表面実装インダクタの製造方法とその表面実装インダクタ
【課題】外部電極と良好に接合できる安価で小型の表面実装インダクタの製造方法とその表面実装インダクタを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の表面実装インダクタの製造方法は、成型金型を用いて樹脂と充填材とを含む封止材でコイルを封止する。平板形状の周縁部に柱状凸部を有する形状に封止材で予備成形されたタブレットと、断面が平角形状の導線を巻回したコイルとを用いる。タブレットにコイルを載置し、コイルの両端部をタブレットの柱状凸部の外側側面に沿わせて成型金型の内壁面との間に挟んでコイルと封止材を一体化させて成形体とする。成形体の表面にコイルの両端部の少なくとも一部が露出する部分と接続する外部電極を成形体の表面または外周に設けることを特徴とする。
【解決手段】
本発明の表面実装インダクタの製造方法は、成型金型を用いて樹脂と充填材とを含む封止材でコイルを封止する。平板形状の周縁部に柱状凸部を有する形状に封止材で予備成形されたタブレットと、断面が平角形状の導線を巻回したコイルとを用いる。タブレットにコイルを載置し、コイルの両端部をタブレットの柱状凸部の外側側面に沿わせて成型金型の内壁面との間に挟んでコイルと封止材を一体化させて成形体とする。成形体の表面にコイルの両端部の少なくとも一部が露出する部分と接続する外部電極を成形体の表面または外周に設けることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面実装インダクタの製造方法と表面実装インダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コイルを磁性粉末と樹脂とを有する封止材で封止してなる表面実装インダクタが広く利用されている。従来の表面実装インダクタの製造方法には、例えば特許文献1においてリードフレームを用いた表面実装インダクタの製造方法が開示されている。この方法は、リードフレームにコイルの端部を抵抗溶接などで接続し、コイル全体を封止材を用いて封止して成形体を得る。その成形体から露出するリードフレームを加工して外部電極を形成する。
【0003】
近年における電子機器の小型化や高機能化の技術革新は著しく、それに伴い、表面実装インダクタなどの電子部品の高性能化や小型化、更には低価格化などの要求が高まっている。しかし、従来のようにリードフレームを用いることは、リードフレームのロス分が多いためコストの上昇を招く原因となっていた。また、抵抗溶接などの方法によってコイルの端部をリードフレームに接合した場合、コイルのスプリングバック現象によってリードフレームとの接合部が剥離することもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−290992
【特許文献2】特開2003−282346
【特許文献3】特開2005−294461
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、特許文献2や特許文献3に示されるようにコイルの端部を加工して外部電極とする方法が提案された。特許文献2の方法では上下一対の成型金型を用い、その上下一対の成型金型の間の端子引き出し部にコイルの端部を挟むことによってコイルを固定する。しかしながら、小型の表面実装インダクタを作製する場合、所定の巻数を得るためにコイルに使用する線材を細くせざるを得ない。線材が細すぎるとコイルの端部だけで固定することが容易ではなく、この方法を用いて小型の表面実装インダクタを作製することは困難であった。また、この方法では、使用する線材の線径ごとに成型金型の端子引き出し部の寸法を変更する必要があった。
【0006】
一方、特許文献3の方法では、コイルの端部を下方に屈曲させ、その端部の外側面が成型型内の内側面に当接されるようにコイルを成型型内に載置する。成型型内に封止材を充填し、コイルを封止材で埋設させる。しかしながらこの方法の場合、端部がコイルの巻回部を中空に支えなければならず、ある程度の強度が必要となる。細い線材でコイルを作製すると、強度不足により端部が巻回部を支えることは困難であった。また、封止材を充填する際にコイルの位置ズレや変形が生じることもあり、小型の表面実装インダクタを作製することは困難であった。
【0007】
そこで本発明では、外部電極と良好な接合ができる安価で小型の表面実装インダクタの製造方法とその表面実装インダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、成型金型を用いて樹脂と充填材とを含む封止材でコイルを封止する。平板形状の周縁部に柱状凸部を有する形状に封止材で予備成形されたタブレットと、断面が平角形状の導線を巻回したコイルとを用いる。タブレットにコイルを載置し、コイルの両端部をタブレットの柱状凸部の外側側面に沿わせて成型金型の内壁面との間に挟んでコイルと封止材を一体化させて成形体とする。成形体の表面にコイルの両端部の少なくとも一部が露出する部分と接続する外部電極を成形体の表面または外周に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の表面実装インダクタの製造方法によれば、容易に小型の表面実装インダクタを得ることができる。そして、成形体の所定の位置にコイルの両端部の少なくとも一部を埋没させて固定することができる。さらに、両端部の平面を成形体の表面に露出させることができるため、外部電極との良好な接合面積を得ることができる。
