説明

表面異物検査装置

【課題】品質に問題とならないケーキ表面のケーキ崩れ、ケーキ片、表面凹凸により生じた影及び容器側面に付着したケーキ粉等と、品質に問題となる異物とを正確に識別して検出する。
【解決手段】ケーキ表面に対して一対のカメラ10,11を対角上に配置し、照明6はケーキ表面が均一に照射されるように拡散して片方のカメラ側に配置し、照明と反対側のカメラではケーキ崩れ、ケーキ片、表面凹凸部分に照明側のカメラに比べて影が出やすくする。異物は、ケーキ表面が照射されているため各々のカメラから明暗差を落とさず見ることができる。この特徴を利用して、双方のカメラで明暗差が発生している部分を異物として抽出し、片方のカメラのみで明暗差が発生している部分は、ケーキ崩れ、ケーキ片、表面凹凸による影と判定し、良品扱いとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に収納された凍結乾燥製剤に混入した異物を正確に識別して検出する、表面異物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬剤等の一形態として、溶液中の固形物を凍結乾燥法等で乾燥抽出した固形物である凍結乾燥製剤(以下ケーキという)を容器に充填して用いている。ケーキには、製造過程で数10μm程度の微細な金属片、繊維、ガラス片、ゴム、プラスチック等の異物が混入する可能性があり、これらを含む容器を不良品として検出し除去している。
【0003】
上記の表面異物検査装置の従来技術に関し、特許文献1には、ケーキの全周囲方向から拡散光で照明を行って撮像することにより、ケーキ表面の明暗差を緩和するようにする技術が開示されている。この場合、単純な均一照明ではケーキ表面凹凸部の影が検出対象の異物と区別できないため拡散光を用いているが、明暗差を緩和すると微細な異物の明暗差まで緩和され異物の検出が難しくなる。
【0004】
また、特許文献2には、検出画像情報からケーキ自身に起因する画像を帯域処理による上限値以上及び下限値以下の信号として除去処理するステップと、近接する3点の明るさを比較するステップと、面積演算のステップとにより、ケーキ崩れ、ケーキクラック(割れ)等に対し異物のみを識別して検出する異物検査方法が開示されている。これは異物と同等程度の明暗差となるケーキ崩れ、クラック等との区別ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−36949号公報
【特許文献2】特開平6−138056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ケーキには、微細な異物が混入する場合があり、不良品として取り除かなければならない。しかし、ケーキ表面のケーキ崩れ、ケーキクラック、ケーキ片、表面凹凸により生じた影及び容器側面に付着したケーキ粉等が、異物と同等な明暗差として画像上見える場合がある。ケーキは、これらケーキ崩れ、ケーキ片、表面凹凸、ケーキ紛が生じても特に品質に問題はない良品であるため、異物と区別して検出する必要がある。
【0007】
本発明は、容器に収納されたケーキに混入しケーキ表面に露出した異物と、良品とすべきケーキ自体の崩れや割れ、表面に付着したケーキ片、ケーキ表面凹凸等による影、及び容器側面に付着したケーキ粉等を識別して検出することのできる凍結乾燥製剤の表面異物検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、容器内の凍結乾燥製剤を撮像する撮像手段と、前記凍結乾燥製剤表面を照明する上部照明手段と、前記撮像手段による撮像画像を処理して異物検出を行う制御装置を有する表面異物検査装置において、前記撮像手段は、前記凍結乾燥製剤を収納する容器を一側面から撮像する第1撮像手段と、前記容器を挟んで前記第1撮像手段と対向して設けられた第2撮像手段を有し、前記上部照明手段は前記1撮像手段と第2撮像手段のいずれかの撮像方向に沿って前記凍結乾燥製剤を照明し、前記制御装置は前記1撮像手段と第2撮像手段の撮像画像から明暗差画像を抽出する明暗差抽出手段と、前記明暗差画像を共通座標に変換するワールド座標変換手段と、前記明暗差画像を比較する明暗差検出座標比較手段と、異物を抽出する異物抽出判定手段とを有することを特徴とする。
【0009】
また、表面異物検査装置において、前記上部照明手段をライン状の光を照射するライン照明手段としたことを特徴とする。
【0010】
また、表面異物検査装置において、前記ライン照明手段の光を拡散板を介して照射することを特徴とする。
【0011】
また、表面異物検査装置において、前記容器内の凍結乾燥製剤を側方または下方の少なくとも一方から照明する側方照明手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
