説明

表面保護フィルム、及びそれが貼着された光学部品

【課題】表面保護フィルムを剥離した時の剥離帯電圧が低く、かつ、帯電防止性能の経時変化および被着体汚染が少ない表面保護フィルム、及びそれが貼着された光学部品を提供する。
【解決手段】透明な基材フィルム1の片面に、表面抵抗率が1×1013〔Ω/□〕以上である第1粘着剤層2と、表面抵抗率が1×1013〔Ω/□〕未満である第2粘着剤層3とが、この順に積層して設けられたことを特徴とする表面保護フィルム5を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルムなどの光学部品(以下、光学用フィルムと称する)の表面に貼着される表面保護フィルムに関する。さらに詳細には、表面保護フィルムを剥離した時の剥離帯電圧が低く、かつ、帯電防止性能の経時変化および被着体汚染が少ない表面保護フィルム、及びそれを用いた光学部品を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルム等の光学用フィルムを用いたディスプレイなどの光学製品を製造、搬送する際には、該光学用フィルムの表面に表面保護フィルムを貼着して、後工程における光学用フィルムの表面の汚れや傷付きを防止することがなされている。また、光学用フィルムの性能検査、外観検査を、表面保護フィルムを貼着したまま行うこともある。
従来技術による表面保護フィルムは、典型的には、基材フィルムの片面に、微粘着力の粘着剤層を設けた構成を有する。粘着剤層は、表面保護フィルムを光学用フィルムに貼着するための層である。粘着剤層を微粘着力とするのは、使用済みの表面保護フィルムを光学用フィルムの表面から剥離除去するときに、円滑に剥離でき、かつ、光学用フィルムの表面に糊残りが生じないようにするためである。
【0003】
近年、液晶ディスプレイパネルなどの画像表示装置の生産工程において、光学用フィルムの表面上に貼着された表面保護フィルムを、光学用フィルムから剥離除去する際に発生する剥離帯電により、液晶用のドライバーIC等の回路部品が破壊される現象や液晶分子の配向が損失する現象が、件数は少ないながらも起きている。
液晶ディスプレイパネルの消費電力を低減させるため、液晶ディスプレイパネルに使用される液晶材料の駆動電圧が低くなってきており、これに伴って、ドライバーICの破壊電圧も低くなっており、最近では+0.7kV〜−0.7kVの範囲内の剥離帯電圧に抑えることが求められてきている。
このため、被着体から表面保護フィルムを剥離する時に、このような剥離帯電による不具合の発生を防止するため、帯電防止性能を有した粘着剤層を用いた表面保護フィルムが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、アルキルトリメチルアンモニウム塩、水酸基含有アクリル系ポリマー、ポリイソシアネートからなる粘着剤組成物を用いた、表面保護フィルムが開示されている。
また、特許文献2には、イオン性液体と酸価1.0以下のアクリルポリマーからなる粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着シート類が開示されている。
また、特許文献3には、アクリルポリマー、ポリエーテルポリオール化合物、アニオン吸着性化合物により処理したアルカリ金属塩からなる粘着剤組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。
また、特許文献4には、イオン性液体、アルカリ金属塩、ガラス転移温度0℃以下のポリマーからなる粘着剤組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。
【0005】
特許文献1〜4に示されているような、粘着性を有するポリマーに帯電防止剤を添加した場合、粘着剤層の厚みが厚くなる程、経過時間が経つにつれて帯電防止剤が被着体へ移行する量が多くなるという問題がある。アンチグレア処理された偏光板やグレア処理された偏光板などの被着体では、被着体の表面を汚染した汚染物が、比較的に目視での確認が難しいため、問題となりにくいが、反射防止層が偏光板表面にあるAR処理された偏光板などでは、表面汚染が非常に見やすくなるため、被着体の表面汚染性が、経過時間が経つにつれて目立つという現象が見られる。
【0006】
経過時間が経つにつれて剥離帯電防止性能を徐々に出すようにするため、表面保護フィルムの粘着剤層に含有されている帯電防止剤の含有量を減らした場合、表面保護フィルムを被着体に貼合した初期において、剥離帯電圧が高くなる傾向があり、剥離帯電の帯電防止性能と経時安定性の両立が難しいという問題があった。
また、剥離帯電の帯電防止性能と経時安定性の両立のために、粘着剤層の厚みを薄くすることも想定されるが、この場合には、粘着力を所定の値に調整するのが難しく、かつ、アンチグレア処理された偏光板などの光学用フィルムの表面に凹凸のある被着体では、表面の凹凸に表面保護フィルムの粘着剤層の変形が追従できずに、光学用フィルムの表面の凹凸部に気泡が混入するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−131957号公報
【特許文献2】特開2005−330464号公報
【特許文献3】特開2005−314476号公報
