説明

表面欠陥検査方法及び表面欠陥検査装置

【課題】エラーとなり得る情報記録媒体の表面の欠陥を精度良く検出可能な表面欠陥検査方法および表面欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】表面欠陥検査装置1の微分干渉顕微鏡3とCCDカメラ4で検査対象物Mの情報記録媒体表面の微分干渉画像を撮像する。画像処理装置5では、この微分干渉画像に対して欠陥を含むレファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定し、微分干渉画像から欠陥候補を選定する。そして、選別された各欠陥候補に対して、その面積がエラーとなる最小サイズの欠陥の面積に基づく欠陥面積判定値以上のものを真にエラーに対応する欠陥として抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体の表面の欠陥を検査する表面欠陥検査方法及び表面欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報記録媒体には、例えば、磁気テープの生産時における異物付着などにより、その表面に凹み、突起あるいはその両者の欠陥が発生する。このような欠陥は、情報の記録再生時における出力低下の原因となり、エラーとして現れる。そのため、磁気テープの生産時には、電磁変換特性の出力低下が所定スライスレベルを超える数のドロップアウトまたはエラーレートを測定する一方、磁気テープの表面の欠陥を検査することが行われ、磁気テープの品質保証、品質管理が行われている。
【0003】
そして、この表面欠陥の検査は、通常、顕微鏡を利用した目視検査で1視野あたり何個以下として管理されている。また、CCD画像を撮像し、その画像を処理することで欠陥を検出し、欠陥数を計数することも行われている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−168793
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の検査方法では、エラーに結びつく欠陥であるか否かにかかわらず、欠陥であると観察されたものをすべて計数しているため、真にエラーとなり得る欠陥を検出する精度が低いという問題がある。また、目視検査の場合は、検査員の疲労の程度等の人的要因によって欠陥の見逃しや見間違い等が生じ、また、CCD画像を画像処理して検出する場合は、画像に欠陥のコントラストがはっきり出なくて見逃してしまうことがある。
【0005】
さらに、上記のように情報記録媒体の表面の欠陥には表面から突出した突起欠陥と表面から凹んだ凹み欠陥の両方が含まれている場合があるが、これらはそれぞれ生産工程において異なる原因で発生するとともに、エラーに対する影響が突起欠陥と凹み欠陥で異なっている。そのため、欠陥の対策として、突起と凹みの欠陥の種類に応じて検査することが望まれている。しかしながら、上記目視検査やCCD画像による検査では突起と凹みとの選別が困難であるだけでなく、突起と凹みの大きさに関係なく欠陥が抽出されるため、真にエラーとなり得る突起欠陥と凹み欠陥とを選別して抽出することができないという問題がある。従って、このような欠陥検査の結果が、生産現場における欠陥の発生原因の解明やその対策に十分に活かせていなかった。
なお、このような問題は、磁気テープのみならず、磁気ディスク等の磁気記録媒体、光磁気ディスク、ハードディスク等の表面に平滑性が要求される各種の情報記録媒体においても共通の問題として生じる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、エラーとなり得る情報記録媒体の表面の欠陥を精度良く検出し、その結果として表面欠陥数の管理および多数発生原因の解明やその対策を適切に行うことが可能となる表面欠陥検査方法および表面欠陥検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一形態に係る表面欠陥検査方法は、
情報記録媒体表面の微分干渉画像を撮像し、
上記微分干渉画像に対して、エラーとなる欠陥を含むレファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定し、
上記欠陥候補スライスレベルが設定された微分干渉画像を用いて欠陥候補を選定し、
上記欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの欠陥の面積に基づく欠陥面積判定値以上のものをエラーに対応する欠陥として抽出する。
上記微分干渉画像の撮像画像により、情報記録媒体表面の欠陥を鮮明に観察することができる。この微分干渉画像に対して、レファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定することで、欠陥のない正常部分と欠陥のある欠陥部分とが明瞭に区別され、欠陥候補を確実に選定することができる。そして、選定された欠陥候補に対して、その面積がエラーとなる最小サイズの欠陥の面積に基づく欠陥面積判定値以上のものをエラーに対応する欠陥として抽出すれば、真にエラーとなり得る欠陥を特定することができる。
【0008】
(2)本発明の他の形態に係る表面欠陥検査方法は、
情報記録媒体表面の微分干渉画像を撮像し、
この微分干渉画像に対して、エラーとなる欠陥を含むレファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定し、
上記欠陥候補スライスレベルが設定された微分干渉画像を用いて欠陥候補を選定し、
上記微分干渉画像におけるシャー方向に沿った欠陥候補の画像特性値のパターンに基づき、上記欠陥候補を突起欠陥候補と凹み欠陥候補とにそれぞれ選別し、
上記突起欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの突起欠陥の面積に基づく突起欠陥面積判定値以上のものを上記エラーに対応する突起欠陥として抽出し、
