説明

裁断機

【構成】 裁断機は、裁断ベッドと裁断ヘッドとを備えた裁断機本体と、裁断機に固定のコントローラと、方向指示入力部を備えたハンディコントローラとを備えている。裁断機に対するハンディコントローラの位置、あるいはハンディコントローラの方向を検出し、検出した位置あるいは方向に従って、方向指示入力部の設定を切り替える。
【効果】 裁断機のいずれの側からハンディコントローラを操作する場合でも、手前と奧及び右と左の関係が作業者の感覚と一致する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は裁断機に関し、特にそのハンディコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
裁断機で織物、編物、皮革などの被裁断材を裁断する際に、裁断パターンを被裁断材に対して位置合わせしたり、被裁断材の柄に合わせたりする必要がある。この点に関し特許文献1(特開平7−324213)は、プロジェクターから裁断パターンを被裁断材上に投影し、作業者がハンディコントローラによりプロジェクターからの投影パターンを移動させて、被裁断材に対する位置合わせ等を行うことを開示している。投影パターンの位置調整により裁断のティーチングがなされ、裁断ヘッドは位置合わせ等を行った投影パターンに沿って被裁断材を裁断する。
【0003】
ここでプロジェクター等を操作するには、ハンディコントローラから上(奧)、下(手前)、右、左などの移動方向を入力する必要がある。裁断機はその一側面に固定コントローラを備えているので、移動方向は裁断機の固定コントローラ側を基準にするのが簡単である。しかしこのようにすると、固定コントローラの反対側からプロジェクター等を操作すると、上下左右の関係が逆転し、作業者の感覚と合わなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−324213
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、裁断機のいずれの側からハンディコントローラを操作する場合でも、手前と奧及び右と左の関係が、作業者の感覚と一致するようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、裁断ベッドと裁断ヘッドとを備えた裁断機本体と、裁断機に固定のコントローラと、方向指示入力部を備えたハンディコントローラとを備える裁断機において、
裁断機に対する前記ハンディコントローラの位置、あるいは前記ハンディコントローラの方向を検出するための検出手段と、
検出した位置あるいは方向に従って、前記方向指示入力部の設定を切り替える設定手段を設けたことを特徴とする。
【0007】
裁断機に対するハンディコントローラの位置が検出できれば、方向指示入力部の設定をどのように切り替えれば良いかが分かる。また作業者がハンディコントローラを操作する場合、その向きは位置に応じて定まるはずなので、ハンディコントローラの向きが検出できれば、方向指示入力部の設定をどのように切り替えれば良いかが分かる。このためこの発明では、ハンディコントローラを裁断機本体のいずれの側から操作しても、作業者の感覚と一致するように、方向指示入力部の設定を切り替えることができる。従って裁断機の操作が容易になる。
【0008】
好ましくは、前記検出手段は、裁断機本体とハンディコントローラの一方に設けた発信器と、他方に設けた受信器との組合せからなる。このようにすると、簡単に裁断機本体に対するハンディコントローラの位置を検出できる。
【0009】
また好ましくは、前記検出手段は、ハンディコントローラに設けたジャイロスコープである。ジャイロスコープによりハンディコントローラの向きを検出できる。そして作業者がハンディコントローラを操作する場合、ハンディコントローラの前面が裁断機を向いているはずなので、向きが分かれば、裁断機に対するハンディコントローラの位置が分かり、方向指示入力部の設定を作業者の位置に合わせて切り替えることができる。
【0010】
裁断ベッド上の被裁断材にパーツの形状の画像を投影するプロジェクターを設けて、ハンディコントローラからの方向指示入力に従って、前記パーツの形状の画像を移動させると、被裁断材に対してパーツを容易に位置合わせあるいは柄合わせできる。
【0011】
ハンディコントローラからの方向指示入力に従って、被裁断材に対して裁断ヘッドを移動させると、作業者の意図に沿って裁断ヘッドを容易に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例の裁断装置の平面図
【図2】実施例のハンディコントローラと固定コントローラ等のブロック図
【図3】ハンディコントローラでの上下左右の入力への設定を示す図
【図4】変形例のハンディコントローラのブロック図
【図5】実施例での、プロジェクターを用いた位置合わせ等のアルゴリズムを示すフローチャート
【図6】実施例での、裁断ヘッドへのティーチングアルゴリズムを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に、周知技術による変更の可能性を加味して解釈されるべきである。
【実施例】
【0014】
図1〜図6に、実施例とその変形とを示す。図において、2は裁断機で、裁断ベッド3と裁断ヘッド14とから成る裁断機本体を備えている。4,6はコンベヤで、例えばコンベヤ4は被裁断材を延反して裁断ベッド3上に送り込むコンベヤで、コンベヤ6は裁断済みの被裁断材を搬出するコンベヤである。裁断機本体は固定コントローラ8を備え、10はハンディコントローラで、作業者が携帯する。また12はプロジェクターで、裁断ベッド3上の被裁断材に、裁断するパーツ形状を表す投影パターン26を投影する。裁断ヘッド14は、アーム22及びガイドレール24に沿って水平面内でXYの2方向に移動し、裁断刃16と、裁断開始点と被裁断材の傾きなどを指示するためのレーザーポインター18、及び被裁断材の画像を撮影するためのカメラ20を備えている。なおカメラ20を裁断ヘッド14とは別に、例えばプロジェクター12の位置に設けても良い。A1〜A4はアンテナで、例えば異なる周波数の無線信号を送信する。
【0015】
図2に、ハンディコントローラ10等の構成を示す。30,31は入力部で、このうち入力部30は方向入力に用い、例えば移動方向を入力するための4個の方向指示ボタン41〜44と、回転方向を入力するためのリング45とを備えている。入力部31は、適宜のボタンなどから、方向指示以外の入力を受け付ける。なお入力部30では、ボタン41〜44等に代えて、つまみやスティックなどを傾けあるいは回転させて、移動方向と回転方向とを入力するようにしても良い。またタッチパネルなどを設けて、タッチパネルの4隅のいずれの方向にタッチしたかで、移動方向の指示を受け付けるようにしても良い。