【0010】
コイルの端部を成型金型で挟まないため、成型金型を簡単な構造で安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施例で用いる空芯コイルの斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施例のタブレットの斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施例の空芯コイルとタブレットの配置関係を説明する斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施例の成型金型中の空芯コイルとタブレットの配置を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−B−C組合せ断面図である。
【図5】本発明の第1の実施例の表面実装インダクタの製造方法の一部を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施例の成形体の斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施例の表面実装インダクタの斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施例の空芯コイルとタブレットの配置関係を説明する斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施例の成型金型中の空芯コイルとタブレットの配置を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−B断面図である。
【図10】本発明の第2の実施例の表面実装インダクタの製造方法の一部を示す断面図である。
【図11】本発明の第2の実施例の成形体の斜視図である。
【図12】本発明の第2の実施例の表面実装インダクタの斜視図である。
【図13】本発明の変形実施例の空芯コイルとタブレットの配置関係を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の表面実装インダクタの製造方法の実施例を説明する。
【0013】
(第1の実施例)
図1〜図7を参照しながら、本発明の表面実装インダクタの製造方法の第1の実施例について説明する。まず、第1の実施例で用いる空芯コイルについて説明する。図1に、第1の実施例で用いる空芯コイルの斜視図を示す。図1に示すように、第1の実施例で用いる空芯コイル1は、平角線を2段の外外巻きに巻回して得る。さらに空芯コイル1の両端部1aは空芯コイル1の同側面側に引き出されるようにした。
【0014】
次に、第1の実施例で用いる封止材について説明する。本実施例では封止材として、鉄系金属磁性粉末とエポキシ樹脂とを混合したものを用いる。この封止材を用いてタブレットを作製する。図2に第1の実施例のタブレットの斜視図を示す。図2に示すように、タブレット2は平面部2aと2つの柱状凸部2bを有し、平面部2aの一端部に設ける。そして、タブレット2は加圧成型後に熱処理をし、封止材を半硬化状態とした。
【0015】
次に、第1の実施例の表面実装インダクタの製造方法について説明する。まず、空芯コイル1とタブレット2の配置関係に関して説明する。図3に第1の実施例の空芯コイルとタブレットの配置関係を説明する斜視図を示す。図4に第1の実施例の成型金型中の空芯コイルとタブレットの配置を示し、(a)は上面図、(b)は(a)のA−B−C組合せ断面図である。図3に示すように、空芯コイル1をタブレット2の平面部2a上に載置する。そして、空芯コイル1の両端部1aをそれぞれタブレット2の柱状凸部2bの外側側面に沿うように配置する。
【0016】
図4に示すように、第1の実施例では上型3と下型4を有する成型金型を用いる。上型3は第1の上型3aと第2の上型3bからなり、下型4は上型3と組み合わせることで成型金型の底面部を形成する。この成型金型内に空芯コイル1が載置されたタブレット2を配置する。このようにタブレット2を配置すれば、空芯コイル1はタブレット2の厚みによって成型金型内で適正な高さに配置される。そして、空芯コイル1の両端部1aはタブレット2の柱状凸部2bと第2の上型3bの内壁面とで挟まれた状態となり、空芯コイル1の両端部1aが適正な位置で固定される。
【0017】