上記凹み欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの凹み欠陥の面積に基づく凹み欠陥面積判定値以上のものを上記エラーに対応する凹み欠陥として抽出する。
上記微分干渉画像の撮像画像により、情報記録媒体表面の欠陥を鮮明に観察することができる。この微分干渉画像に対して、レファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定することで、欠陥のない正常部分と欠陥のある欠陥部分とが明瞭に区別され、欠陥候補を確実に選定することができる。そして、微分干渉画像において、突起欠陥と凹み欠陥とでは形状の相違から欠陥候補の画像特性値のパターンが異なるため、選定された欠陥候補が突起欠陥候補であるか、凹み欠陥候補であるかを選別することができる。
【0009】
一方、欠陥とエラーとの関係においては、突起欠陥の箇所ではヘッドが浮上するため、ヘッドと媒体との距離が大きく変化するのに対し、凹み欠陥の箇所ではヘッドと媒体表面との距離は大きく変化しない。このため、突起欠陥と凹み欠陥とではエラーに与える影響が異なっており、突起欠陥のエラーに結びつく大きさは凹み欠陥のそれよりも小さい。すなわち、各欠陥のエラーに対応する最小サイズの欠陥面積が異なっている。そこで、選別された各欠陥候補に対して、その面積がエラーとなる最小サイズの欠陥の面積に基づく各欠陥面積判定値以上のものをエラーに対応する欠陥として抽出すれば、真にエラーとなり得る突起欠陥と凹み欠陥とをそれぞれ特定することができる。
【0010】
(3)また、本発明のさらに他の一形態に係る表面欠陥検査方法は、
情報記録媒体表面の微分干渉画像を撮像し、
上記微分干渉画像におけるシャー方向に沿った欠陥の画像特性値のパターンに基づき、上記情報記録媒体の表面の欠陥を突起欠陥グループと凹み欠陥グループとに選別し、
上記微分干渉画像に対して、エラーとなる欠陥を含むレファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定し、
上記欠陥候補スライスレベルが設定された微分干渉画像を用いて、上記突起欠陥グループから突起欠陥候補を、上記凹み欠陥グループから凹み欠陥候補をそれぞれ選定し、
上記突起欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの突起欠陥の面積に基づく突起欠陥面積判定値以上のものをエラーに対応する突起欠陥として抽出し、
上記凹み欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの凹み欠陥の面積に基づく凹み欠陥面積判定値以上のものをエラーに対応する凹み欠陥として抽出する。
上記のように、微分干渉画像では突起欠陥と凹み欠陥ではシャー方向に沿った画像特性値のパターンが相違するため、欠陥を突起欠陥グループと凹み欠陥グループに選別することができる。従って、微分干渉画像に基づき予め突起欠陥と凹み欠陥のパターンサーチを行い、欠陥が突起欠陥であるか凹み欠陥であるかを判定すれば、欠陥を欠陥の種類ごとのグループに分類できる。そして、この各グループに対して、欠陥候補スライスレベルを設定すれば、各欠陥候補を確実に選定することができる。そして、選定された各欠陥候補に対して、その面積がエラーとなる最小サイズの欠陥の面積に基づく各欠陥面積判定値以上のものをエラーに対応する欠陥として抽出すれば、真にエラーとなり得る突起欠陥と凹み欠陥とをそれぞれ特定することができる。
【0011】
(4)また、上記各形態の表面欠陥検査方法において、
上記欠陥候補スライスレベルは、上記レファレンスサンプルの欠陥を含む画像例中の欠陥部分を除いた背景画像に基づいて設定されてもよいし、上記レファレンスサンプルの欠陥を含む画像例中の欠陥部分の欠陥画像に基づいて設定されてもよい。
微分干渉画像では、欠陥部分と欠陥のない正常部分とは明るさ、色相、彩度の画像特性値が異なって表われるため、欠陥部分を除いた背景画像の画像特性値あるいは欠陥部分の欠陥画像の画像特性値に基づいて欠陥候補スライスレベルが設定されれば、欠陥のない正常部分と欠陥のある欠陥部分とを明瞭に区別することができる。
【0012】
(5)一方、本発明の一形態に係る表面欠陥検査装置は、
情報記録媒体表面の微分干渉像を観察する微分干渉顕微鏡と、
上記微分干渉顕微鏡で観察される微分干渉像を撮像する撮像装置と、
上記撮像装置で撮像された微分干渉画像を用いて、エラーに対応する欠陥を抽出する画像処理装置とを備えた情報記録媒体の表面の欠陥を検査する表面欠陥検査装置であって、
上記画像処理装置は、
上記微分干渉画像に対してエラーとなる欠陥を含むレファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定し、
上記欠陥候補スライスレベルが設定された微分干渉画像を用いて欠陥候補を選定し、
上記欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの欠陥の面積に基づく欠陥面積判定値以上のものを上記エラーに対応する欠陥として抽出する表面欠陥検査装置である。
上記微分干渉顕微鏡の微分干渉画像により、情報記録媒体の表面の欠陥を鮮明に観察することができる。撮像装置ではこの微分干渉画像を撮像し、該微分干渉画像を画像処理装置に送信する。画像処理装置では、微分干渉画像に対して、レファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定することで、欠陥のない正常部分と欠陥のある欠陥部分とが明瞭に区別され、欠陥候補を確実に選定することができる。そして、画像処理装置では、選定された欠陥候補に対して、その面積が、エラーとなる最小サイズの欠陥の面積に基づく欠陥面積判定値以上の欠陥をエラーに対応する欠陥として抽出するので、真にエラーに結びつく欠陥を特定することができる。
【0013】
(6)また、本発明の他の形態に係る表面欠陥検査装置は、
情報記録媒体の表面の微分干渉画像を観察する微分干渉顕微鏡と、
上記微分干渉顕微鏡で観察される微分干渉画像を撮像する撮像装置と、
