説明

表面実装型電子デバイス

【課題】 実装基板として安価ではあるが熱膨張率が高いガラスエポキシ樹脂材料を使用しながらも、実装基板上のパッドと、回路部品の電極との間を半田接続した場合に、ヒートサイクル、振動、衝撃等に起因して、半田に亀裂が発生して接続不良、回路部品の脱落といった不具合が発生することを防止することができる表面実装型電子デバイスを提供する。
【解決手段】 高熱膨張材料から成る絶縁基板3、該絶縁基板上部に形成した配線パターン4、及び該絶縁基板底部に形成した実装電極5を備えた回路配線基板2上に、低熱膨張材料から成る絶縁容器21、及び該絶縁容器底部に形成した底部電極22を備えた回路部品20を搭載した表面実装型電子デバイスにおいて、回路配線基板上の配線パターン上に、中熱膨張材料から成る絶縁基板11の上部及び下部に夫々接続パッド12、13を備えた中間基板10の該下部接続パッドを半田接続し、該中間基板の上部接続パッドに回路部品の底部電極を半田接続固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路部品をプリント基板上に半田固定した場合に回路部品のパッケージを構成する材料とプリント基板を構成する材料の熱膨張率の違いに起因して半田に加わる応力によって、半田接合部にクラックが形成される不具合を解決するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装型電子デバイスとしては、例えば底部に実装電極を備えた絶縁基板(実装基板)の表面に形成した配線パターン上に各種回路部品等を搭載した構成を備えたものが知られている。このような表面実装型電子デバイスとしては、例えば水晶振動子、水晶フィルタ、水晶発振器等の圧電デバイスを例示することができる。例えば、表面実装型の水晶発振器としては、図4に示したように底部に電極102を備えたセラミック容器101の表面凹所103内に水晶振動素子(水晶基板上に励振電極を形成した素子)104を搭載し、且つ水晶振動素子104を含むセラミック容器101上の凹所103を金属蓋105により気密封止した水晶振動子100を、他の回路部品106と共に実装基板110上のパッド111上に半田115によって接続固定した構成を備えたものがある。
実装基板110は例えばガラスエポキシ樹脂にて構成されており、その底部には図示しないマザープリント基板上に搭載するための実装電極112が配置されている。
低熱膨張率材料であるセラミック容器101の熱膨張率は5〜7ppm/℃であるのに対して、ガラスエポキシ樹脂の熱膨張率は約16ppm/℃であるため、実装基板110上に水晶振動子100を半田105によって固定した電子デバイスに対して繰り返し熱ストレスが加わると、セラミック容器とガラスエポキシ樹脂との間の熱膨張差により半田接合部に亀裂が発生し、最後には接続部の破壊に至る。このような不具合は、実装基板上に水晶振動子等の回路部品を半田接続するために熱負荷をかける場合にも発生する。
上記の如き亀裂発生の問題を解決するためには、電子部品の小型化が有効であることが知られてはいるが、他の諸特性を無視して小型化を優先させると、満足な特性が確保できなくなる、という問題を生じる。
また、他の対策として半田厚みを増大させて亀裂が発生しにくい構造とすることが考えられるが、クリーム半田の増量は電極間の短絡を招いたりする結果をもたらす。
更に、セラミック容器側の電極102と実装基板上のパッド111の面積を広くして使用する半田量を増量させて亀裂が発生しにくい構造とする対策も考えられるが(特許文献1)、電子デバイスが小型化されるに従いレイアウトの自由度が低下して電極やパッドの面積も狭くならざるを得ず、面積を拡張することには限界が生じる。
このような不具合を解決するために、特許文献2に開示されているように容器底面の各角隅部から一辺に沿って延びる長穴状のキャスタレーションを一つ形成することが提案されている。
【0003】
しかし、水晶振動子に求められるスペックの一つとして、ヒートサイクル試験(−40〜+125℃、3000cycle)の要求を満たす必要があるが、いずれのパッケージもパッケージ底面中心点から最も遠方にある半田接続部には応力が一カ所に集中し易い状態にあるため、パッケージ(セラミック容器)と実装基板110との熱膨張差が大きいと、この部分にヒートサイクルによる亀裂が発生し易く、スペックを満たさない不良品が発生することがある。また、セラミック容器の小型化によって長穴状キャスタレーションを形成するスペースを確保できなくなるケースも多々発生してきている。
また、最近では、ガラスエポキシ樹脂に代わる実装基板材料として、低熱膨張材料、例えばアラミド不織布から成る基材をエポキシ樹脂にて固めたアラミドエポキシ樹脂基板(8〜10ppm/℃)が用いられており、これによれば半田接合部の温度サイクル寿命を延ばす効果を得ることができる。
しかし、低熱膨張材料から成る実装基板は、従来のガラスエポキシ材料に比べて材料コストが高いため、実装基板面積が増大する程コストが高くなるという問題を有している。
【特許文献1】特開2004−64701公報
