表面改質された酸化タンタルナノ粒子、その製造方法、それを用いたX線コンピュータ断層撮影造影剤及び高誘電薄膜
本発明は、表面改質された酸化タンタルナノ粒子、その製造方法、それを用いたX線コンピュータ断層撮影用造影剤及び高誘電薄膜を提供する。具体的に本発明は、表面改質された酸化タンタルナノ粒子;(i)界面活性剤を含む有機溶媒に、水を含む水相(aqueous phase)を添加し、油中水マイクロエマルジョンを製造する段階と、(ii)前記マイクロエマルジョンにタンタル前駆体を導入する段階と、(iii)前記(ii)段階で得た溶液に、有機シラン基又はホスフィン基を含む表面改質剤を添加し、反応させる段階と、(iv)前記(iii)段階の反応結果物から前記有機溶媒を除去する段階と、(v)前記(iv)段階で得た混合物から、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を分離する段階とを含んでなる、表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法;そしてそれを用いたX線コンピュータ断層撮影用造影剤及び高誘電薄膜を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質された酸化タンタルナノ粒子、その製造方法、それを用いたX線コンピュータ断層撮影用造影剤及び高誘電薄膜に関する。より詳しくは、本発明は、表面改質された酸化タンタルナノ粒子と;(i)界面活性剤を含む有機溶媒に、水を含む水相(aqueous phase)を添加し、油中水マイクロエマルジョンを製造する段階と、(ii)前記マイクロエマルジョンにタンタル前駆体を導入する段階と、(iii)前記(ii)段階で得た溶液に、有機シラン基又はホスフィン基を含む表面改質剤を添加し、反応させる段階と、(iv)前記(iii)段階の反応結果物から前記有機溶媒を除去する段階と、(v)前記(vi)段階で得た混合物から、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を分離する段階とを含む、表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法と;それを用いたX線コンピュータ断層撮影用造影剤及び高誘電薄膜と、に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年間、ナノ物質は、多様な研究分野で障害を克服する解決策として考えられる優れた特性により大きな関心を集めてきた。ナノ光学は、エネルギー蓄積及び転換や、ディスプレイ素子、バイオイメージ及びその他のバイオ応用、データ記憶媒体、センサー及びその他の電子素子、触媒などを含む広範囲にわたり潜在力を有する。
【0003】
最近、ナノサイズの酸化タンタルは、魅力的な特性により研究者から大きな関心を得ている。例えば、酸化タンタルはシリカに比べて電気的絶縁性に優れるうえ、高誘電体(high-k dielectric)として有力な候補物質であると考えられる。また、酸化タンタルの高い屈折率、熱及び化学安定性、触媒活性、放射線不透過性(radiopacity)及び生体適合性(biocompatibility)は、反射防止コート(anti-reflective coating)、水分離(water-splitting)触媒、固定金属酸化物触媒、及びX線造影剤への使用に適する。
【0004】
酸化タンタルナノ粒子の合成及び応用は相当な重要性を有する。溶液プロセス(solution-processed)による電子及び光学素子の製造のために、多様な溶媒で高い均一性及び優れた分散性のナノ粒子が要求される。適切な安定化分子でキャッピングされた単分散性ナノ粒子の合成は、ナノ粒子層からなる欠陥のない(defect-free)薄膜を製造することを可能とする。しかも、容易な表面改質方法の発展は、特にナノ粒子のバイオ医薬応用において相当重要である。このような目的のために、ナノ粒子の表面は前記粒子にコロイド分散性及び多機能性を与える防汚剤(antifouling agents)、薬物、有機染料、及び抗体を含む機能部分(functional moieties)に改質されなければならない。
【0005】
一方、X線CT造影剤として現在、ヨウ化安息香酸誘導体が、ヨウ素の注入による危険性及び副作用にも拘らず未だ使われているが、これらは典型的に低い分子量を有し、人体から非常に速く除去されるため、疾病部位への標的化が難しいものと知られている。また、金ナノ粒子のX線CT造影剤への応用に対する多数の特許文献が公開されたことがあるが、これらは費用面で不経済であるという問題がある。酸化タンタルナノ粒子を用いた造影剤が韓国公開特許第10−2009−0108697号に開示されたことがあるが、簡単かつ低廉な方法によって大量に表面改質された単分散性酸化タンタルナノ粒子の製造方法及びその応用については未だ報告されたことがない実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の基本的な目的は、(i)界面活性剤を含む有機溶媒に、水を含む水相を添加し、油中水マイクロエマルジョンを製造する段階と、(ii)前記マイクロエマルジョンにタンタル前駆体を導入する段階と、(iii)前記(ii)段階で得た溶液に、有機シラン基又はホスフィン基を含む表面改質剤を添加し、反応させる段階と、(iv)前記(iii)段階の反応結果物から前記有機溶媒を除去する段階と、(v)前記(iv)段階で得た混合物から、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を分離する段階とを含む、表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、酸化タンタルナノ粒子、及び前記酸化タンタルナノ粒子にホスフィン基又はシラン基を介して結合した機能性物質を含む、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、酸化タンタルナノ粒子、及び前記酸化タンタルナノ粒子にホスフィン基又はシラン基を介して結合した機能性物質を含む、X線コンピュータ断層撮影用造影剤を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、(i)界面活性剤を含む有機溶媒に、水を含む水相を添加し、油中水マイクロエマルジョンを製造する段階と、(ii)前記マイクロエマルジョンにタンタル前駆体を導入する段階と、(iii)前記(ii)段階で得た溶液に、有機シラン基又はホスフィン基を含む表面改質剤を添加し、反応させる段階と、(iv)前記(iii)段階の反応結果物から前記有機溶媒を除去する段階と、(v)前記(iv)段階で得た混合物から、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を分離する段階と、(vi)前記分離された、表面改質された酸化タンタルナノ粒子をポリマー含有溶液に添加した後、加熱して前記溶媒を除去する段階とを含む、表面改質された酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物の製造方法、そしてそれを基板上に塗布することにより製造される高誘電薄膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明で使用される大部分の用語は、当業者が認知しうるものであるが、それにも拘らず、次の定義は本発明の理解を助けるために提示される。ところが、明示的に定義されていない場合、用語は当業者によって当時受け入れられるような意味を採用することにより解釈されるべきである。
【0011】
コンピュータ体軸断層撮影又はコンピュータ補助断層撮影(CAT)及び身体断面X線撮影(body section roentgenography)とも知られている「X線コンピュータ断層撮影」、略して「CT」は、断層撮影を用いる医療画像化方法であり、ここで、デジタルプロセッシングが、単一回転軸の周辺に撮られた多くの一連の2次元X線画像から対象(又は被実験体)の内部の3次元画像を作り出すように使用される。ここでの論議がコンピュータ断層撮影に焦点を合わせたが、そのような論議は全類型のX線画像化に一般に適用されるということが当業者によって認知されるであろう。
【0012】
「X線コンピュータ断層撮影造影剤」は、関心のある体積を介して透過された放射線を減少させるように入射X線放射線を相当減衰させることが可能な物質を含む製剤である。このようにCT画像の改造及び通常の後処理(post-processing)の後に増加されたX線減衰は、関心のある体積の密度増加として解釈される。これは、画像の背景組織に比べて、造影剤を含む体積で造影形状を作り出す。ここでの論議が一般に全てのX線画像化に適用可能であるため、本発明では「X線コンピュータ断層撮影用造影剤」と呼ぶ。
【0013】
「ナノ粒子」とは、約1nm〜約1000nm、又は約1nm〜約500nmの平均直径を有する粒子であり、ナノ粒子のコア部分の他に、表面に結合した作用基を含む意味で使用できる。このようなナノ粒子は球状又は不規則な形状であってもよい。
【0014】
「マイクロエマルジョン(ME)方法」は、ナノ粒子を合成するためにマイクロ反応器(microreactor)としてエマルジョン内の水滴(water droplet)を用いる。例えば、非イオン性界面活性剤を用いる多様な油中水(water-in-oil)MEシステムが単分散性シリカナノ粒子の合成のために使用されたことがある。このシステム内において、界面活性剤分子は油相(oil phase)と水相(water phase)との界面でミセル構造によって結合する。制御された条件の下で、約10nm以下の均一なミセルスピア(micelle spheres)が形成できる。このミセルスピアは互いに衝突してそれぞれそれらの含有物を交換することができる。前記ミセルスピアそれぞれの内部には金属アルコキシド前駆体及び酸/塩基触媒が水相(aqueous phase)中にある。合成中に、前記前駆体の加水分解及び縮合(condensation)で金属酸化物を形成し、これはゾルゲル反応として知られている。均一な球状のミセル内に閉じ込まれたゾルゲル反応は単分散金属酸化物ナノ粒子の形成を導くことができる。ミセルは、柔らかい鋳型としての役割だけでなく、前記ナノ粒子の凝集を妨害し且つそれらの表面を保護する役割を果たすことができる。
【0015】
前記ナノ粒子のサイズ分布及び凝集速度は、主に、前記前駆体の反応速度と前記ミセルの含有物の交換速度との比率に依存することができる。前記ナノ粒子の成長力学(growth dynamics)はpH、電解質、界面活性剤、前駆体の濃度、及び油相(oil phase)に対して水の比率を調節することにより制御することができる。
【0016】
マイクロエマルジョン合成の利点の一つは、粒子のサイズ及び構成が界面活性剤に対する水の比率を変化させることにより容易に調節できることである。また、コア−シェルの構造はコア粒子を含むマイクロエマルジョンシステムに追加の前駆体を添加することにより実現可能であり、前記コア粒子は後で逆ミセル膨潤(reverse micelle swelling)を生じさせるおそれがある。
【0017】
一方、既存のマイクロエマルジョン方法によるときに欠点があるので、他の溶媒に分散させ或いは粉末状の粒子を得るために、前記ナノ粒子を逆ミセル鋳型から離脱させると、粒子の表面が不安定であって互いに凝集する。そのため、粒子の表面に直接付着する安定化剤を導入して逆ミセルを除去しても粒子の分散性が維持されるようにしなければならない。よって、連続的に別の安定化剤が逆鋳型を維持したままで導入されなければならない。本発明における酸化タンタルナノ粒子も高反応性の表面により凝集が逆ミセル鋳型の強度に強く依存する。したがって、粒子の純粋化のために粒子溶解度の異なる溶媒を添加して粒子を沈殿させるか或いはME相の溶媒を蒸発させるために加熱しても、逆ミセル膜の強度が弱くて粒子が凝集する現象が起こる。このため、前記MEに直接的に安定化剤又は機能基を有する安定化剤を導入して低温で共有結合を誘導する方法を使用する。このような改質技術は、単純であるうえ、多様な機能基を有する安定化剤の導入により多様な応用を可能とする。それだけでなく、粒子の純粋化を容易にすることができ且つMEに使う溶媒をリサクルすることができるようにして量産を可能とする。
【0018】
高誘電薄膜(high-k dielectric layer)は、有機薄膜トランジスタ(OTFT)などにおいて、電子の移動度(mobility)を高めるために重要な役割を果たす。OTFTの性能をさらに高めるために、誘電体は高度の絶縁性、透明性、可撓性及び薄い厚さを有しなければならない。ところが、有機誘電薄膜は小さい誘電定数(k=5〜10)を有するが、これに対し、無機誘電薄膜は、疎水性の有機フィルムに対する接着性(adhesive)がなく、有機フィルムの溶融を起こす高温工程を必要とする。本発明で使用される非晶質(amorphous)のタンタル酸化物ナノ粒子(TaOx)は高い誘電定数(k〜25)を有する透明物質である。また、コロイドナノ粒子溶液が費用効率的であり、低温工程に適した、OTFT用高誘電薄膜の溶液ベース製造のために使用できる。よって、TaOx溶液から形成された誘電薄膜は有機誘電薄膜及び無機誘電薄膜の弱点を補完することができる。本発明において、酸化タンタル(TaOx、0≦x≦2.5)はTaO、TaO2およびTa2O5を含む。
【0019】
酸化タンタル(TaOx)ナノ粒子はX線造影剤として適しうる。最近、金ナノ粒子がその長い循環時間(circulation time)、高いX線吸収、生体適合性、及び多様な変形技術により、X線CT造影剤としての用途で関心を引いてきた。ところが、酸化タンタルナノ粒子は、金ナノ粒子と比較して同等又はさらに優れた特性を示す。タンタルは、歯科用吸着剤又は充填剤、及び内血管手術におけるステント(stents)のために使用される生体適合性物質として知られている。非晶質酸化タンタルは血液生体適合性に良いより低い表面エネルギーを持っている。しかも、酸化タンタルは、特別な細胞毒性が報告されたことのない金属ベースX線造影剤のうち、シリカと金に次ぐ最も生体親和的な金属ベース物質である。また、タンタルのX線減衰係数(attenuation coefficient)が金と類似しており(100eVでそれぞれ、4.3及び5.16cm2)、タンタルは金に比べて200倍程度低価格である。また、本発明の酸化タンタルナノ粒子は、一般にX線造影剤として使用されるヨウ化化合物が直面した問題点を解決することができる。誘導される副作用、例えばアナフィラクトイド反応及び造影剤誘発性腎症と共に、ヨウ化化合物ベースX線造影剤は、ヨウ素の低いX線吸収率により高濃度の溶液を使用しなければならないので、高い粘性の溶液を注入しなければならないうえ、速い腎臓排泄により体内循環時間が短い。以前の研究で、防汚剤に結合した高い電子密度を有するナノ粒子を用いたX線造影剤は、長い循環時間を有し、単位濃度当たり高い造影効果を示すものと観察されている。
【0020】
本発明の基本的な目的は、(i)界面活性剤を含む有機溶媒に、水を含む水相を添加し、油中水マイクロエマルジョンを製造する段階と、(ii)前記マイクロエマルジョンにタンタル前駆体を導入する段階と、(iii)前記(ii)段階で得た溶液に、有機シラン基又はホスフィン基を含む表面改質剤を添加し、反応させる段階と、(iv)前記(iii)段階の反応結果物から前記有機溶媒を除去する段階と、(v)前記(iv)段階で得た混合物から、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を分離する段階とを含む、表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法を提供することにより達成できる。
【0021】
前記界面活性剤は非イオン性界面活性剤であってもよい。また、前記非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン−5−ノニルフェニルエーテル(polyoxyehylene-5-nonylphenylehter=NP−5)、ポリオキシエチレンソルビタン(polyoxyehtylene sorbitan、Tween)、ポロキサマー(poloxamer)、ソルビタンエステル(sorbitan ester、Span)又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0022】
前記有機溶媒は、マイクロエマルジョンにおいて油相として使用できる通常の有機溶媒であってもよい。より具体的には、前記有機溶媒はシクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、トルエン又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0023】
前記水相は親水性溶媒をさらに含んでもよい。前記水と親水性溶媒の比率を異ならしめて酸化タンタルのサイズを調節することができる。前記親水性溶媒の量が増加するほど、生成される酸化タンタルナノ粒子のサイズが増加する。好ましくは、前記親水性溶媒はC1−8アルコール、アセトニトリル、C1−8エーテル又はアセトンから選択できる。より好ましくは、前記親水性溶媒はエタノールである。
【0024】
また、前記水相は脂肪酸塩などの補助界面活性剤(co-surfactant)をさらに含んでもよい。前記脂肪酸塩は脂肪酸のカルシウム塩やマグネシウム塩、カリウム塩などであってもよく、飽和又は不飽和脂肪酸であってもよい。好ましくは、前記脂肪酸塩はオレイン酸ナトリウムである。
【0025】
しかも、前記水相は触媒として酸又は塩基をさらに含んでもよい。これにより、前記水相のpHは2以下又は13以上であってもよい。例えば、前記酸又は塩基触媒は、塩基触媒として水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが使用でき、酸触媒として塩酸や酢酸などが使用できる。
【0026】
前記タンタル前駆体はタンタルアルコキシド又はタンタル塩であってもよい。より好ましくは、前記タンタル前駆体はC1〜C4タンタルアルコキシドである。最も好ましくは、前記タンタル前駆体はタンタルエトキシドである。
【0027】
前記表面改質剤は、シラン基又はホスフィン基を有する化合物であって、好ましくはトリオクチルホスフィン(trioctylphosphine、TOP)、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(methacryloxypropyltrimethoxy silane、MPTMS)、ポリエチレングリコールシラン[poly(ethylene glycol)silane]、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3-aminopropyltriethoxy silane、APS)、テトラエチルオルソシリケート(tetraethylorthosilicate、TEOS)、又はこれらの組み合わせであってもよい。前記表面改質剤は、表面改質効果とともに安定化効果を奏する。
【0028】
しかも、前記表面改質剤は、前記酸化タンタルナノ粒子に結合するシラン基又はホスフィン基の他方に、生体適合性物質(biocompatiablematerial)、有機染料(organic dye)、生体活性物質(bioactive material)、作用基、有機分子、有機金属、ナノ粒子又はシェル構造、又はこれらの組み合わせから選択される機能性物質が結合したものであってもよい。前記機能性物質は、本願で使用されるシラン基又はホスフィン基を有する表面改質剤と結合して反応中に添加できるものであればいずれの物質でも利用できる。
【0029】
前記生体適合性物質は、ポリビニルアルコール、ポリラクチド(polylactide)、ポリグリコリド(polyglycolide)、ポリ(ラクチド−グリコリド)共重合体[poly(lactide-co-glycolide)]、ポリアンヒドリド(polyanhydride)、ポリエステル(polyester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリビニルフルオリド(polyvinyl fluoride)、ポリビニルイミダゾール[poly(vinylimidazole)]、クロロスルホネートポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefine)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリエチレングリコール[poly(ethyleneglycole)]、デキストラン(dextran)、これらの混合物、又はこれらの共重合体であってもよい。
