被検物センサならびにその製造方法および使用方法
本発明の実施形態は、安定化されたコーティング組成物を有する被検物センサおよびそれらのセンサの製造方法および使用方法を提供する。例示的実施形態は安定化されたグルコースオキシダーゼコーティングを有する電気化学的グルコースセンサを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグルコースなどの被検物の検出および測定のためのセンサ、ならびにこれらのセンサの製造方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は2002年10月18日出願の米国特許出願番号第10/273,767号に関し、その内容は本願に引用して援用される。
【0003】
グルコースおよびラクテートなどの生物化学的被検物の分析は様々な臨床状況において重要である。例えば、ヒトの体液中のグルコース濃度の監視は、特に糖尿病の管理に直接関連する。糖尿病の管理、例えば、切迫したまたは実際の低血糖の警告ならびにその回避のために、人体に埋没されたセンサを含む、連続的または間欠的な運転をするグルコースセンサが求められている。ヒトの体液中のラクテート濃度の監視は、これらに限らないが、外傷、心筋梗塞、鬱血性心不全、肺浮腫、および敗血症を含む多くの医学的状態の診断および評価に有用である。
【0004】
通常生理学的な変動を監視するために用いられる生物医学的な測定デバイスは、適切な酵素コーティングで改変した電極を用いる電流計センサ装置を含む。それらの酵素電極を有するセンサは、例えば、酵素と被検物の反応(この反応は検出可能な共反応物を用い、および/または検出可能な反応生成物を生成する)を用いて、使用者が様々な被検物濃度を迅速かつかなり正確に測定することを可能にする。例えば、図1に示すようなグルコースとグルコースオキシダーゼ(GOx)の間の反応に基づく多数のグルコースセンサが開発された。この状況において、当分野で既知のセンサを用いて生理学的グルコース濃度を正確に測定するには、典型的に酸素と水の両方が過剰に存在することが必要である。グルコースと酸素がセンサ上の不動化した酵素層中に拡散すると、グルコースは酸素と反応してH2O2を生成する。グルコースは、酸素および/または過酸化水素に感受性のある電極に結合した不動化グルコースオキシダーゼ酵素を用いて電気化学的に検出することができる。反応は酸素の還元およびサンプル媒体中のグルコース濃度に比例した過酸化水素の生成をもたらす。典型的なデバイスは、酵素反応が存在および存在しないときに酸素または過酸化水素の濃度を検出する少なくとも2個の検出電極、または少なくとも1個の検出電極と参照信号源から構成されるが制限されない。さらに、完全な監視系は対象物質の濃度の差を求めるための電気的検出および制御手段を典型的に含む。この差から、グルコースなどの被検物の濃度を求めることができる。
【0005】
様々なそれらの被検物センサならびにそれらの被検物センサを製造し使用する方法が当分野に知られている。それらのセンサ、センサセット、およびその製造方法の例は、例えば、米国特許第5,390,691号、第5,391,250号、第5,482,473号、第5,299,571号、第5,568,806号、ならびにPCT国際公開番号第WO01/58348号、第WO03/034902号、第WO03/035117号、第WO03/035891号、第WO03/023388号、第WO03/022128号、第WO03/022352号、第WO03/023708号、第WO03/036255号、第WO03/036310号、および第WO03/074107号に記載されており、その各内容は本願に引用して援用される。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,390,691号明細書
【特許文献2】米国特許第5,391,250号明細書
【特許文献3】米国特許第5,482,473号明細書
【特許文献4】米国特許第5,299,571号明細書
【特許文献5】米国特許第5,568,806号明細書
【特許文献6】国際公開第01/58348号パンフレット
【特許文献7】国際公開第03/034902号パンフレット
【特許文献8】国際公開第03/035117号パンフレット
【特許文献9】国際公開第03/035891号パンフレット
【特許文献10】国際公開第03/023388号パンフレット
【特許文献11】国際公開第03/022128号パンフレット
【特許文献12】国際公開第03/022352号パンフレット
【特許文献13】国際公開第03/023708号パンフレット
【特許文献14】国際公開第03/036255号パンフレット
【特許文献15】国際公開第03/036310号パンフレット
【特許文献16】国際公開第03/074107号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多くのセンサ設計およびそれらのセンサの製造方法が当分野に知られるが、安定性、寿命、直線性および不変性を向上させ、ならびに雑音対信号比が最適化された、改善された特性を有するセンサが継続的に必要とされている。また、これらの最適化された品質を有するセンサの製造を可能にする方法および工程を明らかにすることが必要である。本発明はこれらの必要性を満たし、さらに関連の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される本発明の実施形態は、例えば、糖尿病患者の血液グルコースレベルの監視を皮下または経皮的に行う種類の被検物センサを提供する。本明細書に開示される本発明の実施形態は、例えば、透析および/または体外膜型酸素供給装置(extra corporeal membrane oxygenation protocol)などの様々な医療状況において用いられる種類の被検物センサを提供する。さらに詳細には、本明細書に提供される開示は、最適化された被検物センサ設計およびそれらのセンサの製造方法および使用方法を教示する。本発明の好ましい被検物センサは、典型的にグルコースオキシダーゼ、ラクテートオキシダーゼなどの酵素を含む非常に薄い被検物検出層を含む。さらに、本発明の被検物センサは、被検物センサの層間の接着を促進する働きをするシランを含む1つ以上の層を含むことが好ましい。驚くべきことに、シラン接着促進層および本明細書に開示される他の要素を組み込んだ被検物センサは、向上した安定性、寿命、直線性および不変性、ならびに改善された雑音対信号比を含む、多くの優れた品質を有する。
【0009】
本明細書に開示される本発明は多くの実施形態を有する。典型的な本発明の実施形態は哺乳動物内に埋没するために設計された被検物センサ装置である。被検物センサ装置は、ベース層およびベース層の上に配置された伝導層を含むことが好ましいが、これらに制限されず、伝導層は作用電極ならびに好ましくは参照電極および対電極を含む。本発明のこの実施形態において、被検物検出層は伝導層の上に配置される。典型的に、被検物検出層は、被検物の存在下で伝導層中の作用電極の電流を検出可能に変化させる組成物を含む。それらの組成物の例は、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートオキシダーゼ、ヘキソキナーゼおよびラクトースデヒドロゲナーゼなどの酵素(例えば、酵素層を安定化する任意の他のタンパク質および/またはポリマおよび/またはその組み合わせ)を含む。場合によって、本発明の実施形態は、被検物検出層の上に配置されたタンパク質層を含み、このタンパク質層は典型的にウシ血清アルブミン、またはヒト血清アルブミンなどの担体タンパク質を含む。この実施形態において、接着促進層が被検物検出層または任意のタンパク質層の上に配置され、被検物検出層と1つ以上の隣接センサ層間の接着を促進する働きをする。この接着促進層は、センサ構造の安定性を高める能力のために選択された、シラン組成物、例えばγ−アミノプロピルトリメトキシシランを含むことが好ましい。また、この実施形態は、被検物検出層の上に配置された被検物変化層、例えばグルコース制限膜を含み、被検物変化層はそこを通る被検物の拡散を変化させる。また、この実施形態は、被検物変化層の少なくとも1部の上に配置された絶縁カバー層を含み、カバー層は、検出される被検物を含む溶液に被検物変化層の少なくとも1部を露出する開口をさらに含む。被検物センサ装置は、アノード成極によって機能するように設計され、電流の変化を被検物センサ装置の伝導層中の作用電極(アノード)で検出することができ、この作用アノードで検出できる電流の変化を被検物の濃度と相関をとることができるのが好ましい。
【0010】
以下で詳細に説明するように、様々なセンサ層は、センサの好ましい設計によって操作することのできる様々な異なる特性をもつことができる。例えば、被検物検出層は、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、およびラクトースデヒドロゲナーゼからなる群から選択される酵素を含むことができる。代りに、被検物検出層は、抗体または他の被検物検出分子を含むことができる。被検物検出層は、1、0.5、0.25、および0.1ミクロン未満からなる群から選択される厚さであり、酵素と実質的に固定比率の担体タンパク質を含み、酵素と担体タンパク質は酵素層全体に実質的に均一に分配される。
【0011】
本発明の一例示的実施形態において、被検物検出層中の酵素はグルコースオキシダーゼであり、被検物センサ装置は哺乳動物のグルコースレベルを検出することが可能である。それらのセンサの実施形態において、伝導層中の作用電極での電流はグルコースオキシダーゼによるグルコースと酸素間の酵素反応によって発生した過酸化水素によって変化する。本発明の代替の実施形態において、被検物検出層中の酵素はラクテートオキシダーゼであり、被検物センサ装置は哺乳動物のラクテートレベルを検出することが可能である。それらのセンサの実施形態において、伝導層中の作用電極での電流はラクテートオキシダーゼによるラクテートと酸素間の酵素反応によって発生した過酸化水素によって変化する。
【0012】
上で論じた構造を有するいくつかの被検物センサは、多くの極めて望ましい特性を有する。例えば、いくつかの被検物センサ装置の実施形態は、30日を超え12カ月またはそれ以上の期間哺乳動物に埋没するのに適している。さらに、いくつかの被検物センサ装置の実施形態は、哺乳動物の体に存在する被検物への露出に応答して、被検物のセンサへの接触の15、10、5、または2分間内に、電流計などのデバイスによって検出できる電流の変化を検出することができる。さらに、本明細書に開示されるいくつかの被検物センサ装置の実施形態は、哺乳動物の非脈管空間(non-vascular space)への埋没に適している。最終的に、以下で詳細に説明するように、本明細書に開示される本発明のいくつかの実施形態に用いられる要素の特性は、当分野に既に存在するものよりも広範囲の幾何形状構成(例えば、小さな平面センサ構成)を可能にする。
【0013】
本発明の関連する実施形態は哺乳動物の体内の被検物を検出する方法であり、その方法は、本明細書に開示される被検物センサの実施形態を哺乳動物に埋没し、次いで作用電極での電流の変化を検出し、電流の変化を被検物の存在と相互に関連させて被検物を検出することを含む。典型的に、電流変化が検出される作用電極がアノードであるように、被検物センサはアノード性に成極される。それらの一方法において、被検物センサ装置は哺乳動物中のグルコースを検出する。代替の方法において、被検物センサ装置は哺乳動物中のラクテートを検出する。
【0014】
上で論じた構造を有するいくつかの被検物センサは、多くの極めて望ましい特性を有し、哺乳動物中の被検物を検出する様々な方法を可能にする。例えば、それらの方法において、哺乳動物に埋没された被検物センサ装置は、1、2、3、4、5、または6カ月を超える期間、哺乳動物の体内の被検物を検出するように機能する。このように埋没された被検物センサ装置は、被検物に応答して、被検物がセンサへ接触した15、10、5、または2分間内に、電流の変化を検出することが好ましい。それらの方法において、センサは哺乳動物の体内の様々な位置、例えば脈管および非脈管空間の両方に埋没することができる。
【0015】
また、本発明は、センサセットおよびキットを含む別の製造物品を提供する。本発明のこのような一実施形態において、上述のように被検物の検出に有用なキットおよび/またはセンサセットが提供される。キットおよび/またはセンサセットは、典型的に容器、ラベル及び上述のセンサを含む。典型的な実施形態は容器と、容器内に、本明細書に開示される設計を有する被検物センサ装置および被検物センサ装置を使用するための説明書とを含むキットである。
【0016】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、当業者には以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものであるが、例示として提供され、制限するものではないことを理解すべきである。本発明の範囲内で、多くの変更および変形をその精神から逸脱することなく加えることができ、本発明は全てのそれらの変形を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
特別に定義しない限り、本明細書に用いられる全ての技術用語、表記、および他の科学用語または術語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解される意味を有することが意図される。いくつかの場合に、通常理解される意味を有する用語は、本明細書において、明瞭さおよび/または引用の容易さのために定義されるものであり、本明細書においてそれらの定義を含むことは、当分野で一般に理解されるよりも大きな相違を表すものと解釈する必要はない。本明細書に説明されまたは引用される多くの技術および手順は、当業者による従来の方法を用いて十分理解され一般に用いられる。適切であるように、市場で入手可能なキット及び薬品の使用を含む手順は、特記しないかぎり製造者の定めた使用計画および/または要因に従って一般に行われる。
【0018】
本明細書に開示される本発明の実施形態は、例えば、糖尿病患者の血糖値の皮下または経皮監視に使用される種類のセンサを提供する。本開示は、それらのセンサの製造方法および使用方法をさらに提供する。本発明の好ましい実施形態はグルコースおよび/またはラクテートセンサに関するが、本明細書に開示される様々な要素(例えば薄い酵素コーティング)は、当分野で知られている広範囲のセンサの任意の1つに使用するように適合することができる。本発明に開示される被検物センサ要素、構造、ならびにこれらの要素の製造方法および使用方法は様々な層状センサ構造を確立するのに用いることができる。本発明のそれらのセンサは驚くべき柔軟性と汎用性、特性を有し、広範囲の様々な被検物種を試験するように広く様々なセンサ形態を設計することが可能である。本発明の典型的な実施形態において、被検物濃度の処理可能な信号への変換は電気化学的手段による。これらの変換器は当分野に既知の任意の広い様々な電流計、電位計、または電気伝導度計に基づくセンサを含むことができる。さらに、本発明のセンサの微細加工技術および材料は、実質的に非平面状に、または代りに実質的に平面状に作製された他の種類の変換器(例えば、音波検出デバイス、サーミスター、ガス検出電極、電界効果トランジスタ、光およびエバネッセント場(evanescent field)導波器等)にも応用することができる。一般に各種類の変換器または生物センサを用いることのできる生物センサならびに分析用途に展開することのできる変換器の有用な概論および一覧は、クリストファー R.ローヴェ(Christopher R.Lowe)によるTrends in Biotech.1984、2(3)、59〜65の記事に見られる。
【0019】
以下に本発明の特定の態様を詳細に論じる。
【0020】
(I)本発明の典型的な被検物センサ、センサ要素およびセンサ形態
(A)典型的なセンサ形態の図示
図2は本発明の典型的なセンサ構造100の断面を示す。センサは、センサ構造を製造する本発明の方法に従って互いに配置された、様々な伝導性および非伝導性構成要素の複数の層から形成される。図2に示した実施形態はセンサ100を支持するためのベース層102を含む。ベース層102はセラミックまたはポリイミド基板などの材料から作ることができ、自立型またはさらに当分野で既知の他の材料によって支持することができる。本発明の実施形態は、ベース層102上に配置された伝導層104を含む。典型的に、伝導層104は1つ以上の電極を含む。作動センサ100は、典型的に作用電極、対電極、および参照電極などの複数の電極を含む。また、他の実施形態は、複数の機能を有する電極、例えば、参照電極と対電極の両方として機能するものなども含むことができる。また、さらに他の実施形態は、センサ上に形成されない分離した参照要素を用いることもできる。典型的に、これらの電極は互いに近接して配置されるが、互いに電気的に絶縁される。
【0021】
以下で詳細に論じるように、伝導層104は多くの既知の技術および材料を用いて施すことができる。センサの電気回路は、典型的に、配置された伝導層104を所望の伝導路のパターンにエッチングすることによって画定される。センサ100用の典型的な電気回路は、隣接端部に接触パッドを形成する領域、および末端部にセンサ電極を形成する領域を備える2個またはそれ以上の隣接する伝導路を含む。ポリマコーティングなどの電気絶縁カバー層106は典型的にセンサ100の部分に配置される。絶縁保護カバー層106として使用するために許容できるポリマコーティングは、シリコーン化合物などの非毒性生体適合性ポリマ、ポリイミド類、生体適合性ハンダマスク、エポキシアクリラートコポリマ等を含むことができるが、これらに制限されない。本発明のセンサにおいて、カバー層106を通して1つ以上の露出された領域または孔108を作って、伝導層104を外部環境に開口し、例えばグルコースなどの被検物をセンサの層に浸透させ、検出要素によって検出することが可能である。孔108は、レーザーアブレーション、化学的加工またはエッチングまたはフォトリソグラフ現像等を含む多くの技術によって形成することができる。本発明のいくつかの実施形態において、製造の間に、第2のフォトレジストを保護層106の上に塗布し、孔108(1つ又は複数)を形成するために除去される保護層の領域を画定することができる。また、露出された電極および/または接触パッドは、追加のめっき加工などの二次加工を行い(例えば孔108を通して)、伝導領域の表面を調製し、および/または強化することができる。
【0022】
図2に示したセンサ形態において、被検物検出層110(センサ化学反応層(sensor chemistry layer)であることが好ましく、これは、この層の材料が化学反応を起こして伝導層によって検出することのできる信号を生成することを意味する)は、伝導層104上の1つ以上の露出電極の上に配置される。センサ化学反応層110は酵素層であることが好ましい。センサ化学反応層110は、酸素および/または過酸化水素を生成することの可能な酵素、例えば、グルコースオキシダーゼ酵素を含むことが最も好ましい。場合によって、センサ化学反応層中の酵素は、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンなどの第2担体タンパク質と組み合わされる。例示的実施形態において、センサ化学反応層110中のグルコースオキシダーゼなどの酵素はグルコースと反応し、次いで電極の電流を変化させる化合物である過酸化水素を生成する。この電流変化は、過酸化水素の濃度に依存し、過酸化水素の濃度はグルコース濃度に相関があるので、この電流の変化を監視することによってグルコース濃度を求めることができる。本発明の特定の実施形態において、過酸化水素はアノードである作用電極(本明細書ではアノード作用電極とも呼ぶ)で酸化され、得られる電流は過酸化水素の濃度に比例する。過酸化水素濃度を変化させることによって生じるそれらの電流変化は、汎用センサ電流計バイオセンサ検出器などの様々なセンサ検出器装置の任意の1つ、またはMedtronic MiniMed製のグルコース監視デバイスなど、当分野に既知の様々な類似のデバイスによって監視することができる。
【0023】
被検物検出層110は伝導層の一部または伝導層の全体に施すことができる。典型的に被検物検出層110は、アノードまたはカソードとすることのできる作用電極に配置される。場合によって、被検物検出層110は対電極および/または参照電極に配置することができる。典型的に、被検物検出層110は、当分野に従来記述されたセンサに見られるものと比べて比較的薄く、例えば、厚さ1、0.5、0.25、または0.1ミクロン未満であることが好ましい。以下で詳細に論じるように、薄い被検物検出層110を生成する好ましい方法は、スピンコーティング工程、浸漬および乾燥工程、低剪断噴霧工程、インクジェット印刷工程、シルクスクリーン工程などを含む。薄い被検物検出層110はスピンコーティング工程を用いて施すのが最も好ましい。
【0024】
典型的に、被検物検出層110は、1つ以上の追加の層でコーティングされる。場合によって、1つ以上の追加の層は、被検物検出層110の上に配置されたタンパク質層116を含む。典型的に、タンパク質層116はアルブミンなどのタンパク質を含む。タンパク質層116は、ヒト血清アルブミンを含むことが好ましい。本発明の好ましい実施形態において、追加の層は被検物検出層110の上に配置された被検物変化層112を含み、被検物検出層110との被検物の接触を調節する。例えば、被検物変化膜層112は、被検物検出層中に存在するグルコースオキシダーゼなどの酵素と接触するグルコース量を調節するグルコース制限膜を含むことができる。それらのグルコース制限膜は、それらの目的に適していることが知られている広く様々な材料、例えば、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン化合物、ポリウレタン、ポリウレアセルロースアセタート、Nafion(登録商標)、ポリエステルスルホン酸(例えば、Kodak AQ)、ヒドロゲルまたは当業者に既知の他の適切な親水性膜から作ることができる。
【0025】
本発明の典型的な実施形態において、それらの接触および/または接着を容易にするために、図2に示すように接着促進層114が被検物変化層112と被検物検出層110の間に配置される。本発明の特定の実施形態において、それらの接触および/または接着を容易にするために、図2に示すように接着促進層114は被検物変化層112とタンパク質層116の間に配置される。接着促進層114は、それらの層間の接合を容易にする、当分野に既知の広く様々な材料の任意の1種から作ることができる。接着促進層114はシラン化合物を含むことが好ましい。代替の実施形態において、被検物検出層110中のタンパク質等の分子は十分架橋することができ、または接着促進層114を存在させずに、被検物変化膜層112を直接被検物検出層110に接触して配置可能なように調製することができる。
【0026】
(B)典型的な被検物センサ層
<ベース層>
本発明のセンサは、典型的にベース層(例えば、図2中の要素102参照)を含む。用語「ベース層(base layer)」は、本明細書中、技術的に許容された術語に従って用いられ、装置中に、互いに頂部に積み重ねられて機能センサを含む複数の層のための支持母材を典型的に提供する層を指す。好ましい形において、ベース層は絶縁材料(例えば、電気絶縁性および/または非水浸透性)の薄膜シートを含む。このベース層は、非水浸透性及び密閉性などの望ましい品質を有する広く様々な材料から作ることができる。好ましい材料は、セラミック及びポリイミド基板等を含む。ベース層は自立性材料または当分野に既知であるように、さらに他の材料によって支持することができる。図2に示したセンサ形態の一実施形態において、ベース層102はセラミックを含む。代替の実施形態において、セラミックベースは主としてAl2O3(例えば96%)の組成物を含む。埋没可能なデバイスとともに用いるために、アルミナを絶縁性ベース層として使用することは、本願に引用して援用される米国特許第4,940,858号、第4,678,868号、第6,472,122号に開示される。本発明のベース層は当分野に既知の他の要素、例えば密閉性ビア(vias)をさらに含むことができる(例えば、国際公開第WO03/023388号参照)。特定のセンサ設計に応じて、ベース層は比較的厚い層とすることができる(例えば、25ミクロンよりも厚い)。代りに、例えば約25ミクロン未満のアルミナなど、薄い層の非伝導性セラミックを用いることができる。
【0027】
<伝導層>
本発明の電気化学的センサは、典型的に、分析すべき被検物またはその副生成物(例えば、酸素および/または過酸化水素)に接触するための少なくとも1個の電極を含む、ベース層上に配置された伝導層を含む(例えば、図2の要素104参照)。用語「伝導層(conductive layer)」は、本明細書中、技術的に許容された術語に従って用いられ、検出可能信号の測定およびこれを検出装置に伝導することのできる、電極など電気的に伝導性のセンサ要素を指す。この例は、被検物の濃度変化を受けない参照電極に比較した、被検物またはその副生成物の濃度変化が被検物検出層110中に存在する組成物(例えば、グルコースオキシダーゼ酵素)と反応するとき用いられる共反応体(例えば、酸素)、またはこの相互作用の反応生成物(例えば過酸化水素)などの刺激への暴露に応答する電流の増加または減少を測定することのできる伝導層である。それらの要素の例は、過酸化水素または酸素などの分子の濃度が変動する中で、検出可能な信号変動を生成することのできる電極を含む。典型的に、伝導層中のこれらの電極の1種は作用電極であり、非腐食性金属またはカーボンから作ることができる。カーボン作用電極は融解状(vitreous)またはグラファイト状とすることができ、固体またはペーストから作ることができる。金属製作用電極は白金または金を含む白金族金属、または二酸化ルテニウムなど非腐食性の金属伝導性酸化物から作ることができる。代わりに電極は銀/塩化銀電極組成物を含むことができる。作用電極はワイヤまたは例えば、コーティングまたは印刷によって基板に塗工された薄い伝導性膜とすることができる。典型的に、金属製またはカーボン導体の表面の一部だけが被検物含有溶液に電解質的に接触している。この部分は電極の作用表面と呼ばれる。電極の残る表面は典型的に電気絶縁カバー層106によって溶液から絶縁される。この保護カバー層106を生成するための有用な材料の例は、ポリイミド類、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレンなどのポリマ、およびポリシロキサン類などのシリコーン類である。
【0028】
作用電極に加えて、本発明の被検物センサは、典型的に、参照電極または参照電極と対電極の組み合わせ(擬似参照電極または対/参照電極とも呼ばれる)を含む。センサが対/参照電極を持たないならば、作用電極と同じ材料または異なる材料から作ることのできる分離した対電極を含むことができる。本発明の典型的なセンサは1つ以上の作用電極、および1つ以上の対電極、参照電極、および/または対/参照電極を有する。本発明のセンサの一実施形態は、2個、3個、または4個またはそれ以上の作用電極を有する。センサ中のこれらの作用電極は一体的に接続することができ、またはそれらは分離して保持することができる。
【0029】
典型的に、インビボ使用において、本発明の被検物センサは、哺乳動物の皮膚の皮下に埋没されて哺乳動物の血液などの体液に直接接触する。代りに、センサは哺乳動物の体内の他の領域、例えば腹膜空間に埋没することができる。複数の作用電極が用いられるとき、それらは一緒にまたは体内の異なる位置に埋没することができる。また、対電極、参照電極、および/または対/参照電極も哺乳動物の体内の作用電極(1つ又は複数)の近くまたは他の位置に埋没することができる。
【0030】
<被検物検出層>
本発明の電気化学センサはセンサの電極上に配置された被検物検出層を含む(例えば、図2の要素110参照)。用語「被検物検出層(analyte sensing layer)」は、本明細書において技術的に許容された術語に従って用いられ、被検物センサ装置によって検出すべき被検物の存在を認識し、または反応することのできる材料を含む層を指す。典型的に、被検物検出層中のこの材料は、検出すべき被検物と相互作用した後、典型的に伝導層の電極によって検出可能な信号を生成する。これに関して、被検物検出層および伝導層の電極は、連係して被検物センサに付属する装置によって読み取られる電気信号を生成する作用を行う。典型的に、被検物検出層は分子と反応し、および/または分子を生成することのできる酵素、例えば、グルコースオキシダーゼ酵素を含み、その濃度変化(例えば、酸素および/または過酸化水素)は伝導層の電極での電流変化を測定することによって測定することができる。過酸化水素などの分子を生成することのできる酵素は、当分野に既知の多くの方法によって電極上に配置することができる。被検物検出層はセンサの様々な電極の全体または一部にコーティングすることができる。この意味で、被検物検出層は電極を同じ程度にコーティングすることができる。代りに被検物検出層は、異なる電極を異なる程度に、例えば、コーティングされた作用電極の表面が対電極および/または参照電極のコーティングされた表面よりも大きくコーティングすることができる。
【0031】
本発明のこの要素の典型的なセンサの実施形態は、第2タンパク質(例えば、アルブミン)に対して固定した比率(例えば、典型的に、グルコースオキシダーゼの安定化特性用に最適化されたもの)で混合された酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ)を用い、次いで、電極の表面に塗工されて薄い酵素層を形成する。典型的な実施形態において、被検物検出層はGOxとHSAの混合物を含む。GOxを有する被検物検出層の典型的な実施形態では、GOxは検出環境(例えば、哺乳動物の体)に存在するグルコースと図1に示した反応に従って反応して過酸化水素を発生し、このようにして発生した過酸化水素は伝導層中の作用電極でアノード的に検出される。例えば、米国特許出願第10/273,767号(本願に引用して援用される)で論じられたように、極めて薄いセンサ化学反応層が好ましく、スピンコーティングなど、当分野に既知の方法によって電極マトリックスの表面に施すことができる。例示的な実施形態において、グルコースオキシダーゼ/アルブミンはアルブミンが約0.5重量%〜10重量%の範囲で存在する生理溶液中(例えば、中性pHのリン酸塩緩衝塩水)で調製される。場合によって、被検物検出層上に形成された安定化グルコースオキシダーゼ層は当分野で前に記述されたものと比較して非常に薄く、例えば、2、1、0.5、0.25、または0.1ミクロン未満の厚さである。本発明の一例示的実施形態は、電極の表面をコーティングするのに安定化グルコースオキシダーゼ層を用い、グルコースオキシダーゼは担体タンパク質と固定比率で層内に混合され、グルコースオキシダーゼと担体タンパク質は層全体に実質的に均一に分配される。層は厚さ2ミクロン未満であることが好ましい。驚くべきことに、これらの極めて薄い被検物検出層を有するセンサは、より厚いコーティングを有するセンサを超える向上した寿命、直線性、不変性ならびに雑音対信号比を含む材料特性を有する。特定の科学的理論には拘束されないが、極めて薄い被検物検出層を有するセンサは、より厚い酵素層中で層内の反応性酵素の一部分だけが検出すべき被検物に接近することができるので、より厚い層のものに比べて驚くべき向上した特性を有すると考えられる。グルコースオキシダーゼを用いるセンサにおいて、電気的堆積によって製造された厚いコーティングは、厚い酵素層の反応性界面で発生した過酸化水素がセンサ表面に接触し、それによって信号を発生する能力を妨害する。
【0032】
上述のように、酵素および第2タンパク質は典型的に架橋した母材を形成するために処理される(例えば、タンパク質混合物に架橋剤を加えることによって)。当分野で既知のように、保持された酵素の生物学的活性、その機械的および/または動作安定性などの要因を変化させるように架橋条件を操作することができる。例示的架橋手順は、本願に引用して援用されている米国特許出願第10/335,506号及びPCT公開第WO03/035891号に記述される。例えば、制限されないが、グルタルアルデヒドなどのアミン架橋剤をタンパク質混合物に加えることができる。タンパク質混合物へ架橋剤を添加するとタンパク質ペーストが生成される。加えられる架橋剤の濃度はタンパク質混合物の濃度に応じて変化することができる。グルタルアルデヒドは好ましい架橋剤であるが、スベリン酸ジサクシンイミジル(DSS)などのアミン活性の同一機能の架橋剤を非制限的に含んで、他の架橋剤を使用することができ、またはグルタルアルデヒドの代りに使用することができる。他の例は1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)であり、これは長さゼロの架橋剤である。EDCはカルボン酸とアミン基の間にアミド結合を形成する。当業者に明らかな他の適切な架橋剤を用いることができる。
【0033】
本発明の異なる実施形態では、GOxおよび/または担体タンパク質濃度を変化させることができる。例えば、GOx濃度は約50mg/ml(約10,000U/ml)から約700mg/ml(約150,000U/ml)の範囲内とすることができる。GOx濃度は約115mg/ml(約22,000U/ml)であることが好ましい。それらの実施形態において、HSA濃度は、GOx濃度に応じて、約0.5%〜30%(w/v)の間で変化することができる。HSA濃度は約1〜10%w/vであることが好ましく、約5%w/vであることが最も好ましい。本発明の代替の実施形態において、コラーゲンまたはBSAもしくはこれらの内容で用いられる他の構造タンパク質をHSAの代りにまたは追加して用いることができる。被検物検出層中の好ましい酵素としてGOxを論じたが、グルコースデヒドロゲナーゼまたはヘキソキナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ラクテートオキシダーゼなどを非制限的に含んで、他のタンパク質および/または酵素も使用することができ、またはGOxの代りに使用することができる。当業者に明らかな他のタンパク質および/または酵素も使用することができる。さらに、HSAは実施形態例に用いられるが、HSAの代わりにまたは追加して、BSA、コラーゲンなどの他の構造タンパク質を用いることができよう。
【0034】
GOx以外の酵素を用いる実施形態では、これらの本明細書で論じた濃度以外の濃度を用いることができる。例えば、使用される酵素に応じて、約10重量%から70重量%の範囲の濃度が適切である。濃度は使用される特定の酵素に依存するだけでなく、得られるタンパク質母材の望ましい特性に応じて変化することができる。例えば、タンパク質母材が診断能力に用いられるならば所定の濃度を用いることができるが、所定の構造特性が望ましければ、異なる濃度を用いることができる。当業者であれば、どの濃度(および、どの酵素またはタンパク質)が望ましい結果を生むかを求める実験を通して、用いられる濃度を変化させることができることを理解するであろう。
【0035】
