蒸着させてガスバリア層を形成し、該ガスバリア層の上にアクリル系接着剤(綜研化学社製、SKダイン1882)を塗布し、溶剤を揮発させた後、室温養生してなるフィルム。
【0088】
(実施例1)
透明樹脂層(A層)として、A−1を用い、ガスバリア性透明樹脂層(B層)として、B−1を用いた。A−1の一方の面に、B−1のアクリル系接着剤側を積層し、表面保護パネルを作製した。
【0089】
(実施例2)
透明樹脂層(A層)として、A−2を用いた。なお脂肪族ポリカーボネート樹脂層を前
面側とする。また、ガスバリア性透明樹脂層(B層)として、B−1を用いた。A−2の背面側に、B−1のアクリル系接着剤側を積層し、表面保護パネルを作製した。
【0090】
(実施例3)
防汚性反射防止フィルムとして、防汚性反射防止加工した厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)製未延伸フィルムの表面に、アクリル系接着剤(綜研化学社製、SKダイン1882)を塗布し、溶剤を揮発させた後、室温養生してなるフィルム(日本油脂社製、リアルック♯8701UV−S)(C−1)を準備した。
実施例2において、A−2の前面側に、さらにC−1のアクリル系接着剤側を積層し、表面保護パネルを作製した。
【0091】
(比較例1)
透明樹脂層(A層)として、A−3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表面保護パネルを作製した。
【0092】
(比較例2)
透明樹脂層(A層)として、A−4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表面保護パネルを作製した。
【0093】
(試験及び評価)
1)全光線透過率
JIS K7361−1に準拠して、表面保護パネルの全光線透過率を測定した。85%以上のものを合格とした。
【0094】
2)表面硬度(鉛筆硬度)
JIS K5400に準拠して、雰囲気温度23度の恒温室内で80mm×60mmに切り出した表面保護パネルの表面に対して、鉛筆を45度の角度を保ちつつ1kgの荷重をかけた状態で線を引き、表面状態を目視にて評価した。鉛筆硬度がF以上に硬いものを「○」(合格)とした。
【0095】
3)耐衝撃性(破壊エネルギー)
ハイドロショット高速衝撃試験器(島津製作所社製「HTM−1型」)を用いて、縦方向100mm×横方向100mmの大きさに切り出した表面保護パネルを試料とし、クランプで固定し、温度23℃でシート中央に直径が1/2インチの撃芯を落下速度3m/秒で落として衝撃を与え、試料が破壊するときの破壊エネルギー(kgf・mm)を測定した。破壊エネルギーが200kgf・mm以上のものを合格とした。また破断面の形状を目視観察し、延性的に変形しているものを「○」、やや脆性的に変形しているが著しい破片の飛散はないものを「△」、脆性破壊し破片が多数飛散しているものを「×」として評価した。
【0096】
4)打ち抜き加工性
表面保護パネルからJIS K6251に準拠してダンベル1号試験片を打ち抜き、試験片の加工断面が荒れたりクラックが入ったりする不具合が10回試行中8回以上あるものを「×」、3回以上7回以下前記不具合のあるものを「△」、2回以下前記不具合があるか又は1回も不具合のなかったものを「○」として評価した。
【0097】
5)耐候性(色差)
実施例1及び比較例1、2記載の透明樹脂層(A層)に紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、チヌビン1577FF)を0.4重量%添加して成膜した。また、実施例2記載の透明樹脂層(A層)における脂肪族ポリカーボネート樹脂に同紫外線
吸収剤を3重量%添加して共押出し成膜した。
これら紫外線吸収剤入り透明樹脂層に対して、JIS K6744で引用するJIS B7729に規定されるエリクセン試験装置を用いて、サンシャインウェザーメータ促進耐侯性試験機(スガ試験機社製)を用いて促進耐侯性試験を実施した。条件は前面側を照射面とし、ブラックパネル温度63℃、120分サイクル(照射102分、スプレー18分)とし、曝露600時間後の試料と曝露前の試料との色差を色差計で測定し、色差が1.0以下のものを「○」、1.0を超えるものを「×」として評価した。色差の測定は色彩色差計CR−200(ミノルタ社製)を用いて行った。
【0098】
【表1】

【0099】
表1に記載の通り、実施例に記載の表面保護パネルは、全光線透過率、表面硬度、耐衝撃性、打ち抜き加工性、耐候性のいずれも優れている。一方比較例1に記載の表面保護パネルは、表面硬度と耐候性が劣っている。比較例2に記載の表面保護パネルは、耐衝撃性と打ち抜き加工性が劣っている。
【0100】
(実施例4)
表面保護パネルと液晶表示板との間に配置する粘着層として、アクリル酸エステル共重合体100重量部に対し、アセチルアセトン亜鉛塩:0.5重量部およびアセチルアセトンアルミ塩:0.7重量部を溶融攪拌した後、離型フィルム間にシート状に成形したものを用いた。
実施例2記載の表面保護パネルの背面側とTFT型液晶表示板の表示面とを、厚さ0.5mmの前記粘着層で接合させ、液晶画像表示装置とした。
【0101】
実施例4記載の液晶画像表示装置を、屋外で目視観察したところ、層表面での光反射等によるギラつき等の視認性低下は見られなかった。
【0102】
以上から、本発明の表面保護パネルはガスバリア性や透明性、耐熱性を有し、さらに表面硬度、耐衝撃性、打ち抜き加工性、耐候性に優れた表面保護パネルであって、それを用いて作製した液晶画像表示装置は、光反射によるギラつきの少ない、優れた液晶画像表示装置となることがわかる。
【符号の説明】
【0103】
10 液晶画像表示装置
11 表面保護パネル
12 A層
13 B層
14 液晶表示板
15 接着剤層
16 粘着層
21 X層
22 Y層
31 基材フィルム
32 ガスバリア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む脂肪族ポリカーボネート樹脂(a1)を主成分とする層(X層)を有する透明樹脂層(A層)と、ガスバリア性透明樹脂層(B層)とを積層してなることを特徴とする表面保護パネル。
【化1】

(但し、上記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
【請求項2】
前記A層は、前記X層と、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含まない脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂(a2)を主成分とする層(Y層)とを積層してなることを特徴とする、請求項1に記載の表面保護パネル。
【請求項3】
前記A層は、前記Y層の両面に前記X層を積層してなることを特徴とする、請求項2に記載の表面保護パネル。
【請求項4】
前記ジヒドロキシ化合物が、下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の表面保護パネル。
【化2】

【請求項5】
前記B層を構成する基材フィルム(b1)は、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、セルロース樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂及びポリアミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を主成分とすることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の表面保護パネル。
【請求項6】
前記B層を構成するガスバリア層(b2)が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、インジウムスズ酸化物、窒化ケイ素及びフッ化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物からなることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の表面保護パネル。
【請求項7】
前記A層と前記B層とが、接着剤層を介して積層されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の表面保護パネル。
【請求項8】
前記A層の前面側に反射防止層、防汚層、ハードコート層の何れかを積層し、背面側に前記B層を積層してなることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の表面保護パネル。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の表面保護パネルにおける前記B層と液晶表示板とが、粘着層を介して積層されてなることを特徴とする、液晶画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−201080(P2011−201080A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68831(P2010−68831)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】