説明

被処理灰の無害化処理装置及び方法

【課題】被処理灰の溶融を抑制し、且つ被処理灰に含まれる重金属類を効率良く揮散分離することができる被処理灰の無害化処理装置及び方法を提供する。
【解決手段】重金属類を含有する焼却灰20に塩素含有物質22を添加し、焙焼炉にて前記重金属類を塩化物化させるとともに加熱揮散させて分離除去する被処理灰の無害化処理装置であって、前記焙焼炉として、耐火材が内張りされ、一端に焼却灰20の供給口を備え、他端に燃焼バーナと焙焼灰23を排出する排出口とを備えたロータリーキルン1を用い、焼却灰20を該ロータリーキルン1内に供給する前に焼却灰20と炭化物21とを混合する混合手段と、ロータリーキルン1の周速と投入空気を制御し炭化物21が被処理灰表層に浮上しない状態を生成する焙焼炉制御手段とを備え、前記ロータリーキルン1の出口領域で950〜1200℃に加熱して重金属類を分離除去させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌、焼却灰、飛灰等の被処理灰に含まれる有害物質を無害化する技術であって、特に被処理灰中の重金属類を塩化物化した後に加熱により揮散させて無害化する被処理灰の無害化処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物、産業廃棄物を焼却処理することにより発生する焼却灰、飛灰中には様々な種類の重金属類が含有されている。また、重金属類の処理設備を具備しない焼却設備からは大気、土壌、地下水に重金属類含有物質が漏出する惧れがあり、他にも工場跡地、廃棄物埋立地等の土壌中には環境基準で定められた濃度以上の重金属類が存在していることがある。重金属類は毒性が強いものが多く、環境に悪影響を与えるのみならず生体内に蓄積され害を及ぼす。近年は、焼却灰、飛灰、土壌等に含有される重金属類の環境基準が制定されるなど重金属類に対する規制が厳しくなり、各種溶出試験などにおいて一定のレベル以下でないと土壌中に投棄したり路盤材として再利用したりすることができなくなってきている。
特に、焼却灰由来の資源化物である溶融スラグの重金属類に関しては、従来の溶出基準に加えて、各自治体によって含有量基準が新たに設定されたため、溶融スラグを有効利用するためにも重金属類を含有する物質を無害化する方法が求められている。この問題に対して、含有される重金属類を塩化物化させて揮散分離する方法が種々提案されている。
【0003】
このような重金属類を含有する物質を無害化する方法の一つとして、特許文献1(特開2003−290758号公報)では、鉛または鉛化合物で汚染された土壌を浄化する発明が開示されている。特許文献1によれば、汚染土壌に塩素化合物を添加し、これを加熱処理して塩化物として揮散させる。このときの加熱処理温度は950〜1800℃である。
また、特許文献2(特開2004−181323号公報)には、焼却灰に含有される重金属類を塩化物として揮散させる発明が提案されている。特許文献2によれば、廃棄物焼却炉から導出された塩化水素を含む燃焼排ガスを灰処理内に導入し、該灰処理炉内の焼却灰中に含まれる重金属類を塩化物として揮散させる。このときの灰処理炉内の焼却灰を700℃以上に加熱することが提案されている。
【0004】
さらに、特許文献3(特開2005−288433号公報)では、重金属類を含有する被処理物を塩素含有物質とともに加熱炉内で加熱し、重金属類を塩化物化して揮散させる発明が提案されている。
特許文献3によれば、塩素含有物質を加熱炉の被処理物移送方向の中流部から下流部の何れかの位置より導入し、排ガスを上流部より排出してガス流の向流流れを形成し、重金属類を含有する被処理物を塩素含有物質からの塩素分を含む塩素系排ガスと向流接触させて塩化物化を行っている。塩素系排ガスと被処理物とを向流接触させ、該被処理物の移送方向上流側で重金属類を塩化物化し、下流側で該塩化物化した重金属類を揮散処理することにより効率良く酸化物等の金属類を塩化物化でき、重金属類の除去効率を向上させることができる。このとき下流側に位置する加熱炉は800〜1200℃の温度域を維持している。さらに、加熱炉としてロータリーキルンを採用し、該ロータリーキルンの温度勾配を利用することにより、一つの装置で塩化物化と揮散処理という一連の処理を同時に実施可能である。
【0005】