上述のように、本発明の好ましい実施形態において、被検物検出層は、電気伝導性要素(例えば、酸素および/または過酸化水素濃度の変化を検出する電極)によって検出することのできる信号(例えば、酸素および/または過酸化水素濃度の変化)を生成できる組成物(例えば、グルコースオキシダーゼ)を含む。しかし、他の有用な被検物検出層は、その存在を検出すべき目標被検物と相互作用した後に電気伝導性要素によって検出することのできる検出可能な信号を生成できる任意の組成物から形成することができる。好ましい実施形態において、組成物は検出すべき被検物との反応の際に過酸化水素濃度を変化させる酵素を含む。代りに、組成物は検出すべき被検物との反応の際に酸素濃度を変化させる酵素を含む。この意味で、生理学的被検物との反応において過酸化水素および/または酸素を使用しまたは生成する広く様々な酵素が当分野に既知であり、これらの酵素は容易に被検物検出層組成物中に組み込むことができる。当分野に既知の様々な他の酵素は、本明細書に述べた好ましいセンサ設計中に組み込まれた電極などの電気伝導性要素によってその変化を検出することのできる化合物を生成および/または使用することができる。それらの酵素は、例えば、リチャード F.テーラー(Richard F.Taylor)(Editor)Publisher:マーセル デッカー(Marcel Dekker);(1991年1月7日)によるProtein Immobilization:Fundamentals and Applications(Bioprocess Technology、Vol 14)の表1、15〜29ページ、および/または表18、111〜112ページに詳細に記載された酵素を含み、その内容の全体は本願に引用して援用される。
【0036】
他の有用な被検物検出層は抗体を含むように形成することができ、その目標被検物との相互作用は、その存在を検出すべき目標被検物と相互作用した後に電気伝導性要素によって検出することのできる検出可能な信号を生成することができる。例えば、米国特許第5,427,912号(本願に引用して援用される)は、サンプル中の被検物濃度を電気化学的に求めるための抗体に基づく装置について記述する。このデバイスにおいて、試験すべきサンプルと、酵素受容体ポリペプチドと、被検物類似物(酵素ドナーポリペプチド複合体)に結合した酵素ドナーポリペプチドと、標識を付けた基質と、測定すべき被検物のための特定の抗体とを含む混合物が形成される。被検物および酵素ドナーポリペプチド複合体は抗体に競合的に結合する。酵素ドナーポリペプチド複合体が抗体に結合していないとき、それは自発的に酵素受容体ポリペプチドと結合して活性酵素複合体を形成する。次いで、活性酵素は標識付き基質を加水分解し、電気的に活性な標識を発生させ、次いでこれは電極の表面で酸化することができる。電気的に活性な化合物の酸化から得られる電流は測定することができ、サンプル中の被検物の濃度と相関させることができる。米国特許第5,149,630号(本願に引用して援用される)は、少なくとも1種の成分を酵素標識した、リガンド(例えば、抗原、ハプテンまたは抗体)の電気化学的特異結合試験(electrochemical specific binding assay)について記述しており、これは基質の反応に伴う酵素基質と電極の間の電子移動が、錯体の形成または任意のリガンド錯体の置換によって乱される程度を、結合しない酵素標識成分に対して測定するステップを含む。電子の移動は、酵素からの電子を受容し、それらを電極に与える、またはその逆を行うことのできる電子移動媒体(例えば、フェロセン)、または電極近傍に酵素を保持してそれ自体正式に電荷を受取らない電子移動促進剤によって助けられる。米国特許第5,147,781号(本願に引用して援用される)は、ラクテートデヒドロゲナーゼ酵素−5(LDH5)の測定のための試験、およびそれらの定量測定のための生物センサについて記述する。試験は、この酵素が基質の乳酸およびニコチン−アミンアデニンジヌクレオチド(NAD)と相互作用してピルビン酸と還元生成物のNADを生成する相互作用に基づく。抗LDH5抗体は適切なガラス状カーボン電極に結合させ、これを基質を含有するLDH5に接触させ、洗浄し、NAD溶液中に挿入し、電流計システムに接続し、乳酸が加えられ、LDH5の量を示す電流変化が測定される。米国特許第6,410,251号(本願に引用して援用される)は、特異結合対の構成成分の1つ、例えば、抗原/抗体対中の抗原を、標識検出のための酸化還元反応と一緒に抗原と抗体間の結合などの特異結合を用いることによって検出しまたは試験する装置および方法について記述しており、検出表面領域を有する酸素マイクロ電極が用いられる。さらに、米国特許第4,402,819号(本願に引用して援用される)は、希釈液体血清サンプル中の抗体(被検物として)を定量測定するための抗体選択性電位計電極について記述しており、その中の予め選択されたカチオンの浸透性に影響を与えるイオン担体を結合した抗原を組み込む不溶性膜が用いられ、その浸透性は分析中の特定の抗体濃度の関数であり、分析の対応する方法である。関連の開示については、本願に引用して援用される米国特許第6,703,210号、第5,981,203号、第5,705,399号、および第4,894,253号も参照されたい。
【0037】
酵素および抗体に加えて、本明細書に開示されるセンサの被検物検出層中に用いられる他の例示的材料は、特定の種類の細胞または細胞成分(例えば、ポリペプチド類、炭水化物等)に結合するポリマ、単一ストランドDNA、抗原等を含む。検出可能な信号は、例えば、所望の被検物(例えば、細胞)の色彩変化または認識し得る蓄積などの光学的に検出可能な変化とすることができる。また、検出要素は、本質的に非反応性の材料(すなわち、対照)から形成することができる。前述の代替のセンサ要素は、例えば、細胞選別試験、およびウィルス(HIV、C型肝炎等)、バクテリア、原生動物などの病原性生物の存在を試験するために用いるセンサに含まれることが有利である。
【0038】
また、外部環境に存在し、それ自体電極で測定可能な電流変化を生成することのできる
被検物を測定する被検物センサも考えられる。それらの被検物を検出するセンサにおいて、被検物検出層は任意とすることができる。
【0039】
<タンパク質層>
場合によって、本発明の電気化学的センサは、被検物検出層と被検物変化層(例えば、図2の要素116参照)の間に配置されたタンパク質層を含む。用語「タンパク質層(protein layer)」は、本明細書において技術的に許容された術語に従って用いられ、被検物検出層および/または被検物変化層との相溶性で選択された担体タンパク質等を含む層を指す。典型的な実施形態において、タンパク質層はヒト血清アルブミンなどのアルブミンを含む。HSA濃度は約0.5%〜30%(w/v)の間で変化することができる。HSA濃度は約1〜10%w/vであることが好ましく、約5%w/vであることが最も好ましい。本発明の代替の実施形態において、これらの意味で用いられるコラーゲンまたはBSAもしくは他の構造タンパク質は、HSAの代わりに、またはHSAに加えて使用することができる。この層は、典型的に当分野で許容された手順に従って被検物検出層の上に架橋される。
【0040】
<接着促進層>
本発明の電気化学的センサは、1つ以上の接着促進(AP)層を含むことができる(例えば、図2の要素114参照)。用語「接着促進層(adhesion promoting layer)」は、本明細書において技術的に許容された術語に従って用いられ、センサ中の隣接層間の接着を促進する能力について選択された材料を含む層を指す。典型的に、接着促進層は、被検物検出層と被検物変化層の間に配置される。接着促進層は、任意選択的なタンパク質層と被検物変化層の間に配置されるのが好ましい。接着促進層は、それらの層間の接合を容易にする、当分野で既知の広く様々な材料の任意の1種から作ることができ、当分野で知られた広く様々な方法の任意の1つによって施すことができる。接着促進層はγ−アミノプロピルメトキシシランなどのシラン化合物を含むことが好ましい。
【0041】
接着促進するためのシランカップリング剤、特に式R’Si(OR)3(R’は典型的に末端アミンを有する脂肪族基であり、Rは低級アルキル基である)のものを使用することが当分野で知られている(例えば、本願に引用して援用される米国特許第5,212,050号参照)。例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのシランおよびグルタルアルデヒドを段階的工程に用いて、ウシ血清アルブミン(BSA)とグルコースオキシダーゼ(GOx)が電極表面に付着および共架橋された、化学的に修飾された電極は当分野に既知である(例えば、ヤオ T.(Yao,T.)Analytica Chim.Acta 1983、148、27〜33を参照されたい)。
【0042】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、接着促進層は、隣接層にも存在することができ、グルコースなどの被検物が被検物変化層を通って拡散するのを制限する働きをするポリジメチルシロキサン(PDMS)化合物など、1つ以上の化合物をさらに含む。例示的実施形態において、処方は0.5%〜20%のPDMSを含み、5〜15%のPDMSが好ましく、10%のPDMSが最も好ましい。本発明のいくつかの実施形態において、接着促進層は、被検物変化層などの隣接層に存在するシロキサン部を架橋する能力のために選択された薬品を含む。本発明の密接に関連する実施形態において、接着促進層は、被検物検出層および/またはタンパク質層などの隣接層に存在するタンパク質のアミンまたはカルボキシル部を架橋する能力のために選択された薬品を含む。
【0043】
<被検物変化層>
本発明の電気化学的センサは、センサ上に配置された被検物変化層を含む(例えば、図2の要素112参照)。用語「被検物変化層(analyte modulating layer)」は、本明細書において技術的に許容された術語に従って用いられ、典型的にセンサ上に膜を形成する層を指し、グルコースなどの1つ以上の被検物の層を通る拡散を変化させる働きをする。本発明のいくつかの実施形態において、被検物変化層は、グルコースなどの1つ以上の被検物の層を通る拡散を防止または制限する働きをする被検物制限膜である。本発明の他の実施形態において、被検物変化層は1つ以上の被検物の層を通る拡散を容易にする働きをする。場合によって、それらの被検物変化層は1種の分子(例えば、グルコース)が層を通って拡散するのを防止または制限し、同時に他の種の分子(例えば、O2)が層を通って拡散するのを許容しまたは容易にするために形成することができる。
【0044】
グルコースセンサに関しては、既知の酵素電極において、血液からのグルコースおよび酸素、ならびにアスコルビン酸および尿酸などのいくつかの妨害剤はセンサの主要膜を通って拡散する。グルコース、酸素、および妨害剤が被検物検出層に到達すると、グルコースオキシダーゼなどの酵素は触媒作用を行ってグルコースを過酸化水素とグルコノラクトンへ変換する。過酸化水素は被検物変化層を通り拡散して戻ることができ、または電極に拡散し、反応して酸素およびプロトンを形成し、グルコース濃度に比例する電流を発生することができる。センサ膜組み立て体は、そこを通って選択的にグルコースを通過させる通路を含んでいくつかの機能を有する。この意味において、好ましい被検物変化層は、水、酸素、および少なくとも1種の選択された被検物が通過でき、水を吸収する能力を有し、膜が水溶性の親水性ポリマを有する半浸透性膜であることが好ましい。
【0045】
様々な例示的被検物変化組成物は当分野に既知であり、例えば、米国特許第6,319,540号、第5,882,494号、第5,786,439号、第5,777,060号、第5,771,868号、および第5,391,250号に記述されており、各々の開示は本願に引用して援用される。その中に記述されたヒドロゲルは、周囲に水層を提供するのが有利な、様々な埋没可能なデバイスに特に有用である。本発明の好ましい実施形態において、被検物変化組成物はPDMSを含む。本発明のいくつかの実施形態において、被検物変化層は隣接層に存在するシロキサン部を架橋する能力のために選択された薬品を含む。本発明の密接に関連する実施形態において、接着促進層は隣接層に存在するタンパク質のアミンまたはカルボキシル部を架橋する能力のために選択された薬品を含む。
【0046】
<カバー層>
本発明の電気化学的センサは、典型的に電気絶縁保護層である1つ以上のカバー層を含む(例えば、図2の要素106参照)。典型的に、それらのカバー層は被検物変化層の少なくとも1部に配置される。絶縁保護カバー層としての使用が許容されるポリマコーティングは、シリコーン化合物などの非毒性の生体適合性ポリマ、ポリイミド類、生体適合性ハンダマスク、エポキシアクリラートコポリマ等を含むが制限されない。さらに、これらのコーティングは光像形成可能とすることができ、伝導層を通して開口をフォトリソグラフ的に形成するのを容易にする。典型的なカバー層はスピンされたシリコーンを含む。当分野に既知であるように、この層は市場で入手可能なRTV(室温硬化された)シリコーン化合物とすることができる。この意味において、典型的な化学物質はポリジメチルシロキサン(アセトキシ系)である。
【0047】
本発明の様々な例示的実施形態およびその特徴を以下に詳細に論じる。
【0048】
(C)被検物センサ装置の例示的実施形態および関連特性
本明細書に開示される被検物センサ装置は多くの実施形態を有する。本発明の一般的な実施形態は哺乳動物の内部に埋没するための被検物センサ装置である。被検物センサは典型的に哺乳動物の体内に埋没可能に設計されるが、センサはいかなる特定の環境にも制限されず、代りに広く様々な状況で、例えば、血液全体、リンパ液、血漿、血清、唾液、尿、大便、汗、粘液、涙、脳脊髄液、鼻分泌液、子宮または膣分泌液、精液、胸膜液、羊水、腹膜液、中耳液、関節液、胃液などの生物学的流体を含む殆ど液体のサンプルの分析に使用することができる。さらに、固体または乾燥されたサンプルを適切な溶媒に溶解して分析に適した液体混合物を提供することができる。
【0049】
上述のように、本明細書に開示されるセンサの実施形態は1つ以上の生理学的環境中の対象の被検物を検出するのに使用することができる。例えば、いくつかの好ましい実施形態において、センサは、典型的に皮下センサで行われるように、間質液に直接接触することができる。また、本発明のセンサは、間質グルコースを皮膚を通して抽出し、センサに接触させる、皮膚表面系の一部とすることもできる(例えば、本願に引用して援用される米国特許第6,155,992号、第6,706,159号を参照されたい)。他の実施形態において、センサは例えば典型的に血管内センサで行われるように血液と接触することができる。本発明のセンサの実施形態は、様々な状況での使用に適合するものをさらに含む。いくつかの好ましい実施形態において、例えば、センサは救急使用者によって用いられるものなど、移動状況下で使用するために設計することができる。代りに、センサは、医療装備における使用に適合させたものなど、静止状況下で使用するために設計することができる。それらのセンサの実施形態は、例えば、病院患者の1つ以上の生理学的環境下に存在する1つ以上の被検物を監視するのに用いられるものを含む。
【0050】
また、本発明のセンサは当分野で既知の広く様々な医療システムにも組み込むことができる。本発明のセンサは、例えば、使用者の体内に注入される医薬品の速度を制御するように設計された閉ループ注入システムに使用することができる。それらの閉ループ注入システムは、センサ、および制御器への入力を発生し、送達システムを作動させる付属計器(例えば、医薬品注入ポンプによって送達される投与量を計算するもの)を含むことができる。それらの意味において、センサに付属する計器は送達システムに指令を伝達し、遠隔制御するのに用いることもできる。センサは、間質液に接触して使用者の体中のグルコース濃度を監視する皮下センサとすることが好ましく、送達システムによって使用者の体中に注入される液体はインスリンを含む。例示的システムは、例えば、米国特許第6,558,351号、および第6,551,276号、PCT出願番号第US99/21703号、および第US99/22993号、ならびに国際公開第WO2004/008956号、および第WO2004/009161号に開示されており、これらの全ては本願に引用して援用される。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態は過酸化物を測定し、皮下埋没および静脈内埋没、ならびに様々な非脈管領域中への埋没を含んで、哺乳動物の様々な部位に埋没するのに適している有利な特徴を有する。非脈管領域中への埋没を可能にする過酸化物センサの設計は、非脈管領域に埋没された酸素センサに発生する酸素ノイズに伴う問題のため、酸素を測定するいくつかのセンサ装置設計よりも有利である。例えば、それらの埋没された酸素センサ装置設計において、参照センサでの酸素ノイズはノイズ対信号比を損ない、その結果、この環境におけるそれらの安定なグルコース読み取りの能力が乱される。したがって、本発明の過酸化物センサは、非脈管領域中のそれらの酸素センサに観察される困難さを克服する。
【0052】
本発明のいくつかの過酸化物センサの実施形態は、哺乳動物に30日を超える期間埋没するのに適した、有利に長期的な、または「恒久的な」センサをさらに含む。詳細には、当分野で既知のように、(例えば、ISO10993、Biological Evaluation of Medical Devices参照)本明細書に述べるセンサなどの医療デバイスは埋没期間に基づいて3つのグループに分類することができる。(1)「制限された」(<24時間)、(2)「長期の」(24時間〜30日)、および(3)「恒久的な」(>30日)。本発明の好ましい実施形態において、本発明の過酸化物センサの設計はこの範疇による「恒久的」埋没、すなわち>30日を可能にする。本発明の関連の実施形態において、本発明の過酸化物センサの安定性の高い設計は、この意味で2、3、4、5、6、または12カ月、もしくはそれ以上、埋没されたセンサの機能を継続可能にする。
【0053】
一般に、被検物センサ装置構造は、ベース層およびベース層の上に配置された1つ以上の電極を含む伝導層を含む。例えば、伝導層は作用電極、参照電極および/または対電極を含むことができる。これらの電極は好ましい設計に応じて近接して配置することも、または代りに離れて配置することもできる。センサ装置設計は、いくつかの電極(例えば、作用電極)が、センサ装置中で検出すべき被検物を含む溶液に暴露(例えば、孔を経由して)できるようにされる。センサ装置設計は、いくつかの電極(例えば、参照電極)が、センサ装置中で検出すべき被検物を含む溶液に暴露されないようにされる。
【0054】
典型的に、被検物センサ装置は、伝導層上に配置された、典型的に作用電極の一部または全体を被覆する被検物検出層を含む。この被検物検出層は検出すべき被検物の存在下で、伝導層中の作用電極の電流を検出可能なように変化させる。本明細書に開示されるように、この被検物検出層は典型的に酵素または抗体分子等を含み、対象の被検物と反応して分子の濃度(例えば、図1の反応式に示したように酸素および/または過酸化水素)を変化させ、作用電極の電流を変化することができる。例示的被検物検出層はグルコースオキシダーゼ(例えば、グルコースセンサに用いられる)またはラクテートオキシダーゼ(例えば、ラクテートセンサに用いられる)を含む。典型的に、被検物検出層は被検物検出化合物(例えば、酵素)と実質的に固定比率の担体タンパク質をさらに含み、被検物検出化合物および担体タンパク質は被検物検出層全体に実質的に均一に分配される。被検物検出層は、例えば1、0.5、0.25、または0.1ミクロン未満の非常に薄い厚さを有することが好ましい。特定の科学的理論には拘束されないが、典型的に電気的堆積によって形成されたより厚い層に比べると、それらの薄い被検物検出層を有するセンサは、電気的堆積が厚さ3〜5ミクロンの酵素層を形成してコーティング層中の反応性酵素の一部のみが検出すべき被検物に接近し得るので、驚くほど向上した特性を有すると考えられる。さらに、電気的堆積手順によって形成されたそれらの厚いグルコースオキシダーゼペレットは機械的安定性に劣る(例えば、亀裂の傾向)ことが観察され、さらに実際に使用するための調製に長期間かかり、埋没が可能になるまでに典型的に数週間の試験を必要とする。これらの問題は、本明細書に述べる薄い層の酵素コーティングには観察されないので、これらの薄いコーティングは本発明の好ましい実施形態である。
【0055】
例えば、グルコースオキシダーゼを用いるセンサにおいて、電気的堆積によって形成された厚いコーティングは、厚さ3〜5ミクロンの酵素層の反応性界面で生成された過酸化水素がセンサ表面に接触しそれによって信号を発生する能力が妨害される。さらに、その厚いコーティングのためにセンサ表面に到達することのできない過酸化水素は、センサからセンサが配置されている環境中に拡散することがあり、それによってそれらのセンサの感度および/または生体適合性を低下させる。さらに、特定の科学的理論には拘束されないが、それらの薄い被検物検出層を有するセンサは、スピンコーティング等の方法によってアルブミン(酵素層中のグルコースオキシダーゼを安定化するための担体タンパク質として用いられる)に対するグルコースオキシダーゼの酵素コーティング比率の正確な制御が可能になることから得られる、予期しない有利な特性を有すると考えられる。特に、グルコースオキシダーゼとアルブミンは異なる等電点を有するので、電気的堆積工程は、最適に求めた酵素対担体タンパク質比率が電気的堆積工程中に悪化し、さらにグルコースオキシダーゼと担体タンパク質が配置された酵素層全体に実質的に均一に分配されない表面コーティングをもたらす。加えて、それらの薄い被検物検出層を有するセンサは、予期しない高速応答時間を有する。特定の科学的理論には拘束されないが、これらの驚くべき有利な特性は、薄い酵素層がより良好な作用電極表面への接近を可能にし、電極で電流を変化させる分子の大部分が電極表面に接近することを可能にすることからもたらされると考えられる。この意味で、本発明のいくつかの実施形態において、哺乳動物の体中に存在する被検物への暴露に応答する電流変化は、被検物が被検物センサに接触した15、10、5、または2分間内に電流計によって検出することができる。
【0056】
場合によって、被検物検出層は、その上、および典型的にこの被検物検出層と被検物変化層の間に配置されたタンパク質層を有する。タンパク質層内のタンパク質はウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンからなる群から選択されるアルブミンである。典型的に、このタンパク質は架橋される。特定の科学的理論には拘束されないが、この分離したタンパク質層はセンサ機能を高め、センサノイズ(例えば、スプリアス背景信号)を消去する1種のキャパシタとして作用することによって驚くべき機能上の利益を与えると考えられる。例えば、本発明のセンサにおいて、被検物検出層の酵素に接触することのできる被検物量を制御する層である、センサの被検物変化膜層の下にいくらかの湿気が形成されることがある。この湿気は縮小可能な層を作ることがあり、センサを使用する患者が動くと、センサ内で移動する。センサ内でそれらの層が移動すると、被検物検出層を通って移動するグルコースなどの被検物の通路が、実際の生理学的被検物濃度とは独立に変化し、それによってノイズを発生する。この意味で、タンパク質層はGOxなどの酵素を湿気層への接触から保護することによって、キャパシタとして働くことができる。このタンパク質層は、被検物検出層と被検物変化膜層間の接着の促進など、多数の追加の利点を与えることができる。代りに、この層の存在は過酸化水素などの分子に対してより大きな拡散路を与えることができ、それによって分子を電極検出要素に配置させ、センサ感度の向上に貢献する。
【0057】
典型的に、被検物検出層および/または被検物検出層上に配置されたタンパク質層は、その上に配置された接着促進層を有する。それらの接着促進層は被検物検出層と近接層、典型的に被検物変化層の間の接着を促進する。この接着促進層はγ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物を含むことが好ましく、様々なセンサ層間の最適化された接着を促進する能力、およびセンサを安定化する機能によって選択される。興味深いことに、それらのシラン含有接着促進層を有するセンサは、全体的な安定性の向上を含んで、予期しない特性を示す。さらに、シラン含有接着促進層は、センサを安定化する能力に加えて多数の有利な特性を提供し、例えば、妨害の排除ならびに1つ以上の所望の被検物の質量移動の制御に有利な役割を果たすことができる。
【0058】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、接着促進層は隣接層にも存在することのできるポリジメチルシロキサン(PDMS)化合物などの1つ以上の化合物をさらに含み、被検物変化層を通るグルコースなどの被検物の拡散を制限する働きをする。例えば、AP層へのPDMSの添加は、センサを製造するときAP層に発生する孔または空隙の可能性を除去する意味で有利になり得る。
【0059】
典型的に、接着促進層は、その上に配置された被検物変化層を有し、そこを通る被検物の拡散を変化させる働きをする。一実施形態において、被検物変化層は、センサ層を通る被検物(例えば、酸素)の拡散を高める働きをし、したがって、被検物検出層中の被検物濃度を高める働きをする組成物(例えば、ポリマ等)を含む。代りに、被検物変化層は、センサ層を通る被検物(例えば、グルコース)の拡散を制限する働きをし、したがって、被検物検出層中の被検物濃度を制限する働きをする組成物を含む。この例は、ポリジメチルシロキサン等のポリマを含む親水性グルコース制限膜(すなわち、そこを通るグルコースの拡散を制限する働きをする)である。
【0060】
典型的に、被検物変化層は、1つ以上の典型的に電気的絶縁保護層であるカバー層をさらに含み、カバー層はセンサ装置の少なくとも一部に配置される(例えば、被検物変化層を覆う)。絶縁保護カバー層として用いるために許容可能なポリマコーティングは、シリコーン化合物などの非毒性生体適合性ポリマ、ポリイミド類、生体適合性ハンダマスク、エポキシアクリラートコポリマ等を含むが制限されない。好ましいカバー層はスピンされたシリコーンを含む。典型的に、カバー層は検出すべき被検物を含む溶液にセンサ層(例えば、被検物変化層)の少なくとも一部を暴露する孔をさらに含む。
【0061】
本明細書に記述される被検物センサはカソード的に成極されて、例えば、図1に示したように、グルコースがグルコースオキシダーゼと相互作用する際に発生する作用カソード近くの酸素濃度変化に起因する作用カソードでの電流変化を検出することができる。代りに、本明細書に記述される被検物センサはアノード的に成極されて、例えば、図1に示したように、グルコースがグルコースオキシダーゼと相互作用する際に発生する作用アノード近くの過酸化水素濃度の変化に起因する作用アノードでの電流の変化を検出することができる。本発明の典型的な実施形態において、作用電極(1つ又は複数)での電流は参照電極(1つ又は複数)(対照)での電流に比較され、次いで、これらの測定値間の差は測定すべき被検物の濃度と相関をとることのできる値を与える。これらの二連電極での電流の比較から測定値を得ることによって電流値を得る被検物センサ設計は、例えば、通常二連酸素センサと呼ばれる。
【0062】
本発明の好ましい実施形態において、被検物センサ装置は、アノード的成極によって機能し、電流の変化が被検物センサ装置の伝導層中のアノード作用電極で検出されるように設計される。アノード的成極に付随することのできる構造的な設計の特徴は、アノードである作用電極、カソードである対電極、および参照電極を含む適切なセンサ形態を設計し、次いで選択的に適切な被検物検出層を設計形態内のアノードの適切な表面部分に配置することを含む。場合によって、このアノード的成極構造設計は、アノード、カソード、および/または異なるサイズの表面積を有する作用電極を含む。例えば、この構造設計は、作用電極(アノード)および/または作用電極のコーティングされた表面が対電極(カソード)および/または対電極のコーティングされた表面よりも大きい特徴を含む。この状況において、アノード作用電極で検出できる電流の変化は、次いで被検物の濃度と相関がとられる。本発明のこの実施形態のいくつかの例において、作用電極は、酸化反応中の過酸化水素を測定し用いる(例えば、図1参照)。過酸化水素は、それぞれグルコースまたはラクテートとの反応の際に、グルコースオキシダーゼまたはラクテートオキシダーゼなどの酵素によって生成される。それらの過酸化水素再生能力を有する電気化学的グルコースおよび/またはラクテートセンサに関する本発明のそれらの実施形態は、この分子の再生が、センサから、それが配置される環境へ逃げることのできる過酸化水素の量を低減するので、特に好ましい。この意味において、過酸化水素など組織刺激物の放出を低減するように設計された埋没可能なセンサは、改善された生体適合プロファイルを有するであろう。さらに、過酸化水素はグルコースオキシダーゼなどの酵素と反応することができ、それらの生物学的機能を損なうことが観察されるので、それらのセンサはこの現象を回避するため好ましい。場合によって、被検物変化層(例えば、グルコース制限層)は、過酸化水素が放出されて、センサの配置された環境中に拡散されることを抑制する働きをする組成物を含むことができる。したがって、本発明のそれらの実施形態は、本明細書に開示される過酸化水素再生要素を組み込むことによって過酸化水素を生成する酵素を組み込むセンサの生体適合性を改善する。
【0063】
ベース層、伝導層、被検物検出層、場合によってタンパク質層、接着促進層、および被検物変化層、およびカバー層を含む本発明の被検物センサのいくつかの実施形態は、多くの予期しない特性を示す。例えば、これらのカソード的成極によって機能する構造に対してこれらのアノード的成極によって機能する構造のセンサでは、被検物検出層ならびに電極表面での電気化学的反応の相違は、異なる化学物質を発生および/または消費し、それによって化学的環境を変化させ、様々なセンサ要素が異なる極性で機能する。この意味において、本明細書に開示されるセンサ構造は、様々な異なる化学的および/または電気化学的条件下で予期せぬ程度の安定性での機能を示す、驚くべき汎用性のあるデバイスを提供する。
【0064】
本明細書に開示される本発明のいくつかの実施形態(例えば、過酸化水素再生能力を有するもの)において、センサ層は作用電極(例えば、アノード)および対電極(例えば、カソード)を含む複数の電極を有し、その両方ともグルコースオキシダーゼまたはラクテートオキシダーゼなどの酵素を含む被検物検出層でコーティングされる。それらのセンサ設計は、高められた感度を含んで驚くべき特性を有する。特定の科学的理論には拘束されないが、これらの特性は作用電極または対電極の表面での過酸化水素の酸化が高まることによって得ることができ、追加の酸素を生成してグルコース検出反応に用いることができる(例えば、図1参照)。したがって、この再生効果は本明細書に開示されるいくつかのセンサ実施形態の酸素依存性の制約を低減することができる。さらに、この設計は入手可能な過酸化水素を容易に低減できる作用電極、したがって、より低い電極電位を有するセンサをもたらす。より低い電極電位で機能するように設計されたセンサは、この種のセンサの高い電極電位がガス発生の加水分解反応を起こし、センサを不安定にする(加水分解反応によって生成したガス気泡からセンサ層が破壊されることによる)ことがあるので、本発明の好ましい実施形態である。さらに、対電極がグルコースオキシダーゼまたはラクテートオキシダーゼなどの酵素を含む非常に薄い被検物検出層でコーティングされるように設計されたセンサ実施形態において、酵素反応で生成された過酸化水素は対電極の反応性表面に非常に近接している。これは、例えば、より小さな反応性表面を有する対電極を含む小型センサ設計の製造を可能にするように、センサの全体的な効率を高める。
【0065】
哺乳動物内に埋没するための被検物センサ装置の特定の例は、以下の設計の過酸化物センサである。過酸化物センサ装置の第1層はベース層であり、典型的にアルミナなどのセラミックから作られる。ベース層の上に配置される後続の層は、複数の電極を含む伝導層であり、アノード性作用電極及び参照電極を含む。伝導層の上に配置される後続の層は架橋したグルコースオキシダーゼを含む被検物検出層であり、グルコースを検出し、続いて図1に示すように過酸化水素が生成する。この過酸化水素の存在下で、生成した過酸化水素が伝導層中のこのアノードに接触し酸化されると、アノード性作用電極には測定可能な電流増加が起きる。参照電極は対照として働き、作用電極および図1に示す反応に従って生成される過酸化水素から物理的に絶縁される。この被検物検出層は、厚さが1、0.5、0.25、0.1ミクロン未満であり、架橋したヒト血清アルブミンと架橋したグルコースオキシダーゼとの混合物を実質的に固定比率で含み、グルコースオキシダーゼおよびヒト血清アルブミンはセンサ層全体に実質的に均一に分配されていることが好ましい。センサ層上に配置される後続の層は、架橋したヒト血清アルブミンを含むタンパク質層である。タンパク質層の上に配置される後続の層は、接着促進層であり、被検物検出層および/またはタンパク質層ならびにこれらの層の上に配置された被検物変化層の間の接着を促進する。この接着促進層はシラン組成物を含む。接着促進層の上に配置される後続の層はPDMSを含む親水性グルコース制限膜の形の被検物変化層であり、そこを通るグルコースの拡散を変化させる。後続の層は典型的にシリコーンから構成されるカバー層であり、被検物変化層の少なくとも一部上に配置され、カバー層は、被検物変化層の少なくとも一部を外部のグルコース含有環境に暴露して、グルコースが作用電極上の被検物検出層に接近できる孔をさらに含む。この過酸化物センサ装置はアノード的成極によって機能し、グルコースが被検物変化層を通過し被検物検出層中のグルコースオキシダーゼと反応することによって発生した過酸化水素信号は、センサの伝導層中のアノード性作用電極で検出可能な、電流計で測定できる電流の変化を生じさせる。次いで、アノード性作用電極でのこの電流変化は、外部環境のグルコース濃度と相関がとられる。したがって、この設計のセンサは、過酸化物系グルコースセンサとして働くことができる。
【0066】
(D)被検物センサ装置および要素の置き換え
上述のように、本明細書に開示される本発明は非常に薄い酵素コーティングを有するセンサを含んで多数の実施形態を含む。本発明のそれらの実施形態は、当業者が本発明に開示される被検物センサ装置を様々に置き換えることを可能にする。上述のように、本明細書に開示される一般的な例示的実施形態は、ベース層、カバー層、およびベースとカバー層の間に配置された電極などのセンサ要素を有する少なくとも1層を含む。典型的に、1つ以上のセンサ要素(例えば、作用電極、対電極、参照電極等)の露出部分は適切な電極化学物質を有する材料の非常に薄い層でコーティングされる。例えば、ラクテートオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼまたはヘキソキナーゼなどの酵素は、カバー層中に画定された開口または孔内のセンサ要素の露出部分に配置することができる。図2は本発明の典型的なセンサ構造100の断面を示す。センサは本発明の方法に従って互いに配置された、複数の様々な伝導性および非伝導性構成要素の層から形成され、センサ構造100を形成する。
【0067】
上述のように、本発明のセンサにおいて、センサの様々な層(例えば、被検物検出層)はその中に組み込まれた1つ以上の生物活性および/または不活性材料を有することができる。本明細書に用いられる用語「組み込まれた(incorporated)」は、組み込まれた材料が層の固体相または支持母材の外部表面またはその内部に保持されるいかなる状態あるいは状況をも意味する。したがって、「組み込まれた」材料は、例えば、不動化し、物理的に捕捉し、母材層(1つ又は複数)の官能基に共役して付着することができる。さらに、前記材料の「組み込み(incorporation)」を促進する任意の方法、薬品、添加剤、または分子状リンカー剤は、これらの追加のステップまたは薬品が悪影響を与えず本発明の目的に一致すれば用いることができる。無論、この定義は生物活性分子(例えば、グルコースオキシダーゼなどの酵素)が「組み込まれる」本発明の任意の実施形態に適合する。例えば、本明細書に開示されるセンサのいくつかの層は、架橋可能な母材として働くアルブミンなどのタンパク質系物質を含む。本明細書に用いられるとき、タンパク質系物質は一般にタンパク質から誘導される物質を含み、実際の物質は、天然タンパク質、不活性化タンパク質、変性タンパク質、加水分解された物質、またはその誘導生成物である。適切なタンパク質系材料の例は、グルコースオキシダーゼおよびラクテートオキシダーゼなどの酵素、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン等)、カゼイン、ガンマ−グロブリン、コラーゲン及びコラーゲン誘導生成物(例えば魚のゼラチン、魚の接着剤、動物のゼラチン、動物の接着剤)を含むが制限されない。
