説明

表面保護用フィルム基材、ならびに、表面保護用粘着フィルムおよびその製造方法

【課題】表面保護用粘着フィルムの方向(流れ目)が容易に分かり、かつフィルムの背面の滑り性を向上させた表面保護用粘着フィルムおよびその製造方法を提供する。また、上記表面保護用粘着フィルムに用いられる表面保護用フィルム基材を提供する。
【解決手段】エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体を含むポリオレフィン系樹脂からなる基材層(I)が少なくとも1層以上設けられている表面保護用フィルム基材であって、前記基材層(I)が、前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体3〜20重量部含有し、かつ、前記基材層(I)中に分散しているエチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体の微小領域の長径平均長さ(LMD)が3.5μm以上ならびに前記微小領域の含有面積率が4%以上であることを特徴とする表面保護用フィルム基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護用フィルム基材に関する。また、本発明は、表面保護用粘着フィルムおよびその製造方法に関する。
【0002】
本発明の表面保護用粘着フィルムは、各種物質の表面保護用途に適用できるが、たとえば、金属板、塗装板、アルミサッシ、樹脂板、化粧鋼板、塩化ビニルラミネート鋼板、ガラス板等の部材、偏光フィルム、液晶パネル等の光学部材、電子部材等を運搬、加工または養生する際等にそれら部材表面に貼り付け保護する用途等に用いられる。特に、ステンレス板、アルミニウム板、鋼板等の金属板の表面保護用粘着フィルムとして有用であり、なかでも特に、金属板の延伸方向や流れ目など、被着体の表面の方向の確認が必要となる場合の保護に好適である。
【背景技術】
【0003】
従来より、ステンレス板、アルミニウム板、鋼板等の金属板を加工、運搬等する際には、金属板の表面に傷等がつかないように、表面保護フィルムを仮貼付して金属板の表面の保護を図っている。このような金属板の表面保護フィルムとしては、基材フィルムの片面に粘着剤層を設けた粘着フィルム(表面保護用粘着フィルム)が用いられている。かかる粘着フィルムの基材としては、従来、塩化ビニル系基材の粘着フィルムが主流であった。しかし、近年は環境保護の観点から脱塩ビ(塩化ビニル)化が進んでおり、塩化ビニル系基材に代わる基材としてポリオレフィン系基材の適用が検討されつつある。
【0004】
しかしながら、まず第一の問題として、金属板の表面にヘアラインなどの加工を行う際には延伸方向が決まっていて、ポリオレフィン系基材を用いた場合には、粘着フィルム貼り付け後の被着体である金属板等の流れ目などの方向の確認ができず、被着体である金属板を加工・切断した場合に上記方向を確認するためには保護フィルムを剥がしてしまわなければならない問題があった。また、第二の問題点として、ポリオレフィン系基材を用いた場合には、従来の塩化ビニル系基材を用いた保護フィルムに比べてフィルム背面のすべり性が悪くなり、特に作業者が保護フィルム貼付の金属板を積層して保管した場合に、フィルムの背面と重量のある金属板がブロッキングなどを引き起こしすべり性が低下するために、金屈板を引き出しにくく塩ビ系粘着フィルムに比べて作業性が悪化してしまう問題が判明した。
【0005】
上述の第一の問題点に対しては、被着体の方向の確認を容易にする手法としては、保護フィルムの上に印刷を行う方法や、保護フィルムの透明性を向上させる手法が検討されている(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、印刷工程を用いる方法は、処理工程が増えるため生産性やコストの面からは好ましくない。また、たとえば、特許文献1に記載の発明のように被保護体(被着体)の色相や模様を識別できるように基材の透明性を向上させた場合であっても、上述の第二の問題点である背面滑り性の問題は依然解決できていない。さらには、従来の透明性の向上による手法では、当然保護フィルムに着色ができないことになり、材料メーカーが自社の製品の差別化や広告のために保護フィルム面を意匠的、広告的に活用することができなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−97430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、従来の表面保護フィルムにおける上記問題点を解消すべく、表面保護用粘着フィルムの方向(流れ目)が容易に分かり、かつフィルムの背面の滑り性を向上させた表面保護用粘着フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は上記表面保護用粘着フィルムに用いられる表面保護用フィルム基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の目的を達成するため、背面処理層の成分について鋭意検討した結果、以下に示す表面保護用フィルム基材を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の表面保護用フィルム基材は、
エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体を含むポリオレフィン系樹脂からなる基材層(I)が少なくとも1層以上設けられている表面保護用フィルム基材であって、上記基材層(I)が、上記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体3〜20重量部含有し、かつ、上記基材層(I)中に分散しているエチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体の微小領域の長径平均長さ(LMD)が3.5μm以上ならびに前記微小領域の含有面積率が4%以上であることを特徴とする。
【0011】
上記本発明の表面保護用フィルム基材は、基材層(I)において特定量のエチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体を含んでいるため、ポリオレフィン系樹脂中で微小領域をもって均一分散し、フィルムの延伸方向に筋が形成され、このため流れ目が一目でわかり、かつ、上記筋の形成に伴い生じた表面凹凸がすべり性を向上させると推測している。なお、被着体である金属の延伸方向などと表面保護用フィルム基材の流れ目は、両者の相対関係が判別できれば同一方向で貼り合せても他の方向で貼り合せてもよい。また、上記微小領域の形状が、長径平均長さ(LMD)が3.5μm以上ならびに上記微小領域の含有面積率が4%以上であることが、流れ目の判別においても滑り性の向上においても好ましい。さらには、本発明は被着体の向きや方向の判別を従来の透明性向上によって達成しようとするものではないため、上記筋(流れ目)が目視または表面の触感により判別できる程度であれば、基材層および基材表面を着色や装飾することが可能となる。このため、意匠的効果および広告的使用用途の付加も可能となるものである。
【0012】
上記表面保護用フィルム基材において、上記微小領域の長径平均長さ(LMD)と短径平均長さ(LTD)の比率(LMD/LTD)が2以上であることが好ましい。
【0013】
本発明において、上記表面保護用フィルム基材が上記基材層(I)とその他の基材層(II)が複数積層されている場合には、上記基材層(I)が上記表面保護用フィルム基材の最外層に設けられていることが必要である。
【0014】
また、本発明において、上記基材層(I)の十点平均表面粗さ(Rz)が2.0μm以上であることが好ましい。なお、本発明における十点平均表面粗さ(Rz)とはJIS−B0651に準拠して測定された値をいう。
【0015】
さらに、本発明においては、上記基材層(I)が、上記ポリオレフィン系樹脂ならびに上記エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体からなるポリオレフィン混合物100重量部に対して、さらに微粒子0.5〜10重量部含有することが好ましい。上記微粒子を用いることにより、フィルムの背面の滑り性を向上させて作業性をより確実に向上できる。
【0016】