図5に第1の実施例の表面実装インダクタの製造方法の一部を説明する断面図を示す。なお、図5は図4(a)のA−B−C組合せ断面図における各段階での断面を示す。図6に第1の実施例の成形体の斜視図を示し、図7に第1の実施例の表面実装インダクタの斜視図を示す。
【0018】
図5(a)に示すように、予め予備成形した未硬化の板状タブレット5を成型金型の開口部(上型3の開口部)から空芯コイル1を覆うように装填し、成型金型を予熱する。本実施例において予備成形封止材として用いる板状タブレット5は、タブレット2を作製したときと同組成の封止材を板状に予備成形したものである。また、本実施例では成型金型を封止材の軟化温度以上に予熱しており、タブレット2と板状タブレット5は軟化状態となるようにした。
【0019】
図5(b)に示すように、成型金型の開口部からパンチ6をセットする。図5(c)に示すように、パンチ6を用いて加圧しタブレット2と板状タブレット5を一体化させ、封止材7を硬化させる。このとき、タブレット2と板状タブレット5は軟化状態であり、容易に空芯コイル1を封止する。そして、空芯コイル1の両端部1aは位置ズレすることなく、少なくともその一部が封止材7中に埋没した状態で封止される。
【0020】
封止材7を硬化させて得た成形体を成型金型から取り出す。図6に示すように成形体の表面には空芯コイル1の端部1aの平面が露出した状態となる。端部1aと接続するように、成形体の表面に導電性樹脂を塗布する。続いて、めっき処理を行い外部電極8を形成して図7に示す表面実装インダクタを得る。なお、めっき処理によって形成される電極は、Ni、Sn、Cu、Au、Pdなどから1つもしくは複数を適宜選択して形成すれば良い。
【0021】
(第2の実施例)
図8〜図12を参照して、本発明の表面実装インダクタの製造方法の第2の実施例について説明する。第2の実施例では、第1の実施例で用いた平角線と封止材と同組成のものを用いる。なお、第1の実施例と共通する部分の説明は割愛する。
【0022】
図8に第2の実施例の空芯コイルとタブレットの配置関係を説明する斜視図を示す。第2の実施例で用いる空芯コイル11は、第1の実施例と同様に平角線を2段の外外巻きに巻回して得た。第2の実施例で用いるタブレット12は、平面部12aとその両端部に対向するように2つの柱状凸部12bを有する形状に予備成形した。図8に示すように空芯コイル11は、タブレット12の平面部12aの上に載り、その両端部11aがそれぞれタブレット12の柱状凸部12bの外側側面に沿うように配置される。
【0023】
図9に第2の実施例の成型金型中の空芯コイルとタブレットの配置を示し、(a)は上面図、(b)は(a)のA−B断面図である。図9に示すように、第2の実施例では上型13と下型14を有する成型金型を用いる。上型13は第1の上型13aと第2の上型13bからなり、下型14は上型13と組み合わせることで成型金型の底面部を形成する。この成型金型内に空芯コイル11を載置したタブレット12を配置する。このようにタブレット12を配置することにより、空芯コイル11は、一方の端部11aが柱状凸部12bと第1の上型13aの内壁面、他方の端部11aが柱状凸部12bと第2の上型13bの内壁面との間に挟まれた状態となる。これにより、空芯コイル11は成型金型内で適正な高さに配置されるとともに両端部11aが適正な位置で固定される。
【0024】
図10に第2の実施例の表面実装インダクタの製造方法の一部を説明する断面図を示す。なお、図9(a)のA−B断面図における各段階での断面を示す。図11に第2の実施例の成形体の斜視図を示し、図7に第1の実施例の表面実装インダクタの斜視図を示す。
【0025】
図10(a)に示すように、成型金型の開口部(上型13の開口部)から所定量秤量した粉末状封止材15を空芯コイル11の上に投入する。本実施例では粉末状封止材として、タブレット12を作製したときと同組成の封止材を粉末状にしたものを用いた。そして、粉末状封止材はタブレットと同様に未硬化、または半硬化状態に成形すれば良い。
【0026】
図10(b)に示すように、成型金型の開口部からパンチ16をセットする。図10(c)に示すように、パンチ6を用いて圧粉成形法にてタブレット12と粉末状封止材15を一体化させ、封止材17を硬化させる。このとき、タブレット12は再成形されて、粉末状封止材15とともに空芯コイル11を封止する。そして、空芯コイル11の端部11aは位置ズレすることなく、少なくともその一部が封止材17中に埋没した状態で封止される。
【0027】
封止材17を硬化させて得た図11に示す成形体を成型金型から取り出す。図11に示すように成形体の対向する側面に空芯コイル11の端部11aの平面が露出した状態となる。半田などを用いて端部11aと接続するように金属端子などの外部電極18を取り付けて、図12に示す表面実装インダクタを得る。なお、金属端子はリン青銅板や銅板などを用いて作製すれば良く、錫めっき処理なども必要に応じて行っても良い。
【0028】
(その他の変形実施例)
図13を参照しながら、その他の変形実施例について説明する。図13に変形実施例の空芯コイルとタブレットの配置関係を説明する斜視図を示す。