【0068】
本発明の好ましい実施形態は図2に示される。この実施形態はセンサ100を支持するための電気絶縁ベース層102を含む。電気絶縁層ベース102は、セラミック基板などの材料から作ることができ、自立型または当分野で既知のようにさらに他の材料によって支持することができる。代替の実施形態において、電気絶縁層102はポリイミド基板、例えば、リールから供給されるポリイミドテープを含む。この形の層102を提供することによって清浄で高密度の大量生産が容易になる。さらに、それらのポリイミドテープを用いるいくつかの製造方法において、センサ100はテープの両側に製造することができる。
【0069】
本発明の典型的な実施形態は、ベース層102上に配置された被検物検出層を含む。図2に示した好ましい実施形態において、被検物検出層は絶縁ベース層102の上に配置された伝導層104を含む。伝導層104は1つ以上の電極を含むことが好ましい。伝導層104は多くの既知の技術および以降に説明する材料を用いて施すことができるが、センサ100の電気回路は、典型的に、配置された伝導層104を望ましい伝導路のパターンにエッチングすることによって画定される。センサ100のための典型的な電気回路は、近接末端に接触パッドを形成する領域と、遠隔末端にセンサ電極を形成する領域を有する2つ以上の隣接伝導路を含む。ポリマコーティングなどの電気絶縁保護カバー層106は典型的に伝導層104の部分に配置される。絶縁保護層106として用いるのに許容可能なポリマコーティングは、ポリイミドなどの非毒性生体適合性ポリマ、生体適合性ハンダマスク、エポキシアクリラートポリマ等を含むが制限されない。さらに、これらのコーティングは伝導層104を通る孔108のフォトリソグラフ形成を容易にするために光像形成可能とすることができる。
【0070】
本発明のセンサにおいて、保護層106を通して伝導層104に1つ以上の露出領域または孔108を作り、センサ100の接触パッド及び電極を画定することができる。フォトリソグラフ現像に加えて、孔108はレーザーアブレーション、化学的切削加工、またはエッチングなどの多くの技術によって形成することができる。また二次フォトレジストをカバー層106に塗工して、保護層の孔108を形成するために除去すべき領域を画定することもできる。作動センサ100は、互いに電気的に絶縁されているが典型的に互いに近接して配置された作用電極および対電極などの複数の電極を典型的に含む。また、他の実施形態は、参照電極も含むことができる。さらに他の実施形態はセンサ上に形成されない分離した参照要素を用いることができる。露出電極および/または接触パッドにも孔108を通して追加のめっき処理などの二次加工を行い、表面の調製および/または伝導領域を強化することができる。
【0071】
被検物検出層110は、典型的に、孔108を通して1つ以上の伝導層104の露出電極上に配置される。被検物検出層110は、センサ化学反応層であることが好ましく、酵素層であることが最も好ましい。被検物検出層110はグルコースオキシダーゼ酵素またはラクテートオキシダーゼ酵素を含むことが好ましい。それらの実施形態において、被検物検出層110はグルコースと反応して過酸化水素を生成し、存在するグルコース量を測定するために監視することのできる電極への電流を変化させる。センサ化学反応層110は、伝導層の部分または伝導層の領域全体の上に施すことができる。センサ化学反応層110は、伝導層を含む作用電極および対電極の部分に配置されることが好ましい。薄いセンサ化学反応層110を生成する好ましい方法は、スピンコーティング工程、浸漬および乾燥工程、低剪断噴霧工程、インクジェット印刷工程、シルクスクリーン工程などを含む。薄いセンサ化学反応層110はスピンコーティング工程を用いて施すのが最も好ましい。
【0072】
被検物検出層110は典型的に1層以上のコーティング層でコーティングされる。本発明の好ましい実施形態において、それらのコーティングのひとつは被検物の量を調節することのできる膜を含み、被検物検出層の酵素と接触することができる。例えば、コーティング層はグルコース制限膜などの被検物変化膜層を含み、電極上のグルコースオキシダーゼ酵素層に接触するグルコースの量を制御することができる。それらのグルコース制限膜は、それらの目的に適していると知られている広く様々な材料、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリウレアセルロースアセタート、Nafion(登録商標)、ポリエステルスルホン酸(例えば、Kodak AQ)、ヒドロゲルまたは当業者に既知の任意の他の膜から作ることができる。
【0073】
本発明の好ましい実施形態において、コーティング層は、センサ化学反応層110の上に配置されてセンサ化学反応層110に接触するグルコースを制御するグルコース制限膜層112である。本発明のいくつかの実施形態において、図2に示すように接着促進層114が膜層112とセンサ化学反応層110の間に配置されて、それらの接触および/または接着を容易にする。接着促進層114は、それらの層間の接合を容易にする、当分野に既知の広く様々な材料の任意の1種から作ることができる。接着促進層114はシラン化合物を含むことが好ましい。代替の実施形態において、センサ化学反応層110中のタンパク質等の分子は、膜層112を接着促進層114を存在させずにセンサ化学反応層110に直接接触して、配置できるように、十分架橋または調製することができる。
【0074】
上述のように、本発明の実施形態は1層以上の機能性コーティング層を含むことができる。本明細書に用いられる用語「機能性コーティング層(functional coating layer)」は、センサの少なくとも1表面の少なくとも一部、さらに好ましくは実質的にセンサの全ての表面をコーティングし、センサが配置される環境中で、化学的化合物、セルおよびその断片などの1種以上の被検物と相互作用することのできる層を表す。機能性コーティング層の非制限的な例は、センサ化学反応層(例えば、酵素層)、被検物制限層、生体適合性層、センサの滑り性を高める層、センサへのセル状付着を促進する層、センサへのセル状付着を低減する層などを含む。典型的な被検物変化層は、グルコースなどの1種以上の被検物が層を通って拡散するのを防ぎまたは制限する働きをする。場合によって、それらの層は層を通る1種の分子(例えば、グルコース)の拡散を防止または制限し、他方では、同時に他の種類の分子(例えば、O2)が層を通って拡散するのを可能にし、または容易にさえするように形成することができる。例示的機能性コーティング層は、本願に引用して援用される米国特許第5,786,439号、および第5,391,250号に開示されたものなどのヒドロゲルである。その中で説明されるヒドロゲルは、周囲に水層を提供する利点があるので、特に様々な埋没可能なデバイスに有用である。
【0075】
本明細書に開示されるセンサ実施形態はUV吸収ポリマを有する層を含むことができる。本発明の一態様によれば、UV吸収ポリマを含む少なくとも1層の機能性コーティング層を含むセンサが提供される。好ましい実施形態において、UV吸収ポリマはポリウレタン、ポリウレア、またはポリウレタン/ポリウレアコポリマである。選択されるUV吸収ポリマは、ジイソシアナート、少なくとも1種のジオール、ジアミン、またはその混合物、および多官能性UV吸収モノマを含む反応混合物から形成されることがさらに好ましい。
【0076】
UV吸収ポリマは、本願にその全体を引用して援用される、ロード(Lord)らの「Transcutaneous Sensor Insertion Set」の名称の米国特許第5,390,671号、ウィルソン(Wilson)らの「Implantable Glucose Sensor」の名称の米国特許第5,165,407号、ゴッホ(Gough)の「Two−Dimensional Diffusion Glucose Substrate Sensing Electrode」の名称の米国特許第4,890,620号などに記述されたように、様々なセンサ製造方法における利点のために用いられる。しかし、センサ要素の上部または下部にUV吸収ポリマ層を形成するステップを含むいかなるセンサ製造方法も、本発明の範囲内であると考えられる。特に、本発明の方法は、薄膜製造方法に制限されず、UVレーザー切断を利用する他のセンサ製造方法で行うことができる。実施形態は、厚膜、平面または円筒状センサ等、およびレーザー切断を必要とする他のセンサ形状で行うことができる。
【0077】
本明細書に開示されるように、本発明のセンサは、特に糖尿病患者の血液グルコースレベルを監視するための皮下または経皮グルコースセンサとして使用するために設計される。典型的に、それらのセンサは、例えば、下地の絶縁薄膜ベース層と被覆の絶縁薄膜カバー層の間に展在して形成された薄膜伝導体のような電気伝導性要素などの複数のセンサ要素を含む。
【0078】
望むならば、複数の異なるセンサ要素が単一センサに含まれることができる。例えば、伝導性および反応性センサ要素の双方を1つのセンサに結合することができ、場合によって各センサ要素はベース層の異なる部分に配置される。また、1つ以上の制御要素も提供することができる。それらの実施形態において、センサはそのカバー層に画定された複数の開口または孔を有することができる。また、1つ以上の開口を直接ベース層の部分上のカバー層に画定して、ベース層と、センサが配置される環境中の1種以上の被検物との相互作用を提供することができる。ベースおよびカバー層は様々な材料、典型的にポリマから構成することができる。さらに詳細な実施形態において、ベースおよびカバー層はポリイミドなどの絶縁材料から構成することができる。典型的に、開口がカバー層に形成されて遠隔末端電極と近接末端部の接触パッドを露出する。例えば、グルコース監視用途において、センサを経皮的に配置して、遠隔末端電極を患者の血液または細胞外液に接触させ、接触パッドを外部に配置して監視デバイスに都合よく接続することができる。
【0079】
本発明のセンサは、例えば、平面または円筒状の任意の望ましい形態を有することができる。ベース層102は固体ポリマ層などの自立型、または可撓性膜などの非自立型とすることができる。非自立型の実施形態は、例えば、連続的に巻き出されたポリマ膜のロールを用いて、その上にセンサ要素とコーティング層を連続的に施す、センサの連続製造が可能になる点で望ましい。
【0080】
本発明の一般的な実施形態は、体内に埋没するように設計されたセンサであり、ベース層と、複数のセンサ要素を含むベース層の上に配置された被検物検出層と、伝導層上の複数の検出要素の全てを被覆する被検物検出層の上に配置された酵素層(好ましくは厚さ2ミクロン未満)と、1層以上のコーティング層とを含む。典型的に、酵素層は、好ましくは担体タンパク質と実質的に固定比率で、グルコースオキシダーゼを含む。特定の実施形態において、グルコースオキシダーゼと担体タンパク質は配置された酵素層全体に実質的に均一に分配される。典型的に、担体タンパク質は、好ましくは約5重量%のアルブミンを含む。本明細書に用いられる用語「アルブミン(albumin)」は、当業者によってポリペプチド組成物を安定化させるために用いられるヒト血清アルブミンまたはウシ血清アルブミンなどのアルブミンタンパク質を指す。本発明の非常に好ましい実施形態において、コーティング層は、酵素層に接触することのできる被検物の量を制御するためにセンサの上に配置された被検物接触層である。さらに非常に好ましい実施形態において、センサは酵素層と被検物接触層の間に配置された接着促進層を含み、酵素層は厚さ1、0.5、0.25、または0.1ミクロン未満である。
【0081】
本発明の一態様は、材料特性が強化された、改善された電極化学物質コーティング(例えば、厚さ2ミクロン未満の酵素コーティング)を有するセンサの製造工程を含む。本発明の非常に薄い酵素コーティングを製造する方法は、スピンコーティング工程、浸漬および乾燥工程、低剪断噴霧工程、インクジェット印刷工程、シルクスクリーン工程などを含む。典型的に、それらのコーティングはそれらの塗工後に蒸気架橋(vapor crosslink)される。驚くべきことに、これらの工程によって製造されたセンサは、電気的堆積によって製造されたコーティングを有するセンサよりも、高められた寿命、直線性、および不変性、ならびに改善された雑音対信号を含んで、優れた材料特性を有する。さらに、それらの工程によって形成されたグルコースオキシダーゼコーティングを用いる本発明のいくつかのセンサ実施形態は、過酸化水素を再生するように設計され、それらのセンサの生体適合性プロファイルを改善する。
【0082】
この意味において、本発明の好ましい実施形態は、固定比率(典型的にグルコースオキシダーゼ安定化特性のために最適化されたもの)でアルブミンと結合したグルコースオキシダーゼを含む電極などの母材の表面に、約2ミクロン未満の安定化されたグルコースオキシダーゼをコーティングし、グルコースオキシダーゼとアルブミン混合物をスピンコーティング工程、浸漬および乾燥工程、マイクロ堆積工程、ジェット印刷堆積工程、スクリーン印刷工程、またはドクターナイフ工程からなる群から選択される工程によって母材の表面上に施す方法である。安定化されたグルコースオキシダーゼは、電極表面上にスピンコーティング工程によって施すことが好ましい。非常に好ましい実施形態において、グルコースオキシダーゼ/アルブミンは、生理溶液中(例えば、リン酸で中性pHに緩衝した塩水)で調製され、アルブミンは約5重量%存在する。場合によって、伝導層上に形成された安定化グルコースオキシダーゼ層は厚さが2、1、0.5、0.25、0.1ミクロン未満である。本発明に密接に関連する実施形態は、電極表面をコーティングするための安定化グルコースオキシダーゼ層であり、グルコースオキシダーゼは層内に固定比率で担体タンパク質と混合され、グルコースオキシダーゼと担体タンパク質は層全体に実質的に均一に分配される。層は厚さ2ミクロン未満であることが好ましい。
【0083】
本発明の関連実施形態は、ベース層と、ベース層の上に配置されて少なくとも1つの作用電極および少なくとも1つの対電極を含む伝導層と、伝導層上に配置された被検物検出層(被検物検出層は厚さ2ミクロン未満である)と、典型的に層を通って拡散し、被検物検出層に接触しうる被検物の量を制限することによって、酵素層に接触する被検物の量を調節する被検物変化層とを含む電気化学的被検物センサである。任意選択的な本発明の実施形態において、作用電極および/または作用電極のコーティングされた表面は、対電極および/または対電極のコーティングされた表面よりも大きい。好ましい実施形態において、酵素層はそれを作用電極および対電極上に固定比率で担体タンパク質と組み合わせてコーティングすることによって安定化されたグルコースオキシダーゼを含む。非常に好ましい実施形態において、このグルコースオキシダーゼ酵素層は実質的に伝導層を被覆する。グルコースオキシダーゼ酵素層が伝導層全体に均一なコーティングで配置される実施形態は、それらが単一層上に複数の異なるコーティングを有するセンサに伴う、異なる材料特性を有する、異なるコーティングが選択的に剥離する等の問題を回避することができるので好ましい。センサは酵素層と被検物変化層の間に配置された接着促進層を含むことが好ましい。
【0084】
本発明の関連実施形態は、ベース層と、ベース層の上に配置されて少なくとも1つの作用電極、少なくとも1つの参照電極、および少なくとも1つの対電極を含む伝導層と、伝導層上に配置された酵素層と、酵素層に接触する被検物の量を調節する被検物変化カバー層とを含む電気化学的被検物センサである。好ましい実施形態において、酵素層は厚さ2ミクロン未満であり、作用電極、参照電極、および対電極の少なくとも一部にコーティングされる。非常に好ましい実施形態において、酵素層は作用電極、参照電極、および対電極を実質的に被覆する。場合によって、酵素層は担体タンパク質(例えば、アルブミン)と固定比率で組み合わせたグルコースオキシダーゼを含む。典型的にセンサは酵素層と被検物変化層間に配置された接着促進層を含む。
【0085】
本発明のさらに他の実施形態は、ベース層と、ベース層の上に配置された伝導層と、伝導層上に配置されたグルコースオキシダーゼを含む被検物検出層(アルブミンと固定比率で組み合わせることによってグルコースオキシダーゼが安定化され、さらにグルコースオキシダーゼとアルブミンが配置された層全体に実質的に均一に分配される)と、グルコース制限層を通って拡散しグルコースオキシダーゼ層に接触するグルコースの量を調節するグルコース制限層とを含む、体内に埋没するためのグルコースセンサを含む。好ましい実施形態において、伝導層は少なくとも1つの作用電極と少なくとも1つの対電極を含む複数のセンサ要素を含む。それらのセンサ実施形態において、グルコースオキシダーゼを含む被検物検出層は厚さが2、1、0.5、0.25、0.1ミクロン未満であり、層中のアルブミンは約5重量%存在することが好ましい。センサは、グルコースオキシダーゼを含む被検物検出層とグルコース制限層の間に接着促進層を含むことが好ましい。
【0086】
(E)被検物センサ装置の形態
診療所における装備において、グルコースおよび/またはラクテートレベルなどの被検物の正確で比較的迅速な測定は、電気化学的センサを用いて血液サンプルから求めることができる。従来のセンサは、多くの有用な部品を含む大きなセンサ、または多くの環境においてより便利な小さな平面型センサに作られる。本明細書に用いられる用語「平面状(planar)」は、例えば、周知の厚膜または薄膜技術を用いて、比較的薄い材料の層を含む実質的に平面状の構造を作製する周知の手順を指す。例えば、両方とも本願に引用して援用されるリウ(Liu)らの米国特許第4,571,292号、パパダキス(Papadakis)らの米国特許第4,536,274号を参照されたい。以下に述べるように、本明細書に開示される本発明の実施形態は、当分野に存在するセンサよりも広範囲の幾何形状(例えば、平面状)の形態を有する。さらに、本発明のいくつかの実施形態は、薬剤注入ポンプなどの他の装置と組み合わせた、本明細書に開示される1つ以上のセンサを含む。
【0087】
図2は本発明の典型的な被検物センサ形態の概要図を提供する。図3は、被検物センサ装置で作製することのできる比較的平坦な「リボン」型形態の平面図(上部)および断面図(下部)を提供する。それらの「リボン」型形態は、本明細書に開示されるセンサの利点を示し、柔軟性の高いセンサ幾何形状の設計および製造が可能な非常に薄い酵素コーティングを製造する製造ステップである、グルコースオキシダーゼなどの検出酵素のスピンコーティングによって得られる。それらの薄い酵素がコーティングされたセンサは、センサの感度、埋没可能なデバイスに非常に望ましい特徴を保ちながら、より小さなセンサ面積を可能にする(例えば、より小さなデバイスは埋没が容易である)等の利点をさらに提供する。したがって、スピンコーティングなどの工程によって形成することのできる非常に薄い被検物検出層を用いる本発明のセンサ実施形態は、電気的堆積などの工程で形成された酵素層を用いるセンサよりも、広範囲の幾何形状形態(例えば、平面状)を有することができる。
【0088】
図4Aおよび4Bは、複数の作用電極、対電極および参照電極などの複数の伝導要素を含む様々なセンサ形態を示す。それらの形態の利点は、より高いセンサ感度を提供する増加した表面を含む。例えば、図4Bに示したセンサ形態において、このパターン(7個のビアを含む)は第3の作用センサを導入する。それらの形態の明らかな利点の1つは、3つのセンサ信号の平均化であり、センサの精度を高める。他の利点は、複数の被検物を測定する能力を含む。特に、被検物センサ形態はこの構成の電極(例えば、複数の作用電極、対電極、および参照電極)を含み、複数の被検物センサに組み込まれている。酸素、過酸化水素、グルコース、ラクテート、カリウム、カルシウム、及び任意の他の生理学的に関連する物質および/または被検物など、複数の被検物の測定は、例えば、それらのセンサが直線性応答ならびに較正および/または再較正の容易さを提供する能力など多くの利点を提供する。
【0089】
例示的複数センサデバイスは、カソード的に成極し、グルコースがグルコースオキシダーゼと相互作用を行う結果として作用電極(カソード)で起きる酸素濃度の変化を測定するように設計された第1センサと、アノード的に成極し、グルコースが外部環境から来てグルコースオキシダーゼと相互作用を行う結果として作用電極(アノード)で起きる過酸化水素濃度の変化を測定するように設計された第2センサとを有する単一のデバイスを含む。当分野で既知のように、それらの設計において、第1の酸素センサは、典型的に、酸素がセンサに接触すると作用電極で電流減少が起き、第2の過酸化水素センサは、典型的に、図1に示すように発生した過酸化水素がセンサに接触すると作用電極での電流が増加するであろう。さらに、当分野で既知のように、それぞれのセンサ系中の参照電極と比較した作用電極で起きる電流変化の観察は、酸素および過酸化水素分子の濃度変化に相関があり、これは従って、外部環境中(例えば、哺乳動物の体)のグルコース濃度と相関させることができる。
【0090】
図5Aは本発明の被検物センサをいかにして薬剤注入ポンプなどの他の医療デバイスと結合できるかを示す。図5Bは、本発明の交換可能な被検物センサが、例えば、医療デバイスに結合したポート(例えば、固定電気接続を備える皮下ポート)を使用することによって、薬剤注入ポンプなどの他の医療デバイスと結合することのできる、この構成の変形の図を提供する。
【0091】
(II)本発明の被検物センサ装置を製造するための例示的方法および材料
多数の記事、米国特許および特許出願は、本明細書に開示される通常の方法および材料による最新技術について記述し、さらに、本明細書に開示されるセンサ設計に用いることのできる様々な要素(およびその製造方法)について記述する。これらは、例えば、米国特許第6,413,393号、第6,368,274号、第5,786,439号、第5,777,060号、第5,391,250号、第5,390,671号、第5,165,407号、第4,890,620号、第5,390,671号、第5,390,691号、第5,391,250号、第5,482,473号、第5,299,571号、第5,568,806号、米国特許出願番号第20020090738号、ならびに、PCT国際公開番号第WO01/58348号、第WO03/034902号、第WO03/035117号、第WO03/035891号、第WO03/023388号、第WO03/022128号、第WO03/022352号、第WO03/023708号、第WO03/036255号、第WO03/036310号、および第WO03/074107号を含み、その各々の内容は本願に引用して援用される。
【0092】
糖尿病のグルコース濃度を監視するための典型的なセンサは、シチリ(Shichiri)らの「In Vivo Characteristics of Needle−Type Glucose Sensor−Measurements of Subcutaneous Glucose Concentrations in Human Volunteers」、Horm.Metab.Res.、Suppl.Ser.20:17−20(1988)、ブルッケル(Bruckel)らの「In Vivo Measurement of Subcutaneous Glucose Concentrations with an Enzymatic Glucose Sensor and Wick Method」、Klin.Wochenschr.67:491−495(1989)、およびピックアップ(Pickup)らの「In Vivo Molecular Sensing in Diabetes Mellitus:An Implantable Glucose Sensor with Direct Electron Transfer」、Diabetologia 32:213−217(1989)にさらに記述される。他のセンサは、例えば、本願に引用して援用される、ADVANCES IN IMPLANTABLE DEVICES、A.ターナー(A.Turner)(ed.)、JAI Press、London、Chap.1、(1993)においてリーチ(Reach)らによって記述される。
【0093】
(A)被検物センサの一般的製造方法
本明細書に開示される本発明の典型的な実施形態は、哺乳動物内に埋没するためのセンサ装置の製造方法であり、ベース層を提供するステップと、ベース層上に伝導層を形成し、伝導層が電極(典型的に作用電極、参照電極、および対電極)を含むステップと、伝導層上に被検物検出層を形成し、被検物検出層が被検物の存在下で伝導層の電極での電流を変化させることのできる組成物を含むステップと、場合によって、被検物検出層上にタンパク質層を形成するステップと、被検物検出層または任意のタンパク質層の上に接着促進層を形成するステップと、接着促進層上に配置された被検物変化層を形成し、被検物変化層がそこを通る被検物の拡散を変化させる組成物を含むステップと、被検物変化層の少なくとも一部の上に配置されたカバー層を形成し、カバー層が被検物変化層の少なくとも一部の上の孔をさらに含むステップとを含む。これらの方法のいくつかの実施形態において、被検物センサ装置は平面幾何形状形態に形成される。
【0094】
本明細書に開示されるように、センサの様々な層は、センサの好ましい設計によって操作することのできる様々な異なる特性を示すように製造することができる。例えば、接着促進層はセンサ構造全体を安定化する能力で選択される化合物、好ましくはシラン化合物を含む。本発明の好ましい実施形態において、被検物検出層はスピンコーティング工程によって形成され、その高さは1、0.5、0.25、0.1ミクロン未満からなる群から選択される厚さである。
【0095】
センサの製造方法は、被検物検出層上にタンパク質層を形成し、タンパク質層内のタンパク質がウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンからなる群から選択されるアルブミンであるステップを含むことが好ましい。センサの製造方法は、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、およびラクトースデヒドロゲナーゼからなる群から選択される酵素組成物を含む被検物検出層を形成するステップを含むことが好ましい。それらの方法において、被検物検出層は酵素に対して実質的に固定された比率で担体タンパク質組成物を含み、酵素および担体タンパク質は被検物検出層全体に実質的に均一に分配されていることが好ましい。
【0096】
(B)被検物センサの製造に有用な典型的な手順と材料
本明細書に提供される開示は、様々な周知の技術を組み合わせて用いて形成することのできるセンサおよびセンサ設計を含む。本開示は、これらの種類のセンサならびにこれらの工程によって製造されたセンサに非常に薄い酵素コーティングを施す方法をさらに提供する。この意味において、本発明の好ましい実施形態は、当技術で許容された工程に従って、基板上にそれらのセンサを製造する方法を含む。いくつかの実施形態において、基板はフォトリソグラフマスク及びエッチング工程に用いるのに適した硬質で平坦な構造を含む。これに関して、基板は非常に均一な平坦性を有する上部表面を典型的に画定する。平滑な上部表面を画定するのに研磨ガラスプレートを用いることができる。代替の基板材料は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、およびデルリンなどのプラスチック材料を含む。他の実施形態において、基板は非硬質であり基板として用いられる他のフィルムまたは絶縁材の層、例えば、ポリイミド類などのプラスチックとすることができる。
【0097】
本発明の方法の最初のステップは、典型的にセンサのベース層の形成を含む。ベース層は任意の望ましい手段、例えば、制御されたスピンコーティングによって基板上に配置することができる。さらに、基板層とベース層の間に十分な接着がないならば、接着層を用いることができる。絶縁材料のベース層は、典型的に、液状のベース層材料を基板上に塗工し、その後基板を回転させて薄い実質的に均一な厚さのベース層を生成することによって基板上に形成される。これらのステップを繰り返して十分な厚さのベース層を積み上げ、その後一連のフォトリソグラフおよび/または化学的マスクおよびエッチングステップによって以下に論じる導体を形成する。好ましい形では、ベース層はセラミックまたはポリイミド基板などの絶縁材料の薄膜シートを含む。ベース層はアルミナ基板、ポリイミド基板、ガラスシート、制御された多孔質ガラス、または平坦化したプラスチック液晶ポリマを含むことができる。ベース層は、カーボン、窒素、酸素、ケイ素、サファイア、ダイアモンド、アルミニウム、銅、ガリウム、ヒ素、ランタン、ネオジミウム、ストロンチウム、チタン、イットリウム、またはその組み合わせの1種以上の様々な元素を非制限的に含む任意の材料から誘導することができる。さらに、基板は化学的気相成長、物理的気相成長またはスピンコーティングを含む当分野で周知の様々な方法によって、スピンガラス、カルコゲニド、グラファイト、二酸化ケイ素、有機合成ポリマなどの材料を用いて固体支持体上にコーティングすることができる。
【0098】
本発明の方法は、1層以上の検出要素を有する伝導層の生成をさらに含む。典型的に、これらの検出要素は、活性電極の幾何形状を画定するためのフォトレジスト、エッチングおよび洗浄など、当分野に既知の様々な方法の1つによって形成された電極である。次いで、電極は、例えば、作用電極および対電極用にPtブラック、参照電極用に銀及び続いて塩化銀の電気的堆積によって、電気化学的に活性化することができる。次いで、センサ化学物質の酵素層などのセンサ層を電気化学的堆積またはスピンコーティングなどの電気化学的堆積以外の方法によって検出層の上に配置し、続いて、例えば、ジアルデヒド(グルタルアルデヒド)またはカルボジイミドで蒸気架橋することができる。
【0099】
本発明の電極は、当分野で既知の様々な材料から形成することができる。例えば、電極は後期遷移貴金属(noble late transition metal)から作ることができる。金、白金、銀、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、パラジウム、またはオスミウムなどの金属は本発明の様々な実施形態に適している。炭素または水銀などの他の組成物もいくつかのセンサ実施形態に有用である。これらの金属の中で、銀、金、または白金は典型的に参照電極金属として用いられる。銀電極は続いて塩化物にされ、典型的に参照電極として用いられる。これらの金属は、上で引用したプラズマ堆積法、または基板が金属塩を含む溶液および還元剤に浸漬されるときに前に金属化した領域上への金属の堆積を含むことのできる非電気的方法を含んで、当分野に既知の任意の手段によって堆積することができる。還元剤が伝導性(金属化された)表面に電子を与えると、伝導性表面で金属塩の還元を同時に行って、非電気的方法が進行する。結果は吸着された金属層である。(非電気的方法の追加の議論は、ワイズ E.M.(Wise,E.M.)、Palladium:Recovery,Properties,and Uses、Academic Press、New York、New York(1988)、ワン K.(Wong,K.)ら、Plating and Surface Finishing 1988、75、70〜76、マツオカ M.(Matsuoka,M.)ら、Ibid.1988、75、102〜106、およびパールスタイン F.(Pearlstein,F.)、「Electroless Plating」、Modern Electroplating、ローエンハイム F.A.(Lowenheim,F.A.)、Ed.、Wiley、New York、N.Y.(1974)、Chapter 31を参照されたい。)しかし、それらの金属堆積工程は、良好な金属間接着と最小の表面汚染を備える構造を生成して、高密度の活性部位を有する触媒金属電極表面を提供しなければならない。それらの高密度の活性部位は、過酸化水素などの電気的に活性な種を効率的に酸化還元変換するために必要な特性である。
【0100】
本発明の例示的実施形態において、ベース層は、電極堆積、表面スパッタ、または他の適切な工程ステップによって最初に薄膜伝導層でコーティングされる。好ましい形では、この伝導層は、ポリイミドベース層への化学的接着に適した最初のクロム系層、続いて順番に、後続の薄膜金系及びクロム系層の形成など、複数の薄膜伝導層として設けることができる。代替の実施形態において、他の電極層構造または材料を用いることができる。次いで、伝導層は従来のフォトリソグラフ技術に従って選択されたフォトレジストコーティングで被覆され、適切な光像形成のためにコンタクトマスクをフォトレジストコーティングの上に施すことができる。コンタクトマスクは、典型的に、フォトレジストコーティングの適切な露出、続いてベース層上に残る複数の伝導センサ線を得るエッチングステップのための1つ以上の導体線パターンを含む。皮下グルコースセンサとして使用するために設計された例示的センサ構造において、各センサ線は作用電極、対電極、及び参照電極など3つの分離した電極に対応する3つの平行なセンサ要素を含むことができる。
【0101】
伝導センサ層の部分は典型的に絶縁カバー層、好ましくはケイ素ポリマおよび/またはポリイミドなどの材料によって被覆される。絶縁カバー層は任意の望ましい方法で施すことができる。例示的手順において、絶縁カバー層はセンサ線上に液体層で塗工され、その後、基板を回転して、センサ線を被覆し、センサ線の境界縁部を越えて展在し、ベース層に封止状に接触する薄膜として液体材料を分配する。次いで、この液体材料に、当分野に既知の適切な照射および/または化学的および/または熱硬化ステップの1つまたは複数を行うことができる。代替の実施形態において、液体材料は噴霧技術または任意の他の望ましい塗工手段を用いて施すことができる。光像形成可能なエポキシアクリラートなどの様々な絶縁層材料を用いることができ、好ましい材料はWest Paterson、N.J.、のOCG,Inc.から製品番号7020で入手可能な光像形成可能なポリイミドを含む。
【0102】
上述のように、遠隔末端電極を画定する適切な電極化学物質は、場合によって開口を通してセンサ先端を露出した後、センサ先端に施すことができる。グルコースセンサとして使用するための3つの電極を有する例示的センサ実施形態において、酵素(好ましくはグルコースオキシダーゼ)が開口の1つの内部に提供され、このようにしてセンサ先端の1つをコーティングして作用電極を画定する。他の電極の1つまたは両方に作用電極と同じコーティングを設けることができる。代りに、他の2つの電極には、コーティングしなかった他の酵素などの他の適切な化学物質を設け、または電気化学的センサ用の参照電極および対電極を画定する化学物質を設けることができる。
【0103】
