説明

被塗物の塗装面検査装置及び被塗物の塗装面検査方法

【課題】LEDからなる照明手段を用いて塗装面の焼き付きを防ぐとともに、車輌の塗装面の色の違いによる検査ムラをなくして検査率を向上させ、しかも、検査装置の光源の放熱性能を向上させて熱暴走などに起因する故障や低寿命化を防止した被塗物の塗装面検査装置及びその装置を用いた被塗物の塗装面検査方法を提供する。
【解決手段】被塗物の塗装面に、該塗装面の色彩に応じた発光色を照射可能な光源としてのLEDを有するLED保持装置を備え、前記LEDにより照射した光の前記塗装面からの反射光に基づいて被塗物の塗装面を検査可能とした被塗物の塗装面の検査装置であって、前記LED保持装置は、発色の異なる複数種のLEDを複数個ずつ環状に配置するための保持基盤と、この保持基盤の背後に所定間隔をあけて配設した複数の放熱板と、前記保持基盤及び前記放熱板を挿貫して連結固定するための縦杆と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗物の塗装面検査装置及びその装置を用いた被塗物の塗装面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輌は、各種工程を経て製造されており、その工程の1つに、車輌のボディ等の被塗物に塗装を施す工程がある。塗装が完了した車輌は、外観検査が行われ、この外観検査では塗装膜へのゴミの混入等の塗装不良の有無を検査する。外観検査では、光源から照射した光の前記塗装膜からの反射光に基づいて被塗物の塗装状態を検査することになる(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
また、複数色の車輌の塗装面を目視で検査する場合、光源が単色であると、車輛における塗装色によっては色ムラや瑕等を発見できない場合がある。例えば、濃彩色の車輌における色ムラや瑕等を発見できても、淡彩色の車輌における色ムラや瑕等は発見し難かったりするのである。その結果、特定の色の検査率が低下するなどの問題点があった。或は特定の色だけ検査時間が長くなり、その後の製造工程に支障をきたす問題点があった。
【0004】
そこで、塗装色によって光源からの出射光の照明色を変えることによって色ムラや瑕を発見しやすくすることが提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0005】
ところで、外観検査の際には、識別精度を向上するために、検査対象となる塗装面全体を明るく、かつ、均一に照らす必要があり、そのためには大型の照明手段が必要であった。このような照明手段として、通常、ハロゲンランプが使用されていたが、十分な照度を確保できる反面、塗装面が焼き付いてしまうという問題点があった。
【0006】
そこで、近年では、特許文献1をはじめとして、光源としてLEDを用いることが提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。これにより、光源の小型化も実現でき、作業者が携帯しながら使用することも可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−14855号公報
【特許文献2】特開2009−174931号公報
【特許文献3】特開2005−291842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、光源としてLEDを使用する場合、熱対策が重要であるにもかかわらず、従来の被塗物の塗装面検査装置においてLEDを光源とした場合の熱対策については何ら考慮されていないのが現状である。
【0009】
すなわち、LEDは、可視光で消費されたエネルギー以外はすべて熱に変わる上に、LEDはそのパッケージの表面積が小さくて輻射による放熱も小さいため、いかに効率的に放熱するかは重大な課題である。
【0010】
そこで、本発明では、LEDからなる照明手段を用いて塗装面の焼き付きを防ぐとともに、車輌の塗装面の色の違いによる検査ムラをなくして検査率を向上させ、しかも、検査装置の光源の放熱性能を向上させて熱暴走などに起因する故障や低寿命化を防止した被塗物の塗装面検査装置及びその装置を用いた被塗物の塗装面検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の被塗物の塗装面の検査装置は、被塗物の塗装面に、該塗装面の色彩に応じた発光色を照射可能な光源としてのLEDを有するLED保持装置を備え、前記LEDにより照射した光の前記塗装面からの反射光に基づいて被塗物の塗装面を検査可能とした被塗物の塗装面の検査装置であって、前記LED保持装置は、発色の異なる複数種のLEDを複数個ずつ環状に配置するための保持基盤と、この保持基盤の背後に