説明

被覆におけるケイ光ポリマーの使用方法および被覆組成物

【課題】被覆におけるケイ光ポリマーの使用方法を提供する。
【解決手段】被覆におけるケイ光ポリマーの使用方法:ここで、被覆組成物がケイ光化合物(ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオランテン、アクリジン、カルバゾール、ピレン、クリセン、トリフェニレン、ペリレン及びそれらの置換芳香族誘導体、並びに、ナフチルメチルメタクリレート、ナフチルエチルメタクリレート、9−アントリルメタクリレート、9−アントリルメチルメタクリレート、2−(9−アントリル)エチルメタクリレート、1’−(9−アントリル)エチルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2−メチレン−3−(1−ナフチル)プロピオン酸、N−ジベンゾスベレニルアクリルアミド、(9−フェナントリル)メチルメタクリレート及び9−ビニルフェナントレンからなる群から選択される)の存在下で、エチレン性不飽和モノマーを重合することによって得られるケイ光ポリマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)本発明は、ケイ光ポリマーを製造する方法、及びかかるケイ光ポリマーを含む被覆組成物に関する。特に、本発明方法は、得られる組成物をケイ光法によって検出することができるという、被覆組成物において有用な、ポリマーの製造においてケイ光化合物を導入することに関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ光ポリマーを製造する方法は、米国特許第5,125,929号(Amey)に開示されている。該特許においては、Michael付加反応によって、ケイ光性の線状アミノ酸ポリマーが製造される。この場合においては、ケイ光はポリマー骨格によって生成される。この方法は、その化学物質の性質によって制限される。更に、Michael付加反応によって製造されるポリマーの殆どはケイ光性を有しない。
【0003】
米国特許第5,043,406号(Fong)においては、アクリルアミドモノマーと、ペンダントケイ光基を有するモノマーとを共重合することによって、アクリルアミドポリマー中にケイ光基を含ませる方法が開示されている。この方法に対する主たる制限は、ペンダントケイ光基を有する商業的に入手可能なモノマーが不足しているということである。他のモノマーを変性してペンダントケイ光基を含ませることができたとしても、それを行うことにより増加するコストによって、かかるケイ光ポリマーのコストが非常に高くなる。
【特許文献1】米国特許第5,125,929号明細書
【特許文献2】米国特許第5,043,406号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Amey及びFongによって開示された方法のいずれも、包含される化学物質の性質、或いは入手できるケイ光出発材料の不足のいずれかのために、適用が制限される。必要とされているものは、広範囲の種々のポリマー中にケイ光性を含ませて、かかるケイ光ポリマーの広範囲な使用を可能にする方法である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
本発明の第1の態様は、
被覆におけるケイ光ポリマーの使用方法であって、
被覆組成物が、エチレン性不飽和モノマーを;
ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオランテン、アクリジン、カルバゾール、ピレン、クリセン、トリフェニレン、ペリレン及びそれらの置換芳香族誘導体、並びに、ナフチルメチルメタクリレート、ナフチルエチルメタクリレート、9−アントリルメタクリレート、9−アントリルメチルメタクリレート、2−(9−アントリル)エチルメタクリレート、1’−(9−アントリル)エチルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2−メチレン−3−(1−ナフチル)プロピオン酸、N−ジベンゾスベレニルアクリルアミド、(9−フェナントリル)メチルメタクリレート及び9−ビニルフェナントレン:からなる群から選択されるケイ光化合物の存在下で;
重合することによって得られるケイ光ポリマーを含み;得られるポリマーがケイ光基を含むことを特徴とする、
被覆におけるケイ光ポリマーの使用方法に関する。
【0006】
本発明の第2の態様は、ケイ光化合物の量が、モノマーの全重量を基準として0.001〜3.0重量%である、前記使用方法に関する。
【0007】
