説明

袋編みによる開口部を有する衣類

【課題】シャツやパンツなどの成形肌着や下着において、袋編で成形した袖口や裾口等の編終り端縁編成部に解れ止め加工を施し、且つ量感や伸縮性パワーなどを付与するようにした衣類に関する。
【解決手段】筒状成形丸編機によって1枚毎に編み立てられ、且つ開口部を有する衣類において、同開口部が袋編によって構成され、且つ該袋編部の編み終わり端縁編成部の部位で熱融着糸を編み込み、且つ湿熱または乾熱による熱処理により、同熱融着糸を同熱融着糸以外の糸に溶着させて構成したもので、袋編部の解れが防止され、且つ無駄な縫着作業が不要となり、品質や能率、着用感などに優れた効果を有する衣類が得られるのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャツやパンツなどの成形肌着や下着において、袋編で成形した袖口や裾口等の編終り端縁部に解れ止め加工を施し、且つ量感や伸縮性パワーなどを付与するようにした衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は、従来の筒状成形丸編機により、筒状成形編みされたパンツの図1のX−X断面に基づく一部断面による概略斜視図である。72は同ウエスト部7の袋編部、75は裾部、76は同裾部75の袋編部、77は裾部75の袋編部72の上端側に設けた接結部で接結糸78を介して構成され、80は編み終わり端縁編成部で接結部77と共に一体的に編成され、且つ同編み終わり端縁編成部80は、平編コース81、82の2コースで編成されている。85は、同平編コース81、82、袋編部76及び身頃部70に一体的に押え縫い85を施した押え縫い部である。
【0003】
尚、編み終わり端縁編成部80の最終端のコースである平編コース82は、特に解れ易いために、前記の如く、裾周り全周に亘って編み終り端縁編成部80の平編コース81、82、袋編部76及び身頃部70に対して一体的に押え縫い85を施し、解れ防止を確実に行うようにしている。しかしウエスト部71の袋編部72の場合は、同袋編部72の編成に続いて身頃部70が、連続編成されているために、裾部75のように編み終わり端縁編成部80である平編コース81、82を必要とせず、従って解れ防止を行う必要はないのである。
【0004】
【特許文献1】特開平10−130907号公報
【特許文献2】登録実用新案第3037437号公報
【特許文献3】登録実用新案第3037439号公報
【特許文献4】実開平62−106901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、裾周り全周に亘って編み終わり端縁編成部と袋編部及び身頃部に対して一体的に押え縫いを施すために、同押え縫いの部位が、凸状に形成され、且つ押え縫いによる肌触りが悪くなって着用感が低下し、更に編み終わり端縁編成部と袋編部及び身頃部に対して一体的に押え縫いを施すことは、それだけ余分な縫着作業を必要とし、生産能率の低下を招くなど、品質や能率面での改善が十分になされていない点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、筒状成形丸編機によって1枚毎に編み立てられる開口部を有する衣類において、同開口部が袋編によって構成され、且つ同袋編部の編み終わり端縁編成部に熱融着糸を編み込み、更に湿熱または乾熱による熱処理を施すことにより、該熱融着糸を該熱融着糸以外の糸に溶着させ、解れ止め加工を施したことを最も主要な特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記袋編部の編み終わり端縁編成部に熱融着糸を編み込み、湿熱または乾熱による熱処理を介して該熱融着糸を該熱融着糸以外の糸に溶着させ、解れ止め加工を施すことにより、従来のように裾周り全周に亘って編み終わり端縁編成部と袋編部及び身頃部に対して一体的に押え縫いを施す必要がなくなり、従って凸状の押え縫いによる肌触り感の悪さが解消されて着用感が向上し、また編み終わり端縁編成部と袋編部及び身頃部に対して一体的に押え縫いを施す従来の無駄な縫着工程が不要となり、生産能率が向上し、更に上記融着加工により、生地端のカールが防止され、量感(嵩高性)や伸縮性パワーが向上する等、品質や能率、着用感などに優れた効果を有する衣類が得られるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、筒状成形丸編機によって1枚毎に編み立てられ、且つ開口部を有する衣類において、同開口部が袋編によって構成され、且つ該袋編部の編み終わり端縁編成部の部位で熱融着糸を編み込み、更に湿熱または乾熱による熱処理により、該熱融着糸を該熱融着糸以外の糸に溶着させて構成したことを特徴とするもので、以下図例に基づいて説明する。1はパンツで、2は前身頃、3は後身頃、32は筒状の身頃生地で、前身頃2及び後身頃3を構成するようにしてあり、5は袋編部6で形成されたウエスト部、7は袋編部8で形成された裾部、9は股部用生地10で形成された股部、11、12は夫々股部用生地10の両端縁に設けた袋編部である。
【0009】
図3において、15は裾部7の袋編部8上端に設けた接結部で接結糸16を介して形成され、18は同袋編部8の編み終わり端縁編成部で接結部15と共に一体的に編成され、且つ編み終わり端縁編成部18は、平編コース20、21で編成されている。尚、同編み終わり端縁編成部18の平編コースとしては、数コース編成するようにしてもよいが、好ましくは1〜2コースの範囲が最適である。また平編コース20、21の糸使いとしては、地糸22と熱融着性糸23による引揃え糸を用いて編成してあり、また地糸22としては綿などの天然繊維又は天然繊維と合成繊維等による適宜の混紡糸を用いるか、又はポリエステル系繊維などの合成繊維を単独で用いるようにしてあり、更に熱融着性糸23としては、ナイロンやポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維等を適宜用いている。