所定間隔をあけて配設した複数の放熱板と、前記保持基盤及び前記放熱板を挿貫して連結固定するための縦杆と、を具備することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の被塗物の塗装面の検査装置において、被塗物の塗装面の色彩に応じて、発色の異なる前記複数種のLEDのうち、発光させるLEDを選択的に切り替え可能とした切替部を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の被塗物の塗装面の検査装置において、前記LEDから照射する光を調光するための調光回路を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の被塗物の塗装面の検査装置において、前記LED保持装置を、長手方向に沿って摺動自在に収納した照射ケースと、この照射ケースの外周に斜め方向に突設され、前記LEDの電源としてのバッテリを収納するためのハンドルと、前記照射ケースの開口部に設けられ、前記LEDから照射された光軸に平行な光束を進路変更するための光学レンズ機構と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の被塗物の塗装面の検査装置において、前記LED保持装置を前後摺動させる操作部を前記照射ケースに設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の被塗物の塗装面の検査方法は、被塗物の塗装面に該塗装面の色彩に応じた発光色を、請求項1〜5のいずれか1項に記載の検査装置における光源から照射し、前記塗装面からの反射光に基づいて被塗物の塗装面の塗装欠陥の有無を目視により判別する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に記載の車輌の外観検査装置によれば、光源がLEDであることから検査の際に、車輌の塗装面が焼き付く心配をすることなく、十分な検査時間を確保することができる。しかも、検査の際に、塗装面の色ごとに照射する光源の色を変更することができるため、塗装色ごとに見え方が異なる色ムラや瑕等の欠陥を見つけ易くなり検出率を向上することができる効果がある。また、保持基盤の背後に所定間隔をあけて配設した複数の放熱板と、前記保持基盤及び前記放熱板を挿貫して連結固定するための縦杆と、を具備したので、光源を長時間連続点灯しても、検査装置の光源の放熱性能を向上させて熱暴走などに起因する故障や低寿命化を防止する効果がある。
【0018】
本発明の請求項2に記載の被塗物の塗装面の検査装置によれば、被塗物の塗装面の色彩に応じて、発色の異なる前記複数種のLEDのうち、発光させるLEDを選択的に切り替え可能とした切替部を備えるので、切替部を操作して特定の塗装色に応じた光を照射することができるため、特定の塗装色によっては見つけにくい色ムラや瑕等の欠陥を容易に見つけることができる効果がある。
【0019】
本発明の請求項3に記載の被塗物の塗装面の検査装置によれば、前記光源としてのLEDから照射する光を調光するための調光回路を設けたので、この調光回路が周波数変調を行いながらLEDに供給する電流量を可変することにより、LEDを調光して明るさを変化させることができる。このように調光した光を塗装面に照射することにより、塗装面における陰影の度合いを変えて、色ムラや瑕を視認しやすくすることができる。
【0020】
本発明の請求項4に記載の被塗物の塗装面の検査装置によれば、前記LED保持装置を、長手方向に沿って摺動自在に収納した照射ケースと、この照射ケースの外周に斜め方向に突設され、前記LEDの電源としてのバッテリを収納するためのハンドルと、前記照射ケースの開口部に設けられ、前記LEDから照射された光軸に平行な光束を進路変更するための光学レンズ機構と、を備えている。このように構成することにより、LEDの点灯で生じる熱を縦杆を介して複数の放熱板に伝達して、これら放熱板で適度な温度に冷却することができ、長時間使用しても、照射ケースの外側が高温化することなく作業者は常に安全に使用することができ、軽量で且つコンパクトな構成とすることができる効果がある。
【0021】
本発明の請求項5に記載の被塗物の塗装面の検査装置によれば、前記LED保持装置を前後摺動させる操作部を前記照射ケースに設けたので、作業者は照射ケースの操作部によってLED保持装置を前後に摺動して、光の焦点を調整できる効果がある。
【0022】