上記撮像装置で撮像された微分干渉画像を用いて、エラーに対応する突起欠陥と凹み欠陥を抽出する画像処理装置とを備えた情報記録媒体の表面の欠陥を検査する表面欠陥検査装置であって、
上記画像処理装置は、
上記微分干渉画像に対してエラーとなる欠陥を含むレファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定し、
上記欠陥候補スライスレベルが設定された微分干渉画像を用いて欠陥候補を選定し、
上記微分干渉画像におけるシャー方向に沿った欠陥候補の画像特性値のパターンに基づき、上記欠陥候補を突起欠陥候補と凹み欠陥候補とにそれぞれ選別し、
上記突起欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの突起欠陥の面積に基づく突起欠陥面積判定値以上のものを上記エラーに対応する突起欠陥として抽出し、
上記凹み欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの凹み欠陥の面積に基づく凹み欠陥面積判定値以上のものを上記エラーに対応する凹み欠陥として抽出する表面欠陥検査装置である。
上記微分干渉顕微鏡の微分干渉画像により、情報記録媒体の表面の欠陥を鮮明に観察することができる。撮像装置ではこの微分干渉画像を撮像し、該微分干渉画像を画像処理装置に送信する。画像処理装置では、微分干渉画像に対して、レファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定することで、欠陥のない正常部分と欠陥のある欠陥部分とが明瞭に区別され、欠陥候補を確実に選定することができる。微分干渉画像では、突起欠陥と凹み欠陥とでは形状の相違から欠陥候補の画像特性値のパターンが異なるため、選定された欠陥候補が突起欠陥候補であるか、凹み欠陥候補であるかを選別することができる。そして、画像処理装置では、選定された各欠陥候補に対して、その面積がエラーとなる最小サイズの欠陥の面積に基づく各欠陥面積判定値以上の欠陥をエラーに対応する欠陥として抽出するので、真にエラーとなり得る突起欠陥と凹み欠陥とをそれぞれ特定することができる。
【0014】
(7)また、本発明のさらに他の形態に係る表面欠陥検査装置は、
情報記録媒体の表面の微分干渉画像を観察する微分干渉顕微鏡と、
上記微分干渉顕微鏡で観察される微分干渉画像を撮像する撮像装置と、
上記撮像装置で撮像された微分干渉画像を用いて、エラーに対応する突起欠陥と凹み欠陥を抽出する画像処理装置とを備えた情報記録媒体の表面の欠陥を検査する表面欠陥検査装置であって、
上記画像処理装置は、
上記微分干渉画像におけるシャー方向に沿った欠陥の画像特性値のパターンに基づき、上記情報記録媒体の表面の欠陥を突起欠陥グループと凹み欠陥グループとに選別し、
上記微分干渉画像に対して、エラーとなる欠陥を含むレファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定し、
上記欠陥候補スライスレベルが設定された微分干渉画像を用いて、上記突起欠陥グループから突起欠陥候補を、上記凹み欠陥グループから凹み欠陥候補をそれぞれ選定し、
上記突起欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの突起欠陥の面積に基づく突起欠陥面積判定値以上のものを上記エラーに対応する突起欠陥として抽出し、
上記凹み欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの凹み欠陥の面積に基づく凹み欠陥面積判定値以上のものを上記エラーに対応する凹み欠陥として抽出する表面欠陥検査装置である。
上記のように、微分干渉画像では突起欠陥と凹み欠陥ではシャー方向に沿った画像特性値のパターンが相違するため、欠陥候補を選定する前に欠陥を突起欠陥グループと凹み欠陥グループに選別することができる。従って、画像処理装置で、予め欠陥のパターンサーチを行って、欠陥が突起欠陥であるか凹み欠陥であるかを判定し、欠陥を欠陥の形状ごとのグループに分類し、この各グループに対して、欠陥候補スライスレベルを設定すれば、各欠陥候補を選定することができる。そして、選定された各欠陥候補に対して、その面積がエラーとなる最小サイズの欠陥の面積に基づく各欠陥面積判定値以上のものをエラーに対応する欠陥として抽出すれば、真にエラーとなり得る突起欠陥と凹み欠陥とをそれぞれ特定することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、エラーとなり得る情報記録媒体の表面の欠陥を精度良く検出できる。また、エラーとなり得る情報記録媒体の表面の欠陥を欠陥の種類に応じて精度良く検出することもできる。このため、情報記録媒体表面の欠陥の発生原因の解明やその対策を的確に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る表面欠陥検査装置1の構成を示す。図1に示すように、この表面欠陥検査装置1は、XYステージ2と、微分干渉顕微鏡3と、CCDカメラ(撮像装置)4と、画像処理装置5と、制御装置6と、顕微鏡インターフェイス7とを備える。
【0017】
XYステージ2は、その上面に検査対象物Mを保持する載物台21を備える。この載物台21は、検査対象物Mの情報記録媒体を吸着保持して安定して載置固定する。そして、このXYステージ2は、載物台21をXY方向に正確に移動させて載置する検査対象物Mの情報記録媒体を、上方の微分干渉顕微鏡3に位置合わせする。
【0018】
微分干渉顕微鏡3は、情報記録媒体表面の凹みや突起といった欠陥をコントラストの差として観察する装置である。この微分干渉顕微鏡3は、主に、照明装置31、ハーフミラー32、微分干渉プリズム33、挿抜機構34、対物レンズ35、検光子36等で構成されている。また、この微分干渉顕微鏡3は、顕微鏡インターフェイス7を介して制御装置6に接続され、制御装置6からの制御信号によって各部の操作を行うことができるようになっている。
【0019】
