説明

表面改質微粒子を含むマイクロエンカプセルならびに、その形成および使用の方法

微粒子は、活性薬剤の制御送達および/または制御放出をはじめとする多様な用途に使用されている。活性薬剤の放出プロファイルを制御または改変することで、レシピエントの血流中での活性薬剤のレベル(例えば治療レベル)を延長したり、薬物動態や薬物力学を改善したり、レシピエントに多大な恩恵をもたらすことができる。本開示は、1つ以上の活性薬剤を含む微粒子と、対象へのそのような微粒子の送達方法とに関する。非晶質マトリックスにカプセル化された複数の予め形成された微粒子を有するカプセル化粒子であって、予め形成された微粒子の少なくとも1つは、コア微粒子および、そのコア微粒子の外表面に結合する単層を有する。コア微粒子は、カプセル化粒子から放出されうる少なくとも1つの活性薬剤を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願への相互参照)
2006年10月6日に出願された米国仮特許出願第60/828,507号および2006年11月1日に出願された米国仮特許出願第60/863,901号の米国特許法のもとでの利益がここに主張され、米国仮特許出願第60/828,507号および米国仮特許出願第60/863,901号は参考として本明細書中に援用される。
【0002】
本開示は、一般的に、1つ以上の活性薬剤を含む微粒子と、対象へのそのような微粒子の送達方法とに関する。より具体的には、本開示は、マイクロエンカプセルを形成するためにマトリックスにさらにカプセル化された表面改質微粒子に関する。本開示はさらに、そのようなマイクロエンカプセルを作製し使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
微粒子は、活性薬剤の制御送達および/または制御放出をはじめとする多様な用途に使用されている。所望であれば、活性薬剤の放出プロファイルを制御または改変することで、レシピエントの血流中での活性薬剤のレベル(例えば治療レベル)を延長したり、薬物動態や薬物力学を改善したり、レシピエントに多大な恩恵をもたらすことができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、一般的に、マイクロエンカプセルのような粒子を作製するための方法に関する。一実施例では、この方法は、少なくとも1つの活性薬剤を含む予め形成された微粒子を提供するステップを含む。予め形成された微粒子は、正味表面電荷を帯びた外表面を有する。この方法は、予め形成された微粒子の少なくとも外表面を、予め形成された微粒子の外表面の正味表面電荷と符号が反対の正味電荷を有する、少なくとも1つの荷電化合物に曝露するステップをさらに含む。予め形成された微粒子の外表面と単層が結合している、荷電化合物の単層が形成される。この方法は、マイクロエンカプセルを形成するために、1つ以上の表面改質微粒子をカプセル化するステップをさらに含む。
【0005】
本開示は、活性薬剤を含む微粒子を形成するステップと、形成された微粒子上に少なくとも1つの荷電化合物を含む単層を形成するステップにより、表面改質微粒子を作製するステップと、およびマイクロエンカプセルを形成するために、1つ以上の表面改質微粒子を、固体の非晶質微粒子と場合により組み合わせてカプセル化するステップとによって、マイクロエンカプセルを作製するための方法にも関する。マイクロエンカプセルは、その内部にカプセル化された表面改質微粒子の放出プロファイルとは異なり、その内部のコア微粒子の放出プロファイルともさらに異なるin vitroおよび/またはin vivo放出プロファイルを有する。
【0006】
本開示は、表面改質とマイクロカプセル化の複合効果からは予想外のものである、その内部の活性薬剤のin vitroおよび/またはin vivo放出での初期バーストの相乗的な減少を示すマイクロエンカプセルをさらに説明する。マイクロエンカプセルは、表面改質とマイクロカプセル化の組み合わせによって有害な影響を受けない長時間放出および/または持続型放出プロファイルをさらに示す。
【0007】
本開示は、予め形成された微粒子が正味表面電荷を持つ外表面を有する、少なくとも1つの活性薬剤を含む予め形成された微粒子を提供するステップと、予め形成された微粒子の正味表面電荷と符号が反対の正味電荷を持つ少なくとも1つの荷電化合物に、予め形成された微粒子の少なくとも外表面をさらに曝露するステップとを含む、マイクロエンカプセルを作製するための方法にも関する。予め形成された微粒子と、少なくとも1つの荷電化合物を含む形成された単層とを含む中間微粒子が形成され、この形成された単層は、予め形成された微粒子の外表面と結合している。次に、中間微粒子と、少なくとも1つの異なる荷電化合物を含む次の単層とを含む表面改質微粒子を形成するため、この形成された単層は少なくとも1つの異なる荷電化合物に曝露され、これによって、中間微粒子の放出プロファイルとは異なる、少なくとも1つの活性薬剤の放出プロファイルを表面改質微粒子が有する。その後、1つ以上の表面改質微粒子および/または1つ以上の予め形成された微粒子が、カプセル化されてマイクロエンカプセルとなる。マイクロエンカプセルは、表面改質微粒子のそれとは異なるin vitroおよび/またはin vivo放出プロファイルを有する。
【0008】
本開示は、非晶質マトリックスにカプセル化された複数の予め形成された微粒子を含むマイクロエンカプセルにも関する。予め形成された微粒子は、コア微粒子と、そのコア微粒子の外表面と結合した単層とを含む。コア微粒子は、マイクロエンカプセルから放出されうる少なくとも1つの活性薬剤を含む。
【0009】
本開示は、非晶質マトリックスにカプセル化された複数の予め形成された微粒子を含むマイクロエンカプセルにも関する。予め形成された微粒子は、コア微粒子と、場合によりそのコア微粒子を非晶質マトリックスから分離する1つ以上の単層とを含む。コア微粒子は、マイクロエンカプセルから放出されうる少なくとも1つの活性薬剤を含む。
【0010】
本開示は、重量で少なくとも1つの活性薬剤の80%以上であるコア微粒子を含むマイクロエンカプセルにも関する。このコア微粒子の外表面は、選択された正味表面電荷を持つ。それとの結合を可能にするために、コア微粒子の外表面の表面電荷とは十分に異なる正味表面電荷を持つ少なくとも1つの荷電化合物の単層は、限定されないが、少なくとも外表面との静電相互作用によってコア微粒子の外表面と結合している。表面改質微粒子および/またはコア微粒子の1つ以上が、1つ以上のポリマーのマトリックスにカプセル化される。
【0011】
本開示は、少なくとも1つの活性薬剤の重量で少なくとも5%、例えば重量で10%、20%、50%、またはそれ以上を含み、選択されたpHおよび温度における適当な緩衝液中でのin vitro放出条件下におかれた場合、10%以下、例えば5%以下の活性薬剤の1時間の累積放出割合を示す、マイクロエンカプセルにも関する。マイクロエンカプセルは、同じin vitro放出用緩衝液において、10%以下、例えば5%以下の24時間の累積放出割合を示しうる。マイクロエンカプセルは、そのin vitro放出プロファイルとは相関しないin vivo放出プロファイルを有しうる。マイクロエンカプセルは、in vivo投与に適している。そのような投与の際には、マイクロエンカプセルは、その内部にカプセル化された表面改質微粒子のCmaxおよびtmaxと異なり、その表面改質微粒子内のコア微粒子のCmaxおよびtmaxと異なる、Cmaxおよびtmaxを提供する。
【0012】
上述のマイクロエンカプセル、マイクロエンカプセルの作製方法、およびマイクロエンカプセルからの活性薬剤の放出を制御するための方法の詳細を以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】様々な製剤の微粒子およびマイクロエンカプセルのin vitro放出プロファイルを示すグラフである(実施例1)。
【図2】様々な製剤の微粒子およびマイクロエンカプセルのin vivo放出プロファイルを示すグラフであり(実施例1)、右側のグラフは左側のグラフの一部分であり、およそ25時間の放出を示す。
【図3】様々な製剤の微粒子およびマイクロエンカプセルのin vitro放出プロファイルを示すグラフである(実施例2)。
【図4】様々な製剤の微粒子およびマイクロエンカプセルのin vivo放出プロファイルを示すグラフであり(実施例2)、右側のグラフは左側のグラフの一部分であり、およそ25時間の放出を示す。
【図5】コーティング微粒子および非コーティング微粒子の混合物を含むマイクロエンカプセルのin vitro放出プロファイルを示すグラフである。
【図6】本開示で説明される代表的な方法を概略的に表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において別段の定めがない限り、本開示で用いられる科学用語および技術用語は、当業者が一般に理解し、使用する意味を持つものである。文脈による別段の求めがない限り、単数形の語句はその語句の複数形も含むものであり、複数形の語句は単数形を含むものであることが理解されるであろう。具体的には、本明細書および請求項で用いられる場合、文脈による明らかな別段の指示がない限り、単数形“ある”は複数の指示対象を含む。故に、例えば、ある特定の微粒子への言及は、1つのそのような微粒子または複数のそのような微粒子への言及であり、当業者に既知のその等価物を含む。また、本明細書および請求項で使用される場合、語句“少なくとも1つの”および“1つ以上の”は同じ意味を持ち、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上を含む。別段の記載がない限り、以下の語句は、本開示の文脈において用いられる場合は、以下の意味を持つものとして理解されるものである。
【0015】
“活性薬剤”は、直接または間接的に、1つ以上の物理的、化学的、および/または生物学的効果をin vitroおよび/またはin vivoにおいて誘発しうる、天然、合成、または半合成の物質(例、化合物、発酵物、抽出物、細胞構造)を意味する。活性薬剤は、例えば、寄生生物を死滅させることによって、または宿主もしくは寄生生物の生理機能を実質的に変化させることで病気もしくは異常の効果を制限することによって、生体の異常な状態および/または病的状態を予防、緩和、治療、および/または治癒する能力を有していてよい。活性薬剤は、身体の生理学的機能を維持、増大、低下、制限、または破壊する能力を有していてよい。活性薬剤は、生理学的症状または状態を、in vitroおよび/またはin vivoでの検査によって診断する能力を有していてよい。活性薬剤は、動物または微生物を引き付ける、機能を失わせる、抑制する、死滅させる、改変する、追い払う、および/または阻止することによって、環境または生体を制御または保護する能力を有していてよい。活性薬剤は、その他の方法で身体を治療する(例えば脱臭、保護、装飾、身繕い)能力を有していてよい。効果および/またはその用途に応じて、活性薬剤は、生物活性薬剤、医薬品(例えば予防薬、治療薬)、診断薬、栄養補給剤、および/または化粧剤とさらに呼ばれてよく、プロドラッグ、親和性分子、合成有機分子、ポリマー、低分子量分子(例えば分子量が2kD以下、例えば1.5kD以下、または1kD以下のもの)、高分子(例えば分子量が2kD以上、好ましくは5kD以上のもの)、タンパク性化合物、ペプチド、ビタミン、ステロイド、ステロイドアナログ、脂質、核酸、炭水化物、これらの前駆体、およびこれらの誘導体が含まれるがこれらに限定されない。活性薬剤はイオン性または非イオン性であってよく、中性のもの、正電荷を持つもの、負電荷を持つもの、または双性イオン性のものであってよく、単独で、またはその2つ以上の組み合わせで使用されてよい。活性薬剤は水に不溶であってよいが、より好ましくは水溶性である。活性薬剤は、等電点が7.0以上であってよいが、等電点は好ましくは7.0未満である。
【0016】
“微粒子”は、固体の(実質的に固体または半固体のものを含むが、ゲル、液体、および気体は除く)、平均幾何学的粒子径(直径と呼ばれる場合もある)が1mm未満、好ましくは200ミクロン以下、より好ましくは100ミクロン以下、最も好ましくは10ミクロン以下である、粒子状物質を意味する。一実施例では、粒子径は、0.01ミクロン以上であってよく、好ましくは0.1ミクロン以上であってよく、より好ましくは0.5ミクロン以上であってよく、最も好ましくは0.5ミクロン〜5ミクロンであってよい。平均幾何学的粒子径は、動的光散乱法(例えば、光子相関分光法、レーザー回折法、小角レーザー光散乱法(LALLS)、中角レーザー光散乱法(MALLS)、遮光法(例えばコールター解析法)、またはその他の方法(例えば、レオロジー、光学顕微鏡法、または電子顕微鏡法)によって測定されてよい。肺内送達用の粒子は、飛行時間測定法またはアンダーセンのカスケードインパクター測定法によって決定される、空気力学的な粒子径を持つことになる。微粒子は、球状であってよい(マイクロスフェアと呼ばれる場合がある)および/またはカプセル化されていてよい(マイクロエンカプセルと呼ばれる場合がある)。特定の微粒子は、内部に1つ以上の空隙および/または空洞を有していてよい。その他の微粒子は、そのような空隙または空洞がなくてよい。微粒子は多孔性であってよく、または好ましくは多孔性ではない。微粒子は、部分的にまたは全体が、1つ以上の限定されない材料、例えば本明細書で開示される活性薬剤、担体、ポリマー、安定化剤、および/または錯化剤から形成されてよい。
【0017】
“タンパク性化合物”は、タンパク質の天然、合成、半合成、または組み換え化合物を意味する、またはタンパク質と構造的におよび/または機能的に関連がある、天然、合成、半合成、または組み換え化合物を意味し、例えば、ペプチド結合を介して共有結合しているαアミノ酸を含有する、またはそのようなαアミノ酸のみから実質的になるものである。限定されないタンパク性化合物には、球状たんぱく質(例、アルブミン、グロブリン、ヒストン)、繊維性タンパク質(例、コラーゲン、エラスチン、ケラチン)、化合物タンパク質(1つ以上の非ペプチド化合物を含有するもの、例、糖タンパク質、核タンパク質、ムコタンパク質、リポタンパク質、金属タンパク質)、治療用タンパク質、融合タンパク質、レセプター、抗原(例えば、合成または組み換え抗原)、ウイルス表面タンパク質、ホルモンおよびホルモンアナログ、抗体(例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)、酵素、Fab断片、環状ペプチド、直鎖ペプチドなどが含まれる。限定されない治療用タンパク質には、骨形態形成タンパク質、薬剤耐性タンパク質、トキソイド、エリスロポエチン、血液凝固カスケードのタンパク質(例、第VII因子、第VIII因子、第IX因子など)、サブチリシン、オボアルブミン、α‐1‐アンチトリプシン(AAT)、DNase、スーパーオキシド・ジスムターゼ(SOD)、リゾチーム、リボヌクレアーゼ、ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼ、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン、インスリン、インスリン様成長因子、インターフェロン、グラチラマー、顆粒球‐マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、デスモプレシン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト(例、ロイプロリド、ゴセレリン、ブセレリン、ゴナドレリン、ヒストレリン、ナファレリン、デスロレリン、フェルチレリン、トリプトレリン)、LHRHアンタゴニスト、バソプレシン、シクロスポリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモンペプチド、グルカゴン様ペプチド、およびこれらのアナログが含まれる。タンパク性化合物は、中性のもの、正電荷を持つもの、負電荷を持つもの、または双性イオン性のものであってよく、単独で、またはこれらの2つ以上の組み合わせで用いられてよい。
【0018】
“核酸”は、同一のヌクレオチドもしくは異なるヌクレオチドの2つ以上から少なくとも部分的に形成された、天然、合成、半合成、または組み換え化合物を意味し、一本鎖または二本鎖であってよい。核酸の非限定例には、オリゴヌクレオチド(例えば、塩基対が20以下のもの、例、センス、アンチセンス、またはミスセンス)、アプタマー、ポリヌクレオチド(例、センス、アンチセンス、またはミスセンス)、DNA(例、センス、アンチセンス、またはミスセンス)、RNA(例、センス、アンチセンス、またはミスセンス)、siRNA、ヌクレオチド酸構築物、これらの一本鎖または二本鎖セグメントのみならず、これらの前駆体および誘導体(例、グリコシル化されたもの、高度にグリコシル化されたもの、PEG化されたもの、FITC標識化されたもの、ヌクレオシド、これらの塩)が含まれる。核酸は、中性のもの、正電荷を持つもの、負電荷を持つもの、または双性イオン性のものであってよく、単独で、またはこれらの2つ以上の組み合わせで用いられてよい。
【0019】