【0016】
40は送信制御部で、固定コントローラ8への送信を制御する。32は送受信部で、アンテナA1〜A4から受信した信号を、バンドパスフィルタB1〜B4で分離し、ADコンバータ34でAD変換する。これらの4個の信号の相対的な強弱を比較部36で比較し、裁断機本体に対して、ハンディコントローラがどの位置にあるかを検出する。
【0017】
ここで固定コントローラ8がある側を正面、その反対側を背面とする。ハンディコントローラ10が正面側にあれば、アンテナA1,A2からの信号が強く、アンテナA4,A3からの信号は弱い。そこで比較部36で信号A1とA4の強弱を比較し、同様に信号A2とA3の強弱を比較する。信号A1,A2が信号A4,A3よりも強ければ、ハンディコントローラ10は正面側にある。その逆の場合、背面側にある。コンベヤ4,6などがない場合、作業者は裁断機2の左右にも立ち入ることができる。この位置も検出する場合、アンテナA1からの信号とアンテナA2からの信号の強弱を比較し、同様にアンテナA4からの信号とアンテナA3からの信号の強弱を比較する。
【0018】
比較部36により、ハンディコントローラ10が裁断機2の正面と背面のいずれにあるかが分かる。これに応じて方向設定部38で、方向指示ボタン41〜44からの入力への設定を切り替える。なおリング45からの入力への設定は、ハンディコントローラ10の位置によらず一定である。即ち、ハンディコントローラ10がどの位置にあっても、リング45を時計回りに回転させると、時計回りの回転とする。
【0019】
入力部30からの入力への設定を図3に示す。左側の設定50は、ハンディコントローラ10が裁断機の正面側にある際の設定で、上下(裁断機2の奧と手前)並びに左右は通常の意味と一致する。右側の設定51は、ハンディコントローラ10が裁断機2の背面側にある場合の設定で、上下左右が通常の意味とは逆転している。
【0020】
なお仮にハンディコントローラ10がコンベヤ4の位置にあると、入力部30のボタン44を左へ移動とのボタンとし、下のボタン42を右へ移動のボタンとし、ボタン41を上へ移動のボタンとし、ボタン43を下へ移動のボタンとする。ハンディコントローラ10がコンベヤ6の位置にある場合、ボタン44を右へ移動のボタンとし、ボタン42を左へ移動のボタンとし、ボタン41を下へ移動のボタン、ボタン43を上へ移動のボタンとする。
【0021】
以上のように、ハンディコントローラ10の位置により、入力部30への入力に対する設定を切り替えることにより、作業者から見た上下左右と、入力部30での上下左右の意味を一致させる。そして作業者の方向指示に従い、送信制御部40から送受信部32を介して、固定コントローラ8と接続されたアンテナA1へ信号を送信する。
【0022】
固定コントローラ8では、ハンディコントローラ10からの入力に従い、プロジェクター12を移動させ、あるいはプロジェクター12内で発生させる画像の位置や傾きを変更することにより、投影パターン26を変更する。さらにハンディコントローラ10からの入力に従い、ヘッド移動部15により裁断ヘッド14を移動させる。
【0023】
実施例ではアンテナA1〜A4から発信して、ハンディコントローラ10で受信するようにした。この逆に、ハンディコントローラ10から無線などを発信してアンテナA1〜A4で受信し、各アンテナでの受信強度を比較しても良い。信号は無線に限らず、赤外線、超音波などでも良い。
【0024】
図4に変形例のハンディコントローラを示す。この変形例ではアンテナA1〜A4からの信号の強弱ではなく、ジャイロスコープ52の信号により、ハンディコントローラ10の向きを求める。そして作業者はハンディコントローラ10を裁断機2に向けて持っているものと仮定し、ジャイロスコープ52からの信号により、方向設定部38で入力部30からの入力への設定を切り替える。他の点は実施例と同様である。なおジャイロスコープに限らず、例えば地磁気センサで向きを求めてもよい。
【0025】
図5に、プロジェクター12を用いた位置合わせあるいは柄合わせのアルゴリズムを示す。ステップ1で、被裁断材上にパーツ形状の画像を投影する。この時、投影画像は標準位置にある。ステップ2で、作業者の方向指示入力を受け付け、ハンディコントローラの位置もしくは向きにより方向指示入力を解釈し(ステップ3)、それに応じて投影画像を移動させる(ステップ4)。投影画像の位置と傾きなどが良好で、パーツ形状の画像が被裁断材に対して柄合わせあるいは位置合わせに成功すると(ステップ5)、標準位置からの投影画像の移動量を記憶する(ステップ6)。移動量には上下左右の移動量の他、シート材の傾きなどに応じた回動量がある。そして裁断ヘッドの動作を標準に対し、前記移動量だけ変更して裁断を実行する。
【0026】
図6に、裁断ヘッドに対するティーチングのアルゴリズムを示す。例えばステップ11で裁断ヘッドのレーザーポインターをオンし、ステップ12で作業者の方向指示入力を受け付け、図5と同様にして方向指示入力を解釈する(ステップ13)。そして方向指示入力に従って裁断ヘッドを移動させ(ステップ14)、裁断の開始点と被裁断材の裁断ベッドに対する傾き方向を入力する。例えば被裁断材の長手方向に沿って2点の位置を入力すると、傾きを入力したことになる。裁断開始点と被裁断材の傾きなどの入力が完了すると(ステップ15)、裁断の開始点並びに傾きを記憶する(ステップ16)。
【0027】
このようにして図5,図6のアルゴリズムで、被裁断材に対するパーツの柄合わせあるいは位置合わせやティーチングを行うことができる。柄合わせとは被裁断材の柄に対してパーツの位置を合わせることで、位置合わせとは被裁断材の位置、傾き、疵などに応じて、パーツの位置を決めることである。柄合わせと位置合わせは類似で、どちらも位置決めである。
【0028】
プロジェクター及び裁断ヘッドの移動指示の他に、例えばカメラを順次移動させながら、被裁断材を撮影する場合、ハンディコントローラへの方向指示入力を用いて、作業者の意図に沿って容易にカメラを移動させることができる。なお実施例では、固定コントローラを裁断機本体と一体にしたが、固定コントローラは裁断機本体と別体でも構わない。また実施例では方向設定部をハンディコントローラにのみ設けたが、方向設定部をハンディコントローラと固定コントローラの双方、あるいは固定コントローラにのみ設けても構わない。