【特許文献2】特開平9−130145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、実装基板として安価ではあるが熱膨張率が高いガラスエポキシ樹脂材料を使用しながらも、実装基板上のパッドと、回路部品の電極との間を半田接続した場合に、ヒートサイクル、振動、衝撃等に起因して、半田に亀裂が発生して接続不良、回路部品の脱落といった不具合が発生することを防止することができる表面実装型電子デバイスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1の発明に係る表面実装型電子デバイスは、高熱膨張材料から成る絶縁基板、該絶縁基板上部に形成した配線パターン、及び該絶縁基板底部に形成した実装電極を備えた回路配線基板上に、低熱膨張材料から成る絶縁容器、及び該絶縁容器底部に形成した底部電極を備えた回路部品を搭載した表面実装型電子デバイスにおいて、前記回路配線基板上の配線パターン上に、中熱膨張材料から成る絶縁基板の上部及び下部に夫々接続パッドを備えた中間基板の該下部接続パッドを半田接続し、該中間基板の上部接続パッドに前記回路部品の底部電極を半田接続固定したことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1において、前記高熱膨張材料から成る絶縁基板はガラスエポキシ樹脂基板であり、前記中熱膨張材料から成る絶縁基板はアラミドエポキシ樹脂基板であり、前記低熱膨張材料から成る絶縁容器はセラミックであることを特徴とする。
請求項3の発明は、熱膨張率の異なる複数枚の前記中間基板を、半田を介して積み上げ積層した構成を備え、請求項1、又は2において、各中間基板の熱膨張率が、最下部の中間基板から上方の中間基板に向かうに連れて熱膨張率が順次小さくなるように構成したことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1、2又は3において、前記回路部品はICベアチップであり、該ICベアチップ下面の電極と、前記中間基板上面の上部接続パッドとの間をバンプにより接続したことを特徴とする。
請求項5の発明は、中熱膨張材料から成る絶縁基板の上部及び下部に夫々接続パッドを備えた中間基板上に、低熱膨張材料から成る絶縁容器、及び該絶縁容器底部に形成した底部電極を備えた回路部品を搭載した表面実装型電子デバイスであって、前記中間基板の上部接続パッドに前記回路部品の底部電極を半田接続固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、底部に位置する回路配線基板と、その上に搭載される電子部品との間の熱膨張率差のミスマッチに起因した半田接合部の亀裂発生を防止するために、両者の中間値に相当する熱膨張率を有した中間基板を介在させてミスマッチを緩衝させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を添付図面に示した実施の形態に基づいて詳細に説明する。
なお、以下の実施形態では表面実装型電子デバイスの一例として表面実装型圧電デバイス、特に水晶発振器(圧電発振器)を用いて説明する。
図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る表面実装型電子デバイスの一例としての水晶振動子の構成を示す斜視図、及び正面縦断面図である。
この表面実装型水晶振動子1は、ガラスエポキシ樹脂等の高熱膨張材料から成る絶縁基板3、絶縁基板3上面に形成した配線パターン4、及び絶縁基板3の底面に形成した実装電極5を備えた回路配線基板2上に、アラミドエポキシ樹脂等の中熱膨張材料から成る絶縁基板11の上部及び下部に夫々接続パッド12、13を備えた中間基板10と、セラミック等の低熱膨張材料から成る絶縁容器21、絶縁容器底部に形成した底部電極22、及び上部凹所内に配置した水晶振動素子23を備えた電子部品(回路部品)20を順次半田接続により搭載した三層構成を備えている。符号30は半田を示している。
具体的には、回路配線基板2の配線パターン4上に、中間基板10の下部接続パッド13を半田接続し、中間基板10の上部接続パッド12に電子部品20の底部電極22を半田接続することにより、水晶振動子1の組立が行われる。
この水晶振動子1は、熱膨張率が小さいセラミック(5〜7ppm/℃)等を絶縁容器として使用する電子部品20と、熱膨張率が大きい(16ppm/℃)ガラスエポキシ樹脂基板2との間に、熱膨張率が両者の中間程度の値(8〜10ppm/℃)である中熱膨張率材から成る中間基板10を介在させた三層構造とした。
【0008】
このように下側から上に向かうに従って熱膨張係数が順次小さくなるように三層構造とすることにより、従来セラミック容器とガラスエポキシ基板との間で発生していた熱膨張率差の大きなミスマッチ(約10ppm/℃)が、セラミックと中熱膨張材との膨張率差(約4.5ppm/℃)、中熱膨張材とガラスエポキシ樹脂との熱膨張差(約5.5ppm/℃)という熱膨張率差の小さい組合せとなり、同様のサイズの電子デバイスの半田接合部に比べて熱ストレスに対する寿命が大幅に向上する。
要するに本発明では、底部に位置する回路配線基板と、その上に搭載される電子部品との間の熱膨張率差のミスマッチを緩衝して、ミスマッチに起因した接合部の亀裂発生を防止するために、両者の中間値に相当する熱膨張率を有した中間基板を介在させるようにした構成が特徴的である。