“高分子”は、三次元(例、三次および/または四次)構造を提供しうる物質を意味し、本開示の担体および特定の活性薬剤を含む。微粒子を形成するために用いられる限定されない高分子には、とりわけ、ポリマー、コポリマー、タンパク性化合物(本明細書で定義されるようなもの、例えば、タンパク質、例えば酵素、組み換えタンパク質、ヒト血清アルブミンなどのアルブミン、ならびにペプチドが含まれる)、脂質、炭水化物、多糖、核酸、ベクター(例、ウイルス、ウイルス粒子)、これらの錯体または複合体(例、共有結合および/または非共有結合によるものであり、炭水化物‐タンパク質複合体のような2つの高分子間のもの、ハプテン‐タンパク質複合体のような活性薬剤と高分子間のものであり、活性薬剤は、三次および/または四次構造を与えられても、または与えられなくてもよい)、およびこれらの2つ以上の混合物が含まれ、好ましくは分子量が1,500以上である。高分子は、中性のもの、正電荷を持つもの、負電荷を持つもの、または双性イオン性のものであってよく、単独で、またはこれらの2つ以上の組み合わせで用いられてよい。
【0020】
“球状の”は、少なくとも“実質的に球状”である幾何学的形状を意味する。“実質的に球状の”は、幾何学的中心を通る任意の断面上の最長の長さ(すなわち、その形状の幾何学的中心を通って結ぶことができる外周上の2点間の距離)の最短の長さに対する比が、約1.5以下である、好ましくは1.33以下である、より好ましくは1.25以下であることを意味する。球状は、対称軸を必要としない。さらに、微粒子は表面テクスチャリング(例えば、微粒子の外形寸法と比較して小さな、連続するまたは不連続の線、アイランド、格子、くぼみ、チャンネル開口、隆起)を有しつつも、球状であってよい。球状である微粒子では、それらの間の表面接触は最小化され、これによって微粒子の望ましくない凝集が最小限に抑えられる。これに対して、結晶またはフレークである微粒子は典型的に、相対的に大きな平面におけるイオン相互作用および/または非イオン相互作用を介して著しい凝集を示す。
【0021】
“単分散の粒度分布”は、10パーセンタイルの体積径(すなわち、最も小さい10%の微粒子の平均粒子径)に対する、90パーセンタイルの体積径(すなわち、最も大きい10%の微粒子の平均粒子径)の比が約5以下である、好ましくは約3以下である、より好ましくは約2以下である、最も好ましくは約1.5〜1である、好ましい微粒子の粒度分布を意味する。その結果、“多分散の粒度分布”は、上述の径の比が、5より大きい、好ましくは8より大きい、より好ましくは10より大きいものを意味する。多分散の粒度分布を持つ微粒子では、小さい微粒子は、大きな微粒子の間の隙間に入ってもよく、故に、大きな接触面と、その間の著しい凝集を示す可能性がある。単分散の粒度分布を示すのに、2.5以下の、好ましくは1.8以下の幾何標準偏差(GSD)も用いられてよい。GSDの計算は既知であり、当業者に理解されるものである。
【0022】
“非晶質な”は、“実質的に非晶質”である材料および構造、例えば、複数の非晶質ドメインを有する(または全体に結晶化度を欠く)あるいは逆に非晶質である微粒子を意味する。本開示の実質的に非晶質な微粒子は通常、結晶格子が体積でおよび/または重量で微粒子の50%未満を構成する、または結晶格子が存在しない、ランダムな固体粒子状物質であり、当業者に理解されるような半結晶微粒子および非結晶微粒子が含まれる。
【0023】
“固体の”は、少なくとも実質的に固体および/または半固体のものを含むが、ゲル、液体、および気体を含まない状態を意味する。
【0024】
“予め形成された微粒子”は、当業者に既知のもののような1つ以上の限定されない方法を用いて、本明細書で説明されるような表面改質なしで作製され、その外表面上に、正の、負の、または中性の正味表面電荷を有する、または有することができる微粒子を意味する。予め形成された微粒子は、本明細書では“コア微粒子”または“コア”とも呼ぶ。予め形成された微粒子またはコア微粒子は典型的に、1つ以上の活性薬剤と、場合により1つ以上の担体とを有し、これは独立して予め形成された微粒子またはコア微粒子の一部分に区分化されてよい、または好ましくは予め形成された微粒子全体に実質的に均質に分散してよい。好ましくはゼロではない正味表面電荷は、主に、または少なくとも実質的に、予め形成された微粒子中に存在する(1つまたは複数の)活性薬剤および/または(1つまたは複数の)任意の担体によってもたらされてよい。
【0025】
“担体”は、三次元構造(三次および/または四次構造を含む)を提供するという主な役割を持つある化合物、典型的には高分子を意味する。担体は、上述のように微粒子を形成する上で、活性薬剤と結合していなくてよい、または結合していてよい(例えば、その複合体または錯体)。担体は、その他の役割をさらに提供してよく、例えば活性薬剤であること、微粒子からの活性薬剤の放出プロファイルを変化させること、および/または1つ以上の特定の特性を微粒子に与えること(例えば、少なくとも部分的に正味表面電荷に寄与する)などがある。一実施例では、担体は、分子量が1500ダルトン以上のタンパク質(例えば、アルブミン、好ましくはヒト血清アルブミン)である。
【0026】
“ポリマー”または“ポリマー性”は、主鎖または環状構造中に2つ以上の繰り返しモノマー単位を持つ、天然、合成、または半合成分子を意味する。ポリマーは広義には、ダイマー、トリマー、テトラマー、オリゴマー、高分子量ポリマー、付加物、ホモポリマー、ランダムコポリマー、擬コポリマー、統計コポリマー、交互コポリマー、周期コポリマー、2元重合体、3元重合体、4元重合体、コポリマーのその他の形態、これらの置換誘導体、およびこれらの混合体を含み、狭義には、10以上の繰り返しモノマー単位を有する分子を意味する。ポリマーは、線状、分岐、ブロック、グラフト、単分散、多分散、規則性、不規則性、タクチック、イソタクチック、シンジオタクチック、立体規則性、アタクチック、ステレオブロック、単条、複条、星型、櫛型、樹枝状、および/またはイオノマー性であってよく、イオン性のものまたは非イオン性のものであってよく、中性のもの、正電荷を持つもの、負電荷を持つもの、または双性イオン性のものであってよく、単独で、またはこれらの2つ以上の組み合わせで用いられてよい。
【0027】
“荷電した”および“電荷を持つ”は、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の、同じ符号のまたは反対の符号の形式上の単位の電荷を与える能力および/またはそのような電荷の存在を互換可能に意味する(すなわち、“荷電した”は、荷電性である、および/または荷電したものを意味する)。電荷は、好ましくは特定の条件(例えば、溶液中または懸濁液中)下に置かれた場合、目的とする化合物(例、高分子電解質、タンパク質)または構造(例、予め形成された微粒子、単層)中において、同じまたは異なる有機および/または有機金属部分(例、イオン基、イオン性基、これらの前駆体)の1つ以上の形態によって提供される、および/またはその形態で存在していてよい。
【0028】
“荷電化合物”および“電荷を帯びた化合物”は、上述のように荷電した単一の化合物、または結合していない形態および/または結合した形態の2つ以上の異なる化合物の組み合わせ(例、複合体、凝集体、および/またはこれらの錯体)を互換可能に意味し、これらはそれぞれ、独立して同じ符号の正味電荷を有する、および/または同じ符号の正味電荷を有する能力を持つ。
【0029】
“単層”は、1つ以上の化合物(例えば、上述のような荷電化合物)の組成から、三次元の基質上に形成される単一の層を意味する。単層は、連続性であって多孔性でない単層、連続性であって多孔性の単層(例えば格子ネットワーク)、複数の不連続要素(例、アイランド、ストリップ、クラスター等)の連続性でない単層、またはこれらの組み合わせであってよい。典型的には、その単層がデポジットされる活性薬剤の(微粒子からの)非拡散性放出を可能にするために、単層は、分解可能なものまたは、例えば生体分解性のもの、酵素的または加水分解的に分解可能なものなどである。単層は、厚さが100nm以下であってよく、好ましくは50nm以下であってよく、より好ましくは20nm以下であってよく、最も好ましくは10nm以下であってよい。一実施例では、単層は荷電化合物の自己集合によって形成される。
【0030】
“飽和した単層”は、単層が形成される一連の同じ条件下におかれた場合に、累積して、さらなる量の単層を形成する組成をさらに含むことができない、上記で定めたような単層を意味する。飽和した単層は、表面改質微粒子に使用するのに好ましい単層である。
【0031】
“正味荷電”および“正味の電荷”は、互換可能に使用され、例えば特定の条件下における流動性の媒体中において(好ましくは特定のpHの溶液中で)、ある荷電化合物が有しうる、または有する、全ての形式上の単位の電荷の合計を意味する。正味電荷は、正、負、またはゼロ(例えば双性イオン化合物)であってよく、条件依存性である(例、溶媒、pH)。
【0032】
“正味表面電荷”および“正味の表面電荷”は互換可能に使用され、三次元構造(例、微粒子、単層)の最も外側の表面の全累積荷電を意味する。正味表面電荷は、正、負、またはゼロであってよく、条件依存性である(例、溶媒、pH)。
【0033】
“周囲温度”は、室温前後の温度を意味し、典型的には約20℃〜約40℃の範囲である。
【0034】
“治療薬”は、対象における病弊、苦痛、病気、または傷害の治療(予防、診断、緩和、抑制、鎮静、または治癒を含む)に有用な、あらゆる医薬品、薬、予防薬、造影剤、または色素を意味する。治療上有用なペプチドおよび核酸は、語句“医薬品”または“薬”の意味の範囲に含まれてよい。
【0035】
“診断薬”は、正常または異常な生物学的症状または状態を知覚的に観察する(例、画像化)ため、または病原体もしくは病的状態の有無を検出するための方法に関連して有用な、あらゆる材料または物質を意味する。限定されない診断薬には、放射線画像法(例、X線画像法)、超音波画像法、磁気共鳴画像法、コンピューター断層撮影法、ポジトロン放射断層撮影法などに関連して使用するための造影剤および色素が含まれる。診断薬には、画像化手法が用いられるかどうかにかかわらず、in vivoおよび/またはin vitroでの診断を容易にするのに有用な任意のその他の物質がさらに含まれる。
【0036】
“架橋”、“架橋した”、および“架橋している”は通常、本明細書で開示されるもののいずれかを含む、2つ以上の材料および/または物質の、1つ以上の共有結合および/または非共有(例、イオン性)結合を介した結合を意味する。架橋は、自然に達成されてよい(例、シスチン残基のジスルフィド結合)、または、例えば、場合により1つ以上の架橋剤(すなわち、それ自身が、2つ以上の材料/物質YおよびZと反応することができ、架橋産物Y‐X‐Zを形成しうる分子Xであり、Y‐XおよびX‐Zの結合は独立して共有結合および/または非共有結合である)、開始剤(すなわち、それ自身が、遊離基などの、架橋反応のための反応種を提供しうる分子、例えば、熱分解可能な開始剤、例えば有機過酸化物、アゾ開始剤、および炭素‐炭素開始剤、化学線分解可能な開始剤、例えば各種波長の光開始剤)、活性剤(すなわち、第1の材料/物質Yと反応して、活性化中間体[A‐Y]を形成しうる分子Aであり、次に第2の材料/物質Zと反応して架橋産物Y‐Zを形成するが、Aはこのプロセスの間に化学的に変化する、または消費される)、触媒(すなわち、プロセスの間に化学的に修飾されることなく、架橋反応の反応速度を改変しうる分子)、共架橋剤(すなわち、開始剤、活性剤、および/または触媒の1つ以上と共存する場合、架橋反応の反応速度を改変しうる、および/または2つ以上の材料/物質の架橋産物に組み込まれるが、その他の点ではその材料/物質に対して反応性をもたない分子)、および/またはエネルギー源(例、加熱、冷却、電磁放射、電子ビーム放射、および放射線などの高エネルギー放射線、超音波放射などの音響放射等)の存在下で、合成経路または半合成経路によって達成されてよい。
【0037】
“共有結合”は、2つの原子の結合軌道内での電子の共有を伴う、2つ以上の個々の分子間の分子間相互作用(例、結合)を意味する。
【0038】
“非共有結合”は、共有結合を伴わない、2つ以上の個々の分子間の分子間相互作用を意味する。分子間相互作用は、例えば、個々の分子の極性、電荷、および/または他の特性に依存し、静電(イオン性)相互作用、双極子‐双極子相互作用、ファンデルワールス力、およびこれらの2つ以上の組み合わせを限定含むが、これらに限定されない。
【0039】
“静電相互作用”は、正電荷または負電荷を持つ2つ以上の部分/基の間の分子間相互作用を意味し、これらは、2つが反対の電荷を持つ場合は引き合う(すなわち、1つが正で、もう1つは負)、2つの電荷が同じ符号の場合は反発しあう(すなわち、2つとも正または2つとも負)、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0040】
“結合している”および“結合した”は通常、異なる材料(典型的には、微粒子の一部であるもの)、そのような材料の1つ以上と微粒子の1つ以上の構造(またはその一部)、および微粒子の異なる構造(またはその一部)の間の1つ以上の相互作用、および/またはそれらの取り込みを意味する。微粒子の材料には、イオン、例えば本明細書で開示される一価および多価イオンだけでなく、化合物、例えば本明細書で開示される活性薬剤、安定化剤、架橋剤、荷電化合物または非荷電化合物、各種ポリマー、ならびにこれらの2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。微粒子およびその一部の構造には、コア、コア微粒子、予め形成された微粒子、単層、中間微粒子、表面改質微粒子、そのような構造の一部分(例えば外表面、内面)、そのような構造間のドメインおよびその一部、ならびにこれらの2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。可逆性または不可逆性で、転位性または非転位性の各種結合は、単独で、またはこれらの2つ以上の組み合わせで存在してよい。限定されない結合には、共有結合および/または非共有結合(例、共有結合、イオン性相互作用、静電相互作用、双極子‐双極子相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、架橋、および/または他の任意の相互作用)、層/膜へのカプセル化、中心もしくはベシクルまたは2つの層/膜の間への区分化、微粒子またはその一部分全体への均質な組み込み(例、中心または層またはベシクルまたはその内面および/または外表面への組み込み、接着、および/または付加、異なる材料間の散在、共役、および/または錯化)が限定されずに含まれる。
【0041】
“制御放出”は、ある活性薬剤の、その活性薬剤の天然の状態での放出プロファイルと比較した、予め定められたin vivoおよび/またはin vitro放出(例、溶解)プロファイルを意味する。活性薬剤は、その放出速度(例、初期バースト、規定された時間または相の間の量および/または速度、規定された時間の間の累積量、全ての放出にかかる時間の長さ、パターンおよび/またはプロファイル等)が増加する、低下する、短縮する、延長する、および/または他に望ましく変化するよう、本明細書で開示されるように、好ましくは微粒子またはそのような微粒子を含む組成物または製剤と結合している。制御放出の非限定例には、個々に起こる、これらの2つ以上の組み合わせで起こる、またはこれらの1つ以上がない状態(例、初期バーストがない長時間放出または持続型放出)で起こる、即時/瞬間放出(すなわち、初期バーストまたは急激な放出)、長時間放出、持続型放出、延長放出、遅延放出、調節放出、および/または標的放出が含まれる。
【0042】
“長時間放出”は、好ましくは、本明細書で開示するように、微粒子またはそのような微粒子を含む組成物または製剤と結合しているある活性薬剤の、その活性薬剤の天然の状態での自由な水拡散時間よりも長い期間にわたる放出を意味する。長時間放出の期間は、数時間(例、少なくとも約1、2、5、または10時間)、数日間(例、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、10、15、20、30、40、45、60、または90日間)、数週間(例、少なくとも約1、2、3、4、5、6、10、15、20、30、40、または50週間)、数ヶ月(例、少なくとも約1、2、3、4、6、9、または12ヶ月間)、約1年以上、またはこれらの期間の任意の2つの間の範囲であってよい。長時間放出のパターンは、連続的、定期的、散発的、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0043】
“持続型放出”は、機能的に有意なレベルのある活性薬剤(すなわち、その活性薬剤の所望の機能をもたらしうるレベル)が、長時間放出の期間のあらゆる時点で存在し、好ましくは連続的および/または均一な放出パターンを持つような、活性薬剤の長時間放出を意味する。持続型放出プロファイルの非限定例には、放出時間(x軸)対累積放出(y軸)のプロットで表したときに、直線状の、段階的な、ジグザグな、曲線状の、および/または波状の、少なくとも1つの上昇するセグメントを1時間以上の時間にわたって示すものが含まれる。