【0030】
また、前記有機染料は、ローダミン、ローダミン誘導体、フルオレシン、フルオレシン誘導体、ルシフェリン、ルシフェリン誘導体、及びこれらの組み合わせであってもよい。例えば、前記有機染料としてローダミンB−イソチオシアネート(rhodamine B isothiocyanate、RITC)が使用できる。
【0031】
また、前記生体活性物質は、生体内の標的物質に選択的に結合するタンパク質、RNA、DNA、抗体及びこれらの組み合わせから選ばれる標的指向性物質であり、或いはアポトーシス誘導遺伝子又は毒性タンパク質;蛍光物質;同位元素;光、電磁気波、放射線又は熱に感応する物質;薬理活性を示す物質、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0032】
本発明の方法において、前記(iv)段階は、ロータリー蒸発器などを用いて、60℃以下の温度で加熱することにより行われてもよい。また、前記(iv)段階で、使用された有機溶媒をその沸騰点又はそれ以上の温度で加熱してもよい。
【0033】
本発明の方法の(v)段階は通常の精製/分離方法によって行われてもよい。例えば、製造されたナノ粒子を溶媒−非溶媒法及び遠心分離を用いて洗浄及び分離することができるが、これに限定されるものではない。
【0034】
前述した本発明の方法は単一反応器(one-pot)内で行われてもよいが、これに限定されるものではない。
【0035】
本発明の別の目的は、酸化タンタルナノ粒子、及び前記酸化タンタルナノ粒子にホスフィン基又はシラン基を介して結合した機能性物質を含む、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を提供することにより達成できる。
【0036】
前記機能性物質は、生体適合性物質(biocompatible material)、有機染料(organic dye)、生体活性物質(bioactive material)、作用基、有機分子、有機金属、ナノ粒子、シェル構造又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0037】
前記表面改質された酸化タンタルナノ粒子の平均サイズが3nm〜50nmであってもよく、これらの平均サイズに対する標準偏差は約5%以下である。前記酸化タンタルはTaOであってもよい。
【0038】
本発明の別の目的は、酸化タンタルナノ粒子、及び前記酸化タンタルナノ粒子にホスフィン基又はシラン基を介して結合した機能性物質を含む、X線コンピュータ断層撮影用造影剤を提供することにより達成できる。
【0039】
前記生体適合性物質は、ポリビニルアルコール、ポリラクチド(polylactide)、ポリグリコリド(polyglycolide)、ポリ(ラクチド−グリコリド)共重合体[poly(lactide-co-glycolide)]、ポリアンヒドリド(polyanhydride)、ポリエステル(polyester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリビニルフルオリド(polyvinyl fluoride)、ポリビニルイミダゾール[poly(vinylimidazole)]、クロロスルホネートポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefine)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリエチレングリコール[poly(ethyleneglycole)]、デキストラン(dextran)、これらの混合物、又はこれらの共重合体であってもよい。
【0040】
前記酸化タンタルナノ粒子の表面にシラン基又はホスフィン基を介して結合した有機染料をさらに含んでもよい。前記有機染料はローダミン、ローダミン誘導体、フルオレシン、フルオレシン誘導体、ルシフェリン、ルシフェリン誘導体、又はこれらの組み合わせであってもよい。例えば、前記有機染料としてローダミン−B−イソチオシアネート(rhodamine B isothiocyanate、RITC)が使用できる。
【0041】
前記酸化タンタルナノ粒子の表面にシラン基又はホスフィン基を介して結合した生体活性物質をさらに含んでもよい。前記生体活性物質は、生体内の標的物質と選択的に結合するタンパク質、RNA、DNA、抗体及びこれらの組み合わせから選ばれる標的指向性物質であり、或いはアポトーシス誘導遺伝子又は毒性タンパク質;蛍光物質;同位元素;光、電磁気波、放射線又は熱に感応する物質;薬理活性を示す物質、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0042】
本発明のX線コンピュータ断層撮影用造影剤において、前記酸化タンタルがTaOであってもよい。
【0043】
本発明の別の目的は、(i)界面活性剤を含む有機溶媒に、水を含む水相を添加し、油中水マイクロエマルジョンを製造する段階と、(ii)前記マイクロエマルジョンにタンタル前駆体を導入する段階と、(iii)前記(ii)段階で得た溶液に、有機シラン基又はホスフィン基を含む表面改質剤を添加し、反応させる段階と、(iv)前記(iii)段階の反応結果物から前記有機溶媒を除去する段階と、(v)前記(iv)段階で得た混合物から、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を分離する段階と、(vi)前記分離された、表面改質された酸化タンタルナノ粒子をポリマー含有溶液に添加した後、加熱して前記溶媒を除去する段階とを含む、表面改質された酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物の製造方法、そしてそれを基板上に塗布することにより製造される高誘電薄膜の提供によって達成できる。
【0044】
前記ポリマーは、ポリウレタン共重合体、セルロース系誘導体、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリアクリル共重合体、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリビニルアセテート共重合体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフルフリルアルコール(PPFA)、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレンオキシド共重合体、ポリプロピレンオキシド共重合体、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリカプロラクトン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルフルオリド、ポリビニリデンフルオリド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0045】
前記ポリマーは、これらが溶解できる適切な溶媒に溶解された溶液状態で反応物に添加できる。例えば、有機溶媒中で前記ポリマーを含む溶液状態で反応物に添加できる。前記有機溶媒としてはアルコールや芳香族溶媒(例えば、トルエンなど)などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
前記ポリマーの添加以外の段階は、前述の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法と関連して説明した内容が、そのまま適用できる。
【0047】
前記水相は親水性溶媒をさらに含んでもよい。前記親水性溶媒はC1−8アルコール、アセトニトリル、C1−8エーテル又はアセトンから選択できる。好ましくは、前記親水性溶媒はエタノールである。
【0048】
本発明の高誘電薄膜は、前述した方法で製造された、表面改質された酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物をトルエンなどの有機溶媒にさらに溶解させて液状に製造して液相塗布を行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0049】
前記液相塗布の方法は、基板上に薄膜を形成することが可能な通常の液相塗布法が利用でき、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの通常の液相塗布方法が用いられてもよい。
【発明の効果】
【0050】
本発明の一実施例に係る表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法によれば、表面改質された単分散性酸化タンタルナノ粒子を簡単な方法で製造することができ、グラムスケールの大量合成を実現することができる。また、マイクロエマルジョンの製造において、表面改質に至る過程を単一反応器内で連続的に行うことができる。さらに、相対的に低い温度で反応が行われ、溶媒の再使用が可能であって非常に安い費用で大量合成が可能である。
【0051】
本発明の一実施例によって製造された、表面改質された酸化タンタルナノ粒子は、有機薄膜トランジスタ用高誘電(high-k)薄膜、X線CT造影剤などの様々な応用分野に利用できる。
【0052】
本発明の一実施例によって製造された、表面改質された酸化タンタルナノ粒子は、X線CT造影剤として金ナノ粒子に相応する或いはさらに優れた特性、例えば、高いX線吸収、優れた生体適合性、長い循環時間などを有するため、優れたX線CT造影剤として活用できる。
【0053】
本発明の一実施例によって製造された高誘電薄膜は、表面改質されたタンタルナノ粒子を含有するため、フィルムの粗さ(roughness)を減少させることができ、有機薄膜トランジスタの性能を向上させることができるため、工程の単純化、費用効率及び性能の面において理想的な誘電体(dielectrics)として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施例に係る、表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造過程を概略的に示す順序図である。
【図2】本発明の一実施例によって製造された、酸化タンタルナノ粒子のTEM画像である。
【図3】本発明の一実施例によって製造された、無定形(amorphous)酸化タンタルナノ粒子のXRD分析結果を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施例によって製造された、酸化タンタルナノ粒子のXPS分析結果を示すグラフである(酸化タンタルナノ粒子の(a)Ta 4f、(b)O ls、(c)Na 1sピーク)。
【図5】本発明の一実施例によって製造された酸化タンタルナノ粒子であって、添加されたエタノールの量に応じてそのサイズが変化することを示す(a:6nm、b:9nm、c:13nm、d:15nm)。
【図6】本発明の一実施例によって製造された、MPTMS及びPEG−シランで表面改質された酸化タンタルナノ粒子のFTIRスペクトルである。
【図7】本発明の一実施例によって製造された、MPTMS(a)及びPEG−シラン(b)で表面改質された酸化タンタルナノ粒子の13C CP MAS NMRスペクトルである。
【図8】本発明の一実施例によって製造された、MPTMS(a)、TOP(b)、APS(c)で機能化された酸化タンタルナノ粒子のTEM画像である。
【図9】本発明の一実施例によって製造された、シリカでコートされた酸化タンタルナノ粒子のTEM画像である。
【図10】本発明の一実施例によって製造されたMPTMS−TaOx/PMMAフィルムのTEM画像(a、b、c)、AFM画像(d)、及び前記フィルムを誘電薄膜として用いた有機薄膜トランジスタの断面を概略的に示す図(e)である。
【図11】本発明の一実施例によって多様な濃度のTaOxナノ粒子((a)1wt%、(b)2wt%、(c)3wt%、(d)6wt%)で製造されたMPTMS−TaOx/PMMAフィルムのTEM画像である。
【図12】図12aは本発明の一実施例によって製造された、水に分散したPEG−RITC−TaOxのTEM画像であり(挿入度は前記ナノ粒子の水性分散液に対する画像である)、図12bはPBS溶液内におけるPEG−RITC−TaOxとガラスRITCの吸光(absorbance)及び蛍光スペクトルであり、ここで、両サンプル内におけるRITC分子の個数を一致させるために光学的密度を同一にした(λex=520nm、挿入度は紫外線によって励起されたPBS溶液内の蛍光ナノ粒子に対する画像である。)。
【図13】図13aは本発明の一実施例に係る、T2結合ピークの特性を示す、PEG−シランが固定化されたTaOxナノ粒子の29Si CP MAS NMRスペクトルであり、図13bはPBS溶液内で前記PEG−RITC−TaOxのサイズ分布である。動的光散乱(dynamic light scattering、DLS)の測定結果によれば、前記ナノ粒子の平均水動力学的直径(hydrodynamic diameter、HD)は19nmである。
【図14】本発明の一実施例に係るPET−RITC−TaOxの試験管内特性において、水内におけるPEG−RITC−TaOxのHU(Hounsfield unit)測定(左)とファントムCT画像(右)である。
【図15】本発明の一実施例に係るPEG−RITC−TaOxの試験管内特性において、多様な濃度のPEG−RITC−TaOxナノ粒子で培養されたRAW264.7細胞(murinemacrophage)に対する前記ナノ粒子の細胞毒性をMTT分析した結果である。
【図16】本発明の一実施例に係るPEG−RITC−TaOxの試験管内特性において、PEG−RITC−TaOxを用いて24時間インキュベーションされたRAW264.7細胞のCLSM画像である(スケールバー:20μm)。核は4’−6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で青色に染色した。
【図17】本発明の一実施例に係るPET−RITC−TaOxの試験管内特性において、多様な濃度のPEG−RITC−TaOxを用いてインキュベーションされたRAW264.7細胞の細胞画像化結果である。図17において、最上部は明視野像(bright field image)、中間は蛍光画像(λex=550nm)、下部はX線CT細胞ファントム画像(数字はHUとしてのCT値を意味する)である。
【図18】本発明の一実施例に係る生体内のX線CT画像であって、ラットの尾静脈に1mLのPEG−RITC−TaOx溶液(840mg/kg)を注射した後、連続的に得たCT冠状画像である。図18aは心臓と肝(図18cの点線に沿って切断した冠状画像)を示し、図18bは脾臓(spleen)、腎臓及び下大静脈(inferior vena cava)(図18cの点線に沿って切断した冠状画像)を示す。図18cの生体内CT画像の3次元透視図(rendering)は心臓及び大血管の前面部(上方)及び側面部(下方)を示す。図18cは注入直後に得た画像である。
【図19】本発明の一実施例によって、ラットの尾静脈にPEG−RITC−TaOx溶液(840mg/kg)を注射し、24時間後に摘出した肝臓、脾臓、心臓、腎臓及び肺の蛍光画像化によって得たPEG−RITC−TaOxの体内分布を示すもので、(a)は前記器官の写真(左)及び対応する蛍光画像(右)であり、(b)はDAPIを用いて青色に染色した組織サンプルの共焦点顕微鏡画像であって、赤色放出PEG−RITC−TaOxの存在を示す。
【図20】本発明の一実施例によって、1mLのPBS(対照群)及び1mLのPEG−RITC−TaOx溶液(PBS内で840mg/kg)を1回静脈注射した後、それぞれ所定の時間で切開したラットの肝、脾臓、心臓、腎臓及び肺の組織学的変化の時間的推移を示す。切開部位をH&Eで染色し、100倍光学顕微鏡で観察した。
【図21】本発明の一実施例によって、ラットにPEG−RITC−TaOx溶液を注射した後の血清肝酵素(血清ALT及び血清AST)の時間による変化を示す。t=0はラットにPEG−RITC−TaOx溶液(1mLのPBS内に840mg/kgの用量)を静脈注入した瞬間である。データは平均±平均の標準誤差(mean±sem)で示す。t=0でのデータは塩水対照群(saline control)のデータである。
【図22】本発明の一実施例によってPEG−RITC−TaOx溶液を静脈注入したラットのセンチネルリンパ節のマッピング及び切除結果を示す。 図22aは100μLのPET−RITC−TaOx溶液をラットの両足の真皮内に注入して2時間後に得た前記ラットのセンチネルリンパ節の生体内CTボリュームレンダリング(上部左側)及びMIP(maximum intensity projection)画像(上部右側及び下部)である。円及び矢印はリンパ節の位置を示す。 図22bは100μLのPEG−RITC−TaOx溶液をラットの両足の真皮内に注入して得た前記ラットの白光(white light)写真(上部)及び蛍光画像(下部)である。注入2時間後のラットの側面画像は前記リンパ節及び注入部位から非常に強い赤色放出があることを示す(左側及び中間)。矢印及び円はそれぞれ暫定腋窩(putative axillary)センチネルリンパ節及び注入点(injection point)を示す。前記2匹のラットのセンチネルリンパ節を2重モード画像誘導手術(bimodal image-guided surgery)によって切開した(右側)。
【図23】図23aは2重モード画像誘導手術によって切開されたリンパ節サンプルの組織学的断面を示す。前記断面をH&Eで染色した後、光学顕微鏡を用いて100倍(左)及び400倍(右)で観察した。図23bはDAPIで染色した前記切開されたリンパ節の共焦点顕微鏡画像であって、赤色蛍光を放出するPEG−RITC−TaOxの存在を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、下記の実施例及び図面を挙げて本発明をより具体的に説明する。ところが、下記の実施例及び図面に対する説明は、本発明の具体的な実施様態を特定して説明しようとするものに過ぎず、本発明の権利範囲を限定又は制限解釈しようとするものではない。
【0056】
実施例1:マイクロエマルジョン内における酸化タンタルナノ粒子の合成
2.3gのIgepal CO−520(polyoxyethylene-5-nonylphenyl ether:NP−5)、エタノール(Samchun、99.5%)及び20mLのシクロヘキサン(Samchun、99.5%)からなる有機相(organic phase)に、0.25mLのNaOH水溶液(75mM)を添加してマイクロエマルジョン(microemulsion、ME)を準備した。室温で0.05mLのタンタル(V)エトキシド(0.03mmol、Strem、99.8%)を前記マイクロエマルジョン(ME)に添加した後、5分以内で、酸化タンタルナノ粒子を含む混合物(以下、「TaOx−ME」という)を得た。前記エタノールの量を変化(0mL、0.25mL、0.5mL及び0.75mL)させて酸化タンタルナノ粒子のサイズを調節した。
【0057】
実施例2:酸化タンタルナノ粒子(酸化タンタルナノ粒子)のワンポット(one-pot)表面改質
ミセル構造が崩壊した後に凝集させることなく、MEから酸化タンタルナノ粒子を抽出するために、適量のTOP、APS、MPTMS、PEGシラン又はTEOSが酸化タンタルナノ粒子製造の最終段階でMEに導入された。
【0058】
トリオクチルホスフィンで安定化された酸化タンタルナノ粒子
トリオクチルホスフィン(TOP)で安定化された酸化タンタルを合成するために、4mLのTOPと結合したMEを60℃で蒸発させた。その後、TOPで安定化された酸化タンタルナノ粒子及びNP−5の透明溶液をクロロホルム及びメタノールを用いて溶媒/非溶媒沈殿方法によって数回洗浄し、2000rpmで30分間遠心分離した。前記ナノ粒子はクロロホルム又はトルエンなどの有機溶媒中でよく分散した。