特許文献3における塩素含有物質とは、塩素ガス、塩化水素ガス等の気体、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系溶剤、若しくは固体の塩素ガス発生物質等が挙げられる。また、塩素含有物質は被処理物から揮発した塩素分を含む塩素系排ガスであり、加熱炉から排出される塩素系排ガスの少なくとも一部を該加熱炉に戻して循環させている。
このように、重金属類を含有する汚染土壌、焼却灰、飛灰等に塩素含有物質を添加し、前記重金属類を塩化物化させ、加熱揮散させて分離除去する発明が提案されている。
【0006】
さらにまた、特許文献4(特開平11−193911号公報)では、熱による廃物処理、詳しくはごみの熱処理からのスラグ及び灰の再処理による発明が提案されている。
特許文献4によれば、第1工程として、ごみを熱分解・ガス化または部分燃焼し、その際比較的高い炭素含量を有する重金属含有スラグおよび灰を生成させる。次に第2工程として、上述したスラグおよび灰をロータリーキルン中でロータリーキルン前方に配置されたオイルバーナーにより加熱される。スラグ及び灰に含有されている重金属類をスラグ自体の炭素分での還元により金属の形に変え、易蒸発性重金属を気相に移し、煙道ガスと一緒にロータリーキルンから排出している。このときのスラグおよび灰中の炭素分は還元を目的として含まれているものである。
【0007】
【特許文献1】特開2003−290758号公報
【特許文献2】特開2004−181323号公報
【特許文献3】特開2005−288433号公報
【特許文献4】特開平11−193911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された発明では、加熱処理温度が950〜1800℃であり、鉛または鉛化合物の塩化物を揮散させるのに十分な温度であると考えられるが、1200℃以上まであげることによりクリンカが発生するという問題点がある。
特許文献2に開示された発明では、灰処理炉内の焼却灰を700℃以上、より好ましくは950℃以上とし、さらに焼却灰の溶融を防ぐために灰処理炉内の温度を1000℃以上1200℃以下とすることが提案されているが、焼却灰焼却灰の溶融を防ぐための具体的な条件は開示されていない。
特許文献3に開示された発明は、被処理物に含まれる重金属類と塩素系ガスが十分に接触し効率よく重金属類の塩化物化が行われ、重金属類の除去効率を高く維持して処理後の重金属類の残留を最小限に抑えることができるものではあるが、特許文献2と同様に、被処理物の溶融を防ぐとともに被処理物に含まれる重金属類を塩化物化して揮散する温度域が開示されるに止まっている。
また、特許文献4に開示された発明では、ロータリーキルン前方にバーナが配置されており、ロータリーキルン入口の温度が最も高く、出口に向って次第に低くなる。よって、昇温に分単位の時間が必要な焼却灰のような固体を用いる場合では、灰の温度が十分に上がる前に移動する(入口から遠ざかる)ことが考えられ、重金属が揮発しない温度層が生成される可能性がある。また、灰の温度を上げるためにバーナ出力を上げたとしても、温度が上がりすぎて灰が溶融する危険性があり、バーナをロータリーキルン前方に配置したときの灰の温度制御は困難である。
汚染土壌、焼却灰、飛灰等の被処理灰に含まれる重金属類を無害化してリサイクルするためには、重金属類の溶出基準を満たすとともに含有量基準を満たす必要がある。このことから、焼却灰に含有される重金属類を塩化物化させて揮散分離する方法においては、塩化物化された重金属類を確実に揮散させることが重要であり、その条件が求められる。また、過剰な加熱によるクリンカの発生や焼却灰の溶融を防止することも考慮しなければならない。
【0009】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、被処理灰の溶融を抑制し、且つ被処理灰に含まれる重金属類を効率良く揮散分離することができる被処理灰の無害化処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、重金属類を含有する被処理灰に塩素含有物質を添加し、焙焼炉にて前記重金属類を塩化物化させるとともに加熱揮散させて分離除去する被処理灰の無害化処理装置において、