本発明において、上記微粒子が合成ゼオライトおよび/または合成シリカであることが好ましい。また、上記微粒子の平均粒子径が1〜20μmであることが好ましい。特に、上記微粒子の平均粒子径が上記基材層(I)の厚さより大きくなる場合、上記滑り性がきわめて良好なものとなる。
【0017】
一方、本発明の表面保護用粘着フィルムは、上記いずれかの表面保護用フィルム基材の片面に粘着剤層を有することを特徴とする。また、上記表面保護用フィルム基材が上記基材層(I)とその他の基材層(II)が複数積層されている場合には、上記基材層(I)が上記表面保護用フィルム基材の最外層(粘着フィルムの最表面)になるように、最外層の上記基材層(I)の反対面に粘着剤層を設けることになる。本発明の表面保護用粘着フィルムは上記作用を奏する表面保護用フィルム基材を備えるため、表面保護用粘着フィルムの方向(流れ目)および被着体である金属板の延伸方向などが容易に分かり、かつフィルムの背面の滑り性を向上させて作業性を向上しうるものとなる。
【0018】
また、上記表面保護用粘着フィルムにおいて、上記フィルム基材と上記粘着剤層が共押出成形により一体に形成されたものであることが好ましい。
【0019】
なお、本発明における表面保護用粘着フィルムとは、被着体の表面を保護する目的で用いられる粘着剤層を有するフィルムのことをいい、シート状やテープ状のものを含むものである。
【0020】
他方、本発明の表面保護用粘着フィルムの製造方法は、フィルム基材と粘着剤層とを共押出成形により一体に形成する工程を有する表面保護用粘着フィルムの製造方法であって、
上記フィルム基材は、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体を含むポリオレフィン系樹脂からなる基材層(I)が少なくとも1層以上設けられており、上記基材層(I)が、上記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体3〜20重量部含有し、かつ、上記基材層(I)中に分散しているエチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体の微小領域の長径平均長さ(LMD)が3.5μm以上ならびに上記微小領域の含有面積率が4%以上であることを特徴とする。
【0021】
本発明の製造方法を用いることにより、表面保護用粘着フィルムの方向(流れ目)および被着体である金属板の延伸方向などが容易に分かり、かつフィルムの背面の滑り性を向上した表面保護用粘着フィルムを、印刷処理などの煩雑な工程を省き容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
本発明の表面保護用フィルム基材は、
エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体を含むポリオレフィン系樹脂からなる基材層(I)が少なくとも1層以上設けられている表面保護用フィルム基材であって、上記基材層(I)が、上記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体3〜20重量部含有し、かつ、上記基材層(I)中に分散しているエチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体の微小領域の長径平均長さ(LMD)が3.5μm以上ならびに上記微小領域の含有面積率が4%以上であることを特徴とする。
【0024】
本発明の表面保護用フィルム基材(以下、「基材フィルム」と称する場合がある)は、上記基材層(I)が少なくとも1層以上設けられているフィルム基材であり、上記表面保護用フィルム基材は上記基材層(I)からなるものであってもよいし、上記基材層(I)とその他の基材層(II)が複数積層されているものであってもよい。また、上記基材層(I)とその他の基材層(II)が複数積層されているものである場合には、上記基材層(I)が上記表面保護用フィルム基材の最外層に設けられていることが必要である。
【0025】
本発明の基材層(I)は、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体を含むポリオレフィン系樹脂からなるものである。また、上記基材層(I)は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体3〜20重量部含有し、かつ、上記基材層(I)中に分散しているエチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体の微小領域の長径平均長さ(LMD)が3.5μm以上ならびに上記微小領域の含有面積率が4%以上であることを特徴とする。
【0026】
本発明の基材層(I)は、上記エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体の分散が可能であってシート状やフィルム状に形成できるポリオレフィン系樹脂であれば特に限定されるものでなく、耐熱性および耐溶剤性を有すると共に可とう性を有するポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。基材層が可とう性を有することにより、ロール状に巻き取ることができ、各種の加工を適宜おこなうことができる。
【0027】
上記基材層(I)の構成成分として用いられるポリオレフィン系樹脂としては、たとえば、炭素原子数2〜12のα−オレフィンを含む重合体、たとえば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのα−オレフィンの単独重合体またはオレフィン(共)重合体、エチレン/オレフィン共重合体、ポリエチレン系樹脂、プロピレンまたはプロピレン成分とエチレン成分からなるプロピレン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、およびエチレン/極性ビニル共重合体などがあげられる。これらの重合体は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0028】
上記ポリオレフィン系樹脂として、より具体的には、たとえば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などがあげられる。
【0029】
また、基材層(I)は、単層で使用してもよく、また2層以上の複数層から構成されていてもよい。特に、上記基材層(I)が2層以上の複数層から構成される場合には、各々の隣接する層は、その構成成分が、溶融共押出しによって相互に強固な接着を形成できるものであることが好ましい。
【0030】
上記基材層(I)における上記オレフィン系樹脂の含有量としては、基材層(I)のマトリックス樹脂(すなわち、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体を除いたベースポリマー)において通常50〜100重量%程度であり、60〜100重量%程度であることが好ましく、70〜100重量%であることがより好ましい。
【0031】
本発明において、上記基材層(I)には、この種のフィルム基材に一般に用いられる公知の各種添加剤を、本発明の効果を損なわない程度に適宜含有していてもよい。たとえば、シランカップリング剤、粘着付与剤、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。
【0032】
また、上記基材層(I)の表面にはコロナ処理、プラズマ処理などの易着処理をおこなってもよい。
【0033】
さらに、上記基材層(I)の厚みは、上記表面保護用フィルム基材が上記基材層(I)からなる場合には、通常30〜200μm、好ましくは50〜150μm程度である。また、上記表面保護用フィルム基材が上記基材層(I)とその他の基材層(II)が複数積層されている場合には、上記表面保護用フィルム基材の最外層に設けられている上記基材層(I)の厚みは、通常0.5〜80μm、好ましくは1〜40μm程度である。
【0034】
また、上記表面保護用フィルム基材は上記基材層(I)とその他の基材層(II)が複数積層されているものであってもよい。
【0035】