本発明の第3の態様は、ケイ光化合物が、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオランテン及びそれらの置換芳香族誘導体、並びに、ナフチルエチルメタクリレート、9−アントリルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2−メチレン−3−(1−ナフチル)プロピオン酸、(9−フェナントリル)メチルメタクリレート、9−ビニルフェナントレン及びこれらの組合せからなる群から選択される、前記方法に記載の被覆組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(詳細な説明)
本明細書中において用いられる以下の用語は、他に明確に示さない限り、以下の定義を有する。「ラテックス」又は「ラテックス組成物」は、例えば乳化重合のような公知の重合法によって調製することのできる水不溶性ポリマーの分散液を意味する。「ラテックス」は、また、水性組成物中に分散されたポリマーをも意味し、該ポリマーは、水性媒体中で直接調製することができるか、或いはまず非水性媒体中で(例えば溶液重合を用いて)調製し、次に引き続いて水性媒体中に分散させることもできる。「ケイ光体(fluorescent)」又は「ケイ光(fluorescence)」は、照射によって励起されると、「ケイ光を発する(fluoresce)」と称される第2の励起状態になるか、或いは元の励起状態よりも低いエネルギー(より長い波長)で放射線を発する化合物を意味する。「発色団」は、ポリマーに共有結合することのできる、ケイ光を有する化合物を意味する。「骨格」は、ペンダント基又は末端基を除くポリマーの主鎖を意味し、「ペンダント基」は、ポリマーの主鎖から懸垂された基を意味し、「末端基」は、ポリマー鎖の末端から懸垂された基を意味する。塗料に関して用いられる「PVC」という用語は、顔料容量濃度を意味する。「基」及び「部分」という用語は交換可能に用いられる。以下の略号を用いる。cm=センチメートル;mm=ミリメートル;nm=ナノメートル;ml=ミリリットル;HPLC=高圧液体クロマトグラフィー;UV=紫外線;ai=活性成分。特に他に示さない限り、示される範囲は両端を含めるように読まれるべきである。
【0009】
ある種の弱い重合禁止剤を用いて、該重合禁止剤と適当なモノマーとの遊離基共重合によって、広範囲の種々のポリマー中にケイ光基を含ませることができることを見出した。これらの重合禁止剤は、多核芳香族炭化水素として分類することができる。かかる多核芳香族炭化水素発色団の例は、ロシア国特許478839号(Gladyshev)及び”Polymerization Inhibition by Aromatic Compounds”,J.Polymer Sci.,52:31(1961)においてみることができる。また、かかる多核芳香族炭化水素の置換芳香族誘導体もこの方法において用いることができることも見出した。かかる誘導体は、多核芳香族炭化水素が芳香族性を失うことなしに置換されたものである。これらの置換基としては、場合によってヘテロ原子によって置換されているC〜C12分枝鎖又は直鎖アルキル又はアリール基;カルボン酸及びそのエステル;スルホン酸及びその誘導体;シアノ基;及びハロゲンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい多核芳香族炭化水素としては、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオランテン、アクリジン、カルバゾール、ピレン、クリセン、トリフェニレン、ペリレン及びこれらの置換芳香族誘導体が挙げられる。ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオランテン及びこれらの置換芳香族誘導体を用いることが特に好ましい。発色団の組合せを用いることもできる。
【0010】
本発明の他の態様においては、ケイ光ポリマーを、生成物同定のためのマーカーとして用いる。これに関しては他のタイプのケイ光ポリマーを用いることができる。例えば、かかるポリマーは、適当なモノマーと、ペンダントケイ光官能基を有するエチレン性不飽和モノマーとを共重合することによって調製することができる。
【0011】
ケイ光ポリマーの検出は、被覆組成物又は得られた(施された)被覆の試料を採取し、試料を分析して、ケイ光波長及びケイ光発光の強度を測定することによって行われる。HPLC又はGPC分析を用いて、ケイ光基がポリマーに共有結合しているか否かを測定することができる(例えば、S.Sosnowskiら,J.Polymer Sci.,Part−A:Polymer Chemistry 32:1497(1994)を参照)。施した被覆の試料を用いる場合には、当該技術において公知の方法に従って、分析前にポリマーを他の被覆成分から抽出することが有用であろう。
【0012】
