袋編みによる開口部を有する衣類
【課題】シャツやパンツなどの成型肌着等において、袋編で成型した袖口や裾部等の編終り端縁編成部に解れ止め加工を施し、且つ熱融着部に伸縮性を付与すると共に、嵩張り感がなく、着用感に優れた袋編みによる開口部を有する衣類に関する。
【解決手段】筒状成型丸編機によって1枚毎に編み立てられ、且つ開口部を有する衣類において、同開口部が袋編によって構成され、且つ該袋編部の編み終わり端縁編成部の部位で熱融着性弾性糸を編み込み、更に湿熱などの熱処理を施すことにより、同弾性糸による編ループの交差点で同弾性糸同士を熱融着させるか、若しくは相対面した熱融着性弾性糸による編ループ同士を熱融着させ、解れ止め加工を施したことにより、袋編部の解れが防止され、且つ無駄な縫着作業が不要となり、更に伸縮性に優れた熱融着部により肌へのフィット性が良くなる等、優れた効果を有する衣類が得られる。
【解決手段】筒状成型丸編機によって1枚毎に編み立てられ、且つ開口部を有する衣類において、同開口部が袋編によって構成され、且つ該袋編部の編み終わり端縁編成部の部位で熱融着性弾性糸を編み込み、更に湿熱などの熱処理を施すことにより、同弾性糸による編ループの交差点で同弾性糸同士を熱融着させるか、若しくは相対面した熱融着性弾性糸による編ループ同士を熱融着させ、解れ止め加工を施したことにより、袋編部の解れが防止され、且つ無駄な縫着作業が不要となり、更に伸縮性に優れた熱融着部により肌へのフィット性が良くなる等、優れた効果を有する衣類が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型編により形成されるシャツやパンツなどの下着および靴下やストッキング等において、シャツの裾部、パンツの足口、ストッキングのウエスト部などを袋編に編立てした衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、成型編により形成されるシャツやパンツなどの下着および靴下やストッキング等において、シャツの裾部、パンツの足口、ストッキングのウエスト部などを袋編に編立てる、メークアップ(Make−up)編成による衣類の開口部の処理が知られている。(特許文献1および特許文献2)
【0003】
図15は、従来の筒状成型丸編機により、成型編みされたパンツの身丈方向における主要部断面による斜視図を示したもので、70は身頃部、71はウエスト部、72は同ウエスト部71の袋編部、75は裾部、76は同裾部75の袋編部、77は裾部75の袋編部76の上端縁の接結部を表している。
【0004】
裾部75のメークアップ編成は以下のようにされる。ウエスト部71及び身頃部70まで編成された後、身頃部70の端編ループを編み機の上針(ジャック)に持たせた状態で下針によって袋編部76を編成し、袋編部76の終わりで上針に持たせていた身頃部70の端編ループと袋編部76のループを一緒に編成することで、接結部77を形成して袋編部を閉じ、その後に編み終わり端縁編成部80が編成される。ここで、編み終わり端縁編成部80の最終端のコースである平編コース81は、特に解れ易いために、裾周り全周に亘って編み終り端縁編成部80、袋編部76及び身頃部70をオーバー縫い等で一体的に縫着85し、解れ防止を確実に行う必要がある。
【0005】
【特許文献1】特開平1−292153号公報
【特許文献2】特開2000−345407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、裾周り全周に亘って編み終わり端縁編成部、袋編部及身頃部をオーバー縫い等で一体的に縫着するために、同縫着部位が凸状になり、且つ縫着部の肌触りが悪いため着用感が低下する。更に編み終わり端縁編成部、袋編部及び身頃部を一体的に縫着することは、それだけ余分な縫着作業を必要とし、生産能率の低下を招くなど、品質や能率面での改善が十分になされていない点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、丸編機によって1枚毎に編み立てられる開口部を有する衣類において、開口部の編み終わり部が袋編によって構成され、且つ同袋編の編み終わり端縁編成部に熱融着性弾性糸を編み込み、更に湿熱または乾熱による熱処理により、同熱融着性弾性糸同士を編ループの交差点で熱融着させたことを特徴とするものである。