【0044】
実施例の実施以外で、または明らかな別段の定めがない限り、数値域、量、値、およびパーセンテージ、例えば、材料の量、時間、温度、反応条件、量の比率、分子量の値(数平均分子量Mまたは重量平均分子量Mかどうかにかかわらず)、および本明細書で開示される他のものに関するものの全ては、全ての場合において語句“約”によって修飾されていると理解される必要がある。従って、そうでない旨の記載がない限り、本開示および添付の請求項に記載される数値パラメーターは近似値であり、変動してよい。いずれにせよ、それぞれの数値パラメーターは少なくとも、報告された有意な数字の数を考慮して、また、通常の丸め技法を適用することによって解釈される必要がある。
【0045】
本開示の広い範囲を示す数値域およびパラメーターが近似値であったとしても、特定の実施例に記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、あらゆる数値は本来、それらのそれぞれの試験測定値に認められる標準偏差に起因するある程度の誤差を必ず含む。さらに、変動する範囲の数値域が本明細書で説明される場合は、列挙された値を含むこれらの値のあらゆる組み合わせが用いられてよいことを意図する。
【0046】
“から形成された”および“で形成される”は、オープン・ランゲージを示す。そのようなものとして、列挙された成分のリスト“から形成された”または“で形成された”組成物は、少なくともこれらの列挙された成分を有する組成物であり、これはその組成物の製剤化の際にその他の列挙されていない成分をさらに含みうることを意図する。
【0047】
本明細書で提供される例は、“例えば”および“例、”の後に続くものを含めて、本開示の各種態様とその実施形態の一例に過ぎず、具体的にそれらに限定されるものではないと考えられる。当業者に既知の、および/または当業者が利用可能な、それらのあらゆる適当な等価物、代替物、および改変形(材料、物質、構築物、組成物、製剤、手段、方法、条件等を含む)が、本明細書で開示されるものの代わりに、またはそれらとの組み合わせで使用または実施されてよく、本開示の範囲に含まれると考えられる。
【0048】
一実施例では、本開示の表面改質微粒子のそれぞれは、好ましくは、少なくともその外表面において、少なくとも1つの荷電化合物を含有する少なくとも1つの単層と結合している、非晶質(例、結晶構造がないもの等)な固体の予め形成された微粒子を含む。予め形成された微粒子は、少なくとも1つの活性薬剤および/または分子量が4,500ダルトン以上の少なくとも1つの高分子を含む。高分子は、活性薬剤であってよい、または活性薬剤とは異なっていてもよい。高分子は、担体、安定化剤、または錯体化剤(例、タンパク性化合物、高分子電解質)であってよい。活性薬剤および/または高分子は、重量で、予め形成された微粒子の40%〜100%以下を構成してよく、典型的には少なくとも80%、例えば90%以上、または95%以上を構成してよい。好ましくは、活性薬剤および/または高分子は、コア微粒子全体に均質に分布している。予め形成された微粒子の外表面は正味表面電荷を有し、これは、外表面が活性薬剤および/または高分子で形成されている場合は特に、少なくとも部分的には、より典型的には大部分が、活性薬剤および/または高分子によるものである。予め形成された微粒子は、共有結合架橋、ハイドロゲル、脂質、および/またはカプセル化を含まなくてよい。あるいは、予め形成された微粒子は、1つ以上の荷電化合物、共有結合架橋、および/またはカプセル化を含んでよい。予め形成された微粒子中の1つ以上の荷電化合物は、その予め形成された微粒子全体に均質に分布していてよい、またはその特定の部分、例えば層内に区分化されていてもよい。予め形成された微粒子の粒子径は、好ましくは10μm以下であってよく、単分散または多分散の粒度分布を有していてよい。
【0049】
予め形成された微粒子を予め形成する方法は特に限定されず、開示内容全体が参考として本明細書で援用される、米国特許第6,458,387号および米国特許出願公開第2005/0142206号に開示されるものが含まれる。一実施例では、単一の流動性の連続位相系(例えば液体、気体、または血漿、好ましくは溶液または懸濁液)は、1つ以上の活性薬剤、媒体、および1つ以上の相分離促進剤(PSEA)を含有するように処方される。媒体は、好ましくは液体溶媒(例、親水性または疎水性有機溶媒、水、緩衝液、水性混和性有機溶媒、およびこれらの2つ以上の組み合わせ)であり、より好ましくは水性溶媒または水性混和性溶媒である。活性薬剤およびPSEAは独立して、媒体中に溶解され、懸濁され、または他の方法で均質に分布されてもよい。流動系を特定の条件下(例えば、媒体中の活性薬剤の相転移温度よりも低い温度)におく場合、活性薬剤は液相‐固相分離を経て、不連続の、好ましくは固体の相(例えば、媒体に懸濁された複数のコア微粒子)を形成するが、PSEAは連続相に残る(例えば、媒体中に溶解している)。
【0050】
媒体は、有機媒体であってよく、有機溶媒を含んでいてよく、または2つ以上の相互に混合しやすい有機溶媒の混合体であってよく、これらは独立して水性混和または水性非混和性であってよい。溶液は、水性媒体または水性混和性有機溶媒または水性混和性有機溶媒の混合体またはこれらの組み合わせを含む水性の溶液であってもよい。適当な有機溶媒には、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、アルカン、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、これらと同類のもの、ならびにこれらの2つ以上の組み合わせ(例えば、塩化メチレンとアセトンの1:1の混合液)が含まれるが、これらに限定されない。水性媒体は、水、緩衝液(例、生理食塩水、緩衝溶液、緩衝生理食塩水)などであってよい。適当な水性混和有機溶媒は、モノマーまたはポリマーであってよく、N‐メチル‐2‐ピロリジノン(N‐メチル‐2‐ピロリドン)、2‐ピロリジノン(2‐ピロリドン)、1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、酢酸、乳酸、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n‐プロパノール、イソプロパノール、3‐ペンタノール、ベンジルアルコール、グリセロール、テトラヒドロフラン(THF)、ポリエチレングリコール(PEG、例、PEG‐4、PEG‐8、PEG‐9、PEG‐12、PEG‐14、PEG‐16、PEG‐120、PEG‐75、PEG‐150)、PEGエステル(例、PEG‐4ジラウレート、PEG‐20ジラウレート、PEG‐6イソステアレート、PEG‐8パルミトステアレート、PEG‐150パルミトステアレート)、PEGソルビタン(例えば、PEG‐20ソルビタンイソステアレート)、PEGエーテル(例えば、モノアルキルおよびジアルキルエーテル、例、PEG‐3ジメチルエーテル、PEG‐4ジメチルエーテル、およびグリコフロール)、ポリプロピレングリコール(PPG)、PPGエステル(例えば、ポリプロピレングリコールアルギネート(PGA)、PPGジカプリレート、PPGジカプレート、PPGラウレート)、アルコキシル化直鎖アルキルジオール(例えば、PPG‐10ブタンジオール)、アルコキシル化アルキルグルコースエーテル(例、PPG‐10メチルグルコースエーテル、PPG‐20メチルグルコースエーテル)、PPGアルキルエーテル(例えば、PPG‐15ステアリルエーテル)、アルカン(例、プロパン、ブタン、ペンタン)およびこれらの2つ以上の組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。
【0051】
好ましい実施例では、第1の溶媒に含まれるPSEAの溶液が提供され、PSEAはこの第1の溶媒に溶解性である、またはこの第1の溶媒と混和可能である。活性薬剤は、直接的に、または第2の溶媒に含まれる第2の溶液の添加によって、第1の溶液と混和される。第1の溶媒および第2の溶媒は、同じであってよい、または少なくとも互いに混和可能であってよい。好ましくは、特に活性薬剤が熱に不安定な分子、例えば特定のタンパク性化合物である場合は、周囲温度と等しいまたはそれよりも低い温度にて活性薬剤が添加される。しかし、活性薬剤の活性に有害な影響がない限りは、系への活性薬剤の溶解性を高めるためにこの系を加熱してよい。
【0052】
混合物が相分離条件下におかれた場合、PSEAは、液体連続相に留ながらも、溶液からの活性薬剤の液相‐固相分離を高め、および/または誘導し(例えば、活性薬剤の溶解性を低下させることによって)、これによりコア微粒子を形成し(固体不連続相)、これは好ましくはマイクロスフェアであってよい。適当なPSEA化合物には、天然および合成ポリマー、線状ポリマー、分岐ポリマー、環状ポリマー、コポリマー(ランダム、ブロック、グラフト、例えばポロキサマー、特にPLURONIC(登録商標)F127およびF68)、3元重合体、両親媒性高分子、炭水化物系ポリマー、多価脂肪族アルコール、ポリ(ビニル)ポリマー、ポリアクリル酸、ポリ有機酸、ポリアミノ酸、ポリエーテル、ポリエステル、ポリイミド、ポリアルデヒド、ポリビニルピロリドン(PVP)、および界面活性剤が含まれるがこれらに限定されない。適当なまたは代表的なPSEAには、医薬品添加物として許容可能なポリマー、例えばPEG(例、PEG200、PEG300、PEG3350、PEG8000、PEG10000、PEG20000等)、ポロキサマー、PVP、ヒドロキシエチルスターチ、両親媒性高分子だけでなく、非ポリマー(例えば、プロピレングリコールとエタノールの混合体)が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
液相‐固相分離を高める、誘導する、促進する、制御する、抑制する、遅らせる、またはその他の影響を与えうる条件には、溶液の温度、圧、pH、イオン強度、および/またはオスモル濃度の変化、活性薬剤および/またはPSEAの濃度、これらと同類のものだけでなく、そのような変化の割合、ならびにこれらの2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。そのような条件は、望ましくは相分離の前に、または相分離まで適用される、または相分離の最中であっても適用される。一実施例では、系は、その中の活性薬剤の相転移温度よりも低い温度にさらされるが、これは単独で行われるか、または、その開示内容全体が参考として本明細書で援用される、米国特許出願公開第2005/0142206号に記載されるように、活性薬剤および/またはPSEAの濃度の調節と組み合わせて行われる。温度の降下速度は、それが0.2℃/分〜50℃/分の範囲、好ましくは0.2℃/分〜30℃/分の範囲にある限りは、一定であってもよい、または任意の制御された方式で変えられてもよい。個別に、またはその2つ以上の組み合わせで用いられる凝固点降下剤(FPDA)は、特に凝固点が活性薬剤の相転移温度よりも高い系では、系に直接、またはその溶液(例えば水溶液)に混合されてよい。適当なFPDAには、プロピレングリコール、ショ糖、エチレングリコール、アルコール(例、エタノール、メタノール)、およびこれらの水性混合液が含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
一実施例では、予め形成された微粒子は、相分離に与える影響が無視できるほど小さい1つ以上の賦形剤をさらに有していてよい。賦形剤は、コア微粒子および/またはその中に含まれる化合物(例、活性薬剤、任意の担体)に、さらなる特性、例えば安定性の向上、予め形成された微粒子からの活性薬剤の制御放出、および/または活性薬剤の生物組織への改変された浸透を与えてよい。適当な賦形剤には、炭水化物(例、トレハロース、ショ糖、マンニトール)、多価陽イオン(好ましくは金属陽イオン、例、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Cu2+、Fe2+、Fe3+)、陰イオン(例、CO2−、SO2−)、アミノ酸(例えばグリシン)、脂質、リン脂質、脂肪酸およびそのエステル、界面活性剤、トリグリセリド、胆汁酸ならびにその複合体および塩(例、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、コール酸ナトリウム)、ならびに本明細書で開示されるあらゆるポリマーが含まれるがこれらに限定されない。
【0055】
予め形成された微粒子は、本明細書で開示されるような表面改質の前に、場合により、溶液から分離されて洗浄されてよい、または分離または洗浄せずに表面改質されてよい。分離手段には、遠心分離、透析、沈降(クリーミング)、相分離、クロマトグラフィー、電気泳動、沈殿、抽出、親和性結合、濾過、および膜分離法が含まれるが、これらに限定されない。水溶解度が比較的低い活性薬剤では、洗浄媒体は、水性であってよく、場合により、本明細書で開示されるような1つ以上の溶解度減少剤(SRA)および/または賦形剤を含む。好ましいSRAは、微粒子中の活性薬剤および/または担体と不溶性の錯体を形成することができ、これには、化合物、例えば二価または多価の陽イオンを有する塩(例えば本明細書で開示されるもの)が含まれるが、これらに限定されない。水溶解度が比較的高い活性薬剤(例えばタンパク性化合物)では、洗浄媒体は、有機媒体であってよい、または水性であるが少なくとも1つのSRAまたは沈殿剤(例えば硫酸アンモニウム)を含む。一実施例では、洗浄媒体は、相分離反応に用いられる同じ溶液、例えばおよそ16%(w/v)のPEGおよび0.7%(w/v)NaClを含む水溶液である。
【0056】
例えば、凍結乾燥、蒸発、または乾燥によって簡単に除去できるように、洗浄媒体の沸点は低いことが好ましい。洗浄媒体は、超臨界流体またはその超臨界点に近い流体であってよく、単独で、または共溶媒と一緒に用いられる。超臨界流体は、PSEA用の溶媒であってよいが、予め形成された微粒子用ではない。超臨界流体の非限定例には、液体CO、エタン、およびキセノンが含まれる。超臨界流体との組み合わせで使用するための共溶媒の非限定例には、アセトニトリル、ジクロロメタン、エタノール、メタノール、水、および2‐プロパノールが含まれる。
【0057】
上記のように、水への溶解度を持つ様々な活性薬剤が、本明細書で説明される微粒子中で用いられてよい。水に不溶の活性薬剤が用いられてよいが、水溶性の活性薬剤が好ましい。
【0058】
活性薬剤は医薬品であってよい。その効果および/または用途に応じて、医薬品には、アジュバント、アドレナリン作用薬、アドレナリン遮断薬、アドレノコルチコイド、抗アドレナリン薬、アドレノミメティック、アルカロイド、アルキル化剤、アロステリック阻害剤、アナボリックステロイド、中枢神経興奮剤、鎮痛薬、麻酔薬、食欲抑制剤、制酸薬、抗アレルギー剤、血管新生阻害剤、抗不整脈薬、抗菌剤、抗生物質、抗体、抗癌剤、抗コリン作用薬、抗コリンエステラーゼ薬、抗凝固剤、抗けいれん薬、抗認知症薬、抗うつ剤、抗糖尿病薬、止瀉薬、解毒剤、抗てんかん薬、葉酸代謝拮抗薬、抗真菌剤、抗原、抗寄生虫薬、抗ヒスタミン剤、抗高脂血症薬、降圧剤、抗感染薬、抗炎症剤、抗マラリア薬、代謝拮抗薬、抗ムスカリン薬、抗ミコバクテリア剤、抗悪性腫瘍薬、抗骨粗しょう症薬、抗病原体薬、抗原虫薬、接着分子、解熱剤、抗リウマチ薬、消毒薬、抗甲状腺薬、抗潰瘍薬、抗ウイルス剤、抗不安性鎮静剤、収斂薬、ベータアドレナリン受容体遮断薬、殺生物剤、血液凝固因子、カルシトニン、強心剤、化学療法剤、コレステロール降下薬、共同因子、コルチコステロイド、鎮咳剤、サイトカイン、利尿薬、ドーパミン作用薬、エストロゲン受容体調節因子、酵素およびその補因子、酵素阻害剤、成長分化因子、成長因子、血液作用薬、造血剤、ヘモグロビンモディファイヤー、止血薬、ホルモンおよびホルモンアナログ、睡眠薬、降圧利尿薬、免疫薬、免疫刺激剤、免疫抑制剤、阻害剤、リガンド、脂質調節剤、リンフォカイン、ムスカリン作用薬、筋肉弛緩剤、神経遮断薬、向神経薬、パクリタキセルおよび誘導化合物、副交感神経興奮薬、副甲状腺ホルモン、プロモーター、プロスタグランジン、精神治療薬、向精神薬、放射性医薬品、受容体、鎮静剤、性ホルモン、滅菌剤、刺激薬、血小板新生薬、栄養素、交感神経様作用薬、甲状腺薬、ワクチン、血管拡張剤、ビタミン、キサンチンだけでなく、これらの複合体、錯体、前駆体、ならびに代謝物が含まれるが、これらに限定されない。活性薬剤は、個々に、またはこれらの2つ以上の組み合わせで用いられてよい。一実施例では、活性薬剤は、ペプチド、炭水化物、核酸、その他の化合物、これらの前駆体および誘導体、およびこれらの2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない予防薬および/または治療薬である。
【0059】