【特許文献4】特開2006−152235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、表面保護フィルムを剥離した時の剥離帯電圧が低く、かつ、帯電防止性能の経時変化および被着体汚染が少ない表面保護フィルム、及びそれが貼着された光学部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、表面保護フィルムの粘着剤層を、異なる表面抵抗率を有する粘着剤層を重ねて積層することにより、2層からなる粘着剤層としている。即ち、表面保護フィルムの基材の片面上に表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層と、それに比べて表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層との2層を順に積層することにより、2層からなる粘着剤層の表面層にのみ帯電防止剤を集中させることで、所定の帯電防止性能の発揮と共に、粘着剤層の層高(2層からなる粘着剤層の総厚み)を一定の厚み以上に維持することで、被着体の凹凸形状に対する変形追従性を保持することを技術思想としている。
【0010】
また、前記課題を解決するため、本発明は、透明な基材フィルムの片面に、表面抵抗率が1×1013〔Ω/□〕以上である第1粘着剤層と、表面抵抗率が1×1013〔Ω/□〕未満である第2粘着剤層とが、この順に積層して設けられたことを特徴とする表面保護フィルムを提供する。この際の粘着剤層の表面抵抗率は、粘着剤層を乾燥後の塗布厚が20μm厚にしたサンプルを作成し、その表面抵抗率を三菱化学製ハイレスターUPにて100V、30秒の条件にて測定した。
【0011】
前記第2粘着剤層は、帯電防止剤として界面活性剤、イオン性液体、アルカリ金属塩からなる帯電防止剤群の中から選択した1種または複数種含むものであることが好ましい。
前記第2粘着剤層が、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを使用していることが好ましい。
第1粘着剤層の厚み(A)と第2粘着剤層の厚み(B)の比率(A/B)が、10/1〜1/2の範囲にあることが好ましい。
さらに、本発明は、上述の表面保護フィルムが貼着された光学部品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の表面保護フィルムは、偏光板、位相差板、レンズフィルム等の光学用フィルムの表面に対して直接に接する粘着剤層に、表面抵抗率が相対的に低い(1×1013Ω/□未満)第2粘着剤層を用い、剥離時の剥離耐電圧を低く抑えている。また、帯電防止剤のブリードアウトの経時変化を抑えるため、および粘着力の安定化と、凹凸形状を有する被着体への追従性の確保のため、表面抵抗率が相対的に高い(1×1013Ω/□以上)第1粘着剤層を、基材と表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層との間に設けたものである。この結果、本発明の表面保護フィルムは、帯電防止性能の経時変化および被着体汚染が少なく、剥離時の剥離耐電圧も低く、光学部品の表面を確実に保護でき、光学部品を製造する時の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の表面保護フィルムの概略構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の光学部品の一実施の形態例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の表面保護フィルムの一例を示す断面図である。この表面保護フィルム5は、透明な基材フィルム1の片面に、表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層2と、表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層3とが、順に積層されている。第2粘着剤層3の表面には粘着剤面8を保護するための剥離フィルム4が重ね合わされている。
【0015】
本発明の表面保護フィルムに使用される基材フィルム1としては、透明性を有するプラスチックフィルムが用いられる。これにより、本発明の表面保護フィルムを貼着したまま、光学部品の性能検査、外観検査を行うことができるようになる。本発明の表面保護フィルムに使用される基材フィルム1用のプラスチックフィルムとしては、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステルフィルムが用いられる。ポリエステルフィルムのほか、必要な強度を有しかつ光学適性を有するものであれば、他のプラスチックフィルムも使用可能である。基材フィルム1は、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されていてもよく、また、延伸倍率や延伸の結晶化に伴い形成される軸方法の角度を制御したプラスチックフィルムでもよい。
基材フィルム1の厚みは、特に限定はされないものの、例えば12〜100μm程度であることが好ましく、殊に20〜50μm程度とすることが、価格と取り扱い易さの点からより好ましい。
基材フィルム1には、必要に応じて、表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層2の積層されている面の反対側の表面6に、表面の汚れを防止する目的の防汚層、帯電防止層、傷つき防止のハードコート層などを設けたり、あるいは、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、アンカーコート処理などの易接着処理を施してもよい。
【0016】