ここで、熱融着性弾性糸とは、湿熱または乾熱による熱処理で互いに熱融着し合い、且つ熱融着部位において伸縮性(弾性)が失われることなく、高度の伸縮性(弾性)を有する弾性糸をいう。
上記熱融着性弾性糸は、袋編みの編み終わり端縁編成部の2〜10コースに亘って編み込まれていることが好ましく、また3〜6コースに亘って編み込まれていることがさらに好ましい。
【0008】
また本発明は、丸編機によって編成された平編地は編み組織の特性上カールし易い傾向があり、また袋編の編み終わり端縁編成部においてもカールするところ、編み終わり端縁編成部の内側に熱融着性弾性糸を編み込み、熱処理することで、相対面する同熱融着性弾性糸同士を熱融着させたことを特徴とするものである。
上記熱融着性弾性糸は、プレーティング編みにより、袋編みの編み終わり端縁編成部の内側に2〜10コースに亘って編み込まれていることが好ましく、また3〜6コースに亘って編み込まれていることがさらに好ましい。
【0009】
また本発明は、上記衣類において、袋編みの編み終わり端縁編成部に熱融着性弾性糸を編み込むと共に、更に非熱融着性のカバリング弾性糸を1〜3コース追加して編み込むことを特徴とするものである。これにより、編み終わり端縁編成部の編み目が密になり、また最も解れやすい最終端がその伸縮性により内側にカールして入り込むことで、さらに解れ難くすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記のように袋編部の編み終わり端縁編成部に熱融着性弾性糸を編み込み、湿熱または乾熱による熱処理を介して同熱融着性弾性糸により編成された編ループの交差点で同熱融着性弾性糸同士を熱融着させて解れ止め加工を施すことで、従来のように裾周り全周に亘って編み終わり端縁編成部、袋編部及び身頃部を一体的に縫着する必要がなくなることで凸状の縫着部位による肌触り感の悪さが解消されて着用感が向上し、また従来の無駄な縫着工程が不要となり、生産能率の向上が図られる。また熱融着性弾性糸を使用することで、熱融着した部位が通常の融着糸のように硬化せず、伸縮性に富んでいるために着用時の感触が柔らかく、身体によく追従するなど優れた着用感が得られる。
【0011】
更に、前記カール状の同袋編の編み終わり端縁編成部の内側に熱融着性弾性糸を編み込み、相対面する同熱融着性弾性糸同士を熱融着ことで、さらに解れ防止が強固になるだけでなく、カール状の編み終わり端縁編成部が平坦状になるため嵩張り感が抑えられる。また熱融着部分がカール状の編み終わり端縁編成部の内側にあり、肌側に露出しないため、優れた外観及び着心地が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、筒状成型丸編機によって1枚毎に編み立てられ、且つ開口部を有する衣類において、同開口部が袋編によって構成され、且つ該袋編部の編み終わり端縁編成部の部位で熱融着性弾性糸を編み込み、更に湿熱または乾熱による熱処理により、編目の交差点で同弾性糸同士を熱融着するか、もしくは相対面した編ループ同士を熱融着させるようにしたもので、以下図例に基づいて説明する。1はパンツで、2は前身頃、3は後身頃、5は袋編部6で形成されたウエスト部、7は袋編部8で形成された裾部、9は股部用生地10で形成された股部、11、12は夫々股部用生地10の両端縁に設けた袋編部であり、13は筒状編生地で、筒状成型丸編機によって1枚毎に編み立てられたパンツ1の成型丸編生地で、前身頃2及び後身頃3を一体的に編成するようにしてある。更に上記成型丸編生地の上方及び下方端縁には、夫々ウエスト部5及び裾部7の袋編部6、8を編成してある。またパンツ1の股部用生地10についても成型丸編生地で編成するようにしてあり、且つ11、12は夫々前記裾部7と同一の編組織による袋編部である。
【0013】
図4において、15は裾部7の袋編部8上端に設けた接結部、18は同袋編部8の編み終わり端縁編成部で、編み終わり端縁編成部18は平編コースで編成されている。尚、同平編コースの糸使いとしては、地糸と熱融着性弾性糸によるプレーティング編など、適宜に編成するようにしてあり、また地糸としては、ナイロン繊維やポリエステル系繊維などの合成繊維を用いるか、或いは綿などの天然繊維又は天然繊維と合成繊維等による適宜の混紡糸を用いる。