【0059】
有機シランで表面改質された酸化タンタルナノ粒子
全ての有機シランで変形された酸化タンタルナノ粒子は、それぞれ3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)又はPEGシラン(それぞれ0.1mL、0.5mL、0.05mL)をTaOx−MEと室温で24時間反応させて製造した。その後、有機シランによって表面改質された粒子は沈殿した。反応の後、前記表面改質反応を確実に完了するために、結果溶液を60℃で蒸発させた。その結果、前記溶液が透明になった。未反応の有機シラン及びNP−5をヘキサン又は1:1のエタノール/ヘキサン(PEGシランの場合)の混合溶液に添加して溶解させた。沈殿した残留粒子は、2000rpmで遠心分離すると共に、多数回溶媒/非溶媒(アセトン/ヘキサン)で洗浄した。MPTMSグラフト酸化タンタルナノ粒子は、エタノール又はクロロホルムなどの有機溶媒内でよく溶解された。APGグラフト、アミノで機能化された酸化タンタルナノ粒子は3時間超音波処理によってエタノール中で溶解された。PEG化酸化タンタルナノ粒子は数分間超音波処理によって水中でよく溶解された。
【0060】
酸化タンタルナノ粒子のワンポット(one-pot)シリカコーティング
TEOS(0.3mL)をTaOx−MEに添加して、室温で6時間以上攪拌した。その後、アンモニア溶液(30%)3mLを添加して3時間持続的に攪拌した。3mLの酢酸エチルを添加して24時間酸化タンタルナノ粒子の表面上にシリカシェルを徐々に成長させた。
【0061】
実施例3:酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物及び高誘電薄膜の製造
TaOx/PMMAナノ組成物及び薄膜
実施例2によって予め合成された10mLのクロロホルムに溶解させたMTPMSグラフトTaOx NPを、0.5gのPMMAを含むトルエン溶液に添加した。MPTMS−TaOx/PMMA溶液を、全てのトルエン/クロロホルム溶媒が蒸発するまで24時間60℃で攪拌しながら、ロータリー蒸発器で蒸発させた。得られたパウダーを30mLのクロロホルム/トルエンの混合溶液(v/v=0.25〜1)に溶解させた後、その一滴(5〜10μL)を、直径10cmのペトリ皿に含有された脱イオン水の表面に位置させた。30分後、透明なMPTMS−TaOx/PMMAフィルムが形成された。ピペットを用いて、含有された全ての水を抽出することにより、ペトリ皿の底部に予め載置しておいたITOガラス基板上に蒸着させた。
【0062】
実施例2によって予め合成した10mLのクロロホルムに溶解させたTOP安定化TaOx NPを、0.5gのPMMAを含む10mLのトルエン溶液に溶解させた。前述したMPTMS−TaOx/PMMAフィルムの製造と同一の方法で混合された溶液をロータリー蒸発器で蒸発させ、30mLのトルエンに溶解させた後、ITOガラス上に蒸着させた。
【0063】
TaOx/PMMAナノ組成物
TaOx−MEを、0.16gのP4VPを含む15mLのエタノール溶液と混合し、90℃で1時間加熱した後、ロータリー蒸発器によって60℃で15分間蒸発させた。得られたパウダーをヘキサンで数回洗浄してNP−5を除去し、エタノールに溶解させた。
【0064】
実施例4:バイモーダルイメージングプローブ(bimodal imaging probe)による酸化タンタルナノ粒子のPEG化及びRITC機能化
110μLのアミノプロピルトリエトキシシラン(aminopropyltriehoxysilane:APTES、Aldrich)を3.75mLのエタノール内で50mgのRITC(rhodamine B isocyanate)と室温で24時間反応させ、ローダミンBイソチオシアン酸塩で機能化されたシラン(RITC-functionalized silane)を準備した。こうして得た溶液を1LのPEG−シラン(2-methoxy(polyethylenoxy)propyltrimethoxysilane:PEG−シラン、Gelest、596〜725Da)と共に実施例1で製造された、1LのTaOx−MEに添加した。この混合物を室温で24時間攪拌すると、赤色の懸濁溶液になった。こうして得た溶液を該溶液が透明になるまで60℃で蒸発させた後、1:1(v/v)のエーテル/n−ヘキサンの混合溶液を添加して、機能化された酸化タンタルナノ粒子を沈殿させた。前記沈殿物をエーテルで精製した後、エタノールに分散させた。前記溶液に100mgのmPEG−SG(methoxypoly(ethylene glycol)succinimidylgultarate、MW2000、Sunbio)を添加した。前記混合物を30℃で一晩攪拌することにより、前記機能化された酸化タンタルナノ粒子の表面上の残留アミン基にPEGを接合(conjugation)させた。こうして得た最終産物(以下、「PEG−RITC−TaOx」という)をPBS(phosphate buffered saline)に分散させた。
【0065】
PEG−RITC−TaOxを用いたX線CT及び蛍光画像化
ファントムテスト(phantom test):
脱イオン水に分散した多様な濃度のPEG−RITC−TaOx(0.22、0.45、0.9、1.8、3.6、7.2、14.5及び29mg Ta/mL)を1.5mLのマイクロチューブに準備した。CT画像をデュアル−ソースCTシステム(Somatom Definition、Simens)を用いて得た。画像化のための変数は次の通りとした:厚さ1mm;ピッチ1;120kVp、90mA;filed of view、84×84;0.5秒のガントリー回転時間;6mm/sのテーブル速度。
【0066】
細胞培養:
RAW 264.7(murine macrophage cell line)を、37℃の湿潤化5%CO2雰囲気中で、フェニシリン/ストレプトマイシン(それぞれ100U/mL及び100μg μg/mL、Gibco)及び10%(v/v)ウシ胎仔血清(fetal bovine serum、FBS、Gibco)で補充されたDMEM(Dulbecco’s Modified Eable’s Medium、WelGENE)内の単一層において成長させた。
【0067】
細胞内吸収:
ナノ粒子の細胞内吸収(uptake)を観察するために、ウェル当たり1×104個のRAW264.7細胞を8ウェルチャンバースライド(Nalgen Nunc、Naperville、IL)内で、多様な濃度(0、0.6、1.2、2.4mg Ta/mL)のPEG−RITC−TaOxと共に培養した。24時間後、細胞をPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、4',6'−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、PBS内1μg/mL、Roche)で染色(stain)した。共焦点レーザー顕微鏡(CLSM、LSM510、Carl Zeiss、Germany)を用いて蛍光画像を得た。
【0068】
細胞生存性分析:
酸化タンタルナノ粒子の存在下で細胞の生存及び増殖を3−[4,5−ジフェニルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT、Sigma)分析を用いて評価した。前記分析は次の方法で3回行った。RAW264.7細胞を200μLの培地内にウェル当たり1×104個の密度で96ウェルプレートに接種した後、一晩培養した。その後、前記細胞を多様な濃度のPEG−RITC−TaOx(0、0.075、0.15、0.3、0.6、1.2及び2.4mg Ta/mL)と共に24時間培養した。培養後、細胞を、0.1mg/mLのMTTを含む培地内で1時間培養した。次いで、前記MTT溶液を除去し、沈殿したバイオレットクリスタル(precipitated violet crystals)を200μLのDMSO内に溶解させた。VersaMaxTMマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて560nmで吸光度を測定した。
【0069】
試験管内(in vitro)CT画像化:
RAW264.7セルを10mLの培地にプレート当たり1×106個の密度で培養皿に接種(seed)し、一晩(overnight)培養した。次いで、多様な濃度(0、0.63、1.3、2.5mg Ta/mL)のPEG−RITC−TaOx分散液を添加した。24時間後、前記セルをPBSで2回洗浄して遊離ナノ粒子を除去し、1mLのトリプシン/EDTAを添加して脱着(detached)した。5分間1500rpmで遠心分離した後、セルを1mLの培養培地内に分散させて1.5mLのマイクロチューブに移した。5分間2000rpmで遠心分離してセルペレットを作った。
【0070】
デュアル−ソースCTシステム(Somatom Definition、Simens)を用いてCT画像を得た。画像化のための変数は次のとおりであった:厚さ1mm;ピッチ1;120kVp、90mA;field of view、84×84:0.5秒のガントリー回転時間;6mm/sのテーブル速度。
【0071】
生体内(in vivo)CT画像化:
PEG−RITC−TaOxの注入前と投与(administration)後の適切な時点でCT画像を得た。Zoletil(1.92mg/kg;Virbac、France)、Rompun(0.48mg/kg;Bayer Korea、Korea)及び塩水(saline)の混合物を腹腔内投与してラット(rat)を麻酔させた。次いで、1mLのPEG−RITC−TaOx分散液(840mg/kg)をラットの尾静脈から注入した。
【0072】
リンパ節の画像化のために、100μLのPEG−RITC−TaOx溶液をラット(n=2)の足に真皮内(intradermally)注入した後、2時間まで繰り返し画像化した。
【0073】
Brilliance 64−スライスCTスキャナー(Philips MedicalSystem)を用いてCT画像を得た。画像化のための変数は次の通りとした:厚さ0.1mm;ピッチ0.648;120kVp、192mA;field of view、108×108;マトリクス、1024×1024;0.75sのガントリー回転時間;16.7mm/sのテーブル速度。薄片軸(thin-section axial)画像を冠状画像(coronal image)に変換(マルチプラナー・リコンストラクション(MPR)と呼ばれる電算化技術を使用)した。OsiriX(バージョン3.8.1;32ビット;OsiriX foundation、Geneva)を用いて、3次元に再構成された画像を得た。
【0074】
試験管内(in vitro)および生体内(in vivo)蛍光画像化:
550nmの励起波長で蛍光イメージングシステム(Kodak IS4000MM pro、US)を用いて試験管内および生体内蛍光画像を得た。
【0075】
結果
前記実施例1に記載された酸化タンタルナノ粒子の全般的な合成過程、及びこれを用いて得たX線CT画像を図1に示した。前記実施例1では、タンタル(V)エトキシドのゾルゲル反応のために、シリカゾルゲル反応で用いられた典型的なアンモニア触媒の代わりに、塩基触媒としてNaOH水溶液を使用したが、これは、タンタル(V)エトキシドの反応速度がTEOSの反応速度より一層速く、アンモニア触媒を使用すると、生成されたナノ粒子の凝集が起こるためである。シクロヘキサン、エタノール、NaOH及びIgepal CO−520界面活性剤からなる混合物を乳化(emulsification)させた後、タンタル(v)エトキシドを前記エマルジョンに添加した。室温で、逆ミセル内での制御されたゾルゲル反応によって均一なナノ粒子が5分以内に生成された。こうして生成されたミセル内のTaOxナノ粒子(TaOx−ME)のTEM写真(図2)を参照すると、前記ナノ粒子のサイズ分布が非常に狭い(σr≦5%)。
【0076】
前記ナノ粒子に対するXRD(X-ray diffraction)分析結果(図3)、ED(electron diffraction)分析結果(図2の挿入度)及びXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)分析結果(図4)を参照すると、前記ナノ粒子が無定形であり、Ta2O5、TaOなどのTaOxが生成されることが分かる。前記ナノ粒子のサイズはエタノールの量を変化させることにより、5nm〜15nmの範囲内で調節することができる(図5)。エタノールの量を増加させると、タンタルエトキシドの加水分解速度が減少して大きいナノ粒子が生成されうる。
【0077】
トルエン、ヘキサン又はアセトンなどのその他の溶媒を酸化タンタルナノ粒子形成MEに加えたとき、ミセル構造の破壊と共に、酸化タンタルナノ粒子の表面のヒドロキシル基間の反応によって速い凝集が起こった。これは酸化タンタルナノ粒子が乳化剤と共有結合していない可能性があることを示す。よって、分離された形態のナノ粒子を得るために、表面配位結合剤(surface coordination agents)がワンポット(one-pot)反応によって導入されるべきである。特に、酸化タンタルナノ粒子の凝集前に、シラン及びTOPは溶媒(シクロヘキサン/エタノール/水(Cyclohexane/Ethan/Water))の沸騰点以下の温度で強く接合(conjugated)された。酸化タンタルナノ粒子の表面がシリカよりさらに酸性であるため、シランは酸化タンタルナノ粒子のOH基と容易に結合し、TOPは弱い酸−塩基反応によるリガンドとしてのTa原子との配位結合が可能である。しかも、溶媒の抽出が60℃で配位結合反応と同時に行われる。これは追って合成を繰り返し行う際に溶媒の再活用を可能とする。このような過程は、ME法で多量の溶媒を使用する問題を解決し、合成をスケールアップさせることを可能とする。乳化剤を数回洗浄した後、前記リガンドの結合を確認するために、安定化された酸化タンタルナノ粒子をFTIR、NMR及びTEMによって分析した(図6、7及び8)。FTIRはシラン上の作用基の存在を示す。50〜60(T2)領域の間のNMRピークは、粒子、3次元成長シラン(T1又はT3)のない配位結合したリガンドのみがあることを証明する。TEM画像に示されているように、分散性及びシリカがないことが証明される。
【0078】
また、実施例2に記載されているように、酸化タンタルナノ粒子上のワンポットシリカシェル成長を、水相(aqueous phase)の環境を変化させて行った。シェルを成長させるために、ミセル膨潤(swelling)が必要である。ところが、ミセル膨潤はナノ粒子表面のヒドロキシル基の高い反応性により酸化タンタルナノ粒子の凝集を誘導する。よって、TEOSをまず添加して酸化タンタルナノ粒子より反応性が低いシラノール(silanol)基を粒子の表面に形成した。アンモニア溶液は膨潤剤(swelling agent)として添加された。酢酸エチルを添加して水相のpHを低下させる。これによりTEOSのゾルゲル反応が引き起こされる。その結果、均一な直径を有するシリカシェルが形成される(図9参照)。
【0079】
酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物のOTFT用誘電フィルムとしての応用を調査した。実施例3に記載されているように、MPTMSに統合された酸化タンタルナノ粒子及びTOPで安定化された酸化タンタルナノ粒子を、誘電体として広く用いられるPMMAと混合した。MPTMSで処理された酸化タンタルナノ粒子をエタノールに溶解させて長期間のコロイド安定性を得た。この溶液に、PMMAトルエン溶液を酸化タンタルナノ粒子:PMMAの固定比率で混合した。ロータリー蒸発器で加熱処理し、トルエンに溶解させて、TaOx/PMMAナノ組成物溶液を凝集のない綺麗な溶液に製造した。クロロホルム中に溶解されたTOP安定化酸化タンタルナノ粒子を、前述したMPTMSで処理された酸化タンタルナノ粒子の場合と同一の過程によって処理した。Brinkerグループの研究で報告されたように、空気と水の界面におけるフィルム製造を行った。一滴のMPTMS TaOx溶液を、ITOガラスが底部に位置したペトリ皿中の脱イオン水の表面に播いた(cast)。約10分内に、同時的なPMMAの固化(solidification)及びPMMA内のナノ粒子のアセンブリ(assembly)によって薄膜フィルムの形成が誘導された。最後に、フィルムがITO基板上に蒸着されるまでピペットで水を除去してフィルムをITOガラス上に伝達し、10分間緩やかに加熱した(soft-baked)。製造されたフィルムは完全に透明で無色であった。ITOガラスの代わりにTEMグリッド上にフィルムを蒸着させて得られたTEM画像は、PMMAフィルム内に含まれたナノ粒子のシュードアセンブリ(pseudo-assembly)がホール(hole)等のいずれの欠陥も有しないことを示した。TEMグリッドの全体領域、ひいては粒子のない領域までPMMAでカバーされた。TEMビームがダメージを起こしたフィルム部分は剥がれた(peeled off)。
【0080】
図10のTEM画像から分かるように、1〜2nmのPMMA膜はアセンブリされた酸化タンタルナノ粒子をカバーした。また、フィルムが剥がれて完全にロールアップ(rolled up)された後にも、TEMグリッドのカーボンフィルムの下には粒子がなかった。このような結果はTEMグリッドの全体領域がPMMAでカバーされるという前述の仮説を証明する。溶媒の比率が高まるにつれて、フィルム内の粒子間の距離が高まった。これは水と空気の境界面におけるポリマーの粘度が減少するためである(図11)。製造されたITO上のフィルムのAFM分析によって得られた厚さプロファイル及びRMSデータは、1層又は2層のPMMAとアセンブリされたナノ粒子が広い領域にわたって形成されたことを証明する。結論的に、製造されたポリマーフィルムは、図10eに示したようなOTFTのための高い性能の透明誘電体として使用できる潜在力を有する。
【0081】
実施例4において、TaOx−ME合成の後に精製過程なしで多様なシラン化合物を用いてTaOxナノ粒子の表面改質を直接行った。表面が改質されていない限り、TaOxナノ粒子の表面が酸性で、縮合反応しようとする傾向があるため、TaOxナノ粒子は追加的な安定化なしで非可逆的に凝集する。多様なシラン作用基(moieties)の中からPEG−シラン及び染料接合シラン(dye-conjugated silane)を選択したが、これはこれらがそれぞれ代表的な生体適合性高分子及び蛍光プローブであるためである。前記TaOx−MEのヒドロキシル基とシラン化合物間の単純なシリカゾルゲル反応で機能化されたシリカ被覆TaOxナノ粒子が形成された。これを多重モード(multiple modality)及び/又は標的/治療機能を有する多機能画像化プラットフォームに適用することができる。
【0082】
血管造影及び組織特異的画像化などの効果的なX線CT画像化のために長期間循環する(long-circulating)ナノ粒子が要求される。細網内皮系(reticuloendothelial system)による吸収(uptake)による血流からの速い除去を回避するために、PEG−シランを防汚剤として酸化タンタルナノ粒子と結合させた。蛍光画像化のために、RITC接合アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を前記TaOxナノ粒子に付着させた。RITC接合APTES及びPEG−シランを同時に前記TaOx−MEに固定化させ、PEG及びRITCの両方が接合された酸化タンタルナノ粒子(PEG−RITC−TaOx)を製造した。前記PEG−RITC−TaOxのTEM画像(図12a)を参照すると、前記ナノ粒子が水によく分散して凝集粒子がないことが分かる。29Si NMRスペクトル結果によれば、δ〜−55ppmを中心としてT2結合位置(binding site)に対応する単一バンドが観察される。これは前記ナノ粒子の表面にPEG−シランが形成されており、シリカ粒子は形成されていないことを示す(図13a)。図12bに示すように、PEG−RITC−TaOx溶液は透明であるが、これは蛍光画像化に有利である。RITC接合TaOxは遊離RITCに匹敵するフォトルミネセンス(photoluminescence)を示すが、これは前記接合された染料が安定的で前記接合反応後にも前記染料の蛍光が維持されることを意味する。動的光散乱によって測定された前記ナノ粒子の水動力学的直径(hydrodynamic diameter、HD)は約19nmであり、これは凝集がない(図13b)ことを意味し、前記TEMデータと非常によく符合する。