表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層2は、2層からなる粘着剤層7のうち、基材フィルム1側に設けられ、表面抵抗率が1×1013Ω/□以上の透明性を有する粘着剤層である。基材フィルム1との密着力が高く、粘着力の安定性、表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層3に悪影響がないことなどの特性を満たせば、表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層2に使用される粘着剤組成物用については、特に限定されるものではなく、公知の粘着剤組成物を使用できる。
表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層2の具体的な粘着剤組成物としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤などが挙げられる。
【0017】
ゴム系粘着剤は、天然ゴム、合成ゴムなどのエラストマーに粘着付与剤、軟化剤、老化防止剤、充填剤などを配合した粘着剤で、必要に応じて架橋剤を添加しても良い。
【0018】
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル系ポリマーに必要に応じて硬化剤や粘着付与剤を添加した粘着剤である。
表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層2の粘着剤組成物に使用される(メタ)アクリル系ポリマーとしては、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレートなどの、好ましくはアルキル基の炭素数が4以上である、アルキル(メタ)アクリレートからなる主モノマーと、アクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどのコモノマーや、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−メチロールメタクリルアミドなどの官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとを共重合したポリマーが一般的である。
硬化剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。
粘着付与剤としては、ロジン系、クマロンインデン系、テルペン系、石油系、フェノール系などが挙げられる。
【0019】
ウレタン系粘着剤は、ハードセグメントとソフトセグメントの種類、組成比を変えたものが挙げられる。
表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層2の粘着剤組成物としては、透明性、耐熱性、及び耐久性に優れ、第2粘着剤層3への影響度合いが少ないことから、アクリル系粘着剤が特に好ましい。
【0020】
表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層3は、2層からなる粘着剤層7のうち、被着体への貼着に用いられ、表面抵抗率が1×1013Ω/□未満の透明性を有する粘着剤層である。表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層3は、(メタ)アクリル系ポリマーなどのベースポリマーに、帯電防止剤を混合したものであり、必要に応じて硬化剤や粘着付与剤を添加した粘着剤組成物からなることが好ましい。
【0021】
表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層3の粘着剤組成物に使用される(メタ)アクリル系ポリマーとしては、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレートなどの、好ましくはアルキル基の炭素数が4以上である、アルキル(メタ)アクリレートからなる主モノマーと、アクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどのコモノマーや、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−メチロールメタクリルアミドなどの官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとを共重合したポリマーが好適に用いられ、必要とされる第2粘着剤層3の特性に応じて、より適切な粘着剤組成物を選定すればよい。
【0022】
帯電防止剤としては、(メタ)アクリル系ポリマーに対して分散性または相溶性の良いものが好ましく、界面活性剤、イオン性液体、アルカリ金属塩、金属酸化物、金属微粒子、導電性ポリマー、カーボン、カーボンナノチューブなどが挙げられるが、表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層3の透明性や(メタ)アクリル系ポリマーに対する親和性などから、表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層3に用いられる帯電防止剤としては、界面活性剤、イオン性液体、アルカリ金属塩などからなる帯電防止剤群の中から選択した1種または複数種を含むことが好ましい。
【0023】