本発明の請求項6に記載の被塗物の塗装面の検査方法によれば、被塗物の塗装面に該塗装面の色彩に応じた発光色を、請求項1〜5のいずれか1項に記載の検査装置における光源から照射し、前記塗装面からの反射光に基づいて被塗物の塗装面の塗装欠陥の有無を目視により判別する工程を有するので、光源がLEDであることから検査の際に、車輌の塗装面が焼き付く心配をすることなく、十分な検査時間を確保することができる。しかも、検査の際に、塗装面の色ごとに照射する光源の色を変更することができるため、塗装色ごとに見え方が異なる色ムラや瑕等の欠陥を見つけ易くなり検出率を向上することができる効果がある。また、検査装置の光源の放熱性能を向上させて熱暴走などに起因する故障や低寿命化を防止する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る実施形態の自動車生産工場の検査ラインを示す概略図である。
【図2】本発明に係る実施形態の塗装面の検査装置を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る実施形態の塗装面の検査装置を示す側面図である。
【図4】本発明に係る実施形態の塗装面の検査装置を示す断面図である。
【図5】本発明に係る実施形態のLED保持装置を示す正面図である。
【図6】本発明に係る実施形態のLED保持装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
自動車生産工場では、ボディにエンジンを組み付ける組立工程やボディの表面を塗装する塗装工程や塗装した塗装面を検査する被塗物の塗装面の検査工程等の複数の工程を経て、様々な塗装色の車輌を生産している。
【0025】
本実施形態に係る被塗物の塗装面の検査方法は、塗装を終えた車輌の塗装面を検査する方法であって、以下に詳述する検査装置を用いて検査するようにしている。すなわち、被塗物の塗装面の検査工程は、前の塗装工程を終えた各色の車輌がライン上に順次流れており、これら異なる色の車輌に対して、検査装置から検査照明としての光を照射し、作業員が目視により、塗装面の色ムラや瑕等の有無を検査している。このような作業員による目視検査において、検査装置に配設した光源に車輌色ごとに異なる照射を行える発色の異なる複数種のLEDを採用することで、色ムラや瑕等を見落とす可能性を低減することができるものである。なお、本実施形態では、発色の異なる複数種のLEDを用いた塗装面の検査方法を、目視による方法として説明するが、例えば、同様に発色の異なる複数種のLEDを用いて塗装面に照射するとともに、CCDカメラなどの撮像装置で塗装面を撮影し、その画像データに基づいて塗装面の性状を検査することも考えられる。
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る被塗物の塗装面の検査装置及びこれを用いた検査方法の一実施形態について説明する。
【0027】
図1は、自動車組み立て工場における一部工程を示すものであり、図中左側の2台の車輌は塗装工程後、塗装検査待ちのものであり、右側の車輌Vは、検査ラインCにおいて車輌Vの塗装面Sの検査が行われている。図示するように、本実施形態に係る被塗物の塗装面の検査装置1は、塗装面Sである車輌Vのボディ表面から一定の間隔を保持して配置されている。
【0028】
本検査装置1の構成は、図2から図3に示すように、発色の異なる複数種のLED20を設けたLED保持装置4を収納するための照射ケース2と、LED20の電源としてのバッテリ(電池)26を収納するためのハンドル3と、LED20から照射された光軸に平行な光束Lを進路変更するための光学レンズ機構と、多色のLED20を有するLED保持装置4(例えば図4参照。)等から構成している。
【0029】
照射ケース2は、図2から図3に示すように、中空箱状に形成され、その一側面には、後述する摺動操作用レバー23を摺動するための長孔21bが穿設されている。照射ケース2の内部空間には、後述するLED保持装置4がケース長手方向に沿って摺動自在に内蔵されている(例えば図4参照。)。
【0030】
照射ケース2の外周には、図4に示すように、斜め方向に中空状のハンドル3を突設しており、ハンドル3の中心部には、LED20の電源としてのバッテリ(電池)26を収納している。ハンドル3の底部には、バッテリ26を収納している収納空間を開閉自在となす蓋体7を設けている。ハンドル3の側部には、後述する切替部としての切替レバー30や調光用ダイヤル31が回動自在に設けられている。
【0031】
さらに、ハンドル3内には、LED20の光を調光するための調光回路を備えた調光用基板28を設けている。この調光用ダイヤル31を回転操作することにより調光用基板28の調光回路は、周波数変調を行いながら各LED20に供給する電流量を可変して、LED20を調光して明るさを変化させることができる。また、調光用基板28は、被塗物の塗装面の色彩に応じて、発色の異なる複数種のLEDのうち、発光させるLEDを選択的に切り替えるための切替部としてのスイッチ回路を備えており、切替レバー30を操作することによりスイッチ回路の各スイッチをオン・オフ状態として、所望の発光色のLEDを点灯あるいは消灯することができる。
