説明

表面実装型水晶振動子

【課題】水晶振動子の封止管を変形させることなく良好に樹脂モールドされる表面実装型水晶振動子を提供する。
【解決手段】シリンダー型水晶振動子7は、封止管7aとその一端部側から導出されたリード端子7bがリードフレーム3に溶接等の手段によって固着されている。リードフレーム3に固着保持された水晶振動子7は、上下方向に配置された射出成型金型で挟み込まれ、該金型内に樹脂を注入固化することによって表面実装型水晶振動子10となる。前記封止管7aの頂面部は、封止管7aの外側に向けた凸状部7cを有した構成であり、平坦面でない形状で構成されている。このような構成にすることで、射出成型の際に注入される樹脂の射出圧によって頂面部に受ける圧力を分散させることができ、頂面部の変形を防止することができる。よって、良好な表面実装型水晶振動子が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面実装型水晶振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂モールドされた表面実装型水晶振動子は、リードフレームに水晶振動子の端子を固定(溶接)後、射出成型する際に水晶振動子の封止管がモールド樹脂の表面上に露出してしまうのを避けるために、射出成型金型に水晶振動子の封止管を位置決め固定するピンを設け、射出成型時に水晶振動子が動かないようにして製造されている。
【0003】
図3は従来技術により製造された表面実装型水晶振動子の斜視図であり、図4は図3の表面実装型水晶振動子を3面方向から見た図で、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は側面図である。尚、図3及び図4に示す二点鎖線は、内部の水晶振動子外形を示している。
【0004】
2はシリンダー型水晶振動子(以下、単に水晶振動子という)で、封止管2aとその一端部側から導出されたリード端子2bがリードフレーム3に溶接等の手段によって固着されている。リードフレーム3に固着保持された水晶振動子2は、上下方向に配置された射出成型金型で挟み込まれ、該金型内に樹脂を注入固化することによって表面実装型水晶振動子1となる。尚、樹脂モールド後、外部に突出するリードフレーム3の一部は、表面実装型水晶振動子外形に沿って折り曲げられて外部接続用端子3aとなっている。
【0005】
図5は表面実装型水晶振動子の製造工程中の金型と水晶振動子の位置関係を示す正面断面図である。
4は上金型、5は下金型であり、各々は水晶振動子2を収容する凹部を有している。上金型4と下金型5は、水晶振動子2の上下方向から水晶振動子2を挟み込むようにして合わされ、水晶振動子2は上金型4と下金型5によって形成される凹部空間内に配置される。
【0006】
射出成型の樹脂のゲート口6は上金型4と下金型5の合わせ面の一部に設けられており、水晶振動子2のリード端子2b側の位置に設けられている。このゲート口6から樹脂が一定の圧力(射出圧)をもって注入され、前記上金型5と下金型6内の空間部内に充填され水晶振動子2の外周部が樹脂で覆い尽くされる。
【0007】
前述の構成で樹脂を注入する際には、樹脂の射出圧によって水晶振動子2の封止管2aが上下方向の何れかへ押され、上金型4若しくは下金型5に接触し表面実装型水晶振動子1が完成した時に外面に封止管2aが露出してしまう。これを避けるためには封止管2aの外面と金型4、5の間隔を大きくすれば封止管2aの露出は防止できるが、表面実装型水晶振動子1の厚みが増加してしまう。電子部品の小型化が望まれる中では採用できない対策である。そのため水晶振動子2の封止管2aの上下方向に水晶振動子2の位置決め固定用のピン4aを配して射出成型する。該構成によって樹脂モールドされた表面には位置決め固定用のピン4aの跡が穴4a’として水晶振動子2の封止管2aまで達した状態で形成される。尚、図5では上金型4にのみピン4aを配した構成としているので、図3、図4に示す樹脂モールドされた表面実装型水晶振動子1には上面にのみ2つの穴4a’がある。(特許文献1参照)
【0008】