本発明の基材層(II)は、シート状やフィルム状に形成できる樹脂であれば特に限定されるものでなく、耐熱性および耐溶剤性を有すると共に可とう性を有するポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。基材層が可とう性を有することにより、ロール状に巻き取ることができ、各種の加工を適宜おこなうことができる。
【0036】
上記基材層(II)の構成成分(重合体)としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロン6、ナイロン6,6、部分芳香族ポリアミドなどのポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどがあげられる。なかでも、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが好ましい。これらの重合体は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0037】
本発明において、上記基材層(II)には、この種のフィルム基材に一般に用いられる公知の各種添加剤を、本発明の効果を損なわない程度に適宜含有していてもよい。たとえば、シランカップリング剤、粘着付与剤、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。
【0038】
また、上記基材層(II)の表面にはコロナ処理、プラズマ処理などの易着処理をおこなってもよい。
【0039】
さらに、上記基材層(II)の厚みは、通常10〜200μm、好ましくは30〜150μm程度である。
【0040】
また、上記表面保護用フィルム基材全体の厚みは、通常20〜300μm程度、好ましくは20〜250μm程度、より好ましくは40〜200μm程度である。基材層が20μm未満では剥離時に基材が破れたり、裂けたりする場合があり、300μmを超える場合には基材のコシが大きくなり、貼付後に浮き等が発生しやすい。
【0041】
また、本発明においては、上記基材層(I)は、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体を含むポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする。また、上記基材層(I)が、上記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体3〜20重量部含有し、かつ、上記基材層(I)中に分散しているエチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体の微小領域の長径平均長さ(LMD)が3.5μm以上ならびに上記微小領域の含有面積率が4%以上であることを特徴とする。
【0042】
本発明のエチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体は、エチレンとビニルアルコールの共重合体、ならびにエチレンビニルアルコール共重合体の主鎖、側鎖、末端の官能基変換、または他の分子の付加等の分子修飾を行った誘導体であれば特に限定されない。
【0043】
上記エチレン/ビニルアルコール共重合体および/または誘導体の重合度については、適度な表面移行性を示すが、基材層(I)に直接粘着剤層を設ける場合やロール状の保管等をおこなう場合の粘着剤層への影響が少ない点で、重合度が300〜3,000であるものが好ましく、重合度が400〜3,000であるものがより好ましく、重合度が500〜2,500であるものがさらに好ましい。なお、上記重合度はGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)によりポリスチレン換算して得られた数平均分子量から算出した値をいう。
【0044】
また、エチレン構造単位の含有量は、基材層(I)を構成する樹脂(マトリックス樹脂)と良好な相溶性(分散性)を示す点で、5〜90モル%であることが好ましく、10〜80モル%であることがより好ましく、20〜70モル%であることがさらに好ましい。
【0045】
また、エチレンビニルアルコール共重合体の誘導体の具体例としては、たとえば、ビニルアルコールユニットの水酸基を酸無水物やイソシアネート化合物により分子修飾したものがあげられる。
【0046】
上記イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、オクチルイソシアネート、ノニルイソシアネート、デシルイソシアネート、ウンデシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、ステアリルイソシアネート、ラウリルイソシアネートなどの長鎖アルキルイソシアネートなどがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0047】
また、上記基材層(I)においては、上記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体3〜20重量部含有しているが、3〜15重量部含有していることが好ましく、4〜14重量部含有していることがより好ましく、6〜13重量部含有していることがさらに好ましい。3重量部未満であると、肉眼による筋(流れ目)の判別が困難であり、一方、20重量部よりも多くなるとフィルム成形が困難となる場合がある。
【0048】
また、本発明においては、上記基材層(I)中に分散しているエチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体の微小領域の長径平均長さ(LMD)が3.5μm以上ならびに上記微小領域の含有面積率が4%以上であることを特徴とする。
【0049】
なお、本発明における上記微小領域とは、基材層(I)のマトリックス樹脂であるポリオレフィン系樹脂中に上記エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体がミクロ相分離している状態における上記エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体の集合領域(ドメイン)をいう。表面保護用フィルム基材(または表面保護用粘着フィルム)の製造時に延伸処理または延伸工程を含むことにより、上記微小領域は延伸方向に扁平した楕円状(楕円球状)の形状となり、この扁平した微小領域、各微小領域の配向およびその集合形態により、本発明の特徴であるフィルム基材表面の凹凸や筋(流れ目)を発現している。
【0050】
また、本発明においては、フィルム基材(または表面保護用粘着フィルム)製造時の延伸処理を行った延伸方向の長さが、通常上記微小領域の長径平均長さ(LMD)となり、延伸方向と垂直方向の長さが、通常上記微小領域の長径平均長さ(LTD)となる。
【0051】
また、本発明における微小領域の含有面積率とは、基材層(I)の断面における上記微小領域の面積率(%)をいう。
【0052】
なお、上記微小領域の長径平均長さ(LMD)、短径平均長さ(LTD)、および含有面積率は走査型電子顕微鏡(SEM)の断面観察により算出されたものをいう。また、上記長さの算出においては、通常、300倍〜10,000倍の倍率で観察した画像を用いるが、たとえば、1,000倍、3,000倍、5,000倍などの倍率で観察した画像を用いて算出することが好ましい。
【0053】
本発明においては、上記微小領域の長径平均長さ(LMD)は3.5μm以上であるが、4μm以上であることが好ましく、6μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることがさらに好ましい。
【0054】
また、本発明においては、上記微小領域の含有面積率は4%以上であるが、8%以上であることが好ましく、11%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましい。
【0055】
さらに、本発明においては、微小領域の長径平均長さ(LMD)と短径平均長さ(LTD)の比率(LMD/LTD)が2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましく、5以上であることがより一層好ましい。
【0056】
なお、上記微小領域の長径平均長さ(LMD)ならびに上記微小領域の長径平均長さ(LMD)と短径平均長さ(LTD)の比率(LMD/LTD)は、製造工程における延伸工程(延伸処理)により通常微調整が可能である。