また、表面異物検査装置において、前記側方照明手段は、少なくとも前記1撮像手段と同方向から照明する第1側方照明手段と、前記第2撮像手段と同方向から前記容器内の凍結乾燥製剤を照射する第2側方照明手段を有することを特徴とする。
【0013】
また、表面異物検査装置において、前記側方照明手段は、二次元発光面を有する面照明手段からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、容器内の凍結乾燥製剤を撮像する撮像手段と、凍結乾燥製剤を照明する上部照明手段と、撮像手段による撮像画像を処理して異物検出を行う制御装置を有する表面異物検査装置において、撮像手段は凍結乾燥製剤を収納する容器を一側面から撮像する第1撮像手段と、容器を挟んで第1撮像手段と対向して設けられた第2撮像手段を有し、上部照明手段は第1撮像手段と第2撮像手段のいずれかの撮像方向に沿って凍結乾燥製剤を照明し、制御装置は第1撮像手段と第2撮像手段の撮像画像から明暗差画像を抽出する明暗差抽出手段と、明暗差画像を共通座標に変換するワールド座標変換手段と、明暗差画像を比較する明暗差検出座標比較手段と、異物を抽出する異物抽出判定手段とを有することにより、ケーキ表面のケーキ崩れ、ケーキクラック、付着ケーキ片、ケーキ表面凹凸等により生じた影及び容器側面に付着したケーキ粉等が、異物と同等な明暗差として撮像画像上に見えてもこれらを除外し、異物を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例を示す模式図。
【図2】本発明の実施例の制御装置を示すブロック図。
【図3】本発明の実施例の処理ステップを示すフローチャート。
【図4A】カメラ10の撮像画像を示す説明図。
【図4B】カメラ11の撮像画像を示す説明図。
【図5A】カメラ10のワールド座標系撮像画像を示す説明図。
【図5B】カメラ11のワールド座標系撮像画像を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を実施例について説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の実施例である凍結乾燥製剤の表面異物検査装置の全体構成を示す模式図である。図1において、本発明実施例の表面異物検査装置は第1撮像手段であるカメラ10、第2撮像手段であるカメラ11を不透明なキャップCを有する透明な容器1及びこれに収納されたケーキ2を挟んで両側面上方に対向して配置し、透明な容器1内のケーキ2を斜め上方の2方向から撮像する。
【0018】
照明については、まず容器1上方から上部照明手段であるライン照明6及びその光路上に設けた拡散板7により光を拡散させて、ケーキ2全体を均一に照射する。なお、ライン照明6は、ケーキ2の表面凹凸4による影5を明瞭に出すために一方のカメラ11の撮像方向に沿って配置する。
【0019】
つぎに、容器1側面下方両側から、側方照明手段として二次元発光面を有する有機発光パネル等からなる面照明8、9を各々のカメラ10、11の斜め下方からケーキ2表面に発生するクラックを照射する事によって、クラック等による強い明暗差を緩和する。通常は容器1下部は搬送装置で固定され不透明であるが、台座13のように搬送装置の構造を工夫すれば下部方向から面照明12を照射することもできる。
【0020】
図1に示す光学系は、ライン照明6が設置されている位置と反対側のカメラ10の撮像画像ではケーキ崩れ、ケーキクラック、ケーキ片、表面凹凸部分4に影が出じやすい。しかしカメラ11の撮像画像ではこれらによる影が出じにくい。一方、異物3は、ケーキ表面全体が均一に照射されているため、各々のカメラ10、11の撮像画像の双方から明暗差を落とさず明瞭に撮像することができる。
【0021】
100は、カメラ10、11およびライン照明6、面照明8、9の照明系を制御するとともに、撮像画像から異物を抽出する画像処理を行う制御装置である。図2に示す制御装置100のブロック図において、カメラ10が撮像した第1撮像画像とカメラ11が撮像した第2撮像画像は、各々明暗差検出手段101により明暗差データを抽出され、ワールド座標変換手段102で、共通座標に変換された後、明暗差検出座標比較手段103により明暗差データを比較した後、異物抽出判定手段104により両データに共通する物体を異物として判定したのち、外部に出力され表示されると共に、表面異物検査装置により異物が検出されたケーキを含む容器1が製造検査ラインから除去される。
【0022】
図3は、本発明の異物検査処理手順を示すフローチャートである。始めにカメラ10、カメラ11で透明な容器1内のケーキ2を斜め上方の2方向から同時に撮像する(S31、S32)。次にカメラ10で撮像した画像から画像処理にて明暗差部分を検出し(S33)、検出した明暗差部分の座標系をワールド座標系に変換する(S34)。さらにカメラ11で撮像した画像から画像処理にて明暗差部分を検出し(S35)、検出した明暗差部分の座標系をワールド座標系に変換する(S36)。