【0014】
更に熱融着性弾性糸としては、ポリウレタン系合成繊維を用い、且つ伸縮性(弾性)に優れ、しかも熱融着性弾性糸同士が互いに熱融着し合い、且つ熱融着部位においては、伸縮性(弾性)が失われることなく、高度の伸縮性(弾性)が保有されるものを用いる。また熱融着性弾性糸としては、オペロンテックス株式会社製ライクラT−178C(「ライクラ」はインビスタ社の登録商標)、旭化成せんい株式会社製ロイカSF(「ロイカ」は旭化成せんい株式会社の登録商標)、日清紡績株式会社製モビロンRL(「モビロン」は日清紡績株式会社の登録商標)が知られている。
【0015】
袋編部8の編み終わり端縁編成部18は、地糸と熱融着性弾性糸によるプレーティング編で平編を編成することが望ましい。また熱融着性弾性糸による平編生地を熱処理する手段としては、蒸気や熱湯などによる湿熱処理、或いは熱風乾燥などによる熱処理などがあるが、染色工程等の加熱処理中で熱融着できれば工程削減になるためより好ましい。
【0016】
尚、パンツ1のウエスト部5及び裾部7の袋編部6、8と股部用生地10の両端縁に設けた袋編部11、12の編組織が、夫々同一の編組織で編成されているが、袋編部6、8、即ち裾部7の袋編部8について、本発明の編み組織の応用例について以下述べる。
【0017】
第1の応用例を、図5及び図8に示す。裾部7の袋編部8における接結部15に続いて、解れ防止用の平編ループ20、21、22の3コースが編成され、且つ平編ループ20、21、22は編成糸50、51による周知のプレーティング編等で編成される。尚、図5及び図8においては、接結部15から直ちに解れ防止用の平編ループ20〜22が編成されているが、接結部15から袋編部8と同様の編地が続いた後に平編ループ20〜22が編成されることも可能である。
【0018】
また編成糸50の糸条としては、熱融着性で且つ伸縮弾性に富んだ110T(デシテックス、以下同様)程度のポリウレタン弾性繊維を、一方、編成糸51の糸条としては、44T/2(双糸)のナイロン繊維などを用いることができる。尚、編成糸51の材料としては、解れ防止用の平編ループ部を維持する強度を有していれば特に制約はないが、染色工程で身生地と同様に染まるものが染色ムラにならず外観上好適である。
【0019】
上記編成した後、適宜の熱処理を施すことにより、図8の如き、編成糸50、51による編ループ20、21、22の各交差点において、ポリウレタン弾性繊維50同士が互いに熱融着して固定され、解れ止め加工が施される。また各編ループの熱融着部が、伸縮性(弾性)に優れているため柔軟性が良く、着用感を損なうことはない。更に、従来のように、裾部7の袋編部8に一体的な縫着を施す必要がないので生産能率が向上し、品質や能率、着用感などに優れた衣類が得られる。
【0020】
第2の応用例を、図6、図9、図11及び図12に示す。応用例1と同様に裾部7の袋編部8における接結部15に続いて、解れ防止用の平編ループ25、26、27、28、29の5コースが編成され、且つ編成糸50、51による周知のプレーティング編を介して、図11の如く、編み終わり端縁編成部18のループ外側(肌側)には編成糸51の編ループが表出し、ループ内側には編成糸50の編ループが位置するように編成するのである。尚、編成糸50、51の糸条としては、応用例1と同様の材料を用いることができる。
【0021】
上記編成した後、適宜の熱処理を施すことにより、図9の如き、編成糸50、51による編ループ25、26、27、28、29の各交差点において、ポリウレタン弾性繊維50同士が互いに熱融着して各編ループが前記同様に熱融着、固定され、解れ止め加工が確実に施される。また更に、例えば図12の如く、編ループ26、25が、夫々編ループ27、28と相対面して、編ループ26、25の一部を形成するポリウレタン弾性繊維50が、編ループ27、28側のポリウレタン弾性繊維と相互に相対面接触し、熱融着され、編ループの交差点と共に、対面編ループ同士が互いに熱融着されることにより、編ループ25、26、27、28、29が、夫々互いに強固に固定され、より解れ難くなる。