【0057】
また、本発明において、上記ポリオレフィン系樹脂ならびに上記エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体の混合物をポリオレフィン混合物という。
【0058】
また、本発明において、上記基材層(I)の十点平均表面粗さ(Rz)が2.0μm以上であることが好ましく、3.0μm以上であることがより好ましく、4.0μm以上であることがさらに好ましい。
【0059】
なお、十点平均表面粗さ(Rz)はJIS−B0651に準拠して測定された値をいうが、具体的には、以下のようにして算出するものをいう。すなわち、以下の式に(I)示すように、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さlだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から最も高い山頂から5番目までの山頂の標高(Yp)の絶対値の平均と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高(Yv)の絶対値の平均との和を十点平均表面粗さ(Rz)という。
式(I):
Rz=[|Yp1+Yp2+Yp3+Yp4+Yp5|+|Yv1+Yv2+Yv3+Yv4+Yv5|]/5
【0060】
さらに、本発明においては、上記基材層(I)がさらに微粒子を含有することが好ましい。上記微粒子を用いることにより、フィルムの背面の滑り性を向上させて作業性をより確実に向上できる。
【0061】
本発明においては、上記基材層(I)が、上記ポリオレフィン混合物100重量部に対して、さらに微粒子0.5〜10重量部含有することが好ましく、1〜8重量部含まれることがより好ましく、1.5〜5重量部含まれることがさらに好ましい。添加量が多いほどフィルムの背面の滑り性には好ましいが、多くなりすぎるとフィルム成形が困難となる傾向がある。
【0062】
上記微粒子としては、たとえば、合成ゼオライト、天然ゼオライト、ケイ酸アルミ系多孔質鉱石、合成シリカ、天然シリカ、アクリル系架橋粒子、スチレン系架橋粒子、ポリマービーズ、架橋PMMA(ポリメチルメタクリレート)、超高分子量PE(ポリエチレン)、タルク、含水ケイ酸マグネシウムおよびこれらの表面処理体、ならびにその他の有機充填剤や無機充填剤などをあげることができる。なかでも、上記微粒子として、合成ゼオライトおよび/または合成シリカを用いることが好ましい。これらの微粒子は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0063】
また、上記微粒子の平均粒子径(平均粒径)が1〜20μmであることが好ましく、3〜15μmであることがより好ましく、4〜13μmであることがさらに好ましい。特に、上記微粒子の平均粒子径が上記基材層(I)の厚さより大きくなる場合、上記滑り性がきわめて良好なものとなる。
【0064】
本発明の表面保護用フィルム基材は、上述のような構成を有するものである。
【0065】
一方、本発明の表面保護用粘着フィルムは、上述の表面保護用フィルム基材の片面に粘着剤層が設けられていることを特徴とする。また、上記表面保護用フィルム基材が上記基材層(I)とその他の基材層(II)が複数積層されている場合には、上記基材層(I)が上記表面保護用フィルム基材の最外層になるように、最外層の上記基材層(I)の反対面に粘着剤層を設けることになる。本発明の表面保護用粘着フィルムは上記作用を奏する表面保護用フィルム基材を備えるため、表面保護用粘着フィルムの方向(流れ目)および被着体である金属板の延伸方向などが容易に分かり、かつフィルムの背面の滑り性を向上させて作業性を向上しうるものとなる。
【0066】
本発明における粘着剤層の成分は、特に限定されるものではなく、通常の感圧粘着剤、たとえば、アクリル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ならびに天然ゴムおよび/または合成ゴムを主成分(ベースポリマー)とする粘着剤などがあげられる。これらの粘着剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0067】
上記アクリル系粘着剤としては、たとえば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル等のポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリルなどを主成分とするものがあげられる。
【0068】
上記ポリビニルエーテル系粘着剤としては、たとえば、ポリビニルエチルエーチル、ポリブチルイソブチルエーテル等を主成分とするものがあげられる。
【0069】
上記シリコーン系粘着剤としては、たとえば、ジメチルポリシロキサンを主成分とするものがあげられる。
【0070】
上記合成ゴムを主成分とする粘着剤としては、たとえば、オレフィン共重合体、芳香族基含有オレフィン/ジエン共重合体またはその水素添加物等を成分とするもの、およびこれらの混合物があげられる。
【0071】
上記オレフィン共重合体としては、たとえば、炭素原子数2〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも2種のα−オレフィンを主成分とするα−オレフィン共重合体があげられる。
【0072】
上記炭素原子数2〜12のα−オレフィンとしては、たとえば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−へキセン、4−メチル−1−ペンテン.3−メチル−1−ペンテン、1−へプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどがあげられる。
【0073】
これらのα−オレフィンの組み合わせからなるα−オレフィン共重合体の中でも、プロピレン、1−ブテンおよび炭素原子数5〜12のα−オレフィンの3成分からなる共重合体を主成分とする粘着剤が好ましい。
【0074】
特に、プロピレン10〜85モル%、1−ブテン3〜60モル%および炭素原子数6〜12のα−オレフィン10〜85モル%の組成である共重合体を主剤(ベースポリマー)とする粘着剤は、常温付近での粘着特性に優れる点で好ましく、さらには、プロピレン15〜70モル%、1−ブテン5〜50モル%およびα−オレフィン15〜70モル%の組成である共重合体を主剤とする粘着剤が好ましい。この共重合体の具体例として、たとえば、プロピレン/1−ブテン/4−メチル−1−ペンテン共重合体があげられる。
【0075】
また、このプロピレン、1−ブテンおよび炭素原子数5〜12のα−オレフィンの3成分からなる共重合体を粘着剤の主剤とする場合、粘着剤中におけるこの共重合体の含有割合は、通常、30重量%以上、好ましくは60重量%以上である。
【0076】
さらに、本発明において、粘着剤層の粘着性能を向上させるため、上記のプロピレン、1−プテンおよび炭素原子敷5〜12のα−オレフィンの3成分からなる共重合体に加えて、他のα−オレフィン共重合体を含有させた粘着剤層とすることができる。
【0077】
上記の他のα−オレフィン共重合体として、(A)エチレン、プロピレンおよび1−ブテンから選ばれる少なくとも2種からなる共重合体、および(B)エチレンとα−オレフィンのコオリゴマーから選ばれる少なくとも1種の共重合体があげられる。これらの共重合体は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0078】
上記(A)エチレン、プロピレンおよび1−ブテンから選ばれる少なくとも2種からなる共重合体の例として、たとえば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体などがあげられる。
【0079】
上記(A)共重合体の具体例としては、たとえば、三井石油化学工業社製の商品名タフマーP、タフマ−S、タフマ−A、タフマ−XR等として市販されているものなどがあげられる。
【0080】
また、上記(B)エチレンとα−オレフィンのコオリゴマーは、たとえば、エチレンとα−オレフィンとの低分子量共重合体であって、常温で液体状のものがあげられる。
【0081】