【0083】
脱イオン水に分散した多様な濃度のPEG−RITC−TaOxを用いてX線CTファントム画像を得た。ハウンスフィールド単位(Hounsfield unit(HU))と呼ばれるCT数(CT number)は、前記ナノ粒子の濃度に応じて線形的に増加した(図14)。Ta原子の造影増加が、診断X線スペクトル(100keVでそれぞれ4.302及び5.158cm2/g)でAu原子の造影増加より若干小さいにもかかわらず、前記TaOxナノ粒子の測定HU値は、現在のヨウ素ベースX線造影剤の場合より一層高かった。MTT分析によれば、細胞生存率は2.4mg Ta/mLの濃度までPEG−RITC−TaOxによって阻害されなかったが(図15)、その濃度は非常に高い。細胞X線CT及び蛍光画像化を行い、PEG−RITC−TaOxの投与量に依存する吸収及び試験管内多重モード画像化能力を実証した。血清含有培地内の前記ナノ粒子の異なる濃度でマウスマクロファージ(murinemacrophage)細胞(RAW264.7)をインキュベーションすることにより、細胞内吸収を調査した。図16の共焦点レーザースキャニング顕微鏡(confocal laser scanning microscopy、CLSM)画像を参照すると、前記ナノ粒子が細胞膜陥入(endocytosis)を介してRAW264.7細胞に吸収された。ナノ粒子を吸収した後の細胞に対する蛍光画像(図17)を参照すると、赤色発光(red luminescence)がさらに強くなり、濃度増加に応じてHU値が増加した。このような蛍光及びX線CT結果は、二重モード画像化だけでなく、哺乳類細胞による前記TaOxナノ粒子の投与量に依存する吸収を示す。
【0084】
生体内X線CT画像化を行うために、PEG−RITC−TaOx(840mg/kg)をラットの尾静脈内に静脈注射した。注入前、及び注入後5分、30分、1時間、2時間、3時間及び24時間における前記ナノ粒子の分布をX線CT画像化によって追跡した(図18)。前記ナノ粒子を注入し次第、血管が増強して血液プール(blood pool)に対して空間的に描写され(spatially-described)、ボリュームレンダリング (volume-rendered)画像を得ることができた(図18c)。前記増強は3時間以上持続されたが、これは前記ナノ粒子が長期間循環することを意味する。前記ナノ粒子は脾臓と肝のマクロファージ(macrophage)により益々蓄積された。前記血管及び心臓のHU値は注入直後に最大値に到達した。その後、徐々に減少し、前記肝及び脾臓のHU値は益々増加した(表1参照)。
【0085】
【表1】
【0086】
CT画像化24時間後、前記ラットを犠牲させて切開した器官を蛍光画像化してPEG−RITC−TaOxの体内分布(biodistribution)を視覚化した。前記サンプルに対するCLSM画像を参照すると、前記ナノ粒子の大部分が肝及び脾臓から発見されたことが分かる(図19)。PEG−RITC−TaOxがこれらの器官において有害な影響又はどんな疾病を誘発するかを調べるために、2週間肝、脾臓、心臓、腎臓及び肺を含む幾つかの器官における組織学的変化を監視することにより、前記ナノ粒子の長期間毒性を調査した。PEG−RITC−TaOxを一度に(840mg/kg)注入した後、1日、3日、7日及び15日にラットを切開した。これらの器官に対するヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色の結果、前記ナノ粒子が悪影響を及ぼすという証拠が確認されていない(図20)。時間経過による肝に対する影響を把握するために、アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase、ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の血清濃度も測定した。前記1回分の注入後、前記血清濃度が一時的に増加した。その後、速く減少して3日目には定常レベルに戻ってきた(図21)。このような結果は酸化タンタルナノ粒子が肝だけでなく他の器官に対しても毒性が殆どないことを示す。
【0087】
センチネルリンパ節マッピング(sentinel lymph node mapping)は、腫瘍転移の正確な診断に非常に重要である。前記リンパ節を正確にマッピングすることにより、無駄な外科的切開を回避することができる。センチネルリンパ節へ前記造影剤を伝達するために、100μLのPEG−RITC−TaOx溶液をラットの足の真皮内に注入した。前記注入2時間後に、リンパ節の位置がX線造影の増強によって測定された(図22a)。リンパ節の切開が二重モード画像化の助けを受けることができるか否かを検査するために、まず、前記リンパ節の位置を前記ボリュームレンダリングCT画像を用いて決定した。前記位置決定の後、前記切開すべきリンパ節部位を手術中に蛍光画像化によって特定し、次いで成功的に抽出した(図22b)。前記切開されたリンパ節から、蛍光画像化によってナノ粒子を発見したが、H&E染色法による組織学的変化が観察されていない(図23)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質された酸化タンタルナノ粒子、その製造方法、それを用いたX線コンピュータ断層撮影用造影剤及び高誘電薄膜に関する。より詳しくは、本発明は、表面改質された酸化タンタルナノ粒子と;(i)界面活性剤を含む有機溶媒に、水を含む水相(aqueous phase)を添加し、油中水マイクロエマルジョンを製造する段階と、(ii)前記マイクロエマルジョンにタンタル前駆体を導入する段階と、(iii)前記(ii)段階で得た溶液に、有機シラン基又はホスフィン基を含む表面改質剤を添加し、反応させる段階と、(iv)前記(iii)段階の反応結果物から前記有機溶媒を除去する段階と、(v)前記(vi)段階で得た混合物から、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を分離する段階とを含む、表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法と;それを用いたX線コンピュータ断層撮影用造影剤及び高誘電薄膜と、に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年間、ナノ物質は、多様な研究分野で障害を克服する解決策として考えられる優れた特性により大きな関心を集めてきた。ナノ光学は、エネルギー蓄積及び転換や、ディスプレイ素子、バイオイメージ及びその他のバイオ応用、データ記憶媒体、センサー及びその他の電子素子、触媒などを含む広範囲にわたり潜在力を有する。
【0003】
最近、ナノサイズの酸化タンタルは、魅力的な特性により研究者から大きな関心を得ている。例えば、酸化タンタルはシリカに比べて電気的絶縁性に優れるうえ、高誘電体(high-k dielectric)として有力な候補物質であると考えられる。また、酸化タンタルの高い屈折率、熱及び化学安定性、触媒活性、放射線不透過性(radiopacity)及び生体適合性(biocompatibility)は、反射防止コート(anti-reflective coating)、水分離(water-splitting)触媒、固定金属酸化物触媒、及びX線造影剤への使用に適する。
【0004】
酸化タンタルナノ粒子の合成及び応用は相当な重要性を有する。溶液プロセス(solution-processed)による電子及び光学素子の製造のために、多様な溶媒で高い均一性及び優れた分散性のナノ粒子が要求される。適切な安定化分子でキャッピングされた単分散性ナノ粒子の合成は、ナノ粒子層からなる欠陥のない(defect-free)薄膜を製造することを可能とする。しかも、容易な表面改質方法の発展は、特にナノ粒子のバイオ医薬応用において相当重要である。このような目的のために、ナノ粒子の表面は前記粒子にコロイド分散性及び多機能性を与える防汚剤(antifouling agents)、薬物、有機染料、及び抗体を含む機能部分(functional moieties)に改質されなければならない。
【0005】
一方、X線CT造影剤として現在、ヨウ化安息香酸誘導体が、ヨウ素の注入による危険性及び副作用にも拘らず未だ使われているが、これらは典型的に低い分子量を有し、人体から非常に速く除去されるため、疾病部位への標的化が難しいものと知られている。また、金ナノ粒子のX線CT造影剤への応用に対する多数の特許文献が公開されたことがあるが、これらは費用面で不経済であるという問題がある。酸化タンタルナノ粒子を用いた造影剤が韓国公開特許第10−2009−0108697号に開示されたことがあるが、簡単かつ低廉な方法によって大量に表面改質された単分散性酸化タンタルナノ粒子の製造方法及びその応用については未だ報告されたことがない実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の基本的な目的は、(i)界面活性剤を含む有機溶媒に、水を含む水相を添加し、油中水マイクロエマルジョンを製造する段階と、(ii)前記マイクロエマルジョンにタンタル前駆体を導入する段階と、(iii)前記(ii)段階で得た溶液に、有機シラン基又はホスフィン基を含む表面改質剤を添加し、反応させる段階と、(iv)前記(iii)段階の反応結果物から前記有機溶媒を除去する段階と、(v)前記(iv)段階で得た混合物から、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を分離する段階とを含む、表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、酸化タンタルナノ粒子、及び前記酸化タンタルナノ粒子にホスフィン基又はシラン基を介して結合した機能性物質を含む、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、酸化タンタルナノ粒子、及び前記酸化タンタルナノ粒子にホスフィン基又はシラン基を介して結合した機能性物質を含む、X線コンピュータ断層撮影用造影剤を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、(i)界面活性剤を含む有機溶媒に、水を含む水相を添加し、油中水マイクロエマルジョンを製造する段階と、(ii)前記マイクロエマルジョンにタンタル前駆体を導入する段階と、(iii)前記(ii)段階で得た溶液に、有機シラン基又はホスフィン基を含む表面改質剤を添加し、反応させる段階と、(iv)前記(iii)段階の反応結果物から前記有機溶媒を除去する段階と、(v)前記(iv)段階で得た混合物から、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を分離する段階と、(vi)前記分離された、表面改質された酸化タンタルナノ粒子をポリマー含有溶液に添加した後、加熱して前記溶媒を除去する段階とを含む、表面改質された酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物の製造方法、そしてそれを基板上に塗布することにより製造される高誘電薄膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明で使用される大部分の用語は、当業者が認知しうるものであるが、それにも拘らず、次の定義は本発明の理解を助けるために提示される。ところが、明示的に定義されていない場合、用語は当業者によって当時受け入れられるような意味を採用することにより解釈されるべきである。
【0011】
コンピュータ体軸断層撮影又はコンピュータ補助断層撮影(CAT)及び身体断面X線撮影(body section roentgenography)とも知られている「X線コンピュータ断層撮影」、略して「CT」は、断層撮影を用いる医療画像化方法であり、ここで、デジタルプロセッシングが、単一回転軸の周辺に撮られた多くの一連の2次元X線画像から対象(又は被実験体)の内部の3次元画像を作り出すように使用される。ここでの論議がコンピュータ断層撮影に焦点を合わせたが、そのような論議は全類型のX線画像化に一般に適用されるということが当業者によって認知されるであろう。
【0012】
「X線コンピュータ断層撮影造影剤」は、関心のある体積を介して透過された放射線を減少させるように入射X線放射線を相当減衰させることが可能な物質を含む製剤である。このようにCT画像の改造及び通常の後処理(post-processing)の後に増加されたX線減衰は、関心のある体積の密度増加として解釈される。これは、画像の背景組織に比べて、造影剤を含む体積で造影形状を作り出す。ここでの論議が一般に全てのX線画像化に適用可能であるため、本発明では「X線コンピュータ断層撮影用造影剤」と呼ぶ。
【0013】
「ナノ粒子」とは、約1nm〜約1000nm、又は約1nm〜約500nmの平均直径を有する粒子であり、ナノ粒子のコア部分の他に、表面に結合した作用基を含む意味で使用できる。このようなナノ粒子は球状又は不規則な形状であってもよい。
【0014】
「マイクロエマルジョン(ME)方法」は、ナノ粒子を合成するためにマイクロ反応器(microreactor)としてエマルジョン内の水滴(water droplet)を用いる。例えば、非イオン性界面活性剤を用いる多様な油中水(water-in-oil)MEシステムが単分散性シリカナノ粒子の合成のために使用されたことがある。このシステム内において、界面活性剤分子は油相(oil phase)と水相(water phase)との界面でミセル構造によって結合する。制御された条件の下で、約10nm以下の均一なミセルスピア(micelle spheres)が形成できる。このミセルスピアは互いに衝突してそれぞれそれらの含有物を交換することができる。前記ミセルスピアそれぞれの内部には金属アルコキシド前駆体及び酸/塩基触媒が水相(aqueous phase)中にある。合成中に、前記前駆体の加水分解及び縮合(condensation)で金属酸化物を形成し、これはゾルゲル反応として知られている。均一な球状のミセル内に閉じ込まれたゾルゲル反応は単分散金属酸化物ナノ粒子の形成を導くことができる。ミセルは、柔らかい鋳型としての役割だけでなく、前記ナノ粒子の凝集を妨害し且つそれらの表面を保護する役割を果たすことができる。
【0015】
前記ナノ粒子のサイズ分布及び凝集速度は、主に、前記前駆体の反応速度と前記ミセルの含有物の交換速度との比率に依存することができる。前記ナノ粒子の成長力学(growth dynamics)はpH、電解質、界面活性剤、前駆体の濃度、及び油相(oil phase)に対して水の比率を調節することにより制御することができる。
【0016】
マイクロエマルジョン合成の利点の一つは、粒子のサイズ及び構成が界面活性剤に対する水の比率を変化させることにより容易に調節できることである。また、コア−シェルの構造はコア粒子を含むマイクロエマルジョンシステムに追加の前駆体を添加することにより実現可能であり、前記コア粒子は後で逆ミセル膨潤(reverse micelle swelling)を生じさせるおそれがある。
【0017】
一方、既存のマイクロエマルジョン方法によるときに欠点があるので、他の溶媒に分散させ或いは粉末状の粒子を得るために、前記ナノ粒子を逆ミセル鋳型から離脱させると、粒子の表面が不安定であって互いに凝集する。そのため、粒子の表面に直接付着する安定化剤を導入して逆ミセルを除去しても粒子の分散性が維持されるようにしなければならない。よって、連続的に別の安定化剤が逆鋳型を維持したままで導入されなければならない。本発明における酸化タンタルナノ粒子も高反応性の表面により凝集が逆ミセル鋳型の強度に強く依存する。したがって、粒子の純粋化のために粒子溶解度の異なる溶媒を添加して粒子を沈殿させるか或いはME相の溶媒を蒸発させるために加熱しても、逆ミセル膜の強度が弱くて粒子が凝集する現象が起こる。このため、前記MEに直接的に安定化剤又は機能基を有する安定化剤を導入して低温で共有結合を誘導する方法を使用する。このような改質技術は、単純であるうえ、多様な機能基を有する安定化剤の導入により多様な応用を可能とする。それだけでなく、粒子の純粋化を容易にすることができ且つMEに使う溶媒をリサクルすることができるようにして量産を可能とする。
【0018】
高誘電薄膜(high-k dielectric layer)は、有機薄膜トランジスタ(OTFT)などにおいて、電子の移動度(mobility)を高めるために重要な役割を果たす。OTFTの性能をさらに高めるために、誘電体は高度の絶縁性、透明性、可撓性及び薄い厚さを有しなければならない。ところが、有機誘電薄膜は小さい誘電定数(k=5〜10)を有するが、これに対し、無機誘電薄膜は、疎水性の有機フィルムに対する接着性(adhesive)がなく、有機フィルムの溶融を起こす高温工程を必要とする。本発明で使用される非晶質(amorphous)のタンタル酸化物ナノ粒子(TaOx)は高い誘電定数(k〜25)を有する透明物質である。また、コロイドナノ粒子溶液が費用効率的であり、低温工程に適した、OTFT用高誘電薄膜の溶液ベース製造のために使用できる。よって、TaOx溶液から形成された誘電薄膜は有機誘電薄膜及び無機誘電薄膜の弱点を補完することができる。本発明において、酸化タンタル(TaOx、0≦x≦2.5)はTaO、TaO2およびTa2O5を含む。
【0019】
酸化タンタル(TaOx)ナノ粒子はX線造影剤として適しうる。最近、金ナノ粒子がその長い循環時間(circulation time)、高いX線吸収、生体適合性、及び多様な変形技術により、X線CT造影剤としての用途で関心を引いてきた。ところが、酸化タンタルナノ粒子は、金ナノ粒子と比較して同等又はさらに優れた特性を示す。タンタルは、歯科用吸着剤又は充填剤、及び内血管手術におけるステント(stents)のために使用される生体適合性物質として知られている。非晶質酸化タンタルは血液生体適合性に良いより低い表面エネルギーを持っている。しかも、酸化タンタルは、特別な細胞毒性が報告されたことのない金属ベースX線造影剤のうち、シリカと金に次ぐ最も生体親和的な金属ベース物質である。また、タンタルのX線減衰係数(attenuation coefficient)が金と類似しており(100eVでそれぞれ、4.3及び5.16cm2)、タンタルは金に比べて200倍程度低価格である。また、本発明の酸化タンタルナノ粒子は、一般にX線造影剤として使用されるヨウ化化合物が直面した問題点を解決することができる。誘導される副作用、例えばアナフィラクトイド反応及び造影剤誘発性腎症と共に、ヨウ化化合物ベースX線造影剤は、ヨウ素の低いX線吸収率により高濃度の溶液を使用しなければならないので、高い粘性の溶液を注入しなければならないうえ、速い腎臓排泄により体内循環時間が短い。以前の研究で、防汚剤に結合した高い電子密度を有するナノ粒子を用いたX線造影剤は、長い循環時間を有し、単位濃度当たり高い造影効果を示すものと観察されている。
【0020】
本発明の基本的な目的は、(i)界面活性剤を含む有機溶媒に、水を含む水相を添加し、油中水マイクロエマルジョンを製造する段階と、(ii)前記マイクロエマルジョンにタンタル前駆体を導入する段階と、(iii)前記(ii)段階で得た溶液に、有機シラン基又はホスフィン基を含む表面改質剤を添加し、反応させる段階と、(iv)前記(iii)段階の反応結果物から前記有機溶媒を除去する段階と、(v)前記(iv)段階で得た混合物から、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を分離する段階とを含む、表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法を提供することにより達成できる。
【0021】