【0023】
S34、S36で共にワールド座標系に変換したカメラ10及びカメラ11の撮像画像の明暗差検出部分座標が同じであるかどうかを判別する(S37)。各撮像画像の明暗差検出部分座標が同じであれば異物と判定する(S38)。また、明暗差検出部分座標が異なるか片方のカメラの撮像画像にしか明暗差が存在しない場合は、検出した明暗差部分はケーキ崩れ、ケーキクラック、ケーキ片、ケーキ表面凹凸部分4の影と判定する。
【0024】
図4Aは、S31でカメラ10で撮像した画像である。ケーキ表面の異物3が暗トーンで見えるが、ケーキ表面凹凸4による影5も撮像されている。図4Bは、S32でカメラ11で撮像した画像である。カメラ11では撮像方向にライン照明6が照射されているためケーキ表面凹凸4による影は発生せず、ケーキ表面の異物3のみが撮像される。
【0025】
図5Aは、S34でカメラ10で撮像した画像のうちから明暗差のある部分のみを取り出しワールド座標系に変換した画像である。図5Bは、S36でカメラ11で撮像した画像のうちから明暗差のある部分のみを取り出しワールド座標系に変換した画像である。両画像は共通座標であるワールド座標に変換されている。
【0026】
S37では容器1内のケーキ2を同方向から同一視野で撮像した明暗差画像を図5Aと図5Bで比較することになる。このとき、両画像に共通して存在する明暗差画像は異物を示し、一方の画像にのみ存在する明暗差画像は、照明光の照射条件によって発生消失するものであるから、単なるケーキ自体の形状変化によるもので、異物ではないと判定する。
【符号の説明】
【0027】
1…容器
2…ケーキ
3…異物
4…ケーキ凹凸
5…ケーキ凹凸による影
6…ライン照明
7…拡散板
8、9、12…面照明
10、11…カメラ
13…台座
100…制御装置
101…明暗差抽出手段
102…ワールド座標変換手段
103…明暗差検出座標比較手段
104…異物抽出判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の凍結乾燥製剤を撮像する撮像手段と、前記凍結乾燥製剤表面を照明する上部照明手段と、前記撮像手段による撮像画像を処理して異物検出を行う制御装置を有する表面異物検査装置において、
前記撮像手段は、前記凍結乾燥製剤を収納する容器を一側面から撮像する第1撮像手段と、前記容器を挟んで前記第1撮像手段と対向して設けられた第2撮像手段を有し、前記上部照明手段は前記1撮像手段と前記第2撮像手段のいずれかの撮像方向に沿って前記凍結乾燥製剤を照明し、前記制御装置は前記1撮像手段と前記第2撮像手段の撮像画像から明暗差画像を抽出する明暗差抽出手段と、前記明暗差画像を共通座標に変換するワールド座標変換手段と、前記明暗差画像を比較する明暗差検出座標比較手段と、異物を抽出する異物抽出判定手段とを有することを特徴とする表面異物検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載された表面異物検査装置において、前記上部照明手段をライン状の光を照射するライン照明手段としたことを特徴とする表面異物検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載された表面異物検査装置において、前記ライン照明手段の光を拡散板を介して照射することを特徴とする表面異物検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の表面異物検査装置において、前記容器内の凍結乾燥製剤を側方または下方の少なくとも一方から照明する側方照明手段を設けたことを特徴とする表面異物検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表面異物検査装置において、前記側方照明手段は、少なくとも前記1撮像手段と同方向から照明する第1側方照明手段と、前記第2撮像手段と同方向から前記容器内の凍結乾燥製剤を照射する第2側方照明手段を有することを特徴とする表面異物検査装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の表面異物検査装置において、前記側方照明手段は、二次元発光面を有する面照明手段からなることを特徴とする表面異物検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2012−189351(P2012−189351A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51072(P2011−51072)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】