本発明の重要な態様は、材料特性を高めた電極化学物質用の非常に薄いコーティング(例えば、厚さ2ミクロン未満の酵素コーティング)を有するセンサを作る工程を含む。本発明の非常に薄い酵素コーティングを製造する方法は、スピンコーティング工程、浸漬および乾燥工程、低剪断噴霧工程、インクジェット印刷工程、シルクスクリーン工程などを含む。当業者であれば容易に当分野の工程によって塗工された酵素被覆の厚さを求めることができるように、本発明の非常に薄いコーティングを形成することのできる方法を容易に明らかにすることができる。典型的に、それらのコーティングは、その塗工の後に蒸気架橋が行われる。驚くべきことに、これらの工程によって製造されたセンサは高められた寿命、直線性および不変性、ならびに改善された雑音対信号を含んで、電気的堆積によって製造されたコーティングを有するセンサを超える材料特性を有する。さらに、それらの工程によって形成されたグルコースオキシダーゼコーティングを用いる本発明の実施形態は、過酸化水素を再生させるように設計され、それらのセンサの生体適合プロファイルを改善する。
【0104】
特定の科学的理論に拘束されることなく、それらの工程によって製造されたセンサの驚くべき特性は、電気的堆積が厚さ3〜5ミクロンの酵素層を形成して、反応性酵素の一部だけが検出すべき被検物に接近することができるので、電気的堆積によって形成されたものに比べて高められた特性を有すると考えられる。さらに、グルコースオキシダーゼを用いるセンサにおいて、電気的堆積によって製造された厚いコーティングは、反応性界面で発生した過酸化水素がセンサ表面に到達しそれによって信号を発生する能力を妨げることがある。さらに、それらの厚いコーティングのためセンサ表面に到達できない過酸化水素は典型的にセンサからセンサが配置される環境中へ拡散し、それによってそれらのセンサの生体適合性を低下させる。さらに、グルコースオキシダーゼとアルブミンは異なる等電点を有するので、電気的堆積工程は、最適に求めた担体タンパク質対酵素比率が電気的堆積工程中に悪化し、さらにグルコースオキシダーゼと担体タンパク質が配置した酵素層全体に実質的に均一に分配されない表面コーティングをもたらす。本明細書に開示されるセンサを製造するために用いられる薄いコーティング工程はこれらの電気的堆積に伴う問題を回避する。
【0105】
また、スピンコーティング工程などの工程によって形成されたセンサは、電気的堆積工程の間にセンサに加わる材料応力に係わるものなど、電気的堆積に伴う他の問題も回避する。詳細には、電気的堆積工程はセンサに機械的応力、例えば、引っ張りおよび/または圧縮応力に起因する機械的応力を発生することが観察される。いくつかの状況において、それらの機械的応力は、亀裂または剥離し易いコーティングを有するセンサを招くことがある。これはスピンコーティングまたは他の低応力工程によってセンサに配置されたコーティングには観察されない。したがって、本発明のさらに他の実施形態は、スピンコーティング工程によるコーティング塗工を含んで、電気的堆積によって影響を受けるセンサ上のコーティングの亀裂および/または剥離を回避する方法である。
【0106】
センサ要素の処理に続いて、噴霧、浸漬など当分野で既知の広く様々な方法の任意の1つによって、1種以上の追加の機能性コーティングまたはカバー層を施すことができる。本発明の好ましい実施形態は、酵素含有層の上に堆積された被検物変化層を含む。活性センサ表面に接触する被検物(1つ又は複数)の量を変化させるその用途に加えて、被検物制限膜層を用いることによって、外部の材料によるセンサの汚染の問題も取り除かれる。当分野で既知のように、被検物変化膜層の厚さは、活性酵素に到達する被検物の量にも影響を与え得る。したがって、その塗工は画定された工程条件下で実施し、その寸法的な厚さを厳密に制御することが好ましい。下地層の微細加工においてそうであるように、被検物制限膜層材料の組成物自体が、被検物変化膜層に対する厳密な寸法制御に影響を与える要因であり得る。これに関して、いくつかのコポリマの種類、例えば、シロキサンと非シロキサン部のコポリマが特に有用であることが発見された。これらの材料は微細分散またはスピンコーティングして制御された厚さにすることができる。また、それらの最終的な構造は、本明細書に記述される他の個別の構造に整合するように、パターン形成とフォトリソグラフ技術によって設計することができる。これらの非シロキサン−シロキサンコポリマは、ジメチルシロキサン−アルケンオキシド、テトラメチルジシロキサン−ジビニルベンゼン、テトラメチルジシロキサン−エチレン、ジメチルシロキサン−シルフェニレン、ジメチルシロキサン−シルフェニレンオキシド、ジメチルシロキサン−a−メチルスチレン、ジメチルシロキサン−ビスフェノールAカルボナートコポリマ、またはその適切な組み合わせを含むが制限されない。コポリマ中の非シロキサン成分の重量パーセントは任意の有用な値に予め選択することができるが、典型的に、この比率は約40〜80重量%の範囲にある。上述のコポリマの中で、50〜55重量%の非シロキサン成分を含むジメチルシロキサン−ビスフェノールAカルボナートコポリマが好ましい。これらの材料はPetrarch Systems、Bristol、Pa.(USA)から購入することができ、この会社の製品カタログに説明されている。被検物制限膜層として働くことのできる他の材料は、ポリウレタン類、酢酸セルロース、硝酸セルロース、シリコンゴム、または相溶性であれば、シロキサン非シロキサンコポリマを含むこれらの材料の組み合わせを含むが制限されない。
【0107】
本発明の好ましい実施形態において、センサは親水性膜コーティングを含む被検物変化層を施す方法によって作られ、センサ層の酵素に接触できる被検物の量を調節することができる。例えば、本発明のグルコースセンサに加えられたカバー層はグルコース制限膜を含むことができ、電極上のグルコースオキシダーゼ酵素層に接触するグルコースの量を調節する。それらのグルコース制限膜は、それらの目的に適していることが知られている広く様々な材料、例えば、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン類、ポリウレタン類、酢酸セルロース類、Nafion(登録商標)、ポリエステルスルホン酸類(例えば、Kodak AQ)、ヒドロゲル、またはそれらの目的に適していることが当業者に知られている他の任意の膜から作ることができる。過酸化水素再生能力を有するセンサに関する本発明のいくつかの実施形態において、グルコースオキシダーゼ酵素層上に配置された膜層は、センサの配置された環境への過酸化水素の放出を抑制し、過酸化水素分子と電極検出要素間の接触を容易にする働きをする。
【0108】
本発明の方法のいくつかの実施形態において、接着促進層は、カバー層(例えば、被検物変化膜層)とセンサ化学物質層間に配置されてそれらの接触を容易にし、センサ装置の安定性を向上させる能力で選択される。本明細書に述べるように、好ましい接着促進層の組成物は、センサの安定性を提供する能力に加えて多くの望ましい特性を提供するように選択される。例えば、接着促進層に使用するのに好ましい組成物は、妨害の排除ならびに望ましい被検物の質量移動制御の役割を果たすように選択される。接着促進層は、それらの層間の接合を容易にする当分野で既知の広く様々な材料の1種から作ることができ、当分野で既知の広く様々な方法の任意の1つで施すことができる。接着促進層は、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物を含むことが好ましい。本発明のいくつかの実施形態において、接着促進層および/または被検物変化層は近接して存在するシロキサン部を架橋する能力で選択される薬品を含む。本発明の他の実施形態において、接着促進層および/または被検物変化層は隣接層中に存在するタンパク質のアミンまたはカルボキシル部を架橋する能力で選択される薬品を含む。場合による実施形態において、AP層は、典型的にグルコース制限膜などの被検物変化層に存在するポリマであるポリジメチルシロキサン(PDMS)をさらに含む。例示的実施形態において、処方は0.5〜20%のPDMS、好ましくは5〜15%のPDMS、最も好ましくは10%のPDMSを含む。AP層へのPDMSの添加は、センサが製造される際にAP層に発生する可能性のある孔または空隙を減じる意味で有利になり得る。
【0109】
上述のように、センサ層間の接着を促進するために通常使用されるカップリング剤はγ−アミノプロピルトリメトキシシランである。シラン化合物は通常適切な溶媒と混合して液体混合物を形成する。次いで、液体混合物は、スピンコーティング、浸漬コーティング、噴霧コーティング、及び微細分散を含むが制限されない多くの任意の方法によって、ウェーハまたは平面状検出装置の上に塗工または設けることができる。微細分散工程は自動工程として実施することができ、材料の微小点はデバイスの予め選択された複数の領域に分散される。さらに、「リフト−オフ」またはフォトレジストキャップを用いるフォトリソグラフ技術は、得られる選択浸透性膜(すなわち、選択的な浸透性を有する膜)の幾何形状を配置し画定するために用いることができる。シラン混合物の形成に使用するのに適した溶媒は、水性ならびに水混和性有機溶媒およびその混合物を含む。アルコール系水混和性有機溶媒およびその水性混合物は特に有用である。これらの溶媒混合物は、例えば、約200〜約6、000の範囲の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤をさらに含むことができる。これらの界面活性剤を液体混合物へ、混合物の約0.005〜約0.2g/dLの濃度で添加すると、得られる薄膜の平面化を助ける。また、シラン薬品塗工前のウェーハ表面のプラズマ処理は修飾された表面を与え、層の平面性確立をさらに促進する。水に不溶性の有機溶媒もシラン化合物の溶液の調製に用いることができる。これらの有機溶媒の例は、ジフェニルエーテル、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、またはその混合物を含むが制限されない。プロトン性溶媒またはその混合物が用いられるとき、水は結局アルコキシ基を加水分解(特にn=1のとき)して有機ケイ素の水酸化物を生成し、縮合してポリ(有機シロキサン)を形成する。また、これらの加水分解されたシラン剤も基板表面に存在することのできるヒドロキシルなどの極性基と縮合することができる。非プロトン性溶媒が用いられるとき、雰囲気の湿気はシラン剤に最初に存在したアルコキシ基を加水分解するのに十分である。シラン化合物のR’基(n=1または2のとき)は、続いて塗工される追加の層と機能的に融和性があるように選択される。R’基は、通常、基板表面への酵素の共役付着に有用な末端アミン基を含む(例えば、グルタルアルデヒドなどの化合物はムラカミ T.(Murakami,T.)らのAnalytical Letters 1986、19、1973〜86に記述されたように、結合剤として用いることができる)。
【0110】
センサのいくつかの他のコーティング層のように、接着促進層は当分野に既知の適切な照射および/または化学的および/または熱硬化ステップの1つ以上を行うことができる。代替の実施形態において、接着促進層がなくても膜カバー層をセンサ化学反応層に直接接触して配置することが可能なように、酵素層を十分に架橋しまたは調製することができる。
【0111】
本発明の好ましい実施形態は、ベース層を提供し、ベース層上にセンサ層を形成し、センサ層上に酵素層をスピンコーティングし、次いでセンサの上に被検物接触層(例えば、グルコース制限膜などの被検物変化層)を形成し、被検物接触層が酵素層に接触できる被検物の量を調節することによるセンサの製造方法である。好ましい方法において、酵素層はセンサ層上で蒸気架橋される。本発明の典型的な実施形態において、センサ層は少なくとも1つの作用電極と少なくとも1つの対電極を含むように形成される。非常に好ましい実施形態において、酵素層は少なくとも一部の作用電極と少なくとも一部の対電極の上に形成される。典型的に、センサ層上に形成される酵素層は厚さ2、1、0.5、0.25、または0.1ミクロン未満である。酵素層はグルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、またはラクトースデヒドロゲナーゼおよび/または同様の酵素を含むことが好ましい。特定の方法において、酵素層はグルコースオキシダーゼを含み、固定比率で担体タンパク質と一緒にセンサ層上にそれをコーティングすることによって安定化される。典型的に、担体タンパク質はアルブミンである。それらの方法はグルコースオキシダーゼ層と被検物接触層の間に配置された接着促進層を形成するステップを含むことが好ましい。場合によって、接着促進層には被検物接触層の形成の前に硬化工程を行う。
【0112】
本発明の関連する実施形態は、ベース層を提供し、少なくとも1つの作用電極と少なくとも1つの対電極を含むベース層上にセンサ層を形成し、センサ層の上に、スピンコーティング工程によってグルコースオキシダーゼ層(好ましくは、アルブミンとグルコースオキシダーゼを固定比率で組み合わせることによって安定化された層)を形成(グルコースオキシダーゼ層は作用電極の少なくとも一部と対電極の少なくとも一部をコーティングする)し、次いで、グルコースセンサ上にグルコースオキシダーゼ層に接触できるグルコースの量を調節するグルコース制限層を形成することによるグルコースセンサの製造方法である。それらの工程において、センサ層上に形成されるグルコースオキシダーゼ層は厚さ2、1、0.5、0.25、または0.1ミクロン未満であることが好ましい。典型的に、グルコースオキシダーゼコーティングはセンサ層上で蒸気架橋される。場合によって、グルコースオキシダーゼコーティングはセンサ層全体を被覆する。本発明の非常に好ましい実施形態において、接着促進層はグルコースオキシダーゼ層と被検物接触層の間に配置される。本発明のいくつかの実施形態において、被検物センサは、典型的に電気絶縁保護層である1層以上のカバー層をさらに含む(例えば、図2の要素106参照)。典型的に、それらのカバー層は被検物変化層の少なくとも一部の上に配置される。
【0113】
それらの工程によって製造された完成センサは、例えば、基板上の各センサを取り囲む線に沿って切断することによって、典型的に迅速かつ容易に支持基板(使用されるならば)から取り外される。切断ステップは、ベースおよびカバー層ならびに機能性コーティング層を、相互接続されたベースおよびカバー層材料が十分に残って完成センサの側縁部を封止するように、典型的に伝導性要素から少なくとも僅かに外側へ間隔を置いて各センサを取り囲むまたは包囲する線に沿って切断するのに用いられるUVレーザー切断デバイスを含む方法など、典型的に当分野で用いられる方法を用いることができる。さらに、典型的にセラミック基板を切断するのに使用されるダイシング技術を適切なセンサ実施形態で用いることができる。ベース層は典型的に下地支持基板に直接物理的に付着せず、または接着が最小であるので、さらに他の明らかな処理ステップ、または付着したセンサを支持基板から物理的に引っ張りまたは引き剥がすことによって発生する応力による損傷の危険性なく、センサは迅速かつ容易に支持基板から持ち上げることができる。その後、支持基板は洗浄して再使用、または廃棄することができる。代りに、機能性コーティング層(1つ又は複数)は、ベース層、センサ要素、及びカバー層を含むセンサが切断によって支持基板から取り外された後に施すことができる。
【0114】
(III)本発明の被検物センサ装置の使用方法
本発明の関連実施形態は哺乳動物体内の被検物の検出方法であり、その方法は、本明細書に開示される被検物センサ実施形態を哺乳動物に埋没し、次いで作用電極での電流変化を検出し、電流変化を被検物の存在と相関させて被検物が検出されることを含む。典型的に、被検物センサは電流変化を検出する作用電極がアノードであるようにアノード的に成極される。それらの一方法において、被検物センサ装置は哺乳動物中のグルコースを検出する。代替の方法において、被検物センサ装置はラクテート、カリウム、カルシウム、酸素、pH、および/または哺乳動物中の生理学的に関連のある任意の被検物を検出する。
【0115】
上で論じた構造を有するいくつかの被検物センサは、多くの非常に望ましい特性を有し、哺乳動物中の被検物を検出する様々な方法が可能である。例えば、それらの方法において、哺乳動物中に埋没された被検物センサ装置は、1、2、3、4、5、または6カ月を超える間、哺乳動物の体内の被検物を検出する働きをする。哺乳動物にそのように埋没された被検物センサ装置は、被検物がセンサに接触して15、10、5、または2分間以内に被検物に応答する電流変化を検出することが好ましい。それらの方法において、センサは哺乳動物の体内の様々な位置、例えば、脈管内および非脈管内の両方に埋没することができる。
【0116】
(IV)本発明のキット及びセンサセット
本発明の他の実施形態において、上述のように被検物の検出に有用なキットおよび/またはセンサセットが提供される。キットおよび/またはセンサセットは、典型的に容器、ラベルおよび上述の被検物センサを含む。適切な容器は、例えば、金属箔などの材料から作られた開放の容易な梱包、瓶、試験瓶、注入器、および試験管を含む。容器は金属(例えば、箔)、紙製品、ガラス、またはプラスチックなどの様々な材料から形成することができる。容器上のラベル、または容器に付属するラベルは、センサが選択された被検物の分析に用いられることを表示する。好ましい実施形態において、容器は厚さ2ミクロン未満のグルコースオキシダーゼの層でコーティングされたグルコースセンサを収容する。キットおよび/またはセンサセットは、センサを被検物環境に導入することを容易にするように設計された要素またはデバイス、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、注入器、及び使用説明書を備える梱包挿入物を含んで、市場および使用者の立場から望ましい他の材料をさらに含むことができる。
【0117】
明細書全体で様々な引用が参照される。さらに、本発明の様々な実施形態をより明らかに記述するために、関連技術からのいくつかの文言が本明細書で再構築される。本明細書における全ての引用の開示は、本願に引用して明確に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】グルコースとグルコースオキシダーゼ間の周知の反応図である。段階的に示したように、この反応はグルコースオキシダーゼ(GOx)、グルコース、および水中の酸素が関与する。反応の半分の還元では2個のプロトンと電子がβ−D−グルコースから酵素に移動してd−グルコノラクトンを生成する。反応の半分の酸化では酵素が酸素分子によって酸化されて過酸化水素を生成する。次いで、d−グルコノラクトンは水と反応してラクトン環を加水分解し、グルコン酸を生成する。本発明のいくつかの電気化学的センサにおいて、この反応によって生成した過酸化水素は作用電極で酸化される(H2O2→2H++O2+2e−)。
【図2】本発明の典型的な被検物センサ形態の概要図である。
【図3】被検物センサ装置で製造することのできる比較的平坦な「リボン」型センサ形態の平面図(上部)および断面図(下部)である。
【図4A】複数の作用電極、対電極および参照電極などの複数の伝導性要素を含む様々なセンサ形態を示す図である。
【図4B】複数の作用電極、対電極および参照電極などの複数の伝導性要素を含む様々なセンサ形態を示す図である。図4Bは、7個のバイアスと4個の作用電極を備えるセンサ設計を示す(W=作用電極(+)、C=対電極(−)、およびR=参照電極である)。
【図5A】本発明の被検物センサが、インスリン送達カテーテル、センサとカテーテルを組み合わせたヘッダー、および薬剤注入ポンプなど、他の医療デバイスとどのようにして結合することができるかを示す図である。
【図5B】本発明の交換可能な被検物センサが、例えば、医療デバイスに結合したポートを使用することによって薬剤注入ポンプなどの他の医療デバイス(例えば、固定電気接続を備える皮下ポート)と結合することができるこの機構の変形の例を示す図である。図5Bに提供される設計は、ポンプのポートに一体化された交換可能なセンサを示し、ポートは固定電気接続を備える皮下ポートである(センサが固定位置に捩られるとき、電気的接続が連結される)。また、図5Bは迅速接続固定リングおよびセンサを位置に固定するためのキーを備える交換可能なセンサである。
【図6】被検物検出層中のグルコースオキシダーゼを用いる、本発明の過酸化物系グルコースセンサの実施形態の特性を表すグラフであり、過酸化物センサの長期安定性を示す。
【図7A】被検物検出層にラクテートオキシダーゼを用いる、本発明の長期間酸素系ラクテートセンサの実施形態(カテーテル状デバイス構成において)の特性を表すグラフである。図7Aのデータはイヌ(canine)のインビボの研究から導かれる。
【図7B】被検物検出層にラクテートオキシダーゼを用いる、本発明の長期間酸素系ラクテートセンサの実施形態(カテーテル状デバイス構成において)の特性を表すグラフである。図7Bのデータはイヌのインビボの研究から導かれる。
【図7C】被検物検出層にラクテートオキシダーゼを用いる、本発明の長期間酸素系ラクテートセンサの実施形態(カテーテル状デバイス構成において)の特性を表すグラフである。図7Cはラクテートオキシダーゼ(LOx)処方が、動的範囲および感度を含んで、非常に望ましい特性を有することを示す。
【図7D】被検物検出層にラクテートオキシダーゼを用いる、本発明の長期間酸素系ラクテートセンサの実施形態(カテーテル状デバイス構成において)の特性を表すグラフである。図7Dはラクテートオキシダーゼ(LOx)処方が、動的範囲および感度を含んで、非常に望ましい特性を有することを示す。
【図8A】ラクテートの過酸化物系センサのインビトロ較正の像を提供する図である。図8Aは較正研究を提供する。
【図8B】ラクテートの過酸化物系センサのインビトロ較正の像を提供する図である。図8Bは較正曲線を提供する。
【図8C】ラクテートの過酸化物系センサのインビトロ較正の像を提供する図である。図8Cはセンサの機構を提供する。
【技術分野】
【0001】
本発明はグルコースなどの被検物の検出および測定のためのセンサ、ならびにこれらのセンサの製造方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は2002年10月18日出願の米国特許出願番号第10/273,767号に関し、その内容は本願に引用して援用される。
【0003】
グルコースおよびラクテートなどの生物化学的被検物の分析は様々な臨床状況において重要である。例えば、ヒトの体液中のグルコース濃度の監視は、特に糖尿病の管理に直接関連する。糖尿病の管理、例えば、切迫したまたは実際の低血糖の警告ならびにその回避のために、人体に埋没されたセンサを含む、連続的または間欠的な運転をするグルコースセンサが求められている。ヒトの体液中のラクテート濃度の監視は、これらに限らないが、外傷、心筋梗塞、鬱血性心不全、肺浮腫、および敗血症を含む多くの医学的状態の診断および評価に有用である。
【0004】
通常生理学的な変動を監視するために用いられる生物医学的な測定デバイスは、適切な酵素コーティングで改変した電極を用いる電流計センサ装置を含む。それらの酵素電極を有するセンサは、例えば、酵素と被検物の反応(この反応は検出可能な共反応物を用い、および/または検出可能な反応生成物を生成する)を用いて、使用者が様々な被検物濃度を迅速かつかなり正確に測定することを可能にする。例えば、図1に示すようなグルコースとグルコースオキシダーゼ(GOx)の間の反応に基づく多数のグルコースセンサが開発された。この状況において、当分野で既知のセンサを用いて生理学的グルコース濃度を正確に測定するには、典型的に酸素と水の両方が過剰に存在することが必要である。グルコースと酸素がセンサ上の不動化した酵素層中に拡散すると、グルコースは酸素と反応してH2O2を生成する。グルコースは、酸素および/または過酸化水素に感受性のある電極に結合した不動化グルコースオキシダーゼ酵素を用いて電気化学的に検出することができる。反応は酸素の還元およびサンプル媒体中のグルコース濃度に比例した過酸化水素の生成をもたらす。典型的なデバイスは、酵素反応が存在および存在しないときに酸素または過酸化水素の濃度を検出する少なくとも2個の検出電極、または少なくとも1個の検出電極と参照信号源から構成されるが制限されない。さらに、完全な監視系は対象物質の濃度の差を求めるための電気的検出および制御手段を典型的に含む。この差から、グルコースなどの被検物の濃度を求めることができる。
【0005】
様々なそれらの被検物センサならびにそれらの被検物センサを製造し使用する方法が当分野に知られている。それらのセンサ、センサセット、およびその製造方法の例は、例えば、米国特許第5,390,691号、第5,391,250号、第5,482,473号、第5,299,571号、第5,568,806号、ならびにPCT国際公開番号第WO01/58348号、第WO03/034902号、第WO03/035117号、第WO03/035891号、第WO03/023388号、第WO03/022128号、第WO03/022352号、第WO03/023708号、第WO03/036255号、第WO03/036310号、および第WO03/074107号に記載されており、その各内容は本願に引用して援用される。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,390,691号明細書
【特許文献2】米国特許第5,391,250号明細書
【特許文献3】米国特許第5,482,473号明細書
【特許文献4】米国特許第5,299,571号明細書
【特許文献5】米国特許第5,568,806号明細書
【特許文献6】国際公開第01/58348号パンフレット
【特許文献7】国際公開第03/034902号パンフレット
【特許文献8】国際公開第03/035117号パンフレット
【特許文献9】国際公開第03/035891号パンフレット
【特許文献10】国際公開第03/023388号パンフレット
【特許文献11】国際公開第03/022128号パンフレット
【特許文献12】国際公開第03/022352号パンフレット
【特許文献13】国際公開第03/023708号パンフレット
【特許文献14】国際公開第03/036255号パンフレット
【特許文献15】国際公開第03/036310号パンフレット
【特許文献16】国際公開第03/074107号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多くのセンサ設計およびそれらのセンサの製造方法が当分野に知られるが、安定性、寿命、直線性および不変性を向上させ、ならびに雑音対信号比が最適化された、改善された特性を有するセンサが継続的に必要とされている。また、これらの最適化された品質を有するセンサの製造を可能にする方法および工程を明らかにすることが必要である。本発明はこれらの必要性を満たし、さらに関連の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される本発明の実施形態は、例えば、糖尿病患者の血液グルコースレベルの監視を皮下または経皮的に行う種類の被検物センサを提供する。本明細書に開示される本発明の実施形態は、例えば、透析および/または体外膜型酸素供給装置(extra corporeal membrane oxygenation protocol)などの様々な医療状況において用いられる種類の被検物センサを提供する。さらに詳細には、本明細書に提供される開示は、最適化された被検物センサ設計およびそれらのセンサの製造方法および使用方法を教示する。本発明の好ましい被検物センサは、典型的にグルコースオキシダーゼ、ラクテートオキシダーゼなどの酵素を含む非常に薄い被検物検出層を含む。さらに、本発明の被検物センサは、被検物センサの層間の接着を促進する働きをするシランを含む1つ以上の層を含むことが好ましい。驚くべきことに、シラン接着促進層および本明細書に開示される他の要素を組み込んだ被検物センサは、向上した安定性、寿命、直線性および不変性、ならびに改善された雑音対信号比を含む、多くの優れた品質を有する。
【0009】
本明細書に開示される本発明は多くの実施形態を有する。典型的な本発明の実施形態は哺乳動物内に埋没するために設計された被検物センサ装置である。被検物センサ装置は、ベース層およびベース層の上に配置された伝導層を含むことが好ましいが、これらに制限されず、伝導層は作用電極ならびに好ましくは参照電極および対電極を含む。本発明のこの実施形態において、被検物検出層は伝導層の上に配置される。典型的に、被検物検出層は、被検物の存在下で伝導層中の作用電極の電流を検出可能に変化させる組成物を含む。それらの組成物の例は、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートオキシダーゼ、ヘキソキナーゼおよびラクトースデヒドロゲナーゼなどの酵素(例えば、酵素層を安定化する任意の他のタンパク質および/またはポリマおよび/またはその組み合わせ)を含む。場合によって、本発明の実施形態は、被検物検出層の上に配置されたタンパク質層を含み、このタンパク質層は典型的にウシ血清アルブミン、またはヒト血清アルブミンなどの担体タンパク質を含む。この実施形態において、接着促進層が被検物検出層または任意のタンパク質層の上に配置され、被検物検出層と1つ以上の隣接センサ層間の接着を促進する働きをする。この接着促進層は、センサ構造の安定性を高める能力のために選択された、シラン組成物、例えばγ−アミノプロピルトリメトキシシランを含むことが好ましい。また、この実施形態は、被検物検出層の上に配置された被検物変化層、例えばグルコース制限膜を含み、被検物変化層はそこを通る被検物の拡散を変化させる。また、この実施形態は、被検物変化層の少なくとも1部の上に配置された絶縁カバー層を含み、カバー層は、検出される被検物を含む溶液に被検物変化層の少なくとも1部を露出する開口をさらに含む。被検物センサ装置は、アノード成極によって機能するように設計され、電流の変化を被検物センサ装置の伝導層中の作用電極(アノード)で検出することができ、この作用アノードで検出できる電流の変化を被検物の濃度と相関をとることができるのが好ましい。
【0010】
以下で詳細に説明するように、様々なセンサ層は、センサの好ましい設計によって操作することのできる様々な異なる特性をもつことができる。例えば、被検物検出層は、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、およびラクトースデヒドロゲナーゼからなる群から選択される酵素を含むことができる。代りに、被検物検出層は、抗体または他の被検物検出分子を含むことができる。被検物検出層は、1、0.5、0.25、および0.1ミクロン未満からなる群から選択される厚さであり、酵素と実質的に固定比率の担体タンパク質を含み、酵素と担体タンパク質は酵素層全体に実質的に均一に分配される。
【0011】
本発明の一例示的実施形態において、被検物検出層中の酵素はグルコースオキシダーゼであり、被検物センサ装置は哺乳動物のグルコースレベルを検出することが可能である。それらのセンサの実施形態において、伝導層中の作用電極での電流はグルコースオキシダーゼによるグルコースと酸素間の酵素反応によって発生した過酸化水素によって変化する。本発明の代替の実施形態において、被検物検出層中の酵素はラクテートオキシダーゼであり、被検物センサ装置は哺乳動物のラクテートレベルを検出することが可能である。それらのセンサの実施形態において、伝導層中の作用電極での電流はラクテートオキシダーゼによるラクテートと酸素間の酵素反応によって発生した過酸化水素によって変化する。
【0012】
上で論じた構造を有するいくつかの被検物センサは、多くの極めて望ましい特性を有する。例えば、いくつかの被検物センサ装置の実施形態は、30日を超え12カ月またはそれ以上の期間哺乳動物に埋没するのに適している。さらに、いくつかの被検物センサ装置の実施形態は、哺乳動物の体に存在する被検物への露出に応答して、被検物のセンサへの接触の15、10、5、または2分間内に、電流計などのデバイスによって検出できる電流の変化を検出することができる。さらに、本明細書に開示されるいくつかの被検物センサ装置の実施形態は、哺乳動物の非脈管空間(non-vascular space)への埋没に適している。最終的に、以下で詳細に説明するように、本明細書に開示される本発明のいくつかの実施形態に用いられる要素の特性は、当分野に既に存在するものよりも広範囲の幾何形状構成(例えば、小さな平面センサ構成)を可能にする。
【0013】
本発明の関連する実施形態は哺乳動物の体内の被検物を検出する方法であり、その方法は、本明細書に開示される被検物センサの実施形態を哺乳動物に埋没し、次いで作用電極での電流の変化を検出し、電流の変化を被検物の存在と相互に関連させて被検物を検出することを含む。典型的に、電流変化が検出される作用電極がアノードであるように、被検物センサはアノード性に成極される。それらの一方法において、被検物センサ装置は哺乳動物中のグルコースを検出する。代替の方法において、被検物センサ装置は哺乳動物中のラクテートを検出する。
【0014】
上で論じた構造を有するいくつかの被検物センサは、多くの極めて望ましい特性を有し、哺乳動物中の被検物を検出する様々な方法を可能にする。例えば、それらの方法において、哺乳動物に埋没された被検物センサ装置は、1、2、3、4、5、または6カ月を超える期間、哺乳動物の体内の被検物を検出するように機能する。このように埋没された被検物センサ装置は、被検物に応答して、被検物がセンサへ接触した15、10、5、または2分間内に、電流の変化を検出することが好ましい。それらの方法において、センサは哺乳動物の体内の様々な位置、例えば脈管および非脈管空間の両方に埋没することができる。
【0015】
また、本発明は、センサセットおよびキットを含む別の製造物品を提供する。本発明のこのような一実施形態において、上述のように被検物の検出に有用なキットおよび/またはセンサセットが提供される。キットおよび/またはセンサセットは、典型的に容器、ラベル及び上述のセンサを含む。典型的な実施形態は容器と、容器内に、本明細書に開示される設計を有する被検物センサ装置および被検物センサ装置を使用するための説明書とを含むキットである。
【0016】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、当業者には以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものであるが、例示として提供され、制限するものではないことを理解すべきである。本発明の範囲内で、多くの変更および変形をその精神から逸脱することなく加えることができ、本発明は全てのそれらの変形を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
特別に定義しない限り、本明細書に用いられる全ての技術用語、表記、および他の科学用語または術語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解される意味を有することが意図される。いくつかの場合に、通常理解される意味を有する用語は、本明細書において、明瞭さおよび/または引用の容易さのために定義されるものであり、本明細書においてそれらの定義を含むことは、当分野で一般に理解されるよりも大きな相違を表すものと解釈する必要はない。本明細書に説明されまたは引用される多くの技術および手順は、当業者による従来の方法を用いて十分理解され一般に用いられる。適切であるように、市場で入手可能なキット及び薬品の使用を含む手順は、特記しないかぎり製造者の定めた使用計画および/または要因に従って一般に行われる。
【0018】