前記界面活性剤は非イオン性界面活性剤であってもよい。また、前記非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン−5−ノニルフェニルエーテル(polyoxyehylene-5-nonylphenylehter=NP−5)、ポリオキシエチレンソルビタン(polyoxyehtylene sorbitan、Tween)、ポロキサマー(poloxamer)、ソルビタンエステル(sorbitan ester、Span)又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0022】
前記有機溶媒は、マイクロエマルジョンにおいて油相として使用できる通常の有機溶媒であってもよい。より具体的には、前記有機溶媒はシクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、トルエン又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0023】
前記水相は親水性溶媒をさらに含んでもよい。前記水と親水性溶媒の比率を異ならしめて酸化タンタルのサイズを調節することができる。前記親水性溶媒の量が増加するほど、生成される酸化タンタルナノ粒子のサイズが増加する。好ましくは、前記親水性溶媒はC1−8アルコール、アセトニトリル、C1−8エーテル又はアセトンから選択できる。より好ましくは、前記親水性溶媒はエタノールである。
【0024】
また、前記水相は脂肪酸塩などの補助界面活性剤(co-surfactant)をさらに含んでもよい。前記脂肪酸塩は脂肪酸のカルシウム塩やマグネシウム塩、カリウム塩などであってもよく、飽和又は不飽和脂肪酸であってもよい。好ましくは、前記脂肪酸塩はオレイン酸ナトリウムである。
【0025】
しかも、前記水相は触媒として酸又は塩基をさらに含んでもよい。これにより、前記水相のpHは2以下又は13以上であってもよい。例えば、前記酸又は塩基触媒は、塩基触媒として水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが使用でき、酸触媒として塩酸や酢酸などが使用できる。
【0026】
前記タンタル前駆体はタンタルアルコキシド又はタンタル塩であってもよい。より好ましくは、前記タンタル前駆体はC1〜C4タンタルアルコキシドである。最も好ましくは、前記タンタル前駆体はタンタルエトキシドである。
【0027】
前記表面改質剤は、シラン基又はホスフィン基を有する化合物であって、好ましくはトリオクチルホスフィン(trioctylphosphine、TOP)、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(methacryloxypropyltrimethoxy silane、MPTMS)、ポリエチレングリコールシラン[poly(ethylene glycol)silane]、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3-aminopropyltriethoxy silane、APS)、テトラエチルオルソシリケート(tetraethylorthosilicate、TEOS)、又はこれらの組み合わせであってもよい。前記表面改質剤は、表面改質効果とともに安定化効果を奏する。
【0028】
しかも、前記表面改質剤は、前記酸化タンタルナノ粒子に結合するシラン基又はホスフィン基の他方に、生体適合性物質(biocompatiablematerial)、有機染料(organic dye)、生体活性物質(bioactive material)、作用基、有機分子、有機金属、ナノ粒子又はシェル構造、又はこれらの組み合わせから選択される機能性物質が結合したものであってもよい。前記機能性物質は、本願で使用されるシラン基又はホスフィン基を有する表面改質剤と結合して反応中に添加できるものであればいずれの物質でも利用できる。
【0029】
前記生体適合性物質は、ポリビニルアルコール、ポリラクチド(polylactide)、ポリグリコリド(polyglycolide)、ポリ(ラクチド−グリコリド)共重合体[poly(lactide-co-glycolide)]、ポリアンヒドリド(polyanhydride)、ポリエステル(polyester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリビニルフルオリド(polyvinyl fluoride)、ポリビニルイミダゾール[poly(vinylimidazole)]、クロロスルホネートポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefine)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリエチレングリコール[poly(ethyleneglycole)]、デキストラン(dextran)、これらの混合物、又はこれらの共重合体であってもよい。
【0030】
また、前記有機染料は、ローダミン、ローダミン誘導体、フルオレシン、フルオレシン誘導体、ルシフェリン、ルシフェリン誘導体、及びこれらの組み合わせであってもよい。例えば、前記有機染料としてローダミンB−イソチオシアネート(rhodamine B isothiocyanate、RITC)が使用できる。
【0031】
また、前記生体活性物質は、生体内の標的物質に選択的に結合するタンパク質、RNA、DNA、抗体及びこれらの組み合わせから選ばれる標的指向性物質であり、或いはアポトーシス誘導遺伝子又は毒性タンパク質;蛍光物質;同位元素;光、電磁気波、放射線又は熱に感応する物質;薬理活性を示す物質、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0032】
本発明の方法において、前記(iv)段階は、ロータリー蒸発器などを用いて、60℃以下の温度で加熱することにより行われてもよい。また、前記(iv)段階で、使用された有機溶媒をその沸騰点又はそれ以上の温度で加熱してもよい。
【0033】
本発明の方法の(v)段階は通常の精製/分離方法によって行われてもよい。例えば、製造されたナノ粒子を溶媒−非溶媒法及び遠心分離を用いて洗浄及び分離することができるが、これに限定されるものではない。
【0034】
前述した本発明の方法は単一反応器(one-pot)内で行われてもよいが、これに限定されるものではない。
【0035】
本発明の別の目的は、酸化タンタルナノ粒子、及び前記酸化タンタルナノ粒子にホスフィン基又はシラン基を介して結合した機能性物質を含む、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を提供することにより達成できる。
【0036】
前記機能性物質は、生体適合性物質(biocompatible material)、有機染料(organic dye)、生体活性物質(bioactive material)、作用基、有機分子、有機金属、ナノ粒子、シェル構造又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0037】
前記表面改質された酸化タンタルナノ粒子の平均サイズが3nm〜50nmであってもよく、これらの平均サイズに対する標準偏差は約5%以下である。前記酸化タンタルはTaOであってもよい。
【0038】
本発明の別の目的は、酸化タンタルナノ粒子、及び前記酸化タンタルナノ粒子にホスフィン基又はシラン基を介して結合した機能性物質を含む、X線コンピュータ断層撮影用造影剤を提供することにより達成できる。
【0039】
前記生体適合性物質は、ポリビニルアルコール、ポリラクチド(polylactide)、ポリグリコリド(polyglycolide)、ポリ(ラクチド−グリコリド)共重合体[poly(lactide-co-glycolide)]、ポリアンヒドリド(polyanhydride)、ポリエステル(polyester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリビニルフルオリド(polyvinyl fluoride)、ポリビニルイミダゾール[poly(vinylimidazole)]、クロロスルホネートポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefine)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリエチレングリコール[poly(ethyleneglycole)]、デキストラン(dextran)、これらの混合物、又はこれらの共重合体であってもよい。
【0040】
前記酸化タンタルナノ粒子の表面にシラン基又はホスフィン基を介して結合した有機染料をさらに含んでもよい。前記有機染料はローダミン、ローダミン誘導体、フルオレシン、フルオレシン誘導体、ルシフェリン、ルシフェリン誘導体、又はこれらの組み合わせであってもよい。例えば、前記有機染料としてローダミン−B−イソチオシアネート(rhodamine B isothiocyanate、RITC)が使用できる。
【0041】
前記酸化タンタルナノ粒子の表面にシラン基又はホスフィン基を介して結合した生体活性物質をさらに含んでもよい。前記生体活性物質は、生体内の標的物質と選択的に結合するタンパク質、RNA、DNA、抗体及びこれらの組み合わせから選ばれる標的指向性物質であり、或いはアポトーシス誘導遺伝子又は毒性タンパク質;蛍光物質;同位元素;光、電磁気波、放射線又は熱に感応する物質;薬理活性を示す物質、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0042】
本発明のX線コンピュータ断層撮影用造影剤において、前記酸化タンタルがTaOであってもよい。
【0043】
本発明の別の目的は、(i)界面活性剤を含む有機溶媒に、水を含む水相を添加し、油中水マイクロエマルジョンを製造する段階と、(ii)前記マイクロエマルジョンにタンタル前駆体を導入する段階と、(iii)前記(ii)段階で得た溶液に、有機シラン基又はホスフィン基を含む表面改質剤を添加し、反応させる段階と、(iv)前記(iii)段階の反応結果物から前記有機溶媒を除去する段階と、(v)前記(iv)段階で得た混合物から、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を分離する段階と、(vi)前記分離された、表面改質された酸化タンタルナノ粒子をポリマー含有溶液に添加した後、加熱して前記溶媒を除去する段階とを含む、表面改質された酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物の製造方法、そしてそれを基板上に塗布することにより製造される高誘電薄膜の提供によって達成できる。
【0044】
前記ポリマーは、ポリウレタン共重合体、セルロース系誘導体、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリアクリル共重合体、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリビニルアセテート共重合体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフルフリルアルコール(PPFA)、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレンオキシド共重合体、ポリプロピレンオキシド共重合体、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリカプロラクトン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルフルオリド、ポリビニリデンフルオリド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0045】
前記ポリマーは、これらが溶解できる適切な溶媒に溶解された溶液状態で反応物に添加できる。例えば、有機溶媒中で前記ポリマーを含む溶液状態で反応物に添加できる。前記有機溶媒としてはアルコールや芳香族溶媒(例えば、トルエンなど)などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
前記ポリマーの添加以外の段階は、前述の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法と関連して説明した内容が、そのまま適用できる。
【0047】
前記水相は親水性溶媒をさらに含んでもよい。前記親水性溶媒はC1−8アルコール、アセトニトリル、C1−8エーテル又はアセトンから選択できる。好ましくは、前記親水性溶媒はエタノールである。
【0048】
本発明の高誘電薄膜は、前述した方法で製造された、表面改質された酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物をトルエンなどの有機溶媒にさらに溶解させて液状に製造して液相塗布を行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0049】
前記液相塗布の方法は、基板上に薄膜を形成することが可能な通常の液相塗布法が利用でき、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの通常の液相塗布方法が用いられてもよい。
【発明の効果】
【0050】
本発明の一実施例に係る表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法によれば、表面改質された単分散性酸化タンタルナノ粒子を簡単な方法で製造することができ、グラムスケールの大量合成を実現することができる。また、マイクロエマルジョンの製造において、表面改質に至る過程を単一反応器内で連続的に行うことができる。さらに、相対的に低い温度で反応が行われ、溶媒の再使用が可能であって非常に安い費用で大量合成が可能である。
【0051】
本発明の一実施例によって製造された、表面改質された酸化タンタルナノ粒子は、有機薄膜トランジスタ用高誘電(high-k)薄膜、X線CT造影剤などの様々な応用分野に利用できる。
【0052】
本発明の一実施例によって製造された、表面改質された酸化タンタルナノ粒子は、X線CT造影剤として金ナノ粒子に相応する或いはさらに優れた特性、例えば、高いX線吸収、優れた生体適合性、長い循環時間などを有するため、優れたX線CT造影剤として活用できる。
【0053】
本発明の一実施例によって製造された高誘電薄膜は、表面改質されたタンタルナノ粒子を含有するため、フィルムの粗さ(roughness)を減少させることができ、有機薄膜トランジスタの性能を向上させることができるため、工程の単純化、費用効率及び性能の面において理想的な誘電体(dielectrics)として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施例に係る、表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造過程を概略的に示す順序図である。
【図2】本発明の一実施例によって製造された、酸化タンタルナノ粒子のTEM画像である。
【図3】本発明の一実施例によって製造された、無定形(amorphous)酸化タンタルナノ粒子のXRD分析結果を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施例によって製造された、酸化タンタルナノ粒子のXPS分析結果を示すグラフである(酸化タンタルナノ粒子の(a)Ta 4f、(b)O ls、(c)Na 1sピーク)。
【図5】本発明の一実施例によって製造された酸化タンタルナノ粒子であって、添加されたエタノールの量に応じてそのサイズが変化することを示す(a:6nm、b:9nm、c:13nm、d:15nm)。
【図6】本発明の一実施例によって製造された、MPTMS及びPEG−シランで表面改質された酸化タンタルナノ粒子のFTIRスペクトルである。
【図7】本発明の一実施例によって製造された、MPTMS(a)及びPEG−シラン(b)で表面改質された酸化タンタルナノ粒子の13C CP MAS NMRスペクトルである。
【図8】本発明の一実施例によって製造された、MPTMS(a)、TOP(b)、APS(c)で機能化された酸化タンタルナノ粒子のTEM画像である。
【図9】本発明の一実施例によって製造された、シリカでコートされた酸化タンタルナノ粒子のTEM画像である。
【図10】本発明の一実施例によって製造されたMPTMS−TaOx/PMMAフィルムのTEM画像(a、b、c)、AFM画像(d)、及び前記フィルムを誘電薄膜として用いた有機薄膜トランジスタの断面を概略的に示す図(e)である。
【図11】本発明の一実施例によって多様な濃度のTaOxナノ粒子((a)1wt%、(b)2wt%、(c)3wt%、(d)6wt%)で製造されたMPTMS−TaOx/PMMAフィルムのTEM画像である。
【図12】図12aは本発明の一実施例によって製造された、水に分散したPEG−RITC−TaOxのTEM画像であり(挿入度は前記ナノ粒子の水性分散液に対する画像である)、図12bはPBS溶液内におけるPEG−RITC−TaOxとガラスRITCの吸光(absorbance)及び蛍光スペクトルであり、ここで、両サンプル内におけるRITC分子の個数を一致させるために光学的密度を同一にした(λex=520nm、挿入度は紫外線によって励起されたPBS溶液内の蛍光ナノ粒子に対する画像である。)。
【図13】図13aは本発明の一実施例に係る、T2結合ピークの特性を示す、PEG−シランが固定化されたTaOxナノ粒子の29Si CP MAS NMRスペクトルであり、図13bはPBS溶液内で前記PEG−RITC−TaOxのサイズ分布である。動的光散乱(dynamic light scattering、DLS)の測定結果によれば、前記ナノ粒子の平均水動力学的直径(hydrodynamic diameter、HD)は19nmである。
【図14】本発明の一実施例に係るPET−RITC−TaOxの試験管内特性において、水内におけるPEG−RITC−TaOxのHU(Hounsfield unit)測定(左)とファントムCT画像(右)である。
【図15】本発明の一実施例に係るPEG−RITC−TaOxの試験管内特性において、多様な濃度のPEG−RITC−TaOxナノ粒子で培養されたRAW264.7細胞(murinemacrophage)に対する前記ナノ粒子の細胞毒性をMTT分析した結果である。
【図16】本発明の一実施例に係るPEG−RITC−TaOxの試験管内特性において、PEG−RITC−TaOxを用いて24時間インキュベーションされたRAW264.7細胞のCLSM画像である(スケールバー:20μm)。核は4’−6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で青色に染色した。
【図17】本発明の一実施例に係るPET−RITC−TaOxの試験管内特性において、多様な濃度のPEG−RITC−TaOxを用いてインキュベーションされたRAW264.7細胞の細胞画像化結果である。図17において、最上部は明視野像(bright field image)、中間は蛍光画像(λex=550nm)、下部はX線CT細胞ファントム画像(数字はHUとしてのCT値を意味する)である。
【図18】本発明の一実施例に係る生体内のX線CT画像であって、ラットの尾静脈に1mLのPEG−RITC−TaOx溶液(840mg/kg)を注射した後、連続的に得たCT冠状画像である。図18aは心臓と肝(図18cの点線に沿って切断した冠状画像)を示し、図18bは脾臓(spleen)、腎臓及び下大静脈(inferior vena cava)(図18cの点線に沿って切断した冠状画像)を示す。図18cの生体内CT画像の3次元透視図(rendering)は心臓及び大血管の前面部(上方)及び側面部(下方)を示す。図18cは注入直後に得た画像である。
【図19】本発明の一実施例によって、ラットの尾静脈にPEG−RITC−TaOx溶液(840mg/kg)を注射し、24時間後に摘出した肝臓、脾臓、心臓、腎臓及び肺の蛍光画像化によって得たPEG−RITC−TaOxの体内分布を示すもので、(a)は前記器官の写真(左)及び対応する蛍光画像(右)であり、(b)はDAPIを用いて青色に染色した組織サンプルの共焦点顕微鏡画像であって、赤色放出PEG−RITC−TaOxの存在を示す。