【特許文献1】特開平9−139648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、射出成型の際に注入される樹脂の射出圧は、選択する樹脂の素材によっても異なるが、例えば熱可塑性樹脂(液晶ポリマー)を用いる場合には、金型に注入する段階での射出圧が650kg/cm程度となる。したがって、このような高い射出圧をもって樹脂注入される場合には、高圧力を全面に受ける水晶振動子の位置ズレが危惧されるが、従来技術において説明した通り、金型に設けた水晶振動子の位置決め固定用のピンが有効に作用するため、水晶振動子の位置ズレについては問題がない。
【0010】
しかしながら、高い射出圧で注入される樹脂は図5に矢印で示すように流れ込み水晶振動子2を覆うため、水晶振動子2はその全面で圧力を受けることとなる。したがって、場合によっては水晶振動子2の一部を変形させてしまうことがある。
【0011】
特に水晶振動子2の封止管2aは金属薄板を深絞り加工することによって形成されており、その頂面部は平坦面になっているのでその平坦面で高圧力をもろに受けてしまう。このため、前記頂面部は、最も変形を生ずる可能性の高い部位である。前記頂面部は、金型4、5内の隙間を回り込んだ樹脂により外側から押圧されるので、図5中破線で示すように封止管2aの内側にくぼみ変形してしまう可能性がある。このような変形が生じた場合には、前記頂面部が水晶振動子2内部に収納された水晶片と接触し製品不良となってしまう。
【0012】
尚、封止管2aは筒状であるためその外周面部は、曲面となっているので受ける圧力は分散され変形には至らない。また、リード端子2b側は、封止管2a内に圧入された気密端子(不図示)の底部であるので変形することはない。
【0013】
前述の変形問題を回避するため射出圧を若干下げて樹脂注入をすることも考えられるが、この場合には、樹脂の回り込みを悪化させることとなり樹脂厚みの薄い部分でウェルドを生じてしまうという別の問題が起きてしまうため採用し難い。
【0014】
前記問題点に鑑み、本発明は水晶振動子を構成する封止管を変形させることなく良好に樹脂モールドされる表面実装型水晶振動子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
少なくとも、シリンダー型水晶振動子と、
前記シリンダー型水晶振動子を支持すると共に前記シリンダー型水晶振動子の端子と接続され外部接続用端子を形成するリードフレームとを有し、
前記シリンダー型水晶振動子が射出成型により樹脂モールドされて成る表面実装型水晶振動子において、
前記シリンダー型水晶振動子の外周部となる封止管の頂面部全域が外側に向けた凸状を成し、平坦面でない表面実装型水晶振動子とする。
【0016】
前記封止管の頂面部が球面形状である表面実装型水晶振動子とする。
【0017】
前記封止管の頂面部が円錐形状である表面実装型水晶振動子とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、射出成型の際に注入される樹脂の射出圧によって変形しやすい水晶振動子の封止管頂面部を凸状に形成し平坦面でない構成としたので、頂面部に受ける圧力を分散させることができ、変形を防止した良好な表面実装型水晶振動子が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。尚、従来技術に示したものと同一部材については同一の符号を用いることとする。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の一実施例の表面実装型水晶振動子を示す図で、(a)は正面図、(b)は上面図である。図中の二点鎖線は、樹脂モールド内の水晶振動子の外形を示すものである。
【0021】
7はシリンダー型水晶振動子(以下、単に水晶振動子という)で、封止管7aとその一端部側から導出されたリード端子7bがリードフレーム3に溶接等の手段によって固着されている。リードフレーム3に固着保持された水晶振動子7は、上下方向に配置された射出成型金型で挟み込まれ、該金型内に樹脂を注入固化することによって表面実装型水晶振動子10となる。射出成型の手段、用いる金型については従来技術と同様であるため詳細説明は省略する。
【0022】
樹脂モールド後、外部に突出するリードフレーム3の一部は、表面実装型水晶振動子外形に沿って折り曲げられて外部接続用端子3aとなる。
【0023】