【0032】
照射ケース2のLED20の光の照射側の開口部には、光学レンズ機構としての光束用の凸レンズ24を設けており、LED20からの照射光を収束して収束光として被塗物表面に照射するように構成している。
【0033】
従って、環状に配列させた多数のLED20からの照射光は凸レンズ24の焦点に集められる。すなわち、光軸に平行な照射光としての光束Lは、凸レンズ24の焦点Fに集められる。なお、光学レンズ機構は、1枚の凸レンズで構成したが、2枚の凸レンズを並設して、光軸に平行な光を照射できるように構成してもよい。
【0034】
図4及び図6に示すように、LED保持装置4は、発色の異なる複数種のLED20を複数個ずつ環状に配置するための一定の厚みの円盤状の保持基盤11と、この保持基盤11の背後に所定間隔をあけて配設した大判の3枚の円盤状の放熱板13,14,15と、保持基盤11及び放熱板13,14,15を挿貫して連結固設するための縦杆12より構成している。
【0035】
保持基盤11の周縁11aには、LED20の数だけの保持孔11bを穿設しており、各保持孔11b中には、LED20の基部に実装した端子ピンを挿入する構成としている。本例の保持基盤11の周縁11aには、ウォームホワイト色のLED20wやナチュラルホワイト色のLED20nやグリーン色のLED20gを順に環状に配置している(例えば図5参照。)。
【0036】
図6に示すように、保持基盤11の中心には、縦杆12を下方に向って挿貫している。この縦杆12は、大判の3枚の円盤状の放熱板13,14,15を一定間隔を保持しつつ固設している。例えば、縦杆12や放熱板13,14,15は、軽量でかつ熱伝導率のよいアルミニウムで構成したが、熱伝導の良い金属であれば銅やその他の金属であってもよい。
【0037】
円盤状の放熱板13,14,15の径R2は、保持基盤11の径R1の略2倍として、環状に配設した各LED20からの発熱を効率よく放熱して冷却する効果を持っている(例えば図5参照。)。放熱板の形状を円盤状としたが、照射ケース2の形状に合わせて、正方形状としてもよい。
【0038】
円盤状の各上中下の放熱板13,14,15の上下間隔は、略同一間隔としている。さらに、放熱板13,14,15の厚みは、保持基盤11の厚みの約1/3倍の長さとしており、保持基盤11からの放熱をより効率的に伝達するようにしている。具体的にはLED20から保持基盤11への伝導熱は上段の円盤状の放熱板13に伝導され、その後は中段の放熱板14、下段の放熱板15に輻射熱として伝わり、広面積の円盤状の放熱板13,14,15の上下面より放熱されるように構成している。各放熱板13,14,15には、LEDと後述する調光用基板28とを接続する配線Wを挿通するための挿通孔13a,14a,15aを設けている。かかる構成とすることで、LED点灯時の熱を3枚の放熱板で適度な温度まで冷却することができ、照射ケース2が高温化することを防止し、作業者は安全に検査を行うことができる。さらに、放熱部分を軽量で且つコンパクトな構成とすることができる効果がある。
【0039】
また、LED保持装置4の3枚の円盤状の放熱板13,14,15の各外周縁部は、図4に示すように、照射ケース2の内周面に摺動自在とし、照射ケース2内でのLED保持装置4の摺動ガイドを行うように構成している。
【0040】
図6中、16は、縦杆12に螺合したナットであり、円盤状の放熱板13,14,15の中心部の上下面にスプリングワッシャーを介して当接しておき、上下よりかしめて縦杆12に円盤状の放熱板13,14,15を固定している。17は、上端ナットであり、保持基盤11の上面に当接して、上段の円盤状の放熱板13の下面に当接したナット16との間で保持基盤11とその下面に当接させた上段の円盤状の放熱板13とを一体に縦杆12に固定している。
【0041】
また、縦杆12の上端には、円盤状の保持基盤11の周縁11aに配設したLED20の環状配列によりも小径に形成した化粧板18を配設している。
【0042】
また、縦杆12は、他端を伸延してスライドロッドとして機能する。このスライドロッドは、照射ケース2の有座部21a中心に突設したガイド筒体22中にスライド自在に挿入し、スライドロッドのスライド動作により、LED保持装置4を照射ケース2内で摺動操作することができる。
【0043】
[車輌の塗装面検査装置及びその装置を用いた車輌の塗装面の検査方法]
本車輌の塗装面検査装置及びその装置を用いた車輌の塗装面の検査方法について、説明する。
【0044】