【0022】
また上記のように各編ループを相互に対面接触させて熱融着させることにより、平編目特有のカールによる凸状を平らにして編み終わり端縁編成部18の厚みを薄くできるため、従来のような凸状の編み終わり端縁編成部がもたらした肌触りの悪さが解消されると共に、着用時の引っかかりが少なくなるため解れ難い。
【0023】
第3の応用例を、図10、図13及び図14に示す。応用例2における編ループ25、26、27、28、29に続いて編ループ30、31を追加編成したものである。尚、編ループ30、31は、1本のカバリング糸、または同じもしくは異なる2本のカバリング糸をプレーティング編等により編成したもので、例えば、ナイロン繊維50デニールに対してポリウレタン弾性繊維20デニールをカバリングした糸や、ナイロン繊維50デニールとポリウレタン弾性繊維18デニールのFTYなどを用いることができる。編ループ30、31を追加編成したことにより、前記応用例2の効果に加え、編み終わり端縁編成部の度目が増えてることで密になり、また最も解れやすい最終端がその伸縮性によりカールして内側に入り込むことで、さらに解れ難くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
開口部を有する衣類としては、前記パンツ以外に、足口やウエスト部を有するズボン下やガードルや、裾部、襟部及び袖口を有するシャツなどの下着、または履き口を有する靴下やウエスト部を有するストッキング、筒状の腹巻などに適用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】パンツの前身側概略斜視図である。
【図2】パンツの後身側概略斜視図である。
【図3】パンツの股部に股部用生地を縫着した状態の概略平面図である。
【図4】図1のX−X断面に基づく一部断面による概略斜視図である。
【図5】図4のP−P断面に基づく概略斜視図である。
【図6】応用例2に基づく裾部における袋編部の概略断面図である。
【図7】応用例3に基づく裾部における袋編部の概略断面図である。
【図8】応用例1の袋編部の編み終わり端縁編成部における編組織図の平面図である。
【図9】応用例2の袋編部の編み終わり端縁編成部における編組織図の平面図である。
【図10】応用例3の袋編部の編み終わり端縁編成部における編組織図の平面図である。
【図11】応用例2の袋編部の編み終わり端縁編成部における編ループの概略断面図である。
【図12】応用例2の袋編部の編み終わり端縁編成部における編ループの対面熱融着した状態の概略断面図である。
【図13】応用例3の袋編部の編み終わり端縁編成部における編ループの概略断面図である。
【図14】応用例3の袋編部の編み終わり端縁編成部における編ループの対面熱融着した状態の概略断面図である。
【図15】従来のパンツの前身側概略断面図である。
【図16】図15のZ−Z断面に基づく概略断面図である。
【符号の説明】
【0026】
2 前身頃
3 後身頃
5 ウエスト部
6 袋編部
7 裾部
8 袋編部
9 股部用生地
13 筒状編生地
15 接結部
18 編み終わり端縁編成部
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型編により形成されるシャツやパンツなどの下着および靴下やストッキング等において、シャツの裾部、パンツの足口、ストッキングのウエスト部などを袋編に編立てした衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、成型編により形成されるシャツやパンツなどの下着および靴下やストッキング等において、シャツの裾部、パンツの足口、ストッキングのウエスト部などを袋編に編立てる、メークアップ(Make−up)編成による衣類の開口部の処理が知られている。(特許文献1および特許文献2)
【0003】
図15は、従来の筒状成型丸編機により、成型編みされたパンツの身丈方向における主要部断面による斜視図を示したもので、70は身頃部、71はウエスト部、72は同ウエスト部71の袋編部、75は裾部、76は同裾部75の袋編部、77は裾部75の袋編部76の上端縁の接結部を表している。
【0004】