ペンダントケイ光官能基を有するエチレン性不飽和モノマーの例は、米国特許第5,043,406号(Fong);S.Sosnowskiら,J.Polymer Sci.,Part−A:Polymer Chemistry 32:1497(1994);C.L.Zhaoら,Macromolecules,23:4082(1990);E.M.Boczarら,Macromolecules,26:5772(1993);M.A.Foxら,Macromolecules,23:4533(1990);及び、C.Simionescuら,J.Polymer Sci.,23:2089(1985)においてみることができる。ペンダントケイ光官能基を有する好ましいエチレン性不飽和モノマーとしては、ナフチルメチルメタクリレート、ナフチルエチルメタクリレート、9−アントリルメタクリレート、9−アントリルメチルメタクリレート、2−(9−アントリル)エチルメタクリレート、1’−(9−アントリル)エチルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2−メチレン−3−(1−ナフチル)プロピオン酸、N−ジベンゾスベレニルアクリルアミド、(9−フェナントリル)メチルメタクリレート及び9−ビニルフェナントレンが挙げられる。ナフチルエチルメタクリレート、9−アントリルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2−メチレン−3−(1−ナフチル)プロピオン酸、(9−フェナントリル)メチルメタクリレート、9−ビニルフェナントレン又はこれらの組合せを用いることが特に好ましい。
【0013】
ポリマー中に含ませる発色団が多核芳香族炭化水素であるか又はペンダントケイ光官能基を有するエチレン性不飽和モノマーであるかに拘わらず、導入の方法は同様である。発色団は、遊離基重合法において他の成分として扱われ、一般に反応の開始時にモノマーに加える。しかしながら、この方法からの変法は当業者には公知である。重合は、水性媒体、極性又は非極性有機溶媒又はこれらの組合せをはじめとする任意の媒体中で行うことができる。かかる重合法は、当該技術において周知であり、更に本明細書中で論じることはしない。
【0014】
本発明のケイ光ポリマーの調製において用いる発色団の量は、発色団のタイプ、及び発色団をどのようにして得られるポリマー中に結合させるか(ペンダント基か又は末端基か、或いはポリマー骨格中に挿入するか)によって変化する。しかしながら、発色団は、通常、モノマー混合物中に0.001〜3.0重量%の量で加える。発色団を、0.005〜1.0重量%の量で加えることが好ましく、0.01〜0.5重量%の量で加えることが最も好ましい。
【0015】
本発明において有用な典型的なコモノマーは、遊離基重合をすることのできるものである。コモノマーの選択は、発色団の選択に応じて変化する。本明細書中において用いる「アクリル」という用語は、一般的な意味において、モノマーの少なくとも一つがアクリル又はメタクリルタイプのもの、例えばアクリル酸及びメタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル、及びこれらの置換誘導体であるポリマーを示すために用いられる。「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリル誘導体の両方を包含する。かかるモノマーは当該技術において周知である。かかるアクリルモノマーの例としては、アルキル(メタ)アクリレート、例えばメチルメタクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−プロピルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ネオペンチルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、n−デシルメタクリレートなど;他のアクリレート及びメタクリレート、例えば2−ブロモエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−メトキシブチルメタクリレート及び2−n−ブトキシエチルメタクリレート;活性水素官能性モノマー、例えばヒドロキシ置換(メタ)アクリレート、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート及び3−ヒドロキシプロピルアクリレート;スルホン酸を含む(メタ)アクリレート、例えばスルホエチルメタクリレート及びスルホプロピルアクリレート;及びリン酸、例えば2−ホスホエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0016】