そして、この微分干渉顕微鏡3は、照明装置31からの照明光をハーフミラー32に反射させて落射照明とし、該照明光を微分干渉プリズム33により2つの光線に分離し、対物レンズ35でシャー量(2つの光線の間の距離)だけずらした平行光として検査対象物Mの情報記録媒体に照射する。すると、2つの光線間には、情報記録媒体の欠陥上で反射した時の高さの差分が欠陥の斜面の勾配(傾斜角)に応じた光路差として付与される。そして、この光路差の生じた2つの光線は、微分干渉プリズム33で合成されて検光子36で干渉されることで光路差に応じたコントラストが得られ、これにより、情報記録媒体表面の微小な欠陥が微分干渉画像として観察される。また、挿抜機構34は、微分干渉プリズム33のシャー量を移動調整させるものであり、これにより、微分干渉画像のコントラストや色等の調整を行うことができる。このように、微分干渉顕微鏡3によれば、情報記録媒体表面における突起や凹みの欠陥部分が、欠陥のない平坦な正常部分とは異なった微分干渉画像として観察される。なお、微分干渉プリズム33としては、例えば、ノマルスキープリズムやウォラストンプリズム等を使用することができる。
【0020】
CCDカメラ4は、微分干渉顕微鏡3で観察される情報記録媒体の微分干渉画像を撮像する装置であり、例えば、数μmの大きさの欠陥でも撮像することが可能である。このCCDカメラ4は、例えば、XYステージ2を移動して停止する度に撮像することもできる。なお、CCDカメラ4は、その撮像された微分干渉画像をAD変換した画像信号として画像処理装置5に送信してもよいし、撮像された微分干渉画像をアナログ信号として取り込み、画像処理装置5でAD変換してもよい。
【0021】
画像処理装置5は、CCDカメラ4から取り込んだ微分干渉画像を画像処理して情報記録媒体表面の欠陥を検出する装置である。すなわち、この画像処理装置5は、情報記録媒体表面の微分干渉画像から欠陥候補を選定する機能と、この欠陥候補の面積を算出する機能と、エラーとなる最小サイズの欠陥の面積に基づく欠陥面積判定値以上の欠陥候補を真の欠陥として登録しカウントする機能とを備える。また、欠陥の形状を区別して欠陥を抽出する場合、この画像処理装置5は、欠陥についてシャー方向に沿った前後の画像特性値のパターンの違い(前後のコントラストのパターンの違い、あるいは前後の色のパターンの違い)からその欠陥が凹みか突起かを区別して検出する機能を備える。このような画像処理装置としては、例えば、キーエンス社製のCV−3500(画素数:1600×1200)が挙げられる。
【0022】
制御装置6は、例えば、パーソナルコンピュータ等で構成され、XYステージ2、微分干渉顕微鏡3、画像処理装置5等を制御信号によって動作制御したり、画像処理装置5での画像処理に際しての各種設定値の設定等を行い、また、画像処理装置5で検出した欠陥数等を記憶する。
次に、上記表面欠陥検査装置1を用いた情報記録媒体の表面欠陥検査方法について、表面欠陥検査方法の形態ごとに説明する。
【0023】
[表面欠陥検査方法A]
表面欠陥検査方法Aについて、図2の処理フローを参照して説明する。
(A−1)最初に表面欠陥検査装置の初期設定を行う(S1)。
この初期設定は、検査対象物Mの情報記録媒体と同種であってエラーとなる境界の大きさの欠陥を含むレファレンスサンプルを用いて行われる。まず、表面欠陥検査装置1の載物台21にレファレンスサンプルをセットし、ピント、色、及び輝度を調整するため、微分干渉顕微鏡3における微分干渉プリズム33のシャー量、照明装置31の明るさ、CCDカメラ4の焦点や絞り量、XYステージ2の高さ等の調整を行って、微分干渉顕微鏡3とCCDカメラ4とで撮像した上記レファレンスサンプルの撮像画像(以下、「画像例」という)中に背景と欠陥とが明瞭に区別されて観察できるようにする。
【0024】
この調整後、上記画像例の、明るさ(明度または輝度)、色相、彩度の画像特性値に基づいて、画像処理に必要な背景画像特性値または欠陥画像特性値、欠陥候補スライスレベル、及び欠陥面積判定値が画像処理装置5に登録される。ここで、背景画像特性値は、欠陥のない正常部分である背景画像部分の画像特性値を設定するものであり、欠陥画像特性値は、欠陥部分である欠陥画像部分の画像特性値を設定するものである。欠陥候補スライスレベルは、検査対象物Mの微分干渉画像中の欠陥候補を選定するために設定されるものであって、背景画像特性値または欠陥画像特性値に基づき検査対象物Mの微分干渉画像中の正常部分と欠陥部分とを区別するにあたって、明るさ(明度または輝度)、色相、彩度の少なくとも1つの画像特性値を用いて欠陥候補を選定するスライスレベルである。欠陥面積判定値は、選定された欠陥候補の中からエラーに結びつく真の欠陥を抽出するための欠陥の大きさ(面積)の設定値である。
【0025】
背景画像特性値や欠陥画像特性値は、明るさ(明度または輝度)、色相、彩度の1つまたは2以上の組み合わせである。例えば、背景画像特性値は、欠陥を含むレファレンスサンプルの画像例における欠陥部分を除いた背景画像部分の画像特性値に基づいて決定され、一方、欠陥画像特性値は、欠陥を含むレファレンスサンプルの画像例における欠陥画像部分の画像特性値に基づいて決定される。欠陥候補スライスレベルは、画像例中の背景と欠陥とを明瞭に区別するために、画像例における欠陥のない正常部分の背景画像特性値の範囲(上下限)または欠陥部分の欠陥画像特性値の範囲(上下限)である。例えば、256階調の画像例で背景画像特性値を用いて正常部分と欠陥部分とを区別する場合、背景画像特性値の色相の上限を34、下限を14とするように背景画像特性値の色相の範囲を設定することにより、欠陥候補スライスレベルが設定される。なお、明るさ及び彩度についても、色相と同様に範囲を設定することにより、正常部分と欠陥部分とを明瞭に区別することができる。
【0026】
そして、上記欠陥画像スライスレベルに基づき、レファレンスサンプルの画像例における階調値を利用して、例えば検査対象物Mの微分干渉画像における背景と欠陥とを黒色と白色とに区別する。この2値化された画像の白色または黒色の部分が欠陥候補として選定される。