裾部75のメークアップ編成は以下のようにされる。ウエスト部71及び身頃部70まで編成された後、身頃部70の端編ループを編み機の上針(ジャック)に持たせた状態で下針によって袋編部76を編成し、袋編部76の終わりで上針に持たせていた身頃部70の端編ループと袋編部76のループを一緒に編成することで、接結部77を形成して袋編部を閉じ、その後に編み終わり端縁編成部80が編成される。ここで、編み終わり端縁編成部80の最終端のコースである平編コース81は、特に解れ易いために、裾周り全周に亘って編み終り端縁編成部80、袋編部76及び身頃部70をオーバー縫い等で一体的に縫着85し、解れ防止を確実に行う必要がある。
【0005】
【特許文献1】特開平1−292153号公報
【特許文献2】特開2000−345407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、裾周り全周に亘って編み終わり端縁編成部、袋編部及身頃部をオーバー縫い等で一体的に縫着するために、同縫着部位が凸状になり、且つ縫着部の肌触りが悪いため着用感が低下する。更に編み終わり端縁編成部、袋編部及び身頃部を一体的に縫着することは、それだけ余分な縫着作業を必要とし、生産能率の低下を招くなど、品質や能率面での改善が十分になされていない点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、丸編機によって1枚毎に編み立てられる開口部を有する衣類において、開口部の編み終わり部が袋編によって構成され、且つ同袋編の編み終わり端縁編成部に熱融着性弾性糸を編み込み、更に湿熱または乾熱による熱処理により、同熱融着性弾性糸同士を編ループの交差点で熱融着させたことを特徴とするものである。
ここで、熱融着性弾性糸とは、湿熱または乾熱による熱処理で互いに熱融着し合い、且つ熱融着部位において伸縮性(弾性)が失われることなく、高度の伸縮性(弾性)を有する弾性糸をいう。
上記熱融着性弾性糸は、袋編みの編み終わり端縁編成部の2〜10コースに亘って編み込まれていることが好ましく、また3〜6コースに亘って編み込まれていることがさらに好ましい。
【0008】
また本発明は、丸編機によって編成された平編地は編み組織の特性上カールし易い傾向があり、また袋編の編み終わり端縁編成部においてもカールするところ、編み終わり端縁編成部の内側に熱融着性弾性糸を編み込み、熱処理することで、相対面する同熱融着性弾性糸同士を熱融着させたことを特徴とするものである。
上記熱融着性弾性糸は、プレーティング編みにより、袋編みの編み終わり端縁編成部の内側に2〜10コースに亘って編み込まれていることが好ましく、また3〜6コースに亘って編み込まれていることがさらに好ましい。
【0009】
また本発明は、上記衣類において、袋編みの編み終わり端縁編成部に熱融着性弾性糸を編み込むと共に、更に非熱融着性のカバリング弾性糸を1〜3コース追加して編み込むことを特徴とするものである。これにより、編み終わり端縁編成部の編み目が密になり、また最も解れやすい最終端がその伸縮性により内側にカールして入り込むことで、さらに解れ難くすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記のように袋編部の編み終わり端縁編成部に熱融着性弾性糸を編み込み、湿熱または乾熱による熱処理を介して同熱融着性弾性糸により編成された編ループの交差点で同熱融着性弾性糸同士を熱融着させて解れ止め加工を施すことで、従来のように裾周り全周に亘って編み終わり端縁編成部、袋編部及び身頃部を一体的に縫着する必要がなくなることで凸状の縫着部位による肌触り感の悪さが解消されて着用感が向上し、また従来の無駄な縫着工程が不要となり、生産能率の向上が図られる。また熱融着性弾性糸を使用することで、熱融着した部位が通常の融着糸のように硬化せず、伸縮性に富んでいるために着用時の感触が柔らかく、身体によく追従するなど優れた着用感が得られる。
【0011】