界面活性剤としては、ノニオン系、カチオン系、アニオン系、両性系などが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレン変性シリコーン類などが挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩類、ジアルキルジメチルアンモニウム塩類、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩類などが挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、モノアルキル硫酸塩類、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、モノアルキルリン酸塩類などが挙げられる。
また、両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタインなどが挙げられる。
【0024】
イオン性液体としては、陰イオンと陽イオンとから成り、常温(例えば25℃)で液体である非高分子物質である。陽イオン部分としては、イミダゾリウムイオンなどの環状アミジンイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオン等が挙げられる。また、陰イオン部分としては、C2n+1COO、C2n+1COO、NO、C2n+1SO、(C2n+1SO、(C2n+1SO、PO2−、AlCl、AlCl、ClO、BF、PF、AsF、SbF等が挙げられる。
【0025】
アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる金属塩などが挙げられ、イオン性物質の安定化のため、ポリオキシアルキレン構造を含有する化合物を添加しても良い。
【0026】
表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層3の粘着剤組成物において、(メタ)アクリル系ポリマーなどのベースポリマーに対する帯電防止剤の添加量は、帯電防止剤の種類やベースポリマーとの相溶性の度合いにより異なるが、表面抵抗率と被着体汚染性、粘着力などを考慮して設定すればよい。
【0027】
2層からなる粘着剤層7は、表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層2の厚み(A)と表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層3の厚み(B)の比率(A/B)が、10/1〜1/2の範囲にあることが好ましい。
【0028】
本発明の表面保護フィルム5の片面には、粘着力、表面保護フィルムを剥離する時の剥離帯電圧が低く、被着体汚染性の経時変化が少ないなどの性能を有する粘着剤層が積層されている。
また、表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層3の厚み(B)に対する、表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層2の厚み(A)が10倍を超える場合(すなわちA/B>10/1)には、2層からなる粘着剤層7の総厚み(T)が薄い場合には、剥離時の剥離帯電圧が高くなる。2層からなる粘着剤層7の総厚み(T)が厚い場合には、剥離時の剥離帯電圧は抑えられるが、高速剥離時の粘着力が高くなり過ぎたり、粘着剤層のコストが高くなることから、価格競争力が低下するという問題が生じる。
【0029】
表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層2の厚み(A)に対する、表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層3の厚み(B)が2倍を超える場合(すなわちA/B<1/2)には、2層からなる粘着剤層7の総厚み(T)が薄い場合には、粘着力を所定の値に調整するのが難しく、かつ、アンチグレア処理された偏光板などの表面に凹凸形状のある被着体では、表面の凹凸形状に表面保護フィルム5の、2層からなる粘着剤層7の変形が追従できずに、表面の凹凸形状部に気泡が混入するという問題がある。一方、2層からなる粘着剤層7の総厚み(T)が厚い場合には、被着体である光学用フィルムの表面に対する、汚染性が経過時間が経つにつれて悪くなる問題がある。
【0030】
2層からなる粘着剤層7の総厚み(T)は、特に限定されないものの、例えば5〜40μm程度、殊に10〜30μm程度とすることが好ましい。
本発明の表面保護フィルム5は、被着体の表面に対する剥離強度が、0.03〜0.3N/25mm程度の、軽度な粘着性を有する微粘着剤層からなる第2粘着剤層3が、被着体用の粘着剤層として積層されていることが好ましい。
【0031】
基材フィルム1の片面に、表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層2、および表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層3を順に積層する方法は、公知の方法で行えばよく、特に限定されるものではない。具体的には、
(1)基材フィルム1の片面に、表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層2を塗布、乾燥して積層した後に、該第1粘着剤層2の上に、表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層3を塗布・乾燥して積層する方法、
(2)基材フィルム1の片面に、表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層2を塗布して乾燥する前に、該第1粘着剤層2の上に、表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層3を塗布し、その後に第1粘着剤層2及び第2粘着剤層3を同時に乾燥する方法、