【0029】
図13(a)に示すように、タブレット22の平面部22aの四隅に柱状凸部22bを設ければ、空芯コイル21を封止するときに封止材の充填加圧が均等になり易く空芯コイル21の位置ズレが生じにくく、成形精度の高い表面実装インダクタを得ることができる。
【0030】
図13(b)に示すように、タブレット32の柱状凸部32bが空芯コイル31を取り囲むような形状であれば、空芯コイル31の位置決めが容易となる。そして、空芯コイル31を封止するときに位置ズレが生じにくく、成形精度の高い表面実装インダクタを得ることができる。また、柱状凸部32bを角部のみではなく側面全体に形成することによって、タブレットの強度を高め、工程中での破損を低減できる。また、図13(b)に示すように、空芯コイル31の端部31aをタブレットの角を成す2側面の両方に沿うように配置すれば、得られる成形体の表面に端部31aの露出する面積が大きくなる。そのため、空芯コイルと外部電極との接合面積を十分に得られ、接触抵抗の少ない表面実装インダクタを得ることができる。
【0031】
図13(c)に示すように、タブレット42に空芯コイル41の位置決め用の柱状凸部42cを設ければ、空芯コイル41の位置決めが容易となる。そして、空芯コイル41を封止するときに位置ズレが生じにくく、成形精度の高い表面実装インダクタを得ることができる。
【0032】
上記実施例では、封止材として充填物に鉄系金属磁性粉末、樹脂にエポキシ樹脂を用いた。鉄系金属磁性粉末を用いることで直流重畳特性の優れた表面実装インダクタを作製することができる。しかしながら、これに限らず例えば、充填物としてフェライト系磁性粉末やガラス粉末などを用いても良い。そして、樹脂としてポリイミド樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂やポリエチレン樹脂やポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂を用いても良い。
【0033】
上記実施例では、タブレットを半硬化状態に予備成形したが、これに限らず未硬化状態でも良い。また、タブレットの柱状凸部を角柱状に予備成形したが、側面に曲面を持つ構造など用途に合わせて適宜変更することができる。また、柱状凸部はタブレットの周縁部を囲うように形成しても良い。
【0034】
上記実施例ではコイルとして2段の外外巻きに巻回した空芯コイルを用いたが、これに限らず、例えばエッジワイズ巻きなどの巻回方法や楕円や矩形などの形状のコイルを用いても良い。
【0035】
第1の実施例において、予備成形封止材として未硬化の板状タブレットを用いたが、板状に限ることなくT型やE型などの形状に予備成形しても良い。また、未硬化状態ではなく半硬化状態でも良い。そして、その成形方法も加圧成形法やシート状成形物から切り出すなど用途に合わせて適宜選択すれば良い。
【符号の説明】
【0036】
1、11、21、31、41:空芯コイル
1a、11a、21a、31a、41a:端部
2、12、22、32、42:タブレット
2a、12a、22a、32a、42a:平面部
2b、12b、22b、32b、42b、42c:柱状凸部
3、13:上型
3a、13a:第1の上型
3b、13b:第2の上型
4、14:下型
5:板状タブレット
6、16:パンチ
7、17:封止材
8:外部電極(めっき電極)
15:粉末状封止材
18:外部電極(金属端子)
【技術分野】
【0001】
本発明は表面実装インダクタの製造方法と表面実装インダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コイルを磁性粉末と樹脂とを有する封止材で封止してなる表面実装インダクタが広く利用されている。従来の表面実装インダクタの製造方法には、例えば特許文献1においてリードフレームを用いた表面実装インダクタの製造方法が開示されている。この方法は、リードフレームにコイルの端部を抵抗溶接などで接続し、コイル全体を封止材を用いて封止して成形体を得る。その成形体から露出するリードフレームを加工して外部電極を形成する。
【0003】
近年における電子機器の小型化や高機能化の技術革新は著しく、それに伴い、表面実装インダクタなどの電子部品の高性能化や小型化、更には低価格化などの要求が高まっている。しかし、従来のようにリードフレームを用いることは、リードフレームのロス分が多いためコストの上昇を招く原因となっていた。また、抵抗溶接などの方法によってコイルの端部をリードフレームに接合した場合、コイルのスプリングバック現象によってリードフレームとの接合部が剥離することもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−290992
【特許文献2】特開2003−282346
【特許文献3】特開2005−294461