前記焙焼炉として、耐火材が内張りされ、一端に被処理灰の供給口を備え、他端に燃焼バーナと焙焼灰を排出する排出口とを備えたロータリーキルンを用い、
被処理灰を該ロータリーキルン内に供給する前に被処理灰と炭化物とを混合する混合手段と、ロータリーキルンの周速と投入空気を制御し炭化物が被処理灰表層に浮上しない状態を生成する焙焼炉制御手段とを備え、前記ロータリーキルンの出口領域で950〜1200℃に加熱して重金属類を分離除去させたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、被処理灰中に混合された炭化物は被処理灰表層に浮上しない状態で存在しているので、前記炭化物が燃焼することによって発生する熱エネルギーにより、灰層の内部温度が上昇する。表層に比べて低くなりがちな灰層内部の温度を上昇させることで、ロータリーキルン内の灰層温度が満遍なく950〜1200℃となり、よって塩化物化された重金属類が被処理灰に留まることなく揮散され、重金属類(Pb)の除去率が増大する。
また、被処理灰の供給口の他端側(ロータリーキルン後方側)に燃焼バーナを備えたロータリーキルンを用いることにより、被処理灰と燃焼ガスが向流となり、温度分布はロータリーキルン供給口側が最も低く、ロータリーキルン後方の出口側が最も高くなる。よって、被処理灰はロータリーキルンに供給されてから出口に至るまで次第に昇温されていくため、溶融の危険性が低く、また熱量が無駄になりにくい。
【0012】
さらに、被処理灰に炭化物を混合することによって、ロータリーキルン内の被処理灰が溶融温度を超えることなく灰層温度の上昇が緩やかとなるので、被処理灰の溶融を抑えながら塩化物化された重金属類(PbCl)が揮散する最適な950〜1200℃の温度域をより長く保つことができる。
また、ロータリーキルン内の被処理灰の内部に加熱源を持つことで焙焼時に必要な燃焼バーナの燃料量を低減することができ、焙焼炉の燃費が向上する。さらにまた、炭化物はロータリーキルン内の被処理灰中に含まれる重金属類に対して還元作用を持ち、特に有害な六価クロムの発生を抑制し、塩化物化された重金属類の揮散を促進させることもできる。
【0013】
また、前記出口領域は、ロータリーキルン内の被処理灰が灰層温度950〜1200℃で5〜15分維持される状態であり、該出口領域が前記混合手段によって生成し制御されることを特徴とする。このようにして、昇温に時間を要する固体の被処理灰でも塩化物化された重金属類(PbCl)を十分に揮散させることが可能となる。また、灰層温度950〜1200℃を5〜15分維持することにより、揮散されにくい被処理灰内部からの揮散が十分に行なわれ、被処理灰中に含まれる重金属類の残存を最小限に抑えることができる。
【0014】
また本発明において、前記混合手段が、前記被処理灰に含有される未燃分量に基づき炭化物の添加量が選択され、前記ロータリーキルン内の被処理灰中の炭化物が灰層温度700〜800℃で3〜7%存在する状態が生成されるように被処理灰と炭化物とを混合することを特徴とする。
このように本発明では、灰層温度700〜800℃で3〜7%存在する炭化物が灰層内部温度を上昇させる加熱源として寄与する。炭化物は3〜7%が好ましく、3%以下であれば灰層温度が十分に上がらず、過剰になれば表面の一部が溶融する可能性がある。灰層温度700〜800℃で炭化物が3〜7%存在することにより、前記した出口領域(灰層温度950〜1200℃で5〜15分維持)が達成される。
ここで、炭化物は上述した状態で3〜7%存在するように外部から添加してもいいし、予め乾燥機によって未燃分を3%以上残すように調整された被処理灰の未燃分を炭化物として用いてもよい。
【0015】
さらに、前記焙焼炉は、厚さtの耐火材が内張りされ、焙焼炉内径Dとの比率t/Dが0.1〜0.25のロータリーキルンであることを特徴とする。このことにより、ロータリーキルン内の灰層温度上昇が良く、重金属類(Pb)の除去率が増大する。
【0016】
また、前記焙焼炉は、焙焼炉長さLと焙焼炉内径Dとの比率L/Dが8〜20のロータリーキルンであることを特徴とする。このようにしてロータリーキルンを設計することにより、灰層の滞留時間が確保しやすくなり、重金属類(Pb)の除去率が増大する。
【0017】