本明細書に開示される本発明の実施形態は、例えば、糖尿病患者の血糖値の皮下または経皮監視に使用される種類のセンサを提供する。本開示は、それらのセンサの製造方法および使用方法をさらに提供する。本発明の好ましい実施形態はグルコースおよび/またはラクテートセンサに関するが、本明細書に開示される様々な要素(例えば薄い酵素コーティング)は、当分野で知られている広範囲のセンサの任意の1つに使用するように適合することができる。本発明に開示される被検物センサ要素、構造、ならびにこれらの要素の製造方法および使用方法は様々な層状センサ構造を確立するのに用いることができる。本発明のそれらのセンサは驚くべき柔軟性と汎用性、特性を有し、広範囲の様々な被検物種を試験するように広く様々なセンサ形態を設計することが可能である。本発明の典型的な実施形態において、被検物濃度の処理可能な信号への変換は電気化学的手段による。これらの変換器は当分野に既知の任意の広い様々な電流計、電位計、または電気伝導度計に基づくセンサを含むことができる。さらに、本発明のセンサの微細加工技術および材料は、実質的に非平面状に、または代りに実質的に平面状に作製された他の種類の変換器(例えば、音波検出デバイス、サーミスター、ガス検出電極、電界効果トランジスタ、光およびエバネッセント場(evanescent field)導波器等)にも応用することができる。一般に各種類の変換器または生物センサを用いることのできる生物センサならびに分析用途に展開することのできる変換器の有用な概論および一覧は、クリストファー R.ローヴェ(Christopher R.Lowe)によるTrends in Biotech.1984、2(3)、59〜65の記事に見られる。
【0019】
以下に本発明の特定の態様を詳細に論じる。
【0020】
(I)本発明の典型的な被検物センサ、センサ要素およびセンサ形態
(A)典型的なセンサ形態の図示
図2は本発明の典型的なセンサ構造100の断面を示す。センサは、センサ構造を製造する本発明の方法に従って互いに配置された、様々な伝導性および非伝導性構成要素の複数の層から形成される。図2に示した実施形態はセンサ100を支持するためのベース層102を含む。ベース層102はセラミックまたはポリイミド基板などの材料から作ることができ、自立型またはさらに当分野で既知の他の材料によって支持することができる。本発明の実施形態は、ベース層102上に配置された伝導層104を含む。典型的に、伝導層104は1つ以上の電極を含む。作動センサ100は、典型的に作用電極、対電極、および参照電極などの複数の電極を含む。また、他の実施形態は、複数の機能を有する電極、例えば、参照電極と対電極の両方として機能するものなども含むことができる。また、さらに他の実施形態は、センサ上に形成されない分離した参照要素を用いることもできる。典型的に、これらの電極は互いに近接して配置されるが、互いに電気的に絶縁される。
【0021】
以下で詳細に論じるように、伝導層104は多くの既知の技術および材料を用いて施すことができる。センサの電気回路は、典型的に、配置された伝導層104を所望の伝導路のパターンにエッチングすることによって画定される。センサ100用の典型的な電気回路は、隣接端部に接触パッドを形成する領域、および末端部にセンサ電極を形成する領域を備える2個またはそれ以上の隣接する伝導路を含む。ポリマコーティングなどの電気絶縁カバー層106は典型的にセンサ100の部分に配置される。絶縁保護カバー層106として使用するために許容できるポリマコーティングは、シリコーン化合物などの非毒性生体適合性ポリマ、ポリイミド類、生体適合性ハンダマスク、エポキシアクリラートコポリマ等を含むことができるが、これらに制限されない。本発明のセンサにおいて、カバー層106を通して1つ以上の露出された領域または孔108を作って、伝導層104を外部環境に開口し、例えばグルコースなどの被検物をセンサの層に浸透させ、検出要素によって検出することが可能である。孔108は、レーザーアブレーション、化学的加工またはエッチングまたはフォトリソグラフ現像等を含む多くの技術によって形成することができる。本発明のいくつかの実施形態において、製造の間に、第2のフォトレジストを保護層106の上に塗布し、孔108(1つ又は複数)を形成するために除去される保護層の領域を画定することができる。また、露出された電極および/または接触パッドは、追加のめっき加工などの二次加工を行い(例えば孔108を通して)、伝導領域の表面を調製し、および/または強化することができる。
【0022】
図2に示したセンサ形態において、被検物検出層110(センサ化学反応層(sensor chemistry layer)であることが好ましく、これは、この層の材料が化学反応を起こして伝導層によって検出することのできる信号を生成することを意味する)は、伝導層104上の1つ以上の露出電極の上に配置される。センサ化学反応層110は酵素層であることが好ましい。センサ化学反応層110は、酸素および/または過酸化水素を生成することの可能な酵素、例えば、グルコースオキシダーゼ酵素を含むことが最も好ましい。場合によって、センサ化学反応層中の酵素は、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンなどの第2担体タンパク質と組み合わされる。例示的実施形態において、センサ化学反応層110中のグルコースオキシダーゼなどの酵素はグルコースと反応し、次いで電極の電流を変化させる化合物である過酸化水素を生成する。この電流変化は、過酸化水素の濃度に依存し、過酸化水素の濃度はグルコース濃度に相関があるので、この電流の変化を監視することによってグルコース濃度を求めることができる。本発明の特定の実施形態において、過酸化水素はアノードである作用電極(本明細書ではアノード作用電極とも呼ぶ)で酸化され、得られる電流は過酸化水素の濃度に比例する。過酸化水素濃度を変化させることによって生じるそれらの電流変化は、汎用センサ電流計バイオセンサ検出器などの様々なセンサ検出器装置の任意の1つ、またはMedtronic MiniMed製のグルコース監視デバイスなど、当分野に既知の様々な類似のデバイスによって監視することができる。
【0023】
被検物検出層110は伝導層の一部または伝導層の全体に施すことができる。典型的に被検物検出層110は、アノードまたはカソードとすることのできる作用電極に配置される。場合によって、被検物検出層110は対電極および/または参照電極に配置することができる。典型的に、被検物検出層110は、当分野に従来記述されたセンサに見られるものと比べて比較的薄く、例えば、厚さ1、0.5、0.25、または0.1ミクロン未満であることが好ましい。以下で詳細に論じるように、薄い被検物検出層110を生成する好ましい方法は、スピンコーティング工程、浸漬および乾燥工程、低剪断噴霧工程、インクジェット印刷工程、シルクスクリーン工程などを含む。薄い被検物検出層110はスピンコーティング工程を用いて施すのが最も好ましい。
【0024】
典型的に、被検物検出層110は、1つ以上の追加の層でコーティングされる。場合によって、1つ以上の追加の層は、被検物検出層110の上に配置されたタンパク質層116を含む。典型的に、タンパク質層116はアルブミンなどのタンパク質を含む。タンパク質層116は、ヒト血清アルブミンを含むことが好ましい。本発明の好ましい実施形態において、追加の層は被検物検出層110の上に配置された被検物変化層112を含み、被検物検出層110との被検物の接触を調節する。例えば、被検物変化膜層112は、被検物検出層中に存在するグルコースオキシダーゼなどの酵素と接触するグルコース量を調節するグルコース制限膜を含むことができる。それらのグルコース制限膜は、それらの目的に適していることが知られている広く様々な材料、例えば、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン化合物、ポリウレタン、ポリウレアセルロースアセタート、Nafion(登録商標)、ポリエステルスルホン酸(例えば、Kodak AQ)、ヒドロゲルまたは当業者に既知の他の適切な親水性膜から作ることができる。
【0025】
本発明の典型的な実施形態において、それらの接触および/または接着を容易にするために、図2に示すように接着促進層114が被検物変化層112と被検物検出層110の間に配置される。本発明の特定の実施形態において、それらの接触および/または接着を容易にするために、図2に示すように接着促進層114は被検物変化層112とタンパク質層116の間に配置される。接着促進層114は、それらの層間の接合を容易にする、当分野に既知の広く様々な材料の任意の1種から作ることができる。接着促進層114はシラン化合物を含むことが好ましい。代替の実施形態において、被検物検出層110中のタンパク質等の分子は十分架橋することができ、または接着促進層114を存在させずに、被検物変化膜層112を直接被検物検出層110に接触して配置可能なように調製することができる。
【0026】
(B)典型的な被検物センサ層
<ベース層>
本発明のセンサは、典型的にベース層(例えば、図2中の要素102参照)を含む。用語「ベース層(base layer)」は、本明細書中、技術的に許容された術語に従って用いられ、装置中に、互いに頂部に積み重ねられて機能センサを含む複数の層のための支持母材を典型的に提供する層を指す。好ましい形において、ベース層は絶縁材料(例えば、電気絶縁性および/または非水浸透性)の薄膜シートを含む。このベース層は、非水浸透性及び密閉性などの望ましい品質を有する広く様々な材料から作ることができる。好ましい材料は、セラミック及びポリイミド基板等を含む。ベース層は自立性材料または当分野に既知であるように、さらに他の材料によって支持することができる。図2に示したセンサ形態の一実施形態において、ベース層102はセラミックを含む。代替の実施形態において、セラミックベースは主としてAl2O3(例えば96%)の組成物を含む。埋没可能なデバイスとともに用いるために、アルミナを絶縁性ベース層として使用することは、本願に引用して援用される米国特許第4,940,858号、第4,678,868号、第6,472,122号に開示される。本発明のベース層は当分野に既知の他の要素、例えば密閉性ビア(vias)をさらに含むことができる(例えば、国際公開第WO03/023388号参照)。特定のセンサ設計に応じて、ベース層は比較的厚い層とすることができる(例えば、25ミクロンよりも厚い)。代りに、例えば約25ミクロン未満のアルミナなど、薄い層の非伝導性セラミックを用いることができる。
【0027】
<伝導層>
本発明の電気化学的センサは、典型的に、分析すべき被検物またはその副生成物(例えば、酸素および/または過酸化水素)に接触するための少なくとも1個の電極を含む、ベース層上に配置された伝導層を含む(例えば、図2の要素104参照)。用語「伝導層(conductive layer)」は、本明細書中、技術的に許容された術語に従って用いられ、検出可能信号の測定およびこれを検出装置に伝導することのできる、電極など電気的に伝導性のセンサ要素を指す。この例は、被検物の濃度変化を受けない参照電極に比較した、被検物またはその副生成物の濃度変化が被検物検出層110中に存在する組成物(例えば、グルコースオキシダーゼ酵素)と反応するとき用いられる共反応体(例えば、酸素)、またはこの相互作用の反応生成物(例えば過酸化水素)などの刺激への暴露に応答する電流の増加または減少を測定することのできる伝導層である。それらの要素の例は、過酸化水素または酸素などの分子の濃度が変動する中で、検出可能な信号変動を生成することのできる電極を含む。典型的に、伝導層中のこれらの電極の1種は作用電極であり、非腐食性金属またはカーボンから作ることができる。カーボン作用電極は融解状(vitreous)またはグラファイト状とすることができ、固体またはペーストから作ることができる。金属製作用電極は白金または金を含む白金族金属、または二酸化ルテニウムなど非腐食性の金属伝導性酸化物から作ることができる。代わりに電極は銀/塩化銀電極組成物を含むことができる。作用電極はワイヤまたは例えば、コーティングまたは印刷によって基板に塗工された薄い伝導性膜とすることができる。典型的に、金属製またはカーボン導体の表面の一部だけが被検物含有溶液に電解質的に接触している。この部分は電極の作用表面と呼ばれる。電極の残る表面は典型的に電気絶縁カバー層106によって溶液から絶縁される。この保護カバー層106を生成するための有用な材料の例は、ポリイミド類、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレンなどのポリマ、およびポリシロキサン類などのシリコーン類である。
【0028】
作用電極に加えて、本発明の被検物センサは、典型的に、参照電極または参照電極と対電極の組み合わせ(擬似参照電極または対/参照電極とも呼ばれる)を含む。センサが対/参照電極を持たないならば、作用電極と同じ材料または異なる材料から作ることのできる分離した対電極を含むことができる。本発明の典型的なセンサは1つ以上の作用電極、および1つ以上の対電極、参照電極、および/または対/参照電極を有する。本発明のセンサの一実施形態は、2個、3個、または4個またはそれ以上の作用電極を有する。センサ中のこれらの作用電極は一体的に接続することができ、またはそれらは分離して保持することができる。
【0029】
典型的に、インビボ使用において、本発明の被検物センサは、哺乳動物の皮膚の皮下に埋没されて哺乳動物の血液などの体液に直接接触する。代りに、センサは哺乳動物の体内の他の領域、例えば腹膜空間に埋没することができる。複数の作用電極が用いられるとき、それらは一緒にまたは体内の異なる位置に埋没することができる。また、対電極、参照電極、および/または対/参照電極も哺乳動物の体内の作用電極(1つ又は複数)の近くまたは他の位置に埋没することができる。
【0030】
<被検物検出層>
本発明の電気化学センサはセンサの電極上に配置された被検物検出層を含む(例えば、図2の要素110参照)。用語「被検物検出層(analyte sensing layer)」は、本明細書において技術的に許容された術語に従って用いられ、被検物センサ装置によって検出すべき被検物の存在を認識し、または反応することのできる材料を含む層を指す。典型的に、被検物検出層中のこの材料は、検出すべき被検物と相互作用した後、典型的に伝導層の電極によって検出可能な信号を生成する。これに関して、被検物検出層および伝導層の電極は、連係して被検物センサに付属する装置によって読み取られる電気信号を生成する作用を行う。典型的に、被検物検出層は分子と反応し、および/または分子を生成することのできる酵素、例えば、グルコースオキシダーゼ酵素を含み、その濃度変化(例えば、酸素および/または過酸化水素)は伝導層の電極での電流変化を測定することによって測定することができる。過酸化水素などの分子を生成することのできる酵素は、当分野に既知の多くの方法によって電極上に配置することができる。被検物検出層はセンサの様々な電極の全体または一部にコーティングすることができる。この意味で、被検物検出層は電極を同じ程度にコーティングすることができる。代りに被検物検出層は、異なる電極を異なる程度に、例えば、コーティングされた作用電極の表面が対電極および/または参照電極のコーティングされた表面よりも大きくコーティングすることができる。
【0031】
本発明のこの要素の典型的なセンサの実施形態は、第2タンパク質(例えば、アルブミン)に対して固定した比率(例えば、典型的に、グルコースオキシダーゼの安定化特性用に最適化されたもの)で混合された酵素(例えば、グルコースオキシダーゼ)を用い、次いで、電極の表面に塗工されて薄い酵素層を形成する。典型的な実施形態において、被検物検出層はGOxとHSAの混合物を含む。GOxを有する被検物検出層の典型的な実施形態では、GOxは検出環境(例えば、哺乳動物の体)に存在するグルコースと図1に示した反応に従って反応して過酸化水素を発生し、このようにして発生した過酸化水素は伝導層中の作用電極でアノード的に検出される。例えば、米国特許出願第10/273,767号(本願に引用して援用される)で論じられたように、極めて薄いセンサ化学反応層が好ましく、スピンコーティングなど、当分野に既知の方法によって電極マトリックスの表面に施すことができる。例示的な実施形態において、グルコースオキシダーゼ/アルブミンはアルブミンが約0.5重量%〜10重量%の範囲で存在する生理溶液中(例えば、中性pHのリン酸塩緩衝塩水)で調製される。場合によって、被検物検出層上に形成された安定化グルコースオキシダーゼ層は当分野で前に記述されたものと比較して非常に薄く、例えば、2、1、0.5、0.25、または0.1ミクロン未満の厚さである。本発明の一例示的実施形態は、電極の表面をコーティングするのに安定化グルコースオキシダーゼ層を用い、グルコースオキシダーゼは担体タンパク質と固定比率で層内に混合され、グルコースオキシダーゼと担体タンパク質は層全体に実質的に均一に分配される。層は厚さ2ミクロン未満であることが好ましい。驚くべきことに、これらの極めて薄い被検物検出層を有するセンサは、より厚いコーティングを有するセンサを超える向上した寿命、直線性、不変性ならびに雑音対信号比を含む材料特性を有する。特定の科学的理論には拘束されないが、極めて薄い被検物検出層を有するセンサは、より厚い酵素層中で層内の反応性酵素の一部分だけが検出すべき被検物に接近することができるので、より厚い層のものに比べて驚くべき向上した特性を有すると考えられる。グルコースオキシダーゼを用いるセンサにおいて、電気的堆積によって製造された厚いコーティングは、厚い酵素層の反応性界面で発生した過酸化水素がセンサ表面に接触し、それによって信号を発生する能力を妨害する。
【0032】
上述のように、酵素および第2タンパク質は典型的に架橋した母材を形成するために処理される(例えば、タンパク質混合物に架橋剤を加えることによって)。当分野で既知のように、保持された酵素の生物学的活性、その機械的および/または動作安定性などの要因を変化させるように架橋条件を操作することができる。例示的架橋手順は、本願に引用して援用されている米国特許出願第10/335,506号及びPCT公開第WO03/035891号に記述される。例えば、制限されないが、グルタルアルデヒドなどのアミン架橋剤をタンパク質混合物に加えることができる。タンパク質混合物へ架橋剤を添加するとタンパク質ペーストが生成される。加えられる架橋剤の濃度はタンパク質混合物の濃度に応じて変化することができる。グルタルアルデヒドは好ましい架橋剤であるが、スベリン酸ジサクシンイミジル(DSS)などのアミン活性の同一機能の架橋剤を非制限的に含んで、他の架橋剤を使用することができ、またはグルタルアルデヒドの代りに使用することができる。他の例は1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)であり、これは長さゼロの架橋剤である。EDCはカルボン酸とアミン基の間にアミド結合を形成する。当業者に明らかな他の適切な架橋剤を用いることができる。
【0033】
本発明の異なる実施形態では、GOxおよび/または担体タンパク質濃度を変化させることができる。例えば、GOx濃度は約50mg/ml(約10,000U/ml)から約700mg/ml(約150,000U/ml)の範囲内とすることができる。GOx濃度は約115mg/ml(約22,000U/ml)であることが好ましい。それらの実施形態において、HSA濃度は、GOx濃度に応じて、約0.5%〜30%(w/v)の間で変化することができる。HSA濃度は約1〜10%w/vであることが好ましく、約5%w/vであることが最も好ましい。本発明の代替の実施形態において、コラーゲンまたはBSAもしくはこれらの内容で用いられる他の構造タンパク質をHSAの代りにまたは追加して用いることができる。被検物検出層中の好ましい酵素としてGOxを論じたが、グルコースデヒドロゲナーゼまたはヘキソキナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ラクテートオキシダーゼなどを非制限的に含んで、他のタンパク質および/または酵素も使用することができ、またはGOxの代りに使用することができる。当業者に明らかな他のタンパク質および/または酵素も使用することができる。さらに、HSAは実施形態例に用いられるが、HSAの代わりにまたは追加して、BSA、コラーゲンなどの他の構造タンパク質を用いることができよう。
【0034】
GOx以外の酵素を用いる実施形態では、これらの本明細書で論じた濃度以外の濃度を用いることができる。例えば、使用される酵素に応じて、約10重量%から70重量%の範囲の濃度が適切である。濃度は使用される特定の酵素に依存するだけでなく、得られるタンパク質母材の望ましい特性に応じて変化することができる。例えば、タンパク質母材が診断能力に用いられるならば所定の濃度を用いることができるが、所定の構造特性が望ましければ、異なる濃度を用いることができる。当業者であれば、どの濃度(および、どの酵素またはタンパク質)が望ましい結果を生むかを求める実験を通して、用いられる濃度を変化させることができることを理解するであろう。
【0035】
上述のように、本発明の好ましい実施形態において、被検物検出層は、電気伝導性要素(例えば、酸素および/または過酸化水素濃度の変化を検出する電極)によって検出することのできる信号(例えば、酸素および/または過酸化水素濃度の変化)を生成できる組成物(例えば、グルコースオキシダーゼ)を含む。しかし、他の有用な被検物検出層は、その存在を検出すべき目標被検物と相互作用した後に電気伝導性要素によって検出することのできる検出可能な信号を生成できる任意の組成物から形成することができる。好ましい実施形態において、組成物は検出すべき被検物との反応の際に過酸化水素濃度を変化させる酵素を含む。代りに、組成物は検出すべき被検物との反応の際に酸素濃度を変化させる酵素を含む。この意味で、生理学的被検物との反応において過酸化水素および/または酸素を使用しまたは生成する広く様々な酵素が当分野に既知であり、これらの酵素は容易に被検物検出層組成物中に組み込むことができる。当分野に既知の様々な他の酵素は、本明細書に述べた好ましいセンサ設計中に組み込まれた電極などの電気伝導性要素によってその変化を検出することのできる化合物を生成および/または使用することができる。それらの酵素は、例えば、リチャード F.テーラー(Richard F.Taylor)(Editor)Publisher:マーセル デッカー(Marcel Dekker);(1991年1月7日)によるProtein Immobilization:Fundamentals and Applications(Bioprocess Technology、Vol 14)の表1、15〜29ページ、および/または表18、111〜112ページに詳細に記載された酵素を含み、その内容の全体は本願に引用して援用される。
【0036】
他の有用な被検物検出層は抗体を含むように形成することができ、その目標被検物との相互作用は、その存在を検出すべき目標被検物と相互作用した後に電気伝導性要素によって検出することのできる検出可能な信号を生成することができる。例えば、米国特許第5,427,912号(本願に引用して援用される)は、サンプル中の被検物濃度を電気化学的に求めるための抗体に基づく装置について記述する。このデバイスにおいて、試験すべきサンプルと、酵素受容体ポリペプチドと、被検物類似物(酵素ドナーポリペプチド複合体)に結合した酵素ドナーポリペプチドと、標識を付けた基質と、測定すべき被検物のための特定の抗体とを含む混合物が形成される。被検物および酵素ドナーポリペプチド複合体は抗体に競合的に結合する。酵素ドナーポリペプチド複合体が抗体に結合していないとき、それは自発的に酵素受容体ポリペプチドと結合して活性酵素複合体を形成する。次いで、活性酵素は標識付き基質を加水分解し、電気的に活性な標識を発生させ、次いでこれは電極の表面で酸化することができる。電気的に活性な化合物の酸化から得られる電流は測定することができ、サンプル中の被検物の濃度と相関させることができる。米国特許第5,149,630号(本願に引用して援用される)は、少なくとも1種の成分を酵素標識した、リガンド(例えば、抗原、ハプテンまたは抗体)の電気化学的特異結合試験(electrochemical specific binding assay)について記述しており、これは基質の反応に伴う酵素基質と電極の間の電子移動が、錯体の形成または任意のリガンド錯体の置換によって乱される程度を、結合しない酵素標識成分に対して測定するステップを含む。電子の移動は、酵素からの電子を受容し、それらを電極に与える、またはその逆を行うことのできる電子移動媒体(例えば、フェロセン)、または電極近傍に酵素を保持してそれ自体正式に電荷を受取らない電子移動促進剤によって助けられる。米国特許第5,147,781号(本願に引用して援用される)は、ラクテートデヒドロゲナーゼ酵素−5(LDH5)の測定のための試験、およびそれらの定量測定のための生物センサについて記述する。試験は、この酵素が基質の乳酸およびニコチン−アミンアデニンジヌクレオチド(NAD)と相互作用してピルビン酸と還元生成物のNADを生成する相互作用に基づく。抗LDH5抗体は適切なガラス状カーボン電極に結合させ、これを基質を含有するLDH5に接触させ、洗浄し、NAD溶液中に挿入し、電流計システムに接続し、乳酸が加えられ、LDH5の量を示す電流変化が測定される。米国特許第6,410,251号(本願に引用して援用される)は、特異結合対の構成成分の1つ、例えば、抗原/抗体対中の抗原を、標識検出のための酸化還元反応と一緒に抗原と抗体間の結合などの特異結合を用いることによって検出しまたは試験する装置および方法について記述しており、検出表面領域を有する酸素マイクロ電極が用いられる。さらに、米国特許第4,402,819号(本願に引用して援用される)は、希釈液体血清サンプル中の抗体(被検物として)を定量測定するための抗体選択性電位計電極について記述しており、その中の予め選択されたカチオンの浸透性に影響を与えるイオン担体を結合した抗原を組み込む不溶性膜が用いられ、その浸透性は分析中の特定の抗体濃度の関数であり、分析の対応する方法である。関連の開示については、本願に引用して援用される米国特許第6,703,210号、第5,981,203号、第5,705,399号、および第4,894,253号も参照されたい。
【0037】
酵素および抗体に加えて、本明細書に開示されるセンサの被検物検出層中に用いられる他の例示的材料は、特定の種類の細胞または細胞成分(例えば、ポリペプチド類、炭水化物等)に結合するポリマ、単一ストランドDNA、抗原等を含む。検出可能な信号は、例えば、所望の被検物(例えば、細胞)の色彩変化または認識し得る蓄積などの光学的に検出可能な変化とすることができる。また、検出要素は、本質的に非反応性の材料(すなわち、対照)から形成することができる。前述の代替のセンサ要素は、例えば、細胞選別試験、およびウィルス(HIV、C型肝炎等)、バクテリア、原生動物などの病原性生物の存在を試験するために用いるセンサに含まれることが有利である。
【0038】
また、外部環境に存在し、それ自体電極で測定可能な電流変化を生成することのできる
被検物を測定する被検物センサも考えられる。それらの被検物を検出するセンサにおいて、被検物検出層は任意とすることができる。
【0039】
<タンパク質層>
場合によって、本発明の電気化学的センサは、被検物検出層と被検物変化層(例えば、図2の要素116参照)の間に配置されたタンパク質層を含む。用語「タンパク質層(protein layer)」は、本明細書において技術的に許容された術語に従って用いられ、被検物検出層および/または被検物変化層との相溶性で選択された担体タンパク質等を含む層を指す。典型的な実施形態において、タンパク質層はヒト血清アルブミンなどのアルブミンを含む。HSA濃度は約0.5%〜30%(w/v)の間で変化することができる。HSA濃度は約1〜10%w/vであることが好ましく、約5%w/vであることが最も好ましい。本発明の代替の実施形態において、これらの意味で用いられるコラーゲンまたはBSAもしくは他の構造タンパク質は、HSAの代わりに、またはHSAに加えて使用することができる。この層は、典型的に当分野で許容された手順に従って被検物検出層の上に架橋される。
【0040】
<接着促進層>
本発明の電気化学的センサは、1つ以上の接着促進(AP)層を含むことができる(例えば、図2の要素114参照)。用語「接着促進層(adhesion promoting layer)」は、本明細書において技術的に許容された術語に従って用いられ、センサ中の隣接層間の接着を促進する能力について選択された材料を含む層を指す。典型的に、接着促進層は、被検物検出層と被検物変化層の間に配置される。接着促進層は、任意選択的なタンパク質層と被検物変化層の間に配置されるのが好ましい。接着促進層は、それらの層間の接合を容易にする、当分野で既知の広く様々な材料の任意の1種から作ることができ、当分野で知られた広く様々な方法の任意の1つによって施すことができる。接着促進層はγ−アミノプロピルメトキシシランなどのシラン化合物を含むことが好ましい。
【0041】
接着促進するためのシランカップリング剤、特に式R’Si(OR)3(R’は典型的に末端アミンを有する脂肪族基であり、Rは低級アルキル基である)のものを使用することが当分野で知られている(例えば、本願に引用して援用される米国特許第5,212,050号参照)。例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのシランおよびグルタルアルデヒドを段階的工程に用いて、ウシ血清アルブミン(BSA)とグルコースオキシダーゼ(GOx)が電極表面に付着および共架橋された、化学的に修飾された電極は当分野に既知である(例えば、ヤオ T.(Yao,T.)Analytica Chim.Acta 1983、148、27〜33を参照されたい)。
【0042】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、接着促進層は、隣接層にも存在することができ、グルコースなどの被検物が被検物変化層を通って拡散するのを制限する働きをするポリジメチルシロキサン(PDMS)化合物など、1つ以上の化合物をさらに含む。例示的実施形態において、処方は0.5%〜20%のPDMSを含み、5〜15%のPDMSが好ましく、10%のPDMSが最も好ましい。本発明のいくつかの実施形態において、接着促進層は、被検物変化層などの隣接層に存在するシロキサン部を架橋する能力のために選択された薬品を含む。本発明の密接に関連する実施形態において、接着促進層は、被検物検出層および/またはタンパク質層などの隣接層に存在するタンパク質のアミンまたはカルボキシル部を架橋する能力のために選択された薬品を含む。
【0043】
<被検物変化層>
本発明の電気化学的センサは、センサ上に配置された被検物変化層を含む(例えば、図2の要素112参照)。用語「被検物変化層(analyte modulating layer)」は、本明細書において技術的に許容された術語に従って用いられ、典型的にセンサ上に膜を形成する層を指し、グルコースなどの1つ以上の被検物の層を通る拡散を変化させる働きをする。本発明のいくつかの実施形態において、被検物変化層は、グルコースなどの1つ以上の被検物の層を通る拡散を防止または制限する働きをする被検物制限膜である。本発明の他の実施形態において、被検物変化層は1つ以上の被検物の層を通る拡散を容易にする働きをする。場合によって、それらの被検物変化層は1種の分子(例えば、グルコース)が層を通って拡散するのを防止または制限し、同時に他の種の分子(例えば、O2)が層を通って拡散するのを許容しまたは容易にするために形成することができる。
【0044】
グルコースセンサに関しては、既知の酵素電極において、血液からのグルコースおよび酸素、ならびにアスコルビン酸および尿酸などのいくつかの妨害剤はセンサの主要膜を通って拡散する。グルコース、酸素、および妨害剤が被検物検出層に到達すると、グルコースオキシダーゼなどの酵素は触媒作用を行ってグルコースを過酸化水素とグルコノラクトンへ変換する。過酸化水素は被検物変化層を通り拡散して戻ることができ、または電極に拡散し、反応して酸素およびプロトンを形成し、グルコース濃度に比例する電流を発生することができる。センサ膜組み立て体は、そこを通って選択的にグルコースを通過させる通路を含んでいくつかの機能を有する。この意味において、好ましい被検物変化層は、水、酸素、および少なくとも1種の選択された被検物が通過でき、水を吸収する能力を有し、膜が水溶性の親水性ポリマを有する半浸透性膜であることが好ましい。
【0045】
様々な例示的被検物変化組成物は当分野に既知であり、例えば、米国特許第6,319,540号、第5,882,494号、第5,786,439号、第5,777,060号、第5,771,868号、および第5,391,250号に記述されており、各々の開示は本願に引用して援用される。その中に記述されたヒドロゲルは、周囲に水層を提供するのが有利な、様々な埋没可能なデバイスに特に有用である。本発明の好ましい実施形態において、被検物変化組成物はPDMSを含む。本発明のいくつかの実施形態において、被検物変化層は隣接層に存在するシロキサン部を架橋する能力のために選択された薬品を含む。本発明の密接に関連する実施形態において、接着促進層は隣接層に存在するタンパク質のアミンまたはカルボキシル部を架橋する能力のために選択された薬品を含む。
【0046】
<カバー層>
本発明の電気化学的センサは、典型的に電気絶縁保護層である1つ以上のカバー層を含む(例えば、図2の要素106参照)。典型的に、それらのカバー層は被検物変化層の少なくとも1部に配置される。絶縁保護カバー層としての使用が許容されるポリマコーティングは、シリコーン化合物などの非毒性の生体適合性ポリマ、ポリイミド類、生体適合性ハンダマスク、エポキシアクリラートコポリマ等を含むが制限されない。さらに、これらのコーティングは光像形成可能とすることができ、伝導層を通して開口をフォトリソグラフ的に形成するのを容易にする。典型的なカバー層はスピンされたシリコーンを含む。当分野に既知であるように、この層は市場で入手可能なRTV(室温硬化された)シリコーン化合物とすることができる。この意味において、典型的な化学物質はポリジメチルシロキサン(アセトキシ系)である。
【0047】
本発明の様々な例示的実施形態およびその特徴を以下に詳細に論じる。
【0048】
(C)被検物センサ装置の例示的実施形態および関連特性
本明細書に開示される被検物センサ装置は多くの実施形態を有する。本発明の一般的な実施形態は哺乳動物の内部に埋没するための被検物センサ装置である。被検物センサは典型的に哺乳動物の体内に埋没可能に設計されるが、センサはいかなる特定の環境にも制限されず、代りに広く様々な状況で、例えば、血液全体、リンパ液、血漿、血清、唾液、尿、大便、汗、粘液、涙、脳脊髄液、鼻分泌液、子宮または膣分泌液、精液、胸膜液、羊水、腹膜液、中耳液、関節液、胃液などの生物学的流体を含む殆ど液体のサンプルの分析に使用することができる。さらに、固体または乾燥されたサンプルを適切な溶媒に溶解して分析に適した液体混合物を提供することができる。
【0049】
上述のように、本明細書に開示されるセンサの実施形態は1つ以上の生理学的環境中の対象の被検物を検出するのに使用することができる。例えば、いくつかの好ましい実施形態において、センサは、典型的に皮下センサで行われるように、間質液に直接接触することができる。また、本発明のセンサは、間質グルコースを皮膚を通して抽出し、センサに接触させる、皮膚表面系の一部とすることもできる(例えば、本願に引用して援用される米国特許第6,155,992号、第6,706,159号を参照されたい)。他の実施形態において、センサは例えば典型的に血管内センサで行われるように血液と接触することができる。本発明のセンサの実施形態は、様々な状況での使用に適合するものをさらに含む。いくつかの好ましい実施形態において、例えば、センサは救急使用者によって用いられるものなど、移動状況下で使用するために設計することができる。代りに、センサは、医療装備における使用に適合させたものなど、静止状況下で使用するために設計することができる。それらのセンサの実施形態は、例えば、病院患者の1つ以上の生理学的環境下に存在する1つ以上の被検物を監視するのに用いられるものを含む。
【0050】