【0027】
欠陥面積判定値は、上記のようにエラーになり得る欠陥の最小面積であり、選定された欠陥候補の中からその面積が所定の大きさ以上のものを抽出するための設定値である。例えば、レファレンスサンプルに含まれるエラーを生じさせる最小サイズの欠陥の面積により決定される。
【0028】
このエラーになる欠陥の最小面積を決定するには、まず、欠陥を含む上記レファレンスサンプルを各情報記録媒体で使用されるドロップアウト測定機により測定して、出力低下がエラーとなる境界付近の箇所を1つまたは複数特定する。次に、表面欠陥検査装置1で観察されるレファレンスサンプルの画像例を、上記欠陥候補スライスレベルにより例えば2値化処理して、エラー箇所における欠陥の欠陥画像の面積を求める。ここで求めた面積が欠陥のエラーになる最小面積、すなわち欠陥面積判定値となる。この面積は、画像処理装置5での画像処理のため、画素数を単位として表してもよいし、実面積(μm)で表してもよい。
【0029】
なお、以上の初期設定は、検査対象物Mの情報記録媒体の種類が変わる度に、その検査対象物Mの情報記録媒体と同種のレファレンスサンプルを用いて行われる。それは、磁気テープ等の磁気記録媒体を含む情報記録媒体は、その種類によって情報記録面の光の反射率等が大幅に異なり得るからである。
以上の初期設定が終了した後、実際の検査作業を開始する。
【0030】
(A−2)検査作業は、次のようにして行われる。
検査対象物Mの情報記録媒体をXYステージ2の載物台21にセットし、検査対象物Mにフォーカスを合わせるためにピント調整を行う(S2)。そして、色及び輝度を調整するために、微分干渉プリズム33の位置調整を行う(S3)。調整後、微分干渉顕微鏡3で情報記録媒体表面の微分干渉画像を観察し、CCDカメラ4でこの微分干渉画像が撮像されると、これを画像処理装置5に送信する(S4)。CCDカメラ4では、微分干渉顕微鏡3により情報記録媒体の表面形状が明るさまたは色の違いの微分干渉画像として得られる。なお、ここで得られる微分干渉画像は、256階調のカラー画像とする。
【0031】
そして、画像処理装置5では、CCDカメラ4から取り込まれた微分干渉画像に対して必要に応じて空間フィルタ処理が施される(S5)。すなわち、欠陥部分では画像特性値が大きく変化するため空間フィルタ処理で除去されないが、正常部分では緩やかに画像特性値が変化するため、この空間フィルタ処理を行うことにより、背景画像のゆらぎやゆるやかな傾斜を除去することができる。例えば、空間フィルタ処理は、微分干渉画像に対し、階調値(例えば、256階調)を微分して、直流成分(DC成分)を除いて積分することにより行われる(微分フィルタ処理、積分フィルタ処理)。これにより、情報記録媒体が僅かに波打っていた場合や照明光の光量分布が一定でない場合等によって生じる画像ムラが平準化されて、欠陥検査に際しての誤差要因が除去される。
【0032】
次に、この微分干渉画像に対して、上記背景画像特性値に基づいて欠陥のない正常部分の明るさ、色相、彩度が設定され、この後、上記で設定された欠陥候補スライスレベルに基づいて欠陥候補を選定する処理が行われる(S6)。この欠陥候補選定処理では、例えば、上記欠陥候補スライスレベル上限下限の範囲内の階調値以上を白色とし、このスライスレベル上限下限の範囲外の階調値未満を黒色とする処理が行われる。これにより、検査対象物Mの情報記録媒体の微分干渉画像は、背景と欠陥とが白色と黒色とに明確に区別される。
【0033】
なお、欠陥候補を抽出する他の方法として、CCDカメラ4で撮像した微分干渉画像に対して、欠陥画像特性値に基づいて欠陥部分の明るさ、色相、彩度を設定し、同様に欠陥候補スライスレベルに基づき欠陥候補を選定するようにしてもよい。
また、上記の欠陥候補の選定に際して、欠陥部分と正常部分とを白黒表示させる2値化処理を行うことなく欠陥候補を選定するようにしてもよい。例えば、微分干渉画像に対して、背景画像特性値の明るさ、色相、彩度の少なくとも1つに基づいて、背景画像特性値の範囲から外れた部分を欠陥候補として選定するか、あるいは欠陥画像特性値の明るさ、色相、彩度の少なくとも1つに基づいて、欠陥画像特性値の範囲内の部分を欠陥候補として選定してもよい。
【0034】
次に、上記ようにして選定された欠陥候補の1視野あたりの欠陥数Kを画像処理装置5登録する(S7)。
次に、欠陥候補と選別された各欠陥について、上記で設定された欠陥面積判定値以上かどうかがそれぞれ判定され(S8)、欠陥面積判定値以上の面積を有する欠陥の場合、真にエラーに対応する欠陥として抽出し(S9)、欠陥面積判定値より小さい面積を有する欠陥の場合、欠陥でないと判定する(S10)。そして、測定視野を変更して上記検査作業を繰り返すことにより、情報記録媒体表面の所定範囲を検査することができる。このように、各欠陥候補の中でエラーとなり得る最小サイズの面積以上の欠陥のみを抽出することにより、真にエラーに対応する欠陥を抽出することができる。これにより、情報記録媒体の欠陥を精度良く検出でき、その結果、表面欠陥数の管理および多数発生原因の解明やその対策を適切に行うことが可能となる。
【0035】
[表面欠陥検査方法B]
上記表面欠陥検査方法Aでは欠陥の形状を区別せずに、エラーとなり得る欠陥を抽出したが、本形態の表面欠陥検査方法Bは、情報記録媒体表面の欠陥を、突起欠陥と凹み欠陥とに区別し、欠陥の形状ごとに真にエラーに対応する各欠陥を抽出する点で表面欠陥検査方法Aと異なっている。
【0036】
すなわち、情報記録媒体ではヘッドが媒体表面をトレースすることにより記録された情報が読み取られるため、突起欠陥があるとその突起部分でヘッドが浮上し、いわゆるスペーシングロスが発生するが、凹み欠陥ではヘッドが浮上しない。従って、突起欠陥のエラーに結びつく大きさ(面積)は凹み欠陥のそれよりも小さい。このため、欠陥の形状の相違によりエラーへの影響度が異なる。
【0037】