上記α−オレフィンとしては、たとえば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−へキサデセン、1−オクタデセン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数3〜20のα−オレフィンがあげられる。
【0082】
本発明の粘着剤層の構成成分において、副成分として上記(B)コオリゴマーを用いる場合、上記(B)コオリゴマーの粘着剤層に占める含有割合は、通常、20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
【0083】
また、芳香族基含有オレフィン/ジエン共重合体またはその水素添加物の具体例として、たとえば、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、ステレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物であるスチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体などがあげられる。これらの共重合体は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0084】
上記スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(以下、「SEBS」と称す場合がある)は、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体を水素添加してなるものであり、このSEBSの具体例として、たとえば、シェル化学社製の商品名クレイトンGとして市販されているものなどがあげられる。
【0085】
上記粘着剤層の副成分として上記のSEBSを用いる場合、粘着剤層に占めるSEBSの含有割合は、通常、50重量%以下、好ましくは45重量%以下である。
【0086】
さらに、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(以下、「SIS」と称す場合がある)は、スチレン重合体ブロックとイソプレン重合体ブロックとを有するブロック共重合体であり、このSISの具体例として、たとえば、シェル化学社製の商品名クレイトンDとして市販されているものなどがあげられる。
【0087】
また、このSISの水素添加物として、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン(以下、「SEPS」と称す場合がある)があり、SEPSの具体例として、たとえば、クラレ社製の商品名セプトン2063として市販されているものなどがあげられる。
【0088】
上記粘着剤層の副成分として、上記SISまたはその水素添加物であるSEPSを用いる場合、このSISまたはSEPSの粘着剤層に占める含有割合は、通常、50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。ただし、上記SEBSと、SISまたはSEPSを同時に用いる場合には、これらの合計量の粘着剤層に占める含有割合が、45重量%以下であるのが好ましい。
【0089】
上記粘着剤層の構成成分として、上記のプロピレン/1−ブテン/4−メチル−1−ペンテンの3成分からなるα−オレフィン系共重合体と(A)共重合体の組み合わせからなる混合樹脂を用いると、ガラス転移温度が低下し、初期粘着強度を適正な範囲に調整するとともに、低温粘着特性を改善できる点で有利である。
【0090】
また、上記粘着剤層の構成成分として、上記のα−オレフィン系共重合体と(B)コオリゴマーの組み合わせからなる混合樹脂を用いると、ガラス転移温度が低下し、初期粘着強度を適正な範囲に調整することができるとともに、粘度を適正な範囲に調酸できる点で有利である。
【0091】
また、上記粘着剤層の構成成分として、上記のα−オレフィン系共重合体とSEBS、SISおよび/またはSEPSの組み合わせからなる混合樹脂を用いると、ガラス転移温度が低下し、初期粘着強度を適正な範囲に調整するとともに、低温粘着特性を改善できる点で有利である。
【0092】
また、上記粘着剤層は、上記α−オレフィン系共重合体または他のα−オレフィン系共重合体以外と、特に好ましい副成分として上記に示したスチレン・ジエン系共重合体以外に、さらに各種の副成分を含んでいてもよい。
【0093】
たとえば、α−オレフィンと各種ビニル系化合物との共重合体.それらのグラフト変成物などの樹脂等に代表される熱可塑性エラストマー、液状ブチルゴム等の可塑剤、ポリテルペンなどのタッキファイヤー等を含んでいてもよい。
【0094】
本発明において、これらの副成分は、接着性の官能基、不飽和結合を有するものは、貼り付けた後での粘着強度の経時変化(加温、加圧、湿度、紫外線暴露など)を悪化させないように、その種類、配合量等を調整することができる。
【0095】
さらに本発明に用いられる粘着剤には、従来公知の各種の粘着付与剤や表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、滑剤、無機または有機の充項剤、金属粉、顔料などの粉体、粒子状、箔状物などの従来公知の各種の添加剤を使用する用途に応じて適宜添加することができる。
【0096】
また、本発明の粘着剤層の形成方法としては、粘着フィルムの製造に用いられる公知の方法が用いられる。具体的には、たとえば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法、ダイコーターなどによる押出しコート法などがあげられる。
【0097】
また、上記表面保護用粘着フィルムにおいて、上記フィルム基材と上記粘着剤層が共押出成形により一体に形成されたものであることが好ましい。
【0098】
上記共押出成形としては、フィルムの製造等に一般に用いられる方法を採用することができ、特に限定されるものではない。具体的には、たとえば、インフレーション法、共押出T−ダイ法などを用いることができる。
【0099】
なお、粘着剤層の表面には、たとえば、コロナ放電処理、紫外線照射処理、火炎処理、プラズマ処理やスパッタエッチング処理などの、粘着性の制御や貼付作業性等を目的とした表面処理を必要に応じて施すこともできる。
【0100】
また、本発明の表面保護用粘着フィルム全体の厚さは、通常、10〜300μm程度であり、好ましくは30〜200μm程度である。
【0101】
本発明の表面保護用粘着フィルムは必要に応じて粘着面(粘着剤層)を保護する目的で粘着剤層表面にセパレーターを貼り合わせることが可能である。セパレーターを構成する基材としては紙やプラスチックフィルムがあるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0102】
そのフィルムとしては、上記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロン6、ナイロン6,6、部分芳香族ポリアミドなどのポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどがあげられる。
【0103】
上記フィルムの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは10〜100μm程度である。上記フィルムの粘着剤層貼合面には、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などにより適宜離型剤処理が施していてもよい。
【0104】
他方、本発明の表面保護用粘着フィルムの製造方法は、フィルム基材と粘着剤層とを共押出成形により一体に形成する工程を有する表面保護用粘着フィルムの製造方法であって、
上記フィルム基材は、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体を含むポリオレフィン系樹脂からなる基材層(I)が少なくとも1層以上設けられており、上記基材層(I)が、上記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体3〜20重量部含有し、かつ、上記基材層(I)中に分散しているエチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体の微小領域の長径平均長さ(LMD)が3.5μm以上ならびに上記微小領域の含有面積率が4%以上であることを特徴とする。