また、これらを好適に実施する方法の発明として、重金属類を含有する被処理灰に塩素含有物質を添加した後、焙焼炉内で前記重金属類を塩化物化させるとともに加熱揮散させて分離除去する被処理灰の無害化処理方法において、
前記焙焼炉として、炉の一端に被処理灰の供給口を備え、他端に燃焼バーナと焙焼灰を排出する排出口とを備えた耐火材を内張りしたロータリーキルンを用いて、
前記ロータリーキルンへ供給する前に前記被処理灰と炭化物とを混合し、該ロータリーキルン内で炭化物が被処理灰表層に浮上しない状態を生成し、灰層温度700〜800℃で3〜7%の炭化物を残存させるとともに灰層温度950〜1200℃で5〜15分維持し、重金属類を加熱揮散させて分離除去したことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、装置の発明と同様に、塩化物化された重金属類が被処理灰に留まることなく揮散され、重金属類(Pb)の除去率が増大する。
また、被処理灰に炭化物を混合することによって、ロータリーキルン内の灰層温度の上昇が緩やかとなり、灰が溶融し始める1200℃まで急激に上昇しなくなるので、塩化物化された重金属類(PbCl)が揮散する最適な950〜1200℃の温度域をより長く保つことができ、且つ灰の溶融を防ぐことができる。さらに、焙焼時に必要な燃焼バーナの燃料(重油)量を低減することができ、焙焼炉の燃費が向上する。
【発明の効果】
【0019】
以上記載のごとく本発明によれば、被処理灰中に混合された炭化物は被処理灰表層に浮上しない状態で存在しているので、前記炭化物が燃焼することによって発生する熱エネルギーにより、灰層の内部温度が上昇する。表層に比べて低くなりがちな灰層内部の温度を上昇させることで、ロータリーキルン内の灰層温度が満遍なく950〜1200℃となり、よって塩化物化された重金属類が被処理灰に留まることなく揮散され、重金属類(Pb)の除去率が増大する。
また、被処理灰の供給口の他端側(ロータリーキルン後方側)に燃焼バーナを備えたロータリーキルンを用いることにより、被処理灰と燃焼ガスが向流となり、温度分布はロータリーキルン供給口側が最も低く、ロータリーキルン後方の出口側が最も高くなる。よって、被処理灰はロータリーキルンに供給されてから出口に至るまで次第に昇温されていくため、溶融の危険性が低く、また熱量が無駄になりにくい。
さらに、被処理灰に炭化物を混合することによって、ロータリーキルン内の被処理灰が溶融温度を超えることなく灰層温度の上昇が緩やかとなるので、被処理灰の溶融を抑えながら塩化物化された重金属類(PbCl)が揮散する最適な950〜1200℃の温度域をより長く保つことができる。
また、ロータリーキルン内の被処理灰の内部に加熱源を持つことで焙焼時に必要な燃焼バーナの燃料量を低減することができ、焙焼炉の燃費が向上する。さらにまた、炭化物はロータリーキルン内の被処理灰中に含まれる重金属類に対して還元作用を持ち、特に有害な六価クロムの発生を抑制し、塩化物化された重金属類の揮散を促進させることもできる。
また、被処理灰に炭化物を混合することで、灰層温度950〜1200℃を5〜15分維持する状態となるように制御され、昇温に時間を要する固体の被処理灰でも塩化物化された重金属類(PbCl)を十分に揮散させることが可能となる。また、灰層温度950〜1200℃を5〜15分維持することにより、揮散されにくい被処理灰内部からの揮散が十分に行なわれ、被処理灰中に含まれる重金属類の残存を最小限に抑えることができる。前記した灰層温度950〜1200℃を5〜15分維持される状態は、灰層温度700〜800℃で炭化物が3〜7%存在することにより達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本実施形態1に係る被処理灰の無害化処理装置を具備した灰処理システムの全体構成図、図2は本実施形態1に係る被処理灰の無害化処理装置の構成図、図3(a)は本実施形態1に係るロータリーキルンの炉本体の概略図、図3(b)は本実施形態1に係るロータリーキルンの炉本体の灰層温度分布図、図4は本実施形態2に係る被処理灰の無害化処理装置を具備した灰処理システムの全体構成図、図5は被処理灰の無害化処理装置を具備した灰処理システムでの試験条件とそれに対応する結果を示す図である。
なお、本実施例はPb、Zn、As、Cd、Cr、Se、Hg、Sb、Cuなどの重金属類を分離除去する技術であるが、ここでは特にPbの分離除去について説明する。