また、本発明のセンサは当分野で既知の広く様々な医療システムにも組み込むことができる。本発明のセンサは、例えば、使用者の体内に注入される医薬品の速度を制御するように設計された閉ループ注入システムに使用することができる。それらの閉ループ注入システムは、センサ、および制御器への入力を発生し、送達システムを作動させる付属計器(例えば、医薬品注入ポンプによって送達される投与量を計算するもの)を含むことができる。それらの意味において、センサに付属する計器は送達システムに指令を伝達し、遠隔制御するのに用いることもできる。センサは、間質液に接触して使用者の体中のグルコース濃度を監視する皮下センサとすることが好ましく、送達システムによって使用者の体中に注入される液体はインスリンを含む。例示的システムは、例えば、米国特許第6,558,351号、および第6,551,276号、PCT出願番号第US99/21703号、および第US99/22993号、ならびに国際公開第WO2004/008956号、および第WO2004/009161号に開示されており、これらの全ては本願に引用して援用される。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態は過酸化物を測定し、皮下埋没および静脈内埋没、ならびに様々な非脈管領域中への埋没を含んで、哺乳動物の様々な部位に埋没するのに適している有利な特徴を有する。非脈管領域中への埋没を可能にする過酸化物センサの設計は、非脈管領域に埋没された酸素センサに発生する酸素ノイズに伴う問題のため、酸素を測定するいくつかのセンサ装置設計よりも有利である。例えば、それらの埋没された酸素センサ装置設計において、参照センサでの酸素ノイズはノイズ対信号比を損ない、その結果、この環境におけるそれらの安定なグルコース読み取りの能力が乱される。したがって、本発明の過酸化物センサは、非脈管領域中のそれらの酸素センサに観察される困難さを克服する。
【0052】
本発明のいくつかの過酸化物センサの実施形態は、哺乳動物に30日を超える期間埋没するのに適した、有利に長期的な、または「恒久的な」センサをさらに含む。詳細には、当分野で既知のように、(例えば、ISO10993、Biological Evaluation of Medical Devices参照)本明細書に述べるセンサなどの医療デバイスは埋没期間に基づいて3つのグループに分類することができる。(1)「制限された」(<24時間)、(2)「長期の」(24時間〜30日)、および(3)「恒久的な」(>30日)。本発明の好ましい実施形態において、本発明の過酸化物センサの設計はこの範疇による「恒久的」埋没、すなわち>30日を可能にする。本発明の関連の実施形態において、本発明の過酸化物センサの安定性の高い設計は、この意味で2、3、4、5、6、または12カ月、もしくはそれ以上、埋没されたセンサの機能を継続可能にする。
【0053】
一般に、被検物センサ装置構造は、ベース層およびベース層の上に配置された1つ以上の電極を含む伝導層を含む。例えば、伝導層は作用電極、参照電極および/または対電極を含むことができる。これらの電極は好ましい設計に応じて近接して配置することも、または代りに離れて配置することもできる。センサ装置設計は、いくつかの電極(例えば、作用電極)が、センサ装置中で検出すべき被検物を含む溶液に暴露(例えば、孔を経由して)できるようにされる。センサ装置設計は、いくつかの電極(例えば、参照電極)が、センサ装置中で検出すべき被検物を含む溶液に暴露されないようにされる。
【0054】
典型的に、被検物センサ装置は、伝導層上に配置された、典型的に作用電極の一部または全体を被覆する被検物検出層を含む。この被検物検出層は検出すべき被検物の存在下で、伝導層中の作用電極の電流を検出可能なように変化させる。本明細書に開示されるように、この被検物検出層は典型的に酵素または抗体分子等を含み、対象の被検物と反応して分子の濃度(例えば、図1の反応式に示したように酸素および/または過酸化水素)を変化させ、作用電極の電流を変化することができる。例示的被検物検出層はグルコースオキシダーゼ(例えば、グルコースセンサに用いられる)またはラクテートオキシダーゼ(例えば、ラクテートセンサに用いられる)を含む。典型的に、被検物検出層は被検物検出化合物(例えば、酵素)と実質的に固定比率の担体タンパク質をさらに含み、被検物検出化合物および担体タンパク質は被検物検出層全体に実質的に均一に分配される。被検物検出層は、例えば1、0.5、0.25、または0.1ミクロン未満の非常に薄い厚さを有することが好ましい。特定の科学的理論には拘束されないが、典型的に電気的堆積によって形成されたより厚い層に比べると、それらの薄い被検物検出層を有するセンサは、電気的堆積が厚さ3〜5ミクロンの酵素層を形成してコーティング層中の反応性酵素の一部のみが検出すべき被検物に接近し得るので、驚くほど向上した特性を有すると考えられる。さらに、電気的堆積手順によって形成されたそれらの厚いグルコースオキシダーゼペレットは機械的安定性に劣る(例えば、亀裂の傾向)ことが観察され、さらに実際に使用するための調製に長期間かかり、埋没が可能になるまでに典型的に数週間の試験を必要とする。これらの問題は、本明細書に述べる薄い層の酵素コーティングには観察されないので、これらの薄いコーティングは本発明の好ましい実施形態である。
【0055】
例えば、グルコースオキシダーゼを用いるセンサにおいて、電気的堆積によって形成された厚いコーティングは、厚さ3〜5ミクロンの酵素層の反応性界面で生成された過酸化水素がセンサ表面に接触しそれによって信号を発生する能力が妨害される。さらに、その厚いコーティングのためにセンサ表面に到達することのできない過酸化水素は、センサからセンサが配置されている環境中に拡散することがあり、それによってそれらのセンサの感度および/または生体適合性を低下させる。さらに、特定の科学的理論には拘束されないが、それらの薄い被検物検出層を有するセンサは、スピンコーティング等の方法によってアルブミン(酵素層中のグルコースオキシダーゼを安定化するための担体タンパク質として用いられる)に対するグルコースオキシダーゼの酵素コーティング比率の正確な制御が可能になることから得られる、予期しない有利な特性を有すると考えられる。特に、グルコースオキシダーゼとアルブミンは異なる等電点を有するので、電気的堆積工程は、最適に求めた酵素対担体タンパク質比率が電気的堆積工程中に悪化し、さらにグルコースオキシダーゼと担体タンパク質が配置された酵素層全体に実質的に均一に分配されない表面コーティングをもたらす。加えて、それらの薄い被検物検出層を有するセンサは、予期しない高速応答時間を有する。特定の科学的理論には拘束されないが、これらの驚くべき有利な特性は、薄い酵素層がより良好な作用電極表面への接近を可能にし、電極で電流を変化させる分子の大部分が電極表面に接近することを可能にすることからもたらされると考えられる。この意味で、本発明のいくつかの実施形態において、哺乳動物の体中に存在する被検物への暴露に応答する電流変化は、被検物が被検物センサに接触した15、10、5、または2分間内に電流計によって検出することができる。
【0056】
場合によって、被検物検出層は、その上、および典型的にこの被検物検出層と被検物変化層の間に配置されたタンパク質層を有する。タンパク質層内のタンパク質はウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンからなる群から選択されるアルブミンである。典型的に、このタンパク質は架橋される。特定の科学的理論には拘束されないが、この分離したタンパク質層はセンサ機能を高め、センサノイズ(例えば、スプリアス背景信号)を消去する1種のキャパシタとして作用することによって驚くべき機能上の利益を与えると考えられる。例えば、本発明のセンサにおいて、被検物検出層の酵素に接触することのできる被検物量を制御する層である、センサの被検物変化膜層の下にいくらかの湿気が形成されることがある。この湿気は縮小可能な層を作ることがあり、センサを使用する患者が動くと、センサ内で移動する。センサ内でそれらの層が移動すると、被検物検出層を通って移動するグルコースなどの被検物の通路が、実際の生理学的被検物濃度とは独立に変化し、それによってノイズを発生する。この意味で、タンパク質層はGOxなどの酵素を湿気層への接触から保護することによって、キャパシタとして働くことができる。このタンパク質層は、被検物検出層と被検物変化膜層間の接着の促進など、多数の追加の利点を与えることができる。代りに、この層の存在は過酸化水素などの分子に対してより大きな拡散路を与えることができ、それによって分子を電極検出要素に配置させ、センサ感度の向上に貢献する。
【0057】
典型的に、被検物検出層および/または被検物検出層上に配置されたタンパク質層は、その上に配置された接着促進層を有する。それらの接着促進層は被検物検出層と近接層、典型的に被検物変化層の間の接着を促進する。この接着促進層はγ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物を含むことが好ましく、様々なセンサ層間の最適化された接着を促進する能力、およびセンサを安定化する機能によって選択される。興味深いことに、それらのシラン含有接着促進層を有するセンサは、全体的な安定性の向上を含んで、予期しない特性を示す。さらに、シラン含有接着促進層は、センサを安定化する能力に加えて多数の有利な特性を提供し、例えば、妨害の排除ならびに1つ以上の所望の被検物の質量移動の制御に有利な役割を果たすことができる。
【0058】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、接着促進層は隣接層にも存在することのできるポリジメチルシロキサン(PDMS)化合物などの1つ以上の化合物をさらに含み、被検物変化層を通るグルコースなどの被検物の拡散を制限する働きをする。例えば、AP層へのPDMSの添加は、センサを製造するときAP層に発生する孔または空隙の可能性を除去する意味で有利になり得る。
【0059】
典型的に、接着促進層は、その上に配置された被検物変化層を有し、そこを通る被検物の拡散を変化させる働きをする。一実施形態において、被検物変化層は、センサ層を通る被検物(例えば、酸素)の拡散を高める働きをし、したがって、被検物検出層中の被検物濃度を高める働きをする組成物(例えば、ポリマ等)を含む。代りに、被検物変化層は、センサ層を通る被検物(例えば、グルコース)の拡散を制限する働きをし、したがって、被検物検出層中の被検物濃度を制限する働きをする組成物を含む。この例は、ポリジメチルシロキサン等のポリマを含む親水性グルコース制限膜(すなわち、そこを通るグルコースの拡散を制限する働きをする)である。
【0060】
典型的に、被検物変化層は、1つ以上の典型的に電気的絶縁保護層であるカバー層をさらに含み、カバー層はセンサ装置の少なくとも一部に配置される(例えば、被検物変化層を覆う)。絶縁保護カバー層として用いるために許容可能なポリマコーティングは、シリコーン化合物などの非毒性生体適合性ポリマ、ポリイミド類、生体適合性ハンダマスク、エポキシアクリラートコポリマ等を含むが制限されない。好ましいカバー層はスピンされたシリコーンを含む。典型的に、カバー層は検出すべき被検物を含む溶液にセンサ層(例えば、被検物変化層)の少なくとも一部を暴露する孔をさらに含む。
【0061】
本明細書に記述される被検物センサはカソード的に成極されて、例えば、図1に示したように、グルコースがグルコースオキシダーゼと相互作用する際に発生する作用カソード近くの酸素濃度変化に起因する作用カソードでの電流変化を検出することができる。代りに、本明細書に記述される被検物センサはアノード的に成極されて、例えば、図1に示したように、グルコースがグルコースオキシダーゼと相互作用する際に発生する作用アノード近くの過酸化水素濃度の変化に起因する作用アノードでの電流の変化を検出することができる。本発明の典型的な実施形態において、作用電極(1つ又は複数)での電流は参照電極(1つ又は複数)(対照)での電流に比較され、次いで、これらの測定値間の差は測定すべき被検物の濃度と相関をとることのできる値を与える。これらの二連電極での電流の比較から測定値を得ることによって電流値を得る被検物センサ設計は、例えば、通常二連酸素センサと呼ばれる。
【0062】
本発明の好ましい実施形態において、被検物センサ装置は、アノード的成極によって機能し、電流の変化が被検物センサ装置の伝導層中のアノード作用電極で検出されるように設計される。アノード的成極に付随することのできる構造的な設計の特徴は、アノードである作用電極、カソードである対電極、および参照電極を含む適切なセンサ形態を設計し、次いで選択的に適切な被検物検出層を設計形態内のアノードの適切な表面部分に配置することを含む。場合によって、このアノード的成極構造設計は、アノード、カソード、および/または異なるサイズの表面積を有する作用電極を含む。例えば、この構造設計は、作用電極(アノード)および/または作用電極のコーティングされた表面が対電極(カソード)および/または対電極のコーティングされた表面よりも大きい特徴を含む。この状況において、アノード作用電極で検出できる電流の変化は、次いで被検物の濃度と相関がとられる。本発明のこの実施形態のいくつかの例において、作用電極は、酸化反応中の過酸化水素を測定し用いる(例えば、図1参照)。過酸化水素は、それぞれグルコースまたはラクテートとの反応の際に、グルコースオキシダーゼまたはラクテートオキシダーゼなどの酵素によって生成される。それらの過酸化水素再生能力を有する電気化学的グルコースおよび/またはラクテートセンサに関する本発明のそれらの実施形態は、この分子の再生が、センサから、それが配置される環境へ逃げることのできる過酸化水素の量を低減するので、特に好ましい。この意味において、過酸化水素など組織刺激物の放出を低減するように設計された埋没可能なセンサは、改善された生体適合プロファイルを有するであろう。さらに、過酸化水素はグルコースオキシダーゼなどの酵素と反応することができ、それらの生物学的機能を損なうことが観察されるので、それらのセンサはこの現象を回避するため好ましい。場合によって、被検物変化層(例えば、グルコース制限層)は、過酸化水素が放出されて、センサの配置された環境中に拡散されることを抑制する働きをする組成物を含むことができる。したがって、本発明のそれらの実施形態は、本明細書に開示される過酸化水素再生要素を組み込むことによって過酸化水素を生成する酵素を組み込むセンサの生体適合性を改善する。
【0063】
ベース層、伝導層、被検物検出層、場合によってタンパク質層、接着促進層、および被検物変化層、およびカバー層を含む本発明の被検物センサのいくつかの実施形態は、多くの予期しない特性を示す。例えば、これらのカソード的成極によって機能する構造に対してこれらのアノード的成極によって機能する構造のセンサでは、被検物検出層ならびに電極表面での電気化学的反応の相違は、異なる化学物質を発生および/または消費し、それによって化学的環境を変化させ、様々なセンサ要素が異なる極性で機能する。この意味において、本明細書に開示されるセンサ構造は、様々な異なる化学的および/または電気化学的条件下で予期せぬ程度の安定性での機能を示す、驚くべき汎用性のあるデバイスを提供する。
【0064】
本明細書に開示される本発明のいくつかの実施形態(例えば、過酸化水素再生能力を有するもの)において、センサ層は作用電極(例えば、アノード)および対電極(例えば、カソード)を含む複数の電極を有し、その両方ともグルコースオキシダーゼまたはラクテートオキシダーゼなどの酵素を含む被検物検出層でコーティングされる。それらのセンサ設計は、高められた感度を含んで驚くべき特性を有する。特定の科学的理論には拘束されないが、これらの特性は作用電極または対電極の表面での過酸化水素の酸化が高まることによって得ることができ、追加の酸素を生成してグルコース検出反応に用いることができる(例えば、図1参照)。したがって、この再生効果は本明細書に開示されるいくつかのセンサ実施形態の酸素依存性の制約を低減することができる。さらに、この設計は入手可能な過酸化水素を容易に低減できる作用電極、したがって、より低い電極電位を有するセンサをもたらす。より低い電極電位で機能するように設計されたセンサは、この種のセンサの高い電極電位がガス発生の加水分解反応を起こし、センサを不安定にする(加水分解反応によって生成したガス気泡からセンサ層が破壊されることによる)ことがあるので、本発明の好ましい実施形態である。さらに、対電極がグルコースオキシダーゼまたはラクテートオキシダーゼなどの酵素を含む非常に薄い被検物検出層でコーティングされるように設計されたセンサ実施形態において、酵素反応で生成された過酸化水素は対電極の反応性表面に非常に近接している。これは、例えば、より小さな反応性表面を有する対電極を含む小型センサ設計の製造を可能にするように、センサの全体的な効率を高める。
【0065】
哺乳動物内に埋没するための被検物センサ装置の特定の例は、以下の設計の過酸化物センサである。過酸化物センサ装置の第1層はベース層であり、典型的にアルミナなどのセラミックから作られる。ベース層の上に配置される後続の層は、複数の電極を含む伝導層であり、アノード性作用電極及び参照電極を含む。伝導層の上に配置される後続の層は架橋したグルコースオキシダーゼを含む被検物検出層であり、グルコースを検出し、続いて図1に示すように過酸化水素が生成する。この過酸化水素の存在下で、生成した過酸化水素が伝導層中のこのアノードに接触し酸化されると、アノード性作用電極には測定可能な電流増加が起きる。参照電極は対照として働き、作用電極および図1に示す反応に従って生成される過酸化水素から物理的に絶縁される。この被検物検出層は、厚さが1、0.5、0.25、0.1ミクロン未満であり、架橋したヒト血清アルブミンと架橋したグルコースオキシダーゼとの混合物を実質的に固定比率で含み、グルコースオキシダーゼおよびヒト血清アルブミンはセンサ層全体に実質的に均一に分配されていることが好ましい。センサ層上に配置される後続の層は、架橋したヒト血清アルブミンを含むタンパク質層である。タンパク質層の上に配置される後続の層は、接着促進層であり、被検物検出層および/またはタンパク質層ならびにこれらの層の上に配置された被検物変化層の間の接着を促進する。この接着促進層はシラン組成物を含む。接着促進層の上に配置される後続の層はPDMSを含む親水性グルコース制限膜の形の被検物変化層であり、そこを通るグルコースの拡散を変化させる。後続の層は典型的にシリコーンから構成されるカバー層であり、被検物変化層の少なくとも一部上に配置され、カバー層は、被検物変化層の少なくとも一部を外部のグルコース含有環境に暴露して、グルコースが作用電極上の被検物検出層に接近できる孔をさらに含む。この過酸化物センサ装置はアノード的成極によって機能し、グルコースが被検物変化層を通過し被検物検出層中のグルコースオキシダーゼと反応することによって発生した過酸化水素信号は、センサの伝導層中のアノード性作用電極で検出可能な、電流計で測定できる電流の変化を生じさせる。次いで、アノード性作用電極でのこの電流変化は、外部環境のグルコース濃度と相関がとられる。したがって、この設計のセンサは、過酸化物系グルコースセンサとして働くことができる。
【0066】
(D)被検物センサ装置および要素の置き換え
上述のように、本明細書に開示される本発明は非常に薄い酵素コーティングを有するセンサを含んで多数の実施形態を含む。本発明のそれらの実施形態は、当業者が本発明に開示される被検物センサ装置を様々に置き換えることを可能にする。上述のように、本明細書に開示される一般的な例示的実施形態は、ベース層、カバー層、およびベースとカバー層の間に配置された電極などのセンサ要素を有する少なくとも1層を含む。典型的に、1つ以上のセンサ要素(例えば、作用電極、対電極、参照電極等)の露出部分は適切な電極化学物質を有する材料の非常に薄い層でコーティングされる。例えば、ラクテートオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼまたはヘキソキナーゼなどの酵素は、カバー層中に画定された開口または孔内のセンサ要素の露出部分に配置することができる。図2は本発明の典型的なセンサ構造100の断面を示す。センサは本発明の方法に従って互いに配置された、複数の様々な伝導性および非伝導性構成要素の層から形成され、センサ構造100を形成する。
【0067】
上述のように、本発明のセンサにおいて、センサの様々な層(例えば、被検物検出層)はその中に組み込まれた1つ以上の生物活性および/または不活性材料を有することができる。本明細書に用いられる用語「組み込まれた(incorporated)」は、組み込まれた材料が層の固体相または支持母材の外部表面またはその内部に保持されるいかなる状態あるいは状況をも意味する。したがって、「組み込まれた」材料は、例えば、不動化し、物理的に捕捉し、母材層(1つ又は複数)の官能基に共役して付着することができる。さらに、前記材料の「組み込み(incorporation)」を促進する任意の方法、薬品、添加剤、または分子状リンカー剤は、これらの追加のステップまたは薬品が悪影響を与えず本発明の目的に一致すれば用いることができる。無論、この定義は生物活性分子(例えば、グルコースオキシダーゼなどの酵素)が「組み込まれる」本発明の任意の実施形態に適合する。例えば、本明細書に開示されるセンサのいくつかの層は、架橋可能な母材として働くアルブミンなどのタンパク質系物質を含む。本明細書に用いられるとき、タンパク質系物質は一般にタンパク質から誘導される物質を含み、実際の物質は、天然タンパク質、不活性化タンパク質、変性タンパク質、加水分解された物質、またはその誘導生成物である。適切なタンパク質系材料の例は、グルコースオキシダーゼおよびラクテートオキシダーゼなどの酵素、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン等)、カゼイン、ガンマ−グロブリン、コラーゲン及びコラーゲン誘導生成物(例えば魚のゼラチン、魚の接着剤、動物のゼラチン、動物の接着剤)を含むが制限されない。
【0068】
本発明の好ましい実施形態は図2に示される。この実施形態はセンサ100を支持するための電気絶縁ベース層102を含む。電気絶縁層ベース102は、セラミック基板などの材料から作ることができ、自立型または当分野で既知のようにさらに他の材料によって支持することができる。代替の実施形態において、電気絶縁層102はポリイミド基板、例えば、リールから供給されるポリイミドテープを含む。この形の層102を提供することによって清浄で高密度の大量生産が容易になる。さらに、それらのポリイミドテープを用いるいくつかの製造方法において、センサ100はテープの両側に製造することができる。
【0069】
本発明の典型的な実施形態は、ベース層102上に配置された被検物検出層を含む。図2に示した好ましい実施形態において、被検物検出層は絶縁ベース層102の上に配置された伝導層104を含む。伝導層104は1つ以上の電極を含むことが好ましい。伝導層104は多くの既知の技術および以降に説明する材料を用いて施すことができるが、センサ100の電気回路は、典型的に、配置された伝導層104を望ましい伝導路のパターンにエッチングすることによって画定される。センサ100のための典型的な電気回路は、近接末端に接触パッドを形成する領域と、遠隔末端にセンサ電極を形成する領域を有する2つ以上の隣接伝導路を含む。ポリマコーティングなどの電気絶縁保護カバー層106は典型的に伝導層104の部分に配置される。絶縁保護層106として用いるのに許容可能なポリマコーティングは、ポリイミドなどの非毒性生体適合性ポリマ、生体適合性ハンダマスク、エポキシアクリラートポリマ等を含むが制限されない。さらに、これらのコーティングは伝導層104を通る孔108のフォトリソグラフ形成を容易にするために光像形成可能とすることができる。
【0070】
本発明のセンサにおいて、保護層106を通して伝導層104に1つ以上の露出領域または孔108を作り、センサ100の接触パッド及び電極を画定することができる。フォトリソグラフ現像に加えて、孔108はレーザーアブレーション、化学的切削加工、またはエッチングなどの多くの技術によって形成することができる。また二次フォトレジストをカバー層106に塗工して、保護層の孔108を形成するために除去すべき領域を画定することもできる。作動センサ100は、互いに電気的に絶縁されているが典型的に互いに近接して配置された作用電極および対電極などの複数の電極を典型的に含む。また、他の実施形態は、参照電極も含むことができる。さらに他の実施形態はセンサ上に形成されない分離した参照要素を用いることができる。露出電極および/または接触パッドにも孔108を通して追加のめっき処理などの二次加工を行い、表面の調製および/または伝導領域を強化することができる。
【0071】
被検物検出層110は、典型的に、孔108を通して1つ以上の伝導層104の露出電極上に配置される。被検物検出層110は、センサ化学反応層であることが好ましく、酵素層であることが最も好ましい。被検物検出層110はグルコースオキシダーゼ酵素またはラクテートオキシダーゼ酵素を含むことが好ましい。それらの実施形態において、被検物検出層110はグルコースと反応して過酸化水素を生成し、存在するグルコース量を測定するために監視することのできる電極への電流を変化させる。センサ化学反応層110は、伝導層の部分または伝導層の領域全体の上に施すことができる。センサ化学反応層110は、伝導層を含む作用電極および対電極の部分に配置されることが好ましい。薄いセンサ化学反応層110を生成する好ましい方法は、スピンコーティング工程、浸漬および乾燥工程、低剪断噴霧工程、インクジェット印刷工程、シルクスクリーン工程などを含む。薄いセンサ化学反応層110はスピンコーティング工程を用いて施すのが最も好ましい。
【0072】
被検物検出層110は典型的に1層以上のコーティング層でコーティングされる。本発明の好ましい実施形態において、それらのコーティングのひとつは被検物の量を調節することのできる膜を含み、被検物検出層の酵素と接触することができる。例えば、コーティング層はグルコース制限膜などの被検物変化膜層を含み、電極上のグルコースオキシダーゼ酵素層に接触するグルコースの量を制御することができる。それらのグルコース制限膜は、それらの目的に適していると知られている広く様々な材料、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリウレアセルロースアセタート、Nafion(登録商標)、ポリエステルスルホン酸(例えば、Kodak AQ)、ヒドロゲルまたは当業者に既知の任意の他の膜から作ることができる。
【0073】
本発明の好ましい実施形態において、コーティング層は、センサ化学反応層110の上に配置されてセンサ化学反応層110に接触するグルコースを制御するグルコース制限膜層112である。本発明のいくつかの実施形態において、図2に示すように接着促進層114が膜層112とセンサ化学反応層110の間に配置されて、それらの接触および/または接着を容易にする。接着促進層114は、それらの層間の接合を容易にする、当分野に既知の広く様々な材料の任意の1種から作ることができる。接着促進層114はシラン化合物を含むことが好ましい。代替の実施形態において、センサ化学反応層110中のタンパク質等の分子は、膜層112を接着促進層114を存在させずにセンサ化学反応層110に直接接触して、配置できるように、十分架橋または調製することができる。
【0074】
上述のように、本発明の実施形態は1層以上の機能性コーティング層を含むことができる。本明細書に用いられる用語「機能性コーティング層(functional coating layer)」は、センサの少なくとも1表面の少なくとも一部、さらに好ましくは実質的にセンサの全ての表面をコーティングし、センサが配置される環境中で、化学的化合物、セルおよびその断片などの1種以上の被検物と相互作用することのできる層を表す。機能性コーティング層の非制限的な例は、センサ化学反応層(例えば、酵素層)、被検物制限層、生体適合性層、センサの滑り性を高める層、センサへのセル状付着を促進する層、センサへのセル状付着を低減する層などを含む。典型的な被検物変化層は、グルコースなどの1種以上の被検物が層を通って拡散するのを防ぎまたは制限する働きをする。場合によって、それらの層は層を通る1種の分子(例えば、グルコース)の拡散を防止または制限し、他方では、同時に他の種類の分子(例えば、O2)が層を通って拡散するのを可能にし、または容易にさえするように形成することができる。例示的機能性コーティング層は、本願に引用して援用される米国特許第5,786,439号、および第5,391,250号に開示されたものなどのヒドロゲルである。その中で説明されるヒドロゲルは、周囲に水層を提供する利点があるので、特に様々な埋没可能なデバイスに有用である。
【0075】
本明細書に開示されるセンサ実施形態はUV吸収ポリマを有する層を含むことができる。本発明の一態様によれば、UV吸収ポリマを含む少なくとも1層の機能性コーティング層を含むセンサが提供される。好ましい実施形態において、UV吸収ポリマはポリウレタン、ポリウレア、またはポリウレタン/ポリウレアコポリマである。選択されるUV吸収ポリマは、ジイソシアナート、少なくとも1種のジオール、ジアミン、またはその混合物、および多官能性UV吸収モノマを含む反応混合物から形成されることがさらに好ましい。
【0076】
UV吸収ポリマは、本願にその全体を引用して援用される、ロード(Lord)らの「Transcutaneous Sensor Insertion Set」の名称の米国特許第5,390,671号、ウィルソン(Wilson)らの「Implantable Glucose Sensor」の名称の米国特許第5,165,407号、ゴッホ(Gough)の「Two−Dimensional Diffusion Glucose Substrate Sensing Electrode」の名称の米国特許第4,890,620号などに記述されたように、様々なセンサ製造方法における利点のために用いられる。しかし、センサ要素の上部または下部にUV吸収ポリマ層を形成するステップを含むいかなるセンサ製造方法も、本発明の範囲内であると考えられる。特に、本発明の方法は、薄膜製造方法に制限されず、UVレーザー切断を利用する他のセンサ製造方法で行うことができる。実施形態は、厚膜、平面または円筒状センサ等、およびレーザー切断を必要とする他のセンサ形状で行うことができる。
【0077】
本明細書に開示されるように、本発明のセンサは、特に糖尿病患者の血液グルコースレベルを監視するための皮下または経皮グルコースセンサとして使用するために設計される。典型的に、それらのセンサは、例えば、下地の絶縁薄膜ベース層と被覆の絶縁薄膜カバー層の間に展在して形成された薄膜伝導体のような電気伝導性要素などの複数のセンサ要素を含む。
【0078】
望むならば、複数の異なるセンサ要素が単一センサに含まれることができる。例えば、伝導性および反応性センサ要素の双方を1つのセンサに結合することができ、場合によって各センサ要素はベース層の異なる部分に配置される。また、1つ以上の制御要素も提供することができる。それらの実施形態において、センサはそのカバー層に画定された複数の開口または孔を有することができる。また、1つ以上の開口を直接ベース層の部分上のカバー層に画定して、ベース層と、センサが配置される環境中の1種以上の被検物との相互作用を提供することができる。ベースおよびカバー層は様々な材料、典型的にポリマから構成することができる。さらに詳細な実施形態において、ベースおよびカバー層はポリイミドなどの絶縁材料から構成することができる。典型的に、開口がカバー層に形成されて遠隔末端電極と近接末端部の接触パッドを露出する。例えば、グルコース監視用途において、センサを経皮的に配置して、遠隔末端電極を患者の血液または細胞外液に接触させ、接触パッドを外部に配置して監視デバイスに都合よく接続することができる。
【0079】
本発明のセンサは、例えば、平面または円筒状の任意の望ましい形態を有することができる。ベース層102は固体ポリマ層などの自立型、または可撓性膜などの非自立型とすることができる。非自立型の実施形態は、例えば、連続的に巻き出されたポリマ膜のロールを用いて、その上にセンサ要素とコーティング層を連続的に施す、センサの連続製造が可能になる点で望ましい。
【0080】
本発明の一般的な実施形態は、体内に埋没するように設計されたセンサであり、ベース層と、複数のセンサ要素を含むベース層の上に配置された被検物検出層と、伝導層上の複数の検出要素の全てを被覆する被検物検出層の上に配置された酵素層(好ましくは厚さ2ミクロン未満)と、1層以上のコーティング層とを含む。典型的に、酵素層は、好ましくは担体タンパク質と実質的に固定比率で、グルコースオキシダーゼを含む。特定の実施形態において、グルコースオキシダーゼと担体タンパク質は配置された酵素層全体に実質的に均一に分配される。典型的に、担体タンパク質は、好ましくは約5重量%のアルブミンを含む。本明細書に用いられる用語「アルブミン(albumin)」は、当業者によってポリペプチド組成物を安定化させるために用いられるヒト血清アルブミンまたはウシ血清アルブミンなどのアルブミンタンパク質を指す。本発明の非常に好ましい実施形態において、コーティング層は、酵素層に接触することのできる被検物の量を制御するためにセンサの上に配置された被検物接触層である。さらに非常に好ましい実施形態において、センサは酵素層と被検物接触層の間に配置された接着促進層を含み、酵素層は厚さ1、0.5、0.25、または0.1ミクロン未満である。
【0081】
本発明の一態様は、材料特性が強化された、改善された電極化学物質コーティング(例えば、厚さ2ミクロン未満の酵素コーティング)を有するセンサの製造工程を含む。本発明の非常に薄い酵素コーティングを製造する方法は、スピンコーティング工程、浸漬および乾燥工程、低剪断噴霧工程、インクジェット印刷工程、シルクスクリーン工程などを含む。典型的に、それらのコーティングはそれらの塗工後に蒸気架橋(vapor crosslink)される。驚くべきことに、これらの工程によって製造されたセンサは、電気的堆積によって製造されたコーティングを有するセンサよりも、高められた寿命、直線性、および不変性、ならびに改善された雑音対信号を含んで、優れた材料特性を有する。さらに、それらの工程によって形成されたグルコースオキシダーゼコーティングを用いる本発明のいくつかのセンサ実施形態は、過酸化水素を再生するように設計され、それらのセンサの生体適合性プロファイルを改善する。
【0082】
この意味において、本発明の好ましい実施形態は、固定比率(典型的にグルコースオキシダーゼ安定化特性のために最適化されたもの)でアルブミンと結合したグルコースオキシダーゼを含む電極などの母材の表面に、約2ミクロン未満の安定化されたグルコースオキシダーゼをコーティングし、グルコースオキシダーゼとアルブミン混合物をスピンコーティング工程、浸漬および乾燥工程、マイクロ堆積工程、ジェット印刷堆積工程、スクリーン印刷工程、またはドクターナイフ工程からなる群から選択される工程によって母材の表面上に施す方法である。安定化されたグルコースオキシダーゼは、電極表面上にスピンコーティング工程によって施すことが好ましい。非常に好ましい実施形態において、グルコースオキシダーゼ/アルブミンは、生理溶液中(例えば、リン酸で中性pHに緩衝した塩水)で調製され、アルブミンは約5重量%存在する。場合によって、伝導層上に形成された安定化グルコースオキシダーゼ層は厚さが2、1、0.5、0.25、0.1ミクロン未満である。本発明に密接に関連する実施形態は、電極表面をコーティングするための安定化グルコースオキシダーゼ層であり、グルコースオキシダーゼは層内に固定比率で担体タンパク質と混合され、グルコースオキシダーゼと担体タンパク質は層全体に実質的に均一に分配される。層は厚さ2ミクロン未満であることが好ましい。
【0083】