なお、ガラスエポキシ基板2を除去した構成、即ち、中熱膨張率材料から成る中間基板10を回路配線基板とし、その上面に小熱膨張率材料から成る電子部品20を搭載した表面実装部品を構築しても、同様に熱ストレスに対する強度を確保することができる。
次に、図2は本発明の他の実施形態に係る表面実装型電子デバイスの構成説明図であり、この実施形態は電子部品20を熱膨張率が3ppm/℃であるICベアチップとし、このICベアチップ20の底部電極22と、中間基板10上の電極12間をバンプ40によって接続した構成以外は図1の実施形態と同様である。
バンプ40によって、ICベアチップ20の下面と中間基板10上面との間に形成される空隙にはアンダーフィル41を充填する。
このように中熱膨張率材料から成る中間基板10とその上に搭載される小熱膨張率材料から成る電子部品20との接続手段は半田以外であってもよい。
【0009】
次に、図3は本発明の他の実施形態に係る表面実装型電子デバイスの構成説明図であり、この実施形態では複数の中間基板10A、10B、10Cを使用している。
即ち、本実施形態では、最大の熱膨張率を有する回路配線基板2上に順次、熱膨張率の異なる中間基板10A、10B、10Cを、半田接続、或いはバンプ接続により積み上げる構成を有する。各部の熱膨張率は、回路配線基板2>中間基板10A>中間基板10B>中間基板10C>電子部品2となるように設定する。
このように構成することにより、基板間、及び基板と電子部品との間の熱膨張率差のミスマッチによる半田の亀裂等の発生を更に確実に防止することが可能となる。
更に、回路配線基板2上に一枚の中間基板10を介して電子部品20を搭載する際に、当該一枚の中間基板10を多層板としてもよい。
或いは、上記各実施形態において、回路配線基板2上に他の回路部品を搭載した構成としてもよい。例えば、図1の水晶振動子において、回路配線基板2上の他の領域に発振回路部品を搭載することによって表面実装型の発振器を構築するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る表面実装型水晶振動子の構成を示す斜視図、及び正面縦断面図。
【図2】本発明の他の実施形態に係る表面実装型水晶振動子の構成を示す正面縦断面図。
【図3】本発明の他の実施形態に係る表面実装型水晶振動子の構成を示す正面縦断面図。
【図4】従来例の説明図。
【符号の説明】
【0011】
1 表面実装型水晶振動子、 2 回路配線基板、3 絶縁基板、4 配線パターン、5 実装電極、10 中間基板、11 絶縁基板、12、13 接続パッド、20 電子部品(回路部品)、21 絶縁容器、22 底部電極、30 半田。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高熱膨張材料から成る絶縁基板、該絶縁基板上部に形成した配線パターン、及び該絶縁基板底部に形成した実装電極を備えた回路配線基板上に、低熱膨張材料から成る絶縁容器、及び該絶縁容器底部に形成した底部電極を備えた回路部品を搭載した表面実装型電子デバイスにおいて、
前記回路配線基板上の配線パターン上に、中熱膨張材料から成る絶縁基板の上部及び下部に夫々接続パッドを備えた中間基板の該下部接続パッドを半田接続し、該中間基板の上部接続パッドに前記回路部品の底部電極を半田接続固定したことを特徴とする表面実装型電子デバイス。
【請求項2】
前記高熱膨張材料から成る絶縁基板はガラスエポキシ樹脂基板であり、前記中熱膨張材料から成る絶縁基板はアラミドエポキシ樹脂基板であり、前記低熱膨張材料から成る絶縁容器はセラミックであることを特徴とする請求項1に記載の表面実装型電子デバイス。
【請求項3】
熱膨張率の異なる複数枚の前記中間基板を、半田を介して積み上げ積層した構成を備え、
各中間基板の熱膨張率が、最下部の中間基板から上方の中間基板に向かうに連れて熱膨張率が順次小さくなるように構成したことを特徴とする請求項1、又は2に記載の表面実装型電子デバイス。
【請求項4】
前記回路部品はICベアチップであり、該ICベアチップ下面の電極と、前記中間基板上面の上部接続パッドとの間をバンプにより接続したことを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の表面実装型電子デバイス。
【請求項5】
中熱膨張材料から成る絶縁基板の上部及び下部に夫々接続パッドを備えた中間基板上に、低熱膨張材料から成る絶縁容器、及び該絶縁容器底部に形成した底部電極を備えた回路部品を搭載した表面実装型電子デバイスであって、
前記中間基板の上部接続パッドに前記回路部品の底部電極を半田接続固定したことを特徴とする表面実装型電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−5650(P2007−5650A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185469(P2005−185469)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】