また粉粒状被処理物には、例えば汚染土壌、焼却灰、飛灰等が挙げられるが、特に本実施例では一例として焼却灰の無害化処理について説明する。
以下に説明する実施例で用いる塩素含有物質は、塩酸を含む塩素含有液若しくは塩素含有液状体であり、例えば塩酸、塩化鉄や塩化カルシウムを含むスラリーなどが挙げられる。また、焙焼炉から排出される塩素系排ガスや塩素含有固体のみも塩素含有物質として用いることも可能である。
(実施形態1)
【0021】
まず、図1、図2及び図3を用いて実施形態1の重金属類含有物質の処理装置を具備した灰処理システムについて説明する。
図1に示した灰処理システムは、焼却設備より排出された焼却灰を無害化処理するシステムであり、焼却灰20を乾燥させる乾燥機2と、乾燥機2の入口側と出口側にそれぞれ設けられた水分計2a及び水分計2bと、乾燥機2によって水分調整された焼却灰20に炭化物21を添加して攪拌混合させるミキサ3と、前記ミキサ3から供給される焼却灰20を貯留し塩素含有物質22を混合させるホッパ4と、焼却灰20に含まれる重金属類を分離除去するロータリーキルン1と、ロータリーキルン1から排出された灰を冷却する冷却装置5と、から構成される。また、その他にロータリーキルン1より排出される排ガス25を処理する排ガス処理設備6も設けられている。
【0022】
前記乾燥機2では、焼却灰20が乾燥用加熱ガスによる直接加熱で乾燥される。このとき用いられる乾燥用加熱ガスは、ロータリーキルン1より排出される排ガス25を利用している。なお図示しないが、例えば併設された焼却炉から排出される排ガスを乾燥用加熱ガスとして用いることも可能であるし、別途熱風炉を設けてその加熱ガスを用いることも可能である。
また乾燥機2では、水分計2a及び水分計2bによって、乾燥機2の入口側と出口側における焼却灰20の水分変化率を検知する。焼却灰20の乾燥前後の水分変化を検知することにより、ロータリーキルン1より排出される排ガス25の風量制御を行い、焼却灰20の含水率を一定にして乾燥させる。なお、入口側の水分が20〜50%に対して、出口側の水分は0〜20%が好ましく、粉塵の発生を防止する。
【0023】
前記風量制御は、ロータリーキルン1から乾燥機2へ循環させる排ガス25の循環路に設けられたダンパ8の開度によって調整される。予め焼却灰20の目標含水率を定め、目標含水率よりも大であるときには、ダンパ8を開いて排ガス25を乾燥機2内へ送り込み、焼却灰20を乾燥させる。
また、目標含水率よりも小であるときには、ダンパ8を締めて乾燥機2内へ送り込まれる排ガス25の量を制限し、焼却灰20が過度に乾燥されないようにする。
乾燥機2から排出される排ガスは、ロータリーキルン1より排出される排ガス25の一部と同様に排ガス処理設備6へ送られて処理される。
【0024】
ミキサ3では、乾燥機2によって水分調整された焼却灰20と炭化物21が攪拌混合される。ここで、用いる炭化物21は、予め粒度選別された細粒炭や市販の細粒炭が好ましいが、破砕木屑、RDF燃料などを用いてもよい。また、焼却灰20に含まれる未燃分を炭化物として用いることも好適である。炭化物21の混合量は、焼却灰20に含まれる未燃分量やロータリーキルン1内の灰層温度によって制御され、灰層温度700〜800℃で3〜7%残存するように混合される。
【0025】
前記ミキサ3で炭化物21を添加された焼却灰20は、ホッパ4に貯留され、塩素含有物質22と混合され攪拌される。このとき塩素含有物質22は、ホッパ4に貯留される焼却灰20へ噴霧して混合することが好ましいが、塩素含有物質22をそのまま投入して攪拌混合してもよい。塩素含有物質22の添加量は焼却灰20の量にあわせて調節されており、焼却灰20に含有されるPbと反応する5倍量を添加することが好ましい。
【0026】
図2に示すように、ホッパ4で混合された焼却灰20と炭化物21と塩素含有物質22の混合物27は、ロータリーキルン1の供給口14から炉本体12へ供給される。
ロータリーキルン1は、図2に示すように、一端に設けられた前記供給口14と、混合物27を供給口14から他端側に移送する手段を有する円筒状の炉本体12と、他端側に設けられた排出口15と、排出口15側に設けられたバーナ部13と、を有する構成となっている。供給口14から投入された混合物27は、前記排出口15に移送されながら、空気26及び補助燃料24の供給により生成したバーナ部13の火炎によって焙焼される。