図1に示すように、前の塗装工程を終えた各色の車輌Vが、車輌Vの塗装面Sの検査を行う検査ラインCに順次流れてくる。この検査ラインCにおいて、車輌Vの塗装面Sの検査工程が行われる。なお、濃彩色とはブラック、ダークブルー、ライトブルー等であり、一方の淡彩色とはホワイト、シルバー、グレー、ベージュ、レッド等である。
【0045】
濃彩色の車輌Vの検査を行う際には、ハンドル3に設けた発光色の切替レバー30を操作して、図5に示すLED20の発光色を例えばウォームホワイト色のLED20wに切り替えて発光する。
【0046】
図4に示すように、発光したウォームホワイト色のLED20wの光束Lは、光軸に対して平行に進行して凸レンズ24に入射すると、この凸レンズ24の出射面から出射され、凸レンズ24の焦点Fに集められる。
【0047】
このように凸レンズ24の焦点Fに集められた光束Lが車輌Vの塗装面Sに照射されることとなる。
【0048】
作業員は目視により車輌Vの塗装面Sで反射された反射光の度合いから塗装面Sの色ムラや瑕等の有無を検査する。例えば、作業員は塗装面Sの塗装欠陥としての色ムラや瑕が生じていると、その部分が陰影となり視認することができる。
【0049】
また、光源にLED20を用いたため、従来の光源としてのハロゲンランプに比べて発熱量が少なく、作業者が安全に使用することができる。従来、光源にハロゲンランプを用いた場合には車輌の塗装面が焼き付くことがあったが、光源をLED20としたことで、塗装面が焼き付くことがなくなり、十分な検査時間を確保しつつ検査することができる効果がある。
【0050】
また、LED20の点灯で発生した発熱は、保持基盤11から縦杆12を介して3枚の円盤状の放熱板13,14,15に伝達されており、これら放熱板13,14,15は、長時間連続点灯しても各LED20からの発熱を効率よく放熱して冷却している。そのため、照射ケース2の外装面に熱が伝達せず、作業者が火傷を負うようなおそれがなくなる効果がある。また、LEDからの熱の放熱性能を向上させて、各放熱板は、熱暴走などに起因する故障や低寿命化を防止することができる。
【0051】
さらに、車輌Vの塗装面Sに照射される光束Lの焦点位置を調節する際に、塗装面Sの検査装置の摺動操作用レバー23を前後方向に操作すると、このレバー23の基端に連結したLED保持装置4を照射ケース2内で摺動操作することととなり、凸レンズ24と保持基盤11との間の距離を可変して、焦点位置を調節することができる。
【0052】
また、LED20を調光して明るさを変化させる際には、LED20に流す電流を調整する調光回路により周波数変調を行いながらLED20に供給する電流量を可変することができる。このように調光した光を塗装面に照射することにより、塗装面における陰影の度合いを変えて、色ムラや瑕を視認しやすくすることができる。
【0053】
この検査ラインCにおいては、濃彩色の車輌や淡彩色の車輌が混在した状態で流れており、淡彩色の車輌の塗装面の検査について、以下に説明する。
【0054】
図5に示すように、淡彩色の車輌の検査を行う際には、塗装面Sの検査装置1の発光色を例えばナチュラルホワイト色のLED20nに切り替えて発光する。
【0055】
円盤状の保持基盤11のナチュラルホワイト色のLED20nを選択して発光させると、ナチュラルホワイト色の光束Lは、光軸に対して平行に進行して凸レンズ24に入射し、この凸レンズ24の出射面から出射され、凸レンズ24の焦点に集められる。
【0056】
このように凸レンズ24の焦点Fに集められた光束Lが車輌Vの塗装面Sに照射される。
【0057】
作業員が目視により、淡彩色の車輌Vの塗装面Sで反射された反射光の度合いから淡彩色の塗装面Sに特有の色ムラや瑕等の有無を検査している。光源をウォームホワイト色のLED20wからナチュラルホワイト色のLED20nに切り替えることで、淡彩色の塗装面Sの塗装欠陥としての色ムラや瑕を視認することができる。
【0058】
上述したように車輌Vの塗装面Sの検査の際に、塗装面Sの色に応じて照射する光源の色を変更することができるため、塗装色ごとに見え方が異なる色ムラや瑕等の塗装欠陥を見つけ易くなり検出率を向上することができる効果がある。
【0059】
なお、本検査装置1は、車輌V内の検査にも使用することができ、グリーン色のLED20gの発光色に切り替えて、検査するようにしている。また、グリーン色のLED20gは、淡彩色のうち濃いレッドの塗装面の塗装欠陥を検出するのに好適に用いられることとなる。
【0060】
以上の実施形態により、以下の被塗物の塗装面の検査装置及びその装置を用いた被塗物の塗装面の検査方法が実現される。