図6は、情報記録媒体としての磁気テープについて、情報の記録再生時における磁気テープとヘッドの状態と共に、欠陥の種類によるエラーへの影響範囲を示す。この図6(a)に示すように、欠陥が凹みの場合は、この凹み上をヘッドがトレースする際には、ヘッドに対する磁気テープの浮上が起こらないので、出力の落ち込みは凹みの部分でのみ生じ、エラーへの影響は小さい(図6(c))。一方、図6(b)に示すように、欠陥が突起の場合は、この突起上を磁気ヘッドがトレースする際には、ヘッドに対して突起周辺で磁気テープが大きく浮上するためヘッドと磁気テープとの間のスペーシングロスが大きくなり、出力の落ち込みは、突起の周辺にまで及び、エラーへの影響が大きくなる(図6(d))。
【0038】
従って、突起欠陥は、微分干渉画像で観察される面積が凹み欠陥と同じ面積であってもエラーへの影響が大きいことから(図6参照)、凹み欠陥面積判定値のみで欠陥候補から突起欠陥が抽出されると、この凹み欠陥面積判定値よりも小さいがエラーを起こす突起の欠陥を見逃すおそれがある。一方、凹みの欠陥は、突起欠陥よりも大きな面積であってもエラーへの影響が少ないことから(図6参照)、突起欠陥面積判定値のみで欠陥候補から凹み欠陥を抽出すると、この突起欠陥面積判定値よりも大きいがエラーとならない凹み欠陥までも抽出されるおそれがある。
【0039】
そこで、このような心配もなく、真にエラーとなり得る欠陥を精度良く抽出するため、欠陥が凹みか突起かを区別して検出することは有意義となる。本形態の表面欠陥検査方法によれば、このような欠陥の種類に応じて、各欠陥を抽出することができる。以下、この表面欠陥検査方法について、図3の処理フローを参照して説明する。
【0040】
(B−1)最初に表面欠陥検査装置の初期設定を行う(S11)。
本形態の表面欠陥検査方法において、検査対象物Mの情報記録媒体と同種であってエラーとなる境界の大きさの欠陥を含むレファレンスサンプルを用いて、背景画像特性値または欠陥画像特性値、及び欠陥候補スライスレベルを設定する初期設定の方法は、表面欠陥検査方法Aにおける初期設定の設定方法と同様であるが、欠陥面積判定値としては、突起欠陥面積判定値と凹み欠陥面積判定値がそれぞれ設定される。
【0041】
この突起欠陥面積判定値及び凹み欠陥面積判定値は、選定された欠陥候補の中から真にエラーに結びつく突起欠陥と凹み欠陥を抽出するための欠陥の最小の大きさ(面積)の設定値であり、レファレンスサンプルに含まれるエラーを生じさせる最小サイズの各欠陥の面積により決定される。
【0042】
このエラーになる各欠陥の最小面積を決定するには、まず、欠陥を含む上記レファレンスサンプルを各情報記録媒体で使用されるドロップアウト測定機により測定して、出力低下がエラーとなる境界付近の箇所を複数特定する。次に、特定された欠陥箇所について、例えば、表面形状測定機で解析し、その欠陥が凹みか突起かを判別する。この表面形状測定機としては、例えば、ZYGO社製の3次元表面構造解析装置NewView5000等を用いることができる。そして、表面欠陥検査装置1で観察されるレファレンスサンプルの画像例を、上記欠陥候補スライスレベルにより例えば2値化処理して、エラー箇所における突起欠陥と凹み欠陥の欠陥画像のそれぞれの面積を求める。ここで求めた面積が突起欠陥と凹み欠陥のエラーになる最小面積、すなわち突起欠陥面積判定値及び凹み欠陥面積判定値となる。この面積は、画像処理装置5での画像処理のため、画素数を単位として表してもよいし、実面積(μm)で表してもよい。
なお、上記の初期設定が、検査対象物Mの情報記録媒体の種類が変わる度に、その検査対象物Mの情報記録媒体と同種のレファレンスサンプルを用いて行われるのは表面欠陥検査方法Aと同様である。以上の初期設定が終了した後、実際の検査作業を開始する。
【0043】
(B−2)検査作業は、次のようにして行われる。
表面欠陥検査方法Aと同様にして、検査対象物Mの情報記録媒体をセットし、ピント調整し(S12)、色及び輝度を調整するために、微分干渉プリズム33の位置調整を行い(S13)、微分干渉顕微鏡3で観察された情報記録媒体表面の微分干渉画像を画像処理装置5に送信し(S14)、微分干渉画像に対して必要に応じて空間フィルタ処理を行い(S15)、この微分干渉画像に対して、背景画像特性値に基づいて欠陥のない正常部分の明るさ、色相、彩度を設定し、さらに、欠陥候補スライスレベルに基づいて欠陥候補を選定する(S16)。なお、表面欠陥検査方法Aと同様に、背景画像特性値の代わりに欠陥画像特性値を用いてもよい。
【0044】
次に、上記ようにして選定された欠陥候補の1視野あたりの欠陥数Kを画像処理装置5登録する(S17)。そして、欠陥候補として選定されたそれぞれの箇所の微分干渉画像におけるシャー方向(シャー量が増加する方向)に沿った画像特性値のパターンに基づいてその欠陥が凹みか突起かを区別する(S18)。すなわち、微分干渉画像では、欠陥の斜面の向きによって明暗のコントラストが逆転して観察され、凹みの場合は最深部の前後、突起の場合は頂点部の前後において明暗のコントラストのパターンが異なる(図5参照)。そこで、この特性を利用して、選定された欠陥候補が突起欠陥候補であるか凹み欠陥候補であるかを区別することができる。
【0045】
次に、凹み欠陥候補と選別された各欠陥候補について、上記で設定された凹み欠陥面積判定値以上かどうかがそれぞれ判定され(S19)、凹み欠陥面積判定値以上の面積を有する凹み欠陥の場合、真にエラーに対応する凹み欠陥として抽出し(S20)、凹み欠陥面積判定値より小さい面積を有する凹み欠陥の場合、欠陥でないと判定する(S21)。同様に、突起欠陥候補として選別された各欠陥候補についても、上記で設定された突起欠陥面積判定値以上かどうかがそれぞれ判定され(S22)、突起欠陥面積判定値以上の面積を有する突起欠陥の場合、真にエラーに対応する突起欠陥として抽出し(S23)、突起欠陥面積判定値より小さい面積を有する突起欠陥の場合、欠陥でないと判定する(S24)。そして、測定視野を変更して上記検査作業を繰り返すことにより、情報記録媒体表面の所定範囲を検査することができる。このように、各欠陥候補を突起か凹みかで区別し、さらに各欠陥候補の中でエラーとなり得る最小サイズの面積以上の欠陥のみを抽出することにより、欠陥の種類に応じて真にエラーに対応する欠陥を抽出することができる。これにより、情報記録媒体の欠陥を欠陥の種類に応じて精度良く検出でき、その結果、表面欠陥数の管理および多数発生原因の解明やその対策を適切に行うことが可能となる。