【符号の説明】
【0029】
2 裁断機
3 裁断ベッド
4,6 コンベヤ
8 固定コントローラ
10 ハンディコントローラ
12 プロジェクター
14 裁断ヘッド
15 ヘッド移動部
16 裁断刃
18 レーザーポインター
20 カメラ
22 アーム
24 ガイドレール
26 投影パターン
30,31 入力部
32 送受信部
34 ADコンバータ
36 比較部
38 方向設定部
40 送信制御部
41〜44 方向指示ボタン
45 リング

50,51 設定
52 ジャイロスコープ

A1〜A4 アンテナ
B1〜B4 バンドパスフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裁断ベッドと裁断ヘッドとを備えた裁断機本体と、裁断機に固定のコントローラと、方向指示入力部を備えたハンディコントローラとを備える裁断機において、
裁断機に対する前記ハンディコントローラの位置、あるいはハンディコントローラの方向を検出するための検出手段と、
検出した位置あるいは方向に従って、前記方向指示入力部の設定を切り替える設定手段を設けたことを特徴とする、裁断機。
【請求項2】
前記検出手段は、裁断機本体とハンディコントローラの一方に設けた発信器と、他方に設けた受信器との組合せからなることを特徴とする、請求項1の裁断機。
【請求項3】
前記検出手段は、ハンディコントローラに設けたジャイロスコープであることを特徴とする、請求項1の裁断機。
【請求項4】
裁断ベッド上の被裁断材にパーツの形状の画像を投影するプロジェクターを設けて、ハンディコントローラからの方向指示入力に従って、前記パーツの形状の画像を移動させることにより、被裁断材に対してパーツを位置合わせあるいは柄合わせするようにしたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの裁断機。
【請求項5】
ハンディコントローラからの方向指示入力に従って、被裁断材に対して裁断ヘッドを移動させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの裁断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−115884(P2011−115884A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274616(P2009−274616)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】