本発明において用いることのできる更なるコモノマーとしては、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、ナトリウムスチレンスルホネート、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリルロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、エチルアクリロニトリル、メチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、1,4−ブタングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ビニルバーサテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプロエート、ビニル2−エチルヘキサノエート及びビニルデカノエート;アリルクロリド、メタリルクロリド、ビニリデンクロリド、ビニルクロリド、ビニルフルオリド、ビニリデンフルオリド、ナトリウムビニルスルホネート、ブチルビニルスルホネート、フェニルビニルスルホン、メチルビニルスルホン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリジノン、アクロレイン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド、イソブトキシ(メタ)アクリルアミドなど;アリルトリエトキシシラン、アリルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなど;他のエチレン性不飽和カルボン酸及びこれらのエステル、例えば、ジ−及びトリ−カルボン酸、例えばイタコン酸などのジアルキル及びトリアルキルエステル、例えばジ(2−エチルヘキシル)マレエート、ジブチルマレエート、ジメチルフマレート、ジメチルイタコネート、ジエチルシトラコネート、トリメチルアコニテート、ジエチルメサコネート、ジ(2−エチルヘキシル)イタコネート、ジ(2−クロロエチル)イタコネート、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、イタコン酸;及びオレフィン、例えばジイソブチレン、1−オクテン、1−デセン、1−ヘキサデセンなどが挙げられる。
【0017】
これらのタイプのモノマーは、通常、水溶性又は油溶性の開始剤の存在下で重合される。有用な開始剤の例としては、ペルスルフェート、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルカーボネート、ペルアセテート、ペルベンゾエート、アゾ官能性化合物及び他の遊離基生成種が挙げられる。
【0018】
通常、界面活性剤を乳化重合又は分散重合において用いて、安定性を得、且つ粒径を制御する。公知の界面活性剤としては、アニオン性又は非イオン性乳化剤又はこれらの組合せが挙げられる。代表的なアニオン乳化剤としては、アルカリ又はアンモニウムアルキルスルフェート、アルカリ又はアンモニウムアルキルエーテルスルフェート、アルカリ又はアンモニウムアルキルアリールエーテルスルフェート、アルキルスルホネート、脂肪酸の塩、スルホスクシン酸塩のエステル、アルキルジフェニルエーテルジスルホネート、及びコンプレックス有機ホスフェートエステルの塩又は遊離酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的な非イオン性乳化剤としては、ポリエーテル、例えばエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの縮合物、例えば、直鎖及び分枝鎖アルキル及びアルキルアリールポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールエーテル及びチオエーテル、約7〜約18個の炭素原子を有するアルキル基を有し、約4〜約100個のエチレンオキシ単位を有するアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、及びヘキシトールのポリオキシアルキレン誘導体、例えばソルビタン、ソルバイド、マンニタン(mannitans)及びマンニッド(mannides)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。界面活性剤は、本発明のポリマー組成物中において、最終組成物の全重量を基準として0.1〜3重量%のレベルで用いることができる。
【0019】
本発明のケイ光ポリマーの調製の際には、任意の連鎖移動剤又はこれらの混合物を用いて分子量を制御することができる。好適な連鎖移動剤としては、例えば、C〜C12アルキル又は官能性アルキルメルカプタン、アルキル又は官能性アルキルメルカプトアルカノエート、又はハロゲン化炭化水素が挙げられ、ポリマーの重量を基準として0.01〜10重量%のレベルでポリマー中において用いることができる。
【0020】