上述のように、活性薬剤は化粧剤であってよい。限定されない化粧剤の例には、とりわけ、皮膚軟化剤、保湿剤、フリーラジカル阻害剤、抗炎症剤、ビタミン、脱色素剤、抗アクネ剤、抗脂漏薬、角質溶解薬、減量薬、皮膚着色剤、および日焼け防止薬が含まれる。化粧剤として有用な限定されない化合物には、リノール酸、レチノール、レチノイン酸、アスコルビン酸アルキルエステル、多価不飽和脂肪酸、ニコチン酸エステル、ニコチン酸トコフェロール、コメ、ダイズ、またはシアの不けん化物、セラミド、ヒドロキシ酸、例えばグリコール酸、セレニウム誘導体、抗酸化剤、ベータカロテン、ガンマオリザノール、およびステアリルグリセラートが含まれる。化粧剤は、市販されていてよいおよび/または既知の技術を使用して調製されてよい。
【0060】
上述のように、活性薬剤は栄養補給剤であってよい。限定されない栄養補給剤には、タンパク質、炭水化物、水溶性ビタミン(例、ビタミンC、ビタミンB群など)、脂溶性ビタミン(例、ビタミンA、D、E、Kなど)、および薬草抽出物が含まれる。栄養補給剤は、市販されていてよいおよび/または既知の技術を使用して調製されてよい。
【0061】
上述のように、活性薬剤は、分子量が2kD以下の化合物であってよい。そのような化合物の非限定例には、ステロイド、ベータ刺激薬、抗菌剤、抗真菌剤、タキサン(細胞分裂抑制および微小管阻害薬)、アミノ酸、脂肪族化合物、芳香族化合物、および尿素化合物が含まれる。
【0062】
一実施例では、活性薬剤は、肺疾患の予防および/または治療のための治療薬であってよい。そのような薬剤の非限定例には、ステロイド、β作用薬、抗真菌剤、抗菌化合物、呼吸器作用薬、抗喘息薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)、AAT、および嚢胞性線維症を治療するための薬剤が含まれる。ステロイドの非限定例には、ベクロメタゾン(例えば、ジプロピオン酸ベクロメタゾン)、フルチカゾン(例えば、プロピオン酸フルチカゾン)、ブデソニド、エストラジオール、フルドロコルチゾン、フルシノニド、トリアムシノロン(例えば、トリアムシノロンアセトニド)、フルニソリド、およびこれらの塩が含まれる。β作用薬の非限定例には、キシナホ酸サルメテロール、フマル酸フォルモテロール、レボ‐アルブテロール、バンブテロール、ツロブテロール、およびこれらの塩が含まれる。抗真菌剤の非限定例には、イトラコナゾール、フルコナゾール、アンフォテリシンB、およびこれらの塩が含まれる。
【0063】
上述のように、活性薬剤は診断薬であってよい。限定されない診断薬には、X線造影剤および造影剤が含まれる。X線造影剤の非限定例には、エチル3,5‐ジアセトアミド‐2,4,6‐トリヨードベンゾアート(WIN‐8883、ジアトリゾ酸のエチルエステル)、6‐エトキシ‐6‐オキソヘキシル‐3,5‐ビス(アセトアミド)‐2,4,6‐トリヨードベンゾアート(WIN67722)、エチル‐2‐(3,5‐ビス(アセトアミド)‐2,4,6‐トリヨードベンゾイルオキシ)‐ブチラート(WIN16318)、エチルジアトリゾキシアセタート(WIN12901)、エチル2‐(3,5‐ビス(アセトアミド)‐2,4,6‐トリヨードベンゾイルオキシ)‐プロピオナート(WIN16923)、N‐エチル2‐(3,5‐ビス(アセトアミド)‐2,4,6‐トリヨードベンゾイルオキシ)‐アセトアミド(WIN65312)、イソプロピル2‐(3,5‐ビス(アセトアミド)‐2,4,6‐トリヨードベンゾイルオキシ)‐アセトアミド(WIN12855)、ジエチル2‐(3,5‐ビス(アセトアミド)‐2,4,6‐トリヨードベンゾイルオキシマロネート(WIN67721)、エチル2‐(3,5‐ビス(アセトアミド)‐2,4,6‐トリヨードベンゾイルオキシ)フェニルアセタート(WIN67585)、プロパン二酸,[[3,5‐ビス(アセチルアミノ)‐2,4,5‐トリヨードベンゾイル]オキシ]ビス(1‐メチル)エステル(WIN68165)、および安息香酸,3,5‐ビス(アセチルアミノ)‐2,4,6‐トリヨード‐4‐(エチル‐3‐エトキシ‐2‐ブテノエート)エステル(WIN68209)が含まれる。好ましい造影剤は、望ましくは生理学的条件下で比較的急速に分解するため、あらゆる粒子に関連する炎症反応を最小限に抑える。分解は、酵素的加水分解、生理学的pHにおけるカルボン酸の可溶化、またはその他の機構によって生じてよい。故に、溶解度の低いヨード化カルボン酸、例えばヨージパミド、ジアトリゾ酸、メトリゾ酸が、加水分解に不安定なヨード化種、例えばWIN67721、WIN12901、WIN68165、およびWIN68209、またはその他と同様に好ましい。
【0064】
上述のように、活性薬剤は、その2つ以上の組み合わせで使用されてよい。非限定例には、ステロイドとβ作用薬、例、プロピオン酸フルチカゾンとサルメテロール、ブデソニドとフォルモテロール等が含まれる。
【0065】
予め形成された微粒子は、これらの語句が本明細書で定義される通りに、内部に空隙および/または空洞を実質的にもたない(例えば、ベシクルをもたない)、カプセル化が実質的にない、脂質が実質的にない、ハイドロゲルまたは膨潤が実質的にない、実質的に非多孔性、非晶質、固体、および/または球状であってよい。予め形成された微粒子は、表面のチャネル開口部を複数有していてよく、それらの直径は通常100nm以下であり、好ましくは10nm以下であり、より好ましくは5nm以下であり、最も好ましくは1nm以下である。予め形成された微粒子の総合密度は、0.5g/cm以上、好ましくは0.75g/cm以上、より好ましくは0.85g/cm以上であってよい。密度は通常、最大で約2g/cm、好ましくは1.75g/cm以下、より好ましくは1.5g/cm以下であってよい。
【0066】
予め形成された微粒子は、少なくとも1つの活性薬剤の高いペイロードを示してよい。化合物の処方および物理的/化学的性質に応じて、予め形成された微粒子のそれぞれの中に、典型的には少なくとも1000以上、例えば数100万から何億もの活性薬剤の分子が存在する。予め形成された微粒子中の活性薬剤の重量パーセントは、小さいまたは大きい値の任意のもの、またはそれらの間の任意の範囲であってよいが、100%未満であり、例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、および99%である。著しい量の充填剤および/またはその他の賦形剤を、予め形成された微粒子へ加える必要はないものの、そのような化合物の1つ以上がその内部に存在していてよい。いずれの場合も、所望の完全性および/または活性は、100%とまではいかなくとも、活性薬剤の大部分(50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上)で維持される。
【0067】
予め形成された微粒子の表面改質は、限定されないが、少なくとも1つの荷電化合を含有する少なくとも1つの単層を、予め形成された微粒子の周囲に制御された方法で形成することによって達成される。表面改質微粒子と、これを形成する方法の例は、開示内容全体が参考として本明細書で援用される、米国特許出願公開第2006/0260777号、タイトル“Surface‐Modified Microparticles and Methods of Forming and Using the Same”(Rashba‐Step et al.)に記載されている。2つ以上のそのような単層が形成されるとき、典型的にはそれぞれが異なる荷電化合物を含み、好ましくはそれぞれが、先行するものおよび/または後に続くものが存在するならば、それらのものとは符号および/または値が異なる正味表面電荷をそれぞれの外表面上に有している。そのような単層を1つずつデポジットすることによって、得られる微粒子の各種特性の最適な制御が可能となり、所望の結果を得るために微粒子を加工または“微調整”できるようになる。
【0068】
好ましくは、予め形成された微粒子のすぐそばにある単層(“形成された単層”)は、1つ以上の荷電化合物を含み、それぞれは独立して、コア微粒子の正味表面電荷と符号が反対の正味電荷を有する。予め形成された微粒子は、少なくとも部分的に、形成された単層中の荷電化合物による透過が可能であってよい。形成された単層の外表面は、形成された単層が本明細書で定めるような飽和した単層である場合は特に、予め形成された微粒子の外表面のものとは異なる、好ましくは符号が反対の正味表面電荷を有していてよい。荷電化合物は、高分子電解質、荷電ポリアミノ酸、荷電多糖、ポリイオン性ポリマー、荷電タンパク性化合物、荷電ペプチド、場合により非荷電脂質と組み合わされた荷電脂質、荷電脂質構造、およびこれらの誘導体の1つ以上を含んでよい。
【0069】
表面改質微粒子が活性薬剤の所望の放出プロファイルを持つように、表面改質微粒子は、1つ以上のさらなる交互に重なる荷電単層をさらに含んでよい。この数は特に限定されないが、典型的には1〜7の間、例えば2、3、4、5、または6であってよい。場合により、そのような荷電単層の1つ以上は、好ましくはそれぞれの外表面上で、そこへ共有結合および/または非共有結合している、1つ以上の同一のまたは異なる活性薬剤、例えば、親和性分子、特に標的リガンドを独立して有していてよい。あるいは、または組み合わせて、コア微粒子は、1つ以上の部分、例えば中心または下位層(例えば、荷電単層)を有していてよく、少なくとも1つのそのような活性薬剤を、好ましくはその部分の外表面上に含む。
【0070】
予め形成された微粒子、表面改質微粒子、および、もしあればそれらの間のあらゆる中間体は、以下の特性の1つ以上であってよい、および/または以下の特性の1つ以上を有していてよい:本明細書で定めるような球状、共有結合架橋がない、ハイドロゲルおよび/または膨潤がない、および多分散の、または好ましくは単分散の粒度分布を有する。予め形成された微粒子は、脂質および/またはカプセル化がなくてよい。
【0071】
好ましくは、表面改質微粒子は、活性薬剤の制御放出、特に持続型放出の能力を持ち、限定されない放出プロファイル、例えば初期バーストおよび直線状の放出プロファイルを有し、薬学的、治療的、診断的、美容的、および/または栄養的用途のための組成物または製剤に含まれる懸濁液または乾燥粉末として提供されてよい。上述のように、制御放出は、特定のpH環境において生じてよい。その点について、好ましくは制御放出は、およそ2〜10のpH領域、より好ましくはおよそ5〜7.5、例えば生理学的pHの7〜7.4またはエンドソームpHの5〜6.5において生じてよい。
【0072】
1つ以上の単層の制御されたデポジットは、1つ以上の条件の制御された操作、例えば反応媒体の温度、圧、pH、イオン強度、および/またはオスモル濃度の変化、反応媒体中の成分の濃度、これらと同類のものおよび、そのような変化の割合、ならびにこれらの2つ以上の組み合わせによる、微粒子(例えば、単層の1つ以上がその上にデポジットされた予め形成された微粒子)の正味表面電荷の変化をさらに伴う。そのような制御された操作は、望ましくは1つ以上の単層のデポジットの前、もしくはデポジットまで、または単層形成の最中であっても適用されてよい。一実施例では、微粒子の正味表面電荷は、正、中性、および負であってよい。正味表面変化は、例えば、上述の条件の1つ以上の制御された変化、例えばpHの制御された変化によって選択される。一実施例では、溶液のpHは、微粒子の正味表面電荷が負となるように選択され、溶液のpHと微粒子の表面中性点の差は0.3未満、あるいは0.3と等しいまたは0.3より大きい、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、最も好ましくは1以上である。
【0073】
本開示に従って表面改質微粒子を提供する1つの代表的な方法では、デポジットのための三次元基質として用いられる、複数の予め形成された微粒子の懸濁液がはじめに提供される。予め形成された微粒子を形成する限定されない方法には、本明細書で開示されるもの、および当業者に既知のその他任意の方法が含まれる。そのような方法の1つは、活性薬剤と相分離促進剤を含む溶液を提供するステップと、例えば制御された冷却によって液相‐固相分離を誘導するステップと、予め形成された微粒子を形成するステップとを伴う。一実施例では、予め形成された微粒子を形成するために使用される、任意の1つ、2つ、もしくはそれ以上の、または全ての化合物は、好ましくはそれぞれの予め形成された微粒子全体に均質に分布していてよい(例、中心内に、表面上に、および内部のあらゆる場所で同じ濃度で存在している)。本明細書で開示されるような表面改質の方法は、予め形成された微粒子を作製する基礎的な方法に全体的または部分的に組み込まれてよい、あるいはその続きとなってよいことが理解されるであろう。改質されていない微粒子の予備形成と表面改質の間に、予め形成された微粒子は液相から分離され、場合により洗浄されてよく、これは好ましくは相分離促進剤の存在下で行われる。例えば、洗浄媒体は、相分離の際に用いられた同じ溶液であってよく、相分離促進剤を含んでいる。あるいは、予め形成された微粒子は、液相から分離されず、または洗浄されない。いずれの場合でも、予め形成された微粒子の懸濁液または再懸濁液は、少なくとも1つの適当な荷電化合物を含む溶液と合わされ、混合される。
【0074】
上述のように、予め形成された微粒子は、40%以上の、好ましくは60%以上の、もしくは80%以上の、または90%以上の、あるいは95%以上の、および100%未満、典型的には98%以下の活性薬剤の重量パーセント(wt%)ローディングを有していてよい。予め形成された微粒子は正味表面電荷をさらに有していてよい、または正味表面電荷を有するように誘導されうる(例えば、中性の状態から)。一実施例では、正味表面電荷は、主にまたは基本的に、予め形成された微粒子中に存在する活性薬剤および/またはあるとすれば担体によってもたらされてよく、化合物(1つまたは複数)は、好ましくはその内部に均質に分布していてよい。あるいは、活性薬剤は、予め形成された微粒子の1つ以上の部分、例えば中心または下層(例えば、荷電単層)中に区分化され、好ましくはその部分内に実質的に均質に、または主にその外表面上に分布する。予め形成された微粒子は、予め形成された微粒子の正味表面電荷と好ましくは符号が反対の正味電荷を持つまたは持ちうる、少なくとも1つの荷電化合物にさらされてよく(例えば混合される)、これにより、予め形成された微粒子の周囲に荷電化合物の形成された単層を形成する。形成された単層または表面改質微粒子は、予め形成された微粒子のそれと符号が同じであってよい、ゼロであってよい、または好ましくは、予め形成された微粒子のそれと符号が反対であってよい正味表面電荷を持つ。換言すれば、もしも予め形成された微粒子の外表面が負の正味表面電荷を持つならば(例えば、ゼータ電位測定で決定される)、形成された単層は、好ましくはその外表面上に正の正味表面電荷を持つ。あるいは、もしも予め形成された微粒子が正の正味表面電荷を持つならば、形成された単層は、好ましくは負の正味表面電荷を持つ。単層のデポジットは、水性溶媒(例、水、緩衝液、あるいは前述の種類の、いくらかの水混和性有機溶媒を含む水溶液、または予め形成された微粒子の製造において存在してよいもの)中で行われうる。
【0075】
表面改質微粒子を作製するために、限定されない方法は、改質されていない微粒子を予備形成するまたはその他の方法で提供するステップと、それを、微粒子が浸漬されてよい溶液中に提供されてよい、1つ以上の荷電化合物に曝露するステップと、単層を形成するステップとを含む。溶液は、水、緩衝液、および水混和性有機溶媒の1つ以上、ならびに1つ以上の溶解度減少剤(例、アルコール、炭水化物、非イオン性水性混和性ポリマー、および/または一価または多価の陽イオンを含む無機イオン化合物)を、体積に対する重量の割合で、5%〜50%の濃度、好ましくは10%〜30%の濃度で含んでよい。溶液の非限定例は、約16%(w/v)のポリエチレングリコールおよび0.7%(w/v)NaClを含む。溶液のpHは典型的には4〜10の範囲にあり、コア微粒子の表面中性点と同じもしくはそれに近くなるように調節されてよい(例えば0〜0.3未満の差)、またはそれから離れるよう調節されてよい(例えば0.3pH単位以上の差)。荷電化合物は、0.05mg/mLから10mg/mLの濃度で溶液中に存在してよい。予め形成された微粒子および荷電化合物は、好ましくは2℃〜5℃の温度で、または最高で周囲温度で、1秒から10時間、溶液中で一緒にインキュベートされる。単層の形成は制御された方式で行われてよい。得られる表面改質微粒子またはその中間体は、溶液から分離され、場合により洗浄されてよい。洗浄媒体は、上述の溶液と同じであってよい。所望であれば、交互に重なる荷電単層を形成するために、交互に重なる荷電化合物を使用してこの手順を繰り返してよい。
【0076】
上記のように、反応系は、1つ以上の溶解度低下剤および/または増粘剤(SRA/VIA)ならびに、1つ以上のPSEAを含みうる。適当なSRA/VIAおよびPSEAには、当業者に既知であり本明細書で開示されるもの、例えばアルコール(例、エタノール、グリセロール)、炭水化物(例えばショ糖)、非イオン性水性混和性ポリマー(例、PEG、PVP、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのブロックコポリマー(ポロキサマー)、ヘタスターチ、デキストラン等)、および多価(例、二価、三価)の陽イオンを含む無機イオン性化合物(例、金属および有機陽イオン、例えば本明細書で開示されるもの)、例えばZnClが含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
