説明

表面処理方法

【課題】樹脂層から露出する金属被膜の露出面に付着した樹脂異物を、プラズマ処理によって樹脂層を大きく損傷して除去する従来の表面処理方法の課題を解決する。
【解決手段】樹脂層から露出する金属被膜の露出面に付着した樹脂異物を、前記樹脂層を実質的に損傷することなく粗化できるように、前記樹脂異物を含む金属被膜の露出面にプラズマ処理を施した後、前記金属被膜の露出面の全面に、ノズルからエッチング液を噴射するスプレー式エッチングによってエッチングを施しつつ、前記樹脂異物を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面処理方法に関し、更に詳細には金属被膜の露出面に付着した樹脂異物を容易に除去できる表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等に用いられる配線基板を製造する際に、図5に示す様に、配線基板10の一面側に、外部接続端子としてのはんだバンプ18を形成するパッドが形成されている。かかるパッドは、配線基板10の一面側に形成された銅等の金属被膜12の周縁近傍を覆うソルダレジスト等の樹脂層14から露出する金属被膜12の露出面を、保護金属層16によって覆って露出面に酸化被膜が形成されないように保護している。
かかる保護金属層16は、通常、電解めっき或いは無電解めっきによって形成されるが、均斉な保護金属層16をめっきによって形成するには、金属被膜12の露出面に酸化被膜が形成されておらず且つ露出面に異物が存在しないことが大切である。
このため、下記特許文献1では、金属被膜12の露出面に形成された酸化膜を除去すべく、金属被膜12の露出面にソフトエッチングを施すことが提案されている。
【0003】
しかし、樹脂層14を形成する際に、図6に示す様に、金属被膜12の露出面に樹脂異物20が付着することがある。かかる樹脂異物20は、樹脂層14と一緒に加熱処理等が施されており、金属被膜12の露出面に強力に付着している。
かかる樹脂異物20は、ソフトエッチングを金属被膜12の露出面に施しても、図7に示す如く、樹脂異物20が付着している露出面はエッチングされず、エッチング処理後でも残留する。この状態で電解めっき或いは無電解めっきによって保護金属層16を形成したとき、樹脂異物20が付着している箇所はめっき被膜が付着しない欠点となる。
このため、下記特許文献2では、金属被膜12の露出面をプラズマ処理して、樹脂異物20を除去することが提案されている。
【特許文献1】特開2004−124110号公報
【特許文献2】特開2007−336321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2で提案されている、金属被膜12の露出面をプラズマ処理して、樹脂異物20を除去する表面処理方法によれば、樹脂異物20を除去できる。
しかし、樹脂異物20をプラズマ処理で完全に除去しようとすると、樹脂層14も同時にプラズマ処理されるため、樹脂層14が受ける損傷が大きくなることが判明した。
そこで、本発明は、樹脂層から露出する金属被膜の露出面に付着した樹脂異物を、プラズマ処理によって樹脂層を大きく損傷して除去する従来の表面処理方法の課題を解決し、樹脂層から露出する金属被膜の露出面に付着した樹脂異物を、樹脂層を実質的に損傷することなく除去でき、且つ金属被膜の露出面に形成された酸化膜も除去できる表面処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討したところ、樹脂異物はプラズマ処理によって粗化したとき、樹脂層には実質的に大きな損傷を受けていないことを知った。
更に、粗化された樹脂異物は、エッチング液をノズルから吹き付けることによって、樹脂異物の周縁が付着している金属被膜の表面がエッチングされて容易に除去できることを知り、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、樹脂層から露出する金属被膜の露出面に付着した樹脂異物を、前記樹脂層を実質的に損傷することなく粗化できるように、前記樹脂異物を含む金属被膜の露出面にプラズマ処理を施した後、前記金属被膜の露出面の全面に、ノズルからエッチング液を噴射するスプレー式エッチングによってエッチングを施しつつ、前記樹脂異物を除去することを特徴とする表面処理方法にある。
【0006】
かかる本発明において、金属被膜を配線基板の少なくとも一面側に形成し、樹脂層から露出する金属被膜の露出面を、外部接続端子が形成されるパッド面に形成することによって、配線基板の外部接続端子が装着されるパッド面を容易に形成できる。
また、金属被膜として、銅被膜を形成し、前記銅被膜の露出面の酸化膜を除去するソフトエッチングをスプレー式エッチングによって施すことによって、均斉で且つ酸化膜が除去された銅被膜の露出面を得ることができる。
更に、金属被膜としては、めっきによって形成した金属めっき被膜とすることが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、先ず、プラズマ処理によって樹脂層から露出する金属被膜の露出面に付着した樹脂異物を粗化する。かかる粗化によって、樹脂異物の金属被膜の露出面に付着する付着力を低下できるものと考えられる。