本発明の関連実施形態は、ベース層と、ベース層の上に配置されて少なくとも1つの作用電極および少なくとも1つの対電極を含む伝導層と、伝導層上に配置された被検物検出層(被検物検出層は厚さ2ミクロン未満である)と、典型的に層を通って拡散し、被検物検出層に接触しうる被検物の量を制限することによって、酵素層に接触する被検物の量を調節する被検物変化層とを含む電気化学的被検物センサである。任意選択的な本発明の実施形態において、作用電極および/または作用電極のコーティングされた表面は、対電極および/または対電極のコーティングされた表面よりも大きい。好ましい実施形態において、酵素層はそれを作用電極および対電極上に固定比率で担体タンパク質と組み合わせてコーティングすることによって安定化されたグルコースオキシダーゼを含む。非常に好ましい実施形態において、このグルコースオキシダーゼ酵素層は実質的に伝導層を被覆する。グルコースオキシダーゼ酵素層が伝導層全体に均一なコーティングで配置される実施形態は、それらが単一層上に複数の異なるコーティングを有するセンサに伴う、異なる材料特性を有する、異なるコーティングが選択的に剥離する等の問題を回避することができるので好ましい。センサは酵素層と被検物変化層の間に配置された接着促進層を含むことが好ましい。
【0084】
本発明の関連実施形態は、ベース層と、ベース層の上に配置されて少なくとも1つの作用電極、少なくとも1つの参照電極、および少なくとも1つの対電極を含む伝導層と、伝導層上に配置された酵素層と、酵素層に接触する被検物の量を調節する被検物変化カバー層とを含む電気化学的被検物センサである。好ましい実施形態において、酵素層は厚さ2ミクロン未満であり、作用電極、参照電極、および対電極の少なくとも一部にコーティングされる。非常に好ましい実施形態において、酵素層は作用電極、参照電極、および対電極を実質的に被覆する。場合によって、酵素層は担体タンパク質(例えば、アルブミン)と固定比率で組み合わせたグルコースオキシダーゼを含む。典型的にセンサは酵素層と被検物変化層間に配置された接着促進層を含む。
【0085】
本発明のさらに他の実施形態は、ベース層と、ベース層の上に配置された伝導層と、伝導層上に配置されたグルコースオキシダーゼを含む被検物検出層(アルブミンと固定比率で組み合わせることによってグルコースオキシダーゼが安定化され、さらにグルコースオキシダーゼとアルブミンが配置された層全体に実質的に均一に分配される)と、グルコース制限層を通って拡散しグルコースオキシダーゼ層に接触するグルコースの量を調節するグルコース制限層とを含む、体内に埋没するためのグルコースセンサを含む。好ましい実施形態において、伝導層は少なくとも1つの作用電極と少なくとも1つの対電極を含む複数のセンサ要素を含む。それらのセンサ実施形態において、グルコースオキシダーゼを含む被検物検出層は厚さが2、1、0.5、0.25、0.1ミクロン未満であり、層中のアルブミンは約5重量%存在することが好ましい。センサは、グルコースオキシダーゼを含む被検物検出層とグルコース制限層の間に接着促進層を含むことが好ましい。
【0086】
(E)被検物センサ装置の形態
診療所における装備において、グルコースおよび/またはラクテートレベルなどの被検物の正確で比較的迅速な測定は、電気化学的センサを用いて血液サンプルから求めることができる。従来のセンサは、多くの有用な部品を含む大きなセンサ、または多くの環境においてより便利な小さな平面型センサに作られる。本明細書に用いられる用語「平面状(planar)」は、例えば、周知の厚膜または薄膜技術を用いて、比較的薄い材料の層を含む実質的に平面状の構造を作製する周知の手順を指す。例えば、両方とも本願に引用して援用されるリウ(Liu)らの米国特許第4,571,292号、パパダキス(Papadakis)らの米国特許第4,536,274号を参照されたい。以下に述べるように、本明細書に開示される本発明の実施形態は、当分野に存在するセンサよりも広範囲の幾何形状(例えば、平面状)の形態を有する。さらに、本発明のいくつかの実施形態は、薬剤注入ポンプなどの他の装置と組み合わせた、本明細書に開示される1つ以上のセンサを含む。
【0087】
図2は本発明の典型的な被検物センサ形態の概要図を提供する。図3は、被検物センサ装置で作製することのできる比較的平坦な「リボン」型形態の平面図(上部)および断面図(下部)を提供する。それらの「リボン」型形態は、本明細書に開示されるセンサの利点を示し、柔軟性の高いセンサ幾何形状の設計および製造が可能な非常に薄い酵素コーティングを製造する製造ステップである、グルコースオキシダーゼなどの検出酵素のスピンコーティングによって得られる。それらの薄い酵素がコーティングされたセンサは、センサの感度、埋没可能なデバイスに非常に望ましい特徴を保ちながら、より小さなセンサ面積を可能にする(例えば、より小さなデバイスは埋没が容易である)等の利点をさらに提供する。したがって、スピンコーティングなどの工程によって形成することのできる非常に薄い被検物検出層を用いる本発明のセンサ実施形態は、電気的堆積などの工程で形成された酵素層を用いるセンサよりも、広範囲の幾何形状形態(例えば、平面状)を有することができる。
【0088】
図4Aおよび4Bは、複数の作用電極、対電極および参照電極などの複数の伝導要素を含む様々なセンサ形態を示す。それらの形態の利点は、より高いセンサ感度を提供する増加した表面を含む。例えば、図4Bに示したセンサ形態において、このパターン(7個のビアを含む)は第3の作用センサを導入する。それらの形態の明らかな利点の1つは、3つのセンサ信号の平均化であり、センサの精度を高める。他の利点は、複数の被検物を測定する能力を含む。特に、被検物センサ形態はこの構成の電極(例えば、複数の作用電極、対電極、および参照電極)を含み、複数の被検物センサに組み込まれている。酸素、過酸化水素、グルコース、ラクテート、カリウム、カルシウム、及び任意の他の生理学的に関連する物質および/または被検物など、複数の被検物の測定は、例えば、それらのセンサが直線性応答ならびに較正および/または再較正の容易さを提供する能力など多くの利点を提供する。
【0089】
例示的複数センサデバイスは、カソード的に成極し、グルコースがグルコースオキシダーゼと相互作用を行う結果として作用電極(カソード)で起きる酸素濃度の変化を測定するように設計された第1センサと、アノード的に成極し、グルコースが外部環境から来てグルコースオキシダーゼと相互作用を行う結果として作用電極(アノード)で起きる過酸化水素濃度の変化を測定するように設計された第2センサとを有する単一のデバイスを含む。当分野で既知のように、それらの設計において、第1の酸素センサは、典型的に、酸素がセンサに接触すると作用電極で電流減少が起き、第2の過酸化水素センサは、典型的に、図1に示すように発生した過酸化水素がセンサに接触すると作用電極での電流が増加するであろう。さらに、当分野で既知のように、それぞれのセンサ系中の参照電極と比較した作用電極で起きる電流変化の観察は、酸素および過酸化水素分子の濃度変化に相関があり、これは従って、外部環境中(例えば、哺乳動物の体)のグルコース濃度と相関させることができる。
【0090】
図5Aは本発明の被検物センサをいかにして薬剤注入ポンプなどの他の医療デバイスと結合できるかを示す。図5Bは、本発明の交換可能な被検物センサが、例えば、医療デバイスに結合したポート(例えば、固定電気接続を備える皮下ポート)を使用することによって、薬剤注入ポンプなどの他の医療デバイスと結合することのできる、この構成の変形の図を提供する。
【0091】
(II)本発明の被検物センサ装置を製造するための例示的方法および材料
多数の記事、米国特許および特許出願は、本明細書に開示される通常の方法および材料による最新技術について記述し、さらに、本明細書に開示されるセンサ設計に用いることのできる様々な要素(およびその製造方法)について記述する。これらは、例えば、米国特許第6,413,393号、第6,368,274号、第5,786,439号、第5,777,060号、第5,391,250号、第5,390,671号、第5,165,407号、第4,890,620号、第5,390,671号、第5,390,691号、第5,391,250号、第5,482,473号、第5,299,571号、第5,568,806号、米国特許出願番号第20020090738号、ならびに、PCT国際公開番号第WO01/58348号、第WO03/034902号、第WO03/035117号、第WO03/035891号、第WO03/023388号、第WO03/022128号、第WO03/022352号、第WO03/023708号、第WO03/036255号、第WO03/036310号、および第WO03/074107号を含み、その各々の内容は本願に引用して援用される。
【0092】
糖尿病のグルコース濃度を監視するための典型的なセンサは、シチリ(Shichiri)らの「In Vivo Characteristics of Needle−Type Glucose Sensor−Measurements of Subcutaneous Glucose Concentrations in Human Volunteers」、Horm.Metab.Res.、Suppl.Ser.20:17−20(1988)、ブルッケル(Bruckel)らの「In Vivo Measurement of Subcutaneous Glucose Concentrations with an Enzymatic Glucose Sensor and Wick Method」、Klin.Wochenschr.67:491−495(1989)、およびピックアップ(Pickup)らの「In Vivo Molecular Sensing in Diabetes Mellitus:An Implantable Glucose Sensor with Direct Electron Transfer」、Diabetologia 32:213−217(1989)にさらに記述される。他のセンサは、例えば、本願に引用して援用される、ADVANCES IN IMPLANTABLE DEVICES、A.ターナー(A.Turner)(ed.)、JAI Press、London、Chap.1、(1993)においてリーチ(Reach)らによって記述される。
【0093】
(A)被検物センサの一般的製造方法
本明細書に開示される本発明の典型的な実施形態は、哺乳動物内に埋没するためのセンサ装置の製造方法であり、ベース層を提供するステップと、ベース層上に伝導層を形成し、伝導層が電極(典型的に作用電極、参照電極、および対電極)を含むステップと、伝導層上に被検物検出層を形成し、被検物検出層が被検物の存在下で伝導層の電極での電流を変化させることのできる組成物を含むステップと、場合によって、被検物検出層上にタンパク質層を形成するステップと、被検物検出層または任意のタンパク質層の上に接着促進層を形成するステップと、接着促進層上に配置された被検物変化層を形成し、被検物変化層がそこを通る被検物の拡散を変化させる組成物を含むステップと、被検物変化層の少なくとも一部の上に配置されたカバー層を形成し、カバー層が被検物変化層の少なくとも一部の上の孔をさらに含むステップとを含む。これらの方法のいくつかの実施形態において、被検物センサ装置は平面幾何形状形態に形成される。
【0094】
本明細書に開示されるように、センサの様々な層は、センサの好ましい設計によって操作することのできる様々な異なる特性を示すように製造することができる。例えば、接着促進層はセンサ構造全体を安定化する能力で選択される化合物、好ましくはシラン化合物を含む。本発明の好ましい実施形態において、被検物検出層はスピンコーティング工程によって形成され、その高さは1、0.5、0.25、0.1ミクロン未満からなる群から選択される厚さである。
【0095】
センサの製造方法は、被検物検出層上にタンパク質層を形成し、タンパク質層内のタンパク質がウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンからなる群から選択されるアルブミンであるステップを含むことが好ましい。センサの製造方法は、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、およびラクトースデヒドロゲナーゼからなる群から選択される酵素組成物を含む被検物検出層を形成するステップを含むことが好ましい。それらの方法において、被検物検出層は酵素に対して実質的に固定された比率で担体タンパク質組成物を含み、酵素および担体タンパク質は被検物検出層全体に実質的に均一に分配されていることが好ましい。
【0096】
(B)被検物センサの製造に有用な典型的な手順と材料
本明細書に提供される開示は、様々な周知の技術を組み合わせて用いて形成することのできるセンサおよびセンサ設計を含む。本開示は、これらの種類のセンサならびにこれらの工程によって製造されたセンサに非常に薄い酵素コーティングを施す方法をさらに提供する。この意味において、本発明の好ましい実施形態は、当技術で許容された工程に従って、基板上にそれらのセンサを製造する方法を含む。いくつかの実施形態において、基板はフォトリソグラフマスク及びエッチング工程に用いるのに適した硬質で平坦な構造を含む。これに関して、基板は非常に均一な平坦性を有する上部表面を典型的に画定する。平滑な上部表面を画定するのに研磨ガラスプレートを用いることができる。代替の基板材料は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、およびデルリンなどのプラスチック材料を含む。他の実施形態において、基板は非硬質であり基板として用いられる他のフィルムまたは絶縁材の層、例えば、ポリイミド類などのプラスチックとすることができる。
【0097】
本発明の方法の最初のステップは、典型的にセンサのベース層の形成を含む。ベース層は任意の望ましい手段、例えば、制御されたスピンコーティングによって基板上に配置することができる。さらに、基板層とベース層の間に十分な接着がないならば、接着層を用いることができる。絶縁材料のベース層は、典型的に、液状のベース層材料を基板上に塗工し、その後基板を回転させて薄い実質的に均一な厚さのベース層を生成することによって基板上に形成される。これらのステップを繰り返して十分な厚さのベース層を積み上げ、その後一連のフォトリソグラフおよび/または化学的マスクおよびエッチングステップによって以下に論じる導体を形成する。好ましい形では、ベース層はセラミックまたはポリイミド基板などの絶縁材料の薄膜シートを含む。ベース層はアルミナ基板、ポリイミド基板、ガラスシート、制御された多孔質ガラス、または平坦化したプラスチック液晶ポリマを含むことができる。ベース層は、カーボン、窒素、酸素、ケイ素、サファイア、ダイアモンド、アルミニウム、銅、ガリウム、ヒ素、ランタン、ネオジミウム、ストロンチウム、チタン、イットリウム、またはその組み合わせの1種以上の様々な元素を非制限的に含む任意の材料から誘導することができる。さらに、基板は化学的気相成長、物理的気相成長またはスピンコーティングを含む当分野で周知の様々な方法によって、スピンガラス、カルコゲニド、グラファイト、二酸化ケイ素、有機合成ポリマなどの材料を用いて固体支持体上にコーティングすることができる。
【0098】
本発明の方法は、1層以上の検出要素を有する伝導層の生成をさらに含む。典型的に、これらの検出要素は、活性電極の幾何形状を画定するためのフォトレジスト、エッチングおよび洗浄など、当分野に既知の様々な方法の1つによって形成された電極である。次いで、電極は、例えば、作用電極および対電極用にPtブラック、参照電極用に銀及び続いて塩化銀の電気的堆積によって、電気化学的に活性化することができる。次いで、センサ化学物質の酵素層などのセンサ層を電気化学的堆積またはスピンコーティングなどの電気化学的堆積以外の方法によって検出層の上に配置し、続いて、例えば、ジアルデヒド(グルタルアルデヒド)またはカルボジイミドで蒸気架橋することができる。
【0099】
本発明の電極は、当分野で既知の様々な材料から形成することができる。例えば、電極は後期遷移貴金属(noble late transition metal)から作ることができる。金、白金、銀、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、パラジウム、またはオスミウムなどの金属は本発明の様々な実施形態に適している。炭素または水銀などの他の組成物もいくつかのセンサ実施形態に有用である。これらの金属の中で、銀、金、または白金は典型的に参照電極金属として用いられる。銀電極は続いて塩化物にされ、典型的に参照電極として用いられる。これらの金属は、上で引用したプラズマ堆積法、または基板が金属塩を含む溶液および還元剤に浸漬されるときに前に金属化した領域上への金属の堆積を含むことのできる非電気的方法を含んで、当分野に既知の任意の手段によって堆積することができる。還元剤が伝導性(金属化された)表面に電子を与えると、伝導性表面で金属塩の還元を同時に行って、非電気的方法が進行する。結果は吸着された金属層である。(非電気的方法の追加の議論は、ワイズ E.M.(Wise,E.M.)、Palladium:Recovery,Properties,and Uses、Academic Press、New York、New York(1988)、ワン K.(Wong,K.)ら、Plating and Surface Finishing 1988、75、70〜76、マツオカ M.(Matsuoka,M.)ら、Ibid.1988、75、102〜106、およびパールスタイン F.(Pearlstein,F.)、「Electroless Plating」、Modern Electroplating、ローエンハイム F.A.(Lowenheim,F.A.)、Ed.、Wiley、New York、N.Y.(1974)、Chapter 31を参照されたい。)しかし、それらの金属堆積工程は、良好な金属間接着と最小の表面汚染を備える構造を生成して、高密度の活性部位を有する触媒金属電極表面を提供しなければならない。それらの高密度の活性部位は、過酸化水素などの電気的に活性な種を効率的に酸化還元変換するために必要な特性である。
【0100】
本発明の例示的実施形態において、ベース層は、電極堆積、表面スパッタ、または他の適切な工程ステップによって最初に薄膜伝導層でコーティングされる。好ましい形では、この伝導層は、ポリイミドベース層への化学的接着に適した最初のクロム系層、続いて順番に、後続の薄膜金系及びクロム系層の形成など、複数の薄膜伝導層として設けることができる。代替の実施形態において、他の電極層構造または材料を用いることができる。次いで、伝導層は従来のフォトリソグラフ技術に従って選択されたフォトレジストコーティングで被覆され、適切な光像形成のためにコンタクトマスクをフォトレジストコーティングの上に施すことができる。コンタクトマスクは、典型的に、フォトレジストコーティングの適切な露出、続いてベース層上に残る複数の伝導センサ線を得るエッチングステップのための1つ以上の導体線パターンを含む。皮下グルコースセンサとして使用するために設計された例示的センサ構造において、各センサ線は作用電極、対電極、及び参照電極など3つの分離した電極に対応する3つの平行なセンサ要素を含むことができる。
【0101】
伝導センサ層の部分は典型的に絶縁カバー層、好ましくはケイ素ポリマおよび/またはポリイミドなどの材料によって被覆される。絶縁カバー層は任意の望ましい方法で施すことができる。例示的手順において、絶縁カバー層はセンサ線上に液体層で塗工され、その後、基板を回転して、センサ線を被覆し、センサ線の境界縁部を越えて展在し、ベース層に封止状に接触する薄膜として液体材料を分配する。次いで、この液体材料に、当分野に既知の適切な照射および/または化学的および/または熱硬化ステップの1つまたは複数を行うことができる。代替の実施形態において、液体材料は噴霧技術または任意の他の望ましい塗工手段を用いて施すことができる。光像形成可能なエポキシアクリラートなどの様々な絶縁層材料を用いることができ、好ましい材料はWest Paterson、N.J.、のOCG,Inc.から製品番号7020で入手可能な光像形成可能なポリイミドを含む。
【0102】
上述のように、遠隔末端電極を画定する適切な電極化学物質は、場合によって開口を通してセンサ先端を露出した後、センサ先端に施すことができる。グルコースセンサとして使用するための3つの電極を有する例示的センサ実施形態において、酵素(好ましくはグルコースオキシダーゼ)が開口の1つの内部に提供され、このようにしてセンサ先端の1つをコーティングして作用電極を画定する。他の電極の1つまたは両方に作用電極と同じコーティングを設けることができる。代りに、他の2つの電極には、コーティングしなかった他の酵素などの他の適切な化学物質を設け、または電気化学的センサ用の参照電極および対電極を画定する化学物質を設けることができる。
【0103】
本発明の重要な態様は、材料特性を高めた電極化学物質用の非常に薄いコーティング(例えば、厚さ2ミクロン未満の酵素コーティング)を有するセンサを作る工程を含む。本発明の非常に薄い酵素コーティングを製造する方法は、スピンコーティング工程、浸漬および乾燥工程、低剪断噴霧工程、インクジェット印刷工程、シルクスクリーン工程などを含む。当業者であれば容易に当分野の工程によって塗工された酵素被覆の厚さを求めることができるように、本発明の非常に薄いコーティングを形成することのできる方法を容易に明らかにすることができる。典型的に、それらのコーティングは、その塗工の後に蒸気架橋が行われる。驚くべきことに、これらの工程によって製造されたセンサは高められた寿命、直線性および不変性、ならびに改善された雑音対信号を含んで、電気的堆積によって製造されたコーティングを有するセンサを超える材料特性を有する。さらに、それらの工程によって形成されたグルコースオキシダーゼコーティングを用いる本発明の実施形態は、過酸化水素を再生させるように設計され、それらのセンサの生体適合プロファイルを改善する。
【0104】
特定の科学的理論に拘束されることなく、それらの工程によって製造されたセンサの驚くべき特性は、電気的堆積が厚さ3〜5ミクロンの酵素層を形成して、反応性酵素の一部だけが検出すべき被検物に接近することができるので、電気的堆積によって形成されたものに比べて高められた特性を有すると考えられる。さらに、グルコースオキシダーゼを用いるセンサにおいて、電気的堆積によって製造された厚いコーティングは、反応性界面で発生した過酸化水素がセンサ表面に到達しそれによって信号を発生する能力を妨げることがある。さらに、それらの厚いコーティングのためセンサ表面に到達できない過酸化水素は典型的にセンサからセンサが配置される環境中へ拡散し、それによってそれらのセンサの生体適合性を低下させる。さらに、グルコースオキシダーゼとアルブミンは異なる等電点を有するので、電気的堆積工程は、最適に求めた担体タンパク質対酵素比率が電気的堆積工程中に悪化し、さらにグルコースオキシダーゼと担体タンパク質が配置した酵素層全体に実質的に均一に分配されない表面コーティングをもたらす。本明細書に開示されるセンサを製造するために用いられる薄いコーティング工程はこれらの電気的堆積に伴う問題を回避する。
【0105】
また、スピンコーティング工程などの工程によって形成されたセンサは、電気的堆積工程の間にセンサに加わる材料応力に係わるものなど、電気的堆積に伴う他の問題も回避する。詳細には、電気的堆積工程はセンサに機械的応力、例えば、引っ張りおよび/または圧縮応力に起因する機械的応力を発生することが観察される。いくつかの状況において、それらの機械的応力は、亀裂または剥離し易いコーティングを有するセンサを招くことがある。これはスピンコーティングまたは他の低応力工程によってセンサに配置されたコーティングには観察されない。したがって、本発明のさらに他の実施形態は、スピンコーティング工程によるコーティング塗工を含んで、電気的堆積によって影響を受けるセンサ上のコーティングの亀裂および/または剥離を回避する方法である。
【0106】
センサ要素の処理に続いて、噴霧、浸漬など当分野で既知の広く様々な方法の任意の1つによって、1種以上の追加の機能性コーティングまたはカバー層を施すことができる。本発明の好ましい実施形態は、酵素含有層の上に堆積された被検物変化層を含む。活性センサ表面に接触する被検物(1つ又は複数)の量を変化させるその用途に加えて、被検物制限膜層を用いることによって、外部の材料によるセンサの汚染の問題も取り除かれる。当分野で既知のように、被検物変化膜層の厚さは、活性酵素に到達する被検物の量にも影響を与え得る。したがって、その塗工は画定された工程条件下で実施し、その寸法的な厚さを厳密に制御することが好ましい。下地層の微細加工においてそうであるように、被検物制限膜層材料の組成物自体が、被検物変化膜層に対する厳密な寸法制御に影響を与える要因であり得る。これに関して、いくつかのコポリマの種類、例えば、シロキサンと非シロキサン部のコポリマが特に有用であることが発見された。これらの材料は微細分散またはスピンコーティングして制御された厚さにすることができる。また、それらの最終的な構造は、本明細書に記述される他の個別の構造に整合するように、パターン形成とフォトリソグラフ技術によって設計することができる。これらの非シロキサン−シロキサンコポリマは、ジメチルシロキサン−アルケンオキシド、テトラメチルジシロキサン−ジビニルベンゼン、テトラメチルジシロキサン−エチレン、ジメチルシロキサン−シルフェニレン、ジメチルシロキサン−シルフェニレンオキシド、ジメチルシロキサン−a−メチルスチレン、ジメチルシロキサン−ビスフェノールAカルボナートコポリマ、またはその適切な組み合わせを含むが制限されない。コポリマ中の非シロキサン成分の重量パーセントは任意の有用な値に予め選択することができるが、典型的に、この比率は約40〜80重量%の範囲にある。上述のコポリマの中で、50〜55重量%の非シロキサン成分を含むジメチルシロキサン−ビスフェノールAカルボナートコポリマが好ましい。これらの材料はPetrarch Systems、Bristol、Pa.(USA)から購入することができ、この会社の製品カタログに説明されている。被検物制限膜層として働くことのできる他の材料は、ポリウレタン類、酢酸セルロース、硝酸セルロース、シリコンゴム、または相溶性であれば、シロキサン非シロキサンコポリマを含むこれらの材料の組み合わせを含むが制限されない。
【0107】
本発明の好ましい実施形態において、センサは親水性膜コーティングを含む被検物変化層を施す方法によって作られ、センサ層の酵素に接触できる被検物の量を調節することができる。例えば、本発明のグルコースセンサに加えられたカバー層はグルコース制限膜を含むことができ、電極上のグルコースオキシダーゼ酵素層に接触するグルコースの量を調節する。それらのグルコース制限膜は、それらの目的に適していることが知られている広く様々な材料、例えば、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン類、ポリウレタン類、酢酸セルロース類、Nafion(登録商標)、ポリエステルスルホン酸類(例えば、Kodak AQ)、ヒドロゲル、またはそれらの目的に適していることが当業者に知られている他の任意の膜から作ることができる。過酸化水素再生能力を有するセンサに関する本発明のいくつかの実施形態において、グルコースオキシダーゼ酵素層上に配置された膜層は、センサの配置された環境への過酸化水素の放出を抑制し、過酸化水素分子と電極検出要素間の接触を容易にする働きをする。
【0108】
本発明の方法のいくつかの実施形態において、接着促進層は、カバー層(例えば、被検物変化膜層)とセンサ化学物質層間に配置されてそれらの接触を容易にし、センサ装置の安定性を向上させる能力で選択される。本明細書に述べるように、好ましい接着促進層の組成物は、センサの安定性を提供する能力に加えて多くの望ましい特性を提供するように選択される。例えば、接着促進層に使用するのに好ましい組成物は、妨害の排除ならびに望ましい被検物の質量移動制御の役割を果たすように選択される。接着促進層は、それらの層間の接合を容易にする当分野で既知の広く様々な材料の1種から作ることができ、当分野で既知の広く様々な方法の任意の1つで施すことができる。接着促進層は、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物を含むことが好ましい。本発明のいくつかの実施形態において、接着促進層および/または被検物変化層は近接して存在するシロキサン部を架橋する能力で選択される薬品を含む。本発明の他の実施形態において、接着促進層および/または被検物変化層は隣接層中に存在するタンパク質のアミンまたはカルボキシル部を架橋する能力で選択される薬品を含む。場合による実施形態において、AP層は、典型的にグルコース制限膜などの被検物変化層に存在するポリマであるポリジメチルシロキサン(PDMS)をさらに含む。例示的実施形態において、処方は0.5〜20%のPDMS、好ましくは5〜15%のPDMS、最も好ましくは10%のPDMSを含む。AP層へのPDMSの添加は、センサが製造される際にAP層に発生する可能性のある孔または空隙を減じる意味で有利になり得る。
【0109】
上述のように、センサ層間の接着を促進するために通常使用されるカップリング剤はγ−アミノプロピルトリメトキシシランである。シラン化合物は通常適切な溶媒と混合して液体混合物を形成する。次いで、液体混合物は、スピンコーティング、浸漬コーティング、噴霧コーティング、及び微細分散を含むが制限されない多くの任意の方法によって、ウェーハまたは平面状検出装置の上に塗工または設けることができる。微細分散工程は自動工程として実施することができ、材料の微小点はデバイスの予め選択された複数の領域に分散される。さらに、「リフト−オフ」またはフォトレジストキャップを用いるフォトリソグラフ技術は、得られる選択浸透性膜(すなわち、選択的な浸透性を有する膜)の幾何形状を配置し画定するために用いることができる。シラン混合物の形成に使用するのに適した溶媒は、水性ならびに水混和性有機溶媒およびその混合物を含む。アルコール系水混和性有機溶媒およびその水性混合物は特に有用である。これらの溶媒混合物は、例えば、約200〜約6、000の範囲の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤をさらに含むことができる。これらの界面活性剤を液体混合物へ、混合物の約0.005〜約0.2g/dLの濃度で添加すると、得られる薄膜の平面化を助ける。また、シラン薬品塗工前のウェーハ表面のプラズマ処理は修飾された表面を与え、層の平面性確立をさらに促進する。水に不溶性の有機溶媒もシラン化合物の溶液の調製に用いることができる。これらの有機溶媒の例は、ジフェニルエーテル、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、またはその混合物を含むが制限されない。プロトン性溶媒またはその混合物が用いられるとき、水は結局アルコキシ基を加水分解(特にn=1のとき)して有機ケイ素の水酸化物を生成し、縮合してポリ(有機シロキサン)を形成する。また、これらの加水分解されたシラン剤も基板表面に存在することのできるヒドロキシルなどの極性基と縮合することができる。非プロトン性溶媒が用いられるとき、雰囲気の湿気はシラン剤に最初に存在したアルコキシ基を加水分解するのに十分である。シラン化合物のR’基(n=1または2のとき)は、続いて塗工される追加の層と機能的に融和性があるように選択される。R’基は、通常、基板表面への酵素の共役付着に有用な末端アミン基を含む(例えば、グルタルアルデヒドなどの化合物はムラカミ T.(Murakami,T.)らのAnalytical Letters 1986、19、1973〜86に記述されたように、結合剤として用いることができる)。
【0110】
センサのいくつかの他のコーティング層のように、接着促進層は当分野に既知の適切な照射および/または化学的および/または熱硬化ステップの1つ以上を行うことができる。代替の実施形態において、接着促進層がなくても膜カバー層をセンサ化学反応層に直接接触して配置することが可能なように、酵素層を十分に架橋しまたは調製することができる。
【0111】
本発明の好ましい実施形態は、ベース層を提供し、ベース層上にセンサ層を形成し、センサ層上に酵素層をスピンコーティングし、次いでセンサの上に被検物接触層(例えば、グルコース制限膜などの被検物変化層)を形成し、被検物接触層が酵素層に接触できる被検物の量を調節することによるセンサの製造方法である。好ましい方法において、酵素層はセンサ層上で蒸気架橋される。本発明の典型的な実施形態において、センサ層は少なくとも1つの作用電極と少なくとも1つの対電極を含むように形成される。非常に好ましい実施形態において、酵素層は少なくとも一部の作用電極と少なくとも一部の対電極の上に形成される。典型的に、センサ層上に形成される酵素層は厚さ2、1、0.5、0.25、または0.1ミクロン未満である。酵素層はグルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、またはラクトースデヒドロゲナーゼおよび/または同様の酵素を含むことが好ましい。特定の方法において、酵素層はグルコースオキシダーゼを含み、固定比率で担体タンパク質と一緒にセンサ層上にそれをコーティングすることによって安定化される。典型的に、担体タンパク質はアルブミンである。それらの方法はグルコースオキシダーゼ層と被検物接触層の間に配置された接着促進層を形成するステップを含むことが好ましい。場合によって、接着促進層には被検物接触層の形成の前に硬化工程を行う。
【0112】
本発明の関連する実施形態は、ベース層を提供し、少なくとも1つの作用電極と少なくとも1つの対電極を含むベース層上にセンサ層を形成し、センサ層の上に、スピンコーティング工程によってグルコースオキシダーゼ層(好ましくは、アルブミンとグルコースオキシダーゼを固定比率で組み合わせることによって安定化された層)を形成(グルコースオキシダーゼ層は作用電極の少なくとも一部と対電極の少なくとも一部をコーティングする)し、次いで、グルコースセンサ上にグルコースオキシダーゼ層に接触できるグルコースの量を調節するグルコース制限層を形成することによるグルコースセンサの製造方法である。それらの工程において、センサ層上に形成されるグルコースオキシダーゼ層は厚さ2、1、0.5、0.25、または0.1ミクロン未満であることが好ましい。典型的に、グルコースオキシダーゼコーティングはセンサ層上で蒸気架橋される。場合によって、グルコースオキシダーゼコーティングはセンサ層全体を被覆する。本発明の非常に好ましい実施形態において、接着促進層はグルコースオキシダーゼ層と被検物接触層の間に配置される。本発明のいくつかの実施形態において、被検物センサは、典型的に電気絶縁保護層である1層以上のカバー層をさらに含む(例えば、図2の要素106参照)。典型的に、それらのカバー層は被検物変化層の少なくとも一部の上に配置される。
【0113】
それらの工程によって製造された完成センサは、例えば、基板上の各センサを取り囲む線に沿って切断することによって、典型的に迅速かつ容易に支持基板(使用されるならば)から取り外される。切断ステップは、ベースおよびカバー層ならびに機能性コーティング層を、相互接続されたベースおよびカバー層材料が十分に残って完成センサの側縁部を封止するように、典型的に伝導性要素から少なくとも僅かに外側へ間隔を置いて各センサを取り囲むまたは包囲する線に沿って切断するのに用いられるUVレーザー切断デバイスを含む方法など、典型的に当分野で用いられる方法を用いることができる。さらに、典型的にセラミック基板を切断するのに使用されるダイシング技術を適切なセンサ実施形態で用いることができる。ベース層は典型的に下地支持基板に直接物理的に付着せず、または接着が最小であるので、さらに他の明らかな処理ステップ、または付着したセンサを支持基板から物理的に引っ張りまたは引き剥がすことによって発生する応力による損傷の危険性なく、センサは迅速かつ容易に支持基板から持ち上げることができる。その後、支持基板は洗浄して再使用、または廃棄することができる。代りに、機能性コーティング層(1つ又は複数)は、ベース層、センサ要素、及びカバー層を含むセンサが切断によって支持基板から取り外された後に施すことができる。