【0010】
また地糸22と熱融着性糸23による引揃え糸を熱処理する手段としては、例えば編立後の成形編立生地を50℃〜70℃の範囲、好ましくは55℃〜65℃の範囲で熱処理することが好ましい。また熱処理する手段としては蒸気などによる湿熱処理(染色加工等)或いは熱風乾燥などによる乾熱処理が好ましく、上記編立生地を熱処理することにより、熱融着性糸23が溶融して編目の交差点で地糸22と熱融着性糸23が、確実に溶融、接着されるのである。
【0011】
図5において、30は筒状成形丸編機によって1枚毎に編み立てられたパンツ1用の成形丸編生地で、32は筒状の身頃生地で、前身頃2及び後身頃3を構成するようにしてあり、更に成形丸編生地30の上方及び下方端縁には、夫々ウエスト部5及び裾部7の袋編部6、8を編成してある。尚、成形丸編生地30を予め湿熱処理(染色加工等)或いは熱風乾燥などによる乾熱処理を施しておくことにより、熱融着性糸23が溶融して編目の交差点で地糸22と熱融着性糸23を確実に溶融、接着しておくことが好ましいのである。また35は成形丸編生地30の下方中間部に設けた円弧状の股部形成用切断ラインで、同ライン35に沿って同生地30を切断することにより、図6のように股部9において円弧状切断部36が形成される。
【0012】
図7において、38は前記同様に筒状成形丸編機によって編み立てられた成形丸編生地で、パンツ1の股部用生地10を形成するようにしたものであり、11、12は夫々前記裾部7と同一の編組織による袋編部、46、46、46・・・は、夫々股部生地形成用の切断ラインで、同ライン46に沿って成形丸編生地38を切断することにより、図8の如く、袋編部11、12を有する長方形状の股部用生地10が、形成されるのである。更に同股部用生地10を前記股部9において凹状に切断された円弧状切断部36側に図10の如く、縫着13、13することにより、股部9が形成されるのである。
【産業上の利用可能性】
【0013】
開口部を有する衣類としては、パンツ以外に袖口や裾口を有するシャツやズボン下などの肌着や下着などに適用可能であり、また筒状の腹巻などにも適用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】パンツの前身側概略斜視図である。
【図2】パンツの後身側概略斜視図である。
【図3】図1のX−X断面に基づく一部断面による概略斜視図である。
【図4】編み終わり端縁編成部における平編の編組織を示した編成図である。
【図5】パンツ形成用の筒状成形丸編生地の概略斜視図である。
【図6】パンツ形成用の筒状成形丸編生地の下方部を凹状に切除した状態の概略斜視図である。
【図7】股部用生地形成用の筒状成形丸編生地の概略斜視図である。
【図8】股部用生地形成用の筒状成形丸編生地を適宜裁断して得られた股部用生地の概略斜視図である。
【図9】パンツ形成用の筒状成形丸編生地の凹状に切除した部位に股部用生地を位置せしめて縫着する際の作業状態を示した作業説明用概略斜視図である。
【図10】パンツの股部に股部用生地を縫着した状態の概略平面図である。
【図11】従来のパンツの身丈方向における一部切欠き断面による概略斜視図である。
【符号の説明】
【0015】
2 前身頃
3 後身頃
5 ウエスト部
6 袋編部
7 裾部
8 袋編部
9 股部用生地
15 接結部
18 編み終わり端縁編成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸編機によって1枚毎に編み立てられる開口部を有する衣類において、同開口部の編み終わり部が袋編によって構成され、且つ同袋編みの編み終わり端縁部に熱融着糸を編み込み、更に湿熱または乾熱による熱処理により、該熱融着糸を該熱融着糸以外の糸に溶着させ、解れ止め加工を施したことを特徴とする袋編みによる開口部を有する衣類。
【請求項2】
熱融着糸が袋編みの編み終わり端縁部の1〜2コースに亘って編み込まれていることを特徴とする袋編みによる開口部を有する請求項1に記載の衣類。
【請求項3】
熱融着糸がナイロン、ポリエステル、ポリウレタンから選ばれたものであり、融点が 50℃〜70℃であることを特徴とする袋編みによる開口部を有する請求項1及び請求項2に記載の衣類。
【請求項4】
衣類がアンダーシャツであり、その開口部が袖口や裾部の少なくとも1つであることを特徴とする袋編みによる開口部を有する請求項1〜請求項3に記載の衣類。
【請求項5】
衣類がパンツであり、その開口部がウエスト、裾口、足口の少なくとも1つであることを特徴とする袋編みによる開口部を有する請求項1〜請求項3に記載の衣類。
【請求項6】
丸編機によって1枚毎に編み立てられ、開口部を有する筒状の成形丸編生地において、同開口部の裾部に相当する編み終わり部が袋編によって構成され、且つ同袋編みの編み終わり端縁編成部に熱融着糸を編み込み、更に湿熱または乾熱による熱処理により、該熱融着糸を該熱融着糸以外の糸に溶着させ、解れ止め加工を施して身頃部を形成し、一方編み始め及び編み終わりを袋編で編成し、且つ股部用生地の幅と同一長さの成形丸編生地を編成し、更に同生地を編立方向において所要幅毎に裁断して股部用生地を作成し、更に前記身頃部の裾部における中央部分を凹状に裁断し、同凹状部に股部用生地を縫着して構成してパンツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−197853(P2007−197853A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15922(P2006−15922)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】