また、得られるポリマーの分子量を上昇させることが有用である場合がある。これは、少なくとも二つのエチレン性不飽和部位を有するエチレン性不飽和モノマーを加えることによって行うことができる。かかる化合物の例としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジメタリルクロレンデート(dimethallyl chlorendate)、ジアリルクロレンデート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルイソシアネート、トリアリルトリメリテート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート及びジビニルベンゼンが挙げられる。かかる化合物は、ポリマーの重量を基準として0.01〜10重量%のレベルでポリマー中において用いることができる。
【0021】
本発明において含ませることのできる他の場合によって用いる成分としては、共溶媒、顔料、充填剤、分散剤、硬化剤、湿潤剤、消泡剤、UV吸収剤、酸化防止剤、殺生物剤、及び安定剤が挙げられる。
【0022】
本発明の被覆組成物を用いて、好適な基材、例えば木材、再構成木材製品(reconstituted wood products)、コンクリート、アスファルト、ファイバーセメント、石材、大理石、クレー、プラスチック(例えばポリスチレン、ポリエチレン、ABS、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリフェニレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリビニルクロリド、ノリル、及びポリスルホン)、紙、段ボール、織物、皮革、及び金属(鉄金属及び非鉄金属)上に被覆を与えることができる。驚くべきことに、被覆組成物中に本発明のケイ光ポリマーを含ませると、得られる被覆のUV耐性が向上せしめられることが見出された。したがって、本発明の被覆組成物は、UV光に定常的に曝露される基材(例えば室外用途)を被覆するのに好ましく用いられる。
【0023】
本発明の被覆組成物は、スプレー又はエアレススプレー、ロール、ブラシ、カーテン塗布、フラッド塗布及び浸漬塗布法のような公知の塗布法を用いて所望の基材に施すことができる。基材に施したら、被覆組成物は、雰囲気温度又は昇温下で硬化させることができる。
【実施例】
【0024】
(試験方法)
光沢保持:
3ミル(0.076mm)のBirdフィルムアプリケーターを用いてLeneta−5Cチャート上にそれぞれの試験塗料のフィルムを形成させた。フィルムを、25℃で相対湿度50%において7日間乾燥させた。次に、Glossgard−II光沢計を用いて20°及び60°の光沢(垂直から20°及び60°の角度で反射された光)の初期の読みを採った。Weather−O−meterに曝露した後の20°及び60°光沢の読みを繰り返し、元の値の保持率(%)として報告した。光沢の損失は耐性が劣ることの指標である。したがって、保持率がより高いことは、耐性がより良好であることを示す。
【0025】
ダートピックアップ抵抗性:
3ミル(0.076mm)のBirdフィルムアプリケーターを用いてアルミニウムQパネル(Alodine−1200S)上にそれぞれの試験塗料のフィルムを形成させた。フィルムを、Weather−O−meter曝露の前に、25℃で相対湿度50%において7日間乾燥させた。曝露の後、反射率計を用いて塗料フィルムのY反射率を測定した。次に、酸化鉄スラリー(水250g、アニオン分散剤2滴、酸化鉄125gを十分に分散させる)を用いてパネルを「汚濁処理」し、3時間風乾させ、60℃で1時間オーブンで乾燥させた。パネルを室温に冷却した後、チーズクロスパッドを用いて流水下で塗料フィルムを洗浄し、4時間風乾した。反射率計を用いて、汚濁処理した領域についてY反射率を再測定し、元の読みに対する割合(%)として報告した。保持率がより高いことは、塗料フィルムがより清浄であることを示し、これは耐性がより良好であることを示す。
【0026】
以下の実施例によって本発明の更なる種々の態様を示すが、これらはいかなる意味においても本発明の範囲を制限するものではない。以下の示す略号を実施例において用いる。
【0027】
AA=アクリル酸;MMA=メチルメタクリレート;BA=ブチルアクリレート;Sty=スチレン;BMA=ブチルメタクリレート;AnMA=9−アントリルメタクリレート;EA=エチルアクリレート;NEMA=1−ナフチルエチルメタクリレート;MAA=メタクリル酸。
【0028】
実施例1:9−アントリルメタクリレートを用いたアクリルラテックスの調製(組成:47BA/52MMA/1AnMA)