すなわち、被塗物の塗装面Sに、該塗装面Sの色彩に応じた発光色を照射可能な光源としてのLED20を有するLED保持装置4を備え、前記LED20により照射した光の前記塗装面Sからの反射光に基づいて被塗物の塗装面Sを検査可能とした被塗物の塗装面Sの検査装置1であって、LED保持装置4は、発色の異なる複数種のLED20を複数個ずつ環状に配置するための保持基盤11と、この保持基盤11の背後に所定間隔をあけて配設した複数の放熱板13,14,15と、保持基盤11及び放熱板13,14,15を挿貫して連結固定するための縦杆12と、を具備する被塗物の塗装面の検査装置1。
【0061】
また、被塗物の塗装面の色彩に応じて、発色の異なる前記複数種のLED20のうち、発光させるLED20を選択的に切り替え可能とした切替部(例えば、調光用基板28,切替レバー30)を備えることとした。
【0062】
また、前記光源としてのLED20から照射する光を調光するための調光回路(例えば、調光用基板28)を設けたこととした。
【0063】
また、LED保持装置4を、長手方向に沿って摺動自在に収納した照射ケース2と、この照射ケース2の外周に斜め方向に突設され、LED20の電源としてのバッテリ26を収納するためのハンドル3と、照射ケース2の開口部に設けられ、LED20から照射された光軸に平行な光束を進路変更するための光学レンズ機構と、を備えている。
【0064】
また、LED保持装置4を前後摺動させる操作部を照射ケース2に設けている。
【0065】
被塗物の塗装面Sに該塗装面Sの色彩に応じた発光色を、検査装置1における光源から照射し、前記塗装面Sからの反射光に基づいて被塗物の塗装面Sの塗装欠陥の有無を目視により判別する工程を有する被塗物の塗装面の検査方法。
【0066】
なお、本発明を実施形態を通して説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の主旨を逸脱することのない限り、各構成要素の形状のレイアウトなどは適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0067】
C 検査ライン
F 焦点
S 塗装面
V 車輌
1 検査装置
2 照射ケース
3 ハンドル
4 LED保持装置
11 保持基盤
12 縦杆
13,14,15 放熱板
20 LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物の塗装面に、該塗装面の色彩に応じた発光色を照射可能な光源としてのLEDを有するLED保持装置を備え、前記LEDにより照射した光の前記塗装面からの反射光に基づいて被塗物の塗装面を検査可能とした被塗物の塗装面の検査装置であって、
前記LED保持装置は、
発色の異なる複数種のLEDを複数個ずつ環状に配置するための保持基盤と、
この保持基盤の背後に所定間隔をあけて配設した複数の放熱板と、
前記保持基盤及び前記放熱板を挿貫して連結固定するための縦杆と、
を具備する
ことを特徴とする被塗物の塗装面の検査装置。
【請求項2】
被塗物の塗装面の色彩に応じて、発色の異なる前記複数種のLEDのうち、発光させるLEDを選択的に切り替え可能とした切替部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の被塗物の塗装面の検査装置。
【請求項3】
前記LEDから照射する光を調光するための調光回路を設けた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の被塗物の塗装面の検査装置。
【請求項4】
前記LED保持装置を、長手方向に沿って摺動自在に収納した照射ケースと、
この照射ケースの外周に斜め方向に突設され、前記LEDの電源としてのバッテリを収納するためのハンドルと、
前記照射ケースの開口部に設けられ、前記LEDから照射された光軸に平行な光束を進路変更するための光学レンズ機構と、
を備えた
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の被塗物の塗装面の検査装置。
【請求項5】
前記LED保持装置を前後摺動させる操作部を前記照射ケースに設けた
ことを特徴とする請求項4に記載の被塗物の塗装面の検査装置。
【請求項6】
被塗物の塗装面に該塗装面の色彩に応じた発光色を、請求項1〜5のいずれか1項に記載の検査装置における光源から照射し、前記塗装面からの反射光に基づいて被塗物の塗装面の塗装欠陥の有無を目視により判別する工程を有する
ことを特徴とする被塗物の塗装面の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−78197(P2012−78197A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223537(P2010−223537)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(596002767)トヨタ自動車九州株式会社 (20)
【Fターム(参考)】