かかるプラズマ処理の際に、通常、樹脂異物は、樹脂層よりも著しく薄く且つ金属被膜の露出面よりも著しく小さいため、樹脂異物を粗化しても、樹脂層が受ける損傷は表面的であって、樹脂層全体としてはプラズマ処理前と同等の状態に維持できる。
次いで、粗化した樹脂異物が付着した金属被膜の露出面に、ノズルからエッチング液を噴射するスプレー式エッチングによってエッチングを施す。かかるエッチング液は、樹脂異物を直接的にはエッチングしないが、粗化された樹脂異物からのエッチング液の浸透、エッチング液の噴射圧力、及び吹き付けられたエッチング液によって樹脂異物の周縁が付着している金属被膜の表面がエッチングされることが相俟って、樹脂異物を完全に除去できる。
更に、かかるスプレー式エッチングは、金属被膜の露出面の表面を選択的にエッチングして、露出面に形成されたキズを平坦化し、且つ金属被膜の露出面の酸化膜も除去できる。
その結果、樹脂層から露出する金属被膜の露出面は、平滑で且つ酸化膜が除去された状態とすることができ、金属被膜の露出面に電解めっき或いは無電解めっきによって均斉な保護金属層を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明では、先ず、プラズマ処理によって、ソルダレジスト層等の樹脂層から露出する銅等の金属被膜の露出面に付着した、ソルダレジスト等の樹脂から成る樹脂異物を粗化する。
このプラズマ処理で用いるプラズマは、ガスとしてO,He,Arを用い、その出力は100〜400W程度とすることが好ましい。
かかるプラズマを用いるプラズマ処理では、樹脂層から露出する金属被膜の露出面が形成された配線基板等の処理対象物に対して、プラズマを減圧下で100〜500秒間、特に200〜300秒間照射することが好ましい。プラズマ照射時間が100秒未満の場合では、樹脂異物を充分に粗化し難くなる傾向にある。他方、プラズマ照射時間が300秒を超える場合では、樹脂異物を充分に粗化できるものの、樹脂層の損傷が大きくなる傾向がある。
【0009】
次いで、プラズマ処理によって粗化した樹脂異物が付着している金属被膜の露出面に、金属被膜をエッチングするエッチング液をノズルから噴射するスプレー式エッチングによってエッチングを施す。このエッチングでは、ノズルから噴射するエッチング液の噴射圧力を、0.1〜0.3MPaとして、金属被膜の露出面を厚さ1〜3μm程度にエッチングすることが好ましい。
かかるスプレー式エッチングでは、使用されるエッチング液では、樹脂層及び樹脂異物をエッチングしないが、図1に示す様に、吹き付けられたエッチング液によって金属被膜12の表面がエッチングされる。この際に、樹脂異物20の周縁が付着している金属被膜12の表面もエッチングされ、樹脂異物20の付着力が低下する。
更に、粗化された樹脂異物20からのエッチング液の浸透による、樹脂異物20が付着している金属被膜12の表面がエッチングされることと相俟って、樹脂異物20の付着力が更に一層低下する。
この様に、付着力が著しく低下した樹脂異物20は、ノズルから噴射されるエッチング液の噴射圧力によって容易に金属被膜12の表面から除去される。
尚、樹脂異物20が除去された後、必要に応じて金属被膜12の露出面を、エッチング液に浸漬するディップ式エッチングによって更にエッチングを施してもよい。
【0010】
ここで、スプレー式エッチングに代えて、プラズマ処理によって粗化した樹脂異物20が付着している金属被膜12の露出面を、エッチング液に浸漬してエッチングを施しても、樹脂異物20は除去できない。粗化された樹脂異物20からのエッチング液の浸透が少量であって、樹脂異物20の付着力を弱めることができるものの、樹脂異物20が付着している金属被膜12の表面を充分にエッチングできないものを考えられる。
また、スプレー式エッチングによれば、金属被膜12の露出面の表面を選択的にエッチングすることができ、図2(a)に示す様に、金属被膜12の露出面にキズ22が付いていても、キズ22が消滅した平滑面に形成できる。
スプレー式エッチングを金属被膜12の露出面に施すと、図2(b)に示す様に、キズ22の内壁面をエッチングすることなく、金属被膜12の露出面の表面のみを選択的にエッチングする。このため、スプレー式エッチングによって図2(c)に示す様に、樹脂異物20及びキズ22が消滅して、金属被膜12の露出面を平滑面に形成できる。
この様に平滑面に形成された金属被膜12の露出面には、電解めっき又は無電解めっきによって、均斉な保護金属層16を形成できる。
【実施例】
【0011】
図3(a)に示す様に、配線基板の一面側に複数のパッド面12a,12a・・が形成されている。このパッド面12aは、ソルダレジストから成る樹脂層14から、電解銅めっきによって形成した金属めっき被膜が露出する露出面である。
かかるパッド面12a,12a・・の一つには、図3(a)に示す様に、白色の点線で囲まれた箇所に、樹脂異物が付着していた。