メカニカルブレードスターラー、温度を監視するための熱電対、還流凝縮器、加熱及び冷却するための手段、及び窒素雰囲気を具備した1リットルの4つ口丸底ガラスフラスコ内において重合を行った。フラスコに、脱イオン水200g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5gを入れ、85℃に加熱した。脱イオン水90g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5g、ブチルアクリレート118g、メチルメタクリレート130g、及び9−アントリルメタクリレート2.5gからモノマープレエマルジョンを調製した。プレエマルジョン(12.5g)をフラスコに加え、水5g中に溶解した過硫酸アンモニウム(APS)0.75gを加えた。15分後に、残りのプレエマルジョン及び脱イオン水75g中に溶解したAPS0.4gの2.5時間にわたる一定速度での供給を開始した。必要に応じて加熱及び冷却を行って反応温度を85℃に保持した。添加が完了したら、脱イオン水30gを用いてプレエマルジョン容器を濯ぎフラスコに加えた。30分後、フラスコを60℃に冷却し、全量で33.5gの脱イオン水中の0.003gのFeSO×7HO、70%のt−ブチルヒドロペルオキシド水溶液1.5g、及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.9gをフラスコ混合物に加えた。反応混合物を室温に冷却し、濾過した。固形分含有率41.0重量%、粒径83nm及びpH2.5を有するポリマーラテックスが得られた。ポリマーは413nm(ex364nm)においてケイ光を有していた。
【0029】
実施例2:1−ナフチルエチルメタクリレートを用いたアクリルラテックスの調製(組成:47BA/52.1MMA/0.9NEMA)
脱イオン水90g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5g、ブチルアクリレート118g、メチルメタクリレート130g、及びナフチルエチルメタクリレート2.3gからモノマープレエマルジョンを調製した他は実施例1の手順を繰り返した。固形分含有率41.4重量%、粒径103nm、及びpH2.3を有するポリマーラテックスが得られた。ポリマーは340nm(ex280nm)においてケイ光を有していた。
【0030】
実施例3:9−アントリルメタクリレートを用いたスチレンアクリルラテックスの調製(組成:50BA/49Sty/1AnMA)
脱イオン水90g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5g、ブチルアクリレート125g、スチレン122.5g、及び9−アントリルメタクリレート2.5gの2.3gからモノマープレエマルジョンを調製し、反応の終了時に、全量で54.5gの脱イオン水中の0.003gのFeSO×7HO、t−ブチルヒドロペルオキシド2.5g、及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート1.5gを加えた他は実施例1の手順を繰り返した。固形分含有率34.8重量%、粒径91nm、及びpH2.2を有するポリマーラテックスが得られた。ポリマーは413nm(ex365nm)においてケイ光を有していた。
【0031】
実施例4:1−ナフチルエチルメタクリレートを用いたスチレンアクリルラテックスの調製(組成:50BA/49.1Sty/0.9NEMA)
脱イオン水90g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5g、ブチルアクリレート125g、スチレン123g、及びナフチルエチルメタクリレート2.3gからモノマープレエマルジョンを調製した他は実施例1の手順を繰り返した。固形分含有率40.5重量%、粒径86nm、及びpH2.2を有するポリマーラテックスが得られた。ポリマーは340nm(ex280nm)においてケイ光を有していた。
【0032】
実施例5:9−アントリルメタクリレートを用いたアクリルラテックスの調製(組成:99EA/1AnMA)
脱イオン水90g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5g、エチルアクリレート247.5g、及び9−アントリルメタクリレート2.5gからモノマープレエマルジョンを調製した他は実施例1の手順を繰り返した。固形分含有率40.0重量%、粒径87nm、及びpH2.7を有するポリマーラテックスが得られた。ポリマーは413nm(ex364nm)においてケイ光を有していた。
【0033】
実施例6:アントラセンを用いたアクリルラテックスの調製(組成:100BMA//1.0アントラセン)
ブチルメタクリレート250g及びアントラセン2.5g(アントラセンがほぼ溶解するまで共に攪拌した)、脱イオン水90g、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5gからモノマープレエマルジョンを調製した他は実施例1の手順を繰り返した。固形分含有率40.6重量%、粒径112nm、及びpH1.9を有するポリマーラテックスが得られた。ポリマーは426nm(ex364nm)においてケイ光を有していた。