このとき、ロータリーキルン1内は、酸素不足状態若しくは無酸素状態の還元性雰囲気とする。また、ここで用いられる補助燃料24として、重油、灯油、再生油などが挙げられる。
【0027】
またロータリーキルン1は、供給口14の近傍に炉本体12内のガスを排出する排ガス排出口を設け、排ガス25を排出している。前記炉本体12内では、被処理灰に含まれる重金属類が塩化物化され、塩化物した後に揮散して分離除去することができる。その後、排出口15から排出され冷却装置5で冷却されて、無害化された焙焼灰23となり排出される。
【0028】
また図示しないが、ロータリーキルン1には、灰層温度を測定するための熱電対温度計及び赤外線カメラが設けられている。熱電対温度計及び赤外線カメラを併用し、測定が容易なロータリーキルン内のガス温度を測定している。このロータリーキルン内のガス温度から灰層温度を求めている。
【0029】
ここで、本実施形態で用いるロータリーキルン1について、図3を用いて説明する。
本発明では焙焼炉として、耐火材tが内張りされ、一端に被処理灰の供給口14を備え、他端にバーナ部13と焙焼灰を排出する排出口15とを備えたロータリーキルン1を用いる。焙焼炉長さL、焙焼炉内径D、耐火材厚さtは、図3(a)に示すように定義されるものである。なお、aは灰(混合物27)の移送方向である。
【0030】
図3(b)は本実施形態1に係るロータリーキルン1の炉本体の灰層温度分布図である。塩素含有物質を添加された焼却灰は、ロータリーキルン1内で加熱され、含有する重金属類が塩化物化され揮散分離し無害化されるが、一定の温度まで灰層温度が上昇しないと、十分に揮散されずに残存してしまう。例えばPbは500℃で塩化物化されてPbClが生成されるが、PbClは950℃以上で5分以上加熱しないと揮散されない。
しかし、灰層内部は表層に比べて温度が上昇しにくく、図3(b)の破線部のような温度分布となるので、灰層内部のPbClは揮散されずに残存する可能性がある。一方、灰層に存在するPbClを揮散させるためにロータリーキルン内の温度を上げると、表層に存在する焼却灰が溶融することが示唆される。
そこで、焼却灰に炭化物を混合したところ、図3(b)の実線部のような温度分布となった。焼却灰に混合された炭化物は、800℃以上で燃焼する加熱源となるので、ロータリーキルン内の温度を上げることなく灰層内部から温度を上昇させることが可能となる。よって、焼却灰を溶融させることなく、ロータリーキルン内の灰層温度が満遍なく950〜1200℃となり、PbClが灰層に留まることなく揮散され、Pbの除去率が増大する。
【0031】
このとき、焼却灰中に混合された炭化物は、灰層内部から温度を上昇させるためにも焼却灰表層に浮上しない状態で存在することが重要である。そのため、ロータリーキルンの周速と投入空気を制御する。またロータリーキルン1を、耐火材厚さtと焙焼炉内径Dとの比率t/Dが0.1〜0.25、焙焼炉長さLと焙焼炉内径Dとの比率L/Dが8〜20となるように設定する。上述したようにロータリーキルンを設定することで、ロータリーキルン内の灰層温度上昇が良くなり、灰層の滞留時間が確保しやすくなる。よって、950〜1200℃の温度域で5分以上維持された状態が生成され、安定した重金属類低減性能が期待できる。
(実施形態2)
【0032】
次に、実施例2の重金属類含有物質の処理装置を具備した灰処理システムについて図5を用いて説明する。実施例2において、上記した実施例1と同様の構成については、その詳細な説明を省略する。
実施形態2に係る灰処理システムは、実施形態1と同様に焼却設備より排出された焼却灰を無害化処理するシステムであり、焼却灰20を乾燥させる乾燥機2と、乾燥機2の入口側と出口側にそれぞれ設けられた水分計2a及び水分計2bと、焼却灰20に含まれる重金属類を分離除去するロータリーキルン1と、ロータリーキルン1から排出された灰を冷却する冷却装置5と、から構成される。また、その他にロータリーキルン1より排出される排ガス25を処理する排ガス処理設備6も設けられている。
【0033】
また、上記した構成の他に、乾燥機2によって水分調整された焼却灰20を貯留するホッパ4と、ホッパ4から焼却灰をロータリーキルン1へ供給するスクリューコンベア7とで構成されている。