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、特許文献2や特許文献3に示されるようにコイルの端部を加工して外部電極とする方法が提案された。特許文献2の方法では上下一対の成型金型を用い、その上下一対の成型金型の間の端子引き出し部にコイルの端部を挟むことによってコイルを固定する。しかしながら、小型の表面実装インダクタを作製する場合、所定の巻数を得るためにコイルに使用する線材を細くせざるを得ない。線材が細すぎるとコイルの端部だけで固定することが容易ではなく、この方法を用いて小型の表面実装インダクタを作製することは困難であった。また、この方法では、使用する線材の線径ごとに成型金型の端子引き出し部の寸法を変更する必要があった。
【0006】
一方、特許文献3の方法では、コイルの端部を下方に屈曲させ、その端部の外側面が成型型内の内側面に当接されるようにコイルを成型型内に載置する。成型型内に封止材を充填し、コイルを封止材で埋設させる。しかしながらこの方法の場合、端部がコイルの巻回部を中空に支えなければならず、ある程度の強度が必要となる。細い線材でコイルを作製すると、強度不足により端部が巻回部を支えることは困難であった。また、封止材を充填する際にコイルの位置ズレや変形が生じることもあり、小型の表面実装インダクタを作製することは困難であった。
【0007】
そこで本発明では、外部電極と良好な接合ができる安価で小型の表面実装インダクタの製造方法とその表面実装インダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、成型金型を用いて樹脂と充填材とを含む封止材でコイルを封止する。平板形状の周縁部に柱状凸部を有する形状に封止材で予備成形されたタブレットと、断面が平角形状の導線を巻回したコイルとを用いる。タブレットにコイルを載置し、コイルの両端部をタブレットの柱状凸部の外側側面に沿わせて成型金型の内壁面との間に挟んでコイルと封止材を一体化させて成形体とする。成形体の表面にコイルの両端部の少なくとも一部が露出する部分と接続する外部電極を成形体の表面または外周に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の表面実装インダクタの製造方法によれば、容易に小型の表面実装インダクタを得ることができる。そして、成形体の所定の位置にコイルの両端部の少なくとも一部を埋没させて固定することができる。さらに、両端部の平面を成形体の表面に露出させることができるため、外部電極との良好な接合面積を得ることができる。
【0010】
コイルの端部を成型金型で挟まないため、成型金型を簡単な構造で安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施例で用いる空芯コイルの斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施例のタブレットの斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施例の空芯コイルとタブレットの配置関係を説明する斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施例の成型金型中の空芯コイルとタブレットの配置を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−B−C組合せ断面図である。
【図5】本発明の第1の実施例の表面実装インダクタの製造方法の一部を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施例の成形体の斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施例の表面実装インダクタの斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施例の空芯コイルとタブレットの配置関係を説明する斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施例の成型金型中の空芯コイルとタブレットの配置を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−B断面図である。
【図10】本発明の第2の実施例の表面実装インダクタの製造方法の一部を示す断面図である。
【図11】本発明の第2の実施例の成形体の斜視図である。
【図12】本発明の第2の実施例の表面実装インダクタの斜視図である。
【図13】本発明の変形実施例の空芯コイルとタブレットの配置関係を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の表面実装インダクタの製造方法の実施例を説明する。
【0013】
(第1の実施例)
図1〜図7を参照しながら、本発明の表面実装インダクタの製造方法の第1の実施例について説明する。まず、第1の実施例で用いる空芯コイルについて説明する。図1に、第1の実施例で用いる空芯コイルの斜視図を示す。図1に示すように、第1の実施例で用いる空芯コイル1は、平角線を2段の外外巻きに巻回して得る。さらに空芯コイル1の両端部1aは空芯コイル1の同側面側に引き出されるようにした。