更に、前記カール状の同袋編の編み終わり端縁編成部の内側に熱融着性弾性糸を編み込み、相対面する同熱融着性弾性糸同士を熱融着ことで、さらに解れ防止が強固になるだけでなく、カール状の編み終わり端縁編成部が平坦状になるため嵩張り感が抑えられる。また熱融着部分がカール状の編み終わり端縁編成部の内側にあり、肌側に露出しないため、優れた外観及び着心地が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、筒状成型丸編機によって1枚毎に編み立てられ、且つ開口部を有する衣類において、同開口部が袋編によって構成され、且つ該袋編部の編み終わり端縁編成部の部位で熱融着性弾性糸を編み込み、更に湿熱または乾熱による熱処理により、編目の交差点で同弾性糸同士を熱融着するか、もしくは相対面した編ループ同士を熱融着させるようにしたもので、以下図例に基づいて説明する。1はパンツで、2は前身頃、3は後身頃、5は袋編部6で形成されたウエスト部、7は袋編部8で形成された裾部、9は股部用生地10で形成された股部、11、12は夫々股部用生地10の両端縁に設けた袋編部であり、13は筒状編生地で、筒状成型丸編機によって1枚毎に編み立てられたパンツ1の成型丸編生地で、前身頃2及び後身頃3を一体的に編成するようにしてある。更に上記成型丸編生地の上方及び下方端縁には、夫々ウエスト部5及び裾部7の袋編部6、8を編成してある。またパンツ1の股部用生地10についても成型丸編生地で編成するようにしてあり、且つ11、12は夫々前記裾部7と同一の編組織による袋編部である。
【0013】
図4において、15は裾部7の袋編部8上端に設けた接結部、18は同袋編部8の編み終わり端縁編成部で、編み終わり端縁編成部18は平編コースで編成されている。尚、同平編コースの糸使いとしては、地糸と熱融着性弾性糸によるプレーティング編など、適宜に編成するようにしてあり、また地糸としては、ナイロン繊維やポリエステル系繊維などの合成繊維を用いるか、或いは綿などの天然繊維又は天然繊維と合成繊維等による適宜の混紡糸を用いる。
【0014】
更に熱融着性弾性糸としては、ポリウレタン系合成繊維を用い、且つ伸縮性(弾性)に優れ、しかも熱融着性弾性糸同士が互いに熱融着し合い、且つ熱融着部位においては、伸縮性(弾性)が失われることなく、高度の伸縮性(弾性)が保有されるものを用いる。また熱融着性弾性糸としては、オペロンテックス株式会社製ライクラT−178C(「ライクラ」はインビスタ社の登録商標)、旭化成せんい株式会社製ロイカSF(「ロイカ」は旭化成せんい株式会社の登録商標)、日清紡績株式会社製モビロンRL(「モビロン」は日清紡績株式会社の登録商標)が知られている。
【0015】
袋編部8の編み終わり端縁編成部18は、地糸と熱融着性弾性糸によるプレーティング編で平編を編成することが望ましい。また熱融着性弾性糸による平編生地を熱処理する手段としては、蒸気や熱湯などによる湿熱処理、或いは熱風乾燥などによる熱処理などがあるが、染色工程等の加熱処理中で熱融着できれば工程削減になるためより好ましい。
【0016】
尚、パンツ1のウエスト部5及び裾部7の袋編部6、8と股部用生地10の両端縁に設けた袋編部11、12の編組織が、夫々同一の編組織で編成されているが、袋編部6、8、即ち裾部7の袋編部8について、本発明の編み組織の応用例について以下述べる。
【0017】
第1の応用例を、図5及び図8に示す。裾部7の袋編部8における接結部15に続いて、解れ防止用の平編ループ20、21、22の3コースが編成され、且つ平編ループ20、21、22は編成糸50、51による周知のプレーティング編等で編成される。尚、図5及び図8においては、接結部15から直ちに解れ防止用の平編ループ20〜22が編成されているが、接結部15から袋編部8と同様の編地が続いた後に平編ループ20〜22が編成されることも可能である。
【0018】
また編成糸50の糸条としては、熱融着性で且つ伸縮弾性に富んだ110T(デシテックス、以下同様)程度のポリウレタン弾性繊維を、一方、編成糸51の糸条としては、44T/2(双糸)のナイロン繊維などを用いることができる。尚、編成糸51の材料としては、解れ防止用の平編ループ部を維持する強度を有していれば特に制約はないが、染色工程で身生地と同様に染まるものが染色ムラにならず外観上好適である。
【0019】