かかる配線基板を300Paに減圧されたチャンバー内に載置して、そのパッド面12a,12a・・に対し、Oガスを用いた、出力が300Wのプラズマを300秒間照射してプラズマ処理を施した。
プラズマ処理を施した樹脂基板を顕微鏡で観察したところ、樹脂異物はスポンジ状に粗化されていたが、樹脂層14の表層は若干粗化されているものの、樹脂層14の全体はプラズマ処理前と略同等の状態であった。
【0012】
次いで、パッド面12aを形成する銅をエッチングするエッチング液を、ノズルから配線基板のパッド面12aに向けて圧力0.2MPaで噴射して、スプレー式エッチングを施した。かかるスプレー式エッチングでは、ノズル先端と樹脂基板のパッド面12aとの間隔を100mm程度とし、パッド面12aの表層を約2μmの厚さでエッチングした。
スプレー式エッチングを施した後、配線基板のパッド面12a,12a・・を顕微鏡で観察したところ、図3(b)に示す様に、プラズマ処理前に、パッド面12aの白色の点線で囲まれた箇所に付着していた樹脂異物20は完全に除去されていた。
この様に、樹脂異物20を除去した後、パッド面12aの平滑性を更に向上すべく、配線基板をエッチング液に浸漬するディップ式エッチングによって、パッド面12aを更にエッチングしてもよい。
尚、実施例1では、ソルダレジスト由来の樹脂異物を除去しているが、プラズマ処理によって粗化できるものであれば、ソルダレジスト以外の有機物から成る樹脂異物であっても、実施例1と同様にプラズマ処理後にスプレー式エッチングを施すことによって除去できる。
【比較例】
【0013】
実施例1において、図4(a)に示す銅から成るパッド面12a,12a・・がソルダレジストから成る樹脂層14から露出し、図4(a)に示す様に、パッド面12aに白色の点線で囲まれた箇所に樹脂異物が付着している配線基板を用い、スプレー式エッチングに代えて、樹脂基板をエッチング液に浸漬してパッド面12a,12a・・を約3μmの厚さでエッチングした他は、実施例1と同様に表面処理を施した。
エッチングを施した配線基板のパッド面の顕微鏡写真を図4(b)に示す。図4(b)に示す如く、パッド面12aに白色の点線で囲まれた箇所に、プラズマ処理前の配線基板のパッド面12aに付着していた図4(a)に示す樹脂異物が依然として付着していた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】スプレー式エッチングによって金属被膜の露出面に付着する樹脂異物が除去できる様子を説明する説明図である。
【図2】スプレー式エッチングによってキズのある金属被膜の露出面を平滑化できる様子を説明する説明図である。
【図3】プラズマ処理前の配線基板のパッド面と、プラズマ処理とスプレー式エッチングによるエッチング処理とを施した配線基板のパッド面との顕微鏡写真である。
【図4】プラズマ処理前の配線基板のパッド面と、プラズマ処理とエッチング液に浸漬したエッチング処理とを施した配線基板のパッド面との顕微鏡写真である。
【図5】配線基板のパッド面の構造を説明する説明図である。
【図6】パッド面を形成する樹脂層から露出する金属被膜の露出面に樹脂異物が付着した状態を説明する説明図である。
【図7】金属被膜の露出面に付着した樹脂異物が、露出面をエッチング液に浸漬しても除去できない状態を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0015】
10 配線基板
12a パッド面
12 金属被膜
14 樹脂層
16 保護金属層
18 バンプ
20 樹脂異物
22 キズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層から露出する金属被膜の露出面に付着した樹脂異物を、前記樹脂層を実質的に損傷することなく粗化できるように、前記樹脂異物を含む金属被膜の露出面にプラズマ処理を施した後、
前記金属被膜の露出面の全面に、ノズルからエッチング液を噴射するスプレー式エッチングによってエッチングを施しつつ、前記樹脂異物を除去することを特徴とする表面処理方法。
【請求項2】
金属被膜を配線基板の少なくとも一面側に形成し、樹脂層から露出する金属被膜の露出面を、外部接続端子が形成されるパッド面に形成する請求項1記載の表面処理方法。
【請求項3】
金属被膜として、銅被膜を形成し、前記銅被膜の露出面の酸化膜を除去するソフトエッチングをスプレー式エッチングによって施す請求項1又は請求項2記載の表面処理方法。
【請求項4】
金属被膜として、めっきによって金属めっき被膜を形成する請求項1〜3のいずれか一項記載の表面処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−203507(P2009−203507A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45564(P2008−45564)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】