【0034】
実施形態1と同様に、乾燥機2では、焼却灰20が乾燥用加熱ガスによる直接加熱で乾燥され、図5ではロータリーキルン1より排出される排ガス25を利用している。なお図示しないが、例えば併設された焼却炉から排出される排ガスを乾燥用加熱ガスとして用いることも可能であるし、別途熱風炉を設けてその加熱ガスを用いることも可能である。
また乾燥機2では、水分計2a及び水分計2bによって、焼却灰20の乾燥前後の水分変化を検知し、ロータリーキルン1より排出される排ガス25の風量制御を行い、焼却灰20の含水率を一定にして乾燥させる。なお、入口側の水分が20〜50%に対して、出口側の水分は0〜20%が好ましく、粉塵の発生を防止する。
【0035】
前記風量制御は、実施形態1と同様に、ロータリーキルン1から乾燥機2へ循環させる排ガス25の循環路に設けられたダンパ8の開度によって調整される。また、乾燥機2から排出される排ガスは、ロータリーキルン1より排出される排ガス25の一部と同様に排ガス処理設備6へ送られて処理される。
【0036】
乾燥機2によって水分調整された焼却灰20はホッパ4で貯留され、スクリューコンベア7で攪拌されながら搬送され、ロータリーキルン1まで運ばれる。このとき、炭化物21と塩素含有物質22がスクリューコンベア7上で搬送されている焼却灰20に添加される。搬送手段として、スクリューコンベアを用いているので、ロータリーキルン1へ供給される前に、焼却灰20と炭化物21と塩素含有物質22とが十分に攪拌混合される。ロータリーキルン1へ供給された前記した混合物は、加熱され冷却装置5で冷却されて、無害化された焙焼灰23となり排出される。
ここで、用いる炭化物21は、予め粒度選別された細粒炭や市販の細粒炭が好ましいが、破砕木屑、RDF燃料などを用いてもよい。また、焼却灰20に含まれる未燃分を炭化物として用いることも好適である。炭化物21の混合量は、焼却灰20に含まれる未燃分量やロータリーキルン1内の灰層温度によって制御され、灰層温度700〜800℃で3〜7%残存するように混合される。塩素含有物質22の添加量は焼却灰20の量にあわせて調節されており、焼却灰20に含有されるPbと反応する5倍量を添加することが好ましい。
【0037】
なお、図示しないが、上記した焼却灰20と炭化物21の混合手段の別形態として、炭化物21を粒度選別する手段を設け、粒度選別した炭化物をスクリューコンベア7で搬送し、そこへ焼却灰20を投入し混合する構成としてもよい。
【0038】
最後に、図5を用いて、被処理灰の無害化処理装置を具備した灰処理システムでの試験条件とそれに対応する結果を説明する。ここでは、焼却灰に含まれるPb分離除去するために、塩素含有物質を添加し、ロータリーキルンで加熱し塩化物化した後に揮散分離させた。
また、ロータリーキルン1を、耐火材厚さtと焙焼炉内径Dとの比率t/Dが0.1〜0.25、焙焼炉長さLと焙焼炉内径Dとの比率L/Dが8〜20となるように設定する。さらに、焼却灰の比重を2.1kg/L(かさ比重1.4kg/L)、炭化物の比重を1.7kg/L(かさ比重1.2kg/L)、炭化物の粒度を略0.5〜25mm、炭化物添加率を3%、ロータリーキルン全体の滞留時間を90分とした。
【0039】
焼却灰温度を各々設定し、焼却灰のみの比較例1〜3と、焼却灰+炭化物の実施例1〜3について試験を行ったところ、図5に示す結果が得られた。
図5に示すように、炭化物を混合した実施例3は、焼却灰のみの比較例3よりも焙焼後のPb含有量が140mg/kgとより少なくなり、Pbの除去率が向上している。また、ほぼ焼却灰温度域であるにも関わらず、燃焼バーナに必要な燃料である重油量も240L/hと少なくなることがわかる。このことからも焼却灰に含まれる炭化物が、加熱源となって灰層内部の温度を上昇させ、灰層温度が均一となるように働き、また燃費が向上に寄与することがわかる。
実施例1および比較例1、実施例2および比較例2も同様に、炭化物がPbの揮散を促進させていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、被処理灰表層に浮上しない状態で炭化物を被処理灰に混合することにより、焙焼炉内温度を上げることなく灰層内部の温度を上昇させることが可能となり、被処理灰の溶融を抑制し、且つ被処理灰に含まれる重金属類を揮散分離することができるので、効率良く被処理灰を無害化する手段として有益である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態1に係る被処理灰の無害化処理装置を具備した灰処理システムの全体構成図である。