【0014】
次に、第1の実施例で用いる封止材について説明する。本実施例では封止材として、鉄系金属磁性粉末とエポキシ樹脂とを混合したものを用いる。この封止材を用いてタブレットを作製する。図2に第1の実施例のタブレットの斜視図を示す。図2に示すように、タブレット2は平面部2aと2つの柱状凸部2bを有し、平面部2aの一端部に設ける。そして、タブレット2は加圧成型後に熱処理をし、封止材を半硬化状態とした。
【0015】
次に、第1の実施例の表面実装インダクタの製造方法について説明する。まず、空芯コイル1とタブレット2の配置関係に関して説明する。図3に第1の実施例の空芯コイルとタブレットの配置関係を説明する斜視図を示す。図4に第1の実施例の成型金型中の空芯コイルとタブレットの配置を示し、(a)は上面図、(b)は(a)のA−B−C組合せ断面図である。図3に示すように、空芯コイル1をタブレット2の平面部2a上に載置する。そして、空芯コイル1の両端部1aをそれぞれタブレット2の柱状凸部2bの外側側面に沿うように配置する。
【0016】
図4に示すように、第1の実施例では上型3と下型4を有する成型金型を用いる。上型3は第1の上型3aと第2の上型3bからなり、下型4は上型3と組み合わせることで成型金型の底面部を形成する。この成型金型内に空芯コイル1が載置されたタブレット2を配置する。このようにタブレット2を配置すれば、空芯コイル1はタブレット2の厚みによって成型金型内で適正な高さに配置される。そして、空芯コイル1の両端部1aはタブレット2の柱状凸部2bと第2の上型3bの内壁面とで挟まれた状態となり、空芯コイル1の両端部1aが適正な位置で固定される。
【0017】
図5に第1の実施例の表面実装インダクタの製造方法の一部を説明する断面図を示す。なお、図5は図4(a)のA−B−C組合せ断面図における各段階での断面を示す。図6に第1の実施例の成形体の斜視図を示し、図7に第1の実施例の表面実装インダクタの斜視図を示す。
【0018】
図5(a)に示すように、予め予備成形した未硬化の板状タブレット5を成型金型の開口部(上型3の開口部)から空芯コイル1を覆うように装填し、成型金型を予熱する。本実施例において予備成形封止材として用いる板状タブレット5は、タブレット2を作製したときと同組成の封止材を板状に予備成形したものである。また、本実施例では成型金型を封止材の軟化温度以上に予熱しており、タブレット2と板状タブレット5は軟化状態となるようにした。
【0019】
図5(b)に示すように、成型金型の開口部からパンチ6をセットする。図5(c)に示すように、パンチ6を用いて加圧しタブレット2と板状タブレット5を一体化させ、封止材7を硬化させる。このとき、タブレット2と板状タブレット5は軟化状態であり、容易に空芯コイル1を封止する。そして、空芯コイル1の両端部1aは位置ズレすることなく、少なくともその一部が封止材7中に埋没した状態で封止される。
【0020】
封止材7を硬化させて得た成形体を成型金型から取り出す。図6に示すように成形体の表面には空芯コイル1の端部1aの平面が露出した状態となる。端部1aと接続するように、成形体の表面に導電性樹脂を塗布する。続いて、めっき処理を行い外部電極8を形成して図7に示す表面実装インダクタを得る。なお、めっき処理によって形成される電極は、Ni、Sn、Cu、Au、Pdなどから1つもしくは複数を適宜選択して形成すれば良い。
【0021】
(第2の実施例)
図8〜図12を参照して、本発明の表面実装インダクタの製造方法の第2の実施例について説明する。第2の実施例では、第1の実施例で用いた平角線と封止材と同組成のものを用いる。なお、第1の実施例と共通する部分の説明は割愛する。
【0022】
図8に第2の実施例の空芯コイルとタブレットの配置関係を説明する斜視図を示す。第2の実施例で用いる空芯コイル11は、第1の実施例と同様に平角線を2段の外外巻きに巻回して得た。第2の実施例で用いるタブレット12は、平面部12aとその両端部に対向するように2つの柱状凸部12bを有する形状に予備成形した。図8に示すように空芯コイル11は、タブレット12の平面部12aの上に載り、その両端部11aがそれぞれタブレット12の柱状凸部12bの外側側面に沿うように配置される。
【0023】
図9に第2の実施例の成型金型中の空芯コイルとタブレットの配置を示し、(a)は上面図、(b)は(a)のA−B断面図である。図9に示すように、第2の実施例では上型13と下型14を有する成型金型を用いる。上型13は第1の上型13aと第2の上型13bからなり、下型14は上型13と組み合わせることで成型金型の底面部を形成する。この成型金型内に空芯コイル11を載置したタブレット12を配置する。このようにタブレット12を配置することにより、空芯コイル11は、一方の端部11aが柱状凸部12bと第1の上型13aの内壁面、他方の端部11aが柱状凸部12bと第2の上型13bの内壁面との間に挟まれた状態となる。これにより、空芯コイル11は成型金型内で適正な高さに配置されるとともに両端部11aが適正な位置で固定される。