故に、一実施例では、形成された単層のデポジットは、緩衝生理食塩水(つまり、0.7%NaCl緩衝液)および重量または体積で8%以上のSRA/VIA、例えばPEG、好ましくは12%以上、より好ましくは15%以上、典型的には30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、最も好ましくは16%以上を含む溶液中で行われてよい。溶液中に必要となるSRA/VIAの量は一つには、活性薬剤の安定性だけでなく、単層(1つまたは複数)の溶解プロファイルに依存するであろう。特定の荷電化合物(例えば、ポリカチオンのもの、ゼラチンBおよびキトサン)は、16%以下のSRA/VIAを含む溶液中で作用してよい。
【0078】
微粒子の正味表面電荷がゼロになる溶液のpHを、本明細書では、特定の溶液中の微粒子の表面中性点と呼ぶ。特定の実施例では、溶液のpHは、溶液中の微粒子の表面中性点になるように、または表面中性点付近になるように調節されてよく、その間の差は、0.3未満(pH単位)、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.2以下である。他の実施例では、溶液のpHは、好ましくは溶液中の微粒子の表面中性点から離れるように調節されてよく、その間の差は、0.3以上(pH単位)、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、最も好ましくは1以上である。特定の実施例では、溶液pHを微粒子の表面中性点から離れるように調節すると、その内部の活性薬剤の溶解動力学に影響を与えうることが認められている。溶液中の微粒子のインキュベーションは、微粒子の分解を最小限に抑えるため、周囲温度で、または好ましくは周囲温度未満で、しかし好ましくは溶液の凝固温度より高い温度で実施されうる。本明細書で開示される1つ以上のFPDAが使用される場合は、インキュベーション温度は溶液の凝固温度より低くてもよい。例えば、インキュベーション温度は、0℃から15℃の間、好ましくは1℃から10℃の間、より好ましくは2℃から5℃の間、最も好ましくは5℃未満であってよい。一般に、それぞれの単層の作製のための溶液中の荷電化合物の濃度は、以下の1つと等しい、以下の1つを下回る、および/または以下の1つを上回ってよい、またはこれらの任意の2つの間の範囲にあってよい:0.05mg/mL、0.1mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mL、10mg/mL、5mg/mL、3mg/mL。予め形成された微粒子が、溶液中の荷電化合物と一緒にインキュベートされるとき、予め形成された微粒子の荷電化合物に対する重量比は、1:1以上、好ましくは2:1から10:1、より好ましくは2.5:1から7:1であってよい。
【0079】
所望の電荷修飾(例えば、中性化または電荷反転)、単層被覆、および/または単層の厚さをもたらすように、インキュベーション時間が調節されてよい。特定の反応(例えば、材料および/または条件)に応じて、インキュベーション時間は、以下のうちの1つと等しい、以下のうちの1つより短い、および/または以下のうちの1つより長い、またはこれらの任意の2つの間の範囲にあってよい:10時間、5時間、3時間、10分間、30分間、100分間、75分間、60分間、15分間、5分間、1分間、30秒間、10秒間、5秒間、1秒間。それぞれの単層は、以下のうちの1つと等しい、以下のうちの1つより薄い、および/または以下のうちの1つより厚い、またはこれらの任意の2つの間の範囲にあってよい:100nm、50nm、20nm、5nm、1nm、0.5nm、0.1nm、2nm、10nm。本開示の典型的な単層は、厚さが100nm未満であり、好ましくは10nm未満である。
【0080】
特定の理論による拘束を望むものではないが、微粒子からの活性薬剤の放出の制御における一要素は、予め形成された微粒子の外表面において、または外表面の付近(例えば、形成された単層との境界面)で生じる、相互作用および/または結合(例、非共有結合、イオン錯体形成)の種類および/または程度であってよく、これには活性薬剤、荷電化合物、および/またはもしあればその他の成分が関与すると考えられている。いくつかの例では、この境界面における強固な相互作用または結合が、活性薬剤の溶解を緩やかにする、遅らせる、またはその他の方法で妨げ、表面改質微粒子を安定させ、所望であれば、さらなる交互に重なる荷電単層の作製を容易にすると考えられている。さらに、下記に詳細を記載するように、この相互作用は、さらなる交互に重なる荷電単層の続いて起こる形成によってもさらに影響されうる。
【0081】
故に、予め形成された微粒子と荷電化合物を、好ましくは溶液中で一緒にインキュベートすると、予め形成された微粒子の少なくとも外表面上に形成され、それと結合している、荷電化合物の単一の単層を持つ中間微粒子がもたらされる。インキュベーション後、中間微粒子の懸濁液は、遠心分離、濾過、膜分離法、および/またはその他の分離方法で溶液から分離される。中間微粒子は、場合により洗浄溶液で洗浄される(好ましくは、水性溶媒、例えば上述のSRA含有緩衝液)。インキュベーションおよび任意の洗浄ステップ中の温度は、活性薬剤および荷電化合物の溶解度に基づいて最適化される。
【0082】
さらなる表面改質が望ましいまたは必要であれば、任意の洗浄ステップ後、先に形成された中間微粒子の単層の周囲にあってこれと結合する、異なる荷電化合物の次の単層を形成するために、好ましくは溶液中で中間微粒子が異なる荷電化合物にさらに曝露されてよい(例えば混合される)。異なる荷電化合物は好ましくは、先にデポジットされた荷電化合物のそれと符号が反対の正味電荷を持つ。次の単層は、形成された単層のすぐそばに形成されてよい。このようにして形成された後者の中間微粒子は、前者の中間微粒子のそれと符号が同じ、中性の、または好ましくは最初の中間微粒子のそれと符号が反対の正味表面電荷を有していてよい。それぞれが、先行する単層と結合している、追加の、また必ずではないが好ましくは隣接する交互に重なる荷電単層を持つさらなる微粒子を形成するために、先のサイクルにあるように単層形成手順が繰り返されてよい。所望の放出プロファイルを持つ活性薬剤の制御放出が表面改質微粒子において達成可能となるように、形成される層の総数が選択されてよいまたは予め決定されてよい。上述のように、この数は、1、2、3、4、5、6、7、またはそれより大きい整数であって、好ましくは100以下であり、より好ましくは20以下であり、最も好ましくは10以下であってよい。
【0083】
別の実施例では、単層を形成する荷電化合物の1つ以上は、予め形成された微粒子中のものと同一である、または異なる活性薬剤(1つまたは複数)であってよい。例えば、奇数(例、1番目、3番目)の単層の1つ以上は、同じまたは異なる荷電活性薬剤(1つまたは複数)で独立して形成されてよく、予め形成された微粒子の正味表面電荷と符号が反対の正味電荷(1つまたは複数)を持つ。あるいは、または組み合わせて、偶数(例、2番目、4番目)の単層の1つ以上は、同じまたは異なる荷電活性薬剤(1つまたは複数)で独立して形成されてよく、予め形成された微粒子の正味表面電荷と符号が同じ正味電荷(1つまたは複数)を持つ。後者の荷電化合物は、予め形成された微粒子中のものと同じまたは異なる活性薬剤であってよく、前者の荷電化合物は、他の不活性な荷電化合物、または予め形成された微粒子中のものと異なる荷電活性薬剤であってよい。
【0084】
別の実施例では、荷電および/または非荷電の1つ以上の活性薬剤は、共有結合および/または非共有結合を介して単層の1つ以上に組み込まれてよい。そのような単層結合活性薬剤(1つまたは複数)は、予め形成された微粒子のそれと同じであってよい、またはそれとは異なっていてよい。そのような構成によって、単層結合活性薬剤(1つまたは複数)の制御放出(例、長時間放出、持続型放出)が可能となってよい。あるいは、または組み合わせて、そのような単層結合活性薬剤(1つまたは複数)の1つ以上は、親和性分子、例えば標的リガンドであってよく、これは、コア微粒子内の活性薬剤の標的送達を達成するために、下層の微粒子を選択的に予め定められた領域に運んでよい。
【0085】
さらなる実施例では、表面改質微粒子の1つ以上の特性(例えば、その内部の活性薬剤の放出プロファイルが挙げられるが、これに限定されない)をさらに改変するために、好ましくは懸濁液中の、荷電化合物の1つ以上の単層を持つ上述の表面改質微粒子に対して、1つ以上の物理的および/または化学的処理が行われてよい。この処理は、表面改質微粒子形成の直後で任意の洗浄ステップの前に、または任意の洗浄ステップの直後に行われてよい。この処理は、反応混合物の1つ以上のパラメーター(例えば、温度、pH、および/または圧の操作などが挙げられるがこれらに限定されない)を伴ってよい。典型的には、1つ以上のパラメーターは、最初の値から2番目の値まで調節され(例えば、増加させるまたは減少させる)、ある期間維持された後、3番目の値に調節される(例えば、減少させるまたは増加させる)、もしくは最初の値に戻されるまたは最初の値にまで戻るのを許容され、さらなる期間維持されてよい。
【0086】
例えば、熱処理は加熱ステージと冷却ステージを伴ってよい。さらなる処理の前に、懸濁液は、その内部の微粒子の溶解を少なくとも最小限に抑えるために、周囲温度を下回る比較的低い温度、好ましくは表面改質微粒子が形成される温度、より好ましくは2℃〜10℃、例えば4℃で維持されてよい。加熱ステージ中は、懸濁液はある温度まで加熱されてよく、この上昇した温度にて、1分間〜5時間、好ましくは15分間〜1時間、例えば30分間のインキュベーションの時間中インキュベートされてよい。この上昇した温度は、さらなる処理の前に懸濁液が維持された比較的低い温度よりも高くてよく、懸濁液中の表面改質微粒子の分解温度よりも低くてよく、好ましくは5℃から40℃の間、より好ましくは10℃から30℃の間である。加熱ステージの直後に、場合により冷却ステージが行われてよく、その際、懸濁液は、制御された方式で急速にまたは徐々にある温度に冷却され、この低下した温度にて、1分間〜5時間、好ましくは15分間〜1時間、例えば30分間のインキュベーションの時間中場合によりインキュベートされてよい。一実施例では、冷却は、冷却した洗浄溶液を使用した洗浄によって達成される。あるいは、懸濁液は、元の温度に戻るのをもしくは元の温度に近くなるのを、または懸濁液が加熱された温度を下回る特定の温度に戻るのを、またはそれに近づくのを許容されてよい。この低下した温度は、上昇した温度よりも低くてよく、懸濁液の凝固温度よりも高くてよく、好ましくは周囲温度ちょうど、または周囲温度より低く、場合により、さらなる処理の前に懸濁液が維持された比較的低い温度と等しいまたは異なり、より好ましくは15℃以下であり、最も好ましくは10℃以下であり、例えば4℃である。さらなる処理が行われ、表面改質された微粒子を得るために、得られる混合体に対して、本明細書で説明されるように任意の洗浄ステップがさらに行われてよい。
【0087】
上述のさらなる処理に適した表面改質微粒子には、本明細書で説明されるような、重量で、活性薬剤の40%〜100%未満、より典型的には80%以上を有する、非晶質な、固体の、均質な予め形成された微粒子から形成されたものが含まれる。適当な懸濁液の非限定例には、緩衝液、例えば、16%PEG、0.7%NaCl、67mM酢酸ナトリウムを含有し、pHの範囲が5〜8(例、5.7、5.9、6.5、7.0)であるPEG緩衝液中の微粒子(例えばインスリンマイクロスフェア)が含まれる。微粒子の緩衝液中の濃度は、0.01mg/ml〜50mg/ml、好ましくは0.1mg/ml〜10mg/ml、例えば1mg/mlであってよい。荷電化合物またはそれらの2つ以上の混合物、例えば硫酸プロタミン、ポリ‐L‐リジン、および/またはポリ‐L‐アルギニンは懸濁液に混和されて、0.01mg/ml〜10mg/ml、好ましくは0.1mg/ml〜1mg/ml、例えば0.3mg/mlをもたらしてよい。予め形成された微粒子のそれぞれの外表面上での荷電化合物の単層の形成を確実にするために、この混合物は、比較的低い温度、例えば4℃で、攪拌しながら10秒間〜5時間、例えば1時間のインキュベーションの時間中インキュベートされてよい。次に、懸濁液に対して熱処理が上述のように行われてよい。さらなる処理の前に、懸濁液に対して任意の洗浄ステップが行われてよい。
【0088】
さらなる処理は、本明細書で開示されるような単層の任意の1つ以上の形成の直後に行われてよい。一実施例では、さらなる処理は、予め形成された微粒子上での単一の単層の形成の直後に行われてよく、この単層は正電荷を持つ化合物または負電荷を持つ化合物で形成されている。場合により、第1の単層上で1つ以上のさらなる単層が形成される場合、さらなる処理は、そのようなさらなる単層の形成の直後に行われてもよいし、行われなくてもよい。別の実施例では、2つ以上の単層はコア微粒子上に順番に形成されてよく、さらなる処理は単一の予め定められた単層(例えば、最後の単層、第1の単層、またはその間のその他の任意の単層)が形成された直後にのみ行われてよい。さらなる実施例では、2つ以上の単層はコア微粒子上に順番に形成されてよく、さらなる処理は、1つ以上の予め定められた特性、例えば正電荷を持つもしくは負電荷を持つ化合物を含むこと、または特定の化合物(例、活性薬剤、親和性分子、誘導体)もしくは部分(例、官能基、標識)を含むこと、またはコア由来の特定の単層であること(例、1番目、2番目、3番目、4番目、5番目)を有する、1つ1つの単層の形成の直後に行われてよい。さらなる実施例では、さらなる処理は、単層の全てまたはその一部分であってよい、予め定められたセットのそれぞれの単層の形成の直後に行われてよい。
【0089】
さらなる処理後の表面改質微粒子は、正味表面電荷(ゼータ電位)および/または内部の活性薬剤の放出プロファイルの改変を示してよい。特定の荷電化合物(例えば、PLLおよびPLA、硫酸プロタミンを除く)を用いると、表面改質微粒子の表面電荷の変化(例えば増加)が観察されうる。本明細書で開示されるようなin vitro放出プロトコルが実施された場合、さらなる処理が行われた表面改質微粒子は、さらなる処理を行わなかった表面改質微粒子と比較して、内部の活性薬剤の1時間の累積放出割合(%CR1h)の低下を示しうる。活性薬剤放出の初期バーストは最初の1時間以内に起こると典型的に考えられているため、この実施例は、活性薬剤放出の初期バーストが、さらなる処理によって有意に低下してよいことを示す。さらなる処理が行われた同じ表面改質微粒子は、1時間を超える、好ましくは24時間を超える、より好ましくは48時間を超える、最も好ましくは7日間を超える放出の継続、好ましくは持続能を有し、%CR1hよりも大きい、24時間の累積放出の割合(%CR24h)を持つ。さらなる処理の結果、本開示の表面改質微粒子は、37℃で放出用緩衝液(10mMトリス、0.05%ブリッジ35、0.9%NaCl、pH7.4、二価の陽イオンを含まない)中でin vitro放出された場合、50%以下の%CR1hおよび/または1:1よりも大きい%CR24hの%CR1hに対する割合を示す能力を有していてよい。%CR1hは、好ましくは40%以下であってよく、より好ましくは30%以下であってよく、さらに好ましくは20%以下であってよく、最も好ましくは10%以下であってよい。%CR24hの%CR1hに対する割合は、好ましくは1.05:1以上であってよく、より好ましくは1.1:1以上であってよいが、10:1を超えず、好ましくは5:1以下、より好ましくは2:1以下、最も好ましくは1.5:1以下である。
【0090】
特定の理論に拘束されるものではないが、本明細書で開示されるような単層形成後のさらなる処理によって、単層中の荷電化合物と、基質(例、予め形成された微粒子、先行する単層)の外表面を有する分子(例、活性薬剤、予め形成された微粒子中の任意の担体分子、先行する単層中の荷電化合物)が再構成されて、さらなる処理の前の、単層と基質の外表面の間の静電相互作用よりもずっと強固な結合を形成できるようになると考えられている。さらなる処理によって、表面改質微粒子の外表面上に改質された殻が形成されると考えられており、この改質された殻は、荷電化合物と、基質の外表面を形成する分子の均質な混合体を含有する。
【0091】
荷電化合物のさらなる交互に重なる荷電単層の、形成された単層の上側へのデポジットは、とりわけ、予め形成された微粒子中の活性薬剤の放出プロファイルにさらに影響を与えてよい。上述のように、予め形成された微粒子と形成された単層の間の境界面での引力に応じて、この2つの間に強固な結合が観察されてよい。これによって、活性薬剤の放出の量および/または速度の抑制がもたらされてよい。形成された単層の周囲に1つ以上のさらなる交互に重なる荷電単層を形成することによって、放出プロファイルがさらに改変されてよい。特定の理論に制限されるものではないが、反対電荷を持つ第2の単層を加えることで、形成された単層と予め形成された微粒子の間の結合が緩くなり、これによって、活性薬剤の放出が促進されると考えられている。所望であれば、活性薬剤の任意の間層と連続して配置された交互に重なる荷電単層を続いて適用することによって、本明細書で開示される実施例のいくつかにおいて示されるように、表面改質微粒子からの活性薬剤の放出の微調整が可能となる。