【0034】
実施例7:アントラセンを用いたアクリルラテックスの調製(組成:55BA/43.5MMA/1.5MAA//1.0アントラセン)
メカニカルブレードスターラー、温度を監視するための熱電対、還流凝縮器、加熱及び冷却するための手段、及び窒素雰囲気を具備した3リットルの4つ口丸底ガラスフラスコ内において重合を行った。フラスコに、脱イオン水580g、活性成分(ai)60%のアンモニウムアルキルフェノールエトキシレートスルフェート界面活性剤(AAESS)5.3g、及びナトリウムカーボネート4.0gを入れた。次に、この混合物を83℃に加熱した。ブチルアクリレート550g、メチルメタクリレート435g、メタクリル酸15g、及びアントラセン10g(アントラセンがほぼ溶解するまで共に攪拌した)、並びに脱イオン水252.5g、ai60%のAAESS17g、及びナトリウムラウリルスルフェート1.0gからモノマープレエマルジョンを調製した。プレエマルジョン(55g)をフラスコに加え、水17g中に溶解したAPS3.0gを加えた。15分後に、残りのプレエマルジョン及び脱イオン水90g中に溶解したAPS1.5gの3.0時間にわたる供給を開始した。必要に応じて加熱及び冷却を行って反応温度を83℃に保持した。添加が完了したら、脱イオン水35gを用いてプレエマルジョン容器をすすぎ、フラスコ中に加えた。30分後、フラスコを65℃に冷却し、全量で132gの脱イオン水中の0.012gのFeSO×7HO、テトラナトリウムエチレンジアミン四酢酸0.012g、70%のt−ブチルヒドロペルオキシド水溶液4.0g、及びイソアスコルビン酸2.0gを加えた。28%の水酸化アンモニウムでpHを6.8にした。次に、反応混合物を室温に冷却し、濾過した。固形分含有率46.7重量%、粒径130nm及びpH6.6を有するポリマーラテックスが得られた。ポリマーは422nm(ex364nm)においてケイ光を有していた。タンデムでUV検出器及び屈折率検出器を設えたゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ケイ光基がポリマー鎖に共有結合していることを測定した。
【0035】
実施例8:アントラセンを用いたアクリルラテックスの調製(組成:55BA/43.5MMA/1.5MAA//0.5アントラセン)
プレエマルジョン中においてアントラセン5gを用い、全量で68gの脱イオン水中のt−ブチルヒドロペルオキシド2.0g及びイソアスコルビン酸1.0gを重合の終了時に用いた他は実施例7の手順を繰り返した。固形分含有率48.9重量%、粒径126nm、及びpH8.7を有するポリマーラテックスが得られた。ポリマーは422nm(ex364nm)においてケイ光を有していた。
【0036】
実施例9:従来のアクリルラテックスの調製(組成:55BA/43.5MMA/1.5MAA)
脱イオン水175g、ai60%のAAESS17g、ブチルアクリレート550g、メチルメタクリレート435g、及びメタクリル酸15gからプレエマルジョンを調製し、重合の終了時に、全量で35gの脱イオン水中の0.006gのFeSO×7HO、テトラナトリウムエチレンジアミン四酢酸0.006g、70%のt−ブチルヒドロペルオキシド水溶液1.0g、及びイソアスコルビン酸0.5gを加えた他は実施例7の手順を繰り返した。固形分含有率52.2重量%、粒径124nm、及びpH9.6を有するポリマーラテックスが得られた。ポリマーはケイ光を有していなかった。
【0037】
実施例10:アントラセンを用いたスチレン−アクリルラテックスの調製(組成:50BA/46Sty/4.0MAA//0.5アントラセン)
メカニカルブレードスターラー、温度を監視するための熱電対、還流凝縮器、加熱及び冷却するための手段、及び窒素雰囲気を具備した3リットルの4つ口丸底ガラスフラスコ内において重合を行った。フラスコに脱イオン水400gを入れ、83℃に加熱した。脱イオン水12g中に溶解した過硫酸アンモニウム3.5g及び60nmの種ラテックス18g(固形分基準)を脱イオン水41.5gと共に加えた。ブチルアクリレート500g、スチレン460g、メタクリル酸40g及びアントラセン5g(アントラセンが溶解するまで共に攪拌した)、及び脱イオン水295g、ai35%のAAESS8.5g、及びナトリウムラウリルスルフェート3.2gからモノマープレエマルジョンを調製した。モノマープレエマルジョン及び脱イオン水90g中の過硫酸アンモニウム1.2gを3時間かけてフラスコに加えた。必要に応じて加熱及び冷却を行って反応温度を83℃に保持した。添加が終了したら、脱イオン水25gを用いて、プレエマルジョン容器をすすぎ反応フラスコ中に加えた。30分後、フラスコを65℃に冷却し、全量で46gの脱イオン水中の0.01gのFeSO×7HO、70%のt−ブチルヒドロペルオキシド水溶液2.0g、及びイソアスコルビン酸1.0gを加えた。反応混合物を室温に冷却し、濾過した。固形分含有率52.7重量%、粒径216nm、及びpH2.5を有するポリマーラテックスが得られた。ポリマーは418nm(ex364nm)においてケイ光を有していた。