上記編成した後、適宜の熱処理を施すことにより、図8の如き、編成糸50、51による編ループ20、21、22の各交差点において、ポリウレタン弾性繊維50同士が互いに熱融着して固定され、解れ止め加工が施される。また各編ループの熱融着部が、伸縮性(弾性)に優れているため柔軟性が良く、着用感を損なうことはない。更に、従来のように、裾部7の袋編部8に一体的な縫着を施す必要がないので生産能率が向上し、品質や能率、着用感などに優れた衣類が得られる。
【0020】
第2の応用例を、図6、図9、図11及び図12に示す。応用例1と同様に裾部7の袋編部8における接結部15に続いて、解れ防止用の平編ループ25、26、27、28、29の5コースが編成され、且つ編成糸50、51による周知のプレーティング編を介して、図11の如く、編み終わり端縁編成部18のループ外側(肌側)には編成糸51の編ループが表出し、ループ内側には編成糸50の編ループが位置するように編成するのである。尚、編成糸50、51の糸条としては、応用例1と同様の材料を用いることができる。
【0021】
上記編成した後、適宜の熱処理を施すことにより、図9の如き、編成糸50、51による編ループ25、26、27、28、29の各交差点において、ポリウレタン弾性繊維50同士が互いに熱融着して各編ループが前記同様に熱融着、固定され、解れ止め加工が確実に施される。また更に、例えば図12の如く、編ループ26、25が、夫々編ループ27、28と相対面して、編ループ26、25の一部を形成するポリウレタン弾性繊維50が、編ループ27、28側のポリウレタン弾性繊維と相互に相対面接触し、熱融着され、編ループの交差点と共に、対面編ループ同士が互いに熱融着されることにより、編ループ25、26、27、28、29が、夫々互いに強固に固定され、より解れ難くなる。
【0022】
また上記のように各編ループを相互に対面接触させて熱融着させることにより、平編目特有のカールによる凸状を平らにして編み終わり端縁編成部18の厚みを薄くできるため、従来のような凸状の編み終わり端縁編成部がもたらした肌触りの悪さが解消されると共に、着用時の引っかかりが少なくなるため解れ難い。
【0023】
第3の応用例を、図10、図13及び図14に示す。応用例2における編ループ25、26、27、28、29に続いて編ループ30、31を追加編成したものである。尚、編ループ30、31は、1本のカバリング糸、または同じもしくは異なる2本のカバリング糸をプレーティング編等により編成したもので、例えば、ナイロン繊維50デニールに対してポリウレタン弾性繊維20デニールをカバリングした糸や、ナイロン繊維50デニールとポリウレタン弾性繊維18デニールのFTYなどを用いることができる。編ループ30、31を追加編成したことにより、前記応用例2の効果に加え、編み終わり端縁編成部の度目が増えてることで密になり、また最も解れやすい最終端がその伸縮性によりカールして内側に入り込むことで、さらに解れ難くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
開口部を有する衣類としては、前記パンツ以外に、足口やウエスト部を有するズボン下やガードルや、裾部、襟部及び袖口を有するシャツなどの下着、または履き口を有する靴下やウエスト部を有するストッキング、筒状の腹巻などに適用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】パンツの前身側概略斜視図である。
【図2】パンツの後身側概略斜視図である。
【図3】パンツの股部に股部用生地を縫着した状態の概略平面図である。
【図4】図1のX−X断面に基づく一部断面による概略斜視図である。
【図5】図4のP−P断面に基づく概略斜視図である。
【図6】応用例2に基づく裾部における袋編部の概略断面図である。
【図7】応用例3に基づく裾部における袋編部の概略断面図である。
【図8】応用例1の袋編部の編み終わり端縁編成部における編組織図の平面図である。
【図9】応用例2の袋編部の編み終わり端縁編成部における編組織図の平面図である。
【図10】応用例3の袋編部の編み終わり端縁編成部における編組織図の平面図である。
【図11】応用例2の袋編部の編み終わり端縁編成部における編ループの概略断面図である。
【図12】応用例2の袋編部の編み終わり端縁編成部における編ループの対面熱融着した状態の概略断面図である。
【図13】応用例3の袋編部の編み終わり端縁編成部における編ループの概略断面図である。