【0092】
本発明に従って使用されてよい適当な荷電化合物は、限定されないが好ましくは非共有結合によって、より好ましくは静電相互作用によってあらゆる基質と結合できる荷電化合物であってよい。故に、適当な荷電化合物には、正電荷を持つもの、負電荷を持つもの、または双性イオン性のものが含まれ、高分子電解質、荷電ポリアミノ酸、多糖、ポリイオン性ポリマー、イオノマー、荷電ペプチド、荷電タンパク性化合物、場合により非荷電脂質と組み合わされた荷電脂質、荷電脂質構造、例えばリポソーム、その前駆体および誘導体、ならびにこれらの2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。非限定例には、負電荷を持つ高分子電解質、例えばポリスチレンスルホン酸塩(PSS)およびポリアクリル酸(PAA)、負電荷を持つポリアミノ酸、例えばポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、およびアルギン酸、負電荷を持つ多糖、例えばコンドロイチン硫酸および硫酸デキストラン、正電荷を持つ高分子電解質、例えばポリアリルアミン塩酸塩(PAH)およびポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA))、正電荷を持つポリアミノ酸、例えばポリ(L‐リジン)塩酸塩、ポリオルニチン塩酸塩、および塩酸ポリアルギニン、ならびに正電荷を持つ多糖、例えばキトサンおよびキトサン硫酸塩が含まれる。生体適合性ポリイオン性ポリマー(例、イオノマー、ポリカチオン性ポリマー、例えば、ポリカチオン性ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリアニオン性ポリマー、例えばポリアニオン性ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド)、荷電タンパク質(例、プロタミン、硫酸プロタミン、キサンタンガム、ヒト血清アルブミン、ゼイン、ユビキチン、およびゼラチンA&B)、および荷電脂質(例、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン)も、本発明において荷電化合物として有用であるが、これらに限定されない。さらに、本明細書で開示される荷電化合物の誘導体(例、グリコシル化されたもの、高度にグリコシル化されたもの、PEG化されたもの、FITC標識されたもの、これらの塩)、複合体、および錯体である。より具体的には、適当な正電荷を持つ脂質(すなわち、ポリカチオン性脂質)、負電荷を持つ脂質(すなわち、ポリアニオン性脂質)、および双性イオン性脂質には、1,2‐ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホコリン(DSPC)、1,2‐ジオレオイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン‐N‐(カルボキシフルオレセイン)(FITC‐EA)、1,2‐ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐[ホスホ‐rac‐(1‐グリセロール)](ナトリウム塩)(DSPG)、1,2‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスファート(モノナトリウム塩)(DPPA)、および1,2‐ジオレオイル‐3‐ジメチルアンモニウム‐プロパンが含まれる。
【0093】
さらに、荷電化合物を使用した別のデポジットに脂質構造(例えばリポソーム)が使用されうる。単層の1つ以上を形成するために、非荷電(例えば非イオン性)脂質が電荷を持つ脂質との組み合わせで使用されてよく、活性薬剤が単層を通過する透過性を最小にするためにそれらの間のモル比が最適化されうる。
【0094】
典型的にはコア微粒子と1つ以上の単層を含む本明細書で開示される表面改質微粒子は、好ましくは、コア微粒子のそれとは異なる活性薬剤の放出プロファイルを有する。放出プロファイルの違いの非限定例には、初期バーストの減少、放出時間の延長、ある時間の間に直線状/一定の放出を示すこと、および/または長期間にわたる放出速度の低下が含まれる。表面改質微粒子は、好ましくは機能的に(例、治療的に、薬学的に、診断的に)効果的な量で、液体もしくは固体組成物または製剤に含まれる懸濁液もしくは乾燥粉末として、保存剤、等張化剤、薬学的に許容される担体、および安定化剤の1つ以上の存在下または非存在下で存在してよい。そのような組成物および製剤は、症状または状態の予防または治療のために、もしくは栄養補給剤として、または体力向上もしくは生理学的健康の目的のために、効果的な量で対象に投与されてよい。そのような組成物および製剤は、存在するもしくは存在しない物質、症状、または疾患の、またはそのような症状または疾患の性質のin vitroおよび/またはin vivo検出用の診断方法、ツール、またはキットに組み込まれてよい。例えば、物質は、接触した際に、表面改質微粒子またはその一部分(例えばコア微粒子)と結合を形成してよく(例、複合体、錯体)、検出用の1つ以上のシグナルを提供できる。この1つ以上のシグナルは、結合の1つ以上の部位上で標識された1つ以上の部分であってよい(例、物質、微粒子)、または結合の形成の際に発現してよい(例、発光、別の物質の放出)。さらに、対象における症状または疾患の予防および/または治療のために、表面改質微粒子は、栄養補給剤および/または栄養補助食品または食品成分に組み込まれてよい、または食品添加物として使用されてよい。
【0095】
本明細書で開示される表面改質微粒子またはコア微粒子は、単独でまたはそれらの混合体で(1:99、10:90、20:80、25:75、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、75:25、80:20、90:10、99:1、またはそのような値の任意の2つの間の範囲に収まるものを含むそれらの間の重量比の値で)、マイクロエンカプセルを形成するために1つ以上のマトリックス形成材料のマトリックス内にさらにカプセル化されうる。マイクロカプセル化は、溶液析出法、抗溶媒沈殿法、噴霧乾燥、噴霧凍結(蒸気または液体への)、水性溶媒への蒸発沈殿法、および乳化/溶媒抽出プロセス、例えば、その開示内容全体が参考として本明細書で援用される米国特許出願公開第2006/0121121号、第2005/0170005号、第2005/0142205号、第2004/0110871号、第2004/0018229号、第2003/0059402号、第2003/0041602号、および第2002/0081334号に開示されているものを含む、当分野で既知の任意の1つ以上のプロセスを使用することによって行われる。本明細書で開示される各種の微粒子をカプセル化するのに有用なエマルション系の非限定例には、単一エマルション系(例えば、油中水中固体、水中油中固体、水中水中固体、および油中油中固体)および多重エマルション系(例えば、S/W/O/WおよびS/O/W/Oのようなダブルエマルション、トリプルエマルション、およびさらに複合的なエマルション系)が含まれる。各種のエマルション系との組み合わせに有用な溶媒抽出用の限定されない技法には、凍結乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、液相乾燥、噴霧乾燥、例えばコールドスプレー乾燥、極低温乾燥、噴霧凍結乾燥、超臨界乾燥、例えば超臨界流体乾燥、および流動層乾燥が含まれ、単独で、またはこれらの2つ以上の組み合わせで使用される。一実施例では、表面改質微粒子および/またはコア微粒子のマイクロカプセル化は、後述のような乳化/溶媒抽出プロセスによって行われる。マトリックスは、活性薬剤にさらなる持続型放出特性を与えることができ、所望の治療用途に従って、数分間、数時間、数日間、数週間、数ヶ月間、またはそれ以上持続する放出速度をもたらす。マイクロエンカプセルは、表面改質微粒子および/またはコア微粒子を使用した遅延放出製剤ももたらしうる。
【0096】
本明細書に記載される実施例は、表面改質微粒子をマイクロカプセル化することで、活性薬剤のin vitro放出の初期バースト(Ibvt)の減少に相乗効果がもたらされることを予想外に示す。Ibvt‐c、Ibvt‐s、Ibvt‐ec、およびIbvt‐esはそれぞれ、コア微粒子から、同じコア微粒子を含有する表面改質微粒子から、同じコア微粒子を含むマイクロエンカプセルから、および同じ表面改質微粒子を含むマイクロエンカプセルからの、例えば24時間以下の最初の期間、例えば12時間以下、または6時間以下、あるいは1時間の最初の期間における、活性薬剤のパーセンテージでの累積放出である。本明細書では、典型的にはIbvt‐ecがIbvt‐sよりもかなり少ないことが見出されており、この知見から、Ibvt‐esがIbvt‐sおよびIbvt‐ecのうちの少ない方とおおよそ同じとなるであろうことが予想される。従って、本明細書で示されるデータが、本明細書で開示されるようなマイクロカプセル化と表面改質の組み合わせが、Ibvt‐sよりもかなり少ないIbvt‐esをもたらすことを示しているのは驚くべこことである。事実、Ibvt‐esは、典型的にはIbvt‐sおよびIbvt‐ecを合わせたものより少ないか、これと等しい。一実施例では、マイクロエンカプセルの24時間Ibvt‐es、12時間Ibvt‐es、6時間Ibvt‐es、および1時間Ibvt‐esの1つ以上は、10%以下であり、例えば5%以下、3%以下、または1%以下である。さらに、1つ以上の表面改質微粒子を含むマイクロエンカプセルにおいて認められるバーストの低下も、表面改質微粒子中に存在する少なくとも1つの活性薬剤の高いローディング(すなわち、重量で高い含有量)を持つことは予想外である。活性薬剤のローディングは、少なくとも5%であり、例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%より大きい、またはこれらと等しい、またはこれらより少ない、あるいはそのような値の任意のものの間の範囲に含まれる。
【0097】
表面改質後にカプセル化が組み合わされた場合のさらなる予想外の結果は、高レベルの活性薬剤のバイオアベイラビリティおよび/または生物活性が保持されることである。コア微粒子形成および表面改質プロセスは、有機溶媒および/または極度の生理化学的ストレスが存在しない状態で行われる。表面改質微粒子上の1つ以上の単層の保護によって、カプセル化プロセス中に、活性薬剤を変性させるまたは別の状態に修飾し、それを不活性化する可能性がある有機溶媒および/または生理化学的ストレスへの内部の活性薬剤の暴露が防がれる。
【0098】
本開示の粒子、例えばマイクロエンカプセルは、連続相に分散した少なくとも1つの不連続相を含むもの、例えば固体分散体、および2つ以上の生理化学的に特徴的な材料を含むもの、例えば複合材料を含む。少なくとも1つの不連続相は表面改質されており、例えば、本明細書で開示される方式のものであるが、これに限定されない。少なくとも1つの不連続相は、2つ以上の異なる材料を有する複合材料でありうる。典型的には、不連続相および連続相の少なくとも1つは非晶質であり、好ましくは両方ともが非晶質である。一実施例では、マイクロエンカプセル中の2つ以上の異なる材料は、適合する、または適合しない分子間自己集合を形成する能力を持つおよび/またはゼロではない正味電荷を持つ、Wの量で存在する少なくとも1つの化合物、Wの量で存在する少なくとも1つの高分子および/または活性薬剤、およびWの量で存在する少なくとも1つのマトリックス形成材料を含み、W、W、およびWは全て同じ単位の重量または重量によるマイクロエンカプセルの割合(すなわち、W+W+W≦100%)である。典型的には、W<W、W<W、およびW≦Wであるが、特定の例では、W<Wである。Wは、Wの50%以下であってよく、例えば25%以下、10%以下、5%以下、1%以下、またはそのような値の任意の2つの間の範囲に含まれてよい。Wは、Wの50%以下であってよく、例えば10%以下、5%以下、1%以下、またはそのような値の任意の2つの間の範囲に含まれてよい。Wは、Wの50%以下であってよく、例えば30%以下、15%以下、10%以下、6%以下、4%以下、2%以下、1%以下、またはそのような値の任意の2つの間の範囲に含まれてよい。一実施例では、本開示の荷電化合物は界面活性剤ではない。別の実施例では、高分子および/または活性薬剤は界面活性剤ではない。
【0099】
少なくとも1つの高分子および/または活性薬剤は、マイクロエンカプセル中の不連続相中に、例えば、好ましくは不連続で分散している(すなわち、弱凝集体および強凝体を形成していない)だけでなく球状である、複数の微粒子(本明細書で説明されるような表面改質微粒子および/またはコア微粒子のような)の形態で存在する。不連続相は、典型的には固体であり、非晶質なもの、複合材料、またはその他の非結晶であってよく、内部にナノ結晶および/または非晶質な構造(例えば、高分子および/または活性薬剤のもの)を含んでよい。少なくとも1つの高分子は活性薬剤であり、および/または不連続相は、1つ以上の活性薬剤(高分子それ自体であってよい、またはそうでなくてもよい)をさらに含む。活性薬剤は、ナノ結晶および/または非晶質であってよく、マイクロエンカプセルから媒体中に放出されうる。少なくとも1つのマトリックス形成材料は、マイクロエンカプセル中の連続相、例えば好ましくは固体で非晶質なマトリックス中に存在し、マトリックスは、架橋していてよい、または架橋していなくてもよい、および/またはハイドロゲルであってよい、またはハイドロゲルでなくてもよい。連続相(例えばマトリックスとその内部のマトリックス形成材料)は、不連続相(例えば複数の微粒子および高分子および/または内部の活性薬剤)をカプセル化する。
【0100】
少なくとも1つの荷電化合物および/または自己集合可能な化合物は、以下の方式の1つ以上で配置される:不連続相の最も外側の境界において(不連続相の一部である、例えば微粒子の外表面上)、不連続相の周囲に(例えば、複数の微粒子の周囲および/または少なくとも1つの高分子および/または活性薬剤の周囲)、不連続相(例えば、複数の微粒子および/または少なくとも1つの高分子および/または活性薬剤)と連続相(例えば、マトリックスまたは少なくとも1つのマトリックス形成材料)の間に、および/または複数の微粒子および/または少なくとも1つの高分子および/または活性薬剤の一部分(一部であって全てではない)との結合で。結果として、少なくとも1つの荷電化合物および/または自己集合可能な化合物は、不連続相を部分的にまたは完全に覆うことによって、連続相から部分的にまたは完全に不連続相を分離する。あるいは、または組み合わせて、少なくとも1つの荷電化合物および/または自己集合可能な化合物は不連続相の一部であり、その内部に均質に分布していない。一実施例では、少なくとも1つの荷電化合物および/または自己集合可能な化合物は、コア微粒子および/または少なくとも1つの高分子および/または活性薬剤の周囲に配置される(それにより部分的にまたは完全にこれらを覆う)1つ以上の自己集合(好ましくは適合するもの)および/または1つ以上の単層(好ましくは飽和したもの)の中に存在する。別の実施例では、少なくとも1つの荷電化合物および/または自己集合可能な化合物、自己集合、および単層の1つ以上は、少なくとも1つのマトリックス形成材料およびマトリックスの1つ以上に曝露される(例、接触している、その内部に分散している、それによってカプセル化されている)。少なくとも1つの高分子および/または活性薬剤が1つ以上のタンパク性化合物および/または核酸である場合、少なくとも1つの荷電化合物は、正の正味電荷を有しうる。
【0101】
マイクロエンカプセルは、重量で50%以下の活性薬剤含有量(C)を有し、例えば、40%、30%、25%、20%、18%、15%、14%、13%、12%、10%、8%、5%、3%、2%、1%、0.5%の値より大きい、これらと等しい、またはこれらより小さい、またはそのような値の任意の2つの間の範囲に含まれる。不連続相(例えば、荷電化合物および/または自己集合可能な化合物、自己集合、および単層の1つ以上を持つ、および/または持たない複数の微粒子)は、重量で20%以上であるが、100%未満の同じ活性薬剤の含有量(C)を有し、例えば、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%の値より大きい、これらと等しい、またはこれらより小さい、あるいはそのような値の任意の2つの間の範囲に含まれる。あるいは、Cは15%以下、例えば、13%、10%、8%、5%、3%、2%、1%、0.5%の値より大きい、これらと等しい、またはこれらより小さい、またはそのような値の任意の2つの間の範囲に含まれる。連続相は、重量で、Cおよび/またはCと異なる同じ活性薬剤の含有量(C)を有し、典型的には、C≦Cおよび/またはC≦Cである。一実施例では、連続相は、活性薬剤を実質的に含まない(例、C≦1%、C=0%)および/または高分子を実質的に含まない。典型的には、CはCと異なり、例えばC<Cであり、C:Cの比は1:2以下であり、例えば、1:3、1:4、1:5、1:7、1:9、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、1:100の値より大きい、これらと等しい、またはこれらより小さい、あるいはそのような値の任意の2つの間の範囲に含まれる。