【0024】
図10に第2の実施例の表面実装インダクタの製造方法の一部を説明する断面図を示す。なお、図9(a)のA−B断面図における各段階での断面を示す。図11に第2の実施例の成形体の斜視図を示し、図7に第1の実施例の表面実装インダクタの斜視図を示す。
【0025】
図10(a)に示すように、成型金型の開口部(上型13の開口部)から所定量秤量した粉末状封止材15を空芯コイル11の上に投入する。本実施例では粉末状封止材として、タブレット12を作製したときと同組成の封止材を粉末状にしたものを用いた。そして、粉末状封止材はタブレットと同様に未硬化、または半硬化状態に成形すれば良い。
【0026】
図10(b)に示すように、成型金型の開口部からパンチ16をセットする。図10(c)に示すように、パンチ6を用いて圧粉成形法にてタブレット12と粉末状封止材15を一体化させ、封止材17を硬化させる。このとき、タブレット12は再成形されて、粉末状封止材15とともに空芯コイル11を封止する。そして、空芯コイル11の端部11aは位置ズレすることなく、少なくともその一部が封止材17中に埋没した状態で封止される。
【0027】
封止材17を硬化させて得た図11に示す成形体を成型金型から取り出す。図11に示すように成形体の対向する側面に空芯コイル11の端部11aの平面が露出した状態となる。半田などを用いて端部11aと接続するように金属端子などの外部電極18を取り付けて、図12に示す表面実装インダクタを得る。なお、金属端子はリン青銅板や銅板などを用いて作製すれば良く、錫めっき処理なども必要に応じて行っても良い。
【0028】
(その他の変形実施例)
図13を参照しながら、その他の変形実施例について説明する。図13に変形実施例の空芯コイルとタブレットの配置関係を説明する斜視図を示す。
【0029】
図13(a)に示すように、タブレット22の平面部22aの四隅に柱状凸部22bを設ければ、空芯コイル21を封止するときに封止材の充填加圧が均等になり易く空芯コイル21の位置ズレが生じにくく、成形精度の高い表面実装インダクタを得ることができる。
【0030】
図13(b)に示すように、タブレット32の柱状凸部32bが空芯コイル31を取り囲むような形状であれば、空芯コイル31の位置決めが容易となる。そして、空芯コイル31を封止するときに位置ズレが生じにくく、成形精度の高い表面実装インダクタを得ることができる。また、柱状凸部32bを角部のみではなく側面全体に形成することによって、タブレットの強度を高め、工程中での破損を低減できる。また、図13(b)に示すように、空芯コイル31の端部31aをタブレットの角を成す2側面の両方に沿うように配置すれば、得られる成形体の表面に端部31aの露出する面積が大きくなる。そのため、空芯コイルと外部電極との接合面積を十分に得られ、接触抵抗の少ない表面実装インダクタを得ることができる。
【0031】
図13(c)に示すように、タブレット42に空芯コイル41の位置決め用の柱状凸部42cを設ければ、空芯コイル41の位置決めが容易となる。そして、空芯コイル41を封止するときに位置ズレが生じにくく、成形精度の高い表面実装インダクタを得ることができる。
【0032】
上記実施例では、封止材として充填物に鉄系金属磁性粉末、樹脂にエポキシ樹脂を用いた。鉄系金属磁性粉末を用いることで直流重畳特性の優れた表面実装インダクタを作製することができる。しかしながら、これに限らず例えば、充填物としてフェライト系磁性粉末やガラス粉末などを用いても良い。そして、樹脂としてポリイミド樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂やポリエチレン樹脂やポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂を用いても良い。
【0033】
上記実施例では、タブレットを半硬化状態に予備成形したが、これに限らず未硬化状態でも良い。また、タブレットの柱状凸部を角柱状に予備成形したが、側面に曲面を持つ構造など用途に合わせて適宜変更することができる。また、柱状凸部はタブレットの周縁部を囲うように形成しても良い。
【0034】
上記実施例ではコイルとして2段の外外巻きに巻回した空芯コイルを用いたが、これに限らず、例えばエッジワイズ巻きなどの巻回方法や楕円や矩形などの形状のコイルを用いても良い。
【0035】
第1の実施例において、予備成形封止材として未硬化の板状タブレットを用いたが、板状に限ることなくT型やE型などの形状に予備成形しても良い。また、未硬化状態ではなく半硬化状態でも良い。そして、その成形方法も加圧成形法やシート状成形物から切り出すなど用途に合わせて適宜選択すれば良い。
【符号の説明】
【0036】
1、11、21、31、41:空芯コイル
1a、11a、21a、31a、41a:端部
2、12、22、32、42:タブレット
2a、12a、22a、32a、42a:平面部