【0105】
本発明の製造方法を用いることにより、表面保護用粘着フィルムの方向(流れ目)および被着体である金属板の延伸方向などが容易に分かり、かつフィルムの背面の滑り性を向上した表面保護用粘着フィルムを、印刷処理などの煩雑な工程を省き容易に得ることができる。
【実施例】
【0106】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0107】
<微小領域の長さの測定>
各粘着フィルムの微小領域の長径平均長さ(LMD)、短径平均長さ(LTD)、および含有面積率は走査型電子顕微鏡(SEM)の断面観察(倍率:5,000)により算出した。より具体的には、試料を0.5%ルテニウム水溶液を用いて室温で2時間蒸気染色した。その後、試料をミクロトーム切断し、これを導電性粘着テープで試料台に固定し、Pt−Pdスパッタリングを20秒間行ったものを観察して各測定を行った。
【0108】
<筋(流れ目)の評価>
各粘着フィルムの表面を蛍光灯の下、30cmの距離から目視にて観察した。評価基準は以下のとおりである。
・筋(流れ目)が特に際立って判別できた場合:◎
・筋(流れ目)が際立って判別できた場合:○
・筋(流れ目)が判別できた場合:○
・筋(流れ目)が判別できなかった場合:×
【0109】
<十点平均表面粗さ(Rz)の測定>
十点平均表面粗さ(Rz)(μm)の測定は、JIS−B0651に準拠して測定された値を用いた。より具体的には、触針式表面粗さ測定器(ケーエルエー・テンコール社製、P−15、測定方向:フィルムの延伸方向に垂直に針を移動、測定範囲:8mm、触針移動速度:50μm/sec、触針圧力:6mg)により測定を行った。
【0110】
<表面摩擦力の測定>
各粘着フィルムを5cm×15cm(流れ方向)にカットして金属製の水平台の上に置き、そのフィルム背面に鉄治具(接触面積:60cm、荷重:3kg)を乗せ、引張り試験機(引張り速度:0.3m/min)にて表面摩擦力(N)を測定した。なお、金属板の表面保護用途においては、上記摩擦力は15N以下であることが好ましく、5〜14Nであることがより好ましい。
【0111】
〔実施例1〕
基材層(I)に用いるポリオレフィン混合物として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LF547)100重量部に対し、エチレンビニルアルコール共重合体(一方社油脂工業社製、ピーロイル1010S)7重量部用いた。また、粘着剤層として、水添ポリマー(JSR社製、ダイナロン 8601P)100重量部用いた。
【0112】
これらの樹脂材料を、溶融共押出成形(単軸押出機にて、押出機温度:200℃、ダイス温度:200℃にて、樹脂を溶融)により成膜し、2層の粘着フィルム(厚み:基材層(基材層(I))/粘着剤層=100μm/9μm)を得た。
【0113】
作製した粘着フィルムの基材(基材層(I))をSEMにより断面観察したところ、基材層(I)中の微小領域(エチレンビニルアルコール共重合体ドメイン)の長径平均長さ(LMD)が5.6μm、含有面積率が15.9%、縦横の比率(LMD/LTD)が9.3であり、また粘着フィルム最表面(基材層(I))の十点平均表面粗さ(Rz)が4.8μmであることが確認された。
【0114】
〔実施例2〕
基材層(I)に用いるポリオレフィン混合物として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LC604)100重量部に対し、エチレンビニルアルコール共重合体(クラレ社製、E171B)7重量部用いた。また、粘着剤層として、水添ポリマー(JSR社製、ダイナロン 8601P)100重量部用いた。
【0115】
これらの樹脂材料を、溶融共押出成形(単軸押出機にて、押出機温度:200℃、ダイス温度:200℃にて、樹脂を溶融)により成膜し、2層の粘着フィルム(厚み:基材(基材層(I))/粘着剤層=100μm/8μm)を得た。
【0116】
作製した粘着フィルムの基材(基材層(I))をSEMにより断面観察したところ、基材層(I)中の微小領域(エチレンビニルアルコール共重合体ドメイン)の長径平均長さ(LMD)が4.8μm、含有面積率が15.5%、縦横の比率(LMD/LTD)が8.7であり、また粘着フィルム最表面(基材層(I))の十点平均表面粗さ(Rz)が5.2μmであることが確認された。
【0117】
〔実施例3〕
基材層(I)に用いるポリオレフィン混合物として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LC720)100重量部に対し、エチレンビニルアルコール共重合体(クラレ社製、E171B)7重量部用いた。また、基材層(II)として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LC720)100重量部用いた。また、粘着剤層として、水添ポリマー(JSR社製、ダイナロン 1320P)100重量部用いた。
【0118】
これらの樹脂材料を、溶融共押出成形(単軸押出機にて、押出機温度:200℃、ダイス温度:200℃にて、樹脂を溶融)により成膜し、3層の粘着フィルム(厚み:基材層(I)/基材層(II)/粘着剤層=5μm/95μm/8μm)を得た。
【0119】
作製した粘着フィルムの基材(基材層(I))をSEMにより断面観察したところ、基材層(I)中の微小領域(エチレンビニルアルコール共重合体ドメイン)の長径平均長さ(LMD)が6.7μm、含有面積率が16.2%、縦横の比率(LMD/LTD)が14.9であり、また粘着フィルム最表面(基材層(I))の十点平均表面粗さ(Rz)が5.6μmであることが確認された。
【0120】
〔実施例4〕
基材層(I)に用いるポリオレフィン混合物として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LF440C)100重量部に対し、エチレンビニルアルコール共重合体(クラレ社製、E171B)12重量部用いた。また、基材層(II)として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LC720)100重量部用いた。また、粘着剤層として、水添ポリマー(JSR社製、ダイナロン 1320P)100重量部用いた。
【0121】
これらの樹脂材料を、溶融共押出成形(単軸押出機にて、押出機温度:200℃、ダイス温度:200℃にて、樹脂を溶融)により成膜し、3層の粘着フィルム(厚み:基材層(I)/基材層(II)/粘着剤層=5μm/94μm/8μm)を得た。
【0122】
作製した粘着フィルムの基材(基材層(I))をSEMにより断面観察したところ、基材層(I)中の微小領域(エチレンビニルアルコール共重合体ドメイン)の長径平均長さ(LMD)が5.9μm、含有面積率が21.5%、縦横の比率(LMD/LTD)が11.6であり、また粘着フィルム最表面(基材層(I))の十点平均表面粗さ(Rz)が7.8μmであることが確認された。
【0123】
〔実施例5〕
基材層(I)に用いるポリオレフィン混合物として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LF443)100重量部に対し、エチレンビニルアルコール共重合体(クラレ社製、E171B)12重量部用い、さらに上記ポリオレフィン混合物100重量部に対し、合成シリカ(平均粒径:5μm、東海化学工業社製、ML−369)1.5重量部を用いた。また、粘着剤層として、水添ポリマー(JSR社製、ダイナロン 8601P)100重量部用いた。
【0124】
これらの樹脂材料を、溶融共押出成形(単軸押出機にて、押出機温度:200℃、ダイス温度:200℃にて、樹脂を溶融)により成膜し、2層の粘着フィルム(厚み:基材層(基材層(I))/粘着剤層=100μm/10μm)を得た。
【0125】
作製した粘着フィルムの基材(基材層(I))をSEMにより断面観察したところ、基材層(I)中の微小領域(エチレンビニルアルコール共重合体ドメイン)の長径平均長さ(LMD)が5.2μm、含有面積率が20.8%、縦横の比率(LMD/LTD)が9.3であり、また粘着フィルム最表面(基材層(I))の十点平均表面粗さ(Rz)が8.2μmであることが確認された。
【0126】