【0102】
マトリックス中に分散された表面改質不連続相(コア微粒子を含む)を含むマイクロエンカプセル(ES)は、IBesの初期バーストを持つ少なくとも1つの活性薬剤を放出する。カプセル化されていない同じ表面改質不連続相(例えば、同じコア微粒子を含有する表面改質微粒子)は、IBの初期バーストを持つ同じ活性薬剤を放出する。カプセル化または表面改質のない同じコア微粒子は、IBの初期バーストを持つ同じ活性薬剤を放出する。同じマトリックスに分散された同じコア微粒子を(表面改質なし)を含有する別のマイクロエンカプセル(EC)は、IBecの初期バーストを持つ同じ活性薬剤を放出する。典型的には、全ての初期バーストが定量レベルを上回るならば、IBes<IB、IB<IB、およびIBec<IBである。一実施例では、IBes≦IBecおよび/またはIBes≦IBである。別の実施例では、IBes≦IB×IBecである。マイクロエンカプセル(ES)は、マイクロエンカプセル(EC)のそれと実質的に同じ初期バーストの後に、活性薬剤の長時間放出を示す。
【0103】
表面改質微粒子と改質されていないコア微粒子の混合体(それらの間の重量比が、W:W)が同じマトリックスにカプセル化される場合、それらのそれぞれの初期バーストは、IBesとIBecの間の範囲に含まれるが、それらの各々の長時間放出相は、マイクロエンカプセル(ES)および(EC)のそれと実質的に同じである。そのようなものとして、マイクロエンカプセルからの活性薬剤の放出プロファイルは、例えば、比W:Wを調節することによって微調整されうるが、これに限定されない。比W:Wは、99:1から1:99の範囲にある、例えば、95:5、90:10、85:15、80:20、75:25、70:30、67:33(2:1に相当する)、60:40、55:45、50:50、45:55、40:60、33:67(1:2に相当する)、30:70、25:75、20:80、15:85、10:90、5:95の値より大きい、これらと等しい、またはこれらより小さい、あるいはそのような値の任意の2つ以上の間の範囲に含まれる。一実施例では、比W:Wは、24時間を超える期間、例えば7日間以上の、マイクロエンカプセルからの活性薬剤の累積放出の割合と相関する(例えば、実質的に直線の関係)。異なる製剤からの活性薬剤の放出は、比較が行われるとき、同様の方式で測定され、これは予め定められた媒体(例えば緩衝液)へのin vitro放出または特定の種類の対象(例えばラット)でのin vivo放出であってよい。初期バーストは同じ期間にわたって測定され、典型的には24時間以下の期間、例えば6時間または1時間である。
【0104】
代表的な乳化/溶媒抽出プロセスでは、2つの非混和性の相または部分的に混和性の相(すなわち、連続相と不連続/分散相)を混合することによってエマルションが得られる。一実施例では、連続相は水相、水性相、または水性混和性の相であり、不連続/分散相は水性非混和性または部分的に水性混和性であり(例、油相、水非混和性有機相、部分的に水混和性の有機相)、2つの相は、混合されると水中油型(O/W)エマルションを形成する。別の実施例では、不連続/分散相は、分散された粒子に対しての非溶媒(1つまたは複数)である、1つ以上の水非混和性および/または部分的に水混和性の有機溶媒中に分散された粒子(例えば、本明細書で開示される表面改質微粒子および/またはコア微粒子)を含む油中固体(S/O)相(すなわち、分散系、例えば懸濁液)である。さらなる実施例では、逆のエマルション、例えば油中水型(W/O)エマルションは、水性非混和性または部分的に水性混和性の連続相と、水性または水性混和性である不連続/分散相から生じる。不連続/分散相がS/WまたはS/Oの懸濁液であるかどうかにかかわらず、不連続/分散相の連続相に対する重量による比は、約1:99から約99:1の範囲におよび、例えば、2:98、5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、60:40、70:30、80:20、および90:10から選択される値よりも大きい、それらと等しい、またはそれらより小さい、あるいは、そのような値の任意の2つの間の範囲に含まれる。本開示の粒子をカプセル化するのに適したその他の限定されないエマルションには、水中水中固体(S/W/W)エマルション、油中油中固体エマルション(S/O/O)、および3つ以上の相を持つもの、例えば油中水中油中固体(S/O/W/O)エマルション、および水中油中水中固体(W/O/W)エマルションが含まれる。
【0105】
一実施例では、不連続/分散相が提供され、これは、少なくとも1つのマトリックス形成材料(例えばPLGA)を含有する有機溶液(例えば塩化メチレン)中に懸濁されたまたは他の方法で分散された、本開示の表面改質微粒子および/またはコア微粒子を含む。この油中固体(S/O)相は、ホモジナイザー、攪拌羽根、スピニングオイルフィルム(Leach,et al.,AAPS PharmSciTech.2005;6(4):E605‐E617に記載のもの)、またはその他任意の効果的な混合/せん断処理手段を使用して形成されうる。水または水溶液(例、食塩水、界面活性剤溶液、緩衝液、水を含有する二成分または三成分混合物)が水性連続相として提供される。S/O相を水相で乳化させる(激しく混合/せん断処理する、例、ホモジナイゼーション、スピニング、または超音波処理によって)ことによって、水中油中固体(S/O/W)エマルション系が形成され、これは初期段階のマイクロカプセル化粒子の乳化滴を含有する。
【0106】
乳化滴からの有機溶媒の急速な抽出を最小限に抑えるため、乳化の前に、S/O相に含まれる同じ有機溶媒で水性連続相が予め飽和されうる。乳化プロセスは、混合体がその液体特性を維持できるあらゆる温度において実施されうる。エマルションの安定性は、有機相もしくは水相中の表面活性化合物の濃度による、または、表面活性化合物が乳化プロセス後にエマルションに添加されるのであれば、エマルション中に含まれる表面活性化合物の濃度による。得られる固体マイクロエンカプセルの平均粒子径および粒度分布に影響を与える限定されない因子には、連続相の粘度、不連続相の粘度、乳化中のせん断力、表面活性化合物の種類と濃度、および相間重量比が含まれる。
【0107】
乳化後、エマルションは硬化媒体へ移される。硬化媒体は、初期段階のマイクロカプセル化粒子から不連続/分散相中の溶媒を抽出し、マトリックス形成材料の固体の非晶質ポリマー性マトリックス中に分散された、表面改質微粒子および/またはコア微粒子を有する固体のマイクロエンカプセルの形成をもたらす。O/WまたはS/O/Wエマルション系では、硬化媒体は水性媒体であってよく、任意で1つ以上の表面活性化合物、増粘剤、および/またはその他の賦形剤を含んでよい。抽出時間および/または抽出速度を緩やかにするために、加熱(例、伝導熱もしくは対流熱、放射線、例えばIR、マイクロ波、または電波、あるいはその他の加熱手段またはエネルギー源への曝露による)および/または圧の低下が、硬化媒体および乳化相を含む混合物に適用されうる。例えば、不連続相の蒸発(煮沸効果)による急速な除去は、マトリックスの連続性の崩壊につながる傾向があるため、初期段階のマイクロカプセル化粒子からの不連続相中の溶媒の抽出速度は、最終的な固体マイクロエンカプセル中の多孔度の一要素である。
【0108】
マイクロエンカプセルは、本明細書で開示される微粒子(予め形成された微粒子および表面改質微粒子を含む)の任意の1つ以上の物理的特性、例えば、実質的に球状であること、約0.6μm〜約300μm、約0.8μm〜約60μm、約1μm〜約10μm、約10μm〜約30μm、または約1μm〜約5μmの粒子径を持つこと、および/または本明細書で開示されるような粒度分布を持つことなどを有しうる。
【0109】
一実施例では、乳化プロセスは、バッチ法の代わりに連続式で行われる。別の実施例では、活性薬剤の表面改質微粒子および/またはコア微粒子をカプセル化する、硬化したポリマー性マトリックスは、遠心分離および/または濾過(膜分離法を含む)を使用してさらに洗浄され回収される。所望であれば、残りの液体は、例えば凍結乾燥、蒸発、凍結乾燥、噴霧乾燥、凍結噴霧乾燥、および当業者に既知のその他の液体除去または乾燥手段のようなテクニックを使用して除去されうる。
【0110】
マトリックス形成材料は、非晶質なマトリックスの構造的実体を、個々にまたは組み合わせで形成しうる材料を意味する。生体分解性および生体適合性マトリックス形成材料は、とりわけ注射の用途に適している。適当なマトリックス形成材料の非限定例には、ポリ‐ラクチド/ポリ‐グリコリドコポリマーのファミリー(PLGA’s)、ポリエチレングリコール共役PLGA’s(PLGA‐PEG’s)、ポリエチレンオキシドとポリ‐ラクチド/ポリ‐グリコリドのブロックコポリマー(例えばPLGA‐PEO‐PLGA)、ポロキサマーとポリ‐ラクチド/ポリ‐グリコリドのブロックコポリマー(例えばPLGA‐ポロキサマー‐PLGA)、ポリ乳酸のホモポリマーおよびコポリマー、ならびにトリグリセリドが含まれる。ポリ‐ラクチドおよび/またはポリ‐グリコリドのホモポリマーおよびコポリマーは、エステル基、酸性基、水酸基、アミン基、メチル基、メトキシ基、チオール基、マレイミド基、および/またはスルフヒドリル基で終結していてよいが、これらに限定されない。ポリ‐ラクチドおよび/またはポリ‐グリコリドのホモポリマーおよびコポリマー(例、PLGAまたはPLGA‐PEG)の例では、ポリ‐ラクチドのポリ‐グリコリドに対する比は、100:0から0:100でありうる、例えば、約90:10〜約15:85、または約50:50である。一般に、ポリマー中のポリ‐グリコリドのポリラクチドに対する比が高いほど、マイクロエンカプセルはより親水性になり、迅速な水和反応と迅速な分解がもたらされる。ポリマーの分子量は特に限定されず、1kD〜1,000kDの範囲に及び、例えば5kD、10kD、20kD、24kD、30kD、35kD、50kD、80kD、100kD、200kD、500kD、またはそのような値の任意のものの間の範囲である。一般に、ポリ‐グリコリド対ポリ‐ラクチドの比が同じコポリマーから形成されたマイクロカプセル化マトリックスでは、コポリマーの分子量が大きいほど、マトリックスからの活性薬剤の放出は遅くなり、マイクロエンカプセルの粒度分布は広くなる。
【0111】
O/WまたはS/O/Wエマルションの有機相(油相)中の有機溶媒は、水性非混和性または部分的に水性非混和性であってよい。適当な水性非混和性溶媒には、炭素数が5以上の、置換もしくは非置換の、直鎖、分岐、もしくは環状の、アルカン、アルケン、およびアルキン、芳香族炭化水素、完全にもしくは部分的にハロゲン化された炭化水素、エーテル、エステル、特定のケトン(例えば脂肪ケトンだが、アセトンは含まず)、モノ‐、ジ‐、もしくはトリ‐グリセリド、中性油、特定のアルコール(例えば脂肪アルコールが挙げられるが、メタノールまたはエタノールは含まない)、アルデヒド、特定の酸(例えば脂肪酸)、特定のアミン、直鎖もしくは環状シリコーン、ヘキサメチルジシロキサン、またはこれらの溶媒の任意の組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。ハロゲン化溶媒には、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、トリクロロエタン、ハイドロフルオロカーボン、塩素化ベンゼン(モノ、ジ、トリ)、およびトリクロロフルオロメタンが含まれるがこれらに限定されない。部分的に水性混和性の溶媒の非限定例は、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレンカーボネート、ベンジルアルコール、および酢酸エチルであり、これらは限定された水混和性を有し、自然なエマルション形成が可能である。特に適当な限定されない溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム、ジエチルエーテル、トルエン、キシレン、および酢酸エチルである。
【0112】
例えば、有機相のぬれ性を高めるために、1つ以上の表面活性化合物がエマルション中に存在しうる。表面活性化合物は、乳化プロセスの前に、連続相もしくは不連続相のいずれか、または両方に添加されうる(一つには、異なる相におけるそれらの溶解度に応じて)、または形成後のエマルションへ添加されうる。表面活性化合物の使用によって、カプセル化されていない、または部分的にカプセル化された微粒子の数を減らすことができ、これにより、活性薬剤のその放出の際の初期バーストを減少させる。表面活性化合物の非限定例には、イオン性界面活性剤(例、カチオン性、アニオン性、双性イオン性)、非イオン性界面活性剤、および表面活性生体分子が含まれる。表面活性化合物は、重量で、例えば0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、5%、10%、15%、30%の値より少ない、これらと等しい、またはこれらより多い、またはそのような値の任意の2つの間の範囲に含まれる量で存在する必要がある(例、連続相、不連続相、および/またはエマルション中に)。
【0113】
カチオン性界面活性剤の非限定例には、四級アンモニウム化合物、例えば塩化ベンザルコニウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、アシルカルニチン塩酸塩、およびアルキルピリジニウムハロゲン化物が含まれる。アニオン性界面活性剤の非限定例には、脂肪酸の塩、ラウリン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルギン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸およびその塩、グリセリルエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コール酸およびその他の胆汁酸(例、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、グリコデオキシコール酸)およびその塩(例、デオキシコール酸ナトリウム等)、ならびにリン脂質が含まれる。リン脂質の非限定例には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾリン脂質、卵または大豆のリン脂質またはこれらの組み合わせが含まれる。リン脂質は、塩が付加されてよいまたは脱塩されていてよく、水素化されているまたは部分的に水素化されていてよく、あるいは天然、半合成、または合成であってよい。
【0114】
非イオン性界面活性剤の非限定例には、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル(マクロゴールおよびブリッジ)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(Myrj)、ソルビタンエステル(スパン)、モノステアリン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマー)、ポロキサミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、および多糖(スターチおよびスターチ誘導体、例えばヒドロキシエチルスターチ(HES)、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および非晶性セルロースを含む)が含まれる。PLURONIC(登録商標)の商標名のポロキサマーは、Spectrum Chemical and Rugerから購入できる。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルの中には、短いアルキル鎖を有するもの、例えばBASF Aktiengesellschaftから購入できるSOLUTOL(登録商標)HS15(ポリエチレン‐660‐ヒドロキシステアラート)が含まれる。表面活性生体分子の非限定例には、アルブミン、カゼイン、ヘパリン、ヒルジン、ヘタスターチ、および他の適当な生体適合物質が含まれる。一実施例では、水性連続相は、非イオン性界面活性剤(例えば、メチルセルロースのような多糖)または表面活性生体分子(例えば、アルブミンのようなタンパク質)を含む。
【0115】