【0038】
実施例11:半光沢塗料の調製及び評価
実施例7、8及び9からのラテックスポリマーを半光沢塗料中に配合し、促進屋外曝露の前後において評価した。塗料の配合を表1に示し、塗料の特性を表2に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
フィルムの加速老化のために、Atlas Weather−O−meterを用いて、屋外耐久性に関する塗料フィルムの評価を行った。Weather−O−meter中で840時間暴露後に光沢保持率を測定し、Weather−O−meter中で480時間暴露後にダートピックアップ抵抗性を測定した。結果を下表に要約する。
【0041】
【表2】

【0042】
上記のデータによって、それぞれ添加アントリル成分を含む塗料A及びBは、アントリル成分を含まない塗料Cよりも改良された屋外耐久性を示すことが示される。
【0043】
実施例12:ポリマーに結合した発色団成分の評価
逆相HPLCを用いて、重合中にアントラセンを加えて調製したポリマーの試料、及び、重合後にアントラセンを加えて調製したポリマーの試料を、遊離アントラセンに関して分析した。ベースポリマーは、41.2BA/57.5MMA/1.3MAAの組成を有していた。
【0044】
試料をメタノールで1:10に希釈し、2時間振とうした。次に、希釈した試料を45,000rpmで15分間遠心分離し、上澄みを分析した(試料中のレベルが測定範囲外である場合には試料の更なる希釈が必要である)。Supelco LC−18−DBカラム(25cm×4mm)を有するPerkin−Elmer Series−4−HPLCを用い、1ml/分の流速で、アセトニトリル/水(95/5)の移動相を用いて分析を行った。250nmの励起波長及び398nmのケイ光検出波長を用いてケイ光による検出を行なった。
【0045】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆におけるケイ光ポリマーの使用方法であって、
被覆組成物が、エチレン性不飽和モノマーを;
ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオランテン、アクリジン、カルバゾール、ピレン、クリセン、トリフェニレン、ペリレン及びそれらの置換芳香族誘導体、並びに、ナフチルメチルメタクリレート、ナフチルエチルメタクリレート、9−アントリルメタクリレート、9−アントリルメチルメタクリレート、2−(9−アントリル)エチルメタクリレート、1’−(9−アントリル)エチルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2−メチレン−3−(1−ナフチル)プロピオン酸、N−ジベンゾスベレニルアクリルアミド、(9−フェナントリル)メチルメタクリレート及び9−ビニルフェナントレン:からなる群から選択されるケイ光化合物の存在下で;
重合することによって得られるケイ光ポリマーを含み;得られるポリマーがケイ光基を含むことを特徴とする、
被覆におけるケイ光ポリマーの使用方法。
【請求項2】
ケイ光化合物の量が、モノマーの全重量を基準として0.001〜3.0重量%である請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
ケイ光化合物が、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオランテン及びそれらの置換芳香族誘導体、並びに、ナフチルエチルメタクリレート、9−アントリルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2−メチレン−3−(1−ナフチル)プロピオン酸、(9−フェナントリル)メチルメタクリレート、9−ビニルフェナントレン及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の被覆組成物。

【公開番号】特開2007−277581(P2007−277581A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185555(P2007−185555)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【分割の表示】特願平9−149873の分割
【原出願日】平成9年5月26日(1997.5.26)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】