【0046】
[表面欠陥検査方法C]
上記表面欠陥検査方法Bでは、欠陥候補の選定後に突起欠陥候補と凹み欠陥候補を選別し、さらに、各欠陥候補についてそれぞれの欠陥面積判定値に基づき欠陥判定が行われているが、欠陥部分の画像特性値のパターンの相違を利用してパターン抽出することにより微分干渉画像から欠陥を突起欠陥グループと凹み欠陥グループとに分類した後、各グループから欠陥候補を選定し、さらに各欠陥面積判定値に基づき真にエラーに対応する欠陥を抽出してもよい。以下、この表面欠陥検査方法について、図4の処理フローを参照して説明する。
【0047】
(C−1)最初に表面欠陥検査装置の初期設定を行う(S31)
初期設定では、表面欠陥検査方法Aと同様にして、背景画像特性値または欠陥画像特性値、及び欠陥候補スライスレベルを決定し、表面欠陥検査方法Bと同様にして、突起欠陥と凹み欠陥の各欠陥面積判定値を決定する。
なお、上記の初期設定が、検査対象物Mの情報記録媒体の種類が変わる度に、その検査対象物Mの情報記録媒体と同種のレファレンスサンプルを用いて行われるのは表面欠陥検査方法Aと同様である。
【0048】
(C−2)検査作業は、次のようにして行われる。
まず、微分干渉顕微鏡3の調整を行い、微分干渉画像を撮像し、必要に応じて空間フィルタ処理を行うことは他の方法と同様である(S32〜S35)。
次に、微分干渉画像における欠陥部分のシャー方向(シャー量が増加する方向)に沿った画像特性値のパターンに基づいてパターン抽出することにより欠陥を突起欠陥グループと凹み欠陥グループに分類し、グループごとに画像処理装置5に登録する(S36)。
【0049】
次に、登録された各グループに対して、表面欠陥検査方法Bと同様にレファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定し、各欠陥候補(例えば、突起欠陥の欠陥数:m個,凹み欠陥の欠陥数:n個)を選定する(S37,S38)。これにより、正常部分と欠陥部分を明瞭に判別することができる。
【0050】
次に、選定されたn個の凹み欠陥候補について、上記表面欠陥検査方法Bと同様にレファレンスサンプルから設定される凹み欠陥面積判定値以上かどうかがそれぞれ判定され(S39)、凹み欠陥面積判定値以上の面積を有する凹み欠陥の場合、真にエラーに対応する凹み欠陥として抽出し(S40)、凹み欠陥面積判定値より小さい面積を有する凹み欠陥の場合、欠陥でないと判定する(S41)。同様に、突起欠陥候補として選定されたm個の突起欠陥候補についても、レファレンスサンプルから設定される突起欠陥面積判定値以上かどうかがそれぞれ判定され(S42)、突起欠陥面積判定値以上の面積を有する突起欠陥の場合、真にエラーに対応する突起欠陥として抽出し(S43)、突起欠陥面積判定値より小さい面積を有する突起欠陥の場合、欠陥でないと判定する(S44)。これにより、情報記録媒体の欠陥を欠陥の種類に応じて精度良く検出でき、表面欠陥数の管理および多数発生原因の解明やその対策を適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態に係る表面欠陥検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一形態に係る表面欠陥検査方法を示す処理フローである。
【図3】本発明の他の形態に係る表面欠陥検査方法の検査方法を示す処理フローである。
【図4】本発明の他の形態に係る表面欠陥検査方法の検査方法を示す処理フローである。
【図5】欠陥の種類別の画像特性値のパターンを示す模式図であり、同図(a)は凹みの欠陥がある場合のパターンを示し、同図(b)は突起の欠陥がある場合のパターンを示す。
【図6】情報記録媒体に対し、ヘッドでトレースしている状態を示すと共に、情報記録媒体における欠陥を含む箇所に情報を記録した場合のエラーの影響範囲を示す模式図である。同図(a)は凹みの欠陥がある情報記録媒体に対してヘッドがトレースしている状態を示し、同図(b)は突起の欠陥がある情報記録媒体に対してヘッドがトレースしている状態を示し、また、同図(c)は情報記録媒体の凹み欠陥がある箇所におけるエラーの影響範囲を示し、同図(d)は情報記録媒体の突起欠陥がある箇所におけるエラーの影響範囲を示す。
【符号の説明】
【0052】
1 表面欠陥検査装置
2 XYステージ
3 微分干渉顕微鏡
4 CCDカメラ(撮像装置)
5 画像処理装置
6 制御装置
M 検査対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報記録媒体の表面の欠陥を検査する表面欠陥検査方法であって、
情報記録媒体表面の微分干渉画像を撮像し、
上記微分干渉画像に対して、エラーとなる欠陥を含むレファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定し、
上記欠陥候補スライスレベルが設定された微分干渉画像を用いて欠陥候補を選定し、
上記欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの欠陥の面積に基づく欠陥面積判定値以上のものをエラーに対応する欠陥として抽出する表面欠陥検査方法。
【請求項2】
情報記録媒体の表面の欠陥を検査する表面欠陥検査方法であって、
情報記録媒体表面の微分干渉画像を撮像し、
上記微分干渉画像に対して、エラーとなる欠陥を含むレファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定し、
上記欠陥候補スライスレベルが設定された微分干渉画像を用いて欠陥候補を選定し、
上記微分干渉画像におけるシャー方向に沿った欠陥候補の画像特性値のパターンに基づき、上記欠陥候補を突起欠陥候補と凹み欠陥候補とにそれぞれ選別し、