上記で表面活性化合物として記載した特定の化合物は、本開示の粒子および/または組成物中で賦形剤としての役割を果たしてもよい。賦形剤の非限定例には、単糖類、二糖類(例えば、ショ糖、トレハロース)、および糖アルコール(例えば、マンニトール)が含まれる。チャネリング剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)を使用すると、最終産物の水浸透性を高めることができ、これによって活性薬剤の放出速度が改変される。チャネリング剤をカプセル化の最中に加えることは、同じ化合物(例えばPEG)がプロセスの際にどこかで使用される(例えば、コア微粒子の形成の際の相分離促進剤)場合、洗浄ステップの簡略化および/または軽減という点において有利なことがある。得られるマイクロエンカプセルの特性、例えばマトリックス充填密度、表面電荷、湿潤度、多孔度、粘度、粒度分布だけでなく、マトリックスからのカプセル化活性薬剤の初期バーストおよび放出速度に影響を与えるために、連続相の塩分(例えば特定の塩の使用による)および/またはpHを変化させることができる。連続相の塩分は、2つの相の混和性を低下させるためにも使用されうる。塩分を調節するのに有用な塩の非限定例には、水溶性のリン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、および炭酸塩、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、MES(2‐[N‐モルホリノ]エタンスルホン酸)、ならびにHEPES(N‐[2‐ヒドロキシエチル]ピペラジン‐N’‐[2‐エタンスルホン酸])が含まれる。塩濃度は0〜10Mの範囲にあってよく、例えば1mM〜1M、または20〜200mMである。pHは1〜11の範囲にあってよく、例えば2.5〜9、または6〜8である。
【0116】
典型的には複数の表面改質微粒子および/またはコア微粒子を含有する本明細書で開示されるマイクロエンカプセルは、好ましくは、表面改質微粒子の放出プロファイルおよびコア微粒子の放出プロファイルとは異なる、活性薬剤の放出プロファイルを有する。放出プロファイルの違いの限定されない例には、初期バーストの減少、放出時間の延長、ある時間の間に直線状/一定の放出を示すこと、および/または長期間にわたる放出速度の低下が含まれる。マイクロエンカプセルは、好ましくは機能的に(例、治療的に、薬学的に、診断的に)効果的な量で、液体もしくは固体組成物または製剤に含まれる懸濁液もしくは乾燥粉末として、保存剤、等張化剤、薬学的に許容される担体、および安定化剤の1つ以上の存在下または非存在下で存在してよい。そのような組成物および製剤は、症状または状態の予防または治療のために、もしくは栄養補給剤として、または体力向上もしくは生理学的健康の目的のために、効果的な量で対象に投与されてよい。そのような組成物および製剤は、存在するもしくは存在しない物質、症状、または疾患の、またはそのような症状または疾患の性質のin vitroおよび/またはin vivo検出用の診断方法、ツール、またはキットに組み込まれてよい。例えば、物質は、接触した際に、マイクロエンカプセルまたはその一部分(例えばコア微粒子)と結合を形成してよく(例、複合体、錯体)、検出用の1つ以上のシグナルを提供できる。この1つ以上のシグナルは、結合の1つ以上の部位上で標識された1つ以上の部分であってよい(例、物質、微粒子)、または結合の形成の際に発現してよい(例、発光、別の物質の放出)。さらに、対象における症状または疾患の予防および/または治療のために、マイクロエンカプセルは、栄養補給剤および/または栄養補助食品または食品成分に組み込まれてよい、または食品添加物として使用されてよい。さらなる実施例では、in vivo放出プロファイルは、注射、例えば皮下、静脈内、または筋肉内注射によって投与されるマイクロエンカプセルのそれである。マイクロエンカプセルは、滑らかな表面を持つようにおよび/または実質的に球状となるように調製されうる。
【0117】
1つ以上の表面改質微粒子を含有するマイクロエンカプセルを含有する組成物は、各種のin vivo投与(例、注射、吸入、摂取、注入)用の活性薬剤の持続型放出製剤として使用されうる。持続型放出製剤は、少なくとも1日、例えば1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、または実に1年という期間にわたって治療上または予防上効果的でありうる。注射用組成物では、1つ以上の表面改質微粒子を含むマイクロエンカプセルの最大径は200ミクロン以下であってよく、例えば、125ミクロン、100ミクロン、90ミクロン、60ミクロン、30ミクロンと等しいもしくはこれらよりも小さい、またはそのような値の任意のものの間の範囲に含まれる。組成物の注入難易性をさらに改善するため、マイクロエンカプセル用の液体担体として希釈剤が使用されてよい。希釈剤は、1つ以上の溶解度減少剤、例えば本明細書において上記で開示したものを含みうる。
【0118】
マイクロエンカプセルの放出速度をさらに改変するために、所望であれば、その内部にカプセル化される表面改質微粒子を形成するために使用される荷電化合物の濃度を調節することができる。一実施例では、非飽和単層をコア粒子の周囲に形成するために濃度を低下させることにより、得られる表面改質微粒子の放出速度だけでなく、それから形成されるマイクロエンカプセルの放出速度を変化させる。
【0119】
本開示に従って作製されるマイクロエンカプセルの実施例を以下に記載する。実施例において形成された全ての荷電単層は、本明細書で説明されるように飽和した単層であると考えられる。報告された記録および測定値は、後述の機器および方法を用いて記録した。
In Vitro放出(IVR)
活性薬剤(例えばインスリン)のIVRプロファイルを作成するために、放出用緩衝液(10mMトリス、0.05%ブリッジ35、0.9%NaCl、pH7.4)の10mL分注量を、0.5mLの濃縮粒子懸濁液(3mgのインスリンに相当する)が入ったガラス製バイアルに加えて混和し、37℃でインキュベートした。指定された時間間隔において、400μLのIVR媒体をマイクロチューブへ移し、13krpmで2分間遠心分離した。上清の300μL分注量を取り、当業者が理解するようなBicinchoninic Acid(BCA)アッセイによる解析まで−80℃で保存した。新しい放出用緩衝液の300μL分注量をマイクロチューブに加えてペレットを再構成した。400μLの懸濁液をIVRに戻し入れた。ジメチルスルホキシド(DMSO)および界面活性剤を含有する水性アルカリ溶液中に微粒子を完全に溶解し、pH中性化を行った後、微粒子の総活性薬剤含有量をBCAアッセイで決定した。
【実施例】
【0120】
(実施例1)
表面改質微粒子のマイクロカプセル化
非コーティングインスリンマイクロスフェア(INSms、乾燥粉末)をコーティングバッファー(16%PEG3350、0.7%NaCl、67mM酢酸ナトリウム、pH7.0)中に再懸濁して、8mg/mlの粒子懸濁液を得た。ポリ‐L‐アルギニン(PLA、15〜70kD MW)をコーティング材として使用した。コーティング溶液には、6mg/mlのポリカチオン性ポリアミノ酸を含むコーティングバッファーが含まれていた。等量の粒子懸濁液とコーティング溶液を4℃で混合することによってコーティングプロセスを開始し、懸濁液で4mg/ml、反応媒体中のポリカチオンに関しては3mg/mlの最終濃度がもたらされた。反応媒体を4℃で30分間インキュベートし、その後15℃で30分間インキュベートした。インキュベーション期間の最後に、膜分離法を用いて、デポジット後のコーティング溶液をDI水で置換した。最終的な懸濁液を凍結乾燥し、得られた乾燥粉末をマイクロカプセル化における初期段階のマイクロスフェアとして使用した。
【0121】
24kDの50:50PLGA(Medisorb 2.5A)の10%溶液を塩化メチレン中で調製した。ローター/ステーター式ホモジナイザーを使用して、50mgのPLAコーティングされたインスリンマイクロスフェアを、1.6mlのポリマー溶液に懸濁し、分散相を形成した。連続相は、0.1%(w/v)メチルセルロースおよびpH7.0の50mMリン酸バッファーの水溶液で構成されていた。連続方式で分散相を連続相に乳化させることよってマイクロカプセル化プロセスを開始した。産生されたエマルションをチャンバーから取り、硬化槽へ移した。−0.4バールの減圧下で、攪拌しながら有機溶媒を1時間にわたって抽出した。硬化したマイクロエンカプセルを濾過によって回収し、水で洗浄した。洗浄後のマイクロエンカプセルを凍結乾燥して過剰な水分を除去した。
【0122】
得られたマイクロスフェアのタンパク質含有量は、14%(w/w)と推定された。非コーティングインスリンコア微粒子、同じコア微粒子から形成された表面改質微粒子、およびそれらがマイクロカプセル化されたそれぞれの粒子製剤のin vitro放出(IVR)プロファイルを図1に示し、下記の表1に記す(BQLは、定量レベル未満を表す)。同じ微粒子のin vivo放出プロファイルを図2に示す。
【0123】
【表1】

(実施例2)
組み換えヒト成長ホルモン(rhGH)のマイクロエンカプセルの作製
実施例1で説明したような方法および条件を、コーティングrhGHマイクロスフェアを含むマイクロエンカプセルの産生にも使用した。得られたマイクロスフェアのタンパク質含有量は14.0%(w/w)と推定された。非コーティングrhGHコア微粒子、同じコア微粒子から形成された表面改質微粒子、およびそれらがマイクロカプセル化されたそれぞれの粒子製剤のin vitro放出(IVR)プロファイルを図3に示し、下記の表2に記す。同じ微粒子のin vivo放出プロファイルを図4に示す。
【0124】
【表2】

(実施例3)
混合微粒子のマイクロカプセル化
非改質インスリン微粒子(INSms、乾燥粉末)および表面改質インスリン微粒子を実施例1にあるように提供し、それぞれの、表面改質微粒子の非改質微粒子に対する重量比が、1:0、1:2、2:1、および0:1のうちの1つである50mgの微粒子製剤を作製した。50mgの微粒子製剤のそれぞれを実施例1で説明したようにカプセル化した。改質されていないインスリン微粒子、表面改質微粒子、およびそれぞれのマイクロエンカプセルのin vitro放出(IVR)プロファイルを図5に示し、下記の表3に記す(BQLは、定量レベル未満を表す)。カプセル化(1:2)およびカプセル化(2:1)の放出プロファイルは、カプセル化(0:1)およびカプセル化(1:0)の放出プロファイルによって定められる領域内に含まれた。予想外に、24時間を超える時間、例えば7日間の%累積放出は、実質的に直線状で、表面改質微粒子の非改質微粒子に対する重量比と相関していた。重量比を調節することによって、所望の放出プロファイルを持つマイクロエンカプセルを本開示に従って作製することが可能である。
【0125】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質マトリックス中にカプセル化された複数の予め形成された微粒子を有するマイクロエンカプセルであって、前記予め形成された微粒子の少なくとも1つは、コア微粒子と、該コア微粒子の外表面と結合した少なくとも1つの単層とを有し、前記コア微粒子は、前記マイクロエンカプセルから放出されうる少なくとも1つの活性薬剤を有する、マイクロエンカプセル。
【請求項2】
前記活性薬剤は、生物活性薬剤、医薬品、診断薬、栄養補給剤、および化粧剤の1つ以上を有する、請求項1に記載のマイクロエンカプセル。
【請求項3】
前記活性薬剤は、1つ以上のプロドラッグ、親和性分子、合成有機分子、ポリマー、低分子量分子、高分子、タンパク性化合物、ペプチド、ビタミン、ステロイド、ステロイドアナログ、脂質、核酸、炭水化物、これらの前駆体、およびこれらの誘導体を有する、請求項1に記載のマイクロエンカプセル。
【請求項4】
前記予め形成された微粒子は実質的に球状である、請求項1に記載のマイクロエンカプセル。
【請求項5】
前記予め形成された微粒子は単分散の粒度分布を持つ、請求項1に記載のマイクロエンカプセル。
【請求項6】
前記予め形成された微粒子は非晶質および固体である、請求項1に記載のマイクロエンカプセル。
【請求項7】
前記予め形成された微粒子は、共有結合架橋およびハイドロゲルを含まない、請求項1に記載のマイクロエンカプセル。
【請求項8】
前記単層は、前記コア微粒子の前記活性薬剤と同じまたは異なっていてよい活性薬剤を含む、請求項1に記載のマイクロエンカプセル。
【請求項9】
前記単層の前記活性薬剤は親和性分子を含み、該親和性分子は前記単層の外表面と結合している、請求項8に記載のマイクロエンカプセル。
【請求項10】
前記予め形成された微粒子は、その外表面に正味電荷を有し、該正味電荷は正、負、またはゼロである、請求項1に記載のマイクロエンカプセル。
【請求項11】
前記正味電荷は、正または負である、請求項10に記載のマイクロエンカプセル。
【請求項12】
前記単層は少なくとも1つの荷電化合物を含み、該荷電化合物は、前記予め形成された微粒子の前記正味電荷と符号が反対の正味電荷を持つ、請求項11に記載のマイクロエンカプセル。
【請求項13】
前記荷電化合物は、高分子電解質、荷電ポリアミノ酸、多糖、ポリイオン性ポリマー、イオノマー、荷電ペプチド、荷電タンパク性化合物、荷電脂質、荷電脂質構造、これらの前駆体および誘導体、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項12に記載のマイクロエンカプセル。
【請求項14】
前記予め形成された微粒子の少なくとも1つは第2の単層を有し、該第2の単層は第2の荷電化合物を有し、該第2の荷電化合物は、前記第1の荷電化合物の前記正味電荷と符号が反対の正味電荷を持つ、請求項12に記載のマイクロエンカプセル。
【請求項15】
前記単層の厚さが、100nm未満である、請求項1に記載のマイクロエンカプセル。
【請求項16】
前記非晶質マトリックスは、グリコール酸、乳酸、トリグリセリド、およびこれらの組み合わせから選択される繰り返し単位を含む、請求項1に記載のマイクロエンカプセル。
【請求項17】
前記コア微粒子は、少なくとも80重量パーセントの前記活性薬剤を含む、請求項1に記載のマイクロエンカプセル。
【請求項18】
前記活性薬剤は、前記コア微粒子全体に均質に分布する、請求項1に記載のマイクロエンカプセル。
【請求項19】
非晶質マトリックス中にカプセル化された複数の予め形成された微粒子を有するマイクロエンカプセルであって、少なくとも1つの前記予め形成された微粒子は、コア微粒子と、前記コア微粒子を前記非晶質マトリックスから分離する少なくとも1つの単層とを含有し、前記コア微粒子は、前記マイクロエンカプセルから放出されうる少なくとも1つの活性薬剤を含有する、マイクロエンカプセル。
【請求項20】
マイクロエンカプセルを作製するための方法であって、
少なくとも1つの活性薬剤を含み、正味電荷を有する外表面を持つ、非晶質で固体の予め形成された微粒子を提供するステップと、
前記予め形成された微粒子の少なくとも前記外表面を、少なくとも1つの荷電化合物に曝露するステップであって、該荷電化合物は、前記予め形成された微粒子の外表面の前記正味電荷と符号が反対の正味電荷を持つステップであり、これにより前記予め形成された微粒子の外表面と結合した前記荷電化合物の単層を有する表面改質微粒子を形成するステップと、
マイクロエンカプセルを形成するために、前記表面改質微粒子の1つ以上をカプセル化するステップとを含む、方法。
【請求項21】
前記曝露するステップは、前記予め形成された微粒子を、前記荷電化合物を含む溶液と接触させることによって行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記溶液は、前記予め形成された微粒子の前記正味表面電荷が負となるように選択され、前記溶液のpHと前記予め形成された微粒子の表面中間点の差は0.3より大きいか、これと等しい、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記溶液中の前記荷電化合物の濃度は、0.01mg/mLから10mg/mLの間である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記マイクロカプセル化は、溶液析出法、抗溶媒沈殿法、噴霧乾燥、噴霧凍結、水性媒体への蒸発沈殿、および乳化/溶媒抽出プロセスのうちの1つ以上によって行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
マイクロエンカプセルを作製するための方法であって、
活性薬剤を含む固体で非晶質な微粒子を形成するステップと、
前記形成された微粒子上に少なくとも1つの荷電化合物を含む単層を形成するステップであって、これにより、表面改質微粒子を作製するステップと、
マイクロエンカプセルを形成するために、前記表面改質微粒子の1つ以上を、場合により前記固体で非晶質微粒子の1つ以上と組み合わせてカプセル化するステップとを含む、方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−505882(P2010−505882A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531647(P2009−531647)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/080863
【国際公開番号】WO2008/060786
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】