前記封止管7aの頂面部は、封止管7aの外側に向けた凸状部7cを有した構成であり、平坦面でない形状で構成されている。本実施例において前記凸状部7cは球面形状に形成されている。該構成によれば、射出成型の際に注入される樹脂の射出圧によって頂面部に受ける圧力を分散させることができ、頂面部の変形を防止することができる。よって、良好な表面実装型水晶振動子が得られる。
【0024】
前記封止管7aは、金属製の薄板を絞り加工によって形成しているので、プレス加工機の形状を任意の形状にすれば所望の形状、本実施例においては、頂面部を球面形状とした封止管7aが容易に形成できる。
【実施例2】
【0025】
図2は本発明の他の実施例の表面実装型水晶振動子を示す上面図である。図中の二点鎖線は、樹脂モールド内の水晶振動子の外形を示すものである。
8はシリンダー型水晶振動子(以下、単に水晶振動子という)で、封止管8aとその一端部側から導出されたリード端子8bを有している。当該水晶振動子8は、上下方向に配置された射出成型金型で挟み込まれ、該金型内に樹脂を注入固化することによって表面実装型水晶振動子11となる。射出成型の手段、用いる金型については従来技術と同様であるため詳細説明は省略する。
【0026】
前記封止管8aの頂面部は、封止管8aの外側に向けた凸状部8cを有した構成であり、平坦面でない形状で構成されている。本実施例において前記凸状部8cは円錐形状に形成されている。該構成によれば、射出成型の際に注入される樹脂の射出圧によって頂面部に受ける圧力を分散させることができ、頂面部の変形を防止することができる。よって、良好な表面実装型水晶振動子が得られる。
【0027】
前記封止管8aは、実施例1と同様に金属製の薄板を絞り加工によって形成されるもので、本実施例のような、頂面部を円錐形状とした封止管8aも容易に形成できる。
【0028】
以上説明したように、射出成型の際に注入される樹脂の射出圧によって変形しやすい水晶振動子の封止管頂面部を凸状に形成し平坦面でない構成としたので、頂面部に受ける圧力を分散させることができ、変形を防止した良好な表面実装型水晶振動子を得ることができる。尚、封止管頂面部形状は具体例として示した球面形状や円錐形状に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な形態で実施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例の表面実装型水晶振動子を示す図。(実施例1)
【図2】本発明の他の実施例の表面実装型水晶振動子を示す上面図。(実施例2)
【図3】従来技術により製造された表面実装型水晶振動子の斜視図。
【図4】図3の表面実装型水晶振動子を3面方向から見た図。
【図5】表面実装型水晶振動子の製造工程中の金型と水晶振動子の位置関係を示す正面断面図。
【符号の説明】
【0030】
1 表面実装型水晶振動子
2 水晶振動子
2a 封止管
2b リード端子
3 リードフレーム
3a 外部接続用端子
4 上金型
4a ピン
4a’穴
5 下金型
6 ゲート口
7 水晶振動子
7a 封止管
7b リード端子
7c 凸状部
8 水晶振動子
8a 封止管
8b リード端子
8c 凸状部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、シリンダー型水晶振動子と、
前記シリンダー型水晶振動子を支持すると共に前記シリンダー型水晶振動子の端子と接続され外部接続用端子を形成するリードフレームとを有し、
前記シリンダー型水晶振動子が射出成型により樹脂モールドされて成る表面実装型水晶振動子において、
前記シリンダー型水晶振動子の外周部となる封止管の頂面部全域が外側に向けた凸状を成し、平坦面でないことを特徴とする表面実装型水晶振動子。
【請求項2】
前記封止管の頂面部が球面形状であることを特徴とする請求項1に記載の表面実装型水晶振動子。
【請求項3】
前記封止管の頂面部が円錐形状であることを特徴とする請求項1に記載の表面実装型水晶振動子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−88896(P2009−88896A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254945(P2007−254945)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000166948)シチズンファインテックミヨタ株式会社 (438)
【Fターム(参考)】