上記突起欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの突起欠陥の面積に基づく突起欠陥面積判定値以上のものをエラーに対応する突起欠陥として抽出し、
上記凹み欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの凹み欠陥の面積に基づく凹み欠陥面積判定値以上のものをエラーに対応する凹み欠陥として抽出する表面欠陥検査方法。
【請求項3】
情報記録媒体の表面の欠陥を検査する表面欠陥検査方法であって、
情報記録媒体表面の微分干渉画像を撮像し、
上記微分干渉画像におけるシャー方向に沿った欠陥の画像特性値のパターンに基づき、上記情報記録媒体の表面の欠陥を突起欠陥グループと凹み欠陥グループとに選別し、
上記微分干渉画像に対して、エラーとなる欠陥を含むレファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定し、
上記欠陥候補スライスレベルが設定された微分干渉画像を用いて、上記突起欠陥グループから突起欠陥候補を、上記凹み欠陥グループから凹み欠陥候補をそれぞれ選定し、
上記突起欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの突起欠陥の面積に基づく突起欠陥面積判定値以上のものをエラーに対応する突起欠陥として抽出し、
上記凹み欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの凹み欠陥の面積に基づく凹み欠陥面積判定値以上のものをエラーに対応する凹み欠陥として抽出する表面欠陥検査方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面欠陥検査方法において、
上記欠陥候補スライスレベルは、上記レファレンスサンプルの欠陥を含む画像例中の欠陥部分を除いた背景画像に基づいて設定されるか、または上記レファレンスサンプルの欠陥を含む画像例中の欠陥部分の欠陥画像に基づいて設定される表面欠陥検査方法。
【請求項5】
情報記録媒体表面の微分干渉像を観察する微分干渉顕微鏡と、
上記微分干渉顕微鏡で観察される微分干渉像を撮像する撮像装置と、
上記撮像装置で撮像された微分干渉画像を用いて、エラーに対応する欠陥を抽出する画像処理装置とを備えた情報記録媒体の表面の欠陥を検査する表面欠陥検査装置であって、
上記画像処理装置は、
上記微分干渉画像に対してエラーとなる欠陥を含むレファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定し、
上記欠陥候補スライスレベルが設定された微分干渉画像を用いて欠陥候補を選定し、
上記欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの欠陥の面積に基づく欠陥面積判定値以上のものを上記エラーに対応する欠陥として抽出する表面欠陥検査装置。
【請求項6】
情報記録媒体の表面の微分干渉画像を観察する微分干渉顕微鏡と、
上記微分干渉顕微鏡で観察される微分干渉画像を撮像する撮像装置と、
上記撮像装置で撮像された微分干渉画像を用いて、エラーに対応する突起欠陥と凹み欠陥を抽出する画像処理装置とを備えた情報記録媒体の表面の欠陥を検査する表面欠陥検査装置であって、
上記画像処理装置は、
上記微分干渉画像に対してエラーとなる欠陥を含むレファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定し、
上記欠陥候補スライスレベルが設定された微分干渉画像を用いて欠陥候補を選定し、
上記微分干渉画像におけるシャー方向に沿った欠陥候補の画像特性値のパターンに基づき、上記欠陥候補を突起欠陥候補と凹み欠陥候補とにそれぞれ選別し、
上記突起欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの突起欠陥の面積に基づく突起欠陥面積判定値以上のものを上記エラーに対応する突起欠陥として抽出し、
上記凹み欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの凹み欠陥の面積に基づく凹み欠陥面積判定値以上のものを上記エラーに対応する凹み欠陥として抽出する表面欠陥検査装置。
【請求項7】
情報記録媒体の表面の微分干渉画像を観察する微分干渉顕微鏡と、
上記微分干渉顕微鏡で観察される微分干渉画像を撮像する撮像装置と、
上記撮像装置で撮像された微分干渉画像を用いて、エラーに対応する突起欠陥と凹み欠陥を抽出する画像処理装置とを備えた情報記録媒体の表面の欠陥を検査する表面欠陥検査装置であって、
上記画像処理装置は、
上記微分干渉画像におけるシャー方向に沿った欠陥の画像特性値のパターンに基づき、上記情報記録媒体の表面の欠陥を突起欠陥グループと凹み欠陥グループとに選別し、
上記微分干渉画像に対して、エラーとなる欠陥を含むレファレンスサンプルの画像例に基づく欠陥候補スライスレベルを設定し、
上記欠陥候補スライスレベルが設定された微分干渉画像を用いて、上記突起欠陥グループから突起欠陥候補を、上記凹み欠陥グループから凹み欠陥候補をそれぞれ選定し、
上記突起欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの突起欠陥の面積に基づく突起欠陥面積判定値以上のものを上記エラーに対応する突起欠陥として抽出し、
上記凹み欠陥候補のうち、その面積がエラーとなる最小サイズの凹み欠陥の面積に基づく凹み欠陥面積判定値以上のものを上記エラーに対応する凹み欠陥として抽出する表面欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−75034(P2009−75034A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246580(P2007−246580)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】