【図20】本発明の一実施例によって、1mLのPBS(対照群)及び1mLのPEG−RITC−TaOx溶液(PBS内で840mg/kg)を1回静脈注射した後、それぞれ所定の時間で切開したラットの肝、脾臓、心臓、腎臓及び肺の組織学的変化の時間的推移を示す。切開部位をH&Eで染色し、100倍光学顕微鏡で観察した。
【図21】本発明の一実施例によって、ラットにPEG−RITC−TaOx溶液を注射した後の血清肝酵素(血清ALT及び血清AST)の時間による変化を示す。t=0はラットにPEG−RITC−TaOx溶液(1mLのPBS内に840mg/kgの用量)を静脈注入した瞬間である。データは平均±平均の標準誤差(mean±sem)で示す。t=0でのデータは塩水対照群(saline control)のデータである。
【図22】本発明の一実施例によってPEG−RITC−TaOx溶液を静脈注入したラットのセンチネルリンパ節のマッピング及び切除結果を示す。 図22aは100μLのPET−RITC−TaOx溶液をラットの両足の真皮内に注入して2時間後に得た前記ラットのセンチネルリンパ節の生体内CTボリュームレンダリング(上部左側)及びMIP(maximum intensity projection)画像(上部右側及び下部)である。円及び矢印はリンパ節の位置を示す。 図22bは100μLのPEG−RITC−TaOx溶液をラットの両足の真皮内に注入して得た前記ラットの白光(white light)写真(上部)及び蛍光画像(下部)である。注入2時間後のラットの側面画像は前記リンパ節及び注入部位から非常に強い赤色放出があることを示す(左側及び中間)。矢印及び円はそれぞれ暫定腋窩(putative axillary)センチネルリンパ節及び注入点(injection point)を示す。前記2匹のラットのセンチネルリンパ節を2重モード画像誘導手術(bimodal image-guided surgery)によって切開した(右側)。
【図23】図23aは2重モード画像誘導手術によって切開されたリンパ節サンプルの組織学的断面を示す。前記断面をH&Eで染色した後、光学顕微鏡を用いて100倍(左)及び400倍(右)で観察した。図23bはDAPIで染色した前記切開されたリンパ節の共焦点顕微鏡画像であって、赤色蛍光を放出するPEG−RITC−TaOxの存在を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、下記の実施例及び図面を挙げて本発明をより具体的に説明する。ところが、下記の実施例及び図面に対する説明は、本発明の具体的な実施様態を特定して説明しようとするものに過ぎず、本発明の権利範囲を限定又は制限解釈しようとするものではない。
【0056】
実施例1:マイクロエマルジョン内における酸化タンタルナノ粒子の合成
2.3gのIgepal CO−520(polyoxyethylene-5-nonylphenyl ether:NP−5)、エタノール(Samchun、99.5%)及び20mLのシクロヘキサン(Samchun、99.5%)からなる有機相(organic phase)に、0.25mLのNaOH水溶液(75mM)を添加してマイクロエマルジョン(microemulsion、ME)を準備した。室温で0.05mLのタンタル(V)エトキシド(0.03mmol、Strem、99.8%)を前記マイクロエマルジョン(ME)に添加した後、5分以内で、酸化タンタルナノ粒子を含む混合物(以下、「TaOx−ME」という)を得た。前記エタノールの量を変化(0mL、0.25mL、0.5mL及び0.75mL)させて酸化タンタルナノ粒子のサイズを調節した。
【0057】
実施例2:酸化タンタルナノ粒子(酸化タンタルナノ粒子)のワンポット(one-pot)表面改質
ミセル構造が崩壊した後に凝集させることなく、MEから酸化タンタルナノ粒子を抽出するために、適量のTOP、APS、MPTMS、PEGシラン又はTEOSが酸化タンタルナノ粒子製造の最終段階でMEに導入された。
【0058】
トリオクチルホスフィンで安定化された酸化タンタルナノ粒子
トリオクチルホスフィン(TOP)で安定化された酸化タンタルを合成するために、4mLのTOPと結合したMEを60℃で蒸発させた。その後、TOPで安定化された酸化タンタルナノ粒子及びNP−5の透明溶液をクロロホルム及びメタノールを用いて溶媒/非溶媒沈殿方法によって数回洗浄し、2000rpmで30分間遠心分離した。前記ナノ粒子はクロロホルム又はトルエンなどの有機溶媒中でよく分散した。
【0059】
有機シランで表面改質された酸化タンタルナノ粒子
全ての有機シランで変形された酸化タンタルナノ粒子は、それぞれ3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)又はPEGシラン(それぞれ0.1mL、0.5mL、0.05mL)をTaOx−MEと室温で24時間反応させて製造した。その後、有機シランによって表面改質された粒子は沈殿した。反応の後、前記表面改質反応を確実に完了するために、結果溶液を60℃で蒸発させた。その結果、前記溶液が透明になった。未反応の有機シラン及びNP−5をヘキサン又は1:1のエタノール/ヘキサン(PEGシランの場合)の混合溶液に添加して溶解させた。沈殿した残留粒子は、2000rpmで遠心分離すると共に、多数回溶媒/非溶媒(アセトン/ヘキサン)で洗浄した。MPTMSグラフト酸化タンタルナノ粒子は、エタノール又はクロロホルムなどの有機溶媒内でよく溶解された。APGグラフト、アミノで機能化された酸化タンタルナノ粒子は3時間超音波処理によってエタノール中で溶解された。PEG化酸化タンタルナノ粒子は数分間超音波処理によって水中でよく溶解された。
【0060】
酸化タンタルナノ粒子のワンポット(one-pot)シリカコーティング
TEOS(0.3mL)をTaOx−MEに添加して、室温で6時間以上攪拌した。その後、アンモニア溶液(30%)3mLを添加して3時間持続的に攪拌した。3mLの酢酸エチルを添加して24時間酸化タンタルナノ粒子の表面上にシリカシェルを徐々に成長させた。
【0061】
実施例3:酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物及び高誘電薄膜の製造
TaOx/PMMAナノ組成物及び薄膜
実施例2によって予め合成された10mLのクロロホルムに溶解させたMTPMSグラフトTaOx NPを、0.5gのPMMAを含むトルエン溶液に添加した。MPTMS−TaOx/PMMA溶液を、全てのトルエン/クロロホルム溶媒が蒸発するまで24時間60℃で攪拌しながら、ロータリー蒸発器で蒸発させた。得られたパウダーを30mLのクロロホルム/トルエンの混合溶液(v/v=0.25〜1)に溶解させた後、その一滴(5〜10μL)を、直径10cmのペトリ皿に含有された脱イオン水の表面に位置させた。30分後、透明なMPTMS−TaOx/PMMAフィルムが形成された。ピペットを用いて、含有された全ての水を抽出することにより、ペトリ皿の底部に予め載置しておいたITOガラス基板上に蒸着させた。
【0062】
実施例2によって予め合成した10mLのクロロホルムに溶解させたTOP安定化TaOx NPを、0.5gのPMMAを含む10mLのトルエン溶液に溶解させた。前述したMPTMS−TaOx/PMMAフィルムの製造と同一の方法で混合された溶液をロータリー蒸発器で蒸発させ、30mLのトルエンに溶解させた後、ITOガラス上に蒸着させた。
【0063】
TaOx/PMMAナノ組成物
TaOx−MEを、0.16gのP4VPを含む15mLのエタノール溶液と混合し、90℃で1時間加熱した後、ロータリー蒸発器によって60℃で15分間蒸発させた。得られたパウダーをヘキサンで数回洗浄してNP−5を除去し、エタノールに溶解させた。
【0064】
実施例4:バイモーダルイメージングプローブ(bimodal imaging probe)による酸化タンタルナノ粒子のPEG化及びRITC機能化
110μLのアミノプロピルトリエトキシシラン(aminopropyltriehoxysilane:APTES、Aldrich)を3.75mLのエタノール内で50mgのRITC(rhodamine B isocyanate)と室温で24時間反応させ、ローダミンBイソチオシアン酸塩で機能化されたシラン(RITC-functionalized silane)を準備した。こうして得た溶液を1LのPEG−シラン(2-methoxy(polyethylenoxy)propyltrimethoxysilane:PEG−シラン、Gelest、596〜725Da)と共に実施例1で製造された、1LのTaOx−MEに添加した。この混合物を室温で24時間攪拌すると、赤色の懸濁溶液になった。こうして得た溶液を該溶液が透明になるまで60℃で蒸発させた後、1:1(v/v)のエーテル/n−ヘキサンの混合溶液を添加して、機能化された酸化タンタルナノ粒子を沈殿させた。前記沈殿物をエーテルで精製した後、エタノールに分散させた。前記溶液に100mgのmPEG−SG(methoxypoly(ethylene glycol)succinimidylgultarate、MW2000、Sunbio)を添加した。前記混合物を30℃で一晩攪拌することにより、前記機能化された酸化タンタルナノ粒子の表面上の残留アミン基にPEGを接合(conjugation)させた。こうして得た最終産物(以下、「PEG−RITC−TaOx」という)をPBS(phosphate buffered saline)に分散させた。
【0065】
PEG−RITC−TaOxを用いたX線CT及び蛍光画像化
ファントムテスト(phantom test):
脱イオン水に分散した多様な濃度のPEG−RITC−TaOx(0.22、0.45、0.9、1.8、3.6、7.2、14.5及び29mg Ta/mL)を1.5mLのマイクロチューブに準備した。CT画像をデュアル−ソースCTシステム(Somatom Definition、Simens)を用いて得た。画像化のための変数は次の通りとした:厚さ1mm;ピッチ1;120kVp、90mA;filed of view、84×84;0.5秒のガントリー回転時間;6mm/sのテーブル速度。
【0066】
細胞培養:
RAW 264.7(murine macrophage cell line)を、37℃の湿潤化5%CO2雰囲気中で、フェニシリン/ストレプトマイシン(それぞれ100U/mL及び100μg μg/mL、Gibco)及び10%(v/v)ウシ胎仔血清(fetal bovine serum、FBS、Gibco)で補充されたDMEM(Dulbecco’s Modified Eable’s Medium、WelGENE)内の単一層において成長させた。
【0067】
細胞内吸収:
ナノ粒子の細胞内吸収(uptake)を観察するために、ウェル当たり1×104個のRAW264.7細胞を8ウェルチャンバースライド(Nalgen Nunc、Naperville、IL)内で、多様な濃度(0、0.6、1.2、2.4mg Ta/mL)のPEG−RITC−TaOxと共に培養した。24時間後、細胞をPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、4',6'−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、PBS内1μg/mL、Roche)で染色(stain)した。共焦点レーザー顕微鏡(CLSM、LSM510、Carl Zeiss、Germany)を用いて蛍光画像を得た。
【0068】
細胞生存性分析:
酸化タンタルナノ粒子の存在下で細胞の生存及び増殖を3−[4,5−ジフェニルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT、Sigma)分析を用いて評価した。前記分析は次の方法で3回行った。RAW264.7細胞を200μLの培地内にウェル当たり1×104個の密度で96ウェルプレートに接種した後、一晩培養した。その後、前記細胞を多様な濃度のPEG−RITC−TaOx(0、0.075、0.15、0.3、0.6、1.2及び2.4mg Ta/mL)と共に24時間培養した。培養後、細胞を、0.1mg/mLのMTTを含む培地内で1時間培養した。次いで、前記MTT溶液を除去し、沈殿したバイオレットクリスタル(precipitated violet crystals)を200μLのDMSO内に溶解させた。VersaMaxTMマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて560nmで吸光度を測定した。
【0069】
試験管内(in vitro)CT画像化:
RAW264.7セルを10mLの培地にプレート当たり1×106個の密度で培養皿に接種(seed)し、一晩(overnight)培養した。次いで、多様な濃度(0、0.63、1.3、2.5mg Ta/mL)のPEG−RITC−TaOx分散液を添加した。24時間後、前記セルをPBSで2回洗浄して遊離ナノ粒子を除去し、1mLのトリプシン/EDTAを添加して脱着(detached)した。5分間1500rpmで遠心分離した後、セルを1mLの培養培地内に分散させて1.5mLのマイクロチューブに移した。5分間2000rpmで遠心分離してセルペレットを作った。
【0070】
デュアル−ソースCTシステム(Somatom Definition、Simens)を用いてCT画像を得た。画像化のための変数は次のとおりであった:厚さ1mm;ピッチ1;120kVp、90mA;field of view、84×84:0.5秒のガントリー回転時間;6mm/sのテーブル速度。
【0071】
生体内(in vivo)CT画像化:
PEG−RITC−TaOxの注入前と投与(administration)後の適切な時点でCT画像を得た。Zoletil(1.92mg/kg;Virbac、France)、Rompun(0.48mg/kg;Bayer Korea、Korea)及び塩水(saline)の混合物を腹腔内投与してラット(rat)を麻酔させた。次いで、1mLのPEG−RITC−TaOx分散液(840mg/kg)をラットの尾静脈から注入した。
【0072】
リンパ節の画像化のために、100μLのPEG−RITC−TaOx溶液をラット(n=2)の足に真皮内(intradermally)注入した後、2時間まで繰り返し画像化した。
【0073】
Brilliance 64−スライスCTスキャナー(Philips MedicalSystem)を用いてCT画像を得た。画像化のための変数は次の通りとした:厚さ0.1mm;ピッチ0.648;120kVp、192mA;field of view、108×108;マトリクス、1024×1024;0.75sのガントリー回転時間;16.7mm/sのテーブル速度。薄片軸(thin-section axial)画像を冠状画像(coronal image)に変換(マルチプラナー・リコンストラクション(MPR)と呼ばれる電算化技術を使用)した。OsiriX(バージョン3.8.1;32ビット;OsiriX foundation、Geneva)を用いて、3次元に再構成された画像を得た。
【0074】
試験管内(in vitro)および生体内(in vivo)蛍光画像化:
550nmの励起波長で蛍光イメージングシステム(Kodak IS4000MM pro、US)を用いて試験管内および生体内蛍光画像を得た。
【0075】
結果
前記実施例1に記載された酸化タンタルナノ粒子の全般的な合成過程、及びこれを用いて得たX線CT画像を図1に示した。前記実施例1では、タンタル(V)エトキシドのゾルゲル反応のために、シリカゾルゲル反応で用いられた典型的なアンモニア触媒の代わりに、塩基触媒としてNaOH水溶液を使用したが、これは、タンタル(V)エトキシドの反応速度がTEOSの反応速度より一層速く、アンモニア触媒を使用すると、生成されたナノ粒子の凝集が起こるためである。シクロヘキサン、エタノール、NaOH及びIgepal CO−520界面活性剤からなる混合物を乳化(emulsification)させた後、タンタル(v)エトキシドを前記エマルジョンに添加した。室温で、逆ミセル内での制御されたゾルゲル反応によって均一なナノ粒子が5分以内に生成された。こうして生成されたミセル内のTaOxナノ粒子(TaOx−ME)のTEM写真(図2)を参照すると、前記ナノ粒子のサイズ分布が非常に狭い(σr≦5%)。
【0076】
前記ナノ粒子に対するXRD(X-ray diffraction)分析結果(図3)、ED(electron diffraction)分析結果(図2の挿入度)及びXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)分析結果(図4)を参照すると、前記ナノ粒子が無定形であり、Ta2O5、TaOなどのTaOxが生成されることが分かる。前記ナノ粒子のサイズはエタノールの量を変化させることにより、5nm〜15nmの範囲内で調節することができる(図5)。エタノールの量を増加させると、タンタルエトキシドの加水分解速度が減少して大きいナノ粒子が生成されうる。
【0077】
トルエン、ヘキサン又はアセトンなどのその他の溶媒を酸化タンタルナノ粒子形成MEに加えたとき、ミセル構造の破壊と共に、酸化タンタルナノ粒子の表面のヒドロキシル基間の反応によって速い凝集が起こった。これは酸化タンタルナノ粒子が乳化剤と共有結合していない可能性があることを示す。よって、分離された形態のナノ粒子を得るために、表面配位結合剤(surface coordination agents)がワンポット(one-pot)反応によって導入されるべきである。特に、酸化タンタルナノ粒子の凝集前に、シラン及びTOPは溶媒(シクロヘキサン/エタノール/水(Cyclohexane/Ethan/Water))の沸騰点以下の温度で強く接合(conjugated)された。酸化タンタルナノ粒子の表面がシリカよりさらに酸性であるため、シランは酸化タンタルナノ粒子のOH基と容易に結合し、TOPは弱い酸−塩基反応によるリガンドとしてのTa原子との配位結合が可能である。しかも、溶媒の抽出が60℃で配位結合反応と同時に行われる。これは追って合成を繰り返し行う際に溶媒の再活用を可能とする。このような過程は、ME法で多量の溶媒を使用する問題を解決し、合成をスケールアップさせることを可能とする。乳化剤を数回洗浄した後、前記リガンドの結合を確認するために、安定化された酸化タンタルナノ粒子をFTIR、NMR及びTEMによって分析した(図6、7及び8)。FTIRはシラン上の作用基の存在を示す。50〜60(T2)領域の間のNMRピークは、粒子、3次元成長シラン(T1又はT3)のない配位結合したリガンドのみがあることを証明する。TEM画像に示されているように、分散性及びシリカがないことが証明される。
【0078】
また、実施例2に記載されているように、酸化タンタルナノ粒子上のワンポットシリカシェル成長を、水相(aqueous phase)の環境を変化させて行った。シェルを成長させるために、ミセル膨潤(swelling)が必要である。ところが、ミセル膨潤はナノ粒子表面のヒドロキシル基の高い反応性により酸化タンタルナノ粒子の凝集を誘導する。よって、TEOSをまず添加して酸化タンタルナノ粒子より反応性が低いシラノール(silanol)基を粒子の表面に形成した。アンモニア溶液は膨潤剤(swelling agent)として添加された。酢酸エチルを添加して水相のpHを低下させる。これによりTEOSのゾルゲル反応が引き起こされる。その結果、均一な直径を有するシリカシェルが形成される(図9参照)。
【0079】
酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物のOTFT用誘電フィルムとしての応用を調査した。実施例3に記載されているように、MPTMSに統合された酸化タンタルナノ粒子及びTOPで安定化された酸化タンタルナノ粒子を、誘電体として広く用いられるPMMAと混合した。MPTMSで処理された酸化タンタルナノ粒子をエタノールに溶解させて長期間のコロイド安定性を得た。この溶液に、PMMAトルエン溶液を酸化タンタルナノ粒子:PMMAの固定比率で混合した。ロータリー蒸発器で加熱処理し、トルエンに溶解させて、TaOx/PMMAナノ組成物溶液を凝集のない綺麗な溶液に製造した。クロロホルム中に溶解されたTOP安定化酸化タンタルナノ粒子を、前述したMPTMSで処理された酸化タンタルナノ粒子の場合と同一の過程によって処理した。Brinkerグループの研究で報告されたように、空気と水の界面におけるフィルム製造を行った。一滴のMPTMS TaOx溶液を、ITOガラスが底部に位置したペトリ皿中の脱イオン水の表面に播いた(cast)。約10分内に、同時的なPMMAの固化(solidification)及びPMMA内のナノ粒子のアセンブリ(assembly)によって薄膜フィルムの形成が誘導された。最後に、フィルムがITO基板上に蒸着されるまでピペットで水を除去してフィルムをITOガラス上に伝達し、10分間緩やかに加熱した(soft-baked)。製造されたフィルムは完全に透明で無色であった。ITOガラスの代わりにTEMグリッド上にフィルムを蒸着させて得られたTEM画像は、PMMAフィルム内に含まれたナノ粒子のシュードアセンブリ(pseudo-assembly)がホール(hole)等のいずれの欠陥も有しないことを示した。TEMグリッドの全体領域、ひいては粒子のない領域までPMMAでカバーされた。TEMビームがダメージを起こしたフィルム部分は剥がれた(peeled off)。
【0080】
図10のTEM画像から分かるように、1〜2nmのPMMA膜はアセンブリされた酸化タンタルナノ粒子をカバーした。また、フィルムが剥がれて完全にロールアップ(rolled up)された後にも、TEMグリッドのカーボンフィルムの下には粒子がなかった。このような結果はTEMグリッドの全体領域がPMMAでカバーされるという前述の仮説を証明する。溶媒の比率が高まるにつれて、フィルム内の粒子間の距離が高まった。これは水と空気の境界面におけるポリマーの粘度が減少するためである(図11)。製造されたITO上のフィルムのAFM分析によって得られた厚さプロファイル及びRMSデータは、1層又は2層のPMMAとアセンブリされたナノ粒子が広い領域にわたって形成されたことを証明する。結論的に、製造されたポリマーフィルムは、図10eに示したようなOTFTのための高い性能の透明誘電体として使用できる潜在力を有する。
【0081】
実施例4において、TaOx−ME合成の後に精製過程なしで多様なシラン化合物を用いてTaOxナノ粒子の表面改質を直接行った。表面が改質されていない限り、TaOxナノ粒子の表面が酸性で、縮合反応しようとする傾向があるため、TaOxナノ粒子は追加的な安定化なしで非可逆的に凝集する。多様なシラン作用基(moieties)の中からPEG−シラン及び染料接合シラン(dye-conjugated silane)を選択したが、これはこれらがそれぞれ代表的な生体適合性高分子及び蛍光プローブであるためである。前記TaOx−MEのヒドロキシル基とシラン化合物間の単純なシリカゾルゲル反応で機能化されたシリカ被覆TaOxナノ粒子が形成された。これを多重モード(multiple modality)及び/又は標的/治療機能を有する多機能画像化プラットフォームに適用することができる。
【0082】
血管造影及び組織特異的画像化などの効果的なX線CT画像化のために長期間循環する(long-circulating)ナノ粒子が要求される。細網内皮系(reticuloendothelial system)による吸収(uptake)による血流からの速い除去を回避するために、PEG−シランを防汚剤として酸化タンタルナノ粒子と結合させた。蛍光画像化のために、RITC接合アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を前記TaOxナノ粒子に付着させた。RITC接合APTES及びPEG−シランを同時に前記TaOx−MEに固定化させ、PEG及びRITCの両方が接合された酸化タンタルナノ粒子(PEG−RITC−TaOx)を製造した。前記PEG−RITC−TaOxのTEM画像(図12a)を参照すると、前記ナノ粒子が水によく分散して凝集粒子がないことが分かる。29Si NMRスペクトル結果によれば、δ〜−55ppmを中心としてT2結合位置(binding site)に対応する単一バンドが観察される。これは前記ナノ粒子の表面にPEG−シランが形成されており、シリカ粒子は形成されていないことを示す(図13a)。図12bに示すように、PEG−RITC−TaOx溶液は透明であるが、これは蛍光画像化に有利である。RITC接合TaOxは遊離RITCに匹敵するフォトルミネセンス(photoluminescence)を示すが、これは前記接合された染料が安定的で前記接合反応後にも前記染料の蛍光が維持されることを意味する。動的光散乱によって測定された前記ナノ粒子の水動力学的直径(hydrodynamic diameter、HD)は約19nmであり、これは凝集がない(図13b)ことを意味し、前記TEMデータと非常によく符合する。
【0083】
脱イオン水に分散した多様な濃度のPEG−RITC−TaOxを用いてX線CTファントム画像を得た。ハウンスフィールド単位(Hounsfield unit(HU))と呼ばれるCT数(CT number)は、前記ナノ粒子の濃度に応じて線形的に増加した(図14)。Ta原子の造影増加が、診断X線スペクトル(100keVでそれぞれ4.302及び5.158cm2/g)でAu原子の造影増加より若干小さいにもかかわらず、前記TaOxナノ粒子の測定HU値は、現在のヨウ素ベースX線造影剤の場合より一層高かった。MTT分析によれば、細胞生存率は2.4mg Ta/mLの濃度までPEG−RITC−TaOxによって阻害されなかったが(図15)、その濃度は非常に高い。細胞X線CT及び蛍光画像化を行い、PEG−RITC−TaOxの投与量に依存する吸収及び試験管内多重モード画像化能力を実証した。血清含有培地内の前記ナノ粒子の異なる濃度でマウスマクロファージ(murinemacrophage)細胞(RAW264.7)をインキュベーションすることにより、細胞内吸収を調査した。図16の共焦点レーザースキャニング顕微鏡(confocal laser scanning microscopy、CLSM)画像を参照すると、前記ナノ粒子が細胞膜陥入(endocytosis)を介してRAW264.7細胞に吸収された。ナノ粒子を吸収した後の細胞に対する蛍光画像(図17)を参照すると、赤色発光(red luminescence)がさらに強くなり、濃度増加に応じてHU値が増加した。このような蛍光及びX線CT結果は、二重モード画像化だけでなく、哺乳類細胞による前記TaOxナノ粒子の投与量に依存する吸収を示す。
【0084】
生体内X線CT画像化を行うために、PEG−RITC−TaOx(840mg/kg)をラットの尾静脈内に静脈注射した。注入前、及び注入後5分、30分、1時間、2時間、3時間及び24時間における前記ナノ粒子の分布をX線CT画像化によって追跡した(図18)。前記ナノ粒子を注入し次第、血管が増強して血液プール(blood pool)に対して空間的に描写され(spatially-described)、ボリュームレンダリング (volume-rendered)画像を得ることができた(図18c)。前記増強は3時間以上持続されたが、これは前記ナノ粒子が長期間循環することを意味する。前記ナノ粒子は脾臓と肝のマクロファージ(macrophage)により益々蓄積された。前記血管及び心臓のHU値は注入直後に最大値に到達した。その後、徐々に減少し、前記肝及び脾臓のHU値は益々増加した(表1参照)。
【0085】
【表1】
【0086】
CT画像化24時間後、前記ラットを犠牲させて切開した器官を蛍光画像化してPEG−RITC−TaOxの体内分布(biodistribution)を視覚化した。前記サンプルに対するCLSM画像を参照すると、前記ナノ粒子の大部分が肝及び脾臓から発見されたことが分かる(図19)。PEG−RITC−TaOxがこれらの器官において有害な影響又はどんな疾病を誘発するかを調べるために、2週間肝、脾臓、心臓、腎臓及び肺を含む幾つかの器官における組織学的変化を監視することにより、前記ナノ粒子の長期間毒性を調査した。PEG−RITC−TaOxを一度に(840mg/kg)注入した後、1日、3日、7日及び15日にラットを切開した。これらの器官に対するヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色の結果、前記ナノ粒子が悪影響を及ぼすという証拠が確認されていない(図20)。時間経過による肝に対する影響を把握するために、アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase、ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の血清濃度も測定した。前記1回分の注入後、前記血清濃度が一時的に増加した。その後、速く減少して3日目には定常レベルに戻ってきた(図21)。このような結果は酸化タンタルナノ粒子が肝だけでなく他の器官に対しても毒性が殆どないことを示す。
【0087】
センチネルリンパ節マッピング(sentinel lymph node mapping)は、腫瘍転移の正確な診断に非常に重要である。前記リンパ節を正確にマッピングすることにより、無駄な外科的切開を回避することができる。センチネルリンパ節へ前記造影剤を伝達するために、100μLのPEG−RITC−TaOx溶液をラットの足の真皮内に注入した。前記注入2時間後に、リンパ節の位置がX線造影の増強によって測定された(図22a)。リンパ節の切開が二重モード画像化の助けを受けることができるか否かを検査するために、まず、前記リンパ節の位置を前記ボリュームレンダリングCT画像を用いて決定した。前記位置決定の後、前記切開すべきリンパ節部位を手術中に蛍光画像化によって特定し、次いで成功的に抽出した(図22b)。前記切開されたリンパ節から、蛍光画像化によってナノ粒子を発見したが、H&E染色法による組織学的変化が観察されていない(図23)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)界面活性剤を含む有機溶媒に、水を含む水相(aqueous phase)を添加し、油中水マイクロエマルジョンを製造する段階と、
(ii)前記マイクロエマルジョンにタンタル前駆体を導入する段階と、
(iii)前記(ii)段階で得た溶液に、有機シラン基又はホスフィン基を含む表面改質剤を添加し、反応させる段階と、
(iv)前記(iii)段階の反応結果物から前記有機溶媒を除去する段階と、
(v)前記(iv)段階で得た混合物から、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を分離する段階と、を含んでなることを特徴とする、表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶媒が、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン及びトルエンよりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記水相が親水性溶媒をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記水と親水性溶媒の比率を異ならしめて酸化タンタルのサイズを調節することを特徴とする、請求項4に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記親水性溶媒が、C1−8アルコール、アセトニトリル、C1−8エーテル及びアセトンよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項4又は5に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記水相が補助界面活性剤(co-surfactant)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記水相が触媒として酸又は塩基をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記水相のpHが2以下又は13以上であることを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
前記タンタル前駆体がタンタルアルコキシド(C1〜C4)又はタンタル塩であることを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
前記表面改質剤が、トリオクチルホスフィン(trioctylphosphine、TOP)、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(methacryloxypropyltrimethoxy silane、MPTMS)、ポリエチレングリコールシラン[poly(ethylene glycol)silane]、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3-aminopropyltriethoxy silane、APS)、及びテトラエチルオルソシリケート(tetraethylorthosilicate、TEOS)よりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記表面改質剤は、前記酸化タンタルナノ粒子と結合するシラン基又はホスフィン基の他方に、生体適合性物質(biocompatible material)、有機染料(organic dye)、生体活性物質(bioactive material)、作用基、有機分子、有機金属、ナノ粒子、シェル構造、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる機能性物質が結合したものであることを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
前記生体適合性物質が、ポリビニルアルコール、ポリラクチド(polylactide)、ポリグリコリド(polyglycolide)、ポリ(ラクチド−グリコリド)共重合体[poly(lactide-co-glycolide)]、ポリアンヒドリド(polyanhydride)、ポリエステル(polyester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリビニルフルオリド(polyvinyl fluoride)、ポリビニルイミダゾール[poly(vinylimidazole)]、クロロスルホネートポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefine)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリエチレングリコール[poly(ethyleneglycole)]、デキストラン(dextran)、これらの混合物、及びこれらの共重合体よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項12に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
前記有機染料が、ローダミン、ローダミン誘導体、フルオレシン、フルオレシン誘導体、ルシフェリン、ルシフェリン誘導体、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項12に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項15】
前記生体活性物質が、生体内の標的物質と選択的に結合するタンパク質、RNA、DNA、抗体及びこれらの組み合わせから選ばれる標的指向性物質であり、或いはアポトーシス誘導遺伝子又は毒性タンパク質;蛍光物質;同位元素;光、電磁気波、放射線又は熱に感応する物質;薬理活性を示す物質、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項12に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項16】
前記(iv)段階が、60℃以下の温度で加熱することにより行われることを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項17】
前記方法が単一反応器(one-pot)内で行われることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項18】
酸化タンタルナノ粒子、及び前記酸化タンタルナノ粒子にホスフィン基又はシラン基を介して結合した機能性物質を含む、表面改質された酸化タンタルナノ粒子。
【請求項19】
前記機能性物質が、 生体適合性物質(biocompatible material)、有機染料(organic dye)、生体活性物質(bioactive material)、作用基、有機分子、有機金属、ナノ粒子、シェル構造、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項18に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子。
【請求項20】
前記表面改質された酸化タンタルナノ粒子の平均サイズが3nm〜50nmであることを特徴とする、請求項18に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子。
【請求項21】
前記酸化タンタルがTaOであることを特徴とする、請求項18に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子。
【請求項22】
酸化タンタルナノ粒子、及び前記酸化タンタルナノ粒子にホスフィン基又はシラン基を介して結合した機能性物質を含む、X線コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項23】
前記生体適合性物質が、ポリビニルアルコール、ポリラクチド(polylactide)、ポリグリコリド(polyglycolide)、ポリ(ラクチド−グリコリド)共重合体[poly(lactide-co-glycolide)]、ポリアンヒドリド(polyanhydride)、ポリエステル(polyester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリビニルフルオリド(polyvinyl fluoride)、ポリビニルイミダゾール[poly(vinylimidazole)]、クロロスルホネートポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefine)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリエチレングリコール[poly(ethyleneglycole)]、デキストラン(dextran)、これらの混合物、及びこれらの共重合体よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項22に記載のX線コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項24】
前記酸化タンタルナノ粒子の表面にシラン基又はホスフィン基を介して結合した有機染料をさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載のX線コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項25】
前記有機染料が、ローダミン、ローダミン誘導体、フルオレシン、フルオレシン誘導体、ルシフェリン、ルシフェリン誘導体、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項24に記載のX線コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項26】
前記酸化タンタルナノ粒子の表面にシラン基又はホスフィン基を介して結合した生体圧制物質をさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載のX線コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項27】