(3)基材フィルム1の片面に、表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層2を塗布・乾燥したものと、剥離フィルム4の片面に、表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層3を塗布・乾燥したものをそれぞれ作成し、該第1粘着剤層2と第2粘着剤層3とを貼合する方法、などがあるがいずれの方法を用いても良い。
【0032】
基材フィルム1の片面に、2層からなる粘着剤層を形成する方法は、公知の方法で行なうことができる。具体的には、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの塗工方法を採用することができる。基材フィルム1に、第1粘着剤層2、および第2粘着剤層3を順に積層して形成した粘着シートの、第2粘着剤層3の表面を剥離フィルム4で保護するのが一般的であるが、剥離フィルム4を用いないで、基材フィルム1/第1粘着剤層2/第2粘着剤層3を順に積層した粘着シートを、テープ状に巻いた製品形態も必要に応じては可能である。
【0033】
剥離フィルム4の構成は、特に限定されるものではないが、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルムの表面に、シリコーン系剥離剤などの剥離剤を用いて剥離処理を施したものが例示される。
【0034】
上記の構成を有する表面保護フィルム5の片面には、帯電防止剤を含有する第2粘着剤層3を積層したことにより、表面保護フィルム剥離時の剥離帯電圧を低く抑えられる。被着体である光学用フィルムから剥離する際の剥離帯電圧が+0.7kV〜−0.7kV、より望ましくは+0.5kV〜−0.5kV、なかんずく+0.1kV〜−0.1kVであるような帯電防止性能にすることが特に好ましい。
この剥離帯電圧は、第2粘着剤層3に含有される帯電防止剤の種類や含有量等によって調整することができる。
【0035】
図2は、本発明の光学部品10の一例を示す概略構成図である。
この光学部品10は、上記の表面保護フィルム5を、第1粘着剤層2の上に積層された第2粘着剤層3を介して、光学用フィルム11の表面に貼着したものである。光学用フィルム11としては、偏光板、位相差板、レンズフィルム、位相差板兼用の偏光板、レンズフィルム兼用の偏光板などが挙げられる。このような光学用フィルム11は、液晶表示パネルなどの液晶表示装置、各種計器類の光学系装置等に組み込まれる。なお、光学用フィルム11は、その厚みによらず、板やシート、フィルム等を包含するものとする。また、本発明の表面保護フィルムは、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルム等の製造工程にも適用可能である。
本発明の光学部品10によれば、表面保護フィルム5が用済みになって剥離除去するときの光学用フィルム11の剥離帯電圧が充分に小さく抑制されるので、ドライバーIC、TFT素子、ゲート線駆動回路などの回路部品を電気的にショートさせて破壊するおそれもなく、液晶表示パネル等のディスプレイ装置の信頼性を保つことができる。
【実施例】
【0036】
次に実施例をあげて、本発明をさらに説明する。
【0037】
(実施例1の表面保護フィルムの作製)
表面抵抗率が1×1013〔Ω/□〕以上である第1粘着剤層の形成用として、2−エチルヘキシルアクリレートと水酸基含有アクリルモノマーからなるアクリル系ベースポリマー100重量部に対して、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤3重量部を配合した粘着剤組成物(a)を作成した。
一方、表面抵抗率が1×1013〔Ω/□〕未満である第2粘着剤層の形成用として、粘着剤組成物(a)に、帯電防止剤としてアルキルトリメチルアンモニウム塩である塩化アルキルトリメチルアンモニウム(花王株式会社製、商品名:エレクトロストリッパーQN)を粘着剤組成物(a)100重量部に対して1重量部の割合で混合して粘着剤組成物(b)を作成した。
粘着剤組成物(a)と粘着剤組成物(b)とを、厚み38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、それぞれの乾燥後の塗布厚が20μmとなるように塗布・乾燥させた後、測定した表面抵抗率は、それぞれ1.5×1014〔Ω/□〕、7.5×1012〔Ω/□〕であった。
次に、基材フィルムとして用いた、厚み38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、粘着剤組成物(a)を乾燥後の塗布厚が15μmとなるように塗布して積層した後、粘着剤組成物(a)の塗布面の上に粘着剤組成物(b)を乾燥後の塗布厚が5μm(2層の粘着剤層の総厚みが20μm)になるように塗布して積層した。その後、熱風循環式オーブンにて、2層の粘着剤層を乾燥させて、硬化した後、2層の粘着剤層の表面を保護するために、シリコーン系剥離剤にて剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(剥離フィルム)を貼合して粘着シートを作成した。得られた粘着シートを40℃で3日エージングして、実施例1の表面保護フィルムを得た。
【0038】
(実施例2の表面保護フィルムの作製)