【0114】
(III)本発明の被検物センサ装置の使用方法
本発明の関連実施形態は哺乳動物体内の被検物の検出方法であり、その方法は、本明細書に開示される被検物センサ実施形態を哺乳動物に埋没し、次いで作用電極での電流変化を検出し、電流変化を被検物の存在と相関させて被検物が検出されることを含む。典型的に、被検物センサは電流変化を検出する作用電極がアノードであるようにアノード的に成極される。それらの一方法において、被検物センサ装置は哺乳動物中のグルコースを検出する。代替の方法において、被検物センサ装置はラクテート、カリウム、カルシウム、酸素、pH、および/または哺乳動物中の生理学的に関連のある任意の被検物を検出する。
【0115】
上で論じた構造を有するいくつかの被検物センサは、多くの非常に望ましい特性を有し、哺乳動物中の被検物を検出する様々な方法が可能である。例えば、それらの方法において、哺乳動物中に埋没された被検物センサ装置は、1、2、3、4、5、または6カ月を超える間、哺乳動物の体内の被検物を検出する働きをする。哺乳動物にそのように埋没された被検物センサ装置は、被検物がセンサに接触して15、10、5、または2分間以内に被検物に応答する電流変化を検出することが好ましい。それらの方法において、センサは哺乳動物の体内の様々な位置、例えば、脈管内および非脈管内の両方に埋没することができる。
【0116】
(IV)本発明のキット及びセンサセット
本発明の他の実施形態において、上述のように被検物の検出に有用なキットおよび/またはセンサセットが提供される。キットおよび/またはセンサセットは、典型的に容器、ラベルおよび上述の被検物センサを含む。適切な容器は、例えば、金属箔などの材料から作られた開放の容易な梱包、瓶、試験瓶、注入器、および試験管を含む。容器は金属(例えば、箔)、紙製品、ガラス、またはプラスチックなどの様々な材料から形成することができる。容器上のラベル、または容器に付属するラベルは、センサが選択された被検物の分析に用いられることを表示する。好ましい実施形態において、容器は厚さ2ミクロン未満のグルコースオキシダーゼの層でコーティングされたグルコースセンサを収容する。キットおよび/またはセンサセットは、センサを被検物環境に導入することを容易にするように設計された要素またはデバイス、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、注入器、及び使用説明書を備える梱包挿入物を含んで、市場および使用者の立場から望ましい他の材料をさらに含むことができる。
【0117】
明細書全体で様々な引用が参照される。さらに、本発明の様々な実施形態をより明らかに記述するために、関連技術からのいくつかの文言が本明細書で再構築される。本明細書における全ての引用の開示は、本願に引用して明確に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】グルコースとグルコースオキシダーゼ間の周知の反応図である。段階的に示したように、この反応はグルコースオキシダーゼ(GOx)、グルコース、および水中の酸素が関与する。反応の半分の還元では2個のプロトンと電子がβ−D−グルコースから酵素に移動してd−グルコノラクトンを生成する。反応の半分の酸化では酵素が酸素分子によって酸化されて過酸化水素を生成する。次いで、d−グルコノラクトンは水と反応してラクトン環を加水分解し、グルコン酸を生成する。本発明のいくつかの電気化学的センサにおいて、この反応によって生成した過酸化水素は作用電極で酸化される(H2O2→2H++O2+2e−)。
【図2】本発明の典型的な被検物センサ形態の概要図である。
【図3】被検物センサ装置で製造することのできる比較的平坦な「リボン」型センサ形態の平面図(上部)および断面図(下部)である。
【図4A】複数の作用電極、対電極および参照電極などの複数の伝導性要素を含む様々なセンサ形態を示す図である。
【図4B】複数の作用電極、対電極および参照電極などの複数の伝導性要素を含む様々なセンサ形態を示す図である。図4Bは、7個のバイアスと4個の作用電極を備えるセンサ設計を示す(W=作用電極(+)、C=対電極(−)、およびR=参照電極である)。
【図5A】本発明の被検物センサが、インスリン送達カテーテル、センサとカテーテルを組み合わせたヘッダー、および薬剤注入ポンプなど、他の医療デバイスとどのようにして結合することができるかを示す図である。
【図5B】本発明の交換可能な被検物センサが、例えば、医療デバイスに結合したポートを使用することによって薬剤注入ポンプなどの他の医療デバイス(例えば、固定電気接続を備える皮下ポート)と結合することができるこの機構の変形の例を示す図である。図5Bに提供される設計は、ポンプのポートに一体化された交換可能なセンサを示し、ポートは固定電気接続を備える皮下ポートである(センサが固定位置に捩られるとき、電気的接続が連結される)。また、図5Bは迅速接続固定リングおよびセンサを位置に固定するためのキーを備える交換可能なセンサである。
【図6】被検物検出層中のグルコースオキシダーゼを用いる、本発明の過酸化物系グルコースセンサの実施形態の特性を表すグラフであり、過酸化物センサの長期安定性を示す。
【図7A】被検物検出層にラクテートオキシダーゼを用いる、本発明の長期間酸素系ラクテートセンサの実施形態(カテーテル状デバイス構成において)の特性を表すグラフである。図7Aのデータはイヌ(canine)のインビボの研究から導かれる。
【図7B】被検物検出層にラクテートオキシダーゼを用いる、本発明の長期間酸素系ラクテートセンサの実施形態(カテーテル状デバイス構成において)の特性を表すグラフである。図7Bのデータはイヌのインビボの研究から導かれる。
【図7C】被検物検出層にラクテートオキシダーゼを用いる、本発明の長期間酸素系ラクテートセンサの実施形態(カテーテル状デバイス構成において)の特性を表すグラフである。図7Cはラクテートオキシダーゼ(LOx)処方が、動的範囲および感度を含んで、非常に望ましい特性を有することを示す。
【図7D】被検物検出層にラクテートオキシダーゼを用いる、本発明の長期間酸素系ラクテートセンサの実施形態(カテーテル状デバイス構成において)の特性を表すグラフである。図7Dはラクテートオキシダーゼ(LOx)処方が、動的範囲および感度を含んで、非常に望ましい特性を有することを示す。
【図8A】ラクテートの過酸化物系センサのインビトロ較正の像を提供する図である。図8Aは較正研究を提供する。
【図8B】ラクテートの過酸化物系センサのインビトロ較正の像を提供する図である。図8Bは較正曲線を提供する。
【図8C】ラクテートの過酸化物系センサのインビトロ較正の像を提供する図である。図8Cはセンサの機構を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物内に埋没するための被検物センサ装置であって、
ベース層と、
前記ベース層の上に配置された、作用電極を含む伝導層と、
前記伝導層上に配置された、被検物の存在下で前記伝導層中の作用電極での電流を検出可能に変化させる被検物検出層と、
前記被検物検出層上に配置された、前記被検物検出層と前記被検物検出層上に配置された被検物変化層間の接着を促進する接着促進層と、
前記被検物検出層の上に配置された、そこを通る前記被検物の拡散を変化させる被検物変化層と、
を含み、
前記被検物センサ装置が、前記被検物センサ装置の前記伝導層中のアノード作用電極で電流の変化を検出することができるように、アノード分極によって機能する構造であり、
前記アノード作用電極で検出することのできる電流変化を前記被検物の濃度と相関させることができることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記接着促進層がシラン化合物を含むことを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記接着促進層がポリジメチルシロキサンを含むことを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記被検物検出層と前記被検物変化層との間に配置されたタンパク質層をさらに含むことを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の被検物センサ装置であって、前記タンパク質層内のタンパク質がウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンからなる群から選択されるアルブミンであることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項6】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記被検物変化層の少なくとも一部の上に配置されたカバー層をさらに含み、前記カバー層が、検出すべき被検物を含む溶液に前記被検物変化層の少なくとも一部を暴露する孔をさらに含むことを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項7】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記被検物検出層がグルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、およびラクトースデヒドロゲナーゼからなる群から選択される酵素を含むことを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項8】
請求項7に記載の被検物センサ装置であって、前記酵素層が、前記酵素に対して実質的に固定された比率で担体タンパク質をさらに含むことを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項9】
請求項8に記載の被検物センサ装置であって、前記酵素および前記担体タンパク質が前記酵素層全体に実質的に均一に分配されていることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項10】
請求項7に記載の被検物センサ装置であって、前記酵素層が、1、0.5、0.25、0.1ミクロン未満からなる群から選択される厚さであることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項11】
請求項10に記載の被検物センサ装置であって、前記酵素がグルコースオキシダーゼであり、前記被検物センサ装置が前記哺乳動物中のグルコースレベルを検出することができることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項12】
請求項11に記載の被検物センサ装置であって、前記伝導層中のアノード作用電極での電流が、グルコースとグルコースオキシダーゼとの間の酵素反応から発生する過酸化水素によって変化することを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項13】
請求項10に記載の被検物センサ装置であって、前記酵素がラクテートオキシダーゼであり、前記被検物センサ装置が前記哺乳動物中のラクテートレベルを検出することができることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項14】
請求項13に記載の被検物センサ装置であって、前記伝導層中のアノード作用電極が、ラクテートとラクテートオキシダーゼ間の酵素反応から発生する過酸化水素によって変化することを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項15】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記伝導層が対電極または参照電極をさらに含むことを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項16】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記哺乳動物中に30日を超える期間埋没するのに適していることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項17】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記哺乳動物中の非脈管空間に埋没するのに適していることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項18】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記哺乳動物の体内に存在する被検物への暴露に応答する電流変化が、前記被検物が前記センサに接触した15、10、5、または2分間内に電流計によって検出されることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項19】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、平面幾何形状であることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項20】
哺乳動物内に埋没するためのセンサ装置の製造方法であって、
ベース層を提供するステップと、
前記ベース層上に、作用電極を含む伝導層を形成するステップと、
前記伝導層上に、被検物の存在下で前記伝導層の作用電極での電流を変化させることができる組成物を含む被検物検出層を形成するステップと、
場合によって、前記被検物検出層上にタンパク質層を形成するステップと、
前記被検物検出層または任意のタンパク質層の上に接着促進層を形成するステップと、
前記接着促進層上に配置された、そこを通る前記被検物の拡散を変化させる組成物を含む被検物変化層を形成するステップと、
前記被検物変化層の少なくとも一部の上に配置された、前記被検物変化層の少なくとも一部の上の孔をさらに含むカバー層を形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記接着促進層がシラン化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法であって、前記被検物検出層がスピンコーティング工程によって形成されることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項20に記載の方法であって、前記被検物検出層が1、0.5、0.25、0.1ミクロン未満からなる群から選択される厚さであることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項20に記載の方法であって、前記方法が、前記被検物検出層の上にタンパク質層を形成するステップを含み、前記タンパク質層内のタンパク質が、ウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンからなる群から選択されるアルブミンであることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項20に記載の方法であって、前記被検物検出層がグルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、およびラクトースデヒドロゲナーゼからなる群から選択される酵素組成物を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、前記被検物検出層が、前記酵素に対して実質的に固定された比率で担体タンパク質組成物をさらに含み、前記酵素と前記担体タンパク質が前記被検物検出層全体に実質的に均一に分配されていることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項20に記載の方法であって、前記伝導層が対電極または参照電極をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項26に記載の方法であって、前記酵素がグルコースオキシダーゼであり、前記センサが、グルコースオキシダーゼとグルコース間の反応から得られる過酸化水素の濃度変化によって生じる前記作用電極での電流変化を検出するように設計されていることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項20に記載の方法であって、前記被検物センサ装置が平面幾何形状形態に形成されていることを特徴とする方法。
【請求項30】
哺乳動物の体内の被検物を検出する方法であって、前記方法が前記哺乳動物中に被検物センサを埋没することを含み、前記被検物センサが、
ベース層と、
前記ベース層の上に配置された、作用電極、参照電極、および対電極を含む伝導層と、
前記伝導層上に配置された、被検物の存在下で前記伝導層中の作用電極での電流を検出可能に変化させる被検物検出層と、
場合によって前記被検物検出層上に配置されたタンパク質層と、
前記被検物検出層または任意のタンパク質層上に配置された、前記被検物検出層と前記被検物検出層上に配置された被検物変化層との間の接着を促進する接着促進層と、
前記被検物検出層の上に配置された、そこを通る前記被検物の拡散を変化させる被検物変化層と、
前記被検物変化層の少なくとも一部の上に配置された、前記被検物変化層の少なくとも一部の上の孔をさらに含むカバー層と、
を含み、
前記作用電極での電流変化を検出し、前記電流変化を前記被検物の存在と相関させて前記被検物が検出されることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、前記被検物センサが、前記電流変化を検出する作用電極がアノードであるようにアノード的に成極されることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項30に記載の方法であって、前記方法に用いられる前記被検物センサ中の接着促進層がシラン組成物を含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項30に記載の方法であって、前記方法に用いられる前記被検物センサが、前記被検物検出層と前記被検物変化層との間に配置されたタンパク質層を含み、前記タンパク質層内のタンパク質がウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンからなる群から選択されるアルブミンであることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項30に記載の方法であって、前記方法に用いられる前記被検物センサ中の被検物検出層がグルコースオキシダーゼまたはラクテートオキシダーゼを含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、前記酵素がグルコースオキシダーゼであり、前記被検物センサ装置が前記哺乳動物中のグルコースを検出することを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項34に記載の方法であって、前記酵素がラクテートオキシダーゼであり、前記被検物センサ装置が前記哺乳動物中のラクテートを検出することを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項30に記載の方法であって、前記被検物センサ装置が前記哺乳動物内の非脈管空間中に埋没されることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項30に記載の方法であって、前記哺乳動物に埋没された前記被検物センサ装置が、1、2、3、4、5、または6カ月を超える期間、哺乳動物の体内の被検物を検出するように機能することを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項30に記載の方法であって、前記哺乳動物に埋没された前記被検物センサ装置が、前記センサへの被検物の接触の15、10、5、または2分間内に、被検物に応答する電流の変化を検出することを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項30に記載の方法であって、前記方法に用いられる前記被検物センサ中の前記被検物検出層が1、0.5、0.25、0.1ミクロン未満の厚さであることを特徴とする方法。
【請求項41】
容器、ならびに前記容器内に請求項1に記載の被検物センサ装置および前記被検物センサ装置を使用するための説明書を含むことを特徴とするキット。
【請求項1】
哺乳動物内に埋没するための被検物センサ装置であって、
ベース層と、
前記ベース層の上に配置された、作用電極を含む伝導層と、
前記伝導層上に配置された、被検物の存在下で前記伝導層中の作用電極での電流を検出可能に変化させる被検物検出層と、
前記被検物検出層上に配置された、前記被検物検出層と前記被検物検出層上に配置された被検物変化層間の接着を促進する接着促進層と、
前記被検物検出層の上に配置された、そこを通る前記被検物の拡散を変化させる被検物変化層と、
を含み、
前記被検物センサ装置が、前記被検物センサ装置の前記伝導層中のアノード作用電極で電流の変化を検出することができるように、アノード分極によって機能する構造であり、
前記アノード作用電極で検出することのできる電流変化を前記被検物の濃度と相関させることができることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記接着促進層がシラン化合物を含むことを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記接着促進層がポリジメチルシロキサンを含むことを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記被検物検出層と前記被検物変化層との間に配置されたタンパク質層をさらに含むことを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の被検物センサ装置であって、前記タンパク質層内のタンパク質がウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンからなる群から選択されるアルブミンであることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項6】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記被検物変化層の少なくとも一部の上に配置されたカバー層をさらに含み、前記カバー層が、検出すべき被検物を含む溶液に前記被検物変化層の少なくとも一部を暴露する孔をさらに含むことを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項7】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記被検物検出層がグルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、およびラクトースデヒドロゲナーゼからなる群から選択される酵素を含むことを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項8】
請求項7に記載の被検物センサ装置であって、前記酵素層が、前記酵素に対して実質的に固定された比率で担体タンパク質をさらに含むことを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項9】
請求項8に記載の被検物センサ装置であって、前記酵素および前記担体タンパク質が前記酵素層全体に実質的に均一に分配されていることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項10】
請求項7に記載の被検物センサ装置であって、前記酵素層が、1、0.5、0.25、0.1ミクロン未満からなる群から選択される厚さであることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項11】
請求項10に記載の被検物センサ装置であって、前記酵素がグルコースオキシダーゼであり、前記被検物センサ装置が前記哺乳動物中のグルコースレベルを検出することができることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項12】
請求項11に記載の被検物センサ装置であって、前記伝導層中のアノード作用電極での電流が、グルコースとグルコースオキシダーゼとの間の酵素反応から発生する過酸化水素によって変化することを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項13】
請求項10に記載の被検物センサ装置であって、前記酵素がラクテートオキシダーゼであり、前記被検物センサ装置が前記哺乳動物中のラクテートレベルを検出することができることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項14】
請求項13に記載の被検物センサ装置であって、前記伝導層中のアノード作用電極が、ラクテートとラクテートオキシダーゼ間の酵素反応から発生する過酸化水素によって変化することを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項15】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記伝導層が対電極または参照電極をさらに含むことを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項16】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記哺乳動物中に30日を超える期間埋没するのに適していることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項17】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記哺乳動物中の非脈管空間に埋没するのに適していることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項18】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、前記哺乳動物の体内に存在する被検物への暴露に応答する電流変化が、前記被検物が前記センサに接触した15、10、5、または2分間内に電流計によって検出されることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項19】
請求項1に記載の被検物センサ装置であって、平面幾何形状であることを特徴とする被検物センサ装置。
【請求項20】
哺乳動物内に埋没するためのセンサ装置の製造方法であって、
ベース層を提供するステップと、
前記ベース層上に、作用電極を含む伝導層を形成するステップと、
前記伝導層上に、被検物の存在下で前記伝導層の作用電極での電流を変化させることができる組成物を含む被検物検出層を形成するステップと、
場合によって、前記被検物検出層上にタンパク質層を形成するステップと、
前記被検物検出層または任意のタンパク質層の上に接着促進層を形成するステップと、
前記接着促進層上に配置された、そこを通る前記被検物の拡散を変化させる組成物を含む被検物変化層を形成するステップと、
前記被検物変化層の少なくとも一部の上に配置された、前記被検物変化層の少なくとも一部の上の孔をさらに含むカバー層を形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記接着促進層がシラン化合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法であって、前記被検物検出層がスピンコーティング工程によって形成されることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項20に記載の方法であって、前記被検物検出層が1、0.5、0.25、0.1ミクロン未満からなる群から選択される厚さであることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項20に記載の方法であって、前記方法が、前記被検物検出層の上にタンパク質層を形成するステップを含み、前記タンパク質層内のタンパク質が、ウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンからなる群から選択されるアルブミンであることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項20に記載の方法であって、前記被検物検出層がグルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートオキシダーゼ、ヘキソキナーゼ、およびラクトースデヒドロゲナーゼからなる群から選択される酵素組成物を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、前記被検物検出層が、前記酵素に対して実質的に固定された比率で担体タンパク質組成物をさらに含み、前記酵素と前記担体タンパク質が前記被検物検出層全体に実質的に均一に分配されていることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項20に記載の方法であって、前記伝導層が対電極または参照電極をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項26に記載の方法であって、前記酵素がグルコースオキシダーゼであり、前記センサが、グルコースオキシダーゼとグルコース間の反応から得られる過酸化水素の濃度変化によって生じる前記作用電極での電流変化を検出するように設計されていることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項20に記載の方法であって、前記被検物センサ装置が平面幾何形状形態に形成されていることを特徴とする方法。
【請求項30】
哺乳動物の体内の被検物を検出する方法であって、前記方法が前記哺乳動物中に被検物センサを埋没することを含み、前記被検物センサが、
ベース層と、
前記ベース層の上に配置された、作用電極、参照電極、および対電極を含む伝導層と、
前記伝導層上に配置された、被検物の存在下で前記伝導層中の作用電極での電流を検出可能に変化させる被検物検出層と、
場合によって前記被検物検出層上に配置されたタンパク質層と、
前記被検物検出層または任意のタンパク質層上に配置された、前記被検物検出層と前記被検物検出層上に配置された被検物変化層との間の接着を促進する接着促進層と、
前記被検物検出層の上に配置された、そこを通る前記被検物の拡散を変化させる被検物変化層と、
前記被検物変化層の少なくとも一部の上に配置された、前記被検物変化層の少なくとも一部の上の孔をさらに含むカバー層と、
を含み、
前記作用電極での電流変化を検出し、前記電流変化を前記被検物の存在と相関させて前記被検物が検出されることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、前記被検物センサが、前記電流変化を検出する作用電極がアノードであるようにアノード的に成極されることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項30に記載の方法であって、前記方法に用いられる前記被検物センサ中の接着促進層がシラン組成物を含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項30に記載の方法であって、前記方法に用いられる前記被検物センサが、前記被検物検出層と前記被検物変化層との間に配置されたタンパク質層を含み、前記タンパク質層内のタンパク質がウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンからなる群から選択されるアルブミンであることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項30に記載の方法であって、前記方法に用いられる前記被検物センサ中の被検物検出層がグルコースオキシダーゼまたはラクテートオキシダーゼを含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、前記酵素がグルコースオキシダーゼであり、前記被検物センサ装置が前記哺乳動物中のグルコースを検出することを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項34に記載の方法であって、前記酵素がラクテートオキシダーゼであり、前記被検物センサ装置が前記哺乳動物中のラクテートを検出することを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項30に記載の方法であって、前記被検物センサ装置が前記哺乳動物内の非脈管空間中に埋没されることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項30に記載の方法であって、前記哺乳動物に埋没された前記被検物センサ装置が、1、2、3、4、5、または6カ月を超える期間、哺乳動物の体内の被検物を検出するように機能することを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項30に記載の方法であって、前記哺乳動物に埋没された前記被検物センサ装置が、前記センサへの被検物の接触の15、10、5、または2分間内に、被検物に応答する電流の変化を検出することを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項30に記載の方法であって、前記方法に用いられる前記被検物センサ中の前記被検物検出層が1、0.5、0.25、0.1ミクロン未満の厚さであることを特徴とする方法。
【請求項41】
容器、ならびに前記容器内に請求項1に記載の被検物センサ装置および前記被検物センサ装置を使用するための説明書を含むことを特徴とするキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【公表番号】特表2008−501415(P2008−501415A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515211(P2007−515211)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/017885
【国際公開番号】WO2005/121355
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(595038051)メドトロニック ミニメド インコーポレイテッド (71)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/017885
【国際公開番号】WO2005/121355
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(595038051)メドトロニック ミニメド インコーポレイテッド (71)
【Fターム(参考)】
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