2b、12b、22b、32b、42b、42c:柱状凸部
3、13:上型
3a、13a:第1の上型
3b、13b:第2の上型
4、14:下型
5:板状タブレット
6、16:パンチ
7、17:封止材
8:外部電極(めっき電極)
15:粉末状封止材
18:外部電極(金属端子)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型金型を用いて樹脂と充填材とを含む封止材でコイルを封止した表面実装インダクタの製造方法において、
平板形状の周縁部に柱状凸部を有する形状に該封止材で予備成形されたタブレットと、
断面が平角形状の導線を巻回した該コイルとを用いて、
該タブレットに該コイルを載置し、該コイルの両端部を該タブレットの柱状凸部の外側側面に沿わせて該成型金型の内壁面との間に挟んで該コイルと該封止材を一体化させて成形体とし、
該成形体の表面に該コイルの両端部の少なくとも一部が露出する部分と接続する外部電極を該成形体の表面または外周に設けることを特徴とする表面実装インダクタの製造方法。
【請求項2】
前記封止材において、
前記樹脂が熱硬化性樹脂を有し、
前記タブレットが未硬化状態もしくは半硬化状態であることを特徴とする請求項1に記載の表面実装インダクタの製造方法。
【請求項3】
前記封止材は予備成形封止材または粉末状封止材を有し、
前記タブレットとともに前記コイルを封止することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面実装インダクタの製造方法。
【請求項4】
前記タブレットにおいて、
前記柱状凸部が複数箇所に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の表面実装インダクタの製造方法。
【請求項5】
前記充填材が磁性材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の表面実装インダクタの製造方法。
【請求項6】
樹脂成形法もしくは圧粉成形法を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の表面実装インダクタの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6に記載の表面実装インダクタの製造方法を用いて作製されたことを特徴とする表面実装インダクタ。
【請求項1】
成型金型を用いて樹脂と充填材とを含む封止材でコイルを封止した表面実装インダクタの製造方法において、
平板形状の周縁部に柱状凸部を有する形状に該封止材で予備成形されたタブレットと、
断面が平角形状の導線を巻回した該コイルとを用いて、
該タブレットに該コイルを載置し、該コイルの両端部を該タブレットの柱状凸部の外側側面に沿わせて該成型金型の内壁面との間に挟んで該コイルと該封止材を一体化させて成形体とし、
該成形体の表面に該コイルの両端部の少なくとも一部が露出する部分と接続する外部電極を該成形体の表面または外周に設けることを特徴とする表面実装インダクタの製造方法。
【請求項2】
前記封止材において、
前記樹脂が熱硬化性樹脂を有し、
前記タブレットが未硬化状態もしくは半硬化状態であることを特徴とする請求項1に記載の表面実装インダクタの製造方法。
【請求項3】
前記封止材は予備成形封止材または粉末状封止材を有し、
前記タブレットとともに前記コイルを封止することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面実装インダクタの製造方法。
【請求項4】
前記タブレットにおいて、
前記柱状凸部が複数箇所に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の表面実装インダクタの製造方法。
【請求項5】
前記充填材が磁性材料からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の表面実装インダクタの製造方法。
【請求項6】
樹脂成形法もしくは圧粉成形法を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の表面実装インダクタの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6に記載の表面実装インダクタの製造方法を用いて作製されたことを特徴とする表面実装インダクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−245473(P2010−245473A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95582(P2009−95582)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】
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