前記生体活性物質は、生体内の標的物質と選択的に結合するタンパク質、RNA、DNA、抗体及びこれらの組み合わせの中から選ばれる標的指向性物質であり、或いはアポトーシス誘導遺伝子又は毒性タンパク質;蛍光物質;同位元素;光、電磁気波、放射線又は熱に感応する物質;薬理活性を示す物質、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項26に記載のX線コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項28】
前記酸化タンタルがTaOであることを特徴とする、請求項22〜27のいずれか1項に記載のX線コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項29】
(i)界面活性剤を含む有機溶媒に、水を含む水相を添加し、油中水マイクロエマルジョンを製造する段階と、
(ii)前記マイクロエマルジョンにタンタル前駆体を導入する段階と、
(iii)前記(ii)段階で得た溶液に、有機シラン基又はホスフィン基を含む表面改質剤を添加し、反応させる段階と、
(iv)前記(iii)段階の反応結果物から前記有機溶媒を除去する段階と、
(v)前記(iv)段階で得た混合物から、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を分離する段階と、
(vi)前記分離された、表面改質された酸化タンタルナノ粒子をポリマー含有溶液に添加した後、加熱して前記溶媒を除去する段階と、を含んでなる、表面改質された酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物の製造方法。
【請求項30】
前記ポリマーが、ポリウレタン共重合体、セルロース系誘導体、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリアクリル共重合体、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリビニルアセテート共重合体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフルフリルアルコール(PPFA)、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレンオキシド共重合体、ポリプロピレンオキシド共重合体、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリカプロラクトン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルフルオリド、ポリビニリデンフルオリド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項29に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物の製造方法。
【請求項31】
前記水相が親水性溶媒をさらに含むことを特徴とする、請求項29に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物の製造方法。
【請求項32】
前記親水性溶媒が、C1−8アルコール、アセトニトリル、C1−8エーテル及びアセトンよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項31に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物の製造方法。
【請求項33】
請求項29〜32のいずれか1項の方法によって製造された、表面改質された酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物を基板上に塗布することにより製造される、高誘電薄膜。
【請求項1】
(i)界面活性剤を含む有機溶媒に、水を含む水相(aqueous phase)を添加し、油中水マイクロエマルジョンを製造する段階と、
(ii)前記マイクロエマルジョンにタンタル前駆体を導入する段階と、
(iii)前記(ii)段階で得た溶液に、有機シラン基又はホスフィン基を含む表面改質剤を添加し、反応させる段階と、
(iv)前記(iii)段階の反応結果物から前記有機溶媒を除去する段階と、
(v)前記(iv)段階で得た混合物から、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を分離する段階と、を含んでなることを特徴とする、表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶媒が、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン及びトルエンよりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記水相が親水性溶媒をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記水と親水性溶媒の比率を異ならしめて酸化タンタルのサイズを調節することを特徴とする、請求項4に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記親水性溶媒が、C1−8アルコール、アセトニトリル、C1−8エーテル及びアセトンよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項4又は5に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記水相が補助界面活性剤(co-surfactant)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記水相が触媒として酸又は塩基をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記水相のpHが2以下又は13以上であることを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
前記タンタル前駆体がタンタルアルコキシド(C1〜C4)又はタンタル塩であることを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
前記表面改質剤が、トリオクチルホスフィン(trioctylphosphine、TOP)、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(methacryloxypropyltrimethoxy silane、MPTMS)、ポリエチレングリコールシラン[poly(ethylene glycol)silane]、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3-aminopropyltriethoxy silane、APS)、及びテトラエチルオルソシリケート(tetraethylorthosilicate、TEOS)よりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記表面改質剤は、前記酸化タンタルナノ粒子と結合するシラン基又はホスフィン基の他方に、生体適合性物質(biocompatible material)、有機染料(organic dye)、生体活性物質(bioactive material)、作用基、有機分子、有機金属、ナノ粒子、シェル構造、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる機能性物質が結合したものであることを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
前記生体適合性物質が、ポリビニルアルコール、ポリラクチド(polylactide)、ポリグリコリド(polyglycolide)、ポリ(ラクチド−グリコリド)共重合体[poly(lactide-co-glycolide)]、ポリアンヒドリド(polyanhydride)、ポリエステル(polyester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリビニルフルオリド(polyvinyl fluoride)、ポリビニルイミダゾール[poly(vinylimidazole)]、クロロスルホネートポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefine)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリエチレングリコール[poly(ethyleneglycole)]、デキストラン(dextran)、これらの混合物、及びこれらの共重合体よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項12に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
前記有機染料が、ローダミン、ローダミン誘導体、フルオレシン、フルオレシン誘導体、ルシフェリン、ルシフェリン誘導体、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項12に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項15】
前記生体活性物質が、生体内の標的物質と選択的に結合するタンパク質、RNA、DNA、抗体及びこれらの組み合わせから選ばれる標的指向性物質であり、或いはアポトーシス誘導遺伝子又は毒性タンパク質;蛍光物質;同位元素;光、電磁気波、放射線又は熱に感応する物質;薬理活性を示す物質、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項12に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項16】
前記(iv)段階が、60℃以下の温度で加熱することにより行われることを特徴とする、請求項1に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項17】
前記方法が単一反応器(one-pot)内で行われることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子の製造方法。
【請求項18】
酸化タンタルナノ粒子、及び前記酸化タンタルナノ粒子にホスフィン基又はシラン基を介して結合した機能性物質を含む、表面改質された酸化タンタルナノ粒子。
【請求項19】
前記機能性物質が、 生体適合性物質(biocompatible material)、有機染料(organic dye)、生体活性物質(bioactive material)、作用基、有機分子、有機金属、ナノ粒子、シェル構造、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項18に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子。
【請求項20】
前記表面改質された酸化タンタルナノ粒子の平均サイズが3nm〜50nmであることを特徴とする、請求項18に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子。
【請求項21】
前記酸化タンタルがTaOであることを特徴とする、請求項18に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子。
【請求項22】
酸化タンタルナノ粒子、及び前記酸化タンタルナノ粒子にホスフィン基又はシラン基を介して結合した機能性物質を含む、X線コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項23】
前記生体適合性物質が、ポリビニルアルコール、ポリラクチド(polylactide)、ポリグリコリド(polyglycolide)、ポリ(ラクチド−グリコリド)共重合体[poly(lactide-co-glycolide)]、ポリアンヒドリド(polyanhydride)、ポリエステル(polyester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリビニルフルオリド(polyvinyl fluoride)、ポリビニルイミダゾール[poly(vinylimidazole)]、クロロスルホネートポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefine)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリエチレングリコール[poly(ethyleneglycole)]、デキストラン(dextran)、これらの混合物、及びこれらの共重合体よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項22に記載のX線コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項24】
前記酸化タンタルナノ粒子の表面にシラン基又はホスフィン基を介して結合した有機染料をさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載のX線コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項25】
前記有機染料が、ローダミン、ローダミン誘導体、フルオレシン、フルオレシン誘導体、ルシフェリン、ルシフェリン誘導体、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項24に記載のX線コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項26】
前記酸化タンタルナノ粒子の表面にシラン基又はホスフィン基を介して結合した生体圧制物質をさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載のX線コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項27】
前記生体活性物質は、生体内の標的物質と選択的に結合するタンパク質、RNA、DNA、抗体及びこれらの組み合わせの中から選ばれる標的指向性物質であり、或いはアポトーシス誘導遺伝子又は毒性タンパク質;蛍光物質;同位元素;光、電磁気波、放射線又は熱に感応する物質;薬理活性を示す物質、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項26に記載のX線コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項28】
前記酸化タンタルがTaOであることを特徴とする、請求項22〜27のいずれか1項に記載のX線コンピュータ断層撮影用造影剤。
【請求項29】
(i)界面活性剤を含む有機溶媒に、水を含む水相を添加し、油中水マイクロエマルジョンを製造する段階と、
(ii)前記マイクロエマルジョンにタンタル前駆体を導入する段階と、
(iii)前記(ii)段階で得た溶液に、有機シラン基又はホスフィン基を含む表面改質剤を添加し、反応させる段階と、
(iv)前記(iii)段階の反応結果物から前記有機溶媒を除去する段階と、
(v)前記(iv)段階で得た混合物から、表面改質された酸化タンタルナノ粒子を分離する段階と、
(vi)前記分離された、表面改質された酸化タンタルナノ粒子をポリマー含有溶液に添加した後、加熱して前記溶媒を除去する段階と、を含んでなる、表面改質された酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物の製造方法。
【請求項30】
前記ポリマーが、ポリウレタン共重合体、セルロース系誘導体、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリアクリル共重合体、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリビニルアセテート共重合体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフルフリルアルコール(PPFA)、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレンオキシド共重合体、ポリプロピレンオキシド共重合体、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリカプロラクトン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルフルオリド、ポリビニリデンフルオリド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項29に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物の製造方法。
【請求項31】
前記水相が親水性溶媒をさらに含むことを特徴とする、請求項29に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物の製造方法。
【請求項32】
前記親水性溶媒が、C1−8アルコール、アセトニトリル、C1−8エーテル及びアセトンよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項31に記載の表面改質された酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物の製造方法。
【請求項33】
請求項29〜32のいずれか1項の方法によって製造された、表面改質された酸化タンタルナノ粒子/ポリマーナノ組成物を基板上に塗布することにより製造される、高誘電薄膜。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
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【図18】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2013−520491(P2013−520491A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554922(P2012−554922)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国際出願番号】PCT/KR2011/001165
【国際公開番号】WO2011/105736
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(511092011)
【氏名又は名称原語表記】SNU R&DB FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】San 56−1, Sillim−dong, Gwanak−gu, Seoul 151−742 Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国際出願番号】PCT/KR2011/001165
【国際公開番号】WO2011/105736
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(511092011)
【氏名又は名称原語表記】SNU R&DB FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】San 56−1, Sillim−dong, Gwanak−gu, Seoul 151−742 Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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