〔実施例6〕
基材層(I)に用いるポリオレフィン混合物として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LF443)100重量部に対し、エチレンビニルアルコール共重合体(クラレ社製、E171B)12重量部用い、さらに上記ポリオレフィン混合物100重量部に対し、合成ゼオライト(平均粒径:5μm)1.5重量部を用いた。また、粘着剤層として、水添ポリマー(JSR社製、ダイナロン 8601P)100重量部用いた。
【0127】
これらの樹脂材料を、溶融共押出成形(単軸押出機にて、押出機温度:200℃、ダイス温度:200℃にて、樹脂を溶融)により成膜し、2層の粘着フィルム(厚み:基材層(基材層(I))/粘着剤層=100μm/9μm)を得た。
【0128】
作製した粘着フィルムの基材(基材層(I))をSEMにより断面観察したところ、基材層(I)中の微小領域(エチレンビニルアルコール共重合体ドメイン)の長径平均長さ(LMD)が5.6μm、含有面積率が24.3%、縦横の比率(LMD/LTD)が11.7であり、また粘着フィルム最表面(基材層(I))の十点平均表面粗さ(Rz)が8.5μmであることが確認された。
【0129】
〔実施例7〕
基材層(I)に用いるポリオレフィン混合物として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LF440C)100重量部に対し、エチレンビニルアルコール共重合体(クラレ社製、E171B)12重量部用い、さらに上記オレフィン混合物100重量部に対し、合成ゼオライト(平均粒径:5μm)1.5重量部を用いた。また、基材層(II)として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LC720)100重量部用いた。また、粘着剤層として、水添ポリマー(JSR社製、ダイナロン 1320P)100重量部用いた。
【0130】
これらの樹脂材料を、溶融共押出成形(単軸押出機にて、押出機温度:200℃、ダイス温度:200℃にて、樹脂を溶融)により成膜し、3層の粘着フィルム(厚み:基材層(I)/基材層(II)/粘着剤層=5μm/95μm/8μm)を得た。
【0131】
作製した粘着フィルムの基材(基材層(I))をSEMにより断面観察したところ、基材層(I)中の微小領域(エチレンビニルアルコール共重合体ドメイン)の長径平均長さ(LMD)が4.7μm、含有面積率が22.4%、縦横の比率(LMD/LTD)が11.8であり、また粘着フィルム最表面(基材層(I))の十点平均表面粗さ(Rz)が8.8μmであることが確認された。
【0132】
〔実施例8〕
基材層(I)に用いるポリオレフィン混合物として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LF440C)100重量部に対し、エチレンビニルアルコール共重合体(クラレ社製、E171B)12重量部用い、さらに上記オレフィン混合物100重量部に対し、合成ゼオライト(平均粒径:10μm)1.5重量部を用いた。また、基材層(II)として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LC720)100重量部用いた。また、粘着剤層として、水添ポリマー(JSR社製、ダイナロン 1320P)100重量部用いた。
【0133】
これらの樹脂材料を、溶融共押出成形(単軸押出機にて、押出機温度:200℃、ダイス温度:200℃にて、樹脂を溶融)により成膜し、3層の粘着フィルム(厚み:基材層(I)/基材層(II)/粘着剤層=5μm/95μm/10μm)を得た。
【0134】
作製した粘着フィルムの基材(基材層(I))をSEMにより断面観察したところ、基材層(I)中の微小領域(エチレンビニルアルコール共重合体ドメイン)の長径平均長さ(LMD)が4.5μm、含有面積率が21.8%、縦横の比率(LMD/LTD)が10.7であり、また粘着フィルム最表面(基材層(I))の十点平均表面粗さ(Rz)が9.2μmであることが確認された。
【0135】
〔実施例9〕
基材層(I)に用いるポリオレフィン混合物として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LF440C)100重量部に対し、エチレンビニルアルコール共重合体(クラレ社製、E171B)12重量部用い、さらに上記オレフィン混合物100重量部に対し、合成ゼオライト(平均粒径:10μm)3.0重量部を用いた。また、基材層(II)として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LC720)100重量部用いた。また、粘着剤層として、水添ポリマー(JSR社製、ダイナロン 1320P)100重量部用いた。
【0136】
これらの樹脂材料を、溶融共押出成形(単軸押出機にて、押出機温度:200℃、ダイス温度:200℃にて、樹脂を溶融)により成膜し、3層の粘着フィルム(厚み:基材層(I)/基材層(II)/粘着剤層=5μm/95μm/9μm)を得た。
【0137】
作製した粘着フィルムの基材(基材層(I))をSEMにより断面観察したところ、基材層(I)中の微小領域(エチレンビニルアルコール共重合体ドメイン)の長径平均長さ(LMD)が5.3μm、含有面積率が23.5%、縦横の比率(LMD/LTD)が9.0であり、また粘着フィルム最表面(基材層(I))の十点平均表面粗さ(Rz)が9.7μmであることが確認された。
【0138】
〔実施例10〕
基材層(I)に用いるポリオレフィン混合物として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LC720)100重量部に対し、エチレンビニルアルコール共重合体(クラレ社製、E171B)3重量部用いた。また、基材層(II)として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LC720)100重量部用いた。また、粘着剤層として、水添ポリマー(JSR社製、ダイナロン 1320P)100重量部用いた。
【0139】
これらの樹脂材料を、溶融共押出成形(単軸押出機にて、押出機温度:200℃、ダイス温度:200℃にて、樹脂を溶融)により成膜し、3層の粘着フィルム(厚み:基材層(I)/基材層(II)/粘着剤層=5μm/95μm/10μm)を得た。
【0140】
作製した粘着フィルムの基材(基材層(I))をSEMにより断面観察したところ、基材層(I)中の微小領域(エチレンビニルアルコール共重合体ドメイン)の長径平均長さ(LMD)が4.3μm、含有面積率が8.2%、縦横の比率(LMD/LTD)が4.7であり、また粘着フィルム最表面(基材層(I))の十点平均表面粗さ(Rz)が3.2μmであることが確認された。
【0141】
〔比較例1〕
基材層として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LF547)100重量部用いた。また、粘着剤層として、水添ポリマー(JSR社製、ダイナロン 8601P)100重量部用いた。
【0142】
これらの樹脂材料を、溶融共押出成形(単軸押出機にて、押出機温度:200℃、ダイス温度:200℃にて、樹脂を溶融)により成膜し、2層の粘着フィルム(厚み:基材層/粘着剤層=100μm/9μm)を得た。
【0143】
作製した粘着フィルムの基材層をSEMにより断面観察(倍率:5,000)したところ、物質筋はないことが確認された。また粘着フィルム最表面の十点平均表面粗さ(Rz)が0.4μmであることが確認された。
【0144】
〔比較例2〕
基材層(I)に用いるポリオレフィン混合物として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックLD LC604)100重量部に対し、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)(日本ポリエチレン社製、LV440)10重量部用いた。また、粘着剤層として、水添ポリマー(JSR社製、ダイナロン 8601P)100重量部用いた。
【0145】
これらの樹脂材料を、溶融共押出成形(単軸押出機にて、押出機温度:200℃、ダイス温度:200℃にて、樹脂を溶融)により成膜し、2層の粘着フィルム(厚み:基材層(基材層(I))/粘着剤層=100μm/10μm)を得た。