【図2】本実施形態1に係る被処理灰の無害化処理装置の構成図である。
【図3】(a)は本実施形態1に係るロータリーキルンの炉本体の概略図、(b)は本実施例1に係るロータリーキルンの炉本体の灰層温度分布図である。
【図4】本実施形態2に係る被処理灰の無害化処理装置を具備した灰処理システムの全体構成図である。
【図5】被処理灰の無害化処理装置を具備した灰処理システムでの試験条件とそれに対応する結果を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 ロータリーキルン
2 乾燥機
5 冷却装置
6 排ガス処理設備
11 耐火材
13 バーナ部
14 供給口
15 排出口
20 焼却灰
21 炭化物
22 塩素含有物質
23 焙焼灰
24 補助燃料
25 排ガス
L 焙焼炉長さ
D 焙焼炉内径
t 耐火材厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属類を含有する被処理灰に塩素含有物質を添加し、焙焼炉にて前記重金属類を塩化物化させるとともに加熱揮散させて分離除去する被処理灰の無害化処理装置において、
前記焙焼炉として、耐火材が内張りされ、一端に被処理灰の供給口を備え、他端に燃焼バーナと焙焼灰を排出する排出口とを備えたロータリーキルンを用い、
被処理灰を該ロータリーキルン内に供給する前に被処理灰と炭化物とを混合する混合手段と、ロータリーキルンの周速と投入空気を制御し炭化物が被処理灰表層に浮上しない状態を生成する焙焼炉制御手段とを備え、前記ロータリーキルンの出口領域で950〜1200℃に加熱して重金属類を分離除去させたことを特徴とする被処理灰の無害化処理装置。
【請求項2】
前記出口領域は、ロータリーキルン内の被処理灰が灰層温度950〜1200℃で5〜15分維持される状態であり、該出口領域が前記混合手段によって生成し制御されることを特徴とする請求項1記載の被処理灰の無害化処理装置。
【請求項3】
前記混合手段が、前記被処理灰に含有される未燃分に基づき炭化物の添加量が選択され、前記ロータリーキルン内の被処理灰中の炭化物が灰層温度700〜800℃で3〜7%存在する状態が生成されるように被処理灰と炭化物とを混合することを特徴とする請求項1、2記載の被処理灰の無害化処理装置。
【請求項4】
前記焙焼炉は、厚さtの耐火材が内張りされ、焙焼炉内径Dとの比率t/Dが0.1〜0.25のロータリーキルンであることを特徴とする請求項1記載の被処理灰の無害化処理装置。
【請求項5】
前記焙焼炉は、焙焼炉長さLと焙焼炉内径Dとの比率L/Dが8〜20のロータリーキルンであることを特徴とする請求項1記載の被処理灰の無害化処理装置。
【請求項6】
重金属類を含有する被処理灰に塩素含有物質を添加した後、焙焼炉内で前記重金属類を塩化物化させるとともに加熱揮散させて分離除去する被処理灰の無害化処理方法において、
前記焙焼炉として、炉の一端に被処理灰の供給口を備え、他端に燃焼バーナと焙焼灰を排出する排出口とを備えた耐火材を内張りしたロータリーキルンを用いて、
前記ロータリーキルンへ供給する前に前記被処理灰と炭化物とを混合し、該ロータリーキルン内で炭化物が被処理灰表層に浮上しない状態を生成し、灰層温度700〜800℃で3〜7%の炭化物を残存させるとともに灰層温度950〜1200℃で5〜15分維持し、重金属類を加熱揮散させて分離除去したことを特徴とする被処理灰の無害化処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−34591(P2009−34591A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200124(P2007−200124)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(501370370)三菱重工環境エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】