【図14】応用例3の袋編部の編み終わり端縁編成部における編ループの対面熱融着した状態の概略断面図である。
【図15】従来のパンツの前身側概略断面図である。
【図16】図15のZ−Z断面に基づく概略断面図である。
【符号の説明】
【0026】
2 前身頃
3 後身頃
5 ウエスト部
6 袋編部
7 裾部
8 袋編部
9 股部用生地
13 筒状編生地
15 接結部
18 編み終わり端縁編成部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸編機によって1枚毎に編み立てられる開口部を有する衣類において、開口部の編み終わり部が袋編によって構成され、且つ同袋編の編み終わり端縁編成部に熱融着性弾性糸を編み込み、更に湿熱または乾熱による熱処理により、同熱融着性弾性糸同士を編ループの交差点で熱融着させたことを特徴とする衣類。
【請求項2】
丸編機によって1枚毎に編み立てられる開口部を有する衣類において、開口部の編み終わり部が袋編によって構成され、且つ同袋編の編み終わり端縁編成部に熱融着性弾性糸を編み込み、更に湿熱または乾熱による熱処理により、相対面する同熱融着性弾性糸同士を熱融着させたことを特徴とする衣類。
【請求項3】
カールした前記袋編みの編み終わり端縁編成部の内側に、プレーティング編みにより、熱融着性弾性糸を編み込むことを特徴とする請求項2に記載の衣類。
【請求項4】
袋編みの編み終わり端縁編成部に熱融着性弾性糸を編み込むと共に、更に非熱融着性のカバリング弾性糸を追加して編み込むことを特徴とする請求項1〜3に記載の衣類。
【請求項5】
衣類がパンツであり、その開口部が足口または/およびウエスト部であることを特徴とする請求項1〜4に記載の衣類。
【請求項6】
衣類がアンダーシャツであり、その開口部が裾部、襟部、袖口の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜4に記載の衣類。
【請求項7】
衣類がストッキングであり、その開口部がウエスト部であることを特徴とする請求項1〜4に記載の衣類。
【請求項1】
丸編機によって1枚毎に編み立てられる開口部を有する衣類において、開口部の編み終わり部が袋編によって構成され、且つ同袋編の編み終わり端縁編成部に熱融着性弾性糸を編み込み、更に湿熱または乾熱による熱処理により、同熱融着性弾性糸同士を編ループの交差点で熱融着させたことを特徴とする衣類。
【請求項2】
丸編機によって1枚毎に編み立てられる開口部を有する衣類において、開口部の編み終わり部が袋編によって構成され、且つ同袋編の編み終わり端縁編成部に熱融着性弾性糸を編み込み、更に湿熱または乾熱による熱処理により、相対面する同熱融着性弾性糸同士を熱融着させたことを特徴とする衣類。
【請求項3】
カールした前記袋編みの編み終わり端縁編成部の内側に、プレーティング編みにより、熱融着性弾性糸を編み込むことを特徴とする請求項2に記載の衣類。
【請求項4】
袋編みの編み終わり端縁編成部に熱融着性弾性糸を編み込むと共に、更に非熱融着性のカバリング弾性糸を追加して編み込むことを特徴とする請求項1〜3に記載の衣類。
【請求項5】
衣類がパンツであり、その開口部が足口または/およびウエスト部であることを特徴とする請求項1〜4に記載の衣類。
【請求項6】
衣類がアンダーシャツであり、その開口部が裾部、襟部、袖口の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜4に記載の衣類。
【請求項7】
衣類がストッキングであり、その開口部がウエスト部であることを特徴とする請求項1〜4に記載の衣類。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−24276(P2009−24276A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188086(P2007−188086)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】
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