【0146】
作製した粘着フィルムの基材層をSEMにより断面観察(倍率:5,000)したところ、物質筋はないことが確認された。また粘着フィルム最表面の十点平均表面粗さ(Rz)が0.7μmであることが確認された。
【0147】
〔比較例3〕
基材層(I)に用いるポリオレフィン混合物として、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテック LDLC604)100重量部に対し、エチレンビニルアルコール共重合体(一方社油脂工業社製、ピーロイル1010S)1.5重量部用いた。また、粘着剤層として、水添ポリマー(JSR社製、ダイナロン 8601P)100重量部用いた。
【0148】
これらの樹脂材料を、溶融共押出成形(単軸押出機にて、押出機温度:200℃、ダイス温度:200℃にて、樹脂を溶融)により成膜し、2層の粘着フィルム(厚み:基材層(基材層(I))/粘着剤層=100μm/9μm)を得た。
【0149】
作製した粘着フィルムの基材(基材層(I))をSEMにより断面観察したところ、基材層(I)中の微小領域(エチレンビニルアルコール共重合体ドメイン)の長径平均長さ(LMD)が3.1μm、含有面積率が3.5%、縦横の比率(LMD/LTD)が6.89であり、また粘着フィルム最表面(基材層(I))の十点平均表面粗さ(Rz)が1.8μmであることが確認された。
【0150】
上記方法にしたがい、作製した粘着フィルムの各測定、評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0151】
【表1】

【0152】
上記表1の結果より、本発明によって作製された表面保護シートを用いた場合(実施例1〜10)、いずれの実施例においても、フィルムの成膜性を損なうことなく、基材最表面に目視可能な筋を発現でき、表面摩擦力の減少効果が並立されていることが明らかとなった。
【0153】
これに対して、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体を用いなかった場合(比較例1)基材最表面に目視可能な筋を発現できず、表面摩擦力が大きくなってしまう結果となった。また、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体に代えてエチレン酢酸ビニル共重合体を用いた場合(比較例2)ならびにエチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体の含有量を1.5重量部用いた場合(比較例3)では、本発明のような有効なミクロ相分離が発現しなかったため、基材最表面に目視可能な筋を発現できず、さらには表面摩擦力が大きくなってしまう結果となった。したがって、比較例ではいずれも、目視可能な粘着フィルムの方向(流れ目)の発現および表面摩擦力の減少を並立することができない結果となり、本発明の用途における表面保護用粘着フィルムには適さないことが明らかとなった。
【0154】
以上より、本発明の表面保護用粘着フィルムは、粘着フィルムの方向(流れ目)が容易に分かり、かつフィルムの背面の滑り性を向上させて作業性を向上できる表面保護用粘着フィルムであることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体を含むポリオレフィン系樹脂からなる基材層(I)が少なくとも1層以上設けられている表面保護用フィルム基材であって、前記基材層(I)が、前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体3〜20重量部含有し、かつ、前記基材層(I)中に分散しているエチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体の微小領域の長径平均長さ(LMD)が3.5μm以上ならびに前記微小領域の含有面積率が4%以上であることを特徴とする表面保護用フィルム基材。
【請求項2】
前記微小領域の長径平均長さ(LMD)と短径平均長さ(LTD)の比率(LMD/LTD)が2以上であることを特徴とする請求項1に記載の表面保護用フィルム基材。
【請求項3】
前記基材層(I)が前記表面保護用フィルム基材の最外層に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の表面保護用フィルム基材。
【請求項4】
前記基材層(I)の十点平均表面粗さ(Rz)が2.0μm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面保護用フィルム基材。
【請求項5】
前記基材層(I)が、前記ポリオレフィン系樹脂ならびに上記エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体からなるポリオレフィン混合物100重量部に対して、さらに微粒子0.5〜10重量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表面保護用フィルム基材。
【請求項6】
前記微粒子が合成ゼオライトおよび/または合成シリカであることを特徴とする請求項5に記載の表面保護用フィルム基材。
【請求項7】
前記微粒子の平均粒子径が1〜20μmであることを特徴とする請求項5または6に記載の表面保護用フィルム基材。
【請求項8】
前記微粒子の平均粒子径が前記基材層(I)の厚さより大きいことを特徴とする請求項5〜7に記載の表面保護用フィルム基材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の表面保護用フィルム基材の片面に粘着剤層を有することを特徴とする表面保護用粘着フィルム。
【請求項10】
前記表面保護用フィルム基材と前記粘着剤層が共押出成形により一体に形成されたものであることを特徴とする請求項9に記載の表面保護用粘着フィルム。
【請求項11】
フィルム基材と粘着剤層とを共押出成形により一体に形成する工程を有する表面保護用粘着フィルムの製造方法であって、
前記フィルム基材は、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体を含むポリオレフィン系樹脂からなる基材層(I)が少なくとも1層以上設けられており、前記基材層(I)が、前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体3〜20重量部含有し、かつ、前記基材層(I)中に分散しているエチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体の微小領域の長径平均長さ(LMD)が3.5μm以上ならびに微小領域の長径平均長さ(LMD)が2μm以上ならびに前記微小領域の含有面積率が4%以上であることを特徴とする表面保護用粘着フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記微小領域の長径平均長さ(LMD)と短径平均長さ(LTD)の比率(LMD/LTD)が2以上であることを特徴とする請求項11に記載の表面保護用粘着フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記基材層(I)の十点平均表面粗さ(Rz)が2.0μm以上であることを特徴とする請求項11または12に記載の表面保護用粘着フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記基材層(I)が、前記ポリオレフィン系樹脂ならびに上記エチレンビニルアルコール共重合体および/またはその誘導体からなるポリオレフィン混合物100重量部に対して、さらに微粒子0.5〜10重量部含有することを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の表面保護用粘着フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2007−204713(P2007−204713A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28565(P2006−28565)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】