基材フィルムの片面に、粘着剤組成物(a)と粘着剤組成物(b)との乾燥後の塗布厚を、それぞれ、17μm、3μmに積層した以外は、実施例1と同様にして実施例2の表面保護フィルムを得た。
【0039】
(実施例3の表面保護フィルムの作製)
基材フィルムの片面に、粘着剤組成物(a)と粘着剤組成物(b)との乾燥後の塗布厚を、それぞれ、10μm、10μmに積層した以外は、実施例1と同様にして実施例3の表面保護フィルムを得た。
【0040】
(比較例1の表面保護フィルムの作製)
基材フィルムの片面に、粘着剤組成物(b)を用いずに、粘着剤組成物(a)のみを、乾燥後の塗布厚が20μmとなるように積層した以外は、実施例1と同様にして比較例1の表面保護フィルムを得た。
【0041】
(比較例2の表面保護フィルムの作製)
基材フィルムの片面に、粘着剤組成物(a)を用いずに、粘着剤組成物(b)のみを、乾燥後の塗布厚が20μmとなるように積層した以外は、実施例1と同様にして比較例2の表面保護フィルムを得た。
【0042】
(比較例3の表面保護フィルムの作製)
基材フィルムの片面に、粘着剤組成物(a)と粘着剤組成物(b)との乾燥後の塗布厚を、それぞれ、19μm、1μmとなるように積層した以外は、実施例1と同様にして比較例3の表面保護フィルムを得た。
【0043】
(比較例4の表面保護フィルムの作製)
基材フィルムの片面に、粘着剤組成物(a)と粘着剤組成物(b)との乾燥後の塗布厚を、それぞれ、5μm、15μmとなるように積層した以外は、実施例1と同様にして比較例4の表面保護フィルムを得た。
【0044】
(実施例4の表面保護フィルムの作製)
粘着剤組成物(a)の100重量部に対して、帯電防止剤としてリチウム金属塩である過塩素酸リチウムを1.0重量部添加し、粘着剤組成物(c)を作成した。粘着剤組成物(c)を、厚み38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、乾燥後の塗布厚が20μmとなるように塗布・乾燥させた後、測定した表面抵抗率は2.8×1011〔Ω/□〕であった。
基材フィルムの片面に、粘着剤組成物(a)と粘着剤組成物(c)との乾燥後の塗布厚を、それぞれ、15μm、5μmとなるように積層した以外は、実施例1と同様にして実施例4の表面保護フィルムを作成した。
【0045】
(実施例5の表面保護フィルムの作製)
基材フィルムの片面に、粘着剤組成物(a)と粘着剤組成物(c)との乾燥後の塗布厚を、それぞれ、18μm、2μmとなるように積層した以外は、実施例4と同様にして実施例5の表面保護フィルムを得た。
【0046】
(比較例5の表面保護フィルムの作製)
基材フィルムの片面に、粘着剤組成物(a)と粘着剤組成物(c)との乾燥後の塗布厚を、それぞれ、19μm、1μmとなるように積層した以外は、実施例4と同様にして比較例5の表面保護フィルムを得た。
【0047】
(比較例6の表面保護フィルムの作製)
粘着剤組成物(a)の100重量部に対して、帯電防止剤としてリチウム金属塩である過塩素酸リチウムを2重量部添加し、粘着剤組成物(d)を作成した。粘着剤組成物(d)を、厚み38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、乾燥後の塗布厚が20μmとなるように塗布・乾燥させた後、測定した表面抵抗率は6.8×1010〔Ω/□〕であった。
基材フィルムの片面に、粘着剤組成物(a)と粘着剤組成物(d)との乾燥後の塗布厚を、それぞれ、19μm、1μmとなるように積層した以外は、実施例4と同様にして比較例6の表面保護フィルムを得た。
【0048】
(比較例7の表面保護フィルムの作製)
基材フィルムの片面に、粘着剤組成物(a)を用いずに、粘着剤組成物(c)のみを、乾燥後の塗布厚が5μmとなるように積層した以外は、実施例4と同様にして比較例7の表面保護フィルムを得た。
【0049】
(実施例6の表面保護フィルムの作製)
粘着剤組成物(a)の100重量部に対して、帯電防止剤としてイオン性液体(スリーエム社製、品番:FC−4400)を5重量部添加し、粘着剤組成物(e)を作成した。粘着剤組成物(e)を、厚み38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、乾燥後の塗布厚が20μmとなるように塗布・乾燥させた後、測定した表面抵抗率は6.3×1012〔Ω/□〕であった。
基材フィルムの片面に、粘着剤組成物(a)と粘着剤組成物(e)との乾燥後の塗布厚を、それぞれ、15μm、5μmとなるように積層した以外は、実施例1と同様にして実施例6の表面保護フィルムを作成した。
【0050】
以下、評価試験の方法および結果について示す。
(表面保護フィルムの粘着力の測定方法)
ガラス板の片面にグレア偏光板を、貼合機を用いて、粘着剤層を介して貼合する。その後、偏光板の表面に、表面保護フィルムを25mm幅にカットしたものを貼着した後、23℃、50%RHの環境下に1日間保管する。その後、引張試験機を用いて300mm/分の剥離速度で180°の方向に、表面保護フィルムを剥離したときの剥離強度を測定し、これを表面保護フィルムの粘着力とした。
【0051】
〈表面保護フィルムの剥離帯電圧の測定方法〉
ガラス板の片面にグレア偏光板を、貼合機を用いて、粘着剤層を介して貼合する。その後、偏光板の表面に、表面保護フィルムを25mm幅にカットしたものを貼着した後、高速剥離試験機(テスター産業製)を用いて、毎分40mの速さで表面保護フィルムを剥離しながら、偏光板表面の表面電位を、表面電位計(キーエンス株式会社製)を用いて10ms毎に測定したときの表面電位の絶対値の最大値を、剥離帯電圧とした。
【0052】
〈表面保護フィルムの表面汚染性の評価方法〉
ガラス板の片面上に、低反射表面処理を施した偏光板を、貼合機を用いて、粘着剤層を介して貼合する。その後、偏光板の表面に表面保護フィルムを、貼合機を用いて貼合する。23℃、50%RHの環境下で3日および30日の期間に渡って保管した後に、表面保護フィルムを剥がし、偏光板の表面の汚染状態を目視にて観察する。
表面汚染性は、偏光板の表面に対して汚染なしの場合を「○」、わずかに汚染ありの場合を「△」、汚染ありの場合を「×」と評価した。
【0053】
(表面保護フィルムの貼合外観の評価方法)
被着体として、グレア偏光板および低反射のアンチグレア処理した偏光板を用い、表面保護フィルムを、貼合機を用いて被着体の表面に貼合した際の、貼合外観を目視にて観察する。
貼合外観は、被着体に対する表面保護フィルムの、貼合外観が良好の場合を「○」、貼合外観が不良の場合を「×」と評価した。
【0054】
実施例1〜6、及び比較例1〜7のサンプルについての測定結果を、表1に示す。なお、表1において、第1粘着剤層の厚みをA、第2粘着剤層の厚みをBと表記している。
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示した測定結果から、以下のことが分る。
実施例1〜6の測定結果から、本発明の表面保護フィルムは、適度な粘着力があり、30日経過後でも被着体の表面汚染がなく、かつ、表面保護フィルムを剥離する時の剥離帯電圧が低い表面保護フィルムとなっている。
これに対して、表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層のみを使用した比較例1では、表面保護フィルムを剥離する時の剥離帯電圧が高く、表面保護フィルムを剥離する時に、ドライバーICの破損や液晶分子の配向が損失するなどの、不具合を起こす可能性がある。また、表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層のみを使用した比較例2は、30日間経過後の表面汚染が生じているため、経時的に被着体汚染が進行するという問題がある。
表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層と、表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層との2層からなる粘着剤層において、2層の粘着剤層の厚みのバランスがくずれると、表面保護フィルムを剥離する時の剥離帯電圧が高くなったり、被着体汚染が経時で進行したりするという問題がある。(比較例3〜6)
比較例7では、粘着剤層の総厚みを、20μmとなるように積層することを無視し、表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層のみを、表面汚染が問題にならない範囲である粘着剤層の厚みが5μmとなるように、基材フィルムの表面に積層して、表面保護フィルムを作成したが、粘着力が低く、被着体の表面に綺麗に貼着できない結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の表面保護フィルムは、例えば、偏光板や位相差板、レンズフィルムなどの光学用フィルム、及びそれを用いたディスプレイなどの光学部品等の製造工程などにおいて、該光学用フィルム及び光学部品等の表面に貼着して表面を保護するために用いることができる。また、本発明の表面保護フィルムは、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルム等の製造工程にも適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…基材フィルム、2…表面抵抗率が相対的に高い第1粘着剤層、3…表面抵抗率が相対的に低い第2粘着剤層、4…剥離フィルム、5…表面保護フィルム、10…光学部品、11…光学用フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基材フィルムの片面に、表面抵抗率が1×1013〔Ω/□〕以上である第1粘着剤層と、表面抵抗率が1×1013〔Ω/□〕未満である第2粘着剤層とが、この順に積層して設けられたことを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
前記第2粘着剤層が、界面活性剤、イオン性液体、アルカリ金属塩からなる帯電防止剤群の中から選択した1種または複数種を含むことを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記第2粘着剤層が、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを使用していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
第1粘着剤層の厚み(A)と第2粘着剤層の厚み(B)の比率(A/B)が、10/1〜1/2の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の表面保護フィルムが貼着されたことを特徴とする光学部品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−241108(P2012−